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特許異議申立

2025-700241

自己消化性成形品

審判番号
2025-700241
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-106049
登録番号
7542261
請求日
2025年02月27日
審決日
2025年05月07日
公報発行日
2025年06月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ヤマトプロテック株式会社
  • 【権利者代理人】吉澤 敬夫
  • 【権利者代理人】紺野 昭男
  • 【権利者代理人】井波 実
  • 【権利者代理人】伊藤 武泰
  • 【権利者代理人】田村 慶政
  • 【異議申立人】齊藤 恵美子
審判長/審判官
  • 審判長 原 賢一
  • 審判官 金 公彦
  • 審判官 田口 裕健
分類
P1651.121-Y (A62D) / P1651.537-Y (A62D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7542261号発明「自己消化性成形品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7542261号の請求項1~2に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7542261号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~2に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)9月4日(優先権主張 平成28年9月12日)を国際出願日とする特願2018-538397号(以下、「原出願」という。)の一部を、令和3年6月25日に新たな特許出願としたものであって、令和6年8月22日にその特許権の設定登録がされ、同年8月30日に特許掲載公報が発行され、その後、令和7年2月27日に、請求項1~2に係る特許について、特許異議申立人 齊藤 恵美子(以下、「申立人」という。)により、甲第1~7号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされ、同年4月9日に、申立人より手続補正書(2通)が提出されたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~2に係る発明は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、請求項1~2に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明2」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)。 「【請求項1】 塩素酸カリウムと、 酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三カリウム、フタル酸水素カリウム、シュウ酸カリウム及び重炭酸カリウムからなる群から選択される一つ又は複数のカリウム塩と、 燃焼して、前記塩素酸カリウムと共に前記カリウム塩を分解して、カリウムラジカルを含むエアロゾルを発生させる成分(A成分)と を少なくとも含んでなり、 前記塩素酸カリウムと前記A成分とを、その合計量に対し、それぞれ80~50質量%及び20~50質量%の割合で含み、かつ 前記塩素酸カリウム及び前記A成分の合計量100質量部に対して、前記カリウム塩を6~1000質量部の割合で含んでなる、自動車の部品に貼付して使用されるシート状自己消火性成形品。 【請求項2】 塩素酸カリウムと、 酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三カリウム、フタル酸水素カリウム、シュウ酸カリウム及び重炭酸カリウムからなる群から選択される一つ又は複数のカリウム塩と、 燃焼して、前記塩素酸カリウムと共に前記カリウム塩を分解して、カリウムラジカルを含むエアロゾルを発生させる成分(A成分)と を少なくとも含んでなり、 前記塩素酸カリウムと前記A成分とを、その合計量に対し、それぞれ80~50質量%及び20~50質量%の割合で含み、かつ 前記塩素酸カリウム及び前記A成分の合計量100質量部に対して、前記カリウム塩を6~1000質量部の割合で含んでなる、建物の火災の発生の可能性ある部材に貼付して使用されるシート状自己消火性成形品。」 第3 特許異議申立理由の概要 1 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について (1) 本件発明1~2は、甲第1号証に記載された発明、甲第1、3号証に記載された事項及び原出願の優先日当時の技術常識(甲第6~7号証を引用)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~2に係る特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。 (2) 本件発明1~2は、甲第2号証に記載された発明及び原出願の優先日当時の周知技術(甲第4~5号証を引用)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~2に係る特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。 2 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について 本件特許明細書の段落【0006】(下記第4の2(2)ア)には、本件発明の課題として、消火器や消火装置等を使用せずとも自己消火機能を発動することができ火災に対する安全対策が可能な自己消火性成形品を提供することが記載されている。 そして、本件発明1~2においては、「エアロゾルを発生させる成分(A成分)」について、「燃焼して、前記塩素酸カリウムと共に前記カリウム塩を分解して、カリウムラジカルを含」み、「前記A成分」を、「前記塩素酸カリウムと前記A成分」「の合計量に対し」、「20~50質量%の割合で含」むことが特定されており、同段落【0019】(下記第4の2(2)ウ)には、「A成分」の例としてジシアンジアミド等が記載されている。 ところが、本件特許明細書の発明の詳細な説明において本件発明の課題を解決できる「A成分」として挙げられているのは、実施例1~13のCMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)だけであり、当業者は、前記CMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)を前記段落【0019】に挙げられるほかの「A成分」とした場合、本件発明の課題を解決できるとは認識できないし、そのような技術常識もない。 してみれば、原出願の出願日当時の技術常識に照らしても、前記発明の詳細な説明の記載を、「A成分」がCMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)に特定されていない本件発明1にまで拡張ないし一般化することはできないから、本件発明1が発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。 更に、本件発明2について検討しても事情は同じであるから、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号所定の規定(サポート要件)に適合しない。 3 証拠方法 甲第1号証:特表平8-511958号公報 甲第2号証:特開2004-89597号公報 甲第3号証:特表2010-532685号公報 甲第4号証:特表2013-541361号公報 甲第5号証:米国特許出願公開第2012/0034482号明細書 甲第6号証:特開2015-123277号公報 甲第7号証:特開2010-273925号公報 第4 特許異議申立理由についての当審の判断 1 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について (1) 甲各号証の記載事項等 ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 (ア) 甲第1号証には、以下のa~fの記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。 a 「24. 消火または無毒の煙を発生するためのシステムであって、 (1) 塩素酸カリウム、過塩素酸カリウム、重クロム酸カリウム、硝酸セシウムおよび硝酸カリウムよりなる群から選択された第1の反応物、ならびに (2) 還元剤として作用する第2の反応物 を含む組成を含む装置を含み、前記媒体は活性化されて第1の反応物と第2の反応物とを互いに反応させ、消火または発煙に効果的な、約1ミクロンまたはそれよりも小さな直径を有する固体粒子状生成物を発生し、前記システムは活性化に続いて遠隔の場所に設置されるように設計される、消火または無毒の煙を発生するためのシステム。」(特許請求の範囲) b 「本発明は、限定されるものではないが、種々のコンパートメント、機械室、ケーブルトンネル、地下室、化学薬品店、塗装室、リザーバ、石油製品および液化ガスのための貯蔵容器、可燃性物質を扱うポンプ室等、ならびに自動車、航空機、船舶、機関車、装甲車、艦艇等のさまざまな輸送手段を含む種々の容積の防火に適する。本発明はさらに、効果的であるが無毒の煙幕を発生する際に有効である。」(13ページ2行~7行) c 「容積消火および煙発生のための方法を実行する新規の構成がこの明細書中に開示される。本発明に従う各構成の重要な特徴は、非常に細かく分散したエーロゾルのその場での形成である。エーロゾルは、現在周知のシステムのように前もって準備され、貯蔵されるものではない。それよりもむしろ、エーロゾルは、火事の際の消火の場合のように、少なくとも2つの互いに反応可能な反応物を含む固体燃料組成または媒体(以降「SFC」と称する)を燃焼させることにより、必要なときにその場で生成または発生される。 好ましくは、反応物の一方は酸化剤であり、他方は還元剤である。より好ましくは、SFCはさらに、塩化カリウムまたは燐酸アンモニウムといった充填剤を含む。反応の際、SFCは燃焼生成物において気体生成物および固体エーロゾル粒子を形成する。気体生成物、および特に固体エーロゾル粒子は、燃焼伝搬の中心の再結合を促進し、したがって火の持続を抑制して消すことにより消されることになる火炎に対して強い抑制効果を表す。 ・・・ 本発明に従うシステムにおいて生まれるエーロゾルの消火能力は、周知の技術と比較して大幅に増大するが、その理由は、本発明に従うエーロゾルは、典型的には1ミクロンのオーダという非常に小さなサイズの粒子から作られ、したがって体積に対する表面積の比率が今まで周知であったものよりも非常に大きいからである。粒子のサイズがより小さいということは、分散性により優れ、より効果的なエーロゾルに役立つ。」(15ページ8行~16ページ4行) d 「好ましくは、SFCは、好ましくは過塩素酸カリウム、重クロム酸カリウム、硝酸カリウム、塩素酸カリウム、硝酸セシウムといった酸化物である1つの反応物を含む。SFCはさらに、ゴム、高分子材料、エポキシ樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂等、またはリン、硫黄等でもよい、1つまたはそれ以上の種々の有機物質でもよい還元剤として好ましくは作用することができる、第2の反応物をさらに含む。SFCはまた、限定するものではないが塩化カリウムといった充填剤を含んでもよい。 ・・・ 典型的なSFC組成の例示として、本発明の範囲をいかなる方法でも限定することなく、以下に12の可能な組成を挙げる。 ・・・ 組成7: 塩素酸カリウム 37-45wt% 硝酸カリウム 37-45wt% エポキシ樹脂 16-19wt% Mg(またはAl) 1-3 wt% ・・・ 固体燃料組成成分を選択する場合には、SFCの最初の組成もその燃焼の生成物も、無毒であり安定であることを確実にしておかねばならない。上に列挙した安定組成はテストされたものであり、それら組成の燃焼は急速であるが爆発するほど急速な訳ではないという特徴を有することがわかっている。例示としては、酸化剤として過塩素酸カリウム、還元剤としてエポキシEPON828、温度および燃焼速度を高めるためにマグネシウム、充填剤として塩化カリウムを組合せて使用することにより、燃焼の際に、抑制効果が高く、害がなく、安定であるエーロゾルを生成すると考えられている。」(17ページ5行~20ページ5行) e 「図面を参照すれば、図1は本発明に従う消火または発煙システムの基本的な実施例を示す。ここにおいて、固体、粒状、粉末またはゲル状のSFC10が、典型的には金属で作られた適切なサイズおよび形状であり所望される長さを有する枠12内に詰められ、または形作られる。点火装置14が使用されてSFCを活性化し、点火装置ケーブル16を介して、火炎または熱検出器、適当な手動または自動の活性化メカニズムのようなものに接続されてもよい。活性化の際、SFCは反応して、スロットを設けられた枠12の開きを通して均一的に放出されるエーロゾルの壁を形成する。図1に示されたようなユニットを2つまたはそれ以上、端と端で接続して何らかの適切な長さを有する装置を形成し、部屋またはその他の構内の廊下または壁に沿って設置可能である。」(24ページ8行~17行) f 「【図1】 [図:0001423546000001.jpg] 」 (イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第1号証には、消火又は無毒の煙を発生するためのシステムであって、(1) 塩素酸カリウム、過塩素酸カリウム、重クロム酸カリウム、硝酸セシウム及び硝酸カリウムよりなる群から選択された第1の反応物、ならびに(2) 還元剤として作用する第2の反応物を含む組成を含む装置を含み、前記媒体は活性化されて第1の反応物と第2の反応物とを互いに反応させ、消火又は発煙に効果的な、約1ミクロン又はそれよりも小さな直径を有する固体粒子状生成物を発生し、前記システムは活性化に続いて遠隔の場所に設置されるように設計される、消火又は無毒の煙を発生するためのシステムが記載されている。 そして、前記(ア)b及びcの記載によれば、前記システムは、種々のコンパートメント、機械室、ケーブルトンネル、地下室、化学薬品店、塗装室、リザーバ、石油製品及び液化ガスのための貯蔵容器、可燃性物質を扱うポンプ室等、ならびに自動車、航空機、船舶、機関車、装甲車、艦艇等のさまざまな輸送手段を含む種々の容積の防火に適するものであって、その重要な特徴は、非常に細かく分散したエーロゾルのその場での形成であり、前記エーロゾルは、火事の際の消火の場合のように、少なくとも2つの互いに反応可能な反応物を含む固体燃料組成又は媒体(以降「SFC」と称する)を燃焼させることにより、必要なときにその場で生成又は発生されるものである。 ここで、反応物の一方は酸化剤であり、他方は還元剤であり、前記システムにおいて生まれるエーロゾルの消火能力は、周知の技術と比較して大幅に増大するが、その理由は、前記エーロゾルは、典型的には1ミクロンのオーダという非常に小さなサイズの粒子から作られ、したがって体積に対する表面積の比率が今まで周知であったものよりも非常に大きいからである。 また、前記(ア)dの記載によれば、前記SFCは、好ましくは過塩素酸カリウム、重クロム酸カリウム、硝酸カリウム、塩素酸カリウム、硝酸セシウムといった酸化物である1つの反応物を含み、SFCは更に、ゴム、高分子材料、エポキシ樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂等、又はリン、硫黄等でもよい、1つ又はそれ以上の種々の有機物質でもよい還元剤として好ましくは作用することができる、第2の反応物をさらに含み、典型的なSFC組成として、塩素酸カリウム 37-45wt%、硝酸カリウム 37-45wt%、エポキシ樹脂 16-19wt%、Mg(又はAl) 1-3 wt%を有する組成7が挙げられるものであり、例示として、酸化剤として過塩素酸カリウム、還元剤としてエポキシEPON828、温度及び燃焼速度を高めるためにマグネシウム、充填剤として塩化カリウムを組合せて使用することにより、燃焼の際に、抑制効果が高く、害がなく、安定であるエーロゾルを生成すると考えられているものである。 更に、前記(ア)e、fの記載によれば、前記消火又は発煙システムは、固体、粒状、粉末又はゲル状のSFCが、典型的には金属で作られた適切なサイズ及び形状であり所望される長さを有する枠内に詰められ、又は形作られ、点火装置が使用されてSFCを活性化し、点火装置ケーブルを介して、火炎又は熱検出器、適当な手動又は自動の活性化メカニズムのようなものに接続されてもよいものであり、活性化の際、SFCは反応して、スロットを設けられた枠の開きを通して均一的に放出されるエーロゾルの壁を形成するものであり、ユニットを2つ又はそれ以上、端と端で接続して何らかの適切な長さを有する装置を形成し、部屋又はその他の構内の廊下又は壁に沿って設置可能であるものである。 (ウ) そして、前記(イ)の組成7のSFCに注目すると、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「消火又は無毒の煙を発生するためのシステムであって、 (1) 塩素酸カリウム、過塩素酸カリウム、重クロム酸カリウム、硝酸セシウム及び硝酸カリウムよりなる群から選択された第1の反応物、ならびに (2) 還元剤として作用する第2の反応物を含む組成を含む装置を含み、前記媒体は活性化されて第1の反応物と第2の反応物とを互いに反応させ、消火又は発煙に効果的な、約1ミクロン又はそれよりも小さな直径を有する固体粒子状生成物を発生し、前記システムは活性化に続いて遠隔の場所に設置されるように設計される、消火又は無毒の煙を発生するためのシステムにおける、少なくとも2つの互いに反応可能な反応物を含む固体燃料組成又は媒体(以降「SFC」と称する)であり、 前記システムは、種々のコンパートメント、機械室、ケーブルトンネル、地下室、化学薬品店、塗装室、リザーバ、石油製品及び液化ガスのための貯蔵容器、可燃性物質を扱うポンプ室等、ならびに自動車、航空機、船舶、機関車、装甲車、艦艇等のさまざまな輸送手段を含む種々の容積の防火に適するものであって、その重要な特徴は、非常に細かく分散したエーロゾルのその場での形成であり、前記エーロゾルは、火事の際の消火の場合のように、少なくとも2つの互いに反応可能な反応物を含む前記SFCを燃焼させることにより、必要なときにその場で生成又は発生されるものであり、 ここで、反応物の一方は酸化剤であり、他方は還元剤であり、前記システムにおいて生まれるエーロゾルの消火能力は、周知の技術と比較して大幅に増大するが、その理由は、前記エーロゾルは、典型的には1ミクロンのオーダという非常に小さなサイズの粒子から作られ、したがって体積に対する表面積の比率が今まで周知であったものよりも非常に大きいからであり、 前記SFCは、好ましくは過塩素酸カリウム、重クロム酸カリウム、硝酸カリウム、塩素酸カリウム、硝酸セシウムといった酸化物である1つの反応物を含み、SFCは更に、ゴム、高分子材料、エポキシ樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂等、又はリン、硫黄等でもよい、1つ又はそれ以上の種々の有機物質でもよい還元剤として好ましくは作用することができる、第2の反応物をさらに含み、典型的なSFC組成として、塩素酸カリウム 37-45wt%、硝酸カリウム 37-45wt%、エポキシ樹脂 16-19wt%、Mg(又はAl) 1-3 wt%を有する組成が挙げられるものであり、 例示として、酸化剤として過塩素酸カリウム、還元剤としてエポキシEPON828、温度及び燃焼速度を高めるためにマグネシウム、充填剤として塩化カリウムを組合せて使用することにより、燃焼の際に、抑制効果が高く、害がなく、安定であるエーロゾルを生成すると考えられているものであり、 前記システムは、固体、粒状、粉末又はゲル状の前記SFCが、典型的には金属で作られた適切なサイズ及び形状であり所望される長さを有する枠内に詰められ、又は形作られ、点火装置が使用されてSFCを活性化し、点火装置ケーブルを介して、火炎又は熱検出器、適当な手動又は自動の活性化メカニズムのようなものに接続されてもよいものであり、活性化の際、SFCは反応して、スロットを設けられた枠の開きを通して均一的に放出されるエーロゾルの壁を形成するものであり、ユニットを2つ又はそれ以上、端と端で接続して何らかの適切な長さを有する装置を形成し、部屋又はその他の構内の廊下又は壁に沿って設置可能である、SFC。」(以下、「甲1発明」という。) イ 甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明 (ア) 甲第2号証には、以下のa~cの記載がある。 a 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 重炭酸カリウム、塩素酸カリウム、微結晶性活性炭、金属マグネシウムと結合材よりなる消火剤組成物。」 b 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】この発明は、特定容積火災、例えば、種々の機械室、ケーブル配設管、地下室、石油製品や液化天然ガスの貯蔵タンク、可燃性物質を取り扱うポンプ室、自動車、航空機、船舶、機関車、装甲車、艦艇などの各種輸送手段での火災に対して有効に作用し、有害物質を発生せず、人体や環境にも実質的に悪影響及ぼさず、家具や調度品等を汚染することもなく、かつ、消火性能の高い消火剤組成物、同組成物を使用した消火器、及び同消火器を利用した消火方法を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者は、上記のような現状に鑑み、種々検討の結果、重炭酸カリウム、塩素酸カリウム、微結晶性活性炭、金属マグネシウム及び結合材よりなる消火剤組成物が上記の目的を達成できることを見出して、完成したものを得られたものである。なお、この消火剤組成物については、本発明者が知る限りにおいては、文献未記載である。 【0006】 【発明の実施の形態】この発明の消火剤組成物は、重炭酸カリウム、塩素酸カリウム、微結晶性活性炭、金属マグネシウム及び結合材をそれぞれ所望とする量配合することにより得られる。 【0007】この発明に係る消火剤組成物に使用される各物質の配合量、及び、各物質の作用について以下説明する。なお、消火剤組成物としての各物質の使用量は、全体が100質量%となるように、下記にした範囲内から選択され使用される。 【0008】重炭酸カリウムは、反応により発生する熱を吸収して、発生したスモークスクリーンの温度を低下させる作用を示し、また、無毒で、消火に有効なスモークスクリーンを生成し、空気との接触を遮断させる。80~100メッシュの篩を通過する粉末度を有するものが好適に使用される。使用量としては、通常は、質量%で、全組成物の質量の40%~50%である。 【0009】塩素酸カリウムは、以下に述べる還元剤としての活性炭を酸化して、無毒なスモークスクリーンを生成させる作用を有する。使用量としては、通常は、質量%で、全組成物の質量の25%~35%である。 【0010】微結晶性活性炭は、還元剤であり、上記の塩素酸カリウムと反応して、無毒なスモークスクリーンを生成する役割を有する。微結晶性活性炭としては、表面積が750~1550mm2/gのものが好適に使用される。使用量としては、通常は、質量%で、全組成物の質量の5%~10%である。 【0011】マグネシウム粉末は、塩素酸カリウムの還元剤としての作用を発揮すると共に、反応を促進させ、温度を上昇させるための高エネルギー物質として使用される。マグネシウム粉末としては、マグネシウム含有量が98%以上で、約0.100mmの大きさの粒径を有する粒子が、最大で10%程度含まれ、約0.063mmの大きさの粒径を有する粒子が、最少で30%、最大で60%程度含まれるという粒度分布を有するものが好適に使用される。使用量としては、通常は、質量%で、全組成物の質量の10%~15%である。 【0012】上記の各成分を所定の固形状の消火剤組成物とするには、結合材を使用する。通常は、ビスフェノールAジグリシジールエーテル、及びトリエチレンテトラミンを結合材として使用する。結合材としてのビスフェノールAジグリシジールエーテルと、トリエチレンテトラミンとの使用量の比率は、通常、結合材として作用する範囲内にあれば、差し支えないが、通常は6:1程度を目安にすればよい。両者を併せた使用量は、質量%で、全組成物の質量の6%~10%である。なお、ビスフェノールAジグリシジールエーテルとトリエチレンテトラミンとは、混合中に反応し、本発明において使用される結合材として要求される特質を有するポリマーを形成する。 【0013】ビスフェノールAジグリシジールエーテルとしては、エポキシ基の含有量が20.0%~22.5%で、残存塩素イオンの含有量が0.005%以下、鹸化可能な塩素含有量が0.8%以下、揮発成分の含有量が0.8%以下、最少ゲル化時間が4.0分であるものが好適に使用される。トリエチレンテトラミンとしては、工業的に使用されるものであれば、特別な制限が無く使用可能である。 【0014】次に、上記組成物の成形方法について、更に具体的に説明する。安全面を考慮して、先ず、所定量の重炭酸カリウムと塩素酸カリウムとをよく混合し、混合物を調製する。ついで、所定量の微結晶性活性炭と金属マグネシウムをかくして調製した混合物に添加し、よく混合し、混合物1を調製する。これとは別に、所定量のトリエチレンテトラミンとビスフェノールAジグリシジールエーテルとを混合し、結合材としての混合物2を調製する。混合物1と結合材である混合物2とをよく撹拌して、混合し、成形用組成物を調製する。かくして調製した成形用組成物を所望の形状をした金型中に注ぎ込み、押圧し、所望の形状に成形する。必要に応じて、所定数の成形品を積層、接着剤で接着し、乾燥させ、本願発明に係る消火剤組成物を製造する。」 c 「【0018】本発明に係る消火剤組成物を消火器に使用するに際しては、所望の形状、例えば、円柱状に成形された消火剤組成物を使用環境、消火器の作動方法、等の因子を考慮して、適当な容器に収納すればよい。容器の材質は、圧縮液化物を収納する際に使用するような耐圧性の容器である必要はなく、消火が必要になるまで、本願発明に係る消火剤組成物を収納でき、消火が必要になった際に、支障無く、消火器として作動できるものであれば、特に制限無く、使用可能である。・・・ 【0019】消火器として作動させる方法には、電気的な方法、機械的な方法が挙げられる。作動は、煙、熱、等の火災の発生を示唆する要素が検知可能な検知センサと電気的な方法や機械的な方法と組み合わせられた作動システムを内蔵した、いわゆる内蔵型と、前記の作動システムをシステム化したものの二通りがあるが、使用条件等に応じて、より適切な方法を選択すればよい。 【0020】本発明に係る消火剤組成物の配合例としては、以下のようなものが例示される。 ・・・ 【0022】 配合例3 重炭酸カリウム : 40質量% 塩素酸カリウム : 35質量% 微結晶性活性炭 : 7質量% 金属マグネシウム : 13質量% 結合材 : 残部」 (イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第2号証には、重炭酸カリウム、塩素酸カリウム、微結晶性活性炭、金属マグネシウムと結合材よりなる消火剤組成物が記載されている。 そして、前記(ア)bの記載によれば、前記消化剤組成物は、特定容積火災、例えば、種々の機械室、ケーブル配設管、地下室、石油製品や液化天然ガスの貯蔵タンク、可燃性物質を取り扱うポンプ室、自動車、航空機、船舶、機関車、装甲車、艦艇などの各種輸送手段での火災に対して有効に作用するものであって、有害物質を発生せず、人体や環境にも実質的に悪影響及ぼさず、家具や調度品等を汚染することもなく、かつ、消火性能の高い消火剤組成物、同組成物を使用した消火器、及び同消火器を利用した消火方法を提供することを目的とするものである。 ここで、前記消火剤組成物における重炭酸カリウムは、反応により発生する熱を吸収して、発生したスモークスクリーンの温度を低下させる作用を示し、また、無毒で、消火に有効なスモークスクリーンを生成し、空気との接触を遮断させるものであり、その使用量は、通常は、質量%で、全組成物の質量の40%~50%であり、塩素酸カリウムは、以下に述べる還元剤としての活性炭を酸化して、無毒なスモークスクリーンを生成させる作用を有し、その使用量は、通常は、質量%で、全組成物の質量の25%~35%であり、微結晶性活性炭は、還元剤であり、前記塩素酸カリウムと反応して、無毒なスモークスクリーンを生成する役割を有し、その使用量は、通常は、質量%で、全組成物の質量の5%~10%であり、マグネシウム粉末は、塩素酸カリウムの還元剤としての作用を発揮すると共に、反応を促進させ、温度を上昇させるための高エネルギー物質として使用され、その使用量は、通常は、質量%で、全組成物の質量の10%~15%であるものである。 また、各成分を所定の固形状の消火剤組成物とするには、結合材を使用するものであり、通常は、ビスフェノールAジグリシジールエーテル、及びトリエチレンテトラミンを結合材として使用するものであり、前記組成物の成形方法は、安全面を考慮して、先ず、所定量の重炭酸カリウムと塩素酸カリウムとをよく混合し、混合物を調製し、次いで、所定量の微結晶性活性炭と金属マグネシウムをかくして調製した混合物に添加し、よく混合し、混合物1を調製し、これとは別に、所定量のトリエチレンテトラミンとビスフェノールAジグリシジールエーテルとを混合し、結合材としての混合物2を調製し、混合物1と結合材である混合物2とをよく撹拌して、混合し、成形用組成物を調製するものであり、かくして調製した成形用組成物を所望の形状をした金型中に注ぎ込み、押圧し、所望の形状に成形し、必要に応じて、所定数の成形品を積層、接着剤で接着し、乾燥させて、前記消火剤組成物を製造するものである。 更に、前記(ア)cの記載によれば、前記消火剤組成物を消火器に使用するに際しては、所望の形状、例えば、円柱状に成形された消火剤組成物を使用環境、消火器の作動方法、等の因子を考慮して、適当な容器に収納すればよいものであり、消火器として作動させる方法には、電気的な方法、機械的な方法が挙げられ、作動は、煙、熱、等の火災の発生を示唆する要素が検知可能な検知センサと電気的な方法や機械的な方法と組み合わせられた作動システムを内蔵した、いわゆる内蔵型と、前記の作動システムをシステム化したものの二通りがあるが、使用条件等に応じて、より適切な方法を選択すればよいものであり、前記消化剤組成物の配合例として、以下の配合例3が例示されるものである。 配合例3 重炭酸カリウム : 40質量% 塩素酸カリウム : 35質量% 微結晶性活性炭 : 7質量% 金属マグネシウム : 13質量% 結合材 : 残部 (ウ) そして、前記(イ)の配合例3の消火剤組成物に注目すると、甲第2号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「重炭酸カリウム、塩素酸カリウム、微結晶性活性炭、金属マグネシウムと結合材よりなる消火剤組成物であって、 前記消化剤組成物は、特定容積火災、例えば、種々の機械室、ケーブル配設管、地下室、石油製品や液化天然ガスの貯蔵タンク、可燃性物質を取り扱うポンプ室、自動車、航空機、船舶、機関車、装甲車、艦艇などの各種輸送手段での火災に対して有効に作用するものであり、 有害物質を発生せず、人体や環境にも実質的に悪影響及ぼさず、家具や調度品等を汚染することもなく、かつ、消火性能の高い消火剤組成物、同組成物を使用した消火器、及び同消火器を利用した消火方法を提供することを目的とするものであり、 重炭酸カリウムは、反応により発生する熱を吸収して、発生したスモークスクリーンの温度を低下させる作用を示し、また、無毒で、消火に有効なスモークスクリーンを生成し、空気との接触を遮断させるものであり、その使用量は、通常は、質量%で、全組成物の質量の40%~50%であり、 塩素酸カリウムは、以下に述べる還元剤としての活性炭を酸化して、無毒なスモークスクリーンを生成させる作用を有し、その使用量は、通常は、質量%で、全組成物の質量の25%~35%であり、 微結晶性活性炭は、還元剤であり、前記塩素酸カリウムと反応して、無毒なスモークスクリーンを生成する役割を有し、その使用量は、通常は、質量%で、全組成物の質量の5%~10%であり、 マグネシウム粉末は、塩素酸カリウムの還元剤としての作用を発揮すると共に、反応を促進させ、温度を上昇させるための高エネルギー物質として使用され、その使用量は、通常は、質量%で、全組成物の質量の10%~15%であり、 前記各成分を所定の固形状の消火剤組成物とするには、結合材を使用するものであり、通常は、ビスフェノールAジグリシジールエーテル、及びトリエチレンテトラミンを結合材として使用するものであり、 前記組成物の成形方法は、安全面を考慮して、先ず、所定量の重炭酸カリウムと塩素酸カリウムとをよく混合し、混合物を調製し、次いで、所定量の微結晶性活性炭と金属マグネシウムをかくして調製した混合物に添加し、よく混合し、混合物1を調製し、これとは別に、所定量のトリエチレンテトラミンとビスフェノールAジグリシジールエーテルとを混合し、結合材としての混合物2を調製し、混合物1と結合材である混合物2とをよく撹拌して、混合し、成形用組成物を調製するものであり、かくして調製した成形用組成物を所望の形状をした金型中に注ぎ込み、押圧し、所望の形状に成形し、必要に応じて、所定数の成形品を積層、接着剤で接着し、乾燥させて、前記消火剤組成物を製造するものであり、 前記消火剤組成物を消火器に使用するに際しては、所望の形状、例えば、円柱状に成形された消火剤組成物を使用環境、消火器の作動方法、等の因子を考慮して、適当な容器に収納すればよいものであり、 消火器として作動させる方法には、電気的な方法、機械的な方法が挙げられ、作動は、煙、熱、等の火災の発生を示唆する要素が検知可能な検知センサと電気的な方法や機械的な方法と組み合わせられた作動システムを内蔵した、いわゆる内蔵型と、前記の作動システムをシステム化したものの二通りがあるが、使用条件等に応じて、より適切な方法を選択すればよいものであり、 前記消化剤組成物の配合例として、 重炭酸カリウム : 40質量% 塩素酸カリウム : 35質量% 微結晶性活性炭 : 7質量% 金属マグネシウム : 13質量% 結合材 : 残部 の配合例が例示される、消化剤組成物。」(以下、「甲2発明」という。) なお、甲第3~7号証の摘記は省略する。 (2) 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)についての判断 ア 甲第1号証を主引用例とした場合について (ア) 本件発明1について a 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「SFC」は、「塩素酸カリウム、過塩素酸カリウム、重クロム酸カリウム、硝酸セシウム及び硝酸カリウムよりなる群から選択された第1の反応物」「を含」み、「種々のコンパートメント、機械室、ケーブルトンネル、地下室、化学薬品店、塗装室、リザーバ、石油製品及び液化ガスのための貯蔵容器、可燃性物質を扱うポンプ室等、ならびに自動車、航空機、船舶、機関車、装甲車、艦艇等のさまざまな輸送手段を含む種々の容積の防火に適する」ものであって、「非常に細かく分散したエーロゾルのその場で」「形成」し、「前記エーロゾルは、火事の際の消火の場合のように、少なくとも2つの互いに反応可能な反応物を含む前記SFCを燃焼させることにより、必要なときにその場で生成又は発生されるものであ」り、更に、「固体」として「形作られ」るものであるから、本件発明1における「塩素酸カリウム」「を少なくとも含んでな」る、「自己消火性成形品」に相当する。 ここで、甲1発明における「Mg(又はAl)」が、本件発明1における「燃焼して、前記塩素酸カリウムと共に前記カリウム塩を分解して、カリウムラジカルを含むエアロゾルを発生させる成分(A成分)」(以下、単に「A成分」ということがある。)に相当するか否かについて検討すると、本件特許明細書の段落【0018】~【0019】(下記2(2)ウ)には、「A成分」である燃料は、B成分である塩素酸塩と共に燃焼により熱エネルギーを発生させて、C成分のカリウム塩に由来するエアロゾル(カリウムラジカル)を発生させるための成分であり、前記「A成分」の燃料としてアルミニウムやマグネシウムが挙げられることが記載されている。 ところが、甲1発明は、そもそも、本件発明1において特定されるC成分である「酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三カリウム、フタル酸水素カリウム、シュウ酸カリウム及び重炭酸カリウムからなる群から選択される一つ又は複数のカリウム塩」(以下、単に「カリウム塩」ということがある。)に相当する成分を含まないし、甲1発明における「Mg(又はAl)」は、「温度及び燃焼速度を高める」ものにすぎず、「燃焼して、前記塩素酸カリウムと共に前記「カリウム塩」を分解して、カリウムラジカルを含むエアロゾルを発生させる成分」とはいえないから、甲1発明における「Mg(又はAl)」が、本件発明1における「A成分」に相当するとはいえない。 申立人は、特許異議申立書において、甲1発明における「Mg(又はAl)」は、本件発明1における「A成分」の具体例として前記段落【0019】に挙げられるアルミニウムやマグネシウムであるから、本件発明1における「A成分」に相当する旨を主張しているが(21ページ3行~8行)、甲1発明における「Mg(又はAl)」は、「燃焼して、前記塩素酸カリウムと共に前記カリウム塩を分解して、カリウムラジカルを含むエアロゾルを発生させる成分」とはいえないことは前記のとおりであって、本件発明1における「A成分」とは機能が異なるから、単に材料が合致しているだけで、甲1発明における「Mg(又はAl)」が本件発明1における「A成分」に相当するとはいえないので、前記主張は採用できない。 b 前記aによれば、本件発明1と甲1発明とは、 「塩素酸カリウムを少なくとも含んでなる、自己消火性成形品。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1:「自己消火性成形品」について、本件発明1は、「酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三カリウム、フタル酸水素カリウム、シュウ酸カリウム及び重炭酸カリウムからなる群から選択される一つ又は複数のカリウム塩と、燃焼して、前記塩素酸カリウムと共に前記カリウム塩を分解して、カリウムラジカルを含むエアロゾルを発生させる成分(A成分)と」を「少なくとも含」む、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、前記発明特定事項を有しない点。 ・相違点2:「自己消火性成形品」について、本件発明1は、「前記塩素酸カリウムと前記A成分とを、その合計量に対し、それぞれ80~50質量%及び20~50質量%の割合で含み、かつ前記塩素酸カリウム及び前記A成分の合計量100質量部に対して、前記カリウム塩を6~1000質量部の割合で含んでなる」、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、前記発明特定事項を有しない点。 ・相違点3:「自己消火性成形品」について、本件発明1は、「自動車の部品に貼付して使用されるシート状」、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、「固体、粒状、粉末又はゲル状の前記SFCが、典型的には金属で作られた適切なサイズ及び形状であり所望される長さを有する枠内に詰められ、又は形作られ、点火装置が使用されてSFCを活性化し、点火装置ケーブルを介して、火炎又は熱検出器、適当な手動又は自動の活性化メカニズムのようなものに接続されてもよいものであり、活性化の際、SFCは反応して、スロットを設けられた枠の開きを通して均一的に放出されるエーロゾルの壁を形成するものであり、ユニットを2つ又はそれ以上、端と端で接続して何らかの適切な長さを有する装置を形成し、部屋又はその他の構内の廊下又は壁に沿って設置可能である」ものである点。 なお、前記相違点1の認定について検討しておくと、本件特許明細書の前記段落【0018】の記載によれば、「A成分」である燃料は、B成分である塩素酸塩と共に燃焼により熱エネルギーを発生させて、C成分の「カリウム塩」に由来するエアロゾル(カリウムラジカル)を発生させるための成分であるから、本件発明1における「カリウム塩」(C成分)及び「A成分」は、前記「カリウム塩」に由来するエアロゾル(カリウムラジカル)を発生させるための一体不可分の成分といえるので、これらの成分の含有の有無は、一体の相違点として検討するのが妥当である。 したがって、本件発明1と甲1発明の「カリウム塩」と「A成分」に係る相違点を、前記相違点1のとおりに認定する。 c 始めに、前記bの相違点1の容易想到性について検討すると、甲1発明は、「SFC」を、例えば「塩素酸カリウム 37-45wt%、硝酸カリウム 37-45wt%、エポキシ樹脂 16-19wt%、Mg(又はAl) 1-3 wt%を有する組成」とすることで、生まれるエーロゾルの消火能力が周知の技術と比較して大幅に増大するものであり、その理由は、前記エーロゾルが典型的には1ミクロンのオーダという非常に小さなサイズの粒子から作られ、したがって体積に対する表面積の比率が今まで周知であったものよりも非常に大きいからである。 そして、そのような甲1発明を、「酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三カリウム、フタル酸水素カリウム、シュウ酸カリウム及び重炭酸カリウムからなる群から選択される一つ又は複数のカリウム塩と、燃焼して、前記塩素酸カリウムと共に前記カリウム塩を分解して、カリウムラジカルを含むエアロゾルを発生させる成分(A成分)と」を含むものとしたときにも、生まれるエーロゾルが典型的には1ミクロンのオーダという非常に小さなサイズの粒子から作られ、したがって体積に対する表面積の比率が今まで周知であったものよりも非常に大きくなって、その消火能力が周知の技術と比較して大幅に増大するか否かは明らかでないから、あえてそうする動機付けは存在しない。 更に、甲第1号証及び摘記を省略した甲第3、6、7号証には、「自己消火性成形品」を、「酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三カリウム、フタル酸水素カリウム、シュウ酸カリウム及び重炭酸カリウムからなる群から選択される一つ又は複数のカリウム塩と、燃焼して、前記塩素酸カリウムと共に前記カリウム塩を分解して、カリウムラジカルを含むエアロゾルを発生させる成分(A成分)と」を含むものとすることは記載も示唆もされていないから、甲1発明を、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、甲第1、3号証に記載された事項及び原出願の優先日当時の技術常識(甲第6~7号証を引用)に基づいて、当業者が容易になし得ることではない。 d したがって、前記bのそのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲第1、3号証に記載された事項及び原出願の優先日当時の技術常識(甲第6~7号証を引用)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ) 本件発明2について a 前記(ア)aと同様にして本件発明2と甲1発明とを対比すると、本件発明2と甲1発明とは、 「塩素酸カリウムを少なくとも含んでなる、自己消火性成形品。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1’:「自己消火性成形品」について、本件発明2は、「酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三カリウム、フタル酸水素カリウム、シュウ酸カリウム及び重炭酸カリウムからなる群から選択される一つ又は複数のカリウム塩と、燃焼して、前記塩素酸カリウムと共に前記カリウム塩を分解して、カリウムラジカルを含むエアロゾルを発生させる成分(A成分)と」を「少なくとも含」む、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、前記発明特定事項を有しない点。 ・相違点2’:「自己消火性成形品」について、本件発明2は、「前記塩素酸カリウムと前記A成分とを、その合計量に対し、それぞれ80~50質量%及び20~50質量%の割合で含み、かつ前記塩素酸カリウム及び前記A成分の合計量100質量部に対して、前記カリウム塩を6~1000質量部の割合で含んでなる」、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、前記発明特定事項を有しない点。 ・相違点3’:「自己消火性成形品」について、本件発明2は、「建物の火災の発生の可能性ある部材に貼付して使用されるシート状」、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、「固体、粒状、粉末又はゲル状の前記SFCが、典型的には金属で作られた適切なサイズ及び形状であり所望される長さを有する枠内に詰められ、又は形作られ、点火装置が使用されてSFCを活性化し、点火装置ケーブルを介して、火炎又は熱検出器、適当な手動又は自動の活性化メカニズムのようなものに接続されてもよいものであり、活性化の際、SFCは反応して、スロットを設けられた枠の開きを通して均一的に放出されるエーロゾルの壁を形成するものであり、ユニットを2つ又はそれ以上、端と端で接続して何らかの適切な長さを有する装置を形成し、部屋又はその他の構内の廊下又は壁に沿って設置可能である」ものである点。 b そして、前記aの相違点1’は、前記(ア)bの相違点1と同じものであるから、同cに記載されたのと同様の理由により、甲第1、3号証に記載された事項及び原出願の優先日当時の技術常識(甲第6~7号証を引用)に基づいて、当業者が容易になし得ることではない。 c したがって、前記aのそのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明、甲第1、3号証に記載された事項及び原出願の優先日当時の技術常識(甲第6~7号証を引用)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ) 小括 よって、本件発明1~2は、甲第1号証に記載された発明、甲第1、3号証に記載された事項及び原出願の優先日当時の技術常識(甲第6~7号証を引用)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 甲第2号証を主引用例とした場合について (ア) 本件発明1について a 本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「消火剤組成物」は、「重炭酸カリウム、塩素酸カリウム、微結晶性活性炭、金属マグネシウムと結合材よりなる」ものであり、「特定容積火災、例えば、種々の機械室、ケーブル配設管、地下室、石油製品や液化天然ガスの貯蔵タンク、可燃性物質を取り扱うポンプ室、自動車、航空機、船舶、機関車、装甲車、艦艇などの各種輸送手段での火災に対して有効に作用する」ものであって、「重炭酸カリウムは、反応により発生する熱を吸収して、発生したスモークスクリーンの温度を低下させる作用を示し、また、無毒で、消火に有効なスモークスクリーンを生成し、空気との接触を遮断させる」ものであり、「塩素酸カリウムは、以下に述べる還元剤としての活性炭を酸化して、無毒なスモークスクリーンを生成させる作用を有」するものであり、更に、「所望の形状に成形」して「製造」されるものであるから、本件発明1における「塩素酸カリウムと、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三カリウム、フタル酸水素カリウム、シュウ酸カリウム及び重炭酸カリウムからなる群から選択される一つ又は複数のカリウム塩」「を少なくとも含んでな」る、「自己消火性成形品」に相当する。 ここで、甲2発明における「金属マグネシウム」が、本件発明1における「燃焼して、前記塩素酸カリウムと共に前記カリウム塩を分解して、カリウムラジカルを含むエアロゾルを発生させる成分(A成分)」に相当するか否かについて検討すると、本件特許明細書には、「A成分」である燃料は、B成分である塩素酸塩と共に燃焼により熱エネルギーを発生させて、C成分の「カリウム塩」に由来するエアロゾル(カリウムラジカル)を発生させるための成分であり、前記「A成分」の燃料としてアルミニウムやマグネシウムが挙げられることが記載されていることは、前記ア(ア)aに記載したとおりである。 一方、甲2発明においては、「重炭酸カリウムは、反応により発生する熱を吸収して、発生したスモークスクリーンの温度を低下させる作用を示し、また、無毒で、消火に有効なスモークスクリーンを生成し、空気との接触を遮断させる」ものであり、「塩素酸カリウムは、以下に述べる還元剤としての活性炭を酸化して、無毒なスモークスクリーンを生成させる作用を有」するものであり、「微結晶性活性炭は、還元剤であり、前記塩素酸カリウムと反応して、無毒なスモークスクリーンを生成する役割を有」するものであり、「マグネシウム粉末は、塩素酸カリウムの還元剤としての作用を発揮すると共に、反応を促進させ、温度を上昇させるための高エネルギー物質として使用され」るものである。 これらのことからみれば、甲2発明における「金属マグネシウム」は、「塩素酸カリウムの還元剤としての作用を発揮すると共に、反応を促進させ、温度を上昇させるための高エネルギー物質として使用され」るものであって、「燃焼して、前記塩素酸カリウムと共に前記カリウム塩を分解して、カリウムラジカルを含むエアロゾルを発生させる成分」とはいえないから、本件発明1における「A成分」に相当するとはいえない。 申立人は、特許異議申立書において、甲2発明における「金属マグネシウム」は、本件発明1における「A成分」の具体例として段落【0019】に挙げられるマグネシウムであるから、本件発明1における「A成分」に相当する旨を主張しているが(27ページ下から6行~最終行)、甲2発明における「金属マグネシウム」は、「燃焼して、前記塩素酸カリウムと共に前記カリウム塩を分解して、カリウムラジカルを含むエアロゾルを発生させる成分」とはいえないことは前記のとおりであって、本件発明1における「A成分」とは機能が異なるから、単に材料が合致しているだけで、甲2発明における「金属マグネシウム」が本件発明1における「A成分」に相当するとはいえないので、前記主張は採用できない。 b 前記aによれば、本件発明1と甲2発明とは、 「塩素酸カリウムと、 酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三カリウム、フタル酸水素カリウム、シュウ酸カリウム及び重炭酸カリウムからなる群から選択される一つ又は複数のカリウム塩と、 を少なくとも含んでなる、自己消火性成形品。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点4:「自己消火性成形品」について、本件発明1は、「燃焼して、前記塩素酸カリウムと共に前記カリウム塩を分解して、カリウムラジカルを含むエアロゾルを発生させる成分(A成分)」を「少なくとも含」む、との発明特定事項を有するのに対して、甲2発明は、前記発明特定事項を有しない点。 ・相違点5:「自己消火性成形品」について、本件発明1は、「前記塩素酸カリウムと前記A成分とを、その合計量に対し、それぞれ80~50質量%及び20~50質量%の割合で含み、かつ前記塩素酸カリウム及び前記A成分の合計量100質量部に対して、前記カリウム塩を6~1000質量部の割合で含んでなる」、との発明特定事項を有するのに対して、甲2発明は、前記発明特定事項を有しない点。 ・相違点6:「自己消火性成形品」について、本件発明1は、「自動車の部品に貼付して使用されるシート状」、との発明特定事項を有するのに対して、甲2発明は、「前記消火剤組成物を消火器に使用するに際しては、所望の形状、例えば、円柱状に成形された消火剤組成物を使用環境、消火器の作動方法、等の因子を考慮して、適当な容器に収納すればよいものであり、消火器として作動させる方法には、電気的な方法、機械的な方法が挙げられ、作動は、煙、熱、等の火災の発生を示唆する要素が検知可能な検知センサと電気的な方法や機械的な方法と組み合わせられた作動システムを内蔵した、いわゆる内蔵型と、前記の作動システムをシステム化したものの二通りがあるが、使用条件等に応じて、より適切な方法を選択すればよい」ものである点。 c 始めに、前記bの相違点4の容易想到性について検討すると、甲2発明においては、「重炭酸カリウム」により、「反応により発生する熱を吸収して、発生したスモークスクリーンの温度を低下させ」、「また、無毒で、消火に有効なスモークスクリーンを生成し、空気との接触を遮断させる」ものであり、「塩素酸カリウム」により、「還元剤としての活性炭を酸化して、無毒なスモークスクリーンを生成させる」ものであり、「微結晶性活性炭は、還元剤であり、前記塩素酸カリウムと反応して、無毒なスモークスクリーンを生成する」ものであり、そうすることで、「有害物質を発生せず、人体や環境にも実質的に悪影響及ぼさず、家具や調度品等を汚染することもなく、かつ、消火性能の高い消火剤組成物、同組成物を使用した消火器、及び同消火器を利用した消火方法を提供する」という「目的」を達成するものである。 そして、そのような甲2発明を、「燃焼して、前記塩素酸カリウムと共に前記カリウム塩を分解して、カリウムラジカルを含むエアロゾルを発生させる成分(A成分)」を含むものとしたときにも、「無毒なスモークスクリーンを生成する」ことで、「有害物質を発生せず、人体や環境にも実質的に悪影響及ぼさず、家具や調度品等を汚染することもなく、かつ、消火性能の高い消火剤組成物、同組成物を使用した消火器、及び同消火器を利用した消火方法を提供する」ことができるか否かは明らかでないから、あえてそうする動機付けは存在しない。 更に、摘記を省略した甲第4~5号証には、「自己消火性成形品」を、「燃焼して、前記塩素酸カリウムと共に前記カリウム塩を分解して、カリウムラジカルを含むエアロゾルを発生させる成分(A成分)」を含むものとすることは記載も示唆もされていないから、甲2発明を、前記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、原出願の優先日当時の技術常識(甲第4~5号証を引用)に基づいて、当業者が容易になし得ることではない。 d したがって、前記bのそのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び原出願の優先日当時の技術常識(甲第4~5号証を引用)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ) 本件発明2について a 前記(ア)aと同様にして本件発明2と甲2発明とを対比すると、本件発明2と甲2発明とは、 「塩素酸カリウムと、 酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三カリウム、フタル酸水素カリウム、シュウ酸カリウム及び重炭酸カリウムからなる群から選択される一つ又は複数のカリウム塩と、 を少なくとも含んでなる、自己消火性成形品。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点4’:「自己消火性成形品」について、本件発明2は、「燃焼して、前記塩素酸カリウムと共に前記カリウム塩を分解して、カリウムラジカルを含むエアロゾルを発生させる成分(A成分)」を「少なくとも含」む、との発明特定事項を有するのに対して、甲2発明は、前記発明特定事項を有しない点。 ・相違点5’:「自己消火性成形品」について、本件発明2は、「前記塩素酸カリウムと前記A成分とを、その合計量に対し、それぞれ80~50質量%及び20~50質量%の割合で含み、かつ前記塩素酸カリウム及び前記A成分の合計量100質量部に対して、前記カリウム塩を6~1000質量部の割合で含んでなる」、との発明特定事項を有するのに対して、甲2発明は、前記発明特定事項を有しない点。 ・相違点6’:「自己消火性成形品」について、本件発明2は、「建物の火災の発生の可能性ある部材に貼付して使用されるシート状」、との発明特定事項を有するのに対して、甲2発明は、「前記消火剤組成物を消火器に使用するに際しては、所望の形状、例えば、円柱状に成形された消火剤組成物を使用環境、消火器の作動方法、等の因子を考慮して、適当な容器に収納すればよいものであり、消火器として作動させる方法には、電気的な方法、機械的な方法が挙げられ、作動は、煙、熱、等の火災の発生を示唆する要素が検知可能な検知センサと電気的な方法や機械的な方法と組み合わせられた作動システムを内蔵した、いわゆる内蔵型と、前記の作動システムをシステム化したものの二通りがあるが、使用条件等に応じて、より適切な方法を選択すればよい」ものである点。 b そして、前記aの相違点4’は、前記(ア)bの相違点4と同じものであるから、同cに記載されたのと同様の理由により、原出願の優先日当時の技術常識(甲第4~5号証を引用)に基づいて、当業者が容易になし得ることではない。 c したがって、前記aのそのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明及び原出願の優先日当時の技術常識(甲第4~5号証を引用)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ) 小括 よって、本件発明1~2は、甲第2号証に記載された発明及び原出願の優先日当時の技術常識(甲第4~5号証を引用)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1~2は、甲第1号証に記載された発明、甲第1、3号証に記載された事項及び原出願の優先日当時の技術常識(甲第6~7号証を引用)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないし、甲第2号証に記載された発明及び原出願の優先日当時の技術常識(甲第4~5号証を引用)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、前記第3の1の特許異議申立理由はいずれも理由がない。 2 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について (1) サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。以下、この観点に立って検討する。 (2) 本件特許明細書の記載事項 本件特許明細書には、以下のア~ウの記載がある。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、燃焼によりエアロゾルを発生して火災を消火抑制する消火剤組成物を含むこと、を特徴とする自己消火性成形品に関する。 【背景技術】 【0002】 一般的な消火器や消火装置等には、ガス圧や電気回路を用いた着火方式等によって消火薬剤や消火ガスを噴出・拡散させるものが多く、例えば、作動させるための部品、消火薬剤や消火ガスを噴出・拡散させるための部品、着火させるための電気回路等の部品、温度や炎の感知器等、種々の部品を用いる必要がある。 【0003】 そのため、構造上、装置が消火器や消火装置が嵩張ってしまったり、その構造やシステムを設計したりする必要があり、また、各部品の管理や製造工程が煩雑になり、コスト面での負担も大きい。 【0004】 他方、例えば自動車や家等の建物等には、常に火災に対する安全対策が求められており、上記のような消火器や消火装置等を載置しておいたり、例えば不燃性材料や難燃性材料を構成部材に採用したりすることが行なわれているが(例えば特許文献1)、そのような安全対策では、消火器や消火装置等の載置場所が必要であったり、燃えにくい材料といっても不十分と言わざるを得ないのが現状である。 ・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 そこで、本発明は、消火器や消火装置等を使用せずとも自己消火機能を発動することができ火災に対する安全対策が可能な自己消火性成形品を提供することを目的とする。」 イ「【課題を解決するための手段】 【0007】 しかるに、本発明者らは、別途特許出願している「従来の粉末系の消火剤を使用した場合と比べて、消火器や消火装置等をよりコンパクトで軽量にすることができる消火剤組成物」を有効に使用できないか鋭意検討及び実験を繰り返した結果、これを用いて自動車の部品や建物を構成する部材に自己消火機能を持たせれば、上記目的を達成するために有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0008】 即ち、本発明は、燃焼によりエアロゾルを発生して火災を消火抑制する消火剤組成物を含むこと、を特徴とする自己消火性成形品を提供するものである。このような構成を有する本発明の自己消火性成形品は、火災発生時に火災の熱エネルギーを用いて消火機能を有する化学種を発生させることにより自己消火機能を発動することができ、火消火器や消火装置等を使用せずとも火災に対する安全対策が可能である。」 ウ 「【0015】 ≪第一実施形態≫ 図1は、本発明の自己消火性成形品の一実施形態を示す模式図である。本実施形態における自己消火性成形品1はシート状であり、自動車のパネルや建物の壁等の被貼付物2に貼付して使用することができるものである。 【0016】 この自己消火性成形品1は、消火剤組成物にバインダー及びその他の成分を混合し、得られる混合物を成形機等を用いる従来公知の方法でシート状に成形することによって作製することが可能である。以下、この消火剤組成物、バインダー及びその他の成分について説明する。 【0017】 (1)消火剤組成物 消火剤組成物は、燃料(A成分)20~50質量%及び塩素酸塩(B成分)80~50質量%を含有し、更に前記燃料及び前記塩素酸塩の合計量100質量部に対して、6~1000質量部のカリウム塩(C成分)を含有し、熱分解開始温度が90℃超~260℃の範囲であること、を特徴とする。 【0018】 A成分である燃料は、B成分である塩素酸塩と共に燃焼により熱エネルギーを発生させて、C成分のカリウム塩に由来するエアロゾル(カリウムラジカル)を発生させるための成分である。 【0019】 かかるA成分の燃料としては、例えば、ジシアンジアミド、ニトログアニジン、硝酸グアニジン、尿素、メラミン、メラミンシアヌレート、アビセル、グアガム、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボキシルメチルセルロースカリウム、カルボキシルメチルセルロースアンモニウム、ニトロセルロース、アルミニウム、ホウ素、マグネシウム、マグナリウム、ジルコニウム、チタン、水素化チタン、タングステン及びケイ素のうちの少なくとも1種から選ばれるものが好ましい。なかでも、エアロゾルを発生させて消火するという本発明の効果をより確実に得られるという観点から、カルボキシルメチルセルロースナトリウムが特に好ましい。 【0020】 B成分の塩素酸塩は強力な酸化剤であり、A成分の燃料と共に燃焼により熱エネルギーを発生させ、C成分のカリウム塩に由来するエアロゾル(カリウムラジカル)を発生させるための成分である。 【0021】 かかるB成分の塩素酸塩としては、例えば塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸ストロンチウム、塩素酸アンモニウム及び塩素酸マグネシウムのうちの少なくとも1種から選ばれるものが好ましい。なかでも、本発明の効果をより確実に得られるという観点から、塩素酸カリウムが特に好ましい。 【0022】 ここで、A成分の燃料とB成分の塩素酸塩の合計100質量%中の含有割合は、以下のとおりである。 A成分:20~50質量% 好ましくは25~40質量% より好ましくは25~35質量% B成分:80~50質量% 好ましくは75~60質量% より好ましくは75~65質量% 【0023】 次に、C成分のカリウム塩は、A成分とB成分の燃焼により生じた熱エネルギーによりエアロゾル(カリウムラジカル)を発生させるための成分である。 【0024】 かかるC成分のカリウム塩としては、例えば酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三水素一カリウム、エチレンジアミン四酢酸二水素二カリウム、エチレンジアミン四酢酸一水素三カリウム、エチレンジアミン四酢酸四カリウム、フタル酸水素カリウム、フタル酸二カリウム、シュウ酸水素カリウム、シュウ酸二カリウム及び重炭酸カリウムのうちの少なくとも1種から選ばれるものが好ましい。なかでも、本発明の効果をより確実に得られるという観点から、酢酸カリウム又はクエン酸三カリウムが特に好ましい。 【0025】 C成分の含有割合は、A成分とB成分の合計量100質量部に対して、6~1000質量部であるのが好ましく、より好ましくは10~900質量部、特に好ましくは10~100質量部である。」 (3) サポート要件についての判断 ア 前記(2)アの記載によれば、本件発明は、燃焼によりエアロゾルを発生して火災を消火抑制する消火剤組成物を含むことを特徴とする「自己消火性成形品」に関するものであって、従来、一般的な消火器や消火装置等には、ガス圧や電気回路を用いた着火方式等によって消火薬剤や消火ガスを噴出・拡散させるものが多く、例えば、作動させるための部品、消火薬剤や消火ガスを噴出・拡散させるための部品、着火させるための電気回路等の部品、温度や炎の感知器等、種々の部品を用いる必要があるため、構造上、装置が消火器や消火装置が嵩張ってしまったり、その構造やシステムを設計したりする必要があり、また、各部品の管理や製造工程が煩雑になり、コスト面での負担も大きい、といった課題(以下、「本件課題」という。)があったことから、本件発明は、消火器や消火装置等を使用せずとも自己消火機能を発動することができ、火災に対する安全対策が可能な「自己消火性成形品」を提供することを目的とするものである。 イ そして、前記(2)イの記載によれば、本件発明は、燃焼によりエアロゾルを発生して火災を消火抑制する消火剤組成物を含むことを特徴とする「自己消火性成形品」を提供するものであり、このような構成を有する「自己消火性成形品」は、火災発生時に火災の熱エネルギーを用いて消火機能を有する化学種を発生させることにより自己消火機能を発動することができ、消火器や消火装置等を使用せずとも火災に対する安全対策が可能であるものである。 具体的には、前記(2)ウの記載によれば、本件発明に係る「自己消火性成形品」はシート状であり、自動車のパネルや建物の壁等の被貼付物に貼付して使用することができるものであって、前記「自己消火性成形品」は、消火剤組成物にバインダー及びその他の成分を混合し、得られる混合物を成形機等を用いる従来公知の方法でシート状に成形することによって作製することが可能であり、消火剤組成物は、燃料(A成分)20~50質量%及び塩素酸塩(B成分)80~50質量%を含有し、更に前記燃料及び前記塩素酸塩の合計量100質量部に対して、6~1000質量部の「カリウム塩」(C成分)を含有し、熱分解開始温度が90℃超~260℃の範囲であるものである。 ここで、「A成分」である燃料は、B成分である塩素酸塩と共に燃焼により熱エネルギーを発生させて、C成分の「カリウム塩」に由来するエアロゾル(カリウムラジカル)を発生させるための成分であり、「A成分」の燃料としては、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、アルミニウム、マグネシウム等が挙げられ、エアロゾルを発生させて消火するという効果をより確実に得られるという観点から、カルボキシルメチルセルロースナトリウムが特に好ましいものであり、B成分の塩素酸塩は強力な酸化剤であり、「A成分」の燃料と共に燃焼により熱エネルギーを発生させ、C成分の「カリウム塩」に由来するエアロゾル(カリウムラジカル)を発生させるための成分であり、B成分の塩素酸塩としては、塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム等が挙げられ、効果をより確実に得られるという観点から、塩素酸カリウムが特に好ましいものであり、「A成分」の燃料とB成分の塩素酸塩の合計100質量%中の含有割合は、「A成分」:20~50質量%、B成分:80~50質量%であるものである。 更に、C成分の「カリウム塩」は、「A成分」とB成分の燃焼により生じた熱エネルギーによりエアロゾル(カリウムラジカル)を発生させるための成分であり、C成分の「カリウム塩」としては、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸一水素三カリウム、フタル酸水素カリウム、シュウ酸水素カリウム及び重炭酸カリウム等が挙げられ、効果をより確実に得られるという観点から、酢酸カリウム又はクエン酸三カリウムが特に好ましいものであり、C成分の含有割合は、「A成分」とB成分の合計量100質量部に対して、6~1000質量部であるのが好ましいものである。 ウ 前記ア及びイによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、燃料(A成分)20~50質量%及び塩素酸塩(B成分)80~50質量%を含有し、更に前記燃料及び前記塩素酸塩の合計量100質量部に対して、6~1000質量部の「カリウム塩」(C成分)を含有する消火剤組成物であって、「A成分」である燃料は、B成分である塩素酸塩と共に燃焼により熱エネルギーを発生させて、C成分の「カリウム塩」に由来するエアロゾル(カリウムラジカル)を発生させるための成分であり、B成分の塩素酸塩として、塩素酸カリウムが挙げられ、C成分の「カリウム塩」として、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸一水素三カリウム、フタル酸水素カリウム、シュウ酸水素カリウム及び重炭酸カリウム等が挙げられる消化剤組成物を、シート状に成形することによって「自己消火性成形品」を作製し、当該「自己消火性成形品」を自動車のパネルや建物の壁等の被貼付物に貼付して使用することで、火災発生時に火災の熱エネルギーを用いて消火機能を有する化学種を発生させることにより自己消火機能を発動することができ、消火器や消火装置等を使用せずとも火災に対する安全対策が可能となって、本件課題を解決できることを理解できる。 そして、本件発明1に係る「自己消火性成形品」の発明特定事項は、本件特許明細書に記載された本件課題を解決できる「自己消火性成形品」の構成を満たすから、当業者は、本件発明1が、発明の詳細な説明に記載された発明で、本件課題を解決できると認識できる範囲のものであることを理解できるのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載はサポート要件に適合する。 更に、本件発明2について検討しても事情は同じである。 (4) 申立人の主張について ア 申立人の前記第3の2の主張は、要するに、本件課題を解決できることが裏付けられている「A成分」は、実施例1~13のCMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)だけであり、そのほかの「A成分」により本件課題を解決できるとはいえないから、発明の詳細な説明の記載を、「A成分」がCMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)に特定されていない本件発明1にまで拡張ないし一般化することはできない、というものである。 イ ところが、前記(3)ウに記載したのと同様の理由により、当業者は、「A成分」がCMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)以外のものであっても、B成分である塩素酸塩と共に燃焼により熱エネルギーを発生させて、C成分の「カリウム塩」に由来するエアロゾル(カリウムラジカル)を発生させる成分であれば、火災発生時に火災の熱エネルギーを用いて消火機能を有する化学種を発生させることにより自己消火機能を発動することができ、消火器や消火装置等を使用せずとも火災に対する安全対策が可能となって、本件課題を解決できることを理解できるのであり、実施例1~13は、「A成分」として、特に好ましいとされるカルボキシルメチルセルロースナトリウムを用いたにすぎない。 そうすると、実施例1~13で挙げられた「A成分」がカルボキシルメチルセルロースナトリウムだけであるとしても、当業者は、「燃焼して、前記塩素酸カリウムと共に前記カリウム塩を分解して、カリウムラジカルを含むエアロゾルを発生させる成分」との発明特定事項を有する「A成分」により本件課題を解決することができることを理解できるから、発明の詳細な説明の記載を、本件発明1にまで拡張ないし一般化することができないということはできない。 そして、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合することは前記(3)ウに記載したとおりであるから、申立人の前記第3の2の主張は採用できない。 (5) 小括 よって、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号所定の規定(サポート要件)に適合するから、前記第3の2の特許異議申立理由は理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、申立人の特許異議申立書に記載した特許異議の申立て理由によっては、本件発明1~2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700241

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