特許異議申立
2022-700750
プログレッシブキャビティポンプにおけるギャップ形状の調整
- 審判番号
- 2022-700750
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-538395
- 登録番号
- 7015839
- 請求日
- 2022年08月02日
- 審決日
- 2023年04月07日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】フォーゲルザンク・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
- 【権利者代理人】山尾 憲人
- 【権利者代理人】徳山 英浩
- 【権利者代理人】萩原 義則
- 【異議申立人】井上 優美子
- 審判長/審判官
- 審判長 窪田 治彦
- 審判官 関口 哲生
- 審判官 五十嵐 康弘
- 分類
- P1652.113-YAA(F04C) / P1652.121-YAA(F04C) / P1652.537-YAA(F04C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7015839号発明「プログレッシブキャビティポンプにおけるギャップ形状の調整」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7015839号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~26〕について訂正することを認める。
特許第7015839号の請求項1、18に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7015839号の請求項1ないし26に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)1月16日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2017年1月16日 (DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、令和4年1月26日にその特許権の設定登録がされ、同年2月3日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和4年8月2日に、特許異議申立人井上優美子(以下、「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立ての、その後の手続等の概要は以下のとおりである。
令和4年 9月21日付け:取消理由通知書
同年12月20日 :意見書(特許権者)の提出及び訂正請求(この訂正請求による訂正を、以下「本件訂正」という。)
令和5年 2月 7日 :意見書(異議申立人)の提出
第2 訂正の適否について
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。(なお、下線部は、各訂正事項について特許権者が付したものである。)
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、好ましくは円錐形、および/または可変偏心度(e1,e2)を備え、」
と記載されているのを、
「前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、および可変偏心度(e1,e2)を備え、」
に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項3~7、10~26も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に、「前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間に漏れギャップ(S)が形成される程度まで前記回転子と固定子との間の前記狭窄部(7)を拡大するように設定される請求項1に記載のプログレッシブキャビティポンプ。」
と記載されているのを、
「固体を充填した液体を輸送するためのプログレッシブキャビティポンプ(1)であって、
前記プログレッシブキャビティポンプ(1)は、
・螺旋回転子(4)と、
・入口(10)と出口(12)を有する固定子(2)であって、前記回転子(4)は、固定子(2)の長手方向軸(L1)の周りに回転可能に配置され、かつ前記回転子(4)に対応する螺旋状の内壁(8)を備える、前記固定子(2)と、を有し、
前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、円錐形、および/ または可変偏心度(e1,e2)を備え、
前記回転子(4)および固定子(2)は、互いに対して配置され、液体を輸送するために少なくとも1つのチャンバ(5)が形成されるように実施され、かつ前記チャンバ(5)は、狭窄部(7)、特にシールライン(D)によって遮断され、
前記プログレッシブキャビティポンプ(1)は、
・駆動シャフト(26)および駆動モータ(36)であって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)によって前記駆動モータ(36)に連結される、駆動シャフト(26)および駆動モータ(36)を有し、
前記回転子(4)と固定子(2)の相対的な軸方向位置を調整するための調整装置を有し、
前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間(7)の前記狭窄部を拡大するために実施され、
前記回転子(4)は、軸方向に変位可能であり、前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間の前記狭窄部を少なくとも部分的に拡大するために、前記回転子(4)を軸方向に変位させるように構成され、
a)前記駆動モータ(36)および前記駆動シャフト(26)を含む前記回転子(4)の駆動系(25)は、前記回転子(4)と一緒に変位可能であり、または
b)前記駆動シャフト(26)と前記駆動モータ(36)との間に配置されたギアボックス(34)によって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)と一緒に、前記駆動モータ(36)に対して変位可能であり、前記ギアボックス(34)は、前記駆動シャフト(26)を軸方向に変位させることを可能にし、
前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間に漏れギャップ(S)が形成される程度まで前記回転子と固定子との間の前記狭窄部(7)を拡大するように設定される
ことを特徴とする、
プログレッシブキャビティポンプ。」
に訂正する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項8に、「前記駆動シャフト(26)は、前記駆動モータ(36)の駆動シャフト(32)に接続されている請求項1ないし7のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ」
と記載されているのを、
「固体を充填した液体を輸送するためのプログレッシブキャビティポンプ(1)であって、
前記プログレッシブキャビティポンプ(1)は、
・螺旋回転子(4)と、
・入口(10)と出口(12)を有する固定子(2)であって、前記回転子(4)は、固定子(2)の長手方向軸(L1)の周りに回転可能に配置され、かつ前記回転子(4)に対応する螺旋状の内壁(8)を備える、前記固定子(2)と、を有し、
前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、円錐形、および/ または可変偏心度(e1,e2)を備え、
前記回転子(4)および固定子(2)は、互いに対して配置され、液体を輸送するために少なくとも1つのチャンバ(5)が形成されるように実施され、かつ前記チャンバ(5)は、狭窄部(7)、特にシールライン(D)によって遮断され、
前記プログレッシブキャビティポンプ(1)は、
・駆動シャフト(26)および駆動モータ(36)であって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)によって前記駆動モータ(36)に連結される、駆動シャフト(26)および駆動モータ(36)を有し、
前記回転子(4)と固定子(2)の相対的な軸方向位置を調整するための調整装置を有し、
前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間(7)の前記狭窄部を拡大するために実施され、
前記回転子(4)は、軸方向に変位可能であり、前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間の前記狭窄部を少なくとも部分的に拡大するために、前記回転子(4)を軸方向に変位させるように構成され、
a)前記駆動モータ(36)および前記駆動シャフト(26)を含む前記回転子(4)の駆動系(25)は、前記回転子(4)と一緒に変位可能であり、または
b)前記駆動シャフト(26)と前記駆動モータ(36)との間に配置されたギアボックス(34)によって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)と一緒に、前記駆動モータ(36)に対して変位可能であり、前記ギアボックス(34)は、前記駆動シャフト(26)を軸方向に変位させることを可能にし、
前記駆動シャフト(26)は、前記駆動モータ(36)の駆動シャフト(32)に接続されている
ことを特徴とする、
プログレッシブキャビティポンプ。」
に訂正する。
(4)訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲18に、「前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、好ましくは円錐形、および/または可変偏心度(e1,e2)を備え、」
と記載されているのを、
「前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、および可変偏心度(e1,e2)を備え、」
に訂正する。
(請求項18の記載を引用する請求項19~26も同様に訂正する。)
(5)一群の請求項及び別の訂正単位とする求め
本件訂正前の請求項1~26は、本件訂正前の請求項2~26がそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~26〕に対して請求されたものである。
また、特許権者は、訂正後の請求項2、8についての訂正が認められる場合には、一群の請求項〔1~26〕とは別の訂正単位とすることを求めている。
2 本件訂正の適否
(1)訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、回転子の形状に関し、前記出口(12)または入口(10)に向かって「テーパになる形状、好ましくは円錐形、および/または可変偏心度(e1,e2)を備え」たもののうち、「テーパになる形状、および可変偏心度(e1,e2)を備え」たものに限定するものである。すなわち、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1により、回転子の形状が限定された。したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の特許請求の範囲の請求項1に「前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、好ましくは円錐形、および/または可変偏心度(e1,e2)を備え、」と記載され、段落0001に、「回転子は、出口または入口に向かってテーパ形状、好ましくは円錐形、および/ または可変偏心度を備える。」と記載されていることから、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的
a 本件訂正前の請求項2を、請求項1の記載を引用しない請求項(独立形式)に改め、
b 本件訂正前の請求項1にあった「前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、好ましくは円錐形、および/または可変偏心度(e1,e2)を備え、」から「好ましくは」という字句を削除し、「前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、円錐形、および/または可変偏心度(e1,e2)を備え、」に、訂正するものである。
上記bの訂正について、「好ましくは」という字句を削除することにより、テーパになる形状に含まれ、その具体的な例である「円錐形」について、多義的に理解されることを排除し、選択肢の1つであることを明らかにしたものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
以上から、訂正事項2についての訂正は、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2に係る、上記(ア)a、bの訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
ウ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的
a 本件訂正前の請求項8を、請求項1の記載を引用しない請求項(独立形式)に改め、
b 本件訂正前の請求項1にあった「前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、好ましくは円錐形、および/または可変偏心度(e1,e2)を備え、」から「好ましくは」という字句を削除し、「前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、円錐形、および/または可変偏心度(e1,e2)を備え、」に、訂正するものである。
上記bの訂正について、「好ましくは」という字句を削除することにより、テーパになる形状に含まれ、その具体的な例である「円錐形」について、多義的に理解されることを排除し、選択肢の1つであることを明らかにしたものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
以上から、訂正事項3についての訂正は、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3に係る、上記(ア)a、bの訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
エ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的
訂正事項4は、回転子の形状に関し、前記出口(12)または入口(10)に向かって「テーパになる形状、好ましくは円錐形、および/または可変偏心度(e1,e2)を備え」たもののうち、「テーパになる形状、および可変偏心度(e1,e2)を備え」たものに限定するものである。すなわち、訂正事項4は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4により、回転子の形状が限定された。したがって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
また、訂正事項4は、本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項18に「前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、好ましくは円錐形、および/または可変偏心度(e1,e2)を備え、」と記載され、段落0001に、「回転子は、出口または入口に向かってテーパ形状、好ましくは円錐形、および/または可変偏心度を備える。」と記載されていることから、訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
3 独立特許要件について
(1)請求項1、18について
本件においては、本件訂正前の請求項1、18について特許異議申立がされているので、本件訂正後の請求項1、18に係る発明に関して、独立特許要件は課されない。
(2)請求項2~17、19~26について
ア 本件訂正前の請求項2~17、19~26は特許異議の申立てがされていない請求項であるから、本件訂正後の請求項2~17、19~26に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなくてはならない(特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第7項)。
そこで、本件訂正後の請求項2~17、19~26に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。
なお、本件訂正により訂正された訂正後の請求項1~26に係る発明について、後述の第3で示すように、請求項順に「本件発明1」、「本件発明2」などともいう。
(ア)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の「前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、および可変偏心度(e1,e2)を備え、」という特定事項を「前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、円錐形、および/または可変偏心度(e1,e2)を備え、」という特定事項に替えて、それ以外の本件発明1の発明特定事項を全て含む独立形式としたものである。
したがって、本件発明2と後述の甲1発明1(下記第4の2(1)イを参照。)とを対比すると、両者は、少なくとも、下記第5の1(1)アで示した、相違点1-2及び相違点1-3で相違する。
そして、下記第5の1(1)イ(イ)及び(ウ)で検討するとおり、甲1発明1において、相違点1-2に係る構成及び相違点1-3に係る構成は、容易に想到し得たものでない。
また、本件発明2と後述の甲2発明1(下記第4の2(2)イを参照。)とを対比すると、両者は、少なくとも、下記第5の2(1)アで示した、相違点2-2及び相違点2-3で相違する。
そして、下記第5の1(2)イ(イ)及び(ウ)で検討するとおり、甲2発明1において、相違点2-2に係る構成及び相違点2-3に係る構成は、容易に想到し得たものでない。
以上によれば、その余の点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明1、甲3~4に記載の技術事項(下記第4の2(3)~(4)を参照。)及び参考1~2に記載の技術事項(下記第4の2(6)~(7)を参照。)に基いて、又は、甲2発明1、甲3~4に記載の技術事項及び参考1~2に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件発明3~7について
本件発明3~7は、本件発明1、2を、直接的又は間接的に引用するものである。
したがって、本件発明3~7と後述の甲1発明1(下記第4の2(1)イを参照。)とをそれぞれ対比すると、両者は、少なくとも、下記第5の1(1)アで示した、相違点1-2及び相違点1-3で相違する。
そして、下記第5の1(1)イ(イ)及び(ウ)で検討するとおり、甲1発明1において、相違点1-2に係る構成及び相違点1-3に係る構成は、容易に想到し得たものでない。
また、本件発明3~7と後述の甲2発明1(下記第4の2(2)イを参照。)とをそれぞれ対比すると、両者は、少なくとも、下記第5の2(1)アで示した、相違点2-2及び相違点2-3で相違する。
そして、下記第5の1(2)イ(イ)及び(ウ)で検討するとおり、甲2発明1において、相違点2-2に係る構成及び相違点2-3に係る構成は、容易に想到し得たものでない。
以上によれば、その余の点について検討するまでもなく、本件発明3~7は、甲1発明1、甲3~4に記載の技術事項(下記第4の2(3)~(4)を参照。)及び参考1~2に記載の技術事項(下記第4の2(6)~(7)を参照。)に基いて、又は、甲2発明1、甲3~4に記載の技術事項及び参考1~2に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ)本件発明8について
本件発明8は、本件発明1の「前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、および可変偏心度(e1,e2)を備え、」という特定事項を「前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、円錐形、および/または可変偏心度(e1,e2)を備え、」という特定事項に替えて、それ以外の本件発明1の発明特定事項を全て含む独立形式としたものである。
したがって、本件発明8と後述の甲1発明1(下記第4の2(1)イを参照。)とを対比すると、両者は、少なくとも、下記第5の1(1)アで示した、相違点1-2及び相違点1-3で相違する。
そして、下記第5の1(1)イ(イ)及び(ウ)で検討するとおり、甲1発明1において、相違点1-2に係る構成及び相違点1-3に係る構成は、容易に想到し得たものでない。
また、本件発明8と甲2発明1(下記第4の2(2)イを参照。)とを対比すると、両者は、少なくとも、下記第5の2(1)アで示した、相違点2-2及び相違点2-3で相違する。
そして、下記第5の1(2)イ(イ)及び(ウ)で検討したとおり、甲2発明1において、相違点2-2に係る構成及び相違点2-3に係る構成は、容易に想到し得たものでない。
以上によれば、その余の点について検討するまでもなく、本件発明8は、甲1発明1、甲3~4に記載の技術事項(下記第4の2(3)~(4)を参照。)及び参考1~2に記載の技術事項(下記第4の2(6)~(7)を参照。)に基いて、又は、甲2発明1、甲3~4に記載の技術事項及び参考1~2に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(エ)本件発明9について
本件発明9は、本件発明8を引用するものである。
したがって、本件発明9と後述の甲1発明1(下記第4の2(1)イを参照。)とを対比すると、両者は、少なくとも、下記第5の1(1)アで示した、相違点1-2及び相違点1-3で相違する。
そして、下記第5の1(1)イ(イ)及び(ウ)で検討したとおり、甲1発明1において、相違点1-2に係る構成及び相違点1-3に係る構成は、容易に想到し得たものでない。
また、本件発明9と後述の甲2発明1(下記第4の2(2)イを参照。)とを対比すると、両者は、少なくとも、相違点2-2及び相違点2-3で相違する。
そして、下記第5の1(2)イ(イ)及び(ウ)で検討するとおり、甲2発明1において、相違点2-2に係る構成及び相違点2-3に係る構成は、容易に想到し得たものでない。
以上によれば、その余の点について検討するまでもなく、本件発明9は、甲1発明1、甲3~4に記載の技術事項(下記第4の2(3)~(4)を参照。)及び参考1~2に記載の技術事項(下記第4の2(6)~(7)を参照。)に基いて、又は、甲2発明1、甲3~4に記載の技術事項及び参考1~2に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(オ)本件発明10~17について
本件発明10~17は、本件発明1、2を、直接的又は間接的に引用するものである。
したがって、本件発明10~17と後述の甲1発明1(下記第4の2(1)イを参照。)とをそれぞれ対比すると、両者は、少なくとも、下記第5の1(1)アで示した、上記相違点1-2及び相違点1-3で相違する。
そして、下記第5の1(1)イ(イ)及び(ウ)で検討したとおり、甲1発明1において、相違点1-2に係る構成及び相違点1-3に係る構成は、容易に想到し得たものでない。
また、本件発明10~17と後述の甲2発明1(下記第4の2(2)イを参照。)とをそれぞれ対比すると、両者は、少なくとも、下記第5の2(1)アで示した、相違点2-2及び相違点2-3で相違する。
そして、下記第5の1(2)イ(イ)及び(ウ)で検討するとおり、甲2発明1において、相違点2-2に係る構成及び相違点2-3に係る構成は、容易に想到し得たものでない。
以上によれば、その余の点について検討するまでもなく、本件発明10~17は、甲1発明1、甲3~4に記載の技術事項(下記第4の2(3)~(4)を参照。)及び参考1~2に記載の技術事項(下記第4の2(6)~(7)を参照。)に基いて、又は、甲2発明1、甲3~4に記載の技術事項及び参考1~2に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(カ)本件発明19~26について
本件発明19~26は、本件発明18を、直接的又は間接的に引用するものである。
したがって、本件発明19~26と、後述の甲1発明1を全て引用する甲1発明2(下記第4の2(1)イを参照。)とをそれぞれ対比すると、両者は、少なくとも、下記第5の1(1)アで示した、相違点1-1、相違点1-2及び相違点1-3で相違する。
そして、下記第5の1(1)イ(ア)、(イ)及び(ウ)で検討するとおり、甲1発明1において、相違点1-1に係る構成、相違点1-2に係る構成及び相違点1-3に係る構成は、容易に想到し得たものでなく、甲1発明2においても同様に、相違点1-1に係る構成、相違点1-2に係る構成及び相違点1-3に係る構成は、容易に想到し得たものでない。
また、本件発明19~26と甲2発明1を全て引用する甲2発明2(下記第4の2(2)イを参照。)とをそれぞれ対比すると、両者は、少なくとも、下記第5の2(1)アで示した、相違点2-1、相違点2-2及び相違点2-3で相違する。
そして、下記第5の1(2)イ(ア)、(イ)及び(ウ)で検討するとおり、甲2発明1において、相違点2-1に係る構成、相違点2-2に係る構成及び相違点2-3に係る構成は、容易に想到し得たものでなく、甲2発明2においても同様に、相違点2-1に係る構成、相違点2-2に係る構成及び上記相違点2-3に係る構成は、容易に想到し得たものでない。
以上によれば、その余の点について検討するまでもなく、本件発明19~26は、甲1発明2、甲3~5に記載の技術事項(下記第4の2(3)~(5)を参照。)及び参考1~2に記載の技術事項(下記第4の2(6)~(7)を参照。)に基いて、又は、甲2発明2、甲3~5に記載の技術事項及び参考1~2に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 以上によれば、本件訂正後の請求項2~17、19~26に係る発明は新規性及び進歩性を有する。また、サポート要件についても、後述の第6と同様の理由により、本件訂正後の請求項2~17、19~26に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないとは認められない。さらに、その他に本件訂正後の請求項2~17、19~26に係る発明を拒絶するべき理由もないから、訂正後の請求項2~17、19~26に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
4 一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~26は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係であるから、請求項1~26は、一群の請求項である。そして、本件訂正は、請求項1~26について訂正することを求めるものであるから、一群の請求項ごとに訂正の請求をするものである。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項及び第7項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~26〕について訂正することを認める。
第3 本件発明について
本件訂正により訂正された訂正後の請求項1~26に係る発明(以下、請求項順に「本件発明1」、「本件発明2」などといい、また、本件発明1~26を総称して「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~26に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
固体を充填した液体を輸送するためのプログレッシブキャビティポンプ(1)であって、
前記プログレッシブキャビティポンプ(1)は、
・螺旋回転子(4)と、
・入口(10)と出口(12)を有する固定子(2)であって、前記回転子(4)は、固定子(2)の長手方向軸(L1)の周りに回転可能に配置され、かつ前記回転子(4)に対応する螺旋状の内壁(8)を備える、前記固定子(2)と、を有し、
前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、および可変偏心度(e1,e2)を備え、
前記回転子(4)および固定子(2)は、互いに対して配置され、液体を輸送するために少なくとも1つのチャンバ(5)が形成されるように実施され、かつ前記チャンバ(5)は、狭窄部(7)、特にシールライン(D)によって遮断され、
前記プログレッシブキャビティポンプ(1)は、
・駆動シャフト(26)および駆動モータ(36)であって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)によって前記駆動モータ(36)に連結される、駆動シャフト(26)および駆動モータ(36)を有し、
前記回転子(4)と固定子(2)の相対的な軸方向位置を調整するための調整装置を有し、
前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間(7)の前記狭窄部を拡大するために実施され、
前記回転子(4)は、軸方向に変位可能であり、前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間の前記狭窄部を少なくとも部分的に拡大するために、前記回転子(4)を軸方向に変位させるように構成され、
a)前記駆動モータ(36)および前記駆動シャフト(26)を含む前記回転子(4)の駆動系(25)は、前記回転子(4)と一緒に変位可能であり、または
b)前記駆動シャフト(26)と前記駆動モータ(36)との間に配置されたギアボックス(34)によって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)と一緒に、前記駆動モータ(36)に対して変位可能であり、前記ギアボックス(34)は、前記駆動シャフト(26)を軸方向に変位させることを可能にする、
ことを特徴とする、
プログレッシブキャビティポンプ。
【請求項2】
固体を充填した液体を輸送するためのプログレッシブキャビティポンプ(1)であって、
前記プログレッシブキャビティポンプ(1)は、
・螺旋回転子(4)と、
・入口(10)と出口(12)を有する固定子(2)であって、前記回転子(4)は、固定子(2)の長手方向軸(L1)の周りに回転可能に配置され、かつ前記回転子(4)に対応する螺旋状の内壁(8)を備える、前記固定子(2)と、を有し、
前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、円錐形、および/または可変偏心度(e1,e2)を備え、
前記回転子(4)および固定子(2)は、互いに対して配置され、液体を輸送するために少なくとも1つのチャンバ(5)が形成されるように実施され、かつ前記チャンバ(5)は、狭窄部(7)、特にシールライン(D)によって遮断され、
前記プログレッシブキャビティポンプ(1)は、
・駆動シャフト(26)および駆動モータ(36)であって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)によって前記駆動モータ(36)に連結される、駆動シャフト(26)および駆動モータ(36)を有し、
前記回転子(4)と固定子(2)の相対的な軸方向位置を調整するための調整装置を有し、
前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間(7)の前記狭窄部を拡大するために実施され、
前記回転子(4)は、軸方向に変位可能であり、前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間の前記狭窄部を少なくとも部分的に拡大するために、前記回転子(4)を軸方向に変位させるように構成され、
a)前記駆動モータ(36)および前記駆動シャフト(26)を含む前記回転子(4)の駆動系(25)は、前記回転子(4)と一緒に変位可能であり、または
b)前記駆動シャフト(26)と前記駆動モータ(36)との間に配置されたギアボックス(34)によって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)と一緒に、前記駆動モータ(36)に対して変位可能であり、前記ギアボックス(34)は、前記駆動シャフト(26)を軸方向に変位させることを可能にし、
前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間に漏れギャップ(S)が形成される程度まで前記回転子と固定子との間の前記狭窄部(7)を拡大するように設定される
ことを特徴とする、
プログレッシブキャビティポンプ。
【請求項3】
前記調整装置(39)は、1つまたは複数の所定の動作パラメータに応じて前記狭窄部(7)の拡大を実行するように設定されている請求項1または2に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項4】
前記動作パラメータの1つは、前記固定子(2)および/または前記回転子(4)の温度である請求項3に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項5】
前記動作パラメータの1つは、輸送される液体の量である請求項3または4に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項6】
前記動作パラメータのうちの1つは、前記固定子(2)の前記入口(10)における液レベルである請求項3、4、または5に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項7】
前記駆動モータ(36)は、静止しており変位不可能である請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項8】
固体を充填した液体を輸送するためのプログレッシブキャビティポンプ(1)であって、
前記プログレッシブキャビティポンプ(1)は、
・螺旋回転子(4)と、
・入口(10)と出口(12)を有する固定子(2)であって、前記回転子(4)は、固定子(2)の長手方向軸(L1)の周りに回転可能に配置され、かつ前記回転子(4)に対応する螺旋状の内壁(8)を備える、前記固定子(2)と、を有し、
前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、円錐形、および/または可変偏心度(e1,e2)を備え、
前記回転子(4)および固定子(2)は、互いに対して配置され、液体を輸送するために少なくとも1つのチャンバ(5)が形成されるように実施され、かつ前記チャンバ(5)は、狭窄部(7)、特にシールライン(D)によって遮断され、
前記プログレッシブキャビティポンプ(1)は、
・駆動シャフト(26)および駆動モータ(36)であって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)によって前記駆動モータ(36)に連結される、駆動シャフト(26)および駆動モータ(36)を有し、
前記回転子(4)と固定子(2)の相対的な軸方向位置を調整するための調整装置を有し、
前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間(7)の前記狭窄部を拡大するために実施され、
前記回転子(4)は、軸方向に変位可能であり、前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間の前記狭窄部を少なくとも部分的に拡大するために、前記回転子(4)を軸方向に変位させるように構成され、
a)前記駆動モータ(36)および前記駆動シャフト(26)を含む前記回転子(4)の駆動系(25)は、前記回転子(4)と一緒に変位可能であり、または
b)前記駆動シャフト(26)と前記駆動モータ(36)との間に配置されたギアボックス(34)によって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)と一緒に、前記駆動モータ(36)に対して変位可能であり、前記ギアボックス(34)は、前記駆動シャフト(26)を軸方向に変位させることを可能にし、
前記駆動シャフト(26)は、前記駆動モータ(36)の駆動シャフト(32)に接続されている
ことを特徴とする、
プログレッシブキャビティポンプ。
【請求項9】
前記駆動シャフト(32)は、前記ギアボックス(34)の少なくとも1つの出力ギア(68)において軸方向に変位可能に支持されている請求項8に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項10】
前記固定子(2)は、軸方向に変位可能に支持され、前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間の前記狭窄部(7)を少なくとも部分的に拡大するために、前記固定子(2)を軸方向に変位させるように設定される請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項11】
前記駆動シャフト(26)は、少なくとも2つの部分を有し、前記回転子(4)を軸方向に変位させるために前記駆動シャフト(26)を伸縮させることを可能にする拡張部材(80)を備える請求項1ないし10のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項12】
前記固定子の前記長手方向軸(L1)は、動作中に実質的に垂直に配向され、前記固定子(2)の前記出口(12)は、上部にある請求項1ないし11のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項13】
前記固定子(2)は、少なくとも前記内壁(8)の領域において柔軟な材料、エラストマから形成されている請求項1ないし12のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項14】
前記調整装置は、
・前記回転子を回転させるための駆動モータの始動手順の開始前または停止手順の間または終了後に、前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を拡大するため、および
・前記駆動モータの始動手順中に開始する前に前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を収縮させるため、
実装されている請求項1ないし13のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項15】
前記調整装置は、圧力信号を受信するための入力インターフェースを備え、前記圧力信号に応じて前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を拡大または収縮させるように実装される請求項1ないし14のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項16】
前記調整装置は、体積信号を受信するための入力インターフェースを備え、前記体積信号に応じて前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を拡大するように実装され、輸送手順の開始以降に輸送された体積が特定の体積に対応することを知らせる体積信号の値に対して、前記回転子と固定子との間の前記狭窄部が拡大されるようにし、そのようにして、前記固定子の前記出口からの体積のそれ以上の輸送は起こらない請求項1ないし15のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項17】
前記調整装置は、前記回転子が前記固定子に対して回転している間に、前記固定子(2)に対する前記回転子(4)の軸方向位置を調整するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし16のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項18】
請求項1ないし17のうち少なくともいずれか1項に記載の固体を充填した液体を輸送するためのプログレッシブキャビティポンプ(1)を動作させるための方法であって、
前記プログレッシブキャビティポンプ(1)は、
・螺旋回転子(4)と、
・入口(10)と出口(12)を有する固定子(2)であって、前記回転子(4)は、固定子(2)の長手方向軸(L1)の周りに回転可能に配置され、かつ前記回転子(4)に対応する螺旋状の内壁(8)を備える、前記固定子(2)と、を有し、
前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、および可変偏心度(e1,e2)を備え、
前記回転子(4)および固定子(2)は、互いに対して配置され、液体を輸送するために少なくとも1つのチャンバ(5)が形成されるように実施され、かつ前記チャンバ(5)は、狭窄部(7)、特にシールライン(D)によって遮断され、
前記プログレッシブキャビティポンプ(1)は、
・駆動シャフト(26)および駆動モータ(36)であって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)によって前記駆動モータ(36)に連結される、駆動シャフト(26)および駆動モータ(36)を有し、
前記回転子(4)と固定子(2)の相対的な軸方向位置を調整するための調整装置を有し、
前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間(7)の前記狭窄部を拡大するために実施され、
前記回転子(4)は、軸方向に変位可能であり、前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間の前記狭窄部を少なくとも部分的に拡大するために、前記回転子(4)を軸方向に変位させるように構成され、
a)前記駆動モータ(36)および前記駆動シャフト(26)を含む前記回転子(4)の駆動系(25)は、前記回転子(4)と一緒に変位可能であり、または
b)前記駆動シャフト(26)と前記駆動モータ(36)との間に配置されたギアボックス(34)によって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)と一緒に、前記駆動モータ(36)に対して変位可能であり、前記ギアボックス(34)は、前記駆動シャフト(26)を軸方向に変位させることを可能にする、
ことを特徴とし、
前記方法は、
・液体を輸送するために前記回転子(4)を駆動するステップと、
・前記調整装置(39)を用いて、前記回転子(4)と固定子(2)を互いに軸方向に変位させることにより、前記回転子(4)と固定子(2)の間の前記狭窄部(7)を拡大させるステップと、
・前記調整装置を用いて、前記回転子(4)と固定子(2)を互いに対して軸方向に変位させることにより、前記固定子(2)の半径方向のプリテンションを設定するステップと、
を含む方法。
【請求項19】
前記狭窄部(7)を拡大させる前記ステップは、
・前記回転子(4)と固定子(2)との間の漏れギャップ(S)を調整するステップ
を含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、
・前記回転子(4)および/または前記固定子(2)の温度を測定するステップと、
・前記測定された温度に応じて、前記回転子(4)と固定子(2)を軸方向に相対的に変位させるステップと、
をさらに含む請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、
・前記固定子(2)の前記入口(10)における液レベルを決定するステップと、
・前記決定された液レベルに応じて、前記回転子(4)と固定子(2)を軸方向に相対的に変位させるステップと、
をさらに含む請求項18ないし20のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、
・前記回転子(4)の1回転当たりに輸送される液体量を決定するステップと、
・前記決定された液体量に応じて、前記回転子(4)と固定子(2)を軸方向に相対的に変位させるステップと、
をさらに含む請求項18ないし21のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記方法は、
・前記回転子を回転させるための駆動モータの始動の開始時に、前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を拡大させるステップと、
・前記駆動モータの始動手順を開始した後、前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を収縮させるステップと、
を特徴とする請求項18ないし22のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記方法は、
・圧力を圧力センサによって捕捉するステップと、
・前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を前記圧力に応じて拡大または収縮させるステップと、
を特徴とする請求項18ないし23のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記方法は、
・特定の体積を捕捉するステップと、
・前記特定の体積に応じて、前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を拡大または収縮させるステップと、
を特徴とする請求項18ないし24のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記方法は、
前記回転子が前記固定子に対して前記液体を輸送するための回転運動で回転軸の周りに駆動されながら、前記回転子を回転軸に沿って軸方向に前記固定子に対して調整するステップ
を特徴とする請求項18ないし25のうちいずれか1項に記載の方法。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1、18に係る特許に対して、当審が令和4年9月21日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)請求項1、18に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、18に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)請求項1、18に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)請求項1、18に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、18に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(4)請求項1、18に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明及びに基いて、本件特許出願の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(5)請求項1に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明、甲第3号証に記載の技術事項及び甲第4号証に記載の技術事項、又は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証の技術事項及び甲第4号証に記載の技術事項に基いて、本件特許出願の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(6)請求項18に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明、甲第3号証に記載の技術事項、甲第4号証に記載の技術事項及び甲第5号証に記載の技術事項、又は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載の技術事項、甲第4号証に記載の技術事項及び甲第5号証に記載の技術事項に基いて、本件特許出願の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<証拠一覧>
甲第1号証:米国特許第6358027号明細書
甲第2号証:米国特許第6457958号明細書
甲第3号証:米国特許出願公開第2004/0057846号明細書
甲第4号証:特開2001-271764号公報
甲第5号証:国際公開第2015/158320号
(以下、甲第1号証~甲5号証をそれぞれ甲1~甲5という。)
2 各証拠の記載
(1)甲1について
ア 甲1には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付与した。また、日本語訳は、異議申立人から提出された翻訳文を参考にして、当審で作成した。(以下同様。))
(ア)「1. Field of the Invention
The present invention relates to the equipment and methods in oil field operations. Particularly, the invention relates to helical gear pumps.
2. Background of the Related Art
Helical gear pumps, typically known as progressive cavity pumps/motors (herein PCPs), are frequently used in oil field applications, for pumping fluids or driving downhole equipment in the wellbore.」(1欄4~12行)
(訳:1.発明の属する技術分野
本発明は、油田操業における装置および方法に関する。特に、本発明は、ヘリカルギアポンプに関する。
2.関連技術の背景
ヘリカルギアポンプは、典型的にはプログレッシブキャビティポンプ(本明細書ではPCP)として知られ、油田用途において、坑井内で流体を圧送したり、坑内装置を駆動するために頻繁に使用されている。)
(イ)「The present invention provides an adjustable rotor and/or stator, so that the interference fit and/or clearance can be adjusted. The rotor and/or stator are tapered to provide a difference in fit between the rotor and stator by manual or automatic longitudinal adjustment of their relative position.」(3欄10~14行)
(訳:本発明は、干渉嵌合及び/又はクリアランスを調整することができるように、調整可能なロータ及び/又はステータを提供する。ロータ及び/又はステータは、それらの相対位置の手動又は自動の長手方向調整によってロータとステータとの間の嵌め合い差を提供するためにテーパ状である。)
(ウ)「In one aspect, a progressive cavity pump (PCP) is provided, comprising a stator having a helical internal bore with at least two helical threads, the stator being tapered at least partially between the inlet and the outlet, a rotor having a helical periphery with one helical thread less than the stator and disposed at least partially within the stator to form a plurality of cavities between the rotor and the stator, the rotor being tapered at least partially between the inlet and the outlet.」(3欄20~28行)
(訳:一態様では、プログレッシブキャビティポンプ(PCP)が提供され、少なくとも2つの螺旋状ねじ山を有する螺旋状内部ボアを有するステータと、ステータは入口と出口の間で少なくとも部分的にテーパ状である、ステータより小さい1つの螺旋状ねじ山を有する螺旋状外周を有し、ロータとステータの間に複数のキャビティを形成するために少なくとも部分的にステータの中に配置されるロータを含み、ロータは入口と出口の間で少なくとも部分的にテーパ状である。)
(エ)「The PCP 20 has a rotor and/or stator with a tapered cross section. In one embodiment, the rotor is tapered progressively smaller at a minor diameter of the rotor from a first portion 21 to a second portion 23 of the PCP 20. Similarly, the stator could be tapered progressively smaller from the first portion 21 to the second portion 23 to correspond to the rotor. Alternatively, the tapers can be progressively larger from the first portion to the second portion.」(5欄15~23行)
(訳:PCP20は、テーパ状の断面を有するロータ及び/又はステータを有する。一実施形態では、ロータは、PCP20の第1の部分21から第2の部分23まで、ロータの小径で漸次小さくなるテーパ状である。同様に、ステータは、ロータに対応するように、第1の部分21から第2の部分23まで漸次小さくなるようにテーパが付けられ得る。あるいは、テーパは、第1の部分から第2の部分に向かって漸次大きくされ得る。)
(オ)「The PCP 20 includes a stator 22, having a shell 22a and a elastomeric member 24 generally coupled to the shell 22a, and a rotor 26 disposed therethrough.」(5欄28~30行)
(訳:PCP20は、シェル22a及びシェル22aに一般的に結合されたエラストマー部材24を有するステータ22と、それを貫通して配置されたロータ26と、を含む。)
(カ)「However, it is to be understood herein that the elastomeric member could be coupled to the rotor 26 and the stator shell formed with corresponding helical threads.」(5欄33~36行)
(訳:しかしながら、エラストマー部材は、対応するヘリカルねじで形成されたロータ26及びステータシェルに結合され得ることが、本明細書において理解されるものとする。)
(キ)「The placement of the rotor 26 in the stator 22 creates a first cavity 28, a second cavity 30 and a third cavity 32. For the purposes of the example, three cavities are shown. However, it is to be understood that the number of cavities can vary depending on the number of stages desired in the PCP. Further, the cavities progress in position up and down the length of the PCP as the rotor 26 rotates within the stator 22. The contact of the rotor 26 with the elastomeric member 24 generally creates an interference fit, such as shown at portions 27a and 27b.」(5欄下から4行~6欄6行)
(訳:ロータ26をステータ22内に配置することにより、第1キャビティ28、第2キャビティ30、及び第3キャビティ32が形成される。例示の目的のために、3つのキャビティが示されている。しかしながら、キャビティの数は、PCPにおいて望まれる段数に応じて変化し得ることを理解されたい。さらに、キャビティは、ロータ26がステータ22内で回転するにつれて、PCPの長さの上下に位置が進行する。ロータ26とエラストマー部材24との接触は、一般に、部分27a及び27bに示されるような干渉嵌合を生じる。)
(ク)「The rotor 26 is smaller in cross sectional area at section 9 than at section 6, shown in FIG.5, and can form a progressive taper in at least a portion of the pumping section of the PCP 20. However, the elastomeric member 24 engages the rotor as the rotor rotates within the stator, because the stator is tapered correspondingly to the rotor. For example, the rotor engages the elastomeric member at a portion 29a and a distal portion 29b and generally forms an interference fit with the stator through the elastomeric member.」(6欄40~49行)
(訳:ロータ26は、図5に示すセクション6よりもセクション9において断面積が小さく、PCP20のポンピングセクションの少なくとも一部において漸進的テーパを形成することができる。しかしながら、 エラストマー部材24は、ステータがロータに対応してテーパ状であるため、ロータがステータ内で回転すると、ロータと係合する。例えば、ロータは、部分29a及び遠位部分29bでエラストマ一部材と係合し、一般に、エラストマー部材を介してステータと干渉嵌合を形成する。)
(ケ)「Further, it may be desirable to selectively change an interference fit to different interference fit or even a clearance fit to allow passage of various fluids, such as fluids containing particulate matter.」(7欄26~29行)
(訳:さらに、粒子状物質を含む流体などの様々な流体の通過を可能にするために、干渉嵌めを異なる干渉嵌めに、あるいはクリアランス嵌めに選択的に変更することが望ましい場合がある。)
(コ)「FIG. 27 is a schematic cross sectional view of a PCP mounted downhole in a wellbore. The PCP 20 is disposed in a wellbore 50 formed in the earth 52, which includes dry land or subsea formations.」」(8欄39~42行)
(訳:図27は、PCPを坑内に装着した状態を示す模式的断面図である。PCP20は、乾陸上または海底地層を含む大地52に形成された坑井50に配置される。)
(サ)「Alternatively, the motor 62 can be coupled directly to the shaft 70 without the intermediate drive members, as shown in FIG. 28. The drive member 64 can be, for example, a pulley or sprocket, the drive transfer member 66 can be a chain or belt, and the second drive member can be a corresponding pulley or sprocket. The shaft 70 can be inserted through the tubular member 56 and through a bearing and/or packing element 78 disposed in a top 80. The top 80 can be coupled to the tubular member 56. The shaft 70 is coupled to the rotor 26 by an intermediate shaft 72 having generally two universal joints 74 and 76 coupled therebetween. The universal joints allow the rotor 26 to precess as well as rotate within the stator 22.」(8欄57行~9欄2行)
(訳:あるいは、図28に示すように、モータ62は、中間駆動部材を介さずにシャフト70に直接結合させることができる。駆動部材64は、例えば、プーリ又はスプロケットとすることができ、駆動伝達部材66は、チェーン又はベルトとすることができ、第2の駆動部材は、対応するプーリ又はスプロケットとすることができる。シャフト70は、管状部材56を通り、頂部80に配置されたベアリング及び/又はパッキン要素78を通って挿入することができる。頂部80は、管状部材56に結合されることができる。シャフト70は、その間に結合された概ね2つのユニバーサルジョイント74及び76を有する中間シャフト72によってロータ26に結合される。ユニバーサルジョイントは、ロータ26がステータ22内で回転するだけでなく、歳差運動することを可能にする。)
(シ)「FIG. 28 is a schematic cross sectional view of a shaft coupled to a motor. The wellbore 50 includes a tubular member 56 inserted therein and a shaft 70 extending therethrough. The drive motor 62 is shown directly coupled to the shaft 70 through a coupling 84 as an alternative embodiment compared to the arrangement shown in FIG.27. The motor 62 is supported by a support member 65. The support member 65 can be a stationary support member, such as a steel frame, or can be adjustable by using, for example, hydraulic or pneumatic cylinders, adjustable brackets that can be bolted in various positions, and other devices and methods. The motor 62 generally includes a drive shaft 82 which can be engaged with the coupling 84 on one end of the coupling. The coupling 84 can be engaged with the shaft 70 on another end of the coupling. The coupling may be a fixed engagement, such that there is little to no rotational movement relative between the drive shaft 82 and the shaft 70. Alternatively, the coupling 84 can be a slip or frictional drive coupling known to those in the art, such that the coupling may slip under certain conditions, such as an excessive amount of torque on the shaft 70. The shaft 70 can be adjusted longitudinally up and down relative to the coupling 84 and relative to the stator 22. The adjustments can change the relative position of the rotor 26 with the stator 22, described in FIGS. 5-26. An adjustor 88 can be used to longitudinally translate or adjust the shaft 70. One exemplary adjustor 88 will be described in FIG.30. The length of the coupling engaged with the shaft 70 can be determined by the amount of the adjustment anticipated for the shaft 70 as the rotor 26 is longitudinally adjusted in the PCP 20. Similarly, the motor 62 and the shaft 70 can both be longitudinally adjusted to change the rotor and stator engagement positions.
Further, in the embodiment shown in FIG. 28, the shaft 70 is shown to be adjusted by the adjustor 88, so that the rotor is adjusted relative to the stator, where the stator is relatively stationary. The adjustor 88 may also adjust the stator, for example, by adjusting the tubular member 56 up and down the wellbore 50, while the shaft 70 and rotor 26 attached thereto remain relatively stationary. Further, both the rotor and the stator can be adjusted longitudinally. For example, the adjustor 88 could be coupled to the support member 65 as shown in dotted lines, for example, to adjust both components.」(9欄16~59行)
(訳:図28は、モータに結合されたシャフトの模式的断面図である。坑井50は、そこに挿入された管状部材56と、それを貫通して延びるシャフト70とを含む。駆動モータ62は、図27に示される配置と比較される代替的な実施形態として、カップリング84を介してシャフト70に 直接結合されて示されている。モータ62は、支持部材65によって支持されている。支持部材65は、鉄骨フレームなどの静止支持部材とすることができ、または、例えば、油圧または空気圧シリンダ、様々な位置にボルト止めできる調整可能なブラケット、および他の装置および方法を用いて調整可能とすることができる。モータ62は、一般に、カップリング84 の一端に係合することができる駆動軸82を含む。カップリング84は、カップリングの別の端部においてシャフト70と係合させることができる。カップリングは、駆動シャフト82とシャフト70との間に相対的な回転運動がほとんどないような、固定された係合であってよい。あるいは、カップリング84は、シャフト70に過大なトルクがかかるような特定の条件下でカップリングが滑るような、当業者に知られている滑り駆動カップリング又は摩擦駆動カップリングとすることができる。シャフト70は、カップリング84に対して、およびステータ22に対して、長手方向に上下に調整することができる。この調整により、図5~図26で説明した、ステータ22とロータ26の相対位置を変更することができる。調整装置88は、シャフト70を長手方向に移動させるか、または調整するために使用され得る。一つの例示的な調整装置88を図30で説明する。シャフト70と係合するカップリングの長さは、ロータ26がPCP20内で長手方向に調節される際にシャフト70に対して予想される調節量によって決定することができる。同様に、モータ62及びシャフト70は共に、ロータ及びステータの係合位置を変更するために長手方向に調整することができる。
さらに、図28に示す実施形態では、シャフト70は、調整装置88によって調整されるように示されており、ロータは、ステータが相対的に静止しているところで、ステータに対して相対的に調整される。調整装置88はまた、例えば、管状部材56を坑井50の上下に調整することによって、ステータを調整してもよく、一方、シャフト70及びそれに取り付けられたロータ26は、相対的に静止したままである。さらに、ロータとステータの両方を長手方向に調整することができる。例えば、調整装置88を点線で示すように支持部材65に結合して、両構成要素を調整することができる。)
(ス)「FIG. 29 is a schematic cross sectional view of the coupling 84 engaged with the shaft 70, shown in FIG.28. As one example, the coupling 84 has a rectangular opening with edges 90 that engage a correspondingly shaped portion 92 on the shaft 70. As another example, the coupling 84 can includes a series of splined teeth (not shown) that engage similarly shaped portion on the shaft.」(9欄60~66行)
(訳:図29は、図28に示す、シャフト70に係合したカップリング84の概略断面図である。一例として、カップリング84は、シャフト70上の対応する形状の部分92と係合するエッジ90を有する矩形の開口部を有する。別の例として、カップリング84は、シャフト上の同様の形状の部分と係合する一連のスプライン歯(図示せず)を含むことができる。)
(セ)図28から、ロータ(rotor 26)が、ステータ(stator 22)の長手方向軸の周りに回転可能に配置されていることは、明らかであり、また、上記(ウ)及び図28から、ロータ(rotor 26)は、入口(inlet)と出口(outlet)との間でテーパになる形状を備えることが理解できる。
(ソ)上記(キ)、(ク)及び図5から、干渉嵌合(interference fit)をなす部分によって、キャビティ(cavity 28,30,32)は遮断されていることが理解できる。
(タ)上記(コ)、(サ)、(シ)及び図27~28から、ロータ(rotor 26)を駆動する中間シャフト(intermediate shaft 72)は駆動モータ(drive motor 62)に連結されていることが、理解できる。
(チ)上記(イ)、(シ)及び図28から、調整装置(adjustor 88)によって、干渉嵌合(interference fit)をなす部分がクリアランス(clearance)を有するように実施されることが、理解できる。
(ツ)上記(シ)及び図27~28から、駆動モータ(drive motor 62)およびロータ(rotor 26)を駆動する中間シャフト(intermediate shaft 72)を含むロータ(rotor 26)の駆動系は、ロータ(rotor 26)の位置を調整可能であることが、理解できる。
(テ)上記(シ)、(ス)及び図28から、ロータ(rotor 26)を駆動する中間シャフト(intermediate shaft 72)と駆動モータ(drive motor 62)との間に配置された、スプライン歯(splined teeth)を有するカップリング(coupling 84)によって、ロータ(rotor 26)は、シャフト(shaft 70)と一緒に、駆動モータ(drive motor 62)に対して調整可能であり、スプライン歯(splined teeth)を有するカップリング(coupling 84)は、ロータ(rotor 26)を駆動する中間シャフト(intermediate shaft 72)を軸方向に調整させることを可能にすることが、理解できる。
(ト)上記(イ)、(シ)及び図28から、調整装置(adjustor 88)を用いて、ロータ(rotor 26)とステータ(stator 22)を互いに軸方向に調整させることにより、ロータ(rotor 26)とステータ(stator 22)の間の干渉嵌合(interference fit)をなす部分がクリアランス(clearance)を有するように実施されるステップを含むことが理解できる。
イ 甲1発明
上記アを総合すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明1」、「甲1発明2」といい、合わせて「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明1)
「粒子状物質を含む流体を通過可能にするためのプログレッシブキャビティポンプであって、
前記プログレッシブキャビティポンプは、
・螺旋状ねじ山を有するロータ26と、
・入口と出口を有するステータ22であって、前記ロータ26は、ステータ22の長手方向軸の周りに回転可能に配置され、かつ前記ロータ26に対応する螺旋状ねじ山を有するシェル22aを備える、前記ステータ22と、を有し、
前記ロータ26は、前記入口と前記出口との間でテーパになる形状を備え、
前記ロータ26およびステータ22は、互いに対して配置され、流体を通過可能にするためにキャビティが形成されるように実施され、かつ前記キャビティは、干渉嵌合をなす部分によって遮断され、
前記プログレッシブキャビティポンプは、
・ロータ26を駆動する中間シャフト72および駆動モータ62であって、前記ロータ26は、前記ロータ26を駆動する中間シャフト72によって前記駆動モータ62に連結される、ロータ26を駆動する中間シャフト72および駆動モータ62を有し、
前記ロータ26とステータ22の相対的な軸方向位置を調整するための調整装置88を有し、
前記調整装置88は、前記ロータ26とステータ22との間の前記干渉嵌合をなす部分がクリアランスを有するように実施され、
前記ロータ26は、軸方向に調整可能であり、前記調整装置88は、前記ロータ26とステータ22との間の前記干渉嵌合をなす部分がクリアランスを有するようにするために、前記ロータ26を軸方向に調整させるように構成され、
a)前記駆動モータ62および前記ロータ26を駆動する中間シャフト72を含む前記ロータ26の駆動系は、前記ロータ26の位置を調整可能であり、または
b)前記ロータ26を駆動する中間シャフト72と、前記駆動モータ62と、の間に配置された、スプライン歯を有するカップリング84によって、前記ロータ26は、前記ロータ26を駆動する中間シャフト72と一緒に、駆動モータ62に対して調整可能であり、前記スプライン歯を有するカップリング84は、前記ロータ26を駆動する中間シャフト72を軸方向に調整させることを可能にする、
プログレッシブキャビティポンプ。」
(甲1発明2)
「粒子状物質を含む流体を通過可能にするためのプログレッシブキャビティポンプを動作させるための方法であって、
前記プログレッシブキャビティポンプは、甲1発明1のプログレッシブキャビティポンプであって、
前記方法は、
流体を通過可能にするために前記ロータ26を駆動するステップと、
前記調整装置88を用いて、前記ロータ26とステータ22を互いに軸方向に調整させることにより、前記ロータ26とステータ22の間の前記干渉嵌合をなす部分がクリアランスを有するように実施されるステップと、
を含む方法。」
(2)甲2について
ア 甲2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「1. Field of the Invention
The present invention relates to the equipment and methods in oil field operations. Particularly, the invention relates to pumps.
2. Background of the Related Art
Helical gear pumps, typically known as progressive cavity pumps/motors (herein PCPs), are frequently used in oil field applications, for pumping fluids or driving downhole equipment in the wellbore.」(1欄6~14行)
(訳:1.発明の属する技術分野
本発明は、油田操業における装置および方法に関する。特に、本発明は、ポンプに関する。
2.関連技術の背景
一般にプログレッシブキャビティポンプ(本明細書ではPCP)として知られるヘリカルギアポンプは、油田用途において、坑井内で流体を圧送したり坑内機器を駆動するために頻繁に使用されている。)
(イ)「The present invention provides a self-compensating rotor and/or stator, so that the interference fit and/or clearance is maintained over a range of temperatures. The rotor and/or stator are tapered to provide a difference in fit between the rotor and stator by longitudinal adjustment of their relative position.」(2欄下から2行~3欄4行)
(訳:本発明は、干渉嵌合および/またはクリアランスが温度範囲にわたって維持されるように、自己補償ロータおよび/またはステータを提供する。ロータ及び/又はステータは、それらの相対位置の長手方向調整によってロータとステータとの間の嵌め合い差を提供するようにテーパ状である。)
(ウ)「The bore and the rotor are tapered at least partially between the inlet and the outlet so that a predetermined interference fit between the stator and the rotor is maintained during the change in the length.」(3欄11~14行)
(訳:ボアとロータは、入口と出口の間で少なくとも部分的にテーパが付けられており、長さが変化しても、ステータとロータの間の所定の干渉嵌合が維持される。)
(エ)「The PCP 20 has a rotor and/or stator with a tapered cross section. In one embodiment, the rotor and stator are tapered diametrically. That is, the rotor is tapered progressively smaller at a minor diameter of the rotor from a first portion 21 to a second portion 23 of the PCP 20. Similarly, the stator could be tapered progressively smaller from the first portion 21 to the second portion 23 to correspond to the rotor.」(5欄25~32行)
(訳:PCP20は、テーパ状の断面を有するロータ及び/又はステータを有する。一実施形態では、ロータおよびステータは、径方向にテーパ状である。すなわち、ロータは、PCP20の第1の部分21から第2の部分23 までのロータの小径において漸次小さくなるようにテーパ状になっている。同様に、ステータは、ロータに対応するように、第1の部分21から第2の部分23に向かって漸次小さくなるようにテーパが付けられ得る。)
(オ)「The PCP 20 includes a stator 22, having a shell 22a and a elastomeric member 24 generally coupled to the shell 22a, and a rotor 26 disposed therethrough.」(5欄39~41行)
(訳:PCP20は、シェル22a及びシェル22aに一般に結合されたエラストマー部材24を有するステータ22と、それを貫通して配置されたロータ26とを含む。)
(カ)「However, it is to be understood herein that the elastomeric member could be coupled to the rotor 26 and the stator shell formed with corresponding helical threads.」(5欄44~47行)
(訳:しかしながら、エラストマー部材は、対応するヘリカルねじで形成されたロータ26及びステータシェルに結合され得ることが、本明細書において理解されるものとする。)
(キ)「The placement of the rotor 26 in the stator 22 creates a first cavity 28, a second cavity 30 and a third cavity 32. For the purposes of the example, three cavities are shown. However, it is to be understood that the number of cavities can vary depending on the number of stages desired in the PCP. Further, the cavities progress in position up and down the length of the PCP as the rotor 26 rotates within the stator 22. The contact of the rotor 26 with the elastomeric member 24 generally creates an interference fit, such as shown at portions 27a and 27b.」(6欄9~18行)
(訳:ロータ26をステータ22内に配置することにより、第1キャビティ28、第2キャビティ30、及び第3キャビティ32が形成される。例示の目的のために、3つのキャビティが示されている。しかしながら、キャビティの数は、PCPにおいて望まれる段数に応じて変化し得ることが理解されよう。さらに、キャビティは、ロータ26がステータ22内で回転するにつれて、PCPの長さの上下に位置が進行する。ロータ26とエラストマー部材24との接触は、一般に、部分27a及び27bに示されるような干渉嵌合を生じる。)
(ク)「The rotor 26 is smaller in cross sectional area at section 9 than at section 6, shown in FIG. 5, and can form a progressive taper in at least a portion of the pumping section of the PCP 20. However, the elastomeric member 24 engages the rotor as the rotor rotates within the stator, because the stator is tapered correspondingly to the rotor. For example, the rotor engages the elastomeric member at a portion 29a and a distal portion 29b and generally forms an interference fit with the stator through the elastomeric member.」(6欄52~61行)
(訳:ロータ26は、図5に示すセクション6よりもセクション9において断面精が小さく、PCP20のポンピングセクションの少なくとも一部において漸進的テーパを形成することができる。しかしながら、 エラストマー部材24は、ステータがロータに対応してテーパ状であるため、ロータがステータ内で回転すると、ロータと係合する。例えば、ロータは、部分29a及び遠位部分29bでエラストマー部材と係合し、一般に、エラストマー部材を介してステータと干渉嵌合を形成する。)
(ケ)「Further, it may be desirable to selectively change an interference fit to different interference fit or even a clearance fit to allow passage of various fluids, such as fluids containing particulate matter.」(7欄38~41行)
(訳:さらに、粒子状物質を含む流体などの様々な流体の通過を可能にするために、干渉嵌めを異なる干渉嵌めに、あるいはクリアランス嵌めに選択的に変更することが望ましい場合がある。)
(コ)「FIG. 27 is a schematic cross sectional view of a PCP mounted downhole in a wellbore. The PCP 20 is disposed in a wellbore 50 formed in the earth 52, which includes dry land or subsea formations.」(8欄51~54行)
(訳:図27は、PCPを坑内に装着した状態を示す模式的断面図である。PCP20は、乾陸上または海底地層を含む坑井52に形成された坑井50に配置される。)
(サ)「Alternatively, the motor 62 can be coupled directly to the shaft 70 without the intermediate drive members, as shown in FIG. 28. The drive member 64 can be, for example, a pulley or sprocket, the drive transfer member 66 can be a chain or belt, and the second drive member can be a corresponding pulley or sprocket. The shaft 70 can be inserted through the tubular member 56 and through a bearing and/or packing element 78 disposed in a top 80. The top 80 can be coupled to the tubular member 56. The shaft 70 is coupled to the rotor 26 by an intermediate shaft 72 having generally two universal joints 74 and 76 coupled therebetween. The universal joints allow the rotor 26 to precess as well as rotate within the stator 22.」(9欄5~17行)
(訳:あるいは、図28に示すように、モータ62は、中間駆動部材を介さずにシャフト70に直接結合させることができる。駆動部材64は、例えば、プーリ又はスプロケットとすることができ、駆動伝達部材66は、チェーン又はベルトとすることができ、第2の駆軌部材は、対応するプーリ又はスプロケットとすることができる。シャフト70は、管状部材56を通り、頂部80に配置されたベアリング及び/又はパッキン要素78を通って挿入することができる。頂部80は、管状部材56に結合されることができる。シャフト70は、その間に結合された概ね2つのユニバーサルジョイント74及び76を有する中間シャフト72によってロータ26に結合される。ユニバーサルジョイントは、ロータ26がステータ22内で回転するだけでなく、歳差運動することを可能にする。)
(シ)「FIG. 28 is a schematic cross sectional view of a shaft coupled to a drive assembly 59. The wellbore 50 includes a tubular member 56 inserted therein and a shaft 70 extending therethrough. The drive motor 62 is shown directly coupled to the shaft 70 through a polish clamp rod 84 as an alternative embodiment compared to the arrangement shown in FIG. 27. The motor 62 is supported by a support member 65. The support member 65 can be a stationary support member, such as a steel frame, or can be adjustable by using, for example, hydraulic or pneumatic cylinders, adjustable brackets that can be bolted in various positions, and other devices and methods. The motor
62 generally includes a drive shaft 82 which can be engaged with the polish clamp rod 84 on one end of the polish clamp rod. The polish clamp rod 84 can be engaged with the shaft 70 on another end of the polish clamp rod. The polish clamp rod may be a fixed engagement, such that there is little to no rotational movement relative between the drive shaft 82 and the shaft 70. Alternatively, the polish clamp rod 84 can be a slip or frictional drive coupling known to those in the art, such that the coupling may slip under certain conditions, such as an excessive amount of torque on the shaft 70. The shaft 70 can be adjusted longitudinally up and down relative to the polish clamp rod 84 and relative to the stator 22. The adjustments can change the relative position of the rotor 26 with the stator 22, described in FIGS. 5-26. An adjustor 88 can be used to longitudinally translate or adjust the shaft 70. One exemplary adjustor 88 will be described in FIG.30. The length of the coupling engaged with the shaft 70 can be determined by the amount of the adjustment anticipated for the shaft 70 as the rotor 26 is longitudinally adjusted in the PCP 20. Similarly, the motor 62 and the shaft 70 can both be longitudinally adjusted to change the rotor and stator engagement positions.
Further, in the embodiment shown in FIG.28, the shaft 70 is shown to be adjusted by the adjustor 88, so that the rotor is adjusted relative to the stator, where the stator is relatively stationary. The adjustor 88 may also adjust the stator, for example, by adjusting the tubular member 56 up and down the wellbore 50, while the shaft 70 and rotor 26 attached thereto remain relatively stationary. Further, both the rotor and the stator can be adjusted longitudinally. For example, the adjustor 88 could be coupled to the support member 65 as shown in dotted lines, for example, to adjust both components.」(9欄31行~10欄8行)
(訳:図28は、駆動アセンブリ59に結合されたシャフトの模式的断面図である。坑井50は、その中に挿入された管状部材56と、その中を延びるシャフト70とを含む。駆動モータ62は、図27に示される配置と比較される代替実施形態として、ポリッシュクランプロッド84を介してシャフト70に直接結合されるように示される。モータ62は、支持部材65によって支持されている。支持部材65は、鉄骨フレームなどの静止支持部材とすることができ、又は、例えば、油圧又は空気圧シリンダ、様々な位置にボルト止めできる調整ブラケット、及び他の装置及び方法を用いて調整可能であることができる。モータ62は、一般に、ポリッシュクランプロッドの一端においてポリッシュクランプロッド84と係合することができる駆動軸82を含む。ポリッシュクランプロッド84は、ポリッシュクランプロッドの別の端部においてシャフト70と係合させることができる。ポリッシュクランプロッドは、駆動軸82とシャフト70との間に相対的な回転運動がほとんどないように、固定された係合であってもよい。あるいは、ポリッシュクランプロッド84は、シャフト70に過大なトルクがかかるような特定の条件下でカップリングが滑るような、当業者に公知の滑りまたは摩擦駆動カップリングとすることができる。シャフト70は、ポリッシュクランプロッド84に対して、およびステータ22に対して、長手方向に上下に調整することができる。この調整により、図5~図26で説明した、ステータ22とのロータ26の相対位置を変更することができる。調整装置88は、シャフト70を長手方向に移動させるか、または調整するために使用され得る。一つの例示的な調整装置88を図30で説明する。シャフト70と係合するカップリングの長さは、ロータ26がPCP20内で長手方向に調節される際にシャフト70に対して予想される調節量によって決定することができる。同様に、モータ62及びシャフト70は共に、ロータ及びステータの係合位置を変更するために長手方向に調整することができる。
さらに、図28に示す実施形態では、シャフト70は、ロータがステータに対して相対的に調整されるように、調整装置88によって調整されることが示されており、ステータは相対的に静止した状態である。 調整装置88はまた、例えば、管状部材56を坑井50の上下に調整することによって、ステータを調整してもよく、一方、シャフト70及びそれに取り付けられたロータ26は、相対的に静止したままである。さらに、ロータとステータの両方を長手方向に調整することができる。例えば、調整装置88を点線で示すように支持部材65に結合して、両構成要素を調整することができる。)
(ス)「FIG. 29 is a schematic cross sectional view of the polish clamp rod 84 engaged with the shaft 70, shown in FIG. 28. As one example, the polish clamp rod 84 has a rectangular opening with edges 90 that engage a correspondingly shaped portion 92 on the shaft 70. As another example, the polish clamp rod 84 can includes a series of splined teeth (not shown) that engage similarly shaped portion on the shaft.」(10欄9~15行)
(訳:図29は、図28に示す、シャフト70と係合したポリッシュクランプロッド84の概略断面図である。一例として、ポリッシュクランプロッド84は、シャフト70上の対応する形状の部分92と係合するエッジを有する矩形の開口部90を有する。別の例として、ポリッシュクランプロッド84 は、シャフト上の同様の形状の部分と係合する一連のスプライン歯(図示せず)を含むことができる。)
(セ)図28から、ロータ(rotor 26)が、ステータ(stator 22)の長手方向軸の周りに回転可能に配置されていることは、明らかであり、また、上記(ウ)及び図28から、ロータ(rotor 26)は、入口(inlet)と出口(outlet)との間でテーパになる形状を備えることが理解できる。
(ソ)上記(キ)、(ク)及び図5から、干渉嵌合(interference fit)をなす部分によって、キャビティ(cavity 28,30,32)は遮断されていることが理解できる。
(タ)上記(シ)及び図28から、ロータ(rotor 26)を駆動する中間シャフト(intermediate shaft 72)は駆動モータ(drive motor 62)に連結されていることが、理解できる。
(チ)上記(イ)、(シ)及び図28から、調整装置(adjustor 88)によって、干渉嵌合(interference fit)をなす部分がクリアランス(clearance)を有するように実施されることが、理解できる。
(ツ)上記(コ)、(サ)、(シ)及び図28から、駆動モータ(drive motor 62)およびロータ(rotor 26)を駆動する中間シャフト(intermediate shaft 72)を含むロータ(rotor 26)の駆動系は、ロータ(rotor 26)の位置を調整可能であることが、理解できる。
(テ)上記(シ)、(ス)及び図27~28から、ロータ(rotor 26)を駆動する中間シャフト(intermediate shaft 72)と駆動モータ(drive motor 62)との間に配置された、スプライン歯(splined teeth)を有するポリッシュクランプロッド(polish clamp rod 84)によって、ロータ(rotor 26)は、シャフト(shaft 70)と一緒に、駆動モータ(drive motor 62)に対して調整可能であり、スプライン歯(splined teeth)を有するポリッシュクランプロッド(polish clamp rod 84)は、ロータ(rotor 26)を駆動する中間シャフト(intermediate shaft 72)を軸方向に調整させることを可能にすることが、理解できる。
(ト)上記(イ)、(シ)及び図28から、調整装置(adjustor 88)を用いて、ロータ(rotor 26)とステータ(stator 22)を互いに軸方向に調整させることにより、ロータ(rotor 26)とステータ(stator 22)の間の干渉嵌合(interference fit)をなす部分がクリアランス(clearance)を有するように実施されるステップを含むことが理解できる。
イ 甲2発明
上記アを総合すると、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明1」、「甲2発明2」という。)が記載されていると認められる。
(甲2発明1)
「粒子状物質を含む流体を通過可能にするためのプログレッシブキャビティポンプであって、
前記プログレッシブキャビティポンプは、
・ヘリカルねじを有するロータ26と、
・入口と出口を有するステータ22であって、前記ロータ26は、ステータ22の長手方向軸の周りに回転可能に配置され、かつ前記ロータ 26に対応するヘリカルねじを有するシェル22aを備える、前記ステータ22と、を有し、
前記ロータ26は、前記入口と前記出口との間でテーパになる形状を備え、
前記ロータ26およびステータ22は、互いに対して配置され、流体を通過可能にするためにキャビティが形成されるように実施され、かつ前記キャビティは、干渉嵌合をなす部分によって遮断され、
前記プログレッシブキャビティポンプは、
・ロータ26を駆動する中間シャフト72および駆動モータ62であって、前記ロータ26は、前記ロータ26を駆動する中間シャフト72によって前記駆動モータ62に連結される、ロータ26を駆動する中間シャフト72および駆動モータ62を有し、
前記ロータ26とステータ22の相対的な軸方向位置を調整するための調整装置88を有し、
前記調整装置88は、前記ロータ26とステータ22との間の前記干渉嵌合をなす部分がクリアランスを有するように実施され、
前記ロータ26は、軸方向に調整可能であり、前記調整装置88は、前記ロータ26とステータ22との間の前記干渉嵌合をなす部分がクリアランスを有するようにするために、前記ロータ26を軸方向に調整させるように構成され、
a)前記駆動モータ62および前記ロータ26を駆動する中間シャフト72を含む前記ロータ26の駆動系は、前記ロータ26の位置を調整可能であり、または
b)前記ロータ26を駆動する中間シャフト72と、前記駆動モータ62と、の間に配置された、スプライン歯を有するポリッシュクランプロッド84によって、前記ロータ26は、前記ロータ26を駆動する中間シャフト72と一緒に、駆動モータ62に対して調整可能であり、前記スプライン歯を有するポリッシュクランプロッド84は、前記ロータ26を駆動する中間シャフト72を軸方向に調整させることを可能にする、
プログレッシブキャビティポンプ。」
(甲2発明2)
「粒子状物質を含む流体を通過可能にするためのプログレッシブキャビティポンプを動作させるための方法であって、
前記プログレッシブキャビティポンプは、甲2発明1のプログレッシブキャビティポンプであって、
前記方法は、
流体を通過可能にするために前記ロータを駆動するステップと、
前記調整装置88を用いて、前記ロータ26とステータ22を互いに軸方向に調整させることにより、前記ロータ26とステータ22の間の前記干渉嵌合をなす部分がクリアランスを有するように実施されるステップと、
を含む方法。」
(3)甲3について
ア 甲3には、以下の事項が記載されている。
(ア)「The present invention relates to an eccentric screw-type pump comprising a helical rotor that rotates in a helical stator chamber as well as a driving shaft that connects the rotor to a drive system.」(段落0001)
(訳:本発明は、螺旋状のステータ室内で回転する螺旋状のロータと、ロータを駆動システムに接続する駆動シャフトとを備える偏心ねじ式ポンプに関する。)
(イ)「In accordance with another expedient configuration of the invention, the application of a gear unit (e.g. a flat gear set) is provided. The gear set is equipped with a hollow shaft. This hollow shaft accommodates the rotor-driving shaft that is supported and sealed in the pump casing. A screw ensures the axial fixation of the driving shaft relative to the hollow shaft. The torque is transmitted via a shaft-hub connector, e.g. a key-and-feather connector.」(段落0008)
(訳:本発明の別の好都合な構成によれば、ギアユニット(例えば平ギアセット)の適用が提供される。このギアセットは、中空シャフトを備えている。この中空シャフトは、ポンプケーシング内に支持され、密閉されたロータ駆動シャフトを収容する。駆動シャフトはねじにより中空軸に軸方向に固定されている。トルクは、シャフト-ハブコネクタ、例えばキー-アンド-フェザーコネクタを介して伝達される。)
(ウ)「FIG. 1 shows an eccentric screw-type pump 10 of the Moineau type, which comprises a drive unit 12 and a gear set 14 that is connected via a hollow shaft to a driving shaft 16.
The driving shaft 16 is provided with a seal 18 that prevents the product from penetrating into the region of the bearing 20. The flexible shaft 22 and the driving shaft 16 are fixed to each other by means of a screw connector, a shrinking connection or an adhesive joint so as to prevent them from rotating relative to each other. The pump casing 26 is provided with an inlet tubulure 28 through which the product is aspirated into the eccentric screw-type pump 10. It is possible to unscrew the screw 30 and to open the quick-action clamping device 32 for simultaneous removal of the entire stator 38, the terminating tubulure 34, the rotor 36, the flexible shaft 22, the driving shaft 16 and the seal 18 as a single unit from the pump casing 26 and the drive unit 12 for replacement of the spare or exchange unit.」(段落0010~0011)
(訳:図1は、モイノー型の偏心ねじ式ポンプ10を示し、このポンプは、駆動ユニット12と、中空軸を介して駆動シャフト16に連結されたギアセット14とから構成されている。
駆動シャフト16には、製品が軸受20の領域に侵入するのを防止するシール18が設けられている。フレキシブルシャフト22と駆動シャフト16は、互いに相対回転しないように、ねじ接続、収縮接続または接着剤接合によって互いに固定されている。ポンプケーシング26には、製品が偏心ねじ式ポンプ10に吸引される入口管路28が設けられている。予備または交換ユニットの交換のために、ポンプケーシング26および駆動ユニット12から、ステータ38全体、終端管路34、ロータ36、フレキシブルシャフト22、駆動シャフト16およびシール18を単一ユニットとして同時に取り外すために、ねじ30を緩め速動クランプ装置32を開放することができる。)
(エ)「(図1)
[図:0001399373000001.jpg]
」
(4)甲4について
ア 甲4には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一軸偏心ねじポンプの構造物に関する。」
(イ)「【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来型の欠点に鑑みなされたもので、分解、組立を容易に行なえ、メンテナンスにかかる時間を短縮することができる一軸偏心ねじポンプを得ることを目的とする。」
(ウ)「【0011】
【発明の実施の形態】以下図に沿って、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明による一軸偏心ねじポンプの断面図である。なお、従来型と同じ部品については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。1はステータ、2はロータ、3はたわみ軸である。
【0012】たわみ軸3の一端はロータ2にボルトまたはピンで結合され、ロータ2と一体化している。また、たわみ軸3の他端側はテーパ状に形成されている。9は、たわみ軸3にねじ止め装着され、後述する中空シャフトに挿通されるロッドである。
【0013】10は中空のシャフトであって、一端にはテーパ状の穴が形成されており、前記たわみ軸3のテーパ部が挿入され、他端側には、ボルト受け12が固定されており、前記たわみ軸3に装着されたロッド9の先端にねじ込まれる締め付けボルト11が受けられている。締め付けボルト11をねじ込むことによって、ロッド9が引っ張られ、たわみ軸3が中空シャフト10に結合される。
【0014】18はポンプ17に装着されたギヤードモータで、モータとギヤ機構とで、モータ軸と位相をずらせて同軸回転される中空のホイール軸13を有するものである。ホイール軸13はギヤケース14に軸受け支持されている。また、ホイール軸13には、中空シャフト10が挿入されると共に、キー止め15等により固定されており、中空シャフト10はホイール軸13と一体的に回転される。」
(エ)「【図1】
[図:0001399373000002.jpg]
」
(5)甲5について
ア 甲5には、以下の事項が記載されている。
なお、原文中のウムラウトは後にeを付すことで、エスツェットはssを用いることで代用した。
(ア)「Vorzugsweise wirken die temperaturaktiven Mittel derart, dass sich bei einer Temperaturerhoehung der Pumpeinheit, durch eine geeignete Formaenderung des Rotors oder des Stators, die Reibung zwischen dem Rotor und dem Stator verringert. Durch den Einsatz eines temperaturaktiven Mittels aus einer Formgedaechtnislegierung mit Einwegeffekt, kann beispielsweise eine Art Notlaufphase eingeleitet werden, indem die temperaturaktiven Mittel eine reibungsmindernde Erweiterung der inneren Kontur des Stators und/oder eine reibungsmindernde Reduzierung der aeusseren Kontur des Rotors bewirken.
Die Pumpeinheit kann dabei so konfiguriert sein, dass in der Notlaufphase eine Abkuehlung erfolgt. Damit beispielsweise die Pumpe nach dem Abkuehlen wieder einsetzbar ist, kann die Verwendung von temperaturaktiven Mitteln aus eine Formgedaechtnislegierung mit einem Zweiwegeffekt vorteilhaft sein. Die Pumpe kann dann nach dem Eintritt in die Notlaufphase wieder in einen normalen oder bevorzugten Betriebszustand zurueckkehren.
Denkbar ist umgekehrt auch die Pumpeinheit derart zu konfigurieren, dass die Reibung zwischen Rotor und Stator beim Anfahren der Pumpe, im Vergleich zur Reibung im Betriebszustand, geringer ist. Das Anfahrverhalten der Pumpe kann dadurch verbessert werden und dennoch eine geforderte Abdichtung der Pumpenkammern waehrend des Betriebs der Pumpe erreicht werden.」(7頁3~26行)
(訳:好ましくは、温度活性化手段は、ポンプユニットの温度が上昇した場合に、ロータまたはステータの形状を適切に変化させることにより、ロータとステータとの間の摩擦を低減させるように作用する。一方向効果を持つ形状記憶合金製の温度活性材を使用することにより、例えば、温度活性材がステータの内側輪郭を摩擦低減的に広げる、またはロータの外側輪郭を摩擦低減的に狭めるという一種の非常運転段階を開始させることができる。
ポンプユニットは、非常時の運転中に冷却が行われるように構成することができる。例えば、冷却後にポンプを再び使用できるようにするためには、二元的な効果を持つ形状記憶合金製の温度活性材を使用することが有利である。そして、ポンプは緊急運転段階に入った後、通常の運転状態または好ましい運転状態に戻ることができる。
逆に、ポンプ起動時のロータとステータの摩擦を運転時の摩擦より小さくするようにポンプユニットを構成することも考えられる。これにより、ポンプの起動時の挙動が改善され、かつ、ポンプ運転中に必要なポンプ室の密閉性を確保することができる。)
(イ)「Zum Betreiben der Verdraengerpumpe werden vorzugsweise Parameter der Verdraengerpumpe mittels einer Steuervorrichtung und eine mit dieser gekoppelten elektro- und/oder temperaturaktiven Pumpeinheit eingestellt. Verstellbare Parameter sind beispielsweise Anpressdruck oder Vorspannung, Exzentrizitaet, Aussendurchmesser und Form des Rotors sowie Innendurchmesser und Form des Stators.」(11頁7~13行)
(訳:置換ポンプを作動させるために、置換ポンプのパラメータは、制御装置とそれに結合された電気活性および/または温度活性ポンプユニットによって調整されることが好ましい。調整可能なパラメータは、例えば、接圧や予圧、偏心、ロータの外径や形状、ステータの内径や形状などである。)
(ウ)「Beim Ansprechen der Elastomerfolie 18 durch Anlegen einer elektrischen Spannung, ziehen sich die gegenueberliegenden Elektroden aufgrund elektrostatischer Kraefte an. Der inkompressible Elastomerfilm wird in radialer Richtung zusammengedrueckt und dehnt sich in Laengsrichtung in die Ausweichraeume 20 aus. Da die Wicklung der Elastomerfolie 18 mit massgeblich fuer die Vorspannung zwischen Rotor und Stator 2 ist, wird sich diese bei Aktivierung des elektroaktiven Mittels 18 verringern. Dadurch verringert sich auch das Losbrechmoment, wodurch das Anfahrverhalten der Pumpe verbessert wird und auch der Energiebedarf sowie Verschleiss geringer ist.」(16頁5~15行)
(訳:エラストマーフィルム18が電圧の印加に応答すると、静電気 力により対向する電極が引き合う。非圧縮性エラストマーフィルムは、径方向に圧縮され、長手方向に膨張して逃げ空間20に入る。エ ラストマーフィルム18の巻き取りは、ロータとステータ2との間のプリテンションの決定的な要因の一つであるため、電気活性材18が活性化すると、これが減少することになる。これにより、離脱トルクも減少し、ポンプの起動時の挙動が改善され、必要なエネルギーや摩耗も低減される。)
(エ)「In einer weiteren nicht dargestellten Ausfuehrungsform sind Stator und Rotor axial beweglich zueinander angeordnet und konisch verlaufend ausgebildet. Durch die relative axiale Beweglichkeit kann die Pumpeinheit ein- beziehungsweise nachgestellt werden. Elektroaktive Mittel sind dazu sich zwischen Elastomerkoerper und Pumpengehaeuse abstuetzend angeordnet. Beim Aktivieren der elektroaktiven Mittel wird der Stator je nach Konfiguration in die gewuenschte Richtung bewegt. Durch die konisch gegenlaeufige Rotor-und Stator-Form, kann so die Pumpeinheit nachgestellt werden.」(17頁4~13行)
(訳:図示しない別の実施形態では、ステータとロータは、互いに対して軸方向に移動できるように配置され、円錐形である。軸方向の相対的な可動性により、ポンプユニットの搭載や再調整が可能である。エラストマー体とポンプハウジングの間には、電気活性材が配置されている。電気活性材を作動させると、構成に応じて固定子を所望の方向に移動させる。円錐形で逆回転するロータとステータの形状により、 このようにボンプユニットを調整することが可能である。)
(6)参考資料1(特開2010-1876号公報。以下、「参考1」という。)
ア 異議申立人が令和5年2月7日付け意見書に添付した参考1には、以下の事項が示されている。
(ア)「【0001】
本発明は、例えばステータの温度変化による体積変化に応じて、又はステータの磨耗に応じて、ロータとステータとの締め代又は隙間を調整することができる一軸偏心ねじポンプに関する。」
(イ)「【0003】
このロータ2の外周の輪郭形状は、吸込み口4側の後端部2aから吐出口5側の先端部2bに亘って直径が同一の寸法となるように形成されている。そして、ステータ3内孔3aの内周の輪郭形状は、吸込み口4側の後端部3bから吐出口5側の先端部3cに亘って内径が同一の寸法となるように形成されている。また、ロータ2の中心軸6と、ステータ3の内孔3aの中心軸7とは、互いに平行しており、両者の偏心量はeである。」
(ウ)「【0012】
このように、ロータの外面とステータの内面とが互いに離隔又は接近する方向に、ロータをステータに対して相対的に移動させることができるのは、ロータ及びステータのそれぞれの対応する一端部から他端部に向かうに従って、ロータの外径が小さくなると共に、ステータの内径が小さくなるように形成されているからである。
【0013】
そして、この発明に係る一軸偏心ねじポンプにおいて、前記ロータが前記ステータの内孔に嵌挿している状態で、前記ロータ及び前記ステータのそれぞれの中心軸が、前記ロータの前記他端部側から前記一端部側に向かうに従って互いに接近して交差するようにできる。
【0014】
このようにすると、ロータがステータに対して相対的に回転するときに、ロータの中心軸の回転軌跡が略円錐形となる。よって、例えば、ロータと、このロータを回転駆動するための入力軸とを連結部を介して連結するときに、この連結部を、ロータの中心軸とステータの中心軸との交点に配置することによって、1つの連結部を使用してロータをステータに対して相対的に回転させることができる。
【0015】
また、ロータと入力軸は、両者間が偏角のみを持って1つの連結部で連結されるので、ポンプ稼動時に動作流体圧の反力が、連結部においてその軸方向外分力を生じさせるものの、この軸方向外分力は、ロータの中心軸のステータの中心軸に対する位置関係をずらすものではない。結果として、動作流体圧の反力が、ステータの連結部側の端部内面を偏磨耗させることはない。」
(エ)「【0072】
また、この一軸偏心ねじポンプ12は、図3に示すように、ロータ13がステータ14の内孔14aに嵌挿している状態で、ロータ13及びステータ14のそれぞれの中心軸31、30が、ロータ13の先端部13b側から後端部13a側に向かうに従って互いに接近して連結部16の交点Oで交差するように構成されている。具体的には、ロータ13の後端部13aにおけるロータ13及びステータ14のそれぞれの中心軸31、30の間隔、ロータ13の先端部13bにおけるロータ13及びステータ14のそれぞれの中心軸31、30の間隔、及びロータ13の長さの比は、例えば約2:4:55である。」
(7)参考資料2(国際公開第2015/124918号。以下、「参考2」という。)
ア 異議申立人が令和5年2月7日付け意見書に添付した参考2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「A conical screw compressor or pump comprises an inner element configured to rotate around a first axis and an outer element configured to rotate around a second axis. An outer surface of the inner element and an inner surface of the outer element comprise cooperating grooves and teeth that intermesh on rotation. The first axis and the second axis are each stationary and the first axis is inclined relative to the second axis. The inner element and the outer element are configured to be, in operation, synchronously rotated, thereby to reduce or eliminate force exerted by the inner element on the outer element or vice versa.」(要約)
(訳:コニカルスクリュー圧縮機またはポンプは、第1の軸の周りを回転するように構成された内側要素と、第2の軸の周りを回転するように構成された外側要素とを備える。内側要素の外面および外側要素の内面は、回転時にかみ合う協働する溝および歯を含む。第1の軸および第2の軸はそれぞれ静止しており、第1の軸は第2の軸に対して傾斜している。内側要素および外側要素は、動作中に同期して回転するように構成され、それによって、内側要素によって外側要素に加えられる力、またはその逆の力が減少または除去される。)
(イ)「An alternative embodiment of a conical screw compressor is illustrated in Figure 3. The embodiment of Figure 3 offers an alternative implementation of the synchronisation of the conical screw elements 1, 2 to the embodiment of Figure 1. In the embodiment of Figure 3, only gears with external teeth are used in the synchronisation of the conical screw elements 1,2.
The inner element 1 and outer element 2 of the embodiment of Figure 3 are arranged and operated in a similar way to the inner element 1 and outer element 2 of the embodiment of Figure 1.
In the embodiment Figure 1, the motor 14 shares a common axis with the inner element 1, and is connected to inner element 1 by a shaft. By contrast, in the embodiment of Figure 3, neither element is connected directly to the motor 14 by a shaft. Both elements are synchronized and driven simultaneously by the motion of gears 13, 16 and 17. In the embodiment of Figure 3, the gears have external teeth meshing with each other and driven by a motor shaft 18. Gear 16 is driven by shaft 18 and drives outer element 2. Gear 17 is driven by motor shaft 18 and drives gear 13, which drives inner element 1.
In alternative embodiments, any suitable gear mechanism may be used to drive the inner element 1 and the outer element 2 synchronously.
In the embodiment of Figure 3, the inner element 1 and the outer element 2 are synchronised in such a way that the rotational speed ratio of the inner element 1 and the outer element 2 equals the ratio of teeth of the screw surfaces of those elements. In the embodiment of Figure 3, inner element 1 and the outer element 2 are installed with the bearings 15 inside the compressor housing 6.」(23頁1~22行)
(訳:コニカルスクリュー圧縮機の代替実施形態が図3に示されている。図3の実施形態は、図1の実施形態に対する円錐ねじ要素1、2の同期の代替実施を提供する。図3の実施形態では、円錐ねじ要素1、2の同期に、外歯を有するギアのみが使用される。
図3の実施形態の内側要素1および外側要素2は、図1の実施形態の内側要素1および外側要素2と同様に配置および操作される。
図1の実施形態では、モータ14は、内側要素1と共通の軸を共有し、シャフトによって内側要素1に接続される。
対照的に、図3の実施形態では、どちらの要素もシャフトによってモータ14に直接接続されていない。
両方の要素は同期され、ギア13、16、および17の動きによって同時に駆動される。図3の実施形態では、歯車は、互いに噛み合い、モータシャフト18によって駆動される外歯を有する。ギア16は、シャフト18によって駆動され、内部要素1を駆動するギア13を駆動する。
別の実施形態では、任意の適切な歯車機構を使用して、内側要素1と外側要素2を同期して駆動することができる。
図3の実施形態では、内側要素1と外側要素2は、内側要素1と外側要素2の回転速度比がこれらの要素のねじ面の歯の比と等しくなるように同期される。図3の実施形態では、内側要素1および外側要素2は、コンプレッサハウジング6の内側にベアリング15と共に設置される。)
(ウ)「(図3)
[図:0001399373000003.jpg]
」
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)甲1発明を主引用例とするものについて
ア 対比
本件発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1の「流体」は本件発明1の「液体」に相当することから、甲1発明1の「粒子状物質を含む流体」は本件発明1の「固体を充填した液体」に相当し、以下同様に、「通過可能にする」は「輸送する」に、「螺旋状ねじ山を有するロータ26」は「螺旋回転子」に、「ステータ22」は「固定子」に、「螺旋状ねじ山を有するシェル22a」は「螺旋状の内壁」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明1の「前記入口と前記出口との間でテーパになる形状」は、本件発明1の「前記出口または入口に向かってテーパになる形状」に相当し、以下同様に、「キャビティ」は「チャンバ」に、「干渉嵌合をなす部分」は「狭窄部、特にシールライン」に、「ロータ26を駆動する中間シャフト72」は「駆動シャフト」に、「駆動モータ62」は「駆動モータ」に、「調整装置88」は「調整装置」に、「クリアランスを有するように」は「拡大するために」に、「調整」は「変位」に、それぞれ相当する。
さらに、甲1発明1の「前記駆動モータ62および前記ロータ26を駆動する中間シャフト72を含む前記ロータ26の駆動系は、前記ロータ26の位置を調整可能であり」は、本件発明1の「前記駆動モータ(36)および前記駆動シャフト(26)を含む前記回転子(4)の駆動系(25)は、前記回転子(4)と一緒に変位可能であり」と、「前記駆動モータおよび前記駆動シャフトを含む前記回転子の駆動系は、前記回転子を変位可能であり」という点で共通する。
加えて、甲1発明1の「スプライン歯を有するカップリング84」と本件発明1の「ギアボックス」とは、共に、駆動モータの動力を回転子に伝達するものであるから、「動力伝達手段」という点で共通する。
したがって、両者は、
「固体を充填した液体を輸送するためのプログレッシブキャビティポンプであって、
前記プログレッシブキャビティポンプは、
・螺旋回転子と、
・入口と出口を有する固定子であって、前記回転子は、固定子の長手方向軸の周りに回転可能に配置され、かつ前記回転子に対応する螺旋状の内壁を備える、前記固定子と、を有し、
前記回転子は、前記出口または入口に向かってテーパになる形状を備え、
前記回転子および固定子は、互いに対して配置され、液体を輸送するために少なくとも1つのチャンバが形成されるように実施され、かつ前記チャンバは、狭窄部、特にシールラインによって遮断され、
前記プログレッシブキャビティポンプは、
・駆動シャフトおよび駆動モータであって、前記回転子は、前記駆動シャフトによって前記駆動モータに連結される、駆動シャフトおよび駆動モータを有し、
前記回転子と固定子の相対的な軸方向位置を調整するための調整装置を有し、
前記調整装置は、前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を拡大するために実施され、
前記回転子は、軸方向に変位可能であり、前記調整装置は、前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を少なくとも部分的に拡大するために、前記回転子を軸方向に変位させるように構成され、
a)前記駆動モータおよび前記駆動シャフトを含む前記回転子の駆動系は、前記回転子を変位可能であり、または
b)前記駆動シャフトと前記駆動モータとの間に配置された動力伝達手段によって、前記回転子は、前記駆動シャフトと一緒に、前記駆動モータに対して変位可能であり、前記動力伝達手段は、前記駆動シャフトを軸方向に変位させることを可能にする、
プログレッシブキャビティポンプ。」である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1-1>
本件発明1では、「回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、および可変偏心度(e1,e2)を備え」たものであるのに対し、
甲1発明1では、ロータ26は、前記入口と前記出口との間でテーパになる形状を備えたものであるものの、可変偏心度を備えたものであるか不明な点。
<相違点1-2>
回転子を変位可能とする構成について、本件発明1では「a)前記駆動モータ(36)および前記駆動シャフト(26)を含む前記回転子(4)の駆動系(25)は、前記回転子(4)と一緒に変位可能」であるのに対し、
甲1発明1では、前記駆動モータ62および前記ロータ26を駆動する中間シャフト72を含む前記ロータ26の駆動系は、前記ロータ26と一緒に変位可能ではない点。
<相違点1-3>
本件発明1では、「b)前記駆動シャフト(26)と前記駆動モータ(36)との間に配置されたギアボックス(34)によって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)と一緒に、前記駆動モータ(36)に対して変位可能であり、前記ギアボックス(34)は、前記駆動シャフト(26)を軸方向に変位させることを可能にする」ものであるのに対し、
甲1発明1では、前記ロータ26を駆動する中間シャフト72と前記駆動モータ62との間にそのような「ギアボックス」を有していない点。
イ 判断
(ア)相違点1-1について
相違点1-1に関して、甲1には、ロータが可変偏心度を備えることについて、何ら示されていない。また、ロータが出口または入口に向かってテーパになる形状であることが、必ず、可変偏心度を備えたものであるとはいえないことは、例えば、本件特許明細書の段落0054や本件図面の図2a~3cの記載で説明される内容からも、明らかである。
したがって、上記相違点1-1は、実質的な相違点であるといえる。
また、上記第4の2(6)で示した記載から、参考1には、一軸偏心ねじポンプ(プログレッシブキャビティポンプ)において、ロータが一端部から他端部に向かうに従って、その外径が小さくなる形状、すなわち、テーパになる形状を備え、また、前記ロータがステータの内孔に嵌挿している状態で、前記ロータ及び前記ステータのそれぞれの中心軸が、前記ロータの前記他端部側から前記一端部側に向かうに従って互いに接近して交差するように構成されたものが示されているといえる。
しかし、甲1には、「シャフト70は、その間に結合された概ね2つのユニバーサルジョイント74及び76を有する中間シャフト72によってロータ26に結合される。ユニバーサルジョイントは、ロータ26がステータ22内で回転するだけでなく、歳差運動することを可能にする。」(上記第4の2(1)ア(サ)を参照。)と記載されているように、概ね2つのユニバーサルジョイントを有する中間シャフトを採用することにより歳差運動することを可能にしているところ、これを保証しない、参考1に記載された事項をあえて採用する動機はない。
したがって、甲1発明1において、本件発明1の上記相違点1-1に係る構成は、容易に想到し得ない。
(イ)相違点1-2について
相違点1-2に関して、甲1には、駆動モータ62がロータ26と一緒に変位可能であることは示されていない。甲1には、上記第4の2(1)ア(シ)に「モータ62は、一般に、カップリング84 の一端に係合することができる駆動軸82を含む。カップリング84は、カップリングの別の端部においてシャフト70と係合させることができる。」と、また、「シャフト70は、カップリング84に対して、およびステータ22に対して、長手方向に上下に調整することができる。」と記載されるように、駆動モータ62及びシャフト70がそれぞれ、別々に変位可能であることが示されている。そうすると、駆動モータ62とロータ26とは、一緒に変位可能であるとはいえず、駆動モータ62を含むロータ26の駆動系は前記ロータ26と一緒に変位可能ではないことは明らかであるから、上記相違点1-2は実質的な相違点である。
また、甲1で示されるプログレッシブキャビティポンプは、主に油田操業で使用することを目的とされるもの(上記第4の2(1)ア(ア)を参照。)であり、装置のサイズも大きなものになるところ、そのような大きなサイズの装置では、駆動モータも大きなものとなるといえる。そして、甲1には、駆動モータ62もロータ26と一緒に変位可能とさせるように構成することについて、特段記載も示唆もない。
さらに、甲2~5、参考1~2を参酌するも、プログレッシブキャビティポンプにおいて、「駆動モータおよび駆動シャフトを含む回転子の駆動系は、前記回転子と一緒に変位可能」とすることは示されておらず、また、そのことが公知の技術であったと認め得る他の証拠も見あたらない。
そうすると、甲1発明1において、本件発明1の上記相違点1-2に係る構成とする動機はないところ、仮に、甲2~5、参考1~2に記載された技術を適用し得たとしても、本件発明1の上記相違点1-2に係る構成には至らない。
したがって、甲1発明1において、本件発明1の上記相違点1-2に係る構成は、容易に想到し得ない。
(ウ)相違点1-3について
相違点1-3に関して、甲1には、「ギアボックス」は示されていない。
また、ギアボックスは、歯車により力、速度及びトルクを伝達し、変更するものであると理解されるところ、甲1発明1の「カップリング84」はギアボックスといえるものではない。
したがって、上記相違点1-3は実質的な相違点である。
一方、甲3には、ロータ36を駆動するフレキシブルシャフト22と駆動ユニット12との間にギアセット14を配置した偏心ねじ式ポンプ10が、また、甲4には、ロータ2を駆動するたわみ軸3とギアードモータ18との間にギアケース14を配置した偏心ねじ式ポンプが、更に、参考2には、内側要素1の軸部分とモータ14との間に、ギア13、17を収容するギア収容部を配置したコニカルスクリュー圧縮機が示されている。
しかし、甲3、甲4、参考2のいずれにも、ギアボックスによって、回転子を駆動する駆動シャフトを軸方向に変位させることは、示されていない。むしろ、ギアボックスを有する、甲3の図1、甲4の図1、参考2の図3を参酌すると、いずれも、回転子を駆動する駆動シャフトを軸方向に変位させないことを前提とした構成が看取される。
そうすると、甲1発明1において、甲3、甲4、参考2に記載された技術事項を採用する動機はなく、仮に、これら技術事項を採用し得たとしても、ギアボックスが、回転子を駆動する駆動シャフトを軸方向に変位させないものとなり、本件発明1の上記相違点1-3に係る構成には至らない。
したがって、甲1発明1において、本件発明1の上記相違点1-3に係る構成は、容易に想到し得ない。
(エ)まとめ
以上によれば、本件発明1は、甲1発明1であるとはいえず、また、甲1発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえず、さらに、本件発明1は、甲1発明1、甲3に記載の技術事項、甲4に記載の技術事項、参考1に記載の技術事項及び参考2に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)甲2発明を主引用例とするものについて
ア 対比
本件発明1と甲2発明1とを対比すると、甲2発明1の「流体」は本件発明1の「液体」に相当することから、甲2発明1の「粒子状物質を含む流体」は本件発明1の「固体を充填した液体」に相当し、以下同様に、「通過可能にする」は「輸送する」に、「ヘリカルねじを有するロータ26」は「螺旋回転子」に、「ステータ22」は「固定子」に、「ヘリカルねじを有するシェル22a」は「螺旋状の内壁」に、それぞれ相当する。
また、甲2発明1の「前記入口と前記出口との間でテーパになる形状」は、本件発明1の「前記出口または入口に向かってテーパになる形状」に相当し、以下同様に、「キャビティ」は「チャンバ」に、「干渉嵌合をなす部分」は「狭窄部、特にシールライン」に、「ロータ26を駆動する中間シャフト72」は「駆動シャフト」に、「駆動モータ62」は「駆動モータ」に、「調整装置88」は「調整装置」に、「クリアランスを有するように」は「拡大するために」に、「調整」は「変位」に、それぞれ相当する。
さらに、甲2発明1の「前記駆動モータ62および前記ロータ26を駆動する中間シャフト72を含む前記ロータ26の駆動系は、前記ロータ26の位置を調整可能であり」は、本件発明1の「前記駆動モータ(36)および前記駆動シャフト(26)を含む前記回転子(4)の駆動系(25)は、前記回転子(4)と一緒に変位可能であり」と、「前記駆動モータおよび前記駆動シャフトを含む前記回転子の駆動系は、前記回転子を変位可能であり」という点で共通する。
加えて、甲1発明1の「スプライン歯を有するポリッシュクランプロッド84」と本件発明1の「ギアボックス」とは、共に、駆動モータの動力を回転子に伝達するものであるから、「動力伝達手段」という点で共通する。
したがって、両者は、
「固体を充填した液体を輸送するためのプログレッシブキャビティポンプであって、
前記プログレッシブキャビティポンプは、
・螺旋回転子と、
・入口と出口を有する固定子であって、前記回転子は、固定子の長手方向軸の周りに回転可能に配置され、かつ前記回転子に対応する螺旋状の内壁を備える、前記固定子と、を有し、
前記回転子は、前記出口または入口に向かってテーパになる形状を備え、
前記回転子および固定子は、互いに対して配置され、液体を輸送するために少なくとも1つのチャンバが形成されるように実施され、かつ前記チャンバは、狭窄部、特にシールラインによって遮断され、
前記プログレッシブキャビティポンプは、
・駆動シャフトおよび駆動モータであって、前記回転子は、前記駆動シャフトによって前記駆動モータに連結される、駆動シャフトおよび駆動モータを有し、
前記回転子と固定子の相対的な軸方向位置を調整するための調整装置を有し、
前記調整装置は、前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を拡大するために実施され、
前記回転子は、軸方向に変位可能であり、前記調整装置は、前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を少なくとも部分的に拡大するために、前記回転子を軸方向に変位させるように構成され、
a)前記駆動モータおよび前記駆動シャフトを含む前記回転子の駆動系は、前記回転子を変位可能であり、または
b)前記駆動シャフトと前記駆動モータとの間に配置された動力伝達手段によって、前記回転子は、前記駆動シャフトと一緒に、前記駆動モータに対して変位可能であり、前記動力伝達手段は、前記駆動シャフトを軸方向に変位させることを可能にする、
プログレッシブキャビティポンプ。」である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点2-1>
本件発明1では、「回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、および可変偏心度(e1,e2)を備え」たものであるのに対し、
甲2発明1では、ロータ26は、前記入口と前記出口との間でテーパになる形状を備えたものであるものの、可変偏心度を備えたものであるか不明な点。
<相違点2-2>
回転子を変位可能とする構成について、本件発明1では「a)前記駆動モータ(36)および前記駆動シャフト(26)を含む前記回転子(4)の駆動系(25)は、前記回転子(4)と一緒に変位可能」であるのに対し、
甲2発明1では、前記駆動モータ62および前記ロータ26を駆動する中間シャフト72を含む前記ロータ26の駆動系は、前記ロータ26と一緒に変位可能ではない点。
<相違点2-3>
本件発明1では、「b)前記駆動シャフト(26)と前記駆動モータ(36)との間に配置されたギアボックス(34)によって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)と一緒に、前記駆動モータ(36)に対して変位可能であり、前記ギアボックス(34)は、前記駆動シャフト(26)を軸方向に変位させることを可能にする」ものであるのに対し、
甲2発明1では、前記ロータ26を駆動する中間シャフト72と前記駆動モータ62との間にそのような「ギアボックス」を有していない点。
イ 判断
(ア)相違点2-1について
相違点2-1に関して、甲2には、ロータが可変偏心度を備えることについて、何ら示されていない。また、ロータが出口または入口に向かってテーパになる形状であることが、必ず、可変偏心度を備えたものであるとはいえないことは、例えば、本件特許明細書の段落0054や本件図面の図2a~3cの記載で説明される内容からも、明らかである。
したがって、上記相違点2-1は、実質的な相違点であるといえる。
また、上記第4の2(6)で示した記載から、参考1には、一軸偏心ねじポンプ(プログレッシブキャビティポンプ)において、ロータが一端部から他端部に向かうに従って、その外径が小さくなる形状、すなわち、テーパになる形状を備え、また、前記ロータがステータの内孔に嵌挿している状態で、前記ロータ及び前記ステータのそれぞれの中心軸が、前記ロータの前記他端部側から前記一端部側に向かうに従って互いに接近して交差するように構成されたものが示されているといえる。
しかし、甲2には、「シャフト70は、その間に結合された概ね2つのユニバーサルジョイント74及び76を有する中間シャフト72によってロータ26に結合される。ユニバーサルジョイントは、ロータ26がステータ22内で回転するだけでなく、歳差運動することを可能にする。」(上記第4の2(2)ア(サ)を参照。)と記載されているように、概ね2つのユニバーサルジョイントを有する中間シャフトを採用することにより歳差運動することを可能にしているところ、これを保証しない、参考1に記載された事項をあえて採用する動機はない。
したがって、甲2発明1において、本件発明1の上記相違点2-1に係る構成は、容易に想到し得ない。
(イ)相違点2-2について
相違点2-2に関して、甲2には、駆動モータ62がロータ26と一緒に変位可能であることは示されていない。甲2には、上記第4の2(2)ア(シ)に「モータ62は、一般に、ポリッシュクランプロッドの一端においてポリッシュクランプロッド84と係合することができる駆動軸82を含む。ポリッシュクランプロッド84は、ポリッシュクランプロッドの別の端部においてシャフト70と係合させることができる。」と、また、「シャフト70は、ポリッシュクランプロッド84に対して、およびステータ22に対して、長手方向に上下に調整することができる。」と記載されるように、駆動モータ62及びシャフト70がそれぞれ、別々に変位可能であることが示されている。そうすると、駆動モータ62とロータ26とは、一緒に変位可能であるとはいえず、駆動モータ62を含むロータ26の駆動系は前記ロータ26と一緒に変位可能ではないことは明らかであるから、上記相違点2-2は実質的な相違点である。
また、甲2で示されるプログレッシブキャビティポンプは、主に油田操業で使用することを目的とされるもの(上記第4の2(2)ア(ア)を参照。)であり、装置のサイズも大きなものになるところ、そのような大きなサイズの装置では、駆動モータも大きなものとなるといえる。そして、甲2には、駆動モータ62もロータ26と一緒に変位可能とさせるように構成することについて、特段記載も示唆もない。
さらに、甲1、3~5、参考1~2を参酌するも、プログレッシブキャビティポンプにおいて、「駆動モータおよび駆動シャフトを含む回転子の駆動系は、前記回転子と一緒に変位可能」とすることは示されておらず、また、そのことが公知の技術であったと認め得る他の証拠も見あたらない。
そうすると、甲2発明1において、本件発明1の上記相違点2-2に係る構成とする動機はないところ、仮に、甲1、3~5、参考1~2に記載された技術を適用し得たとしても、本件発明1の上記相違点2-2に係る構成には至らない。
したがって、甲2発明1において、本件発明1の上記相違点2-2に係る構成は、容易に想到し得ない。
(ウ)相違点2-3について
相違点2-3に関して、甲2には、「ギアボックス」は示されていない。
また、ギアボックスは、歯車により力、速度及びトルクを伝達し、変更するものであると理解されるところ、甲2発明1の「ポリッシュクランプロッド84」はギアボックスといえるものではない。
したがって、上記相違点2-3は実質的な相違点である。
一方、甲3には、ロータ36を駆動するフレキシブルシャフト22と駆動ユニット12との間にギアセット14を配置した偏心ねじ式ポンプ10が、また、甲4には、ロータ2を駆動するたわみ軸3とギアードモータ18との間にギアケース14を配置した偏心ねじ式ポンプが、更に、参考2には、内側要素1の軸部分とモータ14との間に、ギア13、17を収容するギア収容部を配置したコニカルスクリュー圧縮機が示されている。
しかし、甲3、甲4、参考2のいずれにも、ギアボックスによって、回転子を駆動する駆動シャフトを軸方向に変位させることは、示されていない。むしろ、ギアボックスを有する、甲3の図1、甲4の図1、参考2の図3を参酌すると、いずれも、回転子を駆動する駆動シャフトを軸方向に変位させないことを前提とした構成が看取される。
そうすると、甲2発明1において、甲3、甲4、参考2に記載された技術事項を採用する動機はなく、仮に、これら技術事項を採用し得たとしても、ギアボックスが、回転子を駆動する駆動シャフトを軸方向に変位させないものとなり、本件発明1の上記相違点2-3に係る構成には至らない。
したがって、甲2発明1において、本件発明1の上記相違点2-3に係る構成は、容易に想到し得ない。
(エ)まとめ
以上によれば、本件発明1は、甲2発明1であるとはいえず、また、甲2発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえず、更に、本件発明1は、甲2発明1、甲3に記載の技術事項、甲4に記載の技術事項、参考1に記載の技術事項及び参考2に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本件発明18について
本件発明18は、上記第2で示した、請求項18に記載された事項により特定されるものであるところ、プログレッシブキャビティポンプに関し、請求項1に記載された事項を全て含むものである。
したがって、本件発明18と、甲1発明1を全て含む甲1発明2とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点1-1、相違点1-2及び相違点1-3で相違する。
そして、上記1(1)イ(ア)、(イ)及び(ウ)で検討したとおり、甲1発明1において、上記相違点1-1に係る構成、上記相違点1-2に係る構成及び上記相違点1-3に係る構成は、容易に想到し得たものでなく、甲1発明2においても同様に、上記相違点1-1に係る構成、上記相違点1-2に係る構成及び上記相違点1-3に係る構成は、容易に想到し得たものでない。
また、本件発明18と甲2発明1を全て含む甲2発明2とを対比すると、両者は、少なくとも、上記相違点2-1、上記相違点2-2及び上記相違点2-3で相違する。
そして、上記1(2)イ(ア)、(イ)及び(ウ)で検討したとおり、甲2発明1において、上記相違点2-1に係る構成、上記相違点2-2に係る構成及び上記相違点2-3に係る構成は、容易に想到し得たものでなく、甲2発明2においても同様に、上記相違点1-1に係る構成、上記相違点1-2に係る構成及び上記相違点1-3に係る構成は、容易に想到し得たものでない。
以上によれば、その余の点について検討するまでもなく、本件発明18は、甲1発明2、甲3~5に記載の技術事項及び参考1~2に記載の技術事項に基いて、又は、甲2発明2、甲3~5に記載の技術事項及び参考1~2に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 取消理由通知において採用しなかった異議申立人の申立理由について
1 申立理由の概要
本件特許の請求項1、18に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
2 当審の判断
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)本件発明の課題
本件発明が解決しようとする課題は、本件特許明細書の発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」ということもある。)の段落0008の記載から、「既存の磨耗を補償するためだけでなく磨耗の発生を低減し、それによって、プログレッシブキャビティポンプの耐用年数を延ばし、保守作業を低減するための、上述のタイプのプログレッシブキャビティポンプを開示すること」である。
(3)本件発明について
ア 請求項1、18の記載
本件発明1、18は、「a)前記駆動モータ(36)および前記駆動シャフト(26)を含む前記回転子(4)の駆動系(25)は、前記回転子(4)と一緒に変位可能であり、または
b)前記駆動シャフト(26)と前記駆動モータ(36)との間に配置されたギアボックス(34)によって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)と一緒に、前記駆動モータ(36)に対して変位可能であり、前記ギアボックス(34)は、前記駆動シャフト(26)を軸方向に変位させることを可能にする」との事項を備えたものである。
イ 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明の段落0009に「この目的は、回転子と固定子との間のギャップ形状を最適化するように構成された、回転子と固定子との相対的な軸方向位置を調整するための調整装置を有するという点、前記装置が回転子と固定子との間の狭窄部を拡大するように構成されているという点で、上述のタイプのプログレッシブキャビティポンプによって達成される。」と、また、段落0011の「本発明は、動作中に狭窄部が拡大され、それによって、ギャップ形状を動作条件に適合させることができ、したがって、最適化することができれば、すべての摩耗を防止または低減できることを認識する。したがって、本発明は、回転子と固定子との間の狭窄部を拡大するために実施される調節装置を提案する。」との記載から、回転子と固定子との間のギャップ形状を最適化するように構成された、回転子と固定子との相対的な軸方向位置を調整するための調整装置により、上記(2)で示した本件発明の課題が解決されると認識できる。
また、発明の詳細な説明の段落0056~0057には、「本実施形態例(図4)では、調整装置39は、本実施形態例では、駆動シャフト26、ギアボックス34、および駆動モータ36を含む駆動系25全体を含めて、回転子4が軸方向に変位可能であるように実施される。この点に関して、矢印37は、駆動モータ36も変位されることを示している。このために、ギアボックス34のハウジング46は、固定子2の入口10とは反対側の入口ハウジング14のセグメント48内に変位可能に支持され、シール50によって周囲の領域から密封されている。このために、回転子4を軸方向に移動させるために別個の駆動部52が設けられており、スピンドル駆動部54(概略的にのみ示されている)によって駆動系25を変位させることができるので、回転子4と固定子2との間の狭窄部7が拡大する。必要に応じて、狭窄部7は、漏れギャップSが回転子4と固定子2との間のシールラインDの領域となるように十分に拡大することができる。回転子4と固定子2との間のプリテンションは、輸送された液体が逆圧力を及ぼすので、通常、それによって完全には緩和されない。」と記載され、さらに、段落0063に「本実施形態例(図5)によれば、回転子4は、固定子2に対して変位可能に配置されている。しかしながら、本実施形態例においては、駆動モータ36も静止しており、変位可能ではない。全体として、駆動シャフト26は、カルダン継手30を介して駆動モータ36の駆動シャフト32に連結されている。回転子4と駆動シャフト26を変位可能にさせるために、駆動シャフト32は、軸方向に変位可能にギアボックス34の出力ギア68に支持されている。ギア68は、軸方向に変位可能なシャフト-ハブ接続によって出力シャフト32に連結されている。したがって、ギアボックス34は、中空シャフトとして実施されたギア68を備えており、その中でシャフト32を変位させることができる。出力シャフト32は、シール70を通って案内され、駆動入口ハウジング14からギアボックス34内に液体が侵入することはできない。」と記載されている。
ウ 以上によれば、当業者は、発明の詳細な説明の記載に基づき、請求項1、18に記載のとおり、「a)前記駆動モータ(36)および前記駆動シャフト(26)を含む前記回転子(4)の駆動系(25)は、前記回転子(4)と一緒に変位可能であり、または
b)前記駆動シャフト(26)と前記駆動モータ(36)との間に配置されたギアボックス(34)によって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)と一緒に、前記駆動モータ(36)に対して変位可能であり、前記ギアボックス(34)は、前記駆動シャフト(26)を軸方向に変位させることを可能にする」との事項を備えることによって、本件発明の課題を解決できると認識することができる。
そうすると、本件発明1、18は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明に当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということができ、本件発明1、18についてサポート要件の違反はない。
エ 異議申立人の主張について
異議申立人は、異議申立書において、「「ポンプが停止している状態において固定子(ステータ)に対して回転子(ロータ)を相対移動させること」では、本件特許発明1及び本件特許発明18に係る発明の目的を達成(課題を解決)できないことは明白である。従って、本件特許発明1に係る請求項1、及び本件特許発明18に係る請求項18は、「ポンプの運転状態において」との前提条件がなければ成立せず、「ポンプの停止状態」におけるものは権利範囲から排除されるべきものである。」(45頁24行~46頁5行)と主張する
しかしながら、前記ア~ウで検討したように、本件発明は、「「a)前記駆動モータ(36)および前記駆動シャフト(26)を含む前記回転子(4)の駆動系(25)は、前記回転子(4)と一緒に変位可能であり、または
b)前記駆動シャフト(26)と前記駆動モータ(36)との間に配置されたギアボックス(34)によって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)と一緒に、前記駆動モータ(36)に対して変位可能であり、前記ギアボックス(34)は、前記駆動シャフト(26)を軸方向に変位させることを可能にする」という事項により課題を解決するものであるから、上記異議申立人の主張は採用できない。
オ まとめ
以上によれば、本件特許の請求項1、18に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号により取り消すことができない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件特許1、18は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件特許1、18を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700750