特許拒絶査定不服審判
2025-005886
仮想コントローラのための無限ドラッグ及びスワイプ
- 審判番号
- 2025-005886
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-554299
- 請求日
- 2025年04月17日
- 審決日
- 2025年12月22日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】バンジー, インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】森下 賢樹
- 審判長/審判官
- 審判長 篠塚 隆
- 審判官 坂庭 剛史
- 審判官 野崎 大進
- 分類
- P18 .575-Z (G06F) / P18 .121-Z (G06F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-554299「仮想コントローラのための無限ドラッグ及びスワイプ」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 9月15日国際公開、WO2022/192492、令和 6年 3月27日国内公表、特表2024-513672〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2022(令和4)年3月10日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2021年3月10日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和5年10月24日付けで手続補正がなされ、同年10月31日付けで手続補正がなされ、令和6年8月6日付けで手続補正がなされ、同年9月3日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月21日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年12月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、令和7年4月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
第2 令和7年4月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年4月17日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
タッチスクリーンディスプレイ内の第1の位置で検出されたタッチ入力の指示を受信するステップと、
前記第1の位置と、前記タッチスクリーンディスプレイ内の第2の位置と、の間の距離が距離閾値未満であることに少なくとも部分的に基づいて、方向入力が開始されたと特定するステップと、
第1の方向に沿ったタッチ入力が連続的に検出されている間に、前記方向入力の第1の移動ベクトルを特定するステップと、
前記タッチ入力が前記第1の方向の反転である第2の方向に継続的に沿っている間は、前記方向入力の第2の移動ベクトルに基づいて、前記方向入力が反転入力を含んでいることを特定するステップと、
前記第1の移動ベクトルの反転であると特定された前記第2の移動ベクトルに基づいて、前記タッチスクリーンディスプレイ内のアバターに前記反転入力に対応する反転アクションを行わせ、前記アバターの向きを変えさせ、方向を変えさせるステップと、
を含み、
前記第1の移動ベクトルと前記第2の移動ベクトルとの間の角度変化は、変化閾値より大きいことを特徴とする方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和6年11月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
タッチスクリーンディスプレイ内の第1の位置で検出されたタッチ入力の指示を受信するステップと、
前記第1の位置と、前記タッチスクリーンディスプレイ内の第2の位置と、の間の距離が距離閾値未満であることに少なくとも部分的に基づいて、方向入力が開始されたと特定するステップと、
第1の方向に沿ったタッチ入力が連続的に検出されている間に、前記方向入力の第1の移動ベクトルを特定するステップと、
前記タッチ入力が前記第1の方向の反転である第2の方向に継続的に沿っている間は、前記方向入力の第2の移動ベクトルに基づいて、前記方向入力が反転入力を含んでいることを特定するステップと、
前記第1の移動ベクトルの反転であると特定された前記第2の移動ベクトルに基づいて、前記タッチスクリーンディスプレイ内のアバターに前記反転入力に対応する反転アクションを行わせるステップと、
を含み、
前記第1の移動ベクトルと前記第2の移動ベクトルとの間の角度変化は、変化閾値より大きいことを特徴とする方法。」
2 補正の適否
上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記第1の移動ベクトルの反転であると特定された前記第2の移動ベクトルに基づいて、前記タッチスクリーンディスプレイ内のアバターに前記反転入力に対応する反転アクションを行わせるステップ」を「前記第1の移動ベクトルの反転であると特定された前記第2の移動ベクトルに基づいて、前記タッチスクリーンディスプレイ内のアバターに前記反転入力に対応する反転アクションを行わせ、前記アバターの向きを変えさせ、方向を変えさせるステップ」に限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献等
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった特開2016-201028号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様)。
a 「【0017】
本発明の一態様としての方法は、ディスプレイ及び接触型位置入力装置を有し、前記接触型位置入力装置上へのタッチに応じたタッチ位置を前記接触型位置入力装置上の入力位置に対応する座標平面における座標として取得する電子装置において実行されるゲームのための方法であって、前記座標平面上に操作基準位置を設定するステップと、前記接触型位置入力装置上へのタッチがされているかを判断するステップと、前記接触型位置入力装置上へのタッチがされている場合に取得されるタッチ位置に応じて前記座標平面上に操作位置を設定するステップと、前記操作基準位置と前記操作位置に基づいて、前記ディスプレイ上に表示されるゲームにおけるオブジェクトを移動させるステップと、前記操作位置を変位基準位置として保持するステップと、前記変位基準位置からの所定条件を満たすタッチ位置移動を検出するステップと、前記所定条件を満たすタッチ位置移動を検出した場合に前記操作基準位置を前記座標平面上に再設定するステップと、を有し、前記所定条件は、前記変位基準位置として保持された前記操作位置を取得した後に取得されるタッチ位置と前記操作基準位置と前記変位基準位置との三点で形成される三角形のいずれかの内角が所定基準を満たすことを少なくとも含む方法である。」
b 「【0030】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態における、本発明の動作について説明する。本実施形態においては、電子装置100としてスマートフォンを用い、当該スマートフォンによって実行されるゲームにおいて、タッチパネル300に表示されるユーザが操作するオブジェクト(プレイヤキャラクタ)に対する制御を行う。」
c 「【0033】
図3bは、ユーザの指301がタッチパネル300にタッチした様子を示す。ステップ401では、タッチパネル300へのタッチを判定し、タッチしていると判定された場合はタッチ位置を座標として検出する。ステップ402において、検出された座標をP(0)=(x(0)、y(0))として取得し、記憶部104に格納する。続いて、ステップ403において、タッチパネル300上のタッチ位置の座標(x(0)、y(0))に操作基準位置PA=(Ax、Ay)を設定し、記憶部104に格納する。図3bは、操作基準位置PAを設定した様子もまた示す。操作基準位置は、タッチ位置の座標(x(0)、y(0))に基づいて所定の位置ずらした場所に設定することもできる。さらに操作基準位置は、予め決定された所定の座標であっても構わない。この場合、ステップ401~403は省略することができる。」
d 「【0036】
ステップ407において、カウンタNをインクリメントする。続いてステップ408において、ユーザがタッチを継続しているか否かを判定する。ユーザがタッチパネル300から指301を離した場合、本フローチャートのフローを終了する。フローが終了した場合は、再度図4aのスタートからフローを開始する。なお、予め決定された所定の座標を操作基準位置とし、ステップ401~403を省略する場合は、当該ステップ408からフローを開始する。
【0037】
ステップ408において、ユーザがタッチしていると判定した場合には、タッチ位置を座標として検出する。ステップ409において、検出された座標をP(N)=(x(N)、y(N))として取得し、操作位置PC=(Cx、Cy)をP(N)に設定し、P(N)とPCを記憶部104に格納する。なお最初のステップ409処理時においてはカウンタNが1であるので、取得する座標はP(1)=(x(1)、y(1))であり、当該座標が操作位置PCとなる。図3c、図3dに操作位置PCを設定した様子を示す。操作位置PCはステップ409でP(N)を取得する毎に更新される。」
e 「【0039】
ステップ411においても、ステップ410と同様に操作基準位置と操作位置に基づいた処理であり、好ましくは操作基準位置から操作位置への方向及び操作基準位置と操作位置の距離の少なくとも一方に基づいてオブジェクト311を移動させる。ここで当該方向及び距離の両方に基づいてオブジェクト311を移動させる場合の処理内容の一例を以下に記載する。操作基準位置PAからの操作位置PCのX座標における変位量Dx(AC)及びY座標における変位量Dy(AC)を以下の式に基づいて算出して、記憶部104に格納する。ここで変位量は絶対値ではなく、正負を含んだ値である。」
f 「【0045】
続いてステップ412において、カウンタNが1であるか否かを判定する。当該ステップの処理は、最初のステップ412処理時においてはカウンタNが1であるため、ステップ413へ進む。ステップ413において、変位基準位置PB=(Bx、By)をP(1)の座標に設定し、記憶部104に格納する。図3c、図3dに変位基準位置PBを設定した様子を示す。つまり、ステップ412においては変位基準位置の設定有無が判定され、設定されていない場合にはステップ413において変位基準位置を設定し、ステップ406に戻る。」
g 「【0056】
例えば図3eは、図3dの状態からユーザがタッチ位置の移動を行い、当該タッチ位置移動が上記ステップ414~416の条件を満たす場合の一例を示す。これらの条件を満たした時点で、図3hに示すように、元の変位基準位置PBの位置に操作基準位置PAが再設定される。当該再設定により、図3dにおいて右上方向を向いていた操作基準位置PAから操作位置PCへの方向が、図3hにおいて左下方向へと変更された。つまりオブジェクト311を直前まで移動させていた方向と反対方向に移動させることができる。このときユーザは、速度を落とさずにオブジェクト311を反転させて反対方向に移動させることができるため、迫ってくる障害物(図示せず)から素早く回避することができる。なお、ステップ417において、操作基準位置PAの再設定先の座標は変位基準位置PBの座標に限定されず、変位基準位置PB及び/又は操作位置PCの座標に基づいた所定の座標に再設定することができる。例えば、PBとPCとを結ぶ直線上の任意の点に再設定することができる。操作位置PCの座標に再設定してもよい。」
h 「【0065】
上記の第1の実施形態は、操作基準位置PAを再設定するのに必要なタッチ位置移動の条件として、角度条件(ステップ414)、距離条件(ステップ415)、及び速度条件(ステップ416)を含む実施形態である。角度条件判定により、オブジェクト311を反転させて直前まで移動させていた方向とは反対方向に移動させるというユーザの意図を判定することができる。例えば、直線ABと直線BCとのなす角度αが25度以下である場合には、オブジェクト311を反転させて直前まで移動させていた方向とは反対方向に移動させたいというユーザの意図を示すものであると考えられる。また、距離条件と速度条件判定により、タッチ位置がわずかに移動した場合には操作基準位置を再設定しないことができる。これにより、ユーザの反転操作の意図に基づかない手ぶれ等による操作基準位置の再設定を防止することができる。またこれらの3つの条件をすべて満たす場合にのみ操作基準位置を再設定することにより、ユーザにとって意図しない操作基準位置の再設定が行われる可能性を低減させることができる。ただし、これらのすべての条件判定を行わなくとも、少なくとも角度条件判定を行えばユーザの意図を判定することはできる。」
i 「【0071】
本フローチャートにおいては、ステップ414の角度条件を満たすと操作基準位置を再設定する。これにより判定処理の条件を減らすことができる。本実施形態は、頻繁に反転操作が必要となる場合に有効でありうる。」
(イ)引用文献1に記載された発明(引用発明)
上記(ア)の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ディスプレイ及び接触型位置入力装置を有し、前記接触型位置入力装置上へのタッチに応じたタッチ位置を前記接触型位置入力装置上の入力位置に対応する座標平面における座標として取得する電子装置において実行されるゲームのための方法であって、前記座標平面上に操作基準位置を設定するステップと、前記接触型位置入力装置上へのタッチがされているかを判断するステップと、前記接触型位置入力装置上へのタッチがされている場合に取得されるタッチ位置に応じて前記座標平面上に操作位置を設定するステップと、前記操作基準位置と前記操作位置に基づいて、前記ディスプレイ上に表示されるゲームにおけるオブジェクトを移動させるステップと、前記操作位置を変位基準位置として保持するステップと、前記変位基準位置からの所定条件を満たすタッチ位置移動を検出するステップと、前記所定条件を満たすタッチ位置移動を検出した場合に前記操作基準位置を前記座標平面上に再設定するステップと、を有し、前記所定条件は、前記変位基準位置として保持された前記操作位置を取得した後に取得されるタッチ位置と前記操作基準位置と前記変位基準位置との三点で形成される三角形のいずれかの内角が所定基準を満たすことを少なくとも含む方法であり、
電子装置100としてスマートフォンを用い、当該スマートフォンによって実行されるゲームにおいて、タッチパネル300に表示されるユーザが操作するオブジェクト(プレイヤキャラクタ)に対する制御を行い、
タッチパネル300へのタッチを判定し、タッチしていると判定された場合はタッチ位置を座標として検出し、タッチパネル300上のタッチ位置の座標に操作基準位置PAを設定し、
ユーザがタッチを継続しているか否かを判定し、
ユーザがタッチしていると判定した場合には、タッチ位置を座標として検出し、検出された座標を取得し、操作位置PCを設定し、
操作基準位置から操作位置への方向及び操作基準位置と操作位置の距離の少なくとも一方に基づいてオブジェクト311を移動させ、
操作基準位置PAからの操作位置PCのX座標における変位量Dx(AC)及びY座標における変位量Dy(AC)を算出し、ここで変位量は絶対値ではなく、正負を含んだ値であり、
変位基準位置PBを設定し、つまり、変位基準位置の設定有無が判定され、設定されていない場合には変位基準位置を設定し、
ユーザがタッチ位置の移動を行い、当該タッチ位置移動が条件を満たした時点で、元の変位基準位置PBの位置に操作基準位置PAが再設定され、当該再設定により、右上方向を向いていた操作基準位置PAから操作位置PCへの方向が、左下方向へと変更され、つまりオブジェクト311を直前まで移動させていた方向と反対方向に移動させ、速度を落とさずにオブジェクト311を反転させて反対方向に移動させることができ、
角度条件判定により、オブジェクト311を反転させて直前まで移動させていた方向とは反対方向に移動させるというユーザの意図を判定することができ、例えば、直線ABと直線BCとのなす角度αが25度以下である場合には、オブジェクト311を反転させて直前まで移動させていた方向とは反対方向に移動させたいというユーザの意図を示すものであると考えられ、少なくとも角度条件判定を行えばユーザの意図を判定することはでき、
角度条件を満たすと操作基準位置を再設定する
方法。」
イ 引用文献2
(ア)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった特開2021-000192号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
a 「【0236】
(バーチャルパッドVP1について)
バーチャルパッドVP1は、操作体(操作対象画像)ST1と、当該操作体ST1よりも大きい円形の外枠(範囲画像)FR1とにより構成される。操作体ST1がタッチされていないとき、当該操作体ST1は、外枠FR1により囲まれた範囲RG1の中心位置(基準位置)に表示される。操作体ST1に対するドラッグ操作がユーザによって行われると、ユーザ端末100は、当該ドラッグ操作により指定された方向に当該操作体ST1を移動させる。より具体的には、ユーザ端末100は、操作体ST1の位置以外の位置に対するタッチ操作により開始されたドラッグ操作によっては操作体ST1を移動させず、操作体ST1の位置に対するタッチ操作により開始されたドラッグ操作に応じて操作体ST1を移動させる。
【0237】
操作体ST1は、当該操作体ST1の中心位置から所定の半径を有し、当該中心位置が外枠FR1内で移動可能とされる円形状のオブジェクトである。この結果、ドラッグ操作により当該中心位置が外枠FR1の外縁付近まで移動すると、当該操作体ST1は、外枠FR1よりも若干外側にはみ出して表示される。
【0238】
操作体ST1に対するタッチ操作により開始されたドラッグ操作が行われると、ユーザ端末100は、範囲RG1の中心位置を始点とし、現在のタッチ位置を終点とするベクトルを特定する。現在のタッチ位置が範囲RG1内であれば、ユーザ端末100は、現在のタッチ位置に操作体ST1の中心位置を合わせ、現在のタッチ位置が範囲RG1外であれば、ユーザ端末100は、当該ベクトルと外枠FR1との交点に操作体ST1の中心位置を合わせる。ドラッグ操作のためのタッチ位置を外枠FR1の外側で当該外枠FR1の周方向に移動させると、当該タッチ位置と範囲RG1の中心位置との交点ひいては操作体ST1もまた周方向に移動する。
【0239】
ユーザ端末100は、範囲RG1の中心位置と当該操作体ST1の現在位置とに応じた方向に兵士オブジェクト720を移動させる。ただし、操作体ST1のドラッグ操作によっては、兵士オブジェクト720の向きは変更させない。このため、図28(C)に示すように兵士オブジェクト720が表示されている状態で、ドラッグ操作により操作体ST1を移動させると、当該兵士オブジェクト720は、次のように動作する。このとき、仮想カメラ620Bは、当該兵士オブジェクト720に追従して移動する。」
b 上記aからみて、「操作体(操作対象画像)ST1と、当該操作体ST1よりも大きい円形の外枠(範囲画像)FR1とにより構成され」た「バーチャルパッドVP1」の「操作体ST1の位置に対するタッチ操作により開始されたドラッグ操作に応じて操作体ST1を移動させ」、「表示されている」「兵士オブジェクト720を」「範囲RG1の中心位置と当該操作体ST1の現在位置とに応じた方向に移動させる」のだから、タッチ操作により開始されたドラッグ操作によって、表示された兵士オブジェクト720の移動を「開始させ」ていると理解できる。
c 上記aからみて、「範囲RG1の中心位置(基準位置)に表示され」た「操作体ST1」に対する「タッチ操作により開始されたドラッグ操作が行われ」、「現在のタッチ位置が範囲RG1内であれば」、「現在のタッチ位置に操作体ST1の中心位置を合わせ」、「範囲RG1の中心位置と当該操作体ST1の現在位置とに応じた方向に兵士オブジェクト720を移動させる」のだから、タッチ操作により開始された「所定距離内の」ドラッグ操作によって、表示された兵士オブジェクト720が移動していると理解できる。
(イ)引用文献2に記載された周知技術
上記(ア)の記載を総合すると、引用文献2には、次の周知技術が記載されていると認められる。
「タッチ操作により開始された所定距離内のドラッグ操作によって、表示されたオブジェクトの移動を開始させる」こと。
ウ 引用文献3
(ア)引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった特開2020-192239号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
a 「【0033】
なお、例えば、プレイヤキャラクタCRpを-Xf方向に移動させている場合(図3に示す例)であっても、ユーザは、指FGをタッチパネル12から一旦離し、指FGをタッチパネル12に再度接触させること(タッチイン)により、図2で説明したように、プレイヤキャラクタCRpをすばやく+Xf方向に移動させることができる。この場合、タッチイン時のタッチ位置Pはどこでもよいため、誤操作も抑制することができる。このように、本実施形態では、プレイヤキャラクタCRpを瞬時に、かつ誤操作を抑制しつつ移動可能とすることができる。」
b 「【図2】
[図:0001435972000001.jpg]
」
c 「【図3】
[図:0001435972000002.jpg]
」
d 上記a~cから、「-Xf方向に移動させているプレイヤキャラクタCRpを+Xf方向に移動させると、前記プレイヤキャラクタCRpの向きを変えさせ、方向を変えさせる」ことが見て取れる。
(イ)引用文献3に記載された周知技術
上記(ア)の記載及び図面を総合すると、引用文献3には、次の周知技術が記載されていると認められる。
「プレイヤキャラクタの移動方向を反転させた場合に、前記プレイヤキャラクタの向きを変えさせ、方向を変えさせる」こと。
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「前記座標平面上に操作基準位置を設定するステップ」は、引用発明において、「タッチパネル300へのタッチを判定し、タッチしていると判定された場合はタッチ位置を座標として検出し、タッチパネル300上のタッチ位置の座標に操作基準位置PAを設定し」ていることからみて、本件補正発明の「タッチスクリーンディスプレイ内の第1の位置で検出されたタッチ入力の指示を受信するステップ」に一致する。
イ 引用発明の「前記接触型位置入力装置上へのタッチがされているかを判断するステップ」及び「前記接触型位置入力装置上へのタッチがされている場合に取得されるタッチ位置に応じて前記座標平面上に操作位置を設定するステップ」は、引用発明において、「操作基準位置から操作位置への方向及び操作基準位置と操作位置の距離の少なくとも一方に基づいてオブジェクト311を移動させ」るために、「ユーザがタッチを継続しているか否かを判定し、ユーザがタッチしていると判定した場合には、タッチ位置を座標として検出し、検出された座標を取得し、操作位置PCを設定し」ていることからみて、「前記第1の位置と、前記タッチスクリーンディスプレイ内の第2の位置と、に基づいて、方向入力が開始されたと特定するステップ」である点で本件補正発明と共通し、後述する相違点1の点において両者は相違している。
ウ 引用発明の「操作基準位置PAからの操作位置PCのX座標における変位量Dx(AC)及びY座標における変位量Dy(AC)を算出し、ここで変位量は絶対値ではなく、正負を含んだ値であり、」は、「タッチパネル300へのタッチを判定し、タッチしていると判定された場合はタッチ位置を座標として検出し、タッチパネル300上のタッチ位置の座標に」「設定」された「操作基準位置PA」と、「ユーザがタッチを継続しているか否かを判定し」、「ユーザがタッチしていると判定した場合には、タッチ位置を座標として検出し、検出された座標を取得し」「設定」された「操作位置PC」との間の、X-Y平面上の移動ベクトルを算出するステップを意味しているから、それは、本件補正発明の「第1の方向に沿ったタッチ入力が連続的に検出されている間に、前記方向入力の第1の移動ベクトルを特定するステップ」に一致する。
エ 引用発明の「前記操作位置を変位基準位置として保持するステップ」、「前記変位基準位置からの所定条件を満たすタッチ位置移動を検出するステップ」、「前記所定条件を満たすタッチ位置移動を検出した場合に前記操作基準位置を前記座標平面上に再設定するステップ」及び「前記所定条件は、前記変位基準位置として保持された前記操作位置を取得した後に取得されるタッチ位置と前記操作基準位置と前記変位基準位置との三点で形成される三角形のいずれかの内角が所定基準を満たすことを少なくとも含む」は、引用発明において、「ユーザがタッチ位置の移動を行い、当該タッチ位置移動が条件を満たした時点で、元の変位基準位置PBの位置に操作基準位置PAが再設定され、当該再設定により、右上方向を向いていた操作基準位置PAから操作位置PCへの方向が、左下方向へと変更され、つまりオブジェクト311を直前まで移動させていた方向と反対方向に移動させ、速度を落とさずにオブジェクト311を反転させて反対方向に移動させることができ」、「角度条件判定により、オブジェクト311を反転させて直前まで移動させていた方向とは反対方向に移動させるというユーザの意図を判定することができ、例えば、直線ABと直線BCとのなす角度αが25度以下である場合には、オブジェクト311を反転させて直前まで移動させていた方向とは反対方向に移動させたいというユーザの意図を示すものであると考えられ、少なくとも角度条件判定を行えばユーザの意図を判定することはでき」、「角度条件を満たすと操作基準位置を再設定する」ことからみて、本件補正発明の「前記タッチ入力が前記第1の方向の反転である第2の方向に継続的に沿っている間は、前記方向入力の第2の移動ベクトルに基づいて、前記方向入力が反転入力を含んでいることを特定するステップ」及び「前記第1の移動ベクトルと前記第2の移動ベクトルとの間の角度変化は、変化閾値より大きい」に一致する。
オ 引用発明の「オブジェクト(プレイヤキャラクタ)」及び「オブジェクト311を反転させて」はそれぞれ、本件補正発明の「アバター」及び「反転アクション」に対応しているといえるから、引用発明の「タッチパネル300に表示されるユーザが操作するオブジェクト(プレイヤキャラクタ)に対する制御を行い」、「オブジェクト311を反転させて直前まで移動させていた方向とは反対方向に移動させるというユーザの意図を判定する」、「オブジェクト311を直前まで移動させていた方向と反対方向に移動させ、速度を落とさずにオブジェクト311を反転させて反対方向に移動させることができ」、「前記ディスプレイ上に表示されるゲームにおけるオブジェクトを移動させるステップ」は、「前記第1の移動ベクトルの反転であると特定された前記第2の移動ベクトルに基づいて、前記タッチスクリーンディスプレイ内のアバターに前記反転入力に対応する反転アクションを行わせるステップ」である点で本件補正発明と共通し、後述する相違点2の点において両者は相違している。
(4)一致点及び相違点
上記(3)での対比を踏まえると、本件補正発明と引用発明とは、次のアの点で一致し、次のイ及びウの点で相違する。
ア 一致点
「タッチスクリーンディスプレイ内の第1の位置で検出されたタッチ入力の指示を受信するステップと、
前記第1の位置と、前記タッチスクリーンディスプレイ内の第2の位置と、に基づいて、方向入力が開始されたと特定するステップと、
第1の方向に沿ったタッチ入力が連続的に検出されている間に、前記方向入力の第1の移動ベクトルを特定するステップと、
前記タッチ入力が前記第1の方向の反転である第2の方向に継続的に沿っている間は、前記方向入力の第2の移動ベクトルに基づいて、前記方向入力が反転入力を含んでいることを特定するステップと、
前記第1の移動ベクトルの反転であると特定された前記第2の移動ベクトルに基づいて、前記タッチスクリーンディスプレイ内のアバターに前記反転入力に対応する反転アクションを行わせるステップと、
を含み、
前記第1の移動ベクトルと前記第2の移動ベクトルとの間の角度変化は、変化閾値より大きいことを特徴とする方法。」
イ 相違点1
前記第1の位置と、前記タッチスクリーンディスプレイ内の第2の位置と、に基づいて、方向入力が開始されたと特定するステップが、本件補正発明では、前記第1の位置と、前記タッチスクリーンディスプレイ内の第2の位置と、「の間の距離が距離閾値未満であること」に「少なくとも部分的に」基づいて、方向入力が開始されたと特定するステップ、という構成になっているのに対して、引用発明は、そのような構成になっていない点。
ウ 相違点2
前記第1の移動ベクトルの反転であると特定された前記第2の移動ベクトルに基づいて、前記タッチスクリーンディスプレイ内のアバターに前記反転入力に対応する反転アクションを行わせるステップにおいて、本件補正発明では、「前記アバターの向きを変えさせ、方向を変えさせ」る構成が付加されているのに対して、引用発明は、そのような構成が付加されていない点。
(5)判断
上記各相違点1及び2について検討する。
ア 相違点1について
上記(2)イ(イ)で示したように、「タッチ操作により開始された所定距離内のドラッグ操作によって、表示されたオブジェクトの移動を開始させる」ことは、周知技術である。
してみれば、引用発明においてオブジェクトを移動させるための、ドラッグ操作による方向入力の開始を、ドラッグ操作の移動「距離が距離閾値未満である」ことに「少なくとも部分的に」基づいて、特定するようにした構成は、当業者であれば容易に想到し得たものである。
よって、上記相違点1に係る本件補正発明の構成は、引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
上記(2)ウ(イ)で示したように、「プレイヤキャラクタの移動方向を反転させた場合に、前記プレイヤキャラクタの向きを変えさせ、方向を変えさせる」ことは、周知技術である。
してみれば、引用発明において反転入力に対する反転動作を行わせる際に、キャラクタの「向きを変えさせ、方向を変えさせる」ようにすることは、当業者の必要に応じて適宜なし得る設計変更程度の事項にすぎないといえる。
よって、上記相違点2に係る本件補正発明の構成は、引用発明及び引用文献3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
エ 本件補正発明の奏する作用効果
本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2に記載された周知技術、及び、引用文献3に記載された周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(6)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された周知技術、及び、引用文献3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)審判請求書
ア 請求人の主張
請求人は審判請求書の「2.本願発明が特許されるべき理由」の欄において、
「(理由2)
補正後の請求項1、10および18に記載された特徴のうち、特に、「前記アバターの向きを変えさせ、方向を変えさせる」ことは、引用文献のいずれにも開示も示唆もされていません。」と主張する。
イ 当審の見解
上記アの主張について検討する。
引用発明(引用文献1に記載された発明)において、本件補正発明(本件補正後の請求項1に係る発明)の「前記アバターの向きを変えさせ、方向を変えさせる」ことに相当する構成を得ることが、当業者にとって容易想到であることは、上記(5)イで検討したとおりである。
よって、請求人の上記アの主張については、採用できない。
(8)まとめ
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された周知技術、及び、引用文献3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和7年4月17日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和6年11月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-20に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1-20に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された周知技術、及び、引用文献3に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2016-201028号公報
引用文献2:特開2021-000192号公報
引用文献3:特開2020-192239号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)ア~ウに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から「、前記アバターの向きを変えさせ、方向を変えさせ」るという限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(3)~(8)に記載したとおり、引用発明、引用文献2に記載された周知技術、及び、引用文献3に記載された周知技術(引用文献3に記載された周知技術は、当該限定事項に対応するために必要となったもの)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-005886