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特許異議申立

2025-700400

窒化ケイ素焼結体及びその製造方法、接合体、並びに、パワーモジュール

審判番号
2025-700400
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-520596
登録番号
7576209
請求日
2025年04月09日
審決日
2025年12月16日
公報発行日
2026年04月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】デンカ株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】中塚 岳
  • 【権利者代理人】佐々木 善紀
  • 【権利者代理人】石坂 泰紀
  • 【異議申立人】松岡 孝代
  • 【異議申立人】小澤 麻理
審判長/審判官
  • 審判長 深草 祐一
  • 審判官 河本 充雄
  • 審判官 宮澤 尚之
分類
P1652.113-YAA(C04B) / P1652.121-YAA(C04B) / P1652.537-YAA(C04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第3項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7576209号発明「窒化ケイ素焼結体及びその製造方法、接合体、並びに、パワーモジュール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7576209号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、5~8〕、4について訂正することを認める。 特許第7576209号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7576209号の請求項1~8に係る特許(以下、それぞれ「本件特許1」などといい、まとめて「本件特許」という。)についての出願は、2023年(令和5年)11月15日(優先権主張 令和4年11月25日)を国際出願日とする出願であって、令和6年10月22日にその特許権の設定登録がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和7年4月9日に特許異議申立人松岡孝代(以下、「申立人1」という。)により本件特許1~3、5~8に対する特許異議の申立てがされ、同年同月28日に特許異議申立人小澤麻理(以下、「申立人2」という。)により本件特許1~5、7、8に対する特許異議の申立てがされ、同年7月29日付けで取消理由が通知され、同年9月24日に特許権者により意見書及び訂正請求書の提出がされた。 なお、上記訂正請求書に対して、申立人1及び申立人2に期間を指定して意見を求めたが、意見書の提出はされなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和7年9月24日提出の訂正請求書における訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許法第120条の5第3項及び第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1~3、5~8〕、及び請求項4を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである(訂正箇所に下線を付した。)。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「微小気孔の平均個数が320個/mm2未満」と記載されているのを、「微小気孔の平均個数が10個/mm2以上且つ320個/mm2未満」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、3、5~8も同様に訂正する。)。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4に「微小気孔の平均個数が320個/mm2未満」と記載されているのを、「微小気孔の平均個数が10個/mm2以上且つ320個/mm2未満」に訂正する。 2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断 (1) 訂正事項1について 訂正事項1は、願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」といい、明細書、特許請求の範囲、又は図面をまとめて「本件特許明細書等」という。)の【0034】の「微小気孔の平均個数P2は、10個/mm2以上であってもよく」との記載に基づき、請求項1に記載された「微小気孔の平均個数」の下限値を限定するものであるから、訂正事項1は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2) 訂正事項2について 訂正事項2は、本件特許明細書の【0034】の前記記載に基づき、請求項4に記載された「微小気孔の平均個数」の下限値を限定するものであるから、訂正事項2は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、5~8〕、4について訂正することを認める。 第3 本件特許請求の範囲の記載(本件発明) 前記第2のとおり、本件訂正請求は適法にされたものであるから、本件訂正後の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 窒化ケイ素粒子を含む窒化ケイ素焼結体であって、 断面において、10μm以上のサイズを有する粗大気孔の平均個数が1個/mm2未満であり、0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数が10個/mm2以上且つ320個/mm2未満であり、 抗折強度が670MPa以上である、窒化ケイ素焼結体。 【請求項2】 前記断面における気孔のサイズの最大値が6μm以下である、請求項1に記載の窒化ケイ素焼結体。 【請求項3】 前記微小気孔のサイズの平均値が1.0μm以下であり、標準偏差が0.6μm以下である、請求項1に記載の窒化ケイ素焼結体。 【請求項4】 酸化イットリウム、酸化マグネシウム、及びシリカを含む焼結助剤原料を粉砕機で粉砕してメジアン径が0.5~1.0μm、且つ最大粒子径が3.9μm以下の焼結助剤粉末を得る工程と、 窒化ケイ素粉末と前記焼結助剤粉末とを含む混合原料を調製する工程と、 前記混合原料の成形体を、不活性ガス雰囲気中、0.7~1MPaの圧力、及び1800~2100℃の焼成温度で焼成して、窒化ケイ素焼結体を得る工程と、を有し、 前記窒化ケイ素焼結体の断面において、10μm以上のサイズを有する粗大気孔の平均個数が1個/mm2未満、且つ、0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数が10個/mm2以上且つ320個/mm2未満であり、前記窒化ケイ素焼結体の抗折強度が670MPa以上である、窒化ケイ素焼結体の製造方法。 【請求項5】 請求項1~3のいずれか一つに記載の板状の前記窒化ケイ素焼結体と、金属板と、前記窒化ケイ素焼結体の主面と前記金属板の主面とを接合するろう材層と、を備える、接合体。 【請求項6】 前記金属板の厚みが0.8mm以下である、請求項5に記載の接合体。 【請求項7】 前記ろう材層は、銀、銅、錫、及び活性金属を含み、 前記活性金属は、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、及びニオブからなる群より選ばれる一種又は二種以上を含む、請求項5に記載の接合体。 【請求項8】 請求項1~3のいずれか一つに記載の板状の前記窒化ケイ素焼結体と、金属板と、前記窒化ケイ素焼結体の主面と前記金属板の主面とを接合するろう材層と、を備える接合体と、 当該接合体の前記金属板に電気的に接続される半導体素子と、を備える、パワーモジュール。」 第4 特許異議の申立てについて 1 申立ての理由の概要 (1) 申立人1が主張する申立ての理由 申立人1が主張する申立ての理由は、概略、以下のとおりである。 ア 特許法第29条第1項所定の規定違反(新規性欠如)について 設定登録時の請求項1~3、5、8に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許1~3、5、8は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 イ 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について 設定登録時の請求項1~3、5~8に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1~3、5~8は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ウ 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について 本件特許明細書には、粗大気孔の平均個数P1は0個/mm2であってもよいことが記載されているが、微小気孔の平均個数P2が0個/mm2であることは何ら記載されていない。 一方、設定登録時の請求項1~3、5~8に係る発明では、微小気孔の平均個数の上限値しか特定されておらず、微小気孔の平均個数が0個/mm2である場合も含むため、当該請求項1~3、5~8に係る発明は、本件特許明細書及び図面に開示された範囲を超えるものである。 したがって、本件特許1~3、5~8は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 エ 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について 設定登録時の請求項1~3、5~8に係る発明では、微小気孔の平均個数の上限値しか特定されておらず、下限が特定されていないため、設定登録時の請求項1~3、5~8に係る発明は、微小気孔が存在しない場合も包含するのか否か、本件特許明細書を参酌しても明らかでなく、明確でない。 したがって、本件特許1~3、5~8は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 オ 証拠方法一覧 甲第1号証 特開2017-178776号公報 甲第2号証 特開2016-169111号公報 甲第3号証 特開2003-192445号公報 甲第4号証 窯業協会編集委員会講座小委員会編、「セラミックスの機械的性質」、社団法人窯業協会、昭和54年5月1日、第59~61ページ (以下、申立人1が提出した上記甲第1号証~甲第4号証をそれぞれ「甲1」~「甲4」という。) (2) 申立人2が主張する申立ての理由 申立人2が主張する申立ての理由は、概略、以下のとおりである。 ア 特許法第29条第1項所定の規定違反(新規性欠如)について (ア) 設定登録時の請求項1、3、4に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許1、3、4は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (イ) 設定登録時の請求項1に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許1は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 イ 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について (ア) 設定登録時の請求項1~5、7、8に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の甲第1号証に記載された発明、及び甲第3号証~甲第8号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1~5、7、8は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (イ) 設定登録時の請求項1~3、5、7、8に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の甲第2号証に記載された発明、及び甲第3号証~甲第6号証、甲第8号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1~3、5、7、8は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ウ 証拠方法一覧 甲第1号証 特開2017-75073号公報 甲第2号証 特開2011-16716号公報 甲第3号証 特開平2-124771号公報 甲第4号証 特開平8-26831号公報 甲第5号証 特許第6293772号公報 甲第6号証 国際公開第2008/111307号 甲第7号証 特開2022-154248号公報 甲第8号証 国際公開第2013/146789号 (以下、申立人2が提出した上記甲第1号証~甲第8号証をそれぞれ「甲1'」~「甲8'」という。) 2 取消理由通知書に記載した取消理由の概要 当審が特許権者に通知した、令和7年7月29日付けの取消理由は、概略、以下のとおりである。 (1) 特許法第29条第1項所定の規定違反(新規性欠如)について 設定登録時の請求項1~3に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許1~3は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2) 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について 設定登録時の請求項5~8に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1に記載された発明、及び甲2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許5~8は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3) 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について 設定登録時の請求項1、4の記載は、窒化ケイ素焼結体の微小気孔の平均個数が0個/mm2である場合を包含するところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、セラミック焼結体の微小気孔の平均個数P2が10個/mm2以上であること(【0034】)は記載されているが、0個/mm2であることは何ら記載されていないため、当該請求項1、4の記載は、本件明細書の発明の詳細な説明に開示された範囲を超えるものである。 当該請求項1の記載を引用する請求項2、3、5~8についても同様である。 したがって、本件特許1~8は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 各甲号証の記載について (1) 甲1の記載について 甲1には、「窒化珪素基板およびそれを用いた窒化珪素回路基板」(発明の名称)に関して、次の記載がある(下線は当審が付した。以下同様である。)。 「【技術分野】 【0001】 後述する実施形態は、概ね、窒化珪素基板およびそれを用いた窒化珪素回路基板に関する。」 「【発明を実施するための形態】 【0011】 本実施形態に係る窒化珪素基板は、窒化珪素結晶粒子と粒界相とを具備する熱伝導率が50W/m・K以上の窒化珪素基板において、窒化珪素基板は、焼結助剤として希土類元素、マグネシウム、チタン、ハフニウムから選択される1種以上を、それぞれ酸化物換算で合計2~14質量%含有し、この窒化珪素基板の断面組織は、窒化珪素基板の厚さT1に対し粒界相の合計長さT2の比(T2/T1)が0.01~0.30であり、基板の表裏に電極を接触して4端子法で測定したときの絶縁耐力の平均値からのばらつきが20%以下であることを特徴とするものである。 【0012】 まず、窒化珪素基板は、窒化珪素結晶粒子と粒界相とを具備する熱伝導率が50W/m・K以上の窒化珪素焼結体から構成されている。また、熱伝導率は50W/m・K以上、さらには90W/m・K以上であることが好ましい。熱伝導率が50W/m・K未満と低い場合には放熱性が低下する。」 「【0033】 室温(25 ℃)での1000V印加時の体積固有抵抗値が60 ×1012Ωm以上であることが好ましい。窒化珪素基板に金属回路板を設けた窒化珪素回路基板は様々な半導体素子を搭載することが可能である。 【0034】 半導体素子の中には動作電圧が500~800Vと高いものもある。 ρv1が60×1012Ωm以上、さらには90×1012Ωm以上と高いことが好ましい。前述のように絶縁耐力のばらつきを低減した上で体積固有抵抗値を高くすることにより、動作電圧の高い半導体素子を実装しても絶縁破壊が起きない優れた信頼性を得ることができる。 【0035】 また、比(ρv2/ρv1)が0.20以上、さらには0.40以上と高いことにより、使用環境が200~300℃の高温下であったとしても優れた絶縁性を維持することができる。近年、SiC素子などのように動作温度が150~250℃になる半導体素子が開発されている。このような半導体素子を実装する絶縁基板として実施形態に係る窒化珪素基板を使うことにより、半導体装置としても優れた信頼性を得ることができる。」 「【0040】 また、窒化珪素基板の気孔率が3%以下であることが好ましい。また、気孔(ポア)の最大径は20μm以下であることが好ましい。実施形態に係る窒化珪素基板は基板厚み方向の窒化珪素結晶粒子と粒界相の比(T2/T1)を制御してあるので気孔率3%まで存在したとしても絶縁耐力のばらつきは20%以下、さらには15%以下にすることができる。 【0041】 なお、気孔(ポア)はできるだけ少ないことが好ましく、気孔率は1%以下、さらには0.5%以下であることが好ましい。また、気孔の最大径は20μm以下、さらには10μm以下、さらには3μm以下(0含む)であることが好ましい。また、気孔の最大径は任意の断面における拡大写真から求めるものとする。 【0042】 また、前述のように体積固有抵抗値ρv1が60×1012Ωm以上、比(ρv2/ρv1)が0.20以上にするには、窒化珪素基板の任意の表面または断面を拡大写真(2000倍以上)にて観察したとき、気孔率1%以下(0含む)かつ気孔の最大径が10μm以下(0含む)であることが好ましい。 【0043】 上記拡大写真とはSEM写真のことである。SEM写真において、ポアは窒化珪素結晶粒子および粒界相とは異なるコントラスト差が生じるので区別可能である。倍率を2000倍以上、さらには5000倍に拡大したSEM写真にて観察されるポアの割合またはサイズを小さくすることにより、高温環境下(250℃雰囲気下)であったとしても優れた体積固有抵抗値を得ることができる。」 「【0077】 また、焼結工程後に、再度、追加の熱処理することも有効である。追加の熱処理は、液相生成温度以上でかつ焼結工程の処理温度より低温とすることが望ましい。また、加圧条件化で行うことが望ましい。焼結工程において粒成長という表面活性状態から冷却された液相成分は、粒界において定常状態となり固定化される。しかし、活性域からの安定化は不均質に進行しやすい。よって再度液相が生成し流動する状態、一方で粒成長は進行しない状態まで熱処理することで、その後の冷却による粒界の安定化をより均質に改善することが可能となる。 【0078】 また、追加の熱処理を行う際に、押圧すること、焼結体の表裏をひっくり返して行うこと、などが有効である。追加の熱処理を行うことにより、窒化珪素基板中のポアを無くしたり、ポアを小さくしたり、ポアの周囲長に粒界相成分を存在した状態とすることができる。上記熱処理の温度は1000℃以上1700℃以下が好ましい。 【0079】 上記の1000℃以上1700℃以下で熱処理することにより、窒化珪素結晶粒子の粒成長を抑制したうえで、粒界相成分を若干移動させることができる。このとき、押圧することや表裏をひっくり返して行うことにより、ポアを無くしたり、ポアを小さくしたり、ポアの周囲長に粒界相成分を存在した状態とする効果を得易くなる。 以上のような製造方法であれば、実施形態に係る窒化珪素基板を得ることができる。」 「【0080】 (実施例) (実施例1~20および比較例1) 窒化珪素粉末として、平均粒径が1.0 μmであり、不純物酸素含有量が1質量%であり、 α化率が98%のものを用意した。また焼結助剤粉末として表1および表2に示したものを用意した。なお、焼結助剤粉末は平均粒径が0.8~1.6 μmのものを用意した。 【0081】 窒化珪素粉末と焼結助剤粉末とを混合し、原料混合体を調製した。また、原料混合体に、分散剤、有機溶媒を混合してボールミル混合を行った。次に、原料混合粉100質量部に対し、有機バインダとしてのブチルメタクリレートを10質量部と、可塑剤としてジブチルフタレートを4質量部、混合し、有機溶媒を追加添加し、さらにボールミル混合を十分に実施してスラリー状の原料混合体を調製した。スラリーの粘度を5000~15000cpsに調整した後に、シート成形法(ドクターブレード法)によりシート成形して乾燥し、成形体(グリーンシート)を調製した。 成形体に対し、窒素ガス雰囲気中で温度500~800 ℃で1~4時間加熱して脱脂工程を行った。 【0082】 次に脱脂処理した成形体に対し、表1および表2に示した熱処理工程および焼結工程を実施した。この工程を実施した後、表1および表2に示した条件で実施例および比較例の窒化珪素基板を作製した。また、熱処理工程および焼結工程は多段(10段重ね)にして実施した。」 「【0084】 【表2】 [図:0001434157000001.jpg] 【0085】 各実施例および比較例に係る窒化珪素基板について、熱伝導率、3点曲げ強度、基板厚さ方向の断面組織を観察し、比(T2/T1),厚さ方向の粒界相の最大径、窒化珪素結晶粒子の長径の平均粒径、気孔率を調査した。また、ポアサイズ、粒界相中の偏析領域についても調査した。 【0086】 なお上記熱伝導率はレーザフラッシュ法により求めた。また、3点曲げ強度はJIS-R-1601(2008)に準じて測定した。また、基板厚さT1はノギスで測定した。また、気孔率は水銀圧入法により求めた。また、基板厚さ方向に対して任意の断面組織をSEM写真(2000倍)を撮影し、厚さ方向の粒界相の最大径、窒化珪素結晶粒子の長径の平均粒径を調査した。 【0087】 また、基板厚さ方向の任意の断面において単位面積20μm×20μmの拡大写真(5000倍のSEM写真)を10か所分撮影し、ポアサイズ(最大径)を求めた。また、単位面積20μm×20μmをEPMAにより焼結助剤成分の金属元素に関してカラーマッピングを行った。単位面積20μm×20μmを5箇所測定し、平均濃度、さらには偏析領域(金属元素の濃度が30%以上ずれている領域)のサイズを求めた。その結果を下記表3および表4に示す。 【0088】 【表3】 [図:0001434157000002.jpg] 【0089】 【表4】 [図:0001434157000003.jpg] 【0090】 (実施例11~20) 次に、実施例1~10の窒化珪素基板に対し、表5に示す追加熱処理を行った。 【0091】 【表5】 [図:0001434157000004.jpg] 【0092】 実施例1~20および比較例1に係る窒化珪素基板について、ポアサイズ(最大径)とポアの周囲長に粒界相成分が存在する割合を求めた。ポアサイズ(最大径)はSEM写真(5000倍)にて求めた。また、ポアの周囲長の粒界相成分の存在割合はEPMAにより求めた。その結果を下記表6に示す。 【0093】 【表6】 [図:0001434157000005.jpg] 【0094】 上記表6に示す結果から明らかなように、各実施例に係る窒化珪素基板ではポアが小さく、ポアの周囲長に粒界相成分が10%以上存在していた。また、追加熱処理を行うことにより、ポアを小さく(ポアが存在しない場合を含む)することができた。」 (2) 甲2の記載について 甲2には、「セラミックス回路基板」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、優れた耐熱サイクル性を有するセラミックス回路基板に関する。 【背景技術】 【0002】 エレベーター、車両、ハイブリッドカー等といったパワーモジュール用途には、アルミナ、ベリリア、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等のセラミックス基板の表面に、金属回路板をろう材で接合し、更に金属回路板の所定の位置に半導体素子を搭載したセラミックス回路基板が用いられる。」 「【0013】 即ち、本発明は、セラミックス基板の一方の面に銅回路、他方の面に銅放熱板がチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブから選択される少なくとも一種の活性金属と錫とを含有するAg-Cuろう材を介して接合されてなるセラミックス回路基板であって、真空度1×10-3Pa以下、接合温度780℃~850℃、保持時間10~60分で接合し、ろう材中のAg成分の銅板への拡散距離が10μm~80μmであり、且つ銅回路側と銅放熱板側の拡散距離の差が10μm未満であることを特徴とするセラミックス回路基板。」 「【0015】 本発明のセラミックス回路基板に使用されるセラミックス基板としては、特に限定されるものではなく、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物系セラミックス、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の酸化物系セラミックス、炭化ケイ素等の炭化物系セラミックス、ほう化ランタン等のほう化物系セラミックス等で使用できる。但し、金属板を活性金属法でセラミックス基板に接合するため、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の非酸化物系セラミックスが好適である。」 「【0017】 本発明の金属板に使用する金属は、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、銀、モリブテン、コバルトの単体又はその合金等、活性金属法を適用できる金属であれば特に限定は無いが、特に導電性、放熱性の観点から銅が好ましい。」 「【0019】 本発明のろう材は、ろう材層中にチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブから選択される少なくとも一種の活性金属を含有する銀-銅系ろう材で構成される。銀-銅系ろう材の組成比は、共晶組成を生成し易い組成比に設定することが好ましく、特に回路銅板および放熱銅板からの銅の溶け込みを考慮した組成(銀粉末と銅粉末の合計100質量部において、銀粉末が75~98質量部、銅粉末が2~25質量部)が好適である。銀粉末の量が75~98質量部以外の場合、ろう材の融解温度が上昇するため、接合時の熱膨張率差に由来する熱ストレスが増加し、耐熱サイクル性が低下し易い。」 「【実施例】 【0027】 [実施例1] 厚み0.32mmの窒化ケイ素からなるセラミックス基板に、銀粉末(福田金属箔粉工業(株)製:AgC-BO)90質量部および銅粉末(福田金属箔粉工業(株)製:SRC-Cu-20)10質量部の合計100質量部に対して、チタン((株)大阪チタニウムテクノロジーズ製:TSH-350)を3.5質量部及び錫(三津和薬品化学:すず(粉末)<-325mesh>)を3質量部含む活性金属ろう材を塗布し、回路面に厚み0.3mm、裏面に0.3mmの無酸素銅板を1.0×10-3Pa以下の真空中にて830℃且つ60分の条件で接合した。」 (3) 甲3の記載について 甲3には、「窒化けい素基板、その製造方法およびその基板を用いた薄膜付き窒化けい素基板」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は窒化けい素基板、その製造方法およびその基板を用いた薄膜付き窒化けい素基板に係り、特に基板を構成する焼結体中に実質的に気孔(ポア)が形成されず、また表面粗さが小さいために、加工時に脱粒が生じにくく、さらにこの薄い窒化けい素基板を用いて各種パワーモジュールや回路基板を構成した際にリーク電流の発生を効果的に抑制することができ、さらに基板表面に薄膜を形成した場合においても薄膜の膨れや剥離を防止でき、大電力化および大容量化した電子機器に使用した場合においても、その絶縁性、耐久性および動作の信頼性を大幅に向上させることが可能な窒化けい素基板、その製造方法およびそれを用いた薄膜付き窒化けい素基板に関する。」 「【0023】その結果、特に所定組成の成形体について、焼結後に熱間静水圧プレス(HIP)処理を実施することにより、基板を構成する焼結体中に実質的に気孔(ポア)が形成されず、緻密でクラックの発生が少ない焼結体が得られ、リーク電流の発生を効果的に低減できるという知見を得た。また、表面粗さが小さく表面性状が良好な基板が得られるため、加工時に脱粒が生じにくく、さらにこの基板表面に薄膜を形成した場合においても薄膜の膨れや剥離が少なく、信頼性が高い薄膜付き窒化けい素基板が得られるという知見を得た。」 「【0030】すなわち、本発明に係る窒化けい素基板は、焼結助剤を含有する窒化けい素焼結体から成る窒化けい素基板において、上記窒化けい素焼結体中に実質的に気孔が存在しないことを特徴とする。」 「【0105】また、気孔率はアルキメデス法により測定した。また、気孔の有無は、基板組織の拡大顕微鏡写真の任意の200μm×200μmの単位面積領域内において、気孔の有無を確認し、任意の単位面積を3個所以上測定しても気孔が確認できない場合を気孔「無し」と表示した。具体的には、気孔は粒界相に存在するものであるから粒界相における気孔の有無は倍率2000倍以上の組織拡大写真で確認することにより測定可能である。例えば、切断面を測定する場合、窒化けい素結晶粒子が脱粒し、見掛け上粒界相に気孔が存在するような形態となることも考えられるが、このような時は窒化けい素結晶粒子の脱粒痕の無い領域を選定して測定するものとする。また、拡大写真において1度に単位面積を映し出せないときは分割で映し出してもよいものとする。」 「【0108】上記表1に示す結果から明らかなように各実施例に係る窒化けい素基板においては、焼結工程後に所定条件下でHIPを実施して形成されているため、基板における気孔の発生が皆無であり、また粒界相が緻密化されて、その最大径が微小化されており、リーク電流の発生が少なく高強度の窒化けい素基板が得られた。 【0109】また、各実施例に係る窒化けい素基板においては、粒界相の最大径(幅)が微小化しているため、表面粗さRaを0.01~0.05μm程度に平滑化した場合においても、基板表面に気孔が形成されることは極めて少ないことが判明した。」 (4) 甲4の記載について 甲4には、「セラミックスの機械的性質」(タイトル)に関して、次の記載がある。 「VI.2 曲げ強さ*2 2.1 試験方法とデータの整理 抗折強度*3,破壊係数*4と同じもので,セラミックスで最も広く測定されている.試験装置としては一般の万能試験機が使われる.図VI-1にその概略図と試験片支持部の拡大図を示す.荷重支点の数によって3点曲げ法*5と4点曲げ法*6に大別され,試験形状としては円柱状か角柱状が使われる.」(第59ページ右欄第11~18行) (5) 甲1'の記載について 甲1'には、「窒化珪素焼結体およびそれを用いた耐磨耗性部材」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 後述する実施形態は、窒化珪素焼結体およびそれを用いた耐磨耗性部材に関する。」 「【課題を解決するための手段】 【0005】 実施形態に係る窒化珪素結晶粒子と粒界相を具備する窒化珪素焼結体の任意の断面を観察した際にB、C、Mo、W、Cu、Niの単体もしくは化合物の結晶構造が観察され、さらに窒化珪素結晶粒子同士の界面の粒界界面の最小厚みが0.2nm以上であることを特徴とするものである。粒界相の幅を制御することにより、耐磨耗性を向上させることができる。 そのため、実施形態にかかる窒化珪素焼結体を用いた耐磨耗性部材は、耐久性が向上する。」 「【0021】 また、後述するように、製造工程において焼結助剤として添加する場合は、酸化物(複合酸化物含む)、窒化物(複合窒化物含む)、炭化物(複合炭化物)が好ましい。Y元素の場合、酸化イットリウム(Y2O3)が好ましい。Al元素の場合、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、MgO・Al2O3スピネルが好ましい。Mg元素の場合、酸化マグネシウム(MgO)、MgO・Al2O3スピネルが好ましい。Si元素の場合、酸化けい素(SiO2)、炭化けい素(SiC)が好ましい。Ti元素の場合、酸化チタン(TiO2)、窒化チタン(TiN)が好ましい。また、Hf元素の場合、酸化ハフニウム(HfO2)が好ましい。Mo元素の場合、酸化モリブデン(MoO2)炭化モリブデン(Mo2C)が好ましい。C元素に関しては、炭化けい素(SiC)、炭化チタン(TiC)、炭窒化チタン(TiCN)として添加することが好ましい。」 「【0028】 また、上記添加成分は焼結助剤としての役目も優れている。そのため、 β型窒化珪素結晶粒子のアスペクト比2以上の割合を60%以上と高くすることができる。なお、アスペクト比2以上の割合は、窒化珪素焼結体の任意の断面をSEM観察して拡大写真(3000倍以上)を撮影する。拡大写真に写る窒化珪素結晶粒子の長径と短径を測定し、アスペクト比を求める。単位面積50μm×50μmあたりのアスペクト比2以上の窒化珪素結晶粒子の面積比(%)を求めるものとする。 また、同様の断面において、長径と短径の平均を粒径と定義したとき、粒径が2μm以上の窒化珪素粒子が窒化珪素粒子全体に占める個数割合が35%以上と高い値にすることが出来る。なお、個数割合の上限は55%以下が好ましい。あまり大きな粒子ばかりであると粒界相の幅の制御が困難になる。 以上のような窒化珪素焼結体は、前述のビッカース硬度のみならず、破壊靭性および3点曲げ強度も向上させることができる。破壊靭性値は6.0MPa・m1/2以上、3点曲げ強度は900MPa以上とすることができる。なお、破壊靭性値はJIS-R-1607のIF法に基づき、新原の式により求めた値である。また、3点曲げ強度はJISR-1601に基づいた値である。」 「【0034】 次に、窒化珪素焼結体の製造方法について説明する。実施形態にかかる窒化珪素焼結体は上記構成を有していれば、その製造方法は特に限定されるものではないが、効率的に得るための方法として次の方法が挙げられる。 粒界相の幅を0.2nm以上、さらには0.2~5nmに制御するためには原料粉末の調製が重要である。 まず、窒化珪素粉末としては、平均粒径2μm以下、α化率90%以上、不純物酸素含有量2wt%以下のものを用意する。 【0035】 第一の方法は、添加する焼結助剤粉末を平均粒径1 μm以下、さらには0.5μm以下と小さくすることが好ましい。また、焼結助剤粉末の平均粒径の標準偏差を0.2μm以下とすることが好ましい。平均粒径や標準偏差の制御は、ボールミルやジェットミルによる微細化、ふるい分けなどを用いることが好ましい。このような焼結助剤粉末と窒化珪素粉末を混合して原料粉末とする。焼結助剤は焼結工程にて粒界相になる。焼結助剤粉末を小さく、均一な粒径にしたものを用いることにより、薄い粒界相を形成することができる。 【0036】 第二の方法は、第一の方法で調製した原料粉末(窒化珪素粉末と焼結助剤粉末を混合したもの)を造粒して造粒粉を作製する工程を行うことである。予め造粒粉とすることにより、窒化珪素粉末の周囲に焼結助剤粉末が均一に存在している状態とすることができる。これにより、薄い粒界相を形成することができる。」 「【0038】 次に、原料粉末に有機バインダを添加し、成型する工程を行う。成型工程は、目的とするプローブ形状を有する金型を用いることが好ましい。また、成型工程に関しては、金型成型やCIPなどを用いても良い。 次に、成型工程で得られた成形体を脱脂する。脱脂工程は、窒素中400~800℃で行うことが好ましい。 次に、脱脂工程で得られた脱脂体を焼結する。焼結工程は、1600℃以上で行うものとする。焼結工程は、不活性雰囲気中または真空中が好ましい。不活性雰囲気としては、窒素雰囲気やアルゴン雰囲気が挙げられる。また、焼結工程は、常圧焼結、加圧焼結、HIPが挙げられる。また、複数種類の焼結方法を組合せてもよい。」 「【0041】 (実施例) (実施例1~10、比較例1~7) 表1、表2に示した窒化珪素粉末、焼結助剤を用意して原料粉末を調製した。なお、焼結助剤の添加量は窒化珪素粉末と焼結助剤の合計量を100wt%としたときの比率である。解砕混合工程はボールミルにより行った。また、窒化珪素粉末は、表1、表2に示したように一部のものには酸化処理を行ったものを用いた。 また、焼結助剤は、Al成分はAl2O3粉末またはAlN粉末として添加した。また、Ti成分はTiO2粉末として添加した。それ以外の成分は金属単体で添加した。 【0042】 【表1】 [図:0001434157000006.jpg] 」 「【0044】 得られた原料混合物に樹脂バインダを混合して成型圧力150MPaにて成型工程を行った。得られた成形体に500℃で脱脂工程を行った。得られた脱脂体に対し、1800℃×4時間の常圧焼結、1600℃×20MPa×2時間のHIP処理を行った。この工程により実施例および比較例に係る窒化珪素焼結体を作製した。 各窒化珪素焼結体に対して、任意の断面を切断加工し、単位面積20μm×20μmの拡大写真(SEM写真)を撮影した。拡大写真を使って、B、C、Cu、Ni、Mo、Wの単体もしくは化合物の個数と、4A族元素を含む化合物結晶の個数を求めた。また、長径2.0μm以上の窒化珪素結晶粒子のアスペクト比2以上の個数割合を求めた。SEM写真において窒化珪素結晶粒子の最大径を長径とした。また、(長径+短径)÷2を平均粒径とした。それぞれ単位面積20μm×20μmあたりの個数割合を求めた。また、窒化珪素結晶粒子同士の粒界界面厚み(nm)の測定をTEMにより行った。その結果を表3に示す。」 「【0046】 実施例1~10に係る窒化珪素焼結体は、B、C、Cu、Ni、Mo、Wの単体もしくは化合物の個数は1~8個であり、4A族元素化合物の結晶の個数は1~3個であった。各焼結体に関しては実質的に気孔(ポア)は確認されなかった。また、TEM観察した結果、実施例にかかる窒化珪素焼結体のB、C、Cu、Ni、Mo、Wの入った結晶、および4A族元素化合物結晶はともに化合物単体であった。 また、CまたはSiCを添加した実施例2、実施例8~10をラマン光分析した結果、2690~2720cm-1、1570~1600cm-1、780~810cm-1の範囲にそれぞれピークが検出された。これはグラフェン、グラファイト、SiCが存在することを示すものである。 なお、ラマン光分析装置は、Thermo Fishier Scientific社製Almegaを用いた。また、ラマン光分析条件は、顕微レーザ-ラマン分光分析法を用い、励起レーザー波長532nm、対物レンズ100倍、検出器CCD、マッピング領域20μm×20μm、測定ピッチ1μmで行った。」 「【0048】 また、比較例1~7に関してはB、C、Cu、Ni、Mo、Wの単体もしくは化合物の個数および4A族元素化合物の結晶の個数は必ずしも1個以上とならなかった。また、比較例1、2、4、6では実質的に気孔は観察されなかったが、比較例3、5、7では内部に気孔が観察された。 また、実施例および比較例に係る窒化珪素焼結体に対して、3点曲げ強度、破壊靭性、ビッカース硬度を測定した。ビッカース硬度HvはJIS-R-1610に基づき試験力9.807N(ニュートン)で行った。また、破壊靭性値はJIS-R-1607のIF法に基づき、新原の式により求めた値である。また、3点曲げ強度はJIS-R-1601に基づき行った。いずれも室温(25 ℃)で測定した。その結果を表5に示す。 【0049】 【表4】 [図:0001434157000007.jpg] 」 (6) 甲2’の記載について 甲2'には、「窒化けい素焼結体」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 「【請求項1】 金属窒化法により製造された窒化けい素粉末と焼結助剤とを混合した窒化けい素焼結体において、焼結助剤成分として希土類元素を1.5~3質量%、Al元素を1~3質量%、酸素元素を5質量%以下含有した窒化けい素焼結体であり、不純物としてFeを10~3000ppm含有するとともに、Caを10~1000ppm含有し、窒化けい素焼結体のビッカース硬度Hvが1300~1600であり、ヤング率が290GPa以上であり、この窒化けい素焼結体の結晶組織において窒化けい素結晶粒子の短径に対する長径の比が2以上である窒化けい素針状結晶粒子の面積率が50%以上であることを特徴とする窒化けい素焼結体。」 「【請求項7】 請求項1記載の窒化けい素焼結体において、前記窒化けい素焼結体を研摩加工した後の30×30μmの表面領域に残存する径が1μm以上の気孔数が5個以下であることを特徴とする窒化けい素焼結体。」 「【請求項11】 請求項1記載の窒化けい素焼結体において、前記窒化けい素焼結体の三点曲げ試験における最低抗折強度が700MPa以上であり、かつ平均抗折強度が900MPa以上であることを特徴とする窒化けい素焼結体。」 (7) 甲3'の記載について 甲3'には、「転がり軸受材料用窒化珪素基焼結体及びその製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 「2.特許請求の範囲 (1)70重量%以上の窒化珪素と30重量%以下の焼結助剤とから構成される窒化珪素基焼結体であって、該焼結体中には、気孔が実質的になく、かつ上記窒化珪素中の不純物および焼結助剤のうちの少なくとも焼結助剤から成り最大長が10μmを越える偏析部を具備しないことを特徴とする転がり軸受材料用窒化珪素基焼結体。」(第1ページ左下欄第5~12行) 「〔産業上の利用分野〕 本第1発明は転がり軸受材料用窒化珪素基焼結体、本第2発明はその製造方法に関し、更に詳しく言えば転がり疲労寿命に優れた軸受材料用窒化珪素基焼結体及びその製造方法に関する。」(第1ページ右下欄第4~8行) 「〔発明の効果〕 本第1発明の窒化珪素基焼結体には、気孔及び最大長が10μmを越える助剤成分の偏析部がないので、それを起源とする破損が生じなく、そのため転がり疲労寿命に優れかつその寿命のバラツキが少ない転がり軸受材料となる。」(第3ページ右下欄第6~11行) (8) 甲4'の記載について 甲4'には、「窒化けい素焼結体の製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 「【請求項1】 原料を混合して成形し、その成形体を常圧焼成した後、常圧焼成した焼結体をさらに加圧焼成処理する窒化けい素焼結体の製造方法において、該常圧焼成した焼結体が、開気孔率で0.5%以下で、かつ焼結体中のα-Si3N4相とβ-Si3N4相の構成比がα-Si3N4/β-Si3N4で0.1以上の仮焼体となるように常圧焼成し、その仮焼体を熱間静水圧加圧処理することを特徴とする窒化けい素焼結体の製造方法。」 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、窒化けい素焼結体の製造方法に関し、特に極めてポアの少ない平滑な表面を有する窒化けい素焼結体の製造方法に関する。」 「【0014】 【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と共に挙げ、本発明をより詳細に説明する。 【0015】(実施例1~5) (1)常圧焼成 原料として平均粒径が0.7μmのα型窒化けい素粉末に、Y2O3粉末、Al2O3粉末、MgO粉末を表1に示す量で加え、メタノールを分散媒としてポットミルで混合後乾燥した。乾燥した粉末をプレス成形して直径50mm、厚さ10mmの成形体を作製した。この成形体を窒素雰囲気下で表1に示す温度で3時間焼成した。 【0016】(2)HIP処理 常圧焼成した仮焼体を、窒素雰囲気下にて1000kg/cm2の圧力で、1600℃の温度でHIP処理した。 【0017】(3)表面仕上げ 得られた焼結体の表面を、平面研削し、ラッピングした後、粒径が1μmのダイアモンド砥粒でポリッシングして表面仕上げした。 【0018】(4)評価 常圧焼成した仮焼体の開気孔率はアルキメデス法により測定し、α相/β相の比はX線回折により測定した。HIP処理した焼結体の表面仕上げした表面は、顕微鏡で観察して5μm以上のポアの数を調べ、また、表面粗さ計により表面粗さの測定を行った。それらの結果を表1に示す。」 「【0021】 【表1】 [図:0001434157000008.jpg] 【0022】表1から明らかなように、実施例1~5においては、常圧焼成する温度が適切であるため、常圧焼成した仮焼体が、本発明の範囲内、即ち、開気孔率が0.5%以下、α相/β相の比が0.1以上にある仮焼体となっている。そのため、HIP処理した焼結体の5μm以上のポアの数は、10個以下と極めて少なくなっている。また、表面粗さもRaで1.1nm以下と非常に平滑になっている。」 (9) 甲5'の記載について 甲5'には、「窒化珪素基板およびそれを用いた窒化珪素回路基板」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 「【請求項1】 焼結助剤として、希土類元素、マグネシウム、チタン、ハフニウムから選択される1種以上を酸化物換算で合計2~14質量%含有し、窒化珪素結晶粒子と粒界相とを具備し、熱伝導率が50W/m・K以上であり、3点曲げ強度が600MPa以上である窒化珪素基板において、窒化珪素基板の任意の断面組織をSEM観察したとき、窒化珪素基板の厚さT1に対し厚さ方向の粒界相の合計長さT2の比(T2/T1)が0.01~0.30の範囲内であり、基板の表裏に電極を接触して4端子法で基板の対角線同士の交点とその交点からそれぞれの角部に至る中点となる4点との合計5箇所を測定したときの絶縁耐力の平均値からのばらつきが20%以下であり、上記絶縁耐力の平均値が15kv/mm以上であり、上記窒化珪素基板の室温(25℃)での1000V印加時の体積固有抵抗値ρv1と、250℃での1000V印加時の体積固有抵抗値ρv2との比(ρv2/ρv1)が0.20以上であり、上記窒化珪素結晶粒子の長径の平均粒径が1.5~10μmであることを特徴とする窒化珪素基板。」 「【請求項9】 窒化珪素基板の任意の断面を拡大写真にて観察したとき、ポアの最大径が3μm以下であり、ポアの周囲長の10%以上に粒界相成分が存在することを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の窒化珪素基板。」 「【技術分野】 【0001】 後述する実施形態は、概ね、窒化珪素基板およびそれを用いた窒化珪素回路基板に関する。」 「【0042】 なお、気孔(ポア)はできるだけ少ないことが好ましく、気孔率は1%以下、さらには0.5%以下であることが好ましい。また、気孔の最大径は20μm以下、さらには10μm以下、さらには3μm以下(0含む)であることが好ましい。また、気孔の最大径は任意の断面における拡大写真から求めるものとする。」 「【0050】 また、窒化珪素基板の任意の断面を観察したとき、粒界相中の偏析領域の最大長が5μm以下(0含む)であることが好ましい。粒界相は焼結助剤を主成分とする反応相である。燒結助剤としては、前述のように、希土類元素、マグネシウム、チタン、ハフニウムから選ばれる1種以上が好ましい。」 「【0062】 また、焼結助剤は、平均粒径が0.5~3.0μmの金属酸化物粉末であることが好ましい。金属酸化物粉末としては、希土類元素、マグネシウム、チタン、ハフニウムなどの酸化物が挙げられる。焼結助剤を金属酸化物として添加することにより、焼結工程中に液相成分を形成し易くなる。」 「【0071】 次に、焼結工程を行う。焼結工程は、非酸化性雰囲気中で成形体を温度1800~1950℃に8~18時間加熱して実施されるものとする。非酸化性雰囲気としては、窒素ガス雰囲気、または窒素ガスを含む還元性雰囲気が好ましい。また、焼成炉内圧力は加圧雰囲気であることが好ましい。」 (10) 甲6'の記載について 甲6'には、「窒化珪素焼結体とそれを用いた摺動部材」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 「[0001] 本発明は窒化珪素焼結体とそれを用いた摺動部材に関する。」 「請求の範囲 [1] 窒化珪素粒子と、2質量%以上15質量%以下の範囲の焼結助剤成分とを含有する窒化珪素焼結体であって、 前記窒化珪素粒子は、長径Lが10μm以下で、かつ短径Sに対する長径Lの比(L/S)が5以上である針状結晶粒子を、前記窒化珪素焼結体の結晶組織内に面積比で50%以上有することを特徴とする窒化珪素焼結体。 [2] 請求項1記載の窒化珪素焼結体において、 前記窒化珪素焼結体中に存在するボイドの最大径が3μm以下であることを特徴とする窒化珪素焼結体。」 (11) 甲7'の記載について 甲7'には、「セラミックス焼結体及びその製造方法、並びに窒化ケイ素粉末」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本開示は、セラミックス焼結体及びその製造方法、並びに窒化ケイ素粉末に関する。」 「【0025】 セラミックス焼結体10は、窒化ホウ素及び窒化ケイ素の他に、焼結助剤に由来する副成分を含んでいてもよい。副成分としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等のアルカリ土類酸化物、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム等の希土類酸化物、及び、スピネル等の複合酸化物が挙げられる。また、セラミックス焼結体10を製造する際に焼結助剤と酸化物との反応によって生成するガラス質の粒界相を含んでいてもよい。」 (12) 甲8'の記載について 甲8'には、「窒化珪素焼結体基板及びその製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 「背景技術 [0002] パワー半導体モジュール等に使用される回路基板は、高い絶縁性、機械的強度、熱伝導率等を有する窒化珪素焼結体基板と、それにろう付け又は直接接合法(DBC)により接合された金属製の回路板又は放熱板とで構成されている。半導体モジュールの場合、回路板に半導体チップが接合される。動作中の半導体チップの放熱を効率良く行うため、窒化珪素焼結体基板には高い熱伝導率が要求される。勿論、窒化珪素焼結体基板には高い絶縁性(電気抵抗率)も要求される。」 「[0055] 反り及びうねりが抑制された窒化珪素焼結体基板をろう材を介して銅板と接合した場合、接合界面における100μm以上の径のボイドの面積率は3.0%以下である。ろう材としては、Ag-In-Cu系ろう材、共晶組成であるAgとCuを主体とし、Ti、Zr、Hf等の活性金属を添加したAg-Cu系ろう材等が挙げられる。」 4 当審の判断 事案に鑑み、申立人1が主張する申立ての理由(前記1(1)参照)、申立人2が主張する申立ての理由(前記1(2)参照)、及び取消理由通知書に記載した取消理由(前記2参照)をまとめて検討する。 (1) 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について ア 甲1を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如について (ア) 甲1に記載された発明 甲1には、前記3(1)によれば、窒化珪素結晶粒子と粒界相とを具備する窒化珪素焼結体から構成された窒化珪素基板が記載されている(【0011】、【0012】)。 また、甲1には、前記窒化珪素基板の具体例として、実施例7に係る窒化珪素基板の3点曲げ強度が750MPa、SEM写真(5000倍)にて求めたポアサイズ(最大径)が0.2μmであること(【0085】、【0088】【表3】、【0089】【表4】)、実施例7の窒化珪素基板に対して、裏返し、1400℃×3時間の追加熱処理を行い、実施例17の窒化珪素基板を得たこと(【0090】、【0091】【表5】)、及び、実施例17に係る窒化珪素基板のポアサイズ(最大径)をSEM写真(5000倍)にて求めたところ、ポアが存在しないこと(【0092】、【0093】【表6】、【0094】)が記載されている。 これらの記載を、実施例17の「窒化珪素基板」に注目して整理すると、甲1には、次の「窒化珪素基板」に係る発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 (甲1発明) 「3点曲げ強度が750MPa、SEM写真(5000倍)にて求めたポアサイズ(最大径)が0.2μmである窒化珪素基板に対して、裏返し、1400℃×3時間の追加熱処理を行って得られた窒化珪素基板であって、SEM写真(5000倍)にて求めたポアが存在しない、窒化珪素結晶粒子と粒界相とを具備する窒化珪素焼結体から構成された窒化珪素基板。」 (イ) 本件発明1について a 対比 甲1発明の「窒化珪素結晶粒子」、「窒化珪素焼結体から構成された窒化珪素基板」は、それぞれ、本件発明1の「窒化ケイ素粒子」、「窒化ケイ素焼結体」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明とは、 「窒化ケイ素粒子を含む窒化ケイ素焼結体」の点で一致し、以下の点で相違している。 (相違点1) 本件発明1は、「断面において、10μm以上のサイズを有する粗大気孔の平均個数が1個/mm2未満であり、0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数が10個/mm2以上且つ320個/mm2未満であ」るのに対して、甲1発明は、「SEM写真(5000倍)にて求めたポアが存在しない」点。 (相違点2) 本件発明1は、「抗折強度が670MPa以上である」のに対して、甲1発明は、追加熱処理前の「3点曲げ強度が750MPa」である点。 b 判断 (a) まず、相違点1が実質的な相違点であるかについて検討する。 本件特許明細書には、「粗大気孔の平均個数P1は、走査型電子顕微鏡による断面(倍率:200倍)を5箇所以上の視野において観察し、それぞれの視野に含まれる粗大気孔を足し合わせた合計個数に基づいて、以下の計算式で求められる」こと(【0031】)、及び「微小気孔の平均個数P2は、走査型電子顕微鏡による断面(倍率:1000倍)を5箇所以上の視野において観察し、それぞれの視野に含まれる微小気孔を足し合わせた合計個数に基づいて、以下の計算式で求められる」こと(【0033】)が記載されているから、本件発明1の「10μm以上のサイズを有する粗大気孔の平均個数」は、倍率200倍の走査型電子顕微鏡による断面を5箇所以上の視野において観察したものであり、「0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数」は、倍率1000倍の走査型電子顕微鏡による断面を5箇所以上の視野において観察したものである。 他方、甲1には、前記3(1)によれば、「基板厚さ方向の任意の断面において単位面積20μm×20μmの拡大写真(5000倍のSEM写真)を10か所分撮影し、ポアサイズ(最大径)を求めた」こと(【0087】)が記載されているから、甲1発明の「SEM写真(5000倍)にて求めたポアが存在しない」ことは、倍率5000倍の走査型電子顕微鏡による断面を10箇所の視野において観察したものである。 そして、倍率5000倍の走査型電子顕微鏡による断面観察でポアが存在しない場合は、それより低倍率の倍率200倍あるいは倍率1000倍の走査型電子顕微鏡の断面においてポアが観察されないことは明らかであるから、甲1発明の「SEM写真(5000倍)にて求めたポアが存在しない」ことは、本件発明1の「10μm以上のサイズを有する粗大気孔」、及び「0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔」が存在していない、すなわち、それぞれの平均個数が0個/mm2であるといえ、本件発明1の「断面において、10μm以上のサイズを有する粗大気孔の平均個数が1個/mm2未満であり、0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数が10個/mm2以上且つ320個/mm2未満であ」ることを満足しない。 したがって、相違点1は実質的な相違点である。 (b) 次に、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることの容易想到性について検討する。 窒化ケイ素焼結体において、「断面において、10μm以上のサイズを有する粗大気孔の平均個数が1個/mm2未満であり、0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数が10個/mm2以上且つ320個/mm2未満」とすることは、甲1~甲4、甲1'~甲8'のいずれにも記載されておらず、また、このことが技術常識であるといえないから、甲1発明において、「断面において、10μm以上のサイズを有する粗大気孔の平均個数が1個/mm2未満であり、0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数が10個/mm2以上且つ320個/mm2未満」とすること、すなわち、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。 (c) 以上のとおりであるから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明であるといえないし、甲1発明、及び甲2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 (ウ) 本件発明2、3、5~8について 本件発明2、3、5~8は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに限定が付されたものであるから、前記(イ)の本件発明1についての検討と同様の理由により、本件発明2、3、5、8は、甲1発明であるといえないし、また、本件発明2、3、5~8は、甲1発明、及び甲2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 (エ) 小括 したがって、前記1(1)ア、イの申立ての理由、及び前記2(1)、(2)の取消理由は、いずれも理由がない。 イ 甲1'を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如について (ア) 甲1'に記載された発明 甲1'には、前記3(5)によれば、窒化珪素結晶粒子と粒界相とを具備する窒化珪素焼結体が記載されている(【0005】)。 また、甲1'には、前記窒化珪素焼結体の具体例である実施例1として、平均粒径が0.8μmの窒化珪素粉末と、Al成分としてAl2O3粉末又はAlN粉末、Ti成分としてTiO2粉末、B成分として金属B単体を含む、平均粒径1.5μmの焼成助剤を用意して、96時間解砕混合して原料粉末を調製すること(【0041】、【0042】【表1】)、得られた原料混合物に樹脂バインダを混合して成型圧力150MPaにて成形し、得られた成形体を500℃で脱脂した後に、1800℃×4時間の常圧焼結、1600℃×20MPa×2時間のHIP処理を行い、窒化珪素焼結体を作製したこと(【0044】)、得られた焼結体は実質的に気孔が確認されなかったこと(【0046】)、及び焼結体のJIS-R-1601に基づく3点曲げ強度が1000MPaであること(【0048】、【0049】【表4】)が記載されている。 これらの記載を、実施例1の「窒化珪素焼結体」、「窒化珪素焼結体の作製方法」に注目して整理すると、甲1'には、次の「窒化珪素焼結体」に係る発明(以下、「甲1'発明1」という。)、及び「窒化珪素焼結体の作製方法」に係る発明(以下、「甲1'発明2」という。)が記載されているといえる。 (甲1'発明1) 「JIS-R-1601に基づく3点曲げ強度が1000MPaであり、実質的に気孔が確認されない、窒化珪素結晶粒子と粒界相とを具備する窒化珪素焼結体。」 (甲1'発明2) 「平均粒径が0.8μmの窒化珪素粉末と、Al成分としてAl2O3粉末又はAlN粉末、Ti成分としてTiO2粉末、B成分として金属B単体を含む、平均粒径1.5μmの焼成助剤を用意して、96時間解砕混合して原料粉末を調製し、 得られた原料混合物に樹脂バインダを混合して成型圧力150MPaにて成形し、得られた成形体を500℃で脱脂した後に、1800℃×4時間の常圧焼結、1600℃×20MPa×2時間のHIP処理を行う、窒化珪素焼結体の作製方法であって、 JIS-R-1601に基づく3点曲げ強度が1000MPaであり、実質的に気孔が確認されない、窒化珪素焼結体の作製方法。」 (イ) 本件発明1について a 対比 甲1'発明1の「窒化珪素結晶粒子」、「窒化珪素焼結体」は、それぞれ、本件発明1の「窒化ケイ素粒子」、「窒化ケイ素焼結体」に相当する。 また、本件特許明細書に「この抗折強度は、実施例に記載の方法によって測定される。」(【0043】)、「<抗折強度の測定(ヒートサイクル試験前)> 各実施例及び比較例6の窒化ケイ素板の3点曲げ抗折強度を測定した。測定は、JIS R 1601:2008に準拠し、市販の抗折強度計(株式会社島津製作所製、装置名:AG-2000)を用いて行った。」(【0101】)と記載されているから、甲1'発明1の「JIS-R-1601に基づく3点曲げ強度が1000MPaであ」ることは、本件発明1の「抗折強度が670MPa以上である」ことに相当する。 したがって、本件発明1と甲1'発明1とは、 「窒化ケイ素粒子を含む窒化ケイ素焼結体であって、 抗折強度が670MPa以上である、窒化ケイ素焼結体」の点で一致し、以下の点で相違している。 (相違点3) 本件発明1は、「断面において、10μm以上のサイズを有する粗大気孔の平均個数が1個/mm2未満であり、0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数が10個/mm2以上且つ320個/mm2未満であ」るのに対して、甲1'発明1は、「実質的に気孔が確認されない」点。 b 判断 まず、相違点3が実質的な相違点であるかについて検討すると、甲1'には、「気孔」の確認方法が記載されておらず、甲1'発明1の「実質的に気孔が確認されない」の気孔サイズが不明であるから、甲1'発明1の「実質的に気孔が確認されない」ことが、本件発明1の「10μm以上のサイズを有する粗大気孔の平均個数が1個/mm2未満であり、0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数が10個/mm2以上且つ320個/mm2未満」であることを満足しているといえないため、相違点3は実質的な相違点である。 また、前記ア(イ)b(b)で検討したとおり、窒化ケイ素焼結体において、「断面において、10μm以上のサイズを有する粗大気孔の平均個数が1個/mm2未満であり、0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数が10個/mm2以上且つ320個/mm2未満」とすることは、甲1~甲4、甲1'~甲8'のいずれにも記載されておらず、また、このことが技術常識であるといえないから、甲1'発明1において、「断面において、10μm以上のサイズを有する粗大気孔の平均個数が1個/mm2未満であり、0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数が10個/mm2以上且つ320個/mm2未満」とすること、すなわち、相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。 したがって、本件発明1は、甲1'発明1であるといえないし、甲1'発明1、及び甲3'~甲8'に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 (ウ) 本件発明2、3、5、7、8について 本件発明2、3、5、7、8は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに限定が付されたものであるから、前記(イ)の本件発明1についての検討と同様の理由により、本件発明3は、甲1'発明1であるといえないし、また、本件発明2、3、5、7、8は、甲1'発明1、及び甲3'~甲8'に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 (エ) 本件発明4について a 対比 甲1'発明2の「窒化珪素粉末と、」「焼成助剤を用意して、96時間解砕混合して原料粉末を調製」すること、「得られた成形体を500℃で脱脂した後に、1800℃×4時間の常圧焼結、1600℃×20MPa×2時間のHIP処理を行」うこと、「窒化珪素焼結体の作製方法」は、それぞれ、本件発明4の「窒化ケイ素粉末と前記焼結助剤粉末とを含む混合原料を調製する工程」、「前記混合原料の成形体を」「1800~2100℃の焼成温度で焼成して、窒化ケイ素焼結体を得る工程」、「窒化ケイ素焼結体の製造方法」に相当する。 また、甲1'発明2の「JIS-R-1601に基づく3点曲げ強度が1000MPaであ」ることは、前記(イ)aでの検討と同様に、本件発明4の「抗折強度が670MPa以上である」ことに相当する。 したがって、本件発明4と甲1'発明2とは、 「窒化ケイ素粉末と前記焼結助剤粉末とを含む混合原料を調製する工程と、 前記混合原料の成形体を、1800~2100℃の焼成温度で焼成して、窒化ケイ素焼結体を得る工程と、を有し、 前記窒化ケイ素焼結体の抗折強度が670MPa以上である、窒化ケイ素焼結体の製造方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。 (相違点4) 本件発明4は、「酸化イットリウム、酸化マグネシウム、及びシリカを含む焼結助剤原料を粉砕機で粉砕してメジアン径が0.5~1.0μm、且つ最大粒子径が3.9μm以下の焼結助剤粉末を得る工程」を有しているのに対して、甲1'発明2は、「Al成分としてAl2O3粉末又はAlN粉末、Ti成分としてTiO2粉末、B成分として金属B単体を含む、平均粒径1.5μmの焼成助剤を用意して」いる点。 (相違点5) 本件発明4の焼成は、「不活性ガス雰囲気中、0.7~1MPaの圧力」で行われているのに対して、甲1'発明2では、その点が明らかでない点。 (相違点6) 本件発明4は、「窒化ケイ素焼結体の断面において、10μm以上のサイズを有する粗大気孔の平均個数が1個/mm2未満であり、0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数が10個/mm2以上且つ320個/mm2未満であ」るのに対して、甲1'発明2は、「実質的に気孔が確認されない、窒化珪素焼結体」である点。 b 判断 事案に鑑み、まず相違点6を検討すると、前記(イ)bで検討した相違点3と同様に、相違点6は実質的な相違点といえるし、また、甲1'発明2において、相違点6に係る本件発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。 したがって、相違点4、5について検討するまでもなく、本件発明4は、甲1'発明2であるといえないし、甲1'発明2、及び甲3'~甲8'に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 (オ) 小括 したがって、前記1(2)ア(ア)、イ(ア)の申立ての理由は、いずれも理由がない。 ウ 甲2'を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如について (ア) 甲2'に記載された発明 甲2'の前記3(6)に摘記した記載を整理すると、甲2'には、次の「窒化けい素焼結体」に係る発明(以下、「甲2'発明」という。)が記載されているといえる。 (甲2'発明) 「金属窒化法により製造された窒化けい素粉末と焼結助剤とを混合した窒化けい素焼結体において、焼結助剤成分として希土類元素を1.5~3質量%、Al元素を1~3質量%、酸素元素を5質量%以下含有した窒化けい素焼結体であり、不純物としてFeを10~3000ppm含有するとともに、Caを10~1000ppm含有し、窒化けい素焼結体のビッカース硬度Hvが1300~1600であり、ヤング率が290GPa以上であり、この窒化けい素焼結体の結晶組織において窒化けい素結晶粒子の短径に対する長径の比が2以上である窒化けい素針状結晶粒子の面積率が50%以上であり、 前記窒化けい素焼結体を研摩加工した後の30×30μmの表面領域に残存する径が1μm以上の気孔数が5個以下であり、 前記窒化けい素焼結体の三点曲げ試験における最低抗折強度が700MPa以上であり、かつ平均抗折強度が900MPa以上である窒化けい素焼結体。」 (イ) 本件発明1について a 対比 甲2'発明の「窒化けい素針状結晶粒子」、「窒化けい素焼結体」は、それぞれ、本件発明1の「窒化ケイ素粒子」、「窒化ケイ素焼結体」に相当する。 また、本件特許明細書に「この抗折強度は、実施例に記載の方法によって測定される。」(【0043】)、「<抗折強度の測定(ヒートサイクル試験前)> 各実施例及び比較例6の窒化ケイ素板の3点曲げ抗折強度を測定した。」(【0101】)と記載されているから、甲2'発明の「三点曲げ試験における最低抗折強度が700MPa以上であ」ることは、本件発明1の「抗折強度が670MPa以上である」ことに相当する。 したがって、本件発明1と甲2'発明とは、 「窒化ケイ素粒子を含む窒化ケイ素焼結体であって、 抗折強度が670MPa以上である、窒化ケイ素焼結体」の点で一致し、以下の点で相違している。 (相違点7) 本件発明1は、「断面において、10μm以上のサイズを有する粗大気孔の平均個数が1個/mm2未満であり、0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数が10個/mm2以上且つ320個/mm2未満であ」るのに対して、甲2'発明は、「研摩加工した後の30×30μmの表面領域に残存する径が1μm以上の気孔数が5個以下」である点。 b 判断 まず、相違点7が実質的な相違点であるかについて検討すると、甲2'発明の「研摩加工した後の30×30μmの表面領域に残存する径が1μm以上の気孔数が5個以下」であることは、0.05μm以上1μm未満のサイズの気孔数が不明であり、本件発明1の「0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数が10個/mm2以上且つ320個/mm2未満」であることを満足しているといえないため、相違点7は実質的な相違点である。 また、前記ア(イ)b(b)で検討したとおり、窒化ケイ素焼結体において、「断面において、10μm以上のサイズを有する粗大気孔の平均個数が1個/mm2未満であり、0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数が10個/mm2以上且つ320個/mm2未満」とすることは、甲1~甲4、甲1'~甲8'のいずれにも記載されておらず、また、このことが技術常識であるといえないから、甲2'発明において、「断面において、10μm以上のサイズを有する粗大気孔の平均個数が1個/mm2未満であり、0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数が10個/mm2以上且つ320個/mm2未満」とすること、すなわち、相違点7に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。 したがって、本件発明1は、甲2'発明であるといえないし、甲2'発明、及び甲3'~甲6'、甲8'に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 (ウ) 本件発明2、3、5、7、8について 本件発明2、3、5、7、8は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに限定が付されたものであるから、前記(イ)の本件発明1についての検討と同様の理由により、本件発明2、3、5、7、8は、甲2'発明、及び甲3'~甲6'、甲8'に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 (エ) 小括 したがって、前記1(2)ア(イ)、イ(イ)の申立ての理由は、いずれも理由がない。 エ 新規性、進歩性欠如についての結論 以上のとおりであるから、申立人1が主張する前記1(1)ア、イの申立ての理由、申立人2が主張する前記1(2)ア、イの申立ての理由、及び取消理由通知書に記載した前記2(1)、(2)の取消理由は、いずれも理由がない。 (2) 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について ア 前記1(1)ウの申立ての理由、前記2(3)の取消理由に対する判断 (ア) 特許請求の範囲の記載 本件特許請求の範囲の記載は、前記第3のとおりであって、「窒化ケイ素焼結体の断面」における「0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数」について、本件発明1及び4では、「10個/mm2以上且つ320個/mm2未満」であることが特定されている。 (イ) 発明の詳細な説明の記載 a 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、微小気孔に関して、次の記載がある。 「【0028】 一実施形態に係るセラミック焼結体は、セラミック粒子を含む。セラミック焼結体は気孔を含んでもよい。セラミック焼結体に含まれる気孔の個数及びサイズは、セラミック焼結体の耐ヒートサイクル性及び高温における絶縁信頼性に影響を与える。気孔には、粗大気孔と微小気孔とが含まれる。粗大気孔と微小気孔は、それぞれのサイズが互いに異なっており、気孔のサイズは以下のようにして測定される。 【0029】 図1は、セラミック焼結体の断面の一部を走査型電子顕微鏡で観察したときの画像の一例を模式的に示す図である。図1に示されるようにセラミック焼結体の断面10Cは、セラミック粒子と気孔20とを含む。図1では、気孔20を模式的に拡大して示している。なお、断面10Cには多数のセラミック粒子が含まれているが、図1では、便宜上、セラミック粒子の表示を省略している。 【0030】 本開示では、気孔20のサイズは、気孔20の外縁において間隔が最も大きくなるように選択される2点を結ぶ線分Lの長さである。そして、この線分Lの長さに応じて、「粗大気孔」と「微小気孔」とそれ以外の気孔に分類される。図1に示される気孔20の線分Lの長さが0.05μm以上且つ10μm未満であれば、「微小気孔」に分類される。一方、同様の方法で測定される線分Lの長さが10μm以上である気孔は、「粗大気孔」に分類される。それ以外の気孔の線分Lの長さは0.05μm未満である。」 「【0033】 本実施形態のセラミック焼結体の微小気孔の平均個数P2は400個/mm2未満である。微小気孔の平均個数P2は、走査型電子顕微鏡による断面(倍率:1000倍)を5箇所以上の視野において観察し、それぞれの視野に含まれる微小気孔を足し合わせた合計個数に基づいて、以下の計算式で求められる。なお、微小気孔のサイズ及び個数は、ImageJ等の画像処理ソフトウエアを用いてカウントすることができる。 微小気孔の平均個数P2=微小気孔の合計個数/視野数/1視野当たりの面積 【0034】 セラミック焼結体の耐ヒートサイクル性及び高温における絶縁信頼性を十分に高くする観点から、微小気孔の平均個数P2は、350個/mm2未満であってよく、320個/mm2未満であってよく、290個/mm2未満であってよく、210個/mm2未満であってもよい。微小気孔の平均個数P2は、10個/mm2以上であってもよく、50個/mm2以上であってもよく、100個/mm2以上であってもよい。微小気孔の平均個数P2は、例えば、焼結助剤粉末の粒子径又は凝集度を変えることで調整することができる。」 「【0097】 <微小気孔の測定> 上記窒化ケイ素板の各切断面を1000倍に拡大して観察した。図7及び図14に示すようなSEM写真に含まれる微小気孔のサイズと個数を、画像処理ソフトウエア(ImageJ)を用いて測定した。粗大気孔の測定と同様に、各切断面において24視野(1視野あたりの面積:0.02mm2)で行って、微小気孔のサイズと合計個数を測定した。上述したとおり、一つの気孔の外縁において間隔が最も大きくなるように選択される2点を結ぶ線分の長さが0.05μm以上且つ10μm未満ものを微小気孔とした。測定結果に基づいて、微小気孔の平均個数P2、微小気孔のサイズ(当該線分)の最大値、平均値、最小値及び標準偏差を求めた。結果は、表5に示すとおりであった。」 「【0099】 【表5】 [図:0001434157000009.jpg] 」 b 前記aの記載によれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、窒化ケイ素焼結体の断面における0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数P2について、10個/mm2以上400個/mm2未満であることが記載されている。 (ウ) 特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との対比 本件発明1、4は、前記(ア)のとおり、「窒化ケイ素焼結体の断面」における「0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数」が「10個/mm2以上且つ320個/mm2未満」であることが特定されているところ、発明の詳細な説明には、前記(イ)のとおり、窒化ケイ素焼結体の断面における0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数P2は、10個/mm2以上400個/mm2未満であることが記載されているから、本件発明1、4は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された範囲を超えるものではない。 本件請求項1の記載を引用する本件発明2、3、5~8についても同様である。 したがって、本件請求項1~8の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定された要件に適合する。 (エ) 申立人1の主張について 前記1(1)ウの申立ての理由における申立人1の主張は、設定登録時の請求項1~3、5~8に係る発明において、微小気孔の平均個数が0個/mm2である場合を含むことを前提とするものである。 これに対して、本件発明1は、前記(ア)のとおり、「0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数」が「10個/mm2以上」であることが特定され、0個/mm2である場合を含まない。 したがって、申立人1の主張は採用できない。 イ サポート要件違反についての結論 以上のとおりであるから、申立人1が主張する前記1(1)ウの申立ての理由、及び取消理由通知書に記載した前記2(3)の取消理由は、いずれも理由がない。 (3) 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について ア 前記1(1)エの申立ての理由に対する判断 本件請求項1では、前記第3のとおり、「0.05μm以上且つ10μm未満のサイズを有する微小気孔の平均個数が10個/mm2以上且つ320個/mm2未満であり」と記載されており、微小気孔が存在しない場合を包含しないことは明らかであるから、本件請求項1の当該記載は明確である。 そして、本件請求項1~3、5~8のその余の記載をみても、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確な記載は見当たらない。 したがって、本件請求項1~3、5~8の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定された要件に適合する。 イ 明確性要件違反についての結論 以上のとおりであるから、申立人1が主張する前記1(1)エの申立ての理由は、理由がない。 第4 むすび 以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された申立ての理由によっては、本件特許1~8を取り消すことはできない。 また、他に本件特許1~8を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700400

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