特許異議申立
2025-700355
水性ボールペン用インキ組成物
- 審判番号
- 2025-700355
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-068831
- 登録番号
- 7558332
- 請求日
- 2025年03月28日
- 審決日
- 2026年01月09日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社パイロットコーポレーション
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】浅野 真理
- 【権利者代理人】反町 洋
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【異議申立人】福田 義道
- 審判長/審判官
- 審判長 古屋野 浩志
- 審判官 川村 大輔
- 審判官 高松 大
- 分類
- P1651.121-Y (C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7558332号発明「水性ボールペン用インキ組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7558332号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続等の経緯
特許第7558332号の請求項1~9に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成28年6月24日に出願した特願2016-125430号の一部を令和3年1月18日に特願2021-5993号として分割出願し、さらにその一部を令和5年4月19日に特願2023-68831号として分割出願したものであって、令和6年9月19日にその特許権の設定登録がされ、同年9月30日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対し、令和7年3月28日に特許異議申立人 福田 義道(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和7年 7月22日付け:取消理由通知書
同年 9月24日提出:意見書(特許権者)
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明9」という。また、それらを総称して「本件特許発明」という。)は、令和6年5月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
「【請求項1】
インキ収容筒の先端部にボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に水、着色剤、有機樹脂粒子を含んでなる水性ボールペン用インキ組成物を収容してなる水性ボールペンであって、
前記有機樹脂粒子はオレフィン系樹脂粒子であって、その含有量は前記インキ組成物全量に対して0.03~1.0質量%であり、
前記着色剤は着色球状樹脂粒子であり、
前記オレフィン系樹脂粒子の平均粒子径Xμmが1μm以上10μm以下、前記着色球状樹脂粒子の平均粒子径Yμmが1μm以下であって、かつ0.001≦Y/X≦0.5であり、
前記水性ボールペンの100mあたりのインキ消費量をA(mg)、前記ボールペンチップのボール径をB(mm)とした場合、110<A/B≦600の関係であることを特徴とする、
水性ボールペン。
【請求項2】
前記オレフィン系樹脂粒子の平均粒子径Xμmが4μm以上10μm以下であり、前記着色球状樹脂粒子の平均粒子径Yμmが0.5μm以下である、
請求項1に記載の水性ボールペン。
【請求項3】
前記オレフィン系樹脂粒子が、ポリエチレン樹脂粒子である、
請求項1または2に記載の水性ボールペン。
【請求項4】
前記インキ組成物がリン酸エステル系界面活性剤または脂肪酸をさらに含んでなる、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水性ボールペン。
【請求項5】
前記インキ組成物がフェニル骨格を有さないリン酸エステル系界面活性剤をさらに含んでなる、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水性ボールペン。
【請求項6】
前記インキ組成物が剪断減粘性付与剤をさらに含んでなる、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の水性ボールペン。
【請求項7】
前記インキ組成物の粘度が、20℃、剪断速度1.92sec-1において、500~5000mPa・sである、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の水性ボールペン。
【請求項8】
前記インキ組成物のpH値が、7.0~11.0である、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の水性ボールペン。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の水性ボールペンを軸筒内に摺動自在に配設し、前記ボールペンチップのチップ先端部を前記軸筒先端部から出没可能とすることを特徴とする出没式水性ボールペン。」
第3 申立人が提出した証拠方法及び申立理由
1 証拠方法
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)とともに証拠方法として、以下に示す甲第1号証、甲第2-1号証~甲第2-9号証及び甲第3号証を提出した。
甲第1号証:特開平5-339534号公報(以下「甲1」という。)
甲第2-1号証:特開2013-28789号公報(以下「甲2-1」という。)
甲第2-2号証:「ケミパール」
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/specia1/chemipear1/assets/pdf/grade/chemipearl_brand_list.pdf(以下「甲2-2」という。)
甲第2-3号証:特開2014-173066号公報(以下「甲2-3」という。)
甲第2-4号証:特開2013-103986号公報(以下「甲2-4」という。)
甲第2-5号証:特開2005-41983号公報(以下「甲2-5」という。)
甲第2-6号証:日本蛍光化学株式会社製品カタログ(以下「甲2-6」という。)
甲第2-7号証:特開2006-7766号公報(以下「甲2-7」という。)
甲第2-8号証:特開2011-178973号公報(以下「甲2-8」という。)
甲第2-9号証:特開2014-140982号公報(以下「甲2-9」という。)
甲第3号証:特開2011-92186号公報(以下「甲3」という。)
2 申立理由の概要
申立人は、申立書(特に、25~42ページ)において、概略、下記(1)及び(2)の特許異議申立理由を主張している。申立理由の番号は当合議体で付したものである。
(1) 申立理由1(進歩性欠如)
本件特許発明1~5及び7~9は、甲1及び甲2-1~甲2-9に記載の事項に基づいて、進歩性を有しない。
(2) 申立理由2(進歩性欠如)
本件特許発明6は、甲1、甲2-1~甲2-9及び甲3に記載の事項に基づいて、進歩性を有しない。
第4 当合議体が通知した取消しの理由の概要
令和7年7月22日付け取消理由通知書により通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
理由1.(新規性)本件特許の請求項1、3及び6に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2.(進歩性)本件特許の請求項1~9に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項1~9に係る本件特許は、特許法113条2号に該当し、取り消すべきものである。
記
甲第1号証:特開平5-339534号公報
甲第2-1号証:特開2013-28789号公報
甲第2-4号証:特開2013-103986号公報
甲第2-5号証:特開2005-41983号公報
甲第2-7号証:特開2006-7766号公報
甲第2-8号証:特開2011-178973号公報
甲第2-9号証:特開2014-140982号公報
甲第3号証:特開2011-92186号公報
参考文献A:特開2015-120815号公報
参考文献B:特開2014-195994号公報
第5 特許権者が提出した証拠方法
特許権者は令和7年9月24日に、意見書とともに証拠方法として以下に示す乙第1号証~乙第8号証を提出した。
乙第1号証:日本蛍光化学株式会社の製品安全データシート 品名:Lumikol NKW-6004E(以下「乙1」という。)
乙第2号証:特開平5-171095号公報(以下「乙2」という。)
乙第3号証:特開平5-117571号公報(以下「乙3」という。)
乙第4号証:大日精化のカタログ
https://www.daicolor.co.jp/business/pigment/pigments_pigments.pdf(以下「乙4」という。)
乙第5号証:記録材料用水性加工顔料 WAカラー〔WA COLOR・Water base pigment preparation〕(以下「乙5」という。)
乙第6号証:記録材料用水性カラーベース WAカラー(以下「乙6」という。)
乙第7号証:製品安全データシート(MSDS) 製品名 WA カラーブラック B-01(以下「乙7」という。)
乙第8号証:特開平4-35987号公報(以下「乙8」という。)
第6 当合議体の判断
1 理由1(新規性)について
(1) 甲号証の記載
ア 甲1の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲1には、以下の記載がある。なお、下線は引用発明の認定及び判断で活用した箇所であって、当合議体が付したものである(以下同様)。
(ア) 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、水性ボールペンインクに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、顔料を配合した水性ボールペンインクが、優れた耐光性、耐水性を有するところから、しばしば使用されていたが、長期間経過すると顔料粒子の沈降は避けられず、筆記不能やカスレの原因となる。この問題を解決するために、ゲル状のインクが開発され、顔料の使用が定着してきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、顔料粒子は潤滑性を阻害するため、筆感が著しく悪くなったり、不快なキシミ音を発することがあり、実際の使用においては大きな問題であった。そこで、本発明は、上記の問題点を解消し、キシミ音の発生を抑え、優れた筆感の得られる水性ボールペンインクを提供しようとするものである。」
(イ) 「【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水、水溶性有機溶剤、着色顔料及び増粘剤とを含有する水性ボールペンインクにおいて、着色顔料の粒子径より大きく、粒子径0.1~10μmの合成樹脂粒子を含有させたことを特徴とする水性ボールペンインクである。
【0005】
本発明で使用される合成樹脂微粒子は、例えば、三井石油化学社製ケミパールWシリーズなどのポリオレフィンや旭硝子社製フルオンLシリーズなどのテフロンで作ることができるが、これに限定されるものではない。この微粒子は、顔料粒子の粒子径より大きく、かつ、0.1~10μmの範囲の粒子径を有し、ほぼ球形であることが必要である。微粒子の粒子径をあまり大きくすると筆感を損ねるので、10μm以下、特に5μm以下とすることが好ましい。また、0.1μmより小さくすると、ボールの回転を助けることができず、上記の効果が得られなくなる。この微粒子の配合量は、0.1~10%の範囲が有効であり、好ましくは1~8%が適当である。0.1%を下回ると、筆感を良くしたり、キシミ音を無くするなどの効果を得ることができず、10%を上回ると、ボテや線割れなどの不都合を生ずる。
【0006】
本発明で使用される顔料としては、大日精化社製WA-colorシリーズや御国色素社製SA-Kシリーズなどの水性顔料分散体を挙げることができる。これらの分散体には、通常平均粒径0.08~0.30μmの顔料が含まれている。水性ボールペンインク中の顔料濃度は3~10%が適当であり、10%を越えると、色濃度は高くなるがボテ、線割れなどの筆記性能が低下したり、保存寿命が短くなるという問題が生ずる。また、3%を下回ると、色濃度が低すぎるなど、水性ボールペンとしての品質を保持することができなくなる。顔料濃度は4~6%の範囲が特に好ましい。
・・・(略)・・・
【0010】
【作用】
本発明者は、顔料を配合した水性ボールペンインクを使用するときの筆感を改善するために鋭意研究したところ、顔料粒子がボールとその受座に接触してボールの回転を阻害していることを見出した。水性ボールペンインクに配合される顔料粒子は通常平均粒径0.08~0.30μmである。そこで、本発明では、顔料粒子より粒子径が大きく、粒子径0.1~10μmの合成樹脂微粒子をインクに配合することにより、ボールに筆圧が加わるときにも、ボールとその受座との間隔を少なくとも微粒子の粒径以上とし、顔料粒子がボールとその受座に接触しないようにしたものであり、その結果、ボールは微粒子の回転に助けられて円滑な回転が可能になり、キシミ音を解消し、快適な運筆感を確保したものである。」
(ウ) 「【0011】
【実施例】
以下の成分を配合して水性ボールペンインクを作成して筆感テスト及びキシミ音テストを行った。
(実施例1)
顔料分散体WA Color BK 1103(大日精化工業社製)
(顔料粒子径0.10μm,顔料分8.0%) 50.0重量%
増粘剤ザンサンガム(大日本製薬社製) 0.8重量%
グリセリン 13.0重量%
エチレングリコール 12.0重量%
オレイン酸カリウム 1.0重量%
ベンゾトリアゾール 0.2重量%
安息香酸ナトリウム 1.0重量%
水 20.0重量%
ポリオレフィン系球形微粒子ケミパールW-300(三井石油化学社製)
(粒子径3μm) 2.0重量%
・・・(略)・・・
【0018】
(筆感テスト及びキシミ音テスト)上記実施例及び比較例のインクをボールペンにそれぞれつめて筆感テスト及びキシミ音テストを行った。毎日ボールペンを使用する事務員43名に上記のボールペンを使用させて筆感を調べたところ、実施例1のインクについて43名中、41名の事務員が筆感の良さを認め、他の実施例についてもほぼ同様の結果を得た。これに対し、比較例1のインクについて43名全員が筆感の悪さを認め、他の比較例についても同様であった。次に、ゼブラ社製の筆記試験機を用いて、荷重100g、筆記速度4m/min、筆記角度60°でキシミ音テストを行ったところ、実施例1のインクについては筆記距離500m(充填したインクが全量使い切る距離)を越えるまで、キシミ音は聞こえなかったが、比較例1のインクでは最初からキシミ音が聞こえた。また、他の実施例並びに比較例についてもほぼ同様の結果を得た。
【0019】
【発明の効果】
本発明は、上記の構成を採用することにより、顔料粒子がボールとその受座に接触することがなくなり、筆感を改善し、かつ、キシミ音を解消することができ、運筆感の優れた顔料配合の水性ボールペンを提供することが可能となった。」
イ 甲1に記載された発明の認定
上記アの記載を総合すると、甲1には、実施例1として示される、以下の「水性ボールペンインク」をつめた「ボールペン」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「 以下の成分を配合して水性ボールペンインクを作成し、
顔料分散体WA Color BK 1103(大日精化工業社製)
(顔料粒子径0.10μm,顔料分8.0%) 50.0重量%
増粘剤ザンサンガム(大日本製薬社製) 0.8重量%
グリセリン 13.0重量%
エチレングリコール 12.0重量%
オレイン酸カリウム 1.0重量%
ベンゾトリアゾール 0.2重量%
安息香酸ナトリウム 1.0重量%
水 20.0重量%
ポリオレフィン系球形微粒子ケミパールW-300(三井石油化学社製)
(粒子径3μm) 2.0重量%
上記実施例のインクをつめたボールペン。」
ウ 甲2-1の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲2-1には、以下の記載がある。
「【請求項6】
インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持した、ボールペンチップを直接又はチップホルダーを介して装着し、前記インキ収容筒の内部に、前記請求項1ないし5のいずれか1項に記載の水性ボールペン用インキ組成物を直詰めしてなる水性ボールペンであって、前記ボール表面の算術平均粗さが、0.1~5nmであることを特徴とする水性ボールペン。
・・・(略)・・・
【0033】
なお、インキ粘度については、限定されるものではないが、本発明で用いるカーボンブラックの分散安定性や筆記性能の向上を考慮すると、剪断速度1.92sec-1において、1000mPa・s~3500mPa・sにする方が好ましく、より好ましくは、1200mPa・s~2500mPa・sである。
【0034】
特に、本発明の水性ボールペン用インキ組成物を直詰めしたインキ収容筒の先端部に、チップ本体のボール抱持室にボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又はチップホルダーを介して具備したボールペンレフィルを、軸筒内に摺動自在に配設し、前記ボールペンチップを前記軸筒の先端開口部から出没可能としたことを特徴とするノック式水性ボールペンや回転繰り出し式水性ボールペン等においては、インキ垂れ下がりが問題になるため、インキ粘度を上記粘度範囲にする方が好ましい。
【0035】
また、ボールペンチップ先端縁の内壁に、コイルスプリングを配設することによって、インキ垂れ下がりの抑制効果が向上するため、より好ましい。
【0036】
本発明の水性ボールペン用インキ組成物のpHは、インキ経時安定性を考慮して、pH値が7~10が好ましい。特に、顔料として、塩基性カーボンブラックを用いる場合、pH値が7~10が好ましい。これは、pH値7以上であると、塩基性カーボンブラックの分散性を向上するためで、pH値が10を超えると、インキ経時安定性や、色調に影響が出やすい傾向があるためである。さらに、よりインキ経時安定性を考慮すれば、pH値が7~9が好ましい。」
エ 甲2-2の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲2-2には、以下の記載がある。
「
[図:0001432079000001.jpg]
」
オ 甲2-3の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲2-3には、以下の記載がある。
「【0008】
本発明の消色性水性インキ組成物が含有する各成分について以下に説明する。
(着色剤)
本発明において使用される着色剤は微小樹脂球を呈色性物質により着色してなるものである。
微小樹脂球としては、懸濁重合や乳化重合により得られた樹脂粒子分散液、又は別に公知の手段により重合して得られた樹脂粒子を分散させてなる分散液と、呈色性物質である顔料や染料を分散させてなるドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、POEアルキルエーテル硫酸ソーダ、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ソーダ等のアニオン活性剤水溶液とを混合し、さらに必要に応じてアニオン活性剤や非イオン活性剤を追加し、さらに撹拌後、室温まで冷却し濾過すれば着色された該微小樹脂球のエマルジョンとして得られるものである。
ここで微小樹脂球を構成する樹脂としては、特に限定されないが、不飽和結合を有する単量体を重合してなる樹脂が好ましい。
このような樹脂を構成する単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリル、スチレン等の公知の付加重合性単量体であり、好ましくはアクリロニトリル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルから選ばれた少なくとも1種の単量体である。
本発明において着色剤の平均粒子径としては、1.0μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.8μm以下である。1.0μmを超えると、着色剤よりも粒子径が大きい熱溶融性粒子により十分に消色されない可能性がある。
消色性水性インキ組成物中の微小樹脂球の含有量は、固形分濃度で1.0~30重量%、好ましくは2~20重量%である。1.0重量%未満では十分に発色させることができず、また30量%を超えても着色濃度の点において更なる効果を望めない。
【0009】
(呈色性物質)
・・・(略)・・・
中でもロイコ染料が好ましく、そのロイコ染料(発色剤)としては、電子受容性化合物(顕色剤)と反応して呈色するものであれば限定されず、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、下記の化合物が好適であり、これらは1種又は2種以上で用いることができる。」
カ 甲2-4の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲2-4には、以下の記載がある。
「【0017】
本発明のボールペン用インク組成物には、上記結晶セルロース、樹脂粒子、カルボキシメチルセルロースの他、着色剤、溶剤、増粘剤、残部として水(精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)を含有することができる。
着色剤としては、例えば、ボールペン用インクに汎用される水に溶解又は分散可能な全ての染料、酸化チタンを始めとする公知の無機系及び有機系顔料、樹脂粒子を染料で着色した疑似顔料、白色系プラスチック顔料を用いることができる。
染料としては、例えば、エオシン、フロキシン、ウォーターイエロー#6-C、アシッドレッド、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF及びニグロシンNB等の酸性染料、ダイレクトブラック154、ダイレクトスカイブルー5B及びバイオレットBB等の直接染料、並びに、ローダミン及びメチルバイオレット等の塩基性染料が挙げられる。
無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック等が挙げられる。また、有機系顔料としては、例えば、アゾレーキ、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料並びに染料レーキ等が挙げられる。
これらの着色剤の含有量は、インク組成物全量に対して、0.1~40%の範囲内で、インクの描線濃度により適宜増減することが望ましい。
・・・(略)・・・
【0022】
本発明のボールペン用インク組成物の製造は、例えば、上記結晶セルロース、樹脂粒子の他、着色剤、溶剤、増粘剤、水などの各成分を所定量配合し、ホモミキサー、もしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することによって得られる。更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去してもよい。
また、本発明のボールペン用インク組成物を充填するボールペンとしては、一般的な構成、例えば、金属製チップを備えた樹脂製のインク収容管と、これに内蔵された上記本発明のボールペン用インク組成物及び筆記具本体(軸体)を含むノック式、非ノック式(キャップ式)の各種ボールペン構成を採用することができ、その製造は常法に従い行なうことが可能である。また、ボールペン用インク組成物を搭載するので、インク追従体が搭載された各種ボールペン構成を採用することが特に好ましい構成となるものである。」
キ 甲2-5の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲2-5には、以下の記載がある。
「【0008】
前記着色剤としては、水性系媒体に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料がすべて使用可能であり、その具体例を以下に例示する。
・・・(略)・・・
【0011】
前記顔料としては、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、予め界面活性剤や樹脂を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられ、例えば、C.I.Pigment Blue 15:3B〔品名:Sandye Super Blue GLL、顔料分24%、山陽色素株式会社製〕、
C.I.Pigment Red 146〔品名:Sandye Super Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素株式会社製〕、
C.I.Pigment Yellow 81〔品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業株式会社製〕、
C.I.Pigment Red 220/166〔品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業株式会社製〕等を挙げることができる。
なお、前記顔料を分散する樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリル酸樹脂、マレイン酸樹脂、アラビアゴム、セルロース、デキストラン、カゼイン等、およびそれらの誘導体、前記した樹脂の共重合体等が挙げられる。」
ク 甲2-6の記載
甲2-6には、以下の記載がある。なお、甲2-6の公知日は不明である。
「
[図:0001432079000002.jpg]
」
ケ 甲2-7の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲2-7には、以下の記載がある。
「【0006】
本発明に使用する樹脂エマルション粒子は、重合した高分子等の樹脂が、その樹脂を溶解しない溶媒に分散されている粒子である。樹脂エマルション粒子に用いられる樹脂としては、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル・アクリル共重合体樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体、エチレン・酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、尿素樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド縮合物、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド縮合物、ポリメタクリル酸メチル系架橋物、メラミン-ホルムアルデヒド縮合物等が挙げられる。樹脂エマルション粒子は無色のままでも、着色しても、またはこれらを混合して用いても良い。また、着色樹脂エマルション粒子を用いると着色剤(たとえば染料)の選択やその使用量の選択の自由度が高く、簡便に多様な発色を持たせることができる。したがって、多量の情報を区別するために従来使用されている黒、赤、青、緑だけでなく、オレンジ、ピンク、黄、スカイブルー、紫というような多種多様なインキ色の要求に対応できる。樹脂エマルション粒子を着色する方法として、樹脂エマルション粒子に染料や顔料を含有させたもの、各種エチレン性不飽和単量体を乳化重合させた後に染料や顔料で着色したものや反応と同時に染料や顔料を混合させて着色したものが挙げられる。着色した樹脂エマルション粒子の具体例としては、ルミコールNKW-75、同75E、ルミコールNKW-2101、同2102、同2103、同2104、同2105、同2106、同2107、同2108、同2109、同2117、同2127、同2137、同2167、同2101P、同2102P、同2103P、同2104P、同2105P、同2106P、同2107P、同2108P、同2117P、同2127P、同2137P、同2167P、同2101E、同2102E、同2103E、同2104E、同2105E、同2106E、同2107E、同2108E、同2109E、同2117E、同2127E、同2137E、同2167E、同C2102E、同C2103E、同C2104E、同C2105E、同C2117E、同C2147E、同C2167E、同C2108E、ルミコールNKW-3002、同3003、同3004、同3005、同3007、同3077、同3008、同3202E、同3203E、同3204E、同3205E、同3207E、同3277E、同3208E、同3402、同3404、同3405、同3407、同3408、同3477、同3602、同3603、同3604、同3605、同3607、同3677、同3608、同3702、同3703、同3704、同3705、同3777、同3708、同3902E、同3903E、同3904E、同3905E、同3907E、同3977E、同3908E、ルミコールNKW-6013E、同6038E、同6008E、同6002E、同6004E、同6005E、同6007E、同6047E、同6077E、ルミコールNKW-6202E、同6203E、同6253E、同6204E、同6205E、同6207E、同6217E、同6277E、同6258E、同6200E、6202E-P、同6203E-P、同6253E-P、同6204E-P、同6205E-P、同6207E-P、同6217E-P、同6277E-P、同6258E-P、同6200E-P(以上、日本蛍光(株)製)、シンロイヒ カラーベースSW-11、同SW-12、同SW-13、同SW-14、同SW-15、同SW-16、同SW-17、同SW-27、同SW-47、同SW-18、同SW-07、同SP-13、同SP-14、同SP-15、同SP-16、同SP-17、同SP-27、同SP-37、同SP-47、同SG-501、同SG-502、同SG-503、同SG-504同SG-505、同SG-506、同SG-517、同SG-547、同SG-557、ELX-5151、同5152、同5153、同5154、同5155、同5156(以上シンロイヒ(株)製)、VictoriaYellow G-11、同G-20、同G-30、同R-45、同R-45F、同R-55、同R-70、Victoria Orenge G-16、同G-21、同G-21、同R-46、同R-46F、同R-56、同R-71、VictoriaRed G-19、同G-22、同G-22、同G-32、同R-47、同R-47F、同R-57、同R-72、Victoria Pink G-17、同G-23、同G-33、同R-48、同R-48F、同R-58、同R-58、同R-73、VictoriaGreen G-18、同G-24、同G-34、同R-49、同R-49F、同R-59、同R-74、Victoria Blue G-15、同G-25、同G-35、同R-50、同R-50F、同R-60、同R-75(以上、御国色素(株)製)、コスモカラーS 1000Fシリ-ズ(東洋ソーダ(株)製)、ローペイクHP-91(ロームアンドハースジャパン(株)製)、SX863(A)、SX864(B)、SX865(B)、SX863(P)(以上、JSR(株)製)、エポカラーMAシリーズ、エポカラーFPシリーズ、エポスターシリーズ、同MAシリーズ、同MXシリーズ、同GPシリーズ(以上、(株)日本触媒製)等が挙げられる。また、その使用量は、水性インキ全量に対して、10.0重量%以上60.0重量%以下が好ましい。使用量が少ないと筆記線が不明瞭であるし、また使用量が多くなると経時的に沈降したり、ペン先で乾燥して筆記できなくなる。」
コ 甲2-8の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲2-8には、以下の記載がある。
「【0044】
【表2】
[図:0001432079000003.jpg]
」(合議体注:上記【表2】は、時計回りに90度回転したものである。)
サ 甲2-9の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲2-9には、以下の記載がある。
「【0039】
次に実施例を示して本発明を説明する。
実施例1
下記配合の水性ボールペン用インキ組成物を、インキ収容筒の先端にボール径が0.5mmのボールを回転自在に抱持し、ボールの軸方向の移動量が45μmであるボールペンチップをチップホルダーに介して具備したインキ収容筒内部(ポリプロピレン製)に収容した水性ボールペンレフィルを(株)パイロットコーポレーション製のゲルインキボールペン(商品名:G-knock)に装着して、実施例1の水性ボールペンを得ている。
・・・(略)・・・
【0044】
実施例2~6
インキ配合、チップ仕様を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2~6の水性ボールペン用インキ組成物を得た。表1に、インキ配合および評価結果を示す。
【表1】
[図:0001432079000004.jpg]
」
シ 甲3の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲3には、以下の記載がある。
「【0008】
第一に、グアガム(別名:グァーガム、グアーフラワー、グアルガム)0.02~1重量%を含む、食品からの離水防止効果に優れた液状調味料である。
第二に、キサンタンガム(別名:キサンタン多糖類、ザンサンガム)0.1~1重量%を含む、上記第一に記載の液状調味料である。
第三に、粘度が10Pa・s以上かつ25010Pa・s以下である、上記第一または第二に記載の液状調味料である。
第四に、タマリンドシードガム(別名:タマリンドガム、タマリンド種子多糖類)、タラガム、ローカストビーンガム(別名:カロブビーンガム)の中から選ばれた1種以上を含む、上記第一から第二の何れか一つに記載の液状調味料である。
第五に、調味料がドレッシングまたはソースであることを特徴とする、上記第一から第四の何れか一つに記載の液状調味料である。
第六に、上記第一から第五の何れか一つに記載の液状調味料を使用した食品である。
第七に、上記第一から第五の何れか一つに記載の液状調味料を使用したサラダである。」
(2) 乙号証の記載
ア 乙1の記載
公知日が本件特許の出願前である乙1には、以下の記載がある。
「
[図:0001432079000005.jpg]
」
イ 乙2の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である乙2には、以下の記載がある。
「【0017】
【実施例】以下、本発明の水性ボールペン用蛍光色インキの具体的な実施例をあげ、本発明の効果を立証する。以下の各実施例において使用するルミコールとは日本蛍光化学株式会社製のもので、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、スチレンを乳化重合して得られるポリマ微粒子の水分散体の水分散体を蛍光性染料又は蛍光増白剤で染着してなる蛍光色材である。一例として、ルミコールNKW-3000シリーズ(平均粒子径0.14μm)とルミコールNKW-2100シリーズ(平均粒子径0.70μm)を挙げ説明すると、NKW-3000シリーズはNKW-2100シリーズに比べ、インキ収容管に充填されたインキの外観的色感と文字の色感との一致性の点では劣るが、過度の不透明感はない。NKW-2100シリーズはNKW-3000シリーズに比べ、色感の一致性の点では優れており最も適した粒子径であると考えられるが、不透明感や分散安定性の点を考慮すれば、粒子径の上限に近い状態のものと考えられる。このものと同様な蛍光色材としては大日精化工業株式会社製のニューラクチミンハイフラッシュカラーがあげられる。」
ウ 乙3の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である乙3には、以下の記載がある。
「【請求項1】 少なくとも、水、水と相溶性のある有機溶剤、蛍光色材及び増粘剤とから成る水性ボールペン用蛍光色インキにおいて、乳化重合して得られる平均粒子径0.1~1.0μmのポリマー微粒子の水分散体をカチオン性染料あるいは蛍光増白剤によりもしくはこれら両者を用いて染着して成る蛍光色材を用い、かつ蛍光色材のインキ中での長期に亘る沈降防止の目的でザンサンガムを添加して成る水性ボールペン用蛍光色ゲルインキ。
・・・(略)・・・
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするところは、少なくとも、水、水と相溶性のある有機溶剤、蛍光色材及び増粘剤とから成る水性ボールペン用蛍光色インキにおいて、乳化重合して得られる平均粒子径0.1~1.0μmのポリマー微粒子の水分散体をカチオン性染料あるいは蛍光増白剤によりもしくはこれら両者を用いて染着して成る蛍光色材を用い、かつザンサンガムを、好ましくは0.5~1.2重量%添加して成る水性ボールペン用蛍光色ゲルインキにある。
・・・(略)・・・
【0011】一例として、ルミコールNKW-3000シリーズ(平均粒子径0.14μm)とルミコールNKW-2100シリーズ(平均粒子径0.70μm)を挙げ説明すると、NKW-3000シリーズはNKW-2100シリーズに比べ、インキ収容管に充填されたインキの外観的色感と文字の色感との一致性の点では劣るが、過度の不透明感はない。NKW-2100シリーズはNKW-3000シリーズに比べ、色感の一致性の点では優れており最も適した粒子径であると考えられるが、不透明感や分散安定性の点を考慮すれば、粒子径の上限に近い状態にあるものと考えられる。」
エ 乙4の記載
乙4には、以下の記載がある。なお、乙4の公知日は不明である。
「
[図:0001432079000006.jpg]
」
オ 乙5の記載
乙5には、以下の記載がある。なお、乙5の公知日は不明である。
「
[図:0001432079000007.jpg]
」
カ 乙6の記載
乙6には、以下の記載がある。なお、乙6の公知日は不明である。
「
[図:0001432079000008.jpg]
」(合議体注:上記は、時計回りに90度回転したものである。)
キ 乙7の記載
公知日が本件特許の出願前である乙7には、以下の記載がある。
「
[図:0001432079000009.jpg]
」
ク 乙8の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である乙8には、以下の記載がある。
「(4ページ右下欄1~11行)
上記熱溶融性色材層を構成する第2の成分である着色材としては、例えば、カーボンブランク、ファーストイエローG、ベンシンンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガジンレッド、カーミンFB、パーマネントボルドーFRR、ピグメント・オレンジR、リソールレッド2G、レーキ・レッドC、ローダミンFB、ローダミンB、フタロンアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアント・グリーンB、フタロシアニングリーン、キナクリドン等の顔料や染料を必要に応じて用いることができる。」
(3) 参考文献の記載
ア 参考文献A(特開2015-120815号公報)の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である参考文献Aには、以下の記載がある。
「【0025】
色材としての顔料は、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、群青等の無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、予め各種顔料を微細に且つ安定的に水媒体中に分散させた水分散顔料製品を用いることができる。水分散顔料製品としては、例えば、界面活性剤や水溶性樹脂を用いて顔料を水媒体中に分散させた水分散顔料製品、自己分散性を付与した顔料を水媒体中に分散させた水分散顔料製品、各種染料により着色した合成樹脂粒子を水媒体中に分散させた水分散顔料製品等が挙げられる。これらの中でも、保存安定性の点から、自己分散性を付与した顔料を水媒体中に分散させた水分散顔料製品、及び、各種染料により着色した合成樹脂粒子を水媒体中に分散させた水分散顔料製品が好ましい。ここで、自己分散性を付与した顔料としては、例えば、表面を硝酸、オゾン及び過酸化水素等の酸化剤で処理することで、表面にカルボキシル基及び水酸基等の極性基を保持させた顔料等が挙げられる。
・・・(略)・・・
【0027】
上記水溶性樹脂を用いて顔料を水媒体中に分散させた水分散顔料製品としては、例えば、WA color Black A 250(大日精化工業(株)製、C.I. Pigment Black 7、顔料分15質量%)、WA-S color Green(大日精化工業(株)製、C.I. Pigment Green 7、顔料分8質量%)、マイクロピグモ WMVT-5(オリエント化学工業(株)製、C.I. Pigment Violet 23、顔料分20質量%)、エマコールNSイエロー4618(山陽色素(株)製、C.I. Pigment Yellow 83、顔料分30質量%)等が挙げられる。
・・・(略)・・・
【0029】
更に、上記各種染料により着色した合成樹脂粒子を水媒体中に分散させた水分散顔料製品としては、例えば、NKW-2100Eシリーズ(日本蛍光化学(株)製、不揮発分51質量%)、NKW-3200Eシリーズ(日本蛍光化学(株)製、不揮発分37質量%)、NKW-C2100Eシリーズ(日本蛍光化学(株)製、不揮発分50±3質量%)、NKW-6000Eシリーズ(日本蛍光化学(株)製、不揮発分34±3質量%)、NKW-6200Eシリーズ(日本蛍光化学(株)製、不揮発分48~54質量%)、SW-100シリーズ(シンロイヒ(株)製、固形分42±1質量%)、SF-3000Nシリーズ(シンロイヒ(株)製、固形分40±1.5質量%)、SF-5000シリーズ(シンロイヒ(株)製、固形分30±1.5質量%)、SF-8000シリーズ(シンロイヒ(株)製、固形分50±2質量%)、SP-10シリーズ(シンロイヒ(株)製、顔料分約40質量%)、SG-500シリーズ(シンロイヒ(株)製、顔料分約60質量%)、FW-8500KSシリーズ(シンロイヒ(株)製、固形分約55質量%)等が挙げら
れる。」
イ 参考文献B(特開2014-195994号公報)の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である参考文献Bには、以下の記載がある。
「【0113】
(実施例21)
<インクジェット記録用粘着ラベルの作製>
実施例1において、離型層塗布液1の代わりに、下記の離型層塗布液21を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例21のインクジェット記録用粘着ラベルを作製した。
-離型層塗布液21の調製-
下記組成を混合して、固形分濃度20質量%の離型層塗布液21を調製した。
〔組成〕
・シリコーン樹脂エマルション(信越化学工業株式会社製、製品名:KM-3951、固形分濃度40質量%)・・・40.4質量部
・シリコーン樹脂硬化触媒(信越化学工業株式会社製、製品名:CAT-PM-10A、固形分濃度40質量%)・・・2.0質量部
・ポリ酢酸ビニルエマルション(日本合成化学工業株式会社製、製品名:モビニール168N、固形分濃度50質量%)・・・2.0質量部
・ポリエチレン粒子ディスパージョン(三井化学株式会社製、製品名:ケミパールW300、固形分濃度40質量%)・・・5.1質量部
・水・・・50.5質量部
なお、前記ポリエチレン粒子(三井化学株式会社製、製品名:ケミパールW300)の体積平均粒子径を、レーザー回折/散乱粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、製品名:LA-720)により測定したところ、3μmであった。」
(4) 本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
(ア) 水性ボールペン
甲1発明の「水」、「顔料分散体WA Color BK 1103(大日精化工業社製)」、及び「ポリオレフィン系球形微粒子ケミパールW-300(三井石油化学社製)」は、それぞれ、本件特許発明1の「水」、「着色剤」、及び「有機樹脂粒子」に相当する。また、甲1発明の「水性ボールペンインク」は、本件特許発明1の「水性ボールペン用インキ組成物」に相当する。加えて、甲1発明の「ボールペン」は、「水性ボールペンインク」を「つめた」「ボールペン」であるから、本件特許発明1の「水性ボールペン用インキ組成物を収容してなる水性ボールペン」に相当する。
(イ) 有機樹脂粒子
甲1発明の「ポリオレフィン系球形微粒子ケミパールW-300(三井石油化学社製)」は、「ポリオレフィン系球形微粒子」であるから、本件特許発明1の「オレフィン系樹脂粒子」に相当する。
ここで、参考文献Bの段落【0113】の記載(上記(3)イ参照)によれば、「ポリオレフィン系球形微粒子ケミパールW-300(三井石油化学社製)」の「固形分濃度」は「40%」であるから、甲1発明の「水性ボールペンインク」は、「ポリオレフィン系球形微粒子」を0.8重量%含有するといえる(合議体注:2.0重量%×40%=0.8重量%)。そうしてみると、甲1発明の「ポリオレフィン系球形微粒子」は、本件特許発明1の「有機樹脂粒子はオレフィン系樹脂粒子であって、その含有量はインキ組成物全量に対して0.03~1.0質量%であり」という要件を満たす。
(ウ) オレフィン系樹脂粒子及び着色球状樹脂粒子の平均粒子径
甲1発明の「ポリオレフィン系球形微粒子ケミパールW-300(三井石油化学社製)」は、「粒子径3μm」であるから、本件特許発明1の「オレフィン系樹脂粒子の平均粒子径Xμmが1μm以上10μm以下」という要件を満たす。また、甲1発明の「顔料分散体WA Color BK 1103(大日精化工業社製)」は、「顔料粒子径0.10μm」であるから、本件特許発明1の「着色球状樹脂粒子の平均粒子径Yμmが1μm以下」という要件を満たす。そうしてみると、甲1発明の「ポリオレフィン系球形微粒子ケミパールW-300(三井石油化学社製)」及び「顔料分散体WA Color BK 1103(大日精化工業社製)」は、それらの粒子径について、本件特許発明1の「0.001≦Y/X≦0.5」という要件を満たす(合議体注:0.10μm(「顔料分散体WA Color BK 1103(大日精化工業社製)」の粒子径)/3μm(「ポリオレフィン系球形微粒子ケミパールW-300」(三井石油化学社製)の粒子径)=約0.033)。
イ 一致点及び相違点
上記アより、本件特許発明1と甲1発明は、以下の点(ア)で一致し、以下の点(イ)において、相違する。
(ア) 一致点
「水、着色剤、有機樹脂粒子を含んでなる水性ボールペン用インキ組成物を収容してなる水性ボールペンであって、
前記有機樹脂粒子はオレフィン系樹脂粒子であって、その含有量は前記インキ組成物全量に対して0.03~1.0質量%であり、
前記オレフィン系樹脂粒子の平均粒子径Xμmが1μm以上10μm以下、前記着色球状樹脂粒子の平均粒子径Yμmが1μm以下であって、かつ0.001≦Y/X≦0.5である、
水性ボールペン。」
(イ) 相違点
(相違点1-1)
水性ボールペンが、本件特許発明1は、「インキ収容筒の先端部にボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に」「水性ボールペン用インキ組成物を収容してなる」のに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
(相違点1-2)
着色剤が、本件特許発明1は、「着色球状樹脂粒子」であるのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
(相違点1-3)
本件特許発明1は、「水性ボールペンの100mあたりのインキ消費量をA(mg)、ボールペンチップのボール径をB(mm)とした場合、110<A/B≦600の関係である」のに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
ウ 判断
事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
(ア) 参考文献Aの段落【0027】の記載(上記(3)ア)によれば、「WA color Black A 250(大日精化工業(株)製、C.I.Pigment Black 7、顔料分15質量%)」は、「水溶性樹脂を用いて顔料を水媒体中に分散させた水分散顔料製品」である。参考文献Aの上記記載からは、甲1発明の「顔料分散体WA Color BK 1103(大日精化工業社製)」が、「球状樹脂粒子」からなると解すべき証拠や事情がない。してみると、上記製品と製品シリーズが同一であるから、甲1発明の「顔料分散体WA Color BK 1103(大日精化工業社製)」も、水溶性樹脂を用いて顔料を水媒体中に分散させた水分散顔料製品であるといえる。
(イ) ここで、カーボンブラックの顔料は、通常、球状の粒子またはその凝集体からなり、かつ、ボールペン用インクの顔料として常用されているところ、甲1発明の「顔料分散体WA Color BK 1103(大日精化工業社製)」は、粒子径「0.10μm」程度のものであるから、「粒子径」との用語によりその大きさを規定していることを踏まえると、カーボンブラックの球状粒子を顔料として含むものであると認められる。
また、例えば、特開2015-10114号公報の段落【0017】に、「顔料分散剤は、顔料粒子表面に吸着して、水中に顔料を分散するためのものであり、水溶性樹脂や界面活性剤等が適用できる。」と記載されているとおり、「水溶性樹脂」は、「顔料粒子表面に吸着して、水中に顔料を分散」させる材料である。
そうすると、上記のとおり「球状粒子」からなるカーボンブラックに水溶性樹脂を吸着させた「着色」剤も、「樹脂」を含み「粒子」状をなすものと解することができる。
さらに、例えば、特開2003-73603号公報の3列47行~4列4行に、「着色材としては特に制限されず、公知又は市販の顔料、染料等を用いることができる。」、及び「また、顔料分散体を使用することもでき、特に着色樹脂球分散体(好ましくは球状粒子からなる着色樹脂球)を好適に使用することができる。」と記載されているとおり、顔料を分散体により分散させたものに対して、「着色樹脂球分散体」との用語が、一般に使用されているものであると解される。
以上のことからみて、甲1発明の「顔料分散体WA Color BK 1103(大日精化工業社製)」は、本件特許発明1の「着色球状樹脂粒子」との発明特定事項に含まれる、「着色」、「球状」、「樹脂」及び「粒子」とのいずれの要件をも備えるものであるから、本件特許発明1の「着色球状樹脂粒子」との発明特定事項に相当すると認めた。
(ウ) 一方、特許権者は、令和7年9月24日に提出した意見書において、「本件発明1で規定された「着色球状樹脂粒子」とは、「球状樹脂粒子を染料で染着したもの」であることが明らかです」と主張しているところ(6ページ)、本件特許明細書の【0051】及び【0050】の表1~3の記載において「着色球状樹脂粒子」として、日本蛍光化学(株)社の「NKW6004E」を用いることが示されていることに加え、乙1及び乙2について上記「(2)ア」及び「(2)イ」に示した記載も総合すると、当該主張は妥当であると認められる。
そこで、本件特許発明1の「着色球状樹脂粒子」とは、単に「着色」、「球状」、「樹脂」及び「粒子」との要件を併せ備えるものでは足りず、「球状」の「樹脂粒子」を「着色」したものと解してさらに検討する。
(エ) 上記(ア)及び(イ)において検討したとおり、「球状」のカーボンブラック粒子に水溶性樹脂を吸着させた「着色」剤である、甲1発明の「顔料分散体WA Color BK 1103(大日精化工業社製)」は、「樹脂」を含み「粒子」状をなすと解することができるものであるところ、当該「球状」の「カーボンブラック粒子」そのものが「着色」されてはいるものの、「球状」の「樹脂」を着色したものにはあたらないから、上記(ウ)で示した本件特許発明1のような「球状」の「樹脂粒子」を「着色」したものに相当するとは認められない。
したがって、甲1発明の「顔料分散体WA Color BK 1103(大日精化工業社製)」が、「着色球状樹脂粒子」に相当するとはいえない。
エ 小括
したがって、その他の上記相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明であるとはいえない。
(5) 本件特許発明2~9について
本件特許発明2~9は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1の構成を全て具備するものである。
そうすると、上記(4)のとおり、本件特許発明1が、甲1発明であるとはいえない以上、本件特許発明2~9も、甲1発明であるとはいえない。
2 理由2(進歩性)について
(1) 本件特許発明1について
ア 事案に鑑み、上記相違点1-2について検討する。
(ア) 着色剤の材料について、甲1の【0006】(上記1(1)ア(ア)参照)には、「本発明で使用される顔料としては、大日精化社製WA-colorシリーズや御国色素社製SA-Kシリーズなどの水性顔料分散体を挙げることができる。」と記載されるにとどまり、「着色球状樹脂粒子」を使用することは記載されていない。また、上記1(4)ウで述べたとおり、甲1発明の「顔料分散体WA Color BK 1103(大日精化工業社製)」を、「着色球状樹脂粒子」と解するべき証拠も事情もない。
(イ) 甲2-3の段落【0008】(上記1(1)オ参照)には、「消色性水性インキ組成物」に使用する「着色剤」が、「微小樹脂球を呈色性物質により着色してなる」ものであることが記載されている。ここで、本件特許発明1は、本件特許明細書の段落【0031】に記載されているとおり、「インキ漏れ抑制効果」を得るために、「顔料粒子」の「平均粒子径」を「1μm以下」とし、さらに、「摩擦抵抗を低減する」ために、顔料粒子として「球状の顔料樹脂粒子」を使用するものである。一方、甲1発明は、着色剤として「顔料分散体WA Color BK 1103(大日精化工業社製)」を使用して、「ボテ、線割れなどの筆記性能」の低下を抑え、「快適な運筆感を確保」するものであるから(甲1の段落【0006】、【0010】及び【0018】を参照)、甲1発明において、「顔料分散体WA Color BK 1103(大日精化工業社製)」に替えて、甲2-3に記載の「微小樹脂球を呈色性物質により着色してなる」「着色剤」を使用する動機付けがない。また、甲2-3の段落【0009】に「呈色性物質」として、「中でもロイコ染料が好ましく、そのロイコ染料(発色剤)としては、電子受容性化合物(顕色剤)と反応して呈色するもの」が記載されているとおり(上記1(1)オ参照)、着色剤の材料の前提が甲1発明とは異なるから、甲1発明において、甲2-3に記載の「微小樹脂球を呈色性物質により着色してなる」「着色剤」を使用する動機付けがない。
(ウ) 甲2-4の段落【0017】(上記1(1)カ参照)には、「本発明のボールペン用インク組成物には、・・・(略)・・・、着色剤、・・・(略)・・・を含有することができる。」、「着色剤としては、・・・(略)・・・、樹脂粒子を染料で着色した疑似顔料、・・・(略)・・・を用いることができる。」と記載されている。しかしながら、甲2-4には、「樹脂粒子を染料で着色した疑似顔料」の形状について記載されていないから、「疑似顔料」が「球状」であるとは認められない。
また、同様のことが、甲2-5の段落【0011】(上記1(1)キ参照)に記載された、「予め界面活性剤や樹脂を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品」についてもいえるから、甲2-4及び甲2-5の記載から、本件特許発明1の上記「着色球状樹脂粒子」との発明特定事項にあたるものが周知の技術事項であるとは認められないし、仮に周知の技術事項であったとしても、上記(イ)で論じたとおりこれを適用する動機付けも見いだせない。
したがって、甲1発明の「顔料分散体WA Color BK 1103(大日精化工業社製)」に替えて、甲2-4及び甲2-5に記載のものを使用したとしても、本件特許発明1の構成には到らない。
(エ) また、その他の証拠を参照しても、甲1発明の「顔料分散体WA Color BK 1103(大日精化工業社製)」に替えて、「着色球状樹脂粒子」を使用する動機付けがないし、各甲号証に記載の技術事項を甲1発明に適用しても、本件特許発明1の構成には到らない。
(オ) したがって、甲1発明の「顔料分散体WA Color BK 1103(大日精化工業社製)」に替えて、「着色球状樹脂粒子」を使用することが、当業者であれば容易に想到し得たとはいえない。
イ 小括
以上のとおりであるから、その他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明及び周知技術から、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(2) 本件特許発明2~9について
本件特許発明2~9は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1の構成を全て具備するものである。
そうすると、上記(1)のとおり、本件特許発明1は、当業者が容易に想到し得たものでない以上、本件特許発明2~9も、当業者が容易に想到し得たものでない。
第7 むすび
本件特許1~9は、取消理由通知書に記載した取消理由及び申立書に記載された申立理由によっては、取り消すことができない。そして、他に本件特許1~9を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700355