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特許異議申立

2025-700547

セメント組成物及びその製造方法

審判番号
2025-700547
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-070497
登録番号
7598966
請求日
2025年05月23日
審決日
2025年09月25日
公報発行日
2025年10月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】UBE三菱セメント株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人翔和国際特許事務所
  • 【異議申立人】三上 恵只
  • 【異議申立人】清水 朋子
審判長/審判官
  • 審判長 深草 祐一
  • 審判官 増山 淳子
  • 審判官 田口 裕健
分類
P1651.121-Y (C04B) / P1651.537-Y (C04B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法36条6項1号特許法113条2号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7598966号発明「セメント組成物及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7598966号の請求項1~11に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7598966号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、令和5年4月21日に出願され、令和6年12月4日にその特許権の設定登録がされ、同年同月12日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和7年5月23日に、本件特許の請求項1~11に係る特許について、特許異議申立人 三上 恵只(以下、「申立人A」という。)により特許異議の申立てがなされ、また、同年6月11日に、同請求項1~11に係る特許について、特許異議申立人 清水 朋子(以下、「申立人B」という。)により特許異議の申立てがなされた。 第2 本件特許 本件特許の請求項1~11に係る発明は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。以下、各請求項に係る発明及び特許を、項番に対応して「本件発明1」、「本件特許1」などといい、まとめて「本件発明」、「本件特許」ということがある。 「【請求項1】 軽質炭酸カルシウムと、ポルトランドセメントクリンカと、石膏と、を含むセメント組成物であって、 前記軽質炭酸カルシウムは、 その体積基準累積50%粒子径が10μm以上35μm以下であり、 1μm通過分が体積基準で3.0%以下であり、且つ、 35μm残分が体積基準で5.0%以上50.0%以下であり、 前記セメント組成物を100質量%とした場合、 前記軽質炭酸カルシウムの含有量が1質量%以上20質量%以下であり、且つ、 前記ポルトランドセメントクリンカの含有量及び前記石膏の含有量の合計量が80質量%以上99質量%以下である、セメント組成物。 【請求項2】 前記軽質炭酸カルシウムは、15μm通過分が体積基準で5.0%以上60.0%以下である、請求項1に記載のセメント組成物。 【請求項3】 前記軽質炭酸カルシウムの粒度分布におけるロジンラムラー式のn値が2.2以上4.0以下である、請求項1に記載のセメント組成物。 【請求項4】 前記軽質炭酸カルシウム中の水酸化カルシウムの含有量が5質量%以下である、請求項1に記載のセメント組成物。 【請求項5】 更に重質炭酸カルシウムを含み、 前記セメント組成物を100質量%とした場合、前記軽質炭酸カルシウムの含有量及び重質炭酸カルシウムの含有量の合計量が1質量%以上20質量%以下である、請求項1に記載のセメント組成物。 【請求項6】 前記セメント組成物の粒度分布におけるロジンラムラー式のn値が1.14以上1.50以下である、請求項1に記載のセメント組成物。 【請求項7】 前記セメント組成物はそのブレーン比表面積値が2000cm2/g以上4000cm2/g以下である、請求項1に記載のセメント組成物。 【請求項8】 軽質炭酸カルシウムと、ポルトランドセメントクリンカと、石膏と、を含むセメント組成物の製造方法であって、 前記軽質炭酸カルシウムは、 その体積基準累積50%粒子径が10μm以上35μm以下であり、 1μm通過分が体積基準で3.0%以下であり、且つ、 35μm残分が体積基準で5.0%以上50.0%以下であり、 前記セメント組成物を100質量%とした場合、 前記軽質炭酸カルシウムが前記セメント組成物中に1質量%以上20質量%以下含まれ、且つ、 前記ポルトランドセメントクリンカ及び前記石膏が前記セメント組成物中にこれらの合計で80質量%以上99質量%以下含まれるように、前記軽質炭酸カルシウムと該ポルトランドセメントクリンカと該石膏とを混合する、セメント組成物の製造方法。 【請求項9】 前記軽質炭酸カルシウムは、15μm通過分が体積基準で5.0%以上60.0%以下である、請求項8に記載の製造方法。 【請求項10】 カルシウムを含む廃棄物又は副産物を準備し、 二酸化炭素の分圧を0.1MPa超5.0MPa以下に設定し、該分圧の状態下に、前記廃棄物又は前記副産物を水に分散又は溶解させて抽出対象液を調製し、 前記抽出対象液から液体成分を回収し、 前記液体成分と炭酸カルシウム種結晶とを混合し、 二酸化炭素の分圧を36Pa以上1.0MPa以下に設定し、該分圧の状態下に、前記液体成分から前記軽質炭酸カルシウムを析出させる、請求項8に記載の製造方法。 【請求項11】 前記廃棄物及び前記副産物が、廃コンクリート、廃モルタル又は廃セメントペーストである、請求項10に記載のセメント組成物の製造方法。」 第3 特許異議申立理由の概要 1 申立人Aによる申立理由 (1)特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)(以下、「申立理由A1」とする。) 本件発明1~11は、下記(3)の甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明と、他の甲各号証に記載された技術的事項及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1~11は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)(以下、「申立理由A2」とする。) 本件特許1~5は、特許請求の範囲の記載が下記第4の2(1)アの点で不備であるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (3)証拠方法 甲第1号証:特開2014-76933号公報 甲第2号証:坂井吾郎ほか,「CCU材料の炭酸カルシウム微粉末を用いたコンクリートのCO2固定量」,土木学会全国大会年次学術講演会(Web),Vol.77,P.ROMBUNNO.V-519,2022年 甲第3号証:M.de Beer et al.,“Synthesis of high-purity precipitated calcium carbonate during the process of recovery of elemental sulphur from gypsum waste”,Waste Management,Vol.46,P.619-627,2015年 甲第3号証の訳文 甲第4号証:特許第3995745号公報 甲第5号証:藤倉裕介ほか,「セメント硬化体の相組成と構成相の粒度変化に着目した空隙構造モデル」,コンクリート工学年次論文集,Vol.31,No.1,P.733-738,2009年 甲第6号証:藤原浩已ほか,「粉体の粒度特性が及ぼすモルタルの降伏値および塑性粘度への影響」,土木学会論文集、No.532/V-30,P.151-158,1996年 甲第7号証:特開2006-69860号公報 (以下、申立人Aが提出した各証拠を「甲A1」~「甲A7」という。) 2 申立人Bによる申立理由 (1)特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)(以下、「申立理由B1」とする。) 本件発明1~11は、下記(3)の甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証又は甲第4号証に記載された発明と、他の甲各号証に記載された技術的事項及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1~11は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)(以下、「申立理由B2」とする。) 本件特許1~11は、特許請求の範囲の記載が下記第4の2(1)イの点で不備であるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (3)証拠方法 甲第1号証:特開2020-152631号公報 甲第2号証:佐々木猛ほか,「エコタンカル(R)(軽質炭酸カルシウム)とその可能性」,セメント・コンクリート,No.900,P.58-62,2022年 甲第3号証:特開昭48-84831号公報 甲第4号証:依田侑也ほか,「混合セメントの水和発熱量と圧縮強度の関係」,Cement Science and Concrete Technology,Vol.69,P.191-198,2015年 甲第5号証:佐々木猛ほか,「コンクリートスラッジを用いた炭酸塩鉱物化およびその利活用 ~エコタンカル(R)、PAdeCS(R)~」,Review of Asian and Pacific Studies 特別号,P.49-59,2022年 甲第6号証:鹿島建設株式会社らによるプレスリリース「CCU材料としての炭酸カルシウム微粉末を大量に混入した高流動コンクリートを開発 ~i-Constructionによる作業の省人化とCO2の大幅削減を同時に実現~」,2022年1月26日 甲第7号証:再公表特許第2004/076352号 (当審注:申立人Bが提出した特許異議申立書及び証拠説明書には、甲第7号証が「国際公開WO2004/076352」である旨記載されているが、実際に提出された証拠は、「再公表特許第2004/076352号」である。なお、両文献に記載された技術事項自体に差異はない。) 甲第8号証:特開平5-238790号公報 甲第9号証:一般社団法人日本規格協会,「JISハンドブック(10) 生コンクリート」,P.388-401,2016年 甲第10号証:社団法人セメント協会,「セメントの常識」,P13-14,19-20,2009年 甲第11号証:特開2006-69860号公報 甲第12号証:特開2013-189377号公報 (以下、申立人Bが提出した各証拠を「甲B1」~「甲B12」という。) 第4 当審の判断 1 申立理由A1及びB1(進歩性欠如)について (1) 甲各号証の記載内容 ア 甲A1について (ア)甲A1の記載事項 甲A1には、以下の記載がある。なお、摘記中の下線は当審にて付したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。他の証拠の摘記についても同様である。 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 そこで、本発明は、上記のような従来の問題を鑑みて、品質が安定しており且つ比較的短い混練時間でも流動性を向上させうる高強度コンクリート用の混和材および高強度コンクリート用のセメント組成物を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明に係る高強度コンクリート用の混和材は、平均粒子径0.1μm以上0.4μm以下であってpH8.5以上11未満の軽質炭酸カルシウム粉末を含む。 【0007】 前記本発明によれば、前記特定の範囲の平均粒子径および特定の範囲のpHである軽質炭酸カルシウム粉末を含むことで、品質が安定しており、且つ、水結合材比を小さくした高強度コンクリートに配合した場合でも、比較的短時間の混練で流動性を向上させることができる。 【0008】 本発明に係る高強度コンクリート用のセメント組成物は、セメントと、減水剤と、前記混和材とを含む。」 ・・・ 【発明を実施するための形態】 ・・・ 【0015】 前記軽質炭酸カルシウム粉末は、消石灰と二酸化炭素とを反応させて人工的に合成される炭酸カルシウムの粉末である。軽質炭酸カルシウムは、人工的に合成するため、粒子径や、pH等を調整することが容易にできる。本実施形態の前記軽質炭酸カルシウム粉末は、平均粒子径0.1μm以上0.4μm以下、好ましくは、0.2μm以上0.3μm以下であって、pH8.5以上11未満、好ましくはpH8.5以上10未満のものである。 前記軽質炭酸カルシウム粉末の平均粒子径およびpHが前記範囲であることで、セメント組成物に配合して、練り混ぜた際に、短時間の練混でも高い流動性を得ることができる。 【0016】 前記軽質炭酸カルシウム粉末の平均粒子径とは、レーザー回析・散乱法によって得られる粒度分布の累積50質量%における粒子径である。」 ・・・ 【0020】 次に、前記混和材を含む高強度コンクリート用のセメント組成物の一実施形態について説明する。 本実施形態のセメント組成物は、セメントと、減水剤と、前記混和材とを含む高強度コンクリート用のセメント組成物である。 【0021】 前記セメントは、特に制限されるものではなく、公知の各種セメントを使用できる。例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント等のポルトランドセメント;白色ポルトランドセメント;高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の混合セメント;アルミナセメント;アーウィン系セメント;低熱セメント;超速硬セメント等が挙げられる。中でも、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等が流動性等の観点から好ましく用いられる。 【0022】 前記セメントの配合量は、例えば、単位量(kg/m3:コンクリート1m3あたりの質量)で、300~1200kg/m3、好ましくは400~1000kg/m3である。前記範囲であることで、高強度のコンクリートが得られる。 ・・・ 【0024】 前記減水剤の配合量は、例えば、固形分換算で、0.05~10質量%、好ましくは0.5~5質量%である。前記範囲であることで、セメント組成物を練り混ぜる際には、適度な流動性が得られると同時に、硬化後には、高い強度が得られる。また、凝結時間の遅延を抑制できる。 【0025】 本実施形態のセメント組成物に含まれる混和材は前述したような平均粒子径0.1μm以上0.4μm以下であってpH8.5以上11未満の炭酸カルシウム粉末を含む混和材である。 前記混和材の配合量は、例えば、単位量(kg/m3)で、5~500kg/m3、好ましくは20~400kg/m3である。前記範囲であることで、水結合材比の低い高強度コンクリート用のセメント組成物の練混時の流動性の低下を抑制できると同時に、練り混ぜ時間が比較的短時間でも十分な流動性を得ることができる。」 (イ)甲A1に記載された発明 上記(ア)の【0006】及び【0008】によれば、甲A1には、「平均粒子径0.1μm以上0.4μm以下であってpH8.5以上11未満の軽質炭酸カルシウム粉末を含む」「混和材」や、「セメントと、減水剤と、前記混和材とを含む」「セメント組成物」に関する技術が記載されている。 ここで、同【0016】によれば、上記「軽質炭酸カルシウム粉末」の「平均粒子径」は、「レーザー回析・散乱法によって得られる粒度分布の累積50質量%における粒子径」のことである。 また、同【0021】によれば、上記「セメント」として、「普通ポルトランドセメント」が用いられ、同【0022】によれば、上記「セメントの配合量は、・・・単位量(kg/m3:コンクリート1m3あたりの質量)で、300~1200kg/m3」である。 さらに、同【0024】によれば、上記「減水剤の配合量は、・・・固形分換算で、0.05~10質量%」であり、上記【0025】によれば、上記「混和材の配合量は、・・・単位量(kg/m3)で、5~500kg/m3」である。 以上からすると、甲A1には、以下の発明が記載されているといえる。 「平均粒子径0.1μm以上0.4μm以下であってpH8.5以上11未満の軽質炭酸カルシウム粉末を含む混和材と、セメントと、減水剤とを含むセメント組成物であって、 上記軽質炭酸カルシウム粉末の平均粒子径は、レーザー回析・散乱法によって得られる粒度分布の累積50質量%における粒子径であり、 上記セメントは、普通ポルトランドセメントであり、上記セメントの配合量は、単位量(kg/m3:コンクリート1m3あたりの質量)で、300~1200kg/m3であり、 上記減水剤の配合量は、固形分換算で、0.05~10質量%であり、 上記混和材の配合量は、単位量(kg/m3)で、5~500kg/m3である、 セメント組成物。」 以下、当該発明を「甲A1発明」という。 イ 甲A2について (ア)甲A2の記載事項 甲A2には、以下の記載がある。 「2.炭酸カルシウム微粉末を用いたコンクリート CCU材料として,戻りコンクリートや廃コンクリート等に含まれるカルシウムを抽出し,CO2を反応させて炭酸カルシウムCaCO3を生成して固定化する技術2)を筆者らが開発しており,その炭酸カルシウムの微粉末が既に商品化されている.その生成のフローは,図-1に示すとおりである.この炭酸カルシウムの微粉末は,石灰石から産出される石灰石微粉末と成分的にほぼ同じものである.筆者らは,約30年前に高流動コンクリートの研究において,流動性を高めた際の粗骨材の材料分離の抵抗性を高めるために,105~313kg/m3の石灰石微粉末(炭酸カルシウム)を入れたコンクリートの配合について実験によって検討している3).実験に使用した材料は表-1,コンクリートの配合は表-2に示すとおりである.この実験によって,炭酸カルシウムの微粉末を313kg/m3入れた高流動コンクリートは十分な充填性を有することが示されている. ・・・ [図:0001428010000001.jpg] [図:0001428010000002.jpg] ・・・ 3.CO2固定量の試算 まず,炭酸カルシウムの微粉末をCCU材料とした場合,炭酸カルシウムの微粉末をコンクリート1m3当たり313kg入れた際のCO2の固定量は,八木ら2)が試算に用いている炭酸カルシウム1kg当たりのCO2固定量0.39kgを用いれば,122.0kg/m3となる. ・・・ 参考文献 ・・・ 2) 八木利之ら:エコタンカル CO2を原料とした環境にやさしい軽質炭酸カルシウム,土木施工,Vol.62,No.11,pp.87-90,2021.11.」(第1ページ第2段落~第2ページ最終段落) (イ)甲A2に記載された発明 上記(ア)の項目「2.炭酸カルシウム微粉末を用いたコンクリート」によれば、甲A2には、「CCU材料として,戻りコンクリートや廃コンクリート等に含まれるカルシウムを抽出し,CO2を反応させて炭酸カルシウムCaCO3を生成して固定化する技術2)」により得られた「炭酸カルシウムの微粉末が既に商品化されている」ことが記載されている。ここで、当該技術の参考文献2)のタイトルからすれば、当該「炭酸カルシウムの微粉末」は、「エコタンカル」と呼ばれる「軽質炭酸カルシウム」である(なお、「エコタンカル」は後述の甲B2等にも記載されるものである。)。 また、同項目によれば、甲A2には、過去に「105~313kg/m3の石灰石微粉末(炭酸カルシウム)を入れたコンクリートの配合について実験によって検討」されたことが記載されており、特に「表-1」によれば、当該コンクリートは、「石灰石微粉末(炭酸カルシウム)」の他に、「普通ポルトランドセメント」、「高炉スラグ微粉末」、「水」、「細骨材」、「粗骨材」、「高性能減水剤」を混合して得られたものであり、当該混合物中の各成分の含有量は、「表-2」に記載されるとおりのものである。ここで、当該「石灰石微粉末」は、「石灰石」の「微粉末」との表記や、上述の「CCU材料」とは別の成分として記載されていることから、石灰石を粉砕して得られた重質炭酸カルシウムであると認識でき、また、「表-2」中の「C」はセメント、「石粉」は石灰石微粉末を示すことも認識できる。 さらに、上記(ア)の項目「3.CO2固定量の試算」では、コンクリートに含有させる「炭酸カルシウムの微粉末をCCU材料とした場合」の試算が行われているところ、甲A2には、上述のコンクリートに配合させる炭酸カルシウムの微粉末として、「石灰石微粉末」の代わりに上述の「CCU材料」である「エコタンカル」を用いることも記載されているといえる。 以上からすると、甲A2には、以下の発明が記載されているといえる。 「エコタンカルと呼ばれる軽質炭酸カルシウムと、普通ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、水、細骨材、粗骨材、高性能減水剤を混合して得られた、各成分の含有量が下記表のとおりのものである、混合物。 [図:0001428010000003.jpg] (ただし、表中「C」はセメントを意味し、「石粉」列は軽質炭酸カルシウム量を示す。)」 以下、当該発明を「甲A2発明」という。 ウ 甲A3について (ア)甲A3の記載事項 甲A3の訳文には、以下の記載がある。 a 「要約 最近の研究で、石膏廃棄物を熱的に還元して硫化カルシウム(CaS)を生成し、それを直接水中炭酸化することで、硫黄元素と炭酸カルシウム(CaCO3)を製造する方法が示されました。ただし、この方法では炭酸カルシウム製品の品位が低く(質量比90%未満)、改善が必要でした。本研究では、先行研究の知見を活かし、高品位の炭酸カルシウム(質量比99%以上)または沈殿炭酸カルシウム(PCC)を製造するための間接的な水中CaS炭酸化プロセスを開発しました。この方法では、酸性ガス(H2S)を使用して、通常は水への溶解性が低いCaSの溶解性を向上させています。生成された炭酸カルシウムの主成分は方解石(99.5%)で、微量の石英(0.5%)を含み、他の多形であるバテライトやアラゴナイトは検出されませんでした。生成物はミクロンサイズの粒子で構成されており、XRD(X線回折)、TGA(熱重量分析)、SEM(走査型電子顕微鏡)、BET(比表面積測定)、真密度などの手法により詳細に特性評価されました。このプロセスにより、1トンの石膏廃棄物から約0.37トンの高品位PCCを生産でき、同時に約0.19トンの残渣が生じました。これは元の廃棄石膏質量に対して80%の廃棄量削減を意味します。石膏廃棄物を採掘された石灰石の代替原料として活用することで、廃棄物処理問題の緩和に加え、市場性のある製品への大量変換が可能となることが示されました。」(訳文第1ページ4~19行) b 「一般的に、炭酸カルシウム(CaCO3)は多用途にわたる材料である。しかし、低純度・低価値のCaCO3の利用は、酸性鉱山水の中和、セメント製造、製鉄時のフラックス剤などに限定されている。 一方で、高純度のCaCO3、または沈殿炭酸カルシウム(PCC)は、多くの産業分野において汎用性の高い添加剤として長年にわたり認識されており、以下のような広範な用途からその重要性が広く知られている:高分子複合材料として、ゴムおよびセラミックの充填剤、プラスチック、紙、インク、化粧品、歯磨き粉、洗剤などへの添加剤、医薬品や食品の成分、電子機器および触媒に関する多様な用途・・・ 620頁右 高純度PCC(沈殿炭酸カルシウム)の利用は、排ガス脱硫技術にも有益である。純粋なCaCO3(炭酸カルシウム)とSO2(二酸化硫黄)との反応によって、石膏ボード製造に必要な高純度石膏が生成する。」(訳文第2ページ最終行~第3ページ13行) c 「3.3.3. 構造および形態の分析 ・・・ 粒子サイズ特性の比較にはレーザー回折法が用いられた。図7aは累積体積分率を、図7bは粒子サイズの頻度分布を示している。表2のデータは、製品の実測真密度、表面積、および粒子サイズを示している。初期Ca2+濃度が高くなるにつれて、沈殿物の比表面積は増加し、平均粒径は小さくなった。 ・・・ [図:0001428010000004.jpg] (図7:初期Ca2+濃度が異なる条件で生成された高純度CaCO3の粒子サイズ分布曲線。(a)累積体積分率、(b)粒子サイズの頻度分布。) ・・・ (表2:初期ろ液中のCa2+濃度が増加する条件で生成された高純度CaCO3の物理的特性。) [図:0001428010000005.jpg] 」(訳文第13ページ3行~第15ページ16行) (イ)甲A3に記載された公知技術 上記(ア)aによれば、甲A3には、「高品位の炭酸カルシウム(質量比99%以上)または沈殿炭酸カルシウム(PCC)を製造するための間接的な水中CaS炭酸化プロセス」に関する技術が記載されており、同bによれば、当該「高品位の炭酸カルシウム」は、「ゴムおよびセラミックの充填剤、プラスチック、紙、インク、化粧品、歯磨き粉、洗剤などへの添加剤、医薬品や食品の成分、電子機器および触媒に関する多様な用途」や「排ガス脱硫技術」等への使用が想定されるものである。 そして、同cによれば、甲A3には、上記「水中CaS炭酸化プロセス」によって得られた炭酸カルシウムの「構造および形態の分析」結果が示されており、特に「表2」によれば、当該炭酸カルシウムは、「レーザー回折法」により測定された「Particle size distribution」の「D(v,0.5)」が32.36μm又は24.65μmであったことが認識できる。ここで、上記「D(v,0.5)」中の「v」は体積基準であることを表し、「0.5」が「50%」を表すと解されるところ、上記「D(v,0.5)」は、「体積基準累積50%粒子径」を表すものと認識できる。 さらに、「図7(a)」の粒子サイズの「累積体積分率」からは、これらの炭酸カルシウムの1μm通過分(1μm以下の粒子)が3.0%以下の範囲内にあり、35μm残分(35μm以上の粒子)が5.0%以上50.0%以下の範囲内にあることが読み取れる。 以上からすると、甲A3には、以下の技術的事項が記載されているといえる。 「ゴムおよびセラミックの充填剤、プラスチック、紙、インク、化粧品、歯磨き粉、洗剤などへの添加剤、医薬品や食品の成分、電子機器および触媒に関する多様な用途や排ガス脱硫技術等に使用される高品位の炭酸カルシウム(質量比99%以上)または沈殿炭酸カルシウム(PCC)を製造するための間接的な水中CaS炭酸化プロセスによって、 レーザー回折法により測定された体積基準累積50%粒子径が32.36μm又は24.65μmであり、1μm通過分が3.0%以下、35μm残分が5.0%以上50.0%以下の範囲内にある軽質炭酸カルシウムを製造すること。」 以下、当該技術を「甲A3技術」という。 エ 甲B1について (ア)甲B1の記載事項 甲B1には、以下の記載がある。 a 「【請求項1】 セメントクリンカー粉末、石膏粉末、及び、炭酸化したカルシウム含有粉末を含むセメント粉末組成物を製造するための方法であって、 炭酸化前の上記カルシウム含有粉末及び水を含むスラリーの中に、二酸化炭素含有ガスを供給して、炭酸化処理されたスラリーを得る炭酸化工程と、 セメント製造用の仕上げミルの中に、セメントクリンカー、石膏、及び、上記炭酸化処理されたスラリーを供給して粉砕し、上記セメント粉末組成物を得る粉砕工程、 を含むことを特徴とするセメント粉末組成物の製造方法。」 b 「【実施例】 【0020】 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 [使用材料] (1)カルシウム含有粉末a:普通ポルトランドセメント(ブレーン比表面積:3,300cm2/g、太平洋セメント社製) (2)カルシウム含有粉末b:高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積:3,000cm2/g) (3)カルシウム含有粉末c:塩素バイパスダスト (4)カルシウム含有粉末d:廃コンクリート粉砕物(ブレーン比表面積:2,000cm2/g) (5)セメントクリンカー:普通ポルトランドセメントクリンカー(太平洋セメント社製) (6)石膏:二水石膏 カルシウム含有粉末a~dの化学組成を表1に示す。カルシウム含有粉末a~dは、後述する炭酸化処理前のものである。 【0021】 [スラリーを用いた炭酸化処理(液中の炭酸化処理)] カルシウム含有粉末a~dの各々について、カルシウム含有粉末30gと、水1,000gを混合して、スラリーを得た。得られたスラリーが収容されている容器の下部から、セメントキルンの排ガス(二酸化炭素の濃度:20体積%程度)を、10分間供給(バブリング)することで、スラリーを炭酸化処理した。 次いで、得られたスラリーを乾燥させて、炭酸化したカルシウム含有粉末A~Dを得た。該粉末の化学組成、及び、該粉末中の二酸化炭素由来成分(CO2)の含有率を測定した。 二酸化炭素由来成分の含有率は、以下の方法で得た。 熱重量示差熱分析装置(TG-DTA;雰囲気ガス:窒素ガス)を用いて、試料(炭酸化したカルシウム含有粉末)を20℃/分の昇温速度で1,000℃まで加熱して、減量曲線を得た。この減量曲線における600~700℃付近のピークの減量値を求めることによって、炭酸カルシウムを定量した。試料(炭酸化したカルシウム含有粉末)中の二酸化炭素由来成分(CO2)の含有率は、定量された炭酸カルシウム(CaCO3)中の二酸化炭素(CO2)の量に基いて算出した値である。 炭酸化したカルシウム含有粉末A~Dの化学組成(強熱減量、SiO2等の含有率)及び二酸化炭素由来成分の含有率(表1中の「CO2」;炭酸化した部分のCO2換算量)を、表1に示す。 また、炭酸化前のカルシウム含有粉末a~dの化学組成を、表1に示す。 【0022】 [二酸化炭素を高濃度で含む空気を用いた炭酸化処理(気中の炭酸化処理)] カルシウム含有粉末a~cの各々について、恒温室(温度:40℃、相対湿度:80%、二酸化炭素濃度:10体積%)内で24時間、炭酸化処理を行ない、炭酸化したカルシウム含有粉末A2~C2を得た。 炭酸化したカルシウム含有粉末A2~C2の化学組成及び二酸化炭素由来成分の含有率(表1中の「CO2」)を、表1に示す。 【0023】 【表1】 [図:0001428010000006.jpg] [図:0001428010000007.jpg] 【0024】 [実施例1~16] 仕上げミルの一端部である原料投入口に、普通ポルトランドセメントクリンカー及び石膏(以上、普通ポルトランドセメントの原料)を供給した。また、仕上げミルの原料投入口の後流側に位置する円筒状の周壁部(仕上げミルの本体部分)に設けられた複数の孔(スラリー供給口)に、表2に示す種類及び量(乾燥質量換算)の炭酸化したカルシウム含有粉末を含むスラリーを供給した。仕上げミル内で、普通ポルトランドセメントクリンカー、石膏、及びスラリーを混合及び粉砕して、仕上げミルの他端部であるセメント排出口から、セメント粉末組成物を排出させた。 得られたセメント粉末組成物について、強熱減量、及び、二酸化炭素由来成分(CO2)の含有率を測定した。また、得られたセメント粉末組成物について、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して、モルタルを調製した後、材齢3日、7日、28日の各時点におけるモルタルの圧縮強さ(表2中、「モルタル圧縮強さ」と表す。)を測定した。 結果を表2に示す。表2中、「二酸化炭素(質量%)」は、二酸化炭素由来成分(CO2)の含有率を表す。 ・・・ 【0030】 【表2】 [図:0001428010000008.jpg] 」 (イ)甲B1に記載された発明 上記(ア)a【請求項1】によれば、甲B1には、 「セメントクリンカー粉末、石膏粉末、及び、炭酸化したカルシウム含有粉末を含むセメント粉末組成物を製造するための方法であって、 炭酸化前の上記カルシウム含有粉末及び水を含むスラリーの中に、二酸化炭素含有ガスを供給して、炭酸化処理されたスラリーを得る炭酸化工程と、 セメント製造用の仕上げミルの中に、セメントクリンカー、石膏、及び、上記炭酸化処理されたスラリーを供給して粉砕し、上記セメント粉末組成物を得る粉砕工程、 を含む・・・セメント粉末組成物の製造方法」 が記載されている。 そして、同b【実施例】には、上記製造方法によりセメント粉末組成物を製造する具体例が記載されており、同b中の【0024】及び【表2】によれば、セメント粉末組成物を100質量%とした場合、炭酸化したカルシウム含有粉末の含有量が「1」~「10」質量%であり、「Nセメント:普通ポルトランドセメント」の含有量が「99」~「90」質量%である組成物を製造したことが読み取れる。ここで、同【0024】によれば、「Nセメント:普通ポルトランドセメント」は、「普通ポルトランドセメントクリンカー及び石膏」である。 上述のとおり製造された【実施例】のセメント組成物に注目すると、甲B1には、以下の発明が記載されているといえる。 「炭酸化前のカルシウム含有粉末及び水を含むスラリーの中に、二酸化炭素含有ガスを供給して、炭酸化処理されたスラリーを得る炭酸化工程と、 セメント製造用の仕上げミルの中に、セメントクリンカー、石膏、及び、上記炭酸化処理されたスラリーを供給して粉砕し、セメント粉末組成物を得る粉砕工程、 を含む方法により製造された、 普通ポルトランドセメントクリンカー粉末、石膏粉末、及び、炭酸化したカルシウム含有粉末を含むセメント粉末組成物であって、 セメント粉末組成物を100質量%とした場合、 炭酸化したカルシウム含有粉末の含有量が1~10質量であり、 普通ポルトランドセメントクリンカー及び石膏の含有量が99~90質量%である、セメント粉末組成物。」 以下、当該発明を「甲B1発明」という。 オ 甲B2について (ア)甲B2の記載事項 甲B2には、以下の記載がある。 「4.コンクリートスラッジを用いた炭酸塩鉱物化技術1) エコタンカルの製造フローを図2に示す。 (1)コンクリートスラッジを一度貯留槽で受けた後に,溶出槽にて水希釈する。 (2)水希釈されたコンクリートスラッジをフィルタープレスにて固液分離処理する。 (3)固液分離処理後の液体分に,工場におけるボイラーの排気ガス中のCO2を分離・回収することなく,“生”排ガスをそのまま吹き込み,CO2を軽質炭酸カルシウム(=エコタンカル)として生成させる。 (4)固液分離処理後の回形分は破砕等の加工処理に回す。 本技術の大きな特徴は,工場内で余った材料(未利用資源)と排ガスを組み合わせることで,資源を有効活用し,有価物を生み出していることにある。 5.エコタンカルの諸物性 ・・・ 5-2.エコタンカルの物性と品質 現在製造しているエコタンカルの粒子径は約30~40μmであり,そのブレーン値は約3,000~4,000cm2/gである(表1)。CaCO3含有率は95%以上で,白色度も約95%であり,純度の高い炭酸カルシウムであることが大きな特徴として挙げられる。 市販の軽質炭酸カルシウムの粒子径は,粒度調整を行っているため,0.1μm前後の品物も存在する。しかしながら,その粒度調整および品質管理の実施は乾燥や粉砕機の消費電力に応じた追加のCO2の排出が懸念される。そのためエコタンカルはできるだけ製造したままの状態“出来成り”の形で利用することが好ましいと言える。 [図:0001428010000009.jpg] 6.エコタンカルの用途 ・・・ 6-3.土木分野への適用拡大 エコタンカルの特徴を活かし,土木分野への適用の可能性は極めて大きいと考える。エコタンカルと同じくCaCO3の微粉である石灰石微粉末は,高流動コンクリートの混和材として一般的に使用されている。そのため,上述したようにプレキャスト製品および生コンエ場に地産地消の混和材料として活用することはもちろん,エコタンカルはトンネル用吹付けコンクリートやダム用コンクリートに細骨材の微粒分としてフレッシュ性状の改善に効果的と推測される。また,現在,アスファルト舗装用に用いられる石灰石微粉末は,天然の鉱山から採掘,粉砕したものが使用され,その量は年間170万tを超える6)と報告されており,それに伴い多量のCO2が排出されていると考えられる。この代替材料としての利用が期待される。さらに,今後,当社の他のプレキャストコンクリート製品に対しても,同様にエコタンカルを適用し,環境負荷を低減した製品のラインナップを増やしていく。」(第60~62ページ) (イ)甲B2に記載された発明 上記(ア)によれば、甲B2には、「コンクリートスラッジを用いた炭酸塩鉱物化技術」により生成された「軽質炭酸カルシウム(=エコタンカル)」の物性が記載されており、当該「エコタンカルの粒子径は約30~40μm」であることが認識できる。ここで、上記「粒子径」は、上記(ア)の表1によれば、「レーザ回折・散乱法粒子径分布測定」による「平均体積粒子径MV」である。 また、甲B2には、上記「軽質炭酸カルシウム(=エコタンカル)」の用途として、「生コンエ場に地産地消の混和材料として活用」できることも記載されており、この記載から、上記「軽質炭酸カルシウム(=エコタンカル)」を生コンクリート組成物に含有させることも認識できるといえる。 上述のコンクリート組成物に注目すると、甲B2には、以下の発明が記載されているといえる。 「コンクリートスラッジを用いた炭酸塩鉱物化技術により生成された軽質炭酸カルシウム(=エコタンカル)を含む生コンクリート組成物であって、 当該エコタンカルのレーザ回折・散乱法粒子径分布測定による平均体積粒子径MVは約30~40μmである、生コンクリート組成物。」 以下、当該発明を「甲B2発明」という。 カ 甲B3について (ア)甲B3の記載事項 甲B3には、以下の記載がある。 「 [図:0001428010000010.jpg] 実施例1 第1表に示す普通ポルトランドセメント(1)に,軽質炭酸カルシウム(2)を所定量代替添加して均一に混合し,さらにJIS-R-5201-1964に準じて(セメント+炭酸カルシウム):砂:水=1:2:0.65(重量比)の配合の4cm×4cm×16cmの供試体を成形した。 該供試体を材令7日まで温度20℃の水中で養生しさらに,濃度2.5wt%,温度20℃の硫酸マグネシウム水溶液に材令6ケ月および9ケ月まで浸漬した後,曲げ強さをJIS-R-5201-1964に準じて測定した。その結果を第2表に示す。 [図:0001428010000011.jpg] 」(第2ページ左下欄~第3ページ右上欄) (イ)甲B3に記載された発明 上記(ア)の下線部によれば、甲B3には、「普通ポルトランドセメント(1)に,軽質炭酸カルシウム(2)を所定量代替添加して均一に混合」したことが記載されている。 ここで、普通ポルトランドセメントは、上記(ア)第1表の成分からも把握されるとおり、普通ポルトランドセメントクリンカと石膏を含むものである。 また、上記(ア)第2表からすれば、上記混合物の軽質炭酸カルシウムの含有量は、「1」~「15」wt%である。さらに、当該含有量から、上記混合物中の普通ポルトランドセメントの含有量、すなわち、普通ポルトランドセメントクリンカと石膏の合計含有量が99~85wt%であることが把握できる。 そうすると、甲B3には、以下の発明が記載されているといえる。 「普通ポルトランドセメントクリンカと石膏を含む普通ポルトランドセメントに、軽質炭酸カルシウムを所定量代替添加して均一に混合した混合物であって、 混合物を100wt%とした場合、 上記軽質炭酸カルシウムの含有量が1~15wt%であり、 普通ポルトランドセメントクリンカと石膏の合計含有量が99~85wt%である、混合物。」 以下、当該発明を「甲B3発明」という。 キ 甲B4について (ア)甲B4の記載事項 甲B4には、以下の記載がある。 「2.実験概要 2.1 使用材料 ベースとなるポルトランドセメントは研究用セメント(以下PC)を使用し、混合材はフライアッシユ(以下FA)、石灰石微粉末(以下LSP)、無水石膏が混合されていない高炉スラグ微粉末(以下BFS)、無水石膏(以下CS)を用いた。密度、ブレーン比表面積はJIS R 5201に準じ、化学成分はJIS R 5204に準じて測定した。その結果をTable 2に示す。PCの鉱物組成をTable 3に示す。また、レーザー回折・散乱式粒度分布計MT3300II(日機装社製)を用い、各材料の粒度分布を測定した。その体積基準での累積分布をFig.2に示す。 試製した混合セメントの材料組成はTable 4に示す通りである。 ・・・ [図:0001428010000012.jpg] [図:0001428010000013.jpg] [図:0001428010000014.jpg] 」(第192~193ページ) (イ)甲B4に記載された発明 上記(ア)によれば、甲B4には、「ベースとなるポルトランドセメント・・・を使用し、混合材は・・・石灰石微粉末(以下LSP)・・・を用い」て製造された「混合セメント」が記載されている。ここで、「Table 3」の鉱物組成から、上記「ポルトランドセメント」は、ポルトランドセメントクリンカと石膏を含むことが把握でき、また、上記「石灰石微粉末(以下LSP)」は、「石灰石」の「微粉末」との表記から、石灰石を粉砕して得られた重質炭酸カルシウムであると把握できる。 そして、「Table 4」の混合セメント組成から、上記「石灰石微粉末」、すなわち、重質炭酸カルシウムの含有量が「5」~「20」mass%であり、上記「ポルトランドセメント」、すなわち、ポルトランドセメントクリンカと石膏の合計含有量が「95」~「80」mass%であることが把握できる。 さらに、「Fig.2」に示される、「レーザー回折・散乱式粒度分布計」を用いて求められた「体積基準での累積(粒度)分布」から、上記「LSP」すなわち重質炭酸カルシウムは、体積基準累積50%粒子径が20~30μmの範囲内であり、1μm通過分(1μm以下の粒子割合)が体積基準で0~3%の範囲内であり、35μm残分(35μm以上の粒子割合)が体積基準で20~40%の範囲内であることが読み取れる。 そうすると、甲B4には、以下の発明が記載されているといえる。 「ベースとなる、ポルトランドセメントクリンカと石膏を含むポルトランドセメントを使用し、混合材は重質炭酸カルシウムを用いて製造された混合セメントであって、 重質炭酸カルシウムの含有量が5~20mass%であり、ポルトランドセメントクリンカと石膏の合計含有量が95~80mass%であり、 上記重質炭酸カルシウムは、体積基準累積50%粒子径が20~30μmの範囲内であり、1μm通過分が体積基準で0~3%の範囲内であり、35μm残分が体積基準で20~40%の範囲内である、混合セメント。」 以下、当該発明を「甲B4発明」という。 ク 他の証拠については摘記を省略するが、概略、以下の事項が記載されている。 甲A4:製紙用塗被組成物用の水性スラリーに軽質炭酸カルシウム及び重質炭酸カルシウムを含有させること 甲A5:配合設計段階で硬化後のコンクリートの諸物性を評価するにあたり、Rosin-Rammler式等を利用すること 甲A6:粉体のブレーン比表面積やRosin-Rammler線図によるn値がモルタルの降伏値及び塑性粘度に影響を及ぼすこと 甲A7:コンクリート廃材と二酸化炭素を用いて高純度炭酸カルシウムを製造すること 甲B5:(甲B2と同様) 甲B6:コンクリートに高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、エコタンカルを混入させること 甲B7:ゴム、プラスチック、塗料、紙、化粧品等の充填剤或いは顔料への使用が想定される、平均粒子径13.0μm、11.5μm又は16.3μmの球状炭酸カルシウム 甲B8:コンクリート廃棄物を炭酸化したセメント増量材を用いると、コンクリートの「ワーカビリチー」を低下させないこと 甲B9:普通ポルトランドセメントには「クリンカー及びせっこう」が含まれること 甲B10:(甲B9と同様) 甲B11:(甲A7と同一文献) 甲B12:セメント組成物中の混合材として「化学的に精製した炭酸カルシウム」を代用できること (2)本件発明1について 進歩性欠如の申立理由に関し、申立人Aは、甲A1、甲A2を主たる証拠とし、申立人Bは、甲B1~甲B4を主たる証拠として挙げているところ、甲A1~A2発明、甲B1~B4発明のそれぞれを主引用発明とする場合に分けて、以下検討する。 ア 甲A1発明を主引用発明とする場合 (ア)対比 甲A1発明のセメント組成物に含まれる「普通ポルトランドセメント」は、ポルトランドセメントクリンカと石膏を含むものであるから(例えば甲B9)、本件発明1及び甲A1発明のセメント組成物は、軽炭酸カルシウムと、ポルトランドセメントクリンカと、石膏とを含む点で共通している。 そうすると、本件発明1と甲A1発明は、 「軽質炭酸カルシウムと、ポルトランドセメントクリンカと、石膏と、を含むセメント組成物」 である点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点A1-1> 軽質炭酸カルシウムの粒子径分布に関し、本件発明1は、 「その体積基準累積50%粒子径が10μm以上35μm以下であり、1μm通過分が体積基準で3.0%以下であり、且つ、35μm残分が体積基準で5.0%以上50.0%以下」であるのに対し、 甲A1発明は、 「レーザー回析・散乱法によって得られる粒度分布の累積50質量%における粒子径」が「0.1μm以上0.4μm以下」であるとともに、「1μm通過分」や「35μm残分」が不明である点。 (なお、「体積基準累積50%粒子径」、「1μm通過分」、「35μm残分」は、いずれも粒子径分布に関わる物性値であるため、上述のとおり、これらを一体の相違点として認定するのが適切である。他の発明を主引用発明とする場合でも同様である。) <相違点A1-2> セメント組成物の成分組成に関し、本件発明1は、 「前記軽質炭酸カルシウムの含有量が1質量%以上20質量%以下であり、且つ、前記ポルトランドセメントクリンカの含有量及び前記石膏の含有量の合計量が80質%以上99質量%以下である」のに対し、 甲A1発明は、 「セメントの配合量」が「単位量(kg/m3:コンクリート1m3あたりの質量)で、300~1200kg/m3」であり、「減水剤の配合量」が「固形分換算で、0.05~10質量%」であり、「混和材の配合量」が「単位量(kg/m3)で、5~500kg/m3」である点。 なお、申立人Aは、その異議申立書第14ページにおいて、甲A1の【0038】【表1】における「セメント」及び「混和材」の含有量が本件発明1と「下位概念として一致」するとの主張を行っている。 しかし、【表1】には、「セメント」、「混和材」に加えて「細骨材」、「粗骨材」等の含有量も記載されており、その直後の【0039】に「表1に示す配合になるように、まず、水以外の材料を・・・攪拌混合し、その後、水および・・・減水剤を加えて、・・・練り混ぜてフレッシュコンクリートを得た」と記載されているように、【表1】の組成物は、「細骨材」、「粗骨材」等の成分も含めて攪拌混合されたものであるから、【表1】の組成物中の「セメント」、「混和材」のみを取り出し、これらのみを独立した組成物として含有割合を算出することは妥当ではない。 したがって、申立人Aの上記主張は採用できない。 (イ)相違点に対する判断 相違点A1-1について検討する。 a 本件発明1の「体積基準累積50%粒子径」と甲A1発明の「レーザー回析・散乱法によって得られる粒度分布の累積50質量%」とは、その基準が体積か質量かで異なるものであるが、同一種の粒子であれば、どちらの粒子径を用いても、概ね同等の数値が示されるといえる。 そして、甲A1発明の「平均粒子径0.1μm以上0.4μm以下」との数値を踏まえると、甲A1発明の軽質炭酸カルシウムについて「体積基準累積50%粒子径」を計測すると、上記「平均粒子径」と同等の数値を示し、本件発明1の「10μm以上35μm以下」との規定を外れることになるといえる。 したがって、相違点A1-1は、実質的な相違点である。 b 上記(1)ア(ア)【0005】及び【0007】に記載されるとおり、甲A1発明は、「品質が安定しており且つ比較的短い混練時間でも流動性を向上させうる高強度コンクリート用の混和材および高強度コンクリート用のセメント組成物を提供する」という課題を解決すべく、「前記特定の範囲の平均粒子径および特定の範囲のpHである軽質炭酸カルシウム粉末を含むことで、品質が安定しており、且つ、水結合材比を小さくした高強度コンクリートに配合した場合でも、比較的短時間の混練で流動性を向上させることができる」ようにしたものである。 そうすると、甲A1発明において、軽質炭酸カルシウム粉末を「平均粒子径0.1μm以上0.4μm以下であってpH8.5以上11未満」の範囲内のものとすることは、上述の課題を解決する上で必須の事項であるところ、甲A1発明の軽質炭酸カルシウム粉末として、「体積基準累積50%粒子径が10μm以上35μm以下」のように上記範囲を超えるような粉末を採用する動機は生じ得ない。 そのため、相違点A1-1は、甲A1発明から出発して当業者が容易に想到し得るものではない。 c 上述のとおり、相違点A1-1の構成は、甲A1以外の証拠の記載事項に関わらず、容易に想到し得るとはいえないが、念のため、他の証拠の記載事項について検討する。 (a)上記(1)ウ(イ)のとおり、甲A3には、粒子径分布が本件発明1と一致する軽質炭酸カルシウムを得る技術が記載されている。 しかしながら、この甲A3技術は、「ゴムおよびセラミックの充填剤、プラスチック、紙、インク、化粧品、歯磨き粉、洗剤などへの添加剤、医薬品や食品の成分、電子機器および触媒に関する多様な用途や排ガス脱硫技術等に使用される」軽質炭酸カルシウムを製造する技術であって、甲A1発明のようなセメント組成物への適用を意図したものではないし、甲A3技術における粒子径分布が、セメント組成物において有利な効果を発揮し得るようなことが記載又は示唆されているわけでもない。 したがって、甲A1発明の軽質炭酸カルシウムとして、甲A3技術により得られる炭酸カルシウムを採用しようとする動機は生じ得ない。 (b)上記(1)キ(ア)及び(イ)のとおり、甲B4には、粒子径分布が本件発明1と一致する重質炭酸カルシウムをセメントに混合する技術が記載されている。 しかしながら、甲B4には、上記粒子径分布によって奏される作用効果等は説明されていないし、上記粒子径分布を軽質炭酸カルシウムにも適用できることが記載又は示唆されているわけでもない。 そのため、甲B4に上述のような重質炭酸カルシウムが記載されているからといって、甲A1発明の軽質炭酸カルシウムの粒子径分布を、上述の重質炭酸カルシウムと同じ数値に調整しようとする動機は生じ得ない。 (c)その他の証拠には、相違点A1-1に係る粒子径分布の構成を充足するような記載は存在しない。 (ウ)小括 上記(イ)のとおり、相違点A1-1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るとはいえないから、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲A1発明及び他の証拠の記載事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 イ 甲A2発明を主引用発明とする場合 (ア)対比 甲A2発明の混合物に含まれる「普通ポルトランドセメント」は、ポルトランドセメントクリンカと石膏を含むものであり、また、甲A2発明の混合物は、セメントを含むことから「セメント組成物」と呼称され得る。そのため、本件発明1のセメント組成物と、甲A2発明の混合物は、軽炭酸カルシウムと、ポルトランドセメントクリンカと、石膏とを含むセメント組成物であるという点で共通しているといえる。 そうすると、本件発明1と甲A2発明は、 「軽質炭酸カルシウムと、ポルトランドセメントクリンカと、石膏と、を含むセメント組成物」 である点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点A2-1> 軽質炭酸カルシウムの粒子径分布に関し、本件発明1は、 「その体積基準累積50%粒子径が10μm以上35μm以下であり、1μm通過分が体積基準で3.0%以下であり、且つ、35μm残分が体積基準で5.0%以上50.0%以下」であるのに対し、 甲A2発明は、上述のような粒子径分布を有するか不明である点。 <相違点A2-2> セメント組成物の成分組成に関し、本件発明1は、 「前記軽質炭酸カルシウムの含有量が1質量%以上20質量%以下であり、且つ、前記ポルトランドセメントクリンカの含有量及び前記石膏の含有量の合計量が80質%以上99質量%以下である」のに対し、 甲A2発明は、各成分の含有量が下記表のとおりである点。 「 [図:0001428010000015.jpg] (ただし、表中「C」はセメントを意味し、「石粉」列は軽質炭酸カルシウム量を示す。)」 (イ)相違点に対する判断 相違点A2-1について検討する。 a 甲A2には、「エコタンカルと呼ばれる軽質炭酸カルシウム」の粒子径分布の数値は記載されておらず、それらを推定できるような記載も存在しない。 また、上記(1)オ(ア)の甲B2の表1等には、「エコタンカル(=軽質炭酸カルシウム)」のレーザ回折・散乱法粒子径分布測定による平均体積粒子径MVが約30~40μmである旨が記載されているものの、これは本件発明1の「10μm以上35μm以下」と一致する数値範囲ではないし、甲B2にも、「1μm通過分」や「35μm残分」の数値自体やこれらを推定できる記載は存在しないから、甲B2等の記載を参照しても、やはり甲A2発明の「エコタンカルと呼ばれる軽質炭酸カルシウム」が本件発明1と一致する粒子径分布を有するとはいえない。 したがって、相違点A2-1は、実質的な相違点である。 b 甲A2には、「CCU材料」として「エコタンカル」を用いることしか記載されておらず、甲A2発明の軽質炭酸カルシウムを他の軽質炭酸カルシウムに置換する示唆はない。 また、他の証拠をみると、甲A3又は甲B4には、粒子径分布が本件発明1と一致する軽質又は重質炭酸カルシウムが記載されているものの、上記ア(イ)cでの検討と同様に、甲A2発明において、これらの技術を採用しようとする動機は生じ得ない。 さらに、その他の証拠の記載事項は、相違点A2-1に係る粒子径分布の構成を充足するものとはならない。 したがって、相違点A2-1の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。 (ウ)小括 上記(イ)のとおり、相違点A2-1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るとはいえないから、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲A2発明及び他の証拠の記載事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 ウ 甲B1発明を主引用発明とする場合 (ア)対比 甲B1発明の「炭酸化したカルシウム含有粉末」は、「炭酸化前のカルシウム含有粉末及び水を含むスラリーの中に、二酸化炭素含有ガスを供給して、炭酸化処理されたスラリーを得る炭酸化工程」という化学的手法により得られるものであるから、「軽質炭酸カルシウム」といえ、また、「普通ポルトランドセメントセメントクリンカー」は、「ポルトランドセメントクリンカ」の一種である。そのため、本件発明1の「セメント組成物」と甲B1発明の「セメント粉末組成物」の含有成分は共通しており、また、「セメント粉末組成物」は「セメント組成物」であるといえる。 そして、甲B1発明の「炭化したカルシウム含有粉末」すなわち軽質炭酸カルシウムの含有量や、甲B1発明の「普通ポルトランドセメントクリンカー及び石膏」の含有量は、本件発明1の規定を満足している。 そうすると、本件発明1と甲B1発明は、 「軽質炭酸カルシウムと、ポルトランドセメントクリンカと、石膏と、を含むセメント組成物であって、 前記セメント組成物を100質量%とした場合、 前記軽質炭酸カルシウムの含有量が1質量%以上20質量%以下であり、且つ、 前記ポルトランドセメントクリンカの含有量及び前記石膏の含有量の合計量が80質量%以上99質量%以下である、セメント組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点B1> 軽質炭酸カルシウムの粒子径分布に関し、本件発明1は、 「その体積基準累積50%粒子径が10μm以上35μm以下であり、1μm通過分が体積基準で3.0%以下であり、且つ、35μm残分が体積基準で5.0%以上50.0%以下」であるのに対し、 甲B1発明は、上述のような粒子径分布を有するか不明である点。 (イ)相違点に対する判断 a 甲B1には、「炭酸化したカルシウム含有粉末」の粒子径分布の数値は記載されておらず、それらを推定できるような記載も存在しないから、本件発明1の規定を満足するものとはいえない。 したがって、相違点B1は、実質的な相違点である。 b 甲B1では、「炭酸化したカルシウム含有粉末」の粒子径分布について全く着目されておらず、甲B1発明の当該粒子径分布を調整する示唆はない。 また、他の証拠をみると、甲A3又は甲B4には、粒子径分布が本件発明1と一致する軽質又は重質炭酸カルシウムが記載されているものの、上記ア(イ)cでの検討と同様に、甲B1発明において、これらの技術を採用しようとする動機は生じ得ない。 さらに、その他の証拠の記載事項は、相違点B1に係る粒子径分布の構成を充足するものとはならない。 したがって、相違点B1の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。 (ウ)小括 上記(イ)のとおり、相違点B1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るとはいえないから、本件発明1は、甲B1発明及び他の証拠の記載事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 エ 甲B2発明を主引用発明とする場合 (ア)対比 生コンクリート組成物はセメントを含むから、甲B2発明の「生コンクリート組成物」は「セメント組成物」と呼称し得るといえる。 そうすると、本件発明1と甲B2発明は、 「軽質炭酸カルシウムと、を含むセメント組成物」 である点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点B2-1> 本件発明1は「ポルトランドセメントクリンカと、石膏と、を含む」のに対し、甲B2発明はこれらを含むか明らかでない点。 <相違点B2-2> 軽質炭酸カルシウムの粒子径分布に関し、本件発明1は、 「その体積基準累積50%粒子径が10μm以上35μm以下であり、1μm通過分が体積基準で3.0%以下であり、且つ、35μm残分が体積基準で5.0%以上50.0%以下」であるのに対し、 甲B2発明は、 「レーザ回折・散乱法粒子径分布測定による平均体積粒子径MVは約30~40μm」であるとともに、「1μm通過分」や「35μm残分」が不明である点。 <相違点B2-3> セメント組成物の成分組成に関し、本件発明1は、 「前記軽質炭酸カルシウムの含有量が1質量%以上20質量%以下であり、且つ、前記ポルトランドセメントクリンカの含有量及び前記石膏の含有量の合計量が80質%以上99質量%以下である」のに対し、 甲B2発明は、これらの含有量が不明である点。 (イ)相違点に対する判断 事案に鑑み、相違点B2-2について検討する。 a 甲B2発明における「レーザ回折・散乱法粒子径分布測定による平均体積粒子径MVが約30~40μmである」との規定は、本件発明1の「10μm以上35μm以下」との規定と、数値範囲として一致するといえるものではないし、また、甲B2において「1μm通過分」や「35μm残分」の数値自体やこれらを推定できる記載は存在しないから、甲B2発明の軽質炭酸カルシウムが本件発明1と一致する粒子径分布を有するとはいえない。 したがって、相違点B2-2は、実質的な相違点である。 b 甲B2では、軽質炭酸カルシウムの粒子径分布の制御について着目されておらず、甲B2発明の当該粒子径分布を変更する示唆はない。 また、他の証拠をみると、甲A3又は甲B4には、粒子径分布が本件発明1と一致する軽質又は重質炭酸カルシウムが記載されているものの、上記ア(イ)cでの検討と同様に、甲B2発明において、これらの技術を採用しようとする動機は生じ得ない。 さらに、その他の証拠の記載事項は、相違点B2-2に係る粒子径分布の構成を充足するものとはならない。 したがって、相違点B2-2の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。 (ウ)小括 上記(イ)のとおり、相違点B2-2に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るとはいえないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲B2発明及び他の証拠の記載事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 オ 甲B3発明を主引用発明とする場合 (ア)対比 甲B3発明の「混合物」は、セメント成分を含むことから「セメント組成物」であるといえ、「普通ポルトランドセメントクリンカ」は、「ポルトランドセメントクリンカ」の一種である。そのため、本件発明1の「セメント組成物」と甲B3発明の「混合物」とは、「軽質炭酸カルシウムと、ポルトランドセメントクリンカと、石膏と、を含むセメント組成物」である点で共通している。 そして、甲B3発明の「軽質炭酸カルシウム」の含有量や、甲B3発明の「普通ポルトランドセメントクリンカと石膏」の含有量は、本件発明1の規定を満足している。 そうすると、本件発明1と甲B3発明は、 「軽質炭酸カルシウムと、ポルトランドセメントクリンカと、石膏と、を含むセメント組成物であって、 前記セメント組成物を100質量%とした場合、 前記軽質炭酸カルシウムの含有量が1質量%以上20質量%以下であり、且つ、 前記ポルトランドセメントクリンカの含有量及び前記石膏の含有量の合計量が80質量%以上99質量%以下である、セメント組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点B3> 軽質炭酸カルシウムの粒子径に関し、本件発明1は、 「その体積基準累積50%粒子径が10μm以上35μm以下であり、1μm通過分が体積基準で3.0%以下であり、且つ、35μm残分が体積基準で5.0%以上50.0%以下」であるのに対し、 甲B3発明は、上述のような粒子径を有するか不明である点。 (イ)相違点に対する判断 a 甲B3には、「軽質炭酸カルシウム」の粒子径分布の数値は記載されておらず、それらを推定できるような記載も存在しないから、本件発明1の規定を満足するものとはいえない。 したがって、相違点B3は、実質的な相違点である。 b 甲B3では、「軽質炭酸カルシウム」の粒子径分布について全く着目されておらず、甲B3発明の当該粒子径分布を調整する示唆はない。 また、他の証拠をみると、甲A3又は甲B4には、粒子径分布が本件発明1と一致する軽質又は重質炭酸カルシウムが記載されているものの、上記ア(イ)cでの検討と同様に、甲B3発明において、これらの技術を採用しようとする動機は生じ得ない。 さらに、その他の証拠の記載事項は、相違点B3に係る粒子径分布の構成を充足するものとはならない。 したがって、相違点B3の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。 (ウ)小括 上記(イ)のとおり、相違点B3に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るとはいえないから、本件発明1は、甲B3発明及び他の証拠の記載事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 カ 甲B4発明を主引用発明とする場合 (ア)対比 甲B4発明の「混合セメント」は、セメントを含むことから「セメント組成物」であるといえるため、本件発明1の「セメント組成物」と甲B4発明の「混合セメント」とは、「ポルトランドセメントクリンカと、石膏と、を含むセメント組成物」である点で共通している。 そして、甲B4発明の「ポルトランドセメントクリンカと石膏」の合計含有量は、本件発明1の規定を満足している。 そうすると、本件発明1と甲B4発明は、 「ポルトランドセメントクリンカと、石膏と、を含むセメント組成物であって、 前記セメント組成物を100質量%とした場合、 前記ポルトランドセメントクリンカの含有量及び前記石膏の含有量の合計量が80質量%以上99質量%以下である、セメント組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点B4> 本件発明1は、 「その体積基準累積50%粒子径が10μm以上35μm以下であり、1μm通過分が体積基準で3.0%以下であり、且つ、35μm残分が体積基準で5.0%以上50.0%以下であり、」「含有量が1質量%以上20質量%以下であ」る「軽質炭酸カルシウム」を含むのに対し、 甲B4発明は、「体積基準累積50%粒子径が20~30μmの範囲内であり、1μm通過分が体積基準で0~3%の範囲内であり、35μm残分が体積基準で20~40%の範囲内であ」り、「含有量が5~20mass%であ」る「重質炭酸カルシウム」を含む点。 (イ)相違点に対する判断 a 「軽質炭酸カルシウム」と「重質炭酸カルシウム」は異なる成分であるから、相違点B4は、明らかに実質的な相違点である。 b 甲B4には、炭酸カルシウム成分として「石灰石微粉末」すなわち重質炭酸カルシウムを用いることしか記載されておらず、「軽質炭酸カルシウム」を用いることは記載も示唆もされていない上に、上記粒子径分布によって奏される作用効果等の説明はなされておらず、上記粒子径分布を軽質炭酸カルシウムにも適用できることが記載又は示唆されているわけでもない。 そのため、甲B4発明において、「重質炭酸カルシウム」を「軽質炭酸カルシウム」に置換しようとする動機はなく、まして、甲B4発明の粒度分布のみを抽出して採用しつつ「軽質炭酸カルシウム」に置換しようとする動機はない。 c また、甲A3には、粒子径分布が本件発明1と一致する軽質炭酸カルシウムをセメントに混合する技術が記載されているが、上記ア(イ)cでの検討と同様に、当該甲A3の軽質炭酸カルシウムをセメント組成物に適用する動機はないから、甲B4発明の軽質炭酸カルシウムとして、甲A3技術により得られる炭酸カルシウムを採用しようとする動機は生じ得ない。 さらに、その他の証拠の記載事項は、相違点B4に係る粒子径分布の構成を充足するものとはならない。 したがって、相違点B4の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。 (ウ)小括 上記(イ)のとおり、相違点B4に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るとはいえないから、本件発明1は、甲B4発明及び他の証拠の記載事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (3)本件発明8について 本件発明8は、本件発明1の構成をすべて具備するセメント組成物の製造方法の発明であるから、上記(2)と同様に、甲A1~A2発明、甲B1~B4発明のいずれかと、他の証拠の記載事項とに基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (4)本件発明2~7、9~11について 本件発明2~7、9~11は、本件発明1又は8を直接又は間接的に引用し、少なくとも本件発明1又は8の構成をすべて具備するものであるから、上記(2)又は(3)と同様に、甲A1~A2発明、甲B1~B4発明のいずれかと、他の証拠の記載事項とに基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (5)申立理由A1及びB1に関するまとめ 以上のとおり、本件特許1~11は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、申立理由A1及びB1には、理由がない。 2 申立理由A2及びB2(サポート要件違反)について (1)申立理由A2及びB2の内容 ア 申立理由A2 本件請求項1~5の炭酸カルシウムに係る数値限定について、本件の発明の詳細な説明には、軽質炭酸カルシウム「C」の1例の実施例しか記載されておらず、当該数値限定に如何ほどの効果があるのか明示されていない。一方、実施例に示される粘度低下の効果の差は、ブレーン比表面積やn値といったセメント組成物の物性から説明できる。 したがって、明細書の記載からは、請求項1~5の範囲すべてにおいて、本件発明の課題が解決できているとは技術常識を参酌しても言い難いから、請求項1~5には、発明の詳細な説明に記載された、本件発明の課題を解決する手段が反映されておらず、同請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えている。 イ 申立理由B2 本件の発明の詳細な説明には、軽質炭酸カルシウム「C」を用いた実施例しか記載されておらず、また、当該実施例は、甲B2等に記載される公知の軽質炭酸カルシウム(エコタンカル)に比べて著しく小さいものと比較して異なる効果があることを示しているに過ぎない。 したがって、上記「C」のみの実施例を以て、出願時の技術常識に照らしても、請求項1~11に係る軽質炭酸カルシウムの粒子分布や組成比の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 (2)サポート要件についての検討 ア サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも、当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 以下、この観点により検討する。 イ 本件発明の課題 発明の詳細な説明の【0006】及び【0007】によれば、「セメントの混和材として軽質炭酸カルシウムを使用する場合、該軽質炭酸カルシウムとして固定化された二酸化炭素の量に加えて、セメントクリンカの使用量の低減に起因した二酸化炭素の排出量を減少することができる」ものの、「従来技術で製造された軽質炭酸カルシウムには、該軽質炭酸カルシウムをセメントに添加し、セメント組成物として利用した場合、硬化前における該セメント組成物の降伏応力及び粘性が増加」し、その結果、「セメント組成物に対する混和剤の使用量の増加といった問題」や「ポンプ圧送性の低下といった問題」が生じていたことが認識できる。 そして、【0008】によれば、本件発明は、上記問題に鑑み、「軽質炭酸カルシウムを混和材として利用し、それによって石灰石(重質炭酸カルシウム)を使用した場合よりも二酸化炭素の排出量を低減することが可能であり、且つ、降伏応力及び粘性を該石灰石を使用した場合と同等以下に低減できるセメント組成物、及びその製造方法を提供すること」を課題とするものといえる。 ウ 本件発明の課題に対応する発明の詳細な説明の記載 (ア)まず、上記イの課題のうち、二酸化炭素の排出量の低減について検討する。 発明の詳細な説明の【0004】には、「軽質炭酸カルシウムは、二酸化炭素を安定な炭酸カルシウムの形態で固定化することから、二酸化炭素の排出量の削減に直接的に寄与する」と記載され、【0008】には、「軽質炭酸カルシウムを混和材として利用し、それによって石灰石(重質炭酸カルシウム)を使用した場合よりも二酸化炭素の排出量を低減することが可能」と記載されている。 これらの記載からすると、混和材として軽質炭酸カルシウムを用いれば、「石灰石(重質炭酸カルシウム)を使用した場合よりも二酸化炭素の排出量を低減」できることが把握でき、また、軽質炭酸カルシウムの使用量を増やすほど、二酸化炭素固定化量の増加、すなわち、排出量の低減に繋がることも自明に把握できる。 (イ)次に、上記イの課題のうち、降伏応力及び粘性の低減について検討する。 a 上記イのとおり、本件発明は、従来の軽質炭酸カルシウムを混和材として利用すると、降伏応力及び粘性が増加してしまうとの問題を解消しようとするものであるところ、発明の詳細な説明には、軽質炭酸カルシウムによる降伏応力及び粘性への影響について、以下の記載がある。 「軽質炭酸カルシウムの粒子径D50が10μm以上であることで、セメント組成物の降伏応力及び粘性を低減することができる。」(【0028】) 「軽質炭酸カルシウムの1μm通過分が体積基準で3%以下であることで、セメント組成物の降伏応力及び粘性を低減することができる。」(【0031】) 「軽質炭酸カルシウムの35μm残分が体積基準で5.0%以上であることで、セメント組成物の降伏応力及び粘性を低減することができる。(【0033】) 「軽質炭酸カルシウムの15μm通過分が体積基準で60%以下であることで、セメント組成物の降伏応力及び粘性を低減することができる。(【0035】) 「n値が2.2以上であることは、軽質炭酸カルシウム中の微粒子が少なく、それによってセメント組成物の降伏応力及び粘性を低減することができるので好ましい。」(【0040】) 「従来技術では、溶解度の低いカルシウム源である水酸化カルシウムと二酸化炭素とを反応させて軽質炭酸カルシウムを析出させるので、該軽質炭酸カルシウムの粒子径D50は比較的小さいものとなってしまい、セメント組成物の降伏応力及び粘性が増加してしまう・・・。これに対して、以下の方法によれば、粒子径D50が大きく、1μm通過分が少なく、且つ35μm残分が多い軽質炭酸カルシウムを得ることができ、セメント組成物の降伏応力及び粘性を低減することができるので好ましい。これに加えて、15μm通過分も少ない軽質炭酸カルシウムを得ることができるので、セメント組成物の降伏応力及び粘性を一層低減することができる。」(【0046】) さらに、【0069】以降の【実施例】では、下記【表2】中の炭酸カルシウムを用いてセメント組成物を製造した具体例が開示されており、【表4】に示されるとおり、軽質炭酸カルシウムの「C」を用いた組成物は、「B」を用いた組成物に比べて、見かけ粘度が低減され、また、重質炭酸カルシウムの「A」を用いた組成物と比べて同等又はそれ以下の見かけ粘度となることが確認されている。 「【表2】 [図:0001428010000016.jpg] 」 「【表4】 [図:0001428010000017.jpg] 」 b 上記aの記載(特に【0040】や【0046】の下線部)からすれば、粒子径が比較的大きく、かつ、微粒子存在割合が少ないような粒子径分布の軽質炭酸カルシウムを採用すれば、従来のものを採用した場合よりも降伏応力及び粘性を低減可能であることが把握できる。 また、そのような粒子径分布の指標として、「粒子径D50」、「1μm通過分」、「35μm残分」、「15μm通過分」、「n値」といった特性値が挙げられ、これらの特性値の物理的意味からすれば、上記aに示される当該特性値の数値範囲は、いずれも、粒子径が比較的大きい又は微粒子割合が少ないといえる範囲を定めたものと認識できる。 そして、【実施例】から、上述のような粒子径分布の軽質炭酸カルシウムであれば、実際に、他の粒子径分布のものに比べて降伏応力及び粘性が低減され、重質炭酸カルシウムと同等以下の粘度にできることが把握できる。 エ 発明の詳細な説明の記載と特許請求の範囲の記載の対比 上記ウ(ア)及び(イ)からすると、上記イの課題を解決するためには、混和材として軽質炭酸カルシウムを使用するとともに、当該軽質炭酸カルシウムとして、粒子径が比較的大きく、微粒子存在割合が少ない粒子径分布を有するものを採用することが肝要であるといえ、当該粒子径分布を規定するために「粒子径D50」等の指標を用いることができるといえる。 他方、本件発明1は、軽質炭酸カルシウムを1質量%以上含有させることが規定されており、この規定により、石灰石を混和材とした場合よりも二酸化炭素の排出量を低減できるものといえる。 また、本件発明1は、軽質炭酸カルシウムの「体積基準累積50%粒子径が10μm以上35μm以下であり、1μm通過分が体積基準で3.0%以下であり、且つ、35μm残分が体積基準で5.0%以上50.0%以下であ」ることが規定されており、この規定は、粒子径が比較的大きく、かつ、微粒子存在割合が少ない粒子径分布といえる範囲を定めるものであり、当該範囲外のものよりも降伏応力及び粘性の低減が可能なものといえる。 そうすると、特許請求の範囲に記載される本件発明1は、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が本件発明の課題を解決可能であると認識できる範囲のものであり、サポート要件を満たすものといえる。 本件発明1と同様の規定がある本件発明8や、本件発明1又は8を直接又は間接的に引用する本件発明2~7、9~11について検討しても、事情は同じである。 オ 特許異議申立書における申立人の主張について 上記エのとおり、本件発明はサポート要件を満たすものといえるが、念のため、上記(1)の申立人A及び申立人Bの主張内容についても検討する。 (ア)申立人Aの主張について 申立人Aは、本件実施例における軽質炭酸カルシウムは1種しか示されておらず、本件発明の数値限定による効果が明示されていないと主張している。 しかし、上記ウで検討したとおり、実施例を含む発明の詳細な説明全体の記載を勘案すれば、軽質炭酸カルシウムに関する数値限定の意味やその効果を理解することができる。 また、申立人Aは、本件実施例の粘度の低下は、セメント組成物のブレーン比表面積やn値により説明できると主張している。 しかし、まず、これらのセメント組成物の物性は、セメント組成物中の軽質炭酸カルシウムの粒子径分布の変更に付随して変化するものであるから、本件実施例の結果から、単純にセメント組成物の物性のみに着目して作用機序を判断することは妥当とはいえない。そして、本件発明は、従来の軽質炭酸カルシウムを混和材として利用すると、降伏応力及び粘性が増加してしまうとの問題を解消しようとするものであり、本件実施例では、発明の詳細な説明における粒子径分布の説明のとおり、所定の粒子径分布の軽質炭酸カルシウムであれば、実際に、他の粒子径分布のものに比べて降伏応力及び粘性が低減されることが確認されている。 そのため、本件発明は、軽質炭酸カルシウムの粒子径分布の適切な選択により、本件発明の課題を解決したと判断できるものであって、仮に、セメント組成物の物性と、粘度との相関が認められるとしても、適切なセメント組成物の物性は、やはり軽質炭酸カルシウムの粒度分布の選択によって得られたものといえる。 したがって、申立人Aの主張は採用できない。 (イ)申立人Bの主張について 申立人Bも、実施例における軽質炭酸カルシウムは1種しか示されていない点を指摘しているが、上記(ア)でも述べたとおり、実施例を含む発明の詳細な説明全体の記載を勘案すれば、軽質炭酸カルシウムに関する数値限定の意味やその効果を理解することができる。 また、申立人Bは、本件実施例の効果が、公知の軽質炭酸カルシウム(エコタンカル)に比べて著しく小さいものと比較したものである点を指摘している。 しかし、上記(ア)でも述べたとおり、本件発明は、従来の軽質炭酸カルシウムを混和材として利用すると、降伏応力及び粘性が増加してしまうとの問題を解消しようとするものであり、本件実施例は、所定の粒子径分布の軽質炭酸カルシウムであれば、他の粒子径分布のものに比べて降伏応力及び粘性が低減されることを確認できるものである。 そのため、仮に、本件の比較例と異なるような、粒子径の比較的大きい軽質炭酸カルシウムも公知であったからといって、本件発明の粒子径分布によって上述の問題を解消できるということに変わりはないから、申立人Bの上記指摘事項はサポート要件の適否を左右するものではない。 したがって、申立人Bの主張は採用できない。 (3)申立理由A2及びB2に関するまとめ 以上のとおり、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、申立理由A2及びB2には、理由がない。 第5むすび 上記第4で検討したとおり、本件特許1~11は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできないし、本件特許1~11は、同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということもできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、申立理由A1、A2、B1、B2によって、本件特許1~11を取り消すことはできない。 また、他に本件特許1~11を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700547

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