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特許異議申立

2025-700139

米由来甘味料、米由来甘味料を含む食品及び製造方法

審判番号
2025-700139
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-538611
登録番号
7526505
請求日
2025年01月31日
審決日
2025年06月04日
公報発行日
2025年07月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】マルコメ株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
  • 【異議申立人】植田 倫正
審判長/審判官
  • 審判長 植前 充司
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 松本 陶子
分類
P1651.121-Y (A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7526505号発明「米由来甘味料、米由来甘味料を含む食品及び製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7526505号の請求項1~10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7526505号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)5月27日(優先権主張 令和2年7月21日)を国際出願日とする出願であって、令和6年7月24日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年8月1日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和7年1月31日に特許異議申立人 植田 倫正(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 米由来甘味料であって、 米由来成分と、 グルコースと、 パノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオースの内の少なくとも1種と、 を含み、 前記パノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオースの内の少なくとも1種は、(A)パノース及びイソマルトトリオースの組合せ、又は(B)パノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオースの組合せであり、 前記米由来甘味料の総質量に対する前記グルコースの含有量が、4.0質量%以上、47.2質量%未満であり、且つ 前記米由来甘味料の総質量に対する前記パノース、前記マルトトリオース及び前記イソマルトトリオースの合計含有量が、1.96質量%を超えて、16.00質量%以下であることを特徴とする、米由来甘味料。 【請求項2】 前記米由来甘味料の総質量に対する前記グルコースの含有量が、4.0質量%以上、45.00質量%以下であり、且つ 前記米由来甘味料の総質量に対する前記パノース、前記マルトトリオース及び前記イソマルトトリオースの合計含有量が、2.00質量%以上、15.50質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の米由来甘味料。 【請求項3】 イソマルトースをさらに含み、 前記米由来甘味料の総質量に対する前記イソマルトース、前記パノース及び前記イソマルトトリオースの合計含有量が、0.4質量%以上、23.00質量%以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の米由来甘味料。 【請求項4】 Brixが70%以上、80%以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の米由来甘味料。 【請求項5】 水分活性が0.60以上、0.85以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の米由来甘味料。 【請求項6】 請求項1から5のいずれか1項に記載の米由来甘味料を含むことを特徴とする、食品。 【請求項7】 請求項1に記載の米由来甘味料の製造方法であって、 米、水及び酵素剤を含む糖化原料を糖化する糖化工程と、 前記糖化工程で得られた糖化物を固液分離して、糖化液を得る固液分離工程と、 前記糖化液を濃縮する濃縮工程と、を含むことを特徴とする、製造方法。 【請求項8】 前記糖化原料は、米糀を、当該糖化原料の総質量100質量%に対して2質量%以上、14質量%未満含むことを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。 【請求項9】 前記糖化工程は、 米、水及び酵素剤を含む第1糖化原料を糖化する第1糖化工程と、 前記第1糖化工程で得られた第1糖化物及び米糀を含む第2糖化原料を糖化する第2糖化工程と、を含むことを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。 【請求項10】 前記第2糖化原料は、前記米糀を、当該第2糖化原料の総質量100質量%に対して、2質量%以上、20質量%以下含むことを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。」 第3 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の概要 令和7年1月31日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立理由の概要は次のとおりである。 申立理由(甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1~10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 証拠方法 ・甲第1号証:特許第5887605号公報 ・甲第2号証:特開平8-19390号公報 ・甲第3号証:米麹を使った新たな甘味料の簡易製造法、新潟県農業総合研究所食品研究センター園芸特産食品科、新潟県農林水産業研究成果集(平成26年度)、No.23、更新日2020年4月28日、インターネット、<URL:https://www.pref.niigata.lg.jp/site/nosoken-seika/seika-h26.html> なお、証拠の表記は、特許異議申立書及び証拠説明書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 第4 当審の判断 当審は以下に述べるように、申立理由によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 1 申立理由(甲1に基づく進歩性)について (1)甲1の記載事項等 ア 甲1の記載事項 甲1には、「みりん類、みりん類の製造方法」に関し、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【0001】 本発明は、料理や加工食品に加えた際に、既存のみりん類では感じることが出来ない甘味を与える調理効果の高いみりん類、具体的には、マルトース含量が50g/kg以上320g/kg以下のみりん類およびその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 一般的には、糯米を蒸した蒸米と米麹とアルコールを混和してみりん醪を仕込む。 仕込まれたみりん醪は、(a)醪前期では、米麹の酵素で原料米や米麹が分解されて糖類やアミノ酸等を生成し、(b)醪中期では、酵素反応とアミノカルボニル反応やエステル化などの非酵素反応が並行的に進行し、(c)醪後期では、酵素分解によって生成された物質自体の変化や生成物同士の反応によってみりん特有の風味を形成し、40日~60日間で糖化・熟成させる。 熟成させたみりん醪は、圧搾、滓下げ、濾過、火入れの精製工程を経てみりんとなる。」 ・「【0004】 非特許文献1記載の一般的なみりんの糖組成を表1に示す。一般的なみりんのエキス分は、約46%kg/lであり、その内の95%は糖分が占め、糖分の80%以上はグルコースであり、残りの多くはグルコアミラーゼで分解されない分岐オリゴ糖が占める。 【表1】 [図:0001424610000001.jpg] 」 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0019】 本発明は、ツユ等の料理や加工食品に加えた際に、料理や加工食品に既存のみりん類では感じることが出来ない甘味を感じることができる調理効果の高いみりん類を提供する。」 ・「【0023】 以下、本発明を具体的に説明する。 本発明のみりん類とは、純米本みりん及び本みりんをいう。 純米本みりんとは、糖分のすべてが米、米麹に由来するみりん類をいう。 本みりんとは、米、米麹に由来する糖分に加え、酒税法で定めるその他政令で定める物品である水飴等の糖分が加えられたみりん類をいう。」 イ 甲1に記載された発明 上記アの記載のうち、表1に示された一般的なみりんAを中心にまとめると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」、「甲1製法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「表1に示された糖組成からなるみりんAであり、グルコースの糖組成比率(単糖w/全糖w)が87.54であり、パノースの糖組成比率(単糖w/全糖w)が0.86であり、イソマルトトリオースの糖組成比率(単糖w/全糖w)が0.65である、みりん。」(当審注:表1は、上記アを参照。) <甲1製法発明> 「甲1発明の製造方法。」 (2)検討 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1の【0002】等にも記載されているように、一般的なみりんは、糯米を蒸した蒸米と米麹とアルコールを混和して形成される甘味を有した液体調味料であるから、甲1発明の「みりん」は、本件特許発明1の「米由来成分」を含むことを満たすものであるとともに、「米由来甘味料」にも相当する。 さらに、甲1発明は、グルコース、パノース及びイソマルトトリオースを含むものであるから、本件特許発明1の「グルコースと、パノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオースの内の少なくとも1種と、を含み、前記パノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオースの内の少なくとも1種は、(A)パノース及びイソマルトトリオースの組合せ、又は(B)パノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオースの組合せであり、」を満たす。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「米由来甘味料であって、 米由来成分と、 グルコースと、 パノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオースの内の少なくとも1種と、 を含み、 前記パノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオースの内の少なくとも1種は、(A)パノース及びイソマルトトリオースの組合せ、又は(B)パノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオースの組合せである、 米由来甘味料。」 <相違点1> 本件特許発明1には、「前記米由来甘味料の総質量に対する前記グルコースの含有量が、4.0質量%以上、47.2質量%未満であ」ることが特定されているのに対して、甲1発明には、そのような特定がない点。 <相違点2> 本件特許発明1には、「前記米由来甘味料の総質量に対する前記パノース、前記マルトトリオース及び前記イソマルトトリオースの合計含有量が、1.96質量%を超えて、16.00質量%以下であること」が特定されているのに対して、甲1発明には、そのような特定がない点。 事案に鑑みて、相違点2について検討する。 甲1発明における米由来甘味料の総質量に対するパノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオースの合計含有量を計算すると、1.51(=0.86+0+0.65)であり、本件特許発明1における相違点2に係る構成の下限値を下回っている。 そして、甲1及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲1発明における米由来甘味料の総質量に対するパノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオースの合計含有量1.51を、1.96質量%を超えて16.00質量%以下の範囲内となるように調製する動機付けはなく、また、仮に調製することが動機付けられたとしても、本件特許発明1の「結晶化が抑制された米由来甘味料を実現することができる」(【0007】)という効果を予測することはできない。 よって、甲1発明において、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお、特許異議申立人は特許異議申立書において、上記相違点2について、以下のとおりの主張をしている。 ・「甲第2号証の段落0023の表1には、オリゴ糖シロップ「パノリッチ」の糖組成として、「グルコース、マルトトリオース、パノース、イソマルトトリオース」の記載がある。 よって、甲第1号証に記載されたみりん類のオリゴ糖構成に甲第2号証に記載のオリゴ糖シロップのオリゴ糖組成を適用して、本件請求項1に係る発明のオリゴ糖構成のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 また、甲第2号証の段落0023の表1には、「グルコース、マルトトリオース、パノース、イソマルトトリオース」の含有量が、「グルコース23重量%、マルトトリオース3重量%、パノース30重量%、イソマルトトリオース2重量%」と記載されている。 従って、グルコース23重量%のときのパノース+イソマルトトリオースの合計含有量は「30+2=32重量%」、パノース+マルトトリオース+イソマルトトリオースの合計含有量は「30+3+2=35重量%」と算出され、いずれにしても請求項1に係る発明の「1.96質量%を超えて、16.00質量%以下」という数値範囲を超える。 ここで、本件特許においてパノースの含有量が米由来甘味料の結晶化に及ぼす影響について確認する。 本件特許の段落0109には「図2の1023は、各米由来甘味料に含まれているグルコースの含有量及び分析したオリゴ糖(マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、パノース、及びイソマルトトリオース)の総含有量を示している。実施例の米由来廿味料は、比較例の米由来廿味料と比較して、全体的に、分析したオリゴ糖の総含有量が多い傾向がみられた。」と記載されている。 そこで図2の1023を参照し、甲第1号証(当審注:「甲第2号証」の誤記と認められる。)の表1に記載されている「パノリッチ」のグルコース含有量とオリゴ糖の総含有量を当てはめると、グルコース23重量%、オリゴ糖(マルトース17重量%、イソマルトース9重量%、マルトトリオース3重量%、パノース30重量%、及びイソマルトトリオース2重量%)の総含有量61重量%は、「○A:実施例」の範囲内であることが明らかである。比較例は、オリゴ糖の総含有量が低い傾向がみられることから、このことは、パノースの含有量が単独で構成要件Gの数値範囲を超えても米由来甘味料の結晶化抑制において悪影響を及ぼすものではなく、むしろ結晶化の抑制に寄与していると言える。これは図2の1024及び図1においても同様である。 従って、構成要件Gの「1.96質量%を超えて、16.00質量%以下」という数値範囲の上限値については臨界的意義が存在せず、結晶化防止の観点からは、米由来甘味料の総質量に対する前記パノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオースの合計含有量が16.00質量%以上でも、同等の結晶化抑制効果を奏する蓋然性が高いと言える。 してみれば、構成要件Gの構成とするために、甲第2号証に記載された上記の点の構成を甲第1号証に適用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。」(特許異議申立書第16~17頁「(d)相違点についての検討」) 特許異議申立人は上記のとおり主張するものの、甲1発明並びに甲1及び他の証拠を参照しても、上述のとおり、甲1発明のオリゴ糖組成を変更する動機付けはないし、また、甲2に記載された特定のオリゴ糖シロップのオリゴ糖組成を適用する理由もない。また仮に、甲1発明に甲2に記載されたオリゴ糖組成を適用したとしても、本件特許発明1で特定されたオリゴ糖組成の範囲を満たす米由来甘味料とはならないし、その際に本件特許発明1で特定されたオリゴ糖組成の範囲内となるように調製する動機付けもない。そして、甲1発明並びに甲1及び他の証拠を参照しても、本件特許発明1の結晶化を抑制する効果は予測できない。 したがって、甲1発明並びに甲1及び他の証拠を参照しても、甲1発明の糖組成比を変更する動機付けがあるとはいえないし、相違点2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすことによる本件特許発明1の効果も予測することはできないから、上記の特許異議申立人の主張は採用できない。 イ 本件特許発明2~6について 本件特許発明2~5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。 また、本件特許発明1を含む「食品」である本件特許発明6についても同様である。 よって、本件特許発明2~6は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件特許発明7について 本件特許発明7と甲1製法発明を対比すると、少なくとも上記アで指摘した相違点2と同様の点で相違するものである。 そして、上記第アの判断と同様に、甲1製法発明並びに甲1及び他の証拠をみても、甲1製法発明において、相違点2に係る本件特許発明7の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易になし得たとはいえず、また、本件特許発明7における「結晶化が抑制された米由来甘味料を実現することができる」という効果も、甲1及び他の証拠の記載から当業者が予測できるものとはいえない。 したがって、本件特許発明7は、甲1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件特許発明8~10について 本件特許発明8~10は、請求項7を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明7の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明7と同様に判断される。 よって、本件特許発明8~10は、甲1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 他の従来例に着目して甲1発明を認定した場合 上記アでは、甲1発明として表1に示されたみりんAを中心にまとめたものであるが、甲1の表1に示されたみりんB~Dに着目して、甲1発明を認定した場合にも、少なくとも上記アにおける相違点2と同様の相違点を有するものであり、上記ア~エと同様に判断される。 (3)申立理由のまとめ 上記のとおり、本件特許発明1~10は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。 第5 結語 以上のとおり、本件特許発明1~10に係る特許は、上記の特許異議申立理由によって取り消すことはできない。 また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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