特許異議申立
2025-700405
空気供給システム、空気供給システムの制御方法、及び空気供給システムの制御プログラム
- 審判番号
- 2025-700405
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-502268
- 登録番号
- 7568610
- 請求日
- 2025年04月10日
- 審決日
- 2025年11月05日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ナブテスコオートモーティブ株式会社
- 【権利者代理人】藤井 稔也
- 【異議申立人】中石 幸明
- 審判長/審判官
- 審判長 原 賢一
- 審判官 金 公彦
- 審判官 田口 裕健
- 分類
- P1651.121-YAA(B01D) / P1651.536-YAA(B01D) / P1651.537-YAA(B01D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第3項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7568610号発明「空気供給システム、空気供給システムの制御方法、及び空気供給システムの制御プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7568610号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2~4〕、5、6、7、8、9、10、11、12について訂正することを認める。
特許第7568610号の請求項2~4、6~12に係る特許を維持する。
特許第7568610号の請求項1、5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7568610号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)2月25日(優先権主張 平成31年2月25日)を国際出願日とするものであって、令和6年10月7日にその特許権の設定登録がされ、同年同月16日に特許掲載公報が発行され、その後、令和7年4月10日に、請求項1~10に係る特許について、特許異議申立人 中石 幸明(以下、「申立人」という。)により、甲第1~2号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされ、同年6月13日付けで当審より取消し理由が通知され、その指定期間内である同年8月18日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、同年9月19日に申立人より意見書(以下、「申立人意見書」という。)が提出されたものである。
第2 本件訂正請求による訂正の適否
1 訂正の内容及び一群の請求項について
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、請求の趣旨を、「特許第7568610号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求める。」とするものであって、その訂正の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記制御装置は、
一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されている、
請求項1に記載の空気供給システム。」
と記載されているのを、
「圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、
前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されている、
空気供給システム。」
に訂正する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「請求項1又は2に記載の空気供給システム。」
と記載されているのを、
「請求項2に記載の空気供給システム。」
に訂正する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1~3のいずれか1項に記載の空気供給システム。」
と記載されているのを、
「請求項2又は3に記載の空気供給システム。」
に訂正する。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に
「前記制御装置は、
前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されている、
請求項5に記載の空気供給システム。」
と記載されているのを、
「圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、
前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されている、
空気供給システム。」
に訂正する。
(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に
「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定する、」
と記載されているのを、
「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくする、」
に訂正する。
(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に
「前記圧縮空気の温度又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定する、」
と記載されているのを、
「前記圧縮空気の温度又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくする、」
に訂正する。
(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に
「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定する設定部、として機能させる、」
と記載されているのを、
「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくする設定部、として機能させる、」
に訂正する。
(10) 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10に
「前記圧縮空気の温度又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定する設定部、として機能させる」
と記載されているのを、
「前記圧縮空気の温度又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくする設定部、として機能させる」
に訂正する。
(11) 訂正事項11
新たに下記請求項11を追加する。
「圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、
前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い場合には、前記再生空気量を大きくし、前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が低い場合には、前記再生空気量を小さくするように構成されている、
空気供給システム。」
(12) 訂正事項12
新たに下記請求項12を追加する。
「圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、
前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記貯留部の圧力であって前記再生動作を開始するための上限圧を高く設定し、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には前記上限圧を低く設定し、
前記上限圧が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記上限圧が低い場合には前記再生空気量を大きくするように構成されている、
空気供給システム。」
(13) 一群の請求項について
訂正事項1~4による特許請求の範囲の訂正は、訂正前の請求項1~4を訂正するものであり、訂正前の請求項1は独立請求項であり、訂正前の請求項2~4はいずれも訂正前の請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1~4は一群の請求項である。
また、訂正事項11による訂正は、本件訂正前の請求項3の一部を新たな請求項11として独立請求項とするものであり、訂正事項12による訂正は、本件訂正前の請求項4の一部を新たな請求項12として独立請求項とするものであり、訂正前の請求項1~4は一群の請求項であることは前記のとおりであるから、訂正事項1~4、11及び12による特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第3項及び第4項所定の規定に従い、この一群の請求項1~4を訂正の単位として請求されたものである。
訂正前の請求項5は独立請求項であり、訂正前の請求項6は訂正前の請求項5を引用するものであるから、訂正前の請求項5及び6は一群の請求項であるので、訂正事項5及び6による特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第3項及び第4項所定の規定に従い、この一群の請求項5~6を訂正の単位として請求されたものである。
訂正前の請求項7~10は、それぞれ独立請求項であるから、訂正事項7~10による特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第3項所定の規定に従い、前記請求項7~10ごとに請求されたものである。
そして、訂正後の請求項2~4、11及び12と、訂正後の請求項6については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することが求められているものである。
なお、訂正後の請求項2~4、11及び12については、それぞれ個別に別途訂正することが求められていることを特許権者に確認した。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件について
(1) 訂正事項1、5について
訂正事項1及び5による訂正は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1及び5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、訂正事項1による訂正により請求項1が削除されたことにともなって、訂正前の請求項2が請求項1を引用する記載であったものを、請求項1との引用関係を解消して独立請求項とする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明、及び、同第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(3) 訂正事項3、11について
訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項3において請求項1又は2を引用していたのを、訂正事項1による訂正により請求項1が削除されたことにともなって、請求項2を引用するものに訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項11による訂正は、訂正事項1による訂正により請求項1が削除されたことにともなって、訂正前の請求項3において請求項1又は2を引用していたのを、請求項1を引用するものについて引用関係を解消して独立形式に改め、新たに請求項11とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明、及び、同第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項3及び11による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(4) 訂正事項4、12について
訂正事項4による訂正は、訂正前の請求項4において請求項1~3のいずれか1項を引用していたのを、訂正事項1による訂正により請求項1が削除されたことにともなって、請求項2又は3を引用するものに訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項12による訂正は、訂正事項1による訂正により請求項1が削除されたことにともなって、訂正前の請求項4において請求項1~3のいずれか1項を引用していたのを、請求項1を引用するものについて引用関係を解消して独立形式に改め、新たに請求項12とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明、及び、同第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項4及び12による訂正により、訂正前の請求項1を引用する同請求項3を引用する同請求項4が削除されるから、これらの訂正は、全体として、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもあって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(5) 訂正事項6について
訂正事項6による訂正は、訂正事項5による訂正により請求項5が削除されたことにともなって、訂正前の請求項6において請求項5を引用していたのを、引用関係を解消して独立形式に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明、及び、同第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項6による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(6) 訂正事項7について
訂正事項7による訂正は、訂正前の請求項7の「空気供給システムの制御方法」における「制御装置」を、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくする」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項2には、
「前記制御装置は、
一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されている」
と記載され、同段落【0058】には、下記第6の1(2)ウと同様の記載があるから、訂正事項7による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(7) 訂正事項8について
訂正事項8による訂正は、訂正前の請求項8の「空気供給システムの制御方法」における「制御装置」を、「前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくする」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項6には、
「前記制御装置は、
前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくする」
と記載され、同段落【0091】には、下記第6の1(2)エと同様の記載があるから、訂正事項8による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(8) 訂正事項9について
訂正事項9による訂正は、訂正前の請求項9の「空気供給システムの制御プログラム」における「制御装置」を、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくする」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、前記(6)に記載したのと同様の理由により、訂正事項9による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(9) 訂正事項10について
訂正事項10による訂正は、訂正前の請求項10の「空気供給システムの制御プログラム」における「制御装置」を、「前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくする」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、前記(7)に記載したのと同様の理由により、訂正事項10による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
3 小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
そして、訂正後の請求項2~4、11、12と、訂正後の請求項6については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することが求められているから、訂正後の請求項1、〔2~4〕、5、6、7、8、9、10、11、12について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件訂正が認められることは前記第2に記載したとおりであるから、本件特許の請求項2~4、6~12に係る発明は、それぞれ、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項2~4、6~12に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、「本件発明2」などといい、まとめて「本件発明」ということがある。)。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、
前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されている、
空気供給システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い場合には、前記再生空気量を大きくし、前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が低い場合には、前記再生空気量を小さくするように構成されている、
請求項2に記載の空気供給システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記貯留部の圧力であって前記再生動作を開始するための上限圧を高く設定し、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には前記上限圧を低く設定し、
前記上限圧が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記上限圧が低い場合には前記再生空気量を大きくするように構成されている、
請求項2又は3に記載の空気供給システム。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、
前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されている、
空気供給システム。
【請求項7】
圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置とを備える空気供給システムの制御方法であって、
前記制御装置が、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくする、
空気供給システムの制御方法。
【請求項8】
圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置とを備える空気供給システムの制御方法であって、
前記制御装置が、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記圧縮空気の温度又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくする、
空気供給システムの制御方法。
【請求項9】
圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置とを備える空気供給システムの制御プログラムであって、
前記制御装置を、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する除湿動作実行部、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する再生動作実行部、及び
一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくする設定部、として機能させる、
空気供給システムの制御プログラム。
【請求項10】
圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置とを備える空気供給システムの制御プログラムであって、
前記制御装置を、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する除湿動作実行部、
前記空気乾燥回路を制御して前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する再生動作実行部、及び
前記圧縮空気の温度又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくする設定部、として機能させる
空気供給システムの制御プログラム。
【請求項11】
圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、
前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い場合には、前記再生空気量を大きくし、前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が低い場合には、前記再生空気量を小さくするように構成されている、
空気供給システム。
【請求項12】
圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、
前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記貯留部の圧力であって前記再生動作を開始するための上限圧を高く設定し、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には前記上限圧を低く設定し、
前記上限圧が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記上限圧が低い場合には前記再生空気量を大きくするように構成されている、
空気供給システム。」
第4 特許異議申立理由の概要
1 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について
(1) 「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率」について
ア 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1に係る発明における「一定期間」との特定は、どのような期間を「一定」として特定しているのか不明であるところ、「一定期間内」との特定は、「一定期間」の期間内のうち、任意の期間を特定するものであるから、どの期間を特定しているのかが更に不明確であるので、「一定期間内」がどのような期間を意味するのかが不明確である。
イ 「コンプレッサの稼働率」としては、時間稼働率と設備稼働率の少なくとも二つを挙げることができるが、これらの算出結果は異なるものである。
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌しても、「稼働率」の算出方法は記載されていないし、「稼働率」の算出方法が一つであるという技術常識も存在しない。
更に、「一定期間内」がどのような期間を意味するのかが不明確であることは前記アに記載したとおりであるが、「一定期間内」の選び方が異なると「稼働率」の算出結果は異なるものである。
すると、「コンプレッサ」の運転状態が同じであっても、「稼働率」の定義や「一定期間内」の選び方によって「稼働率」の算出結果が異なるから、「コンプレッサの稼働率」の意味が不明確である。
ウ 前記ア及びイによれば、前記請求項1に係る発明の「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率」、との発明特定事項は意味が不明確であるから、前記請求項1に係る発明は明確でない。
エ 更に、前記請求項1に係る発明と同様に、前記発明特定事項を有する設定登録時の特許請求の範囲の請求項2~4、7、9に係る発明について検討しても事情は同じであるから、設定登録時の特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない。
(2) 「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくする」について
ア 設定登録時の特許請求の範囲の請求項2に係る発明における「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合」、との発明特定事項は、どのような基準により「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い」と判断しているのかが明らかでないし、「コンプレッサの稼働率」がどのような値であれば高いと判断できるのかを開示した技術常識もないから、意味が不明確である。
イ 前記請求項2に係る発明における「前記再生空気量を小さくし」、との発明特定事項は、「再生空気量」を何と比較して小さくするのかが不明であるし、「再生空気量」がどのような量であれば小さいと判断できるのかを開示した技術常識もないから、意味が不明確である。
ウ 前記請求項2に係る発明における「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が低い場合」、との発明特定事項は、どのような基準により「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が低い」と判断しているのかが明らかでないし、「コンプレッサの稼働率」がどのような値であれば低いと判断できるのかを開示した技術常識もないから、意味が不明確である。
エ 前記請求項2に係る発明における「前記再生空気量を大きくする」、との発明特定事項は、「再生空気量」を何と比較して大きくするのかが不明であるし、「再生空気量」がどのような量であれば大きいと判断できるのかを開示した技術常識もないから、意味が不明確である。
オ 前記ア~エによれば、前記請求項2に係る発明の「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくする」、との発明特定事項は意味が不明確である。
カ 更に、前記請求項2に係る発明と同様に、前記発明特定事項を有する設定登録時の特許請求の範囲の請求項3~4に係る発明について検討しても事情は同じであるから、設定登録時の特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない。
(3) 「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い場合には、前記再生空気量を大きくし、前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が低い場合には、前記再生空気量を小さくする」について
ア 設定登録時の特許請求の範囲の請求項3に係る発明における「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い場合」、との発明特定事項は、どのような基準により「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い」と判断しているのかが明らかでないし、「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態」がどのような値であれば高いと判断できるのかを開示した技術常識もないから、意味が不明確である。
また、「前記再生空気量を大きくし」、との発明特定事項は、「再生空気量」を何と比較して大きくするのかが不明であるし、「再生空気量」がどのような量であれば大きいと判断できるのかを開示した技術常識もないから、意味が不明確である。
イ 前記請求項3に係る発明における「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が低い場合」、との発明特定事項は、どのような基準により「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が低い」と判断しているのかが明らかでないし、「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態」がどのような値であれば低いと判断できるのかを開示した技術常識もないから、意味が不明確である。
また、「前記再生空気量を小さくする」、との発明特定事項は、「再生空気量」を何と比較して小さくするのかが不明であるし、「再生空気量」がどのような量であれば小さいと判断できるのかを開示した技術常識もないから、意味が不明確である。
ウ 前記ア~イによれば、前記請求項3に係る発明の「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い場合には、前記再生空気量を大きくし、前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が低い場合には、前記再生空気量を小さくする」、との発明特定事項は意味が不明確であるから、設定登録時の特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない。
(4) 「前記制御装置は、前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記貯留部の圧力であって前記再生動作を開始するための上限圧を高く設定し、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には前記上限圧を低く設定し、前記上限圧が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記上限圧が低い場合には前記再生空気量を大きくするように構成されている」について
ア 設定登録時の特許請求の範囲の請求項4に係る発明における「前記貯留部の圧力であって前記再生動作を開始する」、との発明特定事項は、「貯留部の圧力」とは、「貯留部」が配置されている場所における大気圧のことを意味しているのか、「貯留部」内の圧力を意味しているのか、そのほかの圧力を意味しているのかが明らかでないから、意味が不明確である。
また、「前記再生動作を開始するための上限圧」、との発明特定事項は、「上限圧」以下の圧力のときに「再生動作を開始する」のか、「上限圧」以上の圧力のときに「再生動作を開始する」のかが明らかでないから、意味が不明確である。
イ 前記請求項4に係る発明の「前記コンプレッサの稼働率が高い場合」、「前記コンプレッサの稼働率が低い場合」、との発明特定事項は、どのような基準により「前記コンプレッサの稼働率が高い」、「低い」と判断しているのかが明らかでない。
また、「前記貯留部の圧力であって前記再生動作を開始するための上限圧を高く設定し」、「前記上限圧を低く設定し」、との発明特定事項は、「上限圧」を何と比較して「高く設定」し、又は「低く設定」するのかが明らかでないから、意味が不明確である。
ウ 前記請求項4に係る発明における「前記上限圧が高い場合」、「前記上限圧が低い場合」、との発明特定事項は、どのような基準により「前記上限圧が高い」、「前記上限圧が低い」と判断しているのかが明らかでないから、意味が不明確であるし、「前記再生空気量を小さくし」、「前記再生空気量を大きくする」、との発明特定事項は、「再生空気量」を何と比較して大きく、又は小さくするのかが明らかでないから、意味が不明確である。
エ 前記ア~ウによれば、前記請求項4に係る発明の「前記制御装置は、前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記貯留部の圧力であって前記再生動作を開始するための上限圧を高く設定し、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には前記上限圧を低く設定し、前記上限圧が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記上限圧が低い場合には前記再生空気量を大きくするように構成されている」、との発明特定事項は意味が不明確であるから、設定登録時の特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない。
(5) 「前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくする」について
ア 設定登録時の特許請求の範囲の請求項6に係る発明の「前記温度が低い場合」、「前記温度が高い場合」、との発明特定事項は、どのような基準により「前記温度が低い」、「前記温度が高い」と判断しているのかが明らかでないから、意味が不明確である。
また、前記請求項6に係る発明の「前記再生空気量を小さくし」、「前記再生空気量を大きくする」、との発明特定事項は、「再生空気量」を何と比較して小さく、又は大きくするのかが明らかでないから、意味が不明確である。
イ 前記アによれば、前記請求項6に係る発明の「前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくする」、との発明特定事項は意味が不明確であるから、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない。
したがって、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~4、6、7及び9に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号所定の規定を満たしていない特許出願に対してされたものである。
なお、申立人は、設定登録時の特許請求の範囲の請求項10に係る発明についても、前記請求項1~6に係る発明で指摘したものと同じ記載不備がある旨を主張しているが(特許異議申立書17ページ10~11行)、前記請求項10に係る発明にはそのような記載不備はないので、前記請求項10に係る発明について、前記記載は誤記と認める。
2 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について
(1) 「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率」について
設定登録時の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率」、との発明特定事項について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には、「一定期間内」がどのような期間であるかの説明はないし、「一定期間内」がどのような期間であるかを開示した技術常識もないから、「一定期間内」は、多様な期間を取り得るものである。
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には、「コンプレッサの稼働率」がどのような値であるかの説明はないし、「コンプレッサの稼働率」には複数の算出方法があり、「コンプレッサの稼働率」が特定されることを開示した技術常識もない。
そのため、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率」について、当業者に過度の試行錯誤を強いるものであるから、前記請求項1に係る発明を当業者が容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
更に、前記請求項1に係る発明と同様に、前記発明特定事項を有する設定登録時の請求項2~4、7、9に係る発明について検討しても事情は同じであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない。
(2) 「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくする」について
設定登録時の特許請求の範囲の請求項2に係る発明の「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくする」、との発明特定事項について、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「前記コンプレッサの稼働率が高い場合」及び「前記コンプレッサの稼働率が低い場合」の例として、60%及び30%が例示されているが(段落【0056】。下記第6の1(2)ウ。)、その値を採用する技術的根拠は記載されていない。
仮に、本件発明が、「コンプレッサの稼働率」の閾値を60%及び30%とすることを特徴とするパラメーター発明であるならば、そのように発明特定事項を特定すべきである。
また、「前記コンプレッサの稼働率が高い場合」及び「前記コンプレッサの稼働率が低い場合」に、それぞれ、どのような値が該当するのかを開示した技術常識もないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくする」ことについて、前記請求項2に係る発明を当業者が容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではないので、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない。
(3) 「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い場合には、前記再生空気量を大きくし、前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が低い場合には、前記再生空気量を小さくする」について
設定登録時の特許請求の範囲の請求項3に係る発明の「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い場合には、前記再生空気量を大きくし、前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が低い場合には、前記再生空気量を小さくする」、との発明特定事項について、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い場合」及び「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が低い場合」が、それぞれどのような湿潤状態であるのかが記載されていない。
また、「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い場合」及び「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が低い場合」に、それぞれ、どのような値が該当するのかを開示した技術常識もないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い場合には、前記再生空気量を大きくし、前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が低い場合には、前記再生空気量を小さくする」ことについて、前記請求項3に係る発明を当業者が容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではないので、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない。
(当審注:特許異議申立書の33ページ23~25行の「また、どのような値が「コンプレッサの稼働率が高い場合」に該当し、または、「湿潤状態を示す指標が低い場合」に該当するのかという技術常識は見当たらない。」の記載は、前後の文脈からみて、「また、どのような値が「湿潤状態を示す指標が高い場合」に該当し、または、「湿潤状態を示す指標が低い場合」に該当するのかという技術常識は見当たらない。」の誤記と認める。)
(4) 「前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくする」について
設定登録時の特許請求の範囲の請求項6に係る発明の「前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくする」、との発明特定事項について、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「前記温度が低い場合」及び「前記温度が高い場合」が、それぞれどのような温度であるのかが記載されていない。
また、「前記温度が低い場合」及び「前記温度が高い場合」に、それぞれ、どのような温度が該当するのかを開示した技術常識もないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、「前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくする」ことについて、前記請求項6に係る発明を当業者が容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではないので、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない。
したがって、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~4、6、7及び9に係る発明の特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号所定の規定を満たしていない特許出願に対してされたものである。
3 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について
設定登録時の特許請求の範囲に記載された発明は、「コンプレッサの稼働率」、「貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態」及び「貯留部の圧力」等のパラメーターによって「再生空気量」を設定するものである。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、再生空気量Amの算出方法として、再生空気量Am=標準再生空気量Am1-補正単位空気量Am2×過不足係数α…(1)が記載されているが、そのほかの算出方法は記載されていない。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、特定の手段による発明が記載されているのみであり、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、設定登録時の請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化することはできないから、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない。
したがって、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~10に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号所定の規定を満たしていない特許出願に対してされたものである。
4 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について
(1) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項1~10に係る発明の特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。
(2) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項5、6、8及び10に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項5、6、8及び10に係る発明の特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。
5 証拠方法
甲第1号証:特表2004-526628号公報
甲第2号証:特開2014-79757号公報
第5 取消理由の概要
1 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について
設定登録時の特許請求の範囲の請求項5、8及び10に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項5、8及び10に係る発明の特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。
2 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について
本件特許に係る発明は、従来、トラック、バス、建機等の車両には、圧縮空気中の水分及び油分等の不純物を除去する圧縮空気乾燥装置が設けられており、当該圧縮空気乾燥装置は、フィルタに吸着された油分及び水分をフィルタから取り除き、取り除いた油分及び水分をドレンとして放出する再生動作を行うのであるが、その場合、再生動作を実行する時間、フィルタを通過させる再生空気量等といった実行条件に過不足が生じていた、といった課題を解決するものである。
ここで、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定するように構成されている」、との発明特定事項を有するものであるが、前記請求項1に係る発明においては、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量」をどのように「設定する」のかは特定されておらず、単に、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定」するにすぎない。
そして、単に、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定」するだけで、「設定」された「再生空気量」が、フィルタを通過させる再生空気量等といった実行条件に過不足が生じないものとなるということはできないから、前記請求項1に係る発明は、従来技術と同様に、本件課題を解決しないものも包含するものといえる。
したがって、前記請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえないのであり、設定登録時の特許請求の範囲の請求項5及び7~10に係る発明について検討しても事情は同じであるから、設定登録時の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号所定の規定を満たさない。
第6 特許異議申立理由及び取消理由についての当審の判断
事案に鑑み、前記第4の特許異議の申立て理由及び第5の取消理由についてまとめて判断する。
1 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について
(1) 明確性要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が明確性要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきであるので、以下、この観点に立って検討する。
(2) 本件特許明細書の記載事項
本件特許明細書の発明の詳細な説明及び図面には、以下のア~サの記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
ア 「【0001】
本開示は、空気供給システム、空気供給システムの制御方法、及び空気供給システムの制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック、バス、建機等の車両においては、コンプレッサから送られる圧縮空気を利用して、ブレーキシステム及びサスペンションシステム等を含む、空気圧システムが制御されている。この圧縮空気には、大気中に含まれる水分及びコンプレッサ内を潤滑する油分等、液状の不純物が含まれている。水分及び油分を多く含む圧縮空気が空気圧システム内に入ると、錆の発生及びゴム部材の膨潤等を招き、作動不良の原因となる可能性がある。このため、コンプレッサの下流には、圧縮空気中の水分及び油分等の不純物を除去する圧縮空気乾燥装置が設けられている。
【0003】
圧縮空気乾燥装置は、乾燥剤を含むフィルタと各種バルブとを備えている。圧縮空気乾燥装置は、圧縮空気をフィルタに通過させて圧縮空気から水分等を除去する除湿動作を行う。除湿動作によって生成された圧縮乾燥空気は、エアタンクに貯留される。また、圧縮空気乾燥装置の清浄機能は、圧縮乾燥空気の供給量に応じて低下する。このため、圧縮空気乾燥装置は、フィルタに吸着された油分及び水分をフィルタから取り除き、取り除いた油分及び水分をドレンとして放出する再生動作を行う(例えば、特許文献1参照)。
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば再生動作を実行する時間、フィルタを通過させる再生空気量等といった実行条件は、一定であるように設定されるか、又はコンプレッサから送出される圧縮空気量等に応じて決定されている。しかし、いずれの場合も、過不足が生じることが発明者らによって判明している。再生時間や再生空気量が不足すると、乾燥剤の水分捕捉能力が本来の程度まで復帰せず、圧縮空気乾燥装置から送出される空気に含有される水分量が多くなる可能性がある。一方、再生時間や再生空気量が過剰となる場合には、本来、空気圧システムに供給するものであるエアタンク内の圧縮乾燥空気を無駄に消費することにつながる。圧縮乾燥空気は、エンジン等の回転駆動源によって駆動されるコンプレッサによって生成されるため、圧縮乾燥空気の過剰な消費は回転駆動源の負荷を増加させ、車両の燃費を低下させることとなる。
【0006】
本開示の目的は、空気供給システムの除湿性能を維持しつつ、空気供給システムによる圧縮乾燥空気の消費量を低減することにある。」
イ 「【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する空気供給システムは、圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記コンプレッサの稼働状態に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定するように構成されている。
・・・
【0011】
上記空気供給システムについて、前記制御装置は、一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されてよい。
【0012】
上記構成によれば、コンプレッサの稼働率が高く、貯留部から空気乾燥回路以外の装置への圧縮乾燥空気の供給の度合いが大きい場合には、再生空気量を小さくすることにより、貯留部に貯留された圧縮乾燥空気の消費を抑制し、空気乾燥回路以外の装置への圧縮乾燥空気の供給を優先させることができる。また、コンプレッサの稼働率が低く、貯留部から空気乾燥回路以外の装置への圧縮乾燥空気の供給の度合いが小さい場合にはフィルタの清浄化を優先させることができる。
・・・
【0017】
上記課題を解決する空気供給システムは、圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定するように構成されている。
・・・
【0021】
上記空気供給システムについて、前記制御装置は、前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されてよい。
【0022】
上記構成によれば、空気の温度が低く、飽和水蒸気量が小さい場合には再生空気量を小さくすることにより、貯留部に貯留された圧縮乾燥空気の消費を抑制し、空気乾燥回路以外の装置への圧縮乾燥空気の供給を優先させることができる。また、空気の温度が高く、飽和水蒸気量が大きい場合には再生空気量を大きくしてフィルタの清浄化を優先させることができる。」
ウ 「【0025】
(第1実施形態)
図1~図6を参照して、空気供給システムの第1実施形態について説明する。・・・
【0026】
<空気供給システム10>
図1を参照して空気供給システム10について説明する。空気供給システム10は、コンプレッサ4と、空気乾燥回路11と、ECU(Electronic Control Unit)80とを備える。なお、ECU80が、制御装置、除湿動作実行部、再生動作実行部、設定部として機能する。
・・・
【0029】
コンプレッサ4の状態は、ECU80からの指令に基づいて、空気を圧縮して送出する稼働状態(負荷運転)と、空気の圧縮を行わない非稼働状態(空運転)との間で切り替えられる。コンプレッサ4は、エンジン等の回転駆動源から伝達された動力で稼働する。
【0030】
空気乾燥回路11は、いわゆる、エアドライヤである。空気乾燥回路11は、ECU80に接続され、負荷運転中のコンプレッサ4から送られた圧縮空気から該圧縮空気に含まれる水分等を除去する。空気乾燥回路11は、乾燥された後の圧縮空気(以下、圧縮乾燥空気)を、供給回路12に供給する。供給回路12に対し供給された圧縮乾燥空気は、エアタンク30に貯留される。
【0031】
エアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気は、車両に搭載されたブレーキシステム等の空気圧システムに供給される。例えば、車両が降坂路又は市街地を走行する状況等、ブレーキが作動される頻度が高い場合には、エアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気の消費量が多くなる。逆に、ブレーキが作動される頻度が低い場合には、エアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気の消費量が少なくなる。
・・・
【0033】
空気乾燥回路11は、ケース11A(図2A参照)の内部等にフィルタ17を備えている。フィルタ17は、コンプレッサ4と供給回路12とを接続する空気供給通路18の途中に設けられている。フィルタ17は、乾燥剤を含む。また、フィルタ17は、乾燥剤とは別に、油分を捕捉する油分捕捉部を含む。油分捕捉部は、ウレタンフォーム等の発泡体、多数の通気孔を有する金属材、ガラス繊維フィルタ等、空気を通過させながら油分を捕捉できるものであればよい。
【0034】
フィルタ17は、コンプレッサ4から送出された圧縮空気を乾燥剤に通過させることによって、圧縮空気に含まれる水分を圧縮空気から除去して圧縮空気を乾燥させる。また、油分捕捉部は、圧縮空気に含まれる油分を捕捉して圧縮空気を清浄化する。フィルタ17を通過した圧縮空気は、下流チェックバルブ19を介して供給回路12へ供給される。下流チェックバルブ19は、フィルタ17側を上流、供給回路12側を下流としたとき、上流から下流への空気の流れのみを許容する。・・・
・・・
【0046】
下流チェックバルブ19と供給回路12との間には、湿度センサ51及び温度センサ52が設けられている。・・・ECU80は、湿度センサ51及び温度センサ52から入力された湿度及び温度に基づいて圧縮乾燥空気の湿潤状態を判定する。
【0047】
さらに下流チェックバルブ19と供給回路12との間には、圧力センサ53が設けられている。・・・
【0048】
<空気乾燥回路11の動作説明>
図2A~図2Fに示すように、空気乾燥回路11は、少なくとも第1動作モード~第6動作モードを含む、複数の動作モードを有する。
【0049】
(第1動作モード)
図2Aに示すように、第1動作モードは、通常の除湿動作(ロード運転)を行うモードである。・・・第1動作モードでは、コンプレッサ4から圧縮空気が供給されているとき(図において「ON」と記載)、フィルタ17で水分等が除去され、供給回路12に対し圧縮空気が供給される。
【0050】
(第2動作モード)
図2Bに示すように、第2動作モードは、空気乾燥回路11内の圧縮乾燥空気を、フィルタ17に通過させてフィルタ17を浄化するパージ動作を行うモードである。・・・
【0051】
(第3動作モード)
図2Cに示すように、第3動作モードは、フィルタ17を再生する再生動作を行うモードである。・・・これにより、第3動作モードでは、エアタンク30内の圧縮乾燥空気を、供給回路12及びバイパス流路20を介して、フィルタ17に通過させることができる。そのため、フィルタ17を浄化する効果が第2動作モードよりも高い。また、第3動作モードでも、フィルタ17及び空気供給通路18の空気圧が大気圧に開放される。
【0052】
(第4動作モード)
図2Dに示すように、第4動作モードは、オイルカット動作を行うモードである。第4動作モードでは、コンプレッサ4を稼働させながら、コンプレッサ4から送られた油分過多な空気を、フィルタ17を通過させることなくドレン排出口27から排出する。・・・
【0053】
(第5動作モード)
図2Eに示すように、第5動作モードは、パージ無しのコンプレッサ停止動作を行うモードである。・・・
【0054】
(第6動作モード)
図2Fに示すように、第6動作モードは、与圧処理のためにアシスト動作を行うモードである。・・・
【0055】
(実行条件の設定)
次に図3を参照して、再生動作(第3動作モード)で消費される空気量(以下、再生空気量という)の決定方法について説明する。ECU80は、制御プログラムを実行することにより、再生空気量Amを、以下の式(1)にしたがって算出する。なお、再生空気量Amは、体積単位で算出されても質量単位で算出されてもよい。なお、この式(1)の右辺(又は左辺)に単位を変換する各種の係数を用いてもよい。
【0056】
再生空気量Am
=標準再生空気量Am1-補正単位空気量Am2×過不足係数α…(1)
なお、「標準再生空気量Am1」は、「補正単位空気量Am2×過不足係数α」よりも大きくなるように設定されており、再生空気量Amが「0」を超えるようになっている。標準再生空気量Am1は、基本的に空気乾燥回路11の仕様(スペック)で決められる空気量であるが、エアタンク30の圧力の上限値であるカットアウト圧に応じて変更される。上述したようにカットアウト圧は、再生動作及びパージ動作が開始される条件となる圧力であり、コンプレッサ4の稼働率が高いほど、高い値が設定され、記憶部80Aに記憶されている。・・・本実施形態では、カットアウト圧を、コンプレッサ4の稼働率に応じて3段階に設定しているが、これを2段階に設定してもよく、4つ以上の段階で設定してもよい。又は、コンプレッサ4の稼働率に応じて、カットアウト圧を連続的に変化させてもよい。
・・・
【0058】
図3Aは、標準再生空気量Am1を、限界通気量及びカットアウト圧に応じて設定したマップ100である。このマップ100は、記憶部80Aに記憶されている。マップ100の横軸は限界通気量であり、縦軸は標準再生空気量Am1である。図では単位は体積(リットル)であるが、単位が質量であってもよい。限界通気量は、空気乾燥回路11を通過する空気量の限界を示す値であり、空気乾燥回路11(エアドライヤ)の仕様に応じて決まる量である。標準再生空気量Am1は、限界通気量が大きくなるに伴い小さくなり、限界通気量が小さくなるに伴い大きくなる。また、標準再生空気量Am1は、限界通気量を一定としたとき、カットアウト圧が高くなるに伴い小さくなり、カットアウト圧が低くなるに伴い大きくなる。つまり、カットアウト圧にはコンプレッサ4の稼働率が高くなるに伴い高い値が設定されているので、標準再生空気量Am1は、コンプレッサ4の稼働率が高くなるに伴い小さくなるといえる。上述したように、コンプレッサ4の稼働率が高い場合には、ブレーキシステム等の空気圧システムによる圧縮乾燥空気の消費量が比較的多い状況下にあると推定される。このため、コンプレッサ4の稼働率が高い場合には、標準再生空気量Am1を小さくして、空気圧システムへ圧縮乾燥空気を供給することを優先する。また、標準再生空気量Am1は、コンプレッサ4の稼働率が低くなるに伴い大きくなる。稼働率が低い場合には、ブレーキシステム等の空気圧システムによる圧縮乾燥空気の消費量が比較的少ない状況下にあると推定される。このため、コンプレッサ4の稼働率が低い場合には、標準再生空気量Am1を大きくして、1回の再生動作あたりのフィルタ17の清浄効果を高める。
【0059】
図3Bは、カットアウト圧に応じた補正単位空気量Am2と限界通気量との関係を示しているマップ101である。このマップ101は、記憶部80Aに記憶されている。横軸が限界通気量、縦軸が補正単位空気量Am2である。図では単位は体積(リットル)であるが、単位が質量であってもよい。補正単位空気量Am2は、標準再生空気量Am1と同様に限界通気量が大きくなるほど小さくなる一方で、限界通気量を一定としたとき、カットアウト圧が高くなるに伴い大きくなり、カットアウト圧が低くなるに伴い小さくなる。
【0060】
過不足係数α(再生過不足係数)は、補正単位空気量Am2に乗算される係数であり、負の値、正の値又は「0」に設定されている。この過不足係数αは、エアタンク30内に貯留された圧縮乾燥空気の湿潤状態の傾向に基づき設定されるものである。再生動作の過不足は、フィルタ17によって捕捉された水分量によって判定することができるが、圧縮空気に含まれる水分量は空気の温度や湿度によって変化するため、フィルタ17によって捕捉された水分量を、再生動作の実行時間やフィルタ17を通過した空気量だけを用いて推定するのは困難である。また、フィルタ17によって捕捉された水分量を直接的に計測することも困難である。本実施形態のように、貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態に基づき再生動作の過不足を判定することによって、再生動作の過不足を間接的ではあっても適切に判定することができる。
【0061】
過不足係数αの根拠となる湿潤状態の傾向は、前回行われた再生動作から次の再生動作を行う前までの期間を対象として判定される。また、湿潤状態を判定するための指標は限定されないが、本実施形態ではエアタンク30内の圧縮乾燥空気に含有される水分量(以下、含有水分量)の飽和度を算出し、前回の再生動作の終了時における含有水分量の飽和度から今回の含有水分量の飽和度を減算する。前回の再生終了時よりも今回の再生終了時の方が含有水分量の飽和度が高い場合、すなわち圧縮乾燥空気の湿潤状態が高まる傾向にある場合には、フィルタ17が捕捉している水分量が増加傾向にあると判定される。このため、上記式(1)において、過不足係数αは、「0」未満の負の値とされる。過不足係数αが負の値である場合には、再生空気量は標準再生空気量よりも大きくなるように補正される。
【0062】
一方、前回の再生終了時よりも今回の再生終了時の方が含有水分量の飽和度が低い場合、すなわち圧縮乾燥空気の湿潤状態が低下する傾向にある場合には、フィルタ17が捕捉している水分量が減少傾向にあると判定される。このため、過不足係数αは、「0」よりも大きい正の値とされ、再生空気量は標準再生空気量よりも小さくなるように補正される。また、圧縮乾燥空気の湿潤状態が適した状態にあると判定した場合には、過不足係数は「0」とされ、再生空気量Amは標準再生空気量Am1から補正されない。
【0063】
図4は、過不足係数αの一例を示す過不足係数情報200である。過不足係数情報200は、記憶部80Aに記憶されている。過不足係数情報200は、過不足条件200A、過不足係数200Cを含んでいる。状態200Bは、過不足条件200Aが示す状態を便宜的に示したものであり、省略可能である。過不足条件200Aには、再生過不足度の範囲が設定されている。再生過不足度は、エアタンク30内の圧縮乾燥空気に含まれる水分の飽和度が、増加傾向にあるか減少傾向にあるかを示す指標である。
【0064】
過不足係数200Cは、再生過不足度に重み付け係数を乗算したものである。過不足係数103は、再生過不足度の範囲である過不足条件200Aにそれぞれ対応している。なお、図4では重み付け係数を正の整数としているが、正の整数でなくてもよい。
【0065】
過不足係数情報200において、再生空気量が大幅に不足している場合、すなわち含有水分量が大きい場合は、再生過不足度が、例えば「-1」以下であり、負の値であって且つ絶対値が大きい。この場合には、重み付け係数も、例えば「2」等の相対的に大きい値が設定されている。また、「大幅に不足」とまではいえなくとも再生空気量が不足している場合には、再生過不足度は、例えば「-1」よりも大きく「-0.5」よりも小さい範囲であって、「大幅に不足」よりも絶対値が小さい。また、重み付け係数の値も、例えば「1」など、「大幅に不足」よりも小さい値が設定されている。
【0066】
また、再生空気量が大幅に過剰である場合、すなわち含有水分量が小さい場合は、再生過不足度が、例えば「1」以上であり、正の値であって且つ絶対値が大きい。この場合には、重み付け係数にも例えば「2」等の相対的に大きい値が設定されている。また、「大幅に過剰」とまではいえなくとも再生空気量が過剰である場合には、再生過不足度は、例えば「0.5」以上であり「1」よりも小さい範囲であって、「大幅に過剰」よりも絶対値が小さい。また、重み付け係数の値も、例えば「1」など、「大幅に不足」よりも小さい値が設定されている。
【0067】
再生過不足度が、例えば「-0.5」以上「0.5」未満の範囲である場合には、過不足係数には「0」が設定されている。・・・
・・・
【0082】
次に図7を参照して、再生空気量を決定するための処理について説明する。なお、ECU80は、再生動作終了時から、次の再生動作開始時までを1サイクルと定義する。そして、1サイクルにおける所定のタイミングで再生空気量を更新する。なお、再生空気量の更新タイミングは特に限定されない。例えば、再生空気量の更新が、1サイクルの開始時に行われてもよいし、1サイクルの終了時に行われてもよいし、1サイクルの開始時と終了時との間に行われてもよいし、例えば1サイクルの平均時間よりも短い期間等、所定の期間毎に行われてもよい。
【0083】
ECU80は、再生空気量の更新を行うか否かを判断する(ステップS110)。例えば、ECU80は、新たなサイクルの所定のタイミングに到達したか否かを判断する。ECU80は、所定のタイミングに到達していないと判断すると(ステップS110:NO)、処理を終了する。
【0084】
ECU80は、再生空気量を更新すると判断すると(ステップS110:YES)、再生過不足度を算出する(ステップS111)。再生過不足度は、上述したように、タンク空気水分飽和度の変化に基づき算出されてもよい。タンク空気水分飽和度は、湿度センサ51により検出された湿度、温度センサ52により検出された温度等から算出することができる。
【0085】
ECU80は、再生過不足度を算出すると、過不足係数情報200を用いて、過不足係数を取得する(ステップS112)。さらに、ECU80は、再生動作の開始圧力であるカットアウト圧を取得する(ステップS113)。また、ECU80は、取得したカットアウト圧に基づいて、マップ100を用いて標準再生空気量を取得するとともに(ステップS114)、マップ101を用いて補正単位空気量を取得する(ステップS115)。そして、ECU80は、標準再生空気量、補正単位空気量、過不足係数を用いて、上記した式(1)にしたがって再生空気量を算出する(ステップS116)。ここで算出された再生空気量は、図6のステップS101で用いられる。ECU80は、ここで算出された再生空気量を用いて再生動作を行う。
【0086】
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)ECU80は、コンプレッサ4の稼働状態に基づき、再生動作で消費される再生空気量を設定する。コンプレッサ4は空気乾燥回路11以外の空気圧システムへの圧縮乾燥空気の供給状態に応じて駆動されるので、再生空気量を変更することにより、エアタンク30から空他の空気圧システムへの圧縮乾燥空気の供給及びフィルタ17の清浄化のいずれかを優先することができる。」
エ 「【0090】
(第2実施形態)
図8及び図9に従って、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、標準再生空気量及び補正単位空気量を空気乾燥回路11の状態に応じて変更して、再生空気量を算出する点で、第1実施形態と共通している。また、第1実施形態では、カットアウト圧に応じて標準再生空気量及び補正単位空気量を変更したが、第2実施形態では、圧縮乾燥空気の温度に応じて標準再生空気量及び補正単位空気量を変更する点で第1実施形態と異なる。そこで、以下では、主に第1実施形態と相違する構成について詳細に説明することとし、説明の便宜上、同様の構成については詳細な説明を割愛する。
【0091】
図8Aは、標準再生空気量Am1を、限界通気量及び温度に応じて設定したマップ110であり、記憶部80Aに記憶されている。マップ110は、第1実施形態のマップ100(図3参照)がカットアウト圧に応じて標準再生空気量を決定しているのに対し、温度に応じて標準再生空気量を決定している点が異なる。温度には、温度センサ52により検出された値を用いることができる。又は、空気乾燥回路11の入口側であってフィルタ17の上流側に温度センサを設け、その温度センサが検出した温度を用いてもよい。標準再生空気量Am1は、限界通気量を一定としたとき、温度が低くなるに伴い小さくなり、温度が高くなるに伴い大きくなる。つまり、温度が高い場合には、空気の飽和水蒸気量(飽和水蒸気圧)が大きくなるため、圧縮空気に含まれる水分量も多くなる傾向にある。したがって、フィルタ17に捕捉される水分量も多くなることが想定されるため、標準再生空気量Am1を大きくして、1回の再生動作でのフィルタ17から水分を除去する効果を高める。また、温度が低い場合には、空気の飽和水蒸気量(飽和水蒸気圧)が小さくなるため、圧縮空気に含まれる水分量が少なくなる傾向にある。したがって、フィルタ17に捕捉される水分量も少なくなることが想定されるため、標準再生空気量Am1を小さくすることによって、1回の再生動作により消費される圧縮乾燥空気の量を低減する。
【0092】
図8Bは、補正単位空気量Am2を、限界通気量及び温度に応じて設定したマップ111であり、記憶部80Aに記憶されている。補正単位空気量Am2は、標準再生空気量Am1から減算される値であるため、標準再生空気量Am1と同様に限界通気量が大きくなるほど小さくなる一方で、限界通気量を一定としたとき、温度が高くなるに伴い小さくなり、温度が低くなるに伴い大きくなる。
【0093】
次に図9を参照して、再生空気量を決定するための処理について説明する。第2実施形態における再生空気量を決定するための処理は、第1実施形態の処理のステップS110~S112、ステップS114~ステップS116と共通とするので詳細な説明を省略する。
【0094】
ステップS120において、ECU80は、温度センサ52が検出した圧縮乾燥空気の温度を取得する(ステップS120)。そして、ECU80は、取得した温度と、マップ110を用いて、標準再生空気量を取得する(ステップS114)。さらに、ECU80は、取得した温度とマップ111とを用いて、補正単位空気量(ステップS115)を取得する。そして、ECU80は、標準再生空気量、補正単位空気量、過不足係数とを用いて、再生空気量を算出する(ステップS116)。
【0095】
第2実施形態では、以下の効果を得ることができる。
(5)ECU80は、圧縮空気の温度又は圧縮乾燥空気の温度に応じて、再生動作で消費される再生空気量を設定する。圧縮空気の温度又は圧縮乾燥空気の温度が上昇すると、空気に含まれる水分量も多くなるため、空気に含まれる水分量の多さに応じて再生空気量を変更することにより、エアタンク30から空気圧システムへの圧縮乾燥空気の供給、及びフィルタ17の清浄化のいずれかを優先することができる。」
オ 「【図1】
[図:0001432080000001.jpg]
」
カ 「【図2】
[図:0001432080000002.jpg]
」
キ 「【図3】
[図:0001432080000003.jpg]
」
ク 「【図4】
[図:0001432080000004.jpg]
」
ケ 「【図7】
[図:0001432080000005.jpg]
」
コ 「【図8】
[図:0001432080000006.jpg]
」
サ 「【図9】
[図:0001432080000007.jpg]
」
(3) 「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率」について
ア 前記第4の1(1)の特許異議の申立て理由は、総じて、「再生空気量を設定」する際の「一定期間」及び「一定期間内」がどのような期間及び期間内であるかが不明確であり、「コンプレッサの稼働率」の算出方法が不明確である、というものである。
イ 始めに、「一定期間」について検討すると、「一定期間」との発明特定事項自体、「一定」の「期間」を意味することが明確である。
また、本件特許明細書の段落【0082】(前記(2)ウ)の記載によれば、本件発明における「再生空気量」を決定するための処理では、ECUは、再生動作終了時から、次の再生動作開始時までを1サイクルと定義し、1サイクルにおける所定のタイミングで再生空気量を更新するものであり、再生空気量の更新タイミングは特に限定されず、例えば、再生空気量の更新が、1サイクルの開始時に行われてもよいし、1サイクルの終了時に行われてもよいし、1サイクルの開始時と終了時との間に行われてもよいし、例えば1サイクルの平均時間よりも短い期間等、所定の期間毎に行われてもよいものである。
そうすると、本件特許明細書の記載に接した当業者は、「再生空気量」が、例えば再生動作終了時から次の再生動作開始時までを1サイクルとしたとき、当該1サイクルの期間内のいずれかのタイミングで設定されることを理解できるから、「再生空気量を設定」する際の「一定期間」が、前記1サイクルの期間であり、「一定期間内」が、前記1サイクル内の所定の期間内であり、「再生空気量」は、前記1サイクルの所定の期間内に「設定」されるものと理解することができる。
してみれば、「一定期間」及び「一定期間内」の意味が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
ウ 次に、「コンプレッサの稼働率」について検討すると、本件特許明細書には、「コンプレッサの稼働率」の具体的な算出方法は記載されていない。
してみれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、「コンプレッサの稼働率」は、当業者が通常用いる算出方法で算出されるものであると理解する。
ここで、仮に、「コンプレッサの稼働率」の算出方法が複数種類存在し、算出方法の相違により算出された「コンプレッサの稼働率」の数値が異なるとしても、また、「一定期間」の選び方が異なると、算出された「コンプレッサの稼働率」の数値が異なるとしても、本件発明2は、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくする」というように、「コンプレッサの稼働率」に対してどのように「再生空気量」を変化させるかを特定するもので、算出された「コンプレッサの稼働率」の数値を特定するものではないから、本件発明2が不明確となるものではない。
エ 前記イ及びウによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、「一定期間」が、例えば再生動作終了時から次の再生動作開始時までを1サイクルとしたとき、当該1サイクルの期間を意味し、「一定期間内」が、前記1サイクルの所定の期間内を意味するものと理解でき、「コンプレッサの稼働率」は、当業者が通常用いる算出方法で算出されるものであると理解できるから、本件発明2における「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率」の意味が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめてみれば、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合する。
更に、本件発明3、4、7、9、11及び12について検討しても事情は同じである。
(4) 「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくする」について
ア 前記第4の1(2)の特許異議の申立て理由は、総じて、本件発明2の「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い」、「低い」、をどのような基準により判断するのかが明らかでないし、「前記再生空気量を小さく」する、「大きくする」、が何と比較して「小さく」する、「大きくする」ことをいうのかが明らかでない、というものである。
イ そこで、これらの意味について検討すると、本件特許明細書の段落【0084】~【0085】、【図3】、【図7】(前記(2)ウ、キ、ケ)の記載によれば、「再生空気量」を決定するための処理は、ECU80が「再生空気量」を更新すると判断すると(ステップS110:YES)、再生過不足度を算出する(ステップS111)のであるが、再生過不足度はタンク空気水分飽和度の変化に基づき算出されてもよいものであり、再生過不足度を算出すると、過不足係数情報200を用いて過不足係数を取得し(ステップS112)、更に、再生動作の開始圧力であるカットアウト圧を取得する(ステップS113)ものである。
また、ECU80は、取得したカットアウト圧に基づいて、マップ100を用いて標準再生空気量を取得するとともに(ステップS114)、マップ101を用いて補正単位空気量を取得し(ステップS115)、標準再生空気量、補正単位空気量、過不足係数を用いて、段落【0056】の式(1)(前記(2)ウ。以下、「式(1)」という。)にしたがって「再生空気量」を算出する(ステップS116)ものであり、ここで算出された「再生空気量」を用いて再生動作を行うものである。
ここで、本件特許明細書の段落【0056】(前記(2)ウ)の記載によれば、カットアウト圧は、再生動作及びパージ動作が開始される条件となる圧力であり、コンプレッサ4の稼働率が高いほど高い値が設定されるものであり、コンプレッサ4の稼働率に応じて、カットアウト圧を連続的に変化させてもよいものである。
ウ 前記イによれば、「再生空気量」は、「コンプレッサの稼働率」が高いほど高い値が設定されるカットアウト圧に基づいて標準再生空気量を取得し、前記標準再生空気量と、補正単位空気量及び過不足係数に基づいて式(1)により算出されるものであるから、本件特許明細書の記載に接した当業者は、「再生空気量」を算出する際の「コンプレッサの稼働率」の「高い」、「低い」は、一定の基準に基づいて判断されるものではなく、「コンプレッサの稼働率」の相対的な変動を意味するものであると理解できる。
また、「再生空気量」は、前記「コンプレッサの稼働率」に基づいて式(1)により算出されるものといえるから、「再生空気量」を変化させる際の「小さく」する、「大きくする」も、一定の比較対象に基づいて判断されるものではなく、「コンプレッサの稼働率」に基づいて算出される「再生空気量」の相対的な変動を意味するものであると理解できる。
エ 前記ウによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、「コンプレッサの稼働率」の「高い」、「低い」及び「前記再生空気量を小さく」する、「大きくする」は、いずれも、相対的な変動を意味するものであると理解できるから、本件発明2における「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくする」の意味が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめてみれば、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合する。
更に、本件発明3~4、11及び12について検討しても事情は同じである。
(5) 「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い場合には、前記再生空気量を大きくし、前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が低い場合には、前記再生空気量を小さくする」について
ア 前記第4の1(3)の特許異議の申立て理由は、総じて、本件発明3の「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い」、「低い」、をどのような基準により判断するのかが明らかでないし、「前記再生空気量を小さく」する、「大きくする」、が何と比較して「小さく」する、「大きくする」ことをいうのかが明らかでない、というものである。
イ そこで、これらの意味について検討すると、「再生空気量」を決定するための処理は、前記(4)イに記載したとおりであって、標準再生空気量、補正単位空気量及び過不足係数に基づいて、式(1)により算出するのであるが、本件特許明細書の段落【0061】、【0062】(前記(2)ウ)の記載によれば、過不足係数の根拠となる「湿潤状態」の傾向は、前回行われた再生動作から次の再生動作を行う前までの期間を対象として判定されるものであり、また、「湿潤状態」を判定するための指標は、エアタンク内の圧縮乾燥空気に含有される水分量の飽和度を算出し、前回の再生動作の終了時における含有水分量の飽和度から今回の含有水分量の飽和度を減算し、前回の再生終了時よりも今回の再生終了時の方が含有水分量の飽和度が高い場合、すなわち圧縮乾燥空気の「湿潤状態」が高まる傾向にある場合には、フィルタが捕捉している水分量が増加傾向にあると判定され、前回の再生終了時よりも今回の再生終了時の方が含有水分量の飽和度が低い場合、すなわち圧縮乾燥空気の湿潤状態が低下する傾向にある場合には、フィルタが捕捉している水分量が減少傾向にあると判定されるものである。
ウ 前記イによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、例えば、エアタンク内の圧縮乾燥空気に含まれる水分の飽和度が、本件発明3の「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標」に相当するものであって、「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標」の「高い」、「低い」は、一定の基準に基づいて判断されるものではなく、前回の再生動作の終了時の指標と比較した、相対的な変動として判断されることを理解できる。
また、「再生空気量」は、「湿潤状態」の傾向を根拠とする「過不足係数」を含む式(1)により算出されるものといえるから、「再生空気量」を変化させる際の「小さく」する、「大きくする」も、一定の比較対象に基づいて判断されるものではなく、「貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標」に基づいて算出される「再生空気量」の相対的な変動を意味するものであると理解できる。
エ 前記ウによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、「貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標」の「高い」、「低い」及び「前記再生空気量を小さく」する、「大きくする」は、いずれも、相対的な変動を意味するものであると理解できるから、本件発明3における「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い場合には、前記再生空気量を大きくし、前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が低い場合には、前記再生空気量を小さくする」の意味が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめてみれば、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合する。
更に、本件発明11について検討しても事情は同じである。
(6) 「前記制御装置は、前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記貯留部の圧力であって前記再生動作を開始するための上限圧を高く設定し、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には前記上限圧を低く設定し、前記上限圧が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記上限圧が低い場合には前記再生空気量を大きくするように構成されている」について
ア 前記第4の1(4)の特許異議の申立て理由は、本件発明4の「貯留部の圧力」とは、「貯留部」が配置されている場所における大気圧のことを意味しているのか、「貯留部」内の圧力を意味しているのか、そのほかの圧力を意味しているのかが明らかでなく、「前記再生動作を開始するための上限圧」とは、「上限圧」以下の圧力のときに「再生動作を開始する」のか、「上限圧」以上の圧力のときに「再生動作を開始する」のかが明らかでなく、「前記コンプレッサの稼働率が高い」、「低い」とは、どのような基準により「前記コンプレッサの稼働率が高い」、「低い」と判断しているのかが明らかでなく、「前記貯留部の圧力であって前記再生動作を開始するための上限圧を高く設定し」、「低く設定し」とは、「上限圧」を何と比較して「高く設定」し、又は「低く設定」するのかが明らかでなく、「前記上限圧が高い場合」、「低い場合」、との発明特定事項は、どのような基準により「前記上限圧が高い」、「低い」と判断しているのかが明らかでない、というものである。
イ そこで、これらの意味について検討すると、本件特許明細書の段落【0056】、【図1】(前記(2)ウ、オ)の記載によれば、前記式(1)の標準再生空気量Am1は、エアタンク30の圧力の上限値であるカットアウト圧に応じて変更されるものであり、カットアウト圧は、再生動作及びパージ動作が開始される条件となる圧力であり、コンプレッサ4の稼働率が高いほど、高い値が設定されるものである。
そして、前記エアタンク30は、本件発明4の「貯留部」に相当し、前記カットアウト圧は、本件発明4の「前記再生動作を開始するための上限圧」に相当するから、本件特許明細書の記載に接した当業者は、「貯留部の圧力」とは、「貯留部」内の圧力を意味しており、「前記再生動作を開始するための上限圧」とは、「再生動作を開始する」圧力であることを理解できる。
また、前記(4)ウに記載したのと同様の理由により、当業者は、「コンプレッサの稼働率」の「高い」、「低い」、「上限圧」を「高く設定」、「低く設定」、及び、「上限圧が高い場合」、「低い場合」とは、いずれも、一定の基準に基づいて判断されるものではなく、の相対的な変動を意味するものであると理解できる。
ウ 前記イによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、「貯留部の圧力」及び「前記再生動作を開始するための上限圧」の意味を理解できるし、「前記コンプレッサの稼働率が高い」、「低い」、「上限圧」を「高く設定」、「低く設定」、及び、「前記上限圧が高い場合」、「低い場合」は、いずれも、相対的な変動を意味するものであると理解できるから、本件発明4における「前記制御装置は、前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記貯留部の圧力であって前記再生動作を開始するための上限圧を高く設定し、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には前記上限圧を低く設定し、前記上限圧が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記上限圧が低い場合には前記再生空気量を大きくするように構成されている」の意味が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめてみれば、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合する。
更に、本件発明12について検討しても事情は同じである。
(7) 「前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくする」について
ア 前記第4の1(5)の特許異議の申立て理由は、本件発明6の「前記温度が低い場合」、「高い場合」が、どのような基準により「前記温度が低い」、「前記温度が高い」と判断しているのかが明らかでなく、「前記再生空気量を小さく」する、「大きくする」とは、「再生空気量」を何と比較して小さく、又は大きくするのかが明らかでない、というものである。
イ そこで、これらの意味について検討すると、本件特許明細書の段落【0090】~【0092】、【図8】、【図9】(前記(2)エ、コ、サ)の記載によれば、標準再生空気量は温度に応じても決定されるものであり、標準再生空気量は、限界通気量を一定としたとき、温度が低くなるに伴い小さくなり、温度が高くなるに伴い大きくなるものである。
また、補正単位空気量は、限界通気量を一定としたとき、温度が高くなるに伴い小さくなり、温度が低くなるに伴い大きくなるものである。
そして、温度に基づいて再生空気量を決定するための処理は、前記ステップS110~S112、ステップS114~ステップS116(前記(4)イ)と共通とするものであり、ステップS120において、ECU80は、温度センサ52が検出した圧縮乾燥空気の温度を取得し、ECU80は、取得した温度と、マップ110を用いて、標準再生空気量を取得し(ステップS114)、取得した温度とマップ111とを用いて、補正単位空気量(ステップS115)を取得して、標準再生空気量、補正単位空気量、過不足係数とを用いて、「再生空気量」を算出する(ステップS116)ものであり、ここで算出された「再生空気量」を用いて再生動作を行うものである。
ウ 前記イによれば、「再生空気量」は、温度が低くなるに伴い小さくなり、温度が高くなるに伴い大きくなる標準再生空気量や、温度が高くなるに伴い小さくなり、温度が低くなるに伴い大きくなる補正単位空気量に基づいて、式(1)により算出されるものであるから、本件特許明細書の記載に接した当業者は、「再生空気量」を算出する際の「温度」の「高い」、「低い」は、一定の基準に基づいて判断されるものではなく、「温度」の相対的な変動を意味するものであると理解できる。
また、「再生空気量」は、前記「温度」に基づいて算出されるのであるから、「再生空気量」を変化させる際の「小さく」する、「大きくする」も、一定の比較対象に基づいて判断されるものではなく、「温度」の相対的な変動に応じて算出される「再生空気量」の相対的な変動を意味するものであると理解できる。
エ 前記ウによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、「温度」の「高い」、「低い」及び「前記再生空気量を小さく」する、「大きくする」は、いずれも、相対的な変動を意味するものであると理解できるから、本件発明6における「前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくする」の意味が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめてみれば、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合する。
(8) 申立人意見書の主張について
ア 明確性要件違反についての申立人意見書における主張は、概略、以下のとおりである。
本件発明3及び11には、「圧縮乾燥空気の湿潤状態」との記載があるが、乾燥している空気である圧縮空気の「湿潤状態」とは、そもそも乾燥しているのかいないのか、どのような状態をいうのかが不明である。
そして、明瞭でない記載である「湿潤状態」について、本件特許明細書には、「ECU80は、湿度センサ51及び温度センサ52から入力された湿度及び温度に基づいて圧縮乾燥空気の湿潤状態を判定する。」(段落【0046】。前記(2)ウ。)との記載があり、仮に、特許請求の範囲に「湿潤状態」という明瞭でない記載を許すのであれば、特許請求の範囲において「ECU80は、湿度センサ51及び温度センサ52から入力された湿度及び温度に基づいて圧縮乾燥空気の湿潤状態を判定する。」ことが特定されるべきである。
したがって、本件発明2~4及び6~12に係る特許は、特許法第36条第6項第2号所定の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
イ 以下、前記アの主張について検討すると、エアタンク内の圧縮乾燥空気に含まれる水分の飽和度が、本件発明3の「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標」に相当するものであることは、前記(5)ウに記載したとおりであるから、本件特許明細書の記載に接した当業者は、乾燥している空気である圧縮空気の「湿潤状態」とは、例えばエアタンク内の圧縮乾燥空気に含有される水分量の飽和度をいうことを理解できるので、前記「湿潤状態」の意味が不明確であるとはいえないし、そうであれば、特許請求の範囲において「ECU80は、湿度センサ51及び温度センサ52から入力された湿度及び温度に基づいて圧縮乾燥空気の湿潤状態を判定する。」ことを特定するべき理由もない。
更に、本件発明11について検討しても事情は同じであるから、本件発明2~4及び6~12に係る特許は、特許法第36条第6項第2号所定の規定に違反してされたものとはいえないので、申立人の前記アの主張は採用できない。
(9) 小括
したがって、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合するから、前記第4の1の特許異議の申立て理由はいずれも理由がない。
2 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について
(1) 実施可能要件の判断手法
明細書の発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件に適合するか否かは、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があるか否かという観点から判断すべきものである。
(2) 実施可能要件の判断
ア 前記1(1)アの記載からみて、本件発明は、空気供給システム、空気供給システムの制御方法、及び空気供給システムの制御プログラムに関するものであって(段落【0001】)、同ウ、オ~ケに記載された第1実施形態の空気供給システム10は、コンプレッサ4と、空気乾燥回路11と、ECU(Electronic Control Unit)80とを備えるものであり、ECU80が、制御装置、除湿動作実行部、再生動作実行部、設定部として機能するものである(段落【0026】、【図1】)。
ここで、コンプレッサ4の状態は、ECU80からの指令に基づいて、空気を圧縮して送出する稼働状態(負荷運転)と、空気の圧縮を行わない非稼働状態(空運転)との間で切り替えられるものであり、空気乾燥回路11は、いわゆる、エアドライヤであり、空気乾燥回路11は、ECU80に接続され、負荷運転中のコンプレッサ4から送られた圧縮空気から該圧縮空気に含まれる水分等を除去するものであり、空気乾燥回路11は、乾燥された後の圧縮空気(以下、圧縮乾燥空気)を、供給回路12に供給し、供給回路12に対し供給された圧縮乾燥空気は、エアタンク30に貯留されるものであり、エアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気は、車両に搭載されたブレーキシステム等の空気圧システムに供給されるものである(段落【0029】~【0031】)。
また、空気乾燥回路11は、ケース11Aの内部等にフィルタ17を備えており、フィルタ17は、コンプレッサ4と供給回路12とを接続する空気供給通路18の途中に設けられており、乾燥剤を含み、乾燥剤とは別に、油分を捕捉する油分捕捉部を含むものであって、コンプレッサ4から送出された圧縮空気を乾燥剤に通過させることによって、圧縮空気に含まれる水分を圧縮空気から除去して圧縮空気を乾燥させるものであり、油分捕捉部は、圧縮空気に含まれる油分を捕捉して圧縮空気を清浄化するものである(段落【0033】~【0034】)。
そして、空気乾燥回路11は、少なくとも第1動作モード~第6動作モードを含む、複数の動作モードを有するものであり、第1動作モードは、通常の除湿動作(ロード運転)を行うモードであって、第1動作モードでは、コンプレッサ4から圧縮空気が供給されているとき、フィルタ17で水分等が除去され、供給回路12に対し圧縮空気が供給されるものであり、第2動作モードは、空気乾燥回路11内の圧縮乾燥空気を、フィルタ17に通過させてフィルタ17を浄化するパージ動作を行うモードであり、第3動作モードは、フィルタ17を再生する再生動作を行うモードであって、第3動作モードでは、エアタンク30内の圧縮乾燥空気を、供給回路12及びバイパス流路20を介して、フィルタ17に通過させるものであり、第4動作モードは、オイルカット動作を行うモードであり、第5動作モードは、パージ無しのコンプレッサ停止動作を行うモードであり、第6動作モードは、与圧処理のためにアシスト動作を行うモードである(段落【0048】~【0054】、【図2】)。
更に、再生動作(第3動作モード)で消費される空気量(以下、再生空気量という)の決定方法において、ECU80は、制御プログラムを実行することにより、再生空気量Amを、以下の式(1)にしたがって算出するものであり、
再生空気量Am
=標準再生空気量Am1-補正単位空気量Am2×過不足係数α…(1)
標準再生空気量Am1は、エアタンク30の圧力の上限値であるカットアウト圧に応じて変更されるものであり、カットアウト圧は、再生動作及びパージ動作が開始される条件となる圧力であり、コンプレッサ4の稼働率が高いほど、高い値が設定されるものであり、コンプレッサ4の稼働率に応じて、カットアウト圧を連続的に変化させてもよいものである(段落【0055】~【0056】)。
そして、再生空気量を決定するための処理において、ECU80は、再生動作終了時から、次の再生動作開始時までを1サイクルと定義して、1サイクルにおける所定のタイミングで再生空気量を更新するものであり、まず、ECU80は、再生空気量の更新を行うか否かを判断し(ステップS110)、所定のタイミングに到達していないと判断すると(ステップS110:NO)、処理を終了するものであり、再生空気量を更新すると判断すると(ステップS110:YES)、再生過不足度を算出するものであり(ステップS111)、再生過不足度は、タンク空気水分飽和度の変化に基づき算出されてもよいものであり、再生過不足度を算出すると、過不足係数情報200を用いて、過不足係数を取得し(ステップS112)、再生動作の開始圧力であるカットアウト圧を取得し(ステップS113)、取得したカットアウト圧に基づいて、マップ100を用いて標準再生空気量を取得するとともに(ステップS114)、マップ101を用いて補正単位空気量を取得(ステップS115)して、求められた標準再生空気量、補正単位空気量、過不足係数を用いて、上記した式(1)にしたがって再生空気量を算出し(ステップS116)て、ここで算出された再生空気量を用いて再生動作を行うものである(段落【0082】~【0085】、【図3】、【図4】、【図7】)。
イ 前記アによれば、発明の詳細な説明に記載された空気供給システム10のコンプレッサ4、エアタンク30、フィルタ17、空気乾燥回路11及びECU80は、それぞれ、圧縮空気を送出するコンプレッサ、圧縮乾燥空気を貯留する貯留部、水分を捕捉するフィルタ、空気乾燥回路及び前記空気乾燥回路を制御する制御装置といえ、前記空気供給システム10は、圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備えるものといえる。
そして、コンプレッサ4から圧縮空気が供給されているとき、フィルタ17で水分等が除去され、供給回路12に対し圧縮空気が供給される第1動作モードは、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御するものといえ、フィルタ17を再生する再生動作を行うモードであって、エアタンク30内の圧縮乾燥空気を、供給回路12及びバイパス流路20を介して、フィルタ17に通過させる第3動作モードは、前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御するものといえる。
更に、再生動作(第3動作モード)で消費される再生空気量Amを、前記式(1)にしたがって算出することは、前記式(1)における標準再生空気量Am1及び補正単位空気量Am2が、エアタンク30の圧力の上限値であるカットアウト圧に応じて変更されるものであり、前記カットアウト圧が、コンプレッサ4の稼働率が高いほど、高い値が設定されるものであることと、再生空気量を決定するための処理において、ECU80は、再生動作終了時から、次の再生動作開始時までを1サイクルと定義して、1サイクルにおける所定のタイミングで再生空気量を更新することからみれば、一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定するものであって、一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくするものといえる。
そうすると、前記制御装置は、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されているものといえる。
これらのことからみれば、発明の詳細な説明に記載された空気供給システム10は、圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されているものといえる。
そして、そのような空気供給システムは、本件発明2に係る「空気供給システム」の発明特定事項を満たすから、当業者は、本件発明2に係る「空気供給システム」を、過度の試行錯誤を要することなく実施することができる。
更に、本件発明3~4、11及び12に係る「空気供給システム」、本件発明7に係る「空気供給システムの制御方法」及び本件発明9に係る「空気供給システムの制御プログラム」について検討しても事情は同じであり、これらのことを前記(1)の判断手法に当てはめてみれば、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合する。
ウ また、前記1(1)エの記載からみて、本件発明の第2実施形態の空気供給システム10は、標準再生空気量及び補正単位空気量を空気乾燥回路11の状態に応じて変更して、再生空気量を算出する点で、第1実施形態と共通し、第1実施形態では、カットアウト圧に応じて標準再生空気量及び補正単位空気量を変更したが、第2実施形態では、圧縮乾燥空気の温度に応じて標準再生空気量及び補正単位空気量を変更する点で第1実施形態と異なるものであり、標準再生空気量Am1は、限界通気量を一定としたとき、温度が低くなるに伴い小さくなり、温度が高くなるに伴い大きくなるものであり、補正単位空気量Am2は、限界通気量を一定としたとき、温度が高くなるに伴い小さくなり、温度が低くなるに伴い大きくなるものである。
そして、再生空気量を決定するための処理は、第1実施形態の処理のステップS110~S112、ステップS114~ステップS116と共通であり、ステップS120において、ECU80は、温度センサ52が検出した圧縮乾燥空気の温度を取得し(ステップS120)、ECU80は、取得した温度と、マップ110を用いて、標準再生空気量を取得し(ステップS114)、取得した温度とマップ111とを用いて、補正単位空気量(ステップS115)を取得して、標準再生空気量、補正単位空気量、過不足係数とを用いて、再生空気量を算出する(ステップS116)ものである。
エ 前記ウによれば、前記イに記載したのと同様の理由により、前記空気供給システム10は、圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御するものといえる。
また、前記空気供給システム10において、温度センサ52が検出した圧縮乾燥空気の温度を取得し取得した温度とマップ110を用いて、標準再生空気量を取得し、取得した温度とマップ111とを用いて、補正単位空気量(ステップS115)を取得し、標準再生空気量、補正単位空気量、過不足係数とを用いて再生空気量を算出することは、標準再生空気量Am1は、限界通気量を一定としたとき、温度が低くなるに伴い小さくなり、温度が高くなるに伴い大きくなるものであり、補正単位空気量Am2は、限界通気量を一定としたとき、温度が高くなるに伴い小さくなり、温度が低くなるに伴い大きくなるものであるから、前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくするものといえる。
そうすると、前記制御装置は、前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されているものといえる。
これらのことからみれば、発明の詳細な説明に記載された空気供給システム10は、圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されているものといえる。
そして、そのような空気供給システムは、本件発明6に係る「空気供給システム」の発明特定事項を満たすから、当業者は、本件発明6に係る「空気供給システム」を、過度の試行錯誤を要することなく実施することができる。
更に、本件発明8に係る「空気供給システムの制御方法」及び本件発明10に係る「空気供給システムの制御プログラム」について検討しても事情は同じであり、これらのことを前記(1)の判断手法に当てはめてみれば、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合する。
オ したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合する。
(3) 申立人の主張について
ア 前記第4の2の申立人の主張は、総じて、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には、「一定期間内」、「コンプレッサの稼働率」、「前記コンプレッサの稼働率が高い場合」、「低い場合」、「前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い場合」、「低い場合」、及び、「前記温度が低い場合」、「高い場合」の数値が具体的に記載されていないから、前記発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない、というものと解される。
イ ところが、本件特許明細書の記載に接した当業者は、これらの意味を理解できることは前記1(3)~(7)に記載したとおりであるから、これらの具体的な数値が記載されていないとしても、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合しないということはできない。
そして、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合することは前記(2)オに記載したとおりであるから、申立人の前記主張はいずれも採用できない。
(4) 小括
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件に適合するから、前記第4の2の特許異議の申立て理由はいずれも理由がない。
3 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について
(1) サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも、当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この観点により検討する。
(2) サポート要件の判断
ア 前記1(2)アの記載によれば、従来の圧縮空気乾燥装置は、フィルタに吸着された油分及び水分をフィルタから取り除き、取り除いた油分及び水分をドレンとして放出する再生動作を行う場合、再生動作を実行する時間、フィルタを通過させる再生空気量等といった実行条件に過不足が生じていたのであり、再生時間や再生空気量が不足すると、乾燥剤の水分捕捉能力が本来の程度まで復帰せず、圧縮空気乾燥装置から送出される空気に含有される水分量が多くなる可能性がある一方、再生時間や再生空気量が過剰となる場合には、本来、空気圧システムに供給するものであるエアタンク内の圧縮乾燥空気を無駄に消費することにつながり、圧縮乾燥空気は、エンジン等の回転駆動源によって駆動されるコンプレッサによって生成されるため、圧縮乾燥空気の過剰な消費は回転駆動源の負荷を増加させ、車両の燃費を低下させることとなる、という課題(以下、「本件課題」という。)があったものである。
そこで、本件発明は、空気供給システムの除湿性能を維持しつつ、空気供給システムによる圧縮乾燥空気の消費量を低減することを目的とするものである(段落【0003】~【0006】)。
イ そして、前記1(2)イの記載によれば、本件発明は、圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記コンプレッサの稼働状態に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定するように構成されている空気供給システムにおいて、一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくするものであり、そうすることで、貯留部に貯留された圧縮乾燥空気の消費を抑制し、空気乾燥回路以外の装置への圧縮乾燥空気の供給を優先させたり、フィルタの清浄化を優先させたりすることができるものとなって、本件課題を解決できるものである(段落【0007】、【0011】、【0012】)。
更に、このことは、前記1(2)ウの第1実施形態の記載からも理解することができるものである。
ウ そして、前記イの空気供給システムは、本件発明2の発明特定事項を満たすから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、本件発明2は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、本件発明2により、空気供給システムの除湿性能を維持しつつ、空気供給システムによる圧縮乾燥空気の消費量を低減することができ、本件課題を解決できることを理解することができるのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめてみれば、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
更に、本件発明3、4、11及び12に係る「空気供給システム」、本件発明7に係る「空気供給システムの制御方法」及び本件発明9に係る「空気供給システムの制御プログラム」について検討しても事情は同じである。
エ また、前記1(2)イの記載によれば、本件発明は、圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定するように構成されている空気供給システムにおいて、前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくするものであり、そうすることで、貯留部に貯留された圧縮乾燥空気の消費を抑制し、空気乾燥回路以外の装置への圧縮乾燥空気の供給を優先させたり、フィルタの清浄化を優先させたりすることができるものとなって、本件課題を解決できるものである(段落【0017】、【0021】、【0022】)。
更に、このことは、前記1(2)エの第2実施形態の記載からも理解することができるものである。
オ そして、前記エの空気供給システムは、本件発明6の発明特定事項を満たすから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、本件発明6は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、本件発明6により、空気供給システムの除湿性能を維持しつつ、空気供給システムによる圧縮乾燥空気の消費量を低減することができ、本件課題を解決できることを理解することができるのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめてみれば、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
更に、本件発明8に係る「空気供給システムの制御方法」及び本件発明10に係る「空気供給システムの制御プログラム」について検討しても事情は同じである。
カ したがって、本件特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。
(3) 申立人の主張について
ア 前記第4の3の申立人の主張は、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、再生空気量Amの算出方法として式(1)(段落【0056】。前記1(2)ウ。)しか記載されておらず、特定の手段による発明が記載されているのみであるから、発明の詳細な説明の記載を本件発明まで拡張ないし一般化することはできない、というものである。
イ しかしながら、前記(2)ア、エによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、前記式(1)によらなくても、本件発明2~4及び6~12の発明特定事項を満たすことで、本件課題を解決でき、前記式(1)による再生空気量Amの算出方法は、その一例を示すものにすぎないことを理解できる。
してみれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、再生空気量Amの算出方法として式(1)しか記載されていないとしても、発明の詳細な説明の記載を本件発明まで拡張ないし一般化することはできないということはできない。
そして、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合することは、前記(2)カに記載したとおりであるから、申立人の前記主張は採用できない。
(4) 取消理由について
ア 前記第5の2のサポート要件についての取消理由は、単に、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定」するだけで、「設定」された「再生空気量」が、フィルタを通過させる再生空気量等といった実行条件に過不足が生じないものとなるということはできないから、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、従来技術と同様に、本件課題を解決しないものも包含するし、同請求項5及び7~10に係る発明について検討しても事情は同じであるので、設定登録時の特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない、というものである。
イ ところが、本件発明2は、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されている」、との発明特定事項を有するから、単に、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定」するだけのものではない。
そして、本件発明2の発明特定事項により本件課題を解決できることは前記(2)イに記載したとおりである。
更に、本件発明3、4及び6~12について検討しても事情は同じであるから、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するので、前記第5の2のサポート要件についての取消理由は理由がない。
(5) 申立人意見書の主張について
ア サポート要件違反についての申立人意見書における主張は、概略、以下のとおりである。
本件発明2においては、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されている、」と特定されているが、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合」において、再生空気量を必要以上に小さくすれば、再生空気量が不足することとなり、「前記コンプレッサの稼働率が低い場合」において、再生空気量を必要以上に大きくすれば、空気量が過剰となるから、本件発明2の発明特定事項では、「空気供給システムの除湿性能を維持しつつ、空気供給システムによる圧縮乾燥空気の消費量を低減する」ことを達成できない。
本件発明2により発明の課題を解決するには、特許請求の範囲において再生空気量Am=標準再生空気量Am1-補正単位空気量Am2×過不足係数α…(1)(段落【0056】。前記(2)ウ。)を特定する必要があるのであり、本件発明3、4及び6~12について検討しても事情は同じであるから、特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない。
イ 以下、前記アの主張について検討すると、本件発明2は、従来の圧縮空気乾燥装置は、フィルタに吸着された油分及び水分をフィルタから取り除き、取り除いた油分及び水分をドレンとして放出する再生動作を行う場合、再生動作を実行する時間、フィルタを通過させる再生空気量等といった実行条件に過不足が生じていた、といった本件課題を解決しようとするものであることは、前記(2)アに記載したとおりである。
そして、そのような本件発明2において、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合」に「前記再生空気量を小さく」したり、「前記コンプレッサの稼働率が低い場合」に「前記再生空気量を大きく」したりする際に、あえて、再生空気量を必要以上に小さくしたり大きくしたりすることは、意図的に本件課題の解決を困難なものとすることにほかならず、もとより想定されないから、本件発明2が、再生空気量を必要以上に小さくしたり大きくしたりするものを包含すると理解することはできないので、本件発明2が本件課題を解決できないものを包含するとはいえない。
また、本件発明2により本件課題を解決できることは前記(2)ウに記載したとおりであるから、本件発明2において式(1)を特定するべき理由も存在しない。
更に、本件発明3、4及び6~12について検討しても事情は同じであるので、申立人の前記アの主張は採用できない。
(6) 小括
したがって、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するから、前記第4の3の特許異議の申立て理由及び第5の2の取消理由はいずれも理由がない。
4 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について
(1) 甲各号証の記載事項等
ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
(ア) 甲第1号証には、以下のa~dの記載がある。
a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエアブレーキシステムの空気乾燥機の再生を開始する方法であって、
空気圧縮機からの空気の瞬間的な流量をリアルタイムで見積もる工程と、
エアブレーキシステムの条件に基づいて前記瞬間的な流量を変更する工程と、
所定の時間間隔で前記空気圧縮機からの空気の体積を計算する工程と、
順方向の空気体積の現在の計算値を得るために、連続的な時間間隔で前記見積もり、変更および計算の各工程を繰り返す工程と、
前記現在の計算値と飽和閾値との比較を周期的に行う工程と、
前記計算値が前記飽和閾値に達したとき、または前記飽和閾値を超えたときに前記再生を開始する工程とを具える方法。
・・・
【請求項3】
請求項1または2記載の方法において、
前記瞬間的な流量を変更する工程を、周囲の空気温度、圧縮機温度、空気密度、経時的な圧縮機性能の低下および、動作時間中における圧縮機の動作と動作停止の比の内一つまたはそれ以上を参照して行う、車両のエアブレーキシステムの空気乾燥機の再生を開始する方法。
・・・
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項記載の方法であって、
逆流させる乾燥空気の体積を見積もる工程をさらに含み、当該工程が、
前記空気乾燥機へ逆流させる瞬間的な空気流量をリアルタイムで見積もる工程と、
エアブレーキシステムの条件に応じて前記逆流する瞬間的な流量を変更する工程と、
所定の時間間隔で前記逆流させる空気の体積を計算する工程と、
前記逆流させる空気体積の現在の計算値を得るために、連続的な時間間隔で前記見積もり、変更および計算の各工程を繰り返す工程と、
前記現在の計算値と飽和閾値との比較を周期的に行う工程と、
前記計算値が前記飽和閾値に達したとき、または前記飽和閾値を超えたときに前記再生を終了する工程とを具える、車両のエアブレーキシステムの空気乾燥機の再生を開始する方法。」
b 「【0011】
本発明による方法は、時間および圧力の間接的なパラメータの測定ではなく、体積の直接的な見積もりに基づくものである。その結果、再生をより正確に開始することができ、従来の方法での悲観的な見積もりの必要性によって開始する場合に比べて、より頻度が低いものとなる。
・・・
【0013】
瞬間的な流量は、他のシステムパラメータ、例えば周囲の空気温度、圧縮機温度、空気密度およびこれらの類似のものによって変更することができる。流量はまた、経時的な圧縮機性能の予測される低下にしたがって変更することとしても良い。この計算のために、圧縮機サイクルの回数をレジスタで合計し、経時的な圧縮機またはエンジン回転数の入力から得る事としても良い。この性能低下の修正はまた、運転時間中での動作開始と動作停止の比に依存させて、通常のガバナー圧力信号から得ることとしても良い。
・・・
【0015】
飽和閾値は、乾燥剤の体積および、予期される車両の動作条件にしたがって決定される。好適な実施形態において、この閾値は所定の範囲内で設定可能である。さらに、この飽和閾値は、乾燥剤温度のようなシステムの条件を反映させるようにリアルタイムで変更することとしても良い。例えば、湿度の上昇は乾燥剤温度の関数であることが公知であり、それによって、最適な再生を行うために、温度を考慮することが望ましいこととなる。本発明は、乾燥剤温度を考慮することができる方法を提供するものである。
【0016】
好適な実施形態においては、本発明は、逆流体積を理想の体積に近似するように最適化するため、動作条件およびシステムパラメータにしたがって乾燥空気の逆流体積を見積もる方法を具える。
・・・
【0018】
繰り返し述べると、この方法は、時間もしくは圧力の間接的なパラメータではなく、体積の見積もりに基づくものである。その結果、再生は逆流させる空気の正確な体積によって制御可能であり、それゆえ、逆流させる空気の体積が悲観的な不所望に大きなものとなることに依拠する必要がある従来の方法よりも、浪費する空気の体積が少なくなり得るものとなる。
・・・
【0021】
逆流させる空気の流量は、空気温度のようなシステムパラメータにしたがって変更することとしても良い。
・・・
【0025】
順方向および逆方向の空気体積を見積もる方法は、インテリジェントな制御システムを提供するために一緒に用いられるであろうことが予想される。しかしながら、いずれの方法も独立して使用することができ、特に、逆方向の空気体積を見積もる方法は、圧縮機が動作停止になるような従来の再生のトリガーと共に使用できることが理解されよう。
・・・
【0028】
図1は圧縮機11を模式的に示すものであり、この圧縮機11は、空気を弁12および空気乾燥機13を経てリザーバ14へ圧送可能であり、加圧された空気はリザーバ14から一つまたはそれ以上のチェック弁15を経て車両の空気システム16へ送られる。
【0029】
弁17は、大気と絞り弁18および空気乾燥機13を経てリザーバ14が連通するように開くことができる。
【0030】
圧縮機11は通常車両のエンジンによって駆動され、ヘッドアンローダ19のような従来型の手段によって動作を開始することも、また動作を停止することもでき、例えばリザーバ14内の圧力に対応するガバナー信号によって動作可能である。したがって、圧縮機は低圧閾値以下で動作を開始し、高圧閾値で動作を停止することとなる。
【0031】
使用時には、空気はカットオフ圧力に達するまで弁12、空気乾燥機13および逆止弁20を経てリザーバ14へ圧送され、このカットオフ圧力となった時点において圧縮機は動作を停止する。圧縮空気は、リザーバ内の圧力がカットイン圧力を下回るまでシステム16の要求によって使用され、このカットイン圧力となった時点において、圧縮機は蓄積サイクルを繰り返すように動作を開始する。
【0032】
空気乾燥機の再生は、圧縮機が動作を停止した時、通常はカットオフ圧力に達した直後に生じる。再生信号により弁17が開き、それによって乾燥空気が逆方向に空気乾燥機内を通過することができるようになり、乾燥剤から水分が大気中へ運ばれることとなる。」
c 「【0036】
本発明においては、順方向の空気体積の総和の計算値を与えるために、順方向の空気体積を連続的な時間間隔を超えて繰り返し見積もることとしている。単純な例では、この見積もりは、圧縮機の動作特性ならびに通常のエンジン制御システムから得られるエンジン回転速度を瞬時に入力することにより求める。・・・
【0037】
同様にして、再生の進行に伴って、逆流させる空気の体積をリアルタイムで見積もることができる。この場合、主な見積もりはシステム圧力に関する情報および、加圧された空気が通過して膨張する通常のオリフィスの流れ特性から連続的に求める。・・・
【0038】
再生は順方向の空気体積および圧縮機の次回の動作停止にしたがって開始し、逆流時の膨張体積の見積もり量が順方向の圧縮空気の体積に等しくなった時に終了する。」
d 「図1
[図:0001432080000008.jpg]
」
(イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第1号証には、車両のエアブレーキシステムの空気乾燥機の再生を開始する方法であって、空気圧縮機からの空気の瞬間的な流量をリアルタイムで見積もる工程と、エアブレーキシステムの条件に基づいて前記瞬間的な流量を変更する工程と、所定の時間間隔で前記空気圧縮機からの空気の体積を計算する工程と、順方向の空気体積の現在の計算値を得るために、連続的な時間間隔で前記見積もり、変更および計算の各工程を繰り返す工程と、前記現在の計算値と飽和閾値との比較を周期的に行う工程と、前記計算値が前記飽和閾値に達したとき、または前記飽和閾値を超えたときに前記再生を開始する工程とを具える方法が記載されており(【請求項1】)、更に、前記方法は、前記瞬間的な流量を変更する工程を、周囲の空気温度、圧縮機温度、空気密度、経時的な圧縮機性能の低下および、動作時間中における圧縮機の動作と動作停止の比の内一つまたはそれ以上を参照して行うものであり(【請求項3】)、逆流させる乾燥空気の体積を見積もる工程をさらに含み、当該工程が、前記空気乾燥機へ逆流させる瞬間的な空気流量をリアルタイムで見積もる工程と、エアブレーキシステムの条件に応じて前記逆流する瞬間的な流量を変更する工程と、所定の時間間隔で前記逆流させる空気の体積を計算する工程と、前記逆流させる空気体積の現在の計算値を得るために、連続的な時間間隔で前記見積もり、変更および計算の各工程を繰り返す工程と、前記現在の計算値と飽和閾値との比較を周期的に行う工程と、前記計算値が前記飽和閾値に達したとき、または前記飽和閾値を超えたときに前記再生を終了する工程とを具えるものである(【請求項7】)。
また、前記(ア)b及びdの記載によれば、瞬間的な流量は、他のシステムパラメータ、例えば周囲の空気温度、圧縮機温度、空気密度およびこれらの類似のものによって変更することができ、流量はまた、経時的な圧縮機性能の予測される低下にしたがって変更することとしてもよいものであり、この計算のために、圧縮機サイクルの回数をレジスタで合計し、経時的な圧縮機またはエンジン回転数の入力から得る事としてもよいものであり、この性能低下の修正はまた、運転時間中での動作開始と動作停止の比に依存させて、通常のガバナー圧力信号から得ることとしてもよいものである(段落【0013】)。
そして、飽和閾値は、乾燥剤の体積及び、予期される車両の動作条件にしたがって決定されるものであり、乾燥剤温度のようなシステムの条件を反映させるようにリアルタイムで変更することとしてもよいものであり(段落【0015】)、前記方法は、逆流体積を理想の体積に近似するように最適化するため、動作条件およびシステムパラメータにしたがって乾燥空気の逆流体積を見積もる方法を具えるものであり(段落【0016】)、時間もしくは圧力の間接的なパラメータではなく、体積の見積もりに基づくものであり、その結果、再生は逆流させる空気の正確な体積によって制御可能であるので、逆流させる空気の体積が悲観的な不所望に大きなものとなることに依拠する必要がある従来の方法よりも、浪費する空気の体積が少なくなり得るものであり(段落【0018】)、逆流させる空気の流量は、空気温度のようなシステムパラメータにしたがって変更することとしてもよいものであり(段落【0020】)、前記方法において、順方向及び逆方向の空気体積を見積もる方法は、インテリジェントな制御システムを提供するために一緒に用いられるものである(段落【0025】)。
具体的には、前記方法は、圧縮機、弁、空気乾燥機、リザーバ、チェック弁、車両の空気システム、絞り弁及び逆止弁を有するシステムに適用されるものであり、圧縮機は、空気を弁及び空気乾燥機を経てリザーバへ圧送可能であり、加圧された空気はリザーバから一つまたはそれ以上のチェック弁を経て車両の空気システムへ送られるものであり、弁は、大気と絞り弁及び空気乾燥機を経てリザーバが連通するように開くことができるものであり、圧縮機は通常車両のエンジンによって駆動され、例えばリザーバ内の圧力に対応するガバナー信号によって動作可能であり、したがって、圧縮機は低圧閾値以下で動作を開始し、高圧閾値で動作を停止することとなるものである(段落【0028】~【0030】、図1)。
そして、使用時には、空気はカットオフ圧力に達するまで弁、空気乾燥機及び逆止弁を経てリザーバへ圧送され、このカットオフ圧力となった時点において圧縮機は動作を停止するものであり、圧縮空気は、リザーバ内の圧力がカットイン圧力を下回るまで車両の空気システムの要求によって使用され、このカットイン圧力となった時点において、圧縮機は蓄積サイクルを繰り返すように動作を開始するものであり、空気乾燥機の再生は、圧縮機が動作を停止した時、通常はカットオフ圧力に達した直後に生じるものであり、再生信号により弁が開き、それによって乾燥空気が逆方向に空気乾燥機内を通過することができるようになり、乾燥剤から水分が大気中へ運ばれることとなるものである(段落【0031】~【0032】)。
更に、前記(ア)cの記載によれば、前記車両のエアブレーキシステムの空気乾燥機の再生を開始する方法は、順方向の空気体積の総和の計算値を与えるために、順方向の空気体積を連続的な時間間隔を超えて繰り返し見積もることとしているものであり、同様にして、再生の進行に伴って、逆流させる空気の体積をリアルタイムで見積もることができるものであり、再生は順方向の空気体積及び圧縮機の次回の動作停止にしたがって開始し、逆流時の膨張体積の見積もり量が順方向の圧縮空気の体積に等しくなった時に終了するものである(段落【0036】~【0038】)。
(ウ) 前記(イ)によれば、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「車両のエアブレーキシステムの空気乾燥機の再生を開始する方法であって、
空気圧縮機からの空気の瞬間的な流量をリアルタイムで見積もる工程と、
エアブレーキシステムの条件に基づいて前記瞬間的な流量を変更する工程と、
所定の時間間隔で前記空気圧縮機からの空気の体積を計算する工程と、
順方向の空気体積の現在の計算値を得るために、連続的な時間間隔で前記見積もり、変更および計算の各工程を繰り返す工程と、
前記現在の計算値と飽和閾値との比較を周期的に行う工程と、
前記計算値が前記飽和閾値に達したとき、または前記飽和閾値を超えたときに前記再生を開始する工程とを具える方法であり、
更に、前記方法は、前記瞬間的な流量を変更する工程を、周囲の空気温度、圧縮機温度、空気密度、経時的な圧縮機性能の低下および、動作時間中における圧縮機の動作と動作停止の比の内一つまたはそれ以上を参照して行うものであり、
逆流させる乾燥空気の体積を見積もる工程をさらに含み、当該工程が、前記空気乾燥機へ逆流させる瞬間的な空気流量をリアルタイムで見積もる工程と、
エアブレーキシステムの条件に応じて前記逆流する瞬間的な流量を変更する工程と、
所定の時間間隔で前記逆流させる空気の体積を計算する工程と、
前記逆流させる空気体積の現在の計算値を得るために、連続的な時間間隔で前記見積もり、変更および計算の各工程を繰り返す工程と、
前記現在の計算値と飽和閾値との比較を周期的に行う工程と、
前記計算値が前記飽和閾値に達したとき、または前記飽和閾値を超えたときに前記再生を終了する工程とを具えるものであり、
前記瞬間的な流量は、他のシステムパラメータ、例えば周囲の空気温度、圧縮機温度、空気密度およびこれらの類似のものによって変更することができ、流量はまた、経時的な圧縮機性能の予測される低下にしたがって変更することとしてもよいものであり、この計算のために、圧縮機サイクルの回数をレジスタで合計し、経時的な圧縮機またはエンジン回転数の入力から得る事としてもよいものであり、この性能低下の修正はまた、運転時間中での動作開始と動作停止の比に依存させて、通常のガバナー圧力信号から得ることとしてもよいものであり、
前記飽和閾値は、乾燥剤の体積及び、予期される車両の動作条件にしたがって決定されるものであり、乾燥剤温度のようなシステムの条件を反映させるようにリアルタイムで変更することとしてもよいものであり、
前記方法は、逆流体積を理想の体積に近似するように最適化するため、動作条件およびシステムパラメータにしたがって乾燥空気の逆流体積を見積もる方法を具えるものであり、時間もしくは圧力の間接的なパラメータではなく、体積の見積もりに基づくものであり、その結果、再生は逆流させる空気の正確な体積によって制御可能であるので、逆流させる空気の体積が悲観的な不所望に大きなものとなることに依拠する必要がある従来の方法よりも、浪費する空気の体積が少なくなり得るものであり、逆流させる空気の流量は、空気温度のようなシステムパラメータにしたがって変更することとしてもよいものであり、
前記方法において、順方向及び逆方向の空気体積を見積もる方法は、インテリジェントな制御システムを提供するために一緒に用いられるものであり、
前記方法は、圧縮機、弁、空気乾燥機、リザーバ、チェック弁、車両の空気システム、絞り弁及び逆止弁を有するシステムに適用されるものであり、
圧縮機は、空気を弁及び空気乾燥機を経てリザーバへ圧送可能であり、加圧された空気はリザーバから一つまたはそれ以上のチェック弁を経て車両の空気システムへ送られるものであり、弁は、大気と絞り弁及び空気乾燥機を経てリザーバが連通するように開くことができるものであり、圧縮機は通常車両のエンジンによって駆動され、例えばリザーバ内の圧力に対応するガバナー信号によって動作可能であり、したがって、圧縮機は低圧閾値以下で動作を開始し、高圧閾値で動作を停止することとなるものであり、
使用時には、空気はカットオフ圧力に達するまで弁、空気乾燥機及び逆止弁を経てリザーバへ圧送され、このカットオフ圧力となった時点において圧縮機は動作を停止するものであり、圧縮空気は、リザーバ内の圧力がカットイン圧力を下回るまで車両の空気システムの要求によって使用され、このカットイン圧力となった時点において、圧縮機は蓄積サイクルを繰り返すように動作を開始するものであり、空気乾燥機の再生は、圧縮機が動作を停止した時、通常はカットオフ圧力に達した直後に生じるものであり、再生信号により弁が開き、それによって乾燥空気が逆方向に空気乾燥機内を通過することができるようになり、乾燥剤から水分が大気中へ運ばれることとなるものであり、
前記方法は、順方向の空気体積の総和の計算値を与えるために、順方向の空気体積を連続的な時間間隔を超えて繰り返し見積もることとしているものであり、同様にして、再生の進行に伴って、逆流させる空気の体積をリアルタイムで見積もることができるものであり、再生は順方向の空気体積及び圧縮機の次回の動作停止にしたがって開始し、逆流時の膨張体積の見積もり量が順方向の圧縮空気の体積に等しくなった時に終了するものである、方法。」(以下、「甲1-1発明」という。)
(エ) また、甲第1号証には、甲1-1発明に係る方法が適用されるシステム及び前記システムを制御するプログラムも記載されているといえるから、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「車両のエアブレーキシステムの空気乾燥機の再生を開始する方法に適用されるシステムであって、
前記方法は、空気圧縮機からの空気の瞬間的な流量をリアルタイムで見積もる工程と、
エアブレーキシステムの条件に基づいて前記瞬間的な流量を変更する工程と、
所定の時間間隔で前記空気圧縮機からの空気の体積を計算する工程と、
順方向の空気体積の現在の計算値を得るために、連続的な時間間隔で前記見積もり、変更および計算の各工程を繰り返す工程と、
前記現在の計算値と飽和閾値との比較を周期的に行う工程と、
前記計算値が前記飽和閾値に達したとき、または前記飽和閾値を超えたときに前記再生を開始する工程とを具える方法であり、
更に、前記方法は、前記瞬間的な流量を変更する工程を、周囲の空気温度、圧縮機温度、空気密度、経時的な圧縮機性能の低下および、動作時間中における圧縮機の動作と動作停止の比の内一つまたはそれ以上を参照して行うものであり、
逆流させる乾燥空気の体積を見積もる工程をさらに含み、当該工程が、前記空気乾燥機へ逆流させる瞬間的な空気流量をリアルタイムで見積もる工程と、
エアブレーキシステムの条件に応じて前記逆流する瞬間的な流量を変更する工程と、
所定の時間間隔で前記逆流させる空気の体積を計算する工程と、
前記逆流させる空気体積の現在の計算値を得るために、連続的な時間間隔で前記見積もり、変更および計算の各工程を繰り返す工程と、
前記現在の計算値と飽和閾値との比較を周期的に行う工程と、
前記計算値が前記飽和閾値に達したとき、または前記飽和閾値を超えたときに前記再生を終了する工程とを具えるものであり、
前記瞬間的な流量は、他のシステムパラメータ、例えば周囲の空気温度、圧縮機温度、空気密度およびこれらの類似のものによって変更することができ、流量はまた、経時的な圧縮機性能の予測される低下にしたがって変更することとしてもよいものであり、この計算のために、圧縮機サイクルの回数をレジスタで合計し、経時的な圧縮機またはエンジン回転数の入力から得る事としてもよいものであり、この性能低下の修正はまた、運転時間中での動作開始と動作停止の比に依存させて、通常のガバナー圧力信号から得ることとしてもよいものであり、
前記飽和閾値は、乾燥剤の体積及び、予期される車両の動作条件にしたがって決定されるものであり、乾燥剤温度のようなシステムの条件を反映させるようにリアルタイムで変更することとしてもよいものであり、
前記方法は、逆流体積を理想の体積に近似するように最適化するため、動作条件およびシステムパラメータにしたがって乾燥空気の逆流体積を見積もる方法を具えるものであり、時間もしくは圧力の間接的なパラメータではなく、体積の見積もりに基づくものであり、その結果、再生は逆流させる空気の正確な体積によって制御可能であるので、逆流させる空気の体積が悲観的な不所望に大きなものとなることに依拠する必要がある従来の方法よりも、浪費する空気の体積が少なくなり得るものであり、逆流させる空気の流量は、空気温度のようなシステムパラメータにしたがって変更することとしてもよいものであり、
前記方法において、順方向及び逆方向の空気体積を見積もる方法は、インテリジェントな制御システムを提供するために一緒に用いられるものであり、
前記方法は、圧縮機、弁、空気乾燥機、リザーバ、チェック弁、車両の空気システム、絞り弁及び逆止弁を有するシステムに適用されるものであり、
圧縮機は、空気を弁及び空気乾燥機を経てリザーバへ圧送可能であり、加圧された空気はリザーバから一つまたはそれ以上のチェック弁を経て車両の空気システムへ送られるものであり、弁は、大気と絞り弁及び空気乾燥機を経てリザーバが連通するように開くことができるものであり、圧縮機は通常車両のエンジンによって駆動され、例えばリザーバ内の圧力に対応するガバナー信号によって動作可能であり、したがって、圧縮機は低圧閾値以下で動作を開始し、高圧閾値で動作を停止することとなるものであり、
使用時には、空気はカットオフ圧力に達するまで弁、空気乾燥機及び逆止弁を経てリザーバへ圧送され、このカットオフ圧力となった時点において圧縮機は動作を停止するものであり、圧縮空気は、リザーバ内の圧力がカットイン圧力を下回るまで車両の空気システムの要求によって使用され、このカットイン圧力となった時点において、圧縮機は蓄積サイクルを繰り返すように動作を開始するものであり、空気乾燥機の再生は、圧縮機が動作を停止した時、通常はカットオフ圧力に達した直後に生じるものであり、再生信号により弁が開き、それによって乾燥空気が逆方向に空気乾燥機内を通過することができるようになり、乾燥剤から水分が大気中へ運ばれることとなるものであり、
前記方法は、順方向の空気体積の総和の計算値を与えるために、順方向の空気体積を連続的な時間間隔を超えて繰り返し見積もることとしているものであり、同様にして、再生の進行に伴って、逆流させる空気の体積をリアルタイムで見積もることができるものであり、再生は順方向の空気体積及び圧縮機の次回の動作停止にしたがって開始し、逆流時の膨張体積の見積もり量が順方向の圧縮空気の体積に等しくなった時に終了するものである、システム。」(以下、「甲1-2発明」という。)
「車両のエアブレーキシステムの空気乾燥機の再生を開始する方法に適用されるプログラムであって、
前記方法は、空気圧縮機からの空気の瞬間的な流量をリアルタイムで見積もる工程と、
エアブレーキシステムの条件に基づいて前記瞬間的な流量を変更する工程と、
所定の時間間隔で前記空気圧縮機からの空気の体積を計算する工程と、
順方向の空気体積の現在の計算値を得るために、連続的な時間間隔で前記見積もり、変更および計算の各工程を繰り返す工程と、
前記現在の計算値と飽和閾値との比較を周期的に行う工程と、
前記計算値が前記飽和閾値に達したとき、または前記飽和閾値を超えたときに前記再生を開始する工程とを具える方法であり、
更に、前記方法は、前記瞬間的な流量を変更する工程を、周囲の空気温度、圧縮機温度、空気密度、経時的な圧縮機性能の低下および、動作時間中における圧縮機の動作と動作停止の比の内一つまたはそれ以上を参照して行うものであり、
逆流させる乾燥空気の体積を見積もる工程をさらに含み、当該工程が、前記空気乾燥機へ逆流させる瞬間的な空気流量をリアルタイムで見積もる工程と、
エアブレーキシステムの条件に応じて前記逆流する瞬間的な流量を変更する工程と、
所定の時間間隔で前記逆流させる空気の体積を計算する工程と、
前記逆流させる空気体積の現在の計算値を得るために、連続的な時間間隔で前記見積もり、変更および計算の各工程を繰り返す工程と、
前記現在の計算値と飽和閾値との比較を周期的に行う工程と、
前記計算値が前記飽和閾値に達したとき、または前記飽和閾値を超えたときに前記再生を終了する工程とを具えるものであり、
前記瞬間的な流量は、他のシステムパラメータ、例えば周囲の空気温度、圧縮機温度、空気密度およびこれらの類似のものによって変更することができ、流量はまた、経時的な圧縮機性能の予測される低下にしたがって変更することとしてもよいものであり、この計算のために、圧縮機サイクルの回数をレジスタで合計し、経時的な圧縮機またはエンジン回転数の入力から得る事としてもよいものであり、この性能低下の修正はまた、運転時間中での動作開始と動作停止の比に依存させて、通常のガバナー圧力信号から得ることとしてもよいものであり、
前記飽和閾値は、乾燥剤の体積及び、予期される車両の動作条件にしたがって決定されるものであり、乾燥剤温度のようなシステムの条件を反映させるようにリアルタイムで変更することとしてもよいものであり、
前記方法は、逆流体積を理想の体積に近似するように最適化するため、動作条件およびシステムパラメータにしたがって乾燥空気の逆流体積を見積もる方法を具えるものであり、時間もしくは圧力の間接的なパラメータではなく、体積の見積もりに基づくものであり、その結果、再生は逆流させる空気の正確な体積によって制御可能であるので、逆流させる空気の体積が悲観的な不所望に大きなものとなることに依拠する必要がある従来の方法よりも、浪費する空気の体積が少なくなり得るものであり、逆流させる空気の流量は、空気温度のようなシステムパラメータにしたがって変更することとしてもよいものであり、
前記方法において、順方向及び逆方向の空気体積を見積もる方法は、インテリジェントな制御システムを提供するために一緒に用いられるものであり、
前記方法は、圧縮機、弁、空気乾燥機、リザーバ、チェック弁、車両の空気システム、絞り弁及び逆止弁を有するシステムに適用されるものであり、
圧縮機は、空気を弁及び空気乾燥機を経てリザーバへ圧送可能であり、加圧された空気はリザーバから一つまたはそれ以上のチェック弁を経て車両の空気システムへ送られるものであり、弁は、大気と絞り弁及び空気乾燥機を経てリザーバが連通するように開くことができるものであり、圧縮機は通常車両のエンジンによって駆動され、例えばリザーバ内の圧力に対応するガバナー信号によって動作可能であり、したがって、圧縮機は低圧閾値以下で動作を開始し、高圧閾値で動作を停止することとなるものであり、
使用時には、空気はカットオフ圧力に達するまで弁、空気乾燥機及び逆止弁を経てリザーバへ圧送され、このカットオフ圧力となった時点において圧縮機は動作を停止するものであり、圧縮空気は、リザーバ内の圧力がカットイン圧力を下回るまで車両の空気システムの要求によって使用され、このカットイン圧力となった時点において、圧縮機は蓄積サイクルを繰り返すように動作を開始するものであり、空気乾燥機の再生は、圧縮機が動作を停止した時、通常はカットオフ圧力に達した直後に生じるものであり、再生信号により弁が開き、それによって乾燥空気が逆方向に空気乾燥機内を通過することができるようになり、乾燥剤から水分が大気中へ運ばれることとなるものであり、
前記方法は、順方向の空気体積の総和の計算値を与えるために、順方向の空気体積を連続的な時間間隔を超えて繰り返し見積もることとしているものであり、同様にして、再生の進行に伴って、逆流させる空気の体積をリアルタイムで見積もることができるものであり、再生は順方向の空気体積及び圧縮機の次回の動作停止にしたがって開始し、逆流時の膨張体積の見積もり量が順方向の圧縮空気の体積に等しくなった時に終了するものである、プログラム。」(以下、「甲1-3発明」という。)
イ 甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明
(ア) 甲第2号証には、以下のa~cの記載がある。
a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載する空気圧縮機を備え、該空気圧縮機から吐出した圧縮空気を車両の負荷に供給する車両用圧縮空気供給装置において、
前記空気圧縮機の吐出ラインに設けられ、前記圧縮空気に含まれる水分等の異物を除去するエアードライヤーと、
前記エアードライヤーにおける乾燥剤を所定の再生条件で再生させる再生手段と、
を備え、
前記乾燥剤に吸着された水分量、前記乾燥剤の劣化の程度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の圧力、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の湿度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の温度のうちの少なくとも1つに応じて、前記乾燥剤の再生間隔、前記乾燥剤の再生圧力、前記乾燥剤の再生時間、前記乾燥剤の再生頻度、前記乾燥剤を再生させる際の通気量のうちの少なくとも1つの前記再生条件が最適化されることを特徴とする車両用圧縮空気供給装置。」(12ページ)
b 「【0012】
[第1の実施の形態]
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明を適用した第1の実施の形態に係る圧縮空気供給システム1の構成を示す図である。
図1に示す圧縮空気供給システム1(車両用圧縮空気供給装置)は、コンプレッサー4(空気圧縮機)と、コンプレッサー4を制御するECU(electronic control unit)2と、コンプレッサー4から吐出された圧縮空気の水分を除去して、上記車両の負荷に圧縮空気を供給するエアードライヤーモジュール10と、を備えて構成される。
ECU2は、圧縮空気供給システム1を搭載する車両の車速等に基づいて、上記車両のエンジンを制御するとともに、コンプレッサー4及びエアードライヤーモジュール10の動作を制御する。但し、ECU2には、車両の車速等に関する情報や、車両の走行距離に関する情報等の車両の走行状況に関する情報が入力される。また、ECU2には、エアードライヤー11の動作状況に関する情報が入力される。
【0013】
エアードライヤーモジュール10には、上記車両が備える負荷51~54が接続されている。負荷51は主ブレーキ(前輪)、負荷52は主ブレーキ(後輪)、負荷53はパーキングブレーキであり、負荷54は、ホーンやクラッチ駆動機構等の圧縮空気で駆動されるアクセサリー類である。負荷51~54はそれぞれ圧縮空気が流れる圧縮空気回路を備えている。また、負荷51に供給される圧縮空気はエアータンク51aに貯留され、負荷52に供給される圧縮空気はエアータンク52aに貯留される。・・・
・・・
【0015】
コンプレッサー4の吐出管41はエアードライヤーモジュール10の流入管111に接続され、流入管111にはエアードライヤー11が接続されている。エアードライヤー11は、ケース20に乾燥剤231を収容しており、この乾燥剤231によってコンプレッサー4から吐出された圧縮空気に含まれる水分等の異物を除去する。
エアードライヤー11には排気バルブ12が設けられ、この排気バルブ12が開くとエアードライヤー11の本体内の圧縮空気が排気口112から直接外部へ排出される。排気バルブ12は空気圧で制御され、その制御ラインにはダブルチェックバルブ104が接続されている。排気バルブ12は通常時は閉鎖され、ダブルチェックバルブ104から空気圧が加わった場合のみ開弁する。
・・・
【0017】
ここで、エアードライヤーモジュール10内の空気圧が十分に高い状態で、排気バルブ12が開弁すると、エアードライヤー11よりも下流側、例えば、エアータンク51a、52a内に貯留された圧縮空気がエアードライヤー11のケース20内を逆流して排気口112から放出される。このときケース20を通る空気は急速な減圧によってスーパードライとなり、ケース20内の乾燥剤231から水分を奪うので、乾燥剤231が再生される。再生後の乾燥剤231は、水分を吸着する吸着能が回復しており、圧縮空気の水分を除去可能となっている。この再生動作は、ECU2によって電磁弁101および電磁弁102を開弁させることで行われる。乾燥剤231の再生動作は予め設定された所定の再生間隔(T0)毎に行われる。なお、後述する様に、この再生間隔(T0)は乾燥剤231の状態に応じて適正な間隔に更新される。
・・・
【0030】
また、乾燥剤231を再生させる場合、乾燥剤231の状態、すなわち、乾燥剤231に吸着されている水分量に応じて、再生時に乾燥剤231に通気させるエア量(以下、「再生エア量」という)を適正にする必要がある。また、例えば、エアータンク51aに貯留された圧縮空気をエアードライヤー11に逆流させて、乾燥剤231の再生を行う場合、乾燥剤231を効率よく再生するには、エアータンク51aの容積と、エアータンク51a内の圧縮空気の温度、湿度に応じて、排気バルブ12を開弁させる時間(再生時間)と、エアータンク51a内の圧力(再生圧力)を適正にする必要が生じる。この様に、乾燥剤231に吸着された水分量、乾燥剤231の劣化の程度、再生時に通気させる圧縮空気の圧力、湿度、温度等に応じて、乾燥剤231の再生間隔や再生圧力、再生時間等の再生条件を適正にすることが好ましい。そこで、本実施の形態の圧縮空気供給システム1は、負荷51に供給する圧縮空気を貯留するエアータンク51a内に湿度検知センサー14を設け、この湿度検知センサー14の検知結果に基づいて乾燥剤231の再生条件を適正に、すなわち、最適化するようになっている。・・・」
c 「【図1】
[図:0001432080000009.jpg]
」
(イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第2号証には、車両に搭載する空気圧縮機を備え、該空気圧縮機から吐出した圧縮空気を車両の負荷に供給する車両用圧縮空気供給装置において、前記空気圧縮機の吐出ラインに設けられ、前記圧縮空気に含まれる水分等の異物を除去するエアードライヤーと、前記エアードライヤーにおける乾燥剤を所定の再生条件で再生させる再生手段と、を備え、前記乾燥剤に吸着された水分量、前記乾燥剤の劣化の程度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の圧力、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の湿度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の温度のうちの少なくとも1つに応じて、前記乾燥剤の再生間隔、前記乾燥剤の再生圧力、前記乾燥剤の再生時間、前記乾燥剤の再生頻度、前記乾燥剤を再生させる際の通気量のうちの少なくとも1つの前記再生条件が最適化される、車両用圧縮空気供給装置が記載されている(【請求項1】)。
また、前記(ア)b及びcの記載によれば、前記車両用圧縮空気供給装置は、コンプレッサー(空気圧縮機)と、コンプレッサーを制御するECUと、コンプレッサーから吐出された圧縮空気の水分を除去して、上記車両の負荷に圧縮空気を供給するエアードライヤーモジュールと、を備えて構成されるものであって、ECUは、前記車両用圧縮空気供給装置を搭載する車両の車速等に基づいて、上記車両のエンジンを制御するとともに、コンプレッサー及びエアードライヤーモジュールの動作を制御するものであり、また、ECUには、エアードライヤーの動作状況に関する情報が入力されるものであり、エアードライヤーモジュールには、前記車両が備える負荷が接続されているものであり、主ブレーキ(前輪)の負荷に供給される圧縮空気はエアータンクに貯留され、主ブレーキ(後輪)負荷に供給される圧縮空気はエアータンクに貯留されるものである(段落【0012】~【0013】、【図1】)。
そして、コンプレッサーの吐出管はエアードライヤーモジュールの流入管に接続され、流入管にはエアードライヤーが接続され、エアードライヤーは、ケースに乾燥剤を収容しており、この乾燥剤によってコンプレッサーから吐出された圧縮空気に含まれる水分等の異物を除去するものであり、エアードライヤーには排気バルブが設けられ、この排気バルブが開くとエアードライヤーの本体内の圧縮空気が排気口から直接外部へ排出されるものであり(段落【0015】)、エアードライヤーモジュール内の空気圧が十分に高い状態で、排気バルブが開弁すると、エアードライヤーよりも下流側、例えば、エアータンク内に貯留された圧縮空気がエアードライヤーのケース内を逆流して排気口から放出され、このときケースを通る空気は急速な減圧によってスーパードライとなり、ケース内の乾燥剤から水分を奪うので、乾燥剤が再生されるものであり、再生後の乾燥剤は、水分を吸着する吸着能が回復しており、圧縮空気の水分を除去可能となっているものであり、乾燥剤の再生動作は予め設定された所定の再生間隔(T0)毎に行われ、この再生間隔(T0)は乾燥剤の状態に応じて適正な間隔に更新されるものである(段落【0017】)。
更に、乾燥剤を再生させる場合、乾燥剤の状態、すなわち、乾燥剤に吸着されている水分量に応じて、再生時に乾燥剤に通気させるエア量を適正にする必要があり、また、エアータンクに貯留された圧縮空気をエアードライヤーに逆流させて、乾燥剤の再生を行う場合、乾燥剤を効率よく再生するには、エアータンクの容積と、エアータンク内の圧縮空気の温度、湿度に応じて、排気バルブを開弁させる時間(再生時間)と、エアータンク内の圧力(再生圧力)を適正にする必要が生じることから、乾燥剤に吸着された水分量、乾燥剤の劣化の程度、再生時に通気させる圧縮空気の圧力、湿度、温度等に応じて、乾燥剤の再生間隔や再生圧力、再生時間等の再生条件を適正にすることが好ましいので、前記車両用圧縮空気供給装置は、主ブレーキ(前輪)の負荷に供給する圧縮空気を貯留するエアータンク内に湿度検知センサーを設け、この湿度検知センサーの検知結果に基づいて乾燥剤の再生条件を適正に、すなわち、最適化するようになっているものである(段落【0030】)。
(ウ) 前記(イ)によれば、甲第2号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「車両に搭載する空気圧縮機を備え、該空気圧縮機から吐出した圧縮空気を車両の負荷に供給する車両用圧縮空気供給装置であって、
前記空気圧縮機の吐出ラインに設けられ、前記圧縮空気に含まれる水分等の異物を除去するエアードライヤーと、
前記エアードライヤーにおける乾燥剤を所定の再生条件で再生させる再生手段と、
を備え、
前記乾燥剤に吸着された水分量、前記乾燥剤の劣化の程度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の圧力、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の湿度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の温度のうちの少なくとも1つに応じて、前記乾燥剤の再生間隔、前記乾燥剤の再生圧力、前記乾燥剤の再生時間、前記乾燥剤の再生頻度、前記乾燥剤を再生させる際の通気量のうちの少なくとも1つの前記再生条件が最適化される、車両用圧縮空気供給装置であり、
前記車両用圧縮空気供給装置は、コンプレッサー(空気圧縮機)と、コンプレッサーを制御するECUと、コンプレッサーから吐出された圧縮空気の水分を除去して、上記車両の負荷に圧縮空気を供給するエアードライヤーモジュールと、を備えて構成されるものであり、
ECUは、前記車両用圧縮空気供給装置を搭載する車両の車速等に基づいて、上記車両のエンジンを制御するとともに、コンプレッサー及びエアードライヤーモジュールの動作を制御するものであり、また、ECUには、エアードライヤーの動作状況に関する情報が入力されるものであり、
エアードライヤーモジュールには、前記車両が備える負荷が接続されているものであり、主ブレーキ(前輪)の負荷に供給される圧縮空気はエアータンクに貯留され、主ブレーキ(後輪)負荷に供給される圧縮空気はエアータンクに貯留されるものであり、
コンプレッサーの吐出管はエアードライヤーモジュールの流入管に接続され、流入管にはエアードライヤーが接続され、エアードライヤーは、ケースに乾燥剤を収容しており、この乾燥剤によってコンプレッサーから吐出された圧縮空気に含まれる水分等の異物を除去するものであり、
エアードライヤーには排気バルブが設けられ、この排気バルブが開くとエアードライヤーの本体内の圧縮空気が排気口から直接外部へ排出されるものであり、エアードライヤーモジュール内の空気圧が十分に高い状態で、排気バルブが開弁すると、エアードライヤーよりも下流側、例えば、エアータンク内に貯留された圧縮空気がエアードライヤーのケース内を逆流して排気口から放出され、このときケースを通る空気は急速な減圧によってスーパードライとなり、ケース内の乾燥剤から水分を奪うので、乾燥剤が再生されるものであり、
再生後の乾燥剤は、水分を吸着する吸着能が回復しており、圧縮空気の水分を除去可能となっているものであり、乾燥剤の再生動作は予め設定された所定の再生間隔(T0)毎に行われ、この再生間隔(T0)は乾燥剤の状態に応じて適正な間隔に更新されるものであり、
乾燥剤を再生させる場合、乾燥剤の状態、すなわち、乾燥剤に吸着されている水分量に応じて、再生時に乾燥剤に通気させるエア量を適正にする必要があり、また、エアータンクに貯留された圧縮空気をエアードライヤーに逆流させて、乾燥剤の再生を行う場合、乾燥剤を効率よく再生するには、エアータンクの容積と、エアータンク内の圧縮空気の温度、湿度に応じて、排気バルブを開弁させる時間(再生時間)と、エアータンク内の圧力(再生圧力)を適正にする必要が生じることから、乾燥剤に吸着された水分量、乾燥剤の劣化の程度、再生時に通気させる圧縮空気の圧力、湿度、温度等に応じて、乾燥剤の再生間隔や再生圧力、再生時間等の再生条件を適正にすることが好ましいので、前記車両用圧縮空気供給装置は、主ブレーキ(前輪)の負荷に供給する圧縮空気を貯留するエアータンク内に湿度検知センサーを設け、この湿度検知センサーの検知結果に基づいて乾燥剤の再生条件を適正に、すなわち、最適化するようになっている、車両用圧縮空気供給装置。」
(エ) また、甲第2号証には、甲2-1発明に係る車両用圧縮空気供給装置に適用される制御方法及び制御プログラムも記載されているといえるから、甲第2号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「車両に搭載する空気圧縮機を備え、該空気圧縮機から吐出した圧縮空気を車両の負荷に供給する車両用圧縮空気供給装置の制御方法であって、
前記車両用圧縮空気供給装置は、前記空気圧縮機の吐出ラインに設けられ、前記圧縮空気に含まれる水分等の異物を除去するエアードライヤーと、
前記エアードライヤーにおける乾燥剤を所定の再生条件で再生させる再生手段と、
を備え、
前記乾燥剤に吸着された水分量、前記乾燥剤の劣化の程度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の圧力、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の湿度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の温度のうちの少なくとも1つに応じて、前記乾燥剤の再生間隔、前記乾燥剤の再生圧力、前記乾燥剤の再生時間、前記乾燥剤の再生頻度、前記乾燥剤を再生させる際の通気量のうちの少なくとも1つの前記再生条件が最適化される、車両用圧縮空気供給装置の制御方法であり、
前記車両用圧縮空気供給装置は、コンプレッサー(空気圧縮機)と、コンプレッサーを制御するECUと、コンプレッサーから吐出された圧縮空気の水分を除去して、上記車両の負荷に圧縮空気を供給するエアードライヤーモジュールと、を備えて構成されるものであり、
ECUは、前記車両用圧縮空気供給装置を搭載する車両の車速等に基づいて、上記車両のエンジンを制御するとともに、コンプレッサー及びエアードライヤーモジュールの動作を制御するものであり、また、ECUには、エアードライヤーの動作状況に関する情報が入力されるものであり、
エアードライヤーモジュールには、前記車両が備える負荷が接続されているものであり、主ブレーキ(前輪)の負荷に供給される圧縮空気はエアータンクに貯留され、主ブレーキ(後輪)負荷に供給される圧縮空気はエアータンクに貯留されるものであり、
コンプレッサーの吐出管はエアードライヤーモジュールの流入管に接続され、流入管にはエアードライヤーが接続され、エアードライヤーは、ケースに乾燥剤を収容しており、この乾燥剤によってコンプレッサーから吐出された圧縮空気に含まれる水分等の異物を除去するものであり、
エアードライヤーには排気バルブが設けられ、この排気バルブが開くとエアードライヤーの本体内の圧縮空気が排気口から直接外部へ排出されるものであり、エアードライヤーモジュール内の空気圧が十分に高い状態で、排気バルブが開弁すると、エアードライヤーよりも下流側、例えば、エアータンク内に貯留された圧縮空気がエアードライヤーのケース内を逆流して排気口から放出され、このときケースを通る空気は急速な減圧によってスーパードライとなり、ケース内の乾燥剤から水分を奪うので、乾燥剤が再生されるものであり、
再生後の乾燥剤は、水分を吸着する吸着能が回復しており、圧縮空気の水分を除去可能となっているものであり、乾燥剤の再生動作は予め設定された所定の再生間隔(T0)毎に行われ、この再生間隔(T0)は乾燥剤の状態に応じて適正な間隔に更新されるものであり、
乾燥剤を再生させる場合、乾燥剤の状態、すなわち、乾燥剤に吸着されている水分量に応じて、再生時に乾燥剤に通気させるエア量を適正にする必要があり、また、エアータンクに貯留された圧縮空気をエアードライヤーに逆流させて、乾燥剤の再生を行う場合、乾燥剤を効率よく再生するには、エアータンクの容積と、エアータンク内の圧縮空気の温度、湿度に応じて、排気バルブを開弁させる時間(再生時間)と、エアータンク内の圧力(再生圧力)を適正にする必要が生じることから、乾燥剤に吸着された水分量、乾燥剤の劣化の程度、再生時に通気させる圧縮空気の圧力、湿度、温度等に応じて、乾燥剤の再生間隔や再生圧力、再生時間等の再生条件を適正にすることが好ましいので、前記車両用圧縮空気供給装置は、主ブレーキ(前輪)の負荷に供給する圧縮空気を貯留するエアータンク内に湿度検知センサーを設け、この湿度検知センサーの検知結果に基づいて乾燥剤の再生条件を適正に、すなわち、最適化するようになっている、車両用圧縮空気供給装置の制御方法。」(以下、「甲2-2発明」という。)
「車両に搭載する空気圧縮機を備え、該空気圧縮機から吐出した圧縮空気を車両の負荷に供給する車両用圧縮空気供給装置の制御プログラムであって、
前記車両用圧縮空気供給装置は、前記空気圧縮機の吐出ラインに設けられ、前記圧縮空気に含まれる水分等の異物を除去するエアードライヤーと、
前記エアードライヤーにおける乾燥剤を所定の再生条件で再生させる再生手段と、
を備え、
前記乾燥剤に吸着された水分量、前記乾燥剤の劣化の程度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の圧力、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の湿度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の温度のうちの少なくとも1つに応じて、前記乾燥剤の再生間隔、前記乾燥剤の再生圧力、前記乾燥剤の再生時間、前記乾燥剤の再生頻度、前記乾燥剤を再生させる際の通気量のうちの少なくとも1つの前記再生条件が最適化される、車両用圧縮空気供給装置の制御プログラムであり、
前記車両用圧縮空気供給装置は、コンプレッサー(空気圧縮機)と、コンプレッサーを制御するECUと、コンプレッサーから吐出された圧縮空気の水分を除去して、上記車両の負荷に圧縮空気を供給するエアードライヤーモジュールと、を備えて構成されるものであり、
ECUは、前記車両用圧縮空気供給装置を搭載する車両の車速等に基づいて、上記車両のエンジンを制御するとともに、コンプレッサー及びエアードライヤーモジュールの動作を制御するものであり、また、ECUには、エアードライヤーの動作状況に関する情報が入力されるものであり、
エアードライヤーモジュールには、前記車両が備える負荷が接続されているものであり、主ブレーキ(前輪)の負荷に供給される圧縮空気はエアータンクに貯留され、主ブレーキ(後輪)負荷に供給される圧縮空気はエアータンクに貯留されるものであり、
コンプレッサーの吐出管はエアードライヤーモジュールの流入管に接続され、流入管にはエアードライヤーが接続され、エアードライヤーは、ケースに乾燥剤を収容しており、この乾燥剤によってコンプレッサーから吐出された圧縮空気に含まれる水分等の異物を除去するものであり、
エアードライヤーには排気バルブが設けられ、この排気バルブが開くとエアードライヤーの本体内の圧縮空気が排気口から直接外部へ排出されるものであり、エアードライヤーモジュール内の空気圧が十分に高い状態で、排気バルブが開弁すると、エアードライヤーよりも下流側、例えば、エアータンク内に貯留された圧縮空気がエアードライヤーのケース内を逆流して排気口から放出され、このときケースを通る空気は急速な減圧によってスーパードライとなり、ケース内の乾燥剤から水分を奪うので、乾燥剤が再生されるものであり、
再生後の乾燥剤は、水分を吸着する吸着能が回復しており、圧縮空気の水分を除去可能となっているものであり、乾燥剤の再生動作は予め設定された所定の再生間隔(T0)毎に行われ、この再生間隔(T0)は乾燥剤の状態に応じて適正な間隔に更新されるものであり、
乾燥剤を再生させる場合、乾燥剤の状態、すなわち、乾燥剤に吸着されている水分量に応じて、再生時に乾燥剤に通気させるエア量を適正にする必要があり、また、エアータンクに貯留された圧縮空気をエアードライヤーに逆流させて、乾燥剤の再生を行う場合、乾燥剤を効率よく再生するには、エアータンクの容積と、エアータンク内の圧縮空気の温度、湿度に応じて、排気バルブを開弁させる時間(再生時間)と、エアータンク内の圧力(再生圧力)を適正にする必要が生じることから、乾燥剤に吸着された水分量、乾燥剤の劣化の程度、再生時に通気させる圧縮空気の圧力、湿度、温度等に応じて、乾燥剤の再生間隔や再生圧力、再生時間等の再生条件を適正にすることが好ましいので、前記車両用圧縮空気供給装置は、主ブレーキ(前輪)の負荷に供給する圧縮空気を貯留するエアータンク内に湿度検知センサーを設け、この湿度検知センサーの検知結果に基づいて乾燥剤の再生条件を適正に、すなわち、最適化するようになっている、車両用圧縮空気供給装置の制御プログラム。」(以下、「甲2-3発明」という。)
(2) 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)の判断
ア 甲第1号証を主引用例とした場合について
(ア) 本件発明2~4について
a 本件発明2と甲1-2発明とを対比すると、甲1-2発明における「圧縮機」及び「リザーバ」は、それぞれ、本件発明2における「圧縮空気を送出するコンプレッサ」及び「圧縮乾燥空気を貯留する貯留部」に相当し、甲1-2発明における「乾燥剤」を有する「空気乾燥機」は、前記「圧縮機」及び「リザーバ」の間に設けられて、水分を捕捉するものといえるから、本件発明2における「圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタ」に相当し、甲1-2発明における前記「圧縮機」、「リザーバ」及び「空気乾燥機」を備えた回路は、本件発明2における「圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路」に相当する。
また、甲1-2発明における「制御システム」は、本件発明2における「前記空気乾燥回路を制御する制御装置」に相当し、甲1-2発明において、「使用時に」「空気」が「カットオフ圧力に達するまで弁、空気乾燥機及び逆止弁を経てリザーバへ圧送され」ることは、本件発明2において「前記制御装置」が「前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御」することに相当し、甲1-2発明において、「空気乾燥機の再生」のとき、「再生信号により弁が開き、それによって乾燥空気が逆方向に空気乾燥機内を通過することができるようになり、乾燥剤から水分が大気中へ運ばれる」ことは、本件発明2において、「前記制御装置」が「前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御」することに相当し、甲1-2発明における「システム」は、本件発明2における「空気供給システム」に相当する。
b 前記aによれば、本件発明2と甲1-2発明とは、
「圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、
前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する、
空気供給システム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1:「空気供給システム」が、本件発明2においては、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されている」のに対して、甲1-2発明においては、「空気乾燥機」の「再生」が、「順方向の空気体積及び圧縮機の次回の動作停止にしたがって開始し、逆流時の膨張体積の見積もり量が順方向の圧縮空気の体積に等しくなった時に終了するものである」点。
c 以下、前記bの相違点1の容易想到性について検討する。
甲1-2発明は、「空気乾燥機」の「再生」が、「逆流時の膨張体積の見積もり量が順方向の圧縮空気の体積に等しくなった時に終了するもの」であり、そうすることで、「浪費する空気の体積が少なくなり得る」ものである。
ここで、前記「逆流時の膨張体積の見積もり量」は、「再生空気量」といえ、前記「順方向の圧縮空気の体積」は、コンプレッサから送出された圧縮空気の体積といえるから、甲1-2発明は、「再生空気量」を、コンプレッサから送出された圧縮空気の体積と等しい体積とすることを前提として、「浪費する空気の体積」を「少なく」するものといえる。
そして、そのような甲1-2発明において、「再生空気量」を、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率」に応じて、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成」することは、このときの「再生空気量」がコンプレッサから送出された圧縮空気の体積と等しい体積となるとはいえないから、前記前提を破却することとなるので、もとより想定されない。
してみれば、甲1-2発明を前記相違点1に係る本件発明2の発明特定事項を有するものとする動機付けは存在しないから、そうすることは、甲第2号証の記載事項にかかわらず、当業者が容易になし得ることではない。
d したがって、本件発明2は、甲1-2発明に基づいて、又は、甲1-2発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、本件発明2の発明特定事項を全て有する本件発明3~4について検討しても事情は同じである。
(イ) 本件発明6について
a 前記(ア)aと同様にして本件発明6と甲1-2発明とを対比すると、本件発明6と甲1-2発明とは、
「圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、
前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する、
空気供給システム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点2:「空気供給システム」が、本件発明6においては、「前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されている」のに対して、甲1-2発明においては、「空気乾燥機」の「再生」が、「順方向の空気体積及び圧縮機の次回の動作停止にしたがって開始し、逆流時の膨張体積の見積もり量が順方向の圧縮空気の体積に等しくなった時に終了するものである」点。
b 以下、前記aの相違点2の容易想到性について検討すると、甲1-2発明において、「再生空気量」を、「前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度」に応じて、「前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成」することは、このときの「再生空気量」がコンプレッサから送出された圧縮空気の体積と等しい体積となるとはいえないから、前記(ア)cの場合と同様に、もとより想定されないことである。
そうすると、前記(ア)cに記載したのと同様の理由により、甲1-2発明を前記相違点2に係る本件発明6の発明特定事項を有するものとすることも、甲第2号証の記載事項にかかわらず、当業者が容易になし得ることではない。
c したがって、本件発明6も、甲1-2発明に基づいて、又は、甲1-2発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 本件発明7について
a 本件発明7と甲1-1発明とを対比すると、甲1-1発明における「車両のエアブレーキシステムの空気乾燥機の再生を開始する方法」は、本件発明7における「空気供給システムの制御方法」に相当し、その余の点は前記(ア)aと同様であるから、本件発明7と甲1-1発明とは、
「圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置とを備える空気供給システムの制御方法であって、
前記制御装置が、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する、
空気供給システムの制御方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1’:「空気供給システムの制御方法」が、本件発明7においては、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されている」のに対して、甲1-1発明においては、「空気乾燥機」の「再生」が、「順方向の空気体積及び圧縮機の次回の動作停止にしたがって開始し、逆流時の膨張体積の見積もり量が順方向の圧縮空気の体積に等しくなった時に終了するものである」点。
b 以下、前記aの相違点1’の容易想到性について検討すると、前記相違点1’は、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率」に応じた「再生空気量」に関する相違点である点で、前記相違点1と共通するから、前記(ア)cに記載したのと同様の理由により、甲1-1発明を前記相違点1’に係る本件発明7の発明特定事項を有するものとすることは、甲第2号証の記載事項にかかわらず、当業者が容易になし得ることではない。
c したがって、本件発明7は、甲1-1発明に基づいて、又は、甲1-1発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ) 本件発明8について
a 前記(ウ)aと同様にして本件発明8と甲1-1発明とを対比すると、本件発明8と甲1-1発明とは、
「圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置とを備える空気供給システムの制御方法であって、
前記制御装置が、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する、
空気供給システムの制御方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点2’:「空気供給システムの制御方法」が、本件発明8においては、「前記圧縮空気の温度又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されている」のに対して、甲1-1発明においては、「空気乾燥機」の「再生」が、「順方向の空気体積及び圧縮機の次回の動作停止にしたがって開始し、逆流時の膨張体積の見積もり量が順方向の圧縮空気の体積に等しくなった時に終了するものである」点。
b 以下、前記aの相違点2’の容易想到性について検討すると、前記相違点2’は、「前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度」に応じた「再生空気量」に関する相違点である点で前記相違点2と共通するから、前記(イ)bに記載したのと同様の理由により、甲1-1発明を前記相違点2’に係る本件発明8の発明特定事項を有するものとすることは、甲第2号証の記載事項に関わらず、当業者が容易になし得ることではない。
c したがって、本件発明8は、甲1-1発明に基づいて、又は、甲1-1発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(オ) 本件発明9について
a 本件発明9と甲1-3発明とを対比すると、甲1-3発明における「車両のエアブレーキシステムの空気乾燥機の再生を開始する方法に適用されるプログラム」は、本件発明9における「空気供給システムの制御プログラム」に相当し、その余の点は前記(ア)aと同様であるから、本件発明9と甲1-3発明とは、
「圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置とを備える空気供給システムの制御プログラムであって、
前記制御装置を、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する除湿動作実行部、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する再生動作実行部、として機能させる、
空気供給システムの制御プログラム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1’’:「空気供給システムの制御プログラム」が、本件発明9においては、「前記制御装置を」、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくする設定部、として機能させる」ものであるのに対して、甲1-3発明においては、「空気乾燥機」の「再生」が、「順方向の空気体積及び圧縮機の次回の動作停止にしたがって開始し、逆流時の膨張体積の見積もり量が順方向の圧縮空気の体積に等しくなった時に終了するものである」点。
b 以下、前記aの相違点1’’の容易想到性について検討すると、前記相違点1’’は、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率」に応じた「再生空気量」に関する相違点である点で前記相違点1と共通するから、前記(ア)cに記載したのと同様の理由により、甲1-3発明を前記相違点1’’に係る本件発明9の発明特定事項を有するものとすることは、甲第2号証の記載事項に関わらず、当業者が容易になし得ることではない。
d したがって、本件発明9は、甲1-3発明に基づいて、又は、甲1-3発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(カ) 本件発明10について
a 前記(オ)aと同様にして本件発明10と甲1-3発明とを対比すると、本件発明10と甲1-3発明とは、
「圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置とを備える空気供給システムの制御プログラムであって、
前記制御装置を、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する除湿動作実行部、
前記空気乾燥回路を制御して貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する再生動作実行部、として機能させる、
空気供給システムの制御プログラム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点2’’:「空気供給システムの制御プログラム」が、本件発明10においては、「前記制御装置を」、「前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくする設定部、として機能させる」ものであるのに対して、甲1-3発明においては、「空気乾燥機」の「再生」が、「順方向の空気体積及び圧縮機の次回の動作停止にしたがって開始し、逆流時の膨張体積の見積もり量が順方向の圧縮空気の体積に等しくなった時に終了するものである」点。
b 以下、前記aの相違点2’’の容易想到性について検討すると、前記相違点2’’は、「前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度」に応じた「再生空気量」に関する相違点である点で前記相違点2と共通するから、前記(イ)bに記載したのと同様の理由により、甲1-3発明を前記相違点2’’に係る本件発明10の発明特定事項を有するものとすることは、甲第2号証の記載事項に関わらず、当業者が容易になし得ることではない。
c したがって、本件発明10は、甲1-3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(キ) 本件発明11について
a 前記(ア)aと同様にして本件発明11と甲1-2発明とを対比すると、本件発明11と甲1-2発明とは、
「圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、
前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する、
空気供給システム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点3:「空気供給システム」が、本件発明11においては、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い場合には、前記再生空気量を大きくし、前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が低い場合には、前記再生空気量を小さくするように構成されている」のに対して、甲1-2発明においては、「空気乾燥機」の「再生」が、「順方向の空気体積及び圧縮機の次回の動作停止にしたがって開始し、逆流時の膨張体積の見積もり量が順方向の圧縮空気の体積に等しくなった時に終了するものである」点。
b 以下、前記aの相違点3の容易想到性について検討すると、前記相違点3は、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率」に応じた「再生空気量」に関する相違点である点で、前記相違点1と共通するから、前記(ア)cに記載したのと同様の理由により、甲1-2発明を前記相違点3に係る本件発明11の発明特定事項を有するものとすることは、甲第2号証の記載事項に関わらず、当業者が容易になし得ることではない。
c したがって、本件発明11も、甲1-2発明に基づいて、又は、甲1-2発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ク) 本件発明12について
a 前記(ア)aと同様にして本件発明12と甲1-2発明とを対比すると、本件発明12と甲1-2発明とは、
「圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、
前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する、
空気供給システム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点4:「空気供給システム」が、本件発明12においては、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記貯留部の圧力であって前記再生動作を開始するための上限圧を高く設定し、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には前記上限圧を低く設定し、前記上限圧が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記上限圧が低い場合には前記再生空気量を大きくするように構成されている」のに対して、甲1-2発明においては、「空気乾燥機」の「再生」が、「順方向の空気体積及び圧縮機の次回の動作停止にしたがって開始し、逆流時の膨張体積の見積もり量が順方向の圧縮空気の体積に等しくなった時に終了するものである」点。
b 以下、前記aの相違点4の容易想到性について検討すると、前記相違点4は、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率」に応じた「再生空気量」に関する相違点である点で、前記相違点1と共通するから、前記(ア)cに記載したのと同様の理由により、甲1-2発明を前記相違点4に係る本件発明12の発明特定事項を有するものとすることは、甲第2号証の記載事項に関わらず、当業者が容易になし得ることではない。
c したがって、本件発明12も、甲1-2発明に基づいて、又は、甲1-2発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない
(ケ) 申立人の主張について
a 甲第1号証を主引用例とした場合の申立人の特許異議申立書における主張の概要は、甲第1号証に記載された発明は、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定する」ものとはいえないし、「前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定する」ものともいえないが、甲第1号証に記載された発明において、「一定期間内の前記コンプレッサの稼働率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定する」ことや、「前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定する」ことは、甲第1号証の特許請求の範囲の請求項3(前記(1)ア(ア)a)、段落【0021】(前記(1)ア(ア)b)、甲第2号証の段落【0030】(前記(1)イ(ア)b)の記載から、当業者が容易に想到し得るので、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである、というものである(44ページ10行~46ページ15行、48ページ下から6行~49ページ17行)。
b ところが、甲第1号証の特許請求の範囲の請求項3の記載は、「空気圧縮機からの空気の瞬間的な流量」「を変更する工程」を、「動作期間中における圧縮機の動作と動作停止の比」「を参照して行う」こと、言い替えれば、「順方向」の「空気圧縮機からの空気の体積」を「見積も」る場合に、「動作期間中における圧縮機の動作と動作停止の比」「を参照」することを開示するものといえ、同段落【0013】(前記(1)ア(ア)b)の記載も同様であり、同段落【0021】の記載は、「空気乾燥機」の「再生」を、「順方向の空気体積及び圧縮機の次回の動作停止にしたがって開始し、逆流時の膨張体積の見積もり量が順方向の圧縮空気の体積に等しくなった時に終了する」際に、「逆流体積を理想の体積に近似するように最適化するため」、「逆流させる空気の流量」を、「空気温度のようなシステムパラメータにしたがって変更することとしてもよい」ことを開示するものといえ、これらは、いずれも、「再生空気量」を、コンプレッサから送出された圧縮空気の体積と等しい体積とすることを前提としたものといえる。
そうすると、甲第1号証に記載された発明が、「再生空気量」を、コンプレッサから送出された圧縮空気の体積と等しい体積とすることを前提としていることに変わりはないから、前記(ア)cに記載したのと同様の理由により、甲第1号証に記載された発明を、前記相違点1~4に係る発明特定事項を有するものとすることは、もとより想定されないことにも変わりはないので、甲第2号証に記載された事項に関わらず、そうすることは当業者が容易になし得ることではない。
してみれば、本件発明2~4及び6~12は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、申立人の前記主張は採用できない。
(コ) 小括
よって、本件発明2~4及び6~12は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第4の4(1)の特許異議の申立て理由は理由がない。
イ 甲第2号証を主引用例とした場合について
(ア) 本件発明6について
a 本件発明6と甲2-1発明とを対比すると、甲2-1発明における「コンプレッサー」、「エアータンク」及び「乾燥剤」を有する「エアードライヤー」は、それぞれ、本件発明6における「圧縮空気を送出するコンプレッサ」、「圧縮乾燥空気を貯留する貯留部」及び「圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタ」に相当し、甲2-1発明における前記「コンプレッサー」、「エアータンク」及び「エアードライヤー」を有する回路は、本件発明6における「圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路」に相当する。
また、甲2-1発明における「ECU」は、本件発明6における「前記空気乾燥回路を制御する制御装置」に相当し、甲2-1発明において、「エアードライヤーモジュール」で「コンプレッサーから吐出された圧縮空気の水分を除去して、上記車両の負荷に圧縮空気を供給する」際に、「主ブレーキ(前輪)の負荷に供給される圧縮空気はエアータンクに貯留され、主ブレーキ(後輪)負荷に供給される圧縮空気はエアータンクに貯留される」ことは、本件発明6において「前記制御装置」が「前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御」することに相当し、甲2-1発明において、「エアードライヤーモジュール内の空気圧が十分に高い状態で、排気バルブが開弁すると、エアードライヤーよりも下流側、例えば、エアータンク内に貯留された圧縮空気がエアードライヤーのケース内を逆流して排気口から放出され、このときケースを通る空気は急速な減圧によってスーパードライとなり、ケース内の乾燥剤から水分を奪うので、乾燥剤が再生される」ことは、本件発明6において、「前記制御装置」が「前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御」することに相当し、甲2-1発明における「車両用圧縮空気供給装置」は、本件発明6における「空気供給システム」に相当する。
b 前記aによれば、本件発明6と甲2-1発明とは、
「圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、
前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する、
空気供給システム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点5:「空気供給システム」が、本件発明6は、「前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されている」のに対して、甲2-1発明は、「前記乾燥剤に吸着された水分量、前記乾燥剤の劣化の程度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の圧力、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の湿度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の温度のうちの少なくとも1つに応じて、前記乾燥剤の再生間隔、前記乾燥剤の再生圧力、前記乾燥剤の再生時間、前記乾燥剤の再生頻度、前記乾燥剤を再生させる際の通気量のうちの少なくとも1つの前記再生条件が最適化される」ものであって、「乾燥剤を再生させる場合、乾燥剤の状態、すなわち、乾燥剤に吸着されている水分量に応じて、再生時に乾燥剤に通気させるエア量を適正にする必要があり、また、エアータンクに貯留された圧縮空気をエアードライヤーに逆流させて、乾燥剤の再生を行う場合、乾燥剤を効率よく再生するには、エアータンクの容積と、エアータンク内の圧縮空気の温度、湿度に応じて、排気バルブを開弁させる時間(再生時間)と、エアータンク内の圧力(再生圧力)を適正にする必要が生じることから、乾燥剤に吸着された水分量、乾燥剤の劣化の程度、再生時に通気させる圧縮空気の圧力、湿度、温度等に応じて、乾燥剤の再生間隔や再生圧力、再生時間等の再生条件を適正にすることが好ましいので、前記車両用圧縮空気供給装置は、主ブレーキ(前輪)の負荷に供給する圧縮空気を貯留するエアータンク内に湿度検知センサーを設け、この湿度検知センサーの検知結果に基づいて乾燥剤の再生条件を適正に、すなわち、最適化するようになっている」ものである点。
c 以下、前記bの相違点5の容易想到性について検討すると、甲2-1発明は、「エアードライヤー」の「乾燥剤」を再生するとき、「前記乾燥剤に吸着された水分量、前記乾燥剤の劣化の程度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の圧力、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の湿度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の温度のうちの少なくとも1つに応じて、前記乾燥剤の再生間隔、前記乾燥剤の再生圧力、前記乾燥剤の再生時間、前記乾燥剤の再生頻度、前記乾燥剤を再生させる際の通気量のうちの少なくとも1つの前記再生条件が最適化される」ものとされており、前記「再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の温度」及び「前記乾燥剤を再生させる際の通気量」は、それぞれ、本件発明6における「前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度」及び「再生空気量」に相当するものといえる。
ところが、甲第2号証には、「前記乾燥剤に吸着された水分量、前記乾燥剤の劣化の程度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の圧力、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の湿度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の温度」と、「前記乾燥剤の再生間隔、前記乾燥剤の再生圧力、前記乾燥剤の再生時間、前記乾燥剤の再生頻度、前記乾燥剤を再生させる際の通気量」の中から、殊更、「再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の温度」と「前記乾燥剤を再生させる際の通気量」とを組み合わせることが記載されるものではないし、更に、そこから進んで、「前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくする」ことが記載されるものでもない。
また、甲2-1発明は、結局のところ、「乾燥剤を再生させる場合」、「主ブレーキ(前輪)の負荷に供給する圧縮空気を貯留するエアータンク内に湿度検知センサーを設け、この湿度検知センサーの検知結果に基づいて乾燥剤の再生条件を適正に、すなわち、最適化するようになっている」ものであるから、甲第2号証には、実質的には、「エアータンク内」の「圧縮空気」の「湿度」に応じて「乾燥剤の再生条件」を「最適化する」ことが記載されているにすぎない。
これらのことからみれば、甲第2号証に、前記相違点5に係る「前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されている」ことが記載されているとはいえないから、甲2-1発明を、前記相違点5に係る本件発明6の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。
d したがって、本件発明6は、甲2-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件発明8について
a 本件発明8と甲2-2発明とを対比すると、甲2-2発明における「車両用圧縮空気供給装置の制御方法」は、本件発明8における「空気供給システムの制御方法」に相当し、その余の点は前記(ア)aと同様であるから、本件発明8と甲2-2発明とは、
「圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置とを備える空気供給システムの制御方法であって、
前記制御装置が、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する、
空気供給システムの制御方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点5’:「空気供給システムの制御方法」が、本件発明8は、「前記圧縮空気の温度又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定し、前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくする」ものであるのに対して、甲2-2発明は、「前記乾燥剤に吸着された水分量、前記乾燥剤の劣化の程度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の圧力、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の湿度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の温度のうちの少なくとも1つに応じて、前記乾燥剤の再生間隔、前記乾燥剤の再生圧力、前記乾燥剤の再生時間、前記乾燥剤の再生頻度、前記乾燥剤を再生させる際の通気量のうちの少なくとも1つの前記再生条件が最適化される」ものであって、「乾燥剤を再生させる場合、乾燥剤の状態、すなわち、乾燥剤に吸着されている水分量に応じて、再生時に乾燥剤に通気させるエア量を適正にする必要があり、また、エアータンクに貯留された圧縮空気をエアードライヤーに逆流させて、乾燥剤の再生を行う場合、乾燥剤を効率よく再生するには、エアータンクの容積と、エアータンク内の圧縮空気の温度、湿度に応じて、排気バルブを開弁させる時間(再生時間)と、エアータンク内の圧力(再生圧力)を適正にする必要が生じることから、乾燥剤に吸着された水分量、乾燥剤の劣化の程度、再生時に通気させる圧縮空気の圧力、湿度、温度等に応じて、乾燥剤の再生間隔や再生圧力、再生時間等の再生条件を適正にすることが好ましいので、前記車両用圧縮空気供給装置は、主ブレーキ(前輪)の負荷に供給する圧縮空気を貯留するエアータンク内に湿度検知センサーを設け、この湿度検知センサーの検知結果に基づいて乾燥剤の再生条件を適正に、すなわち、最適化するようになっている」ものである点。
b 以下、前記aの相違点5’の容易想到性について検討すると、前記相違点5’は、「前記圧縮空気の温度又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて」「再生空気量を設定する」ことに係るものである点で前記相違点5と共通するから、前記(ア)cに記載したのと同様の理由により、甲2-2発明を前記相違点5’に係る本件発明8の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。
c したがって、本件発明8は、甲2-2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 本件発明10について
a 本件発明10と甲2-3発明とを対比すると、甲2-3発明における「車両用圧縮空気供給装置の制御プログラム」は、本件発明10における「空気供給システムの制御プログラム」に相当し、その余の点は前記(ア)aと同様であるから、本件発明10と甲2-3発明とは、
「圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置とを備える空気供給システムの制御プログラムであって、
前記制御装置を、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する除湿動作実行部、
前記空気乾燥回路を制御して前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する再生動作実行部、として機能させる
空気供給システムの制御プログラム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点5’’:「空気供給システムの制御プログラム」が、本件発明10は、「前記制御装置を」、「前記圧縮空気の温度又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定する設定部、として機能させる」ものであるのに対して、甲2-3発明は、「前記乾燥剤に吸着された水分量、前記乾燥剤の劣化の程度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の圧力、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の湿度、再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の温度のうちの少なくとも1つに応じて、前記乾燥剤の再生間隔、前記乾燥剤の再生圧力、前記乾燥剤の再生時間、前記乾燥剤の再生頻度、前記乾燥剤を再生させる際の通気量のうちの少なくとも1つの前記再生条件が最適化される」ものであって、「乾燥剤を再生させる場合、乾燥剤の状態、すなわち、乾燥剤に吸着されている水分量に応じて、再生時に乾燥剤に通気させるエア量を適正にする必要があり、また、エアータンクに貯留された圧縮空気をエアードライヤーに逆流させて、乾燥剤の再生を行う場合、乾燥剤を効率よく再生するには、エアータンクの容積と、エアータンク内の圧縮空気の温度、湿度に応じて、排気バルブを開弁させる時間(再生時間)と、エアータンク内の圧力(再生圧力)を適正にする必要が生じることから、乾燥剤に吸着された水分量、乾燥剤の劣化の程度、再生時に通気させる圧縮空気の圧力、湿度、温度等に応じて、乾燥剤の再生間隔や再生圧力、再生時間等の再生条件を適正にすることが好ましいので、前記車両用圧縮空気供給装置は、主ブレーキ(前輪)の負荷に供給する圧縮空気を貯留するエアータンク内に湿度検知センサーを設け、この湿度検知センサーの検知結果に基づいて乾燥剤の再生条件を適正に、すなわち、最適化するようになっている」ものである点。
b 以下、前記aの相違点5’’の容易想到性について検討すると、前記相違点5’’は、「前記圧縮空気の温度又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて」「再生空気量を設定する」ことに係るものである点で前記相違点5と共通するから、前記(ア)cに記載したのと同様の理由により、甲2-3発明を前記相違点5’’に係る本件発明10の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。
c したがって、本件発明10は、甲2-3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ) 申立人の主張について
a 甲第2号証を主引用例とした場合の申立人の特許異議申立書における主張の概要は、甲第2号証に記載された発明は、再生時に乾燥剤に通気させる圧縮空気の温度に応じて1回の再生の動作で消費する生成空気量を最適化しているか不明であるが、再生の動作を1回で行うか複数回に分けて行うかは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項にすぎないから、甲第2号証に記載された発明において、「前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定する」ことは、当業者が容易になし得るので、設定登録時の特許請求の範囲の請求項5、6、8、10に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、というものである(49ページ下から9行~51ページ最終行)。
b 前記aの主張は、甲第2号証に記載された発明が、「前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて」「再生空気量を設定する」ものであることを前提として、再生の動作を1回で行うか複数回に分けて行うかは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項にすぎないことをいうものと解される。
ところが、甲第2号証には、「再生時に前記乾燥剤に通気させる圧縮空気の温度」と「前記乾燥剤を再生させる際の通気量」とを組み合わせることが記載されるものではないし、更に、そこから進んで、「前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくする」ことが記載されるものでもないこと、結局のところ、「エアータンク内」の「圧縮空気」の「湿度」に応じて「乾燥剤の再生条件」を「最適化する」ことが記載されているにすぎないことは、前記(ア)cに記載したとおりである。
そうすると、甲第2号証に記載された発明は、そもそも、「前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて」「再生空気量を設定する」ものとはいえないから、前記aの主張は前提において誤っている。
そして、甲第2号証に記載された発明を、前記相違点5~5’’に係る発明特定事項を有するものとすることは当業者が容易になし得ることではないことは、前記(ア)~(ウ)に記載したとおりであるから、本件発明6、8及び10は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないので、申立人の前記主張は採用できない。
(オ) 小括
よって、本件発明6、8及び10は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第4の4(2)の特許異議の申立て理由及び前記第5の1の取消理由はいずれも理由がない。
(3) 申立人意見書の主張について
ア 進歩性欠如についての申立人意見書における主張は、概略、以下のとおりである。
令和7年6月13日付けの取消理由通知には、特許法第36条第6項第1号違反の説示において、「本件発明1は、従来技術と同様に、本件課題を解決しないものも包含するものといえる。」と指摘されており、特許庁審査基準によれば、本件発明が進歩性を肯定されるためには、本件発明が引用発明と比較して有利な効果を有することが必要であるとされている。
そして、前記3(5)アに記載したとおり、本件発明は従来技術と同様に本件課題を解決しないものも包含するから、本件発明が引用発明に対して新規性を有するとしても、相違点に係る構成で有利な効果を奏するものではないので、相違点に係る構成は設計的事項の範囲内といえる。
したがって、本件発明2~4及び6~12に係る特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
イ 以下、前記アの主張について検討すると、前記主張は、本件発明が本件課題を解決しないものを包含することを前提としたものといえる。
ところが、本件発明2~4及び6~12が本件課題を解決できないものを包含するとはいえないことは、前記3(5)イに記載したとおりであるから、前記主張は前提において誤っている。
そして、本件発明2~4及び6~12と甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明とを対比したときの相違点がいずれも容易想到ではないことは、前記(2)ア~イの相違点1~5’’についての容易想到性の検討において記載したとおりであるから、前記相違点1~5’’の構成が設計的事項の範囲内であるともいえないので、本件発明2~4及び6~12に係る特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものとはいえない。
したがって、前記アの主張は採用できない。
(4) 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)のまとめ
よって、本件発明2~4及び6~12に係る特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものではないから、前記第4の4の特許異議の申立て理由及び前記第5の1の取消理由はいずれも理由がない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、申立人の特許異議申立書に記載した特許異議の申立て理由及び当審の取消理由によっては、本件発明2~4及び6~12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明2~4及び6~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正により請求項1及び5は削除されたから、請求項1及び5に係る特許異議の申立てについては対象となる請求項が存在しなくなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-700405