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特許異議申立

2025-700298

回路基板、接合体、及びこれらの製造方法

審判番号
2025-700298
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-512240
登録番号
7555397
請求日
2025年03月12日
審決日
2025年09月19日
公報発行日
2025年12月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】デンカ株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】清水 義憲
  • 【権利者代理人】中塚 岳
  • 【権利者代理人】佐々木 善紀
  • 【権利者代理人】石坂 泰紀
  • 【異議申立人】廣瀬 尚子
審判長/審判官
  • 審判長 深草 祐一
  • 審判官 三崎 仁
  • 審判官 塩谷 領大
分類
P1651.121-YAA(C04B) / P1651.537-YAA(C04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7555397号発明「回路基板、接合体、及びこれらの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7555397号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、〔4-6〕、〔7-11〕について訂正することを認める。 特許第7555397号の請求項1~11に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7555397号の請求項1~11に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)3月29日(優先権主張 令和2年3月30日)を国際出願日とする出願であって、令和6年9月12日に特許権の設定登録がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行された。そして、本件特許の請求項1~11に係る特許に対して、令和7年3月12日に特許異議申立人廣瀬尚子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 その後の経緯は、概略以下のとおりである。 令和7年 5月27日付け:取消理由通知書 同年 7月22日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出 同年 8月25日 :申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 本件訂正請求書による請求の趣旨は、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、〔4-6〕、〔7-11〕について訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示している。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「窒化珪素基板と銅回路板とが銀と銅と錫とチタンとを含むろう材層を介して接合されている回路基板であって、」と記載されているのを、「窒化珪素基板と銅回路板とが銀と銅と錫とチタンとを含むろう材層を介して接合されている回路基板であって、前記ろう材層における前記銀の含有量が85質量%以上であり、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、3も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4に「窒化珪素基板と銅回路板とが銀と銅と錫とチタンとを含むろう材層を介して接合されている接合体であって、」と記載されているのを、「窒化珪素基板と銅回路板とが銀と銅と錫とチタンとを含むろう材層を介して接合されている接合体であって、前記ろう材層における前記銀の含有量が85質量%以上であり、」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5、6も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項7に「前記窒化珪素基板と前記銅回路板とが銀と銅と錫とチタンとを含むろう材層を介して接合され、」と記載されているのを、「前記窒化珪素基板と前記銅回路板とが銀と銅と錫とチタンとを含むろう材層を介して接合され、前記ろう材層における前記銀の含有量が85質量%以上であり、」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8~11も同様に訂正する。)。 2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、「銀と銅と錫とチタンとを含むろう材層」を「前記ろう材層における前記銀の含有量が85質量%以上であ」るものに限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 さらに、願書に添付した明細書の【0028】に「ろう材層30は、銀と、銅と、錫と、チタン、ジルコニウム、ハフニウム及びニオブからなる群より選択される少なくとも一種を含む活性金属と、を含有するAg-Cu-Sn系ろう材で構成されてよい。ろう材層30における銀の含有量は、70質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、85質量%以上であってもよい。」と記載されていることから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものである。 (2)訂正事項2及び3について 訂正事項2及び3は、訂正事項1と同様に、「銀と銅と錫とチタンとを含むろう材層」を「前記ろう材層における前記銀の含有量が85質量%以上であ」るものに限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、そして、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 3 一群の請求項について 訂正前の請求項2及び3は請求項1を、訂正前の請求項5及び6は請求項4を、訂正前の請求項8~11は請求項7を、それぞれ直接的又は間接的に引用するものであるから、請求項1~3、請求項4~6、請求項7~11は、それぞれ一群の請求項を構成するものである。 そして、訂正事項1~3は、順に、前記それぞれの一群の請求項ごと請求されているものであるから、特許法第120条の5第4項に適合するものである。 4 訂正についてのまとめ 上記のとおり、訂正事項1~3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 よって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、〔4-6〕、〔7-11〕について訂正することを認める。 第3 本件発明及び本件明細書等 1 本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~11に係る発明(以下順に「本件発明○」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の各請求項に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 窒化珪素基板と銅回路板とが銀と銅と錫とチタンとを含むろう材層を介して接合されている回路基板であって、 前記ろう材層における前記銀の含有量が85質量%以上であり、 EBSP法によって求められる前記ろう材層における銀部のKAM値の平均値が0.55°以下である、回路基板。 【請求項2】 EBSP法によって求められる、前記銅回路板に含まれる銅のKAM値の平均値が0.36°以下である、請求項1に記載の回路基板。 【請求項3】 前記ろう材層が前記銅回路板の端部から露出する露出部を有し、 前記露出部の長さLの平均値が20μm以上であり、 前記露出部の厚みTの平均値が4~30μmである、請求項1又は2に記載の回路基板。 【請求項4】 窒化珪素基板と銅板とが銀と銅と錫とチタンとを含むろう材層を介して接合されている接合体であって、 前記ろう材層における前記銀の含有量が85質量%以上であり、 EBSP法によって求められる前記ろう材層における銀部のKAM値の平均値が0.55°以下である、接合体。 【請求項5】 EBSP法によって求められる、前記銅板に含まれる銅のKAM値の平均値が0.36°以下である、請求項4に記載の接合体。 【請求項6】 前記ろう材層における銀の含有量が70質量%以上であり、 前記ろう材層の厚みTの平均値が4~30μmである、請求項4又は5に記載の接合体。 【請求項7】 窒化珪素基板の主面に銀と銅と錫と水素化チタンとを含むろう材を塗布する工程と、 前記ろう材を介して前記窒化珪素基板と銅板とを重ね合わせて積層体を得る工程と、 前記積層体を750℃以上の焼成温度で10分間以上保持して焼成する工程と、 焼成した積層体を550℃以上且つ750℃未満で10分間以上保持してアニールして、前記窒化珪素基板と前記銅板とが銀と銅と錫とチタンとを含むろう材層を介して接合され、前記ろう材層における前記銀の含有量が85質量%以上であり、EBSP法によって求められる前記ろう材層における銀部のKAM値の平均値が0.55°以下である接合体を得る工程と、を有する、接合体の製造方法。 【請求項8】 前記積層体を750℃以上の焼成温度で保持する時間が3時間未満であり、 前記焼成温度から750℃未満になるまで1℃/分以上の降温速度で冷却する、請求項7に記載の接合体の製造方法。 【請求項9】 アニールして得られる前記接合体の前記銅板に含まれる銅のKAM値の平均値が0.36°以下である、請求項7又は8に記載の接合体の製造方法。 【請求項10】 請求項7~9のいずれか一項に記載の製造方法で得られた接合体における前記銅板の一部を除去して銅回路板を形成し、回路基板を得る工程を有する、回路基板の製造方法。 【請求項11】 前記回路基板は、ろう材層が前記銅回路板の端部から露出する露出部を有し、 前記露出部の長さLの平均値が20μm以上であり、 前記ろう材層の厚みTの平均値が4~30μmである、請求項10に記載の回路基板の製造方法。」 2 本件明細書 明細書には訂正がなかったことから、本件特許明細書を以下「本件明細書」といい、その内容を抜粋すると、以下のとおりである。なお、下線は当審で付与した(以下同様)。 (本ア)課題及び解決手段について 「【0002】 ロボット及びモーター等の産業機器の高性能化に伴い、パワーモジュールに搭載される半導体素子から発生する熱も増加の一途を辿っている。この熱を効率よく放散させるため、良好な熱伝導を有するセラミックス基板を備える回路基板が用いられている。このような回路基板には、セラミックス基板と金属板の接合時における加熱及び冷却工程、及び使用時のヒートサイクルによって熱応力が発生する。これに伴って、セラミックス基板にクラックが発生したり、金属板が剥離したりする場合がある。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 回路基板は、用いられる用途に応じて、信頼性に十分に優れることが求められる。例えば、電車の駆動部及び電気自動車等のパワーモジュールの分野では、ヒートサイクルが過酷な条件となっても、優れた信頼性を維持することが求められる。これは、例えば冷却温度が低くなるとセラミックス基板に発生する引張応力が増大し、セラミックス基板にクラックが発生し易くなるためである。そこで、本開示は、ヒートサイクルに対する耐久性に優れる回路基板及びその製造方法を提供する。また、本開示は、ヒートサイクルに対する耐久性に優れる接合体及びその製造方法を提供する。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本開示の一側面に係る回路基板は、セラミックス基板と金属回路板とが銀を含むろう材層を介して接合されている回路基板であって、EBSP法によって求められるろう材層における銀部のKAM値の平均値が0.55°以下である。」 (本イ)KAM値について 「【0007】 ここで、KAM(Kernel Average Misorientation)値とは、結晶粒内における隣接測定点間の方位差を示しており、EBSP(Electron Back Scattering Pattern)法を用いた結晶方位解析により求められる。このKAM値が小さいほど、結晶の歪が小さいといえる。 【0008】 セラミックス基板と金属回路板は、線熱膨張係数が大きく異なるため、セラミックスと金属回路板との接合部には、接合時の温度との差異によって残留応力が生じる。残留応力は、ろう材層に含まれる成分の結晶構造の歪となって現れる。この残留応力が大きくなると、セラミックス基板にクラックが生じやすくなり、ヒートサイクルに対する耐久性が損なわれる。本開示の回路基板は、ろう材層における銀部のKAM値の平均値が十分に小さいため、セラミックス基板と金属回路板の接合部における残留応力が十分に低減されている。したがって、本開示の回路基板は、ヒートサイクルに対する耐久性に優れる。」 「【0032】 KAM値は、銀部の結晶粒内における隣接測定点間の方位差を示す値であり、市販のOIM(Orientation Imaging Microscopy)結晶方位解析装置を用いて、EBSP(Electron Back Scattering Pattern)法によって求められる。OIM結晶方位解析装置に付属している解析ソフトを用いて結晶粒内の方位差を測定してよい。銀部のKAM値の平均値は、ろう材層30の5箇所において測定を行い、それぞれの測定値の算術平均値として求められる。なお、各測定視野において銀以外成分が含まれる場合には、エネルギー分散型X線分析(EDS)によって、銀部と他成分の部分とを分離処理したうえで、銀部のKAM値の平均値を求める。本開示における「銀部」とは、ろう材層のうち、EDSによって銀が検出される領域をいう。」 (本ウ)ろう材について 「【0028】 ろう材層30は、銀と、銅と、錫と、チタン、ジルコニウム、ハフニウム及びニオブからなる群より選択される少なくとも一種を含む活性金属と、を含有するAg-Cu-Sn系ろう材で構成されてよい。ろう材層30における銀の含有量は、70質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、85質量%以上であってもよい。これによって、接合部40における残留応力を十分に低減しつつ、ろう材層30の緻密性を向上することができる。」 (本エ)実施例について 「【0068】 (実施例1) [接合体の作製] ろう材を調製するため、以下の原料粉末を準備した。 銀粉末:福田金属箔粉工業(株)製、Ag-HWQ(商品名)、平均粒子径D50:2.5μm、比表面積0.4m2/g 銅粉末:福田金属箔粉工業(株)製、Cu-HWQ(商品名)、平均粒子径D50:3.0μm、比表面積:0.4m2/g 錫粉末:福田金属箔粉工業(株)製:Sn-HPN(商品名)、平均粒子径D50:3μm、比表面積0.1m2/g 水素化チタン粉末:トーホーテック(株)製、TCH-100(商品名) 【0069】 銀粉末(90質量部)と銅粉末(10質量部)の合計100質量部に対して、錫粉末を1質量部及び水素化チタン粉末を3.5質量部の割合で配合し、有機溶媒、及びバインダ等を添加してろう材を調製した。市販の窒化珪素基板(厚み:0.32mm)の両方の主面に、ろう材を塗布量が8mg/cm2となるようにスクリーン印刷法で塗布した。 【0070】 窒化珪素基板の両方の主面上にそれぞれ銅板(厚さ:0.5mm、純度:99.60%の無酸素銅板(JIS H 3100,C1020))を重ねて積層体を得た。電気炉を用いて、窒素雰囲気中、積層体を860℃の炉内温度で18分間加熱して、ろう材粉末を融解させて、セラミック基板と金属板を接合した(焼成工程)。その後、平均10℃/分の降温速度で炉内温度を600℃まで冷却した。窒素雰囲気中、600℃の炉内温度で10分間保持するアニールを行った(アニール工程)。その後、加熱を停止し、窒素雰囲気中で室温まで自然冷却した。アニール工程後の炉内温度の降温速度の平均値は6℃/分であった。このようにして、セラミックス基板と一対の金属板とがろう材層を介して接合された接合体を作製した。 【0071】 [KAM値の測定] 接合体を樹脂包埋後、コーターマシンを用い、接合体の重心を通るように厚さ方向に沿って切断した。接合体の断面のフラットミリング処理を行い、EBSD測定用の試料を得た。株式会社TSLソリューションズ社製のOIM(Orientation Imaging Microscopy)結晶方位解析装置を用いて切断面のEBSD測定を行った。測定電圧は15kV、ワーキングディスタンスは17mm、試料傾斜角度は70°とした。 【0072】 測定視野は240μm×160μm、測定間距離d=0.2μmとして、ろう材層と銅板のそれぞれについて5箇所でOIM結晶方位解析装置を用いてKAM値を測定した。ろう材層については、EDS測定によってろう材層における銀部と銅部とを分離処理し、銀部のKAM値を求めた。5箇所で測定した銀部のKAM値の平均値は表1に示すとおりであった。また、銅板の5箇所で測定した銅のKAM値の平均値は表1に示すとおりであった。」(当審注:「表1」は「表3」の誤記である。) 「【0078】 (実施例2) 実施例1と同じ手順で積層体を得た。・・・」 「【0080】 (実施例3,4) 実施例1と同じ手順で積層体を得た。・・・」 「【0082】 (実施例5,6) ろう材の配合を表1に示すとおりとしたこと以外は、実施例1と同じ手順で積層体を得た。・・・」 そして、表1及び3として、以下の表が記載されている。 「【表1】 [図:0001430018000001.jpg] 【表3】 [図:0001430018000002.jpg] 」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 令和7年5月27日付け取消理由通知に記載した取消理由は、概略は以下のとおりである。 取消理由1(サポート要件) 本件特許は、その特許請求の範囲の下記の請求項に係る記載が、特許法第36条第6項第1号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ・請求項1~11 上記第3の2で摘記した(本イ)の【0007】によれば、「KAM値」とは、「結晶粒内における隣接測定点間の方位差を示す」ものであり、「このKAM値が小さいほど、結晶の歪が小さいといえる」ものであるから、ある領域のKAM値が小さければ、その領域の結晶の歪が小さいものといえる。一方、同【0032】によれば、「銀部」のKAM値は、「エネルギー分散型X線分析(EDS)によって、銀部と他成分の部分とを分離処理したうえで、銀部のKAM値の平均値を求める」ものであるから、「銀部のKAM値」が小さいということは、他成分の部分から分離処理した銀部における結晶の歪が小さいものといえるものの、他の部分、すなわち銅部、錫部、チタン部に相当する領域における結晶の歪みが小さいとはいえない。そうすると、仮に銀の含有量が多くはない(銀部の領域が大きくない)とすると、いくら「銀部のKAM値の平均値が0.55°以下」と特定しても、それは「銀部」だけにおいて結晶歪が小さいということであり、他の部分の結晶歪が小さいとはいえないから、ろう材層全体としてみれば、結晶歪が小さいとはいえない。 したがって、銀の含有量を特定することなく「銀部のKAM値の平均値が0.55°以下」と特定しても、「ろう材層」の結晶歪が小さいといえないのであるから、同【0008】の「残留応力は、ろう材層に含まれる成分の結晶構造の歪となって現れる。この残留応力が大きくなると、セラミックス基板にクラックが生じやすくなり、ヒートサイクルに対する耐久性が損なわれる。」との記載を踏まえると、ヒートサイクルに対する耐久性が優れているとはいえない。 よって、「銀と銅と錫とチタンとを含むろう材層」「における銀部のKAM値の平均値が0.55°以下」と特定しても、ろう材層における銀の含有量を特定しなければ、本件発明の課題が解決できると認識できるものではなく、実施例の記載を踏まえると、ろう材層における銀の含有量が85質量%以上という範囲で、本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるものといえる。 以上のことから、ろう材層における銀の含有量が85質量%以上という範囲を特定していない本件発明1~11は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 2 取消理由に対する当審の判断 上記第2の1で記載したとおり、本件訂正によって、本件発明1~11のいずれにおいても「ろう材層における銀の含有量が85質量%以上」であることが特定されたことから、取消理由通知に記載した取消理由によって、本件発明1~11に係る特許を取り消すことはできない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。 1 申立理由1(進歩性) 本件特許の請求項1~11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証~甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 甲第1号証:特開2014-90144号公報 甲第2号証:特開2003-192462号公報 甲第3号証:国際公開第2017/056360号 甲第4号証:国際公開第2009/066692号 甲第5号証:国際公開第2018/199060号 甲第6号証:特開2011-91184号公報 (以下、甲第○号証は「甲○」という。) 2 申立理由2(サポート要件) 申立人は、特許異議申立書において「発明の詳細な説明では、銀の含有量が90質量%末満である場合の実施例について記載が無く、銀の含有量が90質量%未満である場合に上記課題を解決して「ヒートサイクルに対する耐久性に優れる回路基板および接合体、ならびにそれらの製造方法を提供する」という効果を得ることが可能であるかどうかについては、本件特許明細書の実施例で何ら証明されておりません。銀の含有量が低下すると、ヒートサイクルに対する耐久性に影響を及ぼすことは、明らかであります。」(39頁4~10行)と主張し、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~11に係る記載が、特許法第36条第6項第1号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとしている。 第6 甲号証の記載 1 甲1について (1)記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した(以下同様)。 (甲1ア)「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は半導体素子を搭載し、超音波接合により銅電極を直接接合しても、微細なクラックを生じることのないセラミック回路基板とその製造方法を提供することを目的とするものである。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明のセラミック回路基板にあっては、セラミック基板の一方の面に銅回路、他方の面に銅放熱板が、活性金属としてTiを含有するろう材により接合されてなるセラミック回路基板において、セラミック基板の鏡面光沢度が5.0以上、セラミック回路基板の接合ボイドが10%以下であって、セラミック回路基板のろう材層がAgを含有する合金中にCuを含有する合金が分散した構造を有し、その厚みが11~24μmであり、Ti化合物の厚みが0.4~0.6μmで、その占有面積が12~85%であることを特徴とするものである。」 (甲1イ)「【実施例】 【0025】 実施例1~10 比較例1~10 Ag粉末(比表面積0.6m2/g、酸素量0.16質量%)、Cu粉末(比表面積0.7m2/g、酸素量0.05質量%)、TiH2粉末(特級試薬)、Sn粉末(特級試薬)を、表1に示す各種比率にて混合した。この粉末100質量部に、テレピネオール15質量部、ポリイソブチルメタクリレートのトルエン溶液を固形分として1.3質量部を三本ロールにて混合し、目開き20μmのナイロンメッシュを通過させ、ろう材ペーストを調整した。これを、厚み0.635mm×52mm×45mmの窒化アルミニウム基板(熱伝導率180W/mK、3点曲げ強度500MPa、鏡面光沢度15.2)の表面及び裏面に、ろう材層の厚み(乾燥後の厚み)が所望の厚みとなるようロールコーターを用いて塗布した。その後、表面に回路形成用銅板を、裏面に放熱板形成用銅板(いずれも無酸素銅板)を重ね、6.5×10-4Paの真空炉中、400℃まで昇温し、真空度が5.0×10-3Paになるまで保持した後、800℃まで昇温し20分保持した後、冷却速度5℃/minにて600℃まで冷却し、4時間保持した後、1℃/minにて冷却し、銅板と窒化アルミニウム基板の接合体を製造した。 【0026】 接合体の回路形成用銅板に、スクリーン印刷によりUV硬化型エッチングレジストを回路パターンに印刷し、UV硬化させた後、さらに放熱面形状を印刷しUV硬化させた。これをエッチャントとして塩化第2銅水溶液にてエッチングをおこない、続いて60℃のチオ硫酸アンモニウム水溶液とフッ化アンモニウム水溶液で随時処理し、回路パターンと放熱板パターンを形成し、ろう材の金属成分やろう材厚の異なった回路基板の中間体を種々製造した。 【0027】 尚、比較例9では銅粉(比表面積2.1m2/g、酸素量0.3質量%)に、実施例7,8及び比較例8では鏡面光沢度の異なる窒化アルミニウム基板に、また、実施例9、10及び比較例10ではセラミック基板を鏡面光沢度の異なる窒化けい素(熱伝導率90W/m・K、抗折強度710MPa)に変更した以外は実施例1と同様の処理をし、回路基板の中間体を製造した。)」 「【0031】 熱サイクル試験評価:作成したセラミック回路基板を熱衝撃試験に投入し、-40℃×30分、125℃×30分を1サイクルとする熱衝撃試験を500サイクルおこなった後、銅板をエッチングにて除去し、セラミック基板の表面に発生するクラックの発生状態を光学実体顕微鏡(倍率50倍)にて観察し、その20枚計測した中で最大値を用いて以下の3つにランク分けをおこなった。 A:クラックが観察されない、B:クラック長100μm未満が観察されるもの、C:クラック長100μm以上が観察されるもの」 「【0034】 【表1】 [図:0001430018000003.jpg] 」 (2)甲1発明 ア (甲1イ)の【0025】の記載によれば、窒化アルミニウム基板の表面に、ろう材層を塗布し、その後、表面に回路形成用銅板を重ね、6.5×10-4Paの真空炉中、400℃まで昇温し、真空度が5.0×10-3Paになるまで保持した後、800℃まで昇温し20分保持した後、冷却速度5℃/minにて600℃まで冷却し、4時間保持した後、1℃/minにて冷却して製造した、銅板と窒化アルミニウム基板の接合体が記載されている。 そして、同【0027】には「実施例9、10及び比較例10ではセラミック基板を鏡面光沢度の異なる窒化けい素(熱伝導率90W/m・K、抗折強度710MPa)に変更した以外は実施例1と同様の処理をし、回路基板の中間体を製造した。)」と記載されていることから、上記窒化アルミニウム基板に替えて「窒化けい素基板」を用いた接合体が実施例9、10及び比較例10であり、上記表1を参照すると、ろう材層を形成するろう材金属成分の割合は、実施例9では、Agが87質量%、Cuが9質量%、TiHが2質量%、Snが2質量%であることが記載されている(なお、酸素量は0.14質量%であり、Ag、Cu、TiH及びSnの含有量の合計が質量100%となることから、酸素量については無視できるものとした。)。 イ そうすると、実施例9に着目して、甲1に記載された発明を認定すると、以下のとおりである。なお、実施例10に着目しても同様である。 「窒化けい素基板の表面にろう材層を塗布し、その後、表面に回路形成用銅板を重ね、6.5×10-44Paの真空炉中、400℃まで昇温し、真空度が5.0×10-3Paになるまで保持した後、800℃まで昇温し20分保持した後、冷却速度5℃/minにて600℃まで冷却し、4時間保持した後、1℃/minにて冷却して製造した、銅板と窒化けい素基板の接合体であって、 前記ろう材層を形成するろう材金属成分の割合は、Agが87質量%、Cuが9質量%、TiHが2質量%、Snが2質量%である、 銅板と窒化けい素基板の接合体。」(以下「甲1発明」という。) 2 甲2について 甲2には、以下の事項が記載されている。 (甲2ア)「【0011】本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであって、パワートランジスタやレーザーダイオード等の装着に使用される比較的厚い金属板を有する窒化珪素回路基板において、窒化珪素基板へのクラックの発生や金属板の剥離等が抑制された窒化珪素回路基板およびその製造方法を提供することを目的としている。 【0012】 【課題を解決するための手段】本発明の窒化珪素回路基板は、窒化珪素基板の少なくとも一方の面に厚さ0.5mm以上の銅板が接合された窒化珪素回路基板において、前記銅板と窒化珪素基板とがAg、Cuおよび活性金属を含む接合層により接合されていることを特徴とする。」 (甲2イ)「【0023】このAg成分が拡散されたAg拡散層7は、銅板(Ag成分が拡散されていない部分)の熱膨張率と窒化珪素基板の熱膨張率の間の熱膨張率を有するものである。このようなAg拡散層7を銅板4に形成することで、例えば窒化珪素回路基板の構成を、銅板から窒化珪素基板へ向かって順に、銅板、銅板+Ag、Ag+Cu、TiN、SiNのようにすることが可能となる。このように、徐々に熱膨張率を変化させていくことで、銅板と窒化珪素基板との熱膨張率の差に起因する熱応力の発生を緩和させることができ、窒化珪素基板へのクラックの発生や、銅板の剥離等を有効に抑制することが可能となる。また、板厚0.5mm以上と厚い銅板を接合しているにも関わらず熱応力の発生が緩和されるために、窒化珪素基板の板厚をこれまでよりも薄くすることが可能となる。このため、回路板として接合された板厚0.5mm以上の厚い銅板がヒートシンクの役割も果たし、さらに窒化珪素基板の板厚を薄くできるので回路基板としての熱抵抗を大幅に改善できる。」 3 甲3について 甲3には、以下の事項が記載されている。 (甲3ア)「[0042] まず、セラミックス基板2を用意する。例えば、セラミックス基板2として窒化物珪素基板を用意する場合、ろう材としてTiを含有するろう材を用いることによりTiN相(窒化チタン相)を形成することができる。TiN相は接合強度の向上に寄与する。 [0043] また、金属板3、4を用意する。金属板3、4はベタ板を接合してエッチングによりパターン化してもよいし、予めパターン化された金属板を接合してもよい。 [0044] さらに、接合層5、7を形成するためにろう材を用意する。ろう材としては、接合層5、7に適用可能な元素を含むろう材を用いることができる。例えば、Ag、Cu、およびTiからなるろう材の場合、Agが40~80質量%、Cuが15~45質量%、Tiが1~12質量%、Ag+Cu+Ti=100質量%の範囲であることが好ましい。また、In、Snを添加する場合は、InおよびSnから選ばれる少なくとも一つの元素が5~20質量%の範囲であることが好ましい。Cを添加する場合は、0.1~2質量%の範囲であることが好ましい。」 (甲3イ)「[0053] Ag/Cuの質量比が2.4以下であるとき、Ti量を5質量%以上にすることが好ましい。Cu量を増やすことによりAg-Cu共晶の量が減ることになり、はみ出し部が硬くなりすぎて熱応力の緩和効果が不十分となることを抑制できる。一方、Ti量を増やすことにより、ろう材を加熱した際に、Ag-Ti結晶、Cu-Ti結晶が形成され易くなる。Ag-Ti結晶およびCu-Ti結晶は融点が近い。そのため、質量比Ag/Cuを2.4以下とすることで、Cuが増えてろう材組織の融点がばらつくことを防ぐことができる。この効果により、ビッカース硬度のバラツキを低減することができる。また、ここではTiについて説明したが、ZrまたはHfを用いる場合も同様である。」 4 甲4について 甲4には、以下の事項が記載されている。 (甲4ア)「[0008] この構成のパワーモジュール用基板の製造方法においては、純アルミニウムからなる金属板とセラミックス基板との間に配したろう材を溶融させることによって溶融アルミニウム層を形成する溶融工程と、冷却によって前記溶融アルミニウム層を凝固させる際に、前記金属板の結晶方位に揃えて結晶成長させる凝固工程とを含むので、金属板とセラミックス基板の接合界面近傍においては、金属板の結晶に連なる結晶粒が形成され、これによって金属板との境界が不明瞭となる。 つまり、ろう材が溶融することで形成された溶融アルミニウム層と金属板とが一体となる。 これにより、セラミックス基板と金属板との界面に熱サイクルによるせん断力が作用した場合において、せん断力による歪みが金属板のうち接合界面から離れた部分まで熱サイクル中に結晶粒が微細化することによって吸収され、これによって破断の進展が防止され、信頼性の高いパワーモジュール用基板を製造することが可能となる。」 (甲4イ)「[0034] (接合界面の評価) まず、接合界面の評価について説明する。 この接合界面の評価に際しては、電子後方散乱回折像(Electron Back Scatter Diffraction Patterns)法(以下、EBSP法と称す)に基づき、接合界面付近の結晶方位を測定した。 EBSP法は、SEM(走査電子顕微鏡)にEBSP検出器を接続し、収束電子ビームを試料表面に照射したときに発生する個々の結晶の回折像(EBSP)の方位を解析、方位データと測定点の位置情報から材料の結晶方位を測定する方法である。その測定結果は結晶方位マップ(IPF(Inverse Pole Figure)Map)として示される。」 「[0038] 図7(a),図7(b),図8(a),及び図8(b)は、上記EBSP法によって得られたIPFマップを示す模式図である。 通常、EBSP法によって得られたIPFマップにおいては、微細粒の方位、結晶の歪み、結晶粒群、結晶粒の生成状況、結晶粒の配列等の結晶構造が、赤、青、緑からなる3原色の組合せによってカラーマッピング化されて表される。図7(a),図7(b),図8(a),及び図8(b)は、カラーマッピング化されたIPFマップにおける結晶方位を模式的に示すものである。 図7(a)及び図7(b)は、比較例の試験片におけるAlの金属層とAlNのセラミックス基板との界面近傍の結晶方位を示している。また、図7(a)は図6の符号NDで示された方向から得られた回折像に基づくIPFマップの模式図である。また、図7(b)は図6の符号RDで示された方向から得られた回折像に基づくIPFマップの模式図である。 図8(a)及び図8(b)は、実施例の試験片におけるAlの金属層とAlNのセラミックス基板との界面近傍の結晶方位を示している。また、図8(a)は図6の符号NDで示された方向から得られた回折像に基づくIPFマップの模式図である。また、図8(b)は図6の符号RDで示された方向から得られた回折像に基づくIPFマップの模式図である。 「[0039] まず、図7(a)及び図7(b)を参照して、比較例の試験片におけるIPFマップについて説明する。 図7(a)のIPFマップの模式図に示すように、Alの金属層とAlNのセラミックス基板との界面近傍に、符号(1)~(5)で示されたAlの結晶領域が分布している。ここで、領域(1)は、[111]方位の結晶と[101]方位の結晶とが混在している領域である。また、領域(2)は、[111]方位の結晶と[001]方位の結晶とが混在している領域である。また、領域(3)は、[101]方位の結晶領域である。また、領域(4)は、[001]方位の結晶が高い割合で存在しているものの、[111]方位の結晶及び[101]方位の結晶が点状に存在している領域である。また、領域(5)は、[001]方位の結晶領域である。 また、図7(b)のIPFマップの模式図に示すように、Alの金属層とAlNのセラミックス基板との界面近傍に、符号(6)~(10)で示されたAlの結晶領域が分布している。ここで、領域(6)は、[111]方位の結晶と[101]方位の結晶とが混在している領域である。また、領域(7)は、[101]方位の結晶と[001]方位の結晶とが混在している領域である。また、領域(8)は、[111]方位の結晶領域である。また、領域(9)は、[001]方位の結晶と[101]方位の結晶とが混在している領域である。また、領域(9)においては[111]方位の結晶及び[101]方位の結晶が点状に存在している領域である。また、領域(5)は、[001]方位の結晶と[111]方位の結晶とが混在している領域である。 [0040] 次に、図8(a)及び図8(b)を参照して、実施例の試験片におけるIPFマップについて説明する。 図8(a)のIPFマップの模式図に示すように、Alの金属層とAlNのセラミックス基板との界面近傍に、符号(11),(12)で示されたAlの結晶領域が分布している。ここで、領域(11)は、[001]方位の結晶の領域であり、[111]方位の結晶及び[101]方位の結晶が点状に存在している領域である。また、領域(12)は、[001]方位の結晶領域である。 また、図8(b)のIPFマップの模式図に示すように、Alの金属層とAlNのセラミックス基板との界面近傍に、符号(13),(14)で示されたAlの結晶領域が分布している。ここで、領域(13)は、[001]方位の結晶の領域であり、[111]方位の結晶及び[101]方位の結晶が点状に存在している領域である。また、領域(14)は、[001]方位の結晶領域である。」 (甲4ウ)図7(a)、図7(b)、図8(a)、図8(b)は、以下の図面である。 「 [図7] [図:0001430018000004.jpg] [図8] [図:0001430018000005.jpg] 」 5 甲5について 甲5には、以下の事項が記載されている。 (甲5ア)「発明が解決しようとする課題 [0008] 本発明の目的は、耐熱サイクル特性に優れたセラミックス回路基板とその製造方法とそれを用いたモジュールを提供することである。 課題を解決するための手段 [0009] 本発明は、上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。(1)セラミックス基板と銅板が、Ag、Cu及び活性金属を含むろう材を介して接合してなるセラミックス回路基板において、接合ボイド率が1.0%以下であり、ろう材成分であるAgの拡散距離が5~20μmであるセラミックス回路基板。 (2)セラミックス基板が窒化ケイ素または窒化アルミニウムからなる前記(1)に記載のセラミックス回路基板。 (3)ろう材にSnが含まれることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のセラミックス回路基板。 (4)接合温度への昇温過程における400℃~700℃の温度域での加熱時間が5~30分であり、接合温度720~800℃で5~30分保持して接合することを特徴とする前記(1)~(3)のいずれか一項に記載のセラミックス回路基板の製造方法。 (5)窒素雰囲気下の連続加熱炉で接合することを特徴とする前記(4)に記載のセラミックス回路基板の製造方法。 (6)前記(1)~(3)のいずれか一項に記載のセラミックス回路基板を用いるパワーモジュール。」 6 甲6について 甲6には、以下の事項が記載されている。 (甲6ア)「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明の目的は、耐熱サイクル特性を一段と向上させた回路基板とその製造方法を提供する。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の回路基板は、セラミックス基板1の表面には1又は2以上の金属回路2が、裏面には金属放熱板3が、それぞれろう材層4を介して接合されていること、上記ろう材層が金属回路の端部から80μm以下(0を含まず)の長さにはみ出ていること、上記ろう材層の厚みがいかなる部分においても10~25μmであること、上記金属回路及び上記金属放熱板の端部はいずれも段差構造を有し、その段差構造は、長さ(S1、S2)が100~300μm、厚み(t)が20~70μmのステップ部5と、このステップ部5に連続したスロープ部6とから構成されており、しかも上記スロープ部6のセラミックス基板に対する角度(金属回路のスロープ角度α1、金属放熱板のスロープ角度α2)がいずれも30°~70°であること、ろう材層端部からステップ部側壁までの合計長さを、金属回路ではL1、金属放熱板ではL2とし、またろう材層端部からセラミックス基板端部までの長さを、金属回路ではE1、金属放熱板ではE2としたときに、L1≦L2で、しかもL1+E1≧L2+E2であることを特徴とするものである。」 第7 申立理由に対する当審の判断 1 申立理由1(進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「窒化けい素基板」、「回路形成用銅板」及び「ろう材層」は、本件発明1の「窒化珪素基板」、「銅回路板」及び「ろう材層」に相当するから、甲1発明の「窒化けい素基板の表面にろう材層を塗布し、その後、表面に回路形成用銅板を重ね」た「銅板と窒化けい素基板の接合体」は、本件発明1の「窒化珪素基板と銅回路板とがろう材層を介して接合されている回路基板」に相当する。 (イ)甲1発明の「Agが87質量%、Cuが9質量%、TiHが2質量%、Snが2質量%である」「ろう材層」は、本件発明1の「銀と銅と錫とチタンとを含む」「ろう材層における前記銀の含有量が85質量%以上であ」る「ろう材層」に相当する。 (ウ)そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 (一致点) 「窒化珪素基板と銅回路板とが銀と銅と錫とチタンとを含むろう材層を介して接合されている回路基板であって、 前記ろう材層における前記銀の含有量が85質量%以上である、 回路基板。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) ろう材層が、本件発明1では、「EBSP法によって求められる前記ろう材層における銀部のKAM値の平均値が0.55°以下」であるのに対し、甲1発明では、そのような特定がない点。 イ 相違点1の判断 (ア)まず、本件発明1における「EBSP法によって求められるKAM値」とは、上記第3の2(本イ)の【0007】に記載されているとおり、「KAM(Kernel Average Misorientation)値とは、結晶粒内における隣接測定点間の方位差を示しており、EBSP(Electron Back Scattering Pattern)法を用いた結晶方位解析により求められる」ものであり、「銀部のKAM値」は、同【0032】に記載されているとおり、「銀部のKAM値の平均値は、ろう材層30の5箇所において測定を行い、それぞれの測定値の算術平均値として求められる。なお、各測定視野において銀以外成分が含まれる場合には、エネルギー分散型X線分析(EDS)によって、銀部と他成分の部分とを分離処理したうえで、銀部のKAM値の平均値を求める」ことよりに得られる値である。 そして、上記(本エ)の表3を参照すると、ろう材における銀の含有量が85質量%以上(上記(本エ)の表1において、ろう材における銀の含有量を換算すると実施例1~4では86質量%、実施例5及び6では85質量%となる)であることを前提としたうえで、銀部のKAM値の平均値が0.57、0.58すなわち0.55°を超える場合には、ヒートサイクル特性を表すクラック率[面積%]が1.1、1.3であるのに対し、銀部のKAM値の平均値が0.32~0.53すなわち「0.55°以下」の場合には、そのクラック率は0.1~0.3と格別良好な結果となっていることから、「EBSP法によって求められる前記ろう材層における銀部のKAM値の平均値」は、ヒートサイクル特性を評価するうえで肝要な事項であることいえる。 (イ)一方、上記甲2~甲6のうち、結晶方位について記載されているのは、甲4のみであることから、甲4について検討する。 甲4には、接合部に溶融アルミナ層を配した金属板とセラミックス基板との接合界面付近の結晶方位をEBSP法で測定し、(甲4ウ)で摘記した図7(a)、図7(b)、図8(a)及び図8(b)のように、結晶方位の領域、すなわち[111]方位の結晶の領域、[101]方位の結晶の領域、[001]方位の結晶の領域をマッピングすることが記載されているものの、EBSP法によって求められる「KAM値」について言及したものではなく、ましてや、セラミックス板と金属板をろう材層を介して接合されるものにおけるヒートサイクル特性を「ろう材層における特定成分部分のKAM値」によって評価するという技術的思想を開示したものもではない。 そうすると、甲4の記載から、「EBSP法によって求められる前記ろう材層における銀部のKAM値の平均値が0.55°以下」である事項を当業者といえども導出できるものではない。 また、その余の甲2、3、5及び6の記載を参照しても、「EBSP法によって求められる前記ろう材層における銀部のKAM値の平均値が0.55°以下」を導出できる記載はない。 したがって、甲2~甲6の記載事項をいかに組み合わせても、上記相違点1に係る技術的事項に至ることはない。 (ウ)よって、相違点1に係る技術的事項を甲2~甲6の記載事項から導出できないのであるから、相違点1は当業者が容易になし得たこととはいえない。 (エ)申立人の相違点に対する主張について a 申立人は、本件発明1と甲1発明との相違点として、上記ア(ウ)で記載した(相違点1)を上げたうえで、概略以下の内容のもと、相違点は当業者が容易になし得たものと主張している。 まず、申立人は、本件明細書の実施例の記載からではではなく、本件明細書の製造方法の一般的な記載である「【0048】本開示の接合体及び回路基板の製造方法の一例を説明する。」~【0059】の記載から、一部の工程のみを抜き出し、以下の前提を述べている。 「すなわち、本件特許発明1に記載の回路基板は、「ろう材が塗布されたセラミックス基板の主面に、金属板を重ね合わせた積層体を750℃以上950℃以下の温度で10分以上3時間未満保持」し、「焼成した積層体を1℃/分以上の降温速度で500℃以上且つ750℃未満の温度まで冷却して10分間以上保持」することにより「EBSP法によって求められるろう材層における銀部のKAM値の平均値が0.55゜以下である」構成を実現したものであります。」(申立書22頁1~6行) そして、上記前提のもと、 「「積層体を750℃以上950℃以下の温度で10分以上3時間未満保持」することは、例えば甲第1号証の段落[0025]等に記載された周知の工程であります。甲第1号証の段落[00255] には「6.5×10-4Paの真空炉中、400℃まで昇温し、真空度が5.0×10-3Paになるまで保持した後、80℃まで昇温し20分保持」することが記載されております。さらに、甲第2号証の[請求項6] には、「780~930℃で5~30分間加熱する」ことが記載されております。 「焼成した積層体を1℃/分以上の降温速度で500℃以上且つ750℃未満の温度まで冷却して10分間以上保持」することは、例えば甲第1号証の段落[0025]等に記載された周知の工程であります。甲第1号証の段落[0025] には「冷却速度5℃/minにて600℃まで冷却し、4時間保持」することが記載されております。 このように、甲第1号証に記載の回路基板は、本件特許発明1に記載の回路基板の製造方法の特徴である「ろう材が塗布されたセラミックス基板の主面に、金属板を重ね合わせた積層体を750℃以上950℃以下の温度で10分以上3時間末満保持」および「焼成した積層体を1℃/分以上の降温速度で500℃以上且つ750℃未満の温度まで冷却して10分間以上保持」することにより製造されたものであります。また、甲第1号証の段落[0025] および本件特許明細書の段落[0070] に示されているように、使用される銅板はいずれも無酸素銅板であります。このため、甲第1号証の回路基板と本件特許発明1の回路基板は、窒化珪素基板、銅板、ろう材組成、接合工程が合致しています。そのため、甲第1号証の回路基板と本件特許発明1の回路基板は、実質的に同一であると言えます。」(22頁7行~23頁15行) と認定したうえで、以下の判断を述べている。 「さらに、窒化珪素基板と金属板とろう材層を介して接合したセラミックス回路基板の接合層をEBSP法を用いて分析することは、例えば甲第4号証の[請求項1]、段落 [0018]、 [0034]、[0038]の記載から明らかな周知技術であります。 これらのことから、甲第1号証に記載の回路基板が、本件特許発明1の回路基板と同じく「EBSP法によって求められる前記ろう材層における銀部のKAM値の平均値が0.55゜以下である」構成を有することは、当業者であれば容易になし得るものであると思料します。言い換えれば、本件特許発明1の回路基板は、甲第1号証の回路基板の銀部のKAM値を測定したものに過ぎません。」(24頁3~11行) b 申立人の主張に対する当審の判断 (a)まず、申立人は、本件明細書の「本開示の接合体及び回路基板の製造方法の一例を説明する」との一般的な記載の部分から一部の工程のみを抜き出し、抜き出した工程で構成される製造方法をとれば「EBSP法によって求められるろう材層における銀部のKAM値の平均値が0.55゜以下である」ことが実現できるとの前提に立っているが、数値そのものが記載されている実施例とは異なり、当該記載は、温度、時間、気圧、降温速度、等の値が範囲として記載されていることから、その範囲で「EBSP法によって求められるろう材層における銀部のKAM値の平均値が0.55゜以下」となるように調整できること示しているにすぎず、ましてや、一部の工程のみを抜き出した製造条件を満たすからといって、即座に「EBSP法によって求められるろう材層における銀部のKAM値の平均値が0.55゜以下」となるとはいえない。 そうすると、上記(1)で申立人が主張している前提は正当なものとはいえない。 (b)申立人が主張している前提が正当なものでないことから、甲1発明で認定した「800℃まで昇温し20分保持した後、冷却速度5℃/minにて600℃まで冷却し、4時間保持」との事項が、上記前提である「750℃以上950℃以下の温度で10分以上3時間未満保持し、焼成した積層体を1℃/分以上の降温速度で500℃以上且つ750℃未満の温度まで冷却して10分間以上保持」との条件を満たすからといって、甲1発明の接合体(回路基板)が「EBSP法によって求められるろう材層における銀部のKAM値の平均値が0.55゜以下」であり、本件発明1の回路基板と実質的に同一であるとはいえない。 (c)さらに、一般に結晶方位を求めるためにEBSP法を使うことは周知技術であるとしても、そして、甲4に記載されているように、金属板とセラミックス基板との接合界面付近の結晶方位をEBSP法で測定し、その「結晶方位のマップ」を作成することは本願優先日時に公知技術であるといえても、甲4には、結晶粒内における隣接測定点間の方位差であるKAM値を求めることすら記載されておらず、ましてや、「ろう材層における特定成分部分のKAM値」を求めることについて何ら記載されておらず、「ろう材層における特定成分部分のKAM値」を求めることが本願優先日時に周知技術であるともいえない。 そうすると、申立人が、甲4に記載されている周知技術をもとに、「甲第1号証に記載の回路基板が、本件特許発明1の回路基板と同じく「EBSP法によって求められる前記ろう材層における銀部のKAM値の平均値が0.55゜以下である」構成を有することは、当業者であれば容易になし得るものであると思料します。言い換えれば、本件特許発明1の回路基板は、甲第1号証の回路基板の銀部のKAM値を測定したものに過ぎません。」と主張することは、技術的根拠に欠けるものであり、受け入れられない。 ウ 小括 以上のことから、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明4について 本件発明4は、上記第3の1で記載したとおり「接合体」の発明であるところ、本件発明1と同様に「EBSP法によって求められる前記ろう材層における銀部のKAM値の平均値が0.55°以下」との事項が発明特定事項となっていることから、本件発明4と甲1発明との相違点は、少なくとも上記相違点1で相違することとなる。 そして、相違点1に対する判断は、上記(1)イで述べたとおりであるから、本件発明4も、甲1に記載された発明及び甲2~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明7について 本件発明7は、上記第3の1で記載したとおり「接合体の製造方法」の発明であるところ、本件発明1と同様に「EBSP法によって求められる前記ろう材層における銀部のKAM値の平均値が0.55°以下」との事項が発明特定事項となっている。そして、甲1発明である「接合体」の発明のカテゴリーを替えて「接合体の製造方法」(以下「甲1発明’」という。)とすると、本件発明7と甲1発明’との相違点は、少なくとも上記相違点1で相違することとなる。 そして、相違点1に対する判断は、上記(1)イで述べたとおりであるから、本件発明7も、甲1に記載された発明及び甲2~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件発明2、3、5、6、8~11について 本件発明2及び3は本件発明1を、本件発明5及び6は本件発明4を、本件発明8~11は本件発明7を、それぞれ直接的又は間接的に引用する発明であるから、本件発明2、3、5、6及び8~11についても、甲1に記載された発明及び甲2~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5) 申立理由1のまとめ 以上のことから、本件発明1~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、申立理由1によって取り消すことはできない。 2 申立理由2(サポート要件)について 申立理由2は、上記第5の2で記載したように、銀の含有量が90質量%末満である実施例の記載がないことに基づいて、銀の含有量が90質量%未満である場合に本件発明の課題を解決することができないことを主張したものであるが、上記第3の2(本エ)の表1において、実施例1~6のろう材における銀の含有量を計算すると、実施例1~4では86質量%(90/(90+10+1+3.5)×100=86.1・・・)、実施例5及び6では85質量%(90/(90+10+3+3.5)×100=84.5・・・)であり、「銀の含有量が90質量%末満である実施例の記載がない」との主張は誤りである。 そして、サポート要件としては、上記第4の1で記載した内容(銀の含有量が85質量%未満では本件発明の課題を解決することができない)の取消理由が正解であり、これについては、上記第4の2で述べたとおり、すでに解消している。 よって、本件発明1~11に係る特許を申立理由2によって取り消すことはできない。 第8 意見書における申立人の主張 1 申立人は、令和7年8月25日提出の意見書において、 「本件特許明細書の段落[0028]には「ろう材層30は、銀と、銅と、錫と、チタン、ジルコニウム、ハフニウム及びニオブからなる群より選択される少なくとも一種を含む活性金属と、を含有するAg-Cu-Sn系ろう材で構成されてよい」ことが記載され、段落[0029]には「ろう材層30における活性金属は、銀及び銅の合計100質量部に対して、0.5~5質量部であってよい」ことが記載されています。」(4頁22行~5頁1行) 「発明の詳細な説明では、ろう材層における銀の含有量が85質量%以上であって、ろう材層30における活性金属が、銀及び銅の合計100質量部に対して、0.5質量部未満および5質量部超である場合の実施例について記載が無く、ろう材層30における活性金属が、銀及び銅の合計100質量部に対して、0.5質量部未満および5質量部超である場合に上記課題を解決して「ヒートサイクルに対する耐久性に優れる回路基板および接合体、ならびにそれらの製造方法を提供する」という効果を得ることが可能であるかどうかについては、本件特許明細書の実施例で何ら証明されておりません。 銀部のKAM値は、銀を含む結晶粒内における隣接測定点間の方位差を示すものでありますが、例えば令和7年3月12日付けの特許異議申立書とともに提出した甲第3号証(国際公開第2017/056360号)の段落[0053]に「Ti量を増やすことにより、ろう材を加熟した際に、Ag-Ti結晶、Cu-Ti結晶が形成され易くなる」と記載されていることからもわかるとおり、銀と銅と錫とチタンとを含むろう材層には「Ag-Ti結晶」や「Cu-Ti結晶」が存在します。この場合、ろう材層において、銀の含有量だけでなく、活性金属の含有量によつてもろう材層全体の結晶歪が変化し、ヒートサイクルに対する耐久性に影響を及ぼすことは、明らかであります。」(5頁6~22行) と述べ、本件発明1~11がサポート要件を満たしていないことを主張している。 2 申立人の主張に対する当審の判断 まず、上記1の主張は、訂正前の願書の添付した特許請求の範囲に対するものであり、訂正の請求の内容に付随して生じる理由とはいえなことから、新たな理由として採用できるものではない(特許庁「審判便覧」67-05.4 Pの1.(2)参照)。 しかしながら、検討すると、以下のとおりである。 上記第4の1で記載したサポート要件違反の内容は、本件発明は「銀部のKAM値」に着目した発明であり、銀の含有量を特定することなく、「銀部のKAM値の平均値が0.55°以下」と特定しても「ろう材層」の結晶歪が小さいといえないことを説示したものである。これを踏まえると、「Tiは銀及び銅の合計100質量部に対して0.5~5質量部」を満たさなくても、ろう材層における銀の含有量が85質量%以上と特定されたことにより、「ろう材層」の結晶歪が小さいといえ、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できるものである。 また、本件明細書の【0029】には「銀と銅の合計100質量部に対して1~5質量部であってよい。これによって、セラミックス基板10と金属回路板20との接合強度を十分に高くすることができる。」との記載があるが、これは1~5質量部が好ましいというものであり、1~5質量部でなければならないという記載ではない。 さらに、甲3の[0053]は、「Ag/Cuの質量比が2.4以下であるとき、Ti量を5質量%以上にすることが好ましい。Cu量を増やすことによりAg-Cu共晶の量が減ることになり、はみ出し部が硬くなりすぎて熱応力の緩和効果が不十分となることを抑制できる。一方、Ti量を増やすことにより、ろう材を加熱した際に、Ag-Ti結晶、Cu-Ti結晶が形成され易くなる。Ag-Ti結晶およびCu-Ti結晶は融点が近い。そのため、質量比Ag/Cuを2.4以下とすることで、Cuが増えてろう材組織の融点がばらつくことを防ぐことができる。この効果により、ビッカース硬度のバラツキを低減することができる。また、ここではTiについて説明したが、ZrまたはHfを用いる場合も同様である。」との記載であり、本件発明においてはAgが85質量%以上だから、仮にAgを85質量%、Cuを15質量%としても85/15=5.7で「2.4以下」ではないから、[0053]の記載を当てはめることはできない。そして、「Ti量を5質量%以上にすること」は、上記本件明細書の【0029】の記載に整合しないものである。 したがって、意見書における申立人の主張は当を得たものではなく、これを新たな取消理由として採用できる余地はない。 第9 むすび 以上のとおり、本件発明1~11に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって、取り消すことはできない。 さらに、他に本件発明1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700298

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