特許異議申立
2024-700363
ターボ分子ポンプ
- 審判番号
- 2024-700363
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-002445
- 登録番号
- 7363494
- 請求日
- 2024年04月18日
- 審決日
- 2025年01月29日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社島津製作所
- 【権利者代理人】阿久津 好二
- 【権利者代理人】妹尾 明展
- 【権利者代理人】岸本 雅之
- 【権利者代理人】江口 裕之
- 【異議申立人】プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハー
- 【異議申立人代理人】江崎 光史
- 【異議申立人代理人】鍛冶澤 實
- 【異議申立人代理人】中村 真介
- 【異議申立人代理人】石田 大成
- 審判長/審判官
- 審判長 窪田 治彦
- 審判官 柿崎 拓
- 審判官 米倉 秀明
- 分類
- P1651.111-YAA(F04D) / P1651.112-YAA(F04D) / P1651.121-YAA(F04D) / P1651.537-YAA(F04D) / P1651.55 -YAA(F04D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7363494号発明「ターボ分子ポンプ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7363494号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、6、7〕、4、5について訂正することを認める。
特許第7363494号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7363494号の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和2年1月9日の出願であって、令和5年10月10日にその特許権の設定登録がされ、令和5年10月18日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 6年 4月18日 : 特許異議申立人プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハー(以下「特許異議申立人」という。)による請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 6年 7月22日付け: 取消理由通知書
令和 6年 9月12日 : 特許権者株式会社島津製作所(以下「特許権者」という。)による意見書及び訂正請求書の提出
令和 6年 9月25日付け: 通知書(訂正請求があった旨の通知)
令和 6年11月15日 : 特許異議申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年9月12日にされた訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求めるというものである。
本件訂正請求で請求された訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「前記複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定され、かつ、隣接する段のロータ翼とはブレード枚数が異なっている」と記載されているのを、
「前記複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定され、かつ、隣接する上段および下段のそれぞれのロータ翼とはブレード枚数が異なっており、その最大公約数が2である」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、請求項3、請求項6及び請求項7も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4に「請求項1に記載のターボ分子ポンプにおいて、
排気速度が5000[L/s]以上である、ターボ分子ポンプ。」と記載されているのを、独立形式に改め、かつ「その最大公約数が2である」ことを追加し、
「複数のブレードが放射状に形成され、ロータ軸方向に設けられた複数段のロータ翼と、
複数段の前記ロータ翼に対してロータ軸方向に交互に配置され、複数のブレードが放射状に設けられた複数段のステータ翼と、を備え、
前記複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定され、かつ、隣接する段のロータ翼とはブレード枚数が異なっており、その最大公約数が2であり、
排気速度が5000[L/s]以上である、ターボ分子ポンプ。」に訂正する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に「請求項1に記載のターボ分子ポンプにおいて、
排気速度が7000[L/s]以上である、ターボ分子ポンプ。」と記載されているのを、独立形式に改め、かつ「その最大公約数が2である」ことを追加し、
「複数のブレードが放射状に形成され、ロータ軸方向に設けられた複数段のロータ翼と、
複数段の前記ロータ翼に対してロータ軸方向に交互に配置され、複数のブレードが放射状に設けられた複数段のステータ翼と、を備え、
前記複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定され、かつ、隣接する段のロータ翼とはブレード枚数が異なっており、その最大公約数が2であり、
排気速度が7000[L/s]以上である、ターボ分子ポンプ。」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段が、隣接する段のロータ翼とはブレード枚数が異なっていることについて、上段および下段のそれぞれのロータ翼とはブレード枚数が異なっており、その最大公約数が2であるという限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
本件特許の特許請求の範囲、明細書又は図面(以下「特許明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下、同様である。)。
(ア)「【請求項1】
複数のブレードが放射状に形成され、ロータ軸方向に設けられた複数段のロータ翼と、
複数段の前記ロータ翼に対してロータ軸方向に交互に配置され、複数のブレードが放射状に設けられた複数段のステータ翼と、を備え、
前記複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定され、かつ、隣接する段のロータ翼とはブレード枚数が異なっている、ターボ分子ポンプ。」
(イ)「【0034】
本実施の形態では、複数段あるステータ翼30およびロータ翼40の少なくとも1段は、ブレード枚数(翼枚数)を「素数×2」または「素数×2n」に設定することで、重複領域R1ov,R2ovの低減を図るようにした。図6,7は、一対のステータ翼30における重複領域R2ovを説明する図である。図6は、上段のブレード枚数36枚のステータ翼30と、下段のブレード枚数30枚のステータ翼30との組み合わせを示す。図7は、上段のブレード枚数36枚のステータ翼30と、ブレード枚数が34=17×2=「素数×2」の下段のステータ翼30との組み合わせを示す。
・・・(中略)・・・
【0036】
図6の場合、36と30との最大公約数は6なので、60deg毎に上下のブレード300の位置が一致する。図6に示すブレード形状の場合、ハッチングで示した重複領域R2ovが一周360degで24か所ある。一方、図7のように下段のステータ翼30のブレード枚を「素数×2」=34に設定した場合、36と34との最大公約数は2なので、180deg毎に上下のブレード300の位置が一致することになる。図7のブレード形状は図6の場合と同一であり、重複領域R2ovは一周360degで28か所の重複領域R2ovが生じている。
【0037】
重複領域R2ovの周方向の寸法は、一致しているブレード300の左右にあるものが最も大きく、一致しているブレード300から遠ざかるほど小さくなる。図6に示す例では、一周360degで一致している箇所は6か所なので、一致しているブレード300の左右の重複領域R2ovの数は12である。一方、図7に示す例では、一周360degで一致している箇所は2か所なので、一致しているブレード300の左右の重複領域R2ovの数は4である。そのため、一周360degに生じている複数の重複領域R2ovの周方向の寸法の合計は図7に示す翼構成の方が小さくなる。なお、図7に示すラインAは翼枚数が図6の36枚-30枚の場合の重複領域R2ovの周方向寸法の合計を示し、ラインBは翼枚数が36枚-34枚の場合の重複領域R2ovの周方向寸法の合計を示す。
【0038】
このように、ブレード枚が「素数×2」であるステータ翼30を含む図7の場合の方が、重複領域R2ovの周方向寸法の合計が小さくなる。その結果、排気性能への逆流の影響をより小さくすることができ、中間流・連続流条件における排気性能の向上を図ることができる。図6、7ではブレード枚数として「素数×2」を含む場合について説明したが、ブレード枚数として「素数×2n」を含む場合も、ブレード枚数に素数が因数として含まれるので、「素数×2」の場合と同様の効果を奏することができる。また、一対のロータ翼40のブレード枚数に関しても、ステータ翼30と同様の説明が成り立ち、同様の効果を奏することができる。」
(ウ)「【0041】
(実施例)
図10~12は、上述した本実施の形態の翼構成を適用した場合のターボポンプ段の実施例を示したものであり、図10は排気速度7000L/sクラスの場合、図11は排気速度5000L/sクラスの場合、図12は排気速度3000L/sクラスの場合をそれぞれ示す。翼種の項において、数字はタービン翼段の段番号を表し、アルファベットのSはステータ翼を、Rはロータ翼を表している。例えば、翼種=3Rは、吸気側から3段目の翼段で、ステータ翼であることを示している。ターボポンプ段における翼段の総数は、図10の排気速度7000L/sクラスでは15段、図11の5000L/sクラスでは17段、図12の3000L/sクラスでは17段に設定されている。分類の項は、ブレード枚数が「素数×2」、「素数×2n」およびその他のいずれであるかを表している。図10~12のいずれの場合も、「素数×2」の翼段と「素数×2n」の翼段とを複数段備えている。」
(エ)「
[図:0001422426000001.jpg]
」
(オ)「
[図:0001422426000002.jpg]
」
(カ)「
[図:0001422426000003.jpg]
」
前記(ア)~(カ)によると、まず、前記(ア)において、ブレード枚数が「素数×2」に設定された、複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段と、隣接する段のロータ翼とは、ブレード枚数が異なっていることが把握できる。
そして、このブレード枚数が異なっていることに関し、前記(イ)には、ロータ翼40のブレード枚数に関しても、ステータ翼30と同様である(段落【0038】)との記載とともに、ステータ翼30について記載があり、「上段のブレード枚数36枚のステータ翼30と、ブレード枚数が34=17×2=「素数×2」の下段のステータ翼30との組み合わせ」(段落【0034】)により、「36と34との最大公約数は2なので、180deg毎に上下のブレード300の位置が一致することにな」り(段落【0036】)、「重複領域R2ovの周方向寸法の合計が小さくな」(段落【0038】)り、「その結果、排気性能への逆流の影響をより小さくすることができ、中間流・連続流条件における排気性能の向上を図ることができる」(段落【0038】)という作用効果を奏することが記載されている。また、本件特許に係る発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば、この作用効果が、隣接する2つのステータ翼30(あるいは隣接する2つのロータ翼40)のブレード枚数の最大公約数が2であることにより生じるものと把握できるから、36枚と34枚の組み合わせのみならず、また、ブレード枚数を「素数×2」とするステータ翼30(あるいはロータ翼40)を、下段側としても、上段側としても前記作用効果が生じることは、明らかである。
さらに、前記(カ)の図10における、吸気側から5段目のロータ翼である5Rに着目すると、該5Rのブレード枚数は26枚(素数×2)であり、該5Rに隣接する上段のロータ翼である3Rのブレード枚数(20枚)との最大公約数は2となっている。さらに、該5Rのブレード枚数(26枚)と、該5Rに隣接する下段のロータ翼である7Rのブレード枚数(34枚)との最大公約数も2となっている。すると、図10の図示内容から、複数段のロータ翼の中間段のブレード枚数を「素数×2」に設定し、かつ、該中間段のブレード枚数との最大公約数が2となるブレード枚数を備えたロータ翼を、隣接する上段及び下段のそれぞれに配置することが示唆されているといえる。
ここで、「素数×2」である中間段のブレード枚数と、隣接する上段や下段のブレード枚数との最大公約数が2となる場合、中間段のブレード枚数と、隣接する上段や下段のブレード枚数とは異なるものとなる。
以上によると、特許明細書等の記載から、複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段のブレード枚数を「素数×2」に設定し、かつ、隣接する上段および下段のそれぞれのロータ翼とはブレード枚数を異ならせ、その最大公約数を2とすることが把握できるから、訂正事項1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、前記アに示したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1の記載を引用する請求項4の記載を、請求項1の記載を引用しないものとするとともに、本件訂正前の請求項1に記載された複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段が、隣接する段のロータ翼とはブレード枚数が異なっていることについて、その最大公約数が2であるという限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮、及び同第4号に掲げられる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 新規事項の有無
前記(1)イに示した理由と同様の理由により、特許明細書等の記載から、複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段のブレード枚数を「素数×2」に設定し、かつ、隣接する段のロータ翼とはブレード枚数を異ならせ、その最大公約数を2とすることが把握できるから、訂正事項2は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、前記アに示したように、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は、本件訂正前の請求項1の記載を引用する請求項5の記載を、請求項1の記載を引用しないものとするとともに、本件訂正前の請求項1に記載された複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段が、隣接する段のロータ翼とはブレード枚数が異なっていることについて、その最大公約数が2であるという限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮、及び同第4号に掲げられる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 新規事項の有無
前記(1)イに示した理由と同様の理由により、特許明細書等の記載から、複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段のブレード枚数を「素数×2」に設定し、かつ、隣接する段のロータ翼とはブレード枚数を異ならせ、その最大公約数を2とすることが把握できるから、訂正事項3は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、前記アに示したように、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
3 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~7について、請求項2~7は、直接的又は間接的に請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~7は、一群の請求項を構成している。
そして、本件訂正請求は、訂正事項1により、本件訂正前の請求項1~3、6、7の記載を訂正し、訂正事項2により、本件訂正前の請求項4の記載を訂正し、訂正事項3により、本件訂正前の請求項5の記載を訂正しようとするものであり、一群の請求項1~7に対して請求されているから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
なお、本件訂正後の請求項4及び請求項5に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められる場合には、請求項4及び請求項5に係る訂正が、請求項1に係る訂正とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
4 まとめ
前記のとおり、訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。なお、本件においては、本件訂正前の全ての請求項1~7に係る特許に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~3、6、7〕、4、5について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~7に係る発明(以下、請求項順に「本件特許発明1」~「本件特許発明7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
複数のブレードが放射状に形成され、ロータ軸方向に設けられた複数段のロータ翼と、
複数段の前記ロータ翼に対してロータ軸方向に交互に配置され、複数のブレードが放射状に設けられた複数段のステータ翼と、を備え、
前記複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定され、かつ、隣接する上段および下段のそれぞれのロータ翼とはブレード枚数が異なっており、その最大公約数が2である、ターボ分子ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のターボ分子ポンプにおいて、
前記複数段のロータ翼の中間段の複数段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定されている、ターボ分子ポンプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のターボ分子ポンプにおいて、
前記複数段のステータ翼の中間段の複数段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定されている、ターボ分子ポンプ。
【請求項4】
複数のブレードが放射状に形成され、ロータ軸方向に設けられた複数段のロータ翼と、
複数段の前記ロータ翼に対してロータ軸方向に交互に配置され、複数のブレードが放射状に設けられた複数段のステータ翼と、を備え、
前記複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定され、かつ、隣接する段のロータ翼とはブレード枚数が異なっており、その最大公約数が2であり、
排気速度が5000[L/s]以上である、ターボ分子ポンプ。
【請求項5】
複数のブレードが放射状に形成され、ロータ軸方向に設けられた複数段のロータ翼と、
複数段の前記ロータ翼に対してロータ軸方向に交互に配置され、複数のブレードが放射状に設けられた複数段のステータ翼と、を備え、
前記複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定され、かつ、隣接する段のロータ翼とはブレード枚数が異なっており、その最大公約数が2であり、
排気速度が7000[L/s]以上である、ターボ分子ポンプ。
【請求項6】
請求項1に記載のターボ分子ポンプにおいて、
同一の段の前記ロータ翼の隣接するブレード間において、前記ロータ翼の表裏を貫通する第1貫通領域が形成され、
前記ロータ軸方向において、隣接する2つの段の前記ロータ翼の相互の前記第1貫通領域における一部の領域が第1重複領域として重複し、前記複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定されていることにより、前記第1重複領域の周方向寸法の合計が、ブレード枚数が「素数×2」でない場合と比して小さい、ターボ分子ポンプ。
【請求項7】
請求項3に記載のターボ分子ポンプにおいて、
同一の段の前記ステータ翼の隣接するブレード間において、前記ステータ翼の表裏を貫通する第2貫通領域が形成され、
前記ロータ軸方向において、隣接する2つの段の前記ステータ翼の相互の前記第2貫通領域における一部の領域が第2重複領域として重複し、前記複数段のステータ翼の中間段の複数段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定されていることにより、前記第2重複領域の周方向寸法の合計が、ブレード枚数が「素数×2」でない場合と比して小さい、ターボ分子ポンプ。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~7に係る特許に対して、当審が令和6年7月22日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)(新規性)請求項1~3、6、7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、公然知られた又は公然実施をされた甲第1号証~第10号証から把握される発明であり、特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当するから、請求項1~3、6、7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)(進歩性)請求項1~3、6、7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、公然知られた又は公然実施をされた甲第1号証~第10号証から把握される発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3、6、7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)(サポート要件)請求項1~7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
甲第1号証:ターボ分子ポンプHiPace700の全体図面
甲第2号証:ターボ分子ポンプHiPace700のロータ翼部分の図面
甲第3号証:HiPace700のロータ翼○2(当審注:「○2(○の中にアラビア数字の2)」は、「○2」と表記する。以下、「○3(○の中にアラビア数字の3)」等についても同様に表記する。)(品番PM 133 505)の詳細図
甲第4号証:HiPace700のロータ翼○3(品番PM 133 307)の詳細図
甲第5号証:HiPace700のロータ翼○4(品番PM 133 308)の詳細図
甲第6号証:HiPace700の甲第2号証に対応するロータ翼部分の部品表
甲第7号証:HiPace700のステータ翼22(品番PM 133 310)の詳細図
甲第8号証:HiPace700のステータ翼23(品番PM 133 311)の詳細図
甲第9号証:HiPace700のステータ翼24(品番PM 133 312)の詳細図
甲第10号証:HiPace700の甲第1号証に対応するステータ翼部分の部品表
甲第11号証:ミルコ メコタ氏の宣誓供述書
甲第12号証:伯東株式会社のホームページ(https://www.hakuto-vacuum.jp/tmp/)
甲第13号証:プファイファー・バキューム社の英文カタログ(https://www.hakuto-vacuum.jp/wp-content/uploads/2022/08/brochure-turbopumps.pdf)
甲第14号証:プファイファー・バキューム社の真空技術ブック
甲第15-1号証:プファイファー・バキューム社作成の請求書
甲第15-2号証:ピンク社作成の受領確認書
以下、「甲第1号証」~「甲第15-2号証」については、それぞれ「甲1」~「甲15-2」と表記する。
2 当審の判断
(1)新規性、進歩性について
ア 特許異議申立人提出の証拠
(ア)甲1から把握できる事項
a 甲1の右下には、「HiPace700 Turbo-Drag-Pumpe(当審訳:ターボドラッグポンプ)」、「PM P03 933」、「2008-07-28」の文字が看取される。
b 甲1の左側の図面は、「HiPace700 Turbo-Drag-Pumpe(当審訳:ターボドラッグポンプ)」の全体図であると解され、技術常識を踏まえると、該全体図の図示内容から、ロータ軸方向に設けられた6段のロータ翼と、6段のロータ翼に対してロータ軸方向に交互に配置された6段のステータ翼を備えていることが把握でき、該6段のステータ翼について、上から順に、1段目、2段目、・・・6段目とすると、1段目のステータ翼に「22」の番号が付され、2段目及び3段目のステータ翼に「23」の番号が付され、4段目~6段目のステータ翼に「24」の番号が付されていることが看取できる。
(イ)甲2から把握できる事項
a 甲2の右下には、「Rotor kpl(当審訳:ロータ).HiPace700」、「PM 133 240 AX」、「2008-02-08」の文字が看取される。
b 甲2の左側の図面は、「Rotor kpl(当審訳:ロータ).HiPace700」の図面であると解され、技術常識を踏まえると、該図面の図示内容から、ロータ軸方向に設けられた6段のロータ翼が把握でき、該6段のロータ翼について、左から順に、1段目、2段目、・・・6段目とすると、1段目のロータ翼に「2」の番号が付され、2段目及び3段目のロータ翼に「3」の番号が付され、4段目及び5段目のロータ翼に「4」の番号が付され、6段目のロータ翼に「5」の番号が付されていることが看取できる。
(ウ)甲3から把握できる事項
a 甲3の右下には、「Rotorsch(当審訳:ロータ翼).HV1 R 162/42x 11,5 AN40」、「PM 133 505」、「2007-06-18」の文字が看取される。
b 甲3の右側の表には、Schaufelzahl(当審訳:ブレード数)として「14.00oE」の文字が看取され、また、略中央の図面は、「Rotorsch(当審訳:ロータ翼).HV1 R 162/42x 11,5 AN40」の図面であると解されるところ、14枚のブレードが図示されていることから、14枚のブレードが放射状に形成されたロータ翼が把握できる。
(エ)甲4から把握できる事項
a 甲4の右下には、「Rotorsch(当審訳:ロータ翼).HV2 R 162/42x 5/12 AN40」、「PM 133 307」、「2007-06-18」の文字が看取される。
b 甲4の右側の表には、Schaufelzahl(当審訳:ブレード数)として「26.00oE」の文字が看取され、また、略中央の図面は、「Rotorsch(当審訳:ロータ翼).HV2 R 162/42x 5/12 AN40」の図面であると解されるところ、26枚のブレードが図示されていることから、26枚のブレードが放射状に形成されたロータ翼が把握できる。
(オ)甲5から把握できる事項
a 甲5の右下には、「Rotorsch(当審訳:ロータ翼).MV R 162/30x 2,7/8,7 AN40」、「PM 133 308」、「2007-06-18」の文字が看取される。
b 甲5の右側の表には、Schaufelzahl(当審訳:ブレード数)として「24.00oE」の文字が看取され、また、略中央の図面は、「Rotorsch(当審訳:ロータ翼).MV R 162/30x 2,7/8,7 AN40」の図面であると解されるところ、24枚のブレードが図示されていることから、24枚のブレードが放射状に形成されたロータ翼が把握できる。
(カ)甲6から把握できる事項
a 甲6の上方には、「Freigabe(当審訳:作成日):21.02.2008」、「Baukastenstueckliste(当審注:「ue」は「uウムラウト」を示す。 当審訳:部品表) PM 133 240 AX」、「Rotor komplett(当審訳:ロータ全体) HiPace 700」の文字が看取される。
b 甲6の表には、「PM 133 505」に関し、Stk(当審訳:個数)として「1」、Bezeichnung(当審訳:名称)として「Rotorsch(当審訳:ロータ翼).HV1 R 162/42x 11,5 AN40」、Pos.(当審訳:位置)として「2」の文字が看取される。
c 同じく、甲6の表には、「PM 133 307」に関し、Stk(当審訳:個数)として「2」、Bezeichnung(当審訳:名称)として「Rotorsch(当審訳:ロータ翼).HV2 R 162/42x 5/12 AN40」、Pos.(当審訳:位置)として「3」の文字が看取される。
d 同じく、甲6の表には、「PM 133 308」に関し、Stk(当審訳:個数)として「2」、Bezeichnung(当審訳:名称)として「Rotorsch(当審訳:ロータ翼).MV R 162/30x 2,7/8,7 AN40」、Pos.(当審訳:位置)として「4」の文字が看取される。
e 同じく、甲6の表には、「PM 133 309」に関し、Stk(当審訳:個数)として「1」、Bezeichnung(当審訳:名称)として「Rotorsch(当審訳:ロータ翼).VV R 162/30x 2,5/11,6 AN40」、Pos.(当審訳:位置)として「5」の文字が看取される。
(キ)甲7から把握できる事項
a 甲7の右下には、「Statorsch(当審訳:ステータ翼).HV L 171/55x6,5」、「PM 133 310」、「2007-06-18」の文字が看取される。
b 甲7の右側の表には、Schaufelzahl(当審訳:ブレード数)として「22.00oE」の文字が看取され、また、略中央の図面は、「Statorsch(当審訳:ステータ翼).HV L 171/55x6,5」の図面であると解されるところ、22枚のブレードが図示されていることから、22枚のブレードが放射状に設けられたステータ翼が把握できる。
(ク)甲8から把握できる事項
a 甲8の右下には、「Statorsch(当審訳:ステータ翼).MV L 171/60x3,5」、「PM 133 311」、「2007-06-18」の文字が看取される。
b 甲8の右側の表には、Schaufelzahl(当審訳:ブレード数)として「26.00oE」の文字が看取され、また、略中央の図面は、「Statorsch(当審訳:ステータ翼).HV L 171/60x3,5」の図面であると解されるところ、26枚のブレードが図示されていることから、26枚のブレードが放射状に設けられたステータ翼が把握できる。
(ケ)甲9から把握できる事項
a 甲9の右下には、「Statorsch(当審訳:ステータ翼).VV L 171/60x2,5」、「PM 133 312」、「2007-06-18」の文字が看取される。
b 甲9の右側の表には、Schaufelzahl(当審訳:ブレード数)として「26.00oE」の文字が看取され、また、略中央の図面は、「Statorsch(当審訳:ステータ翼).VV L 171/60x2,5」の図面であると解されるところ、26枚のブレードが図示されていることから、26枚のブレードが放射状に設けられたステータ翼が把握できる。
(コ)甲10から把握できる事項
a 甲10の第1ページの上方には、「Datum(当審訳:日付):20.10.2008」、「Baukastenstueckliste(当審注:「ue」は「uウムラウト」を示す。 当審訳:部品表) PM P03 933」、「HiPace 700 Turbo-Drag-Pumpe(当審訳:ターボドラッグポンプ)」の文字が看取される。
b 甲10の表には、「PM 133 240 AX」に関し、Stk(当審訳:個数)として「1」、Bezeichnung(当審訳:名称)として「Rotor komplett(当審訳:ロータ全体) HiPace 700」、Pos.(当審訳:位置)として「1」の文字が看取される。
c 同じく、甲10の表には、「PM 133 310」に関し、Stk(当審訳:個数)として「1」、Bezeichnung(当審訳:名称)として「Statorsch(当審訳:ステータ翼).HV L 171/55x6,5」、Pos.(当審訳:位置)として「22」の文字が看取される。
d 同じく、甲10の表には、「PM 133 311」に関し、stk(当審訳:個数)として「2」、Bezeichnung(当審訳:名称)として「Statorsch(当審訳:ステータ翼).MV L 171/60x3,5」、Pos.(当審訳:位置)として「23」の文字が看取される。
e 同じく、甲10の表には、「PM 133 312」に関し、Stk(当審訳:個数)として「3」、Bezeichnung(当審訳:名称)として「Statorsch(当審訳:ステータ翼).VV L 171/60x2,5」、Pos.(当審訳:位置)として「24」の文字が看取される。
(サ)甲14から把握できる事項
a 甲14の第333ページの上方には、「Turbopumps(当審訳:ターボポンプ)」の文字が看取される。
b 甲14の第372ページの上方には、「HiPaceTM 700 Maximum vacuum performance in a compact design with a pumping speed of 685 l/s for N2:(当審訳:HiPace700TM N2に対して685l/sの排気速度を備える小型設計の最高真空性能)」の文字が看取される。
c 甲14の第374ページには、「HiPaceTM 700,with TC400,DN 160 ISO-K」の「Order number pump」について、「PM P03 933」の文字が看取され、「pumping speed for N2(当審訳:N2に対する排気速度)」について、「685 l/s」の文字が看取される。
d 甲14の第800ページには、「The Vacuum Technology Book,effective September 1,2008(当審訳:真空技術ブック,2008年9月1日有効)」、「Pfeiffer Vacuum GmbH,September 2008(当審訳:プファイファー・バキューム社,2008年9月)」の文字が看取される。
(シ)甲15-1から把握できる事項
a 甲15-1の右上には、「Pfeiffer Vacuum GmbH(当審訳:プファイファー・バキューム社)」の文字が看取されるとともに、「Rechnung 530579-19.12.2008(当審訳:請求書 530579-2008年12月19日)」の文字が看取される。
b 甲15-1の左上には、「PINK GmbH(当審訳:ピンク社)」の文字が看取されるとともに、「Liferanschrift:Pink GmbH(当審訳:配送先住所 ピンク社)」の文字が看取される。
c 甲15-1の前記bに示した文字の下方には、「Rechnungsdatum und Liferdatum sind identisch,sofern nicht nachstehend andere Angaben erfolgen.(当審訳:以下特に記載しない限り請求日時と配送日時とは同一である。)」の文字が看取される。
d 甲15-1の前記cに示した文字の下方には、Beschreibung(当審訳:商品説明)として「HiPace 700 Turbo-Drag-Pumpe DN 160 ISO-K TC400,48V DC Artikelnr.(当審訳:商品番号):PM P03 933」、Menge(当審訳:数量)として「1」の文字が看取される。
イ 公然知られた又は公然実施をされた事実について
まず、甲14は、前記ア(サ)dによると、2008年9月1日有効のプファイファー・バキューム社の真空技術ブックであると認められる。該甲14の第374、375ページによると、ターボポンプであるHiPace700には、複数のタイプが存在することが把握でき、そのうち「HiPaceTM 700,with TC400,DN 160 ISO-K」には、「PM P03 933」の番号が付されていることが把握できる。
そして、甲15-1の記載(前記ア(シ)参照)によると、この「PM P03 933」という商品番号が付された「HiPace 700 Turbo-Drag-Pumpe DN 160 ISO-K TC400,48V DC」が、プファイファー・バキューム社からピンク社に配送され、その配送日は、甲15-1に記載された2008年12月19日と同一の日、あるいは少なくともその日に近い日であると把握できる。
この甲15-1から把握できる事項は、その日付や商品番号等に関し、甲14の記載内容の他、甲11のミルコ メコタ氏の宣誓供述書の内容と矛盾がなく、また、甲15-1から把握される配送が実際に行われたことは、甲15-2のピンク社作成の受領確認書の記載内容から裏付けられるものである。
以上によると、本件特許の出願より前の2008年12月19日、あるいは該2008年12月19日に近い日に、「PM P03 933」という商品番号が付された「HiPace 700 Turbo-Drag-Pumpe DN 160 ISO-K TC400,48V DC」が、プファイファー・バキューム社からピンク社に譲渡されたと認められ、また、この譲渡にあたり、特段の秘密保持契約、秘密保持義務等があったとも認められない。すると、「PM P03 933」という商品番号が付された「HiPace 700 Turbo-Drag-Pumpe DN 160 ISO-K TC400,48V DC」は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、公然知られた又は公然実施されたと認められる。
ウ 公然知られた又は公然実施をされた発明について
(ア)前記イで示したように、公然知られた又は公然実施をされたと認められる「PM P03 933」という商品番号が付された「HiPace 700 Turbo-Drag-Pumpe DN 160 ISO-K TC400,48V DC」の構成は、同じく、「PM P03 933」、「HiPace 700 Turbo-Drag-Pumpe(当審訳:ターボドラッグポンプ)」という文字が看取される甲1に示されたものであると推認でき、前記ア(ア)bに示したように、ロータ軸方向に設けられた6段のロータ翼と、6段のロータ翼に対してロータ軸方向に交互に配置された6段のステータ翼を備えているといえる。
(イ)また、同じく、「PM P03 933」、「HiPace 700 Turbo-Drag-Pumpe(当審訳:ターボドラッグポンプ)」という文字が看取され、甲1のHiPace 700の部品表と解される甲10によると、甲1において「1」の番号が付された部品は「PM 133 240 AX」で示される部品であり、その構成は「PM 133 240 AX」という文字が看取される甲2に示されたものといえる。したがって、前記ア(イ)bによると、1段目のロータ翼、2段目及び3段目のロータ翼、4段目及び5段目のロータ翼並びに6段目のロータ翼は、それぞれ「2」、「3」、「4」及び「5」の番号が付された部品から構成されているといえる。
(ウ)次に、甲2と同じ「PM 133 240 AX」という文字が看取され、甲2に示される「PM 133 240 AX」の部品表と解される甲6によると、甲2において「2」、「3」、「4」及び「5」の番号が付された部品は、それぞれ「PM 133 505」、「PM 133 307」、「PM 133 308」及び「PM 133 309」で示される部品であると把握できる。このうち「PM 133 505」、「PM 133 307」及び「PM 133 308」については、それぞれ甲3、甲4及び甲5で看取することができ、前記ア(ウ)b、(エ)b及び(オ)bによると、それぞれ14枚、26枚及び24枚のブレードが放射状に形成されたロータ翼に関するものといえる。
(エ)前記(イ)及び(ウ)によると、甲1において「1」の番号が付された部品は、14枚、26枚、24枚等のブレードが放射状に形成された6段のロータ翼を備え、6段のロータ翼のブレード枚数が、1段目は14枚、2段目及び3段目は26枚、4段目及び5段目は24枚であるといえる。
(オ)また、甲1のHiPace 700において、前記ア(ア)bによると、1段目のステータ翼、2段目及び3段目のステータ翼並びに4段目~6段目のステータ翼は、それぞれ「22」、「23」及び「24」の番号が付された部品から構成されているといえる。
(カ)そして、甲1のHiPace 700の部品表と解される甲10によると、甲1において「22」、「23」及び「24」の番号が付された部品は、それぞれ「PM 133 310」、「PM 133 311」及び「PM 133 312」で示される部品であると把握できる。これらの「PM 133 310」、「PM 133 311」及び「PM 133 312」については、それぞれ甲7、甲8及び甲9で看取することができ、前記ア(キ)b、(ク)b及び(ケ)bによると、それぞれ22枚、26枚及び26枚のブレードが放射状に設けられたステータ翼に関するものといえる。
(キ)前記(オ)及び(カ)によると、甲1のHiPace 700は、22枚又は26枚のブレードが放射状に設けられた6段のステータ翼を備え、6段のステータ翼のブレード枚数が、1段目は22枚、2段目及び3段目は26枚、4段目~6段目は26枚であるといえる。
(ク)また、前記イで示したように、公然知られた又は公然実施をされたと認められる「PM P03 933」という商品番号が付された「HiPace 700 Turbo-Drag-Pumpe DN 160 ISO-K TC400,48V DC」は、前記ア(サ)cによると、N2に対する排気速度が、685 l/sであるといえる。
(ケ)以上によると、「PM P03 933」という商品番号が付された「HiPace 700 Turbo-Drag-Pumpe DN 160 ISO-K TC400,48V DC」として、公然知られた又は公然実施をされた発明(以下「引用発明1」という。)は、次のとおりのものと認められる。
「14枚、26枚、24枚等のブレードが放射状に形成され、ロータ軸方向に設けられた6段のロータ翼と、
6段の前記ロータ翼に対してロータ軸方向に交互に配置され、22枚又は26枚のブレードが放射状に設けられた6段のステータ翼と、を備え、
前記6段のロータ翼のブレード枚数が、1段目は14枚、2段目及び3段目は26枚、4段目及び5段目は24枚であり、
前記6段のステータ翼のブレード枚数が、1段目は22枚、2段目及び3段目は26枚、4段目~6段目は26枚であり、
N2に対する排気速度が、685 l/sである、ターボドラッグポンプ。」
エ 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と引用発明1とを対比すると、
a 引用発明1の「14枚、26枚、24枚等のブレード」及び「6段のロータ翼」は、それぞれ本件特許発明1の「複数のブレード」及び「複数段のロータ翼」に相当する。
b 引用発明1の「22枚又は26枚のブレード」及び「6段のステータ翼」は、それぞれ本件特許発明1の「複数のブレード」及び「複数段のステータ翼」に相当する。
c 引用発明1の「前記6段のロータ翼のブレード枚数が、1段目は14枚、2段目及び3段目は26枚、4段目及び5段目は24枚であり」という事項における2段目のロータ翼は、ロータ軸方向において1段目のロータ翼と3段目のロータ翼の間に配置されていると解されるから、中間段であるといえ、そのブレード枚数は13(素数)×2である。また、隣接する上段といえる1段目のロータ翼のブレード枚数(14枚)とは、ブレード枚数が異なっており、その最大公約数は2である。3段目のロータ翼についても、同様に、中間段であるといえ、そのブレード枚数は13(素数)×2であり、隣接する下段といえる4段目のロータ翼のブレード枚数(24枚)とは、ブレード枚数が異なっており、その最大公約数は2である。以上によると、引用発明1の「前記6段のロータ翼のブレード枚数が、1段目は14枚、2段目及び3段目は26枚、4段目及び5段目は24枚であ」るという事項は、本件特許発明1の「前記複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定され、かつ、隣接する上段および下段のそれぞれのロータ翼とはブレード枚数が異なっており、その最大公約数が2であ」るという事項と、複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定され、かつ、少なくとも隣接する上段又は下段のロータ翼とはブレード枚数が異なっており、その最大公約数が2である点において共通する。
d 引用発明1の「ターボドラッグポンプ」は、甲12及び甲13の記載も踏まえると、本件特許発明1の「ターボ分子ポンプ」に相当する。
e そうすると、本件特許発明1と引用発明1とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点1>
「複数のブレードが放射状に形成され、ロータ軸方向に設けられた複数段のロータ翼と、
複数段の前記ロータ翼に対してロータ軸方向に交互に配置され、複数のブレードが放射状に設けられた複数段のステータ翼と、を備え、
前記複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定され、かつ、少なくとも隣接する上段又は下段のロータ翼とはブレード枚数が異なっており、その最大公約数が2である、ターボ分子ポンプ。」
<相違点1>
ブレード枚数が「素数×2」に設定された、ロータ翼の中間段の少なくとも1段と、ブレード枚数が異なっており、その最大公約数が2である隣接するロータ翼について、本件特許発明1は、「上段および下段のそれぞれの」ロータ翼であるのに対し、引用発明1は、2段目のロータ翼に対しては1段目(上段)のロータ翼だけであり、3段目のロータ翼に対しては4段目(下段)のロータ翼だけである点。
(イ)判断
以下、相違点1について、検討する。
まず、この相違点1は、実質的な相違点であるから、本件特許発明1と引用発明1とは、相違点1において相違する。
さらに、引用発明1のターボドラッグポンプは、「6段のロータ翼のブレード枚数が、1段目は14枚、2段目及び3段目は26枚、4段目及び5段目は24枚であ」るところ、これらのブレード枚数を変更する動機付けがない。
また、本件特許発明1は、特許明細書等の段落【0034】~【0038】(前記第2 2(1)イ(イ)参照)等の記載によると、ロータ翼のブレード枚数を「素数×2」に設定し、該ロータ翼に隣接するロータ翼のブレード枚数との最大公約数を2とすることにより、180deg毎に上下のブレードの位置が一致し、重複領域R2ovの周方向の寸法の合計を小さくできるため、排気性能への逆流の影響をより小さくすることができるという技術思想に基づくものと解されるが、引用発明1から当該技術思想を把握することはできないため、仮に、引用発明1において、ターボドラッグポンプの性能を向上するなどの目的で、ロータ翼のブレード枚数を設計変更するとしても、2段目を26枚、1段目を14枚に保ったまま、3段目を26枚から、2段目の26枚との最大公約数が2となる枚数に変更する理由はない。同様に、引用発明1において、3段目を26枚、4段目を24枚に保ったまま、2段目を26枚から、3段目の26枚との最大公約数が2となる枚数に変更する理由はない。
そうすると、引用発明1において、本件特許発明1の前記相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者といえども、容易に想到し得たものではない。
(ウ)まとめ
したがって、本件特許発明1は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、公然知られた又は公然実施をされた引用発明1と相違し、特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当しない。
また、本件特許発明1は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件特許発明2、3、6、7について
本件特許発明2、3、6、7は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含む発明であり、本件特許発明1の相違点1に係る発明特定事項を備えるものであるから、前記エに示した理由と同様の理由により、引用発明1と相違し、特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当せず、また、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
カ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和6年11月15日に提出した意見書の第6ページ第7行~末行において、進歩性(特許法第29条第2項)違反について、「翼の形状、角度および枚数、ロータ自体の回転数、排気する気体の組成等を考慮することなく、ブレード枚数のみを規定することは単なる設計事項であ」る旨を主張しているが、前記エ(イ)に示したように、仮に、引用発明1において、ターボドラッグポンプの性能を向上するなどの目的で、ロータ翼のブレード枚数を設計変更するとしても、本件特許発明1の前記相違点1に係る発明特定事項となるように変更する理由はない。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。
(2)サポート要件について
ア サポート要件の判断について
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との記載を対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆が無くとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 本件特許発明1~3、6、7について
(ア)本件特許の特許明細書等の発明の詳細な説明には、「しかしながら、大流量、高背圧条件では、気体分子がタービン翼段の1段分を通過する間の分子間衝突が増加して気体分子の逆流の影響が顕著になり、排気性が低下するという問題が生じる。そのため、特許文献1に記載のターボ分子ポンプでは、ロータ翼およびステータ翼の翼形状を、逆流防止効果を発揮する形状とすることで、逆流の影響の低下を図っている。」(段落【0003】)、「しかしながら、特許文献1に記載のターボ分子ポンプでは、翼の傾きが吸気側から排気側にかけて変化する複雑な翼形状であるため、翼加工が難しく加工コスト増が問題となる。」(段落【0005】)と記載されていることから、発明が解決しようとする課題は、大流量、高背圧条件(段落【0026】によると、中間流・連続流条件)において、気体分子の逆流の影響が顕著になり、排気性が低下するという問題を、加工コスト増とすることなく解決することであると解される。
(イ)そして、発明の詳細な説明には、該課題を解決するための手段として、「本実施の形態では、一対のステータ翼30または一対のロータ翼40の重複領域がより小さくなるように、翼枚数または翼配置を工夫することで逆流の影響を低減し、中間流・連続流条件における排気性能の向上を図るようにした」(段落【0031】)ことが記載され、より具体的な「翼枚数または翼配置」として、「上段のブレード枚数36枚のステータ翼30と、ブレード枚数が34=17×2=「素数×2」の下段のステータ翼30との組み合わせ」(段落【0034】)とすることが記載されている。そして、該組み合わせにより、「36と34との最大公約数は2なので、180deg毎に上下のブレード300の位置が一致することにな」り(段落【0036】)、「重複領域R2ovの周方向寸法の合計が小さくな」(段落【0038】)り、「その結果、排気性能への逆流の影響をより小さくすることができ、中間流・連続流条件における排気性能の向上を図ることができる」(段落【0038】)という作用効果を奏することが記載されている。また、「一対のロータ翼40のブレード枚数に関しても、ステータ翼30と同様の説明が成り立ち、同様の効果を奏することができる。」(段落【0038】)ことも記載されている。
以上によると、前記(ア)に示した課題を解決するための手段は、ロータ翼又はステータ翼のブレード枚数が「素数×2」に設定され、かつ隣接する段のロータ翼又はステータ翼との最大公約数が2であることと認められる。
(ウ)そして、本件訂正が認められたことにより、本件特許発明1~3、6、7は、「複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定され、かつ隣接する上段及び下段のそれぞれのロータ翼とは、ブレード枚数が異なっており、その最大公約数が2である」ことを発明特定事項に備えたものとなり、前記(イ)に示した課題を解決するための手段が反映されたものとなった。
したがって、本件特許発明1~3、6、7は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえるとともに、発明の詳細な説明の記載により当業者が前記(ア)に示した課題を解決できると認識できる範囲のものである。
(エ)以上によると、特許請求の範囲の請求項1~3、6、7の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)に適合するものである。
ウ 本件特許発明4、5について
本件訂正が認められたことにより、本件特許発明4、5は、「複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定され、かつ隣接する段のロータ翼とは、ブレード枚数が異なっており、その最大公約数が2であ」ることを発明特定事項に備えたものとなり、前記イ(イ)に示した課題を解決するための手段が反映されたものとなった。
したがって、本件特許発明4、5は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえるとともに、発明の詳細な説明の記載により当業者が前記イ(ア)に示した課題を解決できると認識できる範囲のものである。
以上によると、特許請求の範囲の請求項4、5の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)に適合するものである。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
特許異議申立書において、特許異議申立人が申立てた、特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
(理由1)特許法第29条第1項第1号又は第2号、同法第29条第2項(同法第113条第2号)
請求項1~3、6、7に係る発明は、甲1~甲15に記載のとおり、その出願前に日本国又は外国において公然知られ、公然実施された発明であり、請求項4、5に係る発明は設計事項である。
(理由2)特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
請求項1~7に係る発明は、甲第16号証、甲第17号証に記載された発明に基き、その出願前に当業者が容易にすることができた発明である。
(理由3)特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)
請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に開示された内容を超えるものであり、サポート要件に違反するものである。
(理由4)特許法第17条の2第3項(同法第113条第1号)
令和5年6月1日付けでなされた請求項1~3についての補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさない補正である。
このうち、令和6年7月22日付けの取消理由通知では、前記理由1における請求項4、5に係る発明に対するもの、前記理由2及び前記理由4は採用しなかった。
2 前記理由1における請求項4、5に係る発明に対するものについて
(1)本件特許発明4について
ア 対比
本件特許発明4と引用発明1とを対比すると、前記第4 2(1)エ(ア)に示した、本件特許発明1と引用発明1との対比と同様のことがいえ、さらに、引用発明1の「前記6段のロータ翼のブレード枚数が、1段目は14枚、2段目及び3段目は26枚、4段目及び5段目は24枚であり」という事項における中間段といえる2段目のロータ翼は、ブレード枚数が13(素数)×2であり、隣接する1段目のロータ翼のブレード枚数(14枚)とは、ブレード枚数が異なっており、その最大公約数は2である。同様に、中間段といえる3段目のロータ翼についても、ブレード枚数は13(素数)×2であり、隣接する4段目のロータ翼のブレード枚数(24枚)とは、ブレード枚数が異なっており、その最大公約数は2である。以上によると、引用発明1の「前記6段のロータ翼のブレード枚数が、1段目は14枚、2段目及び3段目は26枚、4段目及び5段目は24枚であり」という事項は、本件特許発明4の「前記複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定され、かつ、隣接する段のロータ翼とはブレード枚数が異なっており、その最大公約数が2であり」という事項に相当する。
そうすると、本件特許発明4と引用発明1とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点2>
「複数のブレードが放射状に形成され、ロータ軸方向に設けられた複数段のロータ翼と、
複数段の前記ロータ翼に対してロータ軸方向に交互に配置され、複数のブレードが放射状に設けられた複数段のステータ翼と、を備え、
前記複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定され、かつ、隣接する段のロータ翼とはブレード枚数が異なっており、その最大公約数が2である、ターボ分子ポンプ。」
<相違点2>
本件特許発明4は、「排気速度が5000[L/s]以上である」のに対し、引用発明1は、N2に対する排気速度が、685 l/sである点。
イ 判断
以下、相違点2について、検討する。
引用発明1は、排気速度を5000[L/s]以上とする動機付けがない。
また、本件特許発明4は、前記第4 2(1)エ(イ)示した本件特許発明1の技術思想と同様の技術思想に基づくものと解されるが、引用発明1から当該技術思想を把握することはできないため、仮に、引用発明1において、排気速度が5000[L/s]以上となるように設計変更するのであれば、ロータ翼のブレード枚数も設計変更され得るものであり、どのような枚数となるかは明らかでない。
そうすると、引用発明1において、本件特許発明4の前記相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者といえども、容易に想到し得たものではない。
ウ まとめ
したがって、本件特許発明4は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明5について
本件特許発明5は、本件特許発明4で特定されている「排気速度が5000[L/s]以上である」という発明特定事項が、「排気速度が7000[L/s]以上である」となっている点においてのみ、本件特許発明4と異なるものである。
したがって、前記(1)に示した本件特許発明4についての理由と同様の理由により、本件特許発明5は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 前記理由2について
ア 甲第16号証について
特許異議申立人が提出した甲第16号証(中国特許出願公開第102536902号明細書、以下「甲16」という。)には、段落[0003]、[0045]~[0056]の記載、図1~図4の図示内容等を参酌すると、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「複数の動翼がロータ中心軸101に設置された第1段動翼群110、第2段動翼群120、第3段動翼群130、第4段動翼群140及び第5段動翼群150と、
前記第1段動翼群110、前記第2段動翼群120、前記第3段動翼群130、前記第4段動翼群140及び前記第5段動翼群150に対して層ごとに千鳥状に設置され、複数の静翼が設置された第1段静翼群210、第2段静翼群220、第3段静翼群230、第4段静翼群240及び第5段静翼群250と、を備え、
前記第1段動翼群110の翼数量は16~17枚、前記第2段動翼群120の翼数量は32~33枚、前記第3段動翼群130の翼数量は30~31枚、前記第4段動翼群140の翼数量は28~29枚、前記第5段動翼群150の翼数量は26~27枚であり、
前記第1段静翼群210の翼数量は50~52枚、前記第2段静翼群220の翼数量は50~52枚、前記第3段静翼群230の翼数量は50~52枚、前記第4段静翼群240の翼数量は34~36枚、前記第5段静翼群250の翼数量は34~36枚である、ターボ分子ポンプ。」
イ 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と引用発明2とを対比すると、以下の点で相違することは明らかである。
<相違点3>
本件特許発明1は、複数段のロータ翼の「中間段の少なくとも1段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定され、かつ、隣接する上段および下段のそれぞれのロータ翼とは、ブレード枚数が異なっており、その最大公約数が2である」のに対し、引用発明2は、第5段動翼群150の翼数量は26(素数×2)~27枚であるものの、第2段動翼群120、第3段動翼群130及び第4段動翼群140の少なくとも1つ、つまり中間段の少なくとも1段が、「素数×2」に設定されているとはいえない点。
(イ)判断
以下、相違点3について、検討する。
引用発明2のターボ分子ポンプは、「前記第1段動翼群110の翼数量は16~17枚、前記第2段動翼群120の翼数量は32~33枚、前記第3段動翼群130の翼数量は30~31枚、前記第4段動翼群140の翼数量は28~29枚、前記第5段動翼群150の翼数量は26~27枚であ」るところ、これらの翼数量を変更する動機付けがない。
また、本件特許発明1は、前記第4 2(1)エ(イ)示した技術思想に基づくものと解されるが、引用発明2から当該技術思想を把握することはできないため、仮に、引用発明2において、ターボ分子ポンプの性能を向上するなどの目的で、第1段動翼群110~第5段動翼群150の翼数量を設計変更するとしても、第2段動翼群120、第3段動翼群130及び第4段動翼群140の少なくとも1つ(中間段の少なくも1段)の翼数量を26枚等、素数×2にする理由はなく、同様に、隣接する上段および下段のそれぞれの動翼群の翼数量との最大公約数を2とする理由もない。
このことは、特許異議申立人が提出した甲第17号証(特開2016-75276号公報、以下「甲17」という。)の記載を考慮しても同様である。
そうすると、引用発明2において、甲17の記載を考慮しても、本件特許発明1の前記相違点3に係る発明特定事項とすることは、当業者といえども、容易に想到し得たものではない。
(ウ)まとめ
したがって、本件特許発明1は、引用発明2及び甲17に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件特許発明2、3、6、7について
本件特許発明2、3、6、7は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含む発明であり、本件特許発明1の相違点3に係る発明特定事項を備えるものであるから、前記イに示した理由と同様の理由により、引用発明2及び甲17に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件特許発明4について
(ア)対比
本件特許発明4と引用発明2とを対比すると、以下の点で相違することは明らかである。
<相違点4>
本件特許発明4は、複数段のロータ翼の「中間段の少なくとも1段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定され、かつ、隣接する段のロータ翼とは、ブレード枚数が異なっており、その最大公約数が2であ」るのに対し、引用発明2は、第5段動翼群150の翼数量は26(素数×2)~27枚であるものの、第2段動翼群120、第3段動翼群130及び第4段動翼群140の少なくとも1つ、つまり中間段の少なくとも1段が、「素数×2」に設定されているとはいえない点。
<相違点5>
本件特許発明4は、「排気速度が5000[L/s]以上である」のに対し、引用発明2は、排気速度が明らかでない点。
(イ)判断
以下、相違点4、5について、検討する。
<相違点4について>
前記イ(イ)に示した、相違点3についての理由と同様の理由により、引用発明2において、甲17の記載を考慮しても、本件特許発明4の前記相違点4に係る発明特定事項とすることは、当業者といえども、容易に想到し得たものではない。
<相違点5について>
引用発明2は、その排気速度が明らかでなく、排気速度を5000[L/s]以上とする動機付けもない。
また、本件特許発明4は、前記第4 2(1)エ(イ)示した本件特許発明1の技術思想と同様の技術思想に基づくものと解されるが、引用発明2から当該技術思想を把握することはできないため、仮に、引用発明2において、排気速度を5000[L/s]以上とした場合、第1段動翼群120~第5段動翼群150の翼数量が変更される可能性があり、どのような翼数量となるかは明らかでない。
このことは、甲17の記載を考慮しても同様である。
そうすると、引用発明2において、甲17の記載を考慮しても、本件特許発明4の前記相違点5に係る発明特定事項とすることは、当業者といえども、容易に想到し得たものではない。
(ウ)まとめ
したがって、本件特許発明4は、引用発明2及び甲17に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件特許発明5について
本件特許発明5は、本件特許発明4で特定されている「排気速度が5000[L/s]以上である」という発明特定事項が、「排気速度が7000[L/s]以上である」となっている点においてのみ、本件特許発明4と異なるものである。
したがって、前記エに示した本件特許発明4についての理由と同様の理由により、本件特許発明5は、引用発明2及び甲17に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 前記理由4について
(1)特許異議申立人は、特許異議申立書の第23ページ第4行~末行において、「願書に最初に添付した明細書等には、「複数段のステータ翼30およびロータ翼40の少なくとも1段のブレード枚数を「素数×2」・・・に設定することで、中間流・連続流における逆流の影響をより小さくすることができ、」(段落[0039])と記載されているのみであり、「複数段のステータ翼およびロータ翼の少なくとも1段」を「中間段」に限定する補正の根拠が開示されていない。」、「よって、令和5年6月1日付けでなされた「少なくとも1段」を「中間段の少なくとも1段」とする補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさない補正である。」などと主張している。
(2)しかしながら、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の段落【0034】~【0038】には、前記第2 2(1)イ(イ)に示した特許明細書等の記載と同じ事項が記載されている。すると、当初明細書等の段落【0034】~【0038】の記載からも、当業者であれば、この段落【0034】~【0038】に記載された作用効果(前記第2 2(1)イ参照)が、隣接する2つのステータ翼30(あるいは隣接する2つのロータ翼40)のブレード枚数の最大公約数が2であることにより生じるものと把握できるから、ブレード枚数を「素数×2」とするステータ翼30(あるいはロータ翼40)が中間段であっても、最上段又は最下段であっても前記作用効果が生じることは、明らかである。
さらに、当初明細書等の図10(特許明細書等の図10と同じ事項が図示されている。前記第2 2(1)イ(カ)参照)には、吸気側から5段目のロータ翼である5R、及び7段目のロータ翼である7Rを、それぞれ26枚(素数×2)、及び34枚(素数×2)とすることが示されており、複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段のブレード枚数を「素数×2」に設定することが示唆されているといえる。また、当初明細書等の段落【0038】の記載によれば、ステータ翼についても、ロータ翼と同様の示唆があるといえる。
(3)以上によると、当初明細書等の記載から、複数段のロータ翼あるいはステータ翼のうち、ブレード枚数を「素数×2」に設定する少なくとも1段を、中間段とすることが把握できるから、令和5年6月1日にされた補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。
5 その他
(1)特許異議申立人は、令和6年11月15日に提出した意見書の第2ページ第5行~第3ページ第18行等において、甲第18号証(adixen社製ターボ分子ポンプ、型番ATH2303Mのロータ翼部分の断面図、以下「甲18」という。)及び甲第19号証(型番ATH2303M等の製品のインボイス、以下「甲19」という。)を新たに提出し、本件特許発明1等の新規性違反等を主張しているが、該甲18、甲19を新たに提出し、本件特許発明1等の新たな取消理由を主張することは、特許異議の申立てをすることができる期間を、特許掲載公報の発行の日から6月以内に限るとしている制度の趣旨に反するものであり、認めることができない。
予備的に、甲18、甲19について検討しても、甲18の作成日が不明であるから、甲18に図示されたロータ翼部分を備えたターボ分子ポンプが、設計変更等されることなく、甲19に記載された2018年4月5日に譲渡等がされているか明らかでない。
さらに、甲18に図示されたロータ翼部分のブレード枚数が、仮に、1段目が20枚、2段目が22枚、3段目が21枚、4段目~6段目が19枚だとしても、素数×2である2段目の22枚と、その隣接する下段である3段目の21枚とは、最大公約数が2とならないから、本件特許発明1等とは、相違するものである。
したがって、特許異議申立人の前記主張は採用できない。
(2)特許異議申立人は、令和6年11月15日に提出した意見書の第3ページ第21行~第4ページ第20行において、総段数が15段以外、排気速度が7000L/sクラス以外の場合に、特許権者の主張する技術的効果が達成されるのか不明である旨を主張しているが、特許明細書等の段落【0034】~【0038】(前記第2 2(1)イ(イ)参照)の記載から、当業者であれば、この段落【0034】~【0038】に記載された作用効果(前記第2 2(1)イ参照)が、隣接する2つのステータ翼30(あるいは隣接する2つのロータ翼40)のブレード枚数の最大公約数が2であることにより生じるものと把握できるから、本件特許発明1等の発明特定事項を備えることにより、総段数が15段以外、排気速度が7000L/sクラス以外の場合であっても、前記作用効果を奏することを認識できるものである。
したがって、特許異議申立人の前記主張は採用できない。
(3)特許異議申立人は、令和6年11月15日に提出した意見書の第4ページ第21行~第5ページ下から2行において、素数自体が無限に存在する以上、中間段の少なくとも1段、上段及び下段のロータ翼のブレード枚数の可能性は無限に存在し、「素数×2」を用いた限定では発明の及ぶ技術的範囲が不明確である旨を主張しているが、素数が無限に存在するとしても、ターボ分子ポンプを、要求される作用効果を奏するように作動させるためには、ロータ翼及びスタータ翼のブレード枚数に上限及び下限が存在することは、当業者にとって明らかである。したがって、本件特許発明1等の範囲は、現実的に当業者が採用し得るブレード枚数に、自ずと制限されるものである。
また、本件特許発明1等の「前記複数段のロータ翼の中間段の少なくとも1段は、ブレード枚数が「素数×2」に設定され、かつ、隣接する上段および下段のそれぞれのロータ翼とはブレード枚数が異なっており、その最大公約数が2である」という発明特定事項を備えるか否かは、複数段のロータ翼の各ブレード枚数を把握することにより、把握できるものである。
以上によると、本件特許発明1等は、第三者に不利益を及ぼすほどに不明確とはいえない。
したがって、特許異議申立人の前記主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件の請求項1~請求項7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1~請求項7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700363