特許拒絶査定不服審判
2025-005539
空間浮遊映像表示装置
- 審判番号
- 2025-005539
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-197896外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2025年04月10日
- 審決日
- 2026年02月09日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】マクセル株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人筒井国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (G06F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-197896「空間浮遊映像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 6月 9日出願公開、特開2022- 86081〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年11月30日を出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
令和6年 9月25日付け:拒絶理由通知書
令和6年11月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和7年 1月 9日付け:拒絶査定
令和7年 4月10日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和7年4月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年4月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された。(下線部は補正箇所である。)
「【請求項1】
空間浮遊映像表示装置であって、
映像を生成する表示装置と、
前記表示装置からの映像光を反射して空間浮遊映像を形成する再帰性反射部材と、
ユーザに対して前記空間浮遊映像の奥側であって前記空間浮遊映像に対して前記ユーザの逆側に配置され、かつ前記空間浮遊映像の裏側から前記ユーザを撮像するものであって、前記空間浮遊映像の光学像の位置と重複する撮像範囲を有する撮像部と、を備え、
前記空間浮遊映像表示装置は、
前記ユーザに対して前記空間浮遊映像の奥側に配置される前記撮像部が前記空間浮遊映像の裏側から撮像した撮像画像に複数の人物が写っている場合、前記空間浮遊映像表示装置の前記ユーザに対し、覗き込みされていることを通知する情報を、前記空間浮遊映像に表示する、
空間浮遊映像表示装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和6年11月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
空間浮遊映像表示装置であって、
映像を生成する表示装置と、
前記表示装置からの映像光を反射して空間浮遊映像を形成する再帰性反射部材と、
ユーザに対して前記空間浮遊映像の奥側に配置される撮像部と、を備え、
前記空間浮遊映像表示装置は、
ユーザに対して前記空間浮遊映像の奥側に配置される前記撮像部が撮像した撮像画像に複数の人物が写っている場合、前記空間浮遊映像表示装置のユーザに対し、覗き込みされていることを通知する情報を、前記空間浮遊映像に表示する、
空間浮遊映像表示装置。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「撮像部」及び「空間浮遊映像表示装置」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に係る発明と補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載、引用発明等
ア 引用文献1、引用発明
(ア)原査定の拒絶の理由において引用された特開2019-179401号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審による。以下同様。)。
「【0013】
図1に示す取引操作端末1は、横方向Xが1.5m程度、奥行方向Yが1m程度、鉛直方向Zが1.5m程度の大きさを有する。
取引操作端末1の筐体には、カメラ25(撮影部)と、タッチパネルディスプレイ26(表示部、操作部)と、カードスキャナ27と、カード排出口28aが、視認可能な位置に設けられている。
【0014】
タッチパネルディスプレイ26は、操作者Pが立った状態で、操作者Pの腰付近に位置する台座上に設けられている。タッチパネルディスプレイ26は、キャッシュカードを発行するための案内情報を表示すると共に、ボタン等の画像を表示して、操作者Pによるタッチ操作を受け付ける。タッチパネルディスプレイ26は、液晶パネル等で構成される表示部としての機能と、各種操作入力を行う操作部としての機能とを有する。
【0015】
筐体の上部には、カメラ25が設けられている。カメラ25は、タッチパネルディスプレイ26に表示された画面を見たり、タッチ操作をする操作者Pの顔を撮影可能な位置に配置されている。
タッチパネルディスプレイ26が設けられている台座よりも上側には、カードスキャナ27と、カード排出口28aとが設けられている。
カードスキャナ27は、本人確認に用いる運転免許証やマイナンバーカード等の本人確認用カードを挿入することで、本人確認用カードを読み取る装置である。カードスキャナ27は、例えば、本人確認用カードの記憶部であるICチップからデータを読み取って、個人番号等の本人確認カード情報を得たり、本人確認用カードの券面(表面及び裏面)をスキャンすることで、券面の画像データを得たりする。
カード排出口28aは、発行されたキャッシュカードを排出する。
【0016】
ここで、取引操作端末1が備える構成について、図2に基づきさらに説明する。
取引操作端末1は、上述したカメラ25と、タッチパネルディスプレイ26と、カードスキャナ27との他に、制御部10と、記憶部20と、カード発行部28とを、筐体の内部に備える。
制御部10は、取引操作端末1の全体を制御するCPU(中央処理装置)である。制御部10は、記憶部20に記憶されているオペレーティングシステム(OS)や各種アプリケーションプログラムを適宜読み出して実行することにより、上述したハードウェアと協働し、各種機能を実行する。
【0017】
制御部10は、画像取得部11と、属性取得部12(属性取得手段)と、閾値設定部14(閾値設定手段)と、画像判断部16(画像判断手段)と、覗き見判断部17(覗き見判断手段)と、不審者処理部18(不審者対応処理手段)とを備える。
【0018】
画像取得部11は、カメラ25が撮影した画像を取得する。画像取得部11が取得する画像は、操作者Pの顔画像を含む。画像取得部11は、操作者Pが取引操作端末1を操作中は、常にカメラ25から画像を取得し続ける。
属性取得部12は、画像取得部11が取得した画像から、操作者Pの属性を取得する。まず、属性取得部12は、公知技術によって画像から操作者Pを検出する。そして、属性取得部12は、操作者Pの画像に対して画像認識処理を行い、公知の技術を用いることで操作者Pの属性を取得する。取得する操作者Pの属性は、例えば、年齢、性別、身体的特徴等である。身体的特徴は、例えば、画像から補聴器を認識したり、顔の位置によって身長を認識したりすることによって得られる。そして、これらの認識結果によって、属性取得部12は、健常者か障害者かを判別する。例えば、身長によって、車いすに乗っている等が判別できる。
【0019】
閾値設定部14は、属性取得部12が取得した属性に基づいて、操作者Pに不審者を報知するための条件に用いる閾値を設定する。閾値は、例えば、高齢者や、身体的特徴によって健常者ではないと判別された場合には、低く設定される。なお、閾値は、性別によって異なってもよく、例えば、男性よりも女性の方が低く設定されるようにしてもよい。
これは、例えば、不審者が操作者Pの背後にいた場合に、高齢者より若者の方が、気配を感じて気付きやすい、という属性に特有の特徴に基づく。
【0020】
画像判断部16は、画像取得部11が取得した画像を分析し、操作者P以外の第三者を画像に含むか否かを判断する。
覗き見判断部17は、画像判断部16により第三者を画像に含むと判断された場合に、閾値に基づいて覗き見であるか否かを判断する。
また、覗き見判断部17は、顔画像記憶部22を参照し、第三者の画像が、顔画像記憶部22に記憶された画像に含まれる場合に、その第三者は、覗き見をしているのではないと判断する。
具体的には、覗き見判断部17は、例えば、第三者の画像への写り込み時間や、第三者の視線の向きや、操作者Pとの距離等に応じて、覗き見であるか否かを判断する。覗き見判断部17は、この覗き見であるか否かの判断を、閾値に基づいて行う。例えば、閾値に応じて、第三者の画像への写り込み時間の長短が変わり、操作者Pとの距離の長短が変わる。
【0021】
不審者処理部18は、覗き見判断部17により覗き見であると判断された場合に、不審者対応処理を行う。具体的には、不審者処理部18は、操作者Pが操作するタッチパネルディスプレイ26を、注意を促す画面に変えて、操作者Pに報知する。」
「【0036】
ここで、図7は、操作者Pの背後に不審者Qがいる場合の例を示す。不審者Qは、操作者Pの操作画面を背後から見ている者である。取引操作端末1の制御部10は、操作者Pと共に画像に写り込んでいる不審者Qの距離や視線の向きにより、個人情報等の操作者情報を覗き見しているか否かを判断する。
図6(B)は、不審者Qが覗き見をしていると判断され、タッチパネルディスプレイ26に操作者情報を出力したり、出力しようとしたりしている場合に、タッチパネルディスプレイ26に表示される報知画面31を示す。報知画面31は、不審者Qが近くにいることを、操作者Pに知らせると共に、それまで表示されていた操作者Pの個人情報等の表示を行わなくする。このように、操作者Pに不審者Qがいることを報知することで、操作者Pは、周囲を確認して、不審者Qの存在を確認できる。
ここで、不審者Qがいるため処理を中止したい場合には、操作者Pは、ボタン31bを選択することで、制御部10は、図6(C)に示す中止画面32をタッチパネルディスプレイ26に表示する。
また、不審者Qがその場を離れる等し、処理を続けたい場合には、操作者Pは、ボタン31aを選択することで、制御部10は、以降の処理を続行する。」
「【図2】
[図:0001435005000001.jpg]
」
「【図6】(B)
[図:0001435005000002.jpg]
」
「【図7】
[図:0001435005000003.jpg]
」
(イ)上記(ア)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「取引操作端末1であって、
取引操作端末1の筐体には、カメラ25と、タッチパネルディスプレイ26が設けられており、
タッチパネルディスプレイ26は、キャッシュカードを発行するための案内情報を表示すると共に、ボタン等の画像を表示し、液晶パネル等で構成される表示部としての機能を有し、
筐体の上部には、カメラ25が設けられ、カメラ25は、タッチパネルディスプレイ26に表示された画面を見たり、タッチ操作をする操作者Pの顔を撮影可能な位置に配置されており、
取引操作端末1は、制御部10を備え、制御部10は、画像取得部11と、画像判断部16と、覗き見判断部17と、不審者処理部18とを備え、
画像取得部11は、カメラ25が撮影した画像を取得し、画像取得部11が取得する画像は、操作者Pの顔画像を含み、
画像判断部16は、画像取得部11が取得した画像を分析し、操作者P以外の第三者を画像に含むか否かを判断し、
覗き見判断部17は、画像判断部16により第三者を画像に含むと判断された場合に、覗き見であるか否かを判断し、
不審者処理部18は、覗き見判断部17により覗き見であると判断された場合に、操作者Pが操作するタッチパネルディスプレイ26を、注意を促す画面に変えて、操作者Pに報知し、
操作者Pの背後に不審者Qがいる場合の例では、取引操作端末1の制御部10は、操作者Pと共に画像に写り込んでいる不審者Qの距離や視線の向きにより、個人情報等の操作者情報を覗き見しているか否かを判断し、
不審者Qが覗き見をしていると判断され、タッチパネルディスプレイ26に操作者情報を出力したり、出力しようとしたりしている場合に、タッチパネルディスプレイ26に表示される報知画面31は、不審者Qが近くにいることを、操作者Pに知らせる、
取引操作端末1。」
イ 引用文献2、引用文献3、周知技術
(ア)原査定の拒絶の理由において引用された特開2019-40096号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0082】
図8に示すように、空中像形成光学系1Eは、拡散部12、偏光方向変更部14、画像情報付与部16、光分岐部80、結像部20、及び、偏光方向選択部30を備えている。」
「【0088】
空中像形成光学系1Eでは、拡散部12に光L0が入射すると、拡散部12によって光L0が角度範囲θで拡散され、光L1として偏光方向変更部14に入射する。偏光方向変更部14によって光L1の偏光方向が所定の方向に変更され、光L11として画像情報付与部16に入射する。第一実施形態の空中像形成光学系1Aと同様に、画像情報付与部16によって、光L11に画像情報Iに応じた偏光方向のパターン及び波長情報が付与される。
【0089】
画像情報付与部16から出射された第二の光L12は、D3方向に沿って進行し、光分岐部80に入射面81から入射する。光分岐部80に入射した第二の光L12の一部(略半分)は、入射面81で正反射され、D5方向に沿って出射され、再帰性反射材20Bに入射する。再帰性反射材20Bに入射した第二の光L12は、再帰反射面24の球体28に入射し、屈折及び反射した後、光軸Aに対して入射角度と同じ角度で、入射方向とは逆向きに球体28から出射される。即ち、第二の光L12は、球体28で再帰反射される。再帰性反射材20Bによって再帰反射されて出射された第二の光L14は、D4方向沿って進行し、再び光分岐部80に入射面81から入射し、光分岐部80を透過し、そのままD4方向に沿って進行する。
【0090】
光分岐部80に入射した第二の光L12の残部(略半分)は、光分岐部80を透過し、D3方向に沿って出射され、再帰性反射材20Cに入射する。再帰性反射材20Cに入射した第二の光L12は、再帰性反射材20Bについて説明した内容と同様に、球体28で再帰反射される。再帰性反射材20Cによって再帰反射されて出射された第二の光L15は、D3方向とは逆向きに沿って進行し、光分岐部80に出射面82から入射する。出射面82に入射した第二の光L15は、入射面81で正反射され、第二の光L14と合流し、出射面82からD4方向に沿って出射される。
【0091】
合流した第二の光L14,L15は、第二の光L13として、D4方向に沿って進行し、偏光方向選択部30に入射する。偏光方向選択部30に入射した第二の光L13のうち、偏光方向が所定の方向である光L13は、偏光方向選択部30を透過し、所定の結像位置P2で結像し、実像である空中像Mを形成する。偏光方向選択部30に入射した光L13のうち、偏光方向が所定の方向とは異なる光L13は、偏光方向選択部30で反射され、観察者Eには視認されない。」
「【図8】
[図:0001435005000004.jpg]
」
(イ)上記(ア)から、引用文献2には次の事項が記載されていると認められる。
「拡散部12によって光L0が角度範囲θで拡散され、光L1として偏光方向変更部14に入射し、偏光方向変更部14によって光L1の偏光方向が所定の方向に変更され、光L11として画像情報付与部16に入射し、画像情報付与部16によって、光L11に画像情報Iに応じた偏光方向のパターン及び波長情報が付与され、
画像情報付与部16から出射された第二の光L12は、光分岐部80に入射面81から入射し、光分岐部80に入射した第二の光L12の一部は、入射面81で正反射され、再帰性反射材20Bに入射し、再帰性反射材20Bによって再帰反射されて出射された第二の光L14は、光分岐部80を透過し、
光分岐部80に入射した第二の光L12の残部は、再帰性反射材20Cに入射し、再帰性反射材20Cによって再帰反射されて出射された第二の光L15は、入射面81で正反射され、第二の光L14と合流し、
合流した第二の光L14,L15は、第二の光L13として、偏光方向選択部30に入射し、偏光方向選択部30に入射した第二の光L13のうち、偏光方向が所定の方向である光L13は、偏光方向選択部30を透過し、所定の結像位置P2で結像し、実像である空中像Mを形成する、
空中像形成光学系1E。」
(ウ)原査定の拒絶の理由において引用された特開2019-128722号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0022】
図5は、ビームスプリッタ46と再帰性反射シート47を使用する空中画像形成装置31Dの原理図である。ここで、ビームスプリッタ46は、表示デバイス45の表示面に対して45°の角度で配置されている。また、再帰性反射シート47は、ビームスプリッタ46による表示画像の反射方向に、表示デバイス45の表示面に対して90°の角度に配置されている。
空中画像形成装置31Dの場合、表示デバイス45から出力される光は、ビームスプリッタ46によって再帰性反射シート47の方向に反射され、次に再帰性反射シート47で再帰反射され、ビームスプリッタ46を透過して空中で結像される。光が結像する位置に空中画像10が形成される。」
「【図5】
[図:0001435005000005.jpg]
」
(エ)上記(ウ)から、引用文献3には次の事項が記載されていると認められる。
「表示デバイス45から出力される光は、ビームスプリッタ46によって再帰性反射シート47の方向に反射され、次に再帰性反射シート47で再帰反射され、ビームスプリッタ46を透過して空中で結像され、光が結像する位置に空中画像10が形成される、
空中画像形成装置31D。」
(オ)上記(イ)の引用文献2記載事項の「空中像形成光学系1E」、上記(エ)の引用文献3記載事項の「空中画像形成装置31D」は、いずれも、「映像を生成する表示装置と、前記表示装置からの映像光を反射して空間浮遊映像を形成する再帰性反射部材と、を備える空間浮遊映像表示装置」といえるものであり、このように、
「映像を生成する表示装置と、前記表示装置からの映像光を反射して空間浮遊映像を形成する再帰性反射部材と、を備える空間浮遊映像表示装置」
は周知技術である。
ウ 引用文献4
(ア)原査定の拒絶の理由において引用された特開2008-276274号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0051】
撮像部1は、具体的には、ビデオカメラやCCD(Charge Coupled Devices,電化結合素子)カメラ等の静止画像や動画像を撮影可能なカメラである。撮像部1は、ユーザが情報処理装置が表示する画面を見ている状態で、ユーザを撮影できるように情報処理装置に設置される。本実施の形態では、情報処理装置のユーザとユーザ周辺とを含む画像を撮影できるように、画像表示装置の前方を撮影するように設置される。図2は、撮像部1が撮影する画像の例を示す説明図である。図2のように、撮像部1は、使用者(ユーザ)と使用者周辺の他人等を含む画像を撮影する。
【0052】
また、撮像部1は、情報処理装置のユーザの顔等を良好な状態で撮影できるようにするために、ユーザが注視する情報処理装置の液晶モニタ画面やLED表示部等のデータ出力部の周囲に設置されていることが好ましい。
(中略)
【0054】
顔検出手段21は、撮像部1が撮影した画像に含まれる顔を検出する機能を備える。本実施の形態では、顔検出手段21は、撮像部1が撮影した画像に対して所定の顔検出処理を行って、画像に含まれる顔を検出する。。例えば、顔検出手段21は、まず、注目画素の階調値が周囲の画素の階調値よりも小さい点を黒目の候補と仮定し、画像中から黒目の位置候補を検出する。また、顔検出手段21は、検出した黒目の位置の組合せを顔の候補と仮定する。そして、顔検出手段21は、そのようにして求めた顔の候補に対して、予めニューラルネットワーク等により学習した顔と顔以外の画像を判別する判別器を用いて、各顔の候補が本当に顔であるか否かを判定する。その判定の結果、顔検出手段21は、顔であると判定した顔の候補の位置を、顔が実際に存在する可能性が高い場所として出力する。
(中略)
【0056】
覗き見判定手段22は、顔検出手段21による顔検出結果(検出した顔の数)に基づいて、情報処理装置の表示画面がユーザ以外の他人によって覗き見されているか否かを判定する機能を備える。以下、情報処理装置の表示画面がユーザ以外の他人によって覗き見されている状態であることを、「覗き見状態」ともいう。本実施の形態では、覗き見判定手段22は、顔検出手段21が検出した検出顔数が所定の閾値(例えば、所定値n個)以上であるか否かを判断する。覗き見判定手段22は、顔検出手段21が検出した検出顔数がn個未満であると判断した場合、他人による覗き見状態ではないと判定する。また、覗き見判定手段22は、検出顔数がn個以上であると判断した場合、他人による覗き見状態であると判定する。なお、本実施の形態において、所定値nは、予め設定された値(例えば、n≧1)である。」
(イ)上記(ア)から、引用文献4には、次の技術(以下「引用文献4記載技術」という。)が記載されていると認められる。
「顔検出手段21は、撮像部1が撮影した画像に対して所定の顔検出処理を行って、画像に含まれる顔を検出し、
覗き見判定手段22は、顔検出手段21が検出した検出顔数が所定の閾値(例えば、所定値n個)以上であるか否かを判断し、検出顔数がn個以上であると判断した場合、他人による覗き見状態であると判定する」技術。
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「取引操作端末1」に設けられる「タッチパネルディスプレイ26」は、「液晶パネル等で構成される表示部としての機能を有」するから、本件補正発明の「表示装置」に相当する。
また、引用発明の「タッチパネルディスプレイ26」は、「案内情報」や「ボタン等の画像」を表示するから、表示される映像を生成しているといえる。
したがって、引用発明における「案内情報」や「ボタン等の画像」を表示する「タッチパネルディスプレイ26」は、本件補正発明の「映像を生成する表示装置」に相当する。
(イ)上記(ア)を踏まえると、引用発明の「取引操作端末1」は、後述する相違点は別として、本件補正発明の「空間浮遊映像表示装置」と、「映像表示装置」である点で共通する。
(ウ)引用発明の「カメラ25」、「操作者P」は、それぞれ、本件補正発明の「撮像部」、「ユーザ」に相当する。
また、引用発明において、「カメラ25」は、「取引操作端末1」の「筐体の上部」であって、「操作者Pの顔を撮影可能な位置」に配置され、また、「カメラ25が撮影した画像」は、「操作者P」と「操作者P以外の第三者」を含むものであることから、引用発明の「カメラ25」は、「操作者P」に対して前側に配置され、かつ「操作者P」の前側から「操作者P」を撮影するものであり、「操作者P」と「操作者P以外の第三者」が撮影画像に含まれるような撮影範囲を有することは明らかである。
したがって、引用発明における、「取引操作端末1」の「筐体の上部」であって、「操作者Pの顔を撮影可能な位置」に配置される「カメラ25」と、本件補正発明の「ユーザに対して前記空間浮遊映像の奥側であって前記空間浮遊映像に対して前記ユーザの逆側に配置され、かつ前記空間浮遊映像の裏側から前記ユーザを撮像するものであって、前記空間浮遊映像の光学像の位置と重複する撮像範囲を有する撮像部」とは、「ユーザに対して所定の側に配置され、かつ所定の側から前記ユーザを撮像するものであって、所定の撮像範囲を有する撮像部」である点で共通する。
(エ)引用発明は、「カメラ25が撮影した画像」について「操作者P以外の第三者」を含むと判断され、かつ「覗き見である」と判断されると、「タッチパネルディスプレイ26」を「注意を促す画面」に変えて、「操作者Pに報知」するものである。
ここで、「操作者P以外の第三者」が含まれる「カメラ25が撮影した画像」には、「操作者P」及び「操作者P以外の第三者」からなる複数の人物が写っていることは明らかである。また、「注意を促す画面」は、「操作者P」に対し、「第三者」が「覗き見」していることを「報知」する情報であるといえる。
したがって、上記(ウ)を踏まえると、引用発明における、「カメラ25が撮影した画像」について「操作者P以外の第三者」を含むと判断され、かつ「覗き見である」と判断されると、「タッチパネルディスプレイ26」を「注意を促す画面」に変えて、「操作者Pに報知」することと、本件補正発明の「前記ユーザに対して前記空間浮遊映像の奥側に配置される前記撮像部が前記空間浮遊映像の裏側から撮像した撮像画像に複数の人物が写っている場合、前記空間浮遊映像表示装置の前記ユーザに対し、覗き込みされていることを通知する情報を、前記空間浮遊映像に表示する」こととは、「前記ユーザに対して所定の側に配置される前記撮像部が所定の側から撮像した撮像画像に複数の人物が写っている場合、前記映像表示装置の前記ユーザに対し、覗き込みされていることを通知する情報を、表示する」点で共通する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「映像表示装置であって、
映像を生成する表示装置と、
ユーザに対して所定の側に配置され、かつ所定の側から前記ユーザを撮像するものであって、所定の撮像範囲を有する撮像部と、を備え、
前記映像表示装置は、
前記ユーザに対して所定の側に配置される前記撮像部が所定の側から撮像した撮像画像に複数の人物が写っている場合、前記映像表示装置の前記ユーザに対し、覗き込みされていることを通知する情報を、表示する、
映像表示装置。」
(相違点)
(相違点1)
「映像表示装置」について、本件補正発明では「空間浮遊映像表示装置」であるのに対し、引用発明では、「取引操作端末1」は「映像表示装置」であるとはいえるものの、「空間浮遊映像表示装置」であることは特定されていない点。
(相違点2)
本件補正発明では「前記表示装置からの映像光を反射して空間浮遊映像を形成する再帰性反射部材」を備えるのに対し、引用発明ではそのように特定されていない点。
(相違点3)
「撮像部」について、本件補正発明では「ユーザに対して前記空間浮遊映像の奥側であって前記空間浮遊映像に対して前記ユーザの逆側に配置され、かつ前記空間浮遊映像の裏側から前記ユーザを撮像するものであって、前記空間浮遊映像の光学像の位置と重複する撮像範囲を有する」ものであるのに対し、引用発明では、「配置され」る位置が「ユーザに対して前記空間浮遊映像の奥側であって前記空間浮遊映像に対して前記ユーザの逆側に」であることが特定されるものではなく、「前記ユーザを撮像する」方向が「前記空間浮遊映像の裏側から」であることが特定されるものではなく、「撮像範囲」が「前記空間浮遊映像の光学像の位置と重複する」ものであることが特定されるものではない点。
(相違点4)
「覗き込みされていることを通知する情報」を「表示する」のが、本件補正発明では「撮像画像に複数の人物が写っている場合」であるのに対し、引用発明では、「カメラ25が撮影した画像」に「操作者P以外の第三者」を含む場合である点。
(相違点5)
「覗き込みされていることを通知する情報」の「表示」について、本件補正発明では「空間浮遊映像」に表示するのに対し、引用発明では「タッチパネルディスプレイ26」に表示する点。
(4)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1、2、5について
「空中浮遊映像」に関して相互に関連する相違点1、2、5について、まとめて検討する。
上記(2)イ(オ)のとおり、「映像を生成する表示装置と、前記表示装置からの映像光を反射して空間浮遊映像を形成する再帰性反射部材と、を備える空間浮遊映像表示装置」は周知技術であり、ここで、映像表示装置においてより効果的な表示を行うことは一般的な技術課題であるから、引用発明に当該周知技術を適用して、「取引操作端末1」に「表示装置からの映像光を反射して空間浮遊映像を形成する再帰性反射部材」を設けて「空間浮遊映像表示装置」とし、相違点1、2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、その場合、相違点5に係る「注意を促す画面」が「空間浮遊映像」に表示される構成に至ることは明らかである。
イ 相違点3について
引用発明は「取引操作端末1」であるから、引用発明に上記アのとおりに周知技術を適用して、相違点1、2、5に係る構成とする場合、空間浮遊映像の表示位置は、「操作者P」が取引操作が可能なことを条件に設定すべきところ、「操作者P」及び当該表示位置との関係で「カメラ25」の配置、方向及び撮像範囲をそれぞれどのようにするかは、「カメラ25が撮影した画像」に「操作者P以外の第三者を画像に含」み得る状態が維持され、かつ上記条件が満足されるように適宜決定する設計的事項であり、「カメラ25」が、「操作者P」に対して「空間浮遊映像」の奥側であって前記「空間浮遊映像」に対して前記「操作者P」の逆側に配置され、前記「空間浮遊映像」の裏側から前記「操作者P」を撮像し、前記「空間浮遊映像」の光学像の位置と重複する撮像範囲を有するものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。
ウ 相違点4について
引用発明では、「注意を促す画面」を表示するのが、「カメラ25が撮影した画像」に「操作者P以外の第三者」が含まれる場合であるものの、当該「画像」に「複数の人物が写っている場合」であることが明示的に特定されるものではない。しかしながら、当該「画像」に「操作者P以外の第三者」が含まれる場合、当該「画像」に「操作者P」及び「操作者P以外の第三者」からなる複数の人物が写っていることは明らかであるから、当該「画像」に「複数の人物が写っている場合」であるといえる。したがって、相違点4は実質的な相違点でない。
仮に、相違点4が実質的な相違点であったとしても、上記(2)ウ(イ)の引用文献4記載技術は、撮像部が撮影した画像に含まれる顔、つまり人物を検出し、検出した人物の数が所定値n個以上、つまり複数であると判断された場合、他人による覗き見状態であると判定するものであるといえるところ、引用発明と引用文献4記載技術とは、いずれも、画像表示装置における覗き見防止という点で課題が共通し、撮影画像を分析する点で作用機能が共通するから、引用発明において、引用文献4記載技術を適用して、「注意を促す画面」を表示するのを、「カメラ25が撮影した画像」に「操作者P以外の第三者」を含む場合であることに代えて、「カメラ25が撮影した画像」に含まれる人物が複数であると判断された場合とし、相違点4に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
エ 作用効果について
これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献4記載技術及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
オ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「本願の請求項1に係る発明において、特に、「撮像部」は、「ユーザに対して前記空間浮遊映像の奥側であって前記空間浮遊映像に対して前記ユーザの逆側に配置され、かつ前記空間浮遊映像の裏側から前記ユーザを撮像するものであって、前記空間浮遊映像の光学像の位置と重複する撮像範囲を有する」ものであります。このような撮像部を含む空間浮遊映像表示装置は、引用文献1-7において、記載も示唆もされておりません。」と主張する。
しかしながら、本件補正発明において、上記のように規定されている点は、相違点3において引用発明と相違するものの、当該相違点3については上記イで検討したとおりであり、引用発明及び周知技術から容易に想到し得るものであるから、請求人の上記主張は採用できない。
カ したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献4記載技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和7年4月10日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和6年11月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-9に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1-4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1.特開2019-179401号公報
引用文献2.特開2019-40096号公報
引用文献3.特開2019-128722号公報
引用文献4.特開2008-276274号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1-4の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「撮像部」及び「空間浮遊映像表示装置」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(4)に記載したとおり、引用発明、引用文献4記載技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献4記載技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-005539