特許異議申立
2024-701026
柱梁架構
- 審判番号
- 2024-701026
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-009198
- 登録番号
- 7482803
- 請求日
- 2024年10月17日
- 審決日
- 2025年07月17日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大成建設株式会社
- 【権利者代理人】黒岩 久人
- 【異議申立人】村野 親
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 澤田 真治
- 審判官 油原 博
- 分類
- P1651.113-YAA(E04B) / P1651.121-YAA(E04B) / P1651.851-YAA(E04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7482803号発明「柱梁架構」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7482803号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2、3〕について訂正することを認める。
特許第7482803号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7482803号の請求項1~3に係る特許についての出願は、令和3年1月22日の出願であって、令和6年5月2日にその特許権の設定登録がされ、同月14日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許について、令和6年10月17日に、特許異議申立人 村野 親(以下「申立人」という。)より、特許異議申立書(以下「申立書」という。)が提出され、請求項1~3に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。
その後の経緯は、次のとおりである。
令和 7年 3月 7日付け 取消理由通知書
同年 3月31日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 5月22日 申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和7年3月31日になされた訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許第7482803号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2の
「前記第1梁主筋には、前記梁の上下端側に配置される一段目主筋と、前記梁の内部側に配置される二段目主筋と、を囲むように配置される閉鎖型のせん断補強筋を複数本束ねた束ね筋が複数設けられ、」を、
「前記第1梁主筋には、前記梁の上下端側に配置される全ての一段目主筋と、前記梁の内部側に配置される全ての二段目主筋と、を囲むように配置される閉鎖型のせん断補強筋を複数本束ねた束ね筋が複数設けられ、」
に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。
2 訂正の単位について
訂正事項1に係る訂正前の請求項2について、請求項3は請求項2を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項2及び3に対応する訂正後の請求項2及び3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、訂正事項に係る訂正は、当該一群の請求項〔2、3〕に対し請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、及び独立特許要件について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項2に係る発明の「前記第1梁主筋」に設けられる「閉鎖型のせん断補強筋を複数本束ねた束ね筋」について、「前記梁の上下端側に配置される一段目主筋と、前記梁の内部側に配置される二段目主筋と、を囲むように配置される」ことが特定されていたものを、「前記梁の上下端側に配置される全ての一段目主筋と、前記梁の内部側に配置される全ての二段目主筋と、を囲むように配置される」ことを限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
本件特許の願書に添付した明細書の【0016】、【0018】、【図2】及び【図3】には、次の記載がある(下線は当審で付した。)。
「【0016】
この梁20は、梁主筋30と、梁主筋30を囲んで所定間隔おきに設けられた閉鎖型のせん断補強筋としてのスタラップ40と、梁20の梁端部20Aに設けられて2本のスタラップ40を当接してなる束ね筋41と、梁20の梁端部20Aに所定間隔おきに設けられて上側の梁主筋30を囲む上側拘束筋42と、梁20の梁端部20Aに所定間隔おきに設けられて下側の梁主筋30を囲む下側拘束筋43と、を備える。」
「【0018】
第1梁主筋30Aの一部(2本)の二段目主筋32、34は、梁端部のみに配置されたカットオフ筋となっており、この一部の二段目主筋32、34の先端には、定着部材としての定着金物35が設けられて、この定着金物35の位置がヒンジ位置となっている。また、第1梁主筋30Aの一段目主筋31、33および残りの二段目主筋32、34は、第2梁主筋30Bに接合されて通し筋となっている。定着金物35は、鉄筋(ネジテツコン)の端部に装着することで、鉄筋を曲げることなく定着可能な金物である。この定着金物35としては、例えば、プレートナット(東京鉄鋼株式会社製)がある。
束ね筋41は、梁端部20Aの貫通孔21と定着金物35との間に2つ配置されている。すなわち、束ね筋41は、一段目主筋31、33と二段目主筋32、34とを囲んで配置されている。一方の束ね筋41は、貫通孔21の近傍に配置され、他方の束ね筋41は、定着金物35(ヒンジ位置)の近傍に配置されている。これら束ね筋41には、685N/mm2以上の降伏強度を有する高強度鉄筋が用いられている。」
【図2】「
[図:0001427969000001.jpg]
」
「
[図:0001427969000002.jpg]
」
上記記載から、束ね筋41は、閉鎖型のせん断補強筋としての2本のスタラップ40からなっていることが記載され(【0016】)、束ね筋41は、一段目主筋31、33と二段目主筋32、34とを囲んで配置されることも記載され(【0018】)、図2の断面図である図3でも、1本のスタラップ40として、一段目主筋31、33と二段目主筋32、34の全てを囲んで配置されていることが見て取れる。
よって、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書の【0016】、【0018】、図2及び図3の記載に基づくものであって、本件特許の願書に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許の願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項1は、上記アのとおり「前記第1梁主筋」に設けられる「閉鎖型のせん断補強筋を複数本束ねた束ね筋」を減縮するものであって、発明のカテゴリーを変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、訂正前のすべての請求項について特許異議の申立てがされているので、特許法120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 申立人の意見書における主張について
申立人は、令和7年5月22日提出の意見書において、本件訂正の適否について、次の2つの主張をしている。
主張1:特許権者は、「訂正後の請求項2に係る発明では、『閉鎖型のせん断補強筋』として、『前記梁の上下端側に配置される全ての一段目主筋と、前記梁の内部側に配置される全ての二段目主筋と、を囲むように配置される』とするものである」とする。
しかしながら、上記主張では日本語の係り受けに間違いがある。特許請求の範囲の記載では、一段目主筋と二段目主筋とを「囲むように配置される」のは「閉鎖型のせん断補強筋を複数本束ねた束ね筋」である。
かかる訂正は、日本語の係り受けをずらすことによる実質的な新規事項の追加(特許法126条5項、120条の5第9項、134条の2第9項)である。
主張2:特許権者が訂正の根拠とする段落【0016】【0018】(のみならず明細書)の何処にも、「全ての」との記載も、実質的に「全ての」を意味する記載も無いから、明細書の記載は訂正の根拠とはならない。
・・・
そこで、図2の断面図である図3(b)「c-c断面図」を参照するに、せん断補強筋40には、「全ての一段目主筋31、33と全ての二段目主筋32、34とを囲んで配置されている」ものと、一段目主筋31、33と、二段目主筋32、34の中央部のみを囲んで配置されているものとがあることを見て取ることができる。せん断補強筋に、一段目主筋31、33と二段目主筋32、34の中央部のみを囲んで配置されているものがある以上、明細書、特許請求の範囲、図面に記載のある束ね筋は“前記梁の上下端側に配置される全て及び一部の一段目主筋と、前記梁の内部側に配置される全て及び一部の二段目主筋と、を囲むように配置される閉鎖型のせん断補強筋を複数本束ねた束ね筋”である。“全て及び一部”から、“一部”を捨象し“全て”のみを抽出した束ね筋は、明細書、特許請求の範囲、図面に記載のない束ね筋の構成である。明細書、特許請求の範囲、図面に記載のない束ね筋の構成へ特許請求の範囲を減縮することは、実質的な新規事項の追加(特許法126条5項、120条の5第9項、134条の2第9項)である。
上記主張1及び2について検討する。
(1)主張1について
訂正前の請求項2では「前記第1梁主筋には、前記梁の上下端側に配置される一段目主筋と、前記梁の内部側に配置される二段目主筋と、を囲むように配置される閉鎖型のせん断補強筋を複数本束ねた束ね筋が複数設けられ、」と記載され、「束ね筋」は「閉鎖型のせん断補強筋」を複数本束ねたものであるから、・・・を囲むように配置されるのは、訂正前後とも「閉鎖型のせん断補強筋」であって、それを複数本束ねた「束ね筋」でもあるから、本件訂正により訂正後の請求項2の「束ね筋」の解釈を変更するものではない。よって、上記申立人の主張は妥当ではなく採用することができない。
(2)主張2について
上記3(1)イで説示したとおり、「前記第1梁主筋には、前記梁の上下端側に配置される全ての一段目主筋と、前記梁の内部側に配置される全ての二段目主筋と、を囲むように配置される閉鎖型のせん断補強筋を複数本束ねた束ね筋が複数設けられ、」ることは、本件特許の願書に添付した明細書の【0016】、【0018】、図2及び図3の記載に基づくものであって、本件特許の願書に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、本件特許の願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、上記申立人の主張は妥当ではなく採用することができない。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔2、3〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
上記第2のとおり、本件訂正は全て認められたので、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、各々を「本件特許発明1」等という。)は、令和7年3月31日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の、請求項1~3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
鉄筋コンクリート造の柱と、前記柱に接合された鉄筋コンクリート造の梁と、を備える鉄筋コンクリート造の柱梁架構であって、
前記梁の梁主筋は、前記柱の柱梁接合部を貫通してまたは前記柱梁接合部に定着されて梁端部に設置される第1梁主筋と、前記梁の梁中央部に設けられる第2梁主筋と、で構成され、
前記第1梁主筋には、前記梁の上下端側に配置される一段目主筋と、前記梁の内部側に配置される二段目主筋と、を囲むように配置される閉鎖型のせん断補強筋を複数本束ねた束ね筋が複数設けられ、
前記二段目主筋の少なくとも一部の梁中央部側には、機械式継手が設けられ、
前記複数の束ね筋のうちの1つは、前記機械式継手の長さ方向端部に設けられ、
前記複数の束ね筋のうちの別の1つは、前記機械式継手の長さ方向中間部に設けられることを特徴とする柱梁架構。
【請求項2】
鉄筋コンクリート造の柱と、前記柱に接合された鉄筋コンクリート造の梁と、を備える鉄筋コンクリート造の柱梁架構であって、
前記梁の梁主筋は、前記柱の柱梁接合部を貫通してまたは前記柱梁接合部に定着されて梁端部に設置される第1梁主筋と、前記梁の梁中央部に設けられる第2梁主筋と、で構成され、
前記第1梁主筋には、前記梁の上下端側に配置される全ての一段目主筋と、前記梁の内部側に配置される全ての二段目主筋と、を囲むように配置される閉鎖型のせん断補強筋を複数本束ねた束ね筋が複数設けられ、
前記梁の梁端部には、前記梁を梁幅方向に貫通する貫通孔が設けられ、
前記二段目主筋の少なくとも一部の先端には、定着部材が設けられ、
前記複数の束ね筋は、前記貫通孔と前記定着部材との間に配置され、
前記梁の梁端部のうち前記貫通孔の上下には、前記梁の上側の一段目主筋および二段目主筋を囲む上側拘束筋と、前記梁の下側の一段目主筋および二段目主筋を囲む下側拘束筋と、が設けられることを特徴とする柱梁架構。
【請求項3】
前記上側拘束筋および前記下側拘束筋は、略コの字形状の一対の折り曲げ筋を対向配置して結束することで、略ロの字形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の柱梁架構。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項2及び3に係る特許に対して、当審において、令和7年3月7日に特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
理由1(新規性)本件特許の請求項2に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
理由2(進歩性)本件特許の請求項2及び3に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)当審の判断
ア 本件特許発明1~3について
本件特許発明1~3は、上記第3に記載したとおりのものである。
イ 甲号証について
甲第1号証:特開2020-97844号公報
甲第2号証:特開2017-203371号公報
甲第3号証:特開2014-105493号公報
甲第4号証:特開2018-131885号公報
甲第5号証:特開2019-78008号公報
(ア)甲1、甲1発明
a 記載事項
申立人が甲第1号証として提出した特開2020-97844公報(以下「甲1」ということがある。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。
(a)「【0020】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係る柱梁の接合構造について、図1、図2を用いて説明する。
【0021】
(構造)
図1に示すように、本実施形態の柱梁の接合構造10は、鉛直方向に延びる下部柱12及び上部柱14と、水平方向に延びる梁16と、上面及び下面に上部柱14及び下部柱12がそれぞれ接合され、側面に梁16が接合された柱梁仕口部18と、を有している。
【0022】
下部柱12は、プレキャストコンクリートで構成された四角柱であり、鉛直方向に配筋されて上面に突設された複数の柱主筋12Aと、柱主筋12Aに巻掛けられた図示しない複数のせん断補強筋と、を有している。
【0023】
上部柱14は、下部柱12と同様にプレキャストコンクリートで構成された四角柱であり、鉛直方向に配筋された複数の柱主筋14Aと、柱主筋14Aに巻掛けられた図示しない複数のせん断補強筋と、を有している。また、上部柱14の下面には、複数の機械式継手20が埋設されており、後述する柱梁仕口部18のシース管26に挿通された下部柱12の柱主筋12Aと、上部柱14の柱主筋14Aとが、機械式継手20によって接続されている。
【0024】
梁16は、柱梁仕口部18との接合端部22である長手方向の端部が現場打ちコンクリートで構成されており、長手方向の中央部を構成する梁部材24がプレキャストコンクリートで構成されている。」
(b)「【0025】
また、梁16は、水平方向に配筋され、梁16の上部及び下部にそれぞれ鉛直方向に間隔をあけて並設された複数の梁主筋16Aと、上下の梁主筋16Aに巻掛けられ、梁主筋16Aの長手方向(水平方向)に互いに間隔をあけて配置された複数のせん断補強筋36と、を有している。」
(c)「【0028】
また、柱梁仕口部18には、水平方向に複数の接合鉄筋18Aが配筋されている。本実施形態では、複数の接合鉄筋18Aは、梁主筋16Aと同鋼種かつ同径とされており、柱梁仕口部18の上部及び下部にそれぞれ鉛直方向に間隔をあけて並設され、端部が柱梁仕口部18の側面に突設されている。
【0029】
また、梁16の接合端部22(長手方向の端部)には、柱梁仕口部18の側面に突設された接合鉄筋18Aの端部と、梁主筋16Aの端部とをそれぞれ接続する複数の機械式継手28が埋設されている。
【0030】
さらに、梁16には、柱梁仕口部18と接合端部22とに跨って複数の補強筋30が配筋されている。本実施形態では、補強筋30は、梁主筋16Aに沿って水平方向に延びるとともに、上下の梁主筋16Aの間に鉛直方向に間隔をあけて上下二段に配筋されている。また、補強筋30の接合端部22側の端部には、定着部としての機械式定着板32が設けられており、機械式定着板32によって補強筋30が接合端部22に定着されている。
【0031】
梁16の接合端部22は、端部に機械式定着板32が設けられた補強筋30によって補強されることにより、非降伏ヒンジ領域Rとされている。換言すれば、梁16の接合端部22に非降伏ヒンジ領域Rが設けられている。なお、本発明において「非降伏ヒンジ領域」とは、剛性化されることで、梁の他の領域に比べて所定の曲げに対して塑性変形(及び弾性変形)が生じ難くされた領域を指す。
【0032】
また、梁16の接合端部22において、補強筋30の梁16側の端部(図1における右側端部)は、機械式継手28の梁16側の端部(図1における右側端部)より、梁16側(図1における右側)とされている。すなわち、機械式継手28は、非降伏ヒンジ領域R内に設けられている。」
(d)「【0035】
また、柱梁仕口部18の側面に突設された接合鉄筋18Aの端部に機械式継手28を接合するとともに、柱梁仕口部18の側面に突設された補強筋30の端部に機械式定着板32を接合する。さらに、複数のせん断補強筋36を予めまとめて機械式継手28に巻掛けておく。」
(e)「【0056】
(構造)
図4に示すように、本実施形態の柱梁の接合構造60は、鉛直方向に延びる下部柱12及び上部柱14と、水平方向に延びる梁66と、上面及び下面に上部柱14及び下部柱12がそれぞれ接合され、側面に梁66が接合された柱梁仕口部68と、を有している。なお、下部柱12及び上部柱14は、第1実施形態と同様の構成とされている。
【0057】
第1実施形態では、梁16の接合端部22が現場打ちコンクリートで構成され、第2実施形態では、梁46の接合端部42が柱梁仕口部48と一体的に構成されていた。これに対し、本実施形態では、梁66の接合端部62は梁66の長手方向の中央部を構成する梁部材64とプレキャストコンクリートによって一体的に構成されており、接合端部62が柱梁仕口部68に接合されている。
【0058】
梁66の接合端部62には、梁部材64と接合端部62とに跨って水平方向に延びる複数の梁主筋66Aが配筋されている。また、梁主筋66Aの接合端部62側の端部(図4における左側端部)は、接合端部62の柱梁仕口部68との接合面62Sに埋設された機械式継手78に接合されている。
【0059】
また、接合端部62には、水平方向に延びる複数の梁側補強筋70Aが配筋されている。梁側補強筋70Aの梁部材64側の端部(図4における右側端部)には、定着部としての機械式定着板72が設けられており、柱梁仕口部68側の端部(図4における左側端部)は、接合端部62の柱梁仕口部68との接合面62Sに埋設された機械式継手80に接合されている。
【0060】
柱梁仕口部68は、プレキャストコンクリートで構成されており、水平方向に配筋された複数の接合鉄筋68A及び複数の仕口側補強筋70Bが、接合端部62との接合面68S(側面)にそれぞれ突設されている。
・・・
【0062】
一方、柱梁仕口部68の接合面68Sに突設された仕口側補強筋70Bの端部は、接合端部62の接合面62Sに埋設された機械式継手80に接合されることで梁側補強筋70Aに接続されている。
【0063】
この機械式継手80によって互いに接続された梁側補強筋70Aと仕口側補強筋70Bにより、柱梁仕口部68と接合端部62とに跨って延びる補強筋70が構成されている。また、端部に機械式定着板72が設けられた補強筋70で補強されることにより、梁66の接合端部62が非降伏ヒンジ領域Rとされている。」
(f)【図1】「
[図:0001427969000003.jpg]
」
上記図1から、機械式継手28に巻掛けられたせん断補強筋36のうちの1つは、機械式継手28の長さ方向端部に巻掛けられ、複数のせん断補強筋36のうちのいくつかは、機械式継手28の長さ方向中間部に巻掛けられていることが見て取れる。
(g)【図4】「
[図:0001427969000004.jpg]
」
b 甲1発明
上記aからみて、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「鉛直方向に配筋された複数の柱主筋14Aと、柱主筋14Aに巻掛けられた複数のせん断補強筋と、を有しているプレキャストコンクリートで構成された四角柱である上部柱14、柱梁仕口部18、鉛直方向に配筋された複数の柱主筋14Aと、柱主筋14Aに巻掛けられた複数のせん断補強筋と、を有しているプレキャストコンクリートで構成された四角柱である下部柱12と、柱梁仕口部18との接合端部22である長手方向の端部が現場打ちコンクリートで構成され、長手方向の中央部を構成する梁部材24がプレキャストコンクリートで構成されている梁16とを備える柱梁の接合構造10であって(【0021】~【0024】)、
梁16は、水平方向に配筋され、梁16の上部及び下部にそれぞれ鉛直方向に間隔をあけて並設された複数の梁主筋16Aと、上下の梁主筋16Aに巻掛けられ、梁主筋16Aの長手方向(水平方向)に互いに間隔をあけて配置された複数のせん断補強筋36と(【0025】)、柱梁仕口部18の水平方向に配筋された複数の接合鉄筋18Aと(【0028】)、を有し、
柱梁仕口部18と接合端部22とに跨って複数の補強筋30が配筋され、補強筋30は、梁主筋16Aに沿って水平方向に延びるとともに、上下の梁主筋16Aの間に鉛直方向に間隔をあけて上下二段に配筋され(【0030】)、
梁16の接合端部22(長手方向の端部)には、柱梁仕口部18の側面に突設された接合鉄筋18Aの端部と、梁主筋16Aの端部とをそれぞれ接続する複数の機械式継手28が埋設されており(【0029】、
梁16の接合端部22において、補強筋30の梁16側の端部は、機械式継手28の梁16側の端部より、梁16側とされ(【0032】)、柱梁仕口部18の側面に突設された接合鉄筋18Aの端部に機械式継手28を接合するとともに、柱梁仕口部18の側面に突設された補強筋30の端部に機械式定着板32を接合し、複数のせん断補強筋36を予めまとめて機械式継手28に巻掛けておき(【0035】)、
機械式継手28に巻掛けられたせん断補強筋36のうちの1つは、機械式継手28の長さ方向端部に巻掛けられ、複数のせん断補強筋36のうちのいくつかは、機械式継手28の長さ方向中間部に巻掛けられている(【図1】)
柱梁の接合構造10(【0021】)。」
c 甲1記載の技術事項
上記aからみて、甲1には次の技術事項(以下「甲1記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「プレキャストコンクリートで構成された四角柱である上部柱14、柱梁仕口部18、プレキャストコンクリートで構成された四角柱である下部柱12と、梁66の接合端部62は梁66の長手方向の中央部を構成する梁部材64とプレキャストコンクリートによって一体的に構成される柱梁の接合構造60において、梁の内部側に配置される仕ロ側補強筋に接合する機械式継手を有すること。」
(イ)甲2、甲2発明
a 記載事項
申立人が甲第2号証として提出した特開2017-203371号公報(以下「甲2」ということがある。)には、次の事項が記載されている。
(a)「【0042】
図1に示すように、本実施形態における鉄筋コンクリート造の柱梁架構10は柱100と梁200とで構成されている。なお、図1(A)に示すように、柱100のY方向の幅は、梁200の梁幅よりも幅広である。梁200は矢印X方向に沿って設けられている。
【0043】
図1(B)及び図2(D)に示すように、梁200の柱100との接合端部250には、Y方向に貫通孔20が形成されている。この貫通孔20は、液体・気体・粉体などの流体を輸送する配管(例えば、空調ダクト、排水菅、水道管など)や電気や通信などの配線(例えば、電線や通信ケーブルなど)を通すために設けられている。なお、「接合端部250」の説明は後述する。
【0044】
図1及び図2(A)に示すように、鉄筋コンクリート造の柱100には、柱主筋110とせん断補強筋102、104とが配筋されている。柱主筋110は、柱100の外周部分に柱長方向(Z方向)に沿って配筋されている。外側のせん断補強筋102は、外周部分に柱主筋110を囲むように設けられ、柱長方向(Z方向)に所定の間隔をあけて配筋されている。また、内側のせん断補強筋104は、梁200に対応する中央付近の柱主筋110のみを囲むように設けられ、 同様に柱長方向(Z方向)に所定の間隔をあけて配筋されている。
【0045】
図1及び図2(B)、図2(C)、図2(D)に示すように、鉄筋コンクリート造の梁200には、梁主筋210とせん断補強筋202、204とが配筋されている。梁主筋210は、梁200の上部と下部とにそれぞれ梁幅方向に間隔をあけて並んで配筋されている。なお、梁主筋210は、柱梁仕口部150(図1参照)を通る通し配筋となっている。外側のせん断補強筋202は、梁主筋210を囲むように設けられ、梁長方向(X方向)に所定の間隔をあけて配筋されている。また、内側のせん断補強筋204は、梁成方向中央付近の梁主筋210のみを囲むように設けられ、同様に梁長方向(X方向)に所定の間隔をあけて配筋されている。
【0046】
また、図1(B)に示すように、梁200の接合端部250に形成された貫通孔20の周囲を囲むように、正面視矩形状の補助筋50が配筋されている。なお、補助筋50は、貫通孔20が矩形の場合は不要である。
【0047】
図1、図2(C)、図2(D)、及び図3に示すように、梁200には、柱100との接合端部250と柱梁仕口部150とに跨って複数本の補強筋220が配筋されている。補強筋220は、梁主筋210と同様に梁長方向(X方向)に沿って配筋されている。また、補強筋220は、上下の梁主筋210の間に上下二段で配筋され、それぞれ梁幅方向に間隔をあけて並んで配筋されている。なお、梁幅方向に並んだ梁主筋210の間に補強筋220を配筋してもよい(梁主筋210と補強筋220とが梁幅方向に交互に並んだ配筋構成であってもよい)。また、各補強筋220の両端部には、定着板222が設けられている。
【0048】
図2(D)等に示すように、梁200における接合端部250には、これら複数の補強筋220を保持する補助筋230、232が上下にそれぞれ設けられている。幅広の補助筋230は、梁幅方向(Y方向)に沿って配筋され、梁幅方向両外側の梁主筋210の外側からそれぞれ中心側(Z方向)に屈曲し、屈曲した先端部には梁幅方向両外側の補強筋220を保持するフック部231が形成されている。同様に、幅狭の補助筋232は、梁幅方向(Y方向)に沿って配筋され、中央付近の二本の梁主筋210の外側からそれぞれ中心側(Z方向)に屈曲し、屈曲した先端部には中央付近の二本の補強筋220を保持するフック部233が形成されている。」
(b)「【0078】
なお、図9(A)は、柱梁接合部分が側面視で横T字形状となる場合の補強筋220の配筋例を示している。また、図13は柱梁接合部分が側面視でL字形状となる場合の補強筋220の配筋例を示している。」
(c)【図1】「
[図:0001427969000005.jpg]
」
(d)【図2】「
[図:0001427969000006.jpg]
」
(e)【図9-1】「
[図:0001427969000007.jpg]
」
b 認定事項
(a)認定事項1
上記a(b)の【0078】には、「図9(A)は、柱梁接合部分が側面視で横T字形状となる場合の補強筋220の配筋例を示している。」と記載されているところ、ア(オ)の図【9-1】から、「側面視で横T字形状となる」「柱梁接合部分」に、「補強筋220が配筋され」、その「両端部には、定着板222が設けられている」ことが見て取れるから、甲2には下記の事項が記載されていると認められる(以下「認定事項1」という。)。
「側面視で横T字形状となる柱梁接合部分に、補強筋220が配筋され、その両端部には、定着板222が設けられていること。」
(b)認定事項2
上記a(c)の図1及びa(e)の図2を総合すると、柱100の左右の「接合端部250」において、「補強筋220」長手方向にそれぞれ5つずつの「せん断補強筋202、204」が組をなすように「配筋」されており、当該「せん断補強筋202、204」の組のうち、1の組が「補強筋220」の「定着板222」よりも柱100側に配筋され、当該「1の組」に対して柱100側に隣接する「せん断補強筋202、204」の組よりも、「貫通孔20」が柱100側に設けられていることが見て取れる。
また、図1(A)及び図2(C)からみて、当該5つずつ配筋された「せん断補強筋202、204」において、1の「せん断補強筋202」と1の「せん断補強筋204」とは、いずれも略長方形のループ状に形成されるとともに、それらが1の組において接して配筋されていると解される。
以上を総合すると、甲2には下記の事項が記載されていると認められる(以下「認定事項2」という。)。
「柱100の左右の接合端部250において、長手方向にそれぞれ5つずつの略長方形のループ状に形成されたせん断補強筋202、204が互いに接するように組をなして配筋されており、せん断補強筋202、204の組のうち、1の組が補強筋220の定着板222よりも柱100側に配筋され、当該1の組に対して柱100側に隣接するせん断補強筋202、204の組よりも、貫通孔20が柱100側に設けられていること。」
(c)認定事項3
上記a(e)の図2(D)には、「補助筋230、232」が「貫通孔20」の上下に設けられていることがみてとれるから、甲2には下記の技術事項が記載されていると認められる(以下「認定事項3」という。)。
「補助筋230、232が貫通孔20の上下に設けられていること。」
c 甲2発明
上記a及びbからみて、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「鉄筋コンクリート造の柱梁架構10は柱100と梁200とで構成されており(【0042】)、
梁200の柱100との接合端部250には、Y方向に貫通孔20が形成されており(【0043】)、
鉄筋コンクリート造の梁200には、梁主筋210とせん断補強筋202、204とが配筋されており、梁主筋210は、梁200の上部と下部とにそれぞれ梁幅方向に間隔をあけて並んで配筋されており、梁主筋210は、柱梁仕口部150を通る通し配筋となっており、外側のせん断補強筋202は、梁主筋210を囲むように設けられ、梁長方向(X方向)に所定の間隔をあけて配筋されており、内側のせん断補強筋204は、梁成方向中央付近の梁主筋210のみを囲むように設けられ、同様に梁長方向(X方向)に所定の間隔をあけて配筋されており(【0045】)、
梁200には、柱100との接合端部250と柱梁仕口部150とに跨って複数本の補強筋220が配筋されており、補強筋220は、梁主筋210と同様に梁長方向(X方向)に沿って配筋されており、補強筋220は、上下の梁主筋210の間に上下二段で配筋され、それぞれ梁幅方向に間隔をあけて並んで配筋されており、各補強筋220の両端部には、定着板222が設けられており(【0047】)、
梁200における接合端部250の貫通孔20の上下には、これら複数の補強筋220を保持する補助筋230、232が上下にそれぞれ設けられており、幅広の補助筋230は、梁幅方向(Y方向)に沿って配筋され、梁幅方向両外側の梁主筋210の外側からそれぞれ中心側(Z方向)に屈曲し、屈曲した先端部には梁幅方向両外側の補強筋220を保持するフック部231が形成されており、幅狭の補助筋232は、梁幅方向(Y方向)に沿って配筋され、中央付近の二本の梁主筋210の外側からそれぞれ中心側(Z方向)に屈曲し、屈曲した先端部には中央付近の二本の補強筋220を保持するフック部233が形成されており(【0048】、認定事項3)、
側面視で横T字形状となる柱梁接合部分に、補強筋220が配筋され、その両端部には、定着板222が設けられている(認定事項1)、
柱100の左右の接合端部250において、長手方向にそれぞれ5つずつの略長方形のループ状に形成されたせん断補強筋202、204が互いに接するように組をなして配筋されており、せん断補強筋202、204の組のうち、1の組が補強筋220の定着板222よりも柱100側に配筋され、当該1の組に対して柱100側に隣接するせん断補強筋202、204の組よりも、貫通孔20が柱100側に設けられている(認定事項2)、
鉄筋コンクリート造の柱梁架構10(【0042】)。」
(ウ)甲3、甲3記載の技術事項
a 記載事項
申立人が甲第3号証として提出した特開2014-105493号公報(以下「甲3」ということがある。)には、次の事項が記載されている。
(a)「【0024】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、鉄筋コンクリート建造物の最上階の隅部に位置する柱頭仕口1を示す。この柱頭仕口1において、垂直の柱10と、水平をなすとともに互いに直交するX,Y軸方向に延びる第1梁20,第2梁30とが連結されている。
【0025】
図2~図5は、上記柱頭仕口1の構造の第1実施形態を示す。上記柱10は、仮想矩形形の角と辺にそれぞれ配置された垂直をなす主筋11と、これら主筋11の長手方向に間隔をおいて配置されこれら主筋11を囲む矩形形状のフープ筋13とを備えている。主筋11とフープ筋13は、その交差部において番線等により連結されている。なお、必要に応じて上記矩形形の対向する辺に位置する主筋11間に副帯筋14を掛け渡してもよい。
上記主筋11およびフープ筋13、副帯筋14からなる鉄筋籠は、コンクリート15に埋設されている。
【0026】
上記第1梁20は、同一水平面(図3に符号P1で示す)において互いに平行をなしてX軸方向に延びる4本(複数)の上側主筋21と、その下方の他の水平面(図3に符号P2で示す)において互いに平行をなしてX軸方向に延びる4本(複数)の下側主筋22と、これら主筋21,22の長手方向に沿って間隔をおいて配置されこれら主筋21,22を囲む多数の矩形形状のフープ筋23とを有している。主筋21、22とフープ筋23は、その交差部において番線等により連結されている。なお、必要に応じて上側主筋21と下側主筋22間に副帯筋24を掛け渡してもよい。
上記主筋21,22およびフープ筋23、副帯筋24からなる鉄筋籠は、コンクリート25に埋設されている。」
(b)「【0037】
さらに、上記第1梁20の主筋21,22の先端部(補強筋41,42より先端側)には、2つ(複数)の閉鎖型の補強筋50(第2補強筋)が番線等で連結されている。より具体的には、上記第1梁20の定着金物28は、主筋21,22の先端から少し離れて配置されており、この定着金物28と主筋21,22の先端との間に補強筋50が配されている。
【0038】
図4(B)に最も良く示されているように、上記補強筋50は、鉄筋を折り曲げてその両端を溶接することにより、矩形のリング状をなしている。各補強筋50は、水平をなし第1梁20の上側主筋21に直交して掛けられた上辺50a(掛け部)と、この上辺50aから下方に延びる左右の辺50b(垂下部)と、下側主筋22とほぼ接するようにしてその下側に配された下辺50c(抵抗付与部または副掛け部)とを有している。
【0039】
本実施形態では、2つの補強筋50は同一形状をなし、左右に位置をずらして配置され、それぞれ3本の上側主筋21と3本の下側主筋22を囲っている。より具体的に説明すると、一方の補強筋50の上辺50aが、4本の上側主筋21のうち左から数えて3本の上側主筋21に載り、その下辺50cが対応する3本の下側主筋22の下側に配置されている。
他方の補強筋50の上辺50aは、4本の上側主筋21のうち右から数えて3本の上側主筋21に掛けられ、その下辺50cは対応する3本の下側主筋22の下側に配置されている。
上記のような2つの補強筋50の配置により、全ての主筋21,22はいずれかの補強筋50の角部近傍に配されている。」
(c)「【0042】
上記構成において、柱頭仕口1の耐震強度は、柱主筋11の上端部を第1梁20の上側主筋21より高くしてフープ筋19を配筋したこと、および補強筋41,42,50を配筋したことにより飛躍的に向上する。以下、その理由を説明する。
強い地震により、建造物が柱10と第1梁20の角度を増減する方向の繰り返し荷重を受けた時には、第1梁20の上側主筋21が柱頭仕口1においてその上方のコンクリート5を跳ね上げようとする。しかし、本実施形態では、柱主筋11の上端部が上側主筋21より高い位置にあり、この上端部に係止されたフープ筋19が上側主筋21の跳ね上げを抑制すること、補強筋41,42、50が垂下部41b、42b、50bと上側主筋21より下方のコンクリート5との間の付着抵抗により上側主筋21を拘束すること、および補強筋50の下辺50cを介して下側主筋22も上側主筋21の拘束に寄与することにより、上側主筋21の上方のコンクリート5の破壊を防止でき、柱頭仕口1の耐震強度を高めることができる。換言すれば、柱頭仕口1は、大きな破壊なく、高い最大耐力を実現でき、しかも所定以上の耐力維持したまま柱10と梁20との間の角度の大きな増減を許容することができる(変形性能が高い)。」
b 甲3記載の技術事項
上記aからみて、甲3には次の技術事項(以下「甲3記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「鉄筋コンクリート建造物の最上階の隅部に位置する柱頭仕口1において、垂直の柱10と、水平をなすとともに互いに直交するX,Y軸方向に延びる第1梁20,第2梁30とが連結され、上記第1梁20の主筋21,22の先端部(補強筋41,42より先端側)には、2つ(複数)の閉鎖型の補強筋50(第2補強筋)が番線等で連結されており、2つの補強筋50は同一形状をなし、左右に位置をずらして配置され、それぞれ3本の上側主筋21と3本の下側主筋22を囲っていること。」
(エ)甲4、甲4記載の技術事項
a 記載事項
(a)「【0022】
以下、本発明のプレキャストコンクリート梁部材の接合構造および接合方法の一連の施工手順について、添付した各図面を参照して説明する。」
(b)「【0029】
第1の梁端接合部10内の梁主筋13のせん断補強のために、機械式継手5の位置にもせん断補強筋17を配筋することが好ましい。そのために、本実施形態では、第1の梁端接合部10内の機械式継手5と設計梁断面の端面11との間に3本のせん断補強筋17をあらかじめ束ねて収容してある。これらのせん断補強筋17を、図3(b)に示したように、機械式継手5で梁主筋13、23を接合した後に、所定の配筋ピッチで凹所空間3内の機械式継手5と梁主筋13、23を囲むように配筋する。なお、後述するように、機械式継手5の区間せん断補強筋17を配筋させず、機械式継手5の後方位置において束ねた状態で配筋しても所定のせん断補強効果を見込むことができる。
【0030】
(第2の梁端接合部)
第2の梁端接合部20は、相対する第1の梁端接合部10と同様に、図1(a)、図2(a)に示したように、設計梁断面の端面21から所定の長さだけ梁両側面が突出するように一体的に延長された側面板22で囲まれて形成された、梁上下面が開放した平面視して略台形状の凹所24を有している。側面板22は、本実施形態では、根元部となる設計梁断面の端面21での厚みが50mm、接合部先端での厚みが40mmの薄板形状からなり、長さ(設計梁断面位置からの突出長)は190mmである。この長さは機械式継手5の長さの1/2よりわずかに長い寸法に設定されている。すなわち、図3(a)に示したように、機械式継手5を用いて第1の梁端接合部10と第2の梁端接合部20とを接合する場合、機械式継手5内には第1の梁端接合部10の梁主筋13と第2の梁端接合部20の梁主筋23とがほぼ同じ長さで納まるように機械式継手5の位置が決定される。このため、第2の梁端接合部20に突出する梁主筋23の長さは当初から機械式継手5の全長の1/2の長さに納まるように設定されている。
【0031】
さらに凹所24の構成面となる梁両側面に位置する側面板22の内面22aと設計梁断面の端面21の各面は、第1の梁端接合部10と同様にラス網25で覆われている。また、側面板22の内部には側面板22の補強用に溶接金網26も埋設されている。第2の梁端接合部20に埋設される溶接金網26は側面板22の長さに応じて第1の梁端接合部10に使用される溶接金網16より小さく設定されている。
【0032】
なお、矩形をなす設計梁断面のコンクリート内のラス網25の近傍には複数本のせん断補強筋27が束ねて配筋されている。この位置にせん断補強筋27を集中配筋することで、第2の梁端接合部20側の機械式継手5の範囲にはせん断補強筋を配筋しないで対応している。このように機械式継手等の継手部の近傍にせん断補強筋を集中配筋することで継手部のせん断補強筋の配筋を省略しても同等のせん断補強効果が得られることが既往の実験によって確認されている。
【0033】
(第1の梁端接合部の変形例)
図5各図は、上述した第1の梁端接合部10の変形例として、梁部材Cと柱Eとの接合を合理的に行うために設けられた梁部材C側の梁端接合部30の構成を示している。柱E側ではすでに図示した梁部材Cと直交する梁部材Fと一体的に製作された柱梁接合部Dが柱主筋8を貫通するように柱部材上に載置されている。この柱梁接合部Dの柱Eの側面からは梁部材Cの梁端接合部30の梁主筋33に取り付けられた機械式継手5の全長の約1/2の長さの継手筋43が突出している。一方、柱E側には図5(a)に示したように、第2の梁端接合部20に設けられていたような側面板がない(図1(a)参照)。このため、梁端接合部30の側面板32の長さは、継手筋43の長さと梁部材Dの梁端接合部30と柱Eの側面とのクリアランスLを考慮した分だけ長くした形状に設定されている。これにより梁部材C側の側面板32を接合部コンクリート50の打設時の側面型枠として機能させることができる。この結果、通常の梁接合部と同様の工程で柱梁接合部の柱梁接合作業を行うことができる。」
b 甲4記載の技術事項
上記aからみて、甲4には次の技術事項(以下「甲4記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「プレキャストコンクリート梁部材の接合構造において、第1の梁端接合部10内の機械式継手5と設計梁断面の端面11との間に3本のせん断補強筋17をあらかじめ束ねて収容し、機械式継手5で梁主筋13、23を接合した後に、所定の配筋ピッチで凹所空間3内の機械式継手5と梁主筋13、23を囲むように配筋すること。」
(オ)甲5、甲5に記載の技術事項
a 記載事項
申立人が甲第5号証として提出した特開2019-78008号公報(以下「甲5」ということがある。)には、次の事項が記載されている
(a)「【0017】
図1及び図2に示すように、梁1はまた、当該梁1の幅方向(以下、必要に応じて、単に「幅方向」という)に貫通する開孔1aを有する。開孔1aの横断面は略円形状に形成される。開孔1aは、人、機材等が通り抜けることができるような大きさに形成されており、具体的には、開孔1aの直径Dが約500mm~約750mmとなっている。なお、開孔の横断面は略多角形状に形成されてもよく、この場合、開孔の外接円の直径が開孔の直径として定義されるとよい。
【0018】
再び図1~図4に示すように、このような梁1において、梁開孔補強構造2は、開孔1aの周辺に位置する開孔周辺部1bを補強するようになっている。なお、本実施形態に係る梁1において、開孔周辺部1bに対して梁1の長手方向(以下、必要に応じて、単に「長手方向」という)の一方側、すなわち、左側(矢印V1により示す)に位置する部分を左側一般部1cと呼び、かつ開孔周辺部1bに対して長手方向の他方側、すなわち、右側(矢印V2により示す)に位置する部分を右側一般部1dと呼ぶ。
【0019】
梁開孔補強構造2は、梁1の内部で開孔周辺部1b並びに左側及び右側一般部1c,1dに跨って長手方向に延びる複数の主筋21と、梁1の開孔周辺部1bの内部で開孔1aを囲むように配置される開孔補強部材22とを備える。
【0020】
梁開孔補強構造2はまた、梁1の開孔周辺部1bの内部で長手方向に直線状に延びる上側及び下側水平補強筋23,24と、梁1の開孔周辺部1bの内部でそれぞれ上側及び下側水平補強筋23,24を囲む上側及び下側開口補強筋25,26とを備える。上側水平補強筋23及び上側開口補強筋25は開孔1aに対して上側に配置され、かつ下側水平補強筋24及び下側開口補強筋26は開孔1aに対して下側に配置される。」
(b)「【0045】
さらに、各上側開口補強筋25は、第1及び第2主筋列R1,R2の主筋21と、上側水平補強筋23の中央部23aとを囲んでおり、かつ各下側開口補強筋26は、第3及び第4主筋列R3,R4の主筋21と、下側水平補強筋24の中央部24aとを囲んでいる。
・・・
【0048】
図2及び図5を参照して、上側開口補強筋25の形状について次に述べる。なお、上側及び下側開口補強筋25,26は実質的に上下対称に形成されており、以下においては、上側開口補強筋25の好ましい形状について説明し、下側開口補強筋26の好ましい形状の説明は省略する。」
(c)「【0054】
図6及び図7に示すように、上側開口補強筋25’は、梁1の背面側に向かって開口するように略U字形状に形成された正面側部材51と、梁1の正面側に向かって開口するように略U字形状に形成された背面側部材52とを有する。正面側部材51は、梁1の正面側に位置する正面側端部51aと、梁1の上下方向の外側に位置する上下外側端部51bと、梁1の上下方向の中央側に位置する上下中央側端部51cとを有する。背面側部材52は、梁1の背面側に位置する背面側端部52aと、梁1の上下方向の外側に位置する上下外側端部52bと、梁1の上下方向の中央側に位置する上下中央側端部52cとを有する。
・・・
【0059】
[各種孔際補強筋の詳細について]
左外側及び左内側孔際補強筋27,28並びに右外側及び右内側孔際補強筋29,30の詳細について説明する。本実施形態においては、図1に示すように、梁開孔補強構造2は、3つの左外側孔際補強筋27と、3つの右外側孔際補強筋29とを有する。梁開孔補強構造2は、3つの左内側孔際補強筋28と、3つの右内側孔際補強筋30とを有する。左外側孔際補強筋27の数、左内側孔際補強筋28の数、右外側孔際補強筋29の数、及び右内側孔際補強筋30の数は同じであると好ましい。なお、各種孔際補強筋の数は、梁の構造、梁の強度等に応じて3つ以上に定められるとよい。
【0060】
3つの左外側孔際補強筋27は互いに幅方向に間隔を空けて配置され、かつ3つの左内側孔際補強筋28は互いに幅方向に間隔を空けて配置される。各左外側孔際補強筋27と各左内側孔際補強筋28とは、幅方向にて開孔1aと各開孔補強部材22の長手方向の一方端との間に位置する。3つの右外側孔際補強筋29は互いに幅方向に間隔を空けて配置され、かつ3つの右内側孔際補強筋30は互いに幅方向に間隔を空けて配置される。各右外側孔際補強筋29と各右内側孔際補強筋30とは、幅方向にて開孔1aと各開孔補強部材22の長手方向の他方端との間に位置する。
【0061】
3つの左外側孔際補強筋27は、それぞれ、幅方向にて3つの左内側孔際補強筋28に対応して位置する。3つの右外側孔際補強筋29は、それぞれ、幅方向にて3つの右内側孔際補強筋30に対応して位置する。特に、3つの左外側孔際補強筋27は、左側孔際ピッチ長さT1にて略等間隔に配置されると好ましく、かつ3つの右外側孔際補強筋29は、右側孔際ピッチ長さT2にて略等間隔に配置されると好ましい。さらに、左側及び右側孔際ピッチ長さT1,T2は略等しくなっていると好ましい。左側及び右側孔際ピッチ長さT1,T2のそれぞれは、開孔上側及び下側ピッチ長さS1,S2のそれぞれよりも小さくなっていると好ましい。
【0062】
各種外側孔際補強筋27,29は、すべての主筋21を囲んでいる。各種内側孔際補強筋28,30は、第1~第4主筋列R1~R4の第2及び第3主筋21を囲んでいる。」
(d)「【0077】
上側開口補強筋25,25’は、第1主筋列R1の少なくとも一部の主筋21と、第2主筋列R2の第1及び第4主筋21とに当接かつ結束される。下側開口補強筋26は、第3主筋列R3の第1及び第4主筋21と、第4主筋列R4の少なくとも一部の主筋21とに当接かつ結束される。
【0078】
各種外側孔際補強筋27,29は、第1主筋列R1の少なくとも一部の主筋21と、第2及び第3主筋列R2,R3の第1及び第4主筋21と、第4主筋列R4の少なくとも一部の主筋21とに当接かつ結束される。各種内側孔際補強筋28,30は、第1~第4主筋列R1の第2及び第3主筋21に当接かつ結束される。」
b 認定事項
上記a(a)には、「梁開孔補強構造2」が「上側及び下側開口補強筋25,26」を備えることが、a(b)には、「上側及び下側開口補強筋25,26は実質的に上下対称に形成されて」いることが、a(c)には、「上側開口補強筋25’は、梁1の背面側に向かって開口するように略U字形状に形成された正面側部材51と、梁1の正面側に向かって開口するように略U字形状に形成された背面側部材52とを有する」ことが記載されていることを総合すると、甲5には、「梁開孔補強構造2」における「上側」「開口補強筋」として、「梁1の背面側に向かって開口するように略U字形状に形成された正面側部材51と、梁1の正面側に向かって開口するように略U字形状に形成された背面側部材52とを有する」ものである「上側開口補強筋25’」を採用し、かつ、「梁1の背面側に向かって開口するように略U字形状に形成された正面側部材51と、梁1の正面側に向かって開口するように略U字形状に形成された背面側部材52とを有する」ものであって、「上側開口補強筋25’」に対して「実質的に上下対称に形成され」た「下側開口補強筋」「26」が記載されていると解することができるから、甲5には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「認定事項4」という。)。
「梁開孔補強構造2において、梁1の背面側に向かって開口するように略U字形状に形成された正面側部材51と、梁1の正面側に向かって開口するように略U字形状に形成された背面側部材52とを有する上側開口補強筋25’と、当該上側開口補強筋25’に対して実質的に上下対称に形成された下側開口補強筋26を有すること。」
c 甲5に記載の技術事項
上記a及びbからみて、甲5には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「甲5に記載の技術事項」という。)。
「梁1は、幅方向に貫通する開孔1aを有し(【0017】)、
梁開孔補強構造2は、開孔1aの周辺に位置する開孔周辺部1bを補強するようになっており(【0017】)、上側及び下側開口補強筋25,26とを備え(【0018】)、
上側開口補強筋25は、第1及び第2主筋列R1,R2の主筋21と、上側水平補強筋23の中央部23aとを囲んでおり、かつ各下側開口補強筋26は、第3及び第4主筋列R3,R4の主筋21と、下側水平補強筋24の中央部24aとを囲んでおり(【0045】)、
上側及び下側開口補強筋25,26は実質的に上下対称に形成されており(【0048】)、
上側開口補強筋25’は、梁1の背面側に向かって開口するように略U字形状に形成された正面側部材51と、梁1の正面側に向かって開口するように略U字形状に形成された背面側部材52と、上側開口補強筋25’に対して実質的に上下対称に形成された下側開口補強筋26を有し(【0054】、認定事項4)、
梁開孔補強構造2として、3つの左外側孔際補強筋27と、3つの右外側孔際補強筋29と、3つの左内側孔際補強筋28と、3つの右内側孔際補強筋30とを有し(【0059】)、
3つの左外側孔際補強筋27は互いに幅方向に間隔を空けて配置され、かつ3つの左内側孔際補強筋28は互いに幅方向に間隔を空けて配置され、3つの右外側孔際補強筋29は互いに幅方向に間隔を空けて配置され、かつ3つの右内側孔際補強筋30は互いに幅方向に間隔を空けて配置され(【0060】)、
上側開口補強筋25’は、第1主筋列R1の少なくとも一部の主筋21と、第2主筋列R2の第1及び第4主筋21とに当接かつ結束されること(【0077】)。」
ウ 対比・判断
(ア)本件特許発明2について
a 対比
(a)甲2発明の「鉄筋コンクリート造の柱梁架構10」は、本件特許発明2の「鉄筋コンクリート造の柱梁架構」に相当し、甲2発明の「柱100」、「梁200」は、本件特許発明2の「鉄筋コンクリート造の柱」、「柱に接合された鉄筋コンクリート造の梁」に相当する。
(b)甲2発明の「梁主筋210」は、「柱梁仕口部150を通る通し配筋となって」いるものであるから、本件特許発明2の「柱の柱梁接合部を貫通して」「梁端部に設置される第1梁主筋柱」と、「梁の梁中央部に設けられる第2梁主筋」と、で構成される「梁の梁主筋」に相当する。
(c)甲2発明の「補強筋220」は、「梁主筋210と同様に梁長方向(X方向)に沿って配筋され」るものであって、「柱100との接合端部250と柱梁仕口部150とに跨って」配筋されるものであるから、本件特許発明2の「柱の柱梁接合部を貫通して」「梁端部に設置される第1梁主筋」に相当する。
また、甲2発明の「補強筋220」は、「側面視で横T字形状となる柱梁接合部分に」配筋され、「その両端部には、定着板222が設けられている」ものでもあるから、本件特許発明2の「柱梁接合部に定着されて梁端部に設置される第1梁主筋」にも相当する。
(d)甲2発明において、「補強筋220は、上下の梁主筋210の間に上下二段で配筋され」ているものであって、「上」の「梁主筋210」の「下」に「上」「段」の「補強筋220」が、「下」の「梁主筋210」の「上」に「下」「段」の「補強筋220」が配筋されていると解することができるから、上記(b)及び(c)で示した事項も踏まえると、甲2発明の「梁主筋210」は本件特許発明2の「梁の上下端側に配置される一段目主筋」に相当し、「補強筋220」は「梁の内部側に配置される二段目主筋」に相当する。
また、甲2発明の「せん断補強筋202、204」は、「外側のせん断補強筋202」が、「梁主筋210を囲むように設けられる」とともに、「内側のせん断補強筋204」が、「梁成方向中央付近の梁主筋210のみを囲むように設けられて」おり、「補強筋220は、上下の梁主筋210の間に上下二段で配筋され、それぞれ梁幅方向に間隔をあけて並んで配筋されて」いることから、「外側のせん断補強筋202」が「補強筋220」(本件特許発明2の「梁の内部側に配置される二段目主筋」に相当)を囲むように設けられ、「内側のせん断補強筋204」が、梁成方向中央付近の「補強筋220」(本件特許発明2の「梁の内部側に配置される二段目主筋」に相当)のみを囲むように設けられ、かつ、いずれも「略方形のループ状に形成され」ているから、「全ての」ではないものの、本件特許発明2の「梁の上下端側に配置される」「一段目主筋と、」「梁の内部側に配置される」「二段目主筋と、を囲むように配置される閉鎖型のせん断補強筋」である点で共通する。
さらに、甲2発明の「せん断補強筋202、204」は、「互いに接するように組をなして配筋されている」ものであるから、本件特許発明2の「閉鎖型のせん断補強筋を複数本束ねた束ね筋」に相当し、甲2発明において「せん断補強筋202、204」の組が、「柱100の左右の接合端部250において、長手方向にそれぞれ5つずつ」配筋されていることは、本件特許発明2の「閉鎖型のせん断補強筋を複数本束ねた束ね筋が複数設けられ」ることに相当する。
(e)甲2発明の「梁200の柱100との接合端部250」は、本件特許発明2の「梁端部」に相当し、甲2発明の「Y方向」すなわち梁幅方向に形成された「貫通孔20」は、本件特許発明2の「梁を梁幅方向に貫通する貫通孔」に相当する。
(f)甲2発明の「定着板222」は、本件特許発明2の「定着部材」に相当し、上記(c)を踏まえると、甲2発明の「定着板222」が「各補強筋220の両端部に」設けられることは、本件特許発明2の「二段目主筋の少なくとも一部の先端には、定着部材が設けられ」ることに相当する。
(g)上記(d)を踏まえると、甲2発明の「せん断補強筋202、204の組」は、本件特許発明2の「束ね筋」に相当し、甲2発明において、「せん断補強筋202、204の組のうち、1の組」と「当該1の組に対して柱100側に隣接するせん断補強筋202、204の組」とは、本件特許発明2の「複数の束ね筋」に相当する。
また、甲2発明の「せん断補強筋202、204の組のうち、1の組が補強筋220の定着板22よりも柱100側に配筋され、当該1の組に対して柱100側に隣接するせん断補強筋202、204の組よりも、貫通孔20が柱100側に設けられている」ことは、本件特許発明2の「複数の束ね筋は、」「貫通孔と」「定着部材との間に配置され」ることに相当する。
(h)甲2発明の「幅広の補助筋230」は、「梁幅方向(Y方向)に沿って配筋され、梁幅方向両外側の梁主筋210の外側からそれぞれ中心側(Z方向)に屈曲し、屈曲した先端部には梁幅方向両外側の補強筋220を保持するフック部231が形成されて」いるものであり、甲2発明の「幅狭の補助筋232」は、「梁幅方向(Y方向)に沿って配筋され、中央付近の二本の梁主筋210の外側からそれぞれ中心側(Z方向)に屈曲し、屈曲した先端部には中央付近の二本の補強筋220を保持するフック部233が形成されて」いるものであるから、当該「幅広の補助筋230」は、「梁幅方向両外側の梁主筋210」と「梁幅方向両外側の補強筋220」に対して、それぞれ「外側」に位置し、当該「幅狭の補助筋232」は、「中央付近の二本の梁主筋210」と「中央付近の二本の補強筋220」に対して、それぞれ「外側」に位置すると解することができるものである。
そうすると、上記(b)及び(c)も踏まえると、甲2発明の「幅広の補強筋230」及び「幅狭の補助筋232」のうち、「貫通孔20の上」にあるものは、本件特許発明2の「梁の上側の一段目主筋および二段目主筋を囲む上側拘束筋」に相当し、甲2発明の「幅広の補強筋230」及び「幅狭の補助筋232」のうち、「貫通孔20の」「下」にあるものは、本件特許発明2の「梁の下側の一段目主筋および二段目主筋を囲む下側拘束筋」に相当する。
また、甲2発明の「柱100との接合端部」、「貫通孔20の上下」は、それぞれ本願発明2の「梁の梁端部」、「貫通孔の上下」に相当する。
以上のことからみて、本件特許発明2と甲2発明とは、「梁の梁端部のうち」「貫通孔の上下には、」「梁の上側の一段目主筋および二段目主筋を囲む上側拘束筋と、」「梁の下側の一段目主筋および二段目主筋を囲む下側拘束筋と、が設けられる」点において一致する。
(i)甲2発明の「鉄筋コンクリート造の柱梁架構10」は、本件特許発明2の「柱梁架構」に相当する。
上記(a)~(i)からみて、本件特許発明2と甲2発明とは以下の点で一致し、以下の相違点で相違する。
(一致点)
鉄筋コンクリート造の柱と、前記柱に接合された鉄筋コンクリート造の梁と、を備える鉄筋コンクリート造の柱梁架構であって、
前記梁の梁主筋は、前記柱の柱梁接合部を貫通してまたは前記柱梁接合部に定着されて梁端部に設置される第1梁主筋と、前記梁の梁中央部に設けられる第2梁主筋と、で構成され、
前記第1梁主筋には、前記梁の上下端側に配置される一段目主筋と、前記梁の内部側に配置される二段目主筋と、を囲むように配置される閉鎖型のせん断補強筋を複数本束ねた束ね筋が複数設けられ、
前記梁の梁端部には、前記梁を梁幅方向に貫通する貫通孔が設けられ、
前記二段目主筋の少なくとも一部の先端には、定着部材が設けられ、
前記複数の束ね筋は、前記貫通孔と前記定着部材との間に配置され、
前記梁の梁端部のうち前記貫通孔の上下には、前記梁の上側の一段目主筋および二段目主筋を囲む上側拘束筋と、前記梁の下側の一段目主筋および二段目主筋を囲む下側拘束筋と、が設けられる
柱梁架構。
(相違点1)
「閉鎖型のせん断補強筋を複数本束ねた束ね筋」に関して、
本件特許発明2では、「前記梁の上下端側に配置される全ての一段目主筋と、前記梁の内部側に配置される全ての二段目主筋と、を囲むように配置される」のに対して、
甲2発明では、「せん断補強筋202、204」は、「外側のせん断補強筋202」が、「梁主筋210を囲むように設けられる」とともに、「内側のせん断補強筋204」が、「梁成方向中央付近の梁主筋210のみを囲むように設けられて」おり、全ての梁主筋210を囲むように配置されていない点。
b 判断
(a)相違点1について
上記相違点1について検討する。
甲5記載の技術事項では、「幅方向に貫通する開孔1aを有し」た「梁1」の「梁開孔補強構造2」として「開孔1aの周辺に位置する開孔周辺部1bを補強する」ため「3つの左外側孔際補強筋27と、3つの右外側孔際補強筋29と、3つの左内側孔際補強筋28と、3つの右内側孔際補強筋30とを有し、3つの左外側孔際補強筋27は互いに幅方向に間隔を空けて配置され、かつ3つの左内側孔際補強筋28は互いに幅方向に間隔を空けて配置され、3つの右外側孔際補強筋29は互いに幅方向に間隔を空けて配置され、かつ3つの右内側孔際補強筋30は互いに幅方向に間隔を空けて配置され」ることは開示されているが、全ての梁主筋210を囲むような1本のせん断補強筋を複数本束ねた束ね筋とすることは開示されておらず、その示唆もない。そして、甲1、甲3及び甲4も同様である。
そして、甲2発明では、せん断補強筋として、外側のせん断補強筋202と内側のせん断補強筋204によって、梁主筋210を囲んでおり、それを全ての梁主筋210を囲むような1本のせん断補強筋とする動機付けはないし、甲2にそのような記載も示唆もなく、甲1、甲3及び甲4にも上記の動機付けにつながる記載も示唆もない。そうすると、甲2発明に他の甲号証の記載事項を適用しても、相違点1に係る本件特許発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
また、せん断補強筋を全ての梁主筋210を囲むように配置することが、当業者における単なる設計事項であるともいえない。
そして、上記のとおりであるので、相違点1は、実質的な相違点であることは明らかである。
(b)そして、本件特許発明2によれば、梁の曲げ降伏ヒンジ位置が従来よりも梁中央部側に移動し(ヒンジリロケーション)、曲げ降伏ヒンジ位置近傍のひび割れが柱梁接合部まで達するのを抑制して、柱梁接合部の破壊を防止し、柱梁接合部の耐震性能を十分に確保することを前提として、梁端部が非ヒンジ領域となって、この非ヒンジ領域である梁端部に貫通孔を設け、貫通孔とカットオフ筋の先端に設けた定着部材との間に束ね筋を複数配置し、貫通孔の近傍に束ね筋を設けることにより、貫通孔の際から伸展するひび割れを防止でき、また、定着部材の近傍に束ね筋を設けることにより、梁のせん断伝達機構におけるトラス機構のコンクリート圧縮力により、定着部材の近傍には大きな圧縮力が集中するため、この圧縮力に対して、束ね筋が負担する引張力によって抵抗することが可能となり、この束ね筋の引張力によって、梁中央部側から伝達される圧縮力(せん断力)が貫通孔の上側または下側に伝達されるので、貫通孔周辺の圧縮力すなわち貫通孔をせん断破壊させる力の流れを緩和でき、鉄筋コンクリート躯体の損傷が軽減されるという格別の効果を奏する(【0009】)。
c 申立人の主張について
申立人は令和7年5月22日提出の意見書において、
「仮に訂正が認められるとするならば、次の点が相違点となる。
相違点:全ての主筋を囲むように配置されるせん断補強筋の構成が、
本件特許発明1では、束ね筋であるのに対し、
甲2発明では、単一の鉄筋である点
相違点について検討するに、束ね筋は、鉄筋としては、等価の断面積を有する1本の太い鉄筋とみなすことができるところ、鉄筋が負担する引張力の大きさは、強度計算により求まり、必要とされる引張力を実現するために具体的に適用するせん断補強筋の構成を、単一の鉄筋とするか、複数本束ねる束ね筋とするかは、設計的事項の採用に過ぎない。相違点に係る構成の採用は、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないからである。
仮に、設計的事項ではないとしても、せん断補強筋を複数本束ねたものは周知技術であるから(甲3、甲4)、従来周知の技術事項を甲2発明に適用することは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。」と主張する(2頁21行~3頁4行)。
しかしながら、上記bで検討したとおり、甲2発明では、せん断補強筋として、外側のせん断補強筋202と内側のせん断補強筋204によって、梁主筋210を囲んでおり、それを全ての梁主筋210を囲むような1本のせん断補強筋とする動機付けはないし、甲2にそのような記載も示唆もない。
また、せん断補強筋を全ての梁主筋210を囲むように配置することが、当業者における単なる設計事項であるともいえない。
したがって、上記申立人の主張は妥当ではなく採用できない。
d 小括
よって、本件特許発明2は、甲第2号証に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
また、本件特許発明2は、甲2発明から当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に該当しない。
(イ)本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明2の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記2と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)取消理由通知に記載した取消理由のまとめ
以上のことから、本件特許発明2は、甲2発明ではなく、また、本件特許発明2及び本件特許発明3は、甲2発明及び甲3~甲5記載の技術事項から当業者が容易に発明できたものではない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
申立人が、申立書において主張する、取消理由通知において採用しなかった請求項1についての特許法第29条第2項に関する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
・本件特許発明1は、甲1の記載から容易想到である。そうでないとしても、本件特許発明1は、甲1の記載及び周知技術(甲3、甲4)から容易想到である。
2 甲各号証の記載
甲1、甲3及び甲4の記載は、上記第4(2)イの(ア)、(ウ)及び(エ)のとおりである。
3 本件特許発明1について
(1)対比
(ア)甲1発明の「鉛直方向に配筋された複数の柱主筋14Aと、柱主筋14Aに巻掛けられた複数のせん断補強筋と、を有しているプレキャストコンクリートで構成された四角柱である上部柱14」及び「下部柱12」は、本件特許発明1の「鉄筋コンクリート造の柱」に相当し、甲1発明の「水平方向に配筋され、梁16の上部及び下部にそれぞれ鉛直方向に間隔をあけて並設された複数の梁主筋16Aと、上下の梁主筋16Aに巻掛けられ、梁主筋16Aの長手方向(水平方向)に互いに間隔をあけて配置された複数のせん断補強筋36と、水平方向に配筋され、梁16の上部及び下部にそれぞれ鉛直方向に間隔をあけて並設された複数の梁主筋16Aと、上下の梁主筋16Aに巻掛けられ、梁主筋16Aの長手方向(水平方向)に互いに間隔をあけて配置された複数のせん断補強筋36と、を有」する「梁16」、「柱梁の接合構造10」は、それぞれ本件特許発明1の「鉄筋コンクリート造の柱」、「柱に接合された鉄筋コンクリート造の梁」、「柱梁架構」に相当する。
(イ)甲1発明の「複数の補強筋30」及び「接合鉄筋18A」は、本件特許発明1の「第1梁主筋」に相当し、甲1発明の「梁主筋16A」は、本件特許発明1の「第2梁主筋」に相当することから、甲1発明の「複数の補強筋30」、「接合鉄筋18A」及び「梁主筋16A」は、本件特許発明1の「梁主筋」に相当する。
(ウ)甲1発明の「複数の補強筋30」、「接合鉄筋18A」、「複数のせん断補強筋36」を「有」することは、それぞれ本件特許発明1の「一段目主筋」、「二段目主筋」、「閉鎖型のせん断補強筋」「が複数設けられ」ることに相当する。
(エ)甲1発明の「機械式継手28」は、本件特許発明1の「機械式継手」に相当し、本件特許発明1と甲1発明は、「前記梁主筋には、機械式継手が設けられ」る点で共通する。
上記(ア)~(エ)からみて、本件特許発明1と甲1発明とは以下の点で一致し、以下の相違点で相違する。
(一致点)
鉄筋コンクリート造の柱と、前記柱に接合された鉄筋コンクリート造の梁と、を備える鉄筋コンクリート造の柱梁架構であって、
前記梁の梁主筋は、前記柱の柱梁接合部を貫通してまたは前記柱梁接合部に定着されて梁端部に設置される第1梁主筋と、前記梁の梁中央部に設けられる第2梁主筋と、で構成され、
前記第1梁主筋には、前記梁の上下端側に配置される一段目主筋と、前記梁の内部側に配置される二段目主筋と、を囲むように配置される閉鎖型のせん断補強筋が複数設けられ、
前記梁主筋には、機械式継手が設けられる
柱梁架構。
(相違点2)
「閉鎖型のせん断補強筋」に関して、
本件特許発明1では、「閉鎖型のせん断補強筋を複数本束ねた束ね筋が複数設けられ」ているのに対して、
甲1発明では、せん断補強筋36を複数束ねていない点。
(相違点3)
「機械式継手」に関して、
本件特許発明1では、「前記二段目主筋の少なくとも一部の梁中央部側に」設けられているのに対して、
甲1発明では、接合鉄筋18Aの端部と、梁主筋16Aの端部とをそれぞれ接続する複数の機械式継手28が埋設されている点。
(相違点4)
本件特許発明1では、「前記複数の束ね筋のうちの1つは、前記機械式継手の長さ方向端部に設けられ、前記複数の束ね筋のうちの別の1つは、前記機械式継手の長さ方向中間部に設けられる」のに対して、
甲1発明では、そもそもせん断補強筋36が複数束ねられていない点。
(2)判断
ア 相違点3について
事案に鑑み上記相違点3について検討する。
甲1記載の技術事項では、梁の内部側に配置される仕口側補強筋に接合する機械式継手を有しているものの、甲1発明は、鉛直方向に配筋された複数の柱主筋14Aと、柱主筋14Aに巻掛けられた複数のせん断補強筋と、を有しているプレキャストコンクリートで構成された四角柱である上部柱14及び下部柱12と、柱梁仕口部18との接合端部22である長手方向の端部が現場打ちコンクリートで構成され、長手方向の中央部を構成する梁部材24がプレキャストコンクリートで構成されている梁16とを備える柱梁の接合構造10であって、甲1記載の技術事項は、プレキャストコンクリートで構成された四角柱である上部柱14、柱梁仕口部18、プレキャストコンクリートで構成された四角柱である下部柱12と、梁66の接合端部62は梁66の長手方向の中央部を構成する梁部材64とプレキャストコンクリートによって一体的に構成される柱梁の接合構造60であり、その構造が大きく異なるものであるから、両者を組み合わせる動機付けがなく、また甲1には、両者を組み合わせる形式的な記載がある程度で実質的な記載も示唆もなく、「複数のせん断補強筋36」は、甲1の【0036】の記載から、柱梁仕口部18との接合端部22である長手方向の端部が現場打ちコンクリートで構成されることが前提となっているといえ、プレキャストコンクリートは想定しているとはいえない。また、他の甲号証の記載を検討しても、当業者が容易になし得たことであるということはできない。
仮に、甲1発明に甲1記載の技術事項を組み合わせることができたとしても、甲1発明のどの位置に機械式継手を適用するかの記載も示唆もないため、本件特許発明1では、二段目主筋の少なくとも一部を、梁端部のみに配置するカットオフ筋とし、このカットオフ筋の先端に定着部材を設けることによって、梁端部に設けられる第1梁主筋の本数が、梁中央部に設けられる第2梁主筋の本数よりも多くなるから、梁の曲げ降伏ヒンジ位置が従来よりも梁中央部側に移動する(ヒンジリロケーション)。よって、曲げ降伏ヒンジ位置近傍のひび割れが柱梁接合部まで達するのを抑制して、柱梁接合部の破壊を防止し、柱梁接合部の耐震性能を十分に確保できるという格別の効果を奏する(【0009】)。
(3)申立人の主張について
申立人は申立書において、
「(3)本件特許発明と証拠に記載された発明との対比
ア 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
・・・
そして、 以下の点で相違する。
相違点1:せん断補強筋の構成が、
本件特許発明1では、複数本束ねる束ね筋であるのに対し、
甲1発明では、そのような記載が無い点
相違点2:機械式継手の設置位置が
本件特許発明1では、梁の内部側に配置する主筋に対してであるのに対し、
甲1発明では、梁の上下端に配置する主筋に接合する点
・・・
相違点2について検討するに、甲第1号証には、機械式継手の設置位置を、甲1発明が有する梁の上下端に配置する主筋に接合する機械式継手に加えて、梁の内部側に配置される仕口側補強筋に接合する機械式継手を有すること(甲1記載事項)が記載されている。甲1発明と甲1記載事項とは同じ特許文献に記載されていること、「第1~第4実施形態の構成は 適宜組み合わせることが可能である。」(甲第1号証【0092】)との引用発明中の示唆により、組合わせの動機付けも優に認められる。」(28頁7行~29頁16行)
しかしながら、上記(2)で説示したとおり、甲1には、両者を組み合わせる形式的な記載がある程度で実質的な記載も示唆もなく、仮に、甲1発明に甲1記載の技術事項を組み合わせることができたとしても、甲1発明のどの位置に機械式継手を適用するかの記載も示唆もないことから、上記申立人の主張は妥当ではなく採用できない。
(4)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、甲1記載の技術事項及び他の甲号証から当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に該当しない。
4 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由のまとめ
以上のことから、本件特許発明1は、甲1発明、甲1記載の技術事項及び他の甲号証から当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に該当しない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701026