特許異議申立
2023-700483
耐火構造
- 審判番号
- 2023-700483
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-101183
- 登録番号
- 7169320
- 請求日
- 2023年05月10日
- 審決日
- 2024年06月21日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ケイミュー株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人北斗特許事務所
- 【権利者】吉野石膏株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人北斗特許事務所
- 【異議申立人】小西 美奈子
- 審判長/審判官
- 審判長 有家 秀郎
- 審判官 立澤 正樹
- 審判官 土屋 真理子
- 分類
- P1651.121-YAA(E04B) / P1651.536-YAA(E04B) / P1651.537-YAA(E04B) / P1651.55 -YAA(E04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第36条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7169320号発明「耐火構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7169320号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
特許第7169320号の請求項2-4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
特許第7169320号の請求項1、5、6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7169320号(以下、「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成26年10月28日に出願された特願2014-219650号の一部を、令和2年6月10日に新たな特許出願としたものであり、令和4年11月1日にその特許権の設定登録がされ、同月10日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許について、令和5年5月10日に、特許異議申立人 小西 美奈子(以下、「申立人」という。)より、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、請求項1ないし6に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。
その後の経緯は、次のとおりである。
令和5年7月21日付け:取消理由通知書
同年9月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年11月17日 :申立人による意見書の提出
令和6年2月2日付け :取消理由通知書(決定の予告)
同年4月8日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、令和6年4月8日付けで訂正の請求がされたので、令和5年9月25日にされた先の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、申立人は、令和5年11月17日提出の意見書において、同年9月25日に行った訂正の請求により訂正された請求項1ないし6に係る発明について意見を述べているところ、上記令和6年4月8日に行った訂正の請求による特許請求の範囲の訂正は、令和5年9月25日に行った訂正の請求により訂正された請求項1ないし6と比較すると、実質的に、請求項2ないし4を削除した内容であり、上記令和6年4月8日に提出された訂正の請求による特許請求の範囲に係る訂正についても、既に申立人は実質的に意見を述べているということができるから、特許法第120条の5第5項ただし書に規定される「特別の事情があるとき」にあたることから、申立人に意見書を提出する機会を与える必要はないものである。
第2 訂正の適否
1 訂正請求の趣旨と訂正の内容
令和6年4月8日付け訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許第7169320号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の面材の屋内側に、前記第1の面材と間隔をあけて断熱材が設けられている、」と記載されているのを、「前記第1の面材の屋内側に、前記第1の面材と間隔をあけて断熱材が設けられており、前記断熱材は、前記柱と前記第1の面材との間の空間の内側と外側との両方に設けられている、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5、6も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1乃至4のいずれか一項に記載する耐火構造」と記載されているのを、「請求項1に記載の耐火構造」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1乃至5のいずれか一項に記載の耐火構造」と記載されているのを、「請求項1又は5に記載の耐火構造」に訂正する。
(7)一群の請求項
本件訂正前の請求項2~6は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~6に対応する本件訂正後の請求項1~6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、「前記断熱材は、前記柱と前記第1の面材との間の空間の内側と外側との両方に設けられている、」との発明特定事項を付加することにより、訂正前の請求項1の「断熱材」について、「前記柱と前記第1の面材との間の空間の内側と外側との両方に設けられている」ことを特定して限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加、特許請求の範囲の拡張・変更
本件特許に係る願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」といい、特許請求の範囲及び図面とあわせて「本件特許明細書等」という。)の段落【0104】に「尚、本実施形態では、第1の面材2の屋内側における、空間104の内側と外側との両方に断熱材105を設けられている」と記載され、段落【0102】には、「柱100と第1の面材2との間の空間104」と記載されている。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、本件特許の請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正(特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項に適合するもの)であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない(特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する)ものである。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、本件特許の請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正(特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項に適合するもの)であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない(特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する)ものである。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、本件特許の請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正(特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項に適合するもの)であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない(特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する)ものである。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的
訂正事項5は、訂正事項2ないし4により訂正前の請求項2ないし4を削除したことに対応して、訂正前の請求項5において、訂正前の請求項2ないし4を引用する選択肢を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明、並びに特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項5は、請求項2ないし4の引用を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(6)訂正事項6
ア 訂正の目的
訂正事項6は、訂正事項2ないし4により訂正前の請求項2ないし4を削除したことに対応して、訂正前の請求項6において、訂正前の請求項2ないし4を引用する選択肢を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明、並びに特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項6は、請求項2乃至4の引用を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
3 小括
本件において、訂正前の請求項1~6について特許異議の申立てがされているから、訂正後の請求項1~6に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書1号又は3号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条第9項で準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-6〕について、本件訂正を認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」という。)は、令和6年4月8日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
外壁と、前記外壁よりも屋内側に設けられた柱とを備える耐火構造であって、
前記外壁は、
所定の間隔をあけて左右に並んだ、垂直に長い複数の鉄骨と、
複数の前記鉄骨に沿って、前記鉄骨の屋外側に設けられた、耐火性能を有する面材と、
前記面材の屋外側に設けられた外壁材と、
を備え、
前記柱と前記面材との間の空間に臨む面を除く前記柱の外面が耐火被覆材で被覆されていると共に、
前記柱と前記面材との間の空間を塞ぐように耐火被覆材が設けられており、
前記耐火被覆材で塞がれた前記空間に位置する前記鉄骨に、前記外壁材を留め付ける留め具が固定され、
前記柱と前記鉄骨の屋外側に設けられた前記面材との間の空間に臨む面を除く前記柱の外面、及び前記柱と前記鉄骨の屋外側に設けられた前記面材との空間を塞ぐように前記耐火被覆材が連続して一体に設けられており、
前記面材は、前記鉄骨の屋外側に設けられた、正面視で長方形の第1の面材と、前記第1の面材の屋外側に設けられた正面視で長方形の第2の面材と、を備えており、
前記第1の面材の屋内側に、前記第1の面材と間隔をあけて断熱材が設けられており、
前記断熱材は、前記柱と前記第1の面材との間の空間の内側と外側との両方に設けられている、
耐火構造。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】 (削除)
【請求項5】
前記外壁は、出隅を構成する第1の外壁と前記第1の外壁と交差する方向に隣接する第2の外壁とを備え、
前記柱は、前記第1の外壁及び前記第2の外壁と対向し、
前記柱と前記第1の外壁における前記面材及び前記第2の外壁における前記面材との間の前記空間に臨む面を除く前記柱の外面が前記耐火被覆材で被覆されていると共に、
前記柱と前記第1の外壁における前記面材及び前記第2の外壁における前記面材と、の間の前記空間を塞ぐように前記耐火被覆材が設けられている、
請求項1に記載の耐火構造。
【請求項6】
前記面材と対向しておらず、且つ略垂直に位置する前記柱の面から、前記面材の裏面近傍に亘って、耐火被覆材保持手段が設けられ、
前記耐火被覆材保持手段に前記耐火被覆材が設けられている、
請求項1又は5に記載の耐火構造。」
第4 特許異議申立理由、及び、取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、後記する甲第1号証~甲第8号証を提出し、以下の申立理由1~5により、本件訂正前の請求項1~6に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
(1)申立理由1(進歩性)
本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2~7に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(実施可能要件)
本件特許の請求項1~6に係る発明についての特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(3)申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項5、6に係る発明についての特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(4)申立理由4(明確性)
本件特許の請求項1~6に係る発明についての特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(5)申立理由5(新規事項の追加)
本件特許の請求項1~6に係る発明についての特許は、下記の点で特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第1号に該当し、取り消すべきものである。
(6)証拠方法
ア 申立書に添付して提出された証拠
甲第1号証:認定番号 FP060CN-0418、新耐火防火構造・材料等便覧、国土交通省住宅局建築指導課 新耐火防火便覧編集委員会、2014年8月26日、1380-595~1380-606頁
甲第2号証:COMMERCIAL WALL、ニチハ株式会社、2012年12月、95~97、114頁
甲第3号証:認定番号 FP060NE-9140、新耐火防火構造・材料等便覧、国土交通省住宅局建築指導課 新耐火防火便覧編集委員会、2014年8月26日、1~9頁
甲第4号証:認定番号 FP060CN-9188、新耐火防火構造・材料等便覧、国土交通省住宅局建築指導課 新耐火防火便覧編集委員会、2014年8月26日、1~10頁
甲第5号証:認定番号 FP030NE-0097、新耐火防火構造・材料等便覧、国土交通省住宅局建築指導課 新耐火防火便覧編集委員会、2014年8月26日、468-1~468-12頁
甲第6号証:認定番号 QF060BE-9223、新耐火防火構造・材料等便覧、国土交通省住宅局建築指導課 新耐火防火便覧編集委員会、2014年8月26日、1~11頁
甲第7号証:特開2014-5724号公報
甲第8号証:特開2010-43445号公報
イ 令和5年11月17日提出の意見書に添付して提出された証拠
甲第9号証:特開2014-163112号公報
甲第10号証:特開2007-9607号公報
参考資料1:特開2003-171988号公報
参考資料2:特開2003-105895号公報
参考資料3:特開2006-257752号公報
参考資料4:特開2007-132102号公報
参考資料5:COMMERCIAL WALL,ニチハ株式会社,2012年12月,第124~127頁
参考資料6:木造外壁耐火システム タイガーモエンEX-B1 標準施工指導書,吉野石膏株式会社・ニチハ株式会社,平成25年1月、T039-1~T039-27
参考資料7:枠組壁工法 耐火建築物 設計・施工の手引,社団法人日本ツーバイフォー建築協会,2012年11月,設2-1-P31~設2-1-P34
(当審注:「設2」の「2」はギリシャ数字、以下同様)
2 令和6年2月2日付けで通知した取消理由通知(決定の予告)の概要
令和5年9月25日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された特許に対して、令和6年2月2日付け取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由の概略は下記のとおりである。
(1)令和5年9月25日付け訂正における請求項2
令和5年9月25日付け訂正における請求項2は、甲1発明、並びに甲2記載技術、甲3記載技術、甲5記載技術、甲7記載技術、参考資料5記載技術、及び参考資料7記載技術に示される周知技術1~4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)令和5年9月25日付け訂正における請求項3
令和5年9月25日付け訂正における請求項3は、甲1発明、甲3記載技術、並びに甲2記載技術、甲3記載技術、甲5記載技術、甲7記載技術、参考資料5記載技術、及び参考資料7記載技術に示される周知技術1~4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)令和5年9月25日付け訂正における請求項4
令和5年9月25日付け訂正における請求項4は、甲1発明、甲7記載技術、並びに甲2記載技術、甲3記載技術、甲5記載技術、甲7記載技術、参考資料5記載技術、及び参考資料7記載技術に示される周知技術1~4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)令和5年9月25日付け訂正における請求項5
令和5年9月25日付け訂正における請求項5は、甲1発明、甲4記載技術、並びに甲2記載技術、甲3記載技術、甲5記載技術、甲7記載技術、参考資料5記載技術、及び参考資料7記載技術に示される周知技術1~4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)令和5年9月25日付け訂正における請求項6
令和5年9月25日付け訂正における請求項6は、甲1発明、並びに甲2記載技術、甲3記載技術、甲5記載技術、甲7記載技術、参考資料5記載技術、及び参考資料7記載技術に 示される周知技術1~4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、令和5年9月25日付け訂正における請求項1、及び、請求項1を引用する請求項5、6に係る発明について、上記取消理由通知書(決定の予告)では、取消理由を通知していない。
第5 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由に関する当審の判断
本件訂正により訂正された請求項1は、令和5年9月25日付け訂正における請求項1と同一である。
そして、本件訂正により、令和5年9月25日付け訂正により訂正された訂正前の請求項2ないし4は削除された。
また、本件訂正により、訂正前の請求項2ないし4が削除されたことにより、本件訂正により訂正された請求項5及び6は、令和5年9月25日付け訂正における請求項5及び6が請求項1のみを引用する形式に訂正されたものである。
そのため、本件訂正により、訂正前の請求項2~4に係る発明は削除されたため、当審が上記取消理由通知書(決定の予告)で通知した請求項2~4に対する取消理由は、対象とする請求項が存在しないものとなった。
また、令和5年9月25日付け訂正における請求項1、及び、請求項1を引用する請求項5、6は、取消理由通知書(決定の予告)で取消理由を通知していないから、本件訂正後の請求項1、5及び6には、取消理由通知書(決定の予告)で取消理由を通知していない。
第6 取消理由通知書において採用しなかった特許異議申立理由に関する当審の判断
本件訂正後の本件発明1、5及び6に係る特許について、特許異議申立理由によって、取り消されるべきか否かを判断する。
1 申立理由1(進歩性)について
(1)各証拠について
ア 甲第1号証
(ア) 甲第1号証の記載
甲第1号証には、以下の記載がある(下線は当審で付加した。以下同様。)。
a 1380-595頁1行
「認定区分 防耐火構造 耐火構造 柱<60分>」
b 1380-596頁~1380-597頁 表2「外壁」欄
「・・・・
構成:外装材[1]、外装下地材[2]及び[3]下地材
・・・・
[2]せっこうボード(JIS A 6901)
・・・・
[3]下地材
材料:一般構造用軽量形鋼(JIS G 3350)
・・・・」
c 1380-597頁 表2「被覆材」欄
「材料:吹付けロックウール(国土交通大臣認定不燃材料:NM-8601)
・・・・」
d 1380-598頁 表3
「ラス」欄「材料:メタルラス(JIS A 5505)
・・・・」
e 1380-600頁 図1
「
[図:0001414161000001.jpg]
」
f 1380-601頁 図2 「
[図:0001414161000002.jpg]
」
g 1380-602頁 図3 「
[図:0001414161000003.jpg]
」
h 1380-603頁 図4「
[図:0001414161000004.jpg]
」
i 1380-604頁 図5「
[図:0001414161000005.jpg]
」
(イ)図面から看取できる事項
a 前記(ア)e~iの図1~5から次のことが看取できる。
「外装材、外装下地材、及び下地材よりも屋内側に柱が設けられ、
下地材は断面C形であり、
垂直に長い下地材に沿って、下地材の屋外側に外装下地材が設けられ、
外装下地材の屋外側に外装材が設けられ、
柱と外装下地材との間の空間に臨む面を除く柱の外面が被覆材で被覆されていると共に、
柱と外装下地材との間の空間を塞ぐように被覆材が設けられており、
被覆材で塞がれた空間に位置する下地材に、留付材(外装材固定用)が固定され、
柱と下地材の屋外側に設けられた外装下地材との間の空間に臨む面を除く柱の外面、及び柱と下地材の屋外側に設けられた外装下地材との空間を塞ぐように被覆材が連続して一体に設けられ、
外装下地材と対向しておらず、且つ略垂直に位置する柱の面から、外装下地材の裏面近傍に亘って、ラスが設けられ、
ラスに被覆材が設けられていること。」
b 前記(ア)iの図5から次のことが看取できる。
「留付材(外装材固定用)によって下地材に固定される部材が、外装材の上辺及び下辺に接続すること」
(ウ) 甲1発明
上記ア及びイより、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「外装材、外装下地材、及び下地材を備えた外壁と、外壁よりも屋内側に設けられた柱と、被覆材とを備えた耐火構造であって、
外装下地材はせっこうボードであり、
下地材は一般構造用軽量形鋼のC形鋼であり、
被覆材は吹き付けロックウール(国土交通大臣認定不燃材料:NM-8601)であり、
垂直に長い下地材に沿って、下地材の屋外側に外装下地材が設けられ、
外装下地材の屋外側に外装材が設けられ、
柱と外装下地材との間の空間に臨む面を除く柱の外面が被覆材で被覆されていると共に、
柱と外装下地材との間の空間を塞ぐように被覆材が設けられており、
被覆材で塞がれた空間に位置する下地材に、留付材(外装材固定用)が固定され、
留付材(外装材固定用)によって下地材に固定される部材が、外装材の上辺及び下辺に接続し、
柱と下地材の屋外側に設けられた外装下地材との間の空間に臨む面を除く柱の外面、及び柱と下地材の屋外側に設けられた外装下地材との空間を塞ぐように被覆材が連続して一体に設けられ、
外装下地材と対向しておらず、且つ略垂直に位置する柱の面から、外装下地材の裏面近傍に亘って、ラスが設けられ、
ラスに被覆材が設けられている、
耐火構造。」
イ 甲第2号証
(ア) 甲第2号証の記載
甲第2号証には、以下の記載がある。
a 97頁1~9行
「■柱1時間耐火構造 FP060CN-0449 主要構成部材
外装材:風光・モエンエクセラード(18・16mm)〔通気留付金具〕
防水紙:透湿防水シート
屋外側被覆材:強化せっこうボード(厚さ15mm以上)
胴縁材:鉄骨胴縁(C形鋼)
断熱材:グラスウール16K厚さ50mm以上 又は ロックウール20K厚さ50mm以上
屋内側被覆材:強化せっこうボード(厚さ15mm以上)/2重張り
鉄骨柱と外壁の間:力骨φ9mm @300mm~340mm メタルラス
鉄骨柱:H形鋼 H-250×125×6×9mm以上」
b 97頁 中段図「
[図:0001414161000006.jpg]
」
(イ) 図面から看取できる事項
前記(ア)bの図から次のことが看取できる。
「所定の間隔をあけて左右に並んだ複数の柱被覆受け材と、
複数の柱被覆受け材に沿って、柱被覆受け材の屋外側に設けられた、強化せっこうボードとを備えた外壁の構造において、
柱被覆受け材のC形の開口部に指定断熱材が挿入され、複数の柱被覆受け材間に指定断熱材が支持されることで、強化せっこうボードの屋内側に、強化せっこうボードと間隔をあけて指定断熱材が設けられること。」
(ウ) 甲2記載技術
上記(ア)及び(イ)より、甲第2号証には、次の技術(以下「甲2記載技術」という。)が記載されていると認められる。
<甲2記載技術>
「所定の間隔をあけて左右に並んだ複数の柱被覆受け材と、
複数の柱被覆受け材に沿って、柱被覆受け材の屋外側に設けられた、強化せっこうボードとを備えた外壁の構造において、
柱被覆受け材は、鉄骨胴縁(C形鋼)であり、
柱被覆受け材のC形の開口部に指定断熱材が挿入され、複数の柱被覆受け材間に指定断熱材が支持されることで、強化せっこうボードの屋内側に、強化せっこうボードと間隔をあけて指定断熱材が設けられること。」
ウ 甲第3号証
(ア) 甲第3号証の記載
甲第3号証には、以下の記載がある。
a 1頁1行
「認定区分 防耐火構造 耐火構造 外壁(非耐力壁)<60分>」
b 6頁1行~7頁
「・構成
・・・・
○2(当審注:○付き数字を示す。) せっこうボード(強化せっこうボード)
・・・・」
c 8頁19行~22行
「3. 基準墨出し線上に強化せっこうボードを合わせて、タッピンねじ(φ×35mm)、ピッチ300m以下で固定する。
4. 引き続き、既施工の強化せっこうボードに上貼り用のせっこうボードの墨出しを行い、ステープル(止めピッチ200mm以下)にて接合固定する。」
d 2頁 見取図「
[図:0001414161000007.jpg]
」
(イ) 図面から看取できる事項
a 前記(ア)dの図から次のことが看取できる。
「下張り強化せっこうボード及び上張り強化せっこうボードは、正面視で長方形であること。」
b 前記(ア)cの記載を踏まえると、前記(ア)dの図から次のことが看取できる。
「強化せっこうボードは、下張り強化せっこうボードと、下張り強化せっこうボードに接合固定された上張り強化せっこうボードとからなること。」
(ウ) 甲3記載技術
上記(ア)及び(イ)より、甲第3号証には、次の技術(以下「甲3記載技術」という。)が記載されていると認められる。
<甲3記載技術>
「強化せっこうボードを備えた外壁の耐火構造において、
強化せっこうボードは、下張り強化せっこうボードと、下張り強化せっこうボードに接合固定された上張り強化せっこうボードとからなり、
下張り強化せっこうボード及び上張り強化せっこうボードは、正面視で長方形であること。」
エ 甲第4号証
(ア) 甲第4号証の記載
甲第4号証には、以下の記載がある。
a 1頁1行「認定区分 防耐火構造 耐火構造 柱<60分>」
b 5頁 柱出隅部水平断面詳細図「
[図:0001414161000008.jpg]
」
c 7頁1~3行
「4.材料等説明
4-1 主構成材料
1)外壁パネル:ダイワTP-60(外壁1時間耐火Wn1051)」
d 7頁 外壁パネル水平断面図「
[図:0001414161000009.jpg]
」
(イ) 図面から看取できる事項
前記(ア)c及びdを踏まえると、前記(ア)bの図から次のことが看取できる。
「外壁は、出隅を構成する第1の外壁パネルと、第1の外壁パネルと交差する方向に隣接する第2の外壁パネルとを備え、
鉄骨柱は、第1の外壁パネル及び第2の外壁パネルと対向し、
鉄骨柱と第1の外壁パネル及び第2の外壁パネルとの間の領域に臨む面を除く鉄骨柱の外面が吹付けロックウールで被覆されていると共に、
鉄骨柱と第1の外壁パネル及び第2の外壁パネルとの間の領域を塞ぐように吹付けロックウールが設けられていること。」
(ウ) 甲4記載技術
上記(ア)及び(イ)より、甲第4号証には、次の技術(以下「甲4記載技術」という。)が記載されていると認められる。
<甲4記載技術>
「柱出隅部の耐火構造において、
外壁は、出隅を構成する第1の外壁パネルと、第1の外壁パネルと交差する方向に隣接する第2の外壁パネルとを備え、
鉄骨柱は、第1の外壁パネル及び第2の外壁パネルと対向し、
鉄骨柱と第1の外壁パネル及び第2の外壁パネルとの間の領域に臨む面を除く鉄骨柱の外面が吹付けロックウールで被覆されていると共に、
鉄骨柱と第1の外壁パネル及び第2の外壁パネルとの間の領域を塞ぐように吹付けロックウールが設けられていること。」
オ 甲第5号証
(ア) 甲第5号証の記載
甲第5号証には、以下の記載がある。
a 468-1頁1行
「認定区分 防耐火構造 耐火構造 外壁(非耐力壁)<30分>」
b 468-10頁4~11行
「(1)下地鉄骨(胴縁)の取り付け
・胴縁は、□(当審注:本文では、「□」の右辺の中央部が連続せず、「C」状の記号。)-100×50×20×2.3mm以上の一般構造用軽量形鋼を使用し、不陸がないように梁、耐風梁へ取り付ける。
・・・・
(2)屋外側被覆材の張付け
・せっこうボード又は強化せっこうボード厚さ12.5mm以上をドリリングタッピンねじで胴縁に張り付ける。」
c 468-11頁8~9行
「(6)断熱材の充てん
・胴縁の間にグラスウール又はロックウールを充てんし、ステープルを用いて留付ける。」
d 468-6頁 図1「
[図:0001414161000010.jpg]
」
e 468-12頁 水平断面図「
[図:0001414161000011.jpg]
」
(イ) 図面から看取できる事項
前記(ア)d及びeの図から次のことが看取できる。
「所定の間隔をあけて左右に並んだ複数の胴縁と、
複数の胴縁に沿って、胴縁の屋外側に設けられた、屋外側被覆材とを備えた外壁の構造において、
胴縁はC形鋼であり、
胴縁のC形の開口部に断熱材が挿入され、複数の胴縁間に断熱材が支持されることで、屋外側被覆材の屋内側に、屋内側被覆材と間隔をあけて断熱材が設けられること。」
(ウ) 甲5記載技術
上記(ア)及び(イ)より、甲第5号証には、次の技術(以下「甲5記載技術」という。)が記載されていると認められる。
<甲5記載技術>
「所定の間隔をあけて左右に並んだ複数の胴縁と 複数の胴縁に沿って、胴縁の屋外側に設けられた、屋外側被覆材とを備えた外壁の構造において、
屋外側被覆材はせっこうボード又は強化せっこうボードであり、
胴縁はC形鋼の下地鉄骨であり、
胴縁のC形の開口部に断熱材が挿入され、複数の胴縁間に断熱材が支持されることで、屋外側被覆材の屋内側に、屋内側被覆材と間隔をあけて断熱材が設けられること。」
カ 甲第6号証
(ア)甲第6号証の記載
甲第6号証には、以下の記載がある。
a 1頁1行~2行
「認定区分 防耐火構造 木造3階建て共同住宅等の構造(1時間準耐火構造) 外壁(耐力壁)<60分>」
b 2頁 透視図「
[図:0001414161000012.jpg]
」
c 3頁 木造下地(枠組壁工法・木質系組立構造)「
[図:0001414161000013.jpg]
」
(イ) 図面から看取できる事項
前記(ア)b及びcの図から次のことが看取できる。
「木造のたて枠の屋外側に設けられた、正面視で長方形の構造用合板と、
前記構造用合板の屋外側に設けられた正面視で長方形のせっこうボード厚9.5mmと、が設けられること。」
(ウ) 甲6記載技術
上記(ア)及び(イ)より、甲第6号証には、次の技術(以下「甲6記載技術」という。)が記載されていると認められる。
<甲6記載技術>
「木造のたて枠の屋外側に設けられた、正面視で長方形の構造用合板と、
前記構造用合板の屋外側に設けられた正面視で長方形のせっこうボード厚9.5mmと、が設けられること。」
キ 甲第7号証
(ア) 甲第7号証の記載
甲第7号証には、以下の記載がある。
a 「【0001】
本発明は、外装用壁構造に関し、詳細には、倉庫、工場、事務所などの鋼構造の建屋にて用いられる外装用壁構造に関する。」
b 「【0018】
外装用壁構造本体10は、強化せっこうボード(下張材)11と、強化せっこうボード11の外側の面11aに接触して配置されたけい酸カルシウム板(上張材)12と、けい酸カルシウム板12の外側の面12aに接触して配置された角波鉄板(外装材)13とを備える。強化せっこうボード11の外側の面11aとけい酸カルシウム板12の内側の面12bとが接触している。けい酸カルシウム 板12の外側の面12aと角波鉄板13の内側の面13bとが接触している。強化せっこうボード11は下張材固定用留付材21により横胴縁5に固定される。けい酸カルシウム板12は上張材固定用留付材22により横胴縁5に固定される。角波鉄板13は外装材固定用留付材23により横胴縁5に固定される。横胴縁5は、ボルト6、ナット7およびワッシャ8によりL字プレート4に固定される。L字プレート4は柱2および間柱3に固定される。
なお、外側の面は簡易構造の建屋1の外側に向いた面であり、内側の面は簡易構造の建屋1の内側に向いた面である。」
c 「【0022】
けい酸カルシウム板12および強化せっこうボード11は、耐火構造用の材料として共に広く使用されている材料である。強化せっこうボード11は、その主要構成物質である二水せっこうが多くの結晶水を有していること、および結晶水が比較的低温(約60℃~150℃)で脱水反応を生じることから、強化せっこうボード11を用いた壁体が火災などにより加熱を受けた際に、壁体の温度上昇が抑制される。これに対し、けい酸カルシウム板12は、その主要構成物質であるけい酸カルシウム水和物(主としてトバモライト)の1分子当たりの結晶水が二水せっこうよりも少ないこと、および結晶水が比較的高温(約105℃~780℃)で脱水反応を生じることから、けい酸カルシウム板12を用いた壁体が屋外で発生した火災により加熱を受けた際に、室内側の温度上昇を抑制するという点では強化せっこうボード11の方が有効である。しかし、強化せっこうボード11において二水せっこうの結晶水が脱水すると、せっこうの結合力が失われ、強化せっこうボード11の保形性が低下して壁体が変形し易くなるので、火災側の火炎が壁体で区切られたもう一方の側に通り抜けやすくなるという問題がある。これに対し、けい酸カルシウム板12は強化せっこうボード11よりも火災等により加熱を受けた際の保形性がはるかに高いので、火災発生時に長時間壁体を維持し、火炎の通り抜けを防ぐという点で有効である。よって、外装材である角波鉄板13の下張材としては、けい酸カルシウム板12と強化せっこうボード11とを併用するのが良い。この場合、けい酸カルシウム板12がアルカリ性の材料であり、強化せっこうボード11が弱酸性の材料であることを考慮すれば、下張材のうち角波鉄板13と直接接する側にはけい酸カルシウム板12を配置するのが良い。
【0023】
したがって、本実施形態に係る外装用壁構造によれば、比較的簡易な構造でありながらも、優れた耐火性能を有することができる。」
d 【図1】「
[図:0001414161000014.jpg]
」
(イ) 図面から看取できる事項
前記(ア)bの記載を踏まえると、前記(ア)dの図から次のことが看取できる。
「強化せっこうボード(下張材)11及びけい酸カルシウム板(上張材)12は、正面視で長方形であること。」
(ウ) 甲7記載技術
上記(ア)及び(イ)より、甲第7号証には、次の技術(以下、「甲7記載技術」という。)が記載されていると認められる。
<甲7記載技術>
「耐火性能を有する外装用壁構造本体10において、 外装用壁構造本体10は、強化せっこうボード(下張材)11と、強化せっこうボード11の外側の面11aに接触して配置されたけい酸カルシウム板(上張材)12と、を備え、
強化せっこうボード(下張材)11及びけい酸カルシウム板(上張材)12は、正面視で長方形であること。」
ク 甲第8号証
(ア) 甲第8号証の記載
甲第8号証には、以下の記載がある。
a 「【0017】
また、図1に示す如く、これら構造躯体2及び外壁3に沿って、居室の壁面8a及び天井面8bを形成する内装構造8が設けられ、これら構造躯体2及び外壁3と内装構造8の間に沿外壁断熱材9が設けられている。ここで、内装構造8の壁面8aは、外壁3に所定の間隔を空けて対向する位置で格子状に組み立てられ下地部材に、壁面8aを構成する壁板が隙間なく敷設されて形成されている。
【0018】
また、本実施形態の建物は、躯体を耐火構造とすべきと法令に定められている地域に建設されており、かかる要請に対応すべく、構造躯体2を形成する鉄骨柱4に本発明に係る耐火被覆構造が設けられている。
【0019】
図2は、上記建物の隅部に位置する鉄骨柱4に耐火被覆構造を設けた構成を示しており、該耐火被覆構造は、不燃性の外壁3及びコーナーパネル7に対向して設けられる鉄骨柱4周りに設けられており、該鉄骨柱4の外周のうち前記外壁3に対向しない剥出部4Aを覆う熱膨張性の耐火被覆シート層10と、耐火被覆シート層10の表面を覆う金属膜の気密層11と、鉄骨柱4の剥出部4Aと耐火被覆シート層10の間に設けられるフェノール樹脂発泡体を主材とする可燃性の断熱層12とを備えていると共に、鉄骨柱4の剥出部4Aと断熱層12との間に設けられる下地材13と、気密層11を覆う仕上材14とを備えている。」
b 「【0028】
また、該外壁3及びコーナーパネル材7と鉄骨柱4の間には、薄板状の断熱部16が設けられている。
該断熱部16は、上記断熱層12の断熱部材と同様に、フェノール樹脂発泡体を薄板状に形成したものが用いられており、鉄骨柱4と一方の外壁3及びコーナーパネル部材7の一方の片の間に設けられる一方の断熱部材と、鉄骨柱4と他方の外壁3及びコーナーパネル部材7の他方の片の間に設けられる他方の断熱部材とを備えている。各断熱部材は、一方の端部が下地材13の各下地板13a、13bに突き付けられると共に、他方の端部を互いに突き付けた状態で設けられており、これによって、該下地材13を介して断熱層12に対向している。
なお、断熱部16の各断熱部材は、厚さを7mm~25mmの範囲で設定されたものを用いることが好ましく、本実施形態においては厚さを7mmとしたものを採用している。」
c 【図2】 「
[図:0001414161000015.jpg]
」
ケ 甲第9号証
(ア) 甲第9号証の記載
甲第9号証には、以下の記載がある。
a「【0031】
鉄骨柱1の一方の側部には、内装材としての耐火面材2が配設されて、内壁を構成している。また、鉄骨柱1の他方の側部には、外装材としての外壁材4が配設されて、外壁を構成している。
【0032】
外壁材4の屋内側には、外壁下地材5が外壁材4に一体に設けられている。また、外壁材4の屋内側の面(裏面)には、外壁下地材5の内側を充填するように、無機繊維系断熱材61が添設されている。無機繊維系断熱材61には、グラスウール材又はロックウール材等の軟質耐火材を用いることができる。
【0033】
鉄骨柱1には、両フランジ12の外側面、およびウェブ14の一側面に沿うように、耐火被覆材7が添設されている。例示の形態では、一枚の耐火被覆材7が、鉄骨柱1の一方のフランジ12の外側面と、ウェブ14の屋内側の側面と、他方のフランジ12の外側面とに沿って、これらの側面を取り囲むようにして巻き付けられている。耐火被覆材7は鉄骨柱1の各側面において、固定ピン9を溶接することで固定されている。
【0034】
また、この耐火被覆材7の両端辺縁部は、外壁材4の屋内側の無機繊維系断熱材61に接続させて配設されている。これにより、鉄骨柱1の被覆層16が形成されている。
【0035】
すなわち、鉄骨柱1の被覆層16は、ウェブ14の屋内側の側面から両フランジ12の 外側面に連続し、外壁下地材5の内側まで延設されている。したがって、鉄骨柱1の外周部は、かかる被覆層16および無機繊維系断熱材61により一体的に覆われて、耐火性能 が確保されている。
b「【0042】
鉄骨柱1のウェブ14の屋外側の側面と、両フランジ12との間には、グラスウール材又はロックウール材等の無機繊維系断熱材62が充填されている。これによって、鉄骨柱1に対する断熱補強がなされている。
【0043】
この無機繊維系断熱材62は、一定の強度を有し、鉄骨柱1への火炎による影響を抑えるので、鉄骨柱1のウェブ14に沿って、外壁側の側面を充填するように配設されることで、必要な耐火性能を具備させることができる。無機繊維系断熱材62としては、グラスウール成形板、ロックウール成形板、グラスウールブランケット、又はロックウールブランケット等を好適に用いることができる。なお、外壁材4による遮熱性や遮炎性が高い場合には、無機繊維系断熱材62を省略することができる。
【0044】
耐火面材2の屋外側の面には、内装下地材3が耐火面材2に一体に固定されている。この内装下地材3の屋外側であって、鉄骨柱1の被覆層16の外側には、耐火面材2と略平行に、無機繊維系断熱材63が配設されている。これにより、壁体内部において、この無機繊維系断熱材63と、鉄骨柱1のウェブ14の無機繊維系断熱材62とで、断熱ラインが連続されて一定の断熱性を確保し、耐火性能を向上させている。」
c「【0065】
以上のような建物壁部の耐火構造によれば、鉄骨柱1が内部に配設された壁部に対して必要な耐火性能を、簡単な作業で容易に備えさせることができる。すなわち、上述のように、鉄骨柱1の屋外側にあっては、鉄骨柱1のウェブ14に無機繊維系断熱材62を充填し、外壁材4を取り付けるだけで耐火被覆工事を完了させることができる。鉄骨柱1の屋内側にあっては、鉄骨柱1に耐火被覆材7を取り付け、内装下地材3を配設し、耐火面材2を押し当てて固定するだけで、耐火被覆工事を完了させることができる。このとき、鉄骨柱1に耐火被覆材7を取り付ける作業だけで、鉄骨柱1の屋内側のフランジ端部121の被覆処理を終えることができる。したがって、極めて簡単な作業で効率よく短時間に耐火被覆工事を完了させることができ、必要な耐火性能を備えた建物壁部を形成することができる。」
d 【図1】「
[図:0001414161000016.jpg]
」
e 【図2】 「
[図:0001414161000017.jpg]
」
(イ) 甲9記載技術
前記アより、甲第9号証には、次の技術が(以下、「甲9記載技術」という。)が記載されていると認められる。
<甲9記載技術>
「鉄骨柱1の側部には、外装材としての外壁材4が配設されて、外壁を構成し、
外壁材4の屋内側には、外壁下地材5が外壁材4に一体に設けられ、外壁材4の屋内側の面(裏面)には、外壁下地材5の内側を充填するように、無機繊維系断熱材61が添設され、
鉄骨柱1には、両フランジ12の外側面、およびウェブ14の一側面に沿うように、耐火被覆材7が添設され、
この耐火被覆材7の両端辺縁部は、外壁材4の屋内側の無機繊維系断熱材61に接続させて配設され、これにより、鉄骨柱1の被覆層16が形成され、
鉄骨柱1のウェブ14の屋外側の側面と、両フランジ12との間には、グラスウール材又はロックウール材等の無機繊維系断熱材62が充填され、
鉄骨柱1の被覆層16の外側には、耐火面材2と略平行に、無機繊維系断熱材63が配設されていること。」
コ 甲第10号証
(ア) 甲第10号証の記載
甲第10号証には、以下の記載がある。
a 「【0042】
梁11のウエブ11cの屋外側の面に沿って且つ上下フランジ11a,11bの間に断熱材15が設けられている。この断熱材15の梁11に対する取付構造は何ら限定するものではなく、上下フランジ11a,11bの間から離脱することのないように取り付けられていれば良い。」
b 【図2】「
[図:0001414161000018.jpg]
」
サ 参考資料1
(ア)参考資料1の記載
参考資料1には、以下の記載がある。
a「【0032】(10)外装材11を下地として、タイル張りまたは吹き付けを行う場合の施工。タイル張りまたは吹き付けを行う場合は、不燃材料又は、外装材を下地材として不燃材料の大臣認定を受けた材料を用いる。
(11)第1耐火被覆材(下張り、せっこう板等)3aの取付け。たて枠1が第1耐火被覆材3aの縦方向の継ぎ目となるように配置する。第1耐火被覆材3aと、たて枠1、上枠、下枠2とをタッピンねじ等のファスナー5にて接合する。
【0033】(12)第2耐火被覆材(上張り、せっこう板等)3bの取付け。第1耐火被覆材3aと目地が重ならないようにして、第2耐火被覆材3bを張る。第2耐火被覆材3bと、たて枠1、上枠、下枠2とをタッピンねじにて接合する。第2耐火被覆材(上張り)3bの目地部分は、まず、ジョイント用テープ31を張り、その上に目地処理材32を平滑に塗布する。(13)耐火被覆材3の表面処理。目地処理終了後、ペイント、壁紙等防火上支障のない材料で仕上げる。」
b 図6「
[図:0001414161000019.jpg]
」
(イ)図面から看取できる事項
前記(ア)bの図から次のことが看取できる。
「第1耐火被覆材3aと、第2耐火被覆材3bとを張る際、目地が重ならないようにし、異なるたて枠1にファスナー5で接合すること。」
シ 参考資料2
(ア)参考資料2の記載
参考資料2には、以下の記載がある。
a「【0016】上記の耐火性面材8,8はそれぞれ、例えば、12.5mm厚の下張りの通常石膏ボード8aと、同じく12.5mm厚の上張りの強化石膏ボード8bとを重ね合わせたものからなっていて、この耐火性面材8,8のみでは、この面材を通じて内部の形鋼柱4,4に過剰な熱が伝わることがあり、壁としての耐火性能が充分には確保されない。」
b「【0032】以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で、各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、耐火性能が壁の両面において求められる場合の構造を示しているが、一方の面にのみ耐火性能が求められる場合には、荷重支持材の温度上昇を抑える耐火層をその一方の側の耐火性面材の側にのみ介設するようにしてもよい。また、本発明の壁は、屋内と屋外を仕切る壁であってもよいし、屋内の室と室とを仕切る壁であってもよいし、その他の壁であってもよいし、特に制限はない。また、上記実施形態では、壁の内部に備えられる荷重支持材が柱である場合を示しているが、荷重を支えるものであればよく、その他の縦材や、また横材、斜め材などであってもよい。また、上記のように、荷重支持材が鋼などの金属からなる場合には耐火面で非常に有効的な構造であるが、荷重支持材は、金属に限らず、木材などの他の材質のものからなっていてもよい。また、耐火層は、荷重支持材を含む広い範囲にわたって入れられていてもよい。また、上記の実施形態では、耐火層10を形成する耐火材としてロックウールを用いた場合を示しているが、その他の耐火材が用いられてもよい。耐火性の面材についても、石膏ボードのほか、窯業系面材など、各種耐火性面材が用いられてよい。また、上記の実施形態で用いられている留め金具11は、クリップ部12と差込み部13とが直角に向けられているが、差込み部に対するクリップ部12の向きは、荷重支持材の側の留付け部分との関係で適当に決められてよい。また、留め金具に備えられる取付け部は、クリップ式のものに限られるものではなく、荷重支持材が木材からなる場合には、ビスや釘などで荷重支持材に取り付けることができるような取付け部であってもよい。更に、留め金具の差込み板部における強度劣弱部の熱伝導通路面積を小さくする手段として、その部分の肉厚を全体として薄したものなどであってもよく、要は、先端側から基端側への熱伝導通路面積が小さくなるように形成されているものであればよい。また、この強度劣弱部は、差込み板部を折り曲げやすくするだけのものであってもよい。」
c 図2「
[図:0001414161000020.jpg]
」
(イ)図面から看取できる事項
前記(ア)cの図から次のことが看取できる。
「下張りの通常石膏ボード8a、上張りの強化石膏ボード8bの継ぎ目の位置が異なること。」
ス 参考資料3
(ア)参考資料3の記載
参考資料3には、以下の記載がある。
a 図8「
[図:0001414161000021.jpg]
」
(イ)図面から看取できる事項
前記(ア)aの図から次のことが看取できる。
「外側耐火面材4は、平面視において、その長辺が、内側耐火面材2の長辺と直交するように配置され、
短辺方向に隣り合う外側耐火面材4の長辺どうしの継目T3は、内側耐火面材2どうしの継目T1、T2と位置が一致しないようにして配置されていること。」
セ 参考資料4
(ア)参考資料4の記載
参考資料4には、以下の記載がある。
a「【0027】
図2に示すように、断熱耐火サンドイッチパネル1は、長尺状の金属材からなる表面材2と裏面材3との間に、表面側有機断熱ボード層4、無機ボード層5、裏面側有機断熱ボード層6の3つの層のうち、少なくとも無機ボード層5を含む2層を積層接着している。」
b「【0030】
図2(a)~(d)に示すように、表面側および裏面側有機断熱ボード層4、6と無機ボード層5の3層で構成される場合は、1層目と3層目の継ぎ目Cにおいても同様のずらし量を確保して配列する方が好適である。長手方向の継ぎ目Cが一致しないように積層することにより、加熱時に発生した加熱生成ガスや火炎等が継ぎ目部分に集中することがなく、JIS-A-1304の耐火構造1時間の試験に合格し得る。すなわち、加熱時に発生した加熱生成ガスや火炎等が分散されて、耐火性能を大幅にアップさせることができる。」
c 図2「
[図:0001414161000022.jpg]
」
(イ)図面から看取できる事項
前記(ア)cの図から次のことが看取される。
「表面側有機断熱ボード層4、無機ボード層5、裏面側有機断熱ボード層6の3つの層を積層接着する際、各層の継ぎ目Cをずらして形成すること。」
ソ 参考資料5
(ア) 参考資料5の記載
参考資料5には、以下の記載がある。(図中の書き込みは申立人が付したものである。以下同様。)
a 124頁1~5行
「タイガーモエンEX-B1 設計・施工の概要
ニチハ「モエンエクセラード」と吉野石膏「タイガーボード」を組み合わせて、木造枠組(ツーバイフォー)外壁1時間耐火構造が実現しました。」
b 125頁 水平断面図「
[図:0001414161000023.jpg]
c 125頁 下段の表「
[図:0001414161000024.jpg]
」
d 126頁 基本構成図・下地組図「
[図:0001414161000025.jpg]
」
(イ)図面から看取できる事項
a 前記(ア)bの図から次のことが看取できる。
「所定の間隔をあけて左右に並んだ複数のたて枠材が設けられ、
タイガーボード・タイプZ-WR21mm厚が、複数のたて枠材に沿って、たて枠材の屋外側に2層設けられ、
内側のタイガーボード・タイプZ-WR21mm厚の2つの縦辺は、たて枠材の屋外側にあり、
外側のタイガーボード・タイプZ-WR21mm厚の2つの縦辺は、内側のタイガーボード・タイプZ-WR21mm厚の縦辺が位置するたて枠材とは異なるたて枠材の屋外側にあること。」
b 前記(ア)bの図を踏まえると、前記(ア)dの図に示される「V21TBZ/WR:2枚張り」は、内側及び外側の「タイガーボード・タイプZ-WR21mm厚」を意味するものと認められるから、前記(ア)dの図から次のことが看取できる。
「外側のタイガーボード・タイプZ-WR21mm厚(V21TBZ/WR)の2つの横辺と、内側のタイガーボード・タイプZ-WR21mm厚(V21TBZ/WR)の2つの横辺とは、上下方向にずれていること。」
c 前記(ア)cから、「モエンエクセラード」は「大きさ455×1820、3030mm」であり、「タイガーボード・タイプZ-WR」は「大きさ606×1820mm」であるものと認められるから、前記(ア)dの図から次のことが看取できる。
「モエンエクセラードは、正面視で長方形であり、
内側及び外側のタイガーボード・タイプZ-WR21mm厚(V21TBZ/WR)は正面視で長方形であり、
横長方向に施工されるモエンエクセラードの2つの長辺は、屋内側のタイガーボード・タイプZ-WR21mm厚(V21TBZ/WR)の2つの横辺及び屋外側のタイガーボード・タイプZ-WR21mm厚(V21TBZ/WR)の2つの横辺と厚み方向で重ならないこと。」
(ウ)参考資料5記載技術
上記(ア)及び(イ)より、参考資料5には、次の技術(以下「参考資料5記載技術」という。)が記載されていると認められる。
<参考資料5記載技術>
「外壁の耐火構造において、
所定の間隔をあけて左右に並んだ複数のたて枠材が設けられ、
タイガーボード・タイプZ-WR21mm厚が、複数のたて枠材に沿って、たて枠材の屋外側に2層設けられ、
内側のタイガーボード・タイプZ-WR21mm厚の2つの縦辺は、たて枠材の屋外側にあり、
外側のタイガーボード・タイプZ-WR21mm厚の2つの縦辺は、内側のタイガーボード・タイプZ-WR21mm厚の縦辺が位置するたて枠材とは異なるたて枠材の屋外側にあり、
外側のタイガーボード・タイプZ-WR21mm厚(V21TBZ/WR)の2つの横辺と、内側のタイガーボード・タイプZ-WR21mm厚(V21TBZ/WR)の2つの横辺とは、上下方向にずれており、
モエンエクセラードは、正面視で長方形であり、
内側及び外側のタイガーボード・タイプZ-WR21mm厚(V21TBZ/WR)は正面視で長方形であり、
横長方向に施工されるモエンエクセラードの2つの長辺は、屋内側のタイガーボード・タイプZ-WR21mm厚(V21TBZ/WR)の2つの横辺及び屋外側のタイガーボード・タイプZ-WR21mm厚(V21TBZ/WR)の2つの横辺と厚み方向で重ならないこと。」
タ 参考資料6
(ア)参考資料6の記載
参考資料6には、以下の記載がある。
a T-039-26 垂直断面図「
[図:0001414161000026.jpg]
」
(イ)図面から看取できる事項
前記(ア)aの図から次のことが看取される。
「屋外側の16mmモエンエクセラードと21mmTBZ-WRを設ける際、下端に若干のずれがあること。」
チ 参考資料7
(ア) 参考資料7の記載
参考資料7には、以下の記載がある。
a 設2-1-P31最上段の見出し
「設2-1. 外壁耐力壁(1時間耐火構造)」
b 設2-1-P31概略図「
[図:0001414161000027.jpg]
」
(イ) 図面から看取できる事項
前記(ア)bの図から次のことが看取できる。
「所定の間隔をあけて左右に並んだ複数のたて枠が設けられ、
上張り両面薬剤処理ボード用原紙張せっこう板(厚さ21mm)及び下張り両面薬剤処理ボード用原紙張せっこう板(厚さ21mm)が、複数のたて枠に沿って、たて枠の屋外側に設けられ、
下張り両面薬剤処理ボード用原紙張せっこう板(厚さ21mm)の2つの縦辺は、たて枠の屋外側にあり、
上張り両面薬剤処理ボード用原紙張せっこう板(厚さ21mm)の2つの縦辺は、下張り両面薬剤処理ボード用原紙張せっこう板(厚さ21mm)の縦辺が位置するたて枠とは異なるたて枠の屋外側にあり、
上張り両面薬剤処理ボード用原紙張せっこう板(厚さ21mm)の2つの横辺と、下張り両面薬剤処理ボード用原紙張せっこう板(厚さ21mm)の2つの横辺とは、上下方向にずれており、
外装材は、正面視で長方形であり、
横長方向に施工される外装材の2つの長辺は、下張り両面薬剤処理ボード用原紙張せっこう板(厚さ21mm)の2つの横辺及び上張り両面薬剤処理ボード用原紙張せっこう板(厚さ21mm)の2つの横辺と厚み方向で重ならないこと。」
(ウ) 参考資料7記載技術
上記(ア)及び(イ)より、参考資料7には、次の技術(以下「参考資料7記載技術」という。)が記載されていると認められる。
<参考資料7記載技術>
「外壁の耐火構造において、
所定の間隔をあけて左右に並んだ複数のたて枠が設けられ、
上張り両面薬剤処理ボード用原紙張せっこう板(厚さ21mm)及び下張り両面薬剤処理ボード用原紙張せっこう板(厚さ21mm)が、複数のたて枠に沿って、たて枠の屋外側に設けられ、
下張り両面薬剤処理ボード用原紙張せっこう板(厚さ21mm)の2つの縦辺は、たて枠の屋外側にあり、
上張り両面薬剤処理ボード用原紙張せっこう板(厚さ21mm)の2つの縦辺は、下張り両面薬剤処理ボード用原紙張せっこう板(厚さ21mm)の縦辺が位置するたて枠とは異なるたて枠の屋外側にあり、
上張り両面薬剤処理ボード用原紙張せっこう板(厚さ21mm)の2つの横辺と、下張り両面薬剤処理ボード用原紙張せっこう板(厚さ21mm)の2つの横辺とは、上下方向にずれており、
外装材は、正面視で長方形であり、
横長方向に施工される外装材の2つの長辺は、下張り両面薬剤処理ボード用原紙張せっこう板(厚さ21mm)の2つの横辺及び上張り両面薬剤処理ボード用原紙張せっこう板(厚さ21mm)の2つの横辺と厚み方向で重ならないこと。」
(3) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア) 甲1発明の「外壁」、「外壁よりも屋内側に設けられた柱」、「耐火構造」は、それぞれ本件発明1の「外壁」、「外壁よりも屋内側に設けられた柱」、「耐火構造」に相当する。
(イ) 甲1発明の「一般構造用軽量形鋼」である「垂直に長い下地材」は、本件発明1の「垂直に長い」「鉄骨」に相当する。
(ウ) 甲1発明の「せっこうボード」は耐火性能を有するものであるから、前記(イ)を踏まえると、甲1発明の「下地材に沿って、下地材の屋外側に」「設けられ」た「せっこうボードであ」る「外装下地材」は、本件発明1の「前記鉄骨に沿って、前記鉄骨の屋外側に設けられた、耐火性能を有する面材」に相当する。
(エ) 上記(ウ)を踏まえると、甲1発明の「外装下地材の屋外側に」「設けられ」ることは、本件発明1の「前記面材の屋外側に設けられた」ことに相当するから、甲1発明の「外装下地材の屋外側に」「設けられ」た「外装材」は、本件発明1の「前記面材の屋外側に設けられた外壁材」に相当する。
(オ) 前記(ア)及び(ウ)を踏まえると、甲1発明の「柱と外装下地材との間の空間に臨む面を除く柱の外面が」「被覆されている」ことは、本件発明1の「前記柱と前記面材との間の空間に臨む面を除く前記柱の外面が」「被覆されている」ことに相当する。また、甲1発明の「被覆材」は、「吹き付けロックウール(国土交通大臣認定不燃材料:NM-8601)」であり、耐火性能を有することは明らかであるから、本件発明1の「耐火被覆材」に相当する。そうすると、甲1発明の「柱と外装下地材との間の空間に臨む面を除く柱の外面が被覆材で被覆されている」ことは、本件発明1の「前記柱と前記面材との間の空間に臨む面を除く前記柱の外面が耐火被覆材で被覆されている」ことに相当する。
(カ) 前記(ア)、(ウ)、及び(オ)を踏まえると、甲1発明の「柱と外装下地材との間の空間を塞ぐように被覆材が設けられて」いることは、本件発明1の「前記柱と前記面材との間の空間を塞ぐように耐火被覆材が設けられて」いることに相当する。
(キ) 前記(イ)及び(オ)を踏まえると、甲1発明の「被覆材で塞がれた空間に位置する下地材に、」「固定され」ることは、本件発明1の「前記耐火被覆材で塞がれた前記空間に位置する前記鉄骨に、」「固定され」ることに相当する。また、前記(エ)を踏まえると、甲1発明の「外装材固定用」の「留付材」、及び「留付材(外装材固定用)によって下地材に固定される部材」は、本件発明1の「前記外壁材を留め付ける留め具」に相当する。そうすると、甲1発明の「被覆材で塞がれた空間に位置する下地材に、留付材(外装材固定用)が固定され」ることは、本件発明1の「前記耐火被覆材で塞がれた前記空間に位置する前記鉄骨に、前記外壁材を留め付ける留め具が固定され」ることに相当する。
(ク) 前記(ア)~(ウ)、(オ)を踏まえると、甲1発明の「柱と下地材の屋外側に設けられた外装下地材との間の空間に臨む面を除く柱の外面、及び柱と下地材の屋外側に設けられた外装下地材との空間を塞ぐように被覆材が連続して一体に設けられ」ることは、本件発明1の「前記柱と前記鉄骨の屋外側に設けられた前記面材との間の空間に臨む面を除く前記柱の外面、及び前記柱と前記鉄骨の屋外側に設けられた前記面材との空間を塞ぐように前記耐火被覆材が連続して一体に設けられて」ていることに相当する。
(ケ) 前記(ア)~(ク)より、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「外壁と、前記外壁よりも屋内側に設けられた柱とを備える耐火構造であって、
前記外壁は、
垂直に長い鉄骨と、
前記鉄骨に沿って、前記鉄骨の屋外側に設けられた、耐火性能を有する面材と、
前記面材の屋外側に設けられた外壁材と、
を備え、
前記柱と前記面材との間の空間に臨む面を除く前記柱の外面が耐火被覆材で被覆されていると共に、
前記柱と前記面材との間の空間を塞ぐように耐火被覆材が設けられており、
前記耐火被覆材で塞がれた前記空間に位置する前記鉄骨に、前記外壁材を留め付ける留め具が固定され、
前記柱と前記鉄骨の屋外側に設けられた前記面材との間の空間に臨む面を除く前記柱の外面、及び前記柱と前記鉄骨の屋外側に設けられた前記面材との空間を塞ぐように前記耐火被覆材が連続して一体に設けられている、
耐火構造。」
<相違点1>
本件発明1では、「外壁」が「所定の間隔をあけて左右に並んだ、」「複数の鉄骨」「を備え」るのに対して、甲1発明では、「下地材」が一つしか示されていない点。
<相違点2>
本件発明1では、「面材」が「複数の前記鉄骨に沿って、前記鉄骨」「に設けられ」るのに対して、甲1発明では、「外装下地材」が一つの「下地材に沿って、下地材」に「設けられ」る点。
<相違点3>
本件発明1では、「前記面材は、前記鉄骨の屋内側に設けられた、正面視で長方形の第1の面材と、前記第1の面材の屋外側に設けられた正面視で長方形の第2の面材と、を備えており、前記第1の面材の屋内側に、前記第1の面材と間隔をあけて断熱材が設けられており、前記断熱材は、前記柱と前記第1の面材との間の空間の内側と外側との両方に設けられている」のに対して、
甲1発明では、「せっこうボード」である「外装下地材」が「第1の面材」と「第1の面材の屋外側に設けられた」「第2の面材」とを備えておらず、「外装下地材」の屋内側に「外装下地材」と間隔をあけて、「柱と外装下地材との間の空間」の内側と外側との両方に「断熱材」が設けられていない点。
イ 判断
(ア) 相違点3について
事案に鑑み、上記相違点3から検討する。
甲1発明において、「柱と外装下地材との間の空間を塞ぐように被覆材が設けられて」いるところ、「外装下地材」を屋内側と屋外側との2つの面材とするか否かはひとまず措くとして、「柱と外装下地材との間の空間」の「内側と外側との両方」に「外装下地材と間隔をあけて断熱材」を設けるためには、「断熱材」を、「被覆材」により「塞ぐように」されている「柱と外装下地材との間の空間」の、「内側と外側との両方」に、「外装下地材と間隔をあけて」設置する必要がある。
この点に関し、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証には、鉄骨の屋外側に設けられる面材の屋内側に、前記面材と間隔をあけて断熱材を設ける事項が記載されている。
しかしながら、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証には、「断熱材」を「耐火被覆材で塞がれた」ものである、「前記柱と前記第1の面材との間の空間の内側」に、「第1の面材と間隔をあけて」設けることは、記載されていない。
また、甲第1号証、甲第3号証、甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証及び甲第10号証、及び、参考資料1ないし7にも、「断熱材」を、「耐火被覆材で塞がれた」ものである「前記柱と前記第1の面材の間の空間の内側」に、「第1の面材と間隔をあけて」設けることは、記載されていない。
また、甲第9号証には、鉄骨柱1の側部に外壁材4が配設され、外壁材4の屋内側に無機繊維系断熱材61が添設され、鉄骨柱1の両フランジ12、ウェブ14の一側面に沿うように耐火被覆材7が添設され、耐火被覆材7の両端辺縁部は、無機繊維系断熱材61に接続させて配設され、鉄骨柱1のウェブ14の屋外側の側面と、両フランジ12との間に、グラスウール材又はロックウール材等の無機繊維系断熱材62が充填されている、事項が開示されている。
そして、甲第9号証に記載の事項は、上記相違点3に係る本件発明1の構成と、「鉄骨」の屋内側に「面材」が設けられていることで一致し、「面材」の屋内側に「断熱材」が設けられていることで類似する。
しかし、甲第9号証は、耐火被覆材7の両端辺縁部は、無機繊維系断熱材61に接続させて配設され、鉄骨柱1のウェブ14の屋外側の側面と、両フランジ12との間に、グラスウール材又はロックウール材等の無機繊維系断熱材62が充填されていることから、無機繊維系断熱材62が鉄骨柱1と外壁材4との間の空間に充填されたものではなく、上記相違点3に係る本件発明1の構成のように、「断熱材」が柱と外装下地材との間の「空間」に設けられているものではない。
そして、甲1発明において、上記相違点3に係る本件発明1の構成に至るには、「断熱材」を、「被覆材」が「塞ぐように」設けられている「柱と外装下地材との間の空間」の「内側」に、「外装下地材と間隔をあけて」設置する必要があるところ、そのような構成は上述したとおり、上記甲第2号証ないし第10号証、及び、参考資料1ないし7のいずれにも示されていない。
また、上記甲第2号証ないし第10号証、及び、参考資料1ないし7のいずれを考慮しても、甲1発明において、「断熱材」を、「被覆材」により「塞ぐように」されている「柱と外装下地材との間の空間」の「内側」に、「外装下地材と間隔をあけて」設置することは、示唆もされていない。
したがって、甲1発明において、上記相違点3に係る本件発明1の構成に至ることは、甲第2号証ないし第10号証、及び、参考資料1ないし7に記載される事項を考慮しても、想到容易ということができない。
(イ)本件発明1の容易想到性
上記(ア)のとおり、相違点3に係る構成が想到容易でないから、その余の相違点1及び相違点2について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、及び、甲第2号証ないし第10号証、参考資料1ないし7に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
(ウ)申立人の主張
上記相違点3に関し、申立人は令和5年11月17日提出の意見書において、
訂正によって本件発明1に追加された断熱材に関する構成は、甲2記載技術、甲3記載技術、甲5記載技術、及び甲7記載技術に示される周知技術1~3、および甲9発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものと考えられる旨、あるいは、上記甲9発明に代えて、甲10発明、甲2発明、甲4発明、甲8発明に基づいて、当業者が容易発明することができたものと考えられる旨、また、甲第1号証に記載の発明が耐火構造であるから、断熱材に関する技術の適用に動機付けがある旨、それぞれ主張している(第2頁15行~第13頁最終行)。
しかしながら、上記(ア)に示したとおり、甲1発明において、上記相違点3に係る本件発明1の構成に至るには、「断熱材」を、「被覆材」により「塞ぐように」されている「柱と外装下地材との間の空間」の「内側」に、「外装下地材と間隔をあけて」設置する必要があるところ、甲1発明においてそのような構成をとることは、申立人が言及する、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証、甲第7号証、甲第8号証、甲第9号証、甲第10号証の記載を考慮しても、記載も示唆もされていない。
したがって、申立人による意見書の主張を考慮しても、本件発明1の容易想到性について、上記(ア)及び(イ)の判断を変更すべき事情はない。
ウ 小括
したがって、本件発明1は、甲1発明、及び、甲第2号証ないし第10号証、参考資料1ないし7に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4) 本件発明5について
本件発明5は、本件発明1を直接的に引用するものであり、本件発明1の構成をすべて有するものであるから、上記(3)で判断したとおり、本件発明5は、甲1発明、及び、甲第2号証ないし第10号証、参考資料1ないし7に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5) 本件発明6について
本件発明6は、本件発明1を直接的に又は間接的に引用するものであり、本件発明1の構成をすべて有するものであるから、上記(3)で判断したとおり、本件発明6は、甲1発明、及び、甲第2号証ないし第10号証、参考資料1ないし7に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 申立理由2(実施可能要件)
(1) 申立人の具体的主張
申立人は、申立書において、本件特許明細書には、断熱材の記載はあるが、断熱材と面材の間隔の言及はなく、当該間隔をどの程度の大きさにするかの開示がなく、優れた断熱効果を得ることができるように当業者が実施できる程度に発明の詳細な説明が記載されていない旨を主張し、本件特許の請求項1に係る発明、及び、請求項1を直接的もしくは間接的に引用する請求項2ないし6に係る発明について、明細書の発明の詳細な説明は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない旨を主張している(申立書第36頁第4行~第38頁第4行)。
(2) 具体的主張についての当審の判断
ア 判断基準
物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
イ 発明の詳細な説明における記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明および図面には、次の記載がある。
(ア)「【0102】
本実施形態の耐火構造では、柱100と第1の面材2との間の空間104に臨む面を除く柱100の外面が耐火被覆材102で被覆されていると共に、この空間104を塞ぐように耐火被覆材102が設けられている。特に、本実施形態では、耐火被覆材保持手段106に沿って耐火被覆材102が設けられている。耐火被覆材102は、耐火性を備えた部材である。耐火被覆材102として、例えば、ロックウール、無機系の吹付け材、無機系のマット材、無機系のシート材、及び無機系のボード材が挙げられる。」
(イ) 「【0104】
更に、本実施形態の耐央構造では、第1の面材2の屋内側に、断熱材105が設けられている。本実施形態では、空間104の内側において裏打材103の屋内側に断熱材105が設けられていると共に、空間104の外側において鉄骨1と耐火被覆材保持手段106との間に断熱材105が設けられている。この断熱材105は、例えば、ロックゥール又はグラスウールである。尚、本実施形態では、第1の面材2の屋内側における、空間104の内側と外側との両方に断熱材105を設けられているが、これに限られない。例えば、空間104の外側にのみ断熱材105を設けてもよく、空間104の内側にのみ断熱材105を設けてもよく、空間104の内側及び外側の両方に断熱材105を設けなくてもよい。」
(ウ) 「【0107】
本実施形態では、空間104に臨む面を除く柱100の外面が耐火被覆材102によって被覆されている。更に、この空間104を塞ぐように耐火被覆材102が設けられている。これにより、柱100の耐火性を確保することができると共に、柱100の全ての面を耐火被覆材で覆う場合よりも、耐火被覆材を施工しやすい。
【0108】
また、柱100と第1の面材2との間の空間104が大きいことにより、第1の面材2の屋内側に断熱材105を設けることができる。この断熱材105によって、建築物の断熱性を更に向上させることができる。」
(エ) 「図17
[図:0001414161000028.jpg]
」
(オ) 「図18
[図:0001414161000029.jpg]
」
(カ) 「図19
[図:0001414161000030.jpg]
」
ウ 判断基準に基づく判断
本件訂正により、請求項2ないし4に係る発明は削除されているので、本件訂正後の本件発明1、5及び6について、上記アの判断基準に基づいて、判断する。
本件特許明細書の発明の詳細な説明において、上記(イ)に摘記した段落【0104】には、「柱100」と「第1の面材2」との間に「空間104」が設けられており、その「空間104」の内側で、「第1の面材2の屋内側」に設けられた「裏打材103」の屋内側に「断熱材105」が設けられていると共に、「空間104」の外側において、「鉄骨1」と「耐火被覆材保持手段106」との間に「断熱材105」が設けられている旨、段落【0108】には、「断熱材105」により、建築物の断熱性が更に向上する旨、説明されている。
また、上記イ(エ)~(カ)で示される図17~19から、「柱100」と「第1の面材2」との間に形成された「空間104」に臨む面を除く「柱100」の外面が「耐火被覆材102」で被覆され、「空間104」を塞ぐように「耐火被覆材102」が設けられ、「空間104」の内側で、「第1の面材2の屋内側」に設けられた「裏打材103」を介して、「第1の面材2」と「間隔」をあけて「断熱材105」が設けられていると共に、「空間104」の外側において、「第1の面材2」と間隔をあけて「断熱材105」が設けられている旨が看取される。
そして、これら発明の詳細な説明および図面における記載からすれば、耐火構造という物の発明である本件発明1、本件発明5、本件発明6に関して、「柱100」と「第1の面材2」との間に形成された「空間104」の内側及び外側に、「第1の面材2」と間隔をあけて「断熱材105」が設けられる構造自体は理解される。
また、本件発明1、5及び6に係る「耐火構造」を生産し、使用する際、「断熱材」と「第1の面材」の間隔をどの程度の大きさとするか発明の詳細な説明に具体的に記載されていなくとも、具体的な間隔を適宜に決定することは、当業者にとって過度の試行錯誤を要するものではない。
したがって、上記(1)の申立人の主張は採用することができず、本件特許の発明の詳細な説明には、当業者が発明の詳細な説明の記載に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1、本件発明5、本件発明6に係る耐火構造を生産し、使用することができる程度の記載があるものである。
3 申立理由4(明確性)について
(1) 申立人の具体的主張
申立人は、申立書において、本件特許明細書には、断熱材の記載はあるが、断熱材と面材の間隔の言及はなく、どの程度の大きさにするかの開示がない一方、不陸等により、広い面材と断熱材の少なくとも一領域に通常は隙間が生じていることは技術常識といえるから、出願時の技術常識を考慮すると、断熱材と面材との間隔の具体的な大きさについて、発明特定事項が不足していることは明らかである旨主張し、本件特許の請求項1に係る発明、及び、請求項1を直接的もしくは間接的に引用する請求項2ないし6に係る発明について、発明の詳細な説明は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない旨を主張している(申立書第36頁第4行~第38頁第4行)。
(2) 具体的主張についての当審の判断
ア 判断基準
特許法36条6項2号の趣旨は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合に、特許が付与された発明の技術的範囲が不明確となることにより生じ得る第三者の不測の不利益を防止することにある。そこで、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
イ 判断基準に基づく判断
本件訂正により、請求項2ないし4に係る発明は削除されているので、本件訂正後の本件発明1、5及び6について、上記アの判断基準に基づいて、判断する。
本件特許明細書の発明の詳細な説明において、上記「2(2)イ」に記載したように、「柱100」と「第1の面材2」との間に「空間104」が設けられており、その「空間104」の内側で、「第1の面材2の屋内側」に設けられた「裏打材103」の屋内側に「断熱材105」が設けられている旨、「断熱材105」により、建築物の断熱性が更に向上する旨、説明されている。
また、上記「2(2)イ(エ)」~「同(カ)」で示される図17~19から、「柱100」と「第1の面材2」との間に形成された「空間104」に臨む面を除く「柱100」の外面が「耐火被覆材102」で被覆され、「空間104」を塞ぐように「耐火被覆材102」が設けられ、「空間104」の内外で、「第1の面材2の屋内側」に設けられた「裏打材103」の屋内側に、「第1の面材2」に対して「裏打材103」の分、間隔をあけて「断熱材105」が設けられている旨が看取される。
そして、これら発明の詳細な説明および図面における記載からすれば、耐火構造という物の発明である本件発明1、本件発明5、本件発明6に関して、「柱100」と「第1の面材2」との間に形成された「空間104」の内外に「断熱材105」が「第1の面材2」の屋内側に所定の間隔をもって設けられる構造自体は理解され、具体的な間隔の大きさが記載されていないからといって、その点について第三者に不測の不利益を生じさせるほどに発明が不明確になるものではない。
したがって、上記(1)の申立人の主張は採用することはできず、本件発明1、本件発明5、本件発明6に係る耐火構造は、明確である。
よって、本件発明1、本件発明5、本件発明6は明確である。
4 申立理由5(新規事項の追加)について
(1) 申立人の具体的主張
申立人は、申立書において、令和4年5月30日提出の手続補正書により補正された「前記第1の面材の屋内側に、前記第1の面材と間隔をあけて断熱材が設けられている」という事項に関して、第1の面材2と断熱材105の隙間は、本願の出願当初の明細書及び図面を考慮すると、耐火被覆材102の内側に位置する裏打材103の厚み分であると解されるが、断熱材105と第1の面材2の間隔の大きさを記載しないことは、出願当初の開示範囲を超えた技術も含む旨を主張している。
また、本件発明1を引用する本件発明5は、出隅に関する技術であるが、出隅で面材と断熱材の間に間隔を設ける点、出願当初の明細書に記載されていない旨、を主張している。
そして、本件特許の請求項1に係る発明、請求項1を直接的もしくは間接的に引用する請求項2ないし6に係る発明、及び、請求項5に係る発明、請求項5を引用する請求項6に係る発明について、特許請求の範囲の補正は、特許法第17条の2第3項の規定を満たしていない旨を主張している(申立書第36頁第4行~第38頁第4行、第38頁第5行~第22行)。
(2) 具体的主張についての当審の判断
ア 判断基準
新規事項の追加に関する判断については、
「「明細書又は図面に記載した事項」とは、技術的思想の高度の創作である発明について、特許権による独占を得る前提として、第三者に対して開示されるものであるから、ここでいう「事項」とは明細書又は図面によって開示された発明に関する技術的事項 であることが前提となるところ、「明細書又は図面に記載した事項」とは、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は、「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。」(知財高判平20.5.30、平18(行ケ)第10563号)と判示されている。
よって、以下、この考え方に沿って判断する
イ 願書に最初に添付された明細書等における記載
本件の願書に最初に添付された明細書及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には、次の記載がある。
(ア)「【0102】
本実施形態の耐火構造では、柱100と第1の面材2との間の空間104に臨む面を除く柱100の外面が耐火被覆材102で被覆されていると共に、この空間104を塞ぐように耐火被覆材102が設けられている。特に、本実施形態では、耐火被覆材保持手段106に沿って耐火被覆材102が設けられている。耐火被覆材102は、耐火性を備えた部材である。耐火被覆材102として、例えば、ロックウール、無機系の吹付け材、無機系のマット材、無機系のシート材、及び無機系のボード材が挙げられる。」
(イ)「【0104】
更に、本実施形態の耐火構造では、第1の面材2の屋内側に、断熱材105が設けられている。本実施形態では、空間104の内側において裏打材103の屋内側に断熱材105が設けられていると共に、空間104の外側において鉄骨1と耐火被覆材保持手段106との間に断熱材105が設けられている。この断熱材105は、例えば、ロックウール又はグラスウールである。尚、本実施形態では、第1の面材2の屋内側における、空間104の内側と外側との両方に断熱材105を設けられているが、これに限られない。例えば、空間104の外側にのみ断熱材105を設けてもよく、空間104の内側にのみ断熱材105を設けてもよく、空間104の内側及び外側の両方に断熱材105を設けなくてもよい。」
(ウ)「【0107】
本実施形態では、空間104に臨む面を除く柱100の外面が耐火被覆材102によって被覆されている。更に、この空間104を塞ぐように耐火被覆材102が設けられている。これにより、柱100の耐火性を確保することができると共に、柱100の全ての面を耐火被覆材で覆う場合よりも、耐火被覆材を施工しやすい。
【0108】
また、柱100と第1の面材2との間の空間104が大きいことにより、第1の面材2の屋内側に断熱材105を設けることができる。この断熱材105によって、建築物の断熱性を更に向上させることができる。
【0109】
本実施形態の耐火構造では、図17に示すように、二つの裏打材103の間に一つの鉄骨1が設けられているが、これに限られない。例えば、図19Aに示すように、二つの裏打材103の間に鉄骨1が設けられていなくてもよい。また、図19Bに示すように、二つの裏打材103の間に、隣接した二つの鉄骨1が設けられていてもよい。
【0110】
本実施形態の耐火構造は、建築物の出隅においても適用することができる。出隅とは、建築物における二つの外壁が出会ってできる角のことである。このため、本実施形態の出隅は、図20に示すように、第1の外壁107と、第1の外壁107と交差する方向に隣接する第2の外壁108とを備える。また、第1の外壁107と第2の外壁108とが出会う角には、L字状のコーナー用外壁材50が設けられている。コーナー用外壁材50は、第1の外壁107及び第2の外壁108と、ジョイナー14を介して突き合わされる(図20参照)。第1の外壁107とコーナー用外壁材50との突合せ部、及び第2の外壁108とコーナー用外壁材50との突合せ部には、シーリング17が設けられている。コーナー用外壁材50は、留め具6を介して、第2の面材3に固定される。また、本実施形態では、第1の外壁107と第2の外壁108とが出会う角の屋内側に、隣接する二つの鉄骨1が設けられている。
【0111】
図20に示すように、出隅における耐火構造では、柱100が、第1の外壁107の第1の面材2、及び第2の外壁108の第1の面材2と対向している。第一の外壁107の第1の面材2の屋内側の面における柱100と対向している部分には、一方の裏打材103が固定されている。また、第2の外壁108の第1の面材2の屋内側の面における柱100と対向している部分には、他方の裏打材103が固定されている。すなわち、二つの裏打材103が、それぞれ柱100の異なる面と対向している。
【0112】
出隅における耐火構造においても、第1の面材2と対向しておらず、且つ略垂直に位置する柱100の面から、第1の面材2の裏面近傍に亘って、耐火被覆材保持手段106が設けられている。詳細には、図20に示すように、一方の裏打材103から柱100にわたって耐火被覆材保持手段106が設けられていると共に、他方の裏打材103から柱100にわたって耐火被覆材保持手段106が設けられている。また、裏打ち材103及び柱100と、耐火被覆材保持手段106との間には、棒状の力骨109が設けられている。
【0113】
出隅の耐火構造では、柱100と第1の外壁107の第一の面材2及び第2の外壁108の第一の面材2との間の空間104に臨む面を除く柱100の外面が耐火被覆材102で被覆されていると共に、この空間104を塞ぐように耐火被覆材102が設けられている。特に、本実施形態では、耐火被覆材保持手段106に沿って耐火被覆材102が設けられている(図20参照)。【0114】
出隅に位置する柱100は、第1の外壁107及び第2の外壁108と対向するため、第1の外壁107及び第2の外壁108の鉄骨1の屋内側に石膏ボード等が設けられていると、柱100に耐火被覆材を施工しにくい。しかしながら、本実施形態では、出隅を構成する第1の外壁107及び第2の外壁108の両方において、鉄骨1の屋内側に石膏ボード等が設けられていない。このため、柱100と、第1の外壁107及び第2の外壁108との間の空間が大きく、これにより、柱100に耐火被覆材102を施工しやすい。
【0115】
本実施形態では、空間104に臨む面を除く柱100の外面が耐火被覆材102で被覆されていると共に、この空間104を塞ぐように耐火被覆材102が設けられている。これにより、出隅に位置する柱100の耐火性を確保することができると共に、出隅に位置する柱100の全ての面を耐火被覆材で覆う場合よりも、耐火被覆材を施工しやすい。
【0116】
また、出隅の耐火構造においても、第1の面材2の屋内側に断熱材105が設けられていてもよく、設けられていなくてもよい。」
(エ)「図17
[図:0001414161000031.jpg]
」
(オ)「図18
[図:0001414161000032.jpg]
」
(カ)「図19
[図:0001414161000033.jpg]
」
(キ)「図20
[図:0001414161000034.jpg]
」
イ 判断基準に基づく判断
本件訂正により、請求項2ないし4に係る発明は削除されているので、本件訂正後の本件発明1、5及び6について、上記アの判断基準に基づいて、判断する。
まず、本件発明1において、「第1の面材2」と「断熱材105」の間の「間隔」の大きさが具体的に特定されていないことについて判断する。
上記(イ)に記載したように、段落【0104】には、実施の形態として、「空間104」の内側で、「第1の面材2の屋内側」に設けられた「裏打材103」の屋内側に「断熱材105」が設けられている旨、説明されており、この点は図17~19からも理解される。
そうしてみると、「断熱材105」と「第1の面材2」の間隔の大きさを「裏打材103」の厚み分とすることは、一つの実施の形態に過ぎず、所望の間隔をもって設けることにより、建築物の断熱性を更に向上させるという効果を奏することは明らかであるから、「断熱材105」と「第1の面材2」の間隔の大きさを記載しないことは、新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。
次に、本件発明5及び本件発明6において、「出隅」の部分で「第1の面材2」と「断熱材105」の間に「間隔」を設ける点について判断する。
上記イ(ウ)(キ)に記載したように、段落【0110】~【0113】、図20には、出隅に関する技術が説明されている。そして、当該段落【0110】~【0113】、図20には、出隅に「断熱材105」を設けることは、直接は記載されていない。
しかし、上記(イ)に示される段落【0116】には、「出隅の耐火構造においても、第1の面材2の屋内側に断熱材105が設けられていてもよく」と記載されている。そして、上記(ク)に記載された図19では、「空間104」の内側と外側に「断熱材105」を設けることが開示されている。 そうしてみると、図20に開示された出隅の耐火構造において、「第1の面材2の屋内側に断熱材105」を設け、かつ、図19に開示されているように、「空間104」の内側と外側に「断熱材105」を設けるようにすることは、当初明細書等の記載を総合すれば、記載されているに等しいと考えられる。
また、上述したように、一実施形態として、「断熱材105」と「第1の面材2」の間隔の大きさを「裏打材103」の厚み分とすることを含め、「第1の面材2」と「断熱材105」とを所望の間隔をもって設けることにより、建築物の断熱性を更に向上させるという効果を奏することは明らかである。
そして、当初明細書等の段落【0111】~【0116】、図20に記載された「出隅」における実施形態においても、段落【0116】において、「出隅」に「断熱材105」を設けることが開示されており、また、図20には、「第1の面材2」に「裏打材103」が設けられているのであるから、「出隅」において、「断熱材105」を設けるにあたり、「第1の面材2」と「断熱材105」とを所望の間隔をもって設けるようにすることは、当初明細書等に記載されているに等しいと考えられる。
よって、本件発明1、本件発明5、本件発明6は、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
5 申立理由3(サポート要件)について
(1) 申立人の具体的主張
申立人は、申立書において、本件発明1を引用する本件発明5は、出隅に関する技術であるが、出隅で面材と断熱材の間に間隔を設ける点、本件特許明細書に開示がない旨を主張し、請求項5に係る発明、請求項5を引用する請求項6に係る発明について、特許請求の範囲は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない旨を主張している(申立書第38頁第5行~第22行)。
(2) 具体的主張についての当審の判断
ア 判断基準
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
イ 発明の詳細な説明における記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明および図面には、次の記載がある。
(ア)「【0104】
更に、本実施形態の耐火構造では、第1の面材2の屋内側に、断熱材105が設けられている。本実施形態では、空間104の内側において裏打材103の屋内側に断熱材105が設けられていると共に、空間104の外側において鉄骨1と耐火被覆材保持手段106との間に断熱材105が設けられている。この断熱材105は、例えば、ロックウール又はグラスウールである。尚、本実施形態では、第1の面材2の屋内側における、空間104の内側と外側との両方に断熱材105を設けられているが、これに限られない。例えば、空間104の外側にのみ断熱材105を設けてもよく、空間104の内側にのみ断熱材105を設けてもよく、空間104の内側及び外側の両方に断熱材105を設けなくてもよい。」
(イ)「【0110】
本実施形態の耐火構造は、建築物の出隅においても適用することができる。出隅とは、建築物における二つの外壁が出会ってできる角のことである。このため、本実施形態の出隅は、図20に示すように、第1の外壁107と、第1の外壁107と交差する方向に隣接する第2の外壁108とを備える。また、第1の外壁107と第2の外壁108とが出会う角には、L字状のコーナー用外壁材50が設けられている。コーナー用外壁材50は、第1の外壁107及び第2の外壁108と、ジヨイナー14を介して突き合わされる(図20参照)。第1の外壁107とコーナー用外壁材50との突合せ部、及び第2の外壁108とコーナー用外壁材50との突合せ部には、シーリング17が設けられている。コーナー用外壁材50は、留め具6を介して、第2の面材3に固定される。また、本実施形態では、第1の外壁107と第2の外壁108とが出会う角の屋内側に、隣接する二つの鉄骨1が設けられている。
【0111】
図20に示すように、出隅における耐火構造では、柱100が、第1の外壁107の第1の面材2、及び第2の外壁108の第1の面材2と対向している。第一の外壁107の第1の面材2の屋内側の面における柱100と姑向している部分には、一方の裏打材103が固定されている。また、第2の外壁108の第1の面材2の屋内側の面における柱100と対向している部分には、他方の裏打材103が固定されている。すなわち、二つの裏打材103が、それぞれ柱100の異なる面と対向している。
【0112】
出隅における耐火構造においても、第1の面材2と対向しておらず、且つ略垂直に位置する柱100の面から、第1の面材2の裏面近傍に亘って、耐火被覆材保持手段106が設けられている。詳細には、図20に示すように、一方の裏打材103から柱100にわたって耐火被覆材保持手段106が設けられていると共に、他方の裏打材103から柱100にわたって耐火被覆材保持手段106が設けられている。また、裏打ち材103及び柱100と、耐火被覆材保持手段106との間には、棒状の力骨109が設けられている。
【0113】
出隅の耐央構造では、柱100と第1の外壁107の第一の面材2及び第2の外壁108の第一の面材2との間の空間104に臨む面を除く柱100の外面が耐火被覆材102で被覆されていると共に、この空間104を塞ぐように耐火被覆材102が設けられている。特に、本実施形態では、耐火被覆材保持手段106に沿って耐火被覆材102が設けられている(図20参照)。」
(ウ)「【0116】
また、出隅の耐火構造においても、第1の面材2の屋内側に断熱材105が設けられていてもよく、設けられていなくてもよい。」
(エ)「図19
[図:0001414161000035.jpg]
」
(オ)「図20
[図:0001414161000036.jpg]
」
ウ 判断基準に基づく判断
上記アの判断基準に基づいて、判断する。
上記イ(ア)(エ)に記載したように、段落【0104】には、実施の形態として、「空間104」の内側で、「第1の面材2の屋内側」に設けられた「裏打材103」の屋内側に「断熱材105」が設けられている旨、説明されており、この点は図19からも理解される。
そうしてみると、「断熱材105」と「第1の面材2」の間隔の大きさを「裏打材103」の厚み分とすることは、一つの実施の形態に過ぎず、所望の間隔をもって設けることにより、建築物の断熱性を更に向上させるという効果を奏することは明らかである。
そして、上記イ(イ)(ウ)の記載から、「出隅」における実施形態においても、段落【0116】において、「出隅」に「断熱材105」を設けることが開示されており、また、図20には、「第1の面材2」に「裏打材103」が設けられているのであるから、「出隅」において、「断熱材105」を設けるにあたり、「第1の面材2」と「断熱材105」とを所望の間隔をもって設けるようにすることは、当初明細書等に記載されているに等しいと考えられる。
そして、上記イ(エ)に記載された図19では、「空間104」の内側と外側に「断熱材105」を設けることが開示されている。
そうしてみると、図20に開示された出隅の耐火構造において、「第1の面材2の屋内側に断熱材105」を設け、かつ、図19に開示されているように、「空間104」の内側と外側に「断熱材105」を設けるようにすることは、記載されているに等しいと考えられる。
よって、本件発明5、本件発明6は、発明の詳細な説明に記載したものである。
また、本件発明5及び6が有する本件発明1の構成により、本件特許明細書の段落【0008】に記載される「外壁、及び外壁の屋内側にある柱の耐火性を向上させることができる」という課題を解決できることは明らかであるから、本件発明5及び6は、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
したがって、本件発明5及び6は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしている。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1、5、6に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立の理由によっては、取り消すことはできない。また、他に本件発明1、5、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2~4に係る特許は、上記第2のとおり、訂正により削除されたので、申立人による特許異議の申立てについて、請求項2~4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700483