特許異議申立
2022-700248
磁気探査システムおよび磁気探査方法
- 審判番号
- 2022-700248
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-110083
- 登録番号
- 6940910
- 請求日
- 2022年03月25日
- 審決日
- 2023年03月29日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社沖縄計測
- 【権利者代理人】西原 広徳
- 【異議申立人】中石 幸明
- 【異議申立人】仲本 久美子
- 審判長/審判官
- 審判長 石井 哲
- 審判官 福島 浩司
- 審判官 ▲高▼見 重雄
- 分類
- P1651.121-YAA(G01V) / P1651.536-YAA(G01V) / P1651.537-YAA(G01V)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第2条第1項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6940910号発明「磁気探査システムおよび磁気探査方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6940910号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4について訂正することを認める。
特許第6940910号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許6940910号の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和3年7月1日に出願され、同年9月7日にその特許権の設定登録がされ、同年9月29日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和4年3月25日に特許異議申立人中石 幸明(以下「中石申立人」という。)及び特許異議申立人仲本 久美子(以下「仲本申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、当審は、同年9月27日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年12月2日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」という。)を行い、その訂正の請求に対して、中石申立人は、令和5年1月31日に、仲本申立人は、同年2月3日にそれぞれ意見書を提出した。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容(下線は、訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記複数の磁気センサのそれぞれは、前記第1コイルと前記第2コイルとの間の距離であるコイル間距離が互いに異なるように構成され、選択的に使用することができる」と記載されているのを、「前記複数の磁気センサのそれぞれは、前記第1コイルと前記第2コイルとの間の距離であるコイル間距離が互いに異なるように構成され、選択的に使用することができ、前記複数の磁気センサは、前記コイル間距離が互いに異なる3種類以上の磁気センサを含み、前記複数の磁気センサのうちの1つは、前記複数の磁気センサのうちの1つを用いた磁気探査において得られた前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がある場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が長い磁気センサと、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がない場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が短い磁気センサと、を含む」に訂正する。
そして、請求項1に係る発明を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記複数の磁気センサのそれぞれの前記コイル間距離は、0.3m以上であって、2.0m以下の範囲内で設定されている」との記載を、「前記複数の磁気センサのそれぞれの前記コイル間距離は、0.3m以上であって、2.0m以下の範囲内で設定されており、前記複数の磁気センサは、前記コイル間距離が互いに異なる5種類の磁気センサを含む」に訂正する。
そして請求項2に係る発明を引用する請求項3についても同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「前記第1コイルと前記第2コイルとの間の距離であるコイル間距離が互いに異なるように構成される磁気センサと、複数の前記磁気センサのそれぞれに接続され」と記載されているのを、「前記第1コイルと前記第2コイルとの間の距離であるコイル間距離が互いに異なるように構成される3種類以上の複数の磁気センサと、前記複数の磁気センサのそれぞれに接続され」に訂正する。
(3)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「当該磁性物体の長さまたは個数が不明である場合に、他の磁気センサを用いた磁気探査を行う」と記載されているのを、「当該磁性物体の長さまたは個数が不明である場合に、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波があるかどうかを判断し、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がある場合に、直前に使用した磁気センサよりもコイル間距離が長い他の磁気センサを用いた磁気探査を行い、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がない場合に、直前に使用した磁気センサよりもコイル間距離が短い他の磁気センサを用いた磁気探査を行う」に訂正する。
なお、訂正前の請求項1~3は、請求項2及び3が訂正の対象である請求項1を引用するものであるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の「前記複数の磁気センサ」が、「前記コイル間距離が互いに異なる3種類以上の磁気センサを含」むものであって、「前記複数の磁気センサのうちの1つは、前記複数の磁気センサのうちの1つを用いた磁気探査において得られた前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がある場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が長い磁気センサと、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がない場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が短い磁気センサと、を含む」ものであると、「前記複数の磁気センサ」の種類を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、
(本a)「【0048】
図5に示す例では、5つの磁気センサ2a?2eが用意されている。磁気センサ2aのコイル間距離Dは1.6mであり、磁気センサ2bのコイル間距離Dは1.0mであり、磁気センサ2cのコイル間距離Dは0.7mであり、磁気センサ2dのコイル間距離Dは0.5mであり、磁気センサ2eのコイル間距離Dは0.3mである。コイル間距離Dが1.6mの磁気センサ2aは、主に水平磁気探査方法において従来から多く用いられてきたものである。コイル間距離Dが1.0mの磁気センサ2bは、主に鉛直磁気探査方法において従来から用いられてきたものである。」
(本b)「【0089】
一方、出力波形に単極波形が連続して複数表れている場合には(ステップS6:YES)、ステップS3で表示された出力波形に、正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波があるかどうかを判断する(ステップS8)。なお、波とは、所定の閾値を超える振幅を有する波のことであり、ノイズによる細かい波等は含まない。
【0090】
正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波があれば(ステップS8:YES)、直前に使用した磁気センサ2よりも、コイル間距離Dが長い磁気センサ2を選択し(ステップS9)、ステップS2に戻る。一方、正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がなければ(ステップS8:NO)、直前に使用した磁気センサ2よりも、コイル間距離Dが短い磁気センサ2を選択し(ステップS10)、ステップS2に戻る。
【0091】
以上のように、この磁気探査システム1では、複数の測定部5を、選択的に使用することができる。すなわち、磁気探査システム1では、コイル間距離Dが互いに異なる複数の磁気センサ2を、選択的に使用することができる。」
と、記載されていることから、これらの訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の「前記複数の磁気センサ」が、「前記コイル間距離が互いに異なる5種類の磁気センサを含む」ものである旨限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、上記(1)の(本a)の記載より、上記訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3及び4について
訂正事項3及び4に係る訂正は、訂正前の請求項4の「磁気センサ」が「3種類以上の複数の磁気センサ」であって、これら「3種類以上の複数の磁気センサ」を使った「磁気探査方法」が、「前記磁気探査において得られた前記波形から磁性物体の存在が検出された場合であって、当該磁性物体の長さまたは個数が不明である場合に、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波があるかどうかを判断し、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がある場合に、直前に使用した磁気センサよりもコイル間距離が長い他の磁気センサを用いた磁気探査を行い、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がない場合に、直前に使用した磁気センサよりもコイル間距離が短い他の磁気センサを用いた磁気探査を行う」方法である旨限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、上記(1)の(本a)及び(本b)の記載より、上記訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
なお、中石申立人より、本件特許請求の範囲の全ての請求項について、特許異議申立がされていることから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項は検討を要しない。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~4に係る発明(以下「本件特許発明1~4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
第1コイルと、前記第1コイルの軸線方向に離間して配置され前記第1コイルとは巻き方向が逆向きの第2コイルとを有する磁気センサと、
複数の前記磁気センサのそれぞれに接続され、前記複数の磁気センサのそれぞれの出力から波形を生成する波形生成部と、
波形生成部で生成された前記波形を記録する記録部を備え、
前記複数の磁気センサのそれぞれは、前記第1コイルと前記第2コイルとの間の距離であるコイル間距離が互いに異なるように構成され、選択的に使用することができ、
前記複数の磁気センサは、前記コイル間距離が互いに異なる3種類以上の磁気センサを含み、前記複数の磁気センサのうちの1つは、前記複数の磁気センサのうちの1つを用いた磁気探査において得られた前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がある場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が長い磁気センサと、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がない場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が短い磁気センサと、を含む
磁気探査システム。
【請求項2】
前記複数の磁気センサのそれぞれの前記コイル間距離は、0.3m以上であって、2.0m以下の範囲内で設定されており、
前記複数の磁気センサは、前記コイル間距離が互いに異なる5種類の磁気センサを含む
請求項1記載の磁気探査システム。
【請求項3】
前記複数の磁気センサのうちの1つは、前記コイル間距離が0.6m以下の範囲内で設定されている
請求項2記載の磁気探査システム。
【請求項4】
第1コイルと、前記第1コイルの軸線方向に離間して配置され前記第1コイルとは巻き
方向が逆向きの第2コイルとを有し、前記第1コイルと前記第2コイルとの間の距離であるコイル間距離が互いに異なるように構成される3種類以上の複数の磁気センサと、前記複数の磁気センサのそれぞれに接続され、前記複数の磁気センサのそれぞれの出力から波形を生成する波形生成部と、波形生成部で生成された前記波形を記録する記録部を備える磁気探査システムにおいて、地中の磁性物体を探査するための磁気探査方法であって、
前記複数の磁気センサのうちの1つを用いて磁気探査を行い、
前記磁気探査において得られた前記波形から磁性物体の存在が検出された場合であって、当該磁性物体の長さまたは個数が不明である場合に、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波があるかどうかを判断し、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がある場合に、直前に使用した磁気センサよりもコイル間距離が長い他の磁気センサを用いた磁気探査を行い、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がない場合に、直前に使用した磁気センサよりもコイル間距離が短い他の磁気センサを用いた磁気探査を行う
磁気探査方法。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1~3に係る特許に対して、当審が令和4年9月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1~3に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献4に記載された技術事項に基いて、引用文献2に記載された発明及び引用文献4に記載された技術事項に基いて又は引用文献3に記載された発明及び引用文献4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。よって、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
引用文献1:山本健一、平成30年度技術環境研究所研究発表会論文集、「磁性体近傍の磁気探査における解析手法の開発」、一般社団法人沖縄しまたて協会、23-30頁, 平成30年10月24日(中石申立人提出の甲1号証)
引用文献2:特許第5165808号公報(中石申立人提出の甲2号証)
引用文献3:登録実用新案第3201949号公報(中石申立人提出の甲3号証)
引用文献4:特開平9-101373号公報(中石申立人提出の甲5号証)
2 引用文献の記載
(1)引用文献1について
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(引1a)「以上のことから、本課題では強磁性体の構造物付近における磁気探査に有効な両コイル型磁気傾度計の構成ならびに解祈方法について、(1)両コイル型磁気傾度計の設計と製作、(2)解析手法の検討、(3)実測による有効性の検証について実施し、所望の結果を得ることができたので報告する。」(23頁18-21行)
(引1b)「ここで、Rはコイル対の移動する直線(測線)と磁極との距離すなわち√Y2+Z2(当審注:√はY2+Z2に係る。)、Nはコイルの巻数、Sは断面積、Qは磁極の大きさ、μrはコイル内欽心の比透磁率、Lはコイル対の長さ(コイル間隔)である。この式から分かるように、起電力はR/Lおよび(x-X)/Lによって特徴づけられる関数である。」(23頁下から6-3行)
(引1c)「磁性体近での探査において、雑音となる被探査物以外からの漏洩磁界からの影器を小さくする必要があり、最適なLが存在すると考えられる。そこでRの位置を固定したときにLによって出力振幅がどのように変化するかをシミュレーションしてみたところ、図3の結果が得られた。これによるとLとRがほぼ等しいときに最大値が得られる一方で、Rに対してLを小さくとることで振幅が小さくなる。例えば、磁性構造物が1mから0.5m程度の近距離にある場合にはLを0.3m程度にすることで、磁性構造物と測線との距離よりも近くの被探査物に由来する信号とそれ以外のノイズの比率(すなわちSN比)を大きくできると考えられる。」(24頁下から4行-25頁4行)
(引1d)「コイル内の磁束密度を高め誘導起電力の増加を目的として、コイル内に鉄心を配置するが、ここでは0.1mの長さに切断した後に、1100℃において3時間の熱処理を施したPCパーマロイ(直径9mm) を用いた。鉄心の長さを短くすることで反磁界効果により見掛け上の透磁率は減少する[4]が、コイルの巻数を約10,000回とすると共に、次に述べる増幅器を用いて所望の電圧となるよう処理した。図5はセンサーコイル及び周辺の回路構成を示す。同図中の増幅器Bによってコイルaとbの出力電圧の比率を調整し、地磁気によって起電力が生じないように調整する。作製したセンサーコイルとプリアンプはアルミニウム製の筒状ケースに挿入してセンサ一部を実現した。図5中LPFはカットオフ周波数5. 3Hzの3次ローパスフィルタであり、商用電源などの外来ノイズを抑えるために設置した。このカットオフ周波数よりも測定信号の周波数は十分に低いため、探査における出力波形はほとんど影響を受けない。このLPFの出力をアンプCを用いて所望の感度となるように増幅した後に、12bits-A/Dコンバータによってディジタル量に変換し、PC(Raspberry-Pi)によってデータ収集する構成とした。このとき,AIDコンバータの取り込み周期は約200points/sであり、解析のために十分な取り込み速度を有している。
図6に作製したセンサーと回路一式の外観写真を示す。センサー間距離50cmのセンサーもあわせて作製したのであわせて示した。なお、測定に際しては同図中の(1)センサー、(2)本体、(3)(4)電源を携帯して測定することとなるが、総重量は約2kg(センサー660g、本体290g、バッテリー1kg)であり作業には全く支障はない。一方で、実用性の観点からは防水処理、耐衝撃性、電源の軽量化など改善の余地はあるが、本報告の目的とは異なることと時間的制約から今後の課題とした。」(25頁下から13行-26頁9行)
(引1e)「またコイル間距離をL=O.3mとしたためR=O.5m程度で振幅は小さくなり軒析の困難となるが先に述べたように強磁性構造物付近でのSN比の向上を目的としていた設定が反映された結果と理解できる。当然ながら、強磁性構造物が近くにない場合にはL=0.5mあるいはそれ以上の長さを持つセンサーを用いることでR=O.5mやさらに遠方の探査にも十分対応できる。」(第28頁1-9行)
イ 引用文献1に記載された発明
(ア)上記(引1a)より、引用文献1には、「強磁性体の構造物付近における磁気探査に有効な両コイル型磁気傾度計ならびに解祈方法」が記載されている。
(イ)引用文献1には、上記(引1b)より「Lはコイル対の長さ(コイル間隔)であ」る旨及び上記(引1c)より、「磁性体近での探査において」は、「磁性構造物が1mから0.5m程度の近距離にある場合にはLを0.3m程度にすることで、磁性構造物と測線との距離よりも近くの被探査物に由来する信号とそれ以外のノイズの比率(すなわちSN比)を大きくできる」旨記載されている。
(ウ)上記(引1d)より、引用文献1には「センサー間距離50cmのセンサーもあわせて作製した」旨記載されていることから、引用文献1に記載の「両コイル型磁気傾度計」は、上記bの「センサー間隔距離」「Lを0.3m程度」にしたものとあわせて、「センサー間距離50cmのセンサーも」「作製した」ものである。
(エ)上記(引1c)より、引用文献1には、引用文献1の「両コイル型磁気傾度計」は、「センサーコイル及び周辺の回路」から構成され、「周辺の回路」は、「カットオフ周波数5. 3Hzの3次ローパスフィルタであ」る「LPF」、「アンプC」、「12bits-A/Dコンバータ」及び「PC(Raspberry-Pi)」からなり、「外来ノイズを抑え」た「カットオフ周波数よりも」十分に低い」「周波数」の「測定信号」である「LPFの出力をアンプCを用いて所望の感度となるように増幅し」「12bits-A/Dコンバータによってディジタル量に変換し、PC(Raspberry-Pi)によってデータ収集する」ものである旨、また、引用文献1の「両コイル型磁気傾度計」は、「強磁性構造物付近でのSN比の向上を目的としていた設定が反映された結果」「コイル間距離をL=O.3mとし」たものは、「R=O.5m程度で振幅は小さくなり軒析の困難となるが」「強磁性構造物が近くにない場合にはL=0.5mあるいはそれ以上の長さを持つセンサーを用いることでR=O.5mやさらに遠方の探査にも十分対応できる」旨記載されている。
(オ)上記(ア)~(エ)より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「強磁性体の構造物付近における磁気探査に有効な両コイル型磁気傾度計ならびに解祈方法において、
両コイル型磁気傾度計は、センサーコイル及び周辺の回路から構成され、
周辺の回路は、
カットオフ周波数5. 3Hzの3次ローパスフィルタであるLPF、アンプC、12bits-A/Dコンバータ及びPC(Raspberry-Pi)からなり、
外来ノイズを抑えたカットオフ周波数よりも十分に低い周波数の測定信号であるLPFの出力をアンプCを用いて所望の感度となるように増幅し、
12bits-A/Dコンバータによってディジタル量に変換し、
PC(Raspberry-Pi)によってデータ収集するものであり、
Lはコイル対の長さ(コイル間隔)であり、
磁性体近での探査においては、磁性構造物が1mから0.5m程度の近距離にある場合にはLを0.3m程度にすることで、磁性構造物と測線との距離よりも近くの被探査物に由来する信号とそれ以外のノイズの比率(すなわちSN比)を大きくできるものであって、
センサー間隔距離Lを0.3m程度にしたものとあわせて、センサー間距離50cmのセンサーも作製し、
強磁性構造物付近でのSN比の向上を目的としていた設定が反映された結果、コイル間距離をL=O.3mとしたものは、R=O.5m程度で振幅は小さくなり軒析の困難となるが強磁性構造物が近くにない場合にはL=0.5mあるいはそれ以上の長さを持つセンサーを用いることでR=O.5mやさらに遠方の探査にも十分対応できる
両コイル型磁気傾度計ならびに解祈方法。」
(2)引用文献2について
ア 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(引2a)「【0001】
この発明は差動式磁気探査システム、詳しくは探査ライン上で離間した2つの位置における磁界の強さの差から、地中に埋まった磁性物体を探査する差動式磁気探査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
戦時中の不発弾や地中構造物などの磁気を帯びた探査対象物(磁性物体)を磁気探査する場合、差動式磁気探査装置(差動式磁気探査システム)を用いることが一般的に行われている。
差動式磁気探査装置とは、磁性体の磁気を検出する2個の磁気検知コイル(磁気センサ部)を、移動体の内部空間に一定の間隔で保持して差動接続し、各磁気検知コイルにより得られた磁場の強さの差から探査対象物を探知するものである。
地球磁場のような一様な強磁場の中では、差動式磁気探査装置が動揺しても、互いの信号が打ち消し合って検出信号は発生しない。しかしながら、局部的な磁場が存在した場合、2個の磁気検知コイルが検出した磁場の大きさに差が生じる。差動式磁気探査装置ではこの磁場の差を利用し、管理者用のパソコンに所定の大きさの磁気の検出信号が送られるように構成されている。なお、一般的な差動式磁気探査装置では、地中の不発弾などから発生する数m~十数m程度の磁気異常を検出するため、2個の磁気検知コイル間が0.5~2.0mに設定されている。」
(引2b)「【0004】
このように、差動式磁気探査装置の場合、差動接続される磁気検知コイル間の距離と探査能力との関係は、磁気検知コイル間の距離を長く設定(例えば2.0m)すれば周囲の磁場の影響を受け易くなって磁気探査の分解能が低下する一方、磁気検知コイル間の距離を短く設定(例えば0.5m)すれば、探査距離を長くできないという相反の関係であった。具体的に説明すれば、仮に探査の対象区域に、探査対象物より強磁気の物体(建屋、車両、鋼製の矢板、杭など)が存在した場合、そのバックグランドノイズ(磁気)の影響で、強磁気の物体を中心とした半径数m~数十mの領域での正確な探査は行えない。そこで、磁気検知コイル間の距離を短くすることが考えられるものの、探査範囲が短くなり探査時間が長くなってしまう。
【0005】
また、それまでの差動式磁気探査の常識では、差動式の磁気探査には2個の磁気検知コイルを用いることが必須要件とされてきた。そのため、例えば移動体の動揺など、何らかの原因で2個の磁気検知コイルの離間距離がずれた場合、正確な磁気探査を行えなくなるおそれがあった。しかも、磁気検知コイルを2個使用する分だけ、磁気探査コイルが内蔵される移動体、ひいては差動式磁気探査装置が高価になっていた。
【0006】
このような問題を踏まえ、例えば、磁気検知コイル間が2mの差動式磁気探査装置と、磁気検知コイル間が0.5mの差動式磁気探査装置という、それぞれの目的に合わせて磁気検知コイル間の距離が異なる2台の差動式磁気探査装置を採用することも考えられる。このようにすれば、上述した相反の関係の問題点は改善される。しかしながら、この方法では、2回の磁気探査作業を行わなければならず、2倍の探査時間が必要となるとともに、磁気検知コイル間が0.5mか2mという2パターンに限定されてしまい、より高精度な探査(磁気検知コイル間が0.5m未満)、または、より広範囲での探査(磁気検知コイル間が2m以上)を行うためには、それに見合った磁気検知コイル間の差動式磁気探査装置を準備する必要があった。」
(引2c)「【0035】
このように、探査ライン上を移動する1個の磁気センサ部が検出した磁界の強さを、探査ライン上の位置(移動距離)と関連付けて複数の位置磁界データとして記憶部に記憶し、データ解析時、従来の移動体に内蔵された2個の磁気センサ部間の距離に該当する「測定地点間基準距離」を基準として、ソフトウェア上で前記磁界の強さの差の演算データを取得し、その演算結果から地中での磁性物体の位置を探査するようにしたため、それまでの差動式磁気探査の技術常識であった2個の磁気センサ部を使用しなくとも、1個の磁気センサ部のみで差動式磁気探査を行うことができる。」
(引2d)「【図7】
[図:0001400432000001.jpg]
」
イ 引用文献2に記載された発明
上記(引2a)及び(引2b)より、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「探査ライン上で離間した2つの位置における磁界の強さの差から、地中に埋まった磁性物体を探査する差動式磁気探査システムに関し、
差動式磁気探査システムは、磁性体の磁気を検出する2個の磁気検知コイルを、移動体の内部空間に一定の間隔で保持して差動接続し、各磁気検知コイルにより得られた磁場の強さの差から探査対象物を探知するものであって、
磁気検知コイル間が2mの差動式磁気探査装置と、磁気検知コイル間が0.5mの差動式磁気探査装置という、それぞれの目的に合わせて磁気検知コイル間の距離が異なる2台の差動式磁気探査装置を採用した
差動式磁気探査システム。」
(3)引用文献3について
ア 引用文献3に記載された事項
引用文献3には、以下の事項が記載されている。
(引3a)「【0015】
強磁性体としてH型鋼や矢板などの鋼材が有る場合の本考案の実施の形態を添付図を参照して説明する。図1は、本考案による磁気センサーAの実施形態を示す概略図であり、白抜きの矢印はセンサーの移動方向である。一軸差動方式の磁気センサーAは、S1,S2,S3の3個のコイルが同一線上に設置された状態で、非磁性の支持体4に支持されている。個々の磁気データは、接続ケーブルにて増幅制御装置(管制装置)Bへ送り、Bにて差動データを作成し、A/D変換機Dに送られてデジタル信号化される。さらに、このデジタル信号をPCE上で解析処理システムを利用し、磁気記録を作成する。磁気記録作成後、波形の振幅、周期、形状等を処理する事で、目的とする磁性体例えば不発弾の大きさ、位置(深度)を判定(解析)する。」
(引3b)「【0017】
図3は差動検知部1の差動データである。図4は差動検知部2の差動データ記録、図5は差動検知部3の差動データである。図6、図7については、H型鋼5の上端付近に磁性物(砲弾、爆弾等)6を設置した状態での磁気データと差動検知部3のデータである。
【0018】
図2を参照すると、H型鋼5の磁気データ波形はH型鋼5上端からH型鋼5中心部にかけて徐々に増幅して中心部で最大振幅になり、次いで下端にむけて徐々に下降する波形が確認できる。長大物の殆どがこのような山形の波形で検出される。 図3の差動検知部1のデータについては、通常の磁気探査で使用する機械の差動データで、二こぶの頂端がオーバースケールする状態であり、他の磁性物が近くにあっても判断がつかない。しかし、図4の差動検知部2のデータでは、H型鋼5の上端と下端ではH型鋼の影響が小さくなっていることが分かる。図5の差動検出部3のデータでは、H型鋼5の波形が緩やかになっており、他の磁性物があれば判断できるまでしなやかな波形となっている。なお、図10は、仮想的に検知コイル間隔を変えた場合の磁気測定データシュミレーションで、従来のセンサーで検出した波形Wより本考案で検出コイル間隔を極小にして検出した波形wは緩やかである。
【0019】
図6の波形は、H型鋼5の上端に磁性物6を設置した状態の磁気データを表す。この磁気データを見ると、H型鋼5の緩やかな波形に被さるように磁性物(砲弾・爆弾等)6の波形が顕著に見られる。図7は差動検知部3の記録で、磁性物6の波形の解析が容易に出来るほどに顕著な波形となっている。
【0020】
次に、図1のシステムは、デジタル処理し作画された状態の磁気波形をPCE画面上で異常物の波形の周期や幅、高さ、位置等をクリックすることで、表計算ソフトに自動転送し、磁気量計算を自動で行うシステムである。磁気記録データについては、市販の印刷装置で各用紙に作画も可能である。また、電子媒体へ保存することを前提とした拡張子で納める(DWG 、DXF 、SXF 、グラフィックあるいはPDF )ことによりデータ管理、閲覧等を容易にできるシステムである。」
(引3c)「【図1】
[図:0001400432000002.jpg]
」
イ 引用文献3に記載された発明
(ア)上記(引3c)より、「多成分差動センサー」は、「磁気センサーA」、「増幅制御装置(管制装置)B」、「A/D変換機D」及び「PCE」から構成されている点及び「S1,S2,S3の3個のコイル」において、「差動検知部1」は、コイルS1とS3からなり、「差動検知部2」は、コイルS2とS3からなり、そして「差動検知部3」は、コイルS1とS2からなる点が見て取れる。
(イ)(ア)を踏まえると、上記(引3a)及び(引3b)より、引用文献3には、以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。
「磁気センサーA、増幅制御装置(管制装置)B、A/D変換機D及びPCEから構成された多成分差動センサーにおいて、
磁気センサーAは、S1,S2,S3の3個のコイルが同一線上に設置された状態で、非磁性の支持体4に支持された一軸差動方式のセンサーであり、
磁気センサーAの個々の磁気データは、接続ケーブルにて増幅制御装置(管制装置)Bへ送られ、
Bにて差動データを作成し、
A/D変換機Dに送られてデジタル信号化され、
このデジタル信号は、PCE上で解析処理システムを利用し、磁気記録を作成され、
磁気記録作成後、波形の振幅、周期、形状等を処理する事で、目的とする磁性体例えば不発弾の大きさ、位置(深度)を判定(解析)する多成分差動センサーであって、
コイルS1とS3からなる差動検知部1のデータについては、通常の磁気探査で使用する機械の差動データで、二こぶの頂端がオーバースケールする状態であり、他の磁性物が近くにあっても判断がつかず、
コイルS2とS3からなる差動検知部2のデータでは、H型鋼5の上端と下端ではH型鋼の影響が小さくなっていることが分かり、
コイルS1とS2からなる差動検出部3のデータでは、H型鋼5の波形が緩やかになっており、他の磁性物があれば判断できるまでしなやかな波形となり、
システムは、デジタル処理し作画された状態の磁気波形をPCE画面上で異常物の波形の周期や幅、高さ、位置等をクリックすることで、表計算ソフトに自動転送し、磁気量計算を自動で行うシステムである
多成分差動センサー。」
(4)引用文献4について
ア 引用文献4に記載された事項
引用文献4には、以下の事項が記載されている。
(引4a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電磁誘導を利用した埋設物の探査技術に関するものであり、地中に埋設された電話ケーブル、電力ケーブル、ガス管水道管等の導体(以下単にケーブルと云う)の探査に利用する電磁誘導方式の埋設物探査方法の改良に関するものである。」
(引4b)「【0014】今ここで、検出コイルC3 と検出コイルC2 との差動電圧V3 -V2 及び検出コイルC2 と検出コイルC1 との差動電圧V2 -V1 を、差動回路を用いたり、或いは検出コイルC2 の巻線方向を検出コイルC1 、C3 と逆巻きとすることによって検出すると、V3 -V2 及びV2 -V1 の値は、発振器からの直接磁界Hに比例する電圧成分が打ち消されたものとなり、電流Iによる磁界H1 、H2 、H3 に比例した電圧成分のみとなる。」
3 当審の判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比
(ア)引用発明1の「両コイル型磁気傾度計」は、「強磁性体の構造物付近における磁気探査に有効な」ものであるから、本件特許発明1の「磁気探査システム」に相当する。そして、引用発明1の「両コイル型磁気傾度計」の「センサーコイル」は2つのコイルを有するものであることは明らかであって、その一方のコイル及び他方のコイルは、それぞれ本件特許発明1の「第1コイル」及び「第2コイル」に相当する。そして、引用発明1の「両コイル型磁気傾度計」の「センサーコイル」は、「コイル対の長さ(コイル間隔)であ」る「L」を有しているから、引用発明1の「コイル対の長さ(コイル間隔)であ」る「L」を有する「両コイル型磁気傾度計」は、本件特許発明の「第1コイルと、前記第1コイルの軸線方向に離間して配置され」た「第2コイルとを有する磁気センサ」に相当する。
(イ)引用発明1の「周辺の回路」の「LPF」が出力する、「外来ノイズを抑えたカットオフ周波数よりも十分に低い周波数の測定信号」は、「センサーコイル」からの信号によるものであるから、「LPD」は「センサーコイル」に接続されていることは明らかである。そうすると、引用発明1の「センサーコイル」に接続され「外来ノイズを抑えたカットオフ周波数よりも十分に低い周波数の測定信号」は、本件特許発明1の「複数の前記磁気センサのそれぞれに接続され、前記複数の磁気センサのそれぞれの出力から波形を生成する波形生成部」に相当する。
(ウ)引用発明1の「PC(Raspberry-Pi)」は、「LPFの出力」を「アンプCを用いて所望の感度となるように増幅し」、「12bits-A/Dコンバータによってディジタル量に変換し」たデータを収集するものであるから、引用発明1の「LPFの出力」を「アンプCを用いて所望の感度となるように増幅し」、「12bits-A/Dコンバータによってディジタル量に変換し」たデータを収集する「PC(Raspberry-Pi)」と、本件特許発明1の「波形生成部で生成された前記波形を記録する記録部」とは、「波形生成部で生成された前記波形を収集する手段」である点で共通する。
(エ)引用発明1は、「両コイル型磁気傾度計」は、センサーコイルとして、「センサー間隔距離Lを0.3m程度にしたものとあわせて、センサー間距離50cmのセンサーも作製し」ているから、引用発明1の、「センサー間隔距離Lを0.3m程度にした」「センサーコイル」と「センサー間距離50cmの」「センサーコイル」とは、本件特許発明1の「前記第1コイルと前記第2コイルとの間の距離であるコイル間距離が互いに異なるように構成され」た「前記複数の磁気センサ」に相当する。
(オ)以上(ア)~(エ)より、本件特許発明1と引用発明1とを対比すると、以下の一致点及び相違点がある。
(一致点)「第1コイルと、前記第1コイルの軸線方向に離間して配置された磁気センサと、
複数の前記磁気センサのそれぞれに接続され、前記複数の磁気センサのそれぞれの出力から波形を生成する波形生成部と、
波形生成部で生成された前記波形を収集する手段を備え、
前記複数の磁気センサのそれぞれは、前記第1コイルと前記第2コイルとの間の距離であるコイル間距離が互いに異なるように構成された
磁気探査システム。」
(相違点1)本件特許発明1の「第2コイル」は、「前記第1コイルとは巻き方向が逆向きの」コイルであるのに対し、引用発明1は、そのような特定がない点。
(相違点2)本件特許発明1は「波形生成部で生成された前記波形を記録する記録部を備え」ているのに対し、引用発明1の「PC(Raspberry-Pi)」は、「LPFの出力」を「アンプCを用いて所望の感度となるように増幅し」、「12bits-A/Dコンバータによってディジタル量に変換し」たデータを収集しているものの、記録している旨の特定がない点。
(相違点3)「コイル間距離が互いに異なるように構成され」た「複数の磁気センサ」が、本件特許発明1は、「選択的に使用することができる」ものであって、「前記コイル間距離が互いに異なる3種類以上の磁気センサを含」み、「前記複数の磁気センサのうちの1つは、前記複数の磁気センサのうちの1つを用いた磁気探査において得られた前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がある場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が長い磁気センサと、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がない場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が短い磁気センサと、を含む」ものであるのに対し、引用発明1は、そのような特定がない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
複数のセンサがある場合に、センサの特性等を考慮して測定する状況に適したセンサを適宜選択することは常套手段であって、引用発明1の「センサー間隔距離L」が「0.3m程度」のセンサと「50cm」のセンサとを測定状況に応じて」選択的に使用することは、当業者が容易に想到できたことであるといえるものの、複数のセンサが「前記コイル間距離が互いに異なる3種類以上の磁気センサを含」み、「前記複数の磁気センサのうちの1つは、前記複数の磁気センサのうちの1つを用いた磁気探査において得られた前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がある場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が長い磁気センサと、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がない場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が短い磁気センサと、を含む」構成は、引用発明2及び3は有しておらず、また、引用文献1~4に記載されていないし、引用文献1~4に記載された技術事項から当業者が容易に想到できたものであるともいえない。
(2)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2は、本件特許発明1において、本件特許発明1の「前記複数の磁気センサのそれぞれの前記コイル間距離は、0.3m以上であって、2.0m以下の範囲内で設定されており、前記複数の磁気センサは、前記コイル間距離が互いに異なる5種類の磁気センサを含む」旨特定を、本件特許発明3は、本件特許発明2において、本件特許発明2の「前記複数の磁気センサのうちの1つは、前記コイル間距離が0.6m以下の範囲内で設定されている」旨の特定を、それぞれ加えたものであって、いずれも本件特許発明1における上記相違点3を有しているものである。そして、上記(1)で検討したとおり、上記相違点3における、複数のセンサが「前記コイル間距離が互いに異なる3種類以上の磁気センサを含」み、「前記複数の磁気センサのうちの1つは、前記複数の磁気センサのうちの1つを用いた磁気探査において得られた前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がある場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が長い磁気センサと、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がない場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が短い磁気センサと、を含む」構成は、引用発明2及び3は有しておらず、また、引用文献1~4に記載されていないし、引用文献1~4に記載された技術事項から当業者が容易に想到できたものであるともいえない。
(3)本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1の磁気探査システムにおいて磁気探査を行う磁気探査方法であって、引用発明1と対比すると、上記(1)で検討した相違点3と同様の以下の相違点4があるといえる。
(相違点4)本件特許発明4は、「前記第1コイルと前記第2コイルとの間の距離であるコイル間距離が互いに異なるように構成される3種類以上の複数の磁気センサ」を備えるものであって、「磁気探査を行う磁気探査方法」が、「前記磁気探査において得られた前記波形から磁性物体の存在が検出された場合であって、当該磁性物体の長さまたは個数が不明である場合に、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波があるかどうかを判断し、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がある場合に、直前に使用した磁気センサよりもコイル間距離が長い他の磁気センサを用いた磁気探査を行い、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がない場合に、直前に使用した磁気センサよりもコイル間距離が短い他の磁気センサを用いた磁気探査を行う」ものであるのに対し、引用発明1は、そのような特定がない点。
そして、上記(1)で上記相違点3と同様に、上記相違点4は、引用発明2及び3は有しておらず、また、引用文献1~4に記載されていないし、引用文献1~4に記載された技術事項から当業者が容易に想到できたものであるともいえない。
(4)特許異議申立人の意見について
中石申立人は、令和5年1月31日に提出した意見書において、進歩性に関し、本件特許発明1の「前記複数の磁気センサのうちの1つは、前記複数の磁気センサのうちの1つを用いた磁気探査において得られた前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がある場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が長い磁気センサと、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がない場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が短い磁気センサと、を含む」との特定は、複数の磁気センサが単に3種類以上の磁気センサを含んでいるとの特定に過ぎないから、本件特許発明1は、進歩性の関する理由を解消していない旨主張している。
しかしながら、「前記複数の磁気センサのうちの1つは、前記複数の磁気センサのうちの1つを用いた磁気探査において得られた前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がある場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が長い磁気センサと、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がない場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が短い磁気センサと、を含む」との特定は、「前記複数の磁気センサのうちの1つを用いた磁気探査において得られた前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がある場合に使用する」ことができる「当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が長い磁気センサ」と、「前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がない場合に使用する」ことができる「当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が短い磁気センサ」とを含んでいると、磁気センサの種類をその機能から特定しているものであるといえ、上記(1)で検討したとおり、「前記複数の磁気センサのうちの1つは、前記複数の磁気センサのうちの1つを用いた磁気探査において得られた前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がある場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が長い磁気センサと、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がない場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が短い磁気センサと、を含む」との特定は、引用発明2及び3は有しておらず、また、引用文献1~4に記載されていないし、引用文献1~4に記載された技術事項から当業者が容易に想到できたものであるともいえないから、中石申立人のこの主張は認められない。
また、仲本申立人は、令和5年1月31日に提出した意見書において、進歩性に関し複数種類の磁気センサを探査者が各現場で判断して使い分けることは容易であるから、本件特許発明1~4は、容易である旨主張しているが、本件特許発明1~4は、「前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波が」ある場合とない場合の波形の状態に応じた使い分けを行う構成を特定しており、該特定おける判断は、探査者が通常行っている判断であるとはいえず、また、該特定は、引用文献1~4に記載されていないから、本件特許発明1~4が、容易であるとの主張は採用されない。
4 小括
以上の通り、本件特許発明1~4は、引用発明1~3及び引用文献1~4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 進歩性について
(1)特許異議申立人の主張について
中石申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項1~4に係る発明は、中石申立人が提出した甲1号証~甲3号証に記載された発明及び中石申立人が提出した甲1号証~甲6号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に想到できたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨主張している。
また、仲本申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項1~4に係る発明は、仲本申立人が提出した甲1号証~甲7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到できたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨主張している。
(2)甲号証の記載について
ア 中石申立人が提出した甲号証について
(ア)甲1~3及び5号証について
中石申立人が提出した甲1~3及び5号証は、当審が令和4年9月27日に特許権者に通知した取消理由の引用文献1~4であるから、これらの記載事項は上記第4の2の通りのものである。
(イ)甲4号証について
中石申立人が提出した甲4号証は実公平6-013512号公報であって、磁気センサが所定の間隔で配置された「金属探知機」について記載されている。(第2頁右欄、第1~3図参照)
(ウ)甲6号証について
中石申立人が提出した甲6号証は特許第6799195号公報であって、磁気センサを使用した磁気探査結果記録装置、制御方法、および制御プログラムが記載されている。(【0012】、【0029】、【要約】、図1~3参照)
イ 仲本申立人が提出した甲号証について
仲本申立人が提出した甲1~7号証は、以下の通りのものであって、いずれにも磁気センサを使用した磁気探査装置について記載されている。
甲1号証:磁気探査実施要領の解説(案)、沖縄総合事務局開発建設部、平成8年6月、23頁、75頁
甲2号証:性能試験成績証明書(20140425-K0001-S027Z)、一般社団法人沖縄しまたて協会、平成26年8月26日
甲3号証:H28金武湾港(平安座南地区)磁気探査業務委託報告書平成28年10月
甲4号証:性能試験成績証明書(20140425-KOOOl-SOOlZ)、一般社団法人沖縄しまたて協会、平成26年8月26日
甲5号証:性能試験成績証明書(20140425-K0001-S002Z)、一般社団法人沖縄しまたて協会、平成26年8月26日
甲第6号証:美里第二土地区画整理108街区整備磁気探査調査業務委託報告書平成26年2月
甲第7号証:令和元年度報告書業務名称:牧補(元)磁気探査業務(その6) 履行場所:牧補補給地区一部返還地内
(3)当審の判断
上記第4(1)で検討したとおり、複数のセンサが「前記コイル間距離が互いに異なる3種類以上の磁気センサを含」み、「前記複数の磁気センサのうちの1つは、前記複数の磁気センサのうちの1つを用いた磁気探査において得られた前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がある場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が長い磁気センサと、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がない場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が短い磁気センサと、を含む」構成は、取消理由通知で引用した引用文献1~4である、甲1~3及び5号証には記載されていなし、甲1~3及び5号証に記載された技術事項から当業者が容易に想到できたものであるともいえない。そして、中石申立人が提出した甲4及び6号証や、仲本申立人が提出した甲1~7号証にも、該構成は記載されていないし、これら甲号証の記載に基づいて当業者が容易に想到できたものであるともいえない。
そうすると、中石申立人及び仲本申立人の進歩性に関するかかる主張は採用されない。
2 明確性について
中石申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項1~3に係る発明は、本件特許発明1には、「第1コイルと、前記第1コイルの軸線方向に離間して配置され前記第1コイルとは巻き方向が逆向きの第2コイルとを有する磁気センサ」と記載されているが、本件特許発明1の磁気探査システムが備える「磁気センサ」の数は、単数なのか複数なのか不明であり、また、本件特許発明1には、「前記複数の磁気センサのそれぞれは、前記第1コイルと前記第2コイルとの間の距離であるコイル間距離が互いに異なるように構成され、選択的に使用することができる」と記載されているが、本件特許発明1の「選択的に使用することができる」という事項は、磁気探査システムの構成として、どのような構成を特定しているのか不明であるから、本件特許発明1は明確でなく、本件特許発明1を引用する本件特許発明2-3についても同様である旨主張しているが、本件特許発明1は、本件訂正請求により「前記複数の磁気センサは、前記コイル間距離が互いに異なる3種類以上の磁気センサを含み、前記複数の磁気センサのうちの1つは、前記複数の磁気センサのうちの1つを用いた磁気探査において得られた前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がある場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が長い磁気センサと、前記波形に正負が交互に逆になる連続する5つ以上の波がない場合に使用する、当該磁気探査で使用した磁気センサよりもコイル間距離が短い磁気センサと、を含む」と訂正されたことにより、上記理由は解消された。
また、訂正前の請求項4に係る発明には「前記複数の磁気センサのうちの1つを用いて磁気探査を行い、前記磁気探査において得られた前記波形から磁性物体の存在が検出された場合であって、当該磁性物体の長さまたは個数が不明である場合に、他の磁気センサを用いた磁気探査を行う」旨特定されているが、該探査を行う主体が人であるのか、それとも、磁気探査システムであるのか特定されていないため、全体としてどのようにして、磁気探査システムにおいて、地中の磁性物体を探査するための磁気探方法が実施されるのか不明であり、また、当該記載における「他の磁気センサ」は、どのような構成を有する磁気センサを示すのか不明であるから、訂正前の請求項4に係る発明は明確でない旨主張しているが、磁気探査を行う主体が人や磁気探査システムのいずれの場合であったとしても、本件特許発明4は磁気探査方法として明確に記載されており、また、「他の磁気センサ」についても本件訂正請求により「直前に使用した磁気センサよりもコイル間距離が短い他の磁気センサ」と訂正されたことにより上記理由は解消された。
そうすると、中石申立人の明確性に関するかかる主張は採用されない。
3 サポート要件について
中石申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項2に係る発明は、「前記複数の磁気センサのそれぞれの前記コイル間距離は、0.3m以上であって、2.0m以下の範囲内で設定されている」と特定され、訂正前の請求項3に係る発明は、「前記複数の磁気センサのうちの1つは、前記コイル間距離が0.6m以下の範囲内で設定されている」と特定されているが、発明の詳細な説明には、当該数値範囲に臨界的な意義があることを示す具体的な説明が記載されていないから、訂正前の請求項2及び3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでない旨主張している。
しかしながら、複数の磁気センサのコイル間距離と磁気探知の精度との関係を考慮すると訂正前の請求項2及び3に係る発明において特定されたコイル間距離の臨界的異議は、容易に予測できるものであるといえるから、訂正前の請求項2及び3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでないとまではいえない。
そうすると、中石申立人のサポート要件に関するかかる主張は採用されない。
4 サポート要件及び実施可能要件について
中石申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項4に係る発明は、磁気探査方法における磁気探査を行う主体が特定されておらず、発明の詳細な説明には人が行う場合しか記載されていないから、発明の詳細な説明は、訂正前の請求項4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されているものではなく、また、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものでない旨主張しているが、磁気探査方法における磁気探査を行う主体が人以外の場合であっても、技術常識を考慮すれば磁気探査を行うことはできるから、本件特許発明4は、発明の詳細な説明に記載された発明でないとまでいえず、また、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものでないともいえない。
そうすると、中石申立人のサポート要件及び実施可能要件に関するかかる主張は採用されない。
5 特許法第29条第1項柱書について
中石申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項4に係る発明は、各工程をそれぞれ行う主体が特定されていないため、各工程を行う主体が、人である場合と、磁気探査システムである場合とを包含するものであって、各工程を行う主体が人である場合は、人が行う行為を単に取り決めたものに過ぎず、自然法則を利用したものではないから、訂正前の請求項4に係る発明は、特許法第2条第1項にいう「発明」に該当しない旨、主張している。
しかしながら、本件特許発明4を行う主体が人であったとしても、本件特許発明4が、磁気による磁性体の探査という自然法則を利用した方法で、磁気探査を行っているものであって、特許法第2条第1項にいう「発明」に該当することは明らかであるから、中石申立人の上記主張は採用されない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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