特許拒絶査定不服審判
2025-006131
光学識別体および印刷物
- 審判番号
- 2025-006131
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-575884外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2025年04月21日
- 審決日
- 2026年05月08日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】TOPPANホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
- 分類
- P18 .113-Z (G02B) / P18 .121-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-575884「光学識別体および印刷物」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 8月12日国際公開、WO2021/157695〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続等の経緯
特願2021-575884号(以下「本件出願」という。)は、2021年(令和3年)2月5日(先の出願に基づく優先権主張 2020年(令和2年)2月7日)を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和6年 7月 1日付け:拒絶理由通知書
令和6年 9月 2日提出:意見書
令和6年 9月 2日提出:手続補正書
令和6年10月 7日付け:拒絶理由通知書
令和6年12月12日付け:意見書
令和7年 1月31日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和7年 4月21日提出:審判請求書
令和7年 4月21日提出:手続補正書
第2 令和7年4月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
令和7年4月21日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(令和6年9月2日提出の手続補正書により補正された)特許請求の範囲を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲へと補正するものであり、以下(3)の補正事項からなる(下線は、合議体が付したものであり、本件補正による補正箇所を示す。)。
(1) 本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
回折格子により構成された偏向セル毎に、凹凸構造の空間周波数として回折光の偏向方向の範囲が記録された偏向セルが、記録面に離散的に一定の間隔で形成され、可変カラー画像が複数の前記偏向セルを画素として記録され、
前記記録面の偏向セルの間は、前記凹凸構造の高さとして位相差分布が記録された空間位相変調器で満たされており、
堆積層が、前記記録面の一部または全部を覆い、
前記偏向セルは拡散光を偏向し、前記偏向セルを画素として記録された前記可変カラー画像を表示し、
点光源からの光の位相を変調し、再生像を表示する1つまたは複数の前記空間位相変調器を前記記録面に備え、前記記録面を備え、
前記空間位相変調器を複数含み、前記再生像を表示する空間位相変調器領域が、前記偏向セルを複数含んでなる画素を囲んでいる、光学識別体。
【請求項2】
前記空間位相変調器が、剥離層の表示面と略平行である上面に設けられた複数の凸部、又は、前記表示面と略平行である底面に設けられた複数の凹部と、前記表示面と略平行な平坦部とで構成され、カラーの再生像を表示する請求項1に記載の光学識別体。
【請求項3】
複数の前記空間位相変調器を有し、前記空間位相変調器を構成する複数の凸部および複数の凹部の深さの異なる前記空間位相変調器を有する請求項1又は2に記載の光学識別体。
【請求項4】
前記偏向セルを構成する各回折格子の各空間周波数が異なる前記偏向セルを有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学識別体。
【請求項5】
面積の異なる前記偏向セルを有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学識別体。
【請求項6】
前記偏向セルを構成する前記回折格子の割合が、前記可変カラー画像に応じて、1より小さい一定値に規格化され、
前記偏向セルに設けられる前記空間位相変調器の面積は、前記空間位相変調器が設けられるセルのおのおのにおいて一定である請求項4又は5に記載の光学識別体。
【請求項7】
前記偏向セルと、前記空間位相変調器が設けられたセルとがそれぞれ独立している請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光学識別体。
【請求項8】
前記偏向セルの寸法が、前記空間位相変調器が設けられたセルの寸法の倍数または約数である請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光学識別体。
【請求項9】
前記空間位相変調器が、ファーフィールドに再生像を表示するフーリエ変換ホログラムとして構成される請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学識別体。
【請求項10】
前記空間位相変調器が、集光点からの放射、集光点への集光により虚像、実像またはその双方の再生像を表示するフレネル変換ホログラムとして構成される請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学識別体。
【請求項11】
前記再生像が、機械的に読取可能である請求項1乃至10のいずれか一項に記載の光学識別体。
【請求項12】
前記凸部又は前記凹部の深さが0.1μm以上かつ1μm以下である請求項2又は3に記載の光学識別体。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の光学識別体が貼付された印刷物。」
(2) 本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
回折格子により構成された偏向セル毎に、凹凸構造の空間周波数として回折光の偏向方向の範囲が記録された偏向セルが、記録面に離散的に一定の間隔で形成され、可変カラー画像が複数の前記偏向セルを画素として記録され、
前記記録面の偏向セルの間は、前記凹凸構造の高さとして位相差分布が記録された空間位相変調器で満たされており、
堆積層が、前記記録面の一部または全部を覆い、
前記偏向セルは拡散光を偏向し、前記偏向セルを画素として記録された前記可変カラー画像を表示し、
点光源からの光の位相を変調し、再生像を表示する1つまたは複数の前記空間位相変調器を前記記録面に備え、前記記録面を備え、
前記空間位相変調器を複数含み、
前記空間位相変調器の空間周波数は、1本/mm以上、500本/mm以下であり、前記偏向セルの空間周波数は、500本/mmより大きく、1800本/mm以下である、光学識別体。
【請求項2】
前記凹凸構造の深さは、0.15μm以上、0.8μm以下であり、前記空間位相変調器とのセルの領域内で平均を取ったときの構造平均深さは、前記偏向セルの平均深さに対して、±50%以内である、請求項1に記載の光学識別体。
【請求項3】
前記空間位相変調器は、前記偏向セルの回折格子が設けられていない領域に設けることができ、前記回折格子の占有率を前記画素内の最大で50パーセントとした、請求項1または2に記載の光学識別体。
【請求項4】
前記空間位相変調器が、剥離層の表示面と略平行である上面に設けられた複数の凸部、又は、前記表示面と略平行である底面に設けられた複数の凹部と、前記表示面と略平行な平坦部とで構成され、カラーの再生像を表示する請求項1から3のいずれか一項に記載の光学識別体。
【請求項5】
複数の前記空間位相変調器を有し、前記空間位相変調器を構成する複数の凸部および複数の凹部の深さの異なる前記空間位相変調器を有する請求項1又は4に記載の光学識別体。
【請求項6】
前記偏向セルを構成する各回折格子の各空間周波数が異なる前記偏向セルを有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光学識別体。
【請求項7】
面積の異なる前記偏向セルを有する請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光学識別体。
【請求項8】
前記偏向セルを構成する前記回折格子の割合が、前記可変カラー画像に応じて、1より小さい一定値に規格化され、
前記偏向セルに設けられる前記空間位相変調器の面積は、前記空間位相変調器が設けられるセルのおのおのにおいて一定である請求項6又は7に記載の光学識別体。
【請求項9】
前記偏向セルと、前記空間位相変調器が設けられたセルとがそれぞれ独立している請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学識別体。
【請求項10】
前記偏向セルの寸法が、前記空間位相変調器が設けられたセルの寸法の倍数または約数である請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光学識別体。
【請求項11】
前記空間位相変調器が、ファーフィールドに再生像を表示するフーリエ変換ホログラムとして構成される請求項1乃至10のいずれか一項に記載の光学識別体。
【請求項12】
前記空間位相変調器が、集光点からの放射、集光点への集光により虚像、実像またはその双方の再生像を表示するフレネル変換ホログラムとして構成される請求項1乃至10のいずれか一項に記載の光学識別体。
【請求項13】
前記再生像が、機械的に読取可能である請求項1乃至12のいずれか一項に記載の光学識別体。
【請求項14】
前記凸部又は前記凹部の深さが0.1μm以上かつ1μm以下である請求項4又は5に記載の光学識別体。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の光学識別体が貼付された印刷物。」
(3) 補正事項
ア 補正事項1
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「前記空間位相変調器を複数含み、前記再生像を表示する空間位相変調器領域が、前記偏向セルを複数含んでなる画素を囲んでいる、光学識別体。」とあるのを、
「前記空間位相変調器を複数含み、
前記空間位相変調器の空間周波数は、1本/mm以上、500本/mm以下であり、前記偏向セルの空間周波数は、500本/mmより大きく、1800本/mm以下である、光学識別体。」に補正する。
イ 補正事項2
特許請求の範囲の請求項1の後に、請求項2として、
「【請求項2】
前記凹凸構造の深さは、0.15μm以上、0.8μm以下であり、前記空間位相変調器とのセルの領域内で平均を取ったときの構造平均深さは、前記偏向セルの平均深さに対して、±50%以内である、請求項1に記載の光学識別体。」を追加する。
ウ 補正事項3
特許請求の範囲の請求項1の後に、請求項3として、
「【請求項3】
前記空間位相変調器は、前記偏向セルの回折格子が設けられていない領域に設けることができ、前記回折格子の占有率を前記画素内の最大で50パーセントとした、請求項1または2に記載の光学識別体。」を追加する。
エ 補正事項4
本件補正前の請求項2に、「請求項1に記載の光学識別体。」とあるのを、「請求項1から3のいずれか一項に記載の光学識別体。」に補正するとともに、本件補正前の請求項2を請求項4とする。
オ 補正事項5
本件補正前の請求項3に、「請求項1又は2に記載の光学識別体。」とあるのを、「請求項1又は4に記載の光学識別体。」に補正するとともに、本件補正前の請求項3を請求項5とする。
カ 補正事項6
本件補正前の請求項4に、「請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学識別体。」とあるのを、「請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光学識別体。」に補正するとともに、本件補正前の請求項4を請求項6とする。
キ 補正事項7
本件補正前に請求項5に、「請求項1又は4に記載の光学識別体。」とあるのを、「請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光学識別体。」に補正するとともに、本件補正前の請求項5を請求項7とする。
ク 補正事項8
本件補正前の請求項6に、「請求項4又は5に記載の光学識別体。」とあるのを、「請求項6又は7に記載の光学識別体。」に補正するとともに、本件補正前の請求項6を請求項8とする。
ケ 補正事項9
本件補正前の請求項7に、「請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光学識別体。」とあるのを、「請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学識別体。」に補正するとともに、本件補正前の請求項7を請求項9とする。
コ 補正事項10
本件補正前の請求項8に、「請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光学識別体。」とあるのを、「請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光学識別体。」に補正するとともに、本件補正前の請求項8を請求項10とする。
サ 補正事項11
本件補正前の請求項9に「請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学識別体。」とあるのを、「請求項1乃至10のいずれか一項に記載の光学識別体。」に補正するとともに、本件補正前の請求項9を請求項11とする。
シ 補正事項12
本件補正前の請求項10に、「請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学識別体。」とあるのを、「請求項1乃至10のいずれか一項に記載の光学識別体。」に補正するとともに、本件補正前の請求項10を請求項12とする。
ス 補正事項13
本件補正前の請求項11に、「請求項1乃至10のいずれか一項に記載の光学識別体。」とあるのを、「請求項1乃至12のいずれか一項に記載の光学識別体。」に補正するとともに、本件補正前の請求項11を請求項13とする。
セ 補正事項14
本件補正前の請求項12に、「請求項2又は3に記載の光学識別体。」とあるのを、「請求項4又は5に記載の光学識別体。」に補正するとともに、本件補正前の請求項12を請求項14とする。
ソ 補正事項15
本件補正前の請求項13に、「請求項1乃至12のいずれか一項に記載の光学識別体」とあるのを、「請求項1乃至14のいずれか一項に記載の光学識別体」に補正するとともに、本件補正前の請求項13を請求項15とする。
2 補正の適否
(1) 補正事項1について、
請求項1についての補正の適否を検討する。
ア 補正の目的について
(ア) 特許請求の範囲の限定的減縮に該当しないことについて
a 補正事項1により、本件補正前の請求項1においては、「前記再生像を表示する空間位相変調器領域が、前記偏向セルを複数含んでなる画素を囲んでいる」ことを含んでいたところ、本件補正後の請求項1においては、「前記再生像を表示する空間位相変調器領域が、前記偏向セルを複数含んでなる画素を囲んでいる」ことが削除され、「前記空間位相変調器の空間周波数は、1本/mm以上、500本/mm以下であり、前記偏向セルの空間周波数は、500本/mmより大きく、1800本/mm以下である」ことが新たに含まれることになった(下線は、合議体が付した。)。
b してみると、補正事項1は、限定的減縮を目的とするものに該当しない。
(イ) 請求項の削除に該当しないことについて
補正事項1は、請求項の削除を目的とするものに該当しないことは明らかである
(ウ) 誤記の訂正に該当しないことについて
上記(ア)aからみて、補正事項1は、誤記の訂正を目的とするものに該当しないことは明らかである。
(エ) 明瞭でない記載の釈明に該当しないことについて
上記(ア)aからみて、補正事項1は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当しないことは明らかである。
(オ) 請求項1についての補正のまとめ
以上検討のとおり、本件補正のうち請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものにも該当しない補正事項1を含むものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
(2) 補正事項2~3について
前記(1)で検討したとおり、本件補正は却下されるべきものであるが、念のため、本件補正後の請求項2、3に係る補正事項2~3についての補正の適否も検討する。
ア 補正の目的について
(ア) 特許請求の範囲の限定的減縮に該当しないことについて
a 補正事項2~3は、それぞれ請求項2~3を新たに追加する、いわゆる増項補正であるところ、当該補正事項2~3は、n項引用形式請求項をn-1以下の請求項に変更する補正でもなければ、発明特定事項が択一的なものとして記載された一つの請求項について、その択一的な発明特定事項をそれぞれ限定して複数の請求項に変更する補正でもない。
b してみると、補正事項2~3は、いずれも限定的減縮を目的とするものに該当しない。
(イ) 請求項の削除に該当しないことについて
補正事項2~3は、いずれも請求項の削除を目的とするものに該当しないことは明らかである
(ウ) 誤記の訂正に該当しないことについて
上記(ア)aからみて、補正事項2~3は、いずれも誤記の訂正を目的とするものに該当しないことは明らかである。
(エ) 明瞭でない記載の釈明に該当しないことについて
上記(ア)aからみて、補正事項2~3は、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当しないことは明らかである。
(オ) 本件補正後の請求項2~3についての補正のまとめ
以上検討のとおり、本件補正のうち本件補正後の請求項2、3についてする補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものにも該当しない補正事項2~3を含むものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
3 審判請求書における請求人の主張について
審判請求書「(3)補正の内容および根拠」において、請求人は、補正の内容、補正の根拠を説明し、新規事項を追加してしない旨主張し、「(4)反駁意見」において、本件補正後の請求項1に係る発明に基づいて、新規性、進歩性を備える旨主張する。
しかしながら、上記2で述べたとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものにも該当しない補正事項を含むものであるから、本件補正は却下されるべきものである。
4 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2」[理由]1(1)に記載された事項によって特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
(令和6年10月7日付け拒絶理由通知書に記載した)原査定の拒絶の理由は、概略以下のものである。
●理由1(新規性)
本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
●理由2(進歩性)
本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
●理由1(新規性)、理由2(進歩性)
・請求項1、4~5、7~9、13:引用文献2(主引用例)
●理由2(進歩性)
・請求項1、4~9、11~13:引用文献1(主引用例)、引用文献2(副引用例)
・請求項11:引用文献2(主引用例)、引用文献1(周知技術を例示する文献)
・請求項12:引用文献2(主引用例)
・請求項2~3:引用文献2(主引用例)、引用文献3(周知技術を例示する文献)、又は、
引用文献1(主引用例)、引用文献2(副引用例)、引用文献3(周知技術を例示する文献)
・請求項10:引用文献2(主引用例)、引用文献5(周知技術を例示する文献)、又は、
引用文献1(主引用例)、引用文献2(副引用例),引用文献5(周知技術を例示する文献)
(引用文献一覧)
引用文献1:特開2002-90548号公報
引用文献2:特開2017-37273号公報
引用文献3:特開2010-72384号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開2003-15510号公報(周知技術を示す文献)
3 引用文献2の記載及び引用発明
(1) 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2(特開2017-37273号公報)は、本件出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明を記載したものであるところ、そこには以下の記載がある。
ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止性および意匠性に優れたホログラム構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは、波長の等しい二つの光(物体光と参照光)を干渉させることによって、物体光の波面が干渉縞として感光材料に記録されたものであり、干渉縞記録時の参照光と同一波長の光が当てられると干渉縞によって回折現象が生じ、元の物体光と同一の波面が再生することが可能である。ホログラムは、外観が美しく、複製が比較的困難である等の利点を有することから偽造防止用途等に多く使用されている。
ホログラムの使用方法としては、ホログラムに対して参照光を透過または反射させることで、光像として再生する方法が知られている。
・・・略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1 に記載されるようなスクリーンに投影した光像のみでは高度な偽造防止効果および意匠の付与が困難であるといった問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、偽造防止性および意匠性に優れたホログラム構造体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、ホログラム形成領域を有するホログラム層と、上記ホログラム層の上記ホログラム形成領域の凹凸表面に接するように形成された蒸着層と、を有し、上記ホログラム層の上記ホログラム形成領域には、点光源から入射した光を所望の光像へ変換する、位相型フーリエ変換ホログラムが記録されたホログラムセルと、上記ホログラムセルと同一平面上に形成され、平面視上パターン状に配置されることにより回折格子図柄を描画する回折格子セルと、が配置されていることを特徴とするホログラム構造体を提供する。
【0007】
本発明によれば、ホログラム形成領域に、点光源から入射した光を所望の光像へ変換する、位相型フーリエ変換ホログラムが記録されたホログラムセルと、回折格子図柄を描画する回折格子セルとが配置されていることにより、上記ホログラム形成領域内に上記光像および上記回折格子図柄の両者を再生することができる。
したがって、上記光像および上記回折格子図柄を組み合わせることにより、ホログラム構造体は、偽造防止性および意匠性に優れたものとなる。
・・・略・・・
【0010】
本発明においては、上記回折格子図柄が、立体的に図柄を再生可能な立体回折格子図柄であることが好ましい。立体回折格子図柄と光像とを組み合わせることが可能となることで、ホログラム構造体は偽造防止性および意匠性に優れたものとなるからである。
・・・略・・・
【発明の効果】
【0015】
本発明は、偽造防止性および意匠性に優れたホログラム構造体を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のホログラム構造体の一例を示す概略平面図である。
【図2】図1のA-A線断面図である。
【図3】ホログラム構造体の使用例を説明する説明図である。
・・・略・・・
【図10】本発明における回折格子セルを説明する説明図である。
【図11】本発明における画像表示層を説明する説明図である。
・・・略・・・
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のホログラム構造体について詳細に説明する。
本発明のホログラム構造体は、ホログラム形成領域を有するホログラム層と、上記ホログラム層の上記ホログラム形成領域の凹凸表面に接するように形成された蒸着層と、を有し、上記ホログラム層の上記ホログラム形成領域には、点光源から入射した光を所望の光像へ変換する、位相型フーリエ変換ホログラムが記録されたホログラムセルと、上記ホログラムセルと同一平面上に形成され、平面視上パターン状に配置されることにより回折格子図柄を描画する回折格子セルと、が配置されていることを特徴とするものである。
【0018】
このような本発明のホログラム構造体について図面を参照して説明する。
図1は、本発明のホログラム構造体の一例を示す概略平面図であり、図2は、図1のA-A線断面図である。図1および図2に示すように、本発明のホログラム構造体10は、ホログラム形成領域11を有するホログラム層1と、上記ホログラム層1の上記ホログラム形成領域11の凹凸表面に接するように形成された蒸着層2と、を有し、上記ホログラム層1の上記ホログラム形成領域11には、点光源から入射した光を所望の光像へ変換する、位相型フーリエ変換ホログラムが記録されたホログラムセル13aと、上記ホログラムセル13aと同一平面上に形成され、平面視上パターン状に配置されることにより回折格子図柄12を描画する回折格子セル12aと、が配置されているものである。
なお、この例では、ホログラム層1の蒸着層2とは反対側の表面に層間接着層3および透明基材4がこの順で積層する例を示すものである。
また、図1は説明の容易のため、透明基材および層間接着層の記載を省略するものである。図1では、破線で囲まれた領域がホログラム形成領域11である。回折格子セル12aは文字「F」のパターン状に配置され、参照光が照射された際に文字「F」を表わす回折格子図柄12を描画するものである。ホログラムセル13aは、ホログラム形成領域11の回折格子セル12aが配置されていない箇所を埋めるように配置されるものである。
【0019】
本発明によれば、ホログラム形成領域に、点光源から入射した光を所望の光像へ変換する、位相型フーリエ変換ホログラムが記録されたホログラムセルと、回折格子図柄を描画する回折格子セルとが配置されていることにより、上記ホログラム形成領域内に上記光像および上記回折格子図柄の両者を再生することができる。
したがって、上記光像および上記回折格子図柄を組み合わせることにより、ホログラム構造体は、偽造防止性および意匠性に優れたものとなる。
・・・略・・・
さらに、点光源からの光照射を受けているときのみ光像を再生できることから、上記ホログラム構造体は、偽造防止性および意匠性に優れたものとなる。
【0020】
ホログラム構造体が既に説明した図1および図2に示すものである場合の使用例としては、図3(a)に示すように、例えば太陽光等の参照光を受けかつ点光源が配置されていない光像再生前では、ホログラム形成領域内に回折格子図柄として描画された「F」の文字のみが観察され、図3(b)に示すように、点光源がホログラム形成領域上に配置された光像再生後では、回折格子図柄および光像により「E」の文字が観察されるようにホログラム構造体を使用する例を挙げることができる。
これにより、ホログラム形成領域に回折格子図柄を描画する回折格子セル以外に光像を再生可能なホログラムセルが配置されていることを知らない観察者は、「F」の文字のみを観察し、上記ホログラムセルが配置されていることを知っている観察者のみが、「E」の文字を観察可能とすることができる。
このように、本発明のホログラム構造体は、上記ホログラム構造体の構成を知っている観察者のみが光像および回折格子図柄を組み合わせた画像を認識可能とすることにより偽造防止効果等を発現可能となる。
【0021】
本発明のホログラム構造体は、ホログラム層および蒸着層を有するものである。
以下、本発明のホログラム構造体における各構成について説明する。
【0022】
1.ホログラム層
本発明におけるホログラム層は、ホログラム形成領域を有するものである。
また、ホログラム層のホログラム形成領域には、点光源から入射した光を所望の光像へ変換する、位相型フーリエ変換ホログラムが記録されたホログラムセルと、上記ホログラムセルと同一平面上に形成され、平面視上パターン状に配置されることにより回折格子図柄を描画する回折格子セルとが配置されるものである。
【0023】
(1)ホログラム形成領域
上記ホログラム形成領域は、反射型であり、点光源を観察面側に配置して、観察面側からホログラム層を平面視した際に、ホログラム形成領域内に光像を再生可能なものである。
また、上記ホログラム形成領域は、レリーフ型であり、凹凸表面を有するものである。
【0024】
上記ホログラム形成領域は、ホログラムセルおよび回折格子セルが配置される領域をいうものであり、具体的には、上記ホログラムセルおよび回折格子セルの全てを含むことができる最小面積の長方形で囲まれる領域である。
【0025】
上記ホログラム形成領域の平面視サイズとしては、ホログラム形成領域内に上記光像の全体像の全てが視認可能なサイズであり、かつ、ホログラム形成領域内に再生された光像および回折格子図柄を観察者が容易に視認可能なサイズであることが好ましい。
・・・略・・・
【0026】
(2)ホログラムセル
本発明におけるホログラムセルは、点光源から入射した光を所望の光像へ変換する、位相型フーリエ変換ホログラムが記録されたものである。
ここで、位相型フーリエ変換ホログラムが記録されるとは、原画像のフーリエ変換を介して得られたフーリエ変換像の位相情報を多値化して深さとして記録されることをいうものである。したがって、位相型フーリエ変換ホログラムが記録されたホログラムセルは、凹凸表面を有する。
上記ホログラムセルは、ホログラムセルの凹凸表面を構成する凹凸形状の高低差により、点光源から入射した光を所望の光像へ変換する、すなわちフーリエ変換レンズとして機能するものである。このような機能により、任意の点光源から入射する光が所定の複数の方向に回折され所定のイメージが光像として形成されるものである。
・・・略・・・
【0027】
上記ホログラムセルの平面視サイズとしては、精度良くホログラム形成領域を形成可能なものであればよい。
上記平面視サイズは、0.25mm角以上5mm角以下の範囲内であることが好ましい。上記平面視サイズが上述の範囲内であることにより、上記ホログラム構造体は、ホログラム形成領域内への光像の再生の容易なものとなるからである。
なお、上記平面視サイズは、上記ホログラムセルを含むことができる最小の正方形の大きさをいうものである。
上記ホログラムセルの上記ホログラム形成領域に占める平面視上の面積の割合としては、所望の光像を再生可能なものであれば特に限定されるものではないが、25%~80%の範囲内であることが好ましく、なかでも、30%~70%の範囲内であることが好ましい。上記面積割合が上述の範囲であることより、ホログラム構造体は、光像を鮮明に再生可能なものとなるからである。
【0029】
ホログラムセルの平面視形状としては、・・・・略・・・ホログラム形成領域の形成容易の観点から、通常、矩形状が用いられる。
【0030】
本発明におけるホログラムセルの凹凸表面の凹凸形状は、光像として表示させる原画の画像データをもとに形成される多値化されたフーリエ変換像を、縦横方向に所望の範囲まで複数個配列させたときの、フーリエ変換像のパターンに相当するものである。
このようなホログラムセルの凹凸表面のホログラム形成領域への形成方法としては、点光源から入射した光を所望の光像へ変換可能な凹凸表面を形成可能な方法であればよく、一般的なフーリエ変換ホログラムの形成方法を用いることができる。
上記形成方法は、具体的には、フーリエ変換像に対応した凹凸パターンを有するマスター原版を形成し、PET等の基材上に形成した紫外線硬化樹脂等の樹脂材料の塗膜に当該原版の凹凸パターンを転写することでホログラムセルの凹凸表面を形成する方法を挙げることができる。
また、マスター原版の凹凸パターンの転写を複数回行うことにより、複数のホログラムセルが配置されたホログラム形成領域を有するホログラム層を形成することができる。
【0031】
マスター原版の形成方法としては、表示させる原画の画像データをもとに、計算によりフーリエ変換像を形成する。次に、上記フーリエ変換像のデータを二値以上に多値化したものを電子線描画用データへ変換し、上記電子線描画用データを希望の範囲まで配列させる。例えば、電子線描画用データを縦、横方向に各10個ずつ配列させる。次いで、配列した電子線描画用データをもとに電子線描画装置でマスター原版を作成する方法を用いることができる。
・・・略・・・
【0032】
上記ホログラムセルの凹凸表面の格子ピッチとしては、点光源から入射した光を所望の光像へ変換可能なものであればよい。
具体的には、上記格子ピッチは、1.0μm~80.0μmの範囲内であることが好ましい。上記格子ピッチが上述の範囲内であることにより、上記ホログラム構造体は、ホログラム形成領域内への光像の再生の容易なものとなるからである。
・・・略・・・
【0037】
(3)回折格子セル
上記回折格子セルは、上記ホログラムセルと同一平面上に形成されるものである。
上記回折格子セルは、上記ホログラム形成領域に、平面視上パターン状に配置されることにより回折格子図柄を描画するものである。
【0038】
ここで、同一平面上に形成されるとは、上記ホログラムセルおよび上記回折格子セルが上記ホログラム層の同一表面に形成されることをいうものである。すなわち、上記ホログラム層の同一表面にホログラムセルの凹凸表面および回折格子セルの凹凸表面の両者が形成されることをいうものである。
【0039】
上記回折格子図柄は、参照光として可視光を照射することにより、回折格子セルが配置されたパターン形状の図柄が再生されるものである。
ここで、回折格子図柄は、平面視上パターン状に配置された回折格子セルにより描画された図柄であり、原図柄を例えば碁盤目状の微細セルに分割し、分割された微細セルを回折格子セルに置き換えて描画されたものである。
既に説明した図1は、回折格子セル12aが「F」の文字のパターン状に配置されることにより回折格子図柄12を描画する例を示すものであり、上記回折格子図柄12に対して参照光を照射することで、上記ホログラム形成領域11内に回折格子図柄12として「F」の文字が再生される。
・・・略・・・
【0041】
上記回折格子図柄は、平面的に図柄を再生可能な平面回折格子図柄であってもよく、立体的に図柄を再生可能な立体回折格子図柄であってもよい。
・・・略・・・
【0043】
上記立体回折格子図柄の形成方法としては、上記回折格子図柄の端部側より中央部側に回折光の振幅が大きい回折格子セルを配置する方法が挙げられる。
より具体的には、図1では、「F」の文字が回折格子セルを幅方向に3個配置した描画線により描画されている(例えば、12a1、12a2および12a3)。この場合、描画線の幅方向の端部側に配置される回折格子セル12a1および12a3より、中央部側に配置される回折格子セル12a2を回折光の振幅が大きい回折格子セルとすることで、参照光を照射した際に「F」の文字が立体的に浮かび上がるように再生することが可能となる。
また、回折光の振幅を端部側より中央部側を大きくする方法としては、特許第4984938号公報に記載されるように、端部側より中央部側に回折格子形成領域の面積が広い回折格子セルを配置する方法を挙げることができる。すなわち、立体回折格子図柄は、回折格子図柄の端部側より中央部側に回折格子形成領域の面積が広い回折格子セルが配置されたものとすることができる。
例えば、図1中の回折格子セル12a1~12a3の拡大図である図10に例示するように、描画線の幅方向の端部側に配置される回折格子セル12a1および12a3より、中央部側に配置される回折格子セル12a2を、回折格子形成領域22の面積が広い回折格子セルとすることができる。
・・・略・・・
【0045】
上記回折格子セルの格子ピッチ、格子角度、格子密度(図柄に対して回折格子セルが占める平面視上の面積割合)は、参照光が照射された際に再生される図柄に応じて適宜設定されるものである。
例えば、格子ピッチをそれぞれ1.2μm程度、1.0μm程度および0.8μm程度とすることで、それぞれ波長600nm用(赤色用)、500nm用(緑色用)、400nm(青色用)の光を回折するものとすることで、カラー画像を再生可能なものとすることができる。
また、さらに格子角度および格子密度により様々な図柄を表現可能なものとすることができる。
【0046】
上記回折格子セルの平面視サイズとしては、再生される回折格子図柄に応じて適宜設定できるものであるが、例えば、5μm角以上100μm角以内とすることができる。上記平面視サイズであることにより、高精細な回折格子図柄を描画できるからである。また、回折格子図柄を描画する個々の回折格子セルの存在を隠ぺいできるからである。
【0047】
上記回折格子セルの平面視形状としては、再生される回折格子図柄に応じて適宜設定できるものであるが、例えば、上記「(2)ホログラムセル」の項に記載のホログラムセルと同様とすることができる。
・・・略・・・
【0049】
上記回折格子図柄の再生に用いられる参照光については特に限定されるものではなく、一般的なホログラムに用いられるものを使用できる。
上記参照光としては、具体的には、可視光を含む光を用いることができる。
例えば、参照光は、上記ホログラム層のホログラムセルに記録された光像の再生に用いられる点光源と同一とすることができる。ホログラム形成領域に記録された光像の再生と同時に回折格子図柄を再生できるからである。
上記参照光の光源は、点光源に限らず、太陽光等の平行光等であっても良い。
上記ホログラム構造体は、例えば、上記点光源以外の光源からの参照光が照射される明所に配置することで回折格子図柄を再生でき、さらにその明所において、上記点光源をホログラム形成領域上に配置することで光像も再生可能となる。
・・・略・・・
【0061】
2.蒸着層
本発明における蒸着層は、ホログラム層のホログラム形成領域の凹凸表面に接するように形成されるものである。
【0062】
上記蒸着層は、透明性を有していても良く、反射性を有するものであっても良い。
上記蒸着層が透明性を有する透明蒸着層である場合には、ホログラム構造体は、平面視した際にホログラム形成領域が光沢を有しないものとなる。このため、上記ホログラム構造体は、上記ホログラム形成領域が隠ぺいされたものとなり、上記ホログラム構造体は、偽造防止性および意匠性に優れたものとなる。
一方、上記蒸着層が反射性を有する反射性蒸着層である場合には、ホログラム構造体は、ホログラム形成領域内に鮮明に光像を再生可能となる。このため、上記ホログラム構造体は、偽造防止性および意匠性に優れたものとなる。
・・・約・・・
【0064】
上記蒸着層を構成する材料としては、ホログラム層との間で屈折率差を生じる材料であれば特に限定されるものではない。上記反射性蒸着層を形成可能な材料としては、例えば、Mg、Al、・・・略・・・等の金属を挙げることができる。
・・・略・・・
【0066】
上記蒸着層の形成箇所は、少なくともホログラム形成領域内の全ての凹凸表面(ホログラムセルおよび回折格子セルの両者の凹凸表面)と平面視上重なるものであればよく、ホログラム層の凹凸表面側の全表面を覆うものであってもよい。
【0067】
上記蒸着層の形成方法としては、一般的な蒸着層の形成方法を用いることができ、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができる。
【0068】
3.その他の構成
本発明のホログラム構造体は、ホログラム層を有するものであるが、必要に応じてその他の構成を有するものであっても良い。
【0069】
(1)透明基材
本発明のホログラム構造体は、上記ホログラム層の蒸着層とは反対側の表面に形成された透明基材を有するものであってもよい。透明基材を有することにより、本発明のホログラム構造体の熱的または機械的強度を高めることができるからである。
【0070】
上記透明基材は、上記ホログラム層と直接接するように形成されるものであっても良く、他の層を介して形成されるものであってもよい。
例えば、透明基材は、後述する層間接着層を介してホログラム層表面に接着されたものとすることができる。
・・・略・・・
【0077】
(2)画像表示層
本発明のホログラム構造体は、上記光像と組み合わせて用いられる画像を表示する画像表示層を有することが好ましい。
上記画像表示層が表示する画像と、上記ホログラム形成領域内に再生される光像とを組み合わせることが可能となり、上記ホログラム構造体は、偽造防止性および意匠性に優れたものとなるからである。
【0078】
ここで、上記画像としては、光像と組み合わせることで、偽造防止性および意匠性を向上できるものであれば特に限定されるものではない。上記画像は、上記ホログラム形成領域内に形成される回折格子図柄とも組み合わせて用いられるものであっても良い。
上記画像としては、具体的には、本発明のホログラム構造体の用途等に応じて、適宜設定することができ、例えば、パターン、線画、文字、図形、記号等のみならず、単に全面が着色された態様も含むものである。
また、上記光像と組み合わせることで偽造防止性および意匠性をより向上できる画像としては、例えば図11(a)および(b)に例示するように、上記ホログラム形成領域の形成箇所を指し示す矢印、上記形成箇所を囲む枠、上記形成箇所であることを示す文字等のホログラム形成領域の認識に用いられる画像、図11(c)および(d)に例示するように、上記光像および回折格子図柄が図形の一部を表わすものである場合に、図形の他の部分を表わす画像・・・略・・・等を挙げることができる。
なお、図11(a)、(c)および(e)は、それぞれ、光像再生前の状態を示し、図11(b)、(d)および(f)は、それぞれ光像再生時の状態を示すものである。
・・・略・・・図11(c)および(d)では、画像15は、楕円の一部であり、光像13および回折格子図柄12により示される楕円の他の部分と組み合わせて1つの楕円を表示可能なものである。
・・・略・・・
【実施例】
【0123】
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0124】
[実施例1]
<回折格子セル用原版および回折格子図柄の形成>
合成石英の基板上に表面低反射クロム薄膜が積層されたフォトマスクブランク板のクロム薄膜上に、ドライエッチング用レジストをスピンナーにより回転塗布した。ドライエッチング用レジストとしては日本ゼオン(株)製ZEP7000を使用し、400nmの厚みとなるように形成した。このレジスト層に対し、電子線描画装置(MEBES4500:ETEC社製)を用い、事前に計算機で作成したパターンを露光し、レジスト樹脂の露光部分を易溶化した。その後、現像液を噴霧し(スプレー現像)して易溶化部分を除去し、レジストパターンを形成した。
なお、パターンの格子ピッチは、500nmとした。
続いて、形成されたレジストパターンを利用して、ドライエッチングによりレジストで被覆されていない部分のクロム薄膜をエッチング除去し、石英基板を露出させた。次いで、露出した石英基板をエッチングし、石英基板に凹部を形成した。その後、レジスト薄膜を溶解除去することにより、石英基板がエッチングされて生じた凹部と、石英基板およびクロム薄膜がエッチングされずに残存している凸部とを有する原版を得た。また、原版のサイズ、すなわち、回折格子セルのサイズは0.25mmとした。
厚み0.5mmのポリカーボネートシート(透明基材)に、ホログラム層形成用組成物(UV硬化性アクリレート樹脂:屈折率1.52測定波長633nm)を滴下し、上記組成物の塗膜を形成した。次いで、上記塗膜上に凹凸を有する原版を積置し、押圧した。次に、活性放射線を照射して上記塗膜を硬化させた後剥離させ、原版の凹凸型を反転させた凹凸表面を有する回折格子セルを形成した。その後、原版の積置、押圧、硬化および剥離を繰り返し、回折格子セルにより平面回折格子図柄を15mm角のホログラム形成領域内に形成した。
【0125】
<ホログラムセル用原版およびホログラムセルの形成>
回折格子セル用原版と同様の方法により原版を得た。
原版のサイズ、すなわち、ホログラムセルのサイズを0.25mmとした。
また、パターンの格子ピッチは、3179nmとした。
次いで、回折格子図柄形成後の上記塗膜上に上記原版の積置、押圧、硬化および剥離を繰り返し、回折格子セルが配置されていない領域にホログラムセルが敷き詰められた15mm角のホログラム形成領域を有する厚さ2μmのホログラム層を形成した。
【0126】
次いで、ホログラム層の凹凸表面側の全面に膜厚100nmのAl層をスパッタリング法により形成し、ホログラム構造体を得た。
【0127】
<評価>
ホログラム構造体を蛍光灯下で観察したところ、ホログラム形成領域内に回折格子図柄を再生することができた。また、ホログラム構造体のホログラム層表面から50mmの位置に点光源を配置し、ホログラム層表面から300mm離れた箇所から観察したところ、15mm角のホログラム形成領域内にフーリエ変換された所定の画像と回折格子図柄との両者を視認性良く観察することができた。」
イ 「【図1】
[図:0001437062000001.jpg]
【図2】
[図:0001437062000002.jpg]
【図3】
[図:0001437062000003.jpg]
・・・略・・・
【図10】
[図:0001437062000004.jpg]
【図11】
[図:0001437062000005.jpg]
」
(2) 引用文献2に記載された発明
ア 上記(1)ア~イの引用文献2の記載によれば、引用文献2でいう「本発明」は「偽造防止性および意匠性に優れた、ホログラム構造体」(【0001】)に関するものであるところ、
【0018】~【00019】には、図1~2とともに、「本発明のホログラム構造体」が説明され、
「ホログラム層および蒸着層を有する」「本発明のホログラム構造体における各構成」(【0021】)に関して、
【0022】、【0023】~【0025】、【0026】~【0033】、【0037】~【0049】及び【0061】~【0067】には、それぞれ「ホログラム層」、「ホログラム形成領域」、「ホログラムセル」、「回折格子セル」及び「蒸着層」について説明されている。
イ そうすると、上記アより、引用文献2の【0001】、【0018】~【0019】、【0026】、【0039】、【0043】、【0045】及び図1~2、10の記載からみて、引用文献2には、図1、2に示された「偽造防止性および意匠性に優れた」「ホログラム構造体10」の発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
なお、参考のため、引用発明の認定の根拠となった段落番号を、丸括弧内に記載した。
「偽造防止性および意匠性に優れた、下記図1の概略平面図、下記図2に図1のA-A断面図が示される、ホログラム構造体10であって、(【0001】、【0018】)
ホログラム形成領域11を有するホログラム層1と、上記ホログラム層1の上記ホログラム形成領域11の凹凸表面に接するように形成された蒸着層2と、を有し、
下記図1で破線で囲まれた領域である上記ホログラム層1の上記ホログラム形成領域11には、点光源から入射した光を所望の光像へ変換する、位相型フーリエ変換ホログラムが記録されたホログラムセル13aと、上記ホログラムセル13aと同一平面上に形成され、平面視上パターン状に配置されることにより回折格子図柄12を描画する回折格子セル12aと、が配置され、
回折格子セル12aは、文字「F」のパターン状に配置され、参照光が照射された際に文字「F」を表わす回折格子図柄12を描画するものであり、
ホログラムセル13aは、ホログラム形成領域11の回折格子セル12aが配置されていない箇所を埋めるように配置され、(【0018】、図1~2)
ホログラム形成領域11に、点光源から入射した光を所望の光像へ変換する、位相型フーリエ変換ホログラムが記録されたホログラムセル13aと、回折格子図柄12を描画する回折格子セル12aとが配置されていることにより、上記ホログラム形成領域11内に上記光像および上記回折格子図柄12の両者を再生することができ、
上記光像および上記回折格子図柄12を組み合わせることにより、ホログラム構造体10は、偽造防止性および意匠性に優れたものとなり、
点光源からの光照射を受けているときのみ光像を再生できることから、上記ホログラム構造体10は、偽造防止性および意匠性に優れたものとなる、(【0019】)
ホログラム構造体10であって、
位相型フーリエ変換ホログラムが記録されたホログラムセル13aは、凹凸表面を有し、(【0026】)
位相型フーリエ変換ホログラムが記録されたホログラムセル13aは、原画像のフーリエ変換を介して得られたフーリエ変換像の位相情報を多値化して深さとして記録されたものであり、(【0026】)
回折格子図柄12は、参照光として可視光を照射することにより、回折格子セル12aが配置されたパターン形状の図柄が再生されるものであり、
回折格子図柄12は、平面視上パターン状に配置された回折格子セル12aにより描画された図柄であり、原図柄を碁盤目状の微細セルに分割し、分割された微細セルを回折格子セル12aに置き換えて描画されたものであり、上記回折格子図柄12に対して参照光を照射することで、上記ホログラム形成領域11内に回折格子図柄12として「F」の文字が再生され、(【0039】)
下記図1では、「F」の文字が回折格子セル12aを幅方向に3個配置した描画線により描画され(12a1、12a2および12a3)、下記図1中の回折格子セル12a1~12a3の拡大図である下記図10に示されるように、描画線の幅方向の端部側に配置される回折格子セル12a1および12a3より、中央部側に配置される回折格子セル12a2を、回折格子形成領域22の面積が広い回折格子セルとすることで、参照光を照射した際に「F」の文字が立体的に浮かび上がるように再生することが可能であり、(【0043】)
上記回折格子セル12aの格子ピッチ、格子角度、格子密度(図柄に対して回折格子セルが占める平面視上の面積割合)は、参照光が照射された際に再生される図柄に応じて設定され、(【0049】)
上記回折格子セル12aの格子ピッチをそれぞれ1.2μm程度、1.0μm程度および0.8μm程度とすることで、それぞれ波長600nm用(赤色用)、500nm用(緑色用)、400nm(青色用)の光を回折するものとすることで、カラー画像が再生可能である、(【0045】)
ホログラム構造体10。
【図1】
[図:0001437062000006.jpg]
【図2】
[図:0001437062000007.jpg]
【図10】
[図:0001437062000008.jpg]
」
(合議体注:引用発明においては、「ホログラム層」及び「ホログラム層1」との記載を「ホログラム層1」に統一して記載している。同様に、「ホログラム形成領域」及び「ホログラム形成領域11」、「ホログラム構造体」及び「ホログラム構造体10」、「ホログラムセル」及び「ホログラムセル13a」、「回折格子セル」及び「回折格子セル12a」、「回折格子図柄」及び「回折格子図柄12」との各記載を、それぞれ「ホログラム形成領域11」、「ホログラム構造体10」、「ホログラムセル13a」、「回折格子セル12a」、「回折格子図柄12」に統一して記載している。)
(3) 対比
本願発明と引用発明を対比する。
ア 回折格子、偏向セル、可変カラー画像
(ア)a 引用発明の「ホログラム形成領域11」に配置された「平面視上パターン状に配置されることにより回折格子図柄12を描画する回折格子セル12a」は、
「ホログラムセル13aと同一平面上に形成され」、
「原図柄を碁盤目状の微細セルに分割し、分割された微細セル」に「置き換え」て、(図1に示されるように)「文字「F」のパターン状に配置され、参照光が照射された際に文字「F」を表わす回折格子図柄12を描画するものであ」る。
b また、引用発明の「文字「F」のパターン状に配置され」た「回折格子セル12a」は、図1及び「図1中の回折格子セル12a1~12a3の拡大図である」図10に示されるように、「「F」の文字が回折格子セル12aを幅方向に3個」(「12a1、12a2および12a3」)「配置した描画線により描画され」、「描画線の幅方向の端部側に配置される回折格子セル12a1および12a3より、中央部側に配置される回折格子セル12a2を、回折格子形成領域22の面積が広い回折格子セルとすることで、参照光を照射した際に「F」の文字が立体的に浮かび上がるように再生する」ものである。
ここで、図1及び図10は以下のものである。
【図1】
[図:0001437062000009.jpg]
【図10】
[図:0001437062000010.jpg]
c さらに、引用発明においては、「回折格子図柄12は、参照光として可視光を照射することにより、回折格子セル12が配置されたパターン形状の図柄が再生されるものであり」、「文字「F」のパターン状に配置され」た「回折格子セル12a」は、「格子ピッチ、格子角度、格子密度(図柄に対して回折格子セルが占める平面視上の面積割合)は、参照光が照射された際に再生される図柄に応じて設定され」、「格子ピッチをそれぞれ1.2μm程度、1.0μm程度および0.8μm程度とすることで、それぞれ波長600nm用(赤色用)、500nm用(緑色用)、400nm(青色用)の光を回折するものとすることで、カラー画像」を「再生」するものである。
(イ) 上記(ア)a~cで述べた「回折格子セル12a」(「12a1~12a3)」の(個々の)構成、配置及び機能(参照光照射時の立体的な回折格子図柄12の再生、各色毎の格子ピッチ、カラー画像の再生等)からみて、引用発明の「回折格子セル12a」の「回折格子形成領域22」に形成された(面積が異なる)「回折格子」は、本願発明の「回折格子」及び「回折格子により構成された偏向セル」の双方に相当する。
(合議体注:上記(イ)で述べた相当関係について、本件出願明細書の発明の詳細な説明の、
[0093]の「各偏向セル12は、図11、図12、図13のように単位セル32に配置できる。」、
[0094]の「図11は、幅が広い赤(R)、緑(G)、青(B)に対応する各単位セル32R、32G、32Bを、Y方向、すなわち画像の上下方向に積み重ねた配置である。」、「単位セル32には、回折格子12からなる偏向セルが収まっている。」、「偏向セルが回折格子12からなる」、
[0099]の「可変カラー画像を得るためには、R、G、Bの各単位セル32R、32G、32Bの占める偏向セル12の面積率を変えることによって実現できる。このとき単位セル32にはそれぞれの偏向セル32R、32G、32Bが形成されていない領域が存在しうる。」(合議体注:「それぞれの偏向セル32R、32G、32B」は、この前後の記載からみて、「それぞれの偏向セル12」の誤記と認められる。)、
[0101]の「図14のように、空間位相変調器14は、その回折格子12が設けられていない領域に設けることができる。例えば、R、G、Bの各単位セル32R、32G、32Bの占有率を画素内の最大で50パーセントとする。そして、残りの50パーセントに空間位相変調器14を設けることもできる。」、「各偏向セル12と空間位相変調器14の間に隙間をおいて、各偏向セル12の間を空間位相変調器14で満たすことができる。また、単に各偏向セル12の間を空間位相変調器14で満たしてもよい。」、
[0102]の「図15に例示するように、可変カラー画像Cを得るための回折格子12の単位セルと、再生像dを得るための空間位相変調器のセルとを別々に設けることもできる。」、
[0104]の「回折格子12の偏向セルが収まるセル321の寸法と、空間位相変調器14のセル322の寸法とを個々に決めることができる」、
[0105]の「図16は、光学識別体のセル配置の一例を示す平面図であり、偏向セルの画素の周囲が空間位相変調器のセルによって覆われている。」、
[0106]の「図16のように、可変カラー画像Cを得るための回折格子12が収められた単位セル321の集合体である画素を囲うように、再生像dを得るための空間位相変調器14を設けるセル32を配置できる。」及び下記図11、14、15等の記載からも、
引用発明の「回折格子形成領域22」に形成された「回折格子」が、本願発明(本願明細書)における「回折格子12」及び「回折格子からなる偏向セル12」の双方に対応すること、引用発明の「回折格子セル12a」が、本願明細書における「単位セル32」に対応することが理解できる。
なお、図11、14、15、16は以下のものである。
[図11]
[図:0001437062000011.jpg]
[図14]
[図:0001437062000012.jpg]
[図15]
[図:0001437062000013.jpg]
[図16]
[図:0001437062000014.jpg]
)
(ウ) 回折格子が、凹凸構造を有すること、及び、その凹凸構造のピッチ、すなわち空間周波数に依存して、参照光の回折光の回折角度すなわち偏向方向が決まることは技術常識である。
してみると、上記(ア)a~cで述べた「回折格子セル12a」の構成、配置及び機能及び上記(イ)より、本願発明の「偏向セル」と、引用発明の「ホログラムセル13aと同一平面上に形成され」た「回折格子セル12a」は、「凹凸構造の空間周波数として回折光の偏向方向の範囲が記録された」ものである点で一致する
(引用発明の「回折格子セル12a」が凹凸構造を有することは、(図1のA-A断面図を示す)図2からも明らかなことである。あるいは、引用文献2の【0038】の「上記ホログラム層の同一表面にホログラムセルの凹凸表面および回折格子セルの凹凸表面の両者が形成される。」、及び、【0066】の「ホログラム形成領域内の全ての凹凸表面(ホログラムセルおよび回折格子セルの両者の凹凸表面)」との記載からも確認できる。)
(エ)a 上記(ア)a~b(及び引用発明の図10)より、引用発明の「ホログラム形成領域11」において「回折格子セル12a」が形成される「ホログラムセル13aと同一平面」とされる面は、本願発明1の「記録面」に相当する。
また、引用発明の上記(ア)a~b(及び引用発明の図10)より、「原図柄を碁盤目状の微細セルに分割し、分割された微細セル」に「置き換え」て、複数の「回折格子セル12a」が「パターン状に配置され」た「文字「F」」においては、(図10に示されるように)「描画線の幅方向の端部側に配置される回折格子セル12a1および12a3より、中央部側に配置される回折格子セル12a2」が「回折格子形成領域22の面積が広い回折格子セル」とされている。
さらに、引用発明の回折格子セル12a1、12a2及び12a3のそれぞれには、回折格子が形成されていない領域(「回折格子形成領域22」以外の領域)が存在し、面積が異なる「回折格子」の間に間隔があることが理解できる。
ここで、図10は以下のものである。
[図:0001437062000015.jpg]
b 引用発明の、回折格子セル12a(12a1、12a2、12a3)は碁盤目状に並べられているから、各回折格子セル12aの形状、面積は同じである。また、引用発明の回折格子セル12aの中心と、「回折格子形成領域22」(あるいは回折格子形成領域22に形成される「回折格子」)の中心を一致させることが自然である(図10からも把握できることである。)。
そうすると、引用発明のパターン「文字「F」」においては、各「回折格子セル12a」(12a1~12a3)の「回折格子形成領域22」に形成された(面積が異なる)「回折格子」(の中心点)は、「文字「F」」における上下方向、及び、「文字「F」」における左右方向、それぞれに(「回折格子」同士の間に間隔を空けて)離散的に一定の間隔で形成されているといえる。
してみると、本願発明の「偏向セル」と、引用発明の「回折格子形成領域22」に形成された「回折格子」は、「記録面に離散的に一定の間隔で形成され」ている点で共通する。
(オ) 上記(ア)cより、引用発明の「回折格子セル12a」は、「格子ピッチ、格子角度、格子密度(図柄に対して回折格子セルが占める平面視上の面積割合)は、参照光が照射された際に再生される図柄に応じて設定され」、「格子ピッチをそれぞれ1.2μm程度、1.0μm程度および0.8μm程度」として、「カラー画像」を「再生」するものであるところ、「参照光」としての「可視光」の照射角(あるいは観察角、参考光のスペクトル特性、拡散特性等)等の条件が変化すれば(各回折格子により)回折される色(波長)及び強度(回折効率)は当然異なるものとなるから、引用発明の「回折格子セル12a」により再生され、観察される「カラー画像」は可変といえる。
そして、引用発明の「回折格子セル12a」は、「配置されたパターン形状の図柄」を再生させるから、本願発明の「可変カラー画像が複数の前記偏向セルを画素として記録され」という要件を満たす。
してみると、引用発明の「再生」される「カラー画像」は、本願発明の「可変カラー画像」に相当し、上記(イ)~(エ)より、各「回折格子セル12a」の「回折格子形成領域22」に形成された「回折格子」(「偏向セル」に相当)が、「ホログラムセル13aと同一平面上に形成され」、「参照光として可視光を照射することにより」、「カラー画像」を「再生」する引用発明は、本願発明の、「偏向セル毎に、凹凸構造の空間周波数として回折光の偏向方向の範囲が記録された偏向セルが、記録面に離散的に一定の間隔で形成され、可変カラー画像が複数の前記偏向セルを画素として記録され」との構成を備えるといえる。
また、引用発明においては、「回折格子図柄12は、参照光として可視光を照射することにより、回折格子セル12aが配置されたパターン形状の図柄が再生されるものであ」るところ、その回折、偏向原理からみて、再生されるカラー画像に強弱等の変化があるとしても、回折格子セル12aは再生に用いられる参照光が拡散光であっても機能する(引用文献2の【0049】の「回折格子図柄の再生に用いられる参照光については特に限定されるものではなく」との記載からも理解できる。)。
そうすると、引用発明は、本願発明の、「前記偏向セルは拡散光を偏向し、前記偏向セルを画素として記録された前記可変カラー画像を表示し」との構成を備えているということができる。
イ 空間位相変調器、再生像
(ア)a 引用発明の「ホログラム層1」の「ホログラム形成領域11」には、「点光源から入射した光を所望の光像へ変換する、位相型フーリエ変換ホログラムが記録されたホログラムセル13a」が、「ホログラム形成領域11の回折格子セル12aが配置されていない箇所を埋めるように配置され」たものである。
また、引用発明の図1~2からみて、引用発明は、「ホログラムセル13a」を複数含み、複数の「ホログラムセル13a」からなる領域が、「回折格子セル12a」のパターン(「文字「F」」)を囲んでいるといえる。
b また、上記ア(エ)より、引用発明の「ホログラム形成領域11」において、「ホログラムセル13a」は、「回折格子セル12a」と「同一平面」(上記ア(エ)より、本願発明の「記録面」に相当)に形成されるといえる。
(イ) 引用発明の「ホログラムセル13a」は、「凹凸表面を有し」、「原画像のフーリエ変換を介して得られたフーリエ変換像の位相情報を多値化して深さとして記録されたものであ」る。
(ウ) 上記(ア)a及び(イ)より、引用発明の複数の「ホログラムセル13a」は、「凹凸」構造の深さ、すなわち高さとして「位相」差分布が記録され、「点光源」からの光の「位相」を変調し、「所望の光像」を再生、表示する、といえる。
そうすると、引用発明の「点光源」及び「所望の光像」は、本願発明の「点光源」及び「再生像」に相当する。
また、上記ア(ウ)(本願発明の「凹凸構造」について)より、引用発明の「ホログラムセル13a」は、本願発明の、「前記凹凸構造の高さとして位相差分布が記録された」とされる、「空間位相変調器」に相当する。
してみると、上記(ア)bより、本願発明と、引用発明は、「点光源からの光の位相を変調し、再生像を表示する1つまたは複数の」、「前記凹凸構造の高さとして位相差分布が記録された」「空間位相変調器を前記記録面に備え」、「前記記録面を備え」ている点で共通する。
(エ) 上記(ア)a及び上記(ウ)より、引用発明の「回折格子セル12a」のパターン(「文字「F」」)を囲む、複数の「ホログラムセル13a」からなる領域は、本願発明の、「前記空間位相変調器を複数含み、前記再生像を表示する空間位相変調器領域」に相当する。
してみると、引用発明と、本願発明は、「前記空間位相変調器を複数含み、前記再生像を表示する空間位相変調器領域が、前記偏向セルを複数含んでなる画素を囲んでいる」との構成を備えるといえる。
ウ 堆積層
(ア) 引用発明は、「上記ホログラム層1の上記ホログラム形成領域11の凹凸表面に接するように形成された蒸着層2」「を有し」ているところ、引用発明2の図1及び「図1のA-A断面図」を示す図2からみて、引用発明の「蒸着層2」は、「ホログラム層1」の「ホログラムセル13a」及び「回折格子セル12a」が形成された「同一平面」(「記録面」)を覆っていることが分かる。
(イ) 上記(ア)より、引用発明の「蒸着層2」は、本願発明の「堆積層」に相当し、引用発明は、本願発明の、「堆積層が、前記記録面の一部または全部を覆い」との構成を備えるといえる。
エ 光学識別体
上記ア~ウより、引用発明の「偽造防止性および意匠性に優れた」「ホログラム構造体10」は、本願発明の「光学識別体」に相当する。
オ 一致点及び相違点
上記ア~エの対比結果を踏まえると、本願発明と、引用発明は、
「 回折格子により構成された偏向セル毎に、凹凸構造の空間周波数として回折光の偏向方向の範囲が記録された偏向セルが、記録面に離散的に一定の間隔で形成され、可変カラー画像が複数の前記偏向セルを画素として記録され、
堆積層が、前記記録面の一部または全部を覆い、
前記偏向セルは拡散光を偏向し、前記偏向セルを画素として記録された前記可変カラー画像を表示し、
点光源からの光の位相を変調し、再生像を表示する1つまたは複数の前記凹凸構造の高さとして位相差分布が記録された前記空間位相変調器を前記記録面に備え、前記記録面を備え、
前記空間位相変調器を複数含み、前記再生像を表示する空間位相変調器領域が、前記偏向セルを複数含んでなる画素を囲んでいる、光学識別体。」の構成で一致し、以下の点で一応相違する。
(相違点1)
本願発明においては、「前記記録面の偏向セルの間は」、「空間位相変調器で満たされて」いるのに対して、引用発明においては、このようなものであるかどうか不明である点。
(4) 判断
上記一応の相違点1について検討する。
ア 本願発明における、「前記記録面の偏向セルの間」が「空間位相変調器で満たされて」いる、について
(ア) 本件出願明細書の発明の詳細な説明の記載の[0057]、[0100]~[0107]、図14~16の記載に基づけば、請求項1に係る発明の発明特定事項のうち、「偏向セルが、記録面に離散的に一定の間隔で形成され」及び「前記記録面の偏向セルの間は」、「空間位相変調器で満たされており」との事項は、[0100]~[0101]、図14、及び、[0102]~[0104]、図15に示される態様に対応し、「前記空間位相変調器を複数含み、前記再生像を表示する空間位相変調器領域が、前記偏向セルを複数含んでなる画素を囲んでいる」との事項は、[0105]~[0107]、図16に示される態様に対応し、(請求項1の記載を引用する)請求項7あるいは(請求項1、あるいは請求項1の記載を引用する請求項7の記載を引用する)請求項8に記載の発明特定事項(「・・・それぞれ独立して」、あるいは「・・・セルの寸法が、前記空間位相変調器が設けられたセルの寸法の倍数または約数である」)との事項は、図15に示された態様に対応すると理解される。
(イ) 本件出願明細書の発明の詳細な説明の記載の、図14の態様についての記載[0100]~[0101]の記載からみて、(回折格子からなる)偏向セルの間を空間位相変調器で満たすとは、各偏向セル(12)と空間位相変調器(14)の間に隙間があってもよい(偏向セルの隙間を完全に埋めなくてもよい)と理解できる。
また、回折格子12の単位セルと、空間位相変調器14のセルとを別々に設け([0102])、回折格子12の偏向セルが収まるセル321の寸法と、空間位相変調器13のセル322の寸法とを個々に決めることができる([0104])、図15及び[0102]~[0104]の記載からみて、(回折格子からなる)偏向セルの間を空間位相変調器で満たすとは、偏向セル12の2方向の配列方向のうち、少なくとも1方向(図15における紙面左右方向)において、任意の偏向セル12の(当該方向における)間を任意の空間変調器14で満たしていればよい(図15のように、紙面上下方向の偏向セル12の間は空間位相変調器14が満たしていなくてもよい)と理解できる。
イ 引用発明の概略平面図は図1に示され、当該図1中の回折格子セル12a1~12a3の拡大図が図10に示されるところ、図1及び図10は、以下のものである。
【図1】
[図:0001437062000016.jpg]
【図10】
[図:0001437062000017.jpg]
ここで、引用発明の「回折格子図柄12」である「文字「F」」の左右に伸びる(幅方向に3個(12a1、12a2および12a3)配置した描画線により描画される)2つの辺、及び、当該2つの辺に挟まれる領域に存在する「ホログラムセル13a」に着目すると、「文字「F」」の左右に伸びる当該2つの辺に含まれる複数の「回折格子セル12a」の各「回折格子形成領域22」に形成された(離散的に一定の間隔で形成された)「回折格子」の、「文字「F」」の上下方向の間は、当該2つの辺に挟まれる「ホログラムセル13a」との間に隙間を空けて、複数の「ホログラムセル13a」で満たされているといえる。
そうすると、上記アで述べた理解に基づけば、引用発明は、本願発明の、「記録面の偏向セルの間は、空間位相変調器で満たされて」いるとの構成を備えているといえる。
してみると、一応の相違点1は、相違点ではない。
ウ 令和6年12月12日提出の意見書における請求人の主張について
(ア) 同意見書「[2]反論」において、「本願の請求項1は、「空間位相変調器領域が、前記偏向セルを複数含んでなる画素を囲んでいる」という技術的構成を備えておりますが、引用文献1~5のいずれにも、このような技術的構成は開示されておりません。」、「本願の請求項1に係る発明は、このような技術的構成によって、明細書の段落【0090】に記載されているように、偏向セル12に生じる小さなクラックを防止することが可能となります。この効果は、本願の請求項1に係る発明によって奏される独自の効果です。」、「引用文献1~5ともに、クラックの防止のための具体的な構成に関する開示も示唆もありません。」、「したがって、たとえ当業者であっても、引用文献1~5に基づいて、「空間位相変調器領域が、前記偏向セルを複数含んでなる画素を囲んでいる」というクラックを防止できる具体的な技術的構成を有する、本願の請求項1に係る発明を容易に想到できる筈はありません。」、「よって、本願の請求項1に係る発明は、新規性のみならず進歩性も備えており、理由1および理由2の拒絶理由に当たらないと思料いたします。」と主張する。
(イ) しかしながら、上記(1)~(3)及び上記ア~イで述べたとおり、本願発明は、引用文献2に記載された発明と同一であるから、上記(ア)の主張を採用することはできない。
エ まとめ
本願発明は、引用文献2に記載された発明である。あるいは、本願発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
本願発明は、引用文献2に記載された発明であるから、特許法29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、あるいは、引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
してみると、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-006131