審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
意匠無効審判

2024-880003

ベッド

審判番号
2024-880003
法域
意匠
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
意願2009-012574外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
1387956
請求日
2024年03月18日
審決日
2025年11月11日
公報発行日
2026年01月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
D1113.113-Y (D7-3) / D1113.121-Y (D7-3)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
意匠法52条特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
意匠法第3条第2項、意匠法第3条第1項第3号、意匠法第48条第1項第1号、意匠法第3条、特許法第36条、意匠法第24条、意匠法第2条、意匠法第52条、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の意匠登録第1387956号「ベッド」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件意匠登録第1387956号の意匠(以下「本件登録意匠」という。別紙第1参照。)は、平成21年6月3日に意匠登録出願(意願2009-12574)されたものであり、平成22年3月8日付で登録査定がされ、平成22年4月16日に設定登録がなされ、同年5月24日に意匠公報が発行され、その後、当審において、概要、以下の手続を経たものである。 ・審判請求書 令和6年 3月18日付け提出 ・答弁書 同年 6月14日付け提出 ・審尋 同年 7月23日付け ・回答書(被請求人) 同年 8月 8日付け提出 ・弁駁書 同年 8月 9日付け提出 ・回答書(請求人) 同年 8月26日付け提出 ・審理事項通知 同年12月19日付け ・口頭審理陳述要領書(被請求人) 令和7年 1月29日付け提出 ・口頭審理陳述要領書(請求人) 同年 2月12日付け提出 ・口頭審理 同年 2月26日 ・口頭審理調書 同年 2月26日付け ・上申書(被請求人) 同年 3月12日付け提出 ・上申書(請求人) 同年 3月21日付け提出 ・審理終結通知 同年 8月26日付け 第2 請求人の申し立て及び理由の要点 請求人は、請求の趣旨を 「意匠登録第1387956号意匠の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由を、おおむね、以下のとおり主張した(「弁駁書」、「回答書」「口頭審理陳述要領書」及び「上申書」の内容を含む。)。 1 「審判請求書」における主張 「第6 請求の理由 1 手続きの経緯 本件意匠登録1387956号の意匠(以下、「本件登録意匠」という。甲第1号証)は、平成21年6月3日に意匠登録出願(意願2009-12574)されたものであり、平成22年3月11日付(当審注:11日は登録査定発送日。「付」記載であれば、正しくは、登録査定起案日である平成22年3月8日付)で登録査定がなされた後に、平成22年4月16日に設定登録がされたものである。 2 意匠登録無効の理由の要点 本件登録意匠は、甲第2号証に開示された意匠(以下、「甲2意匠」という。)と類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである(無効理由1)。 本件登録意匠は、甲2意匠に基づいて容易に創作することができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである(無効理由2)。 3 本件登録意匠を無効とすべき理由(無効理由1) (1)本件登録意匠 ア 意匠に係る物品 本件登録意匠に係る物品は、上方に背の高いロフト型のベッド、該ベッドの下方に形成された空間に収納用の家具等が配置された「システムベッド」である(なお、甲第1号証の願書には、本件登録意匠に係る物品として「ベッド」と記載されているが、上方に位置するロフト型のベッドと区別するため、本審判請求書では本件登録意匠に係る物品を「システムベッド」と称する。)。また、本件登録意匠は、部分意匠として意匠登録を受けようとするものであり、本件登録意匠の願書の「意匠の説明」の欄には、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下、「本件登録意匠部分」という。)と記載されている。 イ 本件登録意匠部分の用途、及び機能 本件登録意匠部分は、上方に位置するベッドの下方に配置され、ハンガーに吊るした衣類やその他の衣類等を掛けることが可能なハンガーバー付きのクローゼット部分であり、主に衣類等を収納するための用途、及び機能を有する。 ウ 本件登録意匠部分の位置、大きさ、及び範囲 本件登録意匠部分は、願書に記載の図面を基準とすれば、ベッドの下方であり、かつ平面視で右側面側かつ背面側のコーナー部分の位置で、上方に位置するベッドの全幅、全長からはみ出さない程度の大きさ、及び範囲とするものである。 エ 本件登録意匠部分の形態 本件登録意匠部分の形態は以下の通りである。なお、以下では、本件登録意匠の願書の右側面図を正面図として定義して本件登録意匠部分の形態を特定する(別掲1参照)。 (ア)基本的構成態様 左右両側面、天井面、背面、及び底面に囲まれるとともに、正面側に向けて開放面を有し、内部に衣類等を収納するための収納空間が形成された略縦長直方体の箱状体であり、収納空間の上方には、左右両側面に両端が支持されたハンガーバーが延在するものである。 (イ)具体的構成態様 a 箱状体の縦幅(正面視縦の長さ):横幅(正面視横の長さ):奥行き幅(側面視横の長さ)について、縦幅が横幅よりやや長く、奥行き幅が横幅より僅かに短く構成され、その比は19:12:9程度であり、 b ハンガーバーは箱状体の奥行き幅の略中央部分で、同縦幅の10分の9程度の高さ位置に設置され、 c 底面を構成する底板は箱状体の縦幅の10分の1程度の高さ位置に設置され、 d 底面と設置面との間に形成された隙間を遮蔽するための方形状の巾木が正面側と背面側にそれぞれ設置され、正面視において、底面の肉厚が左右両側面、及び天井面の肉厚に比べて3倍程度の厚みを有したものとなっている。 (別掲1 正面図) [図:0001431189000001.jpg] (2)甲2意匠 ア 甲2意匠の概要 甲2意匠は、平成16年8月23日に出願され(特願2004-241940号)、本件登録意匠の出願日前である平成18年3月2日に公開特許公報が発行されたものであり(特開2006-55469号)、同公開特許公報の第1図乃至第3図には、本件登録意匠部分に対応する部分が開示されたものである(以下、甲2意匠に開示された本件登録意匠部分に対応する部分を「引用対応部分」という。)。 イ 甲2意匠に係る物品 甲2意匠に係る物品は、上方に背の高いロフト型のベッド、該ベッドの下方に形成された空間に収納用の家具等が配置された「システムベッド」である。 ウ 引用対応部分の用途、及び機能 引用対応部分は、上方に位置するベッドの下方に配置され、ハンガーに吊るした衣類やその他の衣類等を掛けることが可能なハンガーバー付きのクローゼット部分であり、主に衣類等を収納するための用途、及び機能を有する。 エ 引用対応部分の位置、大きさ、及び範囲 引用対応部分は、前記本件登録意匠部分に倣って特定すると、ベッドの下方であり、かつ平面視で右側面側かつ背面側のコーナー部分の位置で、上方に位置するベッドの全幅、全長からはみ出さない程度の大きさ、及び範囲とするものである。 オ 引用対応部分の形態 引用対応部分の形態は以下の通りである。なお、以下では、本件登録意匠部分の形態の特定に倣い、引用対応部分の開放面側を正面図として定義して形態を特定する(別掲2、別掲3参照)。 (ア)基本的構成態様 左右側面、天井面、背面、及び底面に囲まれるとともに、正面側に向けて開放面を有し、内部に衣類等を収納するための収納空間が形成された略縦長直方体の箱状体であり、収納空間の上方には、箱状体の左右側面に達するハンガーバーが取り付けられたものである。(当審注:請求人の回答書における修正) (イ)具体的構成態様 a 箱状体の縦幅(正面視縦の長さ):横幅(正面視横の長さ):奥行き幅(側面視横の長さ)について、縦幅が横幅よりやや長く、奥行き幅が横幅より僅かに短く構成され、その比は6:3:2程度であり、 b ハンガーバーは箱状体の縦幅の10分の9程度の高さ位置に設置され、 c 底面を構成する底板は、箱状体の縦幅の10分の1程度の高さであり、底面が設置面から離間するように設置され、 d 正面図において、天井面の肉厚は底面、左右両側面よりも2倍程度の厚みを有したものとなっている。 (別掲2 斜視図) [図:0001431189000002.jpg] (別掲3 正面図) [図:0001431189000003.jpg] (3)本件登録意匠部分と引用対応部分との対比 ア 両意匠に係る物品の対比 本件登録意匠、及び甲2意匠は、上方に背の高いロフト型のベッド、該ベッドの下方に形成された空間に収納用の家具等が配置された「システムベッド」であるため、両意匠の物品は共通する。 イ 両部分の用途、及び機能の対比 本件登録意匠部分と引用対応部分とは、上方に位置するベッドの下方に配置され、ハンガーに吊るした衣類やその他の衣類等を掛けることが可能なハンガーバー付きのクローゼット部分であり、衣類等を収納するという用途及び機能が共通する。 ウ 両部分の位置、大きさ、及び範囲の対比 本件登録意匠部分と引用対応部分は、本件意匠の願書に記載の図面に倣って特定すると、ベッドの下方で、かつ平面視で右側面側かつ背面側のコーナー部分の位置、大きさ、範囲とする点で共通する。 エ 両部分の形態の対比 (ア)基本的構成態様 本件登録意匠部分と引用対応部分の基本的構成態様は全てにおいて共通する。即ち、両部分ともに左右両側面、天井面、背面、及び底面に囲まれるとともに、正面側に向けて開放面を有し、内部に衣類等を収納するための収納空間が形成された略縦長直方体の箱状体であり、収納空間の上方には、左右両側面に両端が支持されたハンガーバーが延在するものである。 (イ)具体的構成態様 両部分の形態を対比すると、以下の点で共通点と相違点を有する。 A 共通点について a 箱状体の縦幅(正面視縦の長さ)、横幅(正面視横の長さ)、奥行き幅(側面視横の長さ)について、縦幅が横幅よりやや長く、奥行き幅が横幅より僅かに短く構成されている。 b ハンガーバーは、箱状体の上方であり、同縦幅の10分の9程度の高さに位置する。 c 底面を構成する底板は、箱状体の縦幅の10分の1程度の高さに位置する。 B 相違点について a 箱状体の縦幅:横幅:奥行き幅の比は、本件登録意匠部分が19:12:9程度であるのに対して、引用対応部分が6:3:2程度である。 b ハンガーバーの水平方向の取付位置について、本件登録意匠部分が箱状体の奥行き幅の略中央部分であるのに対して、引用対応部分の取付位置は必ずしも明確ではない。 c 底面は、本件登録意匠部分は設置面との間に隙間なく左右側面により支持されているのに対して、引用対応部分は、設置面から僅かに離間した状態(設置面から浮いた状態)で左右両側面に支持されている。 d 本件登録意匠部分の底面の肉厚は左右両側面や天井面の肉厚に対して3倍程度の厚みを有しているのに対して、引用対応部分の天井面の肉厚は左右両側面や底面の肉厚に対して2倍程度の厚みを有している。 オ 両部分の共通点、及び相違点の評価 (ア)両意匠に係る物品、及び両部分の用途、機能、位置、大きさ並びに範囲 前記(3)ア乃至ウで述べた通り、両意匠に係る物品は「システムベッド」で共通し、両部分であるクローゼット部分の用途や機能、さらには位置、大きさ、範囲についても共通するものである。 (イ)両部分の形態の共通点の評価 A 基本的構成態様 本件登録意匠部分と引用対応部分の基本的構成態様は全てにおいて共通する。この基本的構成態様は、両部分の全体の基調を決定付けるものであり、需要者によって最も注意を引く部分であり、両部分の類否判断に与える影響は極めて大きいものといえる。 B 具体的構成態様 まず、共通点aについては、正面視、或いは側面視した場合における両部分の全体的な印象をより具体的に特徴付けるとともに、前記した基本的構成態様の共通点とも相俟って、両部分の形態の類否判断に与える影響は大きいものといえる。 また、共通点bについては、ハンガーに吊るした衣類を掛けて収納するという両部分の用途、及び機能を実現するために重要な要素である。そして、ハンガーバーは、ハンガーに吊るした衣類を掛けて収納する際に需要者が一定程度着目する部分でもあり、両部分の形態の類否判断に与える影響は大きいものといえる。 (ウ)両部分の形態の相違点の評価 まず、相違点aについては、箱状体の縦幅:横幅:奥行き幅の比率の相違は設計上の差異でしかなく、一般的な箱状体のクローゼットを見慣れた需要者であれば、その差異は注意深く観察しなければ気付きにくい部分でもあり、両部分の形態の類否判断に与える影響は軽微なものである。 また、相違点bについては、ハンガーバーは正面視した場合に視認できるものであるが、ハンガーバーの水平方向の取付位置までは視認し難いものであり、この点が両部分の形態の類否判断に与える影響は軽微なものである。 また、相違点cについては、底面は一般的に需要者の目線よりも相当低い位置にあり、両部分の使用形態を考慮すれば、需要者は上方から見下ろすように底面を視認するため、底面が設置面との間に隙間なく設置されているか、或いは底面と設置面との間に所定の隙間を形成して設置されているかを判別することは困難であるため、この点が両部分の形態の類否判断に与える影響は軽微なものである。 また、相違点dについては、底面、或いは天井面の肉厚の差は設計上の差異でしかなく、係る差異が両部分の形態の類否判断に与える影響は軽微なものである。 (4)小括 以上の通り、本件登録意匠部分と引用対応部分とは、両意匠に係る物品が共通し、両部分の用途、機能、位置、大きさ並びに範囲が共通し、さらに両部分の形態については共通する基本的構成態様と具体的構成態様が相俟って、両部分において共通する基調を決定づけている。また、両部分の相違点は部分的、軽微な相違に過ぎず、全体として共通点が相違点を凌駕することから、本件登録意匠部分は引用対応部分と類似するものである。 4 本件登録意匠を無効とすべき理由(無効理由2) ア 前記2のとおり、本件登録意匠部分は引用対応部分と類似しているが、仮に両部分を非類似と判断される場合があるとしても、本件登録意匠部分は、以下に述べる通り、引用対応部分に基づき容易に創作をできる意匠である。 イ まず、本件登録意匠部分と引用対応部分との相違点は、前記(2)で述べた通り、具体的構成態様として相違点a~相違点dのみであるが、このうち相違点a、即ち箱状体の縦幅:横幅:奥行き幅の比については、収納可能な収納物の量に応じて設計上生ずる程度の差異であり、創作として評価できるものではなく、引用対応部分の箱状体と同一性の範囲を超えるものではない。 ウ また、相違点b、即ちハンガーバーの水平方向の取付位置についても、設計上生ずる程度の差異であり創作として評価できるものではなく、引用対応部分の箱状体と同一性の範囲を超えるものではない。 エ また、相違点c、即ち底面の左右両側面による支持位置の相違についても、設計上生ずる程度の差異であり創作として評価できるものではなく、引用対応部分の箱状体と同一性の範囲を超えるものではない。 オ また、相違点d、即ち底面や天井面の肉厚の差異についても、設計上生ずる程度の差異であり創作として評価できるものではなく、引用対応部分の箱状体と同一性の範囲を超えるものではない。 カ 以上のように、相違点a~dは、設計上生ずる程度の差異であるから、本件登録意匠部分は、その出願前から公然知られた引用対応部分の構成要素の比率の変更、或いは構成要素の配置の変更をしたものに過ぎず、当業者であれば容易に創作することができたものである。 5 むすび 以上の通り、本件登録意匠は、甲2意匠と類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。 また、本件登録意匠は、甲2意匠に基づいて容易に創作することができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。」 2「弁駁書」における主張 意見の内容 「第6 弁駁の理由 請求人は、令和6年6月14日付けで被請求人が提出した「審判事件答弁書」(以下、「答弁書」という。)に対して、以下の通り弁駁する。 1 無効理由1について (1)引用対応部分の位置、大きさ、及び範囲 「上方に位置するベッドの全幅、全長から支柱がはみ出す程度の大きさ、及び範囲とするものである。」という被請求人の認定を認める。 (2)引用対応部分の形態 (2-1)基本的構成態様(右側面及び背面) 審判請求書に記載のとおり、「左右側面、天井面、背面、及び底面に囲まれるとともに、」と認定すべきである。以下、詳述する。 先ず、甲2号証の図1には、右側面の中央付近に水平線(幅の無い水平線)が描かれている(別掲4、5参照)。 (別掲4 甲2号証の図1 青丸は請求人が追記) [図:0001431189000004.jpg] (別掲5 甲2号証の図1の拡大図 青丸・青矢印は請求人が追記) ※青丸箇所は、幅が無いことが明らかな線(青矢印)と同様に描かれている [図:0001431189000005.jpg] ここで、甲2号証の図1において(別掲6参照)、 ・はしご7のステップの上面 ・手前側の支柱31同士の上端を接続する連結棒35の上面 ・前方側の支柱41同士の上端を連結する連結棒45の上面 は、幅を有して図示されており、板厚まで丁寧に図示されていることが分かる。 (別掲6 甲2号証の図1の拡大図 赤丸は請求人が追記) [図:0001431189000006.jpg] このように、「はしご7のステップ」「連結棒35」「連結棒45」の図示方法を踏まえると、右側面の中央付近の水平線については、板厚が目視できる構成では無いと認定すべきである。 具体的には、右側面に描かれた水平線は、「右側面の前後の支柱41の間に一枚板が配置され、その一枚板の模様」、若しくは、「右側面の前後の支柱41の間に上下2枚の板材を継ぎ合わせた一枚板が配置され、その一枚板を構成する2枚の板材の継ぎ合わせ部分」を描いたと認定すべきである。 即ち、模様であるのか、継ぎ合わせ部分であるのか、といった違いはあるにしても、右側面の前後の支柱41の間には、板材が配置されている(板厚が目視できる構成でない以上、上半分が開放しているといったことはあり得ない)」と認定すべきである。 なお、右側面の上半分が開放されている乙1意匠については、明確に幅が描かれており、甲2意匠とは図示の方法が異なっていることは明らかである(別掲7参照)。 (別掲7 乙1号証の斜視図の拡大図 赤丸・赤矢印は請求人が追記) ※赤丸箇所は、幅が無いことが明らかな線(赤矢印)と比べると、明らかに太く描かれている。 [図:0001431189000007.jpg] 次に、右側面の中央付近に描かれた水平線は、引き出し46の上面と同じ高さである (別掲8参照)。 (別掲8 甲2号証の図1の拡大図 青色点線は請求人が追記) [図:0001431189000008.jpg] そして、甲2号証の図3には、背面の中央付近に水平線が描かれており、引き出し46の上面と同じ高さである。即ち、「右側面の中央付近に描かれた水平線」と「背面の中央付近に描かれた水平線」とは、同じ高さである。 そうとすると、右側面と背面のデザインの統一を図ったと考えるのが自然であり、背面に描かれた水平線も、「一枚板の模様」若しくは「一枚板を構成する2枚の板材の継ぎ合わせ部分」を描いたと認定すべきである。 ところで、被請求人は、「甲2意匠の出願日」と「乙1意匠の出願日」が同時期であることから、甲2意匠と乙1意匠の対象物が同一であると主張し、両者を同視しても支障がないと主張するが、適切ではない。 被請求人も認めている通り、甲2意匠と乙1意匠とは、「角柱20」「引き出し46」「クローゼット部分の下方の棚」という点で異なっており、このことをもって、別意匠であることは明らかである。 また、本件登録意匠部分との関係では、「クローゼット部分の下方の棚」の有無が異なっている。 更に、上述の様に、乙1意匠の右側面には明確に幅が描かれており、板厚が目視できることが明らかである。 加えて、同一対象物であれば、特許出願の図面として意匠出願の図面を採用すれば良く、出願人・発明者(創作者)・代理人が共通する状況において、別図面を使用して特許出願を行っている以上、甲2意匠と乙1意匠は別物と考えるべきである。 ところで、被請求人は、甲2号証の段落番号【0019】に「ベッドユニット2と本棚ユニット3との組み立て構造およびベッドユニット2と衣類棚ユニット4との組み立て構造は、基本的には同じ構造である」と記載されていることを根拠として、「開放されている本棚と同様に、衣類棚の方も開放されているのである」と主張するが、適切ではない。 甲2号証の請求項1には、以下が記載されている(下線は請求人が追記)。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 頭部側に備えられた2本の四角柱状の脚と、足部側に備えられた2本の四角柱状の脚とを有し、単体としても使用可能なベッドユニットと、 上記ベッドユニットの頭部側または足部側のいずれか一方の2本の脚を乗せる本棚ユニットと、 上記ベッドユニットの頭部側または足部側のいずれか他方の2本の脚を乗せる衣類棚ユニットとを備え、 上記本棚ユニットおよび衣類棚ユニットは、等しい高さを有し、それぞれ、四角柱状の4本の支柱と、4本の支柱の所定高さ位置に設けられた上記ベッドユニットの脚を乗せるための上棚とを有し、 上記上棚に乗せられたベッドユニットの各脚は、その外側面が、それぞれ、4本の支柱のうちの2本の支柱の、上棚から上方へ延びる部分の内側面と対向するようにされており、上記対向する支柱と脚とは、それらを水平方向に貫通するボルトによって固定されていることを特徴とする、システムベッドの組み立て構造。」 即ち、甲2号証の請求項1では、「上棚に乗せられたベッドユニットの各脚は、その外側面が、それぞれ、4本の支柱のうちの2本の支柱の、上棚から上方へ延びる部分の内側面と対向するようにされており」という点、及び、「対向する支柱と脚とは、それらを水平方向に貫通するようボルトによって固定されている」という点、を発明特定事項としている。そして、その具体的な実施形態として、甲2号証の段落番号【0019】【0020】には、以下の通りの記載がなされている。 「【0019】 図5は、ベッドユニット1と本棚ユニット3との組み立て構造、および、ベッドユニット2と衣類棚ユニット4との組み立て構造を説明するための図解的な図である。ベッドユニット2と本棚ユニット3との組み立て構造およびベッドユニット2と衣類棚ユニット4との組み立て構造は、基本的には同じ構造であるから、図5を参照して、その構造について説明をする。 【0020】 上棚34(44)上に乗せられたベッドユニット2の2本の脚22は、それぞれ、手前側支柱31(41)および奥側支柱31(41)と対向する。そして上棚34(44)の上方に突出する支柱31(41)には、上下方向2箇所に、水平方向に貫通するボルト40を挿通するための孔が形成されている。また、脚22には、支柱31(41)に形成された孔と対応する位置に、水平方向に貫通するボルト10の挿通孔が形成されている。そして、支柱31(41)と脚22とを連通するように、水平方向に延びるボルト10が挿通され、ボルト10の先端はナット11に螺合されて固定される。なお、ボルト10の頭12が、支柱31(41)の表面から突出しないように、支柱31(41)表面に適当な凹部が形成されていてもよい。また、ナット11は、脚22から突出しないように、脚22に凹部が形成され、その中に埋め込まれていてもよい。あるいは、ナット11に代えて、脚22内に雌ねじ孔が埋設されていてもよい。」 即ち、甲2号証では、実施形態として、段落番号【0019】【0020】において、 [1] 上棚34上に乗せられたベッドユニット2の2本の脚22(=頭部側の脚22)は、それぞれ、手前側支柱31および奥側支柱31と対向する。そして上棚34の上方に突出する支柱31には、上下方向2箇所に、水平方向に貫通するボルト40を挿通するための孔が形成されている。また、脚22には、支柱31に形成された孔と対応する位置に、水平方向に貫通するボルト10の挿通孔が形成されている。そして、支柱31と脚22とを連通するように、水平方向に延びるボルト10が挿通され、ボルト10の先端はナット11に螺合されて固定される。 [2] 上棚44上に乗せられたベッドユニット2の2本の脚22(=足部側の脚22)は、それぞれ、手前側支柱41および奥側支柱41と対向する。そして上棚44の上方に突出する支柱41には、上下方向2箇所に、水平方向に貫通するボルト40を挿通するための孔が形成されている。また、脚22には、支柱41に形成された孔と対応する位置に、水平方向に貫通するボルト10の挿通孔が形成されている。そして、支柱41と脚22とを連通するように、水平方向に延びるボルト10が挿通され、ボルト10の先端はナット11に螺合されて固定される。 といった点を説明している。 つまり、上記[1]の「ベッドユニット2の2本の脚22(頭部側の脚22)」と「本棚ユニット」の関係と、上記[2]の「ベッドユニット2の2本の脚22(足部側の脚22)」と「衣類棚ユニット」の関係と、が同じ構造であると記載されているのであって、「本棚と同様に衣類棚が開放されている」ということなど、何ら記載されていないのである。 (2-2)基本的構成態様(ハンガーバー) 引用対応部分の基本的構成態様につき、「左右側面、天井面、背面、及び底面に囲まれるとともに、正面側に向けて開放面を有し、内部に衣類等を収納するための収納空間が形成された略縦長直方体の箱状体であり、収納空間の上方には、箱状体の左右側面に達するハンガーバーが取り付けられたものである」に修正する。 (2-3)具体的構成態様(答弁書12頁e) 被請求人は、引用対応部分の具体的構成態様「e」として、「箱状体の開口部を正面とした場合の右側面は、衣類棚(箱状体)天面の位置より上方に延伸する支柱2本と、該支柱の間にはめ込まれた板部材とからなる」と認定しているが、適切ではない。 箱状体の開口部を正面とした場合において、上棚44は、左右の支柱の間にはめ込まれているのであって、右側面の前後の支柱にはめ込まれていない。 また、上述したように、右側面の支柱41同士の間には一枚板(2枚の板材を継ぎ合わせた場合を含む)が配置されている。 そうとすると、引用対応部分の右側面は、「天面より上方に延伸する支柱と、該支柱の間にはめ込まれた一枚板とからなる」と認定すべきである。 (3)両部分の類否 (3-1)使用者・需要者 被請求人は、「両意匠の物品は子供向けのシステムベッドである」(答弁書16頁)と主張しているが、適切ではない。 即ち、甲1号証には、甲1意匠が子供向け製品であることについては、何ら記載されていない。同様に、甲2号証にも、その技術思想(甲2号証に開示された発明)が、子供向け製品に限定したものであるといった記載は一切なく、また、甲2意匠が子供向け製品であることについての記載もない。 従って、両意匠の物品の使用者が子供に限定されることはない。 また、両意匠の物品の需要者は、使用者が子供である場合、使用者が大人である場合、のいずれであっても最終消費者(一般消費者)である。 (3-2)需要者が注目する部分 使用者が子供である場合も、大人である場合も、ハンガーバーに衣類を掛ける場合には、クローゼット部分の正面に立つことから、クローゼット部分の正面に立った状態で見える部分を主として注目するものと考えられる。 なお、両部分がシステムベッドの背面側に位置しており、システムベッドの背面側は壁に面して配置されることが多く(被請求人が提出した乙2号証が参考になる)、システムベッドの背面側を壁に面して配置した場合には、クローゼット部分の右側面が壁に面することになる。そのため、両意匠の物品(システムベッド)の使用態様を考慮すると、壁に面して配置されることが多いクローゼット部分の右側面は、需要者が注目する部分ではない。 (3-3)両部分の位置、大きさ、及び範囲 「上方に位置するベッドの全幅、全長から支柱がはみ出す程度の大きさ、及び範囲」である点で相違するものの、平面視で右側面からはみ出しているのは、支柱の板厚程度であって、本件登録意匠部分と引用対応部分の位置、大きさ、及び範囲はほぼ同一である。 (3-4)基本的構成態様 審判請求書に記載のとおり、本件登録意匠部分と引用対応部分の基本的構成態様は全てにおいて共通する。この基本的構成態様は、両部分の全体の基調を決定付けるものであり、需要者によって最も注意を引く部分であり、両部分の類否判断に与える影響は極めて大きいといえる。 (3-5)具体的構成態様における差異点(a)(b) 先ず、上述のとおり、両意匠の物品(システムベッド)の使用者は、子供の場合も、大人の場合もある。 そして、システムベッドは、使用者の体に合った高さにするのは当然であり、使用者が子供の場合には、甲2意匠のベッドの高さをそれほど高くしなくても、机を使用することができる。また、使用者が子供の場合には、安全性を考慮してベッドの高さを低くする。更に、使用者が子供の場合には、ベッドの高さが低くなり、結果として、甲2意匠のクローゼット部分の縦幅が小さくなったとしても、使用者である子供の衣類を掛けることができれば、不都合が生じることはない。 一方で、使用者が大人の場合には、使用者(大人)が机を使用できる程度に、また、甲2意匠のクローゼット部分に大人の衣類を掛けることができる程度に、甲2意匠のベッドの高さを高くする。 このように、ベッドの高さは、使用者に合わせて定められるものであり、ベッド高さに応じて、箱状体の縦幅が決まることになる。 また、ベッド幅は、セミシングル、シングル、セミダブル、ダブル、クイーン、キングといった具合に各種があるものの、ベッド長さはベッド幅によらずに一定であることが多い。 そして、甲2意匠が、衣類棚ユニット4の上棚の長手方向にベッドユニットの後脚が乗ることから、ベッド幅に合わせて衣類棚ユニットの長手方向の長さが決まり、結果として、ベッド幅に応じて、箱状体の横幅が決まることになる。 このように、使用者に合わせて箱状体の縦幅が定められ、ベッド幅に合わせて箱状体の横幅が定められるものであり、審判請求書に記載のとおり、箱状体の縦幅:横幅:奥行き幅の比率の相違は設計上の差異でしかなく、本件登録意匠部分と引用対応部分の形態の類否判断に与える影響は軽微なものである。 (3-6)具体的構成態様における差異点(c) 上述したとおり、クローゼット部分は、左右側面、天井面、背面、及び底面に囲まれている。そのため、被請求人の「引用対応部分の右側面上半分及び背面上半分は開放されているのだから、正面のほか、右側面と背面からも視認することができる。そうすると、正面から取付位置を視認しにくい場合、右側面側や背面など別の側面からも確認しようとするのが経験則によるところである」という主張(答弁書19頁)は、適切ではない。 そして、審判請求書に記載したとおり、ハンガーバーの水平方向の取付位置までは視認し難いものであり、更には、被請求人も主張しているとおり、「ハンガーバーは、ハンガーや衣類を掛けやすいように、ある程度衣類棚(箱状体)の天面から隙間を空けて設けるのが一般的」であり、本件登録意匠部分のハンガーバーの取付位置は、まさに、一般的であり、他の先行意匠においてもごく普通に見られるありふれた形態であり、その取付位置が、強く注意を引くものとはなり得ないのである。 (3-7)具体的構成態様における差異点(f) クローゼット部分を正面視した場合には、わずか板厚1枚分の厚さであり、しかも、使用態様を考慮すると、壁に面することが多い箇所であり、類否判断に与える影響は小さいと言わざるを得ない。 (4)小括 本件登録意匠部分と引用対応部分とは、両意匠に係る物品が共通し、両部分の用途、機能も共通し、位置、大きさ並びに範囲もほぼ共通し、さらに両部分の形態については共通する基本的構成態様と具体的構成態様が相俟って、両部分において共通する基調を決定づけている。また、両部分の相違点は、部分的、軽微な相違に過ぎず、全体として共通点が相違点を凌駕することから、審判請求書に記載のとおり、本件登録意匠部分は引用対応部分と類似するものである。 2 無効理由2について (1)甲2意匠について 甲2号証には以下が記載されている(下線は請求人が追記)。 「【背景技術】 【0002】 システムベッドの一例として、従来の木製2段ベッドは、下方のベッドの四隅に備えられた脚兼支柱の上に、上方のベッドの四隅に備えられた脚兼支柱が積み上げられ、下方のベッドの脚兼支柱と上方のベッドの脚兼支柱とが上下方向に一直線上につながる状態で組み立てられていた。(たとえば特開2004-8759号公報) また、ベッドと机との組合せ家具の場合も、上方に配置するベッドの支柱6は、上下方向に一直線状につながる状態で組み立てられていた。(たとえば特開2004-24425号公報) 【特許文献1】特開2004-8759号公報 【特許文献2】特開2004-24425号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 従来のシステムベッドは、ベッドユニットを上方に配置しようとした場合、たとえば2段ベッドとして、下ベッドの上に上ベッドユニットを配置しようとした場合、あるいは、ベッドユニットの脚を長い脚にし、背の高いいわゆるハイベッドとする場合、あるいは、机の上にベッドユニットを積み上げる場合において、いずれの場合も、上方に配置するベッドユニットの脚は、下方の部材の上面に乗せられて、上下方向に連結されるという構成であった。このため、上方に配置されたベッドユニットは、下方の部材で下からしっかりと受け止められるが、上下方向の連結構造であるから、横揺れ等に対する強度が弱いという課題があった。 【0004】 この発明は、かかる背景のもとになされたもので、ベッドユニットを上方に配置するシステムベッドにおいて、ベッドユニットを配置するための組み立て構造が改善されたシステムベッドを提供することを目的とする。 またこの発明は、木製のシステムベッドであって、狭い空間を有効活用できるシステムベッドを提供することを目的とする。」 以上の記載からも明らかなように、甲2意匠は、特開2004-8759号公報及び特開2004-24425号公報に記載された技術を前提としたものである。 そして、特開2004-8759号公報及び特開2004-24425号公報には、支柱が上下方向に一直線状につながる状態で組み立てられたベッドや組み合わせ家具が開示されている(別掲9、10参照)。 そのため、「甲2意匠の右側面の支柱41を、ベッドユニットの脚22の真下に位置させて、支柱41と脚22が一直線上につながる状態で組み立てること」は、甲2意匠を従来の形態に戻すということにすぎず、格別の動機付けも不要であり(平成17年(行ケ)第10026号審決取消請求事件)、具体的構成態様における差異点(f)については、容易に創作できる範疇である。 (別掲9 特開2004-8759号公報の図3) [図:0001431189000009.jpg] (別掲10 特開2004-24425号公報の図1) [図:0001431189000010.jpg] (2)甲2号証の机について 甲2号証には以下が記載されている(下線は請求人が追記)。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 頭部側に備えられた2本の四角柱状の脚と、足部側に備えられた2本の四角柱状の脚とを有し、単体としても使用可能なベッドユニットと、 上記ベッドユニットの頭部側または足部側のいずれか一方の2本の脚を乗せる本棚ユニットと、 上記ベッドユニットの頭部側または足部側のいずれか他方の2本の脚を乗せる衣類棚ユニットとを備え、 上記本棚ユニットおよび衣類棚ユニットは、等しい高さを有し、それぞれ、四角柱状の4本の支柱と、4本の支柱の所定高さ位置に設けられた上記ベッドユニットの脚を乗せるための上棚とを有し、 上記上棚に乗せられたベッドユニットの各脚は、その外側面が、それぞれ、4本の支柱のうちの2本の支柱の、上棚から上方へ延びる部分の内側面と対向するようにされており、 上記対向する支柱と脚とは、それらを水平方向に貫通するボルトによって固定されていることを特徴とする、システムベッドの組み立て構造。 【請求項2】 頭部側に備えられた2本の四角柱状の脚と、足部側に備えられた2本の四角柱状の脚とを有し、単体としても使用可能な木製のベッドユニットと、 上記ベッドユニットの頭部側または足部側のいずれか一方の2本の脚を乗せる木製の本棚ユニットと、 上記ベッドユニットの頭部側または足部側のいずれか他方の2本の脚を乗せる木製の衣類棚ユニットと、 天板および天板の一端を支える脚を有し、天板の他端は上記本棚ユニットに係合されて支えられる木製の机ユニットとを備え、 上記各ユニットが組み立てられることにより、ベッドユニットの下方で本棚ユニットと衣類棚ユニットとの間に机を置く空間が生じ、その空間に上記机ユニットが配置されていることを特徴とするシステムベッド。」 以上の記載からも明らかなように、甲2号証の請求項1では「机ユニット」が構成要件に含まれておらず、机ユニットを含まないシステムベッドについても、その権利範囲とすることを前提としている(なお、請求項2に係る発明では、「机ユニット」が存在することが前提となっている)。 また、甲2号証には以下が記載されている(下線は請求人が追記)。 「【0024】 この発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。 たとえば、本棚ユニット3の構成や、衣類棚ユニット4の構成は、具体的な一例を示しているにすぎず、本棚ユニット3の棚の数や、衣類棚ユニット4のクロゼット空間の構成等が、この実施形態に限定されるものではない。」 以上の記載からも明らかなように、甲2意匠について、請求項記載の範囲内において 種々の変更を行って良いことは、甲2号証に明記されており、請求項1(机ユニットが必須ではない)に対応させるべく、甲2意匠から机ユニット5を含めない構成とすることは、当業者が容易に創作できる範疇である。 そして、甲2意匠にベッドユニット5が含まれない場合には、使用者がベッドの下に入る必要もなく、使用者がベッドに下に入り込むためのベッドの高さを確保することもない。 そうとすると、甲2意匠から机ユニット5を含めない構成とし、結果として、箱状体の縦幅を小さくすることも、当然に当業者が容易に創作できる範疇である。 (3)クローゼット空間の構成(縦横比) 上記した甲2号証の段落番号【0024】には、「衣類棚ユニット4のクロゼット空間の構成等が、この実施形態に限定されるものではない」と明記されている。 そうとすると、甲2意匠の箱状体の縦横比を変更することについては、単なる設計事項であると言わざるを得ない。 (4)右側面及び背面の構成 上述の通り、クローゼット部分は、左右側面、天井面、背面、及び底面に囲まれているが、万が一、被請求人が主張するように「右側面上半分及び背面上半分が開放されている」としても、右側面及び背面を開放しないようにすることは、当業者が容易に創作できる範疇である。 先ず、右側面及び背面が開放されているか否かについては、甲2号証の請求の範囲に影響を及ぼすものではなく、上記した甲2号証の段落番号【0024】には、「衣類棚ユニット4のクロゼット空間の構成等が、この実施形態に限定されるものではない」と明記されていることを考慮する共に、クローゼット部分の構成として、正面以外が板材で囲われている構成はありふれており、ありふれた構成(正面以外が板材で囲われている構成)を採用することは、当業者が容易に創作できる。 次に、甲2意匠が「横揺れ等に対する強度が弱い」(甲2号証の段落番号【0003】参照)といった点に着目したものであり、「右側面上半分や背面上半分が開放されている構成」よりも、「右側面上半分や背面上半分が開放されていない構成」の方が、その強度が強いことは明らかであり、甲2意匠が創作された経緯を考慮すると、正面以外が板材で囲われた構成を採用することについての動機付けも充分に存在する。 (5)ハンガーバー構成 ハンガーバーの構成は、甲2号証の請求の範囲に影響を及ぼすものではなく、上記した甲2号証の段落番号【0024】には、「衣類棚ユニット4のクロゼット空間の構成等が、この実施形態に限定されるものではない」と明記されていることを考慮する共に、被請求人が主張するように、「ハンガーバーは、ハンガーや衣類を掛けやすいように、ある程度衣類棚(箱状体)の天面から隙間を空けて設けるのが一般的」であり、本件登録意匠部分のハンガーバーの取付位置は、まさに、一般的であり、一般的な構成(天面から隙間を空けて設ける構成)を採用することは、当業者が容易に創作できる。 (6)具体的構成態様における差異点(a)(b) 上記した(3-5)のとおり、設計上の差異でしかないため、当業者が容易に創作できる範疇である。 (7)対称について 被請求人は、「服を掛ける機能を有するハンガーバーと物を置くために機能する底板は全く機能が異なるところ、異なる機能を有する二つの対象物を用いて上下対称になるように配置することは、容易なことではない」と主張するが、適切ではない。 ハンガーバーは、クローゼット部分の概ね上方に位置していれば充分であり、底板の厚さも特には制限されない。 また、一方(ハンガーバーの高さ、若しくは、底板の高さ)が、他方(底板の高さ、若しくは、ハンガーバーの高さ)に影響されることはなく、それぞれを独立して高さを変更することが可能である。 そのため、ハンガーバーの取付位置と底板の高さとを上下対称になるように構成することは、設計上生ずる程度の差異に過ぎない。 (8)小括 本件登録意匠部分は、その出願前から公然知られた引用対応部分の構成要素の比率の変更、或いは構成要素の配置の変更をしたものに過ぎず、審判請求書に記載のとおり、当業者であれば容易に創作することができたものである。 3 まとめ 以上のとおり、本件登録意匠は、甲2意匠と類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである(無効理由1)。 また、本件登録意匠は、甲2意匠に基づいて容易に創作することができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである(無効理由2)。」 3 「回答書」における回答 「第6 回答の内容 請求人は、令和6年7月23日(起案日)付け「審尋」に対して、以下の通り回答する。 審判請求書第5ページ第6の3(2)オ(ア)「基本的構成態様」につき、「左右側面、天井面、背面、及び底面に囲まれるとともに、正面側に向けて開放面を有し、内部に衣類等を収納するための収納空間が形成された略縦長直方体の箱状体であり、収納空間の上方には、箱状体の左右側面に達するハンガーバーが取り付けられたものである。」に修正する。」 4 「口頭陳述要領書」における主張 「第6 陳述の要領 請求人は、令和7年1月29日付けで被請求人が提出した「口頭審理陳述要領書」(以下、「陳述要領書」といいます。)に対して、以下のとおり意見を述べます。 1 無効理由1について [1]甲2意匠について [1-1]発明の創作経緯 甲2号証には、以下の記載があります(下線は請求人が追記)。 「【0003】 従来のシステムベッドは、ベッドユニットを上方に配置しようとした場合、たとえば2段ベッドとして、下ベッドの上に上ベッドユニットを配置しようとした場合、あるいは、ベッドユニットの脚を長い脚にし、背の高いいわゆるハイベッドとする場合、あるいは、机の上にベッドユニットを積み上げる場合において、いずれの場合も、上方に配置するベッドユニットの脚は、下方の部材の上面に乗せられて、上下方向に連結されるという構成であった。このため、上方に配置されたベッドユニットは、下方の部材で下からしっかりと受け止められるが、上下方向の連結構造であるから、横揺れ等に対する強度が弱いという課題があった。」 「【0008】 さらにこの発明では、本棚ユニットおよび衣類棚ユニットの上棚に乗せられたベッドユニットの脚は、その外側面と対向する本棚ユニットおよび衣類棚ユニットの支柱と水平方向にボルトによって固定される。つまり、ベッドユニットの脚は、上棚により下方から支えられるのに加え、水平方向にも移動しないよう、下方のユニットの支柱に固定される。よって、ベッドユニットは、横揺れに対しても強固に下方のユニットと連結された組み立て構造となる。」 甲2号証の技術は、「上方に配置するベッドユニットを、下方の部材で下からしっかり受け止める」ことを前提としています。そして、下からしっかり受け止めるためには、下方の部材(衣類棚ユニット)の強度を向上させることが重要となり、そのためには、右側面の前後の支柱41の間に板材を配置した方が好ましいと言えます(右側面の上側を開放している場合と比べて、支柱41の間に板材を配置して右側面を開放しない方が、衣類棚ユニットの右側面の強度が向上します)。 同様に、衣類棚ユニットの強度を向上させるためには、背面にも板材を配置した方が好ましいと言えます(背面の上側を開放している場合と比べて、背面を開放しない方が、衣類棚ユニットの背面の強度が向上する)。 即ち、審判請求書に記載のとおり、クロゼット空間が「左右側面、天井面、背面、及び底面に囲まれる」ことで、衣類棚ユニットの強度が向上することになります。 そして、甲2意匠が、製品形態を保護する意匠図面に表されているのではなく、特許図面(出願人が発明の特徴部分を説明するための図面)に表されていることを考慮しますと、右側面や背面を開放しないことが、発明を創作した経緯にも合致するものです。 なお、衣類等の出し入れは、クロゼット空間の正面(開放面)から行いますので、クロゼット空間の右側面及び背面を開放しなくても、衣類等を収納するというクロゼット空間の用途及び機能には、何ら影響を及ぼすものではございません。 甲2意匠が、特許図面に表されている以上、技術的な観点をも考慮することは自然なことであって、技術的な観点を考慮した場合(発明を創作した経緯も考慮した場合)には、右側面及び背面については、開放されていないと考えるべきです。 [1-2]水平線 特許出願時には、審査でどの様な先行文献(引例)が挙げられるかが分かりません。 特願2004-241940(甲2号証)では、平成22年7月1日(起案日)の拒絶理由通知に対して、中間対応がなされませんでしたが、引例次第では、甲2号証の図1や図3を根拠として、「右側面の前後の支柱41の間の板材の略中央に水平線が引かれていること」や「右側面の前後の支柱41の間の板材が上下に分割されていること」、また、「背面の板材の略中央に水平線が引かれていること」や「背面の板材が上下に分割されていること」を請求項に追記し、発明特定事項とすることで特許性が肯定される可能性も充分にあり得たといえる(少なくとも、どのような引例が挙げられるか分からない出願時に、引例との関係において特許性に全く寄与しないということはできません)。 そして、「右側面の前後の支柱41の間の板材の略中央に水平線が引かれていること」や「右側面の前後の支柱41の間の板材が上下に分割されていること」、また、「背面の板材の略中央に水平線が引かれていること」や「背面の板材が上下に分割されていること」を発明特定事項とする場合には、サポート要件(特許法36条6項1号)を満足するという意味においても、甲2号証の図1や図3に水平線が記載されていることが重要となります。 そうとすると、「右側面の中央付近の水平線(前記別掲5)は、『図の主要な部分』(様式30備考12ハ)にさえ該当しない部分」(陳述要領書の6ページ3~4行)ということはできません。 なお、特許明細書や特許図面は、「当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分な記載」が求められますが(特許法36条4項1号の「実施可能要件」)、請求項に係る発明を実施するために必要な事項以外の余分な記載があることのみでは、実施可能要件違反とはなりません。そのため、特許図面(甲2号証の図3)の作成時において、「右側面の前後の支柱41の間に配置された板材の模様」や「右側面の前後の支柱41の間に配置された板材の継ぎ合わせ部分」として、右側面に水平線を描いたとしても、何ら不自然ではありません。 [2]実施品について 被請求人は、「乙1意匠と甲2意匠と実施品は、実質的に同一対象物、すなわち実質的に同一意匠であることが強く推認されます」(陳述要領書12ページ)と主張していますので、この点について反論を行います。即ち、実施品が乙1意匠及び甲2意匠と同視できるものではない、という点を説明します。 [2-1]展示会の開催日 「月刊近代家具527号」の18ページ(甲3号証)には、以下の記載があります(下線は請求人が追記)。 「小泉産業は、八月二四~二六日に『コイズミ アドバンスフェア二00四』(会場:コイズミキッズファニチャープラザ)を開催。新型ライトの搭載で機能を充実させた「コイズミ健康デスク」や、デザイン・素材などにこだわった「こだわりデスク」、子供部屋をトータルに演出する「Kid’s Room」などの新商品を提案した。また、学生に家具のデザインを通じて「創造するちから」を身につけてほしいとの願いから、『第一回コイズミ家具デザイン展』を同時開催。「こどものくうかん」をテーマに作品、模型などが発表された。」 また、「月刊 近代家具527号」の26ページ(甲3号証、乙4号証)には、システムベッドの画像の下に「ハイベッドデスク『MLBシリーズ』」との記載があります。 [図:0001431189000011.jpg] 更に、「月刊 近代家具527号」の26ページ(甲3号証、乙4号証)には、以下の記載があります(下線は請求人が追記)。 「『こだわりデスク』は、住宅事情やユーザーの嗜好に合わせた学習空間の提案シリーズ。昨年発売した省スペース向けの「ハイベッドデスク」に加え、新製品では個性重視型素材、デザイン、キャラクターを組み合せた新感覚のデスク七シリーズ((i)(当審注:以下、丸数字はシステム上非表示文字のため(i)~で置きかえて示す。)キッズコンポ(ii)MLB(iii)ナチュラルミッキー(iv)ブロック(v)シャーウッド(vi)ディズニー・健康デスク(vii)フリーウェイ)を投入する。」 こうした記載から、実施品(乙4号証)は、2004年8月24日の展示会で発表されたものと考えられます。 [2-2]乙1意匠と非同一 乙1意匠は、全体意匠としての出願がなされています。そのため、衣服掛け(本件登録意匠部分に対応する部分)の形態のみならず、整理棚(ベッドの右側から下方にのびた部分である衣類棚のうち、衣服掛けを除く部分)の形態や、本棚(ベッドの左側から下方にのびた部分)の形態についても、意匠の類否(権利範囲)に影響を及ぼすことになります。 なお、ここでの表現は、乙1号証の「意匠に係る物品の説明」に倣っています。 そして、実施品と「乙1意匠」は、以下の点において異なっています(類似であるか否かは争いがあるかもしれませんが、同一でないことは明らかです)。 (1)整理棚の引き出し上方の板部材(A)の有無 (2)整理棚の背面上方の板部材(B)の有無 (3)本棚の背面上方の板部材(C)の有無 ■実施品 [図:0001431189000012.jpg] ■乙1意匠 [図:0001431189000013.jpg] ここで、意匠権の効力が類似範囲にまで及ぶとしても、類似範囲の境界線を把握することは容易ではなく、類否判断には争いが生じるため、製品形態を保護するにあたっては、製品と同一形態の出願を行うことが好ましいと言えます。そうでなければ(即ち、製品と非同一形態の出願の場合には)、製品と同一形態の模倣品に対して、意匠権に基づく権利行使が認められないという事態も生じかねません。 そうとすると、上記(1)(2)(3)が異なっていることから、「乙1意匠」は実施品を保護するために出願されたものではない、と考えても不自然ではございません。 また、[2-1]に記載のとおり、実施品は2004年8月24日の展示会において発表されています。展示会においては、実施品の現物が展示されていたと考えられます(甲3号証の「月刊 近代家具527号」の18ページには、展示会において、実施品と同時に発表された「コイズミ健康デスク」の現物が展示されている様子が分かります。このことからも、コイズミ健康デスクと同様に、実施品も現物が展示されていたと考えられます)。 [図:0001431189000014.jpg] そして、2004年8月24日に実施品の現物が展示されていることから、2004年8月24日までには実施品の現物が製造されていたこととなり、実施品の製造のために必要となる図面も完成していたことになります。 ここで、乙1意匠の出願日は2004年 8月19日(展示会が開催された2004年 8月24日の5日前)であり、実施品の現物を製造するための期間を考慮しますと、2004年8月19日の時点において、「実施品の図面」は完成していたと考えるのが自然です。 そうとすると、既に「実施品の図面」が完成しているにも拘わらず、完成済みの「実施品の図面」ではなく(実施品と「乙1意匠」が、(1)(2)(3)の点において、その形態が異なっていることは、上述のとおりです)、別の意匠図面(乙1意匠の図面)で出願を行っている点からも、実施品と「乙1意匠」とは、別製品であると言えます。 このように、 ・2004年8月19日時点で「実施品の図面」が完成していたこと ・実施品と「乙1意匠」が同一形態ではないこと を考慮しますと、実施品と「乙1意匠」とは、別製品であると言えます。 [2-3]甲2意匠と非同一 特願2004-241940(甲2号証)に係る発明の特徴部分(出願人が、発明の特定に不可欠であるとして、特許請求の範囲に記載した内容)が、実施品に採用されている可能性はあり得ます。 但し、甲2号証の特許請求の範囲は、以下のとおりであって、請求人としては、あくまで、発明の特徴部分が採用されている可能性があると考えるのみです。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 頭部側に備えられた2本の四角柱状の脚と、足部側に備えられた2本の四角柱状の脚とを有し、単体としても使用可能なベッドユニットと、 上記ベッドユニットの頭部側または足部側のいずれか一方の2本の脚を乗せる本棚ユニットと、 上記ベッドユニットの頭部側または足部側のいずれか他方の2本の脚を乗せる衣類棚ユニットとを備え、 上記本棚ユニットおよび衣類棚ユニットは、等しい高さを有し、それぞれ、四角柱状の4本の支柱と、4本の支柱の所定高さ位置に設けられた上記ベッドユニットの脚を乗せるための上棚とを有し、 上記上棚に乗せられたベッドユニットの各脚は、その外側面が、それぞれ、4本の支柱のうちの2本の支柱の、上棚から上方へ延びる部分の内側面と対向するようにされており、 上記対向する支柱と脚とは、それらを水平方向に貫通するボルトによって固定されていることを特徴とする、システムベッドの組み立て構造。 【請求項2】 頭部側に備えられた2本の四角柱状の脚と、足部側に備えられた2本の四角柱状の脚とを有し、単体としても使用可能な木製のベッドユニットと、 上記ベッドユニットの頭部側または足部側のいずれか一方の2本の脚を乗せる木製の本棚ユニットと、 上記ベッドユニットの頭部側または足部側のいずれか他方の2本の脚を乗せる木製の衣類棚ユニットと、 天板および天板の一端を支える脚を有し、天板の他端は上記本棚ユニットに係合されて支えられる木製の机ユニットとを備え、 上記各ユニットが組み立てられることにより、ベッドユニットの下方で本棚ユニットと衣類棚ユニットとの間に机を置く空間が生じ、その空間に上記机ユニットが配置されていることを特徴とするシステムベッド。」 そして、実施品と「甲2意匠」とは、以下の点において異なっています。 (1)クロゼット空間47の板部材(D)の有無 (2)引き出し46の数量 (3)引き出し46の背面上方の板部材(E)の有無 (4)角柱20の数量 (5)本棚ユニット3の背面上方の板部材(F)の有無 ■実施品 [図:0001431189000015.jpg] ■甲2意匠 [図:0001431189000016.jpg] ここで、実施品に甲2号証の技術が採用されていたとしても、上記(1)~(5)が異なっている以上、引用対応部分が実施品の形態であることにはなりません。 また、[2-2]に記載のとおり、2004年8月24日までには実施品の現物が製造されていたこととなり、実施品の製造のために必要な図面も完成していたと考えられます。 ここで、特願2004-291940(甲2号証)の出願日は2004年8月23日(展示会が開催された2004年8月24日の1日前)であり、実施品の現物を製造するための期間を考慮しますと、2004年8月23日の時点において、「実施品の図面」は完成していたと考えるのが自然です。 そうとすると、既に「実施品の図面」が完成しているにも拘わらず、完成済みの「実施品の図面」ではなく(実施品と「甲2意匠」が、(1)(2)(3)(4)(5)の点において、その形態が異なっていることは、上述のとおりです)、別の特許図面(甲2意匠の図面)で出願を行っている点からも、実施品と「甲2意匠」とは、別製品であると言えます。 このように、 ・2004年8月23日時点で「実施品の図面」が完成していたこと ・実施品と「甲2意匠」が同一形態ではないこと を考慮しますと、実施品と「甲2意匠」とは、別製品であると言えます。 [3]乙1意匠について 被請求人は、「乙1意匠と甲2意匠と実施品は、実質的に同一対象物、すなわち実質的に同一意匠であることが強く推認されます」(陳述要領書12ページ)と主張していますので、この点について反論を行います。即ち、乙1意匠が甲2意匠と同視できるものではない、という点を説明します。 [3-1]甲2意匠と非同一 特願2004-241940(甲2号証)に係る発明の特徴部分(出願人が、発明の特定 に不可欠であるとして、特許請求の範囲に記載した内容)が、乙1意匠に採用されている可能性はあり得ます。 但し、甲2号証の特許請求の範囲は、以下のとおりであって、請求人としては、あくまで、発明の特徴部分が採用されている可能性があると考えるのみです。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 頭部側に備えられた2本の四角柱状の脚と、足部側に備えられた2本の四角柱状の脚とを有し、単体としても使用可能なベッドユニットと、 上記ベッドユニットの頭部側または足部側のいずれか一方の2本の脚を乗せる本棚ユニットと、 上記ベッドユニットの頭部側または足部側のいずれか他方の2本の脚を乗せる衣類棚ユニットとを備え、 上記本棚ユニットおよび衣類棚ユニットは、等しい高さを有し、それぞれ、四角柱状の4本の支柱と、4本の支柱の所定高さ位置に設けられた上記ベッドユニットの脚を乗せるための上棚とを有し、 上記上棚に乗せられたベッドユニットの各脚は、その外側面が、それぞれ、4本の支柱のうちの2本の支柱の、上棚から上方へ延びる部分の内側面と対向するようにされており、 上記対向する支柱と脚とは、それらを水平方向に貫通するボルトによって固定されていることを特徴とする、システムベッドの組み立て構造。 【請求項2】 頭部側に備えられた2本の四角柱状の脚と、足部側に備えられた2本の四角柱状の脚とを有し、単体としても使用可能な木製のベッドユニットと、 上記ベッドユニットの頭部側または足部側のいずれか一方の2本の脚を乗せる木製の本棚ユニットと、 上記ベッドユニットの頭部側または足部側のいずれか他方の2本の脚を乗せる木製の衣類棚ユニットと、 天板および天板の一端を支える脚を有し、天板の他端は上記本棚ユニットに係合されて支えられる木製の机ユニットとを備え、 上記各ユニットが組み立てられることにより、ベッドユニットの下方で本棚ユニットと衣類棚ユニットとの間に机を置く空間が生じ、その空間に上記机ユニットが配置されていることを特徴とするシステムベッド。」 そして、「乙1意匠」と「甲2意匠」とは、「クロゼット空間47の右側面及び背面」以外にも、以下の点において異なっています。 (1)クロゼット空間47の板部分(G)の有無 (2)引き出し46の数量 (3)角柱20の数量 ■乙1意匠 [図:0001431189000017.jpg] ■甲2意匠 [図:0001431189000018.jpg] ここで、「乙1意匠」に甲2号証の技術が採用されていたとしても、上記(1)~(3)が異なっている以上、引用対応部分が「乙1意匠」の形態であることにはなりません。 また、乙1意匠の出願日は2004年8月19日であり、特願2004-291940(甲2号証)の出願日である2004年8月23日の時点において、既に「乙1意匠の図面」が完成しているにも拘わらず、完成済みの「乙1意匠の図面」ではなく(「乙1意匠」と「甲2意匠」が、(1)(2)(3)の点において、その形態が異なっていることは、上述のとおりです)、別の特許図面(甲2意匠の図面)で出願を行っている点からも、「乙1意匠」と「甲2意匠」とは、別製品であると言えます。 このように、 ・2004年8月23日時点で「乙1意匠の図面」が完成していたこと ・「乙1意匠」と「甲2意匠」が同一形態ではないこと を考慮しますと、「乙1意匠」と「甲2意匠」とは、別製品であると言えます。 [3-2]陳述要領書12、13ページに対する反論(1) 乙1意匠は、意匠に係る物品の説明に記載のとおり、「ベッド」「本棚」「衣類棚」「机」から構成されています。そして、このうちの「衣類棚」が甲2意匠とは全く異なっています。 ・板部材(G)の有無 甲2意匠のクロゼット空間47は分割されることなく、1つの空間から構成されています。乙1意匠の衣服掛けは板部材(G)で2分割されています。 クロゼット空間(衣服掛け)を正面視した場合に、甲2意匠のクロゼット空間47のハンガーバー48と底板40との間には、略中央の水平線が視認できるのみです。そして、この水平線の位置(Z方向の位置)が、最上段(1段目)の引き出し46の位置(Z方向の位置)と一致しているために、衣類棚ユニット4全体としての水平方向の統一感が生まれています。 乙1意匠は、略中央の水平線、及び、板部材(G)が視認できますが、そのいずれの位置(Z方向の位置)も、整理棚の上面の位置(Z方向の位置)と一致しておらず、衣類棚全体としての水平方向の統一感は生まれていません。 ・引き出しの数量 甲2意匠は引き出し46の数量が3であり、最上段(1段目)の引き出し46の位置(Z方向の位置)は、略中央に位置しています。乙1意匠は引き出しの数量が2であり、最上段(1段目)の引き出しの位置(Z方向の位置)は、略中央から引き出し1つ分を減じた高さに位置しています。 また、乙1意匠は、引き出し部の最上段(1段目)の高さが、衣類棚の左側面の板材の高さよりも低く、板部材(G)の高さよりも高いです。そのため、衣類棚を斜め方向(乙1号証の斜視図で示された方向)から見ると、「板部材(G)」「引き出し部の最上段(1段目)」「左側面の板材」という順に段々と高くなっています(階段状になっています)。 このように、 ・衣服掛けが分割されているか否か ・衣類棚ユニット全体として水平方向の統一感の有無 ・引き出し部の最上段の高さ ・斜視において階段状に見えるか否か といった点に起因して、「甲2意匠」と「乙1意匠」とは全く異なる美観を有するものであって、同視することなどできるものではありません。 [3-3]陳述要領書12、13ページに対する反論(2) 弁駁書7ページは、無効理由1についての主張です。即ち、法3条1項3号の「前二号に掲げる意匠」である甲2意匠をどのように特定するか、ということの主張です。 そして、「甲2意匠」と「乙1意匠」とは、[3-2]に記載のとおりであり、同視できるものではございません。 一方で、弁駁書17ページは無効理由2についての主張です。即ち、法3条2項の「容易に意匠の創作をすることができた」という点に関し、甲2号証の段落番号[0024]の記載を考慮すれば、机ユニット5を含めない構成とすることもできる、という主張です。 具体的には、段落番号[0024]から甲2意匠を「机ユニットを含まない構成」と特定できるということではなく、段落番号[0024]から甲2意匠(机ユニットを含む構成)に基づいて、当業者が容易に「机ユニットを含まない構成」を創作することができる、という主張です。 (小括) 上記[2][3]に記載のように、「甲2意匠」と「乙1意匠」及び実施品は全く異なるものであって、同視できるような関係にはございません。 そのため、甲2意匠の特定にあたって、乙1意匠や実施品を参酌すべきではなく、上記[1]に記載のとおり、右側面及び背面については、開放されていないことは明らかです。 [4]ハンガーバーについて ハンガーバーについては、甲2号証の段落番号[0017]に記載のとおり、「クロゼット空間47の上方の上棚44の下面には、前後方向に延びるハンガーバー48が備えられている」であり、段落番号[0017]では、左右側のどこまで達しているかが分からないものの、図3から箱状体の左右側面に達していることが分かりますので、「箱状体の左右側面に達するハンガーバーが取り付けられたものである」としました。 なお、被請求人は、ハンガーバーにつき、「この点は本件事案における『最重要事項』ですので」(陳述要領書15ページ)と主張していますが、ハンガーバーの差異は類否に影響を与えるものではない点は、後述します。 [5]類否について [5-1]使用者 「月刊 近代家具527号」の15ページ(甲3号証)には、以下の記載があります(下線は請求人が追記)。 「 このほかでは従来の棚付学習デスクとは異なる、大人になっても使えるデザイン・機能を持った製品にも、部屋と調和するインテリア性を意識した面はあるだろう。当然ながら、長く使えるというメリットも欠かせない。」 そうとすると、「使用者は子供のため、大人の使用状況を考慮する余地はありません」(陳述要領書21ページ)ということはできず、大人(将来的な大人も含む趣旨です)による使用も考慮する必要があります。 [5-2]需要者が着目する部分 「ハンガーバーに衣類を掛ける場合」においては、弁駁書(3-2)に記載のとおり、「クロゼット部分の正面に立った状態で見える部分」を主として注目いたします。 一方で、「デスクから衣類棚に向かう場合」においては、被請求人の主張のとおり、「斜めから見た衣類棚(甲2号証の図1の角度から見た衣類棚)」が目に付きやすくなります。この点は、請求人も認めます。 [5-3]類否判断 上記[5-1]のとおり、大人による使用(「大人になってからの使用」の意味も含む)も考慮しますと、「子供の体格に合わせたベッドの高さ」とするか(この場合には、購入時には体格に合っているものの、体格が大きくなると徐々に合わなくなる)、「大人の体格に合わせたベッドの高さ」とするか(この場合には、購入時には体格に合っていないものの、体格が大きくなると徐々に合ってくる)、「子供と大人の中間(例えば、小学校高学年や中学生)の体格に合わせたベッドの高さ」とするか、は設計上の差異でしかございません。 上記[5-2]のとおり、「斜めから見た衣類棚」が目に付きやすいとも言えます。 そして、「斜め」から見た場合においては、ハンガーバーは見えないか、殆ど見えないことになります(甲2号証の図1、乙1号証の斜視図では全く見えず、乙3号証の1ページ上方の画像では半分程度しか見えません)。そのため、ハンガーバーが強く注意を引くものとはなり得ず、「最重要事項」ということにもなりません。 また、「斜め」から見た場合においては、支柱41がベッドの全幅からはみ出す点についても、より一層見え難くなります。そのため、具体的構成態様における差異点(f)が類否判断に与える影響は極めて小さくなります。 ハンガーバーについては、収納空間をどのように利用するのかという利用方法に影響することから需要者の関心を引く部分です。しかし、例えば、本件登録意匠の出願日前から公知である参考意匠(甲4号証:特許庁意匠課公知資料番号第HC18068243号)に示すように、収納空間にハンガーバーを設けることは、本件登録意匠の出願日前から見られることです。また、ハンガーバーは需要者に見えやすい位置になく、大きな範囲を占めるものでもないことから、類否判断に及ぼす影響は小さなものです。 ■参考意匠(甲4号証) [図:0001431189000019.jpg] 2 無効理由2について [1]甲2意匠について 特願2006-183954の検索報告書(甲5号証)に、特開2006-55469(甲2号証)が記載されており、甲2意匠は「現実に知られていた」と言えます。 [2]創作容易について 被請求人が主張するように、甲2意匠のクロゼット空間の「右側面上半分及び背面上半分が開放されている」としても、当業者が容易に創作できる範疇です。 即ち、本件登録意匠部分の右側面及び背面は、引用対応部分の右側面及び背面の形態として、本件登録意匠の出願前のありふれた形態(ありふれた形態の一例として甲4号証)を採用したにすぎません。 また、本件登録意匠のハンガーバーの構成についても、本件登録意匠の出願前のありふれた形態(ありふれた形態の一例として甲4号証)に基づけば、特段の創意ある態様とは認められません。 更に、ハンガーバーの配置について、クロゼット空間の天面に極めて近接している形態(甲2意匠)が存在すると共に、本件登録意匠の出願前のありふれた形態(ありふれた形態の一例として甲4号証)として、クロゼット空間の天面から離れているものも存在していることに基づけば、ハンガーバーをクロゼット空間の上方のどの位置に配置するか(底板と対称となるように配置するか)についても、特段の創意があるものではありません。 したがって、甲2意匠に基づいて、当業者が容易に創作することができた意匠です。 5 「上申書」における主張 「第6 上申の内容 請求人は、令和7年3月12日付けで被請求人が提出した「上申書」に対して、以下の通り意見を申しあげます。 1 無効理由1について (1)ハンガーバーについて ハンガーバーは、収納空間をどのように利用するのかという利用方法に影響することから、需要者の関心を引く部分といえます。即ち、ハンガーバーが設けられていれば、収納空間にハンガーに吊した衣類を掛けて収納することができ、一方で、ハンガーバーが設けられていなければ、収納空間にハンガーに吊した衣類を掛けて収納することができないこととなり、収納空間の用途、及び機能を把握するにあたっては、ハンガーバーの有無は、重要な要素となります(ハンガーバーの有無が、収納空間の用途・機能を把握するにあたって重要です)。 そして、本件登録意匠部分(甲1)、引用対応部分(甲2)は、共にハンガーバーを有しており、「ハンガーに吊した衣類を掛けて収納する」という点において、収納空間の用途・機能が共通しています。なお、乙1意匠、実施品(乙4)、参考意匠(甲4)についても、ハンガーバーを有しており、収納空間の用途・機能が共通しています。 このように、ハンガーバーの“有無”は、収納空間の用途や機能を把握するにあたって重要ですが、一方で、ハンガーバーは需要者に見えやすい位置になく、かつ、大きな範囲を占めるものでもなく、更には、収納空間内にハンガーバーを設けることは、甲4号証にも開示されていますので、(ハンガーバーの有無という点は類否判断に与える影響が大きいといえますが)ハンガーバーの位置や形態については、類否判断に及ぼす影響は小さいものです。 従って、令和7年2月12日付けの口頭審理陳述要領書に記載のとおり、ハンガーバー(の位置や形態)については、類否判断に及ぼす影響は小さなものとなります。 (2)類否判断について 甲2号証には、従来技術として特開2004-24425号公報(以下、特開2004-24425号の図1を「参考意匠2」と記載します)が挙げられています。そして、参考意匠2は「支柱が上下方向に一直線状につながる状態で組み立てられたシステムベッド」です。 [図:0001431189000020.jpg] 参考意匠2(特開2004-24425号の図1) また、「月刊 近代家具527号」の14ページ(甲3)には、以下のシステムベッドが掲載されています(以下、「月刊 近代家具527号」の14ページに掲載されたシステムベッドを「参考意匠3」と記載します)。そして、参考意匠3は「支柱が上下方向に一直線状につながる状態で組み立てられたシステムベッド」です。 [図:0001431189000021.jpg] 参考意匠3(「月刊 近代家具527号」14ページ) 更に、「月刊 近代家具527号」の23ページ(甲3)には、以下のシステムベッドが掲載されています(以下、「月刊 近代家具527号」の23ページに掲載されたシステムベッドを「参考意匠4」と記載します)。そして、参考意匠4は「支柱が上下方向に一直線状につながる状態で組み立てられたシステムベッド」です。 [図:0001431189000022.jpg] 参考意匠4(「月刊 近代家具527号」の23ページ) また、「月刊 近代家具527号」の25ページ(甲3)には、以下のシステムベッドが掲載されています(以下、「月刊 近代家具527号」の25ページに掲載されたシステムベッドを「参考意匠5」と記載します)。そして、参考意匠5は「支柱が上下方向に一直線状につながる状態で組み立てられたシステムベッド」です。 [図:0001431189000023.jpg] 参考意匠5(「月刊 近代家具527号」の25ページ) ところで、本件登録意匠部分と引用対応部分とは、その形状等について、主に、 [1]クロゼット部分の支柱とベッドの支柱が一直線状であるか否かの点 [2]ハンガーバーの構成の点 において相違しています。 そして、相違点[1]については、例えば、本件登録意匠の出願前から公知である参考意匠2、参考意匠3、参考意匠4、参考意匠5に示すように、「支柱が上下方向に一直線状につながる状態で組み立てられたシステムベッド」がありふれており、相違点[1]が類否判断に及ぼす影響は小さいものといえます。 また、相違点[2]についても、例えば、本件登録意匠の出願前から公知である参考意匠(甲4)に示すように、「収納空間にハンガーバーを設けること」がありふれており、相違点[2]が類否判断に及ぼす影響は小さいものといえます。 [図:0001431189000024.jpg] 参考意匠(甲4号証) 一方で、相違点[1][2]以外の点(共通点)は、クロゼット部分で広く見られる形状であるものの、需要者の見えやすい範囲のほとんどを占めるものであり、両部分(本件登録意匠部分及び引用対応部分)の基調をなす部分であることから、両部分全体の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり、相違点[1][2]が相俟って生じる効果を凌駕するものといえます。 ここで、仮に、甲2意匠のクロゼット空間の「右側面上半分及び背面上半分が開放されている」場合には、本件登録意匠部分と引用対応部分とは、その形状等について、 [3]右側面上半分及び背面上半分が開放されているか否かの点においても相違することになります。 しかし、相違点[3]についても、例えば、本件登録意匠の出願前か公知である参考意匠(甲4)に示すように、「収納空間の側面及び背面が開放されていないこと」がありふれており、相違点[3]が類否判断に及ぼす影響は小さいものといえます。 一方で、相違点[1][2][3]以外の点(共通点)は、上述のとおり、クロゼット部分で広く見られる形状であるものの、需要者の見えやすい範囲のほとんどを示すものであり、両部分(本件登録意匠部分及び引用対応部分)の基調をなす部分であることから、両部分全体の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり、相違点[1][2][3]が相俟って生じる効果を凌駕するものといえます。 従って、本件登録意匠は甲2意匠と類似し、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、意匠法第48条第1項第1号により、無効とすべきです。 2 無効理由2について (1)甲5号証について 甲5号証は、登録調査機関(不特定人である一般財団法人工業所有権協力センター)が、スクリーニングサーチの結果として、特開2006-55469号公報(甲2)を報告しています。また、特願2006-183954の請求項を構成要件に分説した上で、特開2006-55469号に記載された発明との対比を行っており、こうした対比は特開2006-55469号の内容を把握する(知る)必要があることは明らかです。 従って、甲2意匠は、不特定人に現実に知られていたものです。 (2)創作容易について 本件登録意匠部分と引用対応部分とは、その形状等について、主に、 [1]クロゼット部分の支柱とベッドの支柱が一直線状であるか否かの点 [2]ハンガーバーの構成の点 において相違しています。 そして、相違点[1]については、例えば、本件登録意匠の出願前から公知である参考意匠2、参考意匠3、参考意匠4、参考意匠5に示すように、「支柱が上下方向に一直線状につながる状態で組み立てられたシステムベッド」がありふれており、こうしたありふれた形態(参考意匠2、参考意匠3、参考意匠4、参考意匠5)に基づけば、特段の創意ある態様とは認められないといえます。 また、相違点[2]についても、例えば、本件登録意匠の出願前から公知である参考意匠(甲4)に示すように、「収納空間にハンガーバーを設けること」がありふれており、こうしたありふれた形態(参考意匠)に基づけば、特段の創意ある態様とは認められないといえます。 ここで、仮に、甲2意匠のクロゼット空間の「右側面上半分及び背面上半分が開放されている」場合には、本件登録意匠分と引用対応部分とは、その形状等について、 [3]右側面上半分及び背面上半分が開放されているか否かの点 においても相違することになります。 しかし、相違点[3]についても、例えば、本件登録意匠の出願前から公知である参考意匠(甲4)に示すように、「収納空間の側面及び背面が開放されていないこと」がありふれており、こうしたありふれた形態(参考意匠)に基づけば、特段の創意ある態様とは認められないといえます。 従って、本件登録意匠は、甲2意匠に基づいて容易に創作することができ、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、意匠法第48条第1項第1号により、無効とすべきです。 (3)その他 「月刊 近代家具527号」の26ページ(甲3)に掲載された実施品の画像は、たて5.1cm、よこ6.9cmであり、「クロゼット部分の右側面の支柱がベッドを横から挟んでいる」のか、「支柱が上下方向に一直線状につながっている」のか、は必ずしも明らかではございません。 即ち、実施品は、甲2意匠のように、「支柱でベッドを横から挟んでいる」という点が、必ずしも明確ではございません。 [図:0001431189000025.jpg] 約5.1cm×6.9cmの画像(掲載時の大きさ) そうとすると、実施品については、「支柱でベッドユニットを横から挟む」という着想が明確ではなく、参考意匠(甲4)を実施品のクロゼット部分に、そのまま置き換えて採用することができます。 即ち、本件登録意匠部分は、本件登録意匠の出願前に公知となった実施品のクロゼット部分を、本件登録意匠の出願前に公知となった参考意匠のように、右側面が開放されていない構成を採用したにすぎません。 なお、甲3に掲載された実施品の画像からは、実施品のクロゼット部分の背面が開放されているか否かは明らかではありませんが、仮に、実施品の背面が開放されていたとしても、本件登録意匠部分は、本件登録意匠の出願前に公知となった実施品のクロゼット部分を、本件登録意匠の出願前に公知となった参考意匠のように、背面が開放されていない構成を採用したにすぎません。 また、「支柱が上下方向に一直線状につながる状態で組み立てられたシステムベッド」は、本件登録意匠の出願前に公知となった参考意匠2、参考意匠3、参考意匠4、参考意匠5に見られるものです。 更に、実施品のクロゼット部分の板部材(以下のDで示す部材)を無くすことも、本件登録意匠の出願前に公知となった甲2意匠に基づけば、特段の創意ある態様とは認められません。 従って、本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前に公知となった意匠(実施品、参考意匠、参考意匠2、参考意匠3、参考意匠4、参考意匠5、甲2意匠)に基づけば、当業者が容易に創作することができた意匠です。 ■実施品 [図:0001431189000026.jpg] 」 6 請求人添付の証拠 甲第1号証 意匠登録1387956号の登録公報の写し 甲第2号証 特開2006-55469号の公開公報の写し 甲第3号証 「月刊 近代家具527号」の写し 甲第4号証 特許庁情報・研修館受入のカタログ「nascere」の写し 甲第5号証 特願2006-183954の検索報告書の写し 第3 被請求人の理由の要点 被請求人は、答弁書を提出し、「口頭審理陳述要領書」及び上申書を提出し、おおむね以下のとおり主張した。 1 審判事件答弁書における主張 「6.答弁の趣旨 本件審判請求は成り立たない。 審判費用は請求人の負担とする。 との審決を求める。 7.答弁の理由 (1)答弁書の要点 ア.無効理由1について 請求人は、令和6年3月18日付審判請求書において、意匠登録第1387956号(以下、「本件登録意匠」という。本件登録意匠の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本件登録意匠部分」という。)は、引用公知意匠(甲2号証で示された意匠。以下「甲2意匠」という。)と類似するものであるから、意匠法第3条1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきであると主張する。 しかし、請求人が認定した意匠の構成態様には適切でないものが含まれている。これは、共通点・差異点の判断及び評価に影響している。また、認定が適切である部分についても、共通点・差異点の判断又は評価が適切とはいえないものがある。 したがって、類似とする主張に理由はなく、請求人の主張は成り立たない。 請求人の主張と被請求人の主張を比較すれば、以下のとおりである(下線は相違部分)。 [図:0001431189000027.jpg] [図:0001431189000028.jpg] [図:0001431189000029.jpg] [図:0001431189000030.jpg] [図:0001431189000031.jpg] イ.無効理由2について 本件登録意匠は、甲2意匠に基づき、容易に創作することができたものであるから、意匠法第3条2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきであると主張する。 しかしながら、引用対応部分の構成要素の比率の変更や構成要素の変更をしたものに過ぎないとはいえないから、容易に創作することができたものであるとはいえない。 したがって、請求人の主張は認められるものではなく、本件登録意匠を無効とすべき理由はない。 (2)無効理由1について (2-1)本件登録意匠 本件登録意匠は、甲第1号証に示された通りであって、その構成は以下の通りである。 ア 意匠に係る物品 本件登録意匠は、いわゆるロフト型システムベッドである。 この点、請求人の認定を認める。 イ 登録意匠部分の用途、及び機能 本件登録意匠部分は、右側面図においてハンガーパイプが一本備え付けられた正面に扉がない、衣類棚に係る部分であり、主に衣類等を収納するための用途、機能を有する。 この点、請求人の認定を認める。 ウ 本件登録意匠部分の位置、大きさ、及び範囲 本件登録意匠部分は、ロフト型システムベッドのベッド短辺側下方に位置し、大きさ及び範囲は、ベッド長辺側の長さの約4.5分の1、全体の高さの約3分の2、ベッド短辺側の長さの約2分の1強を占めている。 なお、本件登録意匠部分について、請求人の「ベッドの下であり、平面視で右側面側かつ背面側のコーナー部分の位置で、上方に位置するベッドの全幅、全長からはみ出さない程度の大きさ、及び範囲とする」との認定を認める。 エ 本件登録意匠部分の形態 (ア)基本的構成態様 請求人の認定を認める。 (イ)具体的構成態様 請求人の認定する態様「a」ないし「d」について認める。これに加えて、被請求人は、次の具体的構成態様「e」を認定する。 「e 箱状体の両側面は一枚板よりなる。」 (2-2)甲2意匠 甲2意匠は、甲第2号証に示された通りであって、その構成は以下の通りである。本件登録意匠部分に対応する部分を「引用対応部分」という。 ア 意匠に係る物品 いわゆるロフト型システムベッドである。この点、請求人の認定を認める。 イ 引用対応部分の用途、及び機能 引用対応部分は、ハンガーバー付きの衣類棚であり、主に衣類等を収納するための用途、機能を有する。 この点、請求人の認定を認める。 ウ 引用対応部分の位置、大きさ、及び範囲 引用対応部分は、ロフト型システムベッドのベッド短辺側下方に位置し、大きさ及び範囲は、ベッド長辺側の長さの約5分の1、全体の高さの約3分の2、ベッド短辺側の長さの約2分の1強を占めている。 請求人は、「上方に位置するベッドの全幅、全長からはみ出さない程度の大きさ、及び範囲とするものである」と認定する。しかし、右側面側の支柱を考慮していない。 支柱を考慮すれば、 「上方に位置するベッドの全幅、全長から支柱がはみ出す程度の大きさ、及び範囲とするものである。」 と認定すべきである。 なお、その余は認める。 エ 引用対応部分の形態 (ア)基本的構成態様 i.(当審柱:以下、小文字ローマ数字は、システム上非表示文字のためアルファベット「i」及び「v」で置きかえて示す。) 請求人の認定のうち、「正面側に向けて開放面を有し、内部に衣類等を収納するための収納空間が形成された略縦長直方体の箱状体であり、収納空間の上方には、箱状体の左右側面に両端が支持されたハンガーバーが延在する」という点(審判請求書5頁オ(ア))においては認める。 しかし、「左右側面、天井面、背面、及び底面に囲まれるとともに、」という点は否認する。 背面及び右側面が開放していないかどうかは、図面はもちろん、明細書の記載からも明らかではない。にもかかわらず、請求人は何ら根拠を示さず、上記のように認定しているが、これは到底認められるべきではないからである。 ii.以下のように、背面の上半分及び右側面の上半分は開放されている。甲2号証と同一の出願人により出願された意匠登録第1244043号(乙第1号証。以下、「乙1意匠」という。)は、甲2意匠と近似している。 甲2意匠の特許出願日は2004年8月23日、乙1意匠の意匠登録出願日は同月19日であり、わずか4日の違いである。 同一の出願人が、同時期に近似する対象物について特許と意匠の両方で保護を求めているということは、技術的側面とデザイン的側面の双方で保護を求めたことは容易に推測できるところであり、対象物もおよそ同一のはずである。 この観点から甲第2号証の【図1】と下記別掲1を参照すると、 (i)「梯子7」、「椅子6」、「ワゴン52」の有無、 (ii)「角柱20」及び衣類棚ユニット左側の「引き出し46」の数、 (iii)衣類棚ユニット右側には「引き出し46」の一段目の高さの位置に板があるかないかの点、 を除き、ハンガーバーの位置も含め構成は同一である(各部の名称および数字は、甲2の【図1】に記載された番号を用いている)。 そして、本件登録意匠部分との関係では、上記(i)(ii)の相違部分が類否判断に影響を与えることはないから、上記(iii)の相違部分を考慮する必要がある場合を除き、乙1意匠は甲2意匠と同視しても支障はなく、また、甲2意匠の不明瞭な点は、乙1意匠を参酌して判断しても支障はない。 上記を踏まえて、右側面と背面を検討すれば以下のとおりである。 まず、右側面について、甲2意匠と同視できる乙1意匠(下記の別掲1)を参酌すると、右側面の上半分は、空間を遮る板がなく、開放されている。このことは、乙1意匠の背面図において、ハンガーバーが表示されていることからも明らかである。 (別掲1 乙第1号証より抜粋) [図:0001431189000032.jpg] 次に、背面について、乙1意匠の右側面図において、衣類棚中央付近に一本の薄い線が左右に描かれている。この線は、衣類棚の背面の下半分の板の上端を示しているから、当該線の上側は開放されている。そして、乙1意匠のB-B断面図においても、衣類棚の背面上半分の板に該当する板が描かれていない。 このことは、次の点からも明らかである。 すなわち、「ベッドユニット2と本棚ユニット3との組み立て構造およびベッドユニット2と衣類棚ユニット4との組み立て構造は、基本的には同じ構造である」(甲2の段落【0019】)とされているように、本棚と衣類棚の組み立て構造は同じであるから、開放されている本棚と同様に、衣類棚の方も開放されているのである。 このように、甲2意匠と同視できる乙1意匠では、右側面の上半分と背面の上半分は開放されており、これらは甲2意匠でも同様の構造である。 以上より、甲2意匠の右側面の上半分及び背面の上半分は開放されているのであって、「左右側面、天井面、背面、及び底面に囲まれる」という構成ではない。 したがって、 「左側面、右側面下半分、天井面、背面下半分、及び底面は開放されていないが、右側面上半分及び背面上半分開放されている」 と認定すべきである。 (イ)具体的構成態様 i.請求人の認定する「a」(審判請求書5頁オ(イ)a)は認める。 ii.請求人は、「b」について、「ハンガーバーは箱状体の縦幅の10分の9程度の高さ位置に設置され」と認定する(審判請求書5頁オ(イ)b)。 しかし、甲2意匠からは、ハンガーバーは天井面と接しているようにすら見受けられる。請求人は、10分の9程度と認定するが、その根拠は何も示しておらず、感覚的な基準に依存しているものと推察される。すなわち、概括的に捉えすぎており、不明確であって、本件登録意匠と共通するように恣意的に記載しているとも考えられるから、これを認めることは到底できない。 この点、甲2意匠と同視できる乙1意匠の背面図によれば、ハンガーバーは箱状体の縦幅の約15分の14程度の高さに設けられており、衣類棚の天面板から縦幅の1割も離れていない位置に設けられ、天井板に殆ど接するような状態で、正面視において天面との隙間なく設けられている。 したがって、 「b ハンガーバーは、箱状体の縦幅の約15分の14程度の高さに設けられており、天井板に殆ど接するような状態で、正面視において天面との隙間なく設けられている」 と認定すべきである。 iii.請求人は、「c」について、「底板は、箱状体の縦幅の約10分の1程度の高さであ(る)」と認定するが(審判請求書5頁オ(イ)c)、「b」と同様に、何ら根拠を示していない。 それゆえ、概括的に捉えすぎており、不明確であるから、これを認めることはできない。むしろ、底面を構成する底板は、箱状体の縦幅の約26分の1の高さである。 なお、底面が接地面から僅かに離れるように設置されている点は認める。 したがって、 「c 底面を構成する底板は、箱状体の縦幅の約26分の1の高さであり、底面が接地面から僅かに離れるように設置されている」 と認定すべきである。 iv.「d」(審判請求書5頁オ(イ))については、請求人の認定を認める。 v.以上に加え、被請求人は、次の内容を認定する。 「e 箱状体の開口部を正面とした場合の右側面は、衣類棚(箱状体)天面の位置より上方に延伸する支柱2本と、該支柱の間にはめ込まれた板部材とからなる。」 この点は、甲第2号証において、 ・「衣類棚ユニット4にも上棚44が備えられている。」「上棚44上の、前方右側に位置する支柱41」(甲2の段落【0016】、【図1】、【図2】)、 ・「上棚44の下面には、前後方向に延びるハンガーバー48が備えられている」(甲2の段落【0017】、【図1】、【図2】) とされており、「支柱41」が「衣類棚(箱状体)天面の位置より上方に延伸する支柱2本」に相当し、「上棚44」が「該支柱の間にはめ込まれた板部材」に相当する(別掲2、別掲3赤線部参照)。 (別掲2 甲2号証【図1】より作成) [図:0001431189000033.jpg] (別掲3 甲2号証【図3】より作成) [図:0001431189000034.jpg] (2-3)本件登録意匠と引用対応部分との対比 ア 本件登録意匠と甲2意匠(以下、「両意匠」という。)に係る物品 両意匠の物品が共通する点については請求人の主張を認める。 イ 本件登録意匠部分と引用対応部分(以下、「両部分」という。)に係る用途、及び機能 両部分の用途、機能が共通する点については請求人の主張を認める。 ウ 両部分の位置、大きさ、及び範囲 両部分の位置、大きさ及び範囲が略共通する点について概ね認めるが、支柱がはみ出す程度の大きさ、範囲という点で、本件登録意匠部分と相違する。 したがって、「ベッドの下方であり、かつ平面視で右側面側かつ背面側のコーナー部分の位置」については共通し、「上方に位置するベッドの全幅、全長から支柱がはみ出す程度の大きさ、及び範囲」については相違する。 エ 両部分の形態の対比 (ア)基本的構成態様 甲2意匠の背面上半分及び右側面上半分が開放されている点については前述のとおりであるから、「左側面、右側面下半分、天井面、背面下半分及び底面は開放されていないが、右側面上半分及び背面上半分は開放され(ている)」という点は、本件登録意匠部分と相違する部分である。 一方、「正面側に向けて開放面を有し、両意匠は内部に衣類などを収容するための収納空間が形成された略縦長直方体の箱状体であり、収納空間の上方には、左右両側面に両端が支持されたハンガーバーが延在する」点において、本件登録意匠部分と共通する部分であり、この点は認める。 (イ)具体的構成態様 i 両部分は以下の点で共通する。 請求人の主張する「a (略)箱状体の縦幅が横幅よりやや長く、奥行き幅が横幅より僅かに短く構成されている。」(審判請求書8頁(イ)Aの共通点「a」)は、共通点として認める(以下、「具体的構成態様における共通点(a)」という。)。 一方、請求人は、審判請求書8頁(イ)Aの「b」及び「c」を共通点として挙げているが、後述のとおり(ii(c)(d))、差異点であるというべきである。 ii 両部分は、以下(a)~(f)の6つの点で相違する。 (a)請求人が主張する縦幅、横幅、奥行きの比率の相違点「a」(審判請求書8頁(イ)Ba」は、認める(以下、「具体的構成態様における差異点(a)」という)。 (b)本件登録意匠の縦幅が横幅の約1.5倍であり、引用意匠対応部分の縦幅が横幅の約2倍であって、縦横比率が異なる(以下、「具体的構成態様における差異点(b)」という)。 (c)請求人が共通点として主張する、「b ハンガーバーは、箱状体の上方であり、同縦幅の10分の9程度の高さに位置する。」という点について(審判請求書8頁(イ)Ab」)、本件登録意匠部分のハンガーバーは、箱状体の縦幅の約10分の9の高さであるのに対し、引用対応部分のハンガーバーは箱状体の縦幅の約15分の14程度の高さに設けられており、衣類棚の天面板に殆ど接するような状態で正面視天面との隙間なく設けられている点で、本件登録意匠部分と引用対応部分は相違する。 ハンガーバーの水平方向の取り付け位置について、請求人が相違点bとして主張する「本件登録意匠部分が箱状体の奥行き幅の略中央部分であるのに対して、引用対応部分の取付位置は必ずしも明確ではない」(審判請求書8頁(イ)Bb」とする部分は認める。 以上の2点を総称して、以下、「具体的構成態様における差異点(c)」という。 (d)請求人が共通点として主張する、「c 底面を構成する底板は、箱状体の縦幅の10分の1程度の高さに位置する。」という点について(審判請求書8頁(イ)Ac」)、本件登録意匠部分の底面を構成する底板は、箱状体の縦幅の約10分の1の高さであるのに対し、引用対応部分は約26分の1の高さであるから、相違点として認定すべきである。 請求人が相違点cとして主張する部分は認める(審判請求書8頁(イ)Bc」)。 以上の2点を総称して、以下、「具体的構成態様における差異点(d)」という。 (e) 審判請求書8頁(イ)Bの「d」の主張については認める(以下、「具体的構成態様における差異点(e)」という)。 (f) 箱状体の両側面について、本件登録意匠部分の両側面は一枚板よりなるシンプルな構造であるのに対し、引用対応部分の右側面は、天面の位置より上方に延伸する支柱2本と、該支柱の間にはめ込まれた板部材とからなる点で相違する(以下、「具体的構成態様における差異点(f)」という)。 (2-4)両意匠の類否 ア 需要者等 請求人は、両意匠の需要者について認定していない。 しかし、両意匠の物品は子供向けのシステムベッドであることから、需要者等は、実際の使用者である幼稚園児、小学生や中学生の子供、又は、子供の保護者やその他取引者であるというべきであるから、これらの需要者等を対象とし、当該需要者等が観察する場合に注意を惹きやすいかどうかという観点から参酌して評価すべきである。 イ 両意匠に係る物品、用途、機能、位置、大きさ並びに範囲 意匠に係る物品並びに用途及び機能の共通性については、請求人主張のとおりである。 一方、位置、大きさ並びに範囲は、請求人の主張とは異なり、対応引用部分が「上方に位置するベッドの全幅、全長から支柱がはみ出す程度の大きさ、及び範囲」である点で相違する。 ウ 両意匠の共通点及び差異点の評価 (ア)両部分の共通点の評価 i.基本的構成態様における共通点の評価 両意匠の基本的構成態様の共通点、即ち、「正面側に向けて開放面を有し、両意匠は内部に衣類などを収容するための収納空間が形成された略縦長直方体の箱状体であり、収納空間の上方には、左右両側面に両端が支持されたハンガーバーが延在する」点は、何れも両部分を概括的に捉えたものである。 このような形状は、店頭やオンラインショッピング等でよく見かける構造であるため、経験則に照らしても、本件登録意匠の出願前に公然と知られた態様であるといえるから、需要者等の注意を強く惹く部分であるとまではいうことはできない。 もっとも、甲第1号証の右側面図のように、衣類棚正面が外部と接しているため、衣類棚正面が視界に入りやすい位置関係にあるから、着目しやすい部分ではある。 したがって、該共通点が、意匠の類否判断に与える影響は一定程度にとどまる。 ii.具体的構成態様における共通点の評価 「具体的構成態様における共通点(a)」については、両意匠の物品においては、出願前よりありふれた形態であって、需要者等が注意を惹きやすい部分であるとは到底いえない。需要者等は、むしろ、箱状体の具体的な構成に注意を払うというべきであるので、当該共通点が、意匠の類否判断に与える影響は小さいといえる。 なお、請求人がいう共通点bについては(審判請求書9頁(イ)B)、請求人が主張ないし評価するように、ハンガーバーの設定位置については類否判断に大きく影響する点で認める。ただし、差異点である。 (イ)両部分の差異点の評価 i.基本的構成態様における差異点 本件登録意匠部分は、左右両側面、天井面、背面及び底面が板状部材によって囲まれている。 これに対し、引用対応部分は、背面及び右側面上半分が開放されていることによって左右前後の四方すべてが囲まれる構造にはなっていない。 本件登録意匠部分の場合、わざわざベッドの下の空洞部分に入って、衣類棚の背面側を見ることはない。衣類棚の後ろを見ても、視界に入るのは背面板だけであり、何ら衣類棚としての機能を発揮しないからである。なお、引用対応部分は、背面上半分が開放しているものの、下半分は板で閉じられているのであり、わざわざベッドの下に入って背面上半分の開放部分からハンガーバーに服を掛けるような使用は考え難い。 また、衣類棚のハンガーバーに服を掛けるときに、通常は正面に立つのだから、使用時に真横を見ることもない。 したがって、通常は正面を見ることになるところ、衣類棚正面が視界に入りやすいことは前述のとおりであるから、需要者等は正面に着目する。そうすると、正面に着目した場合に直ちに視界に入る部分は、右側面上半分と背面上半分である。なぜなら、箱状体の暗い空間に比べると、外部と接する開放部分は明るいため、着目しやすいからである。 また、右側面と背面の上半分が外界と遮断されていない場合、子供であれば遊びにも使用するので、大人も子供の目線で着目しやすい部分である。例えば、かくれんぼ遊びのときは、子供が衣類棚に隠れて、上半分の開放部から周囲の様子を探るのに使用することが想定される。 重要なことは、背面や側面が開放しているかどうかは、衣類等を収納する上で、通気性、埃がかかりやすいかどうか、衣類棚の強度等に関わる点である。 そうすると、 ・開放部分は通気性という機能性を有すること、その反面埃がかかりやすく、強度に不安を感じやすいこと、 ・通気性等の機能を有する部分及び、強度に関わる部分は、大人が購入時に着目しやすいこと、 ・子供の遊びとして使用され、大人も着目しやすいこと、 ・子供も大人も使用時には正面に立つので、開放部分が視界に入ること、 これらからすれば、需要者等が最も注意を惹きやすい部分は、背面や右側面の上半分の開放部分である。 このように、箱状体が囲まれているか否かは、両部分の全体の基調を決定付けるものであるから、基本的構成態様における差異点が、意匠の類否判断に与える影響は極めて大きい。請求人はこの点を看過している。 ii.具体的構成態様における差異点 第一に、「具体的構成態様における差異点(a)(b)」は、箱状体の縦・横・奥行き比に係る差異点、及び縦横比率に係る差異点である。 この点につき、請求人は設計上の差異にすぎない、需要者等は注意深く観察しなければ気づきにくいなどと主張する(審判請求書9頁(ウ))。 しかし、以下のとおり、当該主張は、購入時や使用時の態様を加味していない誤った主張であり、到底受け入れることはできない。なお、設計上の差異にすぎない点は、創作非容易性の欄で述べる。 すなわち、システムベッドの需要者等は、実際の使用者である子供や比較的若い年齢層の大人、又は、子供の保護者であり、幅広い年齢層であると考えられる。そして、需要者等は、購入の際に、使用者の体に合った大きさや高さかどうか、ハンガーバーに掛ける衣類等の長さや収納量等も考慮し、使用時においてもハンガーバーの長さや収納量を考慮して衣類等を保管するのであるから、当然、箱状体の具体的な構成比にも着目する。 そうすると、本件登録意匠部分は縦幅が横幅の約1.5倍であるのに対し、引用対応部分は約2倍であり、引用対応部分は明らかに縦に長い外観であることは一見して目につく差異であって、需要者等が着目しやすい部分における差異であるから、「具体的構成態様における差異点(a)(b)」が、意匠の類否判断に与える影響は大きい。 第二に、「具体的構成態様における差異点(c)」は、ハンガーバーの高さ及び取付位置に係る差異点である。 まず、前述(ii.具体的構成態様における共通点の評価)のとおり、ハンガーバーの設定位置が類否判断に大きく影響することは、請求人と被請求人との間で争いはない。 次に、請求人は、「ハンガーバーの水平方向の取付位置までは視認し難い」から類否に与える影響は軽微であると主張する。 確かに、取付位置が視認し難いのは請求人の主張のとおりである。しかし、引用対応部分の右側面上半分及び背面上半分は開放されているのだから、正面のほか、右側面と背面からも視認することができる。そうすると、正面から取付位置を視認しにくい場合、右側面側や背面など別の側面からも確認しようとするのが経験則によるところである。 加えて、ハンガーバーはハンガーや衣類等を掛けるものであるから、需要者等は、その位置に注目するところ、ハンガーバーは、ハンガーや衣類を掛けやすいように、ある程度衣類棚(箱状体)の天面から隙間を空けて設けるのが一般的であるといえる。 これに対し、引用対応部分のハンガーバーは、衣類棚の天面と殆ど隙間が無い状態で設けられている構成であるから一般的なものではない。これは、取付位置がどのようになっているか、どのように服を掛ける構造になっているかなど興味を抱かせる部分であるから、かえって当該部分が需要者の注意を惹きやすい部分といえる。 以上によれば、「具体的構成態様における差異点(c)」が、意匠の類否判断に与える影響は大きいというべきである。 第三に、「具体的構成態様における差異点(d)(e)」について、請求人の主張を認める。 第四に、「具体的構成態様における差異点(f)」は、引用対応部分の右側面の支柱及び支柱の間にはめ込まれた板部材に関する差異点である。 この点は、両部分に占める割合が大きく、一見して目につく部分であるから需要者等が着目しやすい部分であるといえる。また、需要者等は床から高い位置で就寝することになるシステムベッドの性質上、安全性にも注意を払う。 注意を払う部分であることは、甲第2号証によれば、「横揺れ等に対する強度が弱いという課題」があったので、「横揺れに強く安定した強度を保つ見栄えの良いシステムベッドを提供」するために、「支柱31(41)」が重要な要素の一つとなると指摘され(甲2の段落【0003】、【0020】~【0023】)、支柱は課題の解決に重要な役割を果たす部分であることからも窺い知ることができる。 そうすると、引用対応部分の右側面は、上方に延伸する柱とベッドの脚が固定されていることから、需要者等が安全性の確認のために特に注意を払う部分である。 よって、「具体的構成態様における差異点(f)」が意匠の類否判断に与える影響は大きいというべきである。 イ 両部分の共通点と差異点の評価のまとめ 以上からすれば、両意匠の類否判断に与える影響が大きい点は、 ・「基本的構成態様における差異点」および ・「具体的構成態様における差異点(a)(b)(c)(f)」であり、 両意匠に与える影響が小さい又は一定程度にとどまる点は、 ・「基本的構成態様における共通点」および ・「具体的構成態様における差異点(d)(e)」である。 これらの差異点が相まった視覚的効果を考慮して総合すると、本件登録意匠部分は、どっしりと構えた重厚感ある印象であるのに対し、引用対応部分は、ほっそりとし、軽そうではあるがしっかりした印象を与える。 そうすると、差異点が両意匠の類否判断に与える影響は大きく、共通点は両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対し、差異点は、共通点を凌駕して、両意匠を別異のものと印象づけるものであるから、本件登録意匠部分が引用対応部分に類似するとはいえない。 (3)本件登録意匠は、出願段階において、甲2意匠及び乙1意匠と非類似とされたこと 本件登録意匠は出願段階で拒絶理由を受けることなく登録査定処分がされている。これは、類似する意匠がなかったこと、すなわち、甲2意匠及びこれと同視し得る乙1意匠との関係においても、非類似とされたことを意味する。 したがって、本件登録意匠部分と引用対応部分とが非類似であるとする被請求人の主張と、出願段階における審査官の判断は一致する。 (4)小括 以上のとおり、本件登録意匠と甲2意匠は、意匠に係る物品は同一であって、両部分の用途・機能は共通するが、位置、大きさ、範囲においては相違部分があり、形態については、両部分の差異点が共通点を凌駕することから、本件登録意匠部分と引用対応部分とは類似するものではない。 すなわち、本件登録意匠は、その意匠登録出願の出願前に公然知られた甲2意匠に類似する意匠ではなく、したがって、本件登録意匠の登録が、意匠法第48条第1項第1号に該当し同項柱書の規定によって、無効とされるべき理由は全くない。 よって、無効理由1に関する請求人の主張は成り立たない。 (5)無効理由2について ア 甲2意匠 甲2意匠は、前記(2-2)のとおりである。 イ 創作非容易性について (ア)甲2意匠と本件登録意匠の共通点は、何れも当該意匠分野においてはありふれた態様であるから、両意匠にのみ共通するものではない。 一方、両意匠の差異点は、上記(2)で述べた通り、基本的構成態様の差異点と「具体的構成態様における差異点(a)ないし(f)」である。 (イ)「具体的構成態様における差異点(a)(b)」、即ち箱状体の縦幅:横幅:奥行幅の比については、請求人が主張するような単に収容物の量に応じて設計上生ずる程度の差異ではない。 本件登録意匠部分の縦幅:横幅の比は約19:12程度であって、縦幅が横幅の約1.5倍であるのに対し、引用対応部分のそれは約6:3であって、縦幅が横幅の約2倍であることは争いがないところ、後者の方が、縦幅が長いことを意味している。 そうすると、本件登録意匠に比べて、甲2意匠は全体的にベッドの高さを高くしていることが分かるから、両部分の高さには相当の差があることが明らかである。 そして、このベッドの高さの差異が単なる収容量による設計事項ではないことは、次のとおりである。 すなわち、本件登録意匠は、机をベッドの下に収容せず、ベッドの外に出して使用することを目的としているから、本件登録意匠部分はこれにあわせて創作されたものである。つまり、ベッドの高さが一定程度低い場面を想定し、衣類棚の高さがベッドにあうように、意図して創作したものである(乙第2号証、乙第3号証)。 これに対し、甲2意匠は、机をベッドの下に収容し、使用者がベッドの下に入って机を使用することを目的としたものであり、ベッドの高さを高くする必要があったことから、縦幅の長い衣類棚を意図して創作されたものである。 このように、机の使用態様に対応してベッドの高さが適切な位置になるように創意工夫されたものであって、単に、収納物の量といった物理的な観点から比率が定められたものではない。そもそも、着想が全く異なるのである。 この点、ベッドの高さも設計事項にすぎないとの再反論が予想されるが、子供(特に幼少期)が使用する観点からすれば、ベッドの高さや机の高さには自ずと限度があり、ベッドの高さと机の高さに配慮して、適切な位置関係に設定するためには、人による工夫ないし検討を要するのであるから、単なる設計事項ではない。 したがって、「引用対応部分の構成要素の比率の変更」にとどまらないから、本件登録意匠部分が、引用対応部分に基づいて容易に創作できたものとは到底いえない。 (ウ)「具体的構成態様における差異点(c)」、すなわちハンガーバーの取付位置について、請求人は、「設計上生ずる程度の差異であり・・同一性の範囲を超えるものではない」と主張する。 しかし、設計上生ずる程度の差異であることの理由、根拠は何ら主張せず、証拠も提出していない。 この点、甲2意匠には、本件登録意匠のハンガーバーの位置にすることについて何ら示唆するものが無い。また、甲第2号証には、「クロゼット空間47の上方の上棚44の下面には、前後方向に延びるハンガーバー48が備えられている」(甲2の段落【0017】)という記載以外に、ハンガーバーの取付位置に関する記載はなく、取付位置の配置の動機付けとなるような示唆もない。 「設計上生ずる程度の差異」でないことは、以下のとおりである。 本件登録意匠部分において、ハンガーバーの取付位置は縦幅の10分の9程度の高さに、底板は縦幅の10分の1程度の高さに設置されている(争いなし)。つまり、縦幅の上から10分の1程度の位置にハンガーバーが水平方向に備え付けられ、一方で、縦幅の下から10分の1程度の位置に底板が水平方向に備え付けられていることから、衣類棚正面から見れば、上下対称となるように、対象物が水平方向に配置されているのである。 服を掛ける機能を有するハンガーバーと物を置くために機能する底板は全く機能が異なるところ、異なる機能を有する二つの対象物を用いて上下対称になるように配置することは、容易なことではない。 したがって、「引用対応部分の・・構成要素の配置を変更したものに過ぎず」ということはできないから、本件登録意匠を引用対応部分から容易に創作できたものとはいえない。 (エ)「具体的構成態様における差異点(d)(e)」、すなわち底面の左右両側面による支持位置及び底面や天井面の肉厚について、請求人は、設計上生ずる程度の差異であることの理由、根拠は何ら主張せず、証拠も提出していないから、主張は失当である。 (オ)「具体的構成態様における差異点(f)」、すなわち支柱について、甲2意匠は、前述のように技術的課題が存在したため、衣類棚に天面の上方に延伸する支柱を用いることによって、衣類棚の天井面に置いたベッドの脚を衣類棚の支柱と固定することを目的としたものである。 これに対し、本件登録意匠は、衣類棚とベッドの脚とを支柱によって固定することを意図して創作されていない。 加えて、基本的構成態様の差異点(右側面と背面の上半分の開放)も、支柱との構成で開放された構造になったものであり、大きな特徴点である。 これらは、いずれも引用対応部分に特徴のある部分であり、当該引用対応部分から、甲2意匠に見られる支柱は本件登録意匠に見られないものであるから、そもそも着想の違いが明らかである。 したがって、本件登録意匠のように右側面に支柱を有しない衣類棚を、甲2意匠からその「構成要素の比率の変更」や「構成要素の配置の変更」により容易に創作できたものとは到底いえない。 (カ)上記のとおり、引用対応部分に基づいて容易に創作できないのであるが、仮に請求人の主張する4点(審判請求書10頁ないし11頁)から容易に創作し得たと仮定したとしても、「具体的構成態様における差異点(f)」については、「構成要素の比率の変更」や「構成要素の配置の変更」とはいえないのだから、容易に創作することができたとはいえない。(6)小括 以上のとおり、「具体的構成態様における差異点(a)ないし(f)」は、設計上生ずる程度の差異ではなく、異なる着想から創作されたものであって、いずれも甲2意匠には見られないものであるから、本件登録意匠は、甲2意匠に示された意匠に基づいて、その構成要素の比率の変更、或いは構成要素の配置を変更したものではなく、当業者であれば容易に創作することができたものでもない。 よって、本件登録意匠が意匠法第48条第1項第1号に該当し同項柱書の規定によって、無効とされるべき理由は全くない。 (7)結語 以上より、請求人の主張する無効理由1及び無効理由2には全く理由がなく、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件登録意匠の登録は、無効とすることはできない。 よって、被請求人は、答弁の趣旨のとおりの審決を賜るようお願いする次第である。」 2 「回答書」における回答 「7.回答の内容 被請求人は、「甲2意匠のハンガーバーは、左右の側面ではなく、棚の下面に取り付けられたもの」との暫定的なご認定に、賛同致します。 以下では、補足意見を述べさせていただきます。 (1)賛同する理由 甲2の【発明の詳細な説明】の段落【0017】の記載には、「下面」と記載されていることが理由です。 広辞苑(参考資料1)によれば、「下面」とは「下の方の面。」ということから、ハンガーバーは、上棚44を構成する板状部材の下を向いている平面に設置されているのであって、左右両側面に両端が支えられているのではないことは明らかです。 また、仮に、ハンガーバーの両端が左右両側面に取り付けられているのであれば、「上棚44の下側」や「下の方」といった記載表現となるのが自然です。「下面」という用語があえて用いられていることからも、左右両側面にハンガーバーの両端が取り付けられているものではないことが裏付けられます。 (2)ハンガーバーの取付位置に係る差異点について 甲2意匠の「左右両側面に両端が支持されたハンガーバー」は、「上棚44を構成する板状部材の下を向いている平面に設置されたハンガーバー」になります。 これにより、答弁書第4頁等の「基本的構成態様」のうち、「左右両側面に両端が支持された」という部分は除外されます。 そして、甲2意匠の「具体的構成態様」「b」欄(答弁書第4頁等)に、「ハンガーバーは、上棚44を構成する板状部材の下を向いている平面に設置されていること」が追加されます。これは、本件登録意匠部分におけるハンガーバーの取付位置と異なるため、「具体的構成態様」における差異点(c)」(答弁書第6頁~第7頁等)に追加されます。 なお、このように追加しても、ハンガーバーの位置とその取付部分は別個の構成態様であるため、答弁書第4頁等の「b ハンガーバーは、箱状体の縦幅の約15分の14程度の高さに設けられており、天井板に殆ど接するような状態で、正面視において天面との隙間なく設けられている」という認定と矛盾するものではありません。 (3)ハンガーバーの形状に係る差異点について 甲2の【発明の詳細な説明】の段落【0017】の「下面」というのは、上棚44を構成する板状部材の下を向いている平面ということになりますので、上棚44の下の方の面にハンガーバーを備え付けるためには、本件登録意匠のような直線状のハンガーバーではなく、下面に取り付けられるよう、例えば、「倒コの字形状」のハンガーバーである必要があると容易に推察されます。 そうすると、ハンガーバーの形状そのものも、本件登録意匠部分と甲2意匠とでは異なりますので、具体的構成態様における差異点になると考えます。当該差異点は、新たな差異点となります。 (4)甲2意匠の右側面の上半分が開放されていること ア.甲2意匠のハンガーバーの両端が左右両側面ではなく、上棚44の下面に備えられているという点は、甲2意匠の右側面の上半分が開放されていることを裏付けることになります。 なぜなら、右側面の上半分が開放されている以上、ハンガーバーを右側面で支持することは物理的に不可能だからです。このことは、甲2意匠と同視できる乙1意匠の背面図において、ハンガーバーが表示されていることからも明らかです。 イ.参考資料2 (ハイベッドデスク「MLBシリーズ」)は、甲2意匠の出願人と同一人の商品の写真であって、甲2意匠の出願時期から近い2004年10月の月間近代家具に掲載されたものですので、参考資料2の商品写真が、甲2意匠の実施品であると考えられます。 当該参考資料2に表れた写真では、衣類棚の右側面の上半分が開放されており、ハンガーバーも右側面と接着していることは確認できません。それゆえ、当該参考資料2からも、被請求人の上記認定が正しいものであると考えます。 (5)創作非容易性に関する意見 ハンガーバーの形状そのものが異なる点及びハンガーバーの取付位置が異なる点も、創作非容易性を基礎づける根拠になると考えます。 つまり、ハンガーバーが「直線状」か「倒コの字形状」かでは、ハンガーや物を掛けるバーの長さが異なりますので、ハンガーバーの両端部を両側面で支持した本件登録意匠部分は、甲2意匠に比べると、より多くのハンガー等を掛けることが可能ですし、ハンガー同士の幅を大きくするなどより広い面積を使用することが可能となります。また、衣類棚のどの部分でハンガーバーを支持するのかは、衣類棚の各面を構成する板の強度を考慮する必要があります。 このように、ハンガーバーの形状及び取付位置の違いは、単に設計上生ずる程度の差異ではなく、使用者の利便性や安全性を考慮した創作者の着想が表れた新たな創作であるということができます。 したがって、ハンガーバーの形状や取付位置についても、「引用対応部分の.構成要素の配置を変更したものに過ぎず」ということはできないため、本件登録意匠を引用対応部分から容易に創作できたものとはいえないという点を併せて回答致します。 以上の回答及び補足意見をご考慮頂き、答弁書の趣旨の通りの審決を賜りますようお願い申し上げます。」 3「口頭審理陳述要領書」における主張 「第1 総論 令和6年12月19日付「審理事項通知書」において、被請求人に対して要求された事項に対して、被請求人は以下のとおり意見を述べます。 具体的に、被請求人は、令和6年8月9日付「審判事件弁駁書」に反論等するとともに、必要な範囲で同年3月18日付「審判請求書」に反論等し、被請求人の同年8月8日付「審尋問回答書」(当審注:「審尋回答書」の誤記と認められる。)の内容を補充し、また、新たな主張を行います。 第2 無効理由1について 1 引用対応部分の形態 請求人は、引用対応部分(審判請求書4頁「(2)ア」で定義。)の形態につき、〔ア〕(当審注:以下、丸囲い文字はシステム上非表示文字のため〔ア〕~で置きかえて示す。)右側面及び背面、〔イ〕ハンガーバーの取付位置、〔ウ〕答弁書12頁「v」で主張した具体的構成態様(e)の三点について反論していますので、以下、再反論等を行います。 (1)右側面及び背面に係る基本的構成態様 ア 右側面に係る請求人の主張(弁駁書2頁「第6(2)(2-1)」~4頁) 請求人は、「はしご7のステップ」など下記の別掲6(弁駁書より一部抜粋)の図示方法との相違から、下記の別掲5(弁駁書より一部抜粋)の右側面の中央付近の水平線は、「模様であるのか、継ぎ合わせ部分であるのか、といった違いはあるにしても、右側面の前後の支柱41の間には、板材が配置されている」と認定すべきであると主張しています(弁駁書4頁)。 [図:0001431189000035.jpg] [図:0001431189000036.jpg] しかしながら、右側面の中央付近の水平線が「模様又は継ぎ目」であることを示す直接証拠はありません。そこで、間接事実を積み上げて主張立証する必要があるところ、以下(i)~(vii)のとおり、〔ア〕請求人の主張する事実を推認させる事情は存在しない、〔イ〕右側面の中央付近の水平線の上側が開放されている事実が推認される、又は〔ウ〕真偽不明であることから、請求人の主張は認められません。 (i)請求人は、右側面の中央付近の水平線(前記別掲5)は、模様か継ぎ目部分かの二択であると勝手に都合よく限定しています。しかし、模様でも継ぎ目部分でもなく、この水平線部分は薄板の上端部分であり、この薄板の上半分が開放されています。 「模様又は継ぎ目」であると主張するのであれば、薄板でないことにつき明確な証拠を提示して主張してください。右側面の上半分が閉じており、したがって引用対応部分と同様に囲まれていることにつき立証責任を負っているのは、請求人です。 (ii)カタログ(乙4)は、甲2意匠及び乙1意匠に係る出願がされた2004年8月から約2か月後に10月号として発行されたもので、ここには、甲2意匠及び乙1意匠の同一の出願人/権利者が、2005年度「学習家具新製品」として販売されたシステムベッドが掲載されています。 同一出願人/権利者による製品であることのほか、製品の形状等、時期を考慮すれば、甲2意匠及び乙1意匠の「実施品」であることに疑いを差し込む余地はありません。 この実施品によれば、右側面の中央付近の水平線(前記別記5)は模様でも継ぎ目部分でもないことは明白です。それどころか、この実施品の存在から、甲2意匠の水平線の上側が開放されていることが強く推認されます。 なお、請求人からは、実施品と甲2意匠は別意匠ゆえ同視できないとの反論が想定されますので、後述「エ 別意匠の主張(意匠間の同視)」欄で再反論します。 (iii)知財高判平成25年4月11日(平成24年(行ケ)第10299号)は、「特許制度は、発明を公開する代償として、一定期間発明者に当該発明の実施につき独占的な権利を付与するものであるから、明細書には、当該発明の技術的内容を一般に開示する内容を記載しなければならない。」と、明細書に記載すべき内容について判示しています。 特許法施行規則24条で定める様式29「備考14ニ」には、「原則として、その発明が解決しようとする課題及びその課題を発明がどのように解決したかを記載する。」等の記載があります。 特許法施行規則25条に記載の様式30「備考12」には、以下の記載があります。 「12 図面に関する説明は、明細書の中に記載する。ただし、(中略)図の主要な部分の名称については、次の要領で図面の中に記入することができる。 イ~ロ(略) ハ 図の主張な部分の名称は、なるべく符合と共に記入する。」 上記を踏まえると、請求人が「模様又は継ぎ目」であると主張するのであれば、明細書の役割として、まずもって「模様又は継ぎ目」が甲2意匠に係る公開特許公報(以下、「甲2文献」という場合があります。)の発明との関係でいかなる技術的意義を有するのかが示されなければならない。この点につき、証拠を明示して説明してください。 そのうえで、右側面の中央付近の水平線(前記別掲5)は、「図の主要な部分」(様式30備考12ハ)にさえ該当しない部分であるにもかかわらず、なぜ「模様又は継ぎ目」として描く必要があるのか、その根拠及び合理的理由を、証拠を明示して説明してください。 (iv)「模様又は継ぎ目」ではなく、右側面の中央付近の水平線(前記別掲5)は右側面上半分が開放されていることを示すものであると捉えれば、明細書に記載がない一方で図面に記載があるとしても、水平線を描く必要性が認められ、合理的に説明ができます。このことは、右側面上半分が開放されていることを十分に推認させる事情になります。 (v)請求人は、「はしご7のステップ」等の図示方法を指摘しますが(弁駁書4頁)、下記別掲6のとおり、これらは全て手前に位置するのに対し、右側面の水平線(薄板)は奥側に位置します。また、ベッドに上がるために足を置くことができるだけの一定の幅を要する「はしごのステップ7」部分でさえ、この程度の幅しか描くことができません。 このように、位置関係、板の薄さ、及び図面全体に占める大きさ・割合等を踏まえると、奥の薄板に幅をもたせるべく板厚を図示することは不可能又は困難というほかありません。 [図:0001431189000037.jpg] 仮に板厚を図示することが可能であるとしても、後述「イ」のとおり、正確に描く必要がないだけか、右側面の水平線の太さを変更する必要性がないだけのことです。 (vi)通常、模様か継ぎ目かといった複数の解釈が生じ得るような紛らわしい描き方はしません。開放部分を示す趣旨であると解するのが自然です。 (vii)後述「(2)イ(オ)」のとおり、ハンガーバーの取付位置及び形状から、甲2意匠の右側面の上半分は開放されていることが強く推認されます。 以上のように、〔ア〕請求人の主張する事実を推認させる事情は存在しない、〔イ〕右側面の中央付近の水平線の上側が開放されている事実が推認される、又は〔ウ〕真偽不明であることから、請求人の主張は認められません。 イ 乙1意匠と対比した場合における右側面に係る主張(弁駁書4頁最終行~5頁) 請求人は、下記の別掲7(弁駁書から一部抜粋)のとおり、乙1意匠では右側面の水平線が太く描かれているとし、太さの差異を主張しますが(弁駁書4頁最終行)、失当です。 [図:0001431189000038.jpg] 第一に、権利範囲に直結する図面は正確に描かなければならないという意匠登録出願の性質上、右側面の中央付近の水平線(下記別掲7)を正確に描くことは当然のことです。 第二に、右側面の中央付近の水平線の太さと、これに対応する左側面の引き出し46の上部手前側の水平線(下記別掲7の手前の赤丸部分)は同一の太さです。 [図:0001431189000039.jpg] これは、下記の乙1意匠の断面図からも明らかです。 [図:0001431189000040.jpg] また、甲2意匠においても、下記のとおり、赤丸と青丸部分を比較すれば、水平線部分は同じ太さであることは一目瞭然です。 [図:0001431189000041.jpg] そうすると、当該水平線が太いか否かは、正確に描く必要があるか否かの違いであり、意匠登録出願か特許出願かの相違に由来するものにすぎません。 結局のところ、乙1意匠の右側面中央付近の水平線と甲2意匠のそれとの比較(水平線の太さの差異)は、特許法と意匠法の保護対象の相違から生じる差異に尽き、乙1意匠と甲2意匠の水平線の描き方を対比しても意味はないのです。 もし意味があるというのであれば、合理的理由を付して説明してください。 ウ 背面に係る請求人の主張(弁駁書6頁) 請求人は、「右側面の中央付近に描かれた水平線」と「背面の中央付近に描かれた水平線」とが同じ高さであることを根拠に、右側面と背面のデザインの統一性を図ったと考えるのが自然であるとして、背面に描かれた水平線も「模様又は継ぎ目」であると主張しています。 請求人の挙げる「根拠」は、右側面の中央付近の水平線及び背面の中央付近の水平線の上側が開放されているという被請求人の主張にも妥当します。 そして、「模様又は継ぎ目」よりも一層斬新なデザインの統一性を図るべく、同じ高さにある右側面と背面の水平線より上側が開放されているのです。 そうすると、請求人の挙げる根拠から、右側面と背面のデザインの統一性を図ったと考えるのが自然であるとしても、直ちに、背面に描かれた水平線が「模様又は継ぎ目」であると認定できるわけではないことになります。むしろ、請求人の挙げるデザインの統一性は、被請求人の主張に係る認定に適しています。 「模様又は継ぎ目」であると主張するのであれば、次の(i)~(v)について立証責任を果たしてください。 (i)請求人の主張する背面の中央付近の水平線(下記【図3】)は、下記の乙1意匠のB-B断面図を参照すると、右側面中央付近の水平線よりも一層薄い「薄板」ですから、甲2意匠も同様に、「より薄い薄板」であることが推認されます。 [図:0001431189000042.jpg] (甲2【図3】より作成) [図:0001431189000043.jpg] (乙1意匠【B-B断面図】より作成) 「模様又は継ぎ目」であると主張するのであれば、前記「ア(i)」と同様に、薄板でないことにつき明確な証拠を提示して主張してください。 (ii)背面の中央付近の水平線が「模様又は継ぎ目」であるということであれば、前記「ア(iii)」と同様に、説明をしてください。 (iii)「右側面と背面のデザインの統一性を図ったと考えるのが自然」とする点について、前記「ア(iii)」に記載の説明をしてください。 (iv)「右側面と背面のデザインの統一性を図ったと考えるのが自然」であることと、「背面に描かれた水平線も『模様又は継ぎ目』を描いたものである」こととの直接的な因果関係を、証拠を用いながら合理的に説明してください。 (v)右側面及び背面の同じ高さに位置する中央付近の水平線の上側が開放されていることはデザインの統一性の観点から自然と考えられますが、請求人が「模様又は継ぎ目」に比べて自然でないと考える合理的理由を証拠とともに述べてください。 エ 別意匠の主張(意匠間の同視)(弁駁書6頁「ところで」の段落以下) ・〔ア〕同時期に、〔イ〕同一出願人が、〔ウ〕物品を同じくする〔エ〕同一形状のシステムベッドについて特許と意匠で出願し、〔オ〕出願から2か月後に、〔カ〕同一形態の実施品がカタログに掲載されている事実(乙4)、 ・〔キ〕乙1意匠も実施品(乙4)も、右側面の上側が開放されている事実、 ・〔ク〕甲2文献の課題解決手段(【図3】、【図5】、要約書、段落【0019】~【0023】等)が乙1意匠に反映されている事実(下記参照)、 [図:0001431189000044.jpg] (甲2【図3】より作成) [図:0001431189000045.jpg] (乙1【左側面図】より作成) 等々からすれば、乙1意匠と甲2意匠と実施品は、実質的に同一対象物、すなわち実質的に同一意匠であることが強く推認されます。 このように解しても、〔ケ〕同一物品に係る複数の意匠を同視することを禁止する法令等はなく、意匠法の目的及び趣旨並びに公序良俗等の強行規定に反するような事情もないのですから、不都合はありません。請求人も不都合性を主張していません。むしろ、〔コ〕意匠の不明確な部分を明確にし、権利範囲を明らかにし、事実を明らかにして問題を解決するうえで有用な手段です。 したがって、類否判断に影響を与え得るような差異でない限り、乙1意匠を甲2意匠と同視しても支障ありません(答弁書10頁)。 なお、前記「ア(ii)」の想定される請求人の反論についても同様です。 ところが、請求人は、甲2意匠は乙1意匠と同視できないことにつき4点反論していますので、以下、それぞれに対して反論します。 (i)前提となる被請求人の理由 請求人は、甲2意匠と乙1意匠を同視し得るとする被請求人の理由として〔ア〕出願時期のみを挙げていますが(弁駁書6頁下から5行目)、上記のとおり、他にも〔イ〕~〔コ〕の一連の事実を踏まえたものであることを忘れてはいけません。 (ii)1点目の請求人の反論について 請求人は、乙1意匠と甲2意匠とが別意匠であることは明らかであると主張しています(弁駁書6頁下2行)。しかし、仮に別意匠であるとしても、全く別個の意匠と同視するものではありません。 物品は同一です。形状等についても、角柱20などわずかな差異があるにとどまり、かつ微細な部分にすぎません。つまり、主要な形状等は極めて近似しているのです。このような場合に、乙1意匠と甲2意匠とを同視しても不都合はありません。請求人も不都合性を指摘していません。 (iii)2点目の請求人の反論について 請求人は、「クローゼット部分下の方の棚」の有無が異なっていると主張しています(弁駁書7頁2行目)。一方で、「請求項記載の範囲内において種々の変更を行ってよいことは、甲2号証に明記されて」いるとも主張しているところ(弁駁書17頁【0024】枠組みの直後の行)、この主張に従えば、衣類棚ユニット4の構成は一例にすぎないから、「クローゼット部分下の方の棚」があろうとなかろうと特段の支障はないことになります。 それゆえ、請求人の主張に理由はありません。 (iv)3点目の請求人の反論について 請求人は、乙1意匠の右側面には板厚が目視できるとして別意匠であると主張しているようですが(弁駁書7頁6行目)、前述「イ」のとおり、保護対象の相違に起因する差異でしかなく、本質的なものではありません。 (v)4点目の請求人の反論について 請求人は、同一対象物であれば、特許図面には意匠登録出願の図面を用いれば良いと主張していますが(弁駁書7頁6行目)、どの図面を採用するのかは専ら出願人が選択すべき事項で、出願人の裁量に委ねられるものである以上、証拠も出さずに請求人が口を出すことではありません。 以上のように、請求人の反論は形式的なもので、乙1意匠と甲2意匠と実施品は、実質的に同一対象物であることが強く推認されることに変わりありません。 オ 乙1意匠及び甲2文献の明細書の参酌 上記のように、乙1意匠と甲2意匠とを同視して良いのですが、仮に甲2意匠の右側面の中央付近の水平線部分(前記別掲5)が不明確である又は乙1意匠と同視することができないのであれば、乙1意匠及び甲2文献の明細書を参酌して判断すべきです。 第一の理由として、意匠実務では要部認定のために公知意匠が参酌されていますし、実質的同一意匠を参酌してはならない旨の法令等もないからです。実際、本件事案における審尋において、甲2文献の明細書は参酌されています。 第二の理由として、被請求人は「乙1意匠は甲2意匠と同視しても支障はなく、また、甲2意匠の不明瞭な点は、乙1意匠を参酌して判断しても支障はない」(答弁書10頁)として「同視」と「参酌」の二つを挙げたところ、請求人は「参酌」については黙認しているからです(弁駁書6頁下から5行目では、同視する点のみ批判している。)。 第三の理由として、請求人は、一方で乙1意匠と甲2意匠の右側面中央付近の水平線の描き方を対比までしておきながら(前記別掲5と別掲7を対比)、他方で対比よりも軽い手法である参酌について、これを否定する立場にはないからです。 そこで検討すると、乙1意匠の右側面の上半分が開放されていることは、請求人も認めており(弁駁書4頁最終行)、乙1意匠を参酌すれば、甲2意匠の右側面も同様に上半分が開放されています。また、後述「(2)イ(ア)」及び「(オ)」のとおり、甲2文献の段落【0017】を参酌しても、同様のことがいえます。 したがって、乙1意匠及び甲2文献の明細書を参酌すれば、甲2意匠の右側面上半分が開放されていることは明らかです。 カ 甲2文献の段落【0019】の構造について(弁駁書7頁「甲2号証の請求項1・・」から始まる段落~9頁) 請求人の主張に異論ありません。 ただし、甲2文献の段落【0019】に基づく理由は、甲2意匠が乙1意匠と同視できること、乙1意匠のB-B断面図に衣類棚の背面上半分の板に該当する板が描かれていないことに次ぐ、第3の補助的な理由にすぎません(答弁書11頁)。 同視又は参酌できることについては、前記「エ」「オ」のとおりであり、依然として、右側面及び背面の上半分が開放されていることに変わりありません。 (2)ハンガーバー ア 請求人の主張 請求人は、「…収納空間の上方には、箱状体の左右側面に達するハンガーバーが取り付けられたものである」と修正しましたが(弁駁書9頁「(2-2)」)、不明確です。 この点は本件事案における『最重要事項』ですので、ハンガーバーが、「箱状体の左右側面に達する」状態とはいかなる状態か、修正前の「左右両側面に両端が支持されたハンガーバー」とどのような点で異なるのかを明確にしてください。 また、修正後のハンガーバーはどこにどのように取り付けられているのか、明確にしてください。 曖昧な表現は、審理を妨げ又は誤判を誘発しかねませんので、控えるべきと考えます。 イ 被請求人の主張 被請求人は、審尋に回答した事項につき、以下(ア)~(オ)について補充します。 (ア)基本的構成態様の修正 被請求人は、引用対応部分の基本的構成態様について、ハンガーバー48が上棚44の下面に備えられていること(甲2文献の段落【0017】)及び「下面」の意味(乙5)を根拠に、次のとおり修正します(下線部が修正部分)。 「「左側面、右側面下半分、天井面、背面下半分、及び底面は開放されていないが、右側面上半分及び背面上半分は開放され、正面側に向けて開放面を有し、内部に衣類等を収納するための収納空間が形成された略縦長直方体の箱状体であり、収納空間の上方には、左右側面ではなく、上棚44を構成する板状部材の下を向いている平面に設置されたハンガーバーが存在する。」」 本修正に伴い、答弁書の要約欄の表、9頁「エ(ア)i」、15頁6行目「一方」から始まる段落、17頁「ウ(ア)i」は、必要な限度において読み替えます。 (イ)甲2意匠の具体的構成態様bの修正 甲2意匠の具体的構成態様b(答弁書の要約欄の表内、12頁「ii」)は、以下のとおりに修正します(下線部が修正部分)。 「「ハンガーバーは、箱状体の縦幅の約15分の14程度の高さに設けられており、天井板に殆ど接するような状態で、正面視において天面との隙間なく設けられており、上棚44を構成する板状部材の下を向いている平面に設置されている。」」 (ウ)具体的構成態様における差異点(c)の修正 答弁書15頁「(イ)ii(c)」について、次の二点を総称して、「具体的構成態様における差異点(c)」と言います(下線部が修正部分)。 (i)本件登録意匠部分のハンガーバーは、箱状体の縦幅の約10分の9の高さであるのに対し、引用対応部分のハンガーバーは、前記具体的構成態様bの修正内容である点で、本件登録意匠部分と引用対応部分が相違すること。 (ii)ハンガーバーの取付位置について(答弁書15頁最終行)、「本件登録意匠部分が箱状体の奥行き幅の略中央部分で、左右両側面にハンガーバーの両端部が支持されているのに対して、引用対応部分のハンガーバーは、上棚44の下面に設置されている。」点で、本件登録意匠部分と引用対応部分が相違すること。 (エ)具体的構成態様における差異点(g)の追加 ハンガーバーの形状について、本件登録意匠部分のハンガーバーは水平方向の形状であるのに対し、引用対応部分のハンガーバーは「倒コの字形状」等である点で、本件登録意匠部分と引用対応部分が相違します(以下、「具体的構成態様(g)」といいます)。 <「倒コの字形状」等である理由> ハンガーバーの両端部が左右両側面で支持されているのであれば、ハンガーバーは水平方向に伸びているはずですが、カタログの実施品(乙4)を見る限り、右側面にハンガーバーが接着しているようには見受けられません。これに対し、ハンガーバーが上棚44を構成する板状部材の下を向いている平面に設置され、「倒コの字形状」等であれば、右側面の上半分が開放されていることと整合します。 (オ)甲2意匠の右側面の上半分が開放されていること 甲2意匠のハンガーバーは、上棚44の下面に備えられた「倒コの字形状」等です。甲2意匠、乙1意匠及び実施品(乙4)の右側面の上半分が開放されている場合、ハンガーバーの両端部を左右両側面で支持することは物理的に不可能だからです。 したがって、ハンガーバーの取付位置及び形状から、甲2意匠の右側面の上半分は開放されていることが強く推認されます。 (3)具体的構成態様(e)(弁駁書9頁「(2-3)」) 明確になるよう、次のように修正します(下線部が修正部分)。 「「箱状体の開口部を正面とした場合において、衣類棚(箱状体)天面の位置より上方に延伸する支柱41と、これと左側面の支柱41との間にはめ込まれた板部材たる上棚44とからなる。」」 上記は、下記の赤色部分を示しています。ただし、答弁書14頁に示したように、対応引用部分は衣類棚部分であるから、引き出し46側の支柱41を対象とするものではありません。 [図:0001431189000046.jpg] (甲2【図3】より作成) 最後に、請求人は、引用対応部分の右側面につき、支柱41に一枚板がはめ込まれ、右側面の上半分が開放されていないと主張しますが、上半分が開放していることは前述「(1)」のとおりです。 2 類否 請求人は、類否について種々の反論をしていますので、以下、再反論等を行います。 (1)使用者・需要者(弁駁書10頁「(3-1)」) 子供向け製品であることについて本件登録意匠(甲1)及び甲2文献に記載がない理由は、包袋禁反言の見地から、権利範囲を不当に限定しないためです。それゆえ、記載がないことをもって、直ちに、子供向け製品であることを否定する理由にはなりません。 本件登録意匠の実施品(乙2及び乙3)並びに甲2文献の【図1】の各椅子は背もたれ部分が子供向けの形状で、カタログ(乙4)には「学習家具」など子供向けの製品であることが示されています。 したがって、主たる使用者は子供であり、需要者は子供及びその保護者等です。なお、取引者は、製造業者のほか、小売り業者等の流通業者です。 (2)需要者が着目する部分(弁駁書10頁「(3-2)」) 「クローゼット部分の正面に立った状態で見える部分を主として注目する」という請求人の主張について、確かに、通常のクローゼット(衣類棚)の場合であればそのとおりです。 しかし、本件登録意匠及び甲2意匠のようなシステムベッドの場合は異なります。該システムベッドでは、正面側にデスクが配されているため、デスクから衣類棚に向かうためには、下図(便宜上、甲1【平面図】と乙1【斜視図】を使用しますが、デスクと衣類棚の位置関係は略同様)の赤矢印のような動線をとることになります。 [図:0001431189000047.jpg] (甲1【平面図】から作成) [図:0001431189000048.jpg] (甲2【図1】から作成) 衣類棚が視界に入るのは、ベッドの長手方向に位置する引き出し(手前側)を越えて衣類棚方向に曲がり、はしごを越えた時点であるため、概ね上記図の角度から衣類棚を見ることになります。それゆえ、該システムベッドの場合に主として注目する所は、斜めから見た衣類棚であり、衣類棚の右側面が最も目に付きやすくなります。 なお、この動線はデスクと衣類棚との位置関係から頻度が高いと思われる動線であって、他の動線を否定するものではありません。 次に、請求人は、クローゼット(衣類棚)部分の右側面が壁に面して配置されることが多いから、当該右側面は需要者が注目する部分ではないと主張します。 しかし、カタログ(乙4)を見ると、衣類棚の右側面上半分の開放部分が目立つように配置されており、「多い」という請求人の主張には疑義が生じます。 また、対応引用部分は右側面及び背面の上半分が開放していますので、例えば、壁際にコンセントがある場合でもコンセントケーブルをつなぐことができ、コンセントの使用の観点から需要者等は着目する部分といえます。さらに、当該開放部分を通じてより通気性が良くなるように窓際に配置することも想定されます。 取引者の場合、販売目的でベッドを配置・保管等しますので、カタログ(乙4)のように必ずしも壁に接する状態に配置するとは限りません。 このように、衣類棚部分の右側面が壁に面して配置されることが必ずしも多いとはいえません。 (3)両部分の位置、大きさ、範囲(弁駁書11頁「(3-3)」) 請求人は、「上方に位置するベッドの全幅、全長から支柱がはみ出す程度の大きさ、及び範囲とするものである。」という被請求人の認定を認めました(弁駁書2頁「1(1)」)。 請求人は、「本件登録意匠部分と引用対応部分の位置、大きさ、及び範囲はほぼ同一である。」と主張していますので(弁駁書11頁「(3-3)」、同一ではないことを認めています。 (4)基本的構成態様(弁駁書11頁「(3-4)」) ・「本件登録意匠部分と引用対応部分の基本的構成態様は全てにおいて共通する」という請求人の主張は否認ないし争います。前述のとおり、本件登録意匠部分と引用対応部分とでは、右側面及び背面の上半分の形状、ハンガーバーの設置面が異なります。 ・右側面及び背面の形状及びハンガーバーの設置面から、需要者が最も注意を惹く部分の一つとなります。ただし、共通点ではなく、差異点です。 (5)具体的構成態様における差異点(a)(b)(弁駁書11頁「(3-5)」) ア 請求人は、システムベッドの高さにより、衣類棚部分の「縦幅」が決まると主張しています。使用者は子供のため、大人の使用状況を考慮する余地はありませんから、請求人の主張は、子供の体格に合わせたベッドがあり、ベッドの高さに応じて衣類棚部分の高さも設定されるという趣旨と解されます。 しかし、システムベッドの高さが異なることをもって、直ちに衣類棚の高さが決される関係にはありません。例えば、ベッドと衣類棚の間に別の棚を設けた場合、ベッドを高くしても、本件登録意匠部分における衣類棚の比率を維持することは可能だからです。つまり、ベッドと衣類棚とを連結させるかどうか、連結させないとすると、別の棚の位置や大きさをどうのようにするか、また、連結させるとすると、衣類棚とその左にある引き出しの横幅の割合をどのように設定するかによって衣類棚の形状に対する印象が変化することから、意匠を選択する余地があります。 次に、使用時の実情を踏まえることは妥当ではありません。 意匠の保護対象は物品の形状等(意匠法2条1項)であることから、登録意匠の範囲も願書の記載及び図面の記載に基づいて定められる旨が規定されていることを踏まえると(意匠法24条1項)、願書の記載及び図面の記載から客観的に判断することが求められます。 請求人の主張は、子供の体格に合わせたベッドなど使用時の実情を用いるもので、願書の記載及び図面の記載から判断するものではないから、排斥されるべきです。ベッドの高さに応じて縦幅が異なることと本件登録意匠部分の縦幅とは、別論で、次元の異なる内容だからです。 ところで、請求人は、〔ア〕審判請求時には、本件登録意匠部分の縦幅、横幅、奥行き幅の比率が「19:12:9」であると主張していましたが(審判請求書8頁(イ)Ba)、〔イ〕弁駁書では、この比率を変更できるかのような主張に、また、収納物の量(審判請求書10頁「4イ」)からベッドの高さに主張を擦りかえており、一貫性がありません。 イ 次に、請求人は、セミシングル等のベッドの種類を持ち出し、ベッド幅に応じて箱状体の「横幅」が決まると主張します。 しかし、ベッド幅に合わせて衣類棚ユニットの長手方向の長さが決まり、結果、ベッド幅に応じて箱状体の横幅が決まるという論法は、ベッド幅の異なるベッド一般を想起し、そこから多段階の過程を経て、間接的に箱状体の横幅が決定されるという迂遠で説得力を欠く主張です。 また、ベッド幅に合わせて衣類棚ユニットの長手方向の長さが決まり、結果、ベッド幅に応じて箱状体の横幅が決まるという主張に根拠はなく、前記アで例示したのと同様、ベッド幅から衣類棚の横幅が当然に決まるわけではないため、設計事項とはいえません。 甲2意匠においては、ベッド幅の比率は一定である以上、衣類棚ユニットの長手方向の長さが決まる/変化するという関係にはありません。 ウ 以上のとおり、単なる設計上の差異ということはできませんから、類否判断に与える影響は軽微であるという請求人の主張は認められません。 また、衣類をどの程度収納できるか、ハンガーに掛けた衣類が底面に触れないか、通気性は良いかなど、需要者は購入時においても使用時においても着目し、需要者より高い注意力を有する取引者であればより注目しますので、類否判断に与える影響が大きいと評価すべきです。 (6)具体的構成態様における差異点(c)(弁駁書12頁「(3-6)」) 衣類棚部分は、「左右側面、天井面、背面、及び底面に囲まれている」とはいえませんので、被請求人の主張を批判する請求人の主張は前提を欠きます。 したがって、答弁書19頁以下(第二に」から始める段落以下)の内容が妥当します。 付言すれば、引用対応部分の右側面の上半分が開放されているため、引用対応部分のハンガーバーの形状が「倒コの字形状」等であることや、ハンガーバーが上棚44を構成する板状部材の下を向いている平面に設置されているということは特に注意を惹く部分ですから、請求人が一般的であると主張する本件登録意匠部分のハンガーバーとは美感の程度が著しく異なります。 このように、開放部分と相まって、引用対応部分のハンガーバーが独創性の高い強烈な印象を与えるため、対比の対象となる本件登録意匠部分のハンガーバーがたとえ一般的なものであったとしても、極めて強く注意を惹く部分になるのです。 (7)具体的構成態様における差異点(f)(弁駁書12頁「(3-7)」) 請求人は、板厚1枚分の厚さであることと配置関係に照らして類否判断に与える影響は小さいと主張しています。 しかし、請求人が指摘するように従来技術にはなかったのですから(弁駁書13頁~15頁)、板厚1枚分の厚さでも、支柱41がベッドの全幅からはみ出す点は、需要者も取引者も着目しやすい部分です。 また、横揺れ等に対する安全面の観点から支柱41が両側面に存在する以上(甲2文献の段落【0003】、【0020】~【0023】)、保護者等は両側面の支柱の対応関係も含めて着目するといえ、また、取引者の場合は、需要者に比べより一層、壁に面する状態で配置されたベッドに接するわけでもないのですから、壁に面することが多い箇所であることを考慮したとしても、なお注意を惹き付ける部分であることに変わりありません。 したがって、類否判断に与える影響は大きいと評価できます。 (8)具体的構成態様における差異点(g) ハンガーバーが類否判断に大きな影響を与えることは請求人も認めているところ(審判請求書9頁「オ(イ)B」)、ここにはハンガーバーの形状も含まれます。そうすると、ハンガーバーが「水平方向の形状」であるのか、「倒コの字形状」等であるのかについても、類否判断に与える影響は大きいと評価できます。 (9)類否判断 以上より、 ・基本的構成態様における差異点(右側面及び背面の形状、ハンガーバーの設置面)は類否の影響が極めて大きく、 ・具体的構成態様における差異点(a)(b)(箱状体の縦、横、奥行きの比率等)は類否の影響に与える影響が大きく、 ・具体的構成態様における差異点(c)(ハンガーバーの位置、取付態様等)は類否の影響に与える影響が大きく、 ・具体的構成態様における差異点(f)(安全面を踏まえた支柱の構造等)は類否の影響に与える影響が大きく、 ・具体的構成態様における差異点(g)(ハンガーバーの形状)は類否の影響に与える影響が大きい、 と評価することができます。 一方、基本的構成態様における共通点、具体的構成態様における差異点(d)(e)が類否判断に与える影響は小さい又は一定程度にとどまる点に変更はありません。したがって、本件登録意匠部分と引用対応部分とは非類似です。 3 小括 本件登録意匠部分と引用対応部分とが類似するという請求人の主張は認められません。 第3 無効理由2について 1 引用対応部分が現実に知られていたことの証明 令和元年改正により、意匠法3条2項に、「頒布された刊行物に記載され(た形状等又は画像)」、「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像」が創作非容易性の判断の公知意匠に追加され、令和2年(2020年)4月1日より施行されているところ、かかる改正内容は、附則2条1項により、施行日前の意匠登録出願には適用されません(特許庁ウェブサイト 令和元年法律改正(令和元年法律第3号)解説書の第2部第2章及び第10章)。 附則2条1項 (意匠法の一部改正に伴う経過措置) 第二条 第三条の規定(前条第三号及び第四号に掲げる改正規定を除く。)による改正後の意匠法第二条第一項、第三条第二項、(中略)の規定は、この法律の施行の日(以下この項及び次条において「施行日」という。)以後にする意匠登録出願について適用し、施行日前にした意匠登録出願については、なお従前の例による。 本件登録意匠は施行日前の出願であることから、改正前意匠法3条2項が適用されます。 そこで、まずは、本件登録意匠部分が引用対応部分に基づいて容易に創作できたことを主張する請求人において(審判請求書10頁「4」、弁駁書19頁「(8)」、「3」)、引用対応部分が「日本国内又は外国において公然知られた形状」等であることを証拠に基づいて主張しなければなりません。すなわち、日本国内又は外国において、現実に不特定又は多数の者に知られたという事実」の証明が必要です(知財高判平成30年5月30日)。 なお、甲2文献が刊行物であるとしても、「単に刊行物やインターネット上で公開された意匠については、一部の出願人からは必ずしも「現実に知られている」、「現実に不特定又は多数の者に知られた」ということはできないと主張されて」いるとの指摘があり(令和元年法律改正(令和元年法律第3号)解説書の第2部第2章)、改正に至った経緯があります。 請求人は、この点を踏まえて、主張立証してください。 2 具体的構成態様における差異点(f)について(弁駁書13頁「2(1)」~15頁) 請求人は、甲2文献に挙げられた従来技術(特開2004-8759及び2004-24425)の形状等に基づいて、具体的構成態様における差異点(f)(ここでは本件登録意匠部分を指していると考えます)を容易に創作できる範疇であるとの主張をしていますが、失当です。 失当の理由は、第一に、対象が異なり、反論の前提を欠くからです。そもそも被請求人は、具体的構成態様における差異点(f)、すなわち甲2意匠の支柱41は本件登録意匠に見られないこと等を理由に、甲2意匠そのものに基づいて本件登録意匠部分を容易に創作できたとはいえないと主張したにすぎず(答弁書23頁(オ))、前記従来技術に基づいて容易に創作できたとはいえないなどと主張していません。 第二に、前記従来技術は引用対応部分を含むものではなく、従来技術に基づいて創作容易性が認められるような余地はないからです。 従来技術の課題を解決するために支柱41とベッドユニットの脚22を設けた甲2文献に係る発明が行われたにもかかわらず、請求人はこれを度外視して、従来の形態に戻すなどと、都合よく恣意的に従来技術を利用しています。 請求人が挙げる裁判例(平成17年(行ケ)第100026号)は、従前の技術に戻すことに格別の動機づけは必要ではない旨判示していますが、この裁判例は、都合よく従来技術を持ち出して恣意的に意匠を変動させ、変動させた状態の意匠に基づくことまで許容する趣旨ではありません。 下記【図3】は、甲2意匠を基に、右側に従来技術である特開2004-8759(弁駁書15頁の別掲9)の一直線上の柱を付したものです。このように、甲2意匠の一部分のみ従来技術に戻すという恣意的操作により、実質的に甲2意匠を別意匠に塗り替える手法はありふれたものとはいえません。また、このような手法は、甲2意匠そのものに基づく主張とはいえません。 [図:0001431189000049.jpg] (甲2【図3】から作成) 3 甲2文献の机ユニット(弁駁書16~17頁) 請求人は、請求項記載の範囲内であることを理由に創作容易性を肯定していますが、これは請求項及び明細書から出発し、技術的範囲の解釈手法を意匠に応用するもので、意匠実務に反する思考方法です(以下、「特許的発想」といいます。)。仮にこのような主張や思考方法が許されるのであれば、引例が特許図面の場合は、常に請求の範囲や明細書を参酌することができることになり、結果、意匠の権利範囲が技術的範囲により画されるに等しくなること、また、引例によって意匠の範囲が変わり得ることから、特許法と別に意匠法を設けた意義を没却しかねず、不都合極まりありません。 ご承知のように、意匠では、願書及び図面に記載された意匠を基準とすることが大原則です(意匠法24条 1項)。そして、創作非容易性については、社会的に知られた形状等(モチーフ)を基準として、当業者の立場からみた意匠の着想の新しさや独創性を問題とします。 以上を踏まえた請求人の問題点は以下のとおりです。 (i)請求人が審判請求書で定義した「対応引用部分」には机ユニット5が描かれているのにもかかわらず(甲2文献の【図1】)、机ユニット5を含めない構成ができるとして、技術的範囲内で構成の変動を許容している点。 (ii)机ユニット5を含まない構成に変更して、その結果、箱状体の縦幅を小さくするというモチーフ以外の事情に基づいている点。 (iii)設計事項の差異などに終始し、意匠の着想の新しさや独創性を否定する観点からは曖昧不明確である点。 (iv)審判請求書では甲2意匠に基づいておきながら、弁駁書では甲2文献の請求の範囲や明細書に基づいた主張へと、対象を擦りかえている点。 (v)特許的発想が意匠実務で通用することを主張立証していない点。 (vi)机ユニット5は、甲2意匠から明確であるにもかかわらず、明細書を参酌している点。 以上より、創作容易であるとする請求人の主張は認められません。 これに対し、被請求人は、甲2意匠そのものから視認される客観的構成に基づいて意匠の着想の新しさや独創性を主張しています(答弁書22頁(イ))。 4 クローゼット(衣類棚)空間の構成(弁駁書17頁「(3)」) ・前記「3」と同様に、特許的発想のため、請求人の主張は認められません。 ・設計上の差異でないことは、前述「第2」「2(5)具体的構成態様における差異点(a)(b)」のとおりです。 5 右側面及び背面の構成(弁駁書18頁「(4)」) 請求人は甲2意匠に基づくのではなく、甲2文献の請求の範囲及び明細書に基づいてありふれた構成であると主張していますが、前記「3」と同様、特許的発想ですので認められません。 請求人は、右側面及び背面上半分が開放されていない構成の方が強度は強いと主張しています。確かにそのとおりですが、甲2意匠は、右側面及び背面上半分が開放されている状態で安全面に配慮したものであり、甲2意匠を度外視した主張になっています。 以上より、請求人の主張は認められません。 6 ハンガーバーの構成(弁駁書18頁「(5)」) ・前記「3」と同様に、特許的発想のため、請求人の主張は認められません。 ・そもそもハンガーバーの形状が「直線状」であるか「倒コの字形状」等であるかが異なっており、右側面の上半分が開放されている対応引用部分では「倒コの字形状」等のハンガーバーを本件登録意匠部分の形状のハンガーバーに置き換えることはできず、技術的にも置き換えができず、創作容易ということはできません。 ・ハンガーバーの形状はハンガーの掛ける量や衣類量に影響し、またハンガーバーをどこで支持するかは衣類棚を構成する板の強度を考慮する必要があるから、使用者の利便性や安全性を考慮した創作者の着想が表れた部分です。 7 具体的構成態様における差異点(a)(b)(弁駁書18頁「(6)」) 設計上の差異でないことは、前述「第2」「2(5)具体的構成態様における差異点(a)(b)」のとおりです。 8 対称について(弁駁書19頁「(7)」) 被請求人は、下記の甲1の右側面図を客観視した場合に、ハンガーバーと底板が上下対称となるように配置されている点に新たな着想ないし独創性があると主張しました(答弁書23頁)。 [図:0001431189000050.jpg] (甲1【右側面図】から作成) これに対し、請求人は「ハンガーバーは、クローゼット部分の概ね上方に位置していれば充分」と主張しますが、これは請求人の意見、見解、評価ないし主観的判断にすぎず、図面に基づく客観的な判断ではありません。また、「それぞれを独立して高さを変更することが可能」などと主張していますが、「第2」「2(5)具体的構成態様における差異点(a)(b)」のとおりです。 いずれの主張も、静的意匠に基づく視認状況が欠如しており、妥当ではありません。 9 本件登録意匠部分と対応引用部分の構造の相違 ここでは、本件登録意匠部分と対応引用部分の構造の相違を挙げます。 本件登録意匠部分は、天井面、底面、両側面、背面の5面の板で囲まれた構造です。これに対し、対応引用部分は、支柱41である柱、上棚44と、左側面、底面、右側面と背面は下半分の板からなり、端的に言えば、支柱と板から成る構造です。この構造は本件登録意匠部分とは全く異なりますので、着想も全く異なります。 よって、対応引用部分から単に設計を変更したなどということはできず、仮に対応引用部分の縦幅・横幅を本件登録意匠部分に合わせたとしても、そもそもの構成が異なるため、本件登録意匠部分に想到することはできません。 10 全体構成による創作非容易性 知財高判平成25年11月14日(平成25年(行ケ)第10160号)は、「意匠法3条2項の創作非容易性の判断においては、出願意匠の全体構成によって生じる美感について、公知意匠との内容、出願意匠と公知意匠の属する分野の関連性等を総合考慮して判断すべきである。」と判示しています。 他の裁判例でも、意匠全体を考慮したものとして、例えば、知財高判平成27年 7月9日(平成27年(行ケ)第10004号)、知財高判平成20年8月28日(平成20年(行ケ)第10069号)、知財高判平成19年6月13日(平成19年(行ケ)第10078号)などがあります。 本件登録意匠部分は、衣類棚の収納や保管を用途とする衣類棚であることから、個々の差異点に基づくよりも、衣類棚全体に基づいて創作非容易性を判断する方が合理的です。 本件登録意匠部分は、縦長比が「19:12」(約3:2)と近似したバランスの良い正方形寄りの略長方形の大きさから成り、正面を除く5面で囲まれた形状で、正面には水平方向に延伸し左右両側面で固定されたハンガーバーが配置された形状から構成され、重厚感のあるすっきりまとまったシンプルな構成です。ハンガーバーと底面が上下対称となる位置に設定されたことにより、より一層まとまった印象を与えます。なお、「シンプルであるからといって、直ちに、創作が容易であるとか、美感への影響が微弱であるとはいえない。」ことは、前記知財高判平成27年7月9日18頁で示されています。 一方、対応引用部分は、縦長比が「6:3」(2:1)の大きさで、ベッド幅から外側に少しずれた位置に支柱41が設けられた形状から成り、背面と右側面の上半分が開放された形状で、正面には「倒コの字形状」等のハンガーバーが、上面にほとんど接する状態で上棚44の下面に固定されたもので、本件登録意匠部分よりも斬新ですが、その分まとまり感に欠ける構成です。 このような構成の大きな相違は着想の差異に由来することから、対応引用部分に基づいて本件登録意匠部分の特徴を選択することは、当業者が容易に創作したとはいえません。 11 小括 以上のとおり、請求人の主張は結論ありきの主張のため、特許的発想に基づくもの、静的意匠を前提としないものなど合理的理由を欠いた主張で構成されています。 したがって、創作容易性の主張は認められません。 第4 結語 請求人の指摘する無効理由1及び2は理由がなく、請求人の主張は棄却され、本件登録意匠は維持されるべきです。」 4「上申書」における主張 「6.上申の内容 被請求人は、請求人提出の令和7年2月12日付け口頭審理陳述要領書について、次のとおり意見を申し上げます。 なお、甲4は訂正後の「甲5」とし、甲5は訂正後の「甲4」としています。 (1)令和7年2月26日期日の口頭審理にて被請求人が述べた意見 ア ハンガーバーについて、請求人は、「また、ハンガーバーは需要者の見えやすい位置になく、大きな範囲を占めるものでもないことから、類否判断に及ぼす影響は小さなものです。」と述べる一方(口頭審理陳述要領書18頁、2段落目の下2行)、「そして、ハンガーバーは、ハンガーに吊るした衣類を掛けて収納する際に需要者が一定程度着目する部分でもあり、両部分の形態の類否判断に与える影響は大きいものといえる。」とも述べています(審判請求書9頁(イ)B、2段落目の下3行)。 このように、請求人は、ハンガーバーについて、一方では類否判断に及ぼす影響は小さいと述べておきながら、他方では類否判断に及ぼす影響は大きいと述べており、主張内容が矛盾しています。 被請求人の主張に反論する過程で無理矢理作出された内容に比べ、最初に述べた内容の方が信用性が高いことは明らかですから、審判請求時の主張が請求人の本来の主観に合致した真意であると考えられます。 イ 水平線について、請求人は、「特許出願時には、審査でどの様な先行文献(引例)が挙げられるかが分かりません。…引例次第では、甲2号証の図1や図3を根拠として、『右側面の前後の支柱41の間の板材の略中央に水平線が引かれていること』や『右側面の前後の支柱41の間の板材が上下に分割されていること』、また、『背面の板材の略中央に水平線が引かれていること』や『背面の板材が上下に分割されていること』を請求項に追記し、発明特定事項とすることで特許性が肯定される可能性も充分にあり得たと言えます…」と述べています(口頭審理陳述要領書3頁[1-2])。 請求人は、仮定を述べ、さらにその仮定の中において請求人の述べる内容が請求項に追記される可能性を挙げていますが、現実は、請求人が述べる内容が請求項に追記される余地は皆無でした。現実にはあり得ないことを主張するだけで、証拠も当然存在しない以上、事実として認められるものではありません。 ウ 請求人は、「…強度を向上させることが重要となり、そのためには、右側面の前後の支柱41の間に板材を配置した方が好ましいと言えます(右側面の上側を開放している場合と比べて、…右側面の強度が向上します)。」、「同様に、…背面にも板材を配置した方が好ましいと言えます(背面の上側を開放している場合と比べて、…背面の強度が向上します)。」と述べています(口頭審理陳述要領書3頁、「甲2号証の技術は」から始まる段落及び「同様に」から始まる段落)。 しかし、実施品(乙4)は2004年8月24日の展示会で発表されていたという請求人の主張内容からすれば、甲2意匠及び乙1意匠の出願日前後において既に実施品は完成していたのですから、右側面及び背面が開放されている状態で強度が考慮されていたことは当然です。それゆえ、特許出願(甲2)の際、右側面と背面に板材を配置して強度を向上させるような技術的意義を見出すことはできませんし、そもそも「好ましい」というのは請求人の主観的感情にすぎません。 エ 請求人は、実施品と乙1意匠との差異としてABCを挙げ(口頭審理陳述要領書7頁)、実施品と甲2意匠との差異としてDEFを挙げ(口頭審理陳述要領書11頁)、乙1意匠と甲2意匠との差異としてGを挙げ(口頭審理陳述要領書14頁)、それぞれ別意匠、別製品であると述べています。 しかし、この主張を突き詰めると、意匠と実施品との間にわずかでも相違があれば実施品ではない、換言すれば、完全一致でなければ実施品として認められないことを意味しますが、これはおよそ非現実的な主張です。 オ 請求人は、口頭審理陳述要領書3頁において、甲2意匠のクロゼット(衣類棚)部分の右側面が開放されていないと考えるべきである旨、主張しています。 しかし、右側面上側が開放されていることはこれまでに述べたとおりですが、仮に開放されていないと考えた場合でも、甲2意匠のクロゼット部分の右側面は、下図のように、二本の太い支柱41からなる枠とその支柱間に配された右側面の薄い板47によって構成されており、凹凸を有する側面となっています。 [図:0001431189000051.jpg] (甲2【図1】より作成) これに対し、本件登録意匠部分は、均一の厚さの板を左右上下及び背面にボックス状に組み合わせてなり、凹凸のない側面となっています。 さらに、甲2意匠は支柱41を主とした構成ですから、上記図1の「41」が支柱であることが明確に認識でき、また、薄い板47を表す水平線も明確に認識することができます。 これに対し、本件登録意匠部分は、下図のとおり、右側面に配された板は1枚のシンプルな板であるため、支柱や薄い板を示す水平線は存在せず、これら支柱や水平線を認識することはできません。 [図:0001431189000052.jpg] (甲1【背面図】) すなわち、甲2意匠と本件登録意匠のクロゼット部分はそもそもの構成が異なっており、甲2意匠のクロゼット部分は凸凹で、支柱41や薄い板47が存在することにより複雑な印象を与えるのに対し、本件登録意匠のクロゼット部分は凹凸や支柱、薄い板がなくシンプルな印象を与えるのであって、全くその美感や印象が異なり、需要者等も甲2意匠と本件登録意匠とでは異なる印象を受けます。よって、仮に甲2意匠のクロゼット部分の右側面が開放されていないとしても、本件登録意匠部分と引用対応部分は非類似です。 カ 請求人は口頭審理陳述要領書19頁の「[2]創作容易について」において、「本件登録意匠部分の右側面および背面は、引用対応部分の右側面及び背面の形態として、本件登録意匠の出願前ありふれた形態(ありふれた形態の一例として甲4号証)を採用したにすぎません」と主張しています。 しかしながら、甲2意匠は支柱41でベッドユニットを挟む構成としており、その支柱がクロゼット部分の枠を形成しています。一方、甲4は板をボックス状に組み合わせて形成しています。すなわち、甲2意匠のクロゼット部分と甲4とでは着想がそもそも異なっています。 このように、甲2意匠は支柱41でベッドユニットを横から挟むという着想ですから、ベッドユニットの下にボックス状のクロゼットを配置するという発想にはならず、甲4を甲2意匠のクロゼット部分にそのまま置き換えて採用することはできず、これらから本件登録意匠部分が容易に創作できるものではありません。 (2)その他の意見 ア 請求人は、甲3の15頁を挙げて、大人による使用も考慮する必要があると述べています(口頭審理陳述要領書17頁[5-1])。 しかし、請求人が甲3を引用している箇所は、「…インテリア性を意識した面はあるだろう。」とあるように、当該記事を作成した著者の感想や推測にとどまっており、大人が実際に使用している事実は何ら記載されていません。 また、請求人が引用する甲3の15頁を見ても、大人が使用すること想定して記載されている箇所はありません。むしろ、次のように、子供が使用することが想定されています(下線は被請求人代理人が付した)。 「・「(株)くろがね工作所の市場予測でも『素材にとらわれることなく、子供部屋のインテリアを重視し…」 ・「実際に使用する子供の意見がどこまで反映されるかは定かではないが、いずれにしても子供たちが生き生きと学べる環境づくりが大なり小なりで要求される…」 ・「顧客の製品に対する知識が一段と高まっているが、逆に言えばそれだけ学習用家具製品(あるいは子供部屋の空間づくり)に熱心であることは間違いないだけに、『生き生きと学べる学習環境づくり』のあるべき姿を…」」 このように、請求人の提出した証拠からも使用者は子供であることが明らかになりました。したがって、使用者は子供であるとする被請求人の主張が妥当というべきです。 イ 請求人は、衣類棚の右側面及び背面が開放されている事実を排斥できるだけの主張立証をしていませんし、被請求人の主張に対する反論もしていませんので、水平線が「模様又は継ぎ目」(板材)であるという事実は存在しません。 ウ 請求人は、乙1を参酌できる点については一切反論していませんので、本審判の全趣旨から認めたものと認められます。 エ 請求人は、甲5を挙げ、甲2意匠は「現実に知られていた」と述べていますが(口頭審理陳述要領書19頁[1])、甲5に挙げられているだけで、現実に需要者等が知っていたのか否かについては何も証明していません。 オ 被請求人が口頭審理陳述要領書で主張した「10 全体構成による創作非容易性」について、請求人の反論はありませんでした。」 5 被請求人の添付した証拠 乙第1号証 意匠登録第1244043号登録公報の写し 乙第2号証 被請求人のホームページのプリントアウト 乙第3号証 被請求人意匠の実施態様 乙第4号証 「月刊 近代家具 527号」の一部抜粋 写し 乙第5号証 広辞苑(第六版)の一部抜粋 写し 参考資料1の写し 参考資料2の写し 第4 口頭審理 当審は、本件審判について、令和7年2月26日に口頭審理を行った。 請求人は、請求の趣旨及び理由は、審判請求書、令和6年8月9日付け審判事件弁駁書、同年8月26日付け審判事件回答書及び令和7年2月12日付け口頭審理陳述要領書のとおり陳述し、提出した証拠の内「甲第4号証」を「甲第5号証」に「甲第5号証」を「甲第4号証」に番号を入れ替える訂正をし、被請求人の提出した乙第1号証から乙第5号証の成立を認めた。 被請求人が令和7年3月12日までに提出する上申書に意見があるときは同年3月26日までに上申書を提出する、とした。 被請求人は、答弁の趣旨及び理由は、令和6年6月14日付け審判事件答弁書、同年8月8日付け審尋回答書及び令和7年1月29日付け口頭審理陳述要領書のとおり陳述し、請求人の提出した甲第1号証から乙第5号証の成立を認めた。また、令和7年3月12日までに上申書を提出する、とした。 審判長は、甲第1号証から甲第5号証、及び乙第1号証から乙第5号証について取り調べ、本件は、以後、書面審理とした。(令和7年2月26日付け「第1回口頭審理調書」) 第5 当審の判断 1 本件登録意匠 本件登録意匠は、物品の部分について、意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、願書の記載及び願書に添付された図によれば、意匠に係る物品を「ベッド」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」ともいう。)を願書の記載及び願書に添付された図面に表されたとおりとしたものであり、当該意匠登録を受けようとする部分(以下「本件意匠部分」という。)を「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。 (1)意匠に係る物品 本件登録意匠の意匠に係る物品は「ベッド」である。 (2)本件意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲 本件意匠部分は、机、本棚、引き出し、クローゼット部などを備えたいわゆるシステムベッドの衣服などを掛けるクローゼット部であって、全体の右手側背面に位置し、右側面図の約27%で背面図の約14%を占める範囲である。 (3)本件意匠部分の形状等 本件意匠部分の形状等は、具体的には以下のとおりである。 基本的構成態様 ア 全体は、前面を開放した略縦長長方形状の箱体状で、上寄り横方向にハンガーバーを差し渡したものである。 具体的態様 イ 右側面視で、上端に天板部を、天板部下端から全体の下端まで、左右に壁板部を設け、底板部は下から縦方向長さの約1/19の高さで奥行き方向いっぱいに配し、左右の壁板部に挟まれた底板部の下側前方を幅木を渡して塞ぎ、その内方を中空にして成るものであって、 ウ 上から縦方向長さの約1/13で奥行き方向約1/2の位置に略円柱形状のハンガーバーを配し、両端にハンガーバーより一回り大きな径の円板状金具で止め付け、後壁板部は、B―B線拡大断面図視で薄板から成り、その薄板の裏側横方向に補強板を添えている。 エ 右側面視でのクローゼット部の縦横及び奥行きの長さ比率は、約38:24:18(約6:4:3)であって、 オ 底面視において、底板裏側の左右の長辺側(クローゼット部の開口側と後壁板側)四隅寄りに(B-B線拡大断面図において)三角柱状の底板受片を設けている。 2 無効理由の要点 請求人が主張する本件登録意匠の登録の無効理由は、以下の2つである。 (1)本件登録意匠は、甲第2号証に開示された意匠(以下、「甲2意匠」という。)と類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである(以下、この無効理由を「無効理由1」という。)。 (2)本件登録意匠は、甲2意匠に基づいて容易に創作することができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである(以下、この無効理由を「無効理由2」という。)。 3 無効理由の判断 (1)無効理由1について 本件登録意匠は、甲2意匠に類似し、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するか否かについて検討し、判断する。 甲2意匠の意匠に係る物品は「システムベッド」である。 甲2意匠の図の向きについては、本件登録意匠の図の向きと合わせて、認定し、また、本件意匠部分と対比の対象とする甲2意匠の部分を「甲2部分」とする。 ア 甲2意匠(甲第2号証(別紙第2参照)) 甲2意匠は、平成16年8月23日に出願され(特願2004-241940号)、平成18年3月2日に、特開2006-55469号「【発明の名称】システムベッドおよびその組み立て構造」として公開特許公報に掲載されたものであって、図1から図5が掲載されている(本件登録意匠部分の対比の対象とする部分(甲2部分)は第1図及び第3図に表れている。)。 (ア)甲2意匠に係る物品 甲2意匠に係る物品は、「システムベッド」であって、ベッド、机、本棚、引き出し、クローゼット部などを備えたものである。 (イ)甲2部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲 甲2部分は、机、本棚、引き出し、クローゼット部などを備えたいわゆるシステムベッドの衣服などを掛けるクローゼット部であって、(部材として一部延出している箇所は、クローゼット部を超えて対比の対象とする部分には含まない。)全体の右手側背面に位置し、右側面図(図3)の約33.5%で背面図の約15%(図2(正面図)の相当箇所から算出)を占める範囲である。 (ウ)甲2部分の形状等 基本的構成態様 A 全体は、前面を開放した略縦長長方形状の箱様で、上端寄り横方向にハンガーバーを差し渡したものである。 具体的態様 B 右側面視(図3)で、上端に隣接する収納空間へ延出する天板部を形成し、左側に隣接する収納空間と区切る、天板部下端から底板部上端までの壁板部を設け、右側に上方ベッド部を挟むために延出する支柱部を、天板上方から全体の下端まで前後に設け、正面斜視図(図1)で表れる、横方向の線部の下方は、支柱間を板体等で閉じ、下寄りの底板部は支柱部下端より僅かに上方の縦方向長さの約1/43の位置に水平方向に形成し、隣接する収納空間へ延出しており、 C 右側面視で、上端位置にハンガーバーを配し、両端にハンガーバーの縦幅より大きな金具を設け、後壁板部は半ば上寄りに横方向の線部が表れている。 D 右側面視でのクローゼット部の縦横及び奥行きの長さ比率は、約43:20:16(約6:3:2)である。 イ 甲2意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 甲2意匠については、前記アのとおり、平成18年3月2日に、特開2006-55469号「【発明の名称】システムベッドおよびその組み立て構造」として公開特許公報に掲載されたものであって、図1から図5が掲載されている「システムベッド」である。遅くとも、本件登録意匠の出願前4年以上前から、公開特許公報として、「J-PlatPat」などの検索サイトによって、不特定多数の者に公然知られ得る状態にあったと認められるから、甲2意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると十分認め得るものである。 ウ 本件登録意匠と甲2意匠の対比 本件登録意匠については、前記1に記載のとおり、甲2意匠は前記アに記載のとおりである。 (ア)物品について 本件登録意匠は「ベッド」で、甲2意匠は「システムベッド」であって、表記は相違するが、共に机、本棚、引き出し、クローゼット部などを備えたいわゆるシステムベッドであるから、本件登録意匠と甲2意匠(本項目において、以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、同一である。 (イ)本件意匠部分と甲2部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲について 本件意匠部分と甲2部分(本項目において、以下「両部分」という。)は、机、本棚、引き出し、クローゼット部などを備えたいわゆるシステムベッドの衣服などを掛けるクローゼット部であって、全体の右手側背面に位置するものであるから、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさは共通し、範囲については、本件意匠部分が右側面図の約27%で背面図の約14%を占める範囲であって甲2部分は右側面図の約33.5%で背面図の約15%を占める範囲であるから若干相違するものの、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲はおおむね同一である。 (ウ)両部分の形状等について A 共通点 基本的構成態様について (A)全体は、前面を開放した略縦長長方形状の箱体状で、上寄り横方向にハンガーバーを差し渡したものである点、 具体的態様について (B)右側面視で、上端に天板部、左右側に壁板部を設け、左側は上下に亘り、右側は下方を塞ぎ、下側に底板部を設けたものである点、 (C)上端付近に配したハンガーバー両端にハンガーバー縦幅より大きな金具を設けている点 が共通する。 B 相違点 具体的態様について (A)本件意匠部分のクローゼット部を構成する天板部及び底板部は、クローゼット部自体の天板部及び底板部であるのに対し、甲2部分は隣接する収納空間へ延出する天板部及び底板部を上下に設けたものである点、 (B)本件意匠部分は右側面視の左右側にクローゼット部を構成するクローゼット部自体の壁板部を天板部下端から全体の下端まで設けているのに対し、甲2部分は右側面視で、右側に上方ベッド部を挟むために延出する支柱部を天板上方から全体の下端まで、前後に設け、正面斜視図(図1)でその横方向の線部の上方は、支柱間が板材などで閉じられているか不明であって、左側に隣接する収納空間と区切る壁板部を天板部下端から底板部上端まで設けている点、 (C)本件意匠部分は右側面視で、底板部は下から縦方向長さの約1/19の高さに奥行き方向いっぱいに配し、左右の壁板部に挟まれた底板部の下側前方を幅木を渡して塞ぎ、その内方を中空にして成るものであるのに対し、甲2部分の底板部は右の支柱部下端から縦方向長さの約1/43の位置に水平方向に形成し、幅木等の有無は不明である点、 (D)本件意匠部分は本件意匠部分は上から縦方向長さの約1/13と奥行き方向約1/2の位置に略円柱形状のハンガーバーを配し、両端に円板状金具で止め付けているのに対し、甲2部分のハンガーバーはほぼ上端に位置し、奥行き位置は不明で、両端金具の(正面視方向)形状も不明である点、 (E)本件意匠部分は、後壁板部は、B―B線拡大断面図視で薄板から成り、その薄板の裏側横方向に補強板を添えているのに対し、甲2部分の後壁板部は半ば上寄りに横方向の線部が表れているのみで、上下一方のみに板材などを配したものか、上下共に板材などを配したものか不明である点、 (F)右側面視での、本件意匠部分のクローゼット部の縦横及び奥行きの長さ比率は、約38:24:18(約6:4:3)であって、甲2部分は長さ比率は、約43:20:16(約6:3:2)である点、 (G)本件意匠部分の底面視において、底板裏側の左右の長辺側四隅寄りに三角柱状の底板受片を設けているのに対し、甲2部分の底面視の態様は不明である点 において相違する。 エ 本件登録意匠と甲2意匠が類似するか否かの判断 両意匠の意匠に係る物品は、同一である。 両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲はおおむね同一である。 両部分の形状等については、以下のとおり評価する。 (ア)共通点の評価 基本的構成態様としてあげた共通点(A)は、両部分の形状等を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであり、具体的態様としてあげた共通点(B)は、この種のいわゆるシステムベッドの物品分野において、クローゼット部の構成としてごく普通ともいうべき態様の共通点であるから両部分の類否判断に与える影響は小さく、共通点(C)についてもクローゼット部のハンガーバーの態様としてごく普通に見られるものであるから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。 よって、共通点(A)から共通点(C)は、類否判断に与える影響がいずれも小さいものであって、共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても、両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 (イ)相違点の評価 これに対して、両部分の各相違点を見ると、両部分に係る物品である「システムベッド」は、ベッドに加えて、机、本棚、引き出し、クローゼットなどの多種の機能用途を兼ねあわせたものであるから、需要者は、それぞれの、使い勝手はもちろん、用途に応じた配置などにも関心を持ち、全体のバランスなどにも注目するところ、まず、相違点(G)は、設置後、使用に際しほぼ目に触れない底面視の態様の相違であるから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。相違点(F)は、両部分のクローゼット部の右側面視での縦横及び奥行きの長さ比率の相違であるが、本願意匠部分が、甲2部分に比してやや幅広で奥行きのある態様である点は両部分の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。また、相違点(C)及び相違点(E)は、底板部及び後壁板部の具体的態様の相違点であるが、底板部の位置の相違や、幅木の有無、及び甲2部分の後壁板部は半ば上寄りに横方向の線部が表れているのみで、上下一方のみに板材などを配したものか、上下共に板材などを配したものか不明である点などは、両部分の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。 そして、相違点(D)は、ハンガーバーの具体的態様の相違点であるが、クローゼット部において、ハンガーバーの上下位置が、一定程度隙間のあるものかほぼ上端かについては、衣服のかけ外しの使い勝手の点からも需要者の注目するところでもあって、視覚的にも目立つものであるから、この点が両部分の類否判断に与える影響は大きい。さらに、相違点(A)及び相違点(B)は、システムベッド内のクローゼット部の構成に関わり、天板部、底板部及び左右壁板部が箱体として、クローゼット部を形成している本件意匠部分と、右側面視で上方のベッド部を挟んで支える支柱部によって、隣接する収納空間と一体に形成され、縦方向に仕切ってクローゼット部を形成している甲2部分とでは、構成を異にするものとの印象を強くし、視覚的にも、その相違は、広範囲に及び目立つものであるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。 そうすると、相違点(G)が両部分の類否判断に与える影響は小さく、相違点(C)、相違点(E)及び相違点(F)両部分の類否判断に与える影響は一定程度であって、相違点(A)、相違点(B)及び相違点(D)両部分の類否判断に与える影響が大きく、総合すると、相違点が総じて両部分類否判断に与える影響は大きく、共通点は両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対し、相違点は、共通点を凌駕して、両部分を別異のものと印象づけるものであるから、本件意匠部分が甲2部分に類似するということはできない。 オ 小括 以上のとおり、両部分の相違点が共通点を凌駕し、両部分は類似するものではない。 そうすると、前記イのとおり、甲2意匠は本件登録意匠の出願前に公然知られたものであると認められ、意匠に係る物品も同一であって、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲についてもおおむね同一であるが、形状等について、両部分は類似しないから、本件登録意匠は、甲2意匠に類似する意匠ということはできない。 したがって、無効理由1によって、本件登録意匠の登録が、意匠法第48条第1項第1号に該当し、同項柱書の規定によって、無効とすべき理由はない。 (2)無効理由2について 請求人は、本件登録意匠が、甲2意匠に基づいて、本件登録意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合について容易に創作することができたものである旨主張し、大略、審判請求書及び弁駁書において、本件意匠部分と引用対応部分(当審注:本件意匠部分と対比の対象となる「甲2意匠部分」)の相違は、いずれも設計事項の変更の範疇であって、「本件登録意匠部分は、その出願前から公然知られた引用対応部分の構成要素の比率の変更、或いは構成要素の配置の変更をしたものに過ぎず、審判請求書に記載のとおり、当業者であれば容易に創作することができたものである」と述べ、また、口頭審理陳述要領書及び上申書においては、甲2意匠のクローゼット空間の「右側面上半分及び背面上半分が開放されている」としても、本件登録意匠部分の右側面及び背面は、引用対応部分の右側面及び背面の形態として、本件登録意匠の出願前のありふれた形態を採用したにすぎず、本件登録意匠のハンガーバーの構成についても、本件登録意匠の出願前のありふれた形態(ありふれた形態の一例として甲第4号証)に基づけば、特段の創意ある態様とは認められず当業者が容易に創作できる範疇である旨主張する。 そこで、本件登録意匠が、甲2意匠に基づいて、本件登録意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合について容易に創作することができたものであるか否かについて、甲第4号証(※口頭審理において修正済み)の意匠(以下「甲4意匠」)も参酌し、検討し、判断する。 本件登録意匠は、前記1に記載のとおりであって、甲2意匠は、前記(1)ア及びイのとおり、甲4意匠は以下のとおりである。 ア 甲第4号証(別紙第4参照) 特許庁情報・研修館が平成19年2月22日に受入の株式会社大雪木工発行の内国カタログ「nascere」第5頁及び第6頁に掲載のHC18068243と公知資料番号を付された「衣服掛け付き棚」の意匠 (ア)意匠に係る物品 甲4意匠の意匠に係る物品は「衣服掛け付き棚」である。 (イ)甲4意匠の形状等 基本的構成態様 A 全体は、前面を開放した略縦長長方形状の箱体状で、下寄りに棚及び収納箱部を設け、上寄り横方向にハンガーバーを差し渡したものである。 具体的態様 B 正面視で、左右壁板部と後壁板部の上端を短壁状に上縁部として前側先端を角丸状にして天板より上に形成し、その三方を囲まれた天板部は、縦方向長さの上から約1/21の高さに、底板部は下から縦方向長さの約1/26の高さで、棚部は約6/26の高さで、奥行き方向いっぱいに形成し、底板部と棚部の間に、略長楕円形の手掛け用孔部を上端寄りに配した収納箱を配して成るものであって、左右下端には角丸角棒状の脚部を前方に向けて突出して形成している。 C 上から縦方向長さの約3/21(約1/7)の奥行き方向半ばの位置に略円柱形状のハンガーバーを配し、両端にハンガーバーより大きな金具を上寄りに止め付けている。 D 全体の縦横及び奥行きの長さ比率は、カタログの表示サイズから、約90:41:37(約6:2.7:2.5)である。 (ウ)甲4意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 甲4意匠については、前記のとおり、独立行政法人工業所有権情報・研修館が平成19年2月22日に受入れた株式会社大雪木工発行の内国カタログ「nascere」第5頁及び第6頁に掲載されたものであって、展示会で頒布されたものを特許庁が収集した経緯からも、遅くとも、本件登録意匠の出願前3年以上前から、不特定多数の者にカタログとして公然知られ得る状態にあったと認められるから、甲4意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると十分認め得るものである。 (2-1)創作非容易性の判断 まず、いわゆるシステムベッドに、衣服などを掛けるクローゼット部を設けること及び、それを全体の右手側背面等、角位置に設けることは、システムベッドの物品分野において、本件登録意匠出願前に見受けられ、正面図の約27%で背面図の約14%を占める範囲である点においても、この種物品分野においてありふれた範囲内といえるから、本願部分において、その用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲とすることに格別の困難を要したということはできない。 次に、本件意匠部分の形状等のうち、全体を、前面を開放した略縦長長方形状の箱体状とすること、(例えば、意匠登録第1171349号(参考意匠1)及び意匠登録第1244043号(乙第1号証))また、上寄り横方向にハンガーバーを差し渡したものである点(例えば、意匠登録第677685号(参考意匠2)及び特許庁が平成1年11月22日受入れた内国カタログ「Originalworks9」第1頁所載「多物品付きベッド」の意匠(公知資料番号HC02007186)(参考意匠3))も、システムベッドの物品分野におけるクローゼット部分として、ごく普通というべき形状等であって、ハンガーバーを上寄りに略円柱形状とした点も、両端にハンガーバーより大きな金具で止め付けることも特段の創作を要するものとはいえず、「システムベッド」の物品分野における当業者においては、格別の困難を要したということはできない。 加えて、クローゼット部の収納部について長さ比率に多少の変更を加えること、また、ハンガーバーの位置に前後または上下方向への多少の変更を加えることも、当業者であれば、容易に想到できるものと認められる。 しかしながら、様々な態様を組み合わせて創出した、具体的形態においても、一定の創作性があると認められるところ、本件意匠部分の具体的な構成態様である、右側面視で、上端に天板部、天板部下端から全体の下端まで、左右に両側壁板部を設け、底板部は下から縦方向長さの約1/19の高さで奥行き方向いっぱいに配し、両側板部に挟まれた底板部の下側前方を幅木を渡して塞ぎ、その内方を中空にして成り、上から縦方向長さの約1/13の奥行き方向約1/2の位置に略円柱形状のハンガーバーを配し、両端にハンガーバーより一回り大きな径の円板状金具で止め付け後壁板部を薄板で形成し、裏側横方向に補強板を添えたものは、甲第1号証(本件登録意匠)以外の甲号証のうちいずれにも現れておらず、甲2部分は、隣接する収納空間へ延出する天板部及び底板部を上下に設けたものであって、右側面視で、右側に上方ベッド部を挟むために延出する支柱部を天板上方から全体の下端まで、前後に設け、左側は壁板部を天板部下端から底板部上端まで設けているものであって、本件意匠部分の天板部及び底板部は、クローゼット部自体の天板部及び底板部であって、右側面視の左右側にもクローゼット部自体の壁板部を天板部下端から全体の下端まで設けているものであるから、両部分は構成自体が異なるものと言わざるを得ず、甲2部分の形状等に基づいて、部分的変更及び縦横及び奥行きの長さ比率に多少の変更を施したとしても、本件意匠部分の形状等を具体的に創出することは、困難であると言わざるを得ない。 また、棚などの収納家具において、側壁板部や、後壁板部が上下に空きのない塞がった態様のものが、普通に見受けられるものであったとしても、甲4意匠は、上部に短壁状の上縁部を有する「衣服掛け付き棚」であって、甲4意匠の形状等を利用し、本件意匠部分と構成の異なる甲2部分の右側壁板部及び後壁板部を単に塞いだものとしても、本件登録部分の形状等が創出されるわけでもない。甲2部分の右側壁板部及び後壁板部は、横方向の線部によって、分断され、支柱部に挟まれた壁板部が部分的に上下で塞がっているものか空いたものかが不明であるものであるが、支柱部と分断された板材とからなる甲2部分の形状等に基づいて、天板部、底板部、左右壁板部及び後壁板部を支柱部のない板体から構成した本件意匠部分のような形態とすることが、ありふれた手法であるとする証拠もない。 したがって、本件意匠部分は、甲2部分の形状等に基づいて甲4意匠に見られる公知形態をありふれた態様として参酌するなどしても容易に創作することができた意匠とはいえず、意匠法第3条第2項に該当するということはできない。 (2-2)小括 以上のとおり、本件登録意匠が、甲2部分に基づいて容易に創作することができた意匠とはいえず、意匠法第3条第2項に該当するということはできないから、無効理由2によって、本件登録意匠の登録が、意匠法第48条第1項第1号に該当し、同項柱書の規定によって、無効とすべき理由はない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1及び無効理由2に係る理由によっては、本件登録意匠の登録は無効とすることはできない。 審判に関する費用については、意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-880003

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決33件(有限会社 江島木工、株式会社 イトーキ)
  • 2026-700135異議申立 / 2026-06-22 / 維持オフィスレイアウト提示装置、オフィスレイアウト提示方法及びプログラム
    同じ当事者: 株式会社 イトーキ
  • 2026-700148異議申立 / 2026-06-22 / 維持オフィスレイアウト提示装置、オフィスレイアウト提示方法及びプログラム
    同じ当事者: 株式会社 イトーキ
  • 2025-700483異議申立 / 2026-04-21 / 訂正認容椅子
    同じ当事者: 株式会社 イトーキ
  • 2025-700476異議申立 / 2026-04-16 / 訂正認容椅子
    同じ当事者: 株式会社 イトーキ
  • 2024-010422拒絶査定不服審判 / 2026-02-19 / 請求不成立セミクローズ家具
    同じ当事者: 株式会社 イトーキ
同じ根拠条文の審決83件(意匠法52条、民事訴訟法61条、特許法169条2項)
  • 2025-880001無効審判 / 2026-04-27 / 請求成立(無効)一組の遊戯娯楽用品セット
    共通の条文: 意匠法52条、民事訴訟法61条、特許法169条2項
  • 2024-880004無効審判 / 2026-03-26 / 請求不成立カーテンレール枠材
    共通の条文: 意匠法52条、民事訴訟法61条、特許法169条2項
  • 2025-880005無効審判 / 2026-03-02 / 請求不成立カード収納ケース
    共通の条文: 意匠法52条、民事訴訟法61条、特許法169条2項
  • 2024-880008無効審判 / 2026-01-19 / 請求成立(無効)ジャッキ
    共通の条文: 意匠法52条、民事訴訟法61条、特許法169条2項
  • 2024-880006無効審判 / 2025-12-23 / 請求不成立カメラ用アクセサリ
    共通の条文: 意匠法52条、民事訴訟法61条、特許法169条2項

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存