特許異議申立
2025-700160
低次酸化チタンの粉末及び分散体
- 審判番号
- 2025-700160
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-226621
- 登録番号
- 7530170
- 請求日
- 2025年02月05日
- 審決日
- 2025年06月30日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】デンカ株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】清水 義憲
- 【権利者代理人】佐々木 善紀
- 【権利者代理人】中塚 岳
- 【異議申立人】松岡 孝代
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 猛
- 審判官 佐藤 陽一
- 審判官 石川 雄太郎
- 分類
- P1651.113-Y (C01G) / P1651.121-Y (C01G) / P1651.537-Y (C01G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
結論
結 論
特許第7530170号の請求項1~2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件の特許第7530170号(以下「本件特許」という。)の請求項1~2に係る特許についての出願(特願2019-226621号。以下「本願」という。)は、令和 1年12月16日の出願であって、令和 6年 7月30日にその特許権の設定登録がされ、同年 8月 7日に特許掲載公報が発行され、その後、令和 7年 2月 5日に、その請求項1~2(全請求項)に係る特許について、特許異議申立人である松岡 孝代(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和 7年 3月 4日に手続補正書(方式)が提出されたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~2に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、以下において、本願の請求項1~2に係る発明をそれぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明2」といい、総称して、「本件特許発明」という。また、本願の願書に添付した明細書を「本件特許明細書」という。
「【請求項1】
平均球形度が0.7以上であり、Ti4O7、Ti3O5、及びTi2O3を含む、低次酸化チタンの粉末。
【請求項2】
請求項1に記載の粉末と、分散媒と、を含有する分散体。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、甲第1号証~甲第13号証(以下「甲1」~「甲13」という。)を提出し(下記4参照。)、以下の理由により、本件特許の請求項1~2に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
1 申立理由1(新規性)
本件特許発明1は、甲1に記載された発明(補助的に甲2、甲3、甲4、及び甲5)であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由2(進歩性)
(1)申立理由2-1
本件特許発明1は、甲1に記載された発明、並びに甲2、甲3、甲4、及び甲5に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2-2
本件特許発明1は、甲6、甲7、甲8、甲9、甲10、甲11、甲12、及び甲13に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由2-3
本件特許発明2は、甲13に記載された発明、並びに甲1、甲2、甲3、甲4、及び甲5、又は甲6、甲7、甲8、甲9、甲10、甲11、甲12及び甲13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 申立理由3(サポート要件)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件特許発明1~2について、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、特許法第36条第6項第1号に適合するものとはいえないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
4 証拠方法
甲1:国際公開第2017/119269号
甲2:中村圭太郎ほか,熱プラズマ法による粉体加工技術,粉体工学会誌,2008年,第45巻,第1号,p.30-38
甲3:大野悟ほか,超微粒子の光触媒機能に関する研究,金属材料技術研究所研究報告書22,2000年,p.97-105
甲4:特開2012-246203号公報
甲5:石垣隆正,高温の熱プラズマ発生とセラミックス材料合成,Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan,2007年,第14巻,p.423-428
甲6:中国特許出願公開第107522226号明細書
甲7:中国特許出願公開第106337158号明細書
甲8:清野学,酸化チタン-物性と応用技術,第1版,第5刷,技報堂出版株式会社,2003年,ISBN 4-7655-0375-5,p.270-273
甲9:国際公開第90/09963号
甲10:特開平2-18326号公報
甲11:特許第3550660号公報
甲12:特公平5-24864号公報
甲13:特開2008-273832号公報
第4 当合議体の判断
以下に述べるとおり、当合議体は、上記第3のいずれの申立理由によっても、本件特許の請求項1~2に係る特許を取り消すことができないと判断する。
1 申立理由1(新規性)、及び申立理由2-1(進歩性)について
(1)甲1に記載された発明
本願の出願前に公知となった甲1(発明の名称:不定比酸化チタン微粒子の製造方法)の[0001]、[0013]、[0082]~[0090]、図7~8の記載を総合勘案し、特に、実施例1に着目すると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。
「Ti4O7、Ti3O5、Ti2O3及びTiOを含む、不定比酸化チタン微粒子。」(以下「甲1発明」という。)
(2)本件特許発明1について
ア 甲1発明との対比・判断
(ア)本件特許発明1と甲1発明との対比
a 本件特許発明1の組成と、甲1発明の組成とを対比すると、両者は、「Ti4O7、Ti3O5、及びTi2O3を含む」点で一致する。
b 甲1発明の「不定比酸化チタン」と、本件特許発明1の「低次酸化チタン」とは、「酸素とチタンの化合物」である点で共通する。
c 甲1発明の「微粒子」は、本件特許発明1の「粉末」に相当する。
d そうすると、本件特許発明1と甲1発明1とは、
「Ti4O7、Ti3O5、及びTi2O3を含む、酸素とチタンの化合物の粉末。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1-1>
粉末の「平均球形度」について、本件特許発明1では、「0.7以上であ」るのに対して、甲1発明では、このような特定事項を備えているか否かが不明である点。
<相違点1-2>
酸素とチタンの化合物が、本件特許発明1では、「低次酸化チタン」であるのに対して、甲1発明では、「不定比酸化チタン」である点。
(イ)相違点についての検討
事案に鑑み、まず、上記相違点1-1について検討する。
a 甲1の[0057]、[0060]、[0082]、[0084]には、二酸化チタンの粉末を含むスラリーを熱プラズマ炎中に供給して不定比酸化チタンを製造することが記載されているが、「平均球形度」のみならず、粒子形状に関する記載はされていない。
b 甲1の記載や本願出願時の技術常識を考慮しても、甲1発明の「不定比酸化チタンの微粒子」について、「平均球形度」が「0.7以上」か否かは不明である。
c この点に関連して、申立人は、特許異議申立書の第24頁下から8行~第25頁第7行において、甲2の第36頁左欄3行~第37頁右欄2行、甲3の第98頁右欄下から8行~第99頁左欄24行、第100頁右欄7~23行、図5、甲4の【0001】、【0005】、【0028】、図2、4、甲5の第424頁右欄8行~下から5行、図5の記載を参照しつつ、金属を含む原料をプラズマ中に供給することにより、球状の酸化物粒子が得られることが本件特許の出願時において公知であったことを示し、甲1発明によって得られた不定比酸化チタン微粒子も、金属を含む原料をプラズマ中に供給することによって得られたものであるから、その形状は球状であると考えられるとして、甲1発明が上記相違点1-1に係る特定事項を満たしている蓋然性が高い旨主張している。
d しかしながら、粉末が、金属を含む原料をプラズマ中に供給することによって得られたものであるとしても、得られた粉末の平均球形度が実際にどの程度であるのかは不明というほかなく、金属を含む原料をプラズマ中に供給することによって得られたものである点で共通していることのみを根拠として、甲1発明が本件特許発明1と同様に、上記相違点1-1に係る特定事項を備えているとは認められないから、上記cの主張は採用しない。
e したがって、上記相違点1-1は、実質的な相違点である。
f 次に上記相違点1-1の容易想到性について検討する。
(a)甲1の[0002]~[0010]などを参照しても、純度が高い、ナノサイズの微粒子を得ること、酸化還元度合いを容易に調整すること、生産性を低下させないことなどの課題や効果の記載はあるものの、粒子の形状を球状に近づけることについての課題や効果の記載は見当たらないし、更に、粒子の形状を球状に近づけることが不定比酸化チタン微粒子を製造しようとする当業者が当然に追求すべき課題であることを示す根拠も見当たらないから、甲1発明において、上記相違点1-1に係る特定事項を備えようとする動機付けがあるとはいえない。
(b)また、上記c~dで検討したとおり、甲2、甲3、甲4、及び甲5に、金属を含む原料をプラズマ中に供給することにより、球状の酸化物粒子が得られることが記載されており、金属を含む原料をプラズマ中に供給することによって得られたものである点で甲1発明と共通しているとしても、そうであるからといって、甲1発明において、上記相違点1-1に係る特定事項を備えようとする動機付けがあるとはいえない。
(c)この点に関し、申立人は、特許異議申立書の第25頁第9行~第26頁第11行において、審査基準第III部第2章第4節6.2「進歩性の判断」を参照しつつ、本件特許発明1と甲1発明との相違点は、「平均球形度が0.7以上であ」るとの数値限定のみであり、審査基準に記載された、本願請求項にかかる発明と主引用発明との相違点が数値限定のみである場合に該当するから、実験的に数値範囲を最適化又は好適化して、上記相違点1-1に係る特定事項を備えることは、当業者の通常の創作能力の発揮といえるため、上記相違点1-1に係る特定事項は、進歩性を有さない旨主張している。
(d)しかしながら、甲1発明には、平均球形度に関する事項が存在しないため、そもそも、本願請求項にかかる発明と主引用発明との相違点が数値限定のみである場合に該当しないし、また、本件特許発明1と甲1発明とは、相違点1-1とは別に相違点1-2が存在する以上、数値限定のみが相違点であるとはいえないため、申立人の主張は前提を欠くものである。
仮にこれらの点を措くとしても、上記(a)のとおり、甲1発明においては、微粒子の形状を球状に近づけるとの課題が存在するとはいえないから、実験的に数値範囲を最適化又は好適化して、平均球形度を0.7以上にするための動機がそもそも存在しない。
以上のとおりであるから、いずれにしろ、上記(b)の主張は採用しない。
(e)したがって、甲1発明において、上記相違点1-1に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)小括
よって、上記相違点1-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明であるとはいえない。
また、上記相違点1-2、及び本件特許発明1によって奏される効果について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、並びに甲2、甲3、甲4、及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由1及び申立理由2-1についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるとはいえないから、申立理由1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、本件特許発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2-1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2-2(進歩性)について
(1)甲13に記載された発明
本願の出願前に公知となった甲13(発明の名称:高純度酸化チタンおよびその製造方法)の【請求項4】、【0052】、【0057】、【0064】~【0067】の記載を総合勘案し、特に、「実施例1」の「二酸化チタン粉末」に着目すると、甲13には、次の発明が記載されていると認められる。
「球形度が0.9以下の粒子は認められず、当該球形度の単純平均が0.95である、二酸化チタンの球状粉体。」(以下「甲13発明」という。)
(2)本件特許発明1について
ア 甲13発明との対比・判断
(ア)本件特許発明1と甲13発明との対比
a 甲13発明の「二酸化チタン」と、本件特許発明1の「低次酸化チタン」とは、「酸素とチタンの化合物」である点で共通する。
b 甲13発明の「球形度の単純平均が0.95」と、本件特許発明1の「平均球形度が0.7以上」とは、それぞれの「球形度」の測定方法が異なる(甲13の【0030】、【0067】、本件特許明細書の【0015】)ことを踏まえると、「平均的な球形を表す度合いが所定の値である」点で共通する。
c 甲13発明の「球状粉体」は、本件特許発明1の「粉末」に相当する。
d そうすると、本件特許発明1と甲13発明とは、
「平均的な球形を表す度合いが所定の値である、酸素とチタンの化合物の粉末。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点2-1>
平均的な球形を表す度合いとその所定の値が、本件特許発明1では、本件特許明細書の【0015】に記載の方法で測定、算出される「平均球形度」であって、その値が「0.7以上」であるのに対して、甲13発明では、甲13の【0030】、【0067】に記載の方法で測定、算出される「球形度の単純平均」であって、その値が「0.95」である点。
<相違点2-2>
酸素とチタンの化合物が、本件特許発明1では、「低次酸化チタン」であって、「Ti4O7、Ti3O5、及びTi2O3を含む」のに対して、甲13発明では、「二酸化チタン」であって、「Ti4O7、Ti3O5、及びTi2O3を含む」かどうか不明である点。
(イ)相違点についての検討
事案に鑑み、まず、上記相違点2-2について検討する。
a 甲13には、甲13発明の「二酸化チタンの球状粉体」が「Ti4O7、Ti3O5、及びTi2O3」を含むことについては、何ら記載されていない。また、甲13の記載や本願出願時の技術常識を考慮しても、甲13発明の「二酸化チタンの球状粉体」において、「Ti4O7、Ti3O5、及びTi2O3」を含むかどうかは不明である。
b したがって、上記相違点2-2は、実質的な相違点である。
c 次に上記相違点2-2の容易想到性について検討する。
(a)甲6、甲7、甲8、甲9、甲10、甲11、及び甲12の記載を参照しても、Ti4O7、Ti3O5、及びTi2O3」を同時に含む「低次酸化チタン」の混合粉末についての記載は見当たらないから、甲13発明において、上記相違点2-2に係る特定事項を備えようとする動機付けがあるとはいえない。
また、そもそも、甲13発明は、「二酸化チタン」に関するものであり、低次酸化チタンに関するものではないから、このような甲13発明において、低次酸化チタンに関する上記相違点2-2に係る特定事項を備えようとする動機付けがあるとはいえない。
(b)この点に関し、申立人は、特許異議申立書の第18頁下から9行~第19頁3行、及び第26頁下から2~4行、第27頁下から3行~第28ページ8行において、甲8の第272頁2行~14行に、Ti4O7、Ti3O5、及びTi2O3を含む低次酸化チタンの粉末が記載されていることを根拠として、甲8に記載された事項と甲13発明は酸化チタンの粒子に関する発明という技術分野が共通しているから、これらを組み合わせることに困難性はない旨主張している。
(c)しかしながら、甲8の第272頁2行~14行には、代表的な低次酸化チタンとして、Ti4O7、Ti3O5、及びTi2O3が知られていることが記載されているにすぎず、これら3つの低次酸化チタンを同時に含む混合粉末については全く記載がないから、仮に、甲13発明において、甲8に記載された事項を適用したとしても、上記相違点2-2に係る特定事項を備えることにはならないため、上記(b)の主張は採用しない。
(d)また、甲8以外についても、甲6、甲7、甲9、甲10、甲11、甲12、及び甲13の記載を参照しても、「Ti4O7、Ti3O5、及びTi2O3」を同時に含む「低次酸化チタン」の混合粉末についての記載は見当たらない以上、仮に、甲6に記載された発明~甲12に記載された発明のいずれかを主引用発明とした場合であっても、上記相違点2-2と同様の相違点が存在し、上記ア(イ)a~bにおいて検討したのと同様に、当該相違点2-2と同様の相違点は、実質的な相違点であり、また、甲6に記載された発明~甲12に記載された発明においても、上記相違点2-2と同様の相違点に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(e)したがって、甲13発明において、上記相違点2-2に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。更に、甲6に記載された発明~甲12に記載された発明においても、上記相違点2-2に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)小括
よって、上記相違点2-1、及び本件特許発明1によって奏される効果について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲6、甲7、甲8、甲9、甲10、甲11、甲12、及び甲13に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由2-2についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2-2によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由2-3 (進歩性)について
(1)甲13に記載された発明
本願の出願前に公知となった甲13(発明の名称:高純度酸化チタンおよびその製造方法)の【0052】、【0057】の記載を総合勘案すると、甲13には、次の発明が記載されていると認められる。
「二酸化チタンを有機溶媒に分散させた塗工剤。」(以下「甲13発明2」という。)
(2)本件特許発明2について
ア 甲13発明2との対比・判断
(ア)本件特許発明2と甲13発明2との対比
a 甲13発明2の「二酸化チタン」と、本件特許発明2の「請求項1に記載の粉末」、すなわち、「平均球形度が0.7以上であり、Ti4O7、Ti3O5、及びTi2O3を含む、低次酸化チタンの粉末」における「低次酸化チタン」とは、「酸素とチタンの化合物」である点で共通する。
b 甲13発明2の「有機溶媒」は、二酸化チタンを「分散させ」るものであるから、本件特許発明1の「分散媒」に相当する。
c 上記bを踏まえると、甲13発明2の「塗工剤」は、本件特許発明1の「分散体」に相当する。
d そうすると、本件特許発明2と甲13発明2とは、
「酸素とチタンの化合物と、分散媒と、を含有する分散体。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点3-1>
酸素とチタンの化合物が、本件特許発明2では、「請求項1に記載の粉末」、すなわち、「平均球形度が0.7以上であり、Ti4O7、Ti3O5、及びTi2O3を含む、低次酸化チタンの粉末」であるのに対して、甲13発明2では「二酸化チタン」であって、「平均球形度が0.7以上であ」るかどうか不明であり、「Ti4O7、Ti3O5、及びTi2O3を含む」かどうか不明であり、「粉末」であるかどうか不明である点。
(イ)相違点についての検討
上記相違点3-1は、少なくとも、上記2(2)ア(ア)dの相違点2-2と同様の事項を含む相違点であるところ、上記2(2)ア(イ)で述べたのと同様の理由により、実質的な相違点であり、また、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(3)申立理由2-3についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2-3によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由3(サポート要件)について
(1)本件特許明細書の【0004】~【0005】の記載からすれば、本件特許発明が解決しようとする課題は、できる限り球状に近い新規な低次酸化チタンの粉末、及びその粉末を含む分散体を提供することにあると認められる。
(2)そして、本件特許明細書の【0006】、【0008】、【0011】~【0014】、【0027】~【0030】(特に、【0011】、【0014】、【0016】、【0027】~【0028】)の記載を参照すれば、上記(1)の課題は、平均球形度が0.7以上である低次酸化チタンの粉末、及びその粉末を含有する分散体によって解決することが、当業者であれば認識できるといえる。
(3)一方、本件特許発明1の「粉末」は、平均球形度が0.7以上である低次酸化チタンであることを特定事項として含むものであるから、上記(2)の検討を踏まえると、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものとはいえない。
(4)また、本件特許発明2の「分散体」は、平均球形度が0.7以上である低次酸化チタンである粉末を含有することを特定事項として含むものであるから、上記(2)の検討を踏まえると、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものとはいえない。
(5)したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~2の記載は、本件特許発明1~2について、特許受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものといえる。
(6)申立理由3についてのまとめ
以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件特許発明1~2について、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるから、申立理由3によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、申立人による特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700160