特許異議申立
2025-700223
建物の内装工事の施工方法
- 審判番号
- 2025-700223
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-188162
- 登録番号
- 7543091
- 請求日
- 2025年02月25日
- 審決日
- 2025年05月13日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社奥村組
- 【権利者代理人】絹谷 晴久
- 【権利者代理人】柱山 啓之
- 【異議申立人】▲高▼尾 亜希子
- 審判長/審判官
- 審判長 渋谷 知子
- 審判官 蔵野 いづみ
- 審判官 酒井 保
- 分類
- P1651.113-Y (E04B) / P1651.121-Y (E04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7543091号発明「建物の内装工事の施工方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7543091号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7543091号(以下「本件特許」という。)の請求項1、2に係る特許についての出願は、令和2年11月11日の出願であって、令和6年8月23日に特許権の設定登録がされ、同年9月2日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1、2に係る特許に対し、令和7年2月25日に特許異議申立人高尾亜希子(当審注:「高」は、はしご高。)(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1、2の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」といい、これらを併せて「本件発明」という。)は、それぞれ特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。なお、符号A等は当審で付した。以下、符号A等が付された事項を「特定事項A」等という。
「【請求項1】
A 建物の階層に対して実施される、少なくとも天井内工事と床上工事を含む内装工事の施工方法であって、
B 人と荷の重量に耐える強度を有し、上記階層の全域にわたり、当該階層の天井から下方へ人の立位歩行が可能な間隔を隔てて配設されて天井仕上げ面を形成する複数枚の天井パネルを、該階層の該天井から複数本吊り下げられ、人と荷及び該天井パネルの重量を支持する強度を有する吊り材で吊り支持して構成され、少なくとも該天井パネル上の上記天井内工事に耐える吊り天井構造を構築する第1工程と、
C 次いで、上記天井パネル上で上記階層の全域に向けて順次進められていく上記天井内工事と、該階層の床上で当該階層の全域に向けて順次進められていく上記床上工事とを並行して行って内装工事を完了する第2工程とを含み、
D 前記第1工程で構築される前記吊り天井構造には、少なくとも一カ所に、前記天井パネルの配設が保留された人荷開口部が形成され、
E 前記第2工程では、前記天井内工事が完了した後、前記床上で、上記人荷開口部を、前記吊り材で吊り支持される前記天井パネルで封鎖する封鎖作業を行い、その後、封鎖された上記人荷開口部下で前記床上工事を行うことを特徴とする建物の内装工事の施工方法。
【請求項2】
F 前記建物は、天井内設備を有する既設建物であり、前記第1工程で前記吊り天井構造を構築する前に、既設の天井パネル及び既設の天井内設備を撤去する準備作業を行うことを特徴とする請求項1に記載の建物の内装工事の施工方法。」
第3 特許異議申立理由及び証拠方法
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立理由を主張するとともに、証拠方法として下記2に示す各甲号証を提出している。
(1) 申立理由1(新規性欠如)
本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2) 申立理由2(進歩性欠如)
本件発明1は、甲第1号証、甲第2号証及び周知の技術事項(甲第3号証)に基づいて、本件発明2は、甲第1号証、甲第2号証、周知の技術事項(甲第3号証)及び甲第4号証に基づいて、それぞれ本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
2 証拠方法
(1) 甲第1号証:建設現場で働くための基礎知識(内装仕上工事編(非住宅))、発行日:令和元年(2019年)12月、発行元:建設産業担い手確保・育成コンソーシアム、事務局:(一財)建設業振興基金
(2) 甲第2号証:特開2013-209830号公報
(3) 甲第3号証:特開2020-107599号公報
(4) 甲第4号証:特開2014-125799号公報
以下、「甲第1号証」等を「甲1」等という。
第4 証拠について
1 甲1
(1) 記載事項
甲1には以下の記載がある。
(3頁)
「
[図:0001423544000001.jpg]
」
(4頁)
「
[図:0001423544000002.jpg]
」
(5頁)
「
[図:0001423544000003.jpg]
」
(9頁)
「
[図:0001423544000004.jpg]
」
(10頁)
「
[図:0001423544000005.jpg]
」
(13頁)
「
[図:0001423544000006.jpg]
」
(2) 認定事項
ア 3頁には、「非住宅建築における内装仕上工事概要1(当審注:「1」は丸囲みの「1」)」について記載され、一の階層における工事の様子が図示されており、その図示内容から、天井の石膏ボード張りの作業の段階では、天井内の配管が設置済みであること、壁のクロス張り及び床のタイルカーペットの作業の段階では、天井に既に石膏ボードが張られていることが見て取れる。
よって、甲1には、「非住宅建築における内装仕上工事では、一の階層において、天井の石膏ボード張りの作業の段階では、天井内の配管が設置済みであり、壁のクロス張り及び床のタイルカーペットの作業の段階では、天井に既に石膏ボードが張られている」ことが記載されていると認められる(認定事項ア)。
イ 4頁には、「非住宅建築における内装仕上工事概要2(当審注:「2」は丸囲みの「2」)」について記載され、4頁左上の写真から、「天井仕上げ工事施工」が行われていることが見て取れる。
よって、甲1には、「非住宅建築における内装仕上工事では、天井仕上げ工事施工が行われている」ことが記載されていると認められる(認定事項イ)。
ウ 5頁には、「非住宅建築における内装仕上工事概要3(当審注:「3」は丸囲みの「3」)」の「基本的な工事の流れ<非住宅>」について記載され、「非住宅建築における内装仕上工事」は、「壁下地墨出し」、「空調設備・電気配線」、「天井・壁下地組」、「室内建具枠の取付」、「ボード貼り」、「二重床工事」、「仕上げ」の順番に行われることが記載されている。
さらに、「空調設備・電気配線」の工程として、「天井に空調設備の設置及び配管とあわせて、照明器具等の電気配線を行」うことが記載され、「天井・壁下地組」の工程として、「天井の下地を組み」、「その後」、「壁下地を組」むことが記載され、「ボード貼り」の工程として、「石膏ボードなどをビスで天井・壁下地組に固定し」、「その後、照明器具やコンセント・スイッチの位置のボードを開口」することが記載されている。
以上のことから、甲1には、「非住宅建築における内装仕上工事は、壁下地墨出しの工程、天井に空調設備の設置及び配管とあわせて、照明器具等の電気配線を行う空調設備・電気配線の工程、天井の下地を組み、その後、壁下地を組む天井・壁下地組の工程、室内建具枠の取付の工程、石膏ボードなどをビスで天井・壁下地組に固定し、その後、照明器具やコンセント・スイッチの位置のボードを開口するボード貼りの工程、二重床工事の工程、仕上げの工程の順番に行われる内装仕上工事の方法」が記載されていると認められる(認定事項ウ)。
エ 9頁には、「軽量鉄骨天井下地材1(当審注:「1」は丸囲みの「1」)」の「1.部材の種類」について記載され、「天井下地材(例図)」の図示内容から、「天井下地材」は、「つりボルト」、「シングル野縁」、「ダブル野縁」、「野縁受け」などをそれぞれ複数本含んで構成されることが見て取れる。
よって、甲1には、「天井下地材は、つりボルト、シングル野縁、ダブル野縁、野縁受けなどをそれぞれ複数本含んで構成される」ことが記載されていると認められる(認定事項エ)。
オ 10頁には、「軽量鉄骨天井下地材2(当審注:「2」は丸囲みの「2」)」の「2.天井施工の流れ」として、「5)野縁の取付」、「6)開口部の補強」と記載されている。
また、13頁には、「軽量鉄骨天井下地材5(当審注:「5」は丸囲みの「5」)」の「3.天井下地の施工」として、「5)野縁の取付」、「6)開口部の補強」と記載されている。
これらのことから、13頁の「5)野縁の取付」、「6)開口部の補強」についての記載は、それぞれ、10頁の「5)野縁の取付」、「6)開口部の補強」に対応するものと認められる。
また、13頁の「6)開口部の補強」には、「照明器具、ダクト吹き出し口類の開口のために野縁が切断される場合は、野縁または野縁受けと同材で補強する。また、天井改め口類の人の出入りする開口部は野縁受けと同材で補強する。」と記載されていることから見て、この「開口部」は、「照明器具、ダクト吹き出し口類」、または「天井改め口類」のための「開口部」であると認められる。
以上のことから、甲1には、「天井下地の施工の工程として、照明器具、ダクト吹き出し口類、または天井改め口類のための開口部の補強の工程を備えている」ことが記載されていると認められる(認定事項オ)。
(3) 甲1に記載された発明
上記(1)及び(2)から、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「非住宅建築における内装仕上工事では、天井仕上げ工事施工が行われ、一の階層において、天井の石膏ボード張りの作業の段階では、天井内の配管が設置済みであり、壁のクロス張り及び床のタイルカーペットの作業の段階では、天井に既に石膏ボードが張られており(認定事項ア、認定事項イ)、
非住宅建築における内装仕上工事は、壁下地墨出しの工程、天井に空調設備の設置及び配管とあわせて、照明器具等の電気配線を行う空調設備・電気配線の工程、天井の下地を組み、その後、壁下地を組む天井・壁下地組の工程、室内建具枠の取付の工程、石膏ボードなどをビスで天井・壁下地組に固定し、その後、照明器具やコンセント・スイッチの位置のボードを開口するボード貼りの工程、二重床工事の工程、仕上げの工程の順番に行われ(認定事項ウ)、
天井下地材は、つりボルト、シングル野縁、ダブル野縁、野縁受けなどをそれぞれ複数本含んで構成され(認定事項エ)、
天井下地の施工の工程として、照明器具、ダクト吹き出し口類、または天井改め口類のための開口部の補強の工程を備えている(認定事項オ)
内装仕上工事の方法(認定事項ウ)。」
2 甲2
(1) 記載事項
甲2には以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同じ。)。
「【背景技術】
【0002】
ビルや大型施設などの建物の軽量天井下地が用いられる天井構造は、構造躯体の天井面に連結された複数の吊りボルトに複数の野縁受けが吊り下げられ、この複数の野縁受けに対して交差する方向に複数の野縁が取り付けられて軽量天井下地が組まれ、この軽量天井下地の複数の野縁に天井ボードが固定される(特許文献1等参照)。吊りボルトは、一般的に、上階のスラブから9mmのボルトが約900mmピッチで吊り下げられる。この天井構造のうち、野縁と天井ボード(石膏ボード等)は人の体重を支えるだけの強度はないこのため、天井内は、不注意で野縁や天井ボードに体重を掛けてしまうと、墜落してしまう危険な高所となる。さらに、天井内にはダクトや配管、配線などが張り巡らされており、障害物が多く雑然としていている。暗く視界も限られるので、非常に作業しにくい環境である。従来、このような天井内での作業は、金属製の足場板を野縁受けに載せて敷きこみ、作業床を確保することで行われる。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、足場板の敷きこみは容易ではなく手間と時間がかかるため、ちょっとしたメンテナンス(以下、「軽メンテナンス」と呼ぶ)の際は、足場板を敷かず、吊りボルトを手で握り、巾12mmの野縁受けに足を掛け、天井内を移動するといったことも行われることがあった。また、点検等の作業を行う際も、安定した足元が確保されておらず、場合によっては人の注意力のみで墜落防止を図っている。この状況で、万がー、野縁受けから足を踏み外すと、天井を踏み抜き、天井の下まで、落下する危険性もある。大掛かりな天井内工事では、安全基準に則り足場板が敷かれ安全性が確保されているが、軽メンテナンスの際は、この基準が守られていないことが多い。軽メンテナンスにおいて、安全が確保されないケースが多いのは、既存の足場板は2~4mあり、天井内に上げるのが容易でないことや、天井内には約900mmピッチで吊りボルトが下げられているため、足場板を取り回すのが難しいことが理由に挙げられる。このため、点検や補修など短時間で終わる作業では足場板を使わず、安全対策をしないまま作業が行われているケースが少なくない。また、従来の足場板は重く長いので、天井点検口から入れ辛いことがあり、天井内の高さが低い場合や、周囲の壁の存在で、足場板を入れる向きによっては天井内に入れることが不可能な場合もある。さらに、足場板は野縁受けに対してほぼ直角の向きにしか配置できないため、天井点検口から作業スポットまでの通路を確保できない場合もある。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、吊りボルトや配管などの障害物がある天井内で、軽メンテナンス等を行う際、容易に取り回しができ、作業者が安全に移動し、安全に作業できる天井内作業用床板及び天井内の移動方法を提供することにある。」
(2) 甲2に記載された事項
上記(1)から、甲2には、以下の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲2記載事項)
「天井構造のうち、野縁と天井ボード(石膏ボード等)は人の体重を支えるだけの強度はないため、ダクトや配管、配線などが張り巡らされ、障害物が多く雑然とし、暗く視界も限られるので、非常に作業しにくい環境であり、不注意で野縁や天井ボードに体重を掛けてしまうと、墜落してしまう危険な高所である天井内での作業を、吊りボルトから吊り下げ支持された野縁受けに金属製の足場板を載せて敷きこみ、この足場板を作業床として行うこと。」
3 甲3
(1) 記載事項
甲3には以下の記載がある。
「【0105】
次に、安定した地盤の上に建築物の躯体を形成する躯体工事が行われる(ステップS3)。躯体工事としては、基礎部分や地下階を有する場合には地下階など地下の工事から始まり、地上階へと進んでいく。コンクリートの打設、柱の建込み、鉄骨の組み立てなどを行い、建築物全体の骨組みが完成する。また、外壁、屋上、各階の床等にもコンクリートが打設される。
【0106】
また、躯体工事では、後の内装工事において吊りボルトを下げるために、インサートが埋め込まれる。例えば、吊りボルトを固定するための天井インサートを、上階の床スラブ(鉄筋コンクリートの床板など)の打設時にスラブの一部として固定する。ここでは主に、土木工事を行う業者の作業員や、とび・土工・コンクリート工事を行う業者の作業員などが作業を行う。次に、建築物の外装工事が行われる(ステップS4)。外壁のタイル張りや、窓サッシ、窓ガラス、カーテンウォールなどが取り付けられる。また、塗装なども行われる。
【0107】
次に、内装工事が行われる(ステップS5)。内装工事では、天井、壁、床を作り上げる。天井を設置する天井工事では、ステップS3の躯体工事で設けられた天井インサートから吊りボルトを下げ、軽量鉄骨材を組み合わせた下地に、天井板や天井下地材などの天井面を構成する部材である天井材が取り付けられる。天井材の支持には、吊りボルトやハンガー等の吊り材及び斜め部材などが用いられ、これにより天井板の脱落といった危険防止措置が取られる。
・・・
【0110】
また、内装工事では、天井を張る前、つまり天井材による天井の形成が完了する前に、配管や空調のダクトの吊り込みをしておき、電線などを配管内に通す作業も行われる。そのため、天井裏には、電気配線やダクト、空調機器などを設置するために必要な空間が設けられる。またさらに、照明や空調が設置される場所に合わせて天井材に開口が設けられる。ここで、天井内のダクト設置や吊り材による天井材の固定といった作業は、内装工事を行う業者の作業員などが作業を行う。一方で、電気配線を設ける作業は、感電等の危険があるため、電気工事を行うことのできる専門的な作業員によって行われる。」
(2) 甲3に記載された事項
上記(1)から、甲3には、以下の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲3記載事項)
「吊りボルトを下げて軽量鉄骨下地を構築するとともに、配管や空調のダクトの吊り込みを行い、その後、天井材を張り付けること。」
4 甲4
(1) 記載事項
甲4には以下の記載がある。
「【0042】
図6は、既存建物に本発明を適用させた場合の施工段階図である。図6(a)は既存建物の天井材の撤去段階図であり、図6(b)は本発明の膜天井構造における横架材の施工段階であり、図6(c)は本発明の膜天井構造の斜視図である。
【0043】
図6(a)に示す既存建物の天井材の撤去施工手順について説明する。
STEP1では、上階の床躯体に定着された吊りボルトや補強材等の天井支持材、及び、天井支持材に取り付く野縁、天井仕上げ材等の天井材を撤去する。
【0044】
STEP2では、建物の壁躯体又は上階の床躯体に定着手段(例えば、後施工アンカー、溶接など)を取り付けた後、横架材にその定着手段を連結させて、室内側壁面間に亘って架設させる。
【0045】
STEP3では、横架材に沿って、膜材を暫定的に取付けた後、膜材の一方端部に膜材張力導入手段を配置し、その張力導入手段により膜材に張力を導入して、膜材を張設する。」
(2) 甲4に記載された事項
上記(1)から、甲4には、以下の事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲4記載事項)
「既存建物の改修工事を行う場合、新たな天井構造を設ける前に、既存の天井構造を撤去すること。」
第5 当審の判断
1 申立理由1(新規性欠如)について
(1) 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
ア 特定事項A
甲1発明の「一の階層において」、「天井内の配管が設置済み」であることは、本件発明1の「建物の階層に対して」「天井内工事」が「実施され」たことに相当し、甲1発明の「一の階層において」、「壁のクロス張り及び床のタイルカーペットの作業の段階」を有することは、本件発明1の「建物の階層に対して」「床上工事」が「実施される」ことに相当するから、甲1発明の「内装仕上工事の方法」は、本件発明1の「内装工事の施工方法」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明1の特定事項Aを備える。
イ 特定事項B
甲1発明の「天井に既に」「張られ」た「石膏ボード」は、「内装仕上工事」で「行われ」る「天井仕上げ工事施工」において施工されたものであるから、本件発明1の「天井仕上げ面を形成する」「天井パネル」に相当する。
そして、甲1発明において、「一の階層において、天井の石膏ボード張りの作業」が行われるから、甲1発明において施工される「石膏ボード」が「複数枚」あること、また、「階層の全域にわたり」、「配設され」ることは自明である。
さらに、甲1発明において、「石膏ボード」は、「つりボルト」を「含」む「天井」「下地組」に「固定」されることから、「階層の天井から下方へ」「間隔を隔てて配設され」ることも自明である。
また、甲1発明の「つりボルト」は、「複数本」備えられ、「石膏ボード」を「固定」する「天井」「下地組」を構成する部材であることから、「一の階層」を構成する天井から吊り下げられていること、及び「石膏ボード」の重量を支持することは自明である。
そうすると、甲1発明の「つりボルト」は、本件発明1の「該階層の該天井から複数本吊り下げられ」、「該天井パネルの重量を支持する強度を有」し、「複数枚の天井パネルを」、「吊り支持」する「吊り材」に相当し、甲1発明の「天井」は、本件発明1の「吊り天井構造」に相当する。
よって、本件発明1の特定事項Bと甲1発明は、「上記階層の全域にわたり、当該階層の天井から下方へ」「間隔を隔てて配設されて天井仕上げ面を形成する複数枚の天井パネルを、該階層の該天井から複数本吊り下げられ」、「該天井パネルの重量を支持する強度を有する吊り材で吊り支持して構成され」る「吊り天井構造を構築する」「工程」を備える点で共通する。
ウ 特定事項C
甲1発明の「一の階層において」行われる「壁のクロス張り及び床のタイルカーペットの作業」、及び「二重床工事の工程」は、階層の全域に向けて進められることは明らかであるから、いずれも本件発明1の「該階層の床上で当該階層の全域に向けて順次進められていく上記床上工事」に相当する。
よって、本件発明1の特定事項Cと甲1発明は、「該階層の床上で当該階層の全域に向けて順次進められていく上記床上工事」「を」「行」う「工程」を備える点で共通する。
エ 特定事項D
本件発明1の「人荷開口部」と、甲1発明の「開口部」は、開口である点で共通する。
よって、本件発明1の特定事項Dと甲1発明は、「前記」「工程で構築される前記吊り天井構造には、少なくとも一カ所に」、開口「が形成され」る点で共通する。
オ 特定事項E
上記アを踏まえると、甲1発明の「非住宅建築における」「内装仕上工事の方法」は、本件発明1の「建物の内装工事の施工方法」に相当する。
よって、本件発明1の特定事項Eと甲1発明は、「建物の内装工事の施工方法」の点で共通する。
カ 上記ア~オを踏まえると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「A 建物の階層に対して実施される、少なくとも天井内工事と床上工事を含む内装工事の施工方法であって、
B’ 上記階層の全域にわたり、当該階層の天井から下方へ間隔を隔てて配設されて天井仕上げ面を形成する複数枚の天井パネルを、該階層の該天井から複数本吊り下げられ、該天井パネルの重量を支持する強度を有する吊り材で吊り支持して構成される吊り天井構造を構築する工程と、
C’ 該階層の床上で当該階層の全域に向けて順次進められていく上記 床上工事を行う工程とを含み、
D’ 前記工程で構築される前記吊り天井構造には、少なくとも一カ所に、開口が形成される、
E’ 建物の内装工事の施工方法。」
[相違点1](特定事項B)
「第1工程」が、
本件発明1では、「人と荷の重量に耐える強度を有し、上記階層の全域にわたり、当該階層の天井から下方へ人の立位歩行が可能な間隔を隔てて配設されて天井仕上げ面を形成する複数枚の天井パネルを、該階層の該天井から複数本吊り下げられ、人と荷及び該天井パネルの重量を支持する強度を有する吊り材で吊り支持して構成され、少なくとも該天井パネル上の上記天井内工事に耐える吊り天井構造を構築する」のに対し、
甲1発明では、「つりボルト」を「複数本含んで構成され」る「天井」「下地組」に「石膏ボード」を「固定」する点、
すなわち、甲1発明の「石膏ボード」が「人と荷の重量に耐える強度を有」しているか否か、「階層の天井から下方へ人の立位歩行が可能な間隔を隔てて配設されて」いるか否か、不明であり、また、甲1発明の「つりボルト」が「人と荷及び該天井パネルの重量を支持する強度を有」しているか否か不明であり、さらに、甲1発明の「天井」「下地組」に「石膏ボード」を「固定」した天井が、「少なくとも該天井パネル上の上記天井内工事に耐える」か否か不明である点。
[相違点2](特定事項C)
「第2工程」が、
本件発明1では、第1工程に「次いで、上記天井パネル上で上記階層の全域に向けて順次進められていく上記天井内工事と、該階層の床上で当該階層の全域に向けて順次進められていく上記床上工事とを並行して行って内装工事を完了する」のに対し、
甲1発明では、「一の階層において」行われる「壁のクロス貼り及び床のタイルカーペットの作業」、及び「二重床工事の工程」を備えているが、「天井の石膏ボード張りの作業の段階では、天井内の配管が設置済みであり、壁のクロス張り及び床のタイルカーペットの作業の段階では、天井に既に石膏ボードが張られて」いる点。
[相違点3](特定事項D)
「吊り天井構造」に「形成され」る開口が、
本件発明1では、「前記天井パネルの配設が保留された人荷開口部」であるのに対し、
甲1発明では、「照明器具、ダクト吹き出し口類、または天井改め口類のための開口部」である点。
[相違点4](特定事項E)
「建物の内装工事の施工方法」において、
本件発明1では、「前記第2工程では、前記天井内工事が完了した後、前記床上で、上記人荷開口部を、前記吊り材で吊り支持される前記天井パネルで封鎖する封鎖作業を行い、その後、封鎖された上記人荷開口部下で前記床上工事を行う」のに対し、
甲1発明では、このような特定がなされていない点。
(2) 判断
事案に鑑み相違点2から検討する。
本件発明1の特定事項Cの「第2工程」は、本件発明1の特定事項Bの「第1工程」に、「次いで」、「行」われるものであり、「第1工程」において「配設」された「天井パネル上で」「天井内工事」が「進められていく」ものである。
そして、本件特許の願書に添付された明細書の【0042】等をみると、本件発明1の「天井内工事」は、「配管やダクト18の設置」を含むものである。
一方、甲1発明は、「非住宅建築における内装仕上工事」において、「天井に空調設備の設置及び配管とあわせて、照明器具等の電気配線を行う空調設備・電気配線の工程」の後に、「石膏ボードなどをビスで天井・壁下地組に固定」する「工程」が「行われ」るものであり、「一の階層において、天井の石膏ボード張りの作業の段階では、天井内の配管が設置済みであ」る。
ここで、甲1発明の「天井に空調設備の設置及び配管とあわせて、照明器具等の電気配線を行う空調設備・電気配線の工程」は、「石膏ボード」の上方である「天井内」の「工事」であることは明らかであるところ、甲1発明においては、「空調設備・電気配線の工程(本件発明1の「天井内工事」に相当。)」の後に、「石膏ボード」の「固定(本件発明1の「第1工程」である「吊り天井構造」の「構築」に含まれる「天井パネル」を「配設」する工程に相当。)」が行われることとなるから、甲1発明は、本件発明1の「第1工程」に「次いで、上記天井パネル上で上記階層の全域に向けて順次進められていく上記天井内工事」を「行」う工程を備えているとはいえない。
してみると、上記相違点2は、実質的な相違点であるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではない。
2 申立理由2(進歩性欠如)について
(1) 本件発明1
ア 対比
上記1(1)に示したとおり、本件発明1と甲1発明を対比すると、両者は、上記1(1)カに示した一致点で一致し、相違点1~4で相違する。
イ 判断
(ア) 相違点について
事案に鑑み相違点2から検討する。
甲1には、甲1発明において、「石膏ボード」の「固定」の後に、「空調設備・電気配線の工程」を行うことについて、記載も示唆もされておらず、そのようにすることについての動機が存在するとは、認められない。
また、上記相違点2に係る本件発明1の特定事項Cに係る構成について、甲2、甲3のいずれにも記載も示唆もされていない。
さらに、内装仕上げ工事の方法の分野において、当該構成が周知技術であるとも認められない。
そして、本件発明1は、当該構成を備えることにより、吊り天井構造6を構築する第1工程を行って、天井内空間Sを、階層の全域にわたって先行して形成するようにしたので、続く第2工程で、天井内工事と床上工事とを並行して行うことができるようになり、内装工事を短工期で完了することができるという顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、甲1発明及び甲2、甲3に記載された事項に基づいて、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2、甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 申立人の主張について
申立人は、上記相違点2に関し、申立書において以下の主張をしている。
「なお、「天井ボード上の天井内工事と床上の床上工事とを並行して行うこと」について、吊りボルトを下げて軽量鉄骨下地を構築するとともに、配管や空調のダクトの吊り込みを行い、その後、天井材を張り付けることは、甲第3号証に記載されており、従来周知の技術事項である。また、天井ボードが張り付けられた後、吊りボルトから吊り下げ支持された野縁受けに金属製の足場板を載せて敷きこみ、この足場板を作業床として作業を行うことは、甲第2号証に記載されている(「甲2記載事項」)。」(申立書第13頁第22行~第14頁第1行)
しかしながら、甲3記載事項は、「配管や空調のダクトの吊り込み」の後に「天井材を張り付ける」ものであるから、甲3記載事項の「配管や空調のダクトの吊り込み」は、本件発明1の特定事項Cの第1工程に「次いで、上記天井パネル上で」「進められていく上記天井内工事」に相当するものとはいえない。
甲2記載事項は、「人の体重を支えるだけの強度」を有さない「天井ボード」を用いた「天井構造」を前提として、「ダクトや配管、配線などが張り巡らされ、障害物が多く雑然とし、暗く視界も限られる」「天井内の作業を」、「金属製の足場板を」「敷きこ」んで「行う」ものであり、甲2記載事項が対象とする「天井内の作業」時には、既に「ダクトや配管、配線などが張り巡らされ」ているものである。
さらに、甲2は、その【0004】、【0005】の記載(上記「第4 2(1)」参照。)から、「軽メンテナンス」における作業を対象にするものと認められ、甲1発明の「内装仕上工事」とは異なる工程を対象とするものであるから、甲2記載事項を、甲1発明に直ちに適用する動機付けは存在せず、また、仮に甲1発明に適用したとしても、本件発明1の上記相違点2に係る構成には到達しない。
よって、上記申立人の主張は採用できない。
ウ 本件発明1についての結論
以上のことから、本件発明1は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 本件発明2
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記1と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700223