特許異議申立
2025-700534
シャープペンシル
- 審判番号
- 2025-700534
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-025539
- 登録番号
- 7608200
- 請求日
- 2025年05月16日
- 審決日
- 2025年12月10日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社パイロットコーポレーション
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】前川 英明
- 【権利者代理人】柳本 陽征
- 【異議申立人】松本 文彦
- 審判長/審判官
- 審判長 川俣 洋史
- 審判官 濱本 禎広
- 審判官 山本 一
- 分類
- P1651.113-Y (B43K) / P1651.121-Y (B43K) / P1651.55 -Y (B43K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7608200号発明「シャープペンシル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7608200号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7608200号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和3年2月19日の出願であって、令和6年12月20日にその特許権の設定登録がされ、令和7年1月6日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年5月16日に特許異議申立人松本文彦(以下、単に「特許異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
1 本件発明の認定
本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」などという。また、これらを総称して「本件発明」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
軸筒本体と前記軸筒の前方に配設された先部材とを有する軸筒と、前記先部材に内包され該先部材に対して前後動可能に装着されたスライダーと、前記軸筒内に配置され筆記用の芯を把持するチャックと、前記チャックの外方に配設された筒状体と、前記筒状体の内方に前記チャックを締め付ける締部と、を備え、
前記スライダーは前部に前記芯をガイドする内孔を備えたガイド部と、前記芯を一定の力で保持する芯保持部を有し、
前記ガイド部は、筆記時において前記先部材の前端開口部から前方へ突出し、携帯時においては前記芯とともに前記軸筒内に退没可能に構成されたシャープペンシルであって、
前記筒状体の後方に、該筒状体に対して軸方向に沿って前後に摺動可能な中間把持部材が配設され、前記中間把持部材は、当該筒状体を把持する把持部と、前記チャックと当接することで該チャックに対して前方への移動が制限される第1当接部と、前記筒状体と当接することで該筒状体に対して前方への移動が制限される第2当接部と、を有し、
前記筒状体の前部に、前記スライダーの後部に当接するスライダー押圧部を有し、
前記中間把持部材の後方に、該中間把持部材を前後方向に操作可能な操作体を有し、
前記スライダーの外周部に、前記スライダーが後退した際に前記先部材の内周部に形成された被係止部と係止する係止部を有し、
前記スライダーを前方へ付勢する弾性部材が該スライダーと前記先部材の間に張架され、
前記係止部と前記被係止部との係止状態を解除するために最小限必要とされる、前記スライダーを軸方向に沿って前方へ押圧する押圧力をXとし、前記中間把持部材が前記筒状体を把持することにより前記中間把持部材と前記筒状体との間に生じる摩擦力をYとしたとき、Y<Xの関係式を満たし、
前記ガイド部が前記軸筒内に退没し前記係止部と前記被係止部とが係止した状態から、前記操作体を操作することで前記スライダーを前進させ、前記ガイド部を前記先部材の前端開口部から前方へ突出させた際の前記スライダーの前進量をS1、前記芯の前進量をS2としたとき、S1<S2となることを特徴とするシャープペンシル。
【請求項2】
前記ガイド部が前記軸筒内に退没し前記係止部と前記被係止部とが係止した状態において、前記スライダーの後部とスライダー押圧部との間に隙間が構成されることを特徴とする請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項3】
前記筒状体の内周面に前記締部を備えたことを特徴とする請求項2に記載のシャープペンシル。
【請求項4】
前記筒状体の内方に、該筒状体に対して前後に摺動可能な締具が配設され、前記締具の内周面に前記締部を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のシャープペンシル。
【請求項5】
前記スライダーの係止部は外方へ向かって突出する突出部を有し、前記先部材の被係止部は外方へ向かって凹む凹部を有することを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載のシャープペンシル。
【請求項6】
前記突出部が弾性材料で形成されたOリングで構成されていることを特徴とする請求項5に記載のシャープペンシル。」
2 本件発明1の分説
本件発明1の構成を、後記第4の2~4の対比の議論のために、便宜上次のように構成A~J、Xに分説する。
<本件発明1の分説>
【請求項1】
(構成A)軸筒本体と前記軸筒の前方に配設された先部材とを有する軸筒と、前記先部材に内包され該先部材に対して前後動可能に装着されたスライダーと、前記軸筒内に配置され筆記用の芯を把持するチャックと、前記チャックの外方に配設された筒状体と、前記筒状体の内方に前記チャックを締め付ける締部と、を備え、
(構成B)前記スライダーは前部に前記芯をガイドする内孔を備えたガイド部と、前記芯を一定の力で保持する芯保持部を有し、
(構成C)前記ガイド部は、筆記時において前記先部材の前端開口部から前方へ突出し、携帯時においては前記芯とともに前記軸筒内に退没可能に構成されたシャープペンシルであって、
(構成D)前記筒状体の後方に、該筒状体に対して軸方向に沿って前後に摺動可能な中間把持部材が配設され、前記中間把持部材は、当該筒状体を把持する把持部と、前記チャックと当接することで該チャックに対して前方への移動が制限される第1当接部と、前記筒状体と当接することで該筒状体に対して前方への移動が制限される第2当接部と、を有し、
(構成E)前記筒状体の前部に、前記スライダーの後部に当接するスライダー押圧部を有し、
(構成F)前記中間把持部材の後方に、該中間把持部材を前後方向に操作可能な操作体を有し、
(構成G)前記スライダーの外周部に、前記スライダーが後退した際に前記先部材の内周部に形成された被係止部と係止する係止部を有し、
(構成H)前記スライダーを前方へ付勢する弾性部材が該スライダーと前記先部材の間に張架され、
(構成I)前記係止部と前記被係止部との係止状態を解除するために最小限必要とされる、前記スライダーを軸方向に沿って前方へ押圧する押圧力をXとし、前記中間把持部材が前記筒状体を把持することにより前記中間把持部材と前記筒状体との間に生じる摩擦力をYとしたとき、Y<Xの関係式を満たし、
(構成J)前記ガイド部が前記軸筒内に退没し前記係止部と前記被係止部とが係止した状態から、前記操作体を操作することで前記スライダーを前進させ、前記ガイド部を前記先部材の前端開口部から前方へ突出させた際の前記スライダーの前進量をS1、前記芯の前進量をS2としたとき、S1<S2となることを特徴とする
(構成X)シャープペンシル。
第3 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、特許異議申立書において、以下の1~3を主張する。
1 進歩性の欠如
本件発明1~6は、下記甲1号証、甲第2号証、又は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
2 新規性の欠如
本件発明1~3は、下記甲2号証又は甲第3号証に記載された発明であるから、本件発明1~3に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
3 新規事項の追加
令和6年10月17日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、請求項1~6に係る特許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
4 証拠方法
特許異議申立人は、前記1及び2の主張を裏付ける証拠として、次の甲第1号証~甲第3号証(以下、単に「甲1」~「甲3」という。)を提出した。
甲第1号証 :実公平4-53980号公報
甲第2号証 :特開昭62-212198号公報
甲第3号証 :特開昭62-158099号公報
第4 当審の判断
1 各甲号証に記載された発明の認定
(1) 甲1
ア 甲1に記載された事項
本件特許の出願前に発行された、甲1(実公平4-53980号公報)には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
(ア) 2欄6~10行
「【産業上の利用分野】
この考案は、紙面等からのスライダーの筆記解除によつて自動的に芯送りが行われ、かつ、不使用時にスライダーを後退位置でロツクし得るシヤープペンシルに関する。」
(イ) 3欄22~38行、第1図
「【実施例】
以下、この考案の一実施例を図面に基づいて説明する。
第1図に示すように、外筒1には、その先端に先具2が、また、内部には前方軸方向に摺動可能に芯パイプ3が配置されている。
この芯パイプ3の先端には、先端受部4が嵌合され、この先端受部4の先端には接触間距離aの間隔をもつて芯送出機構5が配置されている。
上記先端受部4は、後述するリードチヤツク6の後端を押圧係合する先端孔4aを有し、この先端受部4はスリーブ7と移動可能に係合している。
即ち、上記先端受部4の先端側に一体突設された外向凸部4cを、上記スリーブ7の後端側に形成した軸方向溝7aに移動可能に嵌込み係合させている。」
「
[図:0001431150000001.jpg]
」
(ウ) 3欄39行~4欄26行、第2図
「ここで、上記先端受部4とスリーブ7の係合は、スリーブ7が後述の先筒8に当接するまでは、一体的に両者が移動し、その後は先端受部4のみが前進できる係合であれば、どのような構造であつてもよく、例えば、第2図示のものが挙げられる。
第2図aの実施例では、上記軸方向溝7aに突起7bを設けている。この場合、上記軸方向溝7aの溝幅Aは上記外向凸部4cの幅Bより小さく形成されている。これによつて、スリーブ7が第1図中の先筒8に当接するまでは上記外向凸部4cが上記突起7bに係止されて上記先端受部4と上記スリーブ7の両者が一体に移動し、その後は外向凸部4cが突起7bを押し開いて前進し、先端受部4のみが軸方向溝7aの先端まで前進できるようになつている。
第2図bの実施例では、軸方向溝7aの一部に粗面7cを形成して外向凸部4cに所定の抵抗を与えるようにしている。この粗面7cによつて、上述の実施例と同様に、スリーブ7が先筒8に当接するまでは、外向凸部4cに抵抗を与え先端受部4とスリーブ7とが一体に移動し、その後は先端受部4のみが前進できるようになつている。
このような先端受部4とスリーブ7の係合手段は、例えば特願昭61-574913号に示された係合手段など、その他の係合手段であつてもよい。
尚、第2図a,bの各実施例において、外向凸部4cと軸方向溝7aはそれぞれ相対向して一対形成されている。
そして、第1図示のように、スリーブ7の後端と先端受部4の鍔部4bとの間には距離bが設けられている。」
「
[図:0001431150000002.jpg]
」
(エ) 4欄27行~7欄2行
「一方、上記芯送出機構5は、2つに分割形成されたリードチヤツク6の頭部のボール保持部9に保持されたボール10と、リードチヤツク6が内部に装着されて後端部が上述の先端受部4に係合されたスリーブ7と、このスリーブ7とリードチヤツク6の係止段部6aとの間に弾着されたチヤツク締付用の第1の弾性体11とを有する。
・・・(中略)・・・
そして、上記リードチヤツク6の頭部内壁における芯挿通孔60の先端側には、小径段差状の芯保持孔部69が設けられている。」
・・・(中略)・・・
一方、上記リードチヤツク6の頭部に保持されたボール10は、第1図示のように、スリーブ7の先端部に設けられた内面テーパ壁71との間に嵌合保持され、この内面テーパ壁71は、上記スリーブ7の先端内部に必要に応じて嵌着されたステンレス等の金属筒70の内周面に形成されている。
この金属筒70によつて、確実かつ耐久性ある安定した転がり接触が行え、しかも、リードチヤツク6の芯保持が確実に行え且つ耐久性が増す。」
(オ) 8欄5行~9欄2行
「そして、上述の芯送出機構5は、中枠14にその略全体が収納されている。
この中枠14は、外筒1内に軸方向に摺動可能に配置され、第3の弾性体16によつて前方に付勢されている。そして、この中枠14の先端には、先筒8が、また、内壁には上記内方段部14aが、さらに外周には外方段部15bがそれぞれ設けられている。
上記先筒8とスリーブ7先端との間には第1図示のように距離cが設けられている。この距離cは、後述するように後端ノツクによる芯送出動作の際の芯送り量に相当することとなる。
ここで、先筒8は中枠14の先端に嵌合係着され、後述のように、前進してきたスリーブ7の先端に当接し、スリーブ7を停止させる機能およびスライダー15を所定の嵌合圧で保持し、スライドパイプ17を先具2内に完全収納させた後退位置で上記スライダー15を完全ロツクする機能を有し、これらの機能を果たす材料であれば、どのようなものでもよい。
上記スライダー15のロツク手段として、第1図示のように、先筒8内には内壁環状突部8aが設けられ、かつ、上記スライダー15の軸方向に沿つてスリツト15aがまた、スライダー15の後端側外周面には外向突起18bが設けられている。
この外向突起18bが上記内壁環状突部8aの後端に係合することにより、スライダー15が後退位置でロツクされ、スライドパイプ17が先具2内に完全収納されるようになつている。
特に外向突起18bと内壁環状突部8aとの係合において、スリツト15aにより生ずる内方へのたわみを利用して行うので、きわめて確実かつ簡単に行える。
この場合における上記外向突起18bと上記内壁環状突部8aの係合圧は、第2の弾性体12の弾発力より強く、かつ、後退ノツク圧より弱く設定されている。
従つて、上記外向突起18bと上記内壁環状突部8aの係合によつてロツクされたスライダー15は、後端ノツク圧によるリードチヤツク6の押圧で解除される。」
(カ) 9欄21~34行
「上記先具2の内部には、軸方向に移動可能なスライダー15が配置されている。
このスライダー15は、第1図示のように、スライドパイプ17を中心に装着したスライダー本体18と、このスライダー本体18の内部に嵌合され、芯13に所定の摩擦力を付与する摩擦付与部材19と、この摩擦付与部材19による芯13への後退摩擦力(後述)は20~30gで、上記第1、第2の弾性体11,12の弾発力より大きく、かつ、第3の弾性体16の弾発力より小さくなつている。
そして、スライダー15は、後端が先具2に固定されている受部20に係止された上記第2の弾性体12により前方に付勢されている。」
(キ) 10欄21行~11欄13行
「次に、この考案の芯送り動作について説明する。この芯送り動作は次の2通りである。
(1) まず、第1の手段は、芯パイプ3の後端ノツク操作により行う通常の手段である。
即ち、先端受部4に係合されたスリーブ7は、ノツク操作によつて、芯パイプ3等と共に前進し、先筒8の後端に当接するまで芯送りを行い、しかる後、停止する。
即ち、(イ)スライダー15が、先筒8にロツクされていない場合(第15参照)には、後端ノツクによつて、通常通りの芯送りが行われる。
(ロ)他方、スライダー15が、内壁環状突部8aと外向突起18bとの係合により、先筒8にロツクされている場合(第1図参照)には、上述の後端ノツクにより、上述のように、スリーブ7の先端が先筒8の後端と当接するまでの間(距離cの間)、(イ)同様に芯送りが行われ、しかる後、リードチヤツク6の前進によつてスライダー15が前方に押圧される。これによつて、スライダー15の外向突起18bが先筒8の内壁環状突部8aを乗り越え、ロツク解除される。その後、第2の弾性体12により前方へ付勢移動され、スライドパイプ17が先具2から突出する。この過程で、摩擦付与部材19の後退摩擦力で支持された芯13はリードチヤツク6から前方に引き出され、スライダー15と共に前進する。
従つて、第16図示のように芯13は、スライドパイプ17の先端から常に筆記に適した距離cだけ突出していることとなる。
以上のように、スライダー15の後端ノツクで、ロツク解除操作と芯送り動作が同時に行え、スライドパイプ17から筆記に適した距離cだけ芯13が突出した状態を確保できる。
従つて、目で芯13を確認しながら筆記が可能となる。」
(ク) 11欄37行~12欄11行
「そこで、例えば第18図示の状態で筆記を中断し、スライドパイプ17の先端を紙面から離脱させたとする。
これによつて、スライダー15は、第2の弾性体12の弾発力によつて前進すると共に、芯13も摩擦付与部材19から所定の摩擦力によつてスライダー15と一緒に前進方向に引つ張れる。
一方、芯13を喰着しているリードチヤツク6のチヤツク締付力は、第2の弾性体12より弱い第1の弾性体11によつて付与されているので、上述の芯13の前進方向の引張力によつて、圧縮され、リードチヤツク6全体の前進を許容する。
この前進に際して、リードチヤツク6の頭部は、ボール10がスリーブ7の内面テーパ壁71を転がり接触し、前進するに従つて、リードチヤツク6の喰着力は弱まつていき、芯13の送り出しが行われる。」
(ケ) 12欄36行~13欄1行
「【考案の効果】
以上のように、この考案によれば、筆記具の不使用時にスライドパイプが先具内に完全収納された位置でロツクされることにより、筆記具携帯時等に上記スライドパイプが突出して衣服等を傷つけるという不測の事態を招く虞れがなく、しかも、一本のシヤープペンシルで種々の芯送りを行うものでは、その内部構造が簡素化してコスト低減が図れると共に、筆記具全体がシンプルなものとなる。」
イ 甲1から読み取れる認定事項
(ア) 甲1の第2図(前記ア(ウ))から、次の事項が読み取れる。
「スリーブ7が、円筒形状であること。」
(イ) 甲1の9欄21~34行(前記ア(カ))には、「このスライダー15は、第1図示のように、スライドパイプ17を中心に装着したスライダー本体18と、このスライダー本体18の内部に嵌合され、芯13に所定の摩擦力を付与する摩擦付与部材19と、・・・。」と記載されており、「スライダー15」と、「スライダー本体18」及び「摩擦付与部材19」の関係を示す記載が欠落しているところ、第1図(前記ア(イ))に示された構成を踏まえると、「スライダー15」は、「スライダー本体18」及び「摩擦付与部材19」を備えていることが読み取れる。
ウ 甲1発明の認定
前記アの記載事項及び前記イの認定事項を総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
<甲1発明>
「シヤープペンシルであって、(2欄6~10行)
外筒1には、その先端に先具2が、また、内部には前方軸方向に摺動可能に芯パイプ3が配置され、
この芯パイプ3の先端には、先端受部4が嵌合され、この先端受部4の先端には接触間距離aの間隔をもつて芯送出機構5が配置され、
上記先端受部4は、後述するリードチヤツク6の後端を押圧係合する先端孔4aを有し、この先端受部4はスリーブ7と移動可能に係合し、
即ち、上記先端受部4の先端側に一体突設された外向凸部4cを、上記スリーブ7の後端側に形成した軸方向溝7aに移動可能に嵌込み係合させ、(3欄22~38行)
ここで、上記先端受部4とスリーブ7の係合は、スリーブ7が後述の先筒8に当接するまでは、一体的に両者が移動し、その後は先端受部4のみが前進できる係合であれば、どのような構造であつてもよく、例えば、
上記軸方向溝7aに突起7bを設け、これによつて、スリーブ7が先筒8に当接するまでは上記外向凸部4cが上記突起7bに係止されて上記先端受部4と上記スリーブ7の両者が一体に移動し、その後は外向凸部4cが突起7bを押し開いて前進し、先端受部4のみが軸方向溝7aの先端まで前進できるようになつており、(3欄39行~4欄26行)
前記スリーブ7は、円筒形状であり、(前記イ(ア)の認定事項)
上記芯送出機構5は、2つに分割形成されたリードチヤツク6の頭部のボール保持部9に保持されたボール10と、リードチヤツク6が内部に装着されて後端部が上述の先端受部4に係合されたスリーブ7と、このスリーブ7とリードチヤツク6の係止段部6aとの間に弾着されたチヤツク締付用の第1の弾性体11とを有し、
上記リードチヤツク6の頭部内壁における芯挿通孔60の先端側には、小径段差状の芯保持孔部69が設けられ、
上記リードチヤツク6の頭部に保持されたボール10は、スリーブ7の先端部に設けられた内面テーパ壁71との間に嵌合保持され、この内面テーパ壁71は、上記スリーブ7の先端内部に必要に応じて嵌着されたステンレス等の金属筒70の内周面に形成され、この金属筒70によつて、確実かつ耐久性ある安定した転がり接触が行え、しかも、リードチヤツク6の芯保持が確実に行え、(4欄27行~7欄2行)
上述の芯送出機構5は、中枠14にその略全体が収納され、この中枠14は、外筒1内に軸方向に摺動可能に配置され、この中枠14は、外筒1内に軸方向に摺動可能に配置され、第3の弾性体16によつて前方に付勢され、この中枠14の先端には、先筒8が設けられ、
上記先筒8とスリーブ7先端との間には距離cが設けられ、この距離cは、後端ノツクによる芯送出動作の際の芯送り量に相当し、
先筒8は中枠14の先端に嵌合係着され、後述のように、前進してきたスリーブ7の先端に当接し、スリーブ7を停止させる機能およびスライダー15を所定の嵌合圧で保持し、スライドパイプ17を先具2内に完全収納させた後退位置で上記スライダー15を完全ロツクする機能を有し、
上記スライダー15のロツク手段として、先筒8内には内壁環状突部8aが設けられ、スライダー15の後端側外周面には外向突起18bが設けられ、
この外向突起18bが上記内壁環状突部8aの後端に係合することにより、スライダー15が後退位置でロツクされ、スライドパイプ17が先具2内に完全収納されるようになつており、
この場合における上記外向突起18bと上記内壁環状突部8aの係合圧は、第2の弾性体12の弾発力より強く、かつ、後退ノツク圧より弱く設定され、
従つて、上記外向突起18bと上記内壁環状突部8aの係合によつてロツクされたスライダー15は、後端ノツク圧によるリードチヤツク6の押圧で解除され、(8欄5行~9欄2行)
上記先具2の内部には、軸方向に移動可能なスライダー15が配置され、このスライダー15は、スライドパイプ17を中心に装着したスライダー本体18と、このスライダー本体18の内部に嵌合され、芯13に所定の摩擦力を付与する摩擦付与部材19とを備え、スライダー15は、後端が先具2に固定されている受部20に係止された上記第2の弾性体12により前方に付勢され、(9欄21~34行、前記イ(イ)の認定事項)
芯パイプ3の後端ノツク操作により行う芯送り動作は、スライダー15が、内壁環状突部8aと外向突起18bとの係合により、先筒8にロツクされている場合には、上述の後端ノツクにより、スリーブ7の先端が先筒8の後端と当接するまでの間(距離cの間)、芯送りが行われ、しかる後、リードチヤツク6の前進によつてスライダー15が前方に押圧され、これによつて、スライダー15の外向突起18bが先筒8の内壁環状突部8aを乗り越え、ロツク解除され、その後、第2の弾性体12により前方へ付勢移動され、スライドパイプ17が先具2から突出し、この過程で、摩擦付与部材19の後退摩擦力で支持された芯13はリードチヤツク6から前方に引き出され、スライダー15と共に前進し、
スライダー15の後端ノツクで、ロツク解除操作と芯送り動作が同時に行え、スライドパイプ17から筆記に適した距離cだけ芯13が突出した状態を確保でき、(10欄21行~11欄13行)
筆記を中断し、スライドパイプ17の先端を紙面から離脱させることによつて、スライダー15は、第2の弾性体12の弾発力によつて前進すると共に、芯13も摩擦付与部材19から所定の摩擦力によつてスライダー15と一緒に前進方向に引つ張れ、芯13を喰着しているリードチヤツク6のチヤツク締付力は、第2の弾性体12より弱い第1の弾性体11によつて付与されているので、上述の芯13の前進方向の引張力によつて、圧縮され、リードチヤツク6全体の前進を許容し、この前進に際して、リードチヤツク6の頭部は、ボール10がスリーブ7の内面テーパ壁71を転がり接触し、前進するに従つて、リードチヤツク6の喰着力は弱まつていき、芯13の送り出しが行われ、(11欄37行~12欄11行)
筆記具の不使用時にスライドパイプが先具内に完全収納された位置でロツクされることにより、筆記具携帯時等に上記スライドパイプが突出して衣服等を傷つけるという不測の事態を招く虞れがない、(12欄36行~13欄1行)
シヤープペンシル。」
(2) 甲2
ア 甲2に記載された事項
本件特許の出願前に発行された、甲2(特開昭62-212198号公報)には、以下の事項が記載されている。
(ア) 1頁右欄6~10行
「【産業上の利用分野】
この発明は、紙面等からのスライダーの筆記解除によって自動的に芯送りが行われ、かつ不使用時にスライダーを後退位置でロックし得るシャープペンシルに関する。」
(イ) 2頁右上欄4~16行、第1図
「【実施例】
以下、この考案の一実施例を図面に基づいて説明する。
第1図に示すように、外筒1には、その先端に先具2が、また、内部には前方軸方向に摺動可能に芯パイプ3が配置されている。この芯パイプ3の先端には、先端受部4が嵌合され、この先端受部4の先端側には接触間距離(a)の間隔をもって芯送出機構5が配置されている。
上記先端受部4には、後述するリードチャック6の後端を押圧係合する先端孔4aを有すると共に、この先端受部4はスリーブ7と移動可能に係合している。」
「
[図:0001431150000003.jpg]
」
(ウ) 2頁右上欄17行~左下欄11行、第2図
「ここで、先端受部4とスリーブ7との係合は、スリーブ7が先筒9に当接するまでは、一体的に両者が移動し、その後は先端受部4のみが前進できる係合であれば、如何なる構造であってもよく、例えば第2図示のものが挙げられる。
第2図(a)、(b)はスリーブ7の実施例を示し、先端受部4の凸部4cと移動可能に係合する溝7bが形成されている。この溝7bには、突起7cが設けられ、この部分の溝幅Aは凸部4cの幅Bより小さく形成され、スリーブ7が先筒9に当接するまでは凸部4cが溝7bの突起7cに係止され、一体的に両者が移動する。その後は凸部4cが突起7cを押し開き前進し、先端受部4のみが溝7bの先端まで前進できるように形成されている。」
「
[図:0001431150000004.jpg]
」
(エ) 3頁左上欄11行~右下欄20行
「また、芯送出機構5は、2つに分割形成されたリ一ドチャック6の頭部のボール保持部10に保持されたボール11と、リードチャック6の内部に装着し(当審注:第1図を踏まえると、「リードチャック6を内部に装着し」の誤記と認められる。)、後端部を上述の先端受部4に係合されたスリーブ7と、このスリーブ7とリードチャック6の係止段部6aとの間に弾着されたチャック締付用の第1の弾性体12とを有する。
・・・(中略)・・・
上記リードチャック6の頭部に保持されたボール11は、第1図示のようにスリーブ7先端部の内面テーパ壁7gにステンレス等の金属筒7hが必要に応じて嵌合装着されている。この金属筒7hによって、確実かつ耐久性ある安定した上記ころがり接触が行え、しかもリードチャック6の芯保持が確実に行え且つ耐久性が増す。」
(オ) 4頁左下欄9行~5頁左上欄15行、第13図
「そして、上述の芯送出機構5は、中枠15にその略全体が収納されている。この中枠15は、外筒1内に軸方向に摺動可能に配置され、第3の弾性体17によって前方へ付勢されている。そして、この中枠15の先端には、先筒9が、また、内壁には内方段部15aが、さらに外周には外方段部15bがそれぞれ設けられている。
上記先筒9とスリーブ7先端との間には第1図示のように距離(c)が設けられている。この距離(c)は、後述するように後端ノックによる芯送出動作の際の芯送り量に相当することとなる。ここで、先筒9は中枠15の先端に嵌合係着され、後述のように、前進してきたスリーブ7の先端に当接し、スリーブ7を停止させる機能および可動筒22を所定の嵌合圧で保持し且つ外方係止段部22aの後端に当接し、可動筒22を後退位置で停止させる機能を果たし、これらの機能を果たす材料であれば、如何なるものであってもよい。
そして、上記先筒9の内方係止段部9aには、第1図示のように、その内径と略等しい外径の可動筒22が軸方向へ摺動可能に嵌合されている。
この可動筒22の先端には、第13図示のように、上記先筒9の内径と略等しい外径の環状の外方係止段部22aが設けられ、この外方係止段部22aは先筒9の内周面に所定に嵌合圧(摩擦抵抗)で軸方向へ摺動可能に嵌合されている。先筒9との嵌合圧を所定圧とし、かつ軸方向の摺動を確実にするために、必要に応じてスリット22bが形成されている。
かかる可動筒22は、第13図(a)に示すように、その外方係止段部22aの後端が先筒9の内方係止段部9aの前端に当接してスライダー16の後退移動を後述するロック状態に規制(ロック位置で停止)する機能、および後述のように前進してきたリードチャック6の前端で押圧され、上記嵌合圧に抗して前進し、スライダー16を前進させてそのロック状態を解除する機能を果たす。ここで、可動筒22と先筒9との嵌合圧(例えば、400g±50g)は、第3の弾性体17の弾発力(例えば、500~550g)より小さく、逆に、スライダー16の突起19bと受部21の内壁環状突部21aとの係合圧(例えば、200g±50g)より大きくなっている。
従って、後述のように、内壁環状突部21aによってロックされたスライダー16は、第3の弾性体17により付勢移動された可動筒22による押圧によってロック解除される。」
「
[図:0001431150000005.jpg]
」
(カ) 5頁左下欄7~20行
「前記先具2の内部には、軸方向に移動可能なスライダー16が配置されている。
このスライダー16は、第1図示のようにスライドパイプ18を中心に装着したスライダ一本体19と、このスライダ一本体19の内部に嵌合され、芯14に所定の摩擦力を付与する摩擦付与部材20とを有する。この摩擦付与部材2oによる芯14への後退摩擦力(後述)は20~30gで、上記第1、第2の弾性体12、13の弾発力より大きく、かつ、第3の弾性体17の弾発力および可動筒22の嵌合圧より小さくなっている。
そして、スライダー16は、後端が先具2に固定されている受部21に係止された上記第2の弾性体13により前方へ付勢されている。」
(キ) 6頁左上欄8~13行
「また、スライダー16を後退位置で上記ロック状態に停止させる係止手段として、第1図示のように、受部21の内壁環状突部21aと係合する突起19bが設けられている。ここで、このスライダ一本体19の側面には、スリットSが形成されている。」
(ク) 6頁左上欄14行~左下欄9行
「次に、この発明の芯送り動作について説明する。この芯送り動作は次の3通りである。
(1)まず、第1の手段は、芯パイプ3の後端のノック操作することにより行う通常の手段である。
即ち、係止受部4に係合されたスリーブ7は、ノック操作によって、芯パイプ3等と共に前進し、先筒9の後端に当接するまで芯送りを行い、しかる後、停止する。
即ち、(イ)スライダー16が、後述するように、受部21にロックされていない場合(第17図参照)には、後端ノックによって、通常通りの芯送りが行われる。
(ロ)他方、スライダー16が受部21の環状突部21aによって、ロックされている場合(第1図、第18図参照)には、上述の後端ノックにより、上述のように、スリーブ7の先端が先筒9の後端と当接するまでの間(距離(c)の間)、(イ)同様に芯送りが行われ、しかる後、リードチャック6の前進によって可動筒22を押圧し、同時にスライダー16をも前方へ押圧する。これによって、スライダー16は受部21の環状突部21aを乗り越え、ロック解除される。その後、第2の弾性体13により前方へ付勢移動され、スライダパイプ18が先具2から突出する。この過程で、摩擦付与部材20の後退摩擦力で支持された芯14はリードチャック6から前方に引き出され、スライダー16と共に前進する。従って、第19図示のように芯14は、スライダパイプ18の先端から常に筆記に適した距離(c)だけ突出していることとなる。
以上のように、スライダー16の後端ノックによって、ロック解除操作と芯送り動作が同時に行え、スライダパイプ18から筆記に適した距離(c)だけ芯14が突出した状態を確保できる。
従って、目で芯14を確認しながら筆記が可能となる。」
(ケ) 6頁右下欄11行~7頁左上欄6行
「そこで、例えば、第22図示の状態で筆記を中断し、スライドパイプ18の先端を紙面から離脱させたとする。これによって、スライダー16は、第2の弾性体13の弾発力によって前進すると共に、芯14も摩擦付与部材20から所定の摩擦力によってスライダー16と一緒に前進方向に引張れる。一方、芯14を喰着しているリードチャック6のチャック締付力は、第2の弾性体13より弱い第1の弾性体12によって付与されているので、上述の芯14の前進方向の引張力によって、圧縮され、リードチャック6全体の前進を許容する。この前進に際して、リードチャック6の頭部は、ポール11がスリーブ7のテーパ内壁7gをころがり接触し、前進するに従って、リードチャック6の喰着力は弱まっていき、芯14の送り出しが行われる。」
(コ) 8頁左下欄4行~右下欄10行、第18図
「次に、筆記具の不使用時について説明する。ロックされていない状態から芯バイブ13の後端をノック(この場合、リードチャック6は芯14を開放している。従って、中枠15および芯送出機構5は、上述の先端ノックと異なり後方へは移動していない。)し、かつスライダパイプ18を紙面等へ押圧し、スライダー16を先具2にロック格納する。
即ち、上記動作によってスライダー16が後退し、その後退過程で可動筒22を後方押圧する。ここで、スライダパイプ18の紙面等への押圧は、可動筒22と先筒9との嵌合圧より大きいので、可動筒22は、第18図示のように後方押圧される。この際、第3の弾性体17が先筒9と可動筒22との嵌合圧より大きく設計されているため、芯送出機構5が移動しないので、ロック掻作はスムーズに行える。この過程で、スライダー16は、突起19bが受部21の環状突部21aを乗り越え、かつ係止される。これにより、スライダー16は係止位置で不動状態にロックされる。このロックによって、スライダー16は多少の外力が作用してもロック解除されることがなく、従来のように、スライダー16の移動による不測の芯突出減少が生じることはない。
そして、このロックは、上述の第1の手段で述べた様に、芯バイブ3の後端ノックにより簡単に解除される。」
「
[図:0001431150000006.jpg]
」
イ 甲2から読み取れる認定事項
(ア) 甲2の第1図(前記ア(イ))及び第2図(前記ア(ウ))から、次の事項が読み取れる。
「スリーブ7が、円筒形状であり、スリーブ7の後端側に溝7bが形成されていること。」
(イ) 甲2の第18図(前記ア(コ))から、次の事項が読み取れる。
「スライダー16を先具2にロック格納した状態において、スライドパイプ18は先具2には完全に格納されないこと。」
ウ 甲2発明の認定
前記アの記載事項及び前記イの認定事項を総合すると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、「スライドパイプ18」と「スライダパイプ18」は、同じ構成要素であることが明らかであるから、表記を「スライドパイプ18」に統一した。
<甲2発明>
「シャープペンシルであって、(1頁右欄6~10行)
外筒1には、その先端に先具2が、また、内部には前方軸方向に摺動可能に芯パイプ3が配置され、この芯パイプ3の先端には、先端受部4が嵌合され、この先端受部4の先端側には接触間距離(a)の間隔をもって芯送出機構5が配置され、
上記先端受部4には、後述するリードチャック6の後端を押圧係合する先端孔4aを有すると共に、この先端受部4はスリーブ7と移動可能に係合し、(2頁右上欄4~16行)
ここで、先端受部4とスリーブ7との係合は、スリーブ7が先筒9に当接するまでは、一体的に両者が移動し、その後は先端受部4のみが前進できる係合であれば、如何なる構造であってもよく、例えば、スリーブ7に、先端受部4の凸部4cと移動可能に係合する溝7bが形成され、この溝7bには、突起7cが設けられ、スリーブ7が先筒9に当接するまでは凸部4cが溝7bの突起7cに係止され、一体的に両者が移動し、その後は凸部4cが突起7cを押し開き前進し、先端受部4のみが溝7bの先端まで前進できるように形成され、(2頁右上欄17行~左下欄11行)
前記スリーブ7は、円筒形状であり、前記スリーブ7の後端側に前記溝7bが形成され、(前記イ(ア)の認定事項)
芯送出機構5は、2つに分割形成されたリ一ドチャック6の頭部のボール保持部10に保持されたボール11と、リードチャック6を内部に装着し、後端部を上述の先端受部4に係合されたスリーブ7と、このスリーブ7とリードチャック6の係止段部6aとの間に弾着されたチャック締付用の第1の弾性体12とを有し、
上記リードチャック6の頭部に保持されたボール11は、スリーブ7先端部の内面テーパ壁7gにステンレス等の金属筒7hが必要に応じて嵌合装着され、この金属筒7hによって、確実かつ耐久性ある安定した上記ころがり接触が行え、しかもリードチャック6の芯保持が確実に行え、(3頁左上欄11行~右下欄20行)
上述の芯送出機構5は、中枠15にその略全体が収納され、この中枠15は、外筒1内に軸方向に摺動可能に配置され、第3の弾性体17によって前方へ付勢され、この中枠15の先端には、先筒9が設けられ、
上記先筒9とスリーブ7先端との間には距離(c)が設けられ、この距離(c)は、後端ノックによる芯送出動作の際の芯送り量に相当し、先筒9は中枠15の先端に嵌合係着され、後述のように、前進してきたスリーブ7の先端に当接し、スリーブ7を停止させる機能および可動筒22を所定の嵌合圧で保持し且つ外方係止段部22aの後端に当接し、可動筒22を後退位置で停止させる機能を果たし、
上記先筒9の内方係止段部9aには、その内径と略等しい外径の可動筒22が軸方向へ摺動可能に嵌合され、
この可動筒22の先端には、上記先筒9の内径と略等しい外径の環状の外方係止段部22aが設けられ、この外方係止段部22aは先筒9の内周面に所定に嵌合圧(摩擦抵抗)で軸方向へ摺動可能に嵌合され、
かかる可動筒22は、その外方係止段部22aの後端が先筒9の内方係止段部9aの前端に当接してスライダー16の後退移動を後述するロック状態に規制(ロック位置で停止)する機能、および後述のように前進してきたリードチャック6の前端で押圧され、上記嵌合圧に抗して前進し、スライダー16を前進させてそのロック状態を解除する機能を果たし、
内壁環状突部21aによってロックされたスライダー16は、第3の弾性体17により付勢移動された可動筒22による押圧によってロック解除され、(4頁左下欄9行~5頁左上欄15行)
前記先具2の内部には、軸方向に移動可能なスライダー16が配置され、このスライダー16は、スライドパイプ18を中心に装着したスライダ一本体19と、このスライダ一本体19の内部に嵌合され、芯14に所定の摩擦力を付与する摩擦付与部材20とを有し、スライダー16は、後端が先具2に固定されている受部21に係止された上記第2の弾性体13により前方へ付勢され、(5頁左下欄7~20行)
スライダー16を後退位置で上記ロック状態に停止させる係止手段として、受部21の内壁環状突部21aと係合する突起19bが設けられ、(6頁左上欄8~13行)
芯パイプ3の後端のノック操作することにより行う芯送り動作は、スライダー16が受部21の環状突部21aによって、ロックされている場合には、上述の後端ノックにより、スリーブ7の先端が先筒9の後端と当接するまでの間(距離(c)の間)、芯送りが行われ、しかる後、リードチャック6の前進によって可動筒22を押圧し、同時にスライダー16をも前方へ押圧し、これによって、スライダー16は受部21の環状突部21aを乗り越え、ロック解除され、その後、第2の弾性体13により前方へ付勢移動され、スライドパイプ18が先具2から突出し、この過程で、摩擦付与部材20の後退摩擦力で支持された芯14はリードチャック6から前方に引き出され、スライダー16と共に前進し、
スライダー16の後端ノックによって、ロック解除操作と芯送り動作が同時に行え、スライドパイプ18から筆記に適した距離(c)だけ芯14が突出した状態を確保でき、(6頁左上欄14行~左下欄9行)
筆記を中断し、スライドパイプ18の先端を紙面から離脱させることによって、スライダー16は、第2の弾性体13の弾発力によって前進すると共に、芯14も摩擦付与部材20から所定の摩擦力によってスライダー16と一緒に前進方向に引張れ、芯14を喰着しているリードチャック6のチャック締付力は、第2の弾性体13より弱い第1の弾性体12によって付与されているので、上述の芯14の前進方向の引張力によって、圧縮され、リードチャック6全体の前進を許容し、この前進に際して、リードチャック6の頭部は、ポール11がスリーブ7のテーパ内壁7gをころがり接触し、前進するに従って、リードチャック6の喰着力は弱まっていき、芯14の送り出しが行われ、(6頁右下欄11行~7頁左上欄6行)
筆記具の不使用時は、スライドパイプ18を紙面等へ押圧し、スライダー16を先具2にロック格納し、この過程で、スライダー16は、突起19bが受部21の環状突部21aを乗り越え、かつ係止され、これにより、スライダー16は係止位置で不動状態にロックされ、このロックによって、スライダー16は多少の外力が作用してもロック解除されることがなく、従来のように、スライダー16の移動による不測の芯突出減少が生じることはなく、(8頁左下欄4行~右下欄10行)
スライダー16を先具2にロック格納した状態において、スライドパイプ18は先具2には完全に格納されない、(前記イ(イ)の認定事項)
シャープペンシル。」
(3) 甲3
ア 甲3に記載された事項
本件特許の出願前に発行された、甲3(特開昭62-158099号公報)には、以下の事項が記載されている。
(ア) 1頁左欄19行~右欄2行
「〔産業上の利用分野〕
この発明は紙面等からのスライダーの筆記解除によって、自動的に芯送りの行われるシャープペンシルに関する。」
(イ) 2頁左上欄3~12行、第1図
「第1図に示すように、外筒1には、その先端に先具2が、また内部には前方軸方向に摺動可能に芯パイプ3が配置されている。この芯パイプ3の先端には、先端受部4が嵌合され、この先端受部4の先端側には接触間距離(a)の間隔をもって芯送出機構5が配置されている。
上記先端受部4には、後述するリードチャック6の後端を押圧係合する先端孔4aを有すると共に、この先端受部4はスリーブ7と移動可能に係合している。」
「
[図:0001431150000007.jpg]
」
(ウ) 2頁左上欄13行~右上欄10行、第2図
「ここで、先端受部4とスリーブ7との係合は、スリーブ7が先筒9に当接するまでは、一体的に両者が移動し、その後は先端受部4のみが前進できる係合であれば、如何なる構造であってもよく、例えば、第2図示のものが掲げられる。
第2図(a)の実施例は、スリーブ7の凹部7aと移動可能に係合する足形の凸部4bを先端受部4に突出させたものである。
また、第2図(b)、(c)はスリーブ7の他の実施例を示し、先端受部4の凸部4cと移動可能に係合する溝7bが形成されている。この溝7bには、突起7cが設けられ、この部分の溝幅Aは凸部4Cの幅より小さく形成され、スリーブ7が先筒9に当接するまでは凸部4cが溝7bの突起7cに係止され、一体的に両者が移動する。その後は凸部4cが突起7cを押し開き前進し、先端受部4のみが溝7bの先端まで前進できるように形成されている。」
「
[図:0001431150000008.jpg]
」
(エ) 2頁右下欄8行~3頁左下欄17行
「また、芯送出機構5は、2つに分割形成されたリードチャック6の頭部のボール保持部10に保持されたボール11と、リードチャック6を内部に装着し、後端部を上述の先端受部4に係合されたスリーブ7と、このスリーブ7とリードチャック6の係止段部6aとの間に弾着されたチャック締付用の第1の弾性体12とを有する。
・・・(中略)・・・
上記リードチャック6の頭部に保持されたボール11は、第1図示のようにスリーブ7先端部の内面テーパ壁7gにステンレス等の金属筒7hが必要に応じて嵌合装着されている。この金属筒7hによって、確実かつ耐久性ある安定した上記ころがり接触が行え、しかもリードチャック6の芯保持が確実に行えかつ耐久性が増す。」
(オ) 4頁右上欄4~20行
「そして、上述の芯送出機構5は、中枠15にその略全体を収納されている。この中枠15は、外筒1内に軸方向に摺動可能に配置され、第3の弾性体17によって前方へ付勢されている。そして、この中枠15の先端には、先筒9が、また、内壁には内方段部15aが、さらに外周には外方段部15bがそれぞれ設けられている。
上記先筒9の後端9aとスリーブ7先端との間には距離(c)が設けられている。この距離(c)は、後述するように後端ノックによる芯送出動作の際の芯送り量に相当することとなる。ここで、先筒9は、中枠15の先端に嵌合され、後述のように、前進してきたリードチャック6の先端に当接し、リードチャック6を停止させる機能およびスライダー16の後端を押圧させる機能を果たし、これらの機能を果たす材質であれば、如何なるものであってもよい。」
(カ) 4頁右下欄12行~5頁左上欄17行
「前記先具2の内部には、軸方向に移動可能なスライダー16が配置されている。
このスライダー16は、第1図示のようにスライドパイプ18を中心部に装着したスライダ一本体19と、このスライダ一本体19の内部に装着され、芯14に所定の摩擦圧を付与する摩擦付与部材20とを有する。
そして、このスライダー16は、後端が先具2に固定された受部21に係止された第2の弾性体13により前方へ付勢されている。
ここで、上記摩擦付与部材20は芯14に対して所定の摩擦力を付与し、後述する自動芯送出動作を行う際、第1の弾性体12の弾発力より大きく、かつ、第2の弾性体13の弾発力より、若干大きくなっている。しかも、この摩擦付与部材20の摩擦付与部20aは第1図、第13図示のように、前方方向へ向けて傾斜したのこ刃状に形成され、前進する芯14はスムーズに移動できるが、後退する芯14は摩擦力によって容易には、後退できないように形成されている。
また、スライダー16を所定の間、停止させる手段として、第1図示のように、受部21の内壁環状突部21aと係合する突起19bが設けられている。ここで、このスライダ一本体19の側面には点線で示すように、上記スリットSが形成されている。」
(キ) 5頁右上欄9~19行
「次に、この発明の芯送り動作について説明する。
この芯送り動作は次の3通りである。
(1)まず、第1の手段は、芯パイプ3の後端をノック動作することにより行う通常の手段である。
即ち、先端受部4に係合されたスリーブ7は、ノック動作によって、芯パイプ3等と一緒に前進するが、先筒9の先端に当接して停止する。しかし、芯パイプ3と一体の先端受部4は、さらに前方へ押圧され、スリーブ7の内壁をすべりながら前進する。そして、リードチャック6の後端を前方へ押圧して通常の芯送りを行う。」
(ク) 5頁右下欄18行~6頁左下欄11行、第14図、第15図、第17図
「(3)第3の手段は、スライダー16の先端を紙面へ押し付ける先端ノックによる芯送り出しである。この先端ノックには、次の2通りの場合があり、その作用が異なるので、場合を別けて説明する。
(イ)第1の先端ノックは、第15図示のように、スライドパイプ18先端から芯14が突出していない状態で行う場合であり先端ノックすることにより常にスライドパイプ18から距離(f)の長さ芯14が突出した第14図(X=(f))の状態が得られる。」
「
[図:0001431150000009.jpg]
」
「
[図:0001431150000010.jpg]
」
「即ち、先端ノックによって、リードチャック6は芯14を喰着した状態で後退すると共に、スライダー16も後退する。両者の後退量は同一量であり、最大限、第1図の後退距離(d)まで可能である。尚、中枠15は外筒1のストッパ段部1aによって、係止されることとなる。
上記リードチャック6の後退に際し、第1図示の距離aとdとの間には上述のa>d関係があるので、リードチャック6の後端が先端筒部4に当接する場合を除き、常に芯14を喰着状態に保持している。そしてリードチャック6の後退に伴って内および外段部15a、7hを介して中枠15および先筒9が第3の弾性体17の付勢力に反して後方へ移動される。
他方、スライダー16の後退に際し、距離(a)、(d)、(g)の間には、(a)>(d)>(g)の関係が成立しているので、最大後退距離(d)後退する過程で、まず、スライダ本体19の突起19bが受部21の内壁環状部21aを乗り越えた後、スライダ本体19の後端が第17図示のように受部21後端から突出することとなる。」
「
[図:0001431150000011.jpg]
」
「ここで、スライダ本体19の後端と先筒9との間は、第1図および第17図の状態では距離(f)が保持されている。
次に、スライダー16を押し付けていた紙面から離脱させると、スリーブ7、リードチャック6等の芯送出機構5および中枠15は、主に、第3の弾性体17の付勢力によって、先筒9が先具2の段部2aに当接するまで前進する。この前進に際して、リードチャック6は、芯14を喰着状態で保持している。
他方、スライダー16は、第2の弾性体13の付勢力によって前進するが、第17図のように、内壁環状突部21aと係合するスライダ本体19の突起19bによって一時停止している。このスライダー16の一時停止中でも上述のように、芯送出機構5は、芯14を喰着した状態で前進して来るので、先筒9がスライダ本体19の後端に当接し、上記一時停止係合を解除するまで芯14はスライダー16に対して前進することとなる。この前進量は距離(f)に等しい。
従って、この第1の先端ノックによって、第14図(X=(f))示の状態となり、芯14はスライドパイプ18先端より(f)の長さ突出している。」
イ 甲3から読み取れる認定事項
甲3の第1図(前記ア(イ))及び第2図(前記ア(ウ))から、次の事項が読み取れる。
「スリーブ7が、円筒形状であり、スリーブ7の後端側に溝7bが形成されていること。」
ウ 甲3発明の認定
前記アの記載事項及び前記イの認定事項を総合すると、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。
<甲3発明>
「シャープペンシルであって、(1頁左欄19行~右欄2行)
外筒1には、その先端に先具2が、また内部には前方軸方向に摺動可能に芯パイプ3が配置され、この芯パイプ3の先端には、先端受部4が嵌合され、この先端受部4の先端側には接触間距離(a)の間隔をもって芯送出機構5が配置されて、
上記先端受部4には、後述するリードチャック6の後端を押圧係合する先端孔4aを有すると共に、この先端受部4はスリーブ7と移動可能に係合し、(2頁左上欄3~12行)
ここで、先端受部4とスリーブ7との係合は、スリーブ7が先筒9に当接するまでは、一体的に両者が移動し、その後は先端受部4のみが前進できる係合であれば、如何なる構造であってもよく、例えば、スリーブ7に、先端受部4の凸部4cと移動可能に係合する溝7bが形成され、この溝7bには、突起7cが設けられ、スリーブ7が先筒9に当接するまでは凸部4cが溝7bの突起7cに係止され、一体的に両者が移動し、その後は凸部4cが突起7cを押し開き前進し、先端受部4のみが溝7bの先端まで前進できるように形成され、(2頁左上欄13行~右上欄10行)
前記スリーブ7は、円筒形状であり、前記スリーブ7の後端側に前記溝7bが形成され、(前記イの認定事項)
芯送出機構5は、2つに分割形成されたリードチャック6の頭部のボール保持部10に保持されたボール11と、リードチャック6を内部に装着し、後端部を上述の先端受部4に係合されたスリーブ7と、このスリーブ7とリードチャック6の係止段部6aとの間に弾着されたチャック締付用の第1の弾性体12とを有し、
上記リードチャック6の頭部に保持されたボール11は、スリーブ7先端部の内面テーパ壁7gにステンレス等の金属筒7hが必要に応じて嵌合装着され、この金属筒7hによって、確実かつ耐久性ある安定した上記ころがり接触が行え、しかもリードチャック6の芯保持が確実に行え、(2頁右下欄8行~3頁左下欄17行)
上述の芯送出機構5は、中枠15にその略全体を収納され、この中枠15は、外筒1内に軸方向に摺動可能に配置され、第3の弾性体17によって前方へ付勢され、この中枠15の先端には、先筒9が、設けられ、
上記先筒9の後端9aとスリーブ7先端との間には距離(c)が設けられ、この距離(c)は、後端ノックによる芯送出動作の際の芯送り量に相当することとなり、ここで、先筒9は、中枠15の先端に嵌合され、前進してきたリードチャック6の先端に当接し、リードチャック6を停止させる機能およびスライダー16の後端を押圧させる機能を果たし、(4頁右上欄4~20行)
前記先具2の内部には、軸方向に移動可能なスライダー16が配置され、このスライダー16は、スライドパイプ18を中心部に装着したスライダ一本体19と、このスライダ一本体19の内部に装着され、芯14に所定の摩擦圧を付与する摩擦付与部材20とを有し、スライダー16は、後端が先具2に固定された受部21に係止された第2の弾性体13により前方へ付勢され、この摩擦付与部材20の摩擦付与部20aは、前進する芯14はスムーズに移動できるが、後退する芯14は摩擦力によって容易には、後退できないように形成され、
スライダー16を所定の間、停止させる手段として、受部21の内壁環状突部21aと係合する突起19bが設けられ、(4頁右下欄12行~5頁左上欄17行)
芯パイプ3の後端をノック動作することにより行う芯送り動作は、ノック動作によって、先端受部4に係合されたスリーブ7が、芯パイプ3等と一緒に前進して、先筒9の先端に当接して停止するが、芯パイプ3と一体の先端受部4は、さらに前方へ押圧され、スリーブ7の内壁をすべりながら前進して、リードチャック6の後端を前方へ押圧して通常の芯送りを行い、(5頁右上欄9~19行)
スライダー16の先端を紙面へ押し付ける先端ノックによる芯送り出しは、先端ノックによって、リードチャック6は芯14を喰着した状態で後退すると共に、スライダー16も後退し、リードチャック6の後退に伴って、中枠15および先筒9が第3の弾性体17の付勢力に反して後方へ移動され、
他方、スライダー16の後退する過程で、まず、スライダ本体19の突起19bが受部21の内壁環状部21aを乗り越えた後、スライダ本体19の後端が受部21後端から突出することとなり、
ここで、スライダ本体19の後端と先筒9との間は、距離(f)が保持され、
次に、スライダー16を押し付けていた紙面から離脱させると、スリーブ7、リードチャック6等の芯送出機構5および中枠15は、主に、第3の弾性体17の付勢力によって、先筒9が先具2の段部2aに当接するまで前進し、
他方、スライダー16は、第2の弾性体13の付勢力によって前進するが、内壁環状突部21aと係合するスライダ本体19の突起19bによって一時停止しており、このスライダー16の一時停止中でも、芯送出機構5は、芯14を喰着した状態で前進して来るので、先筒9がスライダ本体19の後端に当接し、上記一時停止係合を解除するまで芯14はスライダー16に対して前進することとなり、この前進量は距離(f)に等しく、
従って、この先端ノックによって、芯14はスライドパイプ18先端より(f)の長さ突出している、(5頁右下欄18行~6頁左下欄11行)
シャープペンシル。」
2 甲1発明に基づく進歩性の欠如について
(1) 本件発明1
ア 対比分析
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア) 構成Xについて
甲1発明の「シヤープペンシル」は、本件発明1の「シャープペンシル」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明は、「シャープペンシル」の発明である点において一致する。
(イ) 構成Aについて
a 甲1発明の「外筒1」、「先具2」は、それぞれ本件発明1の「軸筒本体」、「前記軸筒の前方に配設された先部材」に相当するから、甲1発明の「外筒1」及び「先具2」は、本件発明1の「軸筒本体と前記軸筒の前方に配設された先部材とを有する軸筒」に相当する。
b 甲1発明の「先具2の内部に」「配置され[る]」「軸方向に移動可能なスライダー15」は、前記aを踏まえると、本件発明1の「前記先部材に内包され該先部材に対して前後動可能に装着されたスライダー」に相当する。
c(a) 甲1発明の「リードチヤツク6」は、「外筒1内に軸方向に摺動可能に配置され[た]」「中枠14」に「収納され[た]」「芯送出機構5」が有する「スリーブ7」の「内部に装着され[た]」ものであるから、前記aを踏まえると、本件発明1の「前記軸筒内に配置され[た]」「チャック」に相当する。
(b) 甲1発明の「リードチヤツク6」は、「(その)頭部内壁における芯挿通孔60の先端側には、小径段差状の芯保持孔部69が設けられ」、「上記リードチヤツク6の頭部に保持されたボール10は、スリーブ7の先端部に設けられた内面テーパ壁71との間に嵌合保持され、この内面テーパ壁71は、上記スリーブ7の先端内部に必要に応じて嵌着されたステンレス等の金属筒70の内周面に形成され、この金属筒70によつて、確実かつ耐久性ある安定した転がり接触が行え、しかも、リードチヤツク6の芯保持が確実に行え[る]」ものであるから、本件発明1の「筆記用の芯を把持するチャック」に相当する。
(c) 前記(a)及び(b)を踏まえると、甲1発明の「リードチャック6」は、本件発明1の「前記軸筒内に配置され筆記用の芯を把持するチャック」に相当する。
d 甲1発明の「スリーブ7」は、「円筒形状であり」、「リードチヤツク6が内部に装着され[た]」ものであるから、前記cを踏まえると、本件発明1の「前記チャックの外方に配設された筒状体」に相当する。
e(a) 甲1発明の「内面テーパ壁71」は、「スリーブ7の先端部に設けられ」、「上記スリーブ7の先端内部に必要に応じて嵌着されたステンレス等の金属筒70の内周面に形成され、この金属筒70によつて、確実かつ耐久性ある安定した転がり接触が行え、しかも、リードチヤツク6の芯保持が確実に行え[る]」ものである。
(b) そして、甲1発明においては、「リードチヤツク6の頭部は、ボール10がスリーブ7の内面テーパ壁71を転がり接触し、前進するに従つて、リードチヤツク6の喰着力は弱まつてい[く]」のであるから、前記(a)を踏まえると、「リードチャック6」が、「チヤツク締付用の第1の弾性体11」によって後進した場合、ボール10の内面テーパ壁71の転がり接触により、リードチヤツク6の喰着力が強まり、芯保持を行うものであるといえる。
(c) 前記d、前記(a)及び(b)を踏まえると、甲1発明の「内面テーパ壁71」は、本件発明1の「前記筒状体の内方に前記チャックを締め付ける締部」に相当する。
f したがって、前記a~eの検討を踏まえると、本件発明1と甲1発明は、「軸筒本体と前記軸筒の前方に配設された先部材とを有する軸筒と、前記先部材に内包され該先部材に対して前後動可能に装着されたスライダーと、前記軸筒内に配置され筆記用の芯を把持するチャックと、前記チャックの外方に配設された筒状体と、前記筒状体の内方に前記チャックを締め付ける締部と、を備え[る]」点において一致する。
(ウ) 構成Bについて
a(a) 甲1発明の「スライドパイプ17」は、「スライダー15」が備える「スライダー本体18」の「中心に装着した」ものであり、「スライダー15の後端ノツクで」、「芯送り動作が」「行え」、「スライドパイプ17から筆記に適した距離cだけ芯13が突出した状態を確保できる」ものであるところ、突出した芯13が、「スライダー15」の前部にあることを踏まえると、「スライドパイプ17」も「スライダー15」の前部にあり、芯13を筆記に適した距離cだけ突出するようにガイドするものであると認められる。
(b) したがって、甲1発明の「スライドパイプ17」は、本件発明1の「前記スライダー」が「前部に」「有[する]」「前記芯をガイドする内孔を備えたガイド部」に相当する。
b 甲1発明の「摩擦付与部材19」は、「スライダー15」が備えるものであり、「芯13に所定の摩擦力を付与する」ものであるところ、「スライダー15」が「ロック解除され[ると]」、「スライドパイプ17が先具2から突出し、この過程で、摩擦付与部材19の後退摩擦力で支持された芯13はリードチヤツク6から前方に引き出され、スライダー15と共に前進[する]」ものであるから、本件発明1の「前記芯を一定の力で保持する芯保持部」に相当する。
c したがって、前記a及びbの検討を踏まえると、本件発明1と甲1発明は、「前記スライダーは前部に前記芯をガイドする内孔を備えたガイド部と、前記芯を一定の力で保持する芯保持部を有[する]」点において一致する。
(エ) 構成Cについて
a(a) 甲1発明においては、「筆記具の不使用時にスライドパイプが先具内に完全収納された位置でロツクされることにより、筆記具携帯時等に上記スライドパイプが突出して衣服等を傷つけるという不測の事態を招く虞れがない」ところ、携帯時である筆記具の不使用時には、芯13がスライドパイプ17とともに先具内に完全収納されていると認められる。
(b) 前記(a)を踏まえると、甲1発明の「スライドパイプ17」は、本件発明1の「携帯時においては前記芯とともに前記軸筒内に退没可能に構成された」「ガイド部」に相当する。
b(a) そして、甲1発明においては、「スライダー15の後端ノツクで、ロツク解除操作と芯送り動作が同時に行え、スライドパイプ17から筆記に適した距離cだけ芯13が突出した状態を確保でき[る]」ものであるところ、「スライドパイプが先具内に完全収納された位置でロツクされる」状態が解除されることにより、「スライドパイプ17が先具2から突出[する]」ものである。
(b) 前記(a)を踏まえると、甲1発明の「スライドパイプ17」は、本件発明1の「筆記時において前記先部材の前端開口部から前方へ突出[する]」「ガイド部」に相当する。
c したがって、前記a及びbの検討を踏まえると、本件発明1と甲1発明は、「前記ガイド部は、筆記時において前記先部材の前端開口部から前方へ突出し、携帯時においては前記芯とともに前記軸筒内に退没可能に構成された」点において一致する。
(オ) 構成Dについて
a(a) 甲1発明においては、「先端受部4の先端側に一体突設された外向凸部4cを、上記スリーブ7の後端側に形成した軸方向溝7aに移動可能に嵌込み係合させ[ている]」から、「スリーブ7」の後端側すなわち後方に、当該スリーブ7に対して軸方向に沿って前後に移動可能である「先端受部4」が配置されているものであるといえる。
(b) 本件発明1の「中間把持部材」と甲1発明の「先端受部4」は、「部材」であるという点において共通する。
(c) 前記(a)及び(b)を踏まえると、本件発明1と甲1発明は、「前記筒状体の後方に、該筒状体に対して軸方向に沿って前後に摺動可能な部材が配設され」ている点において共通する。
b 甲1発明の「先端受部4」の「先端孔4a」は、「リードチヤツク6の後端を押圧係合する」ものであるから、「リードチヤツク6」側への移動が制限されており、本件発明1の「前記チャックと当接することで該チャックに対して前方への移動が制限される第1当接部」に相当する。
c 甲1発明の「先端受部4の先端側に一体突設された外向凸部4c」は、「スリーブ7の後端側に形成した軸方向溝7aに移動可能に嵌込み係合させ[る]」ものであり、「上記軸方向溝7aに突起7bを設け、これによつて、スリーブ7が先筒8に当接するまでは上記外向凸部4cが上記突起7bに係止されて上記先端受部4と上記スリーブ7の両者が一体に移動[する]」ものであるから、スリーブ7の前方への移動が突起7bによって制限されているといえ、本件発明1の「前記筒状体と当接することで該筒状体に対して前方への移動が制限される第2当接部」に相当する。
d したがって、前記a~cの検討を踏まえると、本件発明1と甲1発明は、「前記筒状体の後方に、該筒状体に対して軸方向に沿って前後に摺動可能な部材が配設され、前記部材は、前記チャックと当接することで該チャックに対して前方への移動が制限される第1当接部と、前記筒状体と当接することで該筒状体に対して前方への移動が制限される第2当接部と、を有[する]」点において共通する。
e 一方、本件発明1と甲1発明は、構成Dに関して、次に示す点において相違する。
本件発明1においては、
「中間把持部材」が、「筒状体を把持する把持部」を有しているのに対して、
甲1発明においては、
先端受部4が、スリーブ7を把持しているのか不明な点。
(カ) 構成Eについて
本件発明1と甲1発明は、構成Eに関して、次に示す点において相違する。
本件発明1においては、
「前記筒状体の前部に、前記スライダーの後部に当接するスライダー押圧部を有し[ている]」のに対して、
甲1発明においては、
スリーブ7の先端は、中枠14の先端に嵌合係着された先筒8に当接しており、スライダー15には当接していない点。
(キ) 構成Fについて
a 甲1発明においては、「前方軸方向に摺動可能[な]」「芯パイプ3の後端ノツク操作により」「芯送り動作」を行っているところ、「この芯パイプ3の先端には、先端受部4が嵌合され[ている]」から、甲1発明が、本件発明1の「操作体」に相当する構成を有していることは明らかである。
b したがって、本件発明1と甲1発明は、「前記部材の後方に、該部材を前後方向に操作可能な操作体を有[する]」点において共通する。
c 一方、本件発明1と甲1発明は、構成Fに関して、次に示す点において相違する。
「操作体」が「前後方向」に操作する「部材」が、
本件発明1においては、
「中間把持部材」であるのに対して、
甲1発明においては、
先端受部4であり、当該先端受部4がスリーブ7を把持しているのか不明な点。
(ク) 構成Gについて
a 甲1発明においては、「スライダー15の後端側外周面には外向突起18bが設けられ」、「この外向突起18bが」「先筒8内」の「内壁環状突部8aの後端に係合することにより、スライダー15が後退位置でロツクされ[る]」ものである。
b 甲1発明の「先筒8内」の「内壁環状突部8a」は、その後端に「外向突起18b」が「係合する」ものであるところ、「先具2の内部には、軸方向に移動可能なスライダー15が配置され[る]」ことを踏まえると、前記「内壁環状突部8a」は、「先具2」の内周部に配置されているものと認められるから、本件発明1の「先部材の内周部に形成された被係止部」に相当する。
c そして、甲1発明の「スライダー15の後端側外周面に」「設けられ[る]」「外向突起18」は、本件発明1の「スライダーの外周部に」有する「被係止部と係止する係止部」に相当する。
d したがって、前記a~cを踏まえると、本件発明1と甲1発明は、「前記スライダーの外周部に、前記スライダーが後退した際に前記先部材の内周部に形成された被係止部と係止する係止部を有[する]」点において一致する。
(ケ) 構成Hについて
a 甲1発明において、「スライダー15は、後端が先具2に固定されている受部20に係止された上記第2の弾性体12により前方に付勢され[ている]」ことは、本件発明1において、「前記スライダーを前方へ付勢する弾性部材が該スライダーと前記先部材の間に張架され[ている]」ことに相当する。
b したがって、本件発明1と甲1発明は、「前記スライダーを前方へ付勢する弾性部材が該スライダーと前記先部材の間に張架され[ている]」点において一致する。
(コ) 構成Iについて
本件発明1と甲1発明は、構成Iに関して、次に示す点において相違する。
本件発明1においては、
「前記係止部と前記被係止部との係止状態を解除するために最小限必要とされる、前記スライダーを軸方向に沿って前方へ押圧する押圧力をXとし、前記中間把持部材が前記筒状体を把持することにより前記中間把持部材と前記筒状体との間に生じる摩擦力をYとしたとき、Y<Xの関係式を満たし[ている]」のに対して、
甲1発明においては、
先端受部4がスリーブ7を把持しているのか不明であり、先端受部4とスリーブ7の間に把持することによる摩擦力が生じているのか不明な点。
(サ) 構成Jについて
a 甲1発明においては、「スライダー15が、内壁環状突部8aと外向突起18bとの係合により、先筒8にロツクされている場合には、上述の後端ノツクにより、スリーブ7の先端が先筒8の後端と当接するまでの間(距離cの間)、芯送りが行われ、しかる後」、「ロツク解除され、その後、第2の弾性体12により前方へ付勢移動され、スライドパイプ17が先具2から突出し、この過程で、摩擦付与部材19の後退摩擦力で支持された芯13はリードチヤツク6から前方に引き出され、スライダー15と共に前進し」、「スライダー15の後端ノツクで、ロツク解除操作と芯送り動作が同時に行え、スライドパイプ17から筆記に適した距離cだけ芯13が突出した状態を確保でき[る]」ものである。
b 前記aを踏まえると、甲1発明における、芯13の前進量は、スライダー15の前進量に距離cを加えたものであると認められる。
c したがって、本件発明1と甲1発明は、「前記ガイド部が前記軸筒内に退没し前記係止部と前記被係止部とが係止した状態から、前記操作体を操作することで前記スライダーを前進させ、前記ガイド部を前記先部材の前端開口部から前方へ突出させた際の前記スライダーの前進量をS1、前記芯の前進量をS2としたとき、S1<S2となる」点において一致する。
イ 一致点及び相違点
上記アを対比分析における検討結果をまとめると、本件発明1と甲1発明は、次の一致点において一致し、後記の相違点において相違する。
(ア) 一致点
(構成A)軸筒本体と前記軸筒の前方に配設された先部材とを有する軸筒と、前記先部材に内包され該先部材に対して前後動可能に装着されたスライダーと、前記軸筒内に配置され筆記用の芯を把持するチャックと、前記チャックの外方に配設された筒状体と、前記筒状体の内方に前記チャックを締め付ける締部と、を備え、
(構成B)前記スライダーは前部に前記芯をガイドする内孔を備えたガイド部と、前記芯を一定の力で保持する芯保持部を有し、
(構成C)前記ガイド部は、筆記時において前記先部材の前端開口部から前方へ突出し、携帯時においては前記芯とともに前記軸筒内に退没可能に構成されたシャープペンシルであって、
(構成D′)前記筒状体の後方に、該筒状体に対して軸方向に沿って前後に摺動可能な部材が配設され、前記部材は、前記チャックと当接することで該チャックに対して前方への移動が制限される第1当接部と、前記筒状体と当接することで該筒状体に対して前方への移動が制限される第2当接部と、を有し、
(構成F′)前記部材の後方に、該部材を前後方向に操作可能な操作体を有し、
(構成G)前記スライダーの外周部に、前記スライダーが後退した際に前記先部材の内周部に形成された被係止部と係止する係止部を有し、
(構成H)前記スライダーを前方へ付勢する弾性部材が該スライダーと前記先部材の間に張架され、
(構成J)前記ガイド部が前記軸筒内に退没し前記係止部と前記被係止部とが係止した状態から、前記操作体を操作することで前記スライダーを前進させ、前記ガイド部を前記先部材の前端開口部から前方へ突出させた際の前記スライダーの前進量をS1、前記芯の前進量をS2としたとき、S1<S2となる、
(構成X)シャープペンシル、である点。
(イ) 相違点
a 相違点1-1(構成D、F、I)
本件発明1においては、
「中間把持部材」が、「筒状体を把持する把持部」を有しており、
「前記係止部と前記被係止部との係止状態を解除するために最小限必要とされる、前記スライダーを軸方向に沿って前方へ押圧する押圧力をXとし、前記中間把持部材が前記筒状体を把持することにより前記中間把持部材と前記筒状体との間に生じる摩擦力をYとしたとき、Y<Xの関係式を満たし[ている]」のに対して、
甲1発明においては、
先端受部4がスリーブ7を把持しているのか不明であり、先端受部4とスリーブ7の間に把持することによる摩擦力が生じているのか不明な点。
b 相違点1-2(構成E)
本件発明1においては、
「前記筒状体の前部に、前記スライダーの後部に当接するスライダー押圧部を有し[ている]」のに対して、
甲1発明においては、
スリーブ7の先端は、外筒1内の中枠14の先端に嵌合係着された先筒8に当接しており、スライダー15には当接していない点。
ウ 相違点の判断
(ア) 前記相違点1-1について検討する。
(イ)a 請求項1には、「前記中間把持部材は、当該筒状体を把持する把持部と、・・・、を有し」という記載がある。
b ここで、「把持」という語句について、一般的な意味として、広辞苑第五版(岩波書店)には、「手にしっかり持つこと、手に握ること」であると記載されている。
c また、「中間把持部材」により「把持」することについて、本件特許明細書には次の記載がある。
「【0029】
中間把持部材5は、把持部材本体51と、把持部材本体51の後部に圧入装着された後筒52と、で構成され、軸筒2の内部に軸方向に沿って摺動可能に収納される。また、中間把持部材5の前部は周方向に沿って均等に4分割され(図3参照)、弾性力で筒状体42を一定の力で把持する把持部42aを有し、後部内周部には、複数の予備芯が収容される芯収容部5bを有する。」
「【図3】
[図:0001431150000012.jpg]
」
d そして、「中間把持部材」に関する記載ではないが、「把持」に関しては、本件特許明細書には次の記載もある。
「【0026】
チャック41は、チャック本体411とチャック本体411の後部に圧入装着された後部筒体412とを有し、筒状体42に対して前後動可能に構成される。そして、チャック41の頭部41aは軸方向に沿って二分割されており、分割されたそれぞれの頭部41aは前方へ向かって互いが次第に離間するように形成され、頭部41aがそれぞれ径方向内方に撓むことで芯7が把持可能に構成される。また、頭部41aは鋼製ボール43が挿入されるチャック凹部41bを備え、後部には段状の後段41cを有する。」
e 前記b~dを踏まえると、本件発明1における「把持」とは、「径方向外側にある部材が、内側に力を加えることにより、径方向内側にある部材を保持する」ことを示すものと解釈するのが相当である。
(ウ) そうすると、甲1発明の「先端受部4」は、本件発明1の「筒状体」に相当する「スリーブ7」の径方向外側には配置されておらず、当然に「スリーブ7」に対して内側に力を加えて保持するものではないから、甲1発明は、本件発明1の「中間把持部材」に相当する構成を備えていない。
(エ) そして、甲1発明において、「先端受部4」を「スリーブ7」の径方向外側に配置して、内側に力を加えて保持する構成とする動機付けもあるものではない。
(オ) したがって、前記相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても甲1発明に基づいて容易に発明できたものではないので、本件発明1に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものではない。
(カ) また、特許異議申立人が提示した甲2及び甲3を考慮しても、本件発明1の進歩性を否定する事情は見当たらない。
(2) 本件発明2~6
本件発明2~6も、前記相違点1-1に係る構成と同様の構成を備えるものであるから、本件発明1と同様の理由により、当業者であっても、甲1発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
(3) 小括
以上のとおり、本件発明1~6は、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
3 甲2発明に基づく新規性及び進歩性の欠如について
(1) 本件発明1
ア 対比分析
本件発明1と甲2発明を対比する。
(ア) 構成Xについて
甲2発明の「シャープペンシル」は、本件発明1の「シャープペンシル」に相当する。
したがって、本件発明1と甲2発明は、「シャープペンシル」の発明である点において一致する。
(イ) 構成Aについて
a 甲2発明の「外筒1」、「先具2」は、それぞれ本件発明1の「軸筒本体」、「前記軸筒の前方に配設された先部材」に相当するから、甲2発明の「外筒1」及び「先具2」は、本件発明1の「軸筒本体と前記軸筒の前方に配設された先部材とを有する軸筒」に相当する。
b 甲2発明の「先具2の内部に」「配置され[る]」「軸方向に移動可能なスライダー16」は、前記aを踏まえると、本件発明1の「前記先部材に内包され該先部材に対して前後動可能に装着されたスライダー」に相当する。
c(a) 甲2発明の「リードチャック6」は、「外筒1内に軸方向に摺動可能に配置され[た]」「中枠15」に「収納され[た]」「芯送出機構5」が有する「スリーブ7」の「内部に装着し[た]」ものであるから、前記aを踏まえると、本件発明1の「前記軸筒内に配置され[た]」「チャック」に相当する。
(b) 甲2発明の「リードチャック6」は、「上記リードチャック6の頭部に保持されたボール11は、スリーブ7先端部の内面テーパ壁7gにステンレス等の金属筒7hが必要に応じて嵌合装着され、この金属筒7hによって、確実かつ耐久性ある安定した上記ころがり接触が行え、しかもリードチャック6の芯保持が確実に行え[る]」ものであるから、本件発明1の「筆記用の芯を把持するチャック」に相当する。
(c) 前記(a)及び(b)を踏まえると、甲2発明の「リードチャック6」は、本件発明1の「前記軸筒内に配置され筆記用の芯を把持するチャック」に相当する。
d 甲2発明の「スリーブ7」は、「円筒形状であり」、「リードチャック6を内部に装着し[た]」ものであるから、前記cを踏まえると、本件発明1の「前記チャックの外方に配設された筒状体」に相当する。
e(a) 甲2発明においては、「リードチャック6の頭部は、ポール11がスリーブ7のテーパ内壁7gをころがり接触し、前進するに従って、リードチャック6の喰着力は弱まってい[く]」のであるから、「リードチャック6」が、「チャック締付用の第1の弾性体12」によって後進した場合、ボール11の内面テーパ壁7gのころがり接触により、リードチャック6の喰着力が強まり、芯保持を行うものであるといえる。
(b) 前記d、前記(a)を踏まえると、甲2発明の「内面テーパ壁7g」は、本件発明1の「前記筒状体の内方に前記チャックを締め付ける締部」に相当する。
f したがって、前記a~eの検討を踏まえると、本件発明1と甲2発明は、「軸筒本体と前記軸筒の前方に配設された先部材とを有する軸筒と、前記先部材に内包され該先部材に対して前後動可能に装着されたスライダーと、前記軸筒内に配置され筆記用の芯を把持するチャックと、前記チャックの外方に配設された筒状体と、前記筒状体の内方に前記チャックを締め付ける締部と、を備え[る]」点において一致する。
(ウ) 構成Bについて
a(a) 甲2発明の「スライドパイプ18」は、「スライダー16」が備える「スライダー本体19」の「中心に装着した」ものであり、「スライダー16の後端ノックによって」、「芯送り動作が」「行え」、「スライドパイプ18から筆記に適した距離(c)だけ芯14が突出した状態を確保でき[る]」ものであるところ、突出した芯14が、「スライダー16」の前部にあることを踏まえると、「スライドパイプ18」も「スライダー16」の前部にあり、芯14を筆記に適した距離(c)だけ突出するようにガイドするものであると認められる。
(b) したがって、甲2発明の「スライドパイプ18」は、本件発明1の「前記スライダー」が「前部に」「有[する]」「前記芯をガイドする内孔を備えたガイド部」に相当する。
b 甲2発明の「摩擦付与部材20」は、「スライダー16」が有するものであり、「芯14に所定の摩擦力を付与する」ものであるところ、「スライダー16」が「ロック解除され[ると]」、「スライドパイプ18が先具2から突出し、この過程で、摩擦付与部材20の後退摩擦力で支持された芯14はリードチャック6から前方に引き出され、スライダー16と共に前進[する]」ものであるから、本件発明1の「前記芯を一定の力で保持する芯保持部」に相当する。
c したがって、前記a及びbの検討を踏まえると、本件発明1と甲2発明は、「前記スライダーは前部に前記芯をガイドする内孔を備えたガイド部と、前記芯を一定の力で保持する芯保持部を有[する]」点において一致する。
(エ) 構成Cについて
a(a) 甲2発明においては、「筆記具の不使用時は、スライドパイプ18を紙面等へ押圧し、スライダー16を先具2にロック格納し、この過程で、スライダー16は、突起19bが受部21の環状突部21aを乗り越え、かつ係止され、これにより、スライダー16は係止位置で不動状態にロックされ[る]」ものであるところ、「後退位置で」「スライダー16を」「上記ロック状態に停止させる」ものであるから、筆記具の不使用時である携帯時において、芯14はスライドパイプ18とともに係止位置まで後退し、先具2にロック格納されていると認められる。
(b) 前記(a)を踏まえると、甲2発明の「スライドパイプ18」は、「先具2には完全に格納されない」としても、本件発明1の「携帯時においては前記芯とともに前記軸筒内に退没可能に構成された」「ガイド部」に相当する。
b そして、甲2発明においては、「筆記具の不使用時」に「先具2にロック格納し[た]」「スライダー16」が「ロック解除され[ると]」、「スライドパイプ18が先具2から突出[する]」ものであるから、前記(ウ)aを踏まえると、甲2発明の「スライドパイプ18」は、本件発明1の「筆記時において前記先部材の前端開口部から前方へ突出[する]」「ガイド部」に相当する。
c したがって、前記a及びbの検討を踏まえると、本件発明1と甲2発明は、「前記ガイド部は、筆記時において前記先部材の前端開口部から前方へ突出し、携帯時においては前記芯とともに前記軸筒内に退没可能に構成された」点において一致する。
(オ) 構成Dについて
a(a) 甲2発明においては、「スリーブ7」の「後端側」に、「先端受部4の凸部4cと移動可能に係合する溝7bが形成され[ている]」から、「スリーブ7」の後方に、当該スリーブ7に対して軸方向に沿って前後に移動可能である「先端受部4」が配置されているものであるといえる。
(b) 本件発明1の「中間把持部材」と甲2発明の「先端受部4」は、「部材」であるという点において共通する。
(c) 前記(a)及び(b)を踏まえると、本件発明1と甲2発明は、「前記筒状体の後方に、該筒状体に対して軸方向に沿って前後に摺動可能な部材が配設され」ている点において共通する。
b 甲2発明の「先端受部4」の「先端孔4a」は、「リードチャック6の後端を押圧係合する」ものであるから、「リードチャック6」側への移動が制限されており、本件発明1の「前記チャックと当接することで該チャックに対して前方への移動が制限される第1当接部」に相当する。
c 甲2発明の「先端受部4の凸部4c」は、「前記スリーブ7の後端側に」「形成され[た]」「前記溝7b」と「移動可能に係合する」ものであり、「この溝7bには、突起7cが設けられ、スリーブ7が先筒9に当接するまでは凸部4cが溝7bの突起7cに係止され、一体的に両者が移動[する]」ものであるから、スリーブ7の前方への移動が突起7cによって制限されているといえ、本件発明1の「前記筒状体と当接することで該筒状体に対して前方への移動が制限される第2当接部」に相当する。
d したがって、前記a~cの検討を踏まえると、本件発明1と甲2発明は、「前記筒状体の後方に、該筒状体に対して軸方向に沿って前後に摺動可能な部材が配設され、前記部材は、前記チャックと当接することで該チャックに対して前方への移動が制限される第1当接部と、前記筒状体と当接することで該筒状体に対して前方への移動が制限される第2当接部と、を有[する]」点において共通する。
e 一方、本件発明1と甲2発明は、構成Dに関して、次に示す点において相違する。
本件発明1においては、
「中間把持部材」が、「筒状体を把持する把持部」を有しているのに対して、
甲2発明においては、
先端受部4が、スリーブ7を把持しているのか不明な点。
(カ) 構成Eについて
本件発明1と甲2発明は、構成Eに関して、次に示す点において相違する。
本件発明1においては、
「前記筒状体の前部に、前記スライダーの後部に当接するスライダー押圧部を有し[ている]」のに対して、
甲2発明においては、
スリーブ7の先端は、中枠15の先端に嵌合係着された先筒9に当接しており、スライダー16には当接していない点。
(キ) 構成Fについて
a 甲2発明においては、「前方軸方向に摺動可能[な]」「芯パイプ3の後端のノツク操作することにより」「芯送り動作」を行っているところ、「この芯パイプ3の先端には、先端受部4が嵌合され[ている]」から、甲2発明が、本件発明1の「操作体」に相当する構成を有していることは明らかである。
b したがって、本件発明1と甲2発明は、「前記部材の後方に、該部材を前後方向に操作可能な操作体を有[する]」点において共通する。
c 一方、本件発明1と甲2発明は、構成Fに関して、次に示す点において相違する。
「操作体」が「前後方向」に操作する「部材」が、
本件発明1においては、
「中間把持部材」であるのに対して、
甲2発明においては、
先端受部4であり、当該先端受部4がスリーブ7を把持しているのか不明な点。
(ク) 構成Gについて
a 甲2発明においては、「スライダー16を後退位置で上記ロック状態に停止させる係止手段として」、「先具2に固定されている」「受部21の内壁環状突部21aと係合する突起19bが設けられ」ているところ、「前記先具2の内部には、軸方向に移動可能なスライダー16が配置され[ている]」から、甲2発明の「受部21の内壁環状突部21a」及び「受部21の内壁環状突部21aと係合する突起19b」は、それぞれ本件発明1の「先部材の内周部に形成された被係止部」及び「被係止部と係止する係止部」に相当する。
b したがって、本件発明1と甲2発明は、「前記スライダーの外周部に、前記スライダーが後退した際に前記先部材の内周部に形成された被係止部と係止する係止部を有[する]」点において一致する。
(ケ) 構成Hについて
a 甲2発明において、「スライダー16は、後端が先具2に固定されている受部21に係止された上記第2の弾性体13により前方へ付勢され[ている]」ことは、本件発明1において、「前記スライダーを前方へ付勢する弾性部材が該スライダーと前記先部材の間に張架され[ている]」ことに相当する。
b したがって、本件発明1と甲2発明は、「前記スライダーを前方へ付勢する弾性部材が該スライダーと前記先部材の間に張架され[ている]」点において一致する。
(コ) 構成Iについて
本件発明1と甲2発明は、構成Iに関して、次に示す点において相違する。
本件発明1においては、
「前記係止部と前記被係止部との係止状態を解除するために最小限必要とされる、前記スライダーを軸方向に沿って前方へ押圧する押圧力をXとし、前記中間把持部材が前記筒状体を把持することにより前記中間把持部材と前記筒状体との間に生じる摩擦力をYとしたとき、Y<Xの関係式を満たし[ている]」のに対して、
甲2発明においては、
先端受部4がスリーブ7を把持しているのか不明であり、先端受部4とスリーブ7の間に把持することによる摩擦力が生じているのか不明な点。
(サ) 構成Jについて
a 甲2発明においては、「スライダー16が受部21の環状突部21aによって、ロックされている場合には、上述の後端ノックにより、スリーブ7の先端が先筒9の後端と当接するまでの間(距離(c)の間)、芯送りが行われ、しかる後」、「ロック解除され、その後、第2の弾性体13により前方へ付勢移動され、スライドパイプ18が先具2から突出し、この過程で、摩擦付与部材20の後退摩擦力で支持された芯14はリードチャック6から前方に引き出され、スライダー16と共に前進し」、「スライダー16の後端ノックによって、ロック解除操作と芯送り動作が同時に行え、スライドパイプ18から筆記に適した距離(c)だけ芯14が突出した状態を確保でき[る]」ものである。
b 前記aを踏まえると、甲2発明における、芯14の前進量は、スライダー16の前進量に距離(c)を加えたものであると認められる。
c したがって、本件発明1と甲2発明は、「前記ガイド部が前記軸筒内に退没し前記係止部と前記被係止部とが係止した状態から、前記操作体を操作することで前記スライダーを前進させ、前記ガイド部を前記先部材の前端開口部から前方へ突出させた際の前記スライダーの前進量をS1、前記芯の前進量をS2としたとき、S1<S2となる」点において一致する。
イ 一致点及び相違点
上記アを対比分析における検討結果をまとめると、本件発明1と甲2発明は、次の一致点において一致し、後記の相違点において相違する。
(ア) 一致点
(構成A)軸筒本体と前記軸筒の前方に配設された先部材とを有する軸筒と、前記先部材に内包され該先部材に対して前後動可能に装着されたスライダーと、前記軸筒内に配置され筆記用の芯を把持するチャックと、前記チャックの外方に配設された筒状体と、前記筒状体の内方に前記チャックを締め付ける締部と、を備え、
(構成B)前記スライダーは前部に前記芯をガイドする内孔を備えたガイド部と、前記芯を一定の力で保持する芯保持部を有し、
(構成C)前記ガイド部は、筆記時において前記先部材の前端開口部から前方へ突出し、携帯時においては前記芯とともに前記軸筒内に退没可能に構成されたシャープペンシルであって、
(構成D′)前記筒状体の後方に、該筒状体に対して軸方向に沿って前後に摺動可能な部材が配設され、前記部材は、前記チャックと当接することで該チャックに対して前方への移動が制限される第1当接部と、前記筒状体と当接することで該筒状体に対して前方への移動が制限される第2当接部と、を有し、
(構成F′)前記部材の後方に、該部材を前後方向に操作可能な操作体を有し、
(構成G)前記スライダーの外周部に、前記スライダーが後退した際に前記先部材の内周部に形成された被係止部と係止する係止部を有し、
(構成H)前記スライダーを前方へ付勢する弾性部材が該スライダーと前記先部材の間に張架され、
(構成J)前記ガイド部が前記軸筒内に退没し前記係止部と前記被係止部とが係止した状態から、前記操作体を操作することで前記スライダーを前進させ、前記ガイド部を前記先部材の前端開口部から前方へ突出させた際の前記スライダーの前進量をS1、前記芯の前進量をS2としたとき、S1<S2となる、
(構成X)シャープペンシル、である点。
(イ) 相違点
a 相違点2-1(構成D、F、I)
本件発明1においては、
「中間把持部材」が、「筒状体を把持する把持部」を有しており、
「前記係止部と前記被係止部との係止状態を解除するために最小限必要とされる、前記スライダーを軸方向に沿って前方へ押圧する押圧力をXとし、前記中間把持部材が前記筒状体を把持することにより前記中間把持部材と前記筒状体との間に生じる摩擦力をYとしたとき、Y<Xの関係式を満たし[ている]」のに対して、
甲2発明においては、
先端受部4がスリーブ7を把持しているのか不明であり、先端受部4とスリーブ7の間に把持することによる摩擦力が生じているのか不明な点。
b 相違点2-2(構成E)
本件発明1においては、
「前記筒状体の前部に、前記スライダーの後部に当接するスライダー押圧部を有し[ている]」のに対して、
甲2発明においては、
スリーブ7の先端は、中枠15の先端に嵌合係着された先筒9に当接しており、スライダー16には当接していない点。
ウ 相違点の判断
(ア) 前記相違点2-1について検討する。
(イ) 前記2(1)ウにおいて示した理由と同様の理由により、甲2発明は、本件発明1の「中間把持部材」に相当する構成を備えていないし、甲2発明において、「先端受部4」を「スリーブ7」の径方向外側に配置して、内側に力を加えて保持する構成とする動機付けもあるものではない。
(ウ) したがって、前記相違点2-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明ではなく、当業者であっても甲2発明に基づいて容易に発明できたものではないので、本件発明1に係る特許は、特許法29条1項、2項の規定に違反してされたものでない。
(エ) また、特許異議申立人が提示した甲1及び甲3を考慮しても、本件発明1の進歩性を否定する事情は見当たらない。
(2) 本件発明2~6
本件発明2~6も、前記相違点2-1に係る構成と同様の構成を備えるものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲2発明ではないし、当業者が甲2発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。
(3) 小括
以上のとおり、本件発明1~6は、甲2発明ではないし、当業者が甲2発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。
4 甲3発明に基づく新規性及び進歩性の欠如について
(1) 本件発明1
ア 対比分析
本件発明1と甲3発明を対比する。
(ア) 構成Xについて
甲3発明の「シャープペンシル」は、本件発明1の「シャープペンシル」に相当する。
したがって、本件発明1と甲3発明は、「シャープペンシル」の発明である点において一致する。
(イ) 構成Aについて
a 甲3発明の「外筒1」、「先具2」は、それぞれ本件発明1の「軸筒本体」、「前記軸筒の前方に配設された先部材」に相当するから、甲3発明の「外筒1」及び「先具2」は、本件発明1の「軸筒本体と前記軸筒の前方に配設された先部材とを有する軸筒」に相当する。
b 甲3発明の「先具2の内部に」「配置され[る]」「軸方向に移動可能なスライダー16」は、前記aを踏まえると、本件発明1の「前記先部材に内包され該先部材に対して前後動可能に装着されたスライダー」に相当する。
c(a) 甲3発明の「リードチャック6」は、「外筒1内に軸方向に摺動可能に配置され[た]」「中枠15」に「収納され[た]」「芯送出機構5」が有する「スリーブ7」の「内部に装着し[た]」ものであるから、前記aを踏まえると、本件発明1の「前記軸筒内に配置され[た]」「チャック」に相当する。
(b) 甲3発明の「リードチャック6」は、「上記リードチャック6の頭部に保持されたボール11は、スリーブ7先端部の内面テーパ壁7gにステンレス等の金属筒7hが必要に応じて嵌合装着され、この金属筒7hによって、確実かつ耐久性ある安定した上記ころがり接触が行え、しかもリードチャック6の芯保持が確実に行え[る]」ものであるから、本件発明1の「筆記用の芯を把持するチャック」に相当する。
(c) 前記(a)及び(b)を踏まえると、甲3発明の「リードチャック6」は、本件発明1の「前記軸筒内に配置され筆記用の芯を把持するチャック」に相当する。
d 甲3発明の「スリーブ7」は、「円筒形状であり」、「リードチャック6を内部に装着し[た]」ものであるから、前記cを踏まえると、本件発明1の「前記チャックの外方に配設された筒状体」に相当する。
e 前記c(b)、前記d、前記(a)を踏まえると、甲3発明の「内面テーパ壁7g」は、本件発明1の「前記筒状体の内方に前記チャックを締め付ける締部」に相当する。
f したがって、前記a~eの検討を踏まえると、本件発明1と甲3発明は、「軸筒本体と前記軸筒の前方に配設された先部材とを有する軸筒と、前記先部材に内包され該先部材に対して前後動可能に装着されたスライダーと、前記軸筒内に配置され筆記用の芯を把持するチャックと、前記チャックの外方に配設された筒状体と、前記筒状体の内方に前記チャックを締め付ける締部と、を備え[る]」点において一致する。
(ウ) 構成Bについて
a(a) 甲3発明の「スライドパイプ18」は、「スライダー16」が有する「スライダー本体19」の「中心部に装着した」ものであり、「先端ノックによって、芯14はスライドパイプ18先端より(f)の長さ突出している」ものであるところ、突出した芯14が、「スライダー16」の前部にあることを踏まえると、「スライドパイプ18」も「スライダー16」の前部にあり、芯14を先端より(f)の長さ突出しているようにガイドするものであると認められる。
(b) したがって、甲3発明の「スライドパイプ18」は、本件発明1の「前記スライダー」が「前部に」「有[する]」「前記芯をガイドする内孔を備えたガイド部」に相当する。
b 甲3発明の「摩擦付与部材20」は、「スライダー16」が有するものであり、「芯14に所定の摩擦力を付与する」ものであるところ、「前進する芯14はスムーズに移動できるが、後退する芯14は摩擦力によって容易には、後退できないように形成され[ている]」ことを踏まえると、本件発明1の「前記芯を一定の力で保持する芯保持部」に相当する。
c したがって、前記a及びbの検討を踏まえると、本件発明1と甲3発明は、「前記スライダーは前部に前記芯をガイドする内孔を備えたガイド部と、前記芯を一定の力で保持する芯保持部を有[する]」点において一致する。
(エ) 構成Cについて
a 甲3発明においては、「スライダー16を所定の間、停止させる手段として、受部21の内壁環状突部21aと係合する突起19bが設けられ」、「先端ノックによって、リードチャック6は芯14を喰着した状態で後退する」「過程で」、「スライダ本体19の突起19bが受部21の内壁環状部21aを乗り越え」、「内壁環状突部21aと係合するスライダ本体19の突起19bによって一時停止し」、「このスライダー16の一時停止中でも、芯送出機構5は、芯14を喰着した状態で前進して来るので、先筒9がスライダ本体19の後端に当接し、上記一時停止係合を解除するまで芯14はスライダー16に対して前進することとなり、この前進量は距離(f)に等しく、従って、この先端ノックによって、芯14はスライドパイプ18先端より(f)の長さ突出している」ものであり、このことにより、「スライダー16の先端を紙面へ押し付ける先端ノックによる芯送り出し」が行われている。
b 前記aを踏まえると、「スライダー16を所定の間、停止させる」のは、筆記時ではない芯送り出しを行うときであり、筆記時には「スライダー16」の「スライダー本体19」の「中心部に装着した」「スライドパイプ18」は「先具2」より前方に突出しているものと認められる。
c したがって、前記(ウ)を踏まえると、本件発明1と甲3発明は、「前記ガイド部は、筆記時において前記先部材の前端開口部から前方へ突出するように構成されたシャープペンシル」である点において共通する。
d 一方、本件発明1と甲3発明は、構成Cに関して、次に示す点において相違する。
本件発明1においては、
「前記ガイド部は」、「携帯時においては前記芯とともに前記軸筒内に退没可能に構成された」ものであるのに対して、
甲3発明においては、
スライダー16が後退するのは、先端ノックによる芯送り出しを行うときであり、携帯時ではない点。
(オ) 構成Dについて
a(a) 甲3発明においては、「スリーブ7」の「後端側」に、「先端受部4の凸部4cと移動可能に係合する溝7bが形成され[ている]」から、「スリーブ7」の後方に、当該スリーブ7に対して軸方向に沿って前後に移動可能である「先端受部4」が配置されているものであるといえる。
(b) 本件発明1の「中間把持部材」と甲3発明の「先端受部4」は、「部材」であるという点において共通する。
(c) 前記(a)及び(b)を踏まえると、本件発明1と甲3発明は、「前記筒状体の後方に、該筒状体に対して軸方向に沿って前後に摺動可能な部材が配設され」ている点において共通する。
b 甲3発明の「先端受部4」の「先端孔4a」は、「リードチャック6の後端を押圧係合する」ものであるから、「リードチャック6」側への移動が制限されており、本件発明1の「前記チャックと当接することで該チャックに対して前方への移動が制限される第1当接部」に相当する。
c 甲3発明の「先端受部4の凸部4c」は、「前記スリーブ7の後端側に」「形成され[た]」「前記溝7b」と「移動可能に係合する」ものであり、「この溝7bには、突起7cが設けられ、スリーブ7が先筒9に当接するまでは凸部4cが溝7bの突起7cに係止され、一体的に両者が移動[する]」ものであるから、スリーブ7の前方への移動が突起7cによって制限されているといえ、本件発明1の「前記筒状体と当接することで該筒状体に対して前方への移動が制限される第2当接部」に相当する。
d したがって、前記a~cの検討を踏まえると、本件発明1と甲3発明は、「前記筒状体の後方に、該筒状体に対して軸方向に沿って前後に摺動可能な部材が配設され、前記部材は、前記チャックと当接することで該チャックに対して前方への移動が制限される第1当接部と、前記筒状体と当接することで該筒状体に対して前方への移動が制限される第2当接部と、を有[する]」点において共通する。
e 一方、本件発明1と甲3発明は、構成Dに関して、次に示す点において相違する。
本件発明1においては、
「中間把持部材」が、「筒状体を把持する把持部」を有しているのに対して、
甲3発明においては、
先端受部4が、スリーブ7を把持しているのか不明な点。
(カ) 構成Eについて
本件発明1と甲3発明は、構成Eに関して、次に示す点において相違する。
本件発明1においては、
「前記筒状体の前部に、前記スライダーの後部に当接するスライダー押圧部を有し[ている]」のに対して、
甲3発明においては、
スライダー16の後端を押圧させる機能を果たすのは、スリーブ7ではなく、中枠15の先端に嵌合された先筒9である点。
(キ) 構成Fについて
a 甲3発明においては、「芯パイプ3の後端をノック動作することにより」「芯送り動作」を行っているところ、「この芯パイプ3の先端には、先端受部4が嵌合され[ている]」から、甲3発明が、本件発明1の「操作体」に相当する構成を有していることは明らかである。
b したがって、本件発明1と甲3発明は、「前記部材の後方に、該部材を前後方向に操作可能な操作体を有[する]」点において共通する。
c 一方、本件発明1と甲3発明は、構成Fに関して、次に示す点において相違する。
「操作体」が「前後方向」に操作する「部材」が、
本件発明1においては、
「中間把持部材」であるのに対して、
甲3発明においては、
先端受部4であり、当該先端受部4がスリーブ7を把持しているのか不明な点。
(ク) 構成Gについて
a 甲3発明においては、「スライダー16を所定の間、停止させる手段として、受部21の内壁環状突部21aと係合する突起19bが設けられ」、「先端ノックによって」、「スライダー16の後退する過程で」、「スライダ本体19の突起19bが受部21の内壁環状部21aを乗り越え[る]」ものであるところ、この「受部21」は、「内部に」「スライダー16が配置され[た]」「先具2に固定された」ものであるから、甲3発明の「受部21の内壁環状突部21a」及び「受部21の内壁環状突部21aと係合する突起19b」は、それぞれ本件発明1の「前記先部材の内周部に形成された被係止部」及び「前記スライダーの外周部に、前記スライダーが後退した際に前記先部材の内周部に形成された被係止部と係止する係止部」に相当する。
b したがって、本件発明1と甲3発明は、「前記スライダーの外周部に、前記スライダーが後退した際に前記先部材の内周部に形成された被係止部と係止する係止部を有[する]」点において一致する。
(ケ) 構成Hについて
a 甲3発明において、「スライダー16は、後端が先具2に固定された受部21に係止された第2の弾性体13により前方へ付勢され[ている]」ことは、本件発明1において、「前記スライダーを前方へ付勢する弾性部材が該スライダーと前記先部材の間に張架され[ている]」ことに相当する。
b したがって、本件発明1と甲3発明は、「前記スライダーを前方へ付勢する弾性部材が該スライダーと前記先部材の間に張架され[ている]」点において一致する。
(コ) 構成Iについて
本件発明1と甲3発明は、構成Iに関して、次に示す点において相違する。
本件発明1においては、
「前記係止部と前記被係止部との係止状態を解除するために最小限必要とされる、前記スライダーを軸方向に沿って前方へ押圧する押圧力をXとし、前記中間把持部材が前記筒状体を把持することにより前記中間把持部材と前記筒状体との間に生じる摩擦力をYとしたとき、Y<Xの関係式を満たし[ている]」のに対して、
甲3発明においては、
先端受部4がスリーブ7を把持しているのか不明であり、先端受部4とスリーブ7の間に把持することによる摩擦力が生じているのか不明な点。
(サ) 構成Jについて
本件発明1と甲3発明は、構成Jに関して、次に示す点において相違する。
本件発明1においては、
「前記ガイド部が前記軸筒内に退没し前記係止部と前記被係止部とが係止した状態から、前記操作体を操作することで前記スライダーを前進させ、前記ガイド部を前記先部材の前端開口部から前方へ突出させた際の前記スライダーの前進量をS1、前記芯の前進量をS2としたとき、S1<S2となる」のに対して、
甲3発明においては、
スライダー16が後退するのは、先端ノックによる芯送り出しを行うときであり、本件発明1の「操作体」に相当する構成を操作する後端ノック時でなく、後端ノックによりスライダー16は前進しない点。
イ 一致点及び相違点
上記アを対比分析における検討結果をまとめると、本件発明1と甲3発明は、次の一致点において一致し、後記の相違点において相違する。
(ア) 一致点
(構成A)軸筒本体と前記軸筒の前方に配設された先部材とを有する軸筒と、前記先部材に内包され該先部材に対して前後動可能に装着されたスライダーと、前記軸筒内に配置され筆記用の芯を把持するチャックと、前記チャックの外方に配設された筒状体と、前記筒状体の内方に前記チャックを締め付ける締部と、を備え、
(構成B)前記スライダーは前部に前記芯をガイドする内孔を備えたガイド部と、前記芯を一定の力で保持する芯保持部を有し、
(構成C′)前記ガイド部は、筆記時において前記先部材の前端開口部から前方へ突出するように構成されたシャープペンシルであって、
(構成D′)前記筒状体の後方に、該筒状体に対して軸方向に沿って前後に摺動可能な部材が配設され、前記部材は、前記チャックと当接することで該チャックに対して前方への移動が制限される第1当接部と、前記筒状体と当接することで該筒状体に対して前方への移動が制限される第2当接部と、を有し、
(構成F′)前記部材の後方に、該部材を前後方向に操作可能な操作体を有し、
(構成G)前記スライダーの外周部に、前記スライダーが後退した際に前記先部材の内周部に形成された被係止部と係止する係止部を有し、
(構成H)前記スライダーを前方へ付勢する弾性部材が該スライダーと前記先部材の間に張架される、
(構成X)シャープペンシル、である点。
(イ) 相違点
a 相違点3-1(構成C、J)
本件発明1においては、
「前記ガイド部は」、「携帯時においては前記芯とともに前記軸筒内に退没可能に構成され」、
「前記ガイド部が前記軸筒内に退没し前記係止部と前記被係止部とが係止した状態から、前記操作体を操作することで前記スライダーを前進させ、前記ガイド部を前記先部材の前端開口部から前方へ突出させた際の前記スライダーの前進量をS1、前記芯の前進量をS2としたとき、S1<S2となる」のに対して、
甲3発明においては、
スライダー16が後退するのは、先端ノックによる芯送り出しを行うときであり、携帯時や、本件発明1の「操作体」に相当する構成を操作する後端ノック時でなく、後端ノックによりスライダー16は前進しない点。
b 相違点3-2(構成D、F、I)
本件発明1においては、
「中間把持部材」が、「筒状体を把持する把持部」を有しており、
「前記係止部と前記被係止部との係止状態を解除するために最小限必要とされる、前記スライダーを軸方向に沿って前方へ押圧する押圧力をXとし、前記中間把持部材が前記筒状体を把持することにより前記中間把持部材と前記筒状体との間に生じる摩擦力をYとしたとき、Y<Xの関係式を満たし[ている]」のに対して、
甲3発明においては、
先端受部4がスリーブ7を把持しているのか不明であり、先端受部4とスリーブ7の間に把持することによる摩擦力が生じているのか不明な点。
c 相違点3-3(構成E)
本件発明1においては、
「前記筒状体の前部に、前記スライダーの後部に当接するスライダー押圧部を有し[ている]」のに対して、
甲3発明においては、
スライダー16の後端を押圧させる機能を果たすのは、スリーブ7ではなく、中枠15の先端に嵌合された先筒9である点。
ウ 相違点の判断
(ア) 事案に鑑み、前記相違点3-2について検討する。
(イ) 前記2(1)ウにおいて示した理由と同様の理由により、甲3発明は、本件発明1の「中間把持部材」に相当する構成を備えていないし、甲3発明において、「先端受部4」を「スリーブ7」の径方向外側に配置して、内側に力を加えて保持する構成とする動機付けもあるものではない。
(ウ) したがって、前記相違点3-1及び前記相違点3-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明ではなく、当業者であっても甲3発明に基づいて容易に発明できたものではないので、本件発明1に係る特許は、特許法29条1項、2項の規定に違反してされたものでない。
(エ) また、特許異議申立人が提示した甲1及び甲2を考慮しても、本件発明1の進歩性を否定する事情は見当たらない。
(2) 本件発明2~6
本件発明2~6も、前記相違点3-2に係る構成と同様の構成を備えるものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲3発明ではないし、当業者が甲3発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。
(3) 小括
以上のとおり、本件発明1~6は、甲3発明ではないし、当業者が甲3発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。
5 新規事項の追加について
(1) 特許権者が、令和6年10月17日付け手続補正書でした補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるか以下検討する。
(2) 補正後の請求項1には、次の記載がある。下線は、補正箇所を示すために、当審において付したものである。
「前記係止部と前記被係止部との係止状態を解除するために最小限必要とされる、前記スライダーを軸方向に沿って前方へ押圧する押圧力をXとし、前記中間把持部材が前記筒状体を把持することにより前記中間把持部材と前記筒状体との間に生じる摩擦力をYとしたとき、Y<Xの関係式を満たし、」
(3) 一方、当初明細書等には、次の記載がある。下線は、当審において付した。
「【0035】
続いて、図4の状態から操作体6を前方へ押圧操作することでスライダー3と先部材21との係止状態を解除して筆記状態に戻す動作を説明する。
図4の状態から、操作体6を前方へ押圧すると操作体6に押された中間把持部材5が前進する。中間把持部材5が前進すると、中間把持部材5の把持部5aに把持された筒状体42がチャック41と共に、スライダー3の後部当接部3cと筒状体42のスライダー押圧部42cとが当接するまでの隙間L分前進する。この際、チャック41に把持された芯7も隙間L分スライダー3に対して前進し、芯7は、スライダー3のガイド部3aの前端から前方へ向かって隙間L分突出する。具体的に、本実施形態では隙間Lを0.3mm~0.5mmに設定してあることから、芯7がスライダー3のガイド部3aの前端から突出する長さも同じく0.3mm~0.5mmとなる。そして、スライダー3の後部当接部3cと筒状体42のスライダー押圧部42cとが当接すると、前述したように、スライダー3と先部材21との係止状態を解除するための押圧力Xと、中間把持部材5の把持部5aが筒状体42を把持する把持力Yの関係は、Y<Xの関係式を満たすため、筒状体42の前進は停止し、筒状体42に対して中間把持部材5の把持部5aが筒状体42の外面を滑るようにして前進し、中間把持部材5の第1当接部5cとチャック41の後端とが当接する図5の状態となる。」
(4)a 前記(3)に示したとおり、当初明細書等には、「スライダー3の後部当接部3cと筒状体42のスライダー押圧部42cとが当接すると」、「筒状体42の前進は停止し、筒状体42に対して中間把持部材5の把持部5aが筒状体42の外面を滑るようにして前進[する]」ことが記載されており、そのために、「スライダー3と先部材21との係止状態を解除するための押圧力Xと、中間把持部材5の把持部5aが筒状体42を把持する把持力Yの関係は、Y<Xの関係式を満たす」ことが記載されている。
b 前記aを踏まえると、当初明細書等には、「スライダー3と先部材21との係止状態を解除するための押圧力X」が、「筒状体42に対して中間把持部材5の把持部5aが筒状体42の外面を滑るようにして前進[する]」のに必要な力より大きいことが記載されているものと認められる。
c そうすると、補正後の請求項1に記載された「前記中間把持部材が前記筒状体を把持することにより前記中間把持部材と前記筒状体との間に生じる摩擦力」は、前記bの「筒状体42に対して中間把持部材5の把持部5aが筒状体42の外面を滑るようにして前進[する]」のに必要な力に対応するものと認められるから、補正後の請求項1に記載された事項は、当初明細書等に記載されたものであり、当該補正は、当初明細書等に記載された全ての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(5)a 異議申立人は、異議申立書65頁において、以下主張する。
「「筒状体42」の前進は停止し、「筒状体42」に対して「中間把持部材5」の「把持部5a」が「筒状体」の外面を滑るようにして前進するかどうかは、中間把持部材5と筒状体42の間に生じる摩擦力Yのみならず、他の軸方向の力にも依存するはずであり(例えば、筒状体42と筒状体42の軸方向外側にある連結体22との間に生じる摩擦力)、摩擦力Y<押圧力Xの関係式を満たすからと言って、「筒状体42の前進は停止し、筒状体42に対して中間把持部材5の把持部5aが筒状体42の外面を滑るようにして前進する」とは言えない。」
b しかしながら、前記(4)のとおり、当初明細書等には、中間把持部材5と筒状体42の間に生じる力と、押圧力Xの関係しか記載されておらず、他の軸方向の力については何も記載がないのであるから、異議申立人の主張は、当初明細書等の記載に基づくものでなく、採用できない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書で申し立てられた特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700534