特許異議申立
2025-700290
ポリエステルフィルムの回収方法、回収装置及び機能層除去剤
- 審判番号
- 2025-700290
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-208858
- 登録番号
- 7550048
- 請求日
- 2025年03月11日
- 審決日
- 2025年06月25日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三菱ケミカル株式会社
- 【権利者代理人】田口 昌浩
- 【異議申立人】河原田 隆
- 審判長/審判官
- 審判長 光本 美奈子
- 審判官 安藤 倫世
- 審判官 弘實 由美子
- 分類
- P1651.121-Y (B29B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7550048号発明「ポリエステルフィルムの回収方法、回収装置及び機能層除去剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7550048号の請求項1~21に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7550048号(以下「本件特許」という。)の請求項1~21に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)12月16日(優先権主張 令和2年3月31日(以下「本件優先日」という。)(JP)日本国)を国際出願日とする出願であって、令和6年9月4日に特許権の設定登録がされ(請求項の数21)、同年同月12日に特許掲載公報が発行されたところ、令和7年3月11日に特許異議申立人 河原田 隆(以下「申立人」という。)によって、請求項1~21に係る特許についての特許異議申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件発明は、次のとおりの発明(以下、請求項番号にしたがって「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということもある。)である。
「【請求項1】機能層除去工程(A)及び回収工程(B)を有し、
前記機能層除去工程(A)は、洗浄剤を用いて、ポリエステルフィルムの表面に機能層を備える積層ポリエステルフィルムの機能層を除去する工程であり、
前記機能層は、ハードコート層、粘接着層及び離型層のいずれかであって、前記ハードコート層は、アクリル系ハードコート層であり、前記粘接着層は、アクリル系粘接着層であり、前記離型層は、シリコーン離型層であり、
前記洗浄剤は、(a)アルカリ性化剤(但し、モルホリン濃度が50質量%以上のモルホリン液を除く。)、及び(b)少なくとも一つの水酸基を有する化合物を含有し、
前記(b)少なくとも一つの水酸基を有する化合物として、以下の(i)及び(ii)のいずれか1つ以上を含み、
前記回収工程(B)は、前記機能層を除去したポリエステルフィルムを回収する工程である、リサイクルポリエステル製品の製造方法。
(i)2種類以上のアルコール類として、疎水性単価アルコールと水溶性単価アルコールを含む
(ii)ベンジルアルコールを含む酸性度定数(pKa)10.0以上15.4以下のアルコール類
【請求項2】前記洗浄剤が水系洗浄剤である請求項1に記載のリサイクルポリエステル製品の製造方法。
【請求項3】前記(a)アルカリ性化剤として、2種以上の無機アルカリ性化剤を使用する、請求項1又は2に記載のリサイクルポリエステル製品の製造方法。
【請求項4】前記(a)アルカリ性化剤が、アルカリ金属水酸化物を含む請求項1~3のいずれか1項に記載のリサイクルポリエステル製品の製造方法。
【請求項5】前記アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムを含有する請求項4に記載のリサイクルポリエステル製品の製造方法。
【請求項6】前記機能層除去工程(A)における洗浄剤の温度が20℃以上である請求項1~5のいずれか1項に記載のリサイクルポリエステル製品の製造方法。
【請求項7】洗浄装置を有するポリエステルフィルムの回収装置であって、該洗浄装置は、洗浄剤の入った洗浄槽を有し、ポリエステルフィルムの表面に機能層を備える積層ポリエステルフィルムを、(a)アルカリ性化剤(但し、モルホリン濃度が50質量%以上のモルホリン液を除く。)、及び(b)少なくとも一つの水酸基を有する化合物を含有する洗浄剤に浸漬して洗浄する装置であり、
前記(b)少なくとも一つの水酸基を有する化合物として、以下の(i)及び(ii)のいずれか1つ以上を含み、 前記機能層は、ハードコート層、粘接着層及び離型層のいずれかであって、前記ハードコート層は、アクリル系ハードコート層であり、前記粘接着層は、アクリル系粘接着層であり、前記離型層は、シリコーン離型層であり、
前記洗浄装置で洗浄され、機能層が除去されたポリエステルフィルムを回収する手段を有する、ポリエステルフィルムの回収装置。
(i)2種類以上のアルコール類として、疎水性単価アルコールと水溶性単価アルコールを含む
(ii)ベンジルアルコールを含む酸性度定数(pKa)10.0以上15.4以下のアルコール類
【請求項8】前記(a)アルカリ性化剤として、2種以上の無機アルカリ性化剤を使用する、請求項7に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
【請求項9】前記(a)アルカリ性化剤が、アルカリ金属水酸化物を含む請求項7又は8に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
【請求項10】前記アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムを含有する請求項9に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
【請求項11】前記機能層を除去したポリエステルフィルムに付着した洗浄剤を洗い流すリンス装置をさらに備える請求項7~10のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
【請求項12】前記洗浄剤が水系洗浄剤であり、前記リンス装置において、水で水系洗浄剤を洗い流す請求項11に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
【請求項13】前記機能層が除去されたポリエステルフィルムを乾燥する乾燥装置を備える請求項7~12のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
【請求項14】前記洗浄装置の前段に巻き出し装置を有する請求項7~13のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
【請求項15】ロールトゥロール方式で回収する請求項14に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
【請求項16】前記洗浄装置の前段に裁断装置をさらに備える請求項7~13のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
【請求項17】ポリエステルフィルムの表面に機能層を備える積層ポリエステルフィルムから機能層を除去するための除去剤であって、 前記機能層は、ハードコート層、粘接着層及び離型層のいずれかであって、前記ハードコート層は、アクリル系ハードコート層であり、前記粘接着層は、アクリル系粘接着層であり、前記離型層は、シリコーン離型層であり、
前記除去剤は、
(a)アルカリ性化剤(但し、モルホリン濃度が50質量%以上のモルホリン液を除く。)、及び(b)少なくとも一つの水酸基を有する化合物を含有し、
前記(b)少なくとも一つの水酸基を有する化合物として、以下の(i)及び(ii)のいずれか1つ以上を含む、ポリエステルフィルム用機能層除去剤。
(i)2種類以上のアルコール類として、疎水性単価アルコールと水溶性単価アルコールを含む
(ii)ベンジルアルコールを含む酸性度定数(pKa)10.0以上15.4以下のアルコール類
【請求項18】前記除去剤が水系除去剤である請求項17に記載のポリエステルフィルム用機能層除去剤。
【請求項19】前記(a)アルカリ性化剤として、2種以上の無機アルカリ性化剤を使用する、請求項17又は18に記載のポリエステルフィルム用機能層除去剤。
【請求項20】前記(a)アルカリ性化剤が、アルカリ金属水酸化物を含む請求項17~19のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム用機能層除去剤。
【請求項21】前記アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムを含有する請求項20に記載のポリエステルフィルム用機能層除去剤。」
第3 特許異議の申立ての理由
1 特許異議申立書に記載された理由の概要
(1)申立理由1(甲1を主たる引用例とした進歩性)
本件発明1~4、7~9、17~20は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記2の甲第1~第2号証に記載された発明に基いて、本件発明5、6、10~16、21は後記2の甲第1~第3号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~21に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
2 証拠方法
甲第1号証:特開2001-310970号公報
甲第2号証:特表2001-502376号公報
甲第3号証:特開2000-25041号公報
(以下、「甲第1号証」~「甲第3号証」をそれぞれ「甲1」~「甲3」ともいう。)
3 甲号証の記載について
(1)甲1には、次の記載がある。
「【請求項1】合成樹脂又はセルロース有機酸エステルよりなる基材から、該基材上に設けられた異質の層を、105℃以上のアルカリ水溶液中で除去した後、該基材からアルカリ水溶液を除去することを特徴とする異質の層の除去方法。
・・・
【請求項7】異質の層を設けたポリエステル基材を、105℃以上のアルカリ水溶液中で除去する工程、及び、該アルカリ液を除去する工程を含むことを特徴とするポリエステル基材の回収方法。」
「【0013】回収の対象となるポリカーボネート基材上に設けられる機能層としては、種々の記録材料として有用な1以上の機能を有する層であり、色素含有層、金属反射層、感光層、保護層及び下塗層等が例示できる。色素含有層には、シアニン系色素等が広く用いられ、金属反射層には、反射特性に優れた金や銀また安価なアルミニウムの蒸着層等が多用される。また、感光層としては、ハロゲン化銀乳剤層、またはフォトポリマー層や感光性ジアゾ化合物層などの非銀塩感光層が用いられる。
【0014】保護層、下塗層などには、光学特性に優れた熱可塑性アクリール系エステル、アクリル酸エステルモノマーやメタクリール酸エステルモノマーなどの共重合体が用いられる。さらに、保護層には、紫外線吸収剤としてベンゾフェノーン系、ベンゾトリアゾール系、サルチル酸フェニールなどのサルチル酸系化合物が用いられ、また紫外線硬化剤も用いられる。下塗層としては、硬化ゼラチンや熱硬化製樹脂などを用いることもできる。」
「【0020】(洗浄処理)アルカリ水溶液の調製には、苛性アルカリを使用することができる、ここで、「苛性アルカリ」とは、アルカリ金属の水酸化物や炭酸塩を意味し、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。苛性アルカリの他に、界面活性剤、過酸化物を必要に応じて併用しても良い。
・・・
【0022】洗浄工程の温度は、約105℃より高温であれば良く、ポリカーボネート基材の処理においては、105ないし130℃が好ましい。また、ポリエステル基材の処理においては、105ないし150℃が好ましく、110~140℃がより好ましい。
・・・
【0026】塗料や染料などを除去するために、有機溶剤、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、メチルソロソルブなど基材に対する貧溶剤を併用することができる。
【0027】洗浄液の加熱は、通常1気圧以上の水蒸気または熱水、バーナーや電熱により行われる。加圧式洗浄装置を使用することが好ましく、耐高圧(0.2ないし0.5MPa=2ないし5kgf/cm2)の洗浄装置を用いることが好ましい。洗浄時間は5ないし150分(5分以上150分以下)であり、5ないし100分が好ましく、10ないし60分がさらに好ましい。
・・・
【0029】また、銀含有層を設けた合成樹脂等の基材を、アルカリ水溶液を用いて処理する場合は、そのスラリー中に銀を溶解し、処理槽の壁面に銀含有スケールが発生する。従来、この発生を防止するため、ハロゲン化物や糖類などの還元性化合物の使用が知られている。
・・・
【0031】本発明による合成樹脂等の基材の処理に当たっては、処理する基材をまず選別し、当該合成樹脂等製の基材全体を予め適当な大きさのチップに裁断してから処理を施すことが好ましい。ポリカーボネート基材の処理においては、1mmないし10cmの大きさに破砕することが好ましく、1mmないし10mmの粒度に破砕することがさらに好ましい。また、ポリエステル基材の処理においては、5mmないし3cmの大きさに破砕することが好ましい。この破砕には、湿式破砕を用いるのが良い。例えば特開平7-286064号明細書に記載した方法を用いることができる。
【0032】(水洗処理)基材からアルカリ水溶液を除去する処理を水洗処理という。詳しくは、苛性アルカリ処理をうけたチップから、処理液またはスラリーを排除する、または下塗層及びその上層を溶解または微粉化した異物を除去するために、通常は水を用いて洗浄する処理をいう。好ましくは10ないし60℃、さらに好ましくは10ないし30℃の水を用いて処理する。水洗水に、アルカリ中和のための酸性物質を加えてもよい。苛性アルカリ処理または水洗処理の後、有機溶剤、例えば、エタノール、メタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類や、トルエンや石油エーテルなど、またこれらを含有する水性溶液で、洗浄し、乾燥することもできる。
【0033】(乾燥処理)処理済チップを、50ないし200℃、好ましくは80ないし120℃の温度に加熱して、水分を好ましくは2質量%以下さらには1質量%以下になるまで乾燥する処理をいう。再熔融し、再生ペレットを作成するためには、真空乾燥し水分を0.2重量%以下にする方がよい。」
「【0034】
【実施例】以下に実施例を示すが、これに限るものではない。実施例1及び2にポリカーボネートの回収を示し、又実施例11ないし15にポリエステルの回収を示す。
(実施例-1)ポリカーボネート基材を用いる廃CD-Rディスク製品を、約1ないし5cmの大きさに裁断して、ポリカーボネート基材の回収処理を行った。当該CD-Rディスク製品は、基材(径12cm、厚み1.2mm)の上に色素膜、銀反射膜及び紫外線吸収剤などを含む保護膜が設けられていた。次の工程の処理を通し、さらに水洗、乾燥し、ポリカーボネート樹脂回収試料No.1を得た。(処理条件は表1参照)
【0035】(第1段) 裁断時の付着異物の除去
界面活性剤として、ポリオキシエチレン誘導体(花王(株)製・エマルゲンA-500)及びアルキル・ベンゼンスルホン酸ナトリウムの各1重量%の混合水溶液に、製品を、固液比1:1の比で混合し、90℃で60分間撹拌処理した。
(第2段) 色素、金属膜、保護膜の除去(その1)
ポリオキシエチレン誘導体のノニオン界面活性剤の1重量%と水酸化ナトリウムの3重量%との混合水溶液(pH13.5)に製品を投入し、120℃で30分間処理した。
(第3段) 色素、金属膜、保護膜の除去(その2)
上記第2段処理に引続いて水酸化ナトリウム濃度を5質量%とし、他は第2段処理液組成等と全く同様にして120℃で30分処理した。
【0036】(第4段) 残存金属(銀)などの溶解除去及び洗浄
界面活性剤、ポリオキシエチレン誘導体とアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの各1質量%の混合水溶液(第1段の場合に同じ)に、過酸化水素、0.58質量%相当量を混合した混合水溶液を用い、90℃で30分間処理した。さらに水洗し、乾燥した。
【0037】品質の評価
(1)チップ状回収試料の着色の程度(目視判定による。)
◎ 着色を殆ど認めない ○ やや認めるが許容以下
△ 認める × 認める、使用不可
(2)粘度測定による平均分子量の評価
バージンのポリカーボネート樹脂の平均分子量は14,500±500であった。この場合、許容平均分子量は14,000以上。試料0.7gをジクロロメタン100mlに溶解し、20℃で粘度測定を行った。
(3)ジクロロメタン溶液中の異物存否の目視判定
バージンのポリカーボネート樹脂以下とくに100ないし250μm径のもの2個以下であること。実施例-1で得た回収資料No.1は使用可能の品質であった。
(1)着色の程度◎
(2)平均分子量14500
(3)異物の存否バージン樹脂以下」
「【0041】ポリカーボネート樹脂回収試料No.1、2、3とも、特に試料No.1は、少ないアルカリ物質の使用料でも、処理時間を短縮することができ、処理経費を下げて高品質の回収試料を得ることができることが判る。回収試料は、バージン樹脂と共に再利用できる。
【0042】(実施例-11)写真感光材料用ベースフィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、その上にポリ塩化ビニリデンを用いた下塗層が設けられているフィルムベースにハロゲン化銀乳剤層及び保護層を塗設した写真感光材料の半製品(廃品)を、0.5ないし3cm角に相当するチップに裁断した後に回収処理に使用した。
【0043】筒状胴部の内径が約45cmであって、耐圧性を付与された熱水供給口を設け、水蒸気に対して0.5MPaに耐えるよう設定された加圧式洗浄装置を用いた。
【0044】(第1洗浄処理)上記チップ試料の約10kgを処理容器に投入し、所定(表2に示す)濃度に設定した苛性ソーダ熱水溶液35l及び高級アルコールのポリエチレングリコールエーテル(エマルゲン106花王(株)製)を2.0gを併せ投入した後、所定(表2に示す)温度で15分間にわたり、約100rpmの回転数で撹拌した。処理液を排出し、充分に液切りを行った上、水洗処理を5分行った。
【0045】(第2洗浄処理)第1苛性アルカリ処理されたチップ試料に、所定(表2に示す)濃度に設定した苛性ソーダ熱水溶液30l及び高級アルコールのポリエチレングリコールエーテルの10.0gを投入し、所定(表2に示す)温度で40分約200rpmの回転数で撹拌した。その後、処理液を排出し、充分に液切りを行った。
【0046】(水洗処理)水を注ぎつつ撹拌し10分間水洗して脱膜または微粉化した異物を除去した。
【0047】(乾燥処理)充分に水切りした洗浄処理済チップを排出口から取り出し、100℃で30ないし60分で乾燥した。
【0048】(再生ペレットまたは再生フィルムの作成)乾燥処理済チップを真空乾燥した上で、260℃ないし280℃に加熱熔融してポリエステルフイルムが得られ、これを裁断して再生ペレットを得た。また得られたフィルムを二軸延伸して、再生フィルム試料を得た。
【0049】(品質の評価)
(下塗層の除去確認)乾燥処理済チップについて塩化ビニリデンなどを用いる場合は、ESCAによる表面解析により有機(C原子)結合Cl原子の存否を検討した。
(下塗層の除去確認)また、処理チップ及び標準ポリエチレンテレフタレートフィルム片とを、1%硫酸含有インジゴカルミン水溶液につけ、水表面上を上下させて水の濡れ状態を視察することにより、充分に下塗層が除去されていることを確認した。フィルム片は、水を弾き、水が1部付着しても浸潤しなかった。乾燥処理チップについて、スチレンブタジエンポリマーなど異種有機化合物を下塗層に用いる場合は、同様ESCAによる表面解析(C1S軌道スペクトルの解析)により、異種有機物が存在しないかどうかを検討した。
【0050】(再生フィルム中の異物除去確認)再生フィルム及び実用PET標準フィルムについて拡大レンズ(100倍)を通して異物の存在を目視視察と、標準フィルムに対し再生フィルム中の異物の多さを比較し、次のように区別した。
I:やや少ない(実用可能)
II:同等(実用可能)
III:多い(実用不可)」
「【0053】
【表2】
[図:0001425793000001.jpg]
試料No.B’;試料No.11ないし16は、ノイズの中で、Clの存在を検出できない。試料No.B’は、ポリエチレンテレフタレートの表面が溶解されていることを認めた。
【0054】表2の結果から、従来の方法に比し、苛性ソーダの濃度を下げ0.2ないし3質量%とした上で、温度を100℃超、とくに105℃以上に上げて処理すれば、ポリエチレンテレフタレート基材上のポリ塩化ビニリデン及び上層物質を比較的短時間で除去できることが判った。」
(2)甲2には、次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
1.水性相と有機相を含む2相液体リムーバー組成物の水性相に基材表面を接触させることによる基材表面からペイントを剥離する方法であって、前記水性相が、水と、溶解した水溶性活性剤化合物と、水への溶解度が20℃で0.1~10重量%の範囲内にある有機溶剤とを含み、前記有機溶剤が前記水性相中にほぼ飽和レベル(当該方法の周囲条件での飽和レベル)の濃度で存在し、前記有機相が有機溶剤を含み、前記有機相が前記水性相と界面で接触している方法。
・・・
5.有機溶剤がベンジルアルコール、二塩基性エステル及びエチル-3-エトキシプロピオネートから選ばれる請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
・・・
8.前記活性剤が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、シリケート、例えばアルカリ金属ケイ酸塩、及びアミン又はアンモニウム化合物のような有機塩基性化合物から選ばれる請求項7記載の方法。」
「【発明の詳細な説明】
基材からペイントを剥離するための組成物及び方法
本発明は、塗装された基材、特に金属基材からペイントを剥離する方法に関する。」(第4頁上欄第1行~第4行)
「 前記組成物は、前述の活性剤化合物に加えて、アルコールのような二次活性剤、例えばC1-4アルコール、好ましくはメタノールを含む場合がある。」(第6頁下欄第6行~第7行)
「実施例1
次の成分を混合した:
ベンジルアルコール 20 重量%
水 79.21重量%
ケイ酸カリウム 0.79重量%
これらの成分は、下部相にベンジルアルコールが存在し、上部水性相にケイ酸カリウムが存在する2相系を形成した。上部水性相は周囲温度での溶解度の上限でベンジルアルコールも含んでいた。アルミニウム基材上に未だ焼き付けられていない(未硬化)エポキシペイントが存在する試験用基材を使用した。室温で基材を前記水性相に浸した場合には、7時間の接触後に適切な剥離が達成された。
浴を連続的に使用した場合には、下部相中に依然としてベンジルアルコールが存在してはいるが浴が水でいっぱいになる場合がある。アルカリ(ケイ酸カリウム)のレベルは適切な手段によりモニターでき、そのレベルを必要に応じて補充することができる。
1つは40容量の過酸化水素を10重量%の量で加え、もう1つは5.00重量%の過マンガン酸カリウムを活性剤として加えた上記配合に変更を加えたもの2つを調製した。得られた組成物は改良された性能を与えた。
実施例2
この実施例は、塩化メチレンを含むがその濃度が従来技術の塩化メチレン系リムーバーよりも低い組成物を例示するものである。
次の成分を次に示す量で混合した:
水 90重量%
アルキルベンゼンスルホン酸 0.5重量%
メタノール 2.0重量%
塩化メチレン 6.0重量%
トリクロロ酢酸 1.5重量%
この配合は2相組成物を与えた。その組成物は、周囲(室温)温度で6時間でスチール基材からのアクリルペイントの剥離を可能にした。」(第9頁第8行~第10頁第3行)
(3)甲3には、次の記載がある。
「【請求項1】
コート層が形成された熱可塑性高分子化合物フィルムに、温度が50~95℃、圧力が1~20MPaの水溶液を噴射することを特徴とする樹脂フィルムからのコート層の剥離方法。」
「【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明において、熱可塑性高分子化合物とは、以下に列挙するものなどを指すが、これらに限定されるものではない。
・・・
【0019】第二に、ポリエステル(エステル結合-CO-O-を有する高分子化合物)、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(一般に「PET」と略称される)、ポリブチレンテレフタレート(一般に「PBT」と略称される)、ポリエチレンナフタレート(一般に「PEN」と略称される)、ポリブチレンナフタレート(一般に「PBN」と略称される)などが例示される。」
「【0026】次にコート材について説明する。このコート材の種類は、特に限定されないが、たとえば、ガスバリア性を高めるにはPVDCなどのラテックスが好適に用いられ、接着性を高めるにはイソシアネート類、メラミン類などが好適に用いられる。」
「【0037】水溶液は、通常は水で十分であるが、剥離力をあげるために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの苛性アルカリの1~10mol/lの水溶液とすることが有効な場合がある。また、酸を用いたり、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの親水性の有機溶媒の水溶液を用いたりすることもできる。
【0038】以下、図1を用いて、本発明の剥離方法を実施するための剥離装置の一実施態様について説明する。図1は連続剥離装置の一例を示し、コートされたフィルムFは、捲き出し装置1から捲き出され、プラズマロール2、2′と処理槽8と乾燥機6とを通ったうえで、巻き取り装置7によって巻き取られる。」
「【0045】(実施例1)押出機およびTダイを用いて、ユニチカ社製ナイロン6(グレードA1030BRF)を温度235℃で溶融して未延伸シートとして押し出し、表面温度を15℃に温調した冷却ドラム上にこれをANC方式(エアノズル製膜法)で密着させて冷却し、150μmの厚みの未延伸シートを得た。
【0046】得られたシートを70℃に温調した温水槽に送り、1分間の調湿処理を施した。その後、このシートにPVDCのラテックスをインラインコートし、乾燥して、「サンプルA」とした。また、一部のサンプルAから「サンプルB」を作成した。すなわち、一部のサンプルAの端部をフラット式同時2軸延伸機のクリップに把持させ、195℃の条件下、縦3.0倍、横3.3倍の延伸倍率で同時2軸延伸を施し、その後、横方向の弛緩率を5%として、200℃で3秒間の熱処理を施した。そして、フィルムを冷却して165m/minの速度で巻取機で巻取り、厚さが15μmの延伸フィルムを得た。これを「サンプルB」とした。
【0047】次に、得られたサンプルA、Bを、それぞれ、図1に示す装置で、水溶液の発生装置5で発生された温度75℃、圧力10MPaの温水を用いて連続処理し、コート層を剥離した。
【0048】そうしたところ、炎色反応の結果は陰性で、剥離はほぼ完全であった。また、サンプルAの剥離後のフィルムより形成したリサイクルチップを、ユニチカ社製ナイロン6(グレードA1030BRF)82重量%に対し18重量%混合し、上記と同様にしてフィルム化した。そして、得られた原反ロールをスリットし、各種フィルム性能を評価したところ、リサイクルチップを含まずに製造されたフィルムと何ら遜色のない、包装用フィルムとして良好な適性を有していた。
【0049】(実施例2~5)温度50℃、圧力20MPaの温水(実施例2)、温度65℃、圧力3MPaの温水(実施例3)、温度80℃、圧力1MPaの、1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液(実施例4)、温度95℃、圧力5MPaの温水(実施例5)をそれぞれ用い、実施例1と同様にして、サンプルA、Bにつき図1に示す装置で連続処理を行い、コート層を剥離した。」
「
[図:0001425793000002.jpg]
」
第4 当審における判断
1 申立理由1(甲1を主たる引用例とした進歩性)について
(1)甲1に記載された発明
ア 甲1発明1
甲1(前記第3の3(1)参照。)の【0034】~【0036】、実施例1、【0041】の記載から、甲1には次の発明が記載されているものと認められる。
(甲1発明1)
「ポリカーボネート基材(径12cm、厚み1.2mm)の上に色素膜、銀反射膜及び紫外線吸収剤などを含む保護膜が設けられていた廃CD-Rを、
(第1段)裁断時の付着異物を除去し、
(第2段)ポリオキシエチレン誘導体のノニオン界面活性剤の1重量%と水酸化ナトリウムの3重量%との混合水溶液(pH13.5)に製品を投入し、120℃で30分間処理することで色素(合議体注:色素膜の誤記と認められる。)、金属膜、保護膜を除去し、
(第3段)第2段処理に引続いて水酸化ナトリウム濃度を5質量%とし、他は第2段処理液組成等と全く同様にして120℃で30分処理することで色素、金属膜、保護膜を除去し、
(第4段)残存金属(銀)などの溶解除去及び洗浄を行い、
ポリカーボネート樹脂回収試料を得、バージン樹脂と共に再利用する方法」
イ 甲1発明2
甲1(前記第3の3(1)参照。)の【0042】~【0048】、実施例11、【表2】の記載から、甲1には次の発明が記載されているものと認められる。
「ポリエチレンテレフタレートフィルムの上にポリ塩化ビニリデンを用いた下塗層が設けられているフィルムベースにハロゲン化銀乳剤層及び保護層を塗設した写真感光材料の半製品(廃品)を、0.5ないし3cm角に相当するチップに裁断し、
(第1洗浄処理)チップ試料の約10kgを処理容器に投入し、0.7重量%に設定した苛性ソーダ熱水溶液35l及び高級アルコールのポリエチレングリコールエーテル(エマルゲン106花王(株)製)を2.0gを併せ投入した後、105℃で15分間にわたり、約100rpmの回転数で撹拌し、処理液を排出し、充分に液切りを行った上、水洗処理を5分行い、
(第2洗浄処理)第1苛性アルカリ処理されたチップ試料に、1重量%に設定した苛性ソーダ熱水溶液30l及び高級アルコールのポリエチレングリコールエーテルの10.0gを投入し、120℃で40分約200rpmの回転数で撹拌した後、処理液を排出し、充分に液切りを行い、
(水洗処理)水洗して異物を除去し、
(乾燥処理)洗浄処理済チップを乾燥し、
乾燥処理済みチップを加熱溶融して、ポリエステルフィルムとする方法。」
(2)本件発明1
ア 甲1発明1との対比
本件発明1と甲1発明1を対比する。
甲1発明1の「色素膜、銀反射膜及び紫外線吸収剤などを含む保護膜」は本件発明1の「機能層」に相当する。
甲1発明1の「ポリオキシエチレン誘導体のノニオン界面活性剤の1重量%と水酸化ナトリウムの3重量%との混合水溶液(pH13.5)」、「水酸化ナトリウム濃度を5質量%とし、他は第2段処理液組成等と全く同様にし」た「混合水溶液」は、本件発明1の「洗浄剤」に相当し、甲1発明1の「水酸化ナトリウム」は本件発明1の「(a)アルカリ性化剤(但し、モルホリン濃度が50質量%以上のモルホリン液を除く。)」に相当する。
そうすると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
(一致点)
「機能層除去工程(A)及び回収工程(B)を有し、
前記機能層除去工程(A)は、洗浄剤を用いて、基材の表面に機能層を備える基材上の機能層を除去する工程であり、
前記洗浄剤は、(a)アルカリ性化剤(但し、モルホリン濃度が50質量%以上のモルホリン液を除く。)、を含有し、
前記回収工程(B)は、前記機能層を除去した基材を回収する工程である、リサイクル製品の製造方法。」
(相違点1)
本件発明1は「ポリエステルフィルム」を回収するのに対して、甲1発明1は「ポリカーボネート」を回収する点。
(相違点2)
本件発明1は「機能層」が「ハードコート層、粘接着層及び離型層のいずれかであって、前記ハードコート層は、アクリル系ハードコート層であり、前記粘接着層は、アクリル系粘接着層であり、前記離型層は、シリコーン離型層であ」るのに対して、甲1発明1は「色素膜、銀反射膜及び紫外線吸収剤などを含む保護膜」である点。
(相違点3)
本件発明1は「洗浄剤」が「(b)少なくとも一つの水酸基を有する化合物を含有し、」「前記(b)少なくとも一つの水酸基を有する化合物として、以下の(i)及び(ii)のいずれか1つ以上を含み」「(i)2種類以上のアルコール類として、疎水性単価アルコールと水溶性単価アルコールを含む(ii)ベンジルアルコールを含む酸性度定数(pKa)10.0以上15.4以下のアルコール類」であるのに対して、甲1発明1はそのように特定されていない点。
イ 甲1発明2との対比
本件発明1と甲1発明2を対比する。
甲1発明2の「ポリ塩化ビニリデンを用いた下塗層」および「ハロゲン化銀乳剤層及び保護層」は本件発明1の「機能層」に相当する。
甲1発明2の「0.7重量%に設定した苛性ソーダ熱水溶液35l及び高級アルコールのポリエチレングリコールエーテル(エマルゲン106花王(株)製)を2.0g」、「1重量%に設定した苛性ソーダ熱水溶液30l及び高級アルコールのポリエチレングリコールエーテルの10.0g」は、本件発明1の「洗浄剤」に相当し、甲1発明2の「苛性ソーダ」は本件発明1の「(a)アルカリ性化剤(但し、モルホリン濃度が50質量%以上のモルホリン液を除く。)」に相当する。
そうすると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
(一致点)
「機能層除去工程(A)及び回収工程(B)を有し、
前記機能層除去工程(A)は、洗浄剤を用いて、ポリエステルフィルムの表面に機能層を備える基ポリエステルフィルムの機能層を除去する工程であり、
前記洗浄剤は、(a)アルカリ性化剤(但し、モルホリン濃度が50質量%以上のモルホリン液を除く。)、を含有し、
前記回収工程(B)は、前記機能層を除去したポリエステルフィルムを回収する工程である、リサイクル製品の製造方法。」
(相違点2-2)
本件発明1は「機能層」が「ハードコート層、粘接着層及び離型層のいずれかであって、前記ハードコート層は、アクリル系ハードコート層であり、前記粘接着層は、アクリル系粘接着層であり、前記離型層は、シリコーン離型層であ」るのに対して、甲1発明2は「ポリ塩化ビニリデンを用いた下塗層」および「ハロゲン化銀乳剤層及び保護層」である点。
(相違点3-2)
本件発明1は「洗浄剤」が「(b)少なくとも一つの水酸基を有する化合物を含有し、」「前記(b)少なくとも一つの水酸基を有する化合物として、以下の(i)及び(ii)のいずれか1つ以上を含み」「(i)2種類以上のアルコール類として、疎水性単価アルコールと水溶性単価アルコールを含む(ii)ベンジルアルコールを含む酸性度定数(pKa)10.0以上15.4以下のアルコール類」であるのに対して、甲1発明2はそのように特定されていない点。
ウ 判断
(ア)相違点1について
相違点1について検討すると、甲1の【0015】には「ポリカーボネート基材は、板状またはフィルム状の形態で用いられている。例えば、50ないし200μm厚のフィルム、0.5ないし2mm厚のディスクとして用いられる。その直径は12cmのものが多い。」と記載されている。しかしながら、甲1発明1を認定した実施例では廃CD-Rを再利用しようとしているから、廃CD-Rにおいてポリカーボネートのディスクに代えてポリエステルフィルムとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(イ)相違点2、相違点2-2について
相違点2、相違点2-2について併せて検討すると、甲1には【0013】に記載された「回収の対象となるポリカーボネート基材上に設けられる機能層」として「保護層及び下塗層等が例示」され、【0014】には「保護層、下塗層などには、光学特性に優れた熱可塑性アクリール系エステル、アクリル酸エステルモノマーやメタクリール酸エステルモノマーなどの共重合体が用いられる」ことが記載されているから、ポリカーボネート基材上から「アクリル系」の「機能層」を除去することは記載されている。しかしながら、【0016】に記載された「回収できるポリエステル基材」の「ポリエステルフィルム」は、「表面にまず下塗層を設け、続いて単層の又は複数の親水性層を設けてから、親水性感光層を塗布することが多い」とされ、「下塗層は、第一層として塩化ビニリデン、塩化ビニールなどからなる共重合体を塗布した上に、第二層としてゼラチンなどの親水性高分子を塗布して親水性を付与している」から、「ポリエステルフィルム」から除去するものとして、「アクリル系」や「シリコーン系」の樹脂からなる層は記載されておらず、本願出願時の技術常識を勘案しても、甲1発明1又は2の保護膜に「アクリル系」や「シリコーン系」の樹脂からなる層を設けることを動機付けられるとはいえない。
(ウ)相違点3、相違点3-2について
相違点3、相違点3-2について併せて検討すると、甲1には【0026】において、「塗料や染料などを除去するために」「メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、メチルソロソルブなど基材に対する貧溶剤を併用することができる」ことが記載されているものの、「(i)2種類以上のアルコール類として、疎水性単価アルコールと水溶性単価アルコールを含む」ことや、「(ii)ベンジルアルコールを含む酸性度定数(pKa)10.0以上15.4以下のアルコール類」を含むことは記載されていない。
さらに、甲2を参照しても、甲2の実施例1では「アルミニウム基材上に未だ焼き付けられていない(未硬化)エポキシペイント」を、甲2の実施例2では「スチール基材からのアクリルペイント」を剥離するための液中に「ベンジルアルコール」を使用するものである。このように甲1と甲2は、剥離又は除去しようとする層が積層された基材の種類が樹脂とアルミニウムやスチールといった金属という点で性質が異なるものであるから、甲1、甲2の記載に接した当業者が甲2に記載のベンジルアルコールを甲1発明1又は2の水溶液に混合することを容易に想到し得たとはいえない。
また、甲2の「組成物は、活性剤化合物に加えて、アルコールのような二次活性剤、例えばC1-4アルコール、好ましくはメタノールを含むこと」との記載(第6頁下欄6行~第7行)も、「塗装された基材、特に金属基材からペイントを剥離する」ための「ペイントリムーバー」「組成物」に関するもの(第4頁上欄第1行~第4行)であるから、甲1発明1のポリカーボネート基材上の「色素膜、銀反射膜及び紫外線吸収剤などを含む保護膜」や、甲1発明2のポリエステルフィルム上の「ポリ塩化ビニリデンを用いた下塗層」および「ハロゲン化銀乳剤層及び保護層」を除去するために、甲2に記載の「ペイントリムーバー」「組成物」を適用しようとすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
以上のとおりであるから、甲1発明1又は2において、相違点1、2、2-2、3、3-2に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものではない。
エ 申立人の主張
申立人は、本件発明1の「(b)少なくとも一つの水酸基を有する化合物として、(i)及び(ii)のいずれか1つ以上を含」み、このうち、「(ii)ベンジルアルコールを含む酸性度定数(pKa)10.0以上15.4以下のアルコール類」との事項により「酸性度定数(pKa)が10.0以上15.4以下である」ことを限定しているが、数値限定の臨界的意義に対して詳細な説明において立証していないという趣旨の主張をしている。
しかしながら、本件明細書の【表1】の実施例1~11、比較例1、2について検討すると、実施例4は「(a)成分として、水酸化カリウム5質量部、(b)成分としてベンジルアルコール95質量部となるように混合し、洗浄剤(pH=13以上)を調整」(【0110】)、実施例5は「(a)成分として、水酸化カリウム5質量部、(b)成分としてメタノール95質量部となるように混合し、洗浄剤(pH=13以上)を調整」(【0111】)することが記載されているところ、【表1】の実施例4,5で温度、浸漬時間、洗浄対象が同条件である洗浄条件の温度条件が「60℃」、浸漬時間が「1分」についての「(III)5×5cm」の評価を確認すると、実施例4では「◎」、実施例5では「○」となっている。
すなわち、本件明細書には、温度、浸漬時間、洗浄対象といった洗浄条件を同条件とし、(a)成分の種類と配合量、(b)成分の配合量を同条件とした際には、pKa=15.4であるベンジルアルコールを使用した実施例4の方が、pKa=15.5であるメタノールを使用した実施例5よりも洗浄性が高いことが示されているといえる。
また、【0045】の「洗浄性の観点から、アルコール類の酸性度定数(pKa)が10.0以上」及び「洗浄剤のアルカリ性を損ねることなく、アルコキシドが生成されるため、洗浄剤の洗浄能力が向上する」との記載から、下限の意義についても、当業者が理解できるといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
オ 小括
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1、甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2~6
本件発明2~6は、いずれも本件発明1を全て包含し、それぞれ個別の技術事項を追加したものである。そうすると、前記(2)に示した理由と同様の理由により、本件発明2~4は甲1に記載された発明及び甲1~甲2に記載された事項に基いて、本件発明5、6は甲1に記載された発明及び甲1~3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明7
本件発明7は、「洗浄剤の入った洗浄層を有」する「洗浄装置を有するポリエステルフィルムの回収装置」の発明であり、本件発明1で特定される洗浄剤により、本件発明1で特定されるポリエステルフィルムの表面の機能層を除去してポリエステルフィルムを回収する装置に係る発明である。
したがって、本件発明7と甲1発明1は、前記(2)アの相違点1~3に加え、本件発明7は「洗浄剤の入った洗浄層を有」する「洗浄装置を有するポリエステルフィルムの回収装置」であるのに対し、甲1発明1は「再利用する方法」である点で相違するものである。また、本件発明7と甲1発明2は、前記(2)イの相違点2-2及び3-2に加え、本件発明7は「洗浄剤の入った洗浄層を有」する「洗浄装置を有するポリエステルフィルムの回収装置」であるのに対し、甲1発明2は「ポリエステルフィルムとする方法」である点で相違するものである。
したがって、本件発明7は、前記(2)に示した理由と同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲1~甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない
(5)本件発明8~16
本件発明8~16は、いずれも本件発明7を全て包含し、それぞれ個別の技術事項を追加したものである。そうすると、前記(4)に示した理由と同様の理由により、本件発明8、9は甲1に記載された発明及び甲1~甲2に記載された事項に基いて、本件発明10~16は甲1に記載された発明及び甲1~甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6)本件発明17
本件発明17は、「ポリエステルフィルムの表面に機能層を備える積層ポリエステルフィルムから機能層を除去するための除去剤」の発明であり、除去剤が本件発明1で特定される洗浄剤を含むものである。
したがって、本件発明17と甲1発明1は、前記(2)アの相違点1~3に加え、本件発明17は洗浄剤を含む「除去剤」であるのに対し、甲1発明1は「再利用する方法」である点で相違するものである。また、本件発明17と甲1発明2は、前記(2)イの相違点2-2及び3-2に加え、本件発明17は洗浄剤を含む「除去剤」であるのに対し、甲1発明2は「ポリエステルフィルムとする方法」である点で相違するものである。
したがって、本件発明17は、前記(2)に示した理由と同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲1~甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(7)本件発明18~21
本件発明18~21は、いずれも本件発明17を全て包含し、それぞれ個別の技術事項を追加したものである。そうすると、前記(6)に示した理由と同様の理由により、本件発明18~20は甲1に記載された発明及び甲1~甲2に記載された事項に基いて、本件発明21は甲1に記載された発明及び甲1~甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、異議申立人による特許異議申立書の理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~21に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700290