特許異議申立
2025-700387
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物および硬化被膜付き基材
- 審判番号
- 2025-700387
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-134125
- 登録番号
- 7579651
- 請求日
- 2025年04月03日
- 審決日
- 2025年07月29日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】中国塗料株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】浅野 真理
- 【権利者代理人】反町 洋
- 【権利者代理人】小島 一真
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【異議申立人】小西 美奈子
- 【異議申立人】神谷 高伸
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 浩子
- 審判官 北澤 健一
- 審判官 藤井 勲
- 分類
- P1651.121-Y (C08F) / P1651.537-Y (C08F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7579651号発明「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物および硬化被膜付き基材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7579651号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7579651号(以下、「本件特許」という。)は、令和2年8月6日に出願された特願2020-134125号に係る特許であって、令和6年10月30日に特許権の設定登録(請求項の数13)がされ、同年11月8日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和7年4月3日に特許異議申立人 小西 美奈子(以下、「申立人A」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~9、12、13)がされ、また、同年5月2日に特許異議申立人 神谷 高伸(以下、「申立人B」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~13)がされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~13に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項の番号に従い、「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ともいう。)。
「【請求項1】
(A)シリカ粒子と、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂とを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、
(A)シリカ粒子の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として12質量%以上40質量%以下であり、
(B)活性エネルギー線硬化型樹脂が、(b1)2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーおよび(b2)3つ以上の不飽和二重結合をもつ3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含み、
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の25℃における粘度が、110KU未満である、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂製内装材用、または屋外もしくは半屋外の塩化ビニル系樹脂製床材用である、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
(A)シリカ粒子と、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂とを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、
(A)シリカ粒子の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として12質量%以上40質量%以下であり、
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の25℃における粘度が、110KU未満であり、
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂製内装材用、または屋外もしくは半屋外の塩化ビニル系樹脂製床材用である、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
(B)活性エネルギー線硬化型樹脂が、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、請求項3に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、2つ以上の不飽和二重結合をもつ多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、請求項4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
前記多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、(b1)2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、請求項5に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
(C)(メタ)アクリレートモノマーをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
(D)光重合開始剤をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項9】
(B)活性エネルギー線硬化型樹脂の重量平均分子量が、500以上100,000以下の範囲内にある、請求項1~8のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項10】
(A)シリカ粒子の吸油量が、150mL/100g未満である、請求項1~9のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項11】
ガラス板上に、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布して形成した厚さ20~40μmの硬化被膜の60度鏡面光沢度が30未満である、請求項1~10のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項12】
基材の少なくとも片面が、請求項1~11のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜で被覆されてなる、硬化被膜付き基材。
【請求項13】
前記基材が、塩化ビニル系樹脂製内装材用、または屋外もしくは半屋外の塩化ビニル系樹脂製床材用である、請求項12に記載の硬化被膜付き基材。」
第3 特許異議申立書に記載された申立理由の概要及び証拠方法
1 申立人Aが提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要
申立人Aは、証拠方法として甲第1号証~甲第5号証(以下、「甲A1」などという。)を提出し、特許異議申立書において、概要、以下の申立理由を主張する。
(1)申立理由A1(甲A1を主引例とする進歩性)
請求項1~9、12、13に係る発明は、甲A1に記載された発明に基いて、又は、甲A1に記載された発明及び甲A2~甲A5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(2)証拠方法
・甲A1:特開2019-126984号公報
・甲A2:特開2016-203639号公報
・甲A3:特開2006-231540号公報
・甲A4:特開2013-72206号公報
・甲A5:特公昭59-30189号公報
2 申立人Bが提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要
申立人Bは、証拠方法として甲第1号証~甲第4号証(以下、「甲B1」などという。)を提出し、特許異議申立書(以下、「申立書B」という。)において、概要、以下の申立理由を主張する。
(1)申立理由B1(甲B1を主引例とする進歩性)
請求項1~13に係る発明は、甲B1に記載された発明及び甲B2~甲B4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(2)申立理由B2(サポート要件)
請求項1~13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、それらの請求項に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
(3)証拠方法
・甲B1:特許第2562554号公報
・甲B2:特開2017-43106号公報
・甲B3:特開2012-224091号公報
・甲B4:国際公開第2020/067565号
第4 当審の判断
1 申立理由A1(甲A1を主引例とする進歩性)について
(1)甲A1に記載された事項及び甲A1に記載された発明
ア 甲A1には、次のとおり記載されている。
「【請求項1】
樹脂基材シート上に装飾層を有し、該樹脂基材シートが赤外線反射性能を有しており、該装飾層を構成する着色インキが、(1)アゾメチンアゾ系黒色顔料を含み、(2)赤色顔料及び黄色顔料から選ばれる少なくとも1種を含み、かつ(3)青色顔料を含まない、遮熱性化粧シート。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1ではカーボンブラックを着色インキに用いないことで太陽熱を原因とした化粧部材の変形を抑制しており、特許文献2ではカーボンブラックを用いないことに加え、可視光線を吸収しかつ赤外光線を反射するアゾメチンアゾ系顔料を着色インキに含有させることで遮熱効果を得ている。
しかしながら、特許文献1及び2に開示の技術を用いても、暗色系である木目模様等の色彩及び絵柄を有する化粧シートでは、依然として太陽光の照射により赤外光の一部が吸収され十分満足できる遮熱効果を得ることはできていない。
【0006】
本発明は、このような状況下になされたもので、暗色系である木目模様等の色彩及び絵柄の意匠性を有していても、遮熱効果に優れる遮熱性化粧シート及びこれを用いた化粧部材を提供することを課題とする。」
「【0031】
(他の層)
本発明の遮熱性化粧シートは、樹脂基材シート及び装飾層以外の他の層、例えば、透明性樹脂層、表面保護層等を必要に応じて有することができる。本発明の遮熱性化粧シートの具体的な実施形態の一例として、図2の断面図が示される。図2において、遮熱性化粧シート10は、樹脂基材シート1、ベタ印刷層2a及び絵柄層2bを有する装飾層2、さらに透明性樹脂層3及び表面保護層4を順に有している。
以下、本発明の遮熱性化粧シートが有しうる、他の層について説明する。」
「【0036】
〈表面保護層〉
化粧シートには、主に耐傷性及び耐候性等の表面特性を付与する観点から、装飾層上に直接、又は他の層、例えば、必要に応じて設けられる接着剤層、透明性樹脂層、又は装飾層と表面保護層との層間密着性を向上させるためのプライマー層等の上に表面保護層を設けることができる。
【0037】
表面保護層は、硬化性樹脂を含有する樹脂組成物の硬化物で構成される層である。
表面保護層の形成に用いられる硬化性樹脂としては、2液硬化型樹脂等の熱硬化性樹脂の他、電離放射線硬化性樹脂等が好ましく用いられ、これらの複数種を組み合わせた、例えば、電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とを併用する、又は硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを併用する、いわゆるハイブリッドタイプであってもよい。
硬化性樹脂としては、表面保護層を構成する樹脂の架橋密度を高め、より優れた耐傷性及び耐候性等の表面特性とを得る観点から、電離放射線硬化性樹脂が好ましく、また、取り扱いが容易との観点から、電子線硬化性樹脂がより好ましい。
【0038】
(電離放射線硬化性樹脂)
電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂のことであり、電離放射線硬化性官能基を有するものである。ここで、電離放射線硬化性官能基とは、電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する官能基等が好ましく挙げられる。また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含まれる。
電離放射線硬化性樹脂としては、具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができる。
【0039】
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
多官能(メタ)アクリレートモノマーは、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーであればよく、特に制限はない。多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、1種単独で、又は2種以上を併用してもよい。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は、より優れた耐傷性及び耐候性等の表面特性を得る観点から、好ましくは2以上であり、上限として好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。
【0040】
重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等がある。
【0041】
これらの重合性オリゴマーは、1種単独で、又は2種以上を併用してもよい。より優れた耐傷性及び耐候性等の表面特性を得る観点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましい。
【0042】
多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーの官能基数は、より優れた耐傷性及び耐候性等の表面特性を得ることができ、また製造過程において収縮するおそれがない観点から、好ましくは2以上であり、上限として好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。
【0043】
これらの重合性オリゴマーの重量平均分子量は、より優れた耐傷性及び耐候性等の表面特性を得る観点から、1,000以上が好ましく、1,200以上がより好ましい。また、上限としては、12,000以下が好ましく、10,000以下がより好ましい。ここで、重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
【0044】
電離放射線硬化性樹脂は、上記多官能性(メタ)アクリレート等とともに、その粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを適宜併用することができる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは、1種単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0045】
電離放射線硬化性樹脂としては、耐傷性及び耐候性等の表面特性を向上させる観点から、重合性オリゴマーを含むものであることが好ましい。電離放射線硬化性樹脂中の重合性オリゴマーの含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、100質量%がよりさらに好ましい。
【0046】
表面保護層を構成する硬化性樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。表面保護層が紫外線吸収剤を含むことで、表面保護層中に紫外線吸収剤が安定して保持されるので、厳しい環境下においても、優れた耐候性が得られる。また、表面保護層を構成する硬化性樹脂組成物は、耐候性を向上させる観点から、光安定剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤及び光安定剤は、樹脂基材中に配合しうる紫外線吸収剤及び光安定剤として例示したものが挙げられる。
【0047】
また、紫外線吸収剤及び光安定剤は、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する反応性官能基を有するものであってもよい。表面保護層を構成する硬化性樹脂との相互作用により、ブリードアウトしにくくなるため、より多量に用いることができ、より優れた耐候性が得られる。表面保護層において、これらの紫外線吸収剤及び光安定剤は、1種単独で、又は2種以上を併用することができる。
表面保護層中の紫外線吸収剤の含有量は、表面保護層を構成する硬化性樹脂100質量部に対し、通常0.1~20質量部である。また、表面保護層中の光安定剤の含有量は、表面保護層を構成する硬化性樹脂100質量部に対し、通常0.1~10質量部である。
【0048】
表面保護層には、添加剤として、本発明の目的を損なわない範囲で、上記の紫外線吸収剤、光安定剤の他、紫外線遮蔽剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、ブロッキング防止剤、滑剤、溶剤等を添加することができる。
【0049】
表面保護層の厚さは、装飾層を保護する観点から、2μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。また、化粧シートを成形する際の表面保護層のクラック抑制の観点から、表面保護層の厚さは15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下がさらに好ましい。」
「【0067】
[化粧部材]
本発明の化粧部材は、上述の本発明の遮熱性化粧シートと被着材とを有するものである。具体的に上記化粧部材は、遮熱性化粧シートの樹脂基材シート面と、被着材の装飾を要する面とが対向して積層されたものである。すなわち、本発明の化粧部材は、少なくとも、被着材、樹脂基材シート、及び装飾層をこの順に有するものである。
【0068】
(被着材)
被着材としては、各種素材の平板、曲面板等の板材、立体形状物品、シート(あるいはフィルム)等が挙げられる。また、本発明の遮熱性化粧シートの遮熱効果に優れる特性から、被着材は樹脂部材が好適である。
樹脂部材としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ゴム等の板材、立体形状物品、あるいはシート等が挙げられる。
また、被着材は樹脂部材の他に、木質部材、金属部材、窯業部材等であってもよい。上記各種部材は、1種単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0069】
被着材は、上記の中から用途に応じて適宜選択すればよく、壁、天井、床等の建築物の内装材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材を用途とする場合は、木質部材、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも1種の部材からなるものが好ましく、玄関ドア、屋根等の外装用部材、窓枠、扉等の建具を用途とする場合は、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも1種の部材からなるものが好ましい。
また被着体の厚さは、用途及び材料に応じて適宜選択すればよく、0.1mm以上30mm以下が好ましく、0.3mm以上20mmがより好ましく、0.5mm以上10mm以下がさらに好ましい。」
「【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
・・・
【0081】
[実施例1]
樹脂基材シートとして白色ポリプロピレンシート(厚さ:60μm、ランダムポリプロピレン樹脂100質量部に対して平均粒径0.25μmのルチル型酸化チタン粒子を10質量部含有)を用意して、該シートの一方の面に、プライマー剤(アクリル-ウレタン樹脂)を用いてグラビアコート法により裏面プライマー層(厚さ:2μm)を設けた。
【0082】
次いで、該裏面プライマー層を設けた面とは反対側の面に、下記表1に示す処方のベタ印刷層形成用着色インキをグラビア印刷法により塗布、乾燥し、次いで下記表1に示す処方で構成される絵柄層1、2及び3形成着色インキをそれぞれ用いて、絵柄層1、2及び3を順次印刷して3層からなる木目模様の絵柄層を形成し、厚さ4μmの装飾層を形成した。
なお、表1に示すバインダー樹脂として2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂を用い、溶剤としてメチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル及びイソプロピルアルコールの混合溶剤を用いた。
【0083】
【表1】
[図:0001426851000001.jpg]
【0084】
次いで、装飾層上に、接着剤層(2液硬化型ウレタン樹脂、厚さ:5μm)を形成し、該接着剤層上に、透明性樹脂層(透明ポリプロピレン樹脂、厚さ:80μm)を押出しラミネート方式で積層した。
次いで、透明性樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、2液硬化性ウレタン樹脂組成物をグラビア印刷法で塗布してプライマー層(厚さ:3μm)を形成した。
【0085】
次いで、プライマー層上に下記処方の表面保護層形成用インキをロールコート法で塗布し、電子線照射装置を用いて、酸素濃度:200ppm、加速電圧:175keV、照射量:5Mradの条件で電子線を照射し、電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させて、厚さ3μmの表面保護層を形成し、化粧シートを得た。
<表面保護層形成用インキ>
・2官能ウレタンアクリレートオリゴマー 80質量部
(重量平均分子量:1500)
・6官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー 20質量部
(重量平均分子量:1500)
・無機充填剤 14質量部
(シリカ粒子、平均粒径:11μm)
【0086】
次いで、化粧シートの裏面プライマー層側の面と、厚み2mmの塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂被着体(ユニサンデー社製の白色塩化ビニル板、品番「EB232-5」、塩化ビニル樹脂の割合:50質量%以上)とを、接着層(酢酸ビニル系水性エマルジョン接着剤、厚さ:7μm)を介して貼り合わせ、実施例1の化粧部材を得た。
・・・」
イ 上記アの記載事項によれば、甲A1には、暗色系である木目模様等の色彩及び絵柄の意匠性を有していても、遮熱効果に優れる遮熱性化粧シート及びこれを用いた化粧部材を提供すること(【0006】)を課題とした発明が記載されており、当該遮熱性化粧シートは、表面保護層を必要に応じて有することができ(【0031】、【0036】~【0049】)、【実施例】において、所定の組成を有する表面保護層形成用インキである電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させて、表面保護層を形成し、化粧シートを得たことが示されている。
そこで、甲A1の実施例1の表面保護層形成用インキである電離放射線硬化性樹脂組成物に着目すると、次の発明(以下、「甲A1発明」という。)が記載されていると認められる。
「下記処方を有する表面保護層形成用インキである電離放射線硬化性樹脂組成物であって、該電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させて表面保護層を形成して得られる化粧シートと、塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂被着体とを、接着層を介して貼り合わせ、化粧部材を得るために用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物。
・2官能ウレタンアクリレートオリゴマー 80質量部
(重量平均分子量:1500)
・6官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー 20質量部
(重量平均分子量:1500)
・無機充填剤 14質量部
(シリカ粒子、平均粒径:11μm)」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲A1発明とを対比する。
甲A1発明における「2官能ウレタンアクリレートオリゴマー」、「6官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー」は、順に、2つのアクリロイル基、6つのアクリロイル基を有するといえるから、本件発明1の「(b1)2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」、「(b2)3つ以上の不飽和二重結合をもつ3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」にそれぞれ相当する。
そして、甲A1発明における「2官能ウレタンアクリレートオリゴマー」及び「6官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー」は、本件明細書の【0019】に「(B)活性エネルギー線硬化型樹脂(以下、(B)成分ともいう。)とは、少なくとも1つ以上の不飽和二重結合を有するオリゴマーおよびポリマーから選択される少なくとも1種である。」と記載されていることから、本件発明1の「(B)活性エネルギー線硬化型樹脂」にも相当する。
そうすると、甲A1発明において、「2官能ウレタンアクリレートオリゴマー」及び「6官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー」を含むことは、本件発明1の「(B)活性エネルギー線硬化型樹脂」が、「(b1)2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーおよび(b2)3つ以上の不飽和二重結合をもつ3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含」むことに相当する。
甲A1発明における「シリカ粒子」は、本件発明1における「(A)シリカ粒子」に相当する。
甲A1発明の「電離放射線硬化性樹脂組成物」は、甲A1の【0038】に「電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含まれる。」と記載されていることから、本件発明1の「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲A1発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「(A)シリカ粒子と、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂とを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、
(B)活性エネルギー線硬化型樹脂が、(b1)2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーおよび(b2)3つ以上の不飽和二重結合をもつ3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。」
そして、以下の点で相違する。
<相違点A1-1>
本件発明1は、「(A)シリカ粒子の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として12質量%以上40質量%以下であり、」「前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の25℃における粘度が、110KU未満である」のに対し、甲A1発明は、そのような特定がない点
イ 相違点について
甲A1には、「電離放射線硬化性樹脂は、上記多官能性(メタ)アクリレート等とともに、その粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを適宜併用することができる。」(【0044】)という記載はある。
しかしながら、甲A1には、電離放射線硬化性樹脂組成物について、どの程度の粘度を目標にしているのか、単官能性(メタ)アクリレートをどの程度併用すると粘度がどの程度低下するのかといったことについては記載されておらず、具体的に25℃における粘度を110KU未満とするために必要な単官能性(メタ)アクリレートの量も記載はなく不明である。
また、甲A1発明におけるシリカ粒子の含有量は約12.3質量%(=14/(80+20+14))であって、本件発明1におけるシリカ粒子の含有量の下限である12質量%に近い値であるところ、単官能性(メタ)アクリレートを例えば4質量部併用しただけでも、シリカ粒子の含有量は約11.9質量%(=14/(80+20+14+4)×100)となり、本件発明1におけるシリカ粒子の含有量の下限未満の値となる。このように、単官能性(メタ)アクリレートの含有量はシリカ粒子の含有量に影響を与えるものであるから、粘度とシリカ粒子の含有量とは密接に関連するものであるといえるが、シリカ粒子の含有量に関する甲A1の記載は、上記実施例の数値のみであり、どの程度の範囲で含んでよいかを示す一般的記載はないから、甲A1発明においてシリカ粒子の含有量に着目する根拠に乏しい。
そうすると、甲A1の記載からは、甲A1発明において25℃における粘度を110KU未満という具体的な範囲とする動機付けを見いだすことはできず、シリカ粒子の含有量にも配慮しつつ上記相違点A1-1に係る事項とすることは当業者が容易に想到したものではない。
また、甲A5には、「塗装粘度について・・・、浸漬塗りではストーマー粘度70~100KU」(第3頁左欄第2行~第4行)と記載されているが、甲A1の【0085】には、「表面保護層形成用インキをロールコート法で塗布」と記載されており、塗装方法が異なるから、甲A1発明において甲A5の上記記載を参酌する理由はないので、甲A5を考慮しても上記判断に影響しない。さらに、甲A2~甲A4にも、25℃における粘度を110KU未満とすることは記載されていないから、甲A2~甲A4を考慮しても上記判断に影響しない。
そして、本件発明1は、「低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れた硬化被膜を形成可能な、低粘度で作業性が良い活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することができる」(【0009】)という効果を奏するものであり、そのような効果が【実施例】において確認されている。一方、甲A1発明における表面保護層は、「主に耐傷性及び耐候性等の表面特性を付与する観点から」(【0036】)設けられるものであり、表面保護層の光沢度や耐汚染性、表面保護層形成用インキである電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度や作業性は具体的に示されていないから、本件発明1の効果は、当業者が予測することができるものではない。
ウ したがって、本件発明1は、甲A1に記載された発明、及び、甲A1~A5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1をさらに特定したものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2は、甲A1に記載された発明、及び、甲A1~A5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲A1発明とを対比すると、上記(2)アと同様の相当関係が成り立ち、また、甲A1発明の「電離放射線硬化性樹脂組成物」は「該電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させて表面保護層を形成して得られる化粧シートと、塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂被着体とを、接着層を介して貼り合わせ、化粧部材を得るために用いられる」から、本件発明3の「前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂製内装材用、または屋外もしくは半屋外の塩化ビニル系樹脂製床材用である」であることと、「塩化ビニル系樹脂製」部材に対して用いられる限りにおいて一致する。
そうすると、本件発明3と甲A1発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「(A)シリカ粒子と、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂とを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂製部材用である、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。」
そして、以下の点で相違する。
<相違点A1-2>
本件発明3は、「(A)シリカ粒子の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として12質量%以上40質量%以下であり、」「前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の25℃における粘度が、110KU未満であ」るのに対し、甲A1発明は、そのような特定がない点
<相違点A1-3>
「塩化ビニル系樹脂製」部材が、本件発明3は、内装材用、または屋外もしくは半屋外の床材用であるのに対し、甲A1発明は、そのような特定がない点
イ 相違点について
上記相違点A1-2は、上記(2)アの上記相違点A1-1と同じである。
そうすると、上記(2)イで説示したのと同様、甲A1発明において、相違点A1-2に係る事項とすることは当業者が容易に想到したとはいえない。
ウ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲A1に記載された発明、及び、甲A1~A5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明4~9、12、13について
本件発明4~9、12、13は、本件発明1又は3をさらに特定したものであるから、本件発明1又は3と同様の理由により、本件発明4~9、12、13は、甲A1に記載された発明、及び、甲A1~A5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)小括
以上によれば、本件発明1~9、12、13は、甲A1に記載された発明、及び、甲A1~A5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立人Aが主張する申立理由A1(甲A1を主引例とする進歩性)は、理由がない。
2 申立理由B1(甲B1を主引例とする進歩性)について
(1)甲B1に記載された事項及び甲B1に記載された発明
ア 甲B1には、次のとおり記載されている。
「【請求項1】 a)2官能ポリエーテルウレタン(メタ)アクリレート 2~40重量%、
b)分子中に3~6個の水酸基を有するポリオールとジイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とを反応してなる多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物 5~40重量%、
c)ジイソシアネート化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とを反応してなるウレタン(メタ)アクリレート化合物 0~40重量%、
d)カルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物 5~40重量%、
e)反応性希釈剤 0~60重量%、および
f)光重合開始剤 0~10重量%
を含有することを特徴とする光-放射線硬化性樹脂組成物。」
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、光放射線硬化性、基材に対する密着性、耐汚染性、柔軟性および耐摩耗性に優れた光放射線硬化性樹脂組成物を提供することである。また本発明の別の目的は、光放射線硬化性樹脂組成物で被覆された、長い期間にわたって耐汚染性および耐摩耗性に優れた特性を維持する床材を提供することである。」
「【0040】整泡消泡剤、レベリング剤としては、例えば、DC11PA、SH28PA、SH190、SH200(以上トーレシリコーン製)、フローレンAC-1140、AC-1190、ポリフローNo.7、No.75(以上共栄社油脂製)等が挙げられる。スリップ剤としては、グラノール100、400、410、440、470、B1484(以上共栄社油脂製)等が挙げられる。艶けし剤としては、湿式または乾式シリカ、TS-100(デグサジャパン製)、アエロジル200、T600(以上日本アエロジル製)、ニップシールE200、SS50(以上日本シリカ製)、X-80(以上徳山曹達製)、炭酸マグネシウム等が挙げられる。」
「【0044】
【実施例】以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお以下において、特記しない限り、「部」は「重量部」を意味する。
【0045】合成例1
撹拌機を備えた反応容器に、水添キシリレンジイソシアネート236g、重合禁止剤として2,6-ジt-ブチル-4-メチルフェノール0.2g、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.8gを仕込んだ。これを10℃まで氷水浴で冷却しその後これにヒドロキシエチルアクリレート141gを、温度を20℃以下に制御しながら添加した。添加後、さらに10~20℃で1時間撹拌を継続した後、数平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール(保土谷化学製PTG1000)622gを、温度50℃以下に保ちながら添加した。次いで、50~60℃で5時間撹拌してから反応を終了させ、ウレタンアクリレート[A]を得た。ウレタンアクリレート[A]は本発明の組成物のa)成分に相当する。
【0046】合成例2
撹拌機を備えた反応容器に、水添キシリレンジイソシアネート485g、重合禁止剤として2,6-ジt-ブチル-4-メチルフェノール0.2g、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.8gを仕込んだ。これを10℃まで氷水浴で冷却しその後これにヒドロキシエチルアクリレート290gを、温度を20℃以下に制御しながら添加した。添加後、さらに10~20℃で1時間撹拌を継続した後、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加トリオール(TMP30 日本乳化剤製 平均分子量266)222gを温度50℃以下に保ちながら添加した。次いで、50~60℃で5時間撹拌してから反応を終了させ、ウレタンアクリレート[B]を得た。ウレタンアクリレート[B]は本発明の組成物のb)成分に相当する。
【0047】合成例3
撹拌機を備えた反応容器に、水添キシリレンジイソシアネート388g、重合禁止剤として2,6-ジt-ブチル-4-メチルフェノール0.2g、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.8gを仕込んだ。これを10℃まで氷水浴で冷却しその後、これにヒドロキシエチルアクリレート464gを、温度を20℃以下に制御しながら添加した。添加後、さらに10~20℃で1時間撹拌を継続した後、昇温し、50~60℃で5時間撹拌してから反応を終了させ、ウレタンアクリレート[C]を得た。ウレタンアクリレート[C]は本発明の組成物のc)成分に相当する。
【0048】実施例1
撹拌機を備えた反応容器に、ウレタンアクリレート[A]を7部、ウレタンアクリレート[B]を23部、ウレタンアクリレート[C]を10部、カルボキシ基含有モノマーとしてアロニックスM5500(東亜合成化学製)15部、反応性希釈剤として、単官能モノマー、ビスコート#190(大阪有機化学製)を20部、2官能モノマーAPG200(新中村化学製)を15部、MANDA(日本化薬製)を10部、光開始剤としてベンゾフェノンを3部、IRGACURE184を1部、VICURE55を1部、シランカップリング剤としてSH6030(トーレシリコーン製)を1部、艶けし剤としてTS-100(デグサジャパン製)を5部仕込み、50~60℃で撹拌混合し、粘度が700cp/20℃の透明液状組成物を得た。
・・・
【0054】以上の様にして得た液状組成物を軟質PVCシート表面(歩行面)に70μmの厚さに塗布し、紫外線を照射(照射量500mJ/cm2 )し、樹脂組成物を硬化させて床材を得た。
・・・」
イ 上記アの記載事項によれば、甲B1は、光放射線硬化性、基材に対する密着性、耐汚染性、柔軟性及び耐摩耗性に優れた光放射線硬化性樹脂組成物を提供すること(【0005】)を課題とした発明が記載されており、【実施例】において、そのような組成物を得たことが示されている。
そこで、甲B1の実施例1の液状組成物に着目し、該液状組成物に含まれるウレタンアクリレート[A]、[B]、[C]を得た合成例1~3、該液状組成物から床材を得た【0054】の記載とあわせて整理すると、次の発明(以下、「甲B1発明」という。)が記載されていると認められる。
「下記合成例1で得たウレタンアクリレート[A]を7部、下記合成例2で得たウレタンアクリレート[B]を23部、下記合成例3で得たウレタンアクリレート[C]を10部、カルボキシ基含有モノマーとしてアロニックスM5500(東亜合成化学製)15部、反応性希釈剤として、単官能モノマー、ビスコート#190(大阪有機化学製)を20部、2官能モノマーAPG200(新中村化学製)を15部、MANDA(日本化薬製)を10部、光開始剤としてベンゾフェノンを3部、IRGACURE184を1部、VICURE55を1部、シランカップリング剤としてSH6030(トーレシリコーン製)を1部、艶けし剤としてTS-100(デグサジャパン製)を5部仕込み、撹拌混合して得た、粘度が700cp/20℃の透明液状組成物であって、該液状組成物を軟質PVCシート表面に塗布し、紫外線を照射し、硬化させて床材を得るために用いられる、透明液状組成物。
合成例1
撹拌機を備えた反応容器に、水添キシリレンジイソシアネート236g、重合禁止剤として2,6-ジt-ブチル-4-メチルフェノール0.2g、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.8gを仕込んだ。これを10℃まで氷水浴で冷却しその後これにヒドロキシエチルアクリレート141gを、温度を20℃以下に制御しながら添加した。添加後、さらに10~20℃で1時間撹拌を継続した後、数平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール(保土谷化学製PTG1000)622gを、温度50℃以下に保ちながら添加した。次いで、50~60℃で5時間撹拌してから反応を終了させ、ウレタンアクリレート[A]を得た。ウレタンアクリレート[A]は本発明の組成物のa)成分に相当する。
合成例2
撹拌機を備えた反応容器に、水添キシリレンジイソシアネート485g、重合禁止剤として2,6-ジt-ブチル-4-メチルフェノール0.2g、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.8gを仕込んだ。これを10℃まで氷水浴で冷却しその後これにヒドロキシエチルアクリレート290gを、温度を20℃以下に制御しながら添加した。添加後、さらに10~20℃で1時間撹拌を継続した後、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加トリオール(TMP30 日本乳化剤製 平均分子量266)222gを温度50℃以下に保ちながら添加した。次いで、50~60℃で5時間撹拌してから反応を終了させ、ウレタンアクリレート[B]を得た。ウレタンアクリレート[B]は本発明の組成物のb)成分に相当する。
合成例3
撹拌機を備えた反応容器に、水添キシリレンジイソシアネート388g、重合禁止剤として2,6-ジt-ブチル-4-メチルフェノール0.2g、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.8gを仕込んだ。これを10℃まで氷水浴で冷却しその後、これにヒドロキシエチルアクリレート464gを、温度を20℃以下に制御しながら添加した。添加後、さらに10~20℃で1時間撹拌を継続した後、昇温し、50~60℃で5時間撹拌してから反応を終了させ、ウレタンアクリレート[C]を得た。ウレタンアクリレート[C]は本発明の組成物のc)成分に相当する。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲B1発明とを対比する。
甲B1発明における「ウレタンアクリレート[A]」は、水添キシリレンジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレートとポリテトラメチレングリコールを反応させて得られたものであり、a)成分(2官能ポリエーテルウレタン(メタ)アクリレート)に相当するとされていることから、本件発明1の「(b1)2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」に相当する。
また、甲B1発明における「ウレタンアクリレート[B]」は、水添キシリレンジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレートとトリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加トリオールを反応させて得られたものであり、b)成分(分子中に3~6個の水酸基を有するポリオールとジイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とを反応してなる多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物)に相当するとされているものであるから、本件発明1の「(b2)3つ以上の不飽和二重結合をもつ3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」に相当する。
そして、甲B1発明における「ウレタンアクリレート[A]」及び「ウレタンアクリレート[B]」は、本件明細書の【0019】に「(B)活性エネルギー線硬化型樹脂(以下、(B)成分ともいう。)とは、少なくとも1つ以上の不飽和二重結合を有するオリゴマーおよびポリマーから選択される少なくとも1種である。」と記載されていることから、本件発明1の「(B)活性エネルギー線硬化型樹脂」にも相当する。
そうすると、甲B1発明において、「ウレタンアクリレート[A]」及び「ウレタンアクリレート[B]」を含むことは、本件発明1の「(B)活性エネルギー線硬化型樹脂」が、「(b1)2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーおよび(b2)3つ以上の不飽和二重結合をもつ3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含」むことに相当する。
甲B1発明における「艶けし剤として」の「TS-100(デグサジャパン製)」は、甲B1の【0040】に「艶けし剤としては、湿式または乾式シリカ、TS-100(デグサジャパン製)・・・等が挙げられる。」と記載されていることから、本件発明1における「(A)シリカ粒子」に相当する。
甲B1発明の「透明液状組成物」は、「紫外線を照射し、硬化させ」られるから、本件発明1の「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲B1発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「(A)シリカ粒子と、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂とを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、
(B)活性エネルギー線硬化型樹脂が、(b1)2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーおよび(b2)3つ以上の不飽和二重結合をもつ3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。」
そして、以下の点で相違する。
<相違点B1-1>
(A)シリカ粒子の含有量が、本件発明1は、「前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として12質量%以上40質量%以下であ」るのに対し、甲B1発明は、透明液状組成物を100質量%として、約4.5質量%(=5/(7+23+10+15+20+15+10+3+1+1+1+5)×100)である点
<相違点B1-2>
本件発明1は、「前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の25℃における粘度が、110KU未満である」のに対し、甲B1発明は、透明液状組成物の粘度が700cp/20℃である点
イ 相違点について
シリカ粒子の含有量は粘度に影響を与えるから、相違点B1-1と相違点B1-2をまとめて検討する。
相違点B1-2について、申立人Bが申立書Bの第12頁において示した株式会社明治機械製作所が公表している粘度対照表(https://www.meijiair.co.jp/technology/gun/viscosity.html)を参照すると、700cpは74KUに換算される。ここで、本件発明1では25℃における粘度であり、甲B1発明では20℃における粘度であるが、この程度の温度の違いであれば、甲B1発明の25℃における粘度も110KU未満ではある蓋然性は高い。
次いで、相違点B1-1について、シリカ粒子の含有量に関する甲B1の記載は、上記実施例の数値のみであり、どの程度の範囲で含んでよいかを示す一般的記載はないから、甲B1発明においてシリカ粒子の含有量に着目する根拠に乏しい。
一方、甲B2には、「艶消し材の添加量は、樹脂成分100重量部に対して、通常20重量部以下であり、1~20重量部が好ましく、5~15重量部がより好ましい。」(【0079】)と記載され、甲B3には、「硬化型樹脂層3には、艶消し(マット化)や、耐擦傷性を更に高めることを目的として、α-アルミナ、シリカ、酸化クロム、酸化鉄、ダイヤモンド等の無機粒子、及び合成樹脂ビーズなどの平均粒径1μm~30μm程度の粉末を添加してもよい。・・・上記粉末の添加量は、オリゴマー(A)とオリゴマー(B)の合計量100重量部に対して5~30重量部が好ましい。」(【0029】)と記載され、甲B4には、「表面保護層中のシリカ微粒子の含有量は、硬化性樹脂の硬化物100質量部に対し、1質量部以上30質量部以下が好ましく、5質量部以上25質量部以下がより好ましく、10質量部以上20質量部以下が特に好ましい。シリカ微粒子の当該含有量が1質量部以上であることにより、表面保護層に十分な艶消し効果を付与できるという利点がある。一方、シリカ微粒子の当該含有量が30質量部以下であることにより、表面保護層の形成時においても、表面保護層用樹脂組成物の粘度が高くなりすぎることが少なく、また、得られる表面保護層が適度な柔軟性と塗膜強度を維持することができる。」(【0029】)と記載されている。
しかしながら、甲B2の実施例において用いられている艶消し材の含有量は、樹脂成分100重量部に対して10重量部であり(【0125】【表1】の実施例6~11)、また、甲B3の実施例において用いられているシリカの含有量は、ウレタンアクリレートオリゴマーの合計量100重量部に対して10重量部であり(【0073】~【0082】の実施例1~8)、実際には本件発明1におけるシリカ粒子の含有量の下限未満の量で用いられている。
さらに、甲B4の【0029】には、上記においても示したとおり、「シリカ微粒子の当該含有量が30質量部以下であることにより、表面保護層の形成時においても、表面保護層用樹脂組成物の粘度が高くなりすぎることが少なく、」と記載されているが、シリカ粒子の含有量がどの程度である場合に、粘度がどの程度になるかといった具体的な関係は不明である。
また、甲B1において、粘度は、10000cp(上記粘度対照表を参照すると、4500cpが136KUに換算されることまでしか示されておらず、110KUをはるかに超える値に換算されると認められる。)という高粘度まで許容される広範な範囲をとり得ることが記載されている(【0040】)。
そうすると、甲B1~甲B4の記載からは、甲B1発明において、25℃における粘度が110KU未満であるように配慮しながら、シリカの含有量をより多くして12質量%以上40質量%とすることが動機付けられるとはいえない。
そして、本件発明1は、「低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れた硬化被膜を形成可能な、低粘度で作業性が良い活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することができる」(【0009】)という効果を奏するものであり、そのような効果が【実施例】において確認されている。一方、甲B1~B4には、艶消し剤・シリカにより耐汚染性も改善されることは記載されていないから、本件発明1の効果は、当業者が予測することができるものではない。
ウ したがって、本件発明1は、甲B1に記載された発明、及び、甲B1~B4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1をさらに特定したものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2は、甲B1に記載された発明、及び、甲B1~B4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲B1発明とを対比すると、上記(2)アと同様の相当関係が成り立ち、また、甲B1発明の「透明液状組成物」は、「該液状組成物を軟質PVCシート表面に塗布し、紫外線を照射し、硬化させて床材を得るために用いられる」から、本件発明3の「前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂製内装材用、または屋外もしくは半屋外の塩化ビニル系樹脂製床材用である」ことに相当する。
そうすると、本件発明3と甲B1発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「(A)シリカ粒子と、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂とを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂製内装材用、または屋外もしくは半屋外の塩化ビニル系樹脂製床材用である、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。」
そして、以下の点で相違する。
<相違点B1-3>
(A)シリカ粒子の含有量が、本件発明3は、「前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として12質量%以上40質量%以下であ」るのに対し、甲B1発明は、透明液状組成物を100質量%として、約4.5質量%(=5/(7+23+10+15+20+15+10+3+1+1+1+5)×100)である点
<相違点B1-4>
本件発明3は、「前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の25℃における粘度が、110KU未満である」のに対し、甲B1発明は、透明液状組成物の粘度が700cp/20℃である点
イ 相違点について
上記相違点B1-3及び上記相違点B1-4は、上記(2)アの上記相違点B1-1及び上記相違点B1-2とそれぞれ同じである。
そうすると、上記(2)イで説示したのと同様、甲B1発明において、上記相違点B1-3及び上記相違点B1-4に係る事項とすることは当業者が容易に想到したとはいえない。
ウ したがって、本件発明3は、甲B1に記載された発明、及び、甲B1~B4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明4~13について
本件発明4~13は、本件発明1又は3をさらに特定したものであるから、本件発明1又は3と同様の理由により、本件発明4~13は、甲B1に記載された発明、及び、甲B1~B4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)小括
以上によれば、本件発明1~13は、甲B1に記載された発明、及び、甲B1~B4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立人Bが主張する申立理由B1(甲B1を主引例とする進歩性)は、理由がない。
3 申立理由B2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
この観点に立って、以下検討する。
(2)本件発明の課題
本件明細書の【0006】の記載によれば、本件発明の課題は、「低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れた硬化被膜を形成可能な、低粘度で作業性が良い活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供すること」である。
(3)検討
本件明細書には、【課題を解決するための手段】について、「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に(A)シリカ粒子と、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂とを含有させ、(A)シリカ粒子の含有量および活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度を特定の範囲内に調節することにより、低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れた硬化被膜を形成可能な、作業性が良い活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得られることを知見した。」(【0007】)と記載されている。
低粘度、作業性については、【0012】に「本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、低粘度であり、作業性に優れるものである。活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、JIS K 5600-2-2に準拠し、25℃でストーマー粘度計により測定した粘度が、好ましくは110KU未満であり、より好ましくは90KU未満であり、また、好ましくは50KU以上であり、より好ましくは60KU以上である。活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度が上記数値範囲内であれば、作業性に優れるため、塗料として好適である。」と記載されている。
また、低光沢、耐汚染性については、【0018】に「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中のシリカ粒子の含有量が高いため、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜は、低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れたものとなる。」と記載されている。
そして、【実施例】において、原材料やそれらの含有量が異なる実施例と比較例の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及びそれから硬化被膜を製造し、粘度、鏡面光沢度、耐汚染性を評価した結果が示されている。そして、本件発明の実施例の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、粘度、鏡面光沢度、耐汚染性において良好な結果が得られたのに対し、比較例1~3、6、7、9は、(A)シリカ粒子の含有量が本件発明の下限未満であるため、鏡面光沢度と耐汚染性が劣っており、比較例4、5は、粘度が本件発明の上限より高い値となっており、比較例8は、(A)シリカ粒子の含有量が本件発明の上限より多いため、粘度が高すぎて測定不可であり、比較例10は(A)シリカ粒子でなくアルミナ粒子であるため、鏡面光沢度と耐汚染性が劣ることが示されている(【0065】~【0072】)。
そうすると、本件発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れた硬化被膜を形成可能であり、低粘度で作業性が良いことを、当業者が認識できる。
したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
(4)申立人Bの主張について
申立人Bは、申立書Bにおいて、以下のとおり主張している。
「(ア)発明の詳細な説明における比較例4、5では、吸油量がそれぞれ150ml/100g、230ml/100gといった吸油量が多いシリカ粒子を用いることによって樹脂組成物の粘度が大きくなり、請求項1、3において特定されている粘度を満足しないことが示されている。
してみると、吸油量が「150ml/100g未満であること」について限定のない請求項1、3に係る樹脂組成物の発明は、上記「低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れた硬化被膜を形成可能な、低粘度で作業性が良い」樹脂組成物を提供するとの課題を解決しているものとはいえない。」(第16頁下から第14行~下から第7行)
「(イ)実施例および比較例では、溶剤を含有しない無溶剤型の樹脂組成物について、シリカ粒子の種類(吸油量)、含有量と粘度との関係を評価している。そして、高分子材料を含む組成物について、その取り扱い性、塗工性等を考慮して溶剤で希釈すること(かかる溶剤は樹脂組成物における「固形分」に含まれない。(【0010】))、それにより組成物の粘度を小さくすることができることは当該技術分野における技術常識である。
してみると、発明の詳細な説明の記載に基づいて、「無溶剤」であることについて特定することなく、溶剤で希釈した樹脂組成物までも包含するような、固形分に対するシリカの含有量、粘度を特定した本件発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、上記「低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れた硬化被膜を形成可能な、低粘度で作業性が良い」樹脂組成物を提供するとの課題を解決しているものとはいえない。」(第17頁第1行~第10行)
申立人Bの上記主張(ア)について検討すると、当業者が課題を解決できると認識するためには、本件発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、低粘度で作業性が良く、低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れた硬化被膜を形成可能であれば良いと認められる。そして、本件発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、特に、「25℃における粘度が、110KU未満」であり、実施例もその範囲であって、申立人Bが指摘する比較例4、5が121KU、141KUであることと比べ、低粘度であることが示されている。
ここで、本件明細書の【0015】において、「本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含まれるシリカ粒子は、特に限定されない」とされた上で、「特定の吸油量を有するシリカ粒子を用いることができる。」(下線は当審による。)とされ、また、同【0018】において、「(A)シリカ粒子は吸油量が低いため、含有量が上記範囲内であっても、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度が上がり難い。」とされているように、本件発明において特定の吸油量を有するシリカ粒子を用いることが必須であるとはされておらず、また、粘度はシリカ粒子の含有量等によっても影響を受けるものである。
したがって、吸油量の低いシリカ粒子を用いることは、「25℃における粘度が、110KU未満」という発明特定事項を達成するための手段の一つにすぎず、その他にも、本件明細書の【0036】において、「(C)(メタ)アクリレートモノマーは、少なくとも1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであり、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度を調整する反応性希釈剤としての役割を有し、」と記載されているように、反応性希釈剤として(メタ)アクリレートモノマーを用いることなど、粘度調整のための手段があることが理解できる。
そして、上記(3)において説示したように、本件発明は課題解決のために必須な、シリカ粒子の含有量や粘度を特定しており、それ以上に、粘度調整のための手段の一つにすぎない吸油量が「150ml/100g未満」のシリカ粒子を用いることが、課題解決のために必須であるということはできない。
また、申立人Bの上記主張(イ)についても同様に、当業者が課題を解決できると認識するためには、本件発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、低粘度で作業性が良く、低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れた硬化被膜を形成可能であれば良いと認められ、特に、粘度、作業性については、「25℃における粘度が、110KU未満」であれば、本件明細書の【0053】に「本実施形態に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、シンナーやアルコール等の有機溶剤(非反応性希釈剤)で希釈する溶剤型樹脂組成物、また、有機溶剤で希釈する必要が無い無溶剤型樹脂組成物のどちらとしても構わない。」と記載されているように、溶剤型でも無溶剤型でも構わないと解される。
そして、申立人Bは、本件発明で特定された粘度を有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であっても、吸油量が150ml/100g以上のシリカ粒子を用いた場合、又は、溶剤を含む場合に、本件発明の課題を解決することができないことを具体的証拠を示して立証してもいない。
したがって、申立人Bの上記主張を首肯することができない。
(5)小括
したがって、請求項1~13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由B2(サポート要件)は、理由がない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、請求項1~13に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、その他に、請求項1~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700387