特許異議申立
2025-700090
ビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及び、ビールテイスト飲料の香味向上方法
- 審判番号
- 2025-700090
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-048960
- 登録番号
- 7525275
- 請求日
- 2025年01月21日
- 審決日
- 2025年06月25日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】サッポロビール株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
- 【異議申立人】山▲崎▼ 浩一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 淺野 美奈
- 審判官 松本 陶子
- 審判官 柴田 昌弘
- 分類
- P1651.121-Y (C12C) / P1651.536-Y (C12C) / P1651.537-Y (C12C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第2号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7525275号発明「ビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及び、ビールテイスト飲料の香味向上方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7525275号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7525275号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、令和2年3月19日を出願日とする出願であって、令和6年7月22日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和7年1月21日に特許異議申立人 山崎(当審注:「崎」の右上は「立」) 浩一郎(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし5)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、これらをまとめて「本件特許発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
色度が10.0~75.0°EBCであり、波長430nmの吸光度に対する波長560nmの吸光度の比率が0.200以下であるビールテイスト飲料であって、
2,5-ジメチルピラジンと、2,6-ジメチルピラジンと、2,3,5-トリメチルピラジンとの合計含有量が5.0~20.0ppbであり、
前記2,5-ジメチルピラジンの含有量が2ppb以上であり、前記2,6-ジメチルピラジンの含有量が2ppb以上であり、前記2,3,5-トリメチルピラジンの含有量が1ppb以上であるビールテイスト飲料。
【請求項2】
色度が25.0~60.0°EBCである請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
2,5-ジメチルピラジンと、2,6-ジメチルピラジンと、2,3,5-トリメチルピラジンとの合計含有量が5.0~18.0ppbである請求項1又は請求項2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
色度を10.0~75.0°EBCとし、波長430nmの吸光度に対する波長560nmの吸光度の比率を0.200以下とし、2,5-ジメチルピラジンと、2,6-ジメチルピラジンと、2,3,5-トリメチルピラジンとの合計含有量を5.0~20.0ppbとし、前記2,5-ジメチルピラジンの含有量を2ppb以上とし、前記2,6-ジメチルピラジンの含有量を2ppb以上とし、前記2,3,5-トリメチルピラジンの含有量を1ppb以上とする工程を含むビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項5】
色度が10.0~75.0°EBCであり、波長430nmの吸光度に対する波長560nmの吸光度の比率が0.200以下であるビールテイスト飲料の甘味を抑えドリンカブルな飲みごたえとする香味向上方法であって、
前記ビールテイスト飲料の2,5-ジメチルピラジンと、2,6-ジメチルピラジンと、2,3,5-トリメチルピラジンとの合計含有量を5.0~20.0ppbとし、前記2,5-ジメチルピラジンの含有量を2ppb以上とし、前記2,6-ジメチルピラジンの含有量を2ppb以上とし、前記2,3,5-トリメチルピラジンの含有量を1ppb以上とするビールテイスト飲料の香味向上方法。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和7年1月21日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立の理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許発明1、3ないし5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第2号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許発明1ないし5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由3(サポート要件)及び申立理由4(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件及び同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(1)ビールテイスト飲料のアルコール濃度が不明であること
アルコール度数が甘さの感じ方に与える影響は少なくないと一般に考えられている。また、甲5には、アルコール度数が少なくとも7.5v/v%と高いことが知られている、ドッペルホックでのピラジン類の風味特性は、通常のアルコール度数のビールにおけるそれとは異なることが示唆されている。そうすると、アルコール度数が異なるとピラジン類が風味特性に与える影響も変わってくることが当然に推測されるため、甘味についてもアルコール度数が異なると甘味を抑えるために有効なピラジン類の種類やその濃度が当然に変わってくることが推測される。
しかし、本件特許の明細書に記載された実施例は、アルコール度数が5v/v%のもののみであり、他のアルコール度数でも課題を解決できることが本件特許の明細書に裏付けられていない。
(2)ビールテイスト飲料の甘みが不明であること
甲6に記載されているように、ピラジン類は様々な風味を付与し得、本件特許発明が奏する甘味抑制効果は、3種のピラジン類が付与する甘味とは異なる風味により、ビールテイスト飲料がもともと持つ甘味を打ち消すことにより生じるものと考えられる。そして、3種のピラジン類の濃度が高ければ、それらの風味への影響が強すぎるため、所望の甘味抑制効果が得られないばかりか、ビールテイスト飲料の風味が好ましくなくなると考えられる。このことは、本件特許の明細書の表2にも記載されている。してみれば、本件特許発明の効果は、ビールテイスト飲料がもともと有している甘みと、添加されたピラジン類による風味とが、互いに協奏して甘味を抑制しよりすぐれた風味が得られることであると考えられる。
しかし、本件特許の明細書の実施例は、ピルスナータイプの市販のビールをベースとしたことが記載されているものの、その甘味の特性が不明であり、甘みの程度が不明の条件下で3種のピラジン類の含有量における甘味抑制効果を確認したに過ぎないため、あらゆるビールテイスト飲料においても本件特許発明の所望の甘味抑制効果が得られるのかを、本件特許の明細書の記載から当業者は把握できない。
また、任意の甘味を有するビールテイスト飲料に対して、本件特許発明で特定される3種のピラジン類の種類及び含有量の調整をすれば、所望の甘味抑制効果が得られるのかを、発明の詳細な説明の記載から把握することができない。
したがって、本件特許発明により課題を解決できることが明細書に裏付けられていない。また、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
(3)3種のピラジン類の含有量比が不明であること
本件特許発明においては、3種のピラジン類の含有量比が特定されていないが、甲7に記載されているように、ビール中のピラジン類はそれぞれ個性豊かなかつ多様な風味特性をもたらすので、その比率も風味に大きく影響を与えることが推測される。実施例において示されたピラジン類の比率は限られており、その含有比率を特定しない本件特許発明の全範囲に渡って課題を解決できるかは不明である。
また、いかなる比率でピラジン類をビールテイスト飲料に含有させれば、所望の甘味抑制効果が得られるのかを、本件特許の明細書記載から把握できないので、発明の詳細な説明は、本件特許発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
4 証拠方法
甲第1号証:Garrett Oliver, The Oxford Companion to Beer, pp 257- 259, 2012年, Oxford University Press
甲第2号証:Paul S. Hughes et al., Beer: Quality, Safety and Nutritional Aspects, Chapter 3, pp 66, 2001年, Royal Society of Chemistry
甲第3号証:T. H. Shellhammer et al., Assessing Color Quality of Beer, Color Quality of Fresh and Processed Foods, Chapter 15, pp 192- 202, 2008年, American Chemical Society
甲第4号証:D. E. Briggs et al., Brewing Science and Practice., Chapter 19. 3, 2004年, Woodhead Publishing Limited and CRC Press LLC
甲第5号証:Henk Maarse, Volatile Compounds in Foods and Beverages, Chapter 16 Beer, pp 600-605, 1991年, CRC Press
甲第6号証:Morten C. Meilgaard, J. Agric. Food Chem. 1982, 30, 6, 1009-1017, 1982年, American Chemical Society
甲第7号証:R. J. Harding et al., Journal of the Science of Food and Agriculture, 1977, 28, 225-232, 1977年, Society of Chemical Industry
甲第8号証:J. S. Hough, D. E. Briggs et al., Malting and Brewing Science, Volume II Hopped Wort and Beer, Chapter 14, pp 456-498, 1982年, Chapman and Hall
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第4 当審の判断
当審は、申立理由1ないし4には、以下のとおり理由がないと判断する。
1 申立理由1(甲1を主たる証拠とする進歩性)について
(1)甲1に記載された事項等
甲1には、ビールの色度に関して、次の記載がある。なお、甲1は外国語で記載された文献であるため、図表を転記する場合を除き、訳文にて記す(他の文献についても同様である。)。
・「一般的に、イエローからストーンブロンドのビールは4~8EBC(2~4SRM)、ペールエールは20~30EBC(10~15SRM)、スタウトは70~140EBC(35~70SRM)の色度があります。」(第259頁左欄1-4行)
甲1に記載された事項を、特にペールエールについて整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1飲料発明」、「甲1製法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1飲料発明>
「色度が20~30EBCであるペールエール。」
<甲1製法発明>
「甲1飲料発明のペールエールの製造方法。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
甲1飲料発明の「ペールエール」は、本件特許発明1の「ビールテイスト飲料」に相当し、甲1飲料発明のペールエールは「色度が20~30EBCである」(当審注:「色度が20~30°EBCである」ことを意味するものと認める。)から、本件特許発明1の「色度が10.0~75.0°EBCであ」るという発明特定事項を満たすといえる。
そうすると、本件特許発明1と甲1飲料発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「色度が10.0~75.0°EBCであるビールテイスト飲料。」
そして、両者は、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
本件特許発明1は「波長430nmの吸光度に対する波長560nmの吸光度の比率が0.200以下である」のに対し、甲1飲料発明は当該比率が不明である点。
<相違点1-2>
本件特許発明1は「2,5-ジメチルピラジンと、2,6-ジメチルピラジンと、2,3,5-トリメチルピラジンとの合計含有量が5.0~20.0ppbであり、前記2,5-ジメチルピラジンの含有量が2ppb以上であり、前記2,6-ジメチルピラジンの含有量が2ppb以上であり、前記2,3,5-トリメチルピラジンの含有量が1ppb以上である」のに対し、甲1飲料発明は、これらの化合物の含有量が特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点1-2について検討する。
甲1飲料発明は、具体的にどの程度の2,5-ジメチルピラジン等を含むかは不明であるから、この点は実質的な相違点である。そして、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲1飲料発明において、相違点1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けがあるとはいえない。
特許異議申立人は、特許異議申立書(29頁)において、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン及び2,3,5-トリメチルピラジンがビールに含まれていることは、その濃度とともに甲5ないし8に記載されているとおり周知の事項であり、これらの化合物はその種類又は濃度によって、さまざまな風味をビールに付与し得ることも甲5ないし7に記載されているとおり周知の事項であるから、ビールテイスト飲料において所望の風味を実現するために、これらの化合物を添加し、添加濃度の適切な範囲を設定することは当業者であれば容易になしえることであると主張している。
そこで、特許異議申立人の上記主張について検討する。甲5(601頁表5)及び甲6(Suppliment, p.17, 表中の7.6の欄)には、2,5-ジメチルピラジン及び2,6-ジメチルピラジンの典型的な濃度範囲がそれぞれ、「<0.01;0.11」及び「0.035」(単位は、いずれもmg/liter)であることが記載されており、甲7(231頁表2)には、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン及びトリメチルピラジンについて、香りの効果が検出される最低濃度が、それぞれ50、100、100(単位は、μg/kg)であることが記載されており、甲8(468頁表14.8)には、ビールに含まれる2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン及びトリメチルピラジンの濃度が、それぞれ110、35、20(単位はppb)であることが記載されている。
甲5、甲6及び甲8の上記記載によれば、ビールに含まれる2,6-ジメチルピラジンの典型的な濃度範囲は0.035mg/liter(すなわち、35ppb)であり、本件特許発明1のピラジン類の合計含有量の上限である20ppbを2,6-ジメチルピラジン単独で上回っている。したがって、甲5ないし甲8の記載から甲1飲料発明において上記相違点1-2に係る構成を採用する動機付けがあるとはいえない。そして、甲1飲料発明において上記相違点1-2に係る構成を採用することにより、甘味を抑えたドリンカブルな飲みごたえのビールテイスト飲料が得られるという本発明の効果を予期し得るものともいえない。
よって、本件特許発明1は、甲1飲料発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含むものである。
そうすると、本件特許発明2及び3と甲1飲料発明とは、少なくとも上記相違点1-2において相違するから、本件特許発明2及び3は、甲1飲料発明であるとはいえない。
また、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲1飲料発明において、上記相違点1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けがあるとはいえないことは、上記(2)イにおいて検討したとおりである。
よって、本件特許発明2及び3は、甲1飲料発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明4について
ア 対比
甲1製法発明は、甲1飲料発明のペールエールの製造方法であるから、上記(2)アと同様の相当関係があるといえるので、本件特許発明4と甲1製法発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「色度を10.0~75.0°EBCとする工程を含むビールテイスト飲料の製造方法。」
そして、本件特許発明4と甲1製法発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1-3>
本件特許発明4は「波長430nmの吸光度に対する波長560nmの吸光度の比率を0.200以下」とするのに対し、甲1製法発明は当該比率を0.200以下にすることが特定されていない点。
<相違点1-4>
本件特許発明4は「2,5-ジメチルピラジンと、2,6-ジメチルピラジンと、2,3,5-トリメチルピラジンとの合計含有量を5.0~20.0ppbとし、前記2,5-ジメチルピラジンの含有量を2ppb以上とし、前記2,6-ジメチルピラジンの含有量を2ppb以上とし、前記2,3,5-トリメチルピラジンの含有量を1ppb以上とする」のに対し、甲1製法発明は、これらの化合物の含有量を上記範囲とすることが特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点1-4について検討する。上記相違点1-4は、上記相違点1-2と実質的に同じ内容であるから、上記(2)イと同様に判断される。
よって、本件特許発明4は、甲1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件特許発明5について
本件特許発明5は、ビールテイスト飲料の香味向上方法に係る発明であるのに対し、甲1にはビールテイスト飲料の香味向上方法に係る発明は記載されておらず、本件特許発明5と対比できる発明が記載されているとはいえない。
よって、本件特許発明5は、甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)申立理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
よって、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由1によっては取り消すことはできない。
2 申立理由2(甲2を主たる証拠とする進歩性)について
(1)甲2に記載された事項等
ア 甲2に記載された事項
甲2には、「麦芽と焙煎大麦の典型的な色仕様と香り特性」に関して、次の記載がある。
・「
[図:0001425774000001.jpg]
」
甲2に記載された事項から、アンバー麦芽を用いたビールの色度が40~60°EBCであることが記載されているので、甲2には次の発明(以下、順に「甲2飲料発明」、「甲2製法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲2飲料発明>
「色度が40~60°EBCであるアンバー麦芽を用いたビール。」
<甲2製法発明>
「甲2飲料発明のアンバー麦芽を用いたビールの製造方法。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
甲2飲料発明の「アンバー麦芽を用いたビール」は、本件特許発明1の「ビールテイスト飲料」に相当し、甲2飲料発明のアンバー麦芽を用いたビールは「色度が40~60°EBCである」から、本件特許発明1の「色度が10.0~75.0°EBCであ」るという発明特定事項を満たすといえる。
そうすると、本件特許発明1と甲2飲料発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「色度が10.0~75.0°EBCであるビールテイスト飲料。」
そして、両者は、以下の点で相違する。
<相違点2-1>
本件特許発明1は「波長430nmの吸光度に対する波長560nmの吸光度の比率が0.200以下である」のに対し、甲2飲料発明は当該比率が不明である点。
<相違点2-2>
本件特許発明1は「2,5-ジメチルピラジンと、2,6-ジメチルピラジンと、2,3,5-トリメチルピラジンとの合計含有量が5.0~20.0ppbであり、前記2,5-ジメチルピラジンの含有量が2ppb以上であり、前記2,6-ジメチルピラジンの含有量が2ppb以上であり、前記2,3,5-トリメチルピラジンの含有量が1ppb以上である」のに対し、甲2飲料発明は、これらの化合物の含有量が特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点2-2について検討する。
甲2には、アンバー麦芽を用いたビールに関して一般的な色度が記載されているものの、どの程度の2,5-ジメチルピラジン等を含むかは具体的に記載されていないので、この点は実質的な相違点である。そして、上記相違点2-2は、上記1(2)アに記載した相違点1-2と実質的に同じ内容であるから、甲2及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲2飲料発明において、相違点2-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けがあるとはいえない。
よって、本件特許発明1は、甲2飲料発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含むものである。
そうすると、本件特許発明2及び3と甲2飲料発明とは、少なくとも上記相違点2-2において相違するから、本件特許発明2及び3は、甲2飲料発明であるとはいえない。
また、甲2及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲2飲料発明において、上記相違点2-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けがあるとはいえないことは、上記(2)イにおいて検討したとおりである。
よって、本件特許発明2及び3は、甲2飲料発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明4について
ア 対比
甲2製法発明は、甲2飲料発明の製造方法であるから、上記(2)アと同様の相当関係があるといえるので、本件特許発明4と甲2製法発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「色度を10.0~75.0°EBCとする工程を含むビールテイスト飲料。」
そして、本件特許発明4と甲2製法発明とは、以下の点で相違する。
<相違点2-3>
本件特許発明4は「波長430nmの吸光度に対する波長560nmの吸光度の比率を0.200以下」とするのに対し、甲2製法発明は当該比率を0.200以下にすることが特定されていない点。
<相違点2-4>
本件特許発明4は「2,5-ジメチルピラジンと、2,6-ジメチルピラジンと、2,3,5-トリメチルピラジンとの合計含有量を5.0~20.0ppbとし、前記2,5-ジメチルピラジンの含有量を2ppb以上とし、前記2,6-ジメチルピラジンの含有量を2ppb以上とし、前記2,3,5-トリメチルピラジンの含有量を1ppb以上とする」のに対し、甲2製法発明は、これらの化合物の含有量を上記範囲とすることが特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点2-4について検討する。上記相違点2-4は、上記相違点2-2と実質的に同じ内容であるから、上記(2)イと同様に判断される。
よって、本件特許発明4は、甲2製法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件特許発明5について
本件特許発明5は、ビールテイスト飲料の香味向上方法に係る発明であるのに対し、甲2にはビールテイスト飲料の香味向上方法に係る発明は記載されておらず、本件特許発明5と対比できる発明が記載されているとはいえない。
よって、本件特許発明5は、甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)申立理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
よって、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。
3 申立理由3(サポート要件)
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)特許請求の範囲の記載
特許請求の範囲の記載は上記第2のとおりである。
(3)本件特許発明が解決しようとする課題
本件特許の明細書の【0007】及び請求項5の記載からみて、本件特許発明1ないし3が解決しようとする課題は、甘味を抑えたドリンカブルな飲みごたえであるビールテイスト飲料を提供することであり、本件特許発明4が解決しようとする課題は、甘味を抑えたドリンカブルな飲みごたえであるビールテイスト飲料の製造方法を提供することであり、本件特許発明5が解決しようとする課題は、甘味を抑えドリンカブルな飲みごたえとするビールテイスト飲料の香味向上方法を提供することであると認められる(以下、これらをまとめて「本発明の課題」という。)。
(4)サポート要件の判断
本件特許の明細書の【0011】-【0013】にはビールテイスト飲料及びその色度に関する記載があり、【0015】にはビールテイスト飲料の吸光度の比率に関する記載があり、【0017】-【0018】には3種のピラジン類及びその含有量に関する記載があり、【0026】-【0038】にはビールテイスト飲料の製造方法についての記載があり、【0039】-【0040】にはビールテイスト飲料の香味向上方法の記載があり、【0041】-【0055】には上記3種のピラジン類のそれぞれの濃度を特定した実施例及び比較例が記載されている。
そして、同【0050】の【表1】には、2,5-ジメチルピラジン及び2,6-ジメチルピラジンの含有量がそれぞれ2ppbであり、2,3,5-トリメチルピラジンの含有量が1ppbであるビールテイスト飲料について、色度を7.2~67.7°EBCまで変化させた例が記載されており、色度が13.4~67.7°EBCの範囲であり、かつ、波長430nmの吸光度に対する波長560nmの吸光度の比率が0.200以下であると、ビールらしい琥珀色について好ましい結果が得られるとともに、甘味を抑えたドリンカブルな飲みごたえについても向上することが示されている。これに加え、同【0051】の【表2】には色度が32.2~35.6°EBCの範囲であり、かつ、波長430nmの吸光度に対する波長560nmの吸光度の比率が0.140~0.162であるビールテイスト飲料について、2,5-ジメチルピラジンの含有量を1.3~7.5ppb、2,6-ジメチルピラジンの含有量を0.6~14.8ppb、2,3,5-トリメチルピラジンの含有量を0.4~4.1ppb、上記3種類のピラジン類の合計含有量を2.3~26.4ppb、の範囲で変化させた例が記載されており、2,5-ジメチルピラジンの含有量が2.0ppb以上、2,6-ジメチルピラジンの含有量が2.0ppb以上、2,3,5-トリメチルピラジンの含有量が1.0ppb以上であり、かつ、上記3種類のピラジン類の合計含有量が5.0~18.0ppbの範囲で甘味を抑えたドリンカブルな飲みごたえになることが示されている。
そうすると、本件特許の明細書の記載から、色度が10.0~75.0°EBCの範囲であり、波長430nmの吸光度に対する波長560nmの吸光度の比率が0.200以下であるビールテイスト飲料であって、2,5-ジメチルピラジンの含有量が2.0ppb以上、2,6-ジメチルピラジンの含有量が2.0ppb以上、2,3,5-トリメチルピラジンの含有量が1.0ppb以上であり、かつ、上記3種類のピラジン類の合計含有量が5.0~20.0ppbの範囲でビールテイスト飲料であれば、本発明の課題を解決できると当業者は認識する。
そして、本件特許発明1は、上記の事項をすべて満たすものであるから、発明の詳細な説明の記載から当業者が本発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
本件特許発明1の発明特定事項のすべてを有し、さらに限定するものである本件特許発明2ないし3についても同様である。
また、本件特許発明4及び本件特許発明5も、上記発明特定事項をすべて満たすものであるから、発明の詳細な説明の記載から当業者が本発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
よって、本件特許発明1ないし5に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を充足する。
(5)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は特許異議申立書において、以下の3点を主張しているので、順に検討する。
ア ビールテイスト飲料のアルコール度数が不明であること(上記第3 3(1))
特許異議申立人は、本件特許の明細書に記載された実施例は、アルコール度数が5v/v%のもののみであり、他のアルコール度数でも課題を解決できることが本件特許の明細書に裏付けられていない、と主張している。
しかし、ビールテイスト飲料の甘味が、アルコール度数によって多少の影響を受けるとしてもその程度は示されておらず、特許異議申立人は、実施例とは異なるアルコール度数のビールテイスト飲料では、本発明の課題を解決できないことを示す具体的な根拠を提示するものでもない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は、上記(4)の判断に影響するものではない。
イ ビールテイスト飲料の甘みが不明であること(上記第3 3(2))
特許異議申立人は、本件特許の明細書に記載された実施例は、ベースとして用いるビールの甘味の特性が不明であり、甘みの程度が不明の条件下で3種のピラジン類の含有量における甘味抑制効果を確認したに過ぎないため、あらゆるビールテイスト飲料においても本件特許発明の所望の甘味抑制効果が得られるのかを、本件特許の明細書の記載から当業者は把握できない、と主張している。
しかし、本件特許発明は、色度が所定範囲となり、波長430nmの吸光度に対する波長560nmの吸光度の比率が所定値以下であるビールテイスト飲料を対象としており、このようなビールテイスト飲料は、色麦芽に由来するメイラード化合物(上記3種のピラジン類等)の香味によって、甘味が強く、一口飲んだ後に飲み疲れを飲用者が感じることが本件特許の明細書の【0012】に記載されており、同【0051】の【表2】には、上記3種のピラジン類のそれぞれの含有量及びこれらの合計含有量を本件特許発明の範囲にすれば本発明の課題を解決できることが示されている。そして、特許異議申立人は、甘味の特性が実施例とは異なるビールテイスト飲料では、本発明の課題を解決できないことを示す具体的な根拠を提示するものでもない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は、上記(4)の判断に影響するものではない。
ウ 3種のピラジン類の含有量比が不明であること(上記第3 3(3))
特許異議申立人は、本件特許の明細書に記載された実施例において示されたピラジン類の比率は限られており、その含有比率を特定しない本件特許発明の全範囲に渡って課題を解決できるかは不明である、と主張している。
しかし、上記(4)で述べたように、本件特許の明細書の【0051】の【表2】には、上記3種のピラジン類のそれぞれの含有量及びこれらの合計含有量を本件特許発明の範囲にすれば本発明の課題が解決できることが示されており、3種のピラジン類の含有量比も様々である。そして、特許異議申立人は、3種のピラジン類の含有量比が実施例とは異なるビールテイスト飲料では、本発明の課題を解決できないことを示す具体的な根拠を提示するものでもない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は、上記(4)の判断に影響するものではない。
(6)申立理由3についてのむすび
上記(4)及び(5)に記載したとおり、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由3によって取り消すことはできない。
5 申立理由4(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第2のとおり、本件特許発明1~3は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、かつ、その物を使用できる程度の記載を要する。
本件特許発明4は、物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法の使用をし、また、その物を生産する方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載を要する。
本件特許発明5は方法の発明であるところ、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度の記載があることを要する。
(2)実施可能要件の判断
本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明が「ビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及び、ビールテイスト飲料の香味向上方法に関する」(【0001】)ものであって、本件特許発明1乃至5の発明特定事項を満たすことによって本発明の課題を解決することができる(【0008】)ことが記載されている。
そして、【0026】-【0038】にはビールテイスト飲料の製造方法についての記載があり、特に、【0036】には、色度を所定の範囲内としつつ、3種のピラジン類の合計含有量を所定範囲内とする方法として、通常のアンバーエールを製造する場合と比較して、濃い色を呈する色麦芽の使用量を低くしたり、濃色度合いの低い色麦芽を選択したりすることで、3種のピラジン類の合計含有量を少なくしつつ、発酵前工程の原料として、未製麦の大麦を焙煎した焙煎大麦(ローステッドバーレイ)を用いたり、麦芽エキスを用いたりすることで、3種のピラジン類の合計含有量の上昇を抑えながら、アンバーエール様の色にする(色度を所定範囲内とし、吸光度の比率を所定値以下とする)という方法、並びに、発酵前工程と発酵工程において、色麦芽の使用量を低くしたり、濃色度合いの低い色麦芽を選択したりすることで、色度の値が低く3種のピラジン類の合計含有量の少ないビールテイスト飲料を製造した後、発酵後工程において、色素、植物原料、食品添加物等の添加によって調製するという方法が具体的に示されている。
さらに、【0041】-【0055】には具体的な実施例が示されており、表1のサンプル1-1から1-8並びに表2のサンプル2-1から2-7の評価結果から、色度が所定範囲となり、波長430nmの吸光度に対する波長560nmの吸光度の比率が所定値以下であるビールテイスト飲料について、上記3種のピラジン類のそれぞれの含有量及びそれらの合計含有量が所定の範囲であれば、甘みを抑えたドリンカブルな飲みごたえが得られることが示されており、そのものを生産し、使用することができることが示されており、また、その物を生産する方法により生産した物の使用をすること、その方法を使用することができることが記載されている。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明に、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし3を生産及び使用し、本件特許発明4により生産した物の使用をし、また、本件特許発明5の方法を使用することができる程度の記載があるといえ、本件特許発明1ないし5に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。
(3)異議申立人の主張について
特許異議申立人は特許異議申立書において、以下の2点を主張しているので、順に検討する。
ア ビールテイスト飲料の甘みが不明であること(上記第3 3(2))
特許異議申立人は、本件特許の明細書に記載された実施例は、ベースとして用いるビールの甘味の特性が不明であり、甘みの程度が不明の条件下で3種のピラジン類の含有量における甘味抑制効果を確認したに過ぎないため、任意の甘味を有するビールテイスト飲料に対して、本件特許発明で特定される3種のピラジン類の種類及び含有量の調整をすれば、所望の甘味抑制効果が得られるのかを、発明の詳細な説明の記載から把握することができない、と主張している。
しかし、本件特許発明は、色度が所定範囲となり、波長430nmの吸光度に対する波長560nmの吸光度の比率が所定値以下であるビールテイスト飲料を対象としており、このようなビールテイスト飲料は、色麦芽に由来するメイラード化合物(上記3種のピラジン類等)の香味によって、甘味が強く、一口飲んだ後に飲み疲れを飲用者が感じることが本件特許の明細書の【0012】に記載されており、同【0051】の【表2】には、上記3種のピラジン類のそれぞれの含有量及びこれらの合計含有量を本件特許発明の範囲にすれば甘みを抑えたドリンカブルな飲み応えが得られることが示されている。そして、特許異議申立人は、甘味の特性が実施例とは異なるビールテイスト飲料では、所望の甘味抑制効果を得ることができないことを示す具体的な根拠を提示するものでもない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は、上記(2)の判断に影響するものではない。
イ 3種のピラジン類の含有量比が不明であること(上記第3 3(3))
特許異議申立人は、本件特許の明細書に記載された実施例において示されたピラジン類の比率は限られており、いかなる比率でピラジン類をビールテイスト飲料に含有させれば、所望の甘味抑制効果が得られるのかを、本件特許の明細書の記載から把握できないので、発明の詳細な説明は、本件特許発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない、と主張している。
しかし、本件特許の明細書の【0051】の【表2】には、上記3種のピラジン類のそれぞれの含有量及びこれらの合計含有量を本件特許発明の範囲にすれば甘みを抑えたドリンカブルな飲み応えが得られることが示されており、3種のピラジン類の含有量比も様々である。そして、特許異議申立人は、3種のピラジン類の含有量比が実施例とは異なるビールテイスト飲料では、甘みを抑えたドリンカブルな飲み応えが得られないことを示す具体的な根拠を提示するものでもない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は、上記(2)の判断に影響するものではない。
(4)申立理由4についてのむすび
上記(2)及び(3)に記載したとおり、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由4によって取り消すことはできない。
第5 結語
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700090