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特許異議申立

2022-700717

ストロンチウムイオン吸着材及びその製造方法

審判番号
2022-700717
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-218024
登録番号
7010670
請求日
2022年07月26日
審決日
2022年10月19日
公報発行日
2022年11月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】チタン工業株式会社
  • 【権利者代理人】宮前 徹
  • 【権利者代理人】松山 美奈子
  • 【権利者代理人】小笠原 有紀
  • 【権利者】株式会社荏原製作所
  • 【権利者代理人】宮前 徹
  • 【権利者代理人】松山 美奈子
  • 【異議申立人】石元 雅巳
審判長/審判官
  • 審判長 三崎 仁
  • 審判官 正 知晃
  • 審判官 後藤 政博
分類
P1651.121-Y (B01J) / P1651.537-Y (B01J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第113条第4号、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7010670号発明「ストロンチウムイオン吸着材及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7010670号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7010670号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成29年11月13日を出願日とする特許出願であって、令和4年1月17日にその特許権の設定登録がされ、同年1月26日に特許掲載公報が発行された。 その後、本件特許の請求項1~6に係る特許に対し、特許異議申立人である石元雅巳より、令和4年7月26日に特許異議の申立てがされた。 第2 本件特許発明 本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明6」といい、これらをまとめて「本件特許発明」ということがある。)は、本件特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 二チタン酸水素カリウム水和物からなるストロンチウムイオン吸着主剤100質量部に対して、非水溶性の金属酸化物または金属水酸化物の微粒子からなる結合材を0.3質量部以上8質量部以下含有し、粒径が100μm以上1000μm以下であることを特徴とする粒子状のストロンチウムイオン吸着材。 【請求項2】 前記二チタン酸水素カリウム水和物が化学式がK2-xHxO・2TiO2・nH2O(式中、xは0.1以上1.8以下であり、nは0よりも大きい)で表される二チタン酸水素カリウム水和物であり、二チタン酸水素カリウム水和物のメディアン径が0.5μm以上3.0μm以下である請求項1に記載のストロンチウムイオン吸着材。 【請求項3】 前記金属酸化物または金属水酸化物の微粒子の平均短軸長が0.01μm以上0.3μm以下である請求項1または2に記載のストロンチウムイオン吸着材。 【請求項4】 前記金属酸化物または金属水酸化物の微粒子が、形状異方性を有しており、平均長軸長を平均短軸長で除した軸比が3以上100以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のストロンチウムイオン吸着材。 【請求項5】 化学式がK2O・2TiO2で表される二チタン酸カリウムを水和させて、カリウムイオン(K+)とプロトン(H+)とをカチオン交換させて、化学式がK2-xHxO・2TiO2・nH2O(式中、xは0.1以上1.8以下であり、nは0よりも大きい)で表される二チタン酸水素カリウム水和物を得ること、及び 結合材として非水溶性で形状異方性を有する金属酸化物または金属水酸化物の微粒子を、二チタン酸水素カリウム水和物100質量部に対して0.3質量部以上8質量部以下となるように添加して造粒すること を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のストロンチウムイオン吸着材の製造方法。 【請求項6】 (1)チタン源及びカリウム源を混合し、 (2)得られる混合物を焼成して二チタン酸カリウムを得て、 (3)二チタン酸カリウムを水と接触させてスラリーとし、二チタン酸カリウムを水和させると共にカリウムイオンとプロトンとのカチオン交換を生じさせ、二チタン酸水素カリウム水和物(K2-xHxO・2TiO2・nH2O、ただしxは0.1以上1.8以下、nは0よりも大きい)を得て、 (4)得られる二チタン酸水素カリウム水和物(K2-xHxO・2TiO2・nH2O、ただしxは0.1以上1.8以下、nは0よりも大きい)をスラリー中で湿式粉砕して、 (5)スラリーに、結合材である非水溶性の金属酸化物または金属水酸化物の微粒子を、二チタン酸水素カリウム水和物100質量部に対して0.3質量部以上8質量部以下となるように添加し、撹拌、混合して、 (6)スラリーから二チタン酸水素カリウム水和物及び結合材粒子を含むろ過ケーキを固液分離し、 (7)当該ろ過ケーキを造粒し、 (8)造粒により得た粒子を60℃以上150℃以下の温度で1時間以上24時間以下の条件で乾燥し、 (9)乾燥した造粒粒子を解砕し、整粒して、100μm以上1000μm以下の粒径範囲を有する粒子状のストロンチウムイオン吸着材とする 工程を含む、請求項5に記載の製造方法。」 第3 申立理由の概要 特許異議申立人が、特許異議申立書において主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。 理由1 進歩性欠如 本件特許発明1及び3は、甲1発明と甲第1号証ないし甲第3号証の記載に基づいて、本件特許発明4は、甲1発明と甲第1号証ないし甲第4号証の記載に基づいて、本件特許発明5及び6は、甲1発明と甲第1号証ないし甲第4号証の記載及び周知技術(例えば、甲第2号証又は甲第5号証)に基づいて、それぞれ当業者が容易になし得たものであるから、本件特許発明1、3~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当するため取り消されるべきものである。 理由2 明確性要件違反 本件特許発明2は「二チタン酸水素カリウム水和物のメディアン径」の点で明確ではないことから、本件特許発明2に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当するため取り消されるべきものである。 (特許異議申立人が提出した証拠一覧) 甲第1号証:特開2015-188798号公報 甲第2号証:特開2015-9179号公報 甲第3号証:特開2016-120483号公報 甲第4号証:製品紹介アルミナゾル(https://www.nissanchem.co.jp/products/materials/inorganic/products/04/) 甲第5号証:特開2017-121616号公報 なお、甲第1号証が主たる証拠であり、甲第2号証、甲第3号証にはバインダー(結合材)に関する記載が、甲第4号証にはバインダーとして用いられるアルミナゾルの粒子形状に関する記載が、甲第5号証には造粒方法に関する記載があるが、甲第4号証については、公知日について不明である(「Copyright2018」との記載から本件特許の出願後に公開されたものといえる)。 また、以下「甲第1号証」~「甲第5号証」をそれぞれ、「甲1」~「甲5」という。 第4 証拠の記載 1 甲1について 甲1は、本件特許の出願前に頒布されたものであり、以下の事項が記載されている(なお、下線部は当審において付与したものである。以下、同様。)。 (1)記載事項について (甲1ア)「【請求項1】 少なくとも1種のTiO5三角両錐体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物と、少なくとも1種のTiO6八面体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物からなることを特徴とする多孔質チタネートイオン交換体。 【請求項2】 前記TiO6八面体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物に対する前記TiO5三角両錐体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物の重量比が、0.2~2.0であることを特徴とする請求項2に記載の多孔質チタネートイオン交換体。 ・・・(中略)・・・ 【請求項4】 前記TiO5三角両錐体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物が(K1-xHx)2Ti2O5・mH2O [0≦x<1,m≧0] で表されることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の多孔質チタネートイオン交換体。」 (甲1イ)「【0002】 従来から、特定のイオンを除去もしくは取り込むために、チタン酸アルカリ金属化合物をイオン交換体として使用することが提案されている(例えば非特許文献1参照)。しかしながら、チタン酸アルカリ金属化合物を水中に投入すると粒子が容易に崩壊し微粒子化してしまい、吸着性能の低下に加え、吸着した特定のイオンとともに外部に流出してしまう問題があった。この問題は、チタン酸アルカリ金属化合物の吸湿性が高いため、水中に投入すると凝集体が膨潤し、粒子が崩壊することによって生じると推測される。すなわち、従来用いられていたチタン酸アルカリ金属化合物は耐久性に問題があった。 ・・・(中略)・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 そこで、チタン酸アルカリ金属化合物の強度を向上させる方法として、チタン酸アルカリ金属化合物表面に高分子材料を被覆する方法(例えば特許文献1参照)やチタン酸アルカリ金属化合物表面に無機材料を被覆する方法(例えば特許文献2参照)が提案されている。 【0006】 ところが、上記方法によってチタン酸アルカリ金属化合物の強度向上を図ると、高分子材料または無機材料を含むバインダーが比較的多量に必要となり、単位重量当たりのチタン酸アルカリ金属化合物含有率の低下、空隙率の低下等が生じ、チタン酸アルカリ金属化合物のイオン交換性能が著しく低下してしまう。 【0007】 本発明は、上記の問題点に鑑み、強度、イオン交換性能ともに優れた多孔質チタネートイオン交換体を提供することを目的とする。」 (甲1ウ)「【0019】 本発明のイオン交換体は、少なくとも1種のTiO5三角両錐体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物と、少なくとも1種のTiO6八面体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物からなることを特徴とする 【0020】 TiO5三角両錐体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物は、層表面の負電荷と層間の陽イオンとの結合力が弱いため、層間の膨潤反応が大きくイオン交換容量が大きいが、非常に不安定であり容易に層間剥離し、崩壊してしまう。 【0021】 一方、TiO6八面体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物は、層表面の負電荷と層間の陽イオンとの結合力が強く、層間剥離しにくい反面、イオン交換容量がやや低い。 【0022】 本発明の実施形態では、TiO5三角両錐体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物の二次粒子、凝集体、又は造粒体の少なくとも一部を、TiO6八面体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物によって覆うことで、優れたイオン交換性能を損なわず、水中でのイオン交換体として十分な強度を有することができる。」 (甲1エ)「【0028】 (化合物1の合成) 水100重量部に対して酸化チタンを26.2重量部混合・攪拌した。その後、23.8重量部の炭酸カリウムを加えてさらに攪拌した。混合した溶液を200℃で噴霧乾燥(スプレードライ)し、800℃で3時間焼成し、TiO5三角両錐体の連鎖構造を有する層状構造二チタン酸カリウム(K2Ti2O5)を得た。 ・・・(中略)・・・ 【0031】 (化合物4の合成) 化合物1を化合物1の重量に対し27倍量の水で1時間水洗することにより、脱カリウム処理を行い、脱水・乾燥後、850℃で2時間焼成することにより、TiO6八面体の連鎖構造を有する層状構造四チタン酸カリウム(K2Ti4O9)を得た。」 (甲1オ)「【0038】 <実施例1> (1-1)粒度調整 化合物1と化合物4を準備し、それぞれ粉砕もしくは解砕等により化合物1の二次粒子平均径が化合物4の二次粒子平均径の1/2以下になるように調整した。調整後の化合物4の二次粒子平均径は、例えば20~30μm程度である。 【0039】 (1-2)造粒 粒度調整された化合物1:460gと粒度調整された化合物4:540gを高速混合造粒機(ダルトン株式会社、RMO-4H)により、高速撹拌させた。その後、5重量%のポリビニルアルコール溶液370gをスプレーしながら撹拌することにより造粒させた。得られた造粒体を電気マッフル炉にて大気雰囲気下、850℃で2時間焼成して造粒品(多孔質チタネートイオン交換体)を得た。造粒品の粒径は例えば300~600μm程度である。なお、後述する実施例2~15及び比較例1~3においても、造粒品の粒径は例えば300~600μm程度である。」 (甲1カ)「【0101】 実施例1~7の評価結果を考慮すれば、TiO6八面体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物に対するTiO5三角両錐体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物の重量比が高いほど、Srイオン交換率が高い傾向であることが分かる。併せて、濁度の評価結果を考慮すれば、TiO6八面体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物に対するTiO5三角両錐体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物の重量比を0.2以上2.0以下にすることが望ましく、0.4以上1.2以下にすることがより望ましい。二チタン酸カリウムに対する四チタン酸カリウムの重量比が低過ぎると強度が落ち、二チタン酸カリウムに対する四チタン酸カリウムの重量比が高過ぎるとイオン交換性能が落ちるからである。 ・・・(中略)・・・ 【0105】 また、本発明に係る多孔質チタネートイオン交換体が交換するイオンは特に限定されないが、上記した実施例におけるイオン交換性能評価を考慮すると、例えばストロンチウムイオンの交換材として好適に使用することができる。」 (2)甲1発明について 上記(甲1カ)の【0105】の記載から、(甲1ア)の「多孔質チタネートイオン交換体」は「ストロンチウムイオンの交換材として好適に使用することができる」ものであり、また、(甲1オ)の「造粒品(多孔質チタネートイオン交換体)を得た。造粒品の粒径は例えば300~600μm程度である」との記載から、(甲1ア)の「多孔質チタネートイオン交換体」は、粒径が300~600μm程度の造粒品であるといえる。 そうすると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「少なくとも1種の(K1-xHx)2Ti2O5・mH2O [0≦x<1,m≧0] で表されるTiO5三角両錐体の連鎖構造を有する層状構造二チタン酸カリウムと、少なくとも1種のTiO6八面体の連鎖構造を有する層状構造四チタン酸カリウムからなる多孔質チタネートイオン交換体であって、 粒径が300~600μm程度である造粒品で、ストロンチウムイオンの交換材として好適に使用することができる多孔質チタネートイオン交換体」 2 甲2について 甲2は、本件特許の出願前に頒布されたものであり、以下の事項が記載されている。 (甲2ア)「【請求項1】 水難溶性フェロシアン化金属化合物に水難溶性酸化防止剤を複合化させることを特徴とするセシウム吸着材の製造方法。 【請求項2】 水難溶性フェロシアン化金属化合物と金属酸化物とからなる複合固体に、水難溶性酸化防止剤を複合化させることを特徴とする請求項1記載のセシウム吸着材の製造方法。 ・・・(中略)・・・ 【請求項7】 金属酸化物がコロイダルシリカであることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載のセシウム吸着材の製造方法。」 (甲2イ)「【0029】 本発明において水難溶性フェロシアン化金属化合物をバインダーによって固め、顆粒状などの複合固体として成形したものを用いる場合、そのバインダーとしては、コロイダルシリカなどの金属酸化物微粒子を用いるのが好ましい。 金属酸化物微粒子は表面に水分子が吸着しており、100~150℃で加熱することによって焼結することはないが、粒子間に吸着されていた水分子が除去されて金属酸化物微粒子同士が互いにくっつきあい、水に入れても容易には崩壊しない程度に固めることができる。 また、ガラス、粘土などの微粒子状の無機物を併用することもできる。これらの金属酸化物や微粒子状無機物は、水などの溶媒などに分散させた状態として水難溶性フェロシアン化金属化合物の微粉末と共に混合し、これを型などに流し込んだり、押し出し成形、転動造粒したりする方法で成形し、必要に応じて加熱して水などの溶媒を揮発除去することで、成形することが可能である。また、紛体状の金属酸化物を用いる場合は予め水に分散せず、水難溶性フェロシアン化金属化合物と水などの溶媒を混ぜ合わせて混合することもできる。 しかし、水などの溶媒を除去しただけでは成形物の強度が低く、耐水性も低いため、成形物がこすれあったり、水に浸されたりすることで形状が崩れて微粉が発生しやすい。そのため、金属アルコキシドによってこれらの粒子同士を化学的に結合させて一体化することで補強することが好ましい。 また、金属アルコキシドや可溶性ケイ酸塩のような金属酸化物の前駆体となる化合物と水難溶性フェロシアン化金属加工物を混ぜてから、当該前駆体をゲル化させて金属酸化物を形成させることで顆粒状などに成形してもよい。」 (甲2ウ)「【0033】 本発明において、好ましく使用される金属酸化物としては、粒子径が5~30nmである無水珪酸(シリカ微粒子)が、水または有機溶剤中にコロイド状に分散されたコロイダルシリカが挙げられ、水分散型の方が好ましい。水分散型のコロイダルシリカの場合、シリカ微粒子の表面に多数の水酸基が存在するため、同様に親水性である水難溶性フェロシアン化金属化合物と混ざりやすく強固な成形体が得られる。 ・・・(中略)・・・ 【0036】 コロイダルシリカ以外の具体例としては、アルミナの水分散液(日産化学工業株式会社製のアルミナゾル200、アルミナゾル520)、ジルコニアの水分散液(日産化学工業株式会社製のナノユースZR-30BF)、チタニアの水分散液(テイカ株式会社アナタースTKS-203)などが挙げられる。」 3 甲3について 甲3は、本件特許の出願前に頒布されたものであり、以下の事項が記載されている。 (甲3ア)「【請求項1】 固形分として、酸化チタン化合物、2価の酸化銅、及びバインダーを含むとともに、それらを懸濁させる溶剤を含む酸化チタン含有組成物であって、 前記固形分に対して、0.5~25質量%に相当する量の式(1) R1-SO2OH (1) (式中、R1は置換基を有することのあるC1~10のアルキル基、置換基を有することのあるC2~10のアルケニル基、置換基を有することのあるC3~10のシクロアルキル基、置換基を有することのあるC3~10のシクロアルケニル基、又は置換基を有することのあるC6~10アリール基を示す。) で表されるスルホン酸を含んでなる、 酸化チタン含有組成物。」 (甲3イ)「【0012】 本願発明におけるバインダーは、酸化チタン含有組成物の使用時において、酸化チタン含有組成物を、所定の基材の表面に塗布して、乾燥させるなどしてその主に固形分を基材の表面に固定させるにあたって、基材に対して酸化チタンを固定できるようなものであれば良い。いずれにしても、バインダーには公知のものを用いることができる。 また、本願発明におけるバインダーは、バインダー表面に水酸基を有するものであっても良い。このようなバインダーであれば、上記式(1)で表されるスルホン酸が、二重結合を有するビニルスルホン酸であるアルケニルスルホン酸等である場合には、バインダーの水酸基とアルケニルスルホン酸の二重結合との反応が可能となり、フリー(単独)のスルホン酸が少なくなる。これにより、スルホン酸として上述の如き二重結合を有するものが選択された酸化チタン含有組成物は、それを用いて作られた塗膜が高湿度環境や温水等と接触した時に、塗膜から溶出するスルホン酸(アルケニルスルホン酸)が少なくなるから、耐久性が向上することが期待できる。この場合のスルホン酸は、上記式(1)で表されるスルホン酸のうちの一部のスルホン酸であり、下記式(2)で表されるスルホン酸である。 R2-SO2OH (2) (式中、R2は置換基を有することのあるC2~10のアルケニル基、又は置換基を有することのあるC3~10のシクロアルケニル基を示す。) 上記式(2)で表されるスルホン酸の例は、ビニルスルホン酸である。 前記バインダーは、金属酸化物ゲル若しくは金属水酸化物ゲルで、その比表面積が、150℃で乾燥後50m2/g以上あるのが好ましく、100m2/g以上あると更に好ましい。このような比表面積を有するのであれば接着性はより向上し、触媒活性も向上することになる。ここで、金属成分としては、珪素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ニオビウム、タンタラム、タングステン、錫等の金属の酸化物ゲル若しくは水酸化物ゲルを好ましく例示することができる。また、前記バインダーは、珪素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ニオビウム、タンタラム、タングステン、錫等の金属の酸化物ゲル若しくは水酸化物ゲルと、上記式(2)のスルホン酸との反応物を含むものであってもよい。」 4 甲4について 甲4には、アルミナゾル200(AS-200)のTEM写真が掲載されており、このTEM写真から、アルミナゾル200(AS-200)は形状異方性を有していること、平均長軸長を平均短軸長で除した軸比が3以上100以下の範囲内にあることがいえる。 5 甲5について 甲5は、本件特許の出願前に頒布されたものであり、以下の事項が記載されている。 (甲5ア)「【0046】 〔実施例7〕 実施例1で得られた反応スラリーにおいて、スラリーの固形物100質量部に対し、それぞれバインダとしてセルロースファイバー(ダイセルフィルム(株)製 セリッシュを3質量部添加した。これを濾過してケーキを得た。得られたケーキを以下の造粒条件で押出造粒機(不二パウダル(株)社製、EDX-60型)に導入して造粒物を得た。造粒物を70℃で12時間乾燥、粉砕、300μm以上600μm以下の粒度に分級した。 <造粒条件> 原料スラリー供給量 200g/分 運転時間 10分 押出スクリーン径 φ0.6mm」 第5 当審の判断 1 上記理由1(進歩性欠如)についての当審の判断 (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 (ア)甲1発明の「(K1-xHx)2Ti2O5・mH2O [0≦x<1,m≧0] で表されるTiO5三角両錐体の連鎖構造を有する層状構造二チタン酸カリウム」は、x及びmが0でないとき、本件特許発明1の「二チタン酸水素カリウム水和物」に相当する。 (イ)甲1発明の「粒径は300~600μm程度の造粒品」は、本件特許発明1の「粒径が100μm以上1000μm以下である」「粒子状の」「材」に相当する。 (ウ)イオン交換とは、吸着させたいイオンが吸着される代わりに、もともと吸着していたイオンが溶出することであるから、甲1発明の「ストロンチウムイオンの交換材として好適に使用することができる多孔質チタネートイオン交換体」は、本件特許発明1の「ストロンチウムイオン吸着材」に相当する。 そして、甲1発明の「少なくとも1種の(K1-xHx)2Ti2O5・mH2O [0≦x<1,m≧0] で表されるTiO5三角両錐体の連鎖構造を有する層状構造二チタン酸カリウムと、少なくとも1種のTiO6八面体の連鎖構造を有する層状構造四チタン酸カリウムからなる」「ストロンチウムイオンの交換材として好適に使用することができる」「多孔質チタネートイオン交換体」と、本件特許発明1の「二チタン酸水素カリウム水和物からなるストロンチウムイオン吸着主剤」とは、「ストロンチウムイオン吸着主剤」が「二チタン酸水素カリウム水和物」を含むという限りにおいて共通する。 (エ)上記(ア)~(ウ)を踏まえると、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 (一致点) 「二チタン酸水素カリウム水和物を含むものをストロンチウムイオン吸着主剤とし、粒径が100μm以上1000μm以下である粒子状のストロンチウムイオン吸着材」 (相違点1) 「ストロンチウムイオン吸着主剤」が、本件特許発明1では、二チタン酸水素カリウム水和物「からなるもの」であるのに対し、甲1発明は、「少なくとも1種の(K1-xHx)2Ti2O5・mH2O [0≦x<1,m≧0] で表されるTiO5三角両錐体の連鎖構造を有する層状構造二チタン酸カリウムと、少なくとも1種のTiO6八面体の連鎖構造を有する層状構造四チタン酸カリウムからなるもの」である点。 (相違点2) 本件特許発明1は、「ストロンチウムイオン吸着主剤100質量部に対して、非水溶性の金属酸化物または金属水酸化物の微粒子からなる結合材を0.3質量部以上8質量部以下含有」するのに対し、甲1発明はそもそも、結合材を含有しない点。 イ 相違点1についての検討 ストロンチウムイオン吸着主剤について、甲1発明では、上述のとおり「少なくとも1種の(K1-xHx)2Ti2O5・mH2O [0≦x<1,m≧0] で表されるTiO5三角両錐体の連鎖構造を有する層状構造二チタン酸カリウムと、少なくとも1種のTiO6八面体の連鎖構造を有する層状構造四チタン酸カリウムからなるもの」であり、この点について、甲1には、「TiO5三角両錐体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物の二次粒子、凝集体、又は造粒体の少なくとも一部を、TiO6八面体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物によって覆うことで、優れたイオン交換性能を損なわず、水中でのイオン交換体として十分な強度を有することができる」(上記(甲1ウ))と記載されているように、甲1発明は、「TiO5三角両錐体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物」と「TiO6八面体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物」で構成されることを必須としたものであり、本件特許発明1の「二チタン酸水素カリウム水和物からなるストロンチウムイオン吸着主剤」とすべく、「TiO6八面体の連鎖構造を有する層状構造チタン酸アルカリ金属化合物」を除くことはできないことから、甲1発明において、「二チタン酸水素カリウム水和物からなるストロンチウムイオン吸着主剤」とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 相違点2についての検討 相違点2についても一応検討するに、甲1では、バインダー(結合材)を用いることについて、上記(甲1イ)で摘記したように、「高分子材料または無機材料を含むバインダーが比較的多量に必要となり、単位重量当たりのチタン酸アルカリ金属化合物含有率の低下、空隙率の低下等が生じ、チタン酸アルカリ金属化合物のイオン交換性能が著しく低下してしまう」ことを課題とするものであり、この課題を解決するために、甲1発明は、バインダー(結合材)を用いない構成となったものであるから、甲1発明において、バインダー(結合材)をさらに含有させることは阻害要因となり、当業者が容易になし得たものではない。 エ 甲1発明と甲2及び3に記載された事項との組合せについて 上記第3の申立理由の概要で記載したとおり、申立理由では、本件特許発明1は甲1発明と甲1ないし甲3の記載に基づいて当業者が容易になし得たものとしているが、甲2及び3にバインダー(結合材)についての記載があるとしても、それが、上記イ及びウで述べた上記判断を左右するものではない。 また、甲4(上記第3で述べたように、本件出願後に公開されたものであるが、一応検討する。)及び5の記載は、上記第3の証拠一覧で述べたとおり、アルミナゾルの粒子形状に関するもの、造粒方法に関するものであるから、これらについても上記イ及びウで述べた上記判断を左右するものではない。 オ 小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明及び甲1~3の記載に基づいて、進歩性が欠如するということはできない。 (2)本件特許発明3~6について 本件特許発明3~6は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるから、上記(1)の本件特許発明1についての検討と同様、進歩性が欠如するということはできない。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、本件特許発明1、3~6は、甲1発明及び甲1~5の記載に基づいて、進歩性が欠如するということはできないので、請求項1、3~6に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないため、申立理由1(進歩性欠如)を理由に、取り消すことはできない。 2 上記理由2(明確性要件違反)についての当審の判断 (1)二チタン酸水素カリウム水和物のメディアン径について 本件特許発明2では、「二チタン酸水素カリウム水和物のメディアン径が0.5μm以上3.0μm以下」であることが特定されており、この「二チタン酸水素カリウム水和物のメディアン径」について、本件特許明細書の段落【0015】には「本発明で用いる化学式がK2-xHxO・2TiO2・nH2O(ただし、xは0.1以上1.8以下であり、nは0よりも大きい)で表される二チタン酸水素カリウム水和物は、造粒前の湿式粉砕後のスラリー中でのメディアン径が0.5μm以上3.0μm以下であることが望ましい」と記載されているから、本件特許発明2における「二チタン酸水素カリウム水和物のメディアン径」は「造粒前の湿式粉砕後のスラリー中でのメディアン径」と解するのが相当であり、不明確とはいえない。 (2)特許異議申立人の主張についての判断 特許異議申立人は特許異議申立書において「ストロンチウムイオン吸着材が含有する二チタン酸水素カリウム水和物は、造粒後の二チタン酸水素カリウム水和物であり、造粒前のような微粒子の形態を維持していない」から、「請求項2に記載されている「二チタン酸水素カリウム水和物のメディアン径」すなわち「造粒後の二チタン酸水素カリウム水和物のメディアン径」は、何を意味しているかが不明確である」と主張する。 しかしながら、無機材料の組成物において、原料の粒径や組成など製造工程における仕込み時の粒子特性により最終生成物を特定する場合もあり、本件特許発明2の「二チタン酸水素カリウム水和物のメディアン径」は、上記(1)で述べたとおり、本件特許明細書の記載によれば「造粒前の湿式粉砕後のスラリー中でのメディアン径」であり、「造粒後の二チタン酸水素カリウム水和物のメディアン径」とは解されないことから、特許異議申立人の主張する造粒後の二チタン酸水素カリウム水和物のメディアン径」は何を意味しているのか不明確であるとの主張は、「二チタン酸水素カリウム水和物のメディアン径」について誤った解釈に基づく主張であるから、当該主張は受け入れられない。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、本件特許発明2は明確であるといえるので、請求項2に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しないため、申立理由2(明確性要件違反)を理由に、取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立人による特許異議の申立ての申立理由1(進歩性欠如)及び証拠によって、本件特許の請求項1、3~6に係る特許を取り消すことはできず、申立理由2(明確性要件違反)を理由に、本件特許の請求項2に係る特許を取り消すこともできない。 また、他に本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700717

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