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特許異議申立

2025-700359

セメント組成物及びセメント組成物の製造方法

審判番号
2025-700359
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-061756
登録番号
7560263
請求日
2025年03月28日
審決日
2025年06月02日
公報発行日
2025年06月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】UBE三菱セメント株式会社
  • 【権利者代理人】成瀬 重雄
  • 【異議申立人】前田 しのぶ
審判長/審判官
  • 審判長 宮澤 尚之
  • 審判官 増山 淳子
  • 審判官 三崎 仁
分類
P1651.121-Y (C04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第113条第2号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7560263号発明「セメント組成物及びセメント組成物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7560263号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7560263号の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和2年3月31日に出願され、令和6年9月24日にその特許権の設定登録がされ、同年10月2日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~5に係る特許に対し、令和7年3月28日に特許異議申立人前田しのぶ(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。 第2 本件発明及び本件明細書 1 本件発明について 特許第7560263号の請求項1~5の特許に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 セメントクリンカ粉末、石膏粉末、石灰石粉末及びフライアッシュを含む混合物からなるセメント組成物であって、 前記石灰石粉末及び前記フライアッシュは、前記混合物において合計で10.0質量%以下の割合で含まれており、 ここで前記石灰石粉末は、前記混合物において5.0質量%以上の割合で含まれており、 前記石膏粉末は、前記混合物においてSO3換算で0.6質量%以上2.4質量%以下の割合で含まれており、 前記セメントクリンカ粉末のTiO2含有率、MnO含有率、P2O5含有率、Na2O含有率及びK2O含有率をそれぞれT質量%、M質量%、P質量%、N質量%及びK質量%と定義した場合における前記セメントクリンカ粉末の物性値「(T+M+P)/(N+0.658×K)」が0.80以上1.40以下であり、 前記セメントクリンカ粉末に含まれるSO3をクリンカSO3と定義し、前記石膏粉末に含まれるSO3を石膏SO3と定義し、前記混合物に対する前記クリンカSO3の割合をS1質量%と定義し、前記混合物に対する前記石膏SO3の割合をS2質量%と定義した場合において、 前記S1質量%と前記S2質量%との合計値が1.90質量%以上であり、かつ、前記S1質量%に対する前記S2質量%の割合が0.90以上3.00以下である ことを特徴とするセメント組成物。 【請求項2】 前記セメントクリンカ粉末のSO3含有率は0.80質量%以上であり、 前記石膏粉末は、前記混合物においてSO3換算で1.0質量%以上の割合で含まれていることを特徴とする請求項1に記載のセメント組成物。 【請求項3】 前記混合物において、SO3含有率が0.56質量%以下であるセメントクリンカ粉末が含まれていないことを特徴とする請求項2に記載のセメント組成物。 【請求項4】 セメント組成物の製造方法であって、 仕上工程及び混合工程を備えており、 前記仕上工程において、セメントクリンカを石膏と共に粉砕して、セメントクリンカ粉末及び石膏粉末を含む混合粉末を製造し、 前記混合工程において、前記混合粉末、石灰石粉末及びフライアッシュを混合してセメント組成物を製造し、 前記石灰石粉末及び前記フライアッシュは、前記セメント組成物において合計で10.0質量%以下の割合で含まれており、 ここで前記石灰石粉末は、前記セメント組成物において5.0質量%以上の割合で含まれており、 前記石膏粉末は、前記セメント組成物においてSO3換算で0.6質量%以上2.4質量%以下の割合で含まれており、 前記セメントクリンカ粉末のTiO2含有率、MnO含有率、P2O5含有率、Na2O含有率及びK2O含有率をそれぞれT質量%、M質量%、P質量%、N質量%及びK質量%と定義した場合における前記セメントクリンカ粉末の物性値「(T+M+P)/(N+0.658×K)」が0.80以上1.40以下であり、 前記セメントクリンカ粉末に含まれるSO3をクリンカSO3と定義し、前記石膏粉末に含まれるSO3を石膏SO3と定義し、前記セメント組成物に対する前記クリンカSO3の割合をS1質量%と定義し、前記セメント組成物に対する前記石膏SO3の割合をS2質量%と定義した場合において、 前記S1質量%と前記S2質量%との合計値が1.90質量%以上であり、かつ、前記S1質量%に対する前記S2質量%の割合が0.90以上3.00以下であることを特徴とするセメント組成物の製造方法。 【請求項5】 焼成工程をさらに備え、 当該焼成工程において、廃石膏ボードをセメント原料として前記セメントクリンカを製造することを特徴とする請求項4に記載のセメント組成物の製造方法。」 2 本件明細書について 願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当審が付与した(以下同様)。 (本ア)課題について 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 そこで、本発明は、セメントクリンカ粉末、石膏粉末、石灰石粉末及びフライアッシュを含む混合物からなるセメント組成物であって、石膏粉末及びフライアッシュによって強度発現性が高まるセメント組成物を提供することを目的とする。」 (本イ)S1及びS2について 「【0014】 本発明の第四項目は、上記第一項目~上記第三項目のいずれか一つにおいて次の内容を含むものである。すなわち、前記セメントクリンカ粉末に含まれるSO3をクリンカSO3と定義し、前記石膏粉末に含まれるSO3を石膏SO3と定義し、前記混合物に対する前記クリンカSO3の割合をS1質量%と定義し、前記混合物に対する前記石膏SO3の割合をS2質量%と定義した場合において、前記S1質量%と前記S2質量%との合計値が1.90質量%以上(好ましくは2.05質量%以上)であり、かつ、前記S1質量%に対する前記S2質量%の割合が0.90以上3.00以下(好ましくは0.998以上2.837以下)である。 【0015】 上記第四項目によれば、混合物において、多くのクリンカSO3と多くの石膏SO3とが互いに均衡して含まれている。このため、この混合物を水と混練すると、混練初期段階においては石膏粉末から石膏SO3が溶出し、混練初期段階経過後においてはセメントクリンカ粉末からクリンカSO3が溶出する。これにより、混練段階において、石膏粉末及びセメントクリンカ粉末から途切れることなく連続的にSO3が溶出し、このSO3により途切れることなく連続的にフライアッシュの水和が促進する。つまり、上記第四項目に係るセメント組成物は、混合物に含まれる石膏粉末及びフライアッシュにより混合物の強度発現性がさらに高まるものである。」 (本ウ)実施例について 「【0044】 表5において、実験例A9~A12の組、実験例A13~A16の組、実験例A17~A20の組、実験例A21~A24の組は、次のことを示している。すなわち、実験例A1~A4の組、実験例A5~A8の組においてクリンカの種類を変えた場合であっても、セメント組成物の石膏粉末含有率が増加するにつれてセメント混練物の圧縮強さが増加する(あるいは、セメント組成物の石膏粉末含有率が増加してもセメント混練物の圧縮強さが低下せずに維持される)。 【0045】 【表5】 [図:0001423554000001.jpg] 」 「【0057】 表10において、実験例C1及びC2の組は次のことを示している。すなわち、表7に示す実験例A2及びA6の組においてCli1に代えてCli5を使用する場合、石膏粉末含有率がSO3換算で1.2質量%であり、かつ、石灰石粉末及びフライアッシュの合計含有率(混合材粉末合計含有率)が10.0質量%以下であっても、セメント組成物のフライアッシュ含有率が増加するにつれてセメント混練物の圧縮強さが減少する。なお、表1に示すように、Cli1~Cli4(実験例A1~A24及び実験例B1、B2において使用したセメントクリンカ粉末)のSO3含有率は0.94質量%以上であるのに対し、実験例C1及びC2において使用したCli5のSO3含有率は0.56質量%である。 【0058】 【表10】 [図:0001423554000002.jpg] 」 「【0064】 つまり、これらの実験例のうち、「石膏粉末含有率をSO3換算で1.2質量%、1.8質量%又は2.4質量%とする実験例」(以下「実験例X群」とする。)は、セメント組成物に含まれる石膏粉末によってセメント組成物の強度発現性を最大限発揮させているものである。また、これらの実験例のうち、「石膏粉末含有率をSO3換算で0.6質量%とする実験例」(以下「実験例Y1群」とする。)は、セメント組成物に含まれる石膏粉末によってセメント組成物の強度発現性を高めているものの最大限発揮させてはいないものである。 【0065】 なお、表7の説明において上述したように、これらの実験例のうち、「石膏粉末含有率をSO3換算で1.2質量%、1.8質量%又は2.4質量%とする実験例」(実験例X群)においては、セメント組成物のフライアッシュ含有率が増加するとセメント混練物の圧縮強さが増加する。また、これらの実験例のうち、「石膏粉末含有率をSO3換算で0.6質量%とする実験例」(実験例Y1群)においては、セメント組成物のフライアッシュ含有率が増加するとセメント混練物の圧縮強さが減少する。一方、表10に示す実験例C1及びC2の組(以下「実験例Y2群」とする。)においては、石膏粉末含有率がSO3換算で1.2質量であってもセメントクリンカ粉末のSO3含有率が低いために、セメント組成物のフライアッシュ含有率が増加するとセメント混練物の圧縮強さが減少する。 【0066】 表12は、実験例X群、Y1群及びY2群ごとに「S1+S2」、「S2/S1」を示している。なお、セメントクリンカ粉末に含まれるSO3をクリンカSO3と定義し、石膏粉末に含まれるSO3を石膏SO3と定義し、セメント組成物に対するクリンカSO3の割合をS1質量%と定義し、セメント組成物に対する石膏SO3の割合をS2質量%と定義した場合において、「S1+S2」はS1質量%とS2質量%との合計値であり、「S2/S1」はS1質量%に対するS2質量%の比(割合)である。 【0067】 実験例X群において、「S1+S2」は2.05以上3.60以下であり、「S2/S1」は0.998以上2.837以下である。また、実験例Y1、Y2群においては、「S1+S2」が1.80以下であり、「S2/S1」が0.499以上2.381以下である。つまり、セメント組成物において、「S1+S2」が2.05以上3.60以下であって「S2/S1」が0.998以上2.837以下であることにより、セメント組成物に含まれる石膏粉末及びフライアッシュによってセメント組成物の強度発現性が最大限発揮される。 【0068】 なお、実験例Y1、Y2群の「S1+S2」が実験例X群の「S1+S2」よりも低いことを考慮すると、セメント組成物において、「S1+S2」が3.60を超えていても、「S2/S1」が0.998以上2.837以下であれば、セメント組成物に含まれる石膏粉末及びフライアッシュによってセメント組成物の強度発現性が最大限発揮される、と考えられる。 【0069】 【表12】 [図:0001423554000003.jpg] 【0070】 以上により、表12に示す実験例から次の結論を導出することができる。すなわち、セメントクリンカ粉末、石膏粉末、石灰石粉末及びフライアッシュを含む混合物からなるセメント組成物において、石灰石粉末及びフライアッシュが合計で10.0質量%以下の割合で含まれており、石膏粉末がSO3換算で0.6質量%以上2.4質量%以下の割合で含まれており、「S1+S2」が1.90以上(厳格には2.05以上)であり、かつ、「S2/S1」が0.90以上3.00以下(厳格には0.998以上2.837以下)であれば、セメント組成物において多くのクリンカSO3と多くの石膏SO3とが互いに均衡して含まれていることになる。 【0071】 このため、このセメント組成物を水と混練すると、混練初期段階においては石膏粉末から石膏SO3が溶出し、混練初期段階経過後においてはセメントクリンカ粉末からクリンカSO3が溶出する。これにより、混練段階において、石膏粉末及びセメントクリンカ粉末から途切れることなく連続的にSO3が溶出し、このSO3により途切れることなく連続的にフライアッシュの水和が促進する。したがって、このようなセメント組成物は、混合物に含まれる石膏粉末及びフライアッシュにより混合物の強度発現性がさらに高まると考えられる。」 第3 特許異議申立書における申立理由の概要 申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)で証拠方法として以下の甲第1号証~甲第4号証を提示し、以下の申立理由により、本件発明1~5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものであることを主張している。 (申立理由) 本件発明1~5は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、さらには、甲3号証に記載された事項(周知技術)又は甲4号証に記載された事項(周知技術)を参照して、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 <証拠方法> 甲第1号証:特開2019-131416号公報 甲第2号証:特開2018-100204号公報 甲第3号証:一般社団法人セメント協会編、「セメントの常識」、一般社団法人セメント協会、2013年4月、19~20頁 甲第4号証:特開2011-225393号公報 (以下「甲第○号証」は「甲○」という。) 第4 甲号証の記載 1 甲1について (1)記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した(以下同様)。 (甲1ア)「【請求項1】 普通ポルトランドセメントクリンカ粉砕物と、二水石膏及び半水石膏の少なくともいずれか一方と、II型無水石膏粉末と、石灰石粉末、高炉スラグ微粉末、及びフライアッシュの中から選ばれる1種以上の無機粉末、を含むセメント組成物であって、 上記普通ポルトランドセメントクリンカ粉砕物と、二水石膏及び半水石膏の少なくともいずれか一方の合計100質量%中のSO3の割合が1.5~2.7質量%であり、 上記セメント組成物中、II型無水石膏粉末の割合がSO3換算で0.1~3.5質量%、及び、上記無機粉末の割合が1.0~15.0質量%であることを特徴とするセメント組成物。」 (甲1イ)「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 特許文献1に記載されたセメント混和材は、まず、焼成物を製造し、次いで、該焼成物を粉砕して製造されるものであるため、製造に手間がかかるという問題があった。本発明の目的は、容易に製造することができ、強度発現性に優れ、かつ、水和熱の小さい、セメント組成物を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、普通ポルトランドセメントクリンカ粉砕物と、二水石膏及び半水石膏の少なくともいずれか一方と、II型無水石膏粉末と、石灰石粉末、高炉スラグ微粉末、及びフライアッシュの中から選ばれる1種以上の無機粉末を特定の割合で含むセメント組成物によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。」 (甲1ウ)「【0019】 上述した原料を適宜混合することによって、本発明のセメント組成物を製造することができる。 また、原料として、普通ポルトランドセメントクリンカ粉砕物と、二水石膏及び半水石膏の少なくともいずれか一方を含む普通ポルトランドセメントであって、該普通ポルトランドセメント中のSO3の割合が1.5~2.7質量%である普通ポルトランドセメントを使用し、該普通ポルトランドセメントと、II型無水石膏粉末と、無機粉末を混合して本発明のセメント組成物を製造してもよい。」 (甲1エ)「【実施例】 【0021】 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 [使用材料] (1)普通ポルトランドセメントA~C:普通ポルトランドセメントクリンカ粉砕物と、半水石膏と二水石膏の混合物、太平洋セメント社製、詳細は表1参照 (2)二水石膏:排脱二水石膏 (3)II型無水石膏粉末:ブレーン比表面積4,220cm2/g (4)石灰石粉末:ブレーン比表面積4,190cm2/g (5)高炉スラグ微粉末:ブレーン比表面積4,210cm2/g (6)フライアッシュ:ブレーン比表面積3,690cm2/g (7)細骨材:「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に規定される標準砂 (8)水:水道水」 「【0023】 【表1】 [図:0001423554000004.jpg] 【0024】 [実施例1~14] 表2に示す種類の上記材料(普通ポルトランドセメントA、無機粉末、II型無水石膏粉末)を、ミキサーを用いて混合して、セメント組成物を得た。混合は各材料を同時にミキサーに添加して行った。 無機粉末及びII型無水石膏粉末の配合量は、セメント組成物中の無機粉末またはII型無水石膏粉末の含有率が、表2に示す数値となる量とした。 得られたセメント組成物のSO3の含有率、モルタルの圧縮強さ、材齢7日、28日における水和熱を測定した。 結果を表2に示す。なお、実施例1~14におけるセメント組成物のブレーン比表面積は3,480~3,580cm2/gである。 【0025】 【表2】 [図:0001423554000005.jpg] 」 (2)甲1発明について ア (甲1エ)の【表2】において、石灰石粉末及びフライアッシュが含まれている唯一の実施例である実施例14に着目する。 実施例14は、同【0024】によれば、「表2に示す種類の上記材料(普通ポルトランドセメントA、無機粉末、II型無水石膏粉末)を」「混合して」「得た」「セメント組成物」であり、「無機粉末及びII型無水石膏粉末の配合量は、セメント組成物中の無機粉末またはII型無水石膏粉末の含有率が、表2に示す数値となる量とした」ものである。そして、同【表2】によれば、実施例14のセメント組成物は、(普通ポルトランド)セメントA、石灰石粉末、フライアッシュ、II型無水石膏を含み、石灰石粉末は5質量%、フライアッシュは5質量%、II型無水石膏はSO3換算で1.5質量%であり、セメント組成物に含まれるSO3は3.4質量%である。 また、「セメントA」は、同【0021】及び【表1】によれば、普通ポルトランドセメントクリンカ粉砕物と、半水石膏と二水石膏との混合物であり、その混合物のSO3は1.9質量%であり、半水石膏の量と2水石膏と半水石膏の合計量の質量比が0.8である混合物のことである。 以上のことから、実施例14に着目して、甲1に記載された発明を認定すると、以下のとおりである。 「普通ポルトランドセメント、石灰石粉末、フライアッシュ、II型無水石膏を混合して得たセメント組成物であって、 普通ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメントクリンカ粉砕物と、半水石膏と二水石膏との混合物であり、その混合物のSO3は1.9質量%であり、半水石膏の量と2水石膏と半水石膏の合計量の質量比が0.8である混合物であり、 セメント組成物中において、石灰石粉末は5質量%、フライアッシュは5質量%、II型無水石膏はSO3換算で1.5質量%であり、セメント組成物に含まれるSO3は3.4質量%である、 セメント組成物。」(以下「甲1発明」という。) 2 甲2について 甲2には、以下の事項が記載されている。 (甲2ア)「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 特許文献1~2に記載された発明は、石炭灰の性質によってセメント/石炭灰比を変更する方法や、特殊な評価方法を用いてフライアッシュを選別する方法であり、フライアッシュ混合セメントの強度発現性を直接的に向上させるものではない。 そこで、本発明の目的は、フライアッシュを適当な割合(例えば、1.0~10.0質量%)で含む場合であっても、強度発現性(特に、材齢7日~91日におけるモルタル圧縮強さ)に優れ、かつ、流動性に優れたセメント組成物を製造することのできる方法を提供することである。」 (甲2イ)「【0033】 普通ポルトランドセメントクリンカーA~Bの製造で使用した材料以外の使用材料を以下に示す。 (1)排脱二水石膏:住友金属社製の排脱二水石膏を、最大粒径が1.2mm以下となるように解砕したもの (2)半水石膏:上記排脱二水石膏を140℃で加熱したもの (3)石灰石:粒径30mm程度 (4)石灰石粉末:ブレーン比表面積8,000cm2/g (5)細骨材:「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に定める標準砂 (6)減水剤:ポリカルボン酸系高性能AE減水剤、BASFジャパン製、商品名「マスターグレニウムSP8N」 (7)消泡剤:非イオン界面活性剤、日華化学社製、商品名「フォームレックス747」 (8)フライアッシュA~E:表2に示すもの (9)水:水道水 また、排脱二水石膏と半水石膏を、排脱二水石膏と半水石膏の合計100質量%中の半水石膏の割合が50質量%(SO3換算によるもの)となるように混合してなる石膏(以下、「混合石膏」ともいう。)を製造した。」 (甲2ウ)「【0035】 [実施例1~5] 表3に示す種類の普通ポルトランドセメントクリンカー(表3中、「クリンカー」と示す。)と、混合石膏(表3中、「石膏」と示す。)と、フライアッシュと、石灰石を、セメント組成物中の各材料の割合が表3に示すものとなるように、バッチ式ボールミルに投入した後、これらを同時に粉砕して、セメント組成物を得た。 なお、表3中、石膏の割合(質量%)は、普通ポルトランドセメントクリンカーの量と、石膏の量(SO3換算)の合計100質量%中の、石膏の量(SO3換算)の割合を示す。 また、表3中、フライアッシュ及び石灰石の各割合(質量%)は、普通ポルトランドセメントクリンカーの量、石膏の量(SO3換算)、石灰石の量、及びフライアッシュの量の合計100質量%中の割合を示す。 さらに、表3中、全SO3(質量%)は、普通ポルトランドセメントクリンカーの量と、石膏の量(SO3換算)の合計100質量%中の、全SO3の割合を示す。 [実施例6] 普通ポルトランドセメントクリンカーと混合石膏とフライアッシュを、同時に粉砕して粉砕物(ブレーン比表面積3,140cm2/g)を得た後、該粉砕物に石灰石粉末を添加して混合する以外は実施例1と同様にしてセメント組成物を得た。」 「【0039】 【表3】 [図:0001423554000006.jpg] 」 3 甲3について 甲3には、以下の事項が記載されている。 (甲3ア) 「 [図:0001423554000007.jpg] 」(19頁左上) (甲3イ) 「 [図:0001423554000008.jpg] 」(20頁中段の表) 4 甲4について 甲4には、以下の事項が記載されている。 (甲4ア)「【0005】 そこで、本発明においては、製造時の環境負荷を小さくすることができ、かつ、普通ポルトランドセメントや高炉セメント等の慣用のセメントと同等の流動特性および硬化特性を有する水硬性組成物を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者らは、斯かる実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定量のTi02と、特定量のS03を含有するセメントクリンカーの粉砕物と、石膏とを組み合わせることにより、製造時の環境負荷を小さくすることができるうえ、普通ポルトランドセメント等の慣用のセメントと同等の流動特性および硬化特性が得られることを見いだし、本発明を完成させたものである。」 (甲4イ)「【0010】 本発明で使用するセメントクリンカーは、産業廃棄物、一般廃棄物及び建設発生土から選ばれる1種以上を原料として使用することができる。産業廃棄物としては、例えば、高炉スラグ;石炭灰;生コンスラッジ、下水汚泥、浄水汚泥、建設汚泥、製鉄汚泥等の各種汚泥;廃石膏ボート等の石膏廃材;ボーリング廃土、各種焼却灰、鋳物砂、ロックウール、廃ガラス、高炉2次灰、建設廃材、コンクリート廃材などが挙げられ;一般廃棄物としては、例えば下水汚泥乾粉、都市ごみ焼却灰、貝殻等が挙げられる。建設発生土としては、建設現場や工事現場等から発生する土壌や残土、さらには廃土壌等が挙げられる。これらの廃棄物等を原料として使用することにより、原料としての石灰石の使用量を低減でき、製造の際の炭酸ガスの発生量を抑制することができる。なお、本発明で使用するセメントクリンカーは、一般のポルトランドセメントクリンカー原料、例えば、石灰石、生石灰、消石灰等のCaO原料、珪石、粘土等のSiO2原料、粘土等のAl2O3原料、鉄滓、鉄ケーキ等のFe2O3原料も使用することができる。 【0011】 上記原料を使用して、TiO2とSO3の含有量を上記特定量に調整できない場合には、TiO2原料として、廃(光)触媒、ルチル、チタン鉄鉱等を使用することができ、SO3原料としては、石膏、廃石膏ボード、ペトコークス、廃硫酸、硫黄(石油回収硫黄等)等を使用することができる。」 第5 当審の判断 1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 ア 甲1発明の「普通ポルトランドセメントクリンカ粉砕物と、半水石膏と二水石膏との混合物であ」る「普通ポルトランドセメント」、「石灰石粉末、フライアッシュ、II型無水石膏を混合して得たセメント組成物」は、本件発明1の「セメントクリンカ粉末、石膏粉末、石灰石粉末及びフライアッシュを含む混合物からなるセメント組成物」に相当する。 イ 甲1発明の「セメント組成物中において、石灰石粉末は5質量%」であることは、本件発明1の「前記石灰石粉末は、前記混合物において5.0質量%以上の割合で含まれて」いることを満たしている。 また、甲1発明の「セメント組成物中において、石灰石粉末は5質量%、フライアッシュは5質量%」であることは、石灰石粉末とフライアッシュの合計が10質量%であるから、本件発明1の「前記石灰石粉末及び前記フライアッシュは、前記混合物において合計で10.0質量%以下の割合で含まれて」いることを満たしている。 ウ 一致点・相違点 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 (一致点) 「セメントクリンカ粉末、石膏粉末、石灰石粉末及びフライアッシュを含む混合物からなるセメント組成物であって、 前記石灰石粉末及び前記フライアッシュは、前記混合物において合計で10.0質量%以下の割合で含まれており、 ここで前記石灰石粉末は、前記混合物において5.0質量%以上の割合で含まれている、 セメント組成物。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 石膏粉末について、本件発明1では、「前記混合物においてSO3換算で0.6質量%以上2.4質量%以下の割合で含まれて」いるのに対し、甲1発明では、「セメント組成物中において」「II型無水石膏はSO3換算で1.5質量%」と特定されているものの、「普通ポルトランドセメント」における「半水石膏と二水石膏」の含有量が不明であり、すなわち、セメント組成物中における「半水石膏と二水石膏」の含有量が不明であるから、セメント組成物における「石膏粉末」に相当する含有割合は不明である点。 (相違点2) セメントクリンカ粉末について、本件発明1では「前記セメントクリンカ粉末のTiO2含有率、MnO含有率、P2O5含有率、Na2O含有率及びK2O含有率をそれぞれT質量%、M質量%、P質量%、N質量%及びK質量%と定義した場合における前記セメントクリンカ粉末の物性値「(T+M+P)/(N+0.658×K)」が0.80以上1.40以下」であるのに対し、甲1発明では、そもそも「セメントクリンカ粉砕物」のTiO2含有率、MnO含有率、P2O5含有率、Na2O含有率及びK2O含有率が不明であり、セメントクリンカ粉末の物性値として「(T+M+P)/(N+0.658×K)」を計算できるものではない点。 (相違点3) セメント組成物が、本件発明1では、「前記セメントクリンカ粉末に含まれるSO3をクリンカSO3と定義し、前記石膏粉末に含まれるSO3を石膏SO3と定義し、前記混合物に対する前記クリンカSO3の割合をS1質量%と定義し、前記混合物に対する前記石膏SO3の割合をS2質量%と定義した場合において、前記S1質量%と前記S2質量%との合計値が1.90質量%以上であり、かつ、前記S1質量%に対する前記S2質量%の割合が0.90以上3.00以下である」のに対し、甲1発明では、そもそも、セメント組成物中に対する「セメントクリンカ粉末に含まれるSO3」の割合(S1質量%)及び「石膏粉末に含まれるSO3」の割合(S2質量%)を把握しておらず、「S1質量%とS2質量%との合計値」かつ「S1質量%に対する前記S2質量%の割合」について記載されていない点。 (2)相違点の判断 事案に鑑み、相違点3について検討する。 ア 本件発明1の上記相違点3に係る技術的事項は、まず、「セメントクリンカ粉末に含まれるSO3」と「石膏粉末に含まれるSO3」に着目し、混合物に対するクリンカSO3の割合、石膏SO3の割合を順にS1質量%、S2質量%とし、「S1+S2」及び「S2/S1」の値が記載されている上記第3の(本ウ)で摘記した【表12】とそれらの具体的な実験例が記載されている【表5】及び【表10】から、「S1+S2」が1.90以上であり、かつ、「S2/S1」が0.90以上3.00以下であれば、強度発現性が高まることを見い出したものである。 そして、同(本ウ)の【0070】及び【0071】には、「S1+S2」及び「S2/S1」を上記範囲とすることにより、セメント組成物において多くのクリンカSO3と多くの石膏SO3とが互いに均衡して含まれていることになり、このセメント組成物を水と混練すると、混練初期段階においては石膏粉末から石膏SO3が溶出し、混練初期段階経過後においてはセメントクリンカ粉末からクリンカSO3が溶出し、これにより、混練段階において、石膏粉末及びセメントクリンカ粉末から途切れることなく連続的にSO3が溶出し、このSO3により途切れることなく連続的にフライアッシュの水和が促進することで強度発現性が高まることが示されている。 イ 一方、甲1においては、そもそも、セメント組成物中に対する「セメントクリンカ粉末に含まれるSO3」の割合(S1質量%)及び「石膏粉末に含まれるSO3」の割合(S2質量%)を把握していないことから、強度発現性を高めるために「S1+S2」及び「S2/S1」を特定の範囲とする技術的思想が示唆されるものではない。 この点、上記他の甲号証である甲2、甲3及び甲4を参照しても、セメント組成物に対する「セメントクリンカ粉末に含まれるSO3」の割合(S1質量%)及び「石膏粉末に含まれるSO3」の割合(S2質量%)に着目し、強度発現性を高めるために「S1+S2」及び「S2/S1」を特定の範囲とする技術的思想は開示されておらず、また、そのような技術的思想が本件出願前周知であったともいえない。 ウ そうすると、甲1~甲4の記載をいかに組み合わせたとしても、強度発現性を高めるために「S1+S2」及び「S2/S1」を特定の範囲とすることは導出されないのであるから、上記相違点3に係る「前記S1質量%と前記S2質量%との合計値が1.90質量%以上であり、かつ、前記S1質量%に対する前記S2質量%の割合が0.90以上3.00以下である」ことは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (3)小括 したがって、本件発明1は、相違点1及び2について検討するまでもなく、甲1発明、及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、さらには、甲3号証に記載された事項(周知技術)又は甲4号証に記載された事項(周知技術)を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)相違点3に係る申立人の主張について ア 申立人の主張 申立人は、上記甲2について、(甲2ウ)の【表3】の実施例において、石膏が1.6質量%(クリンカと石膏(SO3換算)の各量の合計100質量%中の石膏(SO3換算)の割合)と全SO3が2.2質量%(クリンカと石膏(SO3換算)の各量の合計100質量%中の全SO3の割合)であるから、クリンカのSO3は(2.2-1.6=)0.6質量%となり、そして、セメント組成物におけるフライアッシュが7.7質量%、石灰石が2.0質量%と記載されているから、上記クリンカの0.6質量%及び石膏の1.6質量%を、セメント組成物におけるクリンカのSO3(本件発明1のS1質量%)及び石膏のSO3(本件発明1のS2質量%)に換算すると、S1が0.54質量%、S2が1.45質量%と計算でき、S2/S1=2.69と求まり、本件発明1の「0.90以上3.00以下」を満たすことを主張している(申立書26頁9行~27頁4行)。なお、上記S1+S2を求めると1.99質量%となり、本件発明1の「1.90質量%以上」も満たすことにもなる。 そして、甲1発明への上記甲2の記載事項の適用について、「そうすると、甲第1号証に記載された発明で用いている普通ポルトランドセメントクリンカ粉砕物に代え、甲第2号証に記載されている、原料の一部に産業廃棄物を用いて調製した、SO3含有量が多い、普通ポルトランドセメントクリンカー粉末を用いて、本件特許発明1で規定されている、前記S1、およびS2により規定される関係を満たすものとすることは、当業者が容易になし得ることである。」(申立書29頁1~6行)と主張している。 イ 申立人の主張に対する当審の判断 (ア)まず、申立人の主張は、上記相違点3に係る強度発現性を高めるために「S1+S2」及び「S2/S1」を特定の範囲とする技術的思想の存在について言及していない点において、当を得たものとはいえない。 (イ)次に、申立人の主張に沿って検討するに、申立人は、甲2の【表3】の実施例に記載されている各種の値から、S1が0.54質量%、S2が1.45質量%となることを算出している。 当該算出が正しいものとしても、甲2の(甲2ア)には、 「普通ポルトランドセメントクリンカーA~Bの製造で使用した材料以外の使用材料を以下に示す。 (1)排脱二水石膏:住友金属社製の排脱二水石膏を、最大粒径が1.2mm以下となるように解砕したもの (2)半水石膏:上記排脱二水石膏を140℃で加熱したもの (3)石灰石:粒径30mm程度 (4)石灰石粉末:ブレーン比表面積8,000cm2/g ・・・ (8)フライアッシュA~E:表2に示すもの ・・・ また、排脱二水石膏と半水石膏を、排脱二水石膏と半水石膏の合計100質量%中の半水石膏の割合が50質量%(SO3換算によるもの)となるように混合してなる石膏(以下、「混合石膏」ともいう。)を製造した。」と記載されており、 一方、甲1の(甲1エ)の【0021】には、 「[使用材料] (1)普通ポルトランドセメントA~C:普通ポルトランドセメントクリンカ粉砕物と、半水石膏と二水石膏の混合物、太平洋セメント社製、詳細は表1参照 (2)二水石膏:排脱二水石膏 (3)II型無水石膏粉末:ブレーン比表面積4,220cm2/g (4)石灰石粉末:ブレーン比表面積4,190cm2/g (5)高炉スラグ微粉末:ブレーン比表面積4,210cm2/g (6)フライアッシュ:ブレーン比表面積3,690cm2/g (7)細骨材:「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に規定される標準砂 (8)水:水道水」と記載されている。 そして、両者を対比すると、甲2における排脱二水石膏と半水石膏とを混合した「石膏」は、甲1発明において「普通ポルトランドセメント」を構成する「半水石膏と二水石膏との混合物」に相当するものである。 そうすると、仮に、甲1発明に対して、甲2に記載の「S1が0.54質量%、S2が1.45質量%と算出される」セメント組成物となる原料の一部を適用したとしても、甲1発明は、半水石膏と二水石膏の混合物を含む普通ポルトランドセメントに、さらに上記II型無水石膏粉末を加えて、セメント組成物中において「II型無水石膏はSO3換算で1.5質量%」となるようにするものであるから、上記甲2で算出されるS2の値は、甲1発明に適用すると1.45+1.5=2.95質量%となり、S2/S1=5.46となり、本件発明1の「0.90以上3.00以下」を満たさない。 したがって、仮に、甲1発明に対して、甲2に記載の「S1が0.54質量%、S2が1.45質量%と算出される」セメント組成物となる原料の一部を適用したとしても、相違点3に係る事項を満たすものとはならないことから、上記申立人の主張は失当である。 加えていうなら、申立人が主張する「甲第1号証に記載された発明で用いている普通ポルトランドセメントクリンカ粉砕物に代え、甲第2号証に記載されている、原料の一部に産業廃棄物を用いて調製」するということは、普通ポルトランドセメントとして普通に用いられているクリンカ粉末の成分を変えるということであるから、下記4(2)で述べる申立人の相違点2についての主張(成分はJIS規格の成分である)と整合しないものともなる。この点、さらに、甲4に記載されている特定量のTi02と特定量のS03を含有するセメントクリンカーの粉砕物を用いるという技術を甲1発明に適用しても、普通ポルトランドセメントとして普通に用いられているクリンカ粉末の成分を変えるということであるから、同様に、下記4(2)で述べる申立人の相違点2についての主張と整合しないものとなる。 (ウ)いずれにしても、申立人の主張は、上記(2)及び(3)の当審の判断に何ら影響を及ぼすものではない。 2 本件発明4について 本件発明4は「セメント組成物」の製造方法の発明であるところ、上記第2で記載したとおり、その発明特定事項として、本件発明1と同様に、 「前記石膏粉末は、前記混合物においてSO3換算で0.6質量%以上2.4質量%以下の割合で含まれており、 前記セメントクリンカ粉末のTiO2含有率、MnO含有率、P2O5含有率、Na2O含有率及びK2O含有率をそれぞれT質量%、M質量%、P質量%、N質量%及びK質量%と定義した場合における前記セメントクリンカ粉末の物性値「(T+M+P)/(N+0.658×K)」が0.80以上1.40以下であり、 前記セメントクリンカ粉末に含まれるSO3をクリンカSO3と定義し、前記石膏粉末に含まれるSO3を石膏SO3と定義し、前記混合物に対する前記クリンカSO3の割合をS1質量%と定義し、前記混合物に対する前記石膏SO3の割合をS2質量%と定義した場合において、 前記S1質量%と前記S2質量%との合計値が1.90質量%以上であり、かつ、前記S1質量%に対する前記S2質量%の割合が0.90以上3.00以下である」 との構成を有することから、甲1発明を「セメント組成物」の製造方法の発明(以下「甲1発明’」という。)として、本件発明4と甲1発明’とを対比すると、少なくとも上記1(1)ウで記載した相違点1~3の点で相違することになる。 そして、上記1(2)で述べたとおり、少なくとも相違点3について当業者が容易になし得たことではないから、本件発明4は、その余の相違点について検討するまでもなく、甲1発明’、及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、さらには、甲3号証に記載された事項(周知技術)又は甲4号証に記載された事項(周知技術)を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件発明2、3及び5について 本件発明2及び3は、本件発明1を直接的又は間接的に引用する発明であり、本件発明5は、本件発明4を直接的に引用する発明であるから、本件発明2、3及び5は、甲1発明又は甲1発明’、及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、さらには、甲3号証に記載された事項(周知技術)又は甲4号証に記載された事項(周知技術)を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 その余の申立人の主張について 上記1~3で述べた当審の判断に、もやは影響を及ぼすものではないが、申立人の上記相違点1及び2の主張に対する当審の判断についても一応述べておく。 (1)相違点1について 申立人は、甲1発明のセメント組成物における石膏粉末の含有割合について、まず「甲第1号証に記載された「セメント組成物」を調製するのに、石膏は、セメントA中に、SO3換算で1.9質量%となるように配合した、半水石膏および二水石膏の混合石膏と、セメント組成物中に、SO3換算で1.5質量%となるように配合したII型無水石膏とを使用している。・・・、SO3換算で1.9質量%の半水石膏および二水石膏の混合石膏が含まれていることになるから、これをセメント組成物中のSO3に換算すると、・・・」(申立書15頁20~16頁13行)との前提のもと、相違点1を抽出し、その前提のもと容易論を展開しているが、そもそも、(甲1エ)の表1のセメントAのSO3(質量%)の「1.9」は、普通ポルトランドセメントクリンカ粉砕物と半水石膏と二水石膏の混合物の合計におけるSO3(質量%)であり((甲1ウ)に「普通ポルトランドセメント中のSO3の割合」と記載されている)、半水石膏及び二水石膏の混合石膏との含有量ではないから、前提において誤りである。 (2)相違点2にいて 申立人は、「すなわち、甲第3号証は、・・・同刊行物には、セメントの規格と品質として、表1-8には、各種セメントについて、JISに規定されているセメントの構成並びに品質の規定事項が、表1-9には化学分析結果、表1-10には、各種セメントの物理試験結果が、それぞれ記載されている。 そして、そのうち普通ポルトランドセメントについて、表1-9には、Na2Oが0.28質量%、K2Oが0.40質量%、TiO2が0.28質量%、P2O5が0.25質量%、MnOが0.09質量%含まれていることが記載されている。 そこで、これらの各成分の含有率から、上記の式にしたがい算出すると、・・・本件特許発明1で規定する0.80以上1.40以下の範囲を満たしている蓋然性が高く、発明特定事項Dも実質的に一致していることがわかる。」(17頁10~23行)と主張しているが、(甲3イ)に記載の表1-9の化学成分(%)の表の下には、「成分はJIS R 5202:2010によるもので、それ以外はJIS R 5204:2002によるものである。」と記載され、(甲3ア)によれば、「JIS R 5202」はセメントの化学分析法、「JIS R 52045204」はセメントの蛍光X線分析法であり、甲1発明に当てはめれば、「クリンカ粉砕物」の化学分析ではなく、「普通ポルトランドセメントA~C」の化学分析に相当するのであるから、甲3に記載されている技術内容を正しく理解したうえでの主張とはいえない。 5 まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1~5は、甲1発明又は甲1発明’、及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、さらには、甲3号証に記載された事項(周知技術)又は甲4号証に記載された事項(周知技術)を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものではないことから、申立理由によって、本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~5係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700359

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