特許異議申立
2023-700439
光源装置および照明装置
- 審判番号
- 2023-700439
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-557686
- 登録番号
- 7163408
- 請求日
- 2023年04月27日
- 審決日
- 2024年11月18日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】京セラ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人ブナ国際特許事務所
- 【異議申立人】中石 幸明
- 審判長/審判官
- 審判長 草野 顕子
- 審判官 筑波 茂樹
- 審判官 高橋 学
- 分類
- P1651.832-ZAA(F21V) / P1651.121-ZAA(F21V)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第126条第6項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7163408号発明「光源装置および照明装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7163408号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
特許第7163408号の請求項1~9に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7163408号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、2019年(令和1年)11月22日(パリ条約による優先権主張 2018年(平成30年)11月26日(以下「優先日」という。)、日本国)を国際出願日とする特許出願であって、令和4年10月21日にその特許権の設定登録がされ、同年10月31日に特許掲載公報が発行された。
本件特許の請求項1~9に係る特許についての特許異議の申立ての経緯は以下のとおりである。
令和5年 4月27日 特許異議申立人 中石 幸明(以下「申立人
」という。)より特許異議の申立て
同年 9月25日付け 取消理由通知
同年11月27日 特許権者より訂正請求・意見書
同年12月27日 申立人より意見書
令和6年 2月22日 取消理由通知(決定の予告)
同年 4月26日 特許権者より訂正請求・意見書
同年 6月12日 申立人より意見書
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年4月26日の訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下の訂正事項1のとおりである(下線部は、訂正箇所を示し、当審で付与した。)。
なお、令和5年11月27日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げされたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「対向する平面状の第1面と平面状の第2面とを有するサファイア板と、
該サファイア板の前記第1面に直接または間接的に接触している波長変換材と、
指向性を有する第1励起光を前記第2面および前記第1面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源とを備えた光源装置であって、
前記第1面および前記第2面と前記サファイア板を構成するサファイアのc軸とのなす角は、10゜未満であり、
前記c軸と前記第1励起光の光軸とのなす角は、5゜以上75゜以下であり、
前記c軸と、前記第2面および前記第1面を通じて前記波長変換材に出射する励起光の光軸とのなす角が0゜以上5゜未満および75゜を超え90゜以下である他の励起光源を有していない光源装置。」と記載されているのを、
「対向する平面状の第1面と平面状の第2面とを有するサファイア板と、
該サファイア板の前記第1面に直接または間接的に接触している(但し、発光ダイオード素子を挟んで前記第1面に間接的に接触している場合を除く)波長変換材と、
指向性を有する第1励起光を前記第2面および前記第1面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源とを備えた光源装置であって、
前記第1面および前記第2面と前記サファイア板を構成するサファイアのc軸とのなす角は、10゜未満(但し、1゜未満の範囲を除く)であり、
前記c軸と前記第1励起光の光軸とのなす角は、5゜以上75゜以下であり、
前記c軸と、前記第2面および前記第1面を通じて前記波長変換材に出射する励起光の光軸とのなす角が0゜以上5゜未満および75゜を超え90゜以下である他の励起光源を有していない光源装置。」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~9も同様に訂正する。)。
(2)一群の請求項についての説明
訂正前の請求項1~9について、請求項2~9は、訂正の請求の対象である請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項1~9について請求されている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正の目的について
訂正事項1は、「該サファイア板の前記第1面に直接または間接的に接触している波長変換材」を、「該サファイア板の前記第1面に直接または間接的に接触している(但し、発光ダイオード素子を挟んで前記第1面に間接的に接触している場合を除く)波長変換材」と限定することによって、訂正前の請求項1の記載を減縮しようとするものである。
また、訂正事項1は、「前記第1面および前記第2面と前記サファイア板を構成するサファイアのc軸とのなす角は、10゜未満であり」を「前記第1面および前記第2面と前記サファイア板を構成するサファイアのc軸とのなす角は、10゜末満(但し、1゜未満の範囲を除く)であり」と限定することによって、訂正前の請求項1の記載を減縮しようとするものである。
したがって、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてした訂正であること
上記訂正事項1において、該サファイア板の前記第1面に直接または間接的に接触している波長変換材」を、「該サファイア板の前記第1面に直接または間接的に接触している(但し、発光ダイオード素子を挟んで前記第1面に間接的に接触している場合を除く)波長変換材」と訂正し、「前記第1面および前記第2面と前記サファイア板を構成するサファイアのc軸とのなす角は、10゜未満であり」とあるのを「前記第1面および前記第2面と前記サファイア板を構成するサファイアのc軸とのなす角は、10゜末満(但し、1゜未満の範囲を除く)であり」と訂正したのは、いわゆる除くクレームに訂正するものである。
したがって、当該訂正事項1は、特許明細書等の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(1)の理由から明らかなように、上記訂正事項1は、発明特定事項を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
3 訂正請求についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とし、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正請求により訂正された請求項1~9に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明9」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
対向する平面状の第1面と平面状の第2面とを有するサファイア板と、
該サファイア板の前記第1面に直接または間接的に接触している(但し、発光ダイオード素子を挟んで前記第1面に間接的に接触している場合を除く)波長変換材と、
指向性を有する第1励起光を前記第2面および前記第1面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源とを備えた光源装置であって、
前記第1面および前記第2面と前記サファイア板を構成するサファイアのc軸とのなす角は、10°未満(但し、1゜未満の範囲を除く)であり、
前記c軸と前記第1励起光の光軸とのなす角は、5°以上75°以下であり、
前記c軸と、前記第2面および前記第1面を通じて前記波長変換材に出射する励起光の光軸とのなす角が0°以上5°未満および75゜を超え90°以下である他の励起光源を有していない光源装置。
【請求項2】
前記c軸と前記第1励起光の光軸とのなす角は、10°以上65°以下である請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記第2主面に対する前記第1励起光の入射角は、15°以上55°以下である請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
指向性を有する第2励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する第2励起光源をさらに備え、前記第1励起光と前記第2励起光とは、少なくとも一部が前記波長変換材で重なる請求項1~3のいずれかに記載の光源装置。
【請求項5】
前記c軸と前記第1励起光の光軸とのなす角と、前記c軸と前記第2励起光の光軸とのなす角は、異なっている請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記第2面に垂直な方向から見たとき、前記第1励起光の光軸と前記第2励起光の光軸とのなす角度が80°以上100°以下である請求項4または5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記サファイア板と前記波長変換材との間に、前記励起光を透過し、前記波長変換材から出射する波長変換光を反射する、ダイクロイック膜を備える、請求項1~6のいずれかに記載の光源装置。
【請求項8】
前記サファイア板の前記第2面に、前記励起光の反射率を低減させる、反射防止膜を備える、請求項1~7のいずれかに記載の光源装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の光源装置と、導光部材とを備えた照明装置。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
訂正前の請求項1~9に係る特許に対して、当審が令和6年2月22日付けの取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(進歩性)本件特許の請求項1~9に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
<理由1>
・請求項 1~6
・引用文献 1、2、6
・請求項 7
・引用文献 1、2、4、6、7
・請求項 8、9
・引用文献 1、2、4~7
引用文献等一覧
1.特開2013-16565号公報(申立人の提出した甲第4号証)
2.特開2005-64492号公報(申立人の提出した甲第8号証)(周知技術を示す文献)
3.特開2005-235960号公報(申立人の提出した甲第9号証)(決定の予告では不使用)
4.国際公開第2017/043122号(申立人の提出した甲第10号証)(周知技術を示す文献)
5.特開2015-216383号公報(申立人の提出した甲第11号証)(周知技術を示す文献)
6.特開2006-351641号公報(申立人の提出した甲第13号証)(周知技術を示す文献)
7.特表2016-508294号公報(申立人の提出した甲第15号証)(周知技術を示す文献)
第5 当審による検討
1 引用文献の記載事項、甲4発明
(1)引用文献1(甲4)
ア 記載事項
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発光素子を備えた発光装置に関する。」
・「【0026】
[基体]
基体11としては、例えば、配線が設けられた実装用基板を用いることができる。また、キャビティが形成され、リードフレームと、これを一体的に保持する成形体と、を備えるパッケージでもよい。基体11上には、発光ダイオード素子12が設けられる。なお、発光ダイオード素子12は、基体11の上面に載置することにより基体11上に直接的に設けることもできるし、基体11の上面に載置されたサブマウントなどに載置することにより基体11上に間接的に設けることもできる。
【0027】
図1に示すように、基体11は、貫通孔を有する基体であり、端面発光型素子13の光は、基体11の貫通孔を通って発光ダイオード素子12の下面に入射する。この場合、基体11としては、セラミック材、金属材、または樹脂材を用いることができる。なお、貫通孔の内壁には、光反射材を形成することができる。このようにすれば、端面発光型素子13の光を、基体11の吸収による光損失を抑え、発光ダイオード素子12の下面に効率良く入射させることができる。」
・「【0030】
[発光ダイオード素子]
(発光ダイオード素子の一例)
発光ダイオード素子12としては、例えば、基板と、素子構造を構成する半導体層と、を備えたものを用いることができる。このほか、成長用基板が剥離された素子構造を構成する半導体層を発光ダイオード素子12として用いることもできる。
【0031】
<基板>
基板としては、透光性基板を用いることが好ましい。また、基板の厚みは、例えば、50μm~200μmとする。なお、透光性基板は、半導体層を成長させるために用いる成長用基板であってもよいし、半導体層に貼り付けられた基板であってもよい。半導体層に基板を貼り付ける場合は、例えば、リフトオフなどにより半導体層から成長用基板を剥離する。その後、透光性の接着剤を介して、又は熱圧着や表面活性化接合などで直接的に、半導体層に基板を貼り付ければ、光を効率良く取り出しやすい。成長用基板は、例えば、サファイア基板やGaN基板などを用いることができる。半導体層に貼り付けられる基板は、これらに加え、ガラス基板などを用いることができ、蛍光体を含有するものでもよい。」
・「【0042】
[端面発光型素子]
(端面発光型素子と指向性)
端面発光型素子13は、指向性のある光を端面から出射する発光素子であり、素子構造を構成する半導体層内に、光出射端面に略垂直な方向に延伸する光導波路を有する。具体的な端面発光型素子13としては、例えば、半導体レーザ素子やスーパールミネッセンス・ダイオードなどの発光素子を用いることができる。これらを用いれば、端面発光型素子13の光を発光ダイオード素子12の下面に効率良く入射させることが可能となる。」
・「【0044】
[発光ダイオード素子と端面発光型素子との間]
(光学部品)
発光ダイオード素子12と端面発光型素子13との間には、光学部品を設けることができる。このようにすれば、端面発光型素子13から出射された光の向きを調整できるため、端面発光型素子13の光利用効率を向上させることができる。光学部品としては、例えば、集光レンズ、フレイアレイレンズ、ロッドレンズなどを用いることができる。」
・「【0052】
[蛍光体を含む波長変換部材]
発光ダイオード素子12の上面には、蛍光体を含む波長変換部材を設けることができる。このようにすれば、発光ダイオード素子12や端面発光型素子13の光を波長変換することができるため、多波長化が容易になる。」
・「【0055】
[複数の端面発光型素子の配置例]
図4は、複数の端面発光型素子の配置例を示す図である。本発明の実施形態においては、複数の端面発光型素子を用いることもできる。この場合、複数の端面発光型素子13は、垂直入射配置、すなわち、すべての端面発光型素子13の光軸が発光ダイオード素子12の中心軸と略平行になるように配置することができるほか、図4に示すように、斜め入射配置、すなわち、各端面発光型素子13の光軸が発光ダイオード素子12の中心軸に対して斜めになるように、好ましくは該中心軸と交差するように配置することができる。
【0056】
複数の端面発光型素子13を上記した斜め入射配置で配置する場合は、各端面発光型素子13を、それらの光軸が発光ダイオード素子12の中心軸に対して、略回転対称つまり基体11上面視において等配配置(例えば、2つの端面発光型素子13を配置する場合は180°間隔で配置し、3つの端面発光型素子13を配置する場合は120°間隔で配置)となるように配置することが好ましい。このようにすれば、発光ダイオード素子12から取り出される端面発光型素子13の光の配光の偏りを低減することができる。このとき、特に、複数の端面発光型素子13を、それらの光軸が発光ダイオード素子12内で交差するように、配置することが好ましい。また、端面発光型素子13は、その光軸が発光ダイオード素子12の中心軸に対して0°より大きく45°より小さくなるように傾斜させて配置することで、発光ダイオード素子12に光を効率良く入射でき、好ましい。
【0057】
なお、斜め入射配置は、特に、発光波長が略同一の複数の端面発光型素子13を配置する場合に、その波長の光の配光を広げるうえで有効である。」
・「【0087】
以上説明した本発明の実施例1~実施例3に係る発光装置は、複数の素子から出射する光の波長を適宜選択することにより、様々な用途に用いることができる。例えば、複数の素子から赤、緑、青の光を出射させる場合は、照明装置、液晶のバックライト、携帯ストロボ、CIS式スキャナ、アミューズメント(パチンコ等の光装飾)、自発光ディスプレイ、投射型ディスプレイ(ピコプロジェクタ、プロジェクタ他)、網膜走査ディスプレイ等に用いることができる。」
・図4には以下の内容が示されている。
「【図4】
[図:0001422371000001.jpg]
」
イ 甲4発明
引用文献1の図4及び関連する記載によれば、引用文献1には、発光ダイオード素子12として、基板と半導体層とを備えた(段落【0030】)、以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
「基体11と、基体11上に設けられる発光ダイオード素子12と、光を基体11の貫通孔を通って発光ダイオード素子12の下面に入射する、複数の端面発光型素子13とを備える発光装置であって、
発光ダイオード素子12として、基板と半導体層とを備え、
前記基板は、半導体層を成長させるための成長用基板としてサファイア基板が用いられた透光性基板であり、
前記発光ダイオード素子12の上面には、蛍光体を含む波長変換部材を設け、
端面発光型素子13は、指向性のある光を端面から出射する半導体レーザ素子等の発光素子であり、
各端面発光型素子13の光軸が発光ダイオード素子12の中心軸に対して0°より大きく45°よりも小さくなるように傾斜させて配置するとともに、
3つの端面発光型素子13を配置する場合には、基体11上面視において、120°間隔で配置した、
発光装置。」
また、段落【0056】を参照すると、引用文献1には、さらに次の発明(以下「甲4発明2」という。)が記載されていると認められる。
「甲4発明において、複数の端面発光型素子13を、それらの光軸が発光ダイオード素子12内で交差するように、配置すること。」
また、段落【0056】を参照すると、引用文献1には、さらに次の発明(以下「甲4発明3」という。)が記載されていると認められる。
「甲4発明2において、複数の端面発光型素子13を、それらの光軸が発光ダイオード素子12の中心軸に対して、略回転対称つまり基体11上面視において、等配配置すること。」
また、段落【0044】、【0087】を参照すると、引用文献1には、さらに次の発明(以下「甲4発明4」という。)が記載されていると認められる。
「甲4発明において、発光ダイオード素子12と端面発光型素子13との間には、例えば、集光レンズ、フレイアレイレンズ、ロッドレンズなどの光学部品を設け、照明装置に用いること。」
(2)引用文献2(甲8)
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子用単結晶サファイア基板とその製造方法及び半導体発光素子に関する物であり、特にその半導体発光素子が青色LED、紫外LED、白色LED等のLED素子を含むGaN系半導体結晶からなるものに関する。」
・「【0027】
前記主面は、サファイアのC面±2°以内、A面±2°以内、R面±2°以内、M面±2°以内またはM面から30°±2°以内のいずれかを満たすことが好ましい。」
・「【0080】
初めにEFG法によって面方位、軸方位の定まったサファイア素材を引き上げた。本実施例では特にサファイア基板1の主面1aがC面となるようにしたが、主面1aの面方位はC面だけでなく、A面、M面、R面、M面から30度回転した面などにも適応できる。また、これらの面から±2°以内でオフアングルしていても良い。なお、引き上げ方法は様々な方法を用いことが出来るが、特にEFG法で引き上げたサファイア基板は本発明に適している。」
(3)引用文献4(甲10)
引用文献4には、次の事項が記載されている。
・「[0052] (発光部2)
図6は、発光部2の構成を示す断面図である。図6に示すように、発光部2は、蛍光体層2aと、透光層2cとを備える。発光部2は、1mmΦであり、かつ厚さが0.12mmの薄片形状を有する。
・・・
[0059] 本実施形態においては、レーザ光は、透光層2cを経由して、透光層2cと蛍光体層2aとの接合面から蛍光体層2aに入射する。また、蛍光体層2aで発生した蛍光は、主平面2bから出射される。また、蛍光体層2aと透光層2cとの間に、励起光(レーザ光)を透過し、かつ蛍光を反射するダイクロイックミラーが設けられることが好ましい。」
・「[0080] (発光部4)
図10の(b)は、発光装置30が備える発光部4の構成を示す断面図である。図10の(b)に示すように、発光部4は、蛍光体層2aと、透光層2cとを備える。
[0081] 透光層2cの、レーザ光源11と対向する面、および透光層2cと蛍光体層2aとの接合面には、それぞれ励起光AR(Anti-Reflection)コート4a・4bが施されている。励起光ARコート4a・4bは、レーザ光源11から出射されるレーザ光の波長領域において、低い反射率を示すコート層である。このため、レーザ光源11から出射されたレーザ光は、これらの面でほとんど反射されることなく、蛍光体層2aへ入射する。」
・図6には、次の図が示されている。
「[図6]
[図:0001422371000002.jpg]
」
・図10(b)には、次の図が示されている。
「[図10]
[図:0001422371000003.jpg]
」
(4)引用文献5(甲11)
引用文献5には、次の事項が記載されている。
・「【0051】
蛍光体11は、蛍光体粒子として媒体10の内部に分散されている。蛍光体11は、光入射面10f1に入射した励起光を受けて蛍光を放射する。蛍光体11は、光入射面10f1に入射した青色光によって励起され、青色光を黄色光に変換して放射する。
・・・
【0058】
光透過部材15は、波長選択反射膜13の外側(媒体10と対向する面とは反対側)の面に接して配置されている。光透過部材15は、励起光を透過する。また、光透過部材15の熱伝導率は、波長選択反射膜13の熱伝導率よりも大きくなっている。光透過部材15の形成材料としては、例えばサファイアを用いることができる。
【0059】
反射防止膜16は、光透過部材15の外側(波長選択反射膜13と対向する面とは反対側)の面に設けられている。これにより、光透過部材15に入射する励起光の反射を抑制することができる。」
・図2には、次の図が示されている。
「【図2】
[図:0001422371000004.jpg]
」
(5)引用文献6(甲13)
引用文献6には、次の事項が記載されている。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(以下LED)、半導体レーザー(以下LD)の製造に用いられるIII族窒化物半導体基板、特に青色から紫外光発光デバイスの製造に用いられるIII族窒化物半導体基板に関する。」
・「【0025】
具体的には、図2に示すHVPE装置30の反応管40内の基板ホルダ41に、単結晶基板20をセットする。単結晶基板20としては、Al2O3、SiC、Si、GaAs、GaP等により構成された基板を用いることができる。通常はAl2O3により構成されているサファイア基板が安価で品質がよく、また、良質の窒化物エピタキシャル層が経験的に得られることから選択される。面方位は(0001)c面,(11-20)a面、(10-10)m面で、オフアングルは0°以上10°以下である面が、品質面や後のデバイス作製で有利であるため選択される。好ましくは面方位として(0001)c面、オフアングルは0°以上1°以下が、デバイス作製に一般に使用されていることから好ましい。本実施形態においては、サファイア基板を用いた場合で説明するが、以下の内容に限定されるものではない。」
(6)引用文献7(甲15)
引用文献7には、次の事項が記載されている。
・「【0071】
c.図8の蛍光体層64を形成するように、1つ以上の蛍光体がタイル60の上にディスペンスされ得る(ステップ78)。蛍光体層64とタイル60との間に、必要に応じて、例えばダイクロイックフィルタなどの光学機構層62が置かれ得る。必要に応じて、調整ステップ80を用いて、蛍光体の寄与を考慮に入れてLEDの色点を補正することができる。例えば、タイル60の上に赤色放出蛍光体層64をインテグレーションすることによって、3000Kの色温度を持つ暖白色LEDを製造し得る。」
・「【0081】
図10は、例えばダイクロイックフィルタ層及び白色光を作り出すための赤色蛍光体層などの、光学機構層108及び蛍光体層110を示している。フィルタ層は、LEDによる赤色光の吸収を回避するよう、蛍光体層110からの赤色光を反射し得るが、より短波長の光が通過することを可能にする。」
・図8には、次の図が示されている。
「【図8】
[図:0001422371000005.jpg]
」
・図10には、次の図が示されている。
「【図10】
[図:0001422371000006.jpg]
」
2 本件発明1について
(1)対比
ア 本件発明1と甲4発明とを対比すると、後者の「サファイア基板」は前者の「サファイア板」に相当し、以下同様に、「波長変換部材」は「波長変換材」に、「半導体レーザ素子」である「端面発光型素子13」は「第1励起光源」又は「他の励起光源」に、「発光装置」は「光源装置」に、それぞれ相当する。
上記相当関係を踏まえると以下のことがいえる
イ 後者の「サファイア基板」は基板であるから、対向する平面状の第1面と平面状の第2面を有するものであり、前者の「対向する平面状の第1面と平面状の第2面とを有するサファイア板」に相当する。
ウ 後者は「発光ダイオード素子12として、基板と半導体層とを備え、前記基板は、半導体層を成長させるための成長用基板としてサファイア基板が用いられた透光性基板であり、前記発光ダイオード素子12の上面には、蛍光体を含む波長変換部材を設け」るものであり、後者の「サファイア基板」と「波長変換部材」は半導体層を介して間接的に接触しているといえるから、前者の「該サファイア板の前記第1面に直接または間接的に接触している(但し、発光ダイオード素子を挟んで前記第1面に間接的に接触している場合を除く)波長変換材」とは「該サファイア板の前記第1面に間接的に接触している波長変換材」において共通する。
エ 後者における「端面発光型素子13は、指向性のある光を端面から出射する半導体レーザ素子等の発光素子であ」って、「発光ダイオード素子12として、基板と半導体層とを備え、前記基板は、半導体層を成長させるための成長用基板としてサファイア基板が用いられた透光性基板であり、前記発光ダイオード素子12の上面には、蛍光体を含む波長変換部材を設け」るから、上記イ、ウの相当関係を踏まえると、後者の「発光装置」は、前者の「指向性を有する第1励起光を前記第2面および前記第1面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源とを備えた光源装置」に相当する。
オ そうすると、両者は、
「対向する平面状の第1面と平面状の第2面とを有するサファイア板と、
該サファイア板の前記第1面に間接的に接触している波長変換材と、
指向性を有する第1励起光を前記第2面および前記第1面を通じて前記波長変換材に出射する第1励起光源とを備えた光源装置。」
において、一致し、以下の点において相違すると認められる。
<相違点1>
波長変換材について、本件発明1では、「該サファイア板の前記第1面に直接または間接的に接触している(但し、発光ダイオード素子を挟んで前記第1面に間接的に接触している場合を除く)波長変換材」であるのに対し、甲4発明では、「発光ダイオード素子12として、基板と半導体層とを備え、前記基板は、半導体層を成長させるための成長用基板としてサファイア基板が用いられた透光性基板であり、前記発光ダイオード素子12の上面には、蛍光体を含む波長変換部材を設け」たものである点。
<相違点2>
本件発明1では、「前記第1面および前記第2面と前記サファイア板を構成するサファイアのc軸とのなす角は、10°未満であり(但し、1゜未満の範囲を除く)、前記c軸と前記第1励起光の光軸とのなす角は、5°以上75°以下であり、前記c軸と、前記第2面および前記第1面を通じて前記波長変換材に出射する励起光の光軸とのなす角が0°以上5°未満および75°を超え90°以下である他の励起光源を有していない」のに対して、甲4発明では、「発光ダイオード素子12として、基板と半導体層とを備え、前記基板は、半導体層を成長させるための成長用基板としてサファイア基板が用いられた透光性基板であり、前記発光ダイオード素子12の上面には、蛍光体を含む波長変換部材を設け、端面発光型素子13は、指向性のある光を端面から出射する半導体レーザ素子等の発光素子であり、各端面発光型素子13の光軸が発光ダイオード素子12の中心軸に対して0°より大きく45°よりも小さくなるように傾斜させて配置するとともに、3つの端面発光型素子13を配置する場合には、基体11上面視において、120°間隔で配置した」ものの、サファイア基板の第1面及び第2面や、端面発光型素子13(半導体レーザ素子)の光軸2のそれぞれの、サファイア基板のc軸とのなす角について特定されていない点。
(2)相違点の判断
ア 相違点1の検討
甲4発明における「発光ダイオード素子12として、基板と半導体層とを備え、前記基板は、半導体層を成長させるための成長用基板としてサファイア基板が用いられた透光性基板であり、前記発光ダイオード素子12の上面には、蛍光体を含む波長変換部材を設け」の構成が、相違点1に係る「該サファイア板の前記第1面に間接的に接触している波長変換材」の構成に対応することは、上記(1)ウで説示したとおりである。
ここで、相違点1に係る本件発明1の構成には「直接的」との発明特定事項を含むものの、これは選択肢のひとつにすぎないから、「直接的」との発明特定事項を含むことは実質的な相違点ではない。
次に、相違点1に係る「(但し、発光ダイオード素子を挟んで前記第1面に間接的に接触している場合を除く)」との特定について検討する。甲4発明の「発光ダイオード素子12として、基板と半導体層とを備え、前記基板は、半導体層を成長させるための成長用基板としてサファイア基板が用いられた透光性基板であり、前記発光ダイオード素子12の上面には、蛍光体を含む波長変換部材を設け」た構成について、発光ダイオード素子12とサファイア基板の関係を確認すると、発光ダイオード素子12はサファイア基板と半導体層を備えたものであって、サファイア基板は、発光ダイオード素子12の一部である。そうすると、サファイア基板と発光ダイオード素子12の上面に設けられた波長変換部材は、半導体層を挟んで対向するものではあるが、発光ダイオード素子12を挟んで対向するものとはいえない。
してみれば、本件発明1は、「(但し、発光ダイオード素子を挟んで前記第1面に間接的に接触している場合を除く)」との特定を含むものの、上記のとおり、甲4発明は、サファイア基板と波長変換部材との間に発光ダイオード素子を挟むものではないから、この特定によっては、甲4発明の上記構成は除かれておらず、この特定についても実質的な相違点ではない。
したがって、相違点1については、実質的な相違点ではない。
なお、甲4の段落【0030】には、「このほか、成長用基板が剥離された素子構造を構成する半導体層を発光ダイオード素子12として用いることもできる。」との記載もある。仮に、このような成長用基板が剥離された発光ダイオード素子12を用いた場合は、甲4発明における上記構成を「発光ダイオード素子12として、半導体層を備え、前記発光ダイオード素子12の上面には、蛍光体を含む波長変換部材を設け」たものとしたサファイア基板を用いない発明、すなわち、上記1(1)イで認定した甲4発明とは異なる発明が認定されるだけにすぎず、サファイア基板を用いた甲4発明に基づく、上記判断を左右するものではない。
イ 相違点2の検討
甲4発明には、サファイア基板のc軸については、特定されていないが、半導体層を成長させるための成長用基板として、オフアングル(例えば、±2°以内、又は、0°以上10°以下)したA面を主面とするサファイア基板を用いることは、従来周知の事項である(必要があれば、引用文献2(甲8)の段落【0001】、【0027】、【0080】の記載や引用文献6(甲13)の段落【0001】、【0025】の記載を参照のこと。)。
そうすると、甲4発明のサファイア基板もまた、オフアングル(例えば、±2°以内、又は、0°以上10°以下)したA面を主面(すなわち、c軸はA面と平行であるから、第1面及び第2面とc軸とのなす角が10°以下(±2°以内、又は、0°以上10°以下))としているか、仮にそうでなくとも、オフアングル(例えば、±2°以内、又は、0°以上10°以下)したA面を主面とすることは当業者であれば自然に想起し得ることである。なお、このオフアングルの角度は、1゜未満の範囲を除いた10度未満の範囲を含むものである。
そして、甲4発明において、オフアングルしていないサファイア基板のA面が主面であれば、第1面及び第2面とサファイア基板を構成するサファイアのc軸とのなす角は、0°(平行)となり、c軸と第1励起光の光軸とのなす角は、45°より大きく90°より小さくなるが、オフアングルを考慮すると、この角はさらに最大で10°の変位が生じることになるから、c軸と第1励起光の光軸のなす角は35°より大きく90°より小さくなるとともに、c軸と第2面及び第1面を通じて波長変換材に出射する励起光の光軸とのなす角が、35°より大きく90°より小さい他の励起光源のみを有していることになる。このとき、「35°より大きく90°より小さい」ことは、「5°以上75°以下」と少なくとも「35°より大きく75°以下」で重なるものであって、前記c軸と前記光軸とのなす角を「5°以上75°以下」とすることは、設計的事項にすぎない。
したがって、甲4発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
ウ 作用効果について
本件発明1の効果について検討しても、甲4発明及び上記周知の事項から予測されるものから格別のものがあるとはいえない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲4発明及び上記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 本件発明2について
本件発明2と甲4発明を対比すると、相違点1で相違するとともに、上記相違点2に関して、本件発明2は、「前記c軸と前記第1励起光の光軸とのなす角は、10°以上65°以下であ」ることをさらに限定している点で、甲4発明と相違(以下「相違点2’」という。)し、その余の点で一致する。
相違点1については、既に検討したとおりである。 相違点2’の、相違点2よりさらに限定した点について検討する。
甲4発明の発光ダイオード素子12に備えた成長用基板としてのサファイア基板を、A面を主面とすることにより、前記c軸と前記第1励起光の光軸とのなす角は「45°より大きく90°より小さ」くなって、オフアングルを考慮すると、c軸と第1励起光の光軸のなす角は35°より大きく90°より小さくなることは、上記相違点2で説示したとおりである。そして、相違点2’に係る「10°以上65°以下」とは、少なくとも「35°より大きく65°以下」で重なるものであって、前記c軸と前記光軸とのなす角を「10°以上65°以下」とすることは、設計的事項にすぎない。
そうすると、本件発明2は、甲4発明及び上記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 本件発明3について
本件発明3と甲4発明を対比する。
甲4発明の「各端面発光型素子13の光軸が発光ダイオード素子12の中心軸に対して0°より大きく45°より小さ」いことは、発光ダイオード素子12の基板であるサファイア基板の表面に対する入射角も0°より大きく45°より小さいことになるから、本件発明3の「前記第2面に対する前記第1励起光の入射角は15°以上55°以下」と、「前記第2面に対する前記第1励起光の入射角は所定範囲である」ことで共通する。
そうすると、両者は、上記相違点1及び2’に加え、さらに次の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点3>
前記第2主面に対する前記第1励起光の入射角について、本件発明3は、「15°以上55°以下である」のに対し、甲4発明は、「0°より大きく45°より小さい」点。
相違点1、2’については、既に検討したとおりである。
相違点3について検討すると、甲4発明において、第2主面に対する第1励起光の入射角は、「0°より大きく45°より小さ」いから、本件発明3の「15°以上55°以下」とは、少なくとも「15°以上45°より小さ」いで重なるものであって、第2主面に対する第1励起光の入射角を「15°以上55°以下」とすることは、設計的事項にすぎない。
そうすると、本件発明3は、甲4発明及び上記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 本件発明4について
本件発明4と甲4発明2を対比する。
甲4発明2の「複数の端面発光型素子13」のうちの1つが上記2(1)ア、エの相当関係における「第1励起光源」に相当し、それ以外の1つが、本件発明4の「指向性を有する第2励起光を前記第2面を通じて前記波長変換材に出射する第2励起光源」に相当する。
また、甲4発明2の「それらの光軸が発光ダイオード素子12内で交差するように、配置する」構成は、本件発明4の「前記第1励起光と前記第2励起光とは、少なくとも一部が前記波長変換材で重なる」構成と、「前記第1励起光と前記第2励起光とは、少なくとも一部が重なる」構成で共通する。
そうすると、両者は、相違点1、2に加え、さらに次の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点4>
前記第1励起光と前記第2励起光とは、少なくとも一部が重なることについて、本件発明4は「少なくとも一部が前記波長変換材」で重なるのに対し、甲4発明2では「少なくとも一部が発光ダイオード素子12」で重なる点。
相違点1、2については、既に検討したとおりである。
相違点4について検討すると、甲4発明2において、2つの端面発光型素子13からの励起光は、少なくとも一部が発光ダイオード素子12の上面に設けた波長変換材において重なるものとすることは、当業者が適宜なし得る事項である。
そうすると、本件発明4は、甲4発明2及び上記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
6 本件発明5について
本件発明5と甲4発明2を対比すると、両者は、相違点1、2、4に加え、さらに次の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点5>
本件発明5は「前記c軸と前記第1励起光の光軸とのなす角と、前記c軸と前記第2励起光の光軸とのなす角は、異なっている」のに対し、甲4発明2は、そのような特定がない点。
相違点1、2、4については、既に検討したとおりである。
相違点5について検討すると、甲4発明2において、2つの端面発光型素子13からの励起光の光軸の発光ダイオード素子12の中心軸に対する角度を0°より大きく45°より小さい範囲から適宜選択して、発光ダイオード素子12の下面に設けたサファイア基板の第2面に対する角度、ひいてはc軸に対する角度を異ならせることは、当業者が適宜なし得る事項であり、2つの端面発光型素子13の励起光の光軸とサファイア基板の第2面に対する角度が同じであっても、サファイア基板のオフアングル(相違点2の検討を参照)に伴って、c軸に対する角度は異なるものとなる。
そうすると、本件発明5は、甲4発明2及び上記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
7 本件発明6について
本件発明6と甲4発明3を対比すると、両者は、相違点1、2、4に加え、さらに次の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点6>
本件発明6は、「前記第2面に垂直な方向から見たとき、前記第1励起光の光軸と前記第2励起光の光軸とのなす角度が80°以上100°以下である」のに対し、甲4発明3は、「複数の端面発光型素子13を、それらの光軸が発光ダイオード素子12の中心軸に対して、略回転対称つまり基体11上面視において、等配配置する」点。
相違点1、2、4については、既に検討したとおりである。
相違点6について検討する。
甲4発明3において複数の端面発光型素子13をいくつにするかは当業者が適宜定める事項にすぎず、引用文献1(甲4)の図4のように4つの端面発光型素子13として、励起光の光源のなす角を、基体11上面視において90°配置とすること、すなわち、80°以上100°以下とすることは適宜なし得る事項にすぎない。このとき、甲4発明3におけるサファイア基板の第2面と基体11の上面とは平行であると解するのが普通であるから、基体11上面視において80°以上100°以下とすることは適宜なし得る事項にすぎないのであれば、前記第2面に垂直な方向から見たときについても同様である。
そうすると、本件発明6は、甲4発明3及び上記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
8 本件発明7について
本件発明7と甲4発明を対比すると、両者は、相違点1、2に加え、さらに次の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点7>
本件発明7は、「前記サファイア板と前記波長変換材との間に、前記励起光を透過し、前記波長変換材から出射する波長変換光を反射する、ダイクロイック膜を備える」のに対し、甲4発明は、そのような構成を有しない点。
相違点1、2については、既に検討したとおりである。
相違点7について検討する。
一般に、光源装置において、波長変換材から励起光の進む方向とは反対の側に出射される波長変換光を反射させるべく、波長変換材(蛍光体層)の裏(励起光の進む方向とは反対の側)に、ダイクロイック膜を設けることは、従来周知の技術である(必要があれば、引用文献4(甲10)の段落[0059]、引用文献7(甲15)の段落【0071】、【0081】、図8、図10を参照のこと)。ここで、ダイクロイック膜が、励起光を透過することは明らかである。
そして、甲4発明においても、蛍光体を含む波長変換部材から励起光の進む方向とは反対の側に出射される波長変換光を反射させるという課題は内在するから、上記周知の技術に鑑み、波長変換部材の裏、すなわち波長変換部材と半導体層との間に、ダイクロイック膜を挟むことで、サファイア基板の第1面にダイクロイック膜を挟んで間接的に接触している波長変換部材の構成とし、本件発明7の「前記サファイア板と前記波長変換材との間に、前記励起光を透過し、前記波長変換材から出射する波長変換光を反射する、ダイクロイック膜を備える」構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そうすると、本件発明7は、甲4発明、上記周知の事項及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
9 本件発明8について
本件発明8と甲4発明を対比すると、両者は、相違点1、2に加え、さらに次の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点8>
本件発明8は、「前記サファイア板の前記第2面に、前記励起光の反射率を低減させる、反射防止膜を備える」のに対し、甲4発明はそのような構成を有しない点。
相違点1、2については、既に検討したとおりである。
相違点8について検討すると、光源装置が、サファイア板の第2面に、励起光の反射率を低減させる、反射防止膜を備えることは、周知の技術である(必要があれば、引用文献4(甲10)の段落[0081]、及び、引用文献5(甲11)の段落【0058】【0059】を参照のこと)。
そうすると、本件発明8は、甲4発明、上記周知の事項及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
10 本件発明9について
本件発明9と甲4発明4を対比すると、後者の「光学部品」及び「照明装置」は、前者の「導光部材」及び「照明装置」に相当するから、両者は、相違点1、2で相違し、その余の点で一致する。
相違点1、2については、既に検討したとおりである。
そうすると、本件発明9は、甲4発明4及び上記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本件発明1~3は、甲4発明及び上記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明4、5は、甲4発明2及び上記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明6は、甲4発明3及び上記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明7、8は、甲4発明、上記周知の事項及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明9は、甲4発明4及び上記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうすると、本件特許の請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700439