特許異議申立
2022-700045
光源装置および照明装置
- 審判番号
- 2022-700045
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-546741
- 登録番号
- 6905070
- 請求日
- 2022年01月20日
- 審決日
- 2023年03月30日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】京セラ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人ブナ国際特許事務所
- 【異議申立人】中石 幸明
- 審判長/審判官
- 審判長 中村 則夫
- 審判官 藤井 昇
- 審判官 出口 昌哉
- 分類
- P1651.1 -YAA(F21V) / P1651.113-YAA(F21V) / P1651.121-YAA(F21V) / P1651.537-YAA(F21V) / P1651.536-YAA(F21V) / P1651.55 -YAA(F21V) / P1651.832-YAA(F21V) / P1651.841-YAA(F21V) / P1651.853-YAA(F21V)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第2条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6905070号発明「光源装置および照明装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6905070号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕、11、12について訂正することを認める。
特許第6905070号の請求項1~12に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6905070号の請求項1~12に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)10月2日(優先権主張 2017年10月2日、2017年11月1日)を国際出願日とする特許出願であって、令和3年6月28日にその特許権の設定登録がされ、令和3年7月21日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 4年 1月20日付け : 特許異議申立人中石幸明(以下、「申立人」という。)による請求項1~12に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 4年 3月30日付け : 取消理由通知書
令和 4年 6月 6日付け : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 4年 6月22日付け : 訂正請求があった旨の通知書
令和 4年 7月25日付け : 申立人による意見書の提出
令和 4年11月 2日付け : 取消理由通知書
令和 4年11月15日付け : 申立人による上申書の提出
令和 4年12月 8日付け : 申立人による上申書の提出
令和 5年 1月10日付け : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 5年 1月24日付け : 訂正請求があった旨の通知書
令和 5年 2月13日付け : 申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年1月10日付けの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許第6905070号(以下、「本件特許」という。)の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである(訂正箇所に下線を付した。)。
なお、特許法第120条の5第7項の規定により、令和4年6月6日の訂正請求書による訂正請求は取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「該サファイア板の前記第1面に対向して位置する波長変換材と、」と記載されているのを、「該サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材と、」に訂正する。
また、「前記c軸と、前記第1励起光の光軸とのなす角は、1゜以上である光源装置。」と記載されているのを、「前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上であり、前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0°以上1°未満である他の励起光源を有していない光源装置。」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~10も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「該サファイア板の前記第1面に対向して位置する波長変換材と、」と記載されているのを、「該サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材と、」に訂正する。
また、「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、1°以下であり、前記c軸と、前記第1励起光の光軸とのなす角は、89゜以下である光源装置。」と記載されているのを、「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、1゜未満であり、前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上89°以下であり、前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が1゜未満または89°より大きく90°以下である他の励起光源を有していない光源装置。」に訂正する(請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~10も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項11に「該サファイア板の前記第1面に対向して位置する波長変換材と、」と記載されているのを、「該サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材と、」に訂正し、「前記c軸と、前記第1励起光の光軸とのなす角は、1゜以上であり、前記サファイア板の第1面、第2面が、c面から0.1゜以上のオフセット角を有している光源装置。」と記載されているのを、「前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上であり、前記サファイア板の第1面、第2面が、c面から0.1°以上のオフセット角を有しており、前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0゜以上1゜未満である他の励起光源をしていない光源装置。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項12に「該サファイア板の前記第1面に対向して位置する波長変換材と、」と記載されているのを、「該サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材と、」に訂正し、「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、1゜以下であり、前記c軸と、前記第1励起光の光軸とのなす角は、89゜以下であり、前記サファイア板の第1面、第2面が、c面に垂直な面から0.1゜以上のオフセット角を有している光源装置。」と記載されているのを、「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、1゜未満であり、前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上89°以下であり、前記サファイア板の第1面、第2面が、c面に垂直な面から0.1゜以上のオフセット角を有しており、前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が1゜未満または89°より大きく90°以下である他の励起光源を有していない光源装置。」に訂正する。
(5)一群の請求項について
訂正前の請求項1、3~10について、請求項3~10は、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
また、訂正前の請求項2から10について、請求項3~10は、訂正前の請求項2をも直接又は間接的に引用しているものであり、訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~10に対応する訂正後の請求項1~10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正のうち請求項1~10に対する訂正は、一群の請求項1~10について請求されている。
2 訂正要件についての判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
上記訂正事項1は、サファイア板と波長変換材とが接触していることを明瞭にすると共に、サファイアのc軸と第1励起光の光軸とのなす角を規定するにあたり、第1励起光の光軸がサファイア板の第2面に入射するものであることを明瞭にし、かつ第1励起光をc軸に対して斜めに入射させる(すなわち、「前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0゜以上1゜末満である他の励起光源を有していない」)ことを明瞭にしたものである。
したがって、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてした訂正であること
上記訂正事項1において、「該サファイア板の前記第1面に対向して位置する波長変換材と、」と記載されているのを、「該サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材と、」に訂正した根拠は、図1等である。
「前記第1励起光の光軸」とあるのを「前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸」と訂正した根拠は、訂正前の請求項1において、「第1励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する」との記載があり、これは、第1励起光の光軸は第2面に入射することを示していることに他ならないからである。段落【0033】にも、光が第2面11bに入射角θaで入射する旨の記載がある。
また、「前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0゜以上1゜未満である他の励起光源を有していない」との記載は、その直前の記載、すなわち「前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1゜以上であり」との記載を踏まえ、「0゜以上1゜未満である他の励起光源」を請求項1の範囲に含まないことを明瞭にしたものである。
したがって、当該訂正事項1による訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、上記訂正事項1は、発明特定事項を明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
上記訂正事項2は、上記訂正事項1と同様に、サファイア板と波長変換材とが接触していることを明瞭にした。また、第1面および第2面と、サファイアのc軸とのなす角が1゜未満であり、c軸と、第2面に入射する第1励起光の光軸とのなす角が1゜以上89゜以下であるとすることにより、c軸と、第2面を通じて波長変換材に出射する第1励起光の光軸とのなす角が1゜未満または89゜より大きく90゜以下である他の励起光源を有していない、言い換えると、第1面及び第2面とサファイアのc軸が平行で、第1の励起光の光軸が第2面に垂直なものとなる従来技術を含まないことを明瞭にしたものである。
したがって、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であること
上記訂正事項2において、上記訂正事項1と同様に、「該サファイア板の前記第1面に対向して位置する波長変換材と、」と記載されているのを、「該サファイア板の前記第1面に対向して接触している波長変換材と、」に訂正した根拠は、図1等である。
また、「前記第1励起光の光軸」とあるのを「前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸」と訂正した根拠は、訂正前の請求項2において「第1励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する」との記載があり、これは、第1励起光の光軸は第2面に入射することを示していることに他ならない。段落【0033】にも、光が第2面11bに入射角θaで入射する旨の記載がある。
また、「前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が1°未満または89゜より大きく90゜以下である他の励起光源を有していない」との記載は、その直前の記載、すなわち「前記c軸と、前記第1励起光の光軸とのなす角は、1゜以上89゜以下」との記載を踏まえ、「1゜未満または89゜より大きく90゜以下である他の励起光源」を請求項2の範囲に含まないことを明瞭にしたものである。
したがって、当該訂正事項2による訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、上記訂正事項2は、発明特定事項を明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、請求項11について、上記訂正事項1と同様の訂正をするものであるから、上記訂正事項1と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であること
訂正事項3による訂正は、請求項11について、上記訂正事項1と同様の訂正をするものであるから、上記訂正事項1と同様に、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3による訂正は、請求項11について、上記訂正事項1と同様の訂正をするものであるから、上記訂正事項1と同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、請求項12について、上記訂正事項2と同様の訂正をするものであるから、上記訂正事項2と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であること
訂正事項4による訂正は、請求項12について、上記訂正事項2と同様の訂正をするものであるから、上記訂正事項2と同様に、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4による訂正は、請求項12について、上記訂正事項2と同様の訂正をするものであるから、上記訂正事項2と同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
3 小括
以上のとおりであるから、訂正事項1~訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」とを目的とし、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕、11、12について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正請求により訂正された請求項1~12に係る発明(以下、「本件発明1~12」という。)は、令和5年1月10日付けの訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
対向する第1面と第2面とを有するサファイア板と、
該サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材と、
指向性を有する第1励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源とを備えた光源装置であって、
前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、89゜を越え、91゜未満であり、
前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上であり、
前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0°以上1゜未満である他の励起光源を有していない光源装置。
【請求項2】
対向する第1面と第2面とを有するサファイア板と、
該サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材と、
指向性を有する第1励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源とを備えた光源装置であって、
前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、1゜未満であり、
前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上89゜以下であり、
前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が1゜未満または89゜より大きく90゜以下である他の励起光源を有していない光源装置。
【請求項3】
前記c軸と、前記第1励起光の光軸とのなす角は、20゜以上である請求項1または請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記第2面に対する前記第1励起光の入射角は、75゜以下である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光源装置。
【請求項5】
指向性を有する第2励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する第2励起光源をさらに備え、前記第1励起光と、前記第2励起光とは、少なくとも一部が前記波長変換材で重なる請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光源装置。
【請求項6】
前記c軸と、前記第1励起光の光軸とのなす角と、前記c軸と、前記第2励起光の光軸とのなす角は、異なっている請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記第2面に垂直な方向から見たとき、前記第1励起光の光軸と前記第2励起光の光軸のなす角度が80゜以上100゜以下である請求項5または請求項6に記載の光源装置。
【請求項8】
前記サファイア板と前記波長変換材との間に、前記励起光を透過し、前記波長変換材から出射する波長変換光を反射する、ダイクロイック膜を備える、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の光源装置。
【請求項9】
前記サファイア板の前記第2面に、前記励起光の反射率を低減させる、反射防止膜を備える、請求項1乃至8のいずれかに記載の光源装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の光源装置と、導光部材とを備えた照明装置。
【請求項11】
対向する第1面と第2面とを有するサファイア板と、
該サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材と、
指向性を有する第1励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源とを備えた光源装置であって、
前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、89゜を越え、91゜未満であり、
前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上であり、
前記サファイア板の第1面、第2面が、c面から0.1゜以上のオフセット角を有しており、
前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0゜以上1゜未満である他の励起光源を有していない光源装置。
【請求項12】
対向する第1面と第2面とを有するサファイア板と、
該サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材と、
指向性を有する第1励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源とを備えた光源装置であって、
前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、1゜未満であり、
前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上89゜以下であり、
前記サファイア板の第1面、第2面が、c面に垂直な面から0.1゜以上のオフセット角を有しており、-
前記c軸と、前記2面を通じて前記波長変換材に出射する前記1励起光の光軸とのなす角が1゜未満または89゜より大きく90゜以下である他の励起光源を有していない光源装置。
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
(1)当審が令和4年3月30日付けの取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
「<理由1>
(明確性)請求項1~12に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。
<理由2>
(進歩性)本件特許の請求項1~12に係る発明は、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
<理由1>について
1.請求項1には「指向性を有する第1励起光」と記載されているが、「第1励起光」とは、光源自体から出射したままの状態の励起光のことか、レンズ等で向きを変えてサファイア板に入射する状態の励起光のことか、それともそれ以外のものを意味するのかが不明であり、明確でない。
2.請求項1には「前記第1励起光の光軸」と記載されているが、「前記第1励起光の光軸」とは、第1励起光のどこの光軸を意味しているのかが明確でない。
補足すると、光源が複数ある場合には、集まった励起光全体における光軸のことか、それぞれの励起光における光軸のことを意味するのか不明であり、光源が1つの場合には、光源自体から出射したままの状態の励起光における光軸のことか、レンズ等で向きを変えてサファイア板に入射する状態の励起光の光軸のことか、それともそれ以外の光軸を意味しているのかが不明であり、明確でない。
3.請求項5には、「指向性を有する第2励起光」という記載、請求項6、7には「前記第2励起光の光軸」という記載があるが、上記1.2と同様の理由により、明確でない。
4.請求項2、請求項11、請求項12の上記1、2と同様の記載も同様の理由により明確でない。また、請求項1、2を引用する請求項3~10についても同様に明確でない。
<理由2>について
・請求項 1、5、6、8~10
・引用文献 1
・請求項 3~6、8~11
・引用文献 1、2
・請求項 7~10
・引用文献 1、2、3
・請求項 1~4、8、11、12
・引用文献 2
・請求項 5、6、8~10
・引用文献 2、1
・請求項 7、8
・引用文献 2、3
・請求項 7~10
・引用文献 2、1、3
1.引用文献等一覧
引用文献1:国際公開第2017/043122号(異議申立人中石幸明(以下「申立人」という。)が提出した甲第1号証)
引用文献2:特開2015-36790号公報(申立人が提出した甲第2号証)
引用文献3:特開2012-9242号公報(申立人が提出した甲第4号証)」
(2)当審が令和4年11月2日付けの取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
「(サポート要件)請求項1~12に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。
記
(1)請求項1、2、11、及び12において「該サファイア板の前記第1面に対向して位置する波長変換材」については特定されているが、「サファイア板と波長変換材とは接触していること」(図1等から明らか)が特定されていないため、剥離などが想定されているものではなく、「熱膨張差に起因するサファイア板からの波長変換材の剥離や波長変換材の損傷を防止する」(段落【0019】、【0032】)という発明が解決しようとする課題を解決できないものまで、特許請求されている。
したがって、請求項1、2、11、12には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、請求項1、2、11、12に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。
また、請求項1、2を直接又は間接的に引用する請求項3~10についても同様である。
よって、請求項1~12に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
(「サファイア板と波長変換材とが接触している」ことを請求項1、2、11、12において特定してはいかがか。)
(2)請求項2、12において、「前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1の励起光の光軸のなす角は、89°以下であり」と特定されているが、89°以下では、c軸と第1の励起光の光軸とのなす角が、0°のもの(斜めになっていないもの)を含むため、発明が解決しようとする課題を解決できないものまで、特許請求されている。
また、請求項2、12では、「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、1°以下であり、前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、89°以下であり、」と特定されているが、第1面及び第2面とサファイアのc軸のなす角度が1°(段落【0023】の平行の定義に含まれている。)で前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、89°の場合には、言い換えると、第1面及び第2面とサファイアのc軸が平行で、第1の励起光の光軸が第2面に垂直なものとなるから、従来技術を含むものまで特許請求されている。
したがって、請求項2、12には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、請求項2、12に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。
また、請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3~10についても同様である。
よって、請求項2~10、12に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
(請求項2、12において、「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、1°未満であり、前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上89°以下であり、前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が1°未満又は89°より大きく90°以下である他の励起光源を有していない」ことを特定してはいかがか。)」
2 引用文献の記載事項、引用発明
(1)引用文献1
引用文献1には、図面とともに以下の記載がある(下線部は、当審が付与した。以下同様。)
・「[0002] 近年、レーザ素子(LD:Laser Diode)などの発光素子を光源として備え、当該発光素子から出射された励起光を、蛍光体を含む発光部に照射して発生させた照明光を投光する発光装置が提案されている。」
・「[0013] (発光装置10)
図2は、本実施形態に係る発光装置10の構成を示す断面図である。図2に示すように、発光装置10は、レーザ光源11と、第1ミラー12と、第2ミラー13と、発光部1と、筐体14と、透光部材15と、保持部材16とを備える。
[0014] レーザ光源11(励起光源)は、レーザ光(励起光)を発する光源である。本実施形態において、レーザ光源11は、レーザダイオードが直径9mmのレンズ付き金属パッケージに実装された構成を有する。また、上記レーザダイオードが発するレーザ光の波長は445nmであり、出力は5Wである。」
・「[0052] (発光部2)
図6は、発光部2の構成を示す断面図である。図6に示すように、発光部2は、蛍光体層2aと、透光層2cとを備える。発光部2は、1mmΦであり、かつ厚さが0.12mmの薄片形状を有する。
[0053] 蛍光体層2aは、レーザ光源11から出射されたレーザ光により励起され、当該レーザ光とは異なる波長の蛍光を発生させる部材である。蛍光体層2aは、分割面2d(側面)と、分割面2dより面積の広い主平面2b(上面)とを有する。本実施形態において、主平面2bは、主平面1bと同様、Ce:YAGの単結晶の{111}面である。また、分割面2dの数は、分割面1dと同様、4つである。さらに、分割面2dの一部は、分割面1dと同様、Ce:YAGの単結晶の{1-10}面である。さらに、蛍光体層2aの厚さは、蛍光体層1aと同様、20μmである。
[0054] 透光層2cは、透光性を有する部材である。透光層2cは、蛍光体層2aの機械強度を補うため、および熱伝導率を向上させるために設けられる。透光層2cは、透光性の単結晶で構成されている。本実施形態において、透光層2cは、厚さが100μmであるサファイアの単結晶である。後述する発光部2の製造方法における加工性の観点から、透光層2cは単結晶であることが好ましい。また、熱伝導率の観点から、透光層2cはサファイアの単結晶であることが好ましい。
[0055] 透光層2cは、分割面2eと、分割面2eより面積の広い主平面2gとを有する。透光層2cは、主平面2gにおいて、蛍光体層2aの主平面2bと対向する面(底面)と接合されている。主平面2gは、サファイアの(0001)面である。」
・「[0059] 本実施形態においては、レーザ光は、透光層2cを経由して、透光層2cと蛍光体層2aとの接合面から蛍光体層2aに入射する。また、蛍光体層2aで発生した蛍光は、主平面2bから出射される。また、蛍光体層2aと透光層2cとの間に、励起光(レーザ光)を透過し、かつ蛍光を反射するダイクロイックミラーが設けられることが好ましい。
・「[0075] 〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、図10に基づいて説明すれば、以下のとおりである。本実施形態では、プロジェクタ用光源などに適用可能な発光装置30について説明する。
[0076] (発光装置30)
図10の(a)は、本実施形態に係る発光装置30の構成を示す断面図である。図10の(a)に示すように、発光装置30は、複数のレーザ光源11と、集光レンズ31と、筐体32と、放熱部材33と、発光部4とを備える。
[0077] 集光レンズ31は、複数のレーザ光源11が発するレーザ光を発光部4へ向けて集光するレンズである。本実施形態において、集光レンズ31は、凸形状の球面レンズである。
[0078] 筐体32は、レーザ光源11および集光レンズ31を収容する筐体である。また、筐体32は、孔部32aが設けられている。孔部32aには、発光部4が設けられている。したがって、発光部4は、レーザ光源11からのレーザ光の波長を変換するとともに、発光装置30から光を取り出すための窓部として作用する。
[0079] 放熱部材33は、熱伝導性の高い金属材料で構成されるヒートシンクである。放熱部材33は、レーザ光源11から熱を吸収し、吸収した熱を外気に放出させる。放熱部材33は、図10の(a)に示すように、鋸歯形状の放熱フィンを備えることで、放熱効率を向上させている。本実施形態において、放熱部材33の材質は、アルミニウムである。
[0080] (発光部4)
図10の(b)は、発光装置30が備える発光部4の構成を示す断面図である。図10の(b)に示すように、発光部4は、蛍光体層2aと、透光層2cとを備える。
[0081] 透光層2cの、レーザ光源11と対向する面、および透光層2cと蛍光体層2aとの接合面には、それぞれ励起光AR(Anti-Reflection)コート4a・4bが施されている。励起光ARコート4a・4bは、レーザ光源11から出射されるレーザ光の波長領域において、低い反射率を示すコート層である。このため、レーザ光源11から出射されたレーザ光は、これらの面でほとんど反射されることなく、蛍光体層2aへ入射する。
[0082] 一方、蛍光体層2aの、発光装置30の外部に向く面には、励起光HR(High-Reflection)コート4c(コーティング)が施されている。励起光HRコート4cは、レーザ光源11から出射されるレーザ光の波長領域において、高い反射率を示すコート層である。一方、励起光HRコート4cは、上記レーザ光の波長領域以外においては、低い反射率を示す。このため、蛍光体層2aで波長変換されなかった上記レーザ光は、励起光HRコート4cで反射され、発光部4からはほとんど出射されない。これに対し、蛍光体層2aで波長変換された蛍光は、励起光HRコート4cで反射されることなく、発光部4から出射される。
[0083] 本実施形態においては、レーザ光源11から出射されるレーザ光は、波長が445nmの青色光である。これに対し、Ce:YAGで波長変換された光は、波長が550nmの黄色光である。
[0084] そこで、本実施形態における励起光HRコート4cは、少なくとも波長が445nm近傍である光に対して高い反射率を示し、かつ波長が550nm近傍である光に対して低い反射率を示すように構成されている。これにより、レーザ光源11から出射された青色のレーザ光は発光部4から出射されず、Ce:YAGで波長変換された黄色の蛍光だけが発光部4から出射される。
[0085] このようなHRコート4cは、例えば誘電体多層膜を用いて形成されてよい。当該誘電体多層膜としては、例えばSiO2/TiO2の誘電体多層膜を使用することができる。
[0086] このように、発光部4を備える発光装置30によれば、発光部4により波長変換された光だけを取り出すことが可能である。すなわち、発光装置30は、例えば黄色など、特定の色の光を取り出せるように設計することが可能な発光装置である。」
・「[0092] (発光装置50)
図12は、発光装置50の構成を示す断面図である。図12に示すように、発光装置50は、複数のレーザ光源11と、レンズ11aと、レンズ11dと、放熱部材11cと、筐体51と、保持部材16と、レンズ52と、発光部2とを備える。
[0093] レンズ11dは、レンズ11aにより集光されたレーザ光を発光部2に集光する凸レンズである。筐体51は、放熱部材11c、レンズ11d、保持部材16、およびレンズ52を保持した状態で収容する筐体である。本実施形態において、筐体51は、筒状の部材である。
[0094] レンズ52は、発光部2で波長変換された光を外部に投光する。レンズ52はCOB(Chip On Board)レンズである。COBレンズは、LEDまたはレーザ光源といった、ランバーシアン配光である光源の光を効率よく投光することが可能なレンズである。」
・図6、図10、図12には、以下の内容が示されている。
[図:0001399328000001.jpg]
[図:0001399328000002.jpg]
[図:0001399328000003.jpg]
・図6、図10、図12からみて、透光層2cは、主平面2gとレーザ光源11と対向する面とを有することが看て取れる。
・[0052]、[0054]、[0059]の記載を踏まえると、図12から、筐体51内に配置された複数のレーザ光源11から励起光をその光軸が筐体51の長手方向と平行とするようにレンズ11aを介して出射するともに、複数のレーザ光源11は前記長手方向とは直交する方向に並べて配置され、複数のレーザ光源11の励起光がレンズ11dによって発光部2に集光するものにおいて、励起光のうちその光軸が凸レンズ11dの光軸と一致しない励起光が、その光軸がレンズ11dにより屈折することで、前記長手方向とは垂直に配置された発光部2の透光層2cの光軸に対して斜めに入射することが看て取れる。
これらの記載事項及び図示内容からみて、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1-1という。)が記載されていると認められる。
「発光部2は、蛍光体層2aと、透光層2cとを備え、
透光層2cは、主平面2gと、レーザ光源11と対向する面とを有する、サファイアの単結晶であり、透光層2cは、主平面2gにおいて、蛍光体層2aの主平面2bと対向する面(底面)と接合され、
レーザ光は、透光層2cを経由して、透光層2cと蛍光体層2aとの接合面から蛍光体層2aに入射し、蛍光体層2aで発生した蛍光は、主平面2bから出射される、レーザ光源11と発光部2、4を備えた発光装置50であって、
透光層2cの主平面2gは、サファイアの(0001)面であり、
筐体51内に配置された複数のレーザ光源11から励起光をその光軸が筐体51の長手方向と平行とするようにレンズ11aを介して出射するともに、複数のレーザ光源11は前記長手方向とは直交する方向に並べて配置され、複数のレーザ光源11の励起光がレンズ11dによって発光部2に集光するものにおいて、励起光のうちその光軸が凸レンズ11dの光軸と一致しない励起光が、その光軸がレンズ11dにより屈折することで、前記長手方向とは垂直に配置された発光部2の透光層2cのレーザ光源11と対向する面に対して斜めに入射する、発光装置50。」
(2)引用文献2
引用文献2には、図面とともに以下の記載がある。
・「【技術分野】
【0001】
本技術は、光源装置、画像表示装置、及び光学ユニットに関する。」
・「 【0024】
[画像表示装置]
図1は、本技術の一実施形態に係る画像表示装置の構成例を示す概略図である。画像表示装置500は、例えばプレゼンテーション用、もしくはデジタルシネマ用のプロジェクタとして用いられる。その他の用途に用いられる画像表示装置にも、以下に説明する本技術は適用可能である。
【0025】
画像表示装置500は、白色光を出射可能な光源装置100と、光源装置100からの光をもとに画像を生成する画像生成システム200と、生成された画像を図示しないスクリーン等に投射する投射システム400とを有する。
【0026】
光源装置100は、青色波長域のレーザ光、及び、そのレーザ光によって励起される蛍光物質から生じる赤色波長域から緑色波長域の光を合成して白色光を出射する。光源装置100は、集光部110と、蛍光体ホイール120と、レンズ部160と、インテグレータ光学系170とを有する。集光部110から出射された青色レーザ光B1により、蛍光体ホイール120の蛍光体層121から赤色光及び緑色光を含む黄色光が発生する。蛍光体層121を透過した青色レーザ光B2と、蛍光体層121からの緑色光G2及び赤色光R2とを含む合成光(白色光)が、レンズ部160及びインテグレータ光学系170を介して、画像生成システム200に出射される。光源装置100については、後に詳しく説明する。
【0027】
画像生成システム200は、照射された光をもとに画像を生成する画像生成素子210と、画像生成素子210に光源装置100からの白色光を照射する照明光学系220とを有する。照明光学系220は、ダイクロイックミラー260及び270、ミラー280、290及び300、リレーレンズ310及び320、フィールドレンズ330R、330G及び330B、画像生成素子としての液晶ライトバルブ210R、210G、及び210B、ダイクロイックプリズム340を含んでいる。」
・「【0032】
図2は、本実施形態に係る光源装置100の構成例を示す概略図である。上記したように、光源装置100は、集光部110と、蛍光体ホイール120と、レンズ部160と、インテグレータ光学系170とを有する。集光部110は、青色レーザ光B1を出射可能な1以上のレーザ光源111(図1参照)を有する光源部112と、光源部112から出射された青色レーザ光B1を蛍光体層121上の所定のポイントに集光する集光光学系113を有する。これら光源部112及び集光光学系113が1つのユニットとして構成されてもよい。
【0033】
1以上のレーザ光源111は、例えば400nm?500nmの波長範囲内に発光強度のピーク波長を有する青色レーザ光B1を発振可能な青色レーザ光源である。1以上のレーザ光源111は、所定波長域の光を出射光として出射可能な1以上の固体光源に相当する。固体光源として、LED等の他の光源が用いられてもよい。また所定波長域の光も、青色レーザ光に限定されない。
【0034】
光源部112として、単体のレーザ光源111が用いられてもよいし、二次元状に複数のレーザ光源111が並べられた二次元レーザアレイ光源(面光源)が用いられてもよい。その他、光源部112の構成は限定されず、任意に設計されてよい。もちろんコリメータレンズ等の光学部材が光源部112内に配置されてもよい。
【0035】
集光光学系113は、例えば青色レーザ光B1の光路上に配置される集光レンズ113(図1参照)を有する。複数のレーザ光源111が用いられる場合には、各レーザ光源111に対応する集光レンズが1つずつ配置され、その後段に全てのレーザ光源111に共通の集光レンズが1つ配置される。例えばこのような構成が採用可能であるが、これに限定されるわけではない。集光光学系113の構成、及びこれに用いられるデバイスは任意に設定されてよい。」
・「【0045】
蛍光体ホイール120は、蛍光体層121と、蛍光体層121を支持する基体部122とを有する。蛍光体層121は、1以上のレーザ光源111からの出射光に励起されてその出射光の波長と異なる波長域の可視光を発する発光体に相当する。本実施形態では、蛍光体層121は、約445nmの中心波長を持つ青色レーザ光B1によって励起されて蛍光を発する蛍光物質を含んでいる。そして蛍光体層121は、1以上のレーザ光源111が出射する青色レーザ光B1の一部を、赤色波長域から緑色波長域までを含む波長域の光(すなわち黄色光)に変換して出射する。
【0046】
蛍光体層121に含まれる蛍光物質としては、例えばYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体が用いられる。なお、蛍光物質の種類、励起される光の波長域、及び励起により発生される可視光の波長域は限定されない。
【0047】
また蛍光体層121は、励起光の一部を吸収する一方、励起光の一部を透過させることにより、1以上のレーザ光源111から出射された青色レーザ光B1も出射することができる。これにより、蛍光体層121から出射される光は、青色の励起光と黄色の蛍光との混色による白色光となる。このように励起光の一部を透過させるため、蛍光体層121は、例えば光透過性を有する粒子状の物質であるフィラー粒子を含んでいてもよい。
【0048】
基体部122は円盤形状でなり、蛍光体層121を支持する支持面123と、その反対側の背面124とを有する。基体部122の中心には、蛍光体ホイール120を駆動するモータ125が接続される。モータ125は、基体部122の中心を通る法線が蛍光体ホイール120の回転軸となるように配置される。モータ125を駆動すると、回転軸Oを中心として蛍光体ホイール120が回転する。そのさい回転軸Oを中心として基体部122も回転する。すなわち基体部122は、所定の回転軸を中心に回転可能に配置される。」
・「【0056】
本実施形態では、基体部122は、一体構造で形成された結晶軸を有する結晶性部材からなる。そのような結晶性部材として、例えば励起光である青色レーザ光B1を透過可能な水晶やサファイア等が用いられる。水晶は結晶性部材の中でも流通量が多く、安価なため、低コストで光源装置100を実現することが可能となる。またサファイアは結晶性材料の中でも熱伝導性が高いため、信頼性の高い光源装置100を実現することができる。その他の結晶性部材が用いられてもよい。
【0057】
図4Bでは、結晶性部材からなる基体部122が有する結晶軸が、符号130で表される線により模式的に表現されている(以後、この符号を用いて結晶軸130と記載する)。図4Bに示すように、本実施形態では、結晶性部材の結晶軸130の方向が、蛍光体ホイール120の回転軸Oの方向と平行となるように設定されている。
【0058】
回転軸Oの方向は、光源部112からの青色レーザ光B1の光軸Aの方向と平行であるので、結晶軸130の方向は、青色レーザ光B1の光軸方向と平行な方向に設定されているともいえる。また別の観点からみて、結晶軸130の方向は、基体部122の厚み方向と平行に設定されているともいえる。
【0059】
このような基体部122は、例えば、いわゆるC面カットにより形成されたサファイア単結晶基板を用いることで、簡単に準備することが可能である。図5は、サファイアの単結晶の代表的な面方位を説明するための斜視図である。サファイアは六方晶系であり、その中心軸がC軸、これに垂直な面がC面でありミラー指数(0001)で表される。そしてC軸から放射状にのびるA軸(a1、a2、a3)とそれに垂直な面がA面(11ー20)となる。R面(1-102)は、図のように、C軸と一定の角度を有して存在する。
【0060】
結晶軸の方向はC軸と平行な方向となる。従って主面がC面となるC面カットのサファイア基板は、結晶軸の方向が基板の厚み方向と平行となる。主面がA面となるA面カットのサファイア基板は、結晶軸の方向が厚み方向と直交し、基板の平面方向と平行となる。主面がR面となるR面カットのサファイア基板の結晶軸の方向は、厚み方向と一定の角度を有して設定される。 【0061】 例えばC面カットのサファイア単結晶基板を、2つの主面がそれぞれ支持面123及び背面124となるように配置することで、図4Bに示す基体部122を実現することが可能となる。すなわち青色レーザ光B1の光軸方向に直交する方向に、青色レーザ光B1が入射する面としてC面を配置することで、結晶軸130の方向を光軸方向と平行に設定することが可能となる。なおこれに限定されず、任意の方法で形成された結晶性部材からなる基板が基体部122として用いられてよい。 」
・「【0063】
比較例として挙げられる蛍光体ホイール920は、蛍光体層を支持する基体部922として、結晶軸の方向が回転軸Oの方向(励起光の光軸Aの方向)と直交する方向に設定された結晶性部材が用いられる。例えば主面がA面となるA面カットのサファイア基板が、そのA面が青色レーザ光の入射面となるように配置される。
【0064】
このような基体部922に対して、光源部112から青色レーザ光B1が励起光として出射される。青色レーザ光B1は偏光方向が固定された状態で出射されるとする。図6の中では、青色レーザ光B1の偏光軸が符号Pで表現されており、結晶軸は符号930で表現されている。
【0065】
蛍光体ホイール920の背面924の所定のポイントを照射スポットLSとして、光源部112から青色レーザ光B1が照射される。照射スポットLSに青色レーザ光B1が照射されている間、蛍光体ホイール920は回転軸Oのまわりを常時回転する。蛍光体ホイール920が回転すると、青色レーザ光B1が照射される照射スポットLSは、相対的に回転軸Oの周りを移動することになる。すなわち基体部922の背面924上を、円を描くようにして、照射スポットLSは移動する。基体部922となる結晶性部材の結晶軸930は、基体部922の平面方向と平行に設定されている。従って基体部922が回転することで、回転軸方向から見た結晶軸930の延在方向も回転することになる。この結果、蛍光体ホイール920の回転により、青色レーザ光B1の偏光軸Pと照射スポットLSにおける基体部922の結晶軸930とのなす角度θは逐次変化することになる。 」
・「【0071】
図7は、本実施形態に係る蛍光体ホイール120の動作を示す概略図である。上記したように、基体部122となる結晶性部材の結晶軸130の方向は、回転軸Oの方向、すなわち光軸Aの方向と平行な方向(図7の紙面に垂直な方向)に設定されている。この基体部122に対して、光源部112から青色レーザ光B1が励起光として出射される。青色レーザ光B1は偏光方向が固定された状態で出射される(偏光軸Pで固定されている)。
【0072】
照射スポットLSに青色レーザ光B1が照射されている間、蛍光体ホイール120は回転軸Oのまわりを常時回転する。これにともない青色レーザ光B1が照射される照射スポットLSは、相対的に回転軸Oの周りを移動することになる。本実施形態に係る蛍光体ホイール120では、基体部122として用いられる結晶性部材の結晶軸130の方向が、回転軸Oと平行な方向に設定されている。従って基体部122が回転しても回転軸方向から見た結晶軸130の延在方向に変化はない。従って蛍光体ホイール120が回転したとしても、青色レーザ光B1の偏光軸Pと照射スポットLSにおける基体部122の結晶軸130とのなす角度θは変化しない。 」
・「【0080】
なお、光軸方向と平行な方向を0°として、光軸方向に直交する方向を90°とした場合、結晶軸の方向が0°に近い角度で設定された方が、青色レーザ光B1の偏光方向の乱れを抑制する効果は高いと考えられる。製造される光源装置の性能に、ある程度の幅を許容する場合、例えば結晶軸の方向が0°以上20°以下の範囲で設定された結晶性部材を有する光源装置、または結晶軸の方向が10°以上30°以下の範囲で設定された結晶性部材を有する光源装置といったような、結晶軸方向が所定の範囲にて規定された光源装置が、本技術に係る光源装置として製造されてもよい。 」
・図2には、以下の内容が示されている。
[図:0001399328000004.jpg]
・図2から、光源部112のレーザ光源111は青色レーザ光B1を前記背面124を通じて蛍光体層121に出射していることが看て取れる。
これらの記載事項及び図示内容によれば、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2-1」という。)が記載されていると認められる。
「集光部110と、蛍光体ホイール120と、レンズ部160と、インテグレータ光学系170とを有する光源装置100であって、
蛍光体ホイール120は、蛍光体層121と、蛍光体層121を支持する基体部122とを有し、蛍光体層121は、1以上のレーザ光源111からの出射光に励起されてその出射光の波長と異なる波長域の可視光を発する発光体に相当し、
基体部122は円盤形状でなり、蛍光体層を支持する支持面123と、その反対側の背面124とを有し、レーザ光源111は青色レーザ光B1を前記背面124を通じて蛍光体層121に出射し、
基体部122は、一体構造で形成された結晶軸を有する結晶性部材からなり、結晶性部材として、励起光である青色レーザ光B1を透過可能なサファイアが用いられ、
サファイアは六方晶系であり、その中心軸がC軸、これに垂直な面がC面でありミラー指数(0001)で表され、
C面カットのサファイア単結晶基板を、2つの主面がそれぞれ支持面123及び背面124となるように配置することで、基体部122を実現し、主面がC面となるC面カットのサファイア基板は、結晶軸の方向はC軸と平行な方向となって基板の厚み方向と平行となり、
集光部110は、青色レーザ光B1を出射可能な1以上のレーザ光源111を有する光源部112と、光源部112から出射された青色レーザ光B1を蛍光体層121上の所定のポイントに集光する集光光学系113を有し、
光源部112として、二次元状に複数のレーザ光源111が並べられた二次元レーザアレイ光源(面光源)が用いられる、
光源装置100。」
また、段落【0063】~【0065】のA面に関する記載事項に着目すると、以下の発明(以下「引用発明2-2」という。)が記載されていると認められる。
「集光部110と、蛍光体ホイール920と、レンズ部160と、インテグレータ光学系170とを有する光源装置100であって、
蛍光体ホイール920は、蛍光体層と、蛍光体層を支持する基体部922とを有し、蛍光体層は、1以上のレーザ光源111からの出射光に励起されてその出射光の波長と異なる波長域の可視光を発する発光体に相当し、
基体部922は円盤形状でなり、蛍光体層を支持する支持面と、その反対側の背面924とを有し、レーザ光源111は青色レーザ光B1を前記背面924を通じて蛍光体層に出射し、
基体部922は、一体構造で形成された結晶軸を有する結晶性部材からなり、結晶性部材として、励起光である青色レーザ光B1を透過可能なサファイアが用いられ、
蛍光体ホイール920は、蛍光体層を支持する基体部922として、結晶軸の方向が回転軸Oの方向(励起光の光軸Aの方向)と直交する方向に設定された結晶性部材が用いられ、主面がA面となるA面カットのサファイア基板が、そのA面が青色レーザ光の入射面となるように配置され、
集光部110は、青色レーザ光B1を出射可能な1以上のレーザ光源111を有する光源部112と、光源部112から出射された青色レーザ光B1を蛍光体層上の所定のポイントに集光する集光光学系113を有し、
光源部112として、二次元状に複数のレーザ光源111が並べられた二次元レーザアレイ光源(面光源)が用いられる、
光源装置100。」
3 当審の判断
(1)特許法第29条第2項(進歩性)について
ア 引用発明1-1を主引用発明とする場合について
(ア)本件発明1について
a 本件発明1と引用発明1-1とを対比すると、後者の「主平面2g」は前者の「第1面」に相当し、以下同様に、「レーザ光源11と対向する面」は「第2面」に、「サファイアの単結晶」からなる「透光層2c」は「サファイア板」に、「蛍光体層2a」は「波長変換材」に、「中央に配置されたレーザ光源11以外のレーザ光源11」は「第1励起光源」に、「中央に配置されたレーザ光源11以外のレーザ光源11」からの「レーザ光」又は「励起光」は「第1励起光」に、「発光装置30、50」は「光源装置」に、それぞれ相当する。
b 上記aの相当関係を踏まえると、後者の「サファイアの単結晶であ」るとともに「主平面2gと、レーザ光源11と対向する面とを有する」「透光層2c」は、前者の「対向する第1面と第2面とを有するサファイア板」に相当する。
c 後者の「透光層2cは、主平面2gにおいて、蛍光体層2aの主平面2bと対向する面(底面)と接合され」ているから、後者の「蛍光体層2a」は、上記aの相当関係を踏まえると、前者の「該サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材」に相当する。
d レーザ光が指向性を有することは技術常識であることを踏まえ、後者の「レーザ光は、透光層2cを経由して、透光層2cと蛍光体層2aとの接合面から蛍光体層2aに入射し、蛍光体層2aで発生した蛍光は、主平面2bから出射される」「中央に配置されたレーザ光源11以外の」「レーザ光源11と発光部2、4を備えた発光装置50」は、上記aの相当関係を踏まえると、前者の「指向性を有する第1励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源とを備えた光源装置」に相当する。
e 後者の「透光層2cの主平面2gは、サファイアの(0001)面であ」ることは、サファイアの(0001)面はc面であり、c面に直交する軸がc軸であること、及び、主平面2gとレーザ光源11と対向する面が略平行であることを踏まえると、前者の「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、89°を越え、91°未満であ」ることに相当する。
f 後者の「筐体51内に配置された複数のレーザ光源11から励起光をその光軸が筐体51の長手方向と平行とするようにレンズ11aを介して出射するともに、複数のレーザ光源11は前記長手方向とは直交する方向に並べて配置され、複数のレーザ光源11の励起光がレンズ11dによって発光部2に集光するものにおいて、励起光のうちその光軸が凸レンズ11dの光軸と一致しない励起光が、その光軸がレンズ11dにより屈折することで、前記長手方向とは垂直に配置された発光部2の透光層2cのレーザ光源11と対向する面に対して斜めに入射する」ことは、後者のレーザ光源11から出射された励起光の光軸は、長手方向に平行であるにもかかわらず、透光層2cに入射する励起光の光軸は、レンズ11dで屈折されているので、透光層2cのレーザ光源11と対向する面に対して斜めに入射するものとなっていることから、前者の「前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上である」こととは、「前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0°でないこと」において共通する。
g そうすると、両者は、
「対向する第1面と第2面とを有するサファイア板と、
該サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材と、
指向性を有する第1励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源とを備えた光源装置であって、
前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、89°を越え、91°未満であり、
前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0°でない、光源装置。」
の点で一致し、以下の点で相違すると認められる。
<相違点1>
本件発明1では、「前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上であり、前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0°以上1゜未満である他の励起光源を有していない」のに対して、引用発明1-1では、「筐体51内に配置された複数のレーザ光源11から励起光をその光軸が筐体51の長手方向と平行とするようにレンズ11aを介して出射するともに、複数のレーザ光源11は前記長手方向とは直交する方向に並べて配置され、複数のレーザ光源11の励起光がレンズ11dによって発光部2に集光するものにおいて、励起光のうちその光軸が凸レンズ11dの光軸と一致しない励起光が、その光軸がレンズ11dにより屈折することで、前記長手方向とは垂直に配置された発光部2の透光層2cのレーザ光源11と対向する面に対して斜めに入射する」点。
h 相違点1について検討する。
引用発明1-1を認定した引用文献1の図12は、あくまで引用文献1に記載される発明の理解を助けるための説明図であって、必ずしも正確な角度が記載されているとはいえないから、当該図12に基づいて、厳密な角度を特定することはできず、相違点1の「前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0°以上1゜未満である他の励起光源を有していない」ことを認定することはできない。
また、上記相違点1の「前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0°以上1゜未満である他の励起光源を有していない」ことは、申立人の提出したいずれの証拠(甲2~甲31)を検討しても記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1は、引用発明1-1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明3~10について
本件発明3~10は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらなる限定をしたものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明3~10は、引用発明1-1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)本件発明11について
本件発明11は、本件発明1と同様に、「前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0°以上1゜未満である他の励起光源を有していない」という発明特定事項を有するから、本件発明1と同様の理由により、引用発明1-1に基いて当業者が、容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 引用発明2-1又は引用発明2-2を主引用発明とする場合について
(ア)本件発明1について
a 本件発明1と引用発明2-1とを対比すると、後者の「支持面123」は前者の「第1面」に相当し、以下同様に、「背面124」は「第2面」に、「青色レーザ光B1」は「第1励起光」に、「レーザ光源111」は「第1励起光源」に、「光源装置100」は「光源装置」に、「C軸」は「c軸」に、それぞれ相当する。
後者の「基体部122」は「支持面123」と「背面124」を有し「サファイア単結晶基板」または「サファイア基板」を配置することで実現するものであるから前者の「サファイア板」に相当し、後者の「蛍光体層121」は、「1以上のレーザ光源111からの出射光に励起されてその出射光の波長と異なる波長域の可視光を発する発光体に相当」するから前者の「波長変換材」に相当する。
b 後者の「C面カットのサファイア単結晶基板を、2つの主面がそれぞれ支持面123及び背面124となるように配置することで」「実現される」「基体部122」は、上記aの相当関係を踏まえると、前者の「対向する第1面と第2面とを有するサファイア板」に相当する。
c 後者の「基体部122」は「蛍光体層121を支持する支持面123」と、「その反対側の背面124とを有」するから、上記アの相当関係を踏まえると、後者の「蛍光体層121」は前者の「該サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材」に相当する。
d 後者の「青色レーザ光B1」は技術常識を踏まえると「指向性を有する」ものといえ、「レーザ光源111は青色レーザ光B1を背面124を通じて蛍光体層121に出射する」から、後者の「レーザ光源111」は、上記aの相当関係を踏まえると、前者の「指向性を有する第1励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源」に相当する。また後者の「光源装置100」は「レーザ光源111」を有するものであるから、前者の「第1励起光源を備えた光源装置」に相当する。
e 後者の「サファイアは六方晶系であり、その中心軸がC軸、これに垂直な面がC面」であることと、後者の「C面カットのサファイア単結晶基板を、2つの主面がそれぞれ支持面123及び背面124となるように配置することで、基体部122を実現し、主面がC面となる」ことによれば、後者の「支持面123」および「背面124」とサファイアのC軸とのなす角が垂直となることは明らかであるから、上記ア.の相当関係を踏まえると、前者の「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、89°を越え、91°未満であ」ることに相当する。
f 後者は「光源部112として、二次元状に複数のレーザ光源111が並べられた二次元レーザアレイ光源(面光源)が用いられる」ものであり、レーザ光は背面124に入射するところ、図2を参照すると、面光源の中心の光軸は、c軸に一致することが看て取れるから、複数のレーザ光源111のうち面光源の端部に位置するレーザ光源111の光軸(その励起光を第1励起光とする)は、c軸に対して傾斜することになる。
そうすると、後者の「光源部112として、二次元状に複数のレーザ光源111が並べられた二次元レーザアレイ光源(面光源)が用いられる」ことと、前者の「前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上である」こととは、「前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は0°でない」ことにおいて共通する。
g そうすると、両者は、
「対向する第1面と第2面とを有するサファイア板と、
該サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材と、
指向性を有する第1励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源とを備えた光源装置であって、
前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、89°を越え、91°未満であり、
前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は0°でない、
光源装置。」
の点で一致し、以下の点で相違すると認められる。
<相違点A>
本件発明1では、「前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上であり、前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0°以上1゜未満である他の励起光源を有していない」のに対して、引用発明2-1では、「サファイアは六方晶系であり、その中心軸がC軸、これに垂直な面がC面でありミラー指数(0001)で表され、」「主面がC面となるC面カットのサファイア基板は、結晶軸の方向はC軸と平行な方向となって基板の厚み方向と平行となり、」「光源部112として、二次元状に複数のレーザ光源111が並べられた二次元レーザアレイ光源(面光源)が用いられる」点。
h 相違点Aについて検討する。
引用文献2の全記載を参照しても、上記相違点Aの「前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0°以上1゜未満である他の励起光源を有していない」ことは記載も示唆もされていない。
また、上記相違点Aの「前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0°以上1゜未満である他の励起光源を有していない」ことは、申立人の提出したいずれの証拠(甲1、甲3~甲31)を検討しても記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1は、引用発明2-1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2について
a 本件発明2と引用発明2-2とを対比すると、後者の「支持面」は前者の「第1面」に相当し、以下同様に、「背面924」は「第2面」に、「青色レーザ光B1」は「第1励起光」に、「レーザ光源111」は「第1励起光源」に、「光源装置100」は「光源装置」に、それぞれ相当する。
後者の「基体部922」は「支持面」と「背面924」を有し「サファイア基板」を配置するものであるから前者の「サファイア板」に相当し、後者の「蛍光体層」は、「1以上のレーザ光源111からの出射光に励起されてその出射光の波長と異なる波長域の可視光を発する発光体に相当」するから前者の「波長変換材」に相当する。
b 後者の「基体部922は円盤形状でなり、蛍光体層を支持する支持面と、その反対側の背面924とを有し」「主面がA面となるA面カットのサファイア基板が、そのA面が青色レーザ光の入射面となるように配置され」る「基体部922」は、上記aの相当関係を踏まえると、前者の「対向する第1面と第2面とを有するサファイア板」に相当する。
c 後者の「基体部922」は「蛍光体層を支持する支持面」と、「その反対側の背面924とを有」するから、上記aの相当関係を踏まえると、後者の「蛍光体層」は前者の「該サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材」に相当する。
d 後者の「青色レーザ光B1」は技術常識を踏まえると「指向性を有する」ものといえ、「レーザ光源111は青色レーザ光B1を背面924を通じて蛍光体層に出射する」から、後者の「レーザ光源111」は、上記aの相当関係を踏まえると、前者の「指向性を有する第1励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源」に相当する。また後者の「光源装置100」は「レーザ光源111」を有するものであるから、前者の「第1励起光源を備えた光源装置」に相当する。
e 後者は「基体部922は円盤形状でなり、蛍光体層を支持する支持面と、その反対側の背面924とを有し、」「蛍光体ホイール920は、蛍光体層を支持する基体部922として、結晶軸の方向が回転軸Oの方向と直交する方向に設定された結晶性部材が用いられ、主面がA面となるA面カットのサファイア基板が、そのA面が青色レーザ光の入射面となるように配置され」るものであるところ、引用文献2の図5に示すようにA面とc軸が平行となることは技術常識であって、後者の「支持面」および「背面924」とサファイアのA面が平行となることは明らかであるから、上記aの相当関係を踏まえると、前者の「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、1°以下であ」ることに相当する。
f 後者は「光源部112として、二次元状に複数のレーザ光源111が並べられた二次元レーザアレイ光源(面光源)が用いられる」ものであり、レーザ光は背面924に入射するところ、後者の「蛍光体層を支持する基体部922として、結晶軸の方向が回転軸Oの方向(励起光の光軸Aの方向)と直交する方向に設定された結晶性部材が用いられ、主面がA面となるA面カットのサファイア基板が、そのA面が青色レーザ光の入射面となるように配置され」ていることは、引用文献2の図5に示すようにA面とc軸が平行となることは技術常識であることと、上記aの相当関係を踏まえると、複数のレーザ光源111のうち面光源の端部に位置するレーザ光源111の光軸(その励起光を第1励起光とする)は、A面(c軸)に直交する方向に対して傾斜することになり、前者の「前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、89°以下である」こととは、「前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、90°でない」ことにおいて共通する。
g そうすると、両者は、
「対向する第1面と第2面とを有するサファイア板と、
該サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材と、
指向性を有する第1励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源とを備えた光源装置であって、
前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、1°以下であり、
前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、90°でない光源装置。」
の点で一致し、以下の点で相違すると認められる。
<相違点B>
本件発明2では、「前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上89゜以下であり、前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が1゜未満または89゜より大きく90゜以下である他の励起光源を有していない」のに対して、引用発明2-2では、「蛍光体層を支持する基体部922として、結晶軸の方向が回転軸Oの方向(励起光の光軸Aの方向)と直交する方向に設定された結晶性部材が用いられ、主面がA面となるA面カットのサファイア基板が、そのA面が青色レーザ光の入射面となるように配置され」「光源部112として、二次元状に複数のレーザ光源111が並べられた二次元レーザアレイ光源(面光源)が用いられる」点。
h 相違点Bについて検討する。
引用文献2の全記載を参照しても、上記相違点Bの「前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が1゜未満または89゜より大きく90゜以下である他の励起光源を有していない」ことは記載も示唆もされていない。
また、上記相違点Bの「前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が1゜未満または89゜より大きく90゜以下である他の励起光源を有していない」ことは、申立人の提出したいずれの証拠(甲1、甲3~甲31)を検討しても記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明2は、引用発明2-2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)本件発明3~10について
本件発明3~10は、本件発明1又は本件発明2を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項をすべて含み、さらなる限定をしたものであるから、本件発明1又は本件発明2と同様の理由により、本件発明3~10は、引用発明2-1又は引用発明2-2に基いて当業者が、容易に発明をすることができたものとはいえない。
(エ)本件発明11について
本件発明11は、本件発明1と同様に、「前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0°以上1゜未満である他の励起光源を有していない」という発明特定事項を有するから、本件発明1と同様の理由により、本件発明11は、引用発明2-1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(オ)本件発明12について
本件発明12は、本件発明2と同様に、「前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が1゜未満または89゜より大きく90゜以下である他の励起光源を有していない」という発明特定事項を有するから、本件発明2と同様の理由により、本件発明12は、引用発明2-2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について
請求項1では、「第1励起光」は、「指向性を有」し、サファイア板の「第2面に入射」し、「第2面を通じて」該サファイア板の前記第1面に接触している「波長変換材に出射する」ものであることが特定され、さらに、「第1励起光の光軸」については、「前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上であり、前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0°以上1゜未満である他の励起光源を有していない」ことが特定されていることから、明確である。
また、請求項5の「第2励起光」、「第2励起光の光軸」についても明確である。
また、請求項2,11,12及び請求項1,2を引用する請求項3~10の記載についても明確である。
(3)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
ア 本件訂正によって、本件発明1、2、11及び12には、「サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材」が特定されたため、「熱膨張差に起因するサファイア板からの波長変換材の剥離や波長変換材の損傷を防止する」(段落【0019】、【0032】)という発明が解決しようとする課題を解決できるものとなった。
イ 本件訂正によって、請求項2、12において、「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、1°未満であり、前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上89°以下であり、前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が1°未満又は89°より大きく90°以下である他の励起光源を有していない」ことが特定されたため、第1面及び第2面とサファイアのc軸が平行で、第1の励起光の光軸が第2面に垂直なもの(従来技術)を含まないものとなり、複屈折性を利用して課題を解決できるものとなった。
4 申立人の意見について
申立人は、令和5年2月13日付け意見書において、「複数の励起光源の数が偶数であれば、当業者の通常の実施形態において集光レンズの光軸上に配置される励起される励起光源は存在しないことになるが、このような場合に、複数の励起光源の中に0°を超え1°未満となる励起光源が含まれるように実施形態が構成されることは、当業者の通常想定し得ない実施形態といえ,そうすると、0°を超え1°未満となる他の励起光源が含まれないことも,引用発明1-1を当業者が通常想定される形態で実施した結果、当然に充足される事項という他ない。
したがって、訂正後の請求項1にかかる発明はなお進歩性を有しているとはいえない。」旨主張する(20ページ5~11行)。
しかしながら、申立人が示した証拠(甲3、甲5、甲25,甲26)は、偶数の励起光源をレンズ軸上に対称に配置するものであるが、いずれも、c軸を考慮するものではないから、本件発明1の技術思想を何ら開示するものではない。
したがって、申立人の上記主張は採用することができない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第29条第1項柱書について
本件発明1の技術内容を意図的に実施することができず、創作された技術内容そのものが実施できるか否かを偶発的な結果に頼ることしか実施できないと解されるようなものは、特許法によって保護されるに値する発明というべきではなく、特許法2条1項にいう「発明」には該当しないというべきである旨主張する(申立書75ページ9~13行)。
しかしながら、申立人の上記主張は本件発明1が発明該当性を有さないこと(例えば、自然法則を利用していないことや、課題を解決することが不可能であることなど)について具体的な理由を示していない。なお、本件発明1が明確性要件や実施可能要件を満たすことについては以下の4及び5を参照のこと。
2 特許法第29条第2項(進歩性)について
申立人は、本件発明について、甲3発明、甲4発明、甲5発明、甲6発明のいずれかを主引用発明として、進歩性の取消理由を主張している。
しかしながら、本件発明1,3~11の「前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0°以上1゜未満である他の励起光源を有していない」こと及び本件発明2~10,12の「前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が1゜未満または89゜より大きく90゜以下である他の励起光源を有していない」ことは、申立人の提出したいずれの証拠にも示されていないから、本件発明1~12は、甲3発明、甲4発明、甲5発明、甲6発明のいずれかを主引用発明としても、当業者が容易に発明をできたものとはいえない。
3 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
一般に、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを比較し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、以下ではこの考え方に則って、本件のサポート要件について検討する。
(1)本件特許明細書の発明の詳細な記載について
発明の詳細な説明には、本件発明が解決しよう等する課題と当該課題を解決するための構成について、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本開示は、光源装置および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDや半導体レーザ(LD)を光源とする照明装置が、車両用前照灯などの用途で利用され始めている。この照明装置で使用される光源装置は、蛍光体などの波長変換材に照射された励起光を波長変換して、直接または間接的に白色光を生成するものである。
【0003】
この白色光を反射板やレンズを用いて所望の方向に照射することで、従来の照明装置に比べて光量の大きな照明装置となる。
【0004】
この波長変換材の変換効率は100%ではなく、照射された励起光のエネルギーの一部は、熱となる。そのため、波長変換材を保持する保持板には、透光性に加え、放熱性能が求められる。
【0005】
サファイアは、光の透過率と熱伝導率が高く、保持板の材質として優れている。例えば、特許文献1および2には、レーザ光源と、蛍光体と、蛍光体を保持するサファイア板とを備える光源装置および照明装置が記載されており、サファイア板に対して、レーザ光を垂直に照射した例が記載されている。」
「【0019】
サファイア板11は、板状であるため、厚み方向の長さよりも、平面方向の長さが長い。従って、平面方向の寸法変化の方が厚み方向の寸法変化よりも大きくなる。そこで、平面方向の熱膨張係数を同じとすると、平面方向の熱膨張差に起因するサファイア板11からの波長変換材13の剥離や波長変換材13の損傷を抑制することができる。
【0020】
・・・このように、サファイアは、熱膨張係数に異方性を有する材料である。
【0021】
サファイアは、c軸と垂直な方向では、いずれの方向であっても同じ熱膨張係数を有するため、サファイア板11の第1面11aと第2面11bと、サファイアのc軸とのなす角を89°を越え、91°未満の範囲とすると、平面方向において発生する熱膨張係数の差を小さくすることができる(第1の実施形態)。
【0023】
サファイアは、機械的強度に異方性があり、サファイア板11の主面11a、11bがc軸と平行となるとき、サファイア板11の抗折強度が大きくなる。特に、a面が最も高い強度を示す。サファイア板11の破損を抑制し、破損しにくい光源装置1とするためには、サファイア板11の主面11a、11bをc軸と平行とするとよい。ここで、平行とは、なす角が1°以下であることとする(第2の実施形態)。
【0024】
サファイアの抗折強度は、a面のc軸方向で最大となるため、サファイア板11が長軸(長辺)方向と短軸(短辺)方向を有する、例えば矩形板状などの形状の場合、サファイア板11の主面をa面とし、長軸方向をc軸方向とするとよい。・・・(第2の実施形態)。
【0025】
本開示の光源装置1においては、、サファイア板11のc軸11cと、第1励起光15aの光軸15bとのなす角は、1°以上である。言い換えると、図1に示すように、サファイア板11の第2面11bに対して、第1励起光15aが、斜めに入射している(第1の実施形態)。
【0026】
また、本開示の光源装置1においては、サファイア板11のc軸11cと、第1励起光15aの光軸15bとのなす角は、89°以下である。言い換えると、図1に示すように、サファイア板11の第2面11bに対して、第1励起光15aが、斜めに入射している(第2の実施形態)。
【0027】
サファイアは複屈折性を有する結晶である。複屈折とは、光線が物質を透過したときに、その偏光の状態によって、正常光と異常光の2つに分けられることをいう。2種類の光の屈折率は、光がサファイア板11の光学軸(c軸)11cと同軸で進行するときは一致し、光が2つに分かれることはない。一方、光の進行方向がサファイア板11の光学軸11cと同軸でない場合には、正常光の屈折率は、光の光学軸に対する角度には依存しないが、異常光の屈折率は、光の光学軸11cに対する角度に依存して変化する。」
「【0032】
本開示の光源装置1では、サファイア板11が有する複屈折性という性質を利用して、第1励起光15aを正常光16aと異常光16bとに分けて、発熱量の大きい領域の外側に発熱量の小さい領域を配置することで、波長変換材13やサファイア板11に生じる温度差を比較的なだらかにすることができ、波長変換材13がサファイア板11から剥離することを抑制することができる。
【0033】
この複屈折性を利用した正常光16aと異常光16bの位置のずれは、第1励起光15aの光軸15bとサファイア板11のc軸11cとのなす角および入射角によって変化する。空気中からサファイア板11の第2面11bに入射角θaで入射した光は、空気とサファイア板11との界面(第2面11b)で屈折して、サファイア板11の中を屈折角θbで伝搬する。サファイア板11の屈折率をNとした時、スネルの法則より、sinθa/sinθb=Nである。この関係を用いて、正常光16aと異常光16bの位置のずれを計算することができる。
【0034】
(第1の実施形態)例えば、厚みが3.0mmのc面を主面とするサファイア板11の第2面11bに波長488nmの第1励起光15a(正常光の屈折率は、1.775、異常光の屈折率は、1.767?1.775)が入射したとき、正常光16aと異常光16bの屈折率の違いによる第1面11aにおける位置ずれは、入射角θaが20°であれば0.3μm、40°であれば2.0μm、60°であれば5.0μmになる。そこで、c軸11cと、第1励起光15aの光軸15bとのなす角は、20°以上、さらに好ましくは40°以上としてもよい。
【0035】
(第2の実施形態)例えば、厚みが3.0mmのa面を主面とするサファイア板11の第2面11bに波長488nmの第1励起光15a(正常光の屈折率は、1.775、異常光の屈折率は、1.767?1.775)が図1のように、c軸に平行(c軸11cとのなす角が0°)な入射面で入射したとき、正常光16aと異常光16bの屈折率の違いによる第1面11aにおける位置ずれは、入射角θaが0°と90°の時に0となり、入射角θaが20°であれば2.3μm、40°であれば2.9μm、60°であれば1.6μmになる。」
「【0072】
このような光源装置においては、光量を増大させても、波長変換材の発熱量が増大し、熱により波長変換材が劣化することを抑制できる。また、発熱部分とその外側の領域の温度差による応力で、波長変換材が損傷することを抑制できるので、熱による性能低下や損傷が起こりにくい光源装置および照明装置を提供することができる。」
(2)検討
以上より、本件発明は、蛍光体などの波長変換材に照射された励起光を波長変換して白色光を生成する光源装置において,光量を増大させて波長変換材の発熱量が増大しても熱による波長変換材の劣化を抑制することや、発熱部分とその外側の領域の温度差による応力で波長変換材が損傷することを抑制することを課題とするものである。そして、発明の詳細な説明には、当該課題を解決するために、波長変換材13を保持する保持部材として、光透過率と熱伝導率に優れるサファイア板11を用いるとともに、第1励起光15aをサファイア板11のc軸と直交する面に対して斜めに入射させ、サファイア板11が有する複屈折性を利用することで、第1励起光15aを正常光16aと異常光16bとに分けて発熱量の大きい領域の外側に発熱量の小さい領域を配置させ、波長変換材13やサファイア板11に生じる温度差を比較的なだらかにする実施形態が複数記載されている。
これに対して、上記「第3」で示したように、本件発明1には、発明の詳細な説明に記載された上記構成(保持部材としてサファイア板11を用い、上記の第1励起光15aをサファイア板11のc軸と直交する面に対して斜めに入射させること)に対応して、「(サファイア板の)第1面と第2面と、サファイアのc軸とのなす角を89°を越え、91°未満」とし「前記c軸と、前記第2面に入射する第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上」とし「前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0゜以上1゜未満である他の励起光源を有していない」という事項が特定されており、また、本件発明2には、同構成に対応して「(サファイア板の)第1面および第2面がサファイアのc軸とのなす角は1°未満」とし、「前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上89゜以下」とし、「前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が1゜未満または89゜より大きく90゜以下である他の励起光源を有していない」という事項が特定されている。
そうすると、本件発明1,2は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
また、本件発明3~12は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を全て含み、更に他の構成を含むものであり、他の構成も発明の詳細な説明に記載されているから、本件発明1,2と同様に、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
したがって、本件発明1~12は、発明の詳細な説明に記載されたもので、サポート要件に適合するものである。
(3)サポート要件についての申立人の主張の検討
ア 申立人は、本件発明2について、「本件明細書の段落【0023】には、平行が1゜の傾きを生じ得ることが記載されており、従来技術のように、サファイア板の第1面及び第2面がC面であり、これに対して垂直にレーザ光(第1励起光)を入射した場合においても、サファイアのc軸とレーザ光の光軸とのなす角は1゜になり得るものであったことが、当業者において理解される。そうすると、サファイアのc軸とレーザ光の光軸とのなす角が1゜になっている光源装置が従来技術として存在していたといえ、1゜以上であることを特定する構成要件Fが、従来技術に比して、本件課題を解決できる範囲のものであると認識することはできないものと思料する。」(135ページ16~24行)と主張している。
しかしながら、本件訂正によって、本件発明2には、「第1面および第2面がサファイアのc軸とのなす角は1°未満」であることが特定されたため、申立人の上記主張は前提を欠いている。
したがって、申立人の上記主張には理由がない。
イ 申立人は、本件発明について次のような主張をしている。
・本件発明1について「構成要件Eについては、「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角を89゜を超え、91゜未満であり」と特定することによって、従来技術の場合(典型的には、上記のように、第1面及び第2面がサファイアのc面であり、第1面および第2面とサファイアのc軸とのなす角が90゜である場合)に比して、どのように本件課題の解決に貢献するのかについても、本件特許明細書の記載から推し量ることはできない。」(135ページ下から4行~136ページ2行)
・本件発明2について「(aー3)で上述したように、「第1面および第2面をサファイアのc軸に平行にし、第1励起光の光軸を第1面及び第2面に対して垂直にした」という形態を含む発明であるところ、これは、本件特許明細書の背景技術に記載された「サファイア板に対してレーザ光を垂直に照射すること」に他ならない。」(136ページ5~9行)
・本件発明3について「しかしながら、本件特許明細書には、c軸と第1励起光の光軸とのなす角が1゜である場合に生じる位置ずれが記載されていないため、1°から20°にすることによって、どれだけの位置ずれの差が生じるかを認識することができない。さらに、 0°から1°の差は既に生じ得るものである以上、0°から1゜になったときの位置ずれに対し、20 °になることで、どれだけの効果が生じるのかを理解することができない。」(136ページ下から2行~137ページ4行)
しかしながら、上記(2)で示したとおり、本件発明1~3は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
したがって、申立人の上記主張には理由がない。
ウ 申立人は、本件発明4について「構成要件Jにおいて「前記第2面に対する前記第1励起光の入射角は、75°以下である」との発明特定事項を有する発明であるところ、これは、本件特許明細書の背景技術に記載された「サファイア板に対してレーザ光を垂直に照射すること」、すなわち、第2面に対する第1励起光の入射角が、0°である形態を含むものである。」(137ページ下から2行~138ページ3行)と主張している。
しかしながら、本件発明4は、本件発明1~3のいずれかを引用するものであり、本件発明1~3は、いずれも、第2面に対する第1励起光の入射角が、0°である形態を含まない。
したがって、申立人の上記主張には理由がない。
エ 申立人は、本件発明について「サファイア板に照射される光がコリメート光でなく、所定の拡がり角を有する発散光である場合、光軸がC軸に対して斜めであるからといって照射領域の外緑において複屈折が実際に発生しているか否かは不確定であり、上記の作用原理が成立するか否かも不明であるから、当業者は、コリメート光でない場合であっても、本件課題が解決されることを認識することはできない。」(139ページ下から7行~下から2行)と主張している。
しかしながら、本件発明1、2,11,12には、第1励起光が「指向性」を有することが特定されている。そして、第1励起光が「指向性」を有すれば、光軸付近の光量が周辺の光量より大きく支配的になるから、少なくとも光軸付近においては、サファイア板の複屈折性を利用することが可能であり、上記(2)で示した課題解決が期待できることは明らかである。
したがって、申立人の上記主張には理由がない。
オ 申立人は、「出願人自らが、本件特許明細書において、正常光と異常光の2つに分かれる複屈折という現象が「偏光の状態」に依存して発生するものと説明しておきながら、実際にどのような偏光の状態で発明が実現されるかについては何ら触れられていないのである。そうしてみると、当業者は、少なくともどのような偏光の状態で励起光を入射させなければ、発明の効果を享受できるかを理解することができず、また、本件課題を解決するための作用原理が生じない場合も含み得る本件特許発明1 -12によって、本件課題を解決できないことは明らかである。」(141ページ13行~20行)と主張している。
しかしながら、上記(2)で示したように、サファイア板の複屈折性を利用するのに、本件発明1は「(サファイア板の)第1面と第2面と、サファイアのc軸とのなす角を89°を越え、91°未満」とし「前記c軸と、前記第2面に入射する第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上」とし「前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が0゜以上1゜未満である他の励起光源を有していない」という事項を特定することで、また、本件発明2は「(サファイア板の)第1面および第2面がサファイアのc軸とのなす角は1°未満」とし、「前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上89゜以下」とし、「前記c軸と、前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する前記第1励起光の光軸とのなす角が1゜未満または89゜より大きく90゜以下である他の励起光源を有していない」という事項を特定することで、課題を解決するものである。
したがって、申立人の上記主張には理由がない。
カ 申立人は、「サファイア板に入射した光がサファイア板から出射されるまでの光軸の方向が、c軸に対して斜めでなければならないものと思料される。」(142ページ16~18行)、
「そうしてみると、第2面を基準に励起光を斜めに入射させることが発明特定事項に表れていたとしても、このような発明特定事項によって、複屈折を生じさせることが特定されるわけではないため、当業者は本件特許発明1-12によって課題を解決するための作用効果が得られると理解することはできず、また、本件課題を解決するための作用原理が生じない場合を含む本件特許発明1-12は、本件課題を解決するものができないことは明らかである。」(142ページ下から2行~143ページ5行)と主張している。
しかしながら、上記(2)で示したように、「サファイア板に入射した光がサファイア板から出射されるまでの光軸の方向が、C軸に対して斜め」であることを、本件発明1では「対向する第1面と第2面とを有するサファイア板と、該サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材と、指向性を有する第1励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源とを備えた光源装置であって、前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、89゜を越え、91゜未満であり、前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上であり」という事項により、また、本件発明2では「対向する第1面と第2面とを有するサファイア板と、該サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材と、指向性を有する第1励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源とを備えた光源装置であって、前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、1゜未満であり、前記c軸と、前記第2面に入射する前記第1励起光の光軸とのなす角は、1°以上89゜以下であり」という事項により特定している。
したがって、申立人の上記主張には理由がない。
キ 申立人は、「本件特許明細書には、段落【0034】-【0037】に示すように、特定の数値例しか記載されておらず、本件出願時の技術常職に照らしても、本件特許発明1-3、11,12の数値範囲まで、本件特許明細書において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。」(145ページ下から5行~下から2行)と主張している。
しかしながら、上記(2)で示したように、本件発明は、第1励起光をサファイア板のc軸と直交する面に対して斜めに入射させ、サファイア板11が有する複屈折性を利用することで、課題を解決するものであり、段落【0034】~【0037】に示される特定の数値には、例示以上の技術的意義はない。
したがって、申立人の上記主張には理由がない。
ク 申立人は、課題解決手段について次のように主張している。
・「本件特許発明1-12は、その用途として、「移動体用前照灯に用いられ、照射距離が100m以上で用いられる」ことを特定する必要があると認められる。しかしながら、本件特許発明1 -12では、そのような光源装置の出力に関する構成が特定されていないため、本件特許発明1-12は、本件課題を解決するための手段を備えていないことは明らかである。」(146ページ下から7行~下から3行)
・「サファイア板のC軸を基点とした角度条件によって、異なる2つの構成要素(サファイア板及び第1励起光源)の相対的な位置関係を特定し、これによって発明の特性を表すというのは、当業者にとって慣用されているものではなく、また、このように発明を特定することにどのような技術的な意義があるのかを何の説明もなく認識することは困難であるため、所謂、複合的な特殊パラメータとなっているものといえる。」(148ページ2~6行)・・・」
・「構成要件E単体としての技術は、上述したように、寧ろ、従来から知られているように、第1面および第2面が、C面(このときのC軸とのなす角は90°)であることが最適な角度であることから、最適な角度の他にそうでない角度を含ませて、89゜を超え、91゜未満という範囲に広げたことが、効果との関係でどのような技術的意味を有するのかも、それにより効果が得られることも、いずれも当業者は理解することができない」(148ページ下から3行~149ページ3行)
しかしながら、上記(2)で示したとおり、本件発明1~12は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
したがって、申立人の上記主張にはいずれも理由がない。
ケ 申立人は「本件特許発明1に対し、適切でない段落【0021】が依然として本件特許明細書に記載されており、適切でない記載によって当業者が適切に発明を理解することができないといえる。」(152ページ下から7行~下から5行)と主張している。
しかしながら、段落【0021】には「サファイアは、c軸と垂直な方向では、いずれの方向であっても同じ熱膨張係数を有するため、サファイア板11の第1面11aと第2面11bと、サファイアのc軸とのなす角を89゜を越え、91°未満の範囲とすると、平面方向において発生する熱膨張係数の差を小さくすることができる(第1の実施形態)。」と記載され、技術的な意味が理解できるから、申立人の上記主張には理由がない。
4 許法第36条第6項第2号(明確性要件)について
(1)検討
本件発明1~12は明確であり、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されているから、明確性要件に適合するものである。
(2)明確性要件についての申立人の主張の検討
ア 申立人は、「本件発明1、2、11、12には、「対向する第1面と第2面とを有するサファイア板」との記載がある。・・・「サファイア板」は、平面のみで構成された板なのか、曲面を有する湾曲した板なのか、どのような形状であるのか不明である。」(153ページ14行~19行)と主張している。
しかしながら、本件発明1、11は、「対向する第1面と第2面とを有するサファイア板」と特定された上で、さらに、「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、89゜を越え、91゜未満であり、」と「サファイア板」の対向する「第1面」と「第2面」について特定されており、その記載は明確である。また、本件発明2、12は、「対向する第1面と第2面とを有するサファイア板」と特定された上で、さらに、「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、1゜未満であり」と「サファイア板」の対向する「第1面」と「第2面」について特定されており、その記載は明確である。
したがって、申立人の上記主張には理由がない。
イ 申立人は「本件特許発明1、2、11、12には、「前記第1面に対向して位置する波長変換材」との記載がある。しかし、当該記載において、 「第1面」と「波長変換材」とが対向して位置する際、「第1面」と「波長変換材」とは、接触しているのか、接触していないのか不明である。」(154ページ8~12行)と主張している。
しかしながら、本件訂正によって、本件発明1、2、11、12には、「サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材」が特定されたため、申立人の上記主張は前提を欠いている。
したがって、申立人の上記主張には理由がない。
ウ 申立人は「本件特許発明1 、2、11、12には、「指向性を有する第1励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源」との記載がある。しかし、当該記載において、第1励起光が、第2面を通じて波長変換材に出射される際、第1面を通過するのか、第1面を通過しないのか不明である。」、「また、当該記載において、第1励起光が指向性を有するとは、どのような態様を示しているのか不明である。」(154ページ14~19行)と主張している。
しかしながら、本件発明1、11では、「対向する第1面と第2面とを有するサファイア板と、該サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材と、指向性を有する第1励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源」と特定されている上に、「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、89゜を越え、91゜未満であり」と特定されているから、励起光の直進性を考慮すれば、第1励起光は、第1面を通過することは自明である。また、本件発明2、12では、「対向する第1面と第2面とを有するサファイア板と、該サファイア板の前記第1面に接触している波長変換材と、指向性を有する第1励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源」と特定されている上に、「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、1゜未満であり」と特定されているから、励起光の直進性を考慮すれば、第1励起光は、第1面を通過することは自明である。
したがって、申立人の上記主張には理由がない。
また、一般に、光源装置における指向性とは、光源からの方向によって波の強さが異なる性質をいうのであって、本件発明において、第1励起光が指向性を有するというのは、第1励起光が、空中に出力されるとき、その光軸の方向の強度が他の方向に対して大きいものと理解できる。
したがって、申立人の上記主張には理由がない。
エ 申立人は、「本件特許発明1、11には、「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、89゜を越え、91゜未満であり」との記載がある。また、本件特許発明2、 12には、「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、1゜以下であり」との記載がある。しかし、「第1面」及び「第2面」は、どのような形状であるのか不明であり、また、「サファイア板」のどの部分の面であるのか不明である。そのため、当該記載は、「第1面」と「第2面」と「サファイアのC軸」とが、どのような関係であることを意図しているのか不明である」と主張するとともに、「当該記載における「サファイアのc軸」における「サファイア」は、「サファイア板」とどのような関係があるのか不明である。」(154ページ下から6行~155ページ5行)と主張している。
しかしながら、本件発明1,11には、「前記第1面および前記第2面と、サファイアの c軸とのなす角は、89゜を越え、91゜未満であり」と特定され、第1面と第2面はサファイアのc軸とほぼ垂直なこと及び第1面と第2面とがほぼ平行なことが理解でき、本件発明2,12では、訂正されて、「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、1゜未満であり」と特定され、第1面と第2面はサファイアのc軸とほぼ平行なこと及び第1面と第2面がほぼ平行なことが理解できる。
また、サファイアのc軸の「サファイア」は「サファイア板」のサファイアであることが理解できる。
したがって、申立人の上記主張には理由がない。
オ 申立人は、本件発明4の「前記第2面に対する前記第1励起光の人射角」との記載の「第2面」について、本件発明5の「指向性を有する第2励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する第2励起光源」との記載の「第2励起光」について、本件発明7の「前記第2面に垂直な方向から見たとき、前記第1励起光の光軸と前記第2励起光の光軸のなす角度が80゜以上100゜以下である」という記載の「第2面」について、また、本件発明10の「請求項1乃至9のいずれかに記載の光源装置と、導光部材とを備えた照明装置。」との記載の「光源装置」と「導光部材」との関係について、それぞれ不明であると主張しているが、いずれも明確であることは明らかである。
したがって、申立人の上記主張には理由がない。
カ 申立人は、本件発明8の「前記励起光を透過し」との記載の「前記励起光」や、本件発明9の「前記励起光の反射率を低減させる」との記載の「前記励起光」が、「第1励起光」及び「第2励起光」のいずれを意図しているのか不明であると主張している。
しかしながら、当該「前記励起光」が「第1励起光」及び「第2励起光」の両方を指していることは明らかである。
したがって、申立人の上記主張には理由がない。
5 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について
(1)検討
本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているから、実施可能要件に適合するものである。
(2)実施可能要件についての申立人の主張の検討
ア 申立人は、「どのようにして、第1面および第2面をサファイアのC面に対して平行から1゜未満にすることがきるのかが不明である。」(158ページ下から7行~下から5行)と主張している。
しかしながら、上記1°未満にすることが原理的に不可能であるとは認められず、サファイア板を作成する(例えば、削り出し)にあたって、例えば第1面及び第2面がサファイアのC面に対して平行になるように作成し、結果的に平行から1°未満とすることは十分可能である。
したがって、申立人の上記主張には理由がない。
イ 申立人は、「当業者は、入射角に20°、40°、60゜の値をそれぞれ採用したときに、第1面の位置ずれが発生する部分において、どの程度の温度差が発生するのか理解できず、また、それによりどの程度の熱膨張差が発生するのか理解できない。」(159ページ15~18行)と主張している。
しかしながら、上記温度差や熱膨張の具体的な程度が明らかでないことが、発明の実施を妨げるものとは認められない。
したがって、申立人の上記主張には理由がない。
6.特許法第17条の2第3項(新規事項)について
申立人は、「本件出願人が令和3年2月12日付で提出した手続補正書によってなされた本件特許発明2、12において、「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、1゜以下であり、」との補正は、特許法第17条の2第3項に規定される新規事項の追加に該当する。」と主張している。
しかしながら、本件訂正により、本件発明2,12において、「前記第1面および前記第2面と、サファイアのc軸とのなす角は、1゜未満であり、」と訂正された。
そして、本件訂正が訂正要件を満たしていることは上記「第2 2(2)、(4)」で示したとおりである。
したがって、申立人の上記主張には理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件発明1~12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700045