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特許異議申立

2025-700325

真空ポンプ装置

審判番号
2025-700325
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-054585
登録番号
7555870
請求日
2025年03月21日
審決日
2025年11月19日
公報発行日
2026年03月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社荏原製作所
  • 【権利者代理人】廣澤 哲也
  • 【権利者代理人】郷戸 学
  • 【権利者代理人】金沢 充博
  • 【異議申立人】プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハー
  • 【異議申立人代理人】江崎 光史
  • 【異議申立人代理人】鍛冶澤 實
  • 【異議申立人代理人】石田 大成
  • 【異議申立人代理人】高原 昭典
審判長/審判官
  • 審判長 窪田 治彦
  • 審判官 関口 哲生
  • 審判官 柿崎 拓
分類
P1651.113-YAA(F04C) / P1651.121-YAA(F04C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7555870号発明「真空ポンプ装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7555870号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。 特許第7555870号の請求項2~9に係る特許を維持する。 特許第7555870号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7555870号の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和3年3月29日の出願であって、令和6年9月13日にその特許権の設定登録がされ、令和6年9月25日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 7年 3月21日 : 特許異議申立人プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハー(以下「特許異議申立人」という。)による請求項1~9に係る特許に対する特許異議の申立て 令和 7年 5月15日 : 手続補正書(方式)(特許異議申立書及び証拠説明書の補正)の提出 令和 7年 7月16日付け: 取消理由通知書 令和 7年 9月17日 : 特許権者株式会社荏原製作所(以下「特許権者」という。)による意見書及び訂正請求書の提出 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和7年9月17日にされた訂正請求の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求めるというものである。 本件訂正請求で請求された訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2を独立形式に改め、 「ロータ室を内部に有するポンプケーシングと、 前記ロータ室内に配置されたポンプロータと、 前記ポンプロータが固定された回転軸と、 前記回転軸に連結された電動機と、 前記ロータ室の端面を形成するサイドカバーと、 前記回転軸の軸方向において、前記サイドカバーの外側に位置するハウジング構造体と、 前記サイドカバー内に配置されたヒータを備え、 前記サイドカバーは、前記ロータ室の端面を形成する内側壁部と、前記回転軸の軸方向において前記内側壁部よりも外側に位置する外側壁部と、前記内側壁部と前記外側壁部との間に位置するくびれ部を有し、 前記内側壁部、前記外側壁部、および前記くびれ部は、一体成形物であり、 前記くびれ部は、前記内側壁部および前記外側壁部の断面積よりも小さい断面積を有し、かつ前記ポンプケーシング、前記内側壁部、および前記外側壁部の外周長さよりも短い外周長さを有する、真空ポンプ装置。」に訂正する。 (3)訂正事項3 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9に「請求項1乃至8のいずれか一項に記載の真空ポンプ装置」とあるのを、「請求項2乃至8のいずれか一項に記載の真空ポンプ装置」に訂正する。 なお、本件訂正前の請求項1~9について、請求項2~9は、直接的又は間接的に請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~9は、一群の請求項を構成している。 そして、本件訂正請求は、訂正事項1~3により、本件訂正前の請求項1~9について訂正しようとするものであり、一群の請求項1~9に対して請求されている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 さらに、訂正事項1は、特許異議の申立てがされている本件訂正前の請求項1についてのものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載を、請求項1の記載を引用しないものとすることと実質的に同様であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げられる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、訂正事項2が、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 さらに、訂正事項2は、特許異議の申立てがされている本件訂正前の請求項2についてのものであり、また、前記したように、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げられる事項を目的とするものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、本件訂正前の請求項9で請求項1乃至8のいずれか一項を引用していたものを、請求項1を引用しないものとするものであって、引用する請求項の数を削減するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項3が、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 さらに、訂正事項3は、特許異議の申立てがされている本件訂正前の請求項9についてのものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 まとめ 前記のとおり、訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合し、同法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~9に係る発明(以下、請求項順に「本件特許発明1」~「本件特許発明9」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】(削除) 【請求項2】 ロータ室を内部に有するポンプケーシングと、 前記ロータ室内に配置されたポンプロータと、 前記ポンプロータが固定された回転軸と、 前記回転軸に連結された電動機と、 前記ロータ室の端面を形成するサイドカバーと、 前記回転軸の軸方向において、前記サイドカバーの外側に位置するハウジング構造体と、 前記サイドカバー内に配置されたヒータを備え、 前記サイドカバーは、前記ロータ室の端面を形成する内側壁部と、前記回転軸の軸方向において前記内側壁部よりも外側に位置する外側壁部と、前記内側壁部と前記外側壁部との間に位置するくびれ部を有し、 前記内側壁部、前記外側壁部、および前記くびれ部は、一体成形物であり、 前記くびれ部は、前記内側壁部および前記外側壁部の断面積よりも小さい断面積を有し、かつ前記ポンプケーシング、前記内側壁部、および前記外側壁部の外周長さよりも短い外周長さを有する、真空ポンプ装置。 【請求項3】 前記ヒータは、前記サイドカバーに着脱可能に取り付けられている、請求項2に記載の真空ポンプ装置。 【請求項4】 前記サイドカバーは、孔を有するヒータハウジングを有しており、 前記孔は、前記サイドカバーの外面で開口しており、 前記ヒータは前記孔内に配置されており、 前記ヒータハウジングおよび前記ヒータは、前記くびれ部の外周側に位置している、請求項3に記載の真空ポンプ装置。 【請求項5】 前記孔は直線的に延びており、前記ヒータは棒状ヒータである、請求項4に記載の真空ポンプ装置。 【請求項6】 前記ヒータを前記ヒータハウジングに着脱可能に固定する固定機構をさらに備えている、請求項4または5に記載の真空ポンプ装置。 【請求項7】 前記ヒータハウジングは前記内側壁部に接続されている、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の真空ポンプ装置。 【請求項8】 前記ヒータハウジングの少なくとも一部は、前記外側壁部から離れている、請求項7に記載の真空ポンプ装置。 【請求項9】 前記ハウジング構造体内に設けられた冷却流路と、 前記冷却流路に接続された流路弁と、 前記電動機、前記サイドカバー、および前記ハウジング構造体のうちのいずれかに取り付けられた温度センサと、 前記温度センサによって測定された温度がしきい値を上回ったときに前記流路弁を開き、前記温度が前記しきい値を下回ったときに前記流路弁を閉じる弁制御部をさらに備えている、請求項2乃至8のいずれか一項に記載の真空ポンプ装置。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当審が令和7年7月16日付けで特許権者に通知した取消理由の概略は、次のとおりである。 (1)引用文献1に記載された発明を主引用発明とした場合 ア (新規性)請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 イ (進歩性)請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)引用文献2に記載された発明を主引用発明とした場合 ア (進歩性)請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 イ (進歩性)請求項9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献2に記載された発明、引用文献3に記載された事項及び引用文献4に記載されるような周知、慣用の技術に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 引用文献1:特表2005-520988号公報(甲第4号証) 引用文献2:欧州特許出願公開第3499039号公報(甲第1号証) 引用文献3:国際公開第2020/255300号(甲第7号証) 引用文献4:特開2007-262906号公報(甲第5号証) 2 当審の判断 (1)引用文献の記載及び引用発明 ア 引用文献1 (ア)引用文献1の記載 特許異議申立人が甲第4号証として提出し、令和7年7月16日付け取消理由通知で引用した引用文献1には、以下の事項が記載されている。 a 「【0009】 図1に示した真空ポンプ1は、軸受けカバー3,4を備えた円筒状のハウジング2を有している。軸受けカバー3には駆動モータ5が続いている。モータ軸6は軸受けカバー3を貫通していて、軸受け7に支持されている。モータ軸6は回転システム8の構成要素である。この回転システム8の回転軸線は符号9で示してある。回転システム8は軸管片11によって軸受け12を介して軸受けカバー4に支持されている。」 b 「【0022】 図2に示した構成では、ポンプによって圧送されるガスが圧送室26を、ハウジング2に設けられた孔59を介して離れる。この孔59は通路34に開口している。この通路34はポンプの出口29に接続されている。押退け体18の軌道運動と螺旋状の溝30のピッチとは、圧送室26内の個々の圧送チャンバがポンプ1の運転の間に入口28から孔59にまで運動させられる(矢印61)ように選択されている。図示の構成では、押退け体18がその区分62で孔59を越えて延びている。このことは、溝30にも当てはまる。しかし、この溝30のピッチは、無関係の別のシールエレメント27′が圧送チャンバを形成するように選択されている。この圧送チャンバは、入口28と孔59との間の圧送方向と逆方向に向けられている(矢印63)。さらに、ポンプは二流式に形成されている。このポンプは2つのポンプ段を有している。両ポンプ段は各端面から孔59の方向に媒体を圧送する。押退け体の中空室20と区分62の吸込み側との間に接続部が形成される(矢印64)と、中空室20を所定の負圧に保持することが可能となる。さらに、ポンプの有効な冷却を実現することができる。回転システム8に設けられた通路システム55を介して中空室20内に流入した冷却ガスは区分62の吸込み側に到達し、圧送されるガスと一緒に孔59と出口29とを通って圧送室26から離れる。こうして、さらに、ガスがポンプの入口28から中空室20内に到達し、この中空室20内に位置する軸受け7,16,17に到達し得ることが阻止される。このことは、たとえば腐食性ガスまたはエッチングガスを圧送したい場合に望ましい。」 c 「【0031】 前述した実施例は、主として、その支承ならびにシールエレメントのための案内溝の数、ピッチおよび場所の選択に関して異なっている。念のために付言しておくと、前述した構成は、前述した実施例の各々で実現することができる。本発明によって、低い製作コストで、騒音および振動の少ないコンパクトなドライ真空ポンプを製作することが可能となる。このドライ真空ポンプは小さなポンプ出力(50m3/h未満)でも経済的である。回転する構成部材の回転数が1500~3600r.p.mの間にあれば十分である。ポンプの冷却は簡単である。なぜならば、主要な全ての構成部材が大気に接触しているからである。」 d 図1、図2として、次の事項が図示されている。 【図1】 [図:0001433092000001.jpg] 【図2】 [図:0001433092000002.jpg] e 前記dの図1によると、ハウジング2は、回転システム8を内部に有しているといえ、該回転システム8は、ハウジング2内に配置されているといえる。また、該図1によると、駆動モータ5は、モータ軸6の軸方向において、軸受けカバー3に対し、ハウジング2とは反対側である外側に配置されていることが看取できるから、軸受けカバー3の外側に位置しているといえる。さらに、該図1によると、軸受けカバー3は、ハウジング2に固定される内側壁部と、モータ軸6の軸方向において前記内側壁部よりも外側に位置し、前記駆動モータ5に固定される外側壁部と、前記内側壁部と前記外側壁部との間に位置するくびれ部を有するといえる。 (イ)引用発明1 前記(ア)a~eによると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「回転システム8を内部に有する円筒状のハウジング2と、 前記ハウジング2内に配置された回転システム8と、 前記回転システム8の構成要素であるモータ軸6と、 駆動モータ5と、 前記円筒状のハウジング2に備えられた軸受けカバー3、4を備え、 前記駆動モータ5は、前記モータ軸6の軸方向において、前記軸受けカバー3の外側に位置し、 前記軸受けカバー3は、前記ハウジング2に固定される内側壁部と、前記モータ軸6の軸方向において前記内側壁部よりも外側に位置する外側壁部と、前記内側壁部と前記外側壁部との間に位置するくびれ部を有する、真空ポンプ1。」 イ 引用文献2 (ア)引用文献2の記載 特許異議申立人が甲第1号証として提出し、令和7年7月16日付け取消理由通知で引用した引用文献2には、以下の事項が記載されている。 a 「 [図:0001433092000003.jpg] [図:0001433092000004.jpg] [図:0001433092000005.jpg] 」(当審訳:[0021]さらに、ポンプは、例えば内側の圧縮部などの少なくとも1つの熱源、モータまたはギアが例えば流体冷却部などの少なくとも1つのヒートシンクの付近に配置されているように、構成されていることが企図されている。これにより、特に効率的な放熱が保証される。 [0022]別の実施形態では、ポンプが次のように構成されている。すなわち、少なくとも1つの熱源を、熱に脆弱な少なくとも1つの領域、例えば熱に脆弱な構成部材および/またはオイル潤滑領域から離して配置するか、または熱源と熱に脆弱な領域との間に遮蔽部が配置されるように構成されている。 [0023]この遮蔽部は、例えばハウジングのくびれ部によって形成することができる。くびれ部は、生じ得る熱流を制限し、効率的な断熱を行う。同時にくびれ部は簡単に製造され、特に付加的な絶縁部を必要としない。 [0024]特に、くびれ部の領域に、アクティブな冷却部を設けることが有利である。したがって、この領域における熱の滞留を効率的に解消することができる。くびれ部は、その際、ある程度アクティブな冷却部に対する集熱箇所のように作用するので、熱はくびれ部をほとんど又は全く通過せず、アクティブな冷却部の大部分に供給される。) b 「 [図:0001433092000006.jpg] 」(当審訳:[0042]図1から3には、スクリュー式真空ポンプ10が示されている。スクリュー式真空ポンプ10は、モータ12、ギアボックス14、ハウジング16、支承部シールド18およびカバー20を有している。スクリュー式真空ポンプ10は、プロセスガスを、入口22から、下向きの、図3において看取可能な出口24へ圧送する。 [0043]モータ12に対して、モータ12のハウジングから退出するアクティブな流体冷却部が設けられている。ハウジング16の内側に設けられていて、そして図4において看取可能なスクリュー式ロータ28および30に対して同様にアクティブな流体冷却部が設けられている。このアクティブな流体冷却部は、2つの冷却管を有する。冷却管は、図1には示されていないが、その延在は、対応する、ハウジング16の溝32によって示唆されている。溝32には、冷却管が嵌め込まれる。さらに、アクティブな流体冷却部は、ギアボックス14内およびカバー20内に設けられていて、そしてここでは、それぞれ浸漬クーラ34として構成されている。浸漬クーラ34については、図5に基づいて詳細に後述する。 [0044]図1~4から分かるように、スクリュー式真空ポンプ10のハウジング16は、くびれ部36を有する。くびれ部36は出口24の領域に配置されている。) c 「 [図:0001433092000007.jpg] [図:0001433092000008.jpg] 」(当審訳:[0047]スクリュー式ロータ28は、直接、つまり連結装置が介在されることなく、モータ12によって駆動される。これに対して、スクリュー式ロータ30は、歯車43を有する同期ギア42を介して、スクリュー式ロータ28に対して所定の角度比で駆動される。 [0048]モータ12は、ハウジング44を有する。ハウジング44は、例えばアルミニウムから作られていて、ハウジング44内には、アクティブな流体冷却部に対する冷却管26が形成されている。モータ12は、巻線を含むステータ46をさらに有している。このステータ46は、スクリュー式ロータ28のシャフト端部に取り付けられたマグネットキャリア48と相俟って、電気的なモータとスクリュー式ロータ28に対するダイレクト駆動部とを形成する。スクリュー式ロータ28は、モータ12の回転子を形成する。マグネットキャリア48は、複数の永久磁石を有している。したがって、モータ12は、IPMSMとも称される、磁石が埋め込まれた永久磁石同期機を形成する。) d 「 [図:0001433092000009.jpg] 」(当審訳:[0051]くびれ部36は、とりわけスクリュー式ロータ28、30の領域においてポンプ稼働中に生成される熱に対する遮蔽部ないし熱バリアを形成する。材料断面積を小さく保ち、形状変更によって熱経路を延長することによって、そうしなければハウジング16内で伝搬するスクリュー式ロータの熱が反対側の領域に達することが阻止される。したがって、ギアボックス14内の油および支承部56が、高すぎる温度から保護される。ギアボックス14内に配置された浸漬クーラ34は、同様に、温度低下に寄与する。浸漬クーラ34は、図示されていない、ギアボックス14内の油槽内に配置されていて、したがって、油を直接冷却する。) e 「 [図:0001433092000010.jpg] 」(当審訳:[0054]スクリュー式ロータ28および30は、そのそれぞれのスクリュープロファイル38または40において、異なるピッチの3つの部分を有する。ポンピング方向に見て第一の部分62は、図4において左側で、吸引部分を形成し、一定で3つの部分のうち最大のピッチを有する。第一の部分62は、各ロータ28または30に沿って延在するスクリュー軸63に関して、第一の部分内の閉じられる圧送ボリュームよりも長い。第二の部分64は、詳細には言及されない複数の下位部分を有する。下位部分は、スクリュープロファイル38または40に異なるがそれぞれ一定のピッチを有していて、その際、ピッチは、第一の部分におけるピッチよりも小さい。第二の部分64は、ここでは最も長い部分を形成する。さらに小さいピッチを有する第三の部分66は、吐出部分を形成する。第三の部分でも同様に一定のピッチが存在する。ポンピング方向に沿って減少するピッチによって、ポンプガスを既に吐出前に圧縮する内側の圧縮部が生じる。) f 「 [図:0001433092000011.jpg] [図:0001433092000012.jpg] 」(当審訳:[0061]プロセスガスの圧縮によって、一般的に、熱が発生する。熱は、スクリュー式ポンプ10では、主に流体冷却部によって導出される。図4に、そのために設けられる溝32が看取される。流体冷却部の冷却管は、ここでは有利には長手方向に、スクリュープロファイルの別の領域にわたって、特にスクリュープロファイルの長さの少なくとも半分にわたって延在する。特に、流体冷却部は、内側の圧縮部の領域にまたはその付近に配置されている。 [0062]入口側のハウジング端部には支承部シールド18が固定されている。この支承部シールドは、特に、緩い支承を形成する支承部(自由側支承部)68を有する更なる支承装置を支持する。対向する出口側のハウジング端部に配置された、ハウジング16と一体的に形成された(しかし別個に形成することもできる)支承部シールド70とは異なり、支承部シールド68は別個の構成部材として形成されている(しかし一体的に形成することもできる)。 [0063]入口側では、噴射ディスク54、デフレクタ58および複数のプランジャリングを有するプランジャリングキャリア60が同様に設けられている。これらは、出口側のユニットに対応して作動する。入口側では、別個に構成された更なる油槽が、カバー20内に設けられている。この油槽に対しても、浸漬クーラ34が設けられている。択一的にまたは付加的に、例えば冷却管を支承部シールド14および/またはカバー20の壁内に設けることができ、例えば鋳込むことができる。) g Fig.1、Fig.4として、次の事項が図示されている。 [図:0001433092000013.jpg] [図:0001433092000014.jpg] h 前記fの段落[0062]、前記gのFig.4によると、ギアボックス14、及びモータ12のハウジング44は、スクリュー軸63の軸方向において、ハウジング16と一体的に形成された支承部シールド70の外側に位置しているといえ、該支承部シールド70は、支承部56を有するとともに、ハウジング16の外側に位置する外側壁部を有しているといえる。 (イ)引用発明2 前記(ア)a~hによると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「スクリュー式ロータ28、30が内側に設けられているハウジング16と、 前記ハウジング16の内側に設けられた前記スクリュー式ロータ28、30と、 前記スクリュー式ロータ28、30に沿って延在するスクリュー軸63と、 前記スクリュー式ロータ28を直接、駆動するモータ12と、 前記スクリュー軸63の軸方向において、前記ハウジング16と一体的に形成された支承部シールド70の外側に位置しているギアボックス14、及び前記モータ12のハウジング44を備え、 前記支承部シールド70は、支承部56を有するとともに、ハウジング16の外側に位置する外側壁部を有し、前記ハウジング16は、材料断面積を小さく保ち、前記ギアボックス14内の油、及び前記支承部56を高すぎる温度から保護する、くびれ部36を有する、スクリュー式真空ポンプ10。」 ウ 引用文献3 特許異議申立人が甲第7号証として提出し、令和7年7月16日付け取消理由通知で引用した引用文献3には、以下の事項が記載されている。 (ア)「[0001] 本発明は、ポンプ室内壁面に排出ガスに含まれる生成物等が堆積することを抑制するためのヒーターを備えた真空ポンプに関する。」 (イ)「[0004] そこで、このようなガス排出用に用いる真空ポンプでは、ヒーターによりポンプ室内壁部分を加熱して、蓄積物、固着物の発生を抑制している。従来においては、一般に、ポンプケースの両端部の外周面部分に、ジャケットヒーターを巻き付け、外側から間接的にポンプ室内壁部分を加熱している。特許文献1においては、ターボ分子ポンプにおいて、ポンプケースの一端であるポンプベースにパイプを埋設し、パイプ内にヒーターを配置し、ポンプベースを内部から加熱して、ポンプ室内におけるガスの凝固物の堆積を抑制している。」 (ウ)「[0015](全体構成) 図1(a)および(b)は、それぞれ、本実施の形態に係る真空ポンプをその回転中心線を含む直交する平面で切断した場合の概略縦断面図である。真空ポンプ1は、ポンプ室2、モータ3、およびギヤ室4を備えている。ポンプ室2を挟み、真空ポンプの軸線方向の一方の側にモータ3が配置され、他方の側にギヤ室4が配置されている。ポンプ室2は、筒状のケーシング5と、その一方の端を封鎖しているモータ側のサイドプレート6と、ケーシング5の他方の端を封鎖しているギヤ室側のサイドプレート7から構成されている。 [0016] サイドプレート6、7は、実質的に左右対称な構造をしている。サイドプレート6、7には、それらの外周面6a、7aに開口する一定幅のスリット8、9が形成されている。スリット8、9の内部には、それぞれ、同一形状の面状発熱体であるフィルムヒーター10、11が組み込まれている。フィルムヒーター10、11は、ポンプ室2の両側の端面を規定しているサイドプレート6、7のポンプ室側の端面に生成物等が付着、堆積することを抑制するための加熱手段である。フィルムヒーター10、11は、例えば、プラスチック製の絶縁素材からなるベースフィルムの表面に抵抗発熱線がプリントされ、抵抗発熱線をプラスチック製の絶縁素材からなるカバーフィルムで覆った構造をしている。各種の面状発熱体を用いることができる。」 (エ)「[0026] スリット8には、段差端面部分24bを取り囲む大きさ(中心側端面部分24a、34aを取り囲む大きさ)の長円形のループを描く一定幅のフィルムヒーター10と、当該フィルムヒーター10と同一形状のヒーター押さえ板40とが配置される。ヒーター押さえ板40は金属板等の剛性部品である。第1プレート20の外周側端面部分24cの側にフィルムヒーター10が位置し、第2プレート30の外周側端面部分34cの側にヒーター押さえ板40が位置する。フィルムヒーター10は、ヒーター押さえ板40によって、不図示の締結ボルト等の締結具を用いて、第1プレート端面24の外周側端面部分24cに面接触状態で固定される。フィルムヒーター10を取り付けた第1プレート20と、第2プレート30とが締結固定される。」 (オ)「[0029] サイドプレート6、7を複雑な構造とすることなく、その内部に、フィルムヒーター10、11を組み込み、サイドプレート6、7を内部から直接加熱することができる。フィルムヒーター10、11による加熱効率を高め、ポンプ室内壁部分を高温に維持できるので、生成物の付着、堆積を効率良く抑制できる。 [0030] また、サイドプレート6、7にはスリット8、9が形成されている。各サイドプレート6、7を構成している第1プレート20、50と第2プレート30、60との合わせ面は中心側端面部分だけである。第1、第2プレートの間の接触面積が低減され、スリット8、9によって第1、第2プレートの間に断熱構造が形成される。フィルムヒーター10、11によって直接加熱される第1プレート20、50の側から第2プレート30、60の側への伝熱量を低減でき、第2プレート30、60の側の軸受15、17等の部分が不必要に加熱されてしまうという弊害を回避できる。更に、第2プレート30、60への伝熱量を低減でき、また、第2プレート30、60での放熱量も抑制できるので、第1プレート20、50の加熱効率、高温保持が可能となる。」 エ 引用文献4 特許異議申立人が甲第5号証として提出し、令和7年7月16日付け取消理由通知で引用した引用文献4には、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 本発明は、例えば半導体製品や電子部品等の製造工程において用いられる2段式真空ポンプに関する。」 (イ)「【0023】 このブースタポンプ10は圧縮度合いが低いために、圧縮熱の発生は小さい。そのため、このブースタポンプ10には、所定温度内に維持するため、ケーシング13の外周囲を覆うように、加熱手段としてのヒータ25が設けられている。 このヒータ25は、図3に示すように、シート状の繊維部材の間にニクロム線等の発熱体25aが設けられたものである。 そして、ケーシング13の外周囲を覆うように設けられたヒータ25の外周囲を更に覆うように断熱材26が設けられ、ヒータ25からの熱が放熱されるのを抑制している。尚、吸気口11の外周面には、断熱材28のみが設けられているが、ヒータを吸気口11の外周囲に巻回しても良い。 【0024】 更に、下部端面フランジ16の底面にも、図2に示すように、前記したヒータ25と同様な、シート状の繊維部材の間にニクロム線等の発熱体が設けられたヒータ27が設けられている。このヒータ27は、図2に示すように一対のスクリューロータの軸を囲むように楕円形状に形成されている。 また、前記下部端面フランジ16に形成された吐出口12は、図2(a)に示すように、前記下部端面フランジ16の底面から突出して形成され、前記ヒータ27は前記吐出口12を覆うように装着される。 【0025】 このように、前記ブースタポンプ10の吐出口12側のポンプ室端面を覆う下部端面フランジ16に設けられたヒータ27は、ブースタポンプ10から中間配管50に至る排気経路のうち、温度が低下しやすい吐出口12に近接して配置されているため、吐出口12を効果的に加熱でき、吐出口12近傍の反応生成物の付着、堆積を確実に抑制することができる。 特に、スクリューロータの周囲を囲むように下部端面フランジ16の底面、及び吐出口12を覆うようにヒータ27が形成されているため、少ない発熱量でも、吐出口12近傍の反応生成物の付着、堆積を確実に抑制できる。」 (ウ)「【0048】 なお、上記実施形態にあっては、下部端面プレート16にシート状のヒータ27を設けた場合について説明したが、本発明はこのシート状のヒータ27に限定されるものではなく、図8に示すような棒状のシーズヒータ70を用いても良い。 このシーズヒータ70は、下部端面フランジ16の側壁に形成された孔Aに着脱自在に取り付けられ、図8(b)に示すようにシーズヒータ70の間に、スクリューロータ回転軸が位置し、かつ一つのシーズヒータ70が吐出口12に近接して配置される。また、図8において前記孔Aの開口は吐出口12に対して側面に形成した場合を示したが、前記孔Aの開口を吐出口12の形成面側あるいは吐出口12の背面側に形成しても良い。 このようなシーズヒータ70を設けた場合には、真空ポンプの外部からシーズヒータ70を着脱することができるため、ヒータのメンテナンスが容易になるという効果を得ることができる。」 (2)引用文献1に記載された発明を主引用発明とした場合 ア 本件特許発明2について (ア)対比 本件特許発明2と引用発明1とを対比すると、 a 引用発明1の「回転システム8」及び「ハウジング2」は、それぞれ本件特許発明2の「ポンプロータ」及び「ポンプケーシング」に相当する。そして、引用発明1の「回転システム8を内部に有する円筒状のハウジング2」は、その内部に回転システム8が設けられることからみて、該回転システム8をポンプロータとして機能させる空間、つまりロータ室を備えていることは明らかであるから、本件特許発明2の「ロータ室を内部に有するポンプケーシング」に相当する。同様の理由により、引用発明1の「前記ハウジング2内に配置された回転システム8」は、本件特許発明2の「前記ロータ室内に配置されたポンプロータ」に相当する。 b 引用発明1の「モータ軸6」及び「駆動モータ5」は、それぞれ本件特許発明2の「回転軸」及び「電動機」に相当する。そして、引用発明1の「前記回転システム8の構成要素であるモータ軸6」は、駆動モータ5に連結され、回転システム8とともに回転するものであることは明らかである。すると、引用発明1の「前記回転システム8の構成要素であるモータ軸6」は、本件特許発明2の「前記ポンプロータが固定された回転軸」に相当し、引用発明1の「駆動モータ5」は、本件特許発明2の「前記回転軸に連結された電動機」に相当する。 c 引用発明1の「前記円筒状のハウジング2に備えられた軸受けカバー3、4」は、引用文献1の図1(前記(1)ア(ア)d参照。)の図示内容を踏まえると、前記aに示した、回転システム8をポンプロータとして機能させる空間、つまりロータ室の端面を形成しているといえるから、本件特許発明2の「前記ロータ室の端面を形成するサイドカバー」に相当する。 d 引用発明1の「前記駆動モータ5は、前記モータ軸6の軸方向において、前記軸受けカバー3の外側に位置」することは、該駆動モータ5が、一般に、ロータ及びステータ等を外部にむき出しの状態にはせず保護するためのハウジングを備えていることを踏まえると、本件特許発明2の「前記回転軸の軸方向において、前記サイドカバーの外側に位置するハウジング構造体」を備えることに相当する。 e 引用発明1の軸受けカバー3のハウジング2に固定される内側壁部は、引用文献1の図1(前記(1)ア(ア)d参照。)の図示内容を踏まえると、ロータ室の端面を形成しているといえる。また、引用発明1の内側壁部、外側壁部及びくびれ部は、いずれも軸受けカバー3に備えられるものであるから、これらは一体成形物であるといえる。さらに、引用発明1のくびれ部は、くびれた部分であって、前記図1の図示内容によると、内側壁部及び外側壁部よりも断面積が小さく、外周長さが短いものといえる。また、該図1の図示内容より、ハウジング2の外周長さと比べても、くびれ部の外周長さは短いといえる。以上によると、引用発明1の「前記軸受けカバー3は、前記ハウジング2に固定される内側壁部と、前記モータ軸6の軸方向において前記内側壁部よりも外側に位置する外側壁部と、前記内側壁部と前記外側壁部との間に位置するくびれ部を有する」ことは、本件特許発明2の「前記サイドカバーは、前記ロータ室の端面を形成する内側壁部と、前記回転軸の軸方向において前記内側壁部よりも外側に位置する外側壁部と、前記内側壁部と前記外側壁部との間に位置するくびれ部を有し、前記内側壁部、前記外側壁部、および前記くびれ部は、一体成形物であり、前記くびれ部は、前記内側壁部および前記外側壁部の断面積よりも小さい断面積を有し、かつ前記ポンプケーシング、前記内側壁部、および前記外側壁部の外周長さよりも短い外周長さを有する」ことに相当する。 f 引用発明1の「真空ポンプ1」は、本件特許発明2の「真空ポンプ装置」に相当する。 そうすると、本件特許発明2と引用発明1とは、以下の<一致点1>で一致し、<相違点1>で相違する。 <一致点1> 「ロータ室を内部に有するポンプケーシングと、 前記ロータ室内に配置されたポンプロータと、 前記ポンプロータが固定された回転軸と、 前記回転軸に連結された電動機と、 前記ロータ室の端面を形成するサイドカバーと、 前記回転軸の軸方向において、前記サイドカバーの外側に位置するハウジング構造体を備え、 前記サイドカバーは、前記ロータ室の端面を形成する内側壁部と、前記回転軸の軸方向において前記内側壁部よりも外側に位置する外側壁部と、前記内側壁部と前記外側壁部との間に位置するくびれ部を有し、 前記内側壁部、前記外側壁部、および前記くびれ部は、一体成形物であり、 前記くびれ部は、前記内側壁部および前記外側壁部の断面積よりも小さい断面積を有し、かつ前記ポンプケーシング、前記内側壁部、および前記外側壁部の外周長さよりも短い外周長さを有する、真空ポンプ装置。」 <相違点1> 本件特許発明2は、「前記サイドカバー内に配置されたヒータ」を備えているのに対し、引用発明1は、軸受けカバー3が、該ヒータを備えていない点。 (イ)判断 以下、相違点1について検討する。 a 本件特許発明2は、前記相違点1に係る「前記サイドカバー内に配置されたヒータ」を備えることにより、「ロータ室の内部を高い温度に維持することができ」(特許明細書等の段落【0007】)、「副生成物の固体化を防止」(同段落【0003】)できるという作用効果が生じるものと解されるから、前記相違点1は実質的な相違点である。 b 次に、引用文献1の段落【0031】(前記(1)ア(ア)c参照。)には、真空ポンプ1を冷却することが示唆されており、また、引用文献1の段落【0022】(前記(1)ア(ア)b参照。)には、図1に係る引用発明1とは別の図2に示された構成に関してではあるが、真空ポンプ1の回転システム8の近傍を冷却することが示唆されている。 これら引用文献1の記載を踏まえると、引用発明1の真空ポンプ1は、冷却されることが示唆されているのみであるから、これに反して、加熱手段を設ける動機付けはないといえる。 したがって、引用文献3の段落[0001]、[0004]、[0015]、[0016]、[0026]、[0029](前記(1)ウ(ア)~(オ)参照。)等に、真空ポンプ1のサイドプレート6、7にフィルムヒーター10、11を組み込むことが記載され、引用文献4の段落【0023】~【0025】、【0048】(前記(1)エ(イ)、(ウ)参照。)等に、ブースタポンプ10の下部端面フランジ16にヒータ27を設けることが記載されているとしても、引用発明1の真空ポンプ1において、これらヒータを適用する動機付けはない。 また、引用文献2には、該ヒータについて、記載も示唆もされていない。 そうすると、引用発明1において、引用文献2に記載された事項、引用文献3に記載された事項及び引用文献4に記載された事項を考慮しても、本件特許発明2の前記相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者といえども、容易に想到し得たものではない。 この点は、引用発明1において、さらに、特許異議申立人が提出した甲第2号証に記載された事項、甲第3号証に記載された事項、甲第6号証に記載された事項及び甲第8号証に記載された事項を考慮しても、同様である。 (ウ)まとめ したがって、本件特許発明2は、引用文献1に記載されたものではない。また、本件特許発明2は、引用発明1、引用文献2に記載された事項、引用文献3に記載された事項、引用文献4に記載された事項、甲第2号証に記載された事項、甲第3号証に記載された事項、甲第6号証に記載された事項及び甲第8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明3~9について 本件特許発明3~9は、本件特許発明2の発明特定事項を全て含む発明であり、本件特許発明2の相違点1に係る発明特定事項を備えるものであるから、前記アに示した理由と同様の理由により、引用文献1に記載されたものではなく、また、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)引用文献2に記載された発明を主引用発明とした場合 ア 本件特許発明2について (ア)対比 本件特許発明2と引用発明2とを対比すると、 a 引用発明2の「スクリュー式ロータ28、30」及び「ハウジング16」は、それぞれ本件特許発明2の「ポンプロータ」及び「ポンプケーシング」に相当する。そして、引用発明2の「スクリュー式ロータ28、30が内側に設けられているハウジング16」は、その内側にスクリュー式ロータ28、30が設けられることからみて、該スクリュー式ロータ28、30をポンプロータとして機能させる空間、つまりロータ室を備えていることは明らかであるから、本件特許発明2の「ロータ室を内部に有するポンプケーシング」に相当する。同様の理由により、引用発明2の「前記ハウジング16の内側に設けられた前記スクリュー式ロータ28、30」は、本件特許発明2の「前記ロータ室内に配置されたポンプロータ」に相当する。 b 引用発明2の「スクリュー軸63」及び「モータ12」は、それぞれ本件特許発明2の「回転軸」及び「電動機」に相当する。そして、引用発明2の「前記スクリュー式ロータ28、30に沿って延在するスクリュー軸63」は、モータ12がスクリュー式ロータ28を直接、駆動する際、モータ12に連結され、スクリュー式ロータ28とともに回転するものであることは明らかである。すると、引用発明2の「前記スクリュー式ロータ28、30に沿って延在するスクリュー軸63」は、本件特許発明2の「前記ポンプロータが固定された回転軸」に相当する。同様の理由により、引用発明2の「前記スクリュー式ロータ28を直接、駆動するモータ12」は、本件特許発明2の「前記回転軸に連結された電動機」に相当する。 c 引用発明2の「ギアボックス14、及び前記モータ12のハウジング44」は、本件特許発明2の「ハウジング構造体」に相当する。そして、引用発明2の「前記スクリュー軸63の軸方向において、前記ハウジング16と一体的に形成された支承部シールド70の外側に位置しているギアボックス14、及び前記モータ12のハウジング44」と、本件特許発明2の「前記回転軸の軸方向において、前記サイドカバーの外側に位置するハウジング構造体」とは、回転軸の軸方向において、ポンプケーシングの外側に位置するハウジング構造体である点において共通する。 d 引用発明2の「くびれ部36」は、引用文献2のFig.4(前記(1)イ(ア)g参照。)の図示内容を踏まえると、前記aに示した、スクリュー式ロータ28、30をポンプロータとして機能させる空間、つまりロータ室の端面を形成する壁部分と、支承部シールド70の外側壁部との間に位置にしていることが看取でき、前記ロータ室の端面を形成する壁部分は、スクリュー軸63の軸方向において、前記支承部シールド70の外側壁部よりも、ロータ室側に位置しているから、内側壁部といえる。そして、ハウジング16と支承部シールド70とが一体的に形成されていることを踏まえると、前記内側壁部、前記外側壁部、及び前記くびれ部36は、一体成形物であるといえる。さらに、前記くびれ部36は、材料断面積を小さく保つものであるから、前記内側壁部及び前記外側壁部よりも断面積が小さく、外周長さが短いものといえる。また、引用文献2のFig.4(前記(1)イ(ア)g参照。)の図示内容より、前記内側壁部と前記ハウジング16の外周長さは同等であると解されるから、ハウジング16の外周長さと比べても、くびれ部36の外周長さは短いといえる。以上によると、引用発明2の「前記ハウジング16は、材料断面積を小さく保ち、前記ギアボックス14内の油、及び前記支承部56を高すぎる温度から保護する、くびれ部36を有する」ことは、本件特許発明2の「前記サイドカバーは、前記ロータ室の端面を形成する内側壁部と、前記回転軸の軸方向において前記内側壁部よりも外側に位置する外側壁部と、前記内側壁部と前記外側壁部との間に位置するくびれ部を有し、前記内側壁部、前記外側壁部、および前記くびれ部は、一体成形物であり、前記くびれ部は、前記内側壁部および前記外側壁部の断面積よりも小さい断面積を有し、かつ前記ポンプケーシング、前記内側壁部、および前記外側壁部の外周長さよりも短い外周長さを有する」ことと、ロータ室の端面を形成する内側壁部と、回転軸の軸方向において内側壁部よりも外側に位置する外側壁部と、前記内側壁部と前記外側壁部との間に位置するくびれ部を有し、前記内側壁部、前記外側壁部、および前記くびれ部は、一体成形物であり、前記くびれ部は、前記内側壁部および前記外側壁部の断面積よりも小さい断面積を有し、かつ前記ポンプケーシング、前記内側壁部、および前記外側壁部の外周長さよりも短い外周長さを有する点において共通する。 e 引用発明2の「スクリュー式真空ポンプ10」は、本件特許発明2の「真空ポンプ装置」に相当する。 そうすると、本件特許発明2と引用発明2とは、以下の<一致点2>で一致し、以下の<相違点2-1>、<相違点2-2>で相違する。 <一致点2> 「ロータ室を内部に有するポンプケーシングと、 前記ロータ室内に配置されたポンプロータと、 前記ポンプロータが固定された回転軸と、 前記回転軸に連結された電動機と、 前記回転軸の軸方向において、前記ポンプケーシングの外側に位置するハウジング構造体を備え、 前記ロータ室の端面を形成する内側壁部と、前記回転軸の軸方向において前記内側壁部よりも外側に位置する外側壁部と、前記内側壁部と前記外側壁部との間に位置するくびれ部を有し、 前記内側壁部、前記外側壁部、および前記くびれ部は、一体成形物であり、 前記くびれ部は、前記内側壁部および前記外側壁部の断面積よりも小さい断面積を有し、かつ前記ポンプケーシング、前記内側壁部、および前記外側壁部の外周長さよりも短い外周長さを有する、真空ポンプ装置。」 <相違点2-1> 本件特許発明2は、ポンプケーシングと「前記ロータ室の端面を形成するサイドカバー」とを備え、「前記サイドカバー」の外側にハウジング構造体が位置し、「前記サイドカバー」はくびれ部を有するのに対し、引用発明2は、「ハウジング16と一体的に形成された支承部シールド70」を備えているが、ハウジング16と前記のようなサイドカバーとを備えているか明らかでなく、そのため、サイドカバーの外側にギアボックス14、及び前記モータ12のハウジング44が位置しているとはいえず、サイドカバーがくびれ部36を有しているともいえない点。 <相違点2-2> 本件特許発明2は、「前記サイドカバー内に配置されたヒータ」を備えているのに対し、引用発明2は、該ヒータを備えているか明らかでない点。 (イ)判断 以下、事案に鑑み、相違点2-2から検討する。 a 本件特許発明2は、前記相違点2-2に係る「前記サイドカバー内に配置されたヒータ」を備えることにより、「ロータ室の内部を高い温度に維持することができ」(特許明細書等の段落【0007】)、「副生成物の固体化を防止」(同段落【0003】)できるという作用効果が生じるものと解される。 b 一方、引用文献2の段落[0043]、[0061](前記(1)イ(ア)b、f参照。)には、プロセスガスの圧縮によって発生する熱を導出するために、ハウジング16の溝32に冷却管を嵌め込むことが記載され、段落[0024](前記(1)イ(ア)a参照。)には、くびれ部の領域に、熱の滞留を解消するためにアクティブな冷却部を設けることが有利であることが記載されている。また、引用文献2の段落[0048](前記(1)イ(ア)c参照。)には、モータ12のハウジング44内に冷却管26を形成することが記載されている。 これら引用文献2の記載を踏まえると、引用発明2のスクリュー式真空ポンプ10は、冷却されることが示唆されているのみであるから、これに反して、加熱手段を設ける動機付けはないといえる。 したがって、引用文献3の段落[0001]、[0004]、[0015]、[0016]、[0026]、[0029](前記(1)ウ(ア)~(オ)参照。)等に、真空ポンプ1のサイドプレート6、7にフィルムヒーター10、11を組み込むことが記載され、引用文献4の段落【0023】~【0025】、【0048】(前記(1)エ(イ)、(ウ)参照。)等に、ブースタポンプ10の下部端面フランジ16にヒータ27を設けることが記載されているとしても、引用発明2のスクリュー式真空ポンプ10において、これらヒータを適用する動機付けはない。 また、引用文献1には、該ヒータについて、記載も示唆もされていない。 c そうすると、引用発明2において、引用文献1に記載された事項、引用文献3に記載された事項及び引用文献4に記載された事項を考慮しても、本件特許発明2の前記相違点2-2に係る発明特定事項とすることは、当業者といえども、容易に想到し得たものではない。 この点は、引用発明2において、さらに、特許異議申立人が提出した甲第2号証に記載された事項、甲第3号証に記載された事項、甲第6号証に記載された事項及び甲第8号証に記載された事項を考慮しても、同様である。 (ウ)まとめ したがって、本件特許発明2は、相違点2-1について検討するまでもなく、引用発明2、引用文献1に記載された事項、引用文献3に記載された事項、引用文献4に記載された事項、甲第2号証に記載された事項、甲第3号証に記載された事項、甲第6号証に記載された事項及び甲第8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明3~9について 本件特許発明3~9は、本件特許発明2の発明特定事項を全て含む発明であり、本件特許発明2の相違点2-2に係る発明特定事項を備えるものであるから、前記アに示した理由と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 甲第3号証に記載された発明を主引用発明とした場合 (1)特許異議申立人は、令和7年5月15日に補正した特許異議申立書の「4 申立ての理由」「(4)具体的な説明」「カ 甲第3号証の説明(理由1)」において、「(a)甲第3号証の第1図には、気体用回転ポンプにおいて、モータ室38とポンプ室37との間のベアリングホルダ30がL字状に形成されることによって、くびれ部が設けられており、ベアリングホルダ30とポンプ室の側板31とが一体成形物であることが示されている。 第1図から、くびれ部は、ポンプ室およびモータ室のケーシング33、34の断面積よりも小さい断面積を有し、かつケーシングの外周長よりも短い外周長を有することが見てとれる。(b)よって本件発明1は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。」と主張しているから、以下、甲第3号証に記載された発明を主引用発明とした場合について検討する。 (2)甲第3号証の明細書第1ページ第19行~第2ページ第1行の記載等によると、甲第3号証に記載された発明は、原子力発電所内の空気循環等に使用する密閉型の気体用回転ポンプに関するものであり、甲第3号証には、真空ポンプ装置に関する記載や、ヒータに関する記載はない。すると、本件特許発明2と、甲第3号証に記載された発明とは、少なくとも、 本件特許発明2は、「前記サイドカバー内に配置されたヒータ」を備えた「真空ポンプ装置」であるのに対し、甲第3号証に記載された発明は、ヒータを備えているとはいえず、また、真空ポンプ装置といえない点。 で相違する。したがって、本件特許発明2は、甲第3号証に記載されたものではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。本件特許発明3~9についても同様である。 (3)さらに、この相違点について検討しても、甲第3号証に記載された発明は、前記したように、原子力発電所内の空気循環等に使用する密閉型の気体用回転ポンプに関するものであり、真空ポンプ装置に関するものではないから、真空ポンプ装置のロータ室内の温度が低いと、副生成物がロータ室内で固体化するという課題は生じない。そうすると、甲第3号証に記載された発明において、該副生成物がロータ室内で固体化することを防止するべく、ベアリングホルダ30(サイドカバー)内などにヒータを配置する動機付けはない。したがって、本件特許発明2は、甲第3号証に記載された発明等に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。本件特許発明3~9についても同様である。 2 引用文献4(甲第5号証)に記載された発明を主引用発明とした場合 (1)特許異議申立人は、令和7年5月15日に補正した特許異議申立書の「4 申立ての理由」「(4)具体的な説明」「ク 本件発明2と甲第5号証を対比する(理由1)」において、「(a)甲第5号証には、「2段式真空ポンプにおいて、ポンプ室端面を覆う端面フランジ16にヒータ27が設けられている」点が記載されている[0025]。(b)上記エ、オ、カ、キに示すように本件発明1は、新規性、進歩性を有しない。本件発明2は、甲第5号証に開示されているから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。」と主張しているから、以下、引用文献4(甲第5号証)に記載された発明を主引用発明とした場合について検討する。 (2)本件特許発明2と引用文献4に記載された発明とを対比すると、両者は、少なくとも、 本件特許発明2は、「前記サイドカバーは、前記ロータ室の端面を形成する内側壁部と、前記回転軸の軸方向において前記内側壁部よりも外側に位置する外側壁部と、前記内側壁部と前記外側壁部との間に位置するくびれ部を有し、前記内側壁部、前記外側壁部、および前記くびれ部は、一体成形物であり、前記くびれ部は、前記内側壁部および前記外側壁部の断面積よりも小さい断面積を有し、かつ前記ポンプケーシング、前記内側壁部、および前記外側壁部の外周長さよりも短い外周長さを有する」のに対し、引用文献4に記載された発明は、前記のようなくびれ部を有しない点。 で相違する。したがって、本件特許発明2は、引用文献4に記載されたものではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。本件特許発明3~9についても同様である。 (3)さらに、この相違点について検討すると、引用文献4には、該くびれ部を設けることについて記載も示唆もなく、引用文献4に記載された発明において、該くびれ部を設ける動機付けはない。したがって、本件特許発明2は、引用文献4に記載された発明等に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。本件特許発明3~9についても同様である。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件の請求項2~9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件の請求項2~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、前記第2に示すとおり、本件訂正により請求項1が削除され、請求項1に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700325

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