特許異議申立
2025-700483
椅子
- 審判番号
- 2025-700483
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-220553
- 登録番号
- 7589325
- 請求日
- 2025年04月28日
- 審決日
- 2026年04月21日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社イトーキ
- 【権利者代理人】西 博幸
- 【権利者代理人】渡辺 隆一
- 【異議申立人】佐野 裕之
- 審判長/審判官
- 審判長 倉橋 紀夫
- 審判官 横溝 顕範
- 審判官 高橋 学
- 分類
- P1652.121-YAA(A47C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7589325号発明「椅子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7589325号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7589325号の請求項1、3、5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7589325号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和元年8月30日に出願した特願2019-158698号の一部を令和5年6月22日に新たな特許出願(特願2023-102429号)とし、その一部を令和5年12月27日に新たな特許出願としたものであって、令和6年11月15日にその特許権の設定登録がされ、同年11月25日に特許掲載公報が発行された。
その後、特許異議申立人佐野裕之(以下「申立人」という。)による特許異議の申立てがされた。
本件特許についての申立人による本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和7年 4月30日 :特許異議の申立て(請求項1、3、及び5)の受付
同年 6月10日 :特許異議申立書に対する手続補正書の提出
同年 9月11日付け:取消理由通知
同年11月11日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年12月26日 :訂正請求書に対する手続補正書
なお、当審において令和8年1月15日付けで、申立人に対して意見書提出の期間を指定して、令和7年12月26日提出の手続補正書により補正された同年11月11日提出の訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を行ったが、当該期間内に申立人から意見書の提出はなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和7年12月26日提出の手続補正書により補正された同年11月11日提出の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、本文末尾に「覆われている、」とあるのを、
「覆われていて、
前記背もたれは左右2個所において前記背もたれ支持フレームに連結されており、前記表皮材の後面部は左右2個所において開口している、」
と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2の冒頭に、
「互いに分離した座と背もたれ、及び、前記座よりも高い位置において前記背もたれが取り付く背もたれ支持フレームと、を有しており、前記背もたれ支持フレームは左右の支柱部で支持されている椅子であって、
前記背もたれは、左右方向に長い形態で平面視では後ろ向きに膨れた円弧状の形態を成していると共に、シェル部材とその前面に張られたクッション材とこれを覆う表皮材とを有して、前記表皮材は前記シェル部材の後面を覆うように後ろに巻き込まれている一方、
前記背もたれ支持フレームは、前記背もたれを後ろから囲いつつ左右両端は前記背もたれよりも手前に延びていて全体として水平姿勢であり、
前記表皮材のうち前記シェル部材を後ろから覆う後面部には、前記背もたれ支持フレームに対する前記背もたれの取り付け部のみを露出させるように開口しており、前記背もたれの背面は前記背もたれ支持フレームへの取り付け部を除いて前記表皮材で覆われていて、」
を追加するとともに、「請求項1に記載した椅子。」とあるのを「椅子。」と訂正して、請求項1の記載を引用する請求項2の記載を当該請求項1の記載を引用しないものとする。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3について、従属先が「請求項1又は2」とあるのを、
「請求項2」と訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4について、従属先が「請求項3」とあるのを、
「請求項1又は3」と訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5について、従属先が「請求項3」とあるのを、
「請求項1又は3」と訂正する。
(6)訂正事項6
明細書の【0011】に「覆われている」とあるのを、
「覆われていて、前記背もたれは左右2個所において前記背もたれ支持フレームに連結されており、前記表皮材の後面部は左右2個所において開口している」と訂正する。
(7)訂正事項7
明細書の【0012】について、
「請求項2の発明は、請求項1において、
「前記背もたれ支持フレームは着座者の肘関節と同じ程度の高さに配置されており、肘当ては備えていない」
という構成になっている。」
とあるのを、
「請求項2の発明は、
「互いに分離した座と背もたれ、及び、前記座よりも高い位置において前記背もたれが取り付く背もたれ支持フレームと、を有しており、前記背もたれ支持フレームは左右の支柱部で支持されている椅子であって、
前記背もたれは、左右方向に長い形態で平面視では後ろ向きに膨れた円弧状の形態を成していると共に、シェル部材とその前面に張られたクッション材とこれを覆う表皮材とを有して、前記表皮材は前記シェル部材の後面を覆うように後ろに巻き込まれている一方、
前記背もたれ支持フレームは、前記背もたれを後ろから囲いつつ左右両端は前記背もたれよりも手前に延びていて全体として水平姿勢であり、
前記表皮材のうち前記シェル部材を後ろから覆う後面部には、前記背もたれ支持フレームに対する前記背もたれの取り付け部のみを露出させるように開口しており、前記背もたれの背面は前記背もたれ支持フレームへの取り付け部を除いて前記表皮材で覆われていて、
前記背もたれ支持フレームは着座者の肘関節と同じ程度の高さに配置されており、肘当ては備えていない」
という構成になっている。」と訂正する。
(8)訂正事項8
明細書の【0013】について、1行目に「請求項1又は2において」とあるのを、
「請求項2において」と訂正する。
(9)訂正事項9
明細書の【0014】について、1行目に「請求項3において」とあるのを、「請求項1又は3において」と訂正する。
(10)訂正事項10
明細書の【0015】について、1行目に「請求項3において」とあるのを、
「請求項1又は3において」と訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「背もたれ」及び「前記背もたれが取り付く背もたれ支持フレーム」について「前記背もたれ」が「左右2個所において前記背もたれ支持フレームに連結されて」いることを特定するとともに、本件訂正前の請求項1の「表皮材」について「前記表皮材の後面部」が「左右2個所において開口している」ことを特定するものである。
そうすると、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1は、本件訂正前の請求項3の記載に基づくものであるので、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1、3、及び5について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定する要件(独立特許要件)は課されない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用するものであったところ、請求項間の引用関係を解消して、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式の請求項に改めるものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1の記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、請求項2の請求項1との引用関係を解消して、独立形式の請求項に改めるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件について
訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることだけを目的とする訂正であるから、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定する要件(独立特許要件)は課されない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、本件訂正前の請求項3が「請求項1又は2」を引用するものであったものを「請求項2」を引用するものとして、引用する請求項の数を減少させるものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項3は、引用する請求項の数を減少させるものであるので、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1、3、及び5について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項3に係る訂正事項3に関して、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定する要件(独立特許要件)は課されない。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、本件訂正前の請求項4において請求項1又は請求項1を引用する請求項2を引用する「請求項3」であった引用先を「請求項1又は3」とする訂正であるところ、訂正事項1~3係る本件訂正により請求項1~3が訂正されたことに伴い、本件訂正前後における請求項4の引用関係の整合性を図るためのものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項4は、本件訂正前後における請求項4の引用関係の整合性を図るためのものであるので、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、明瞭でない記載を明確化するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件について
訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明だけを目的とするものであるから、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定する要件(独立特許要件)は課されない。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、本件訂正前の請求項5において請求項1又は請求項1を引用する請求項2を引用する「請求項3」であった引用先を「請求項1又は3」とする訂正であるところ、訂正事項1~3に係る本件訂正により請求項1~3が訂正されたことに伴い、本件訂正前後における請求項5の引用関係の整合性を図るためのものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項5は、本件訂正前後における請求項5の引用関係の整合性を図るためのものであるので、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、明瞭でない記載を明確化するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1、3、及び5について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項5に係る訂正事項5に関して、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定する要件(独立特許要件)は課されない。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的
訂正事項6は、訂正事項1に係る本件訂正後の請求項1の記載と明細書の記載の整合性を図るための訂正である。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項6は、前記(1)イで述べたのと同じ理由から、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6は、明瞭でない記載を明確化するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的
訂正事項7は、訂正事項2に係る本件訂正後の請求項2の記載と明細書の記載の整合性を図るための訂正である。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項7は、前記(2)イで述べたのと同じ理由から、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項7は、明瞭でない記載を明確化するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(8)訂正事項8について
ア 訂正の目的
訂正事項8は、訂正事項3に係る本件訂正後の請求項3の記載と明細書の記載の整合性を図るための訂正である。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項8は、前記(3)イで述べたのと同じ理由から、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項8は、明瞭でない記載を明確化するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(9)訂正事項9について
ア 訂正の目的
訂正事項9は、訂正事項4に係る本件訂正後の請求項4の記載と明細書の記載の整合性を図るための訂正である。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項9は、前記(4)イで述べたのと同じ理由から、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項9は、明瞭でない記載を明確化するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(10)訂正事項10について
ア 訂正の目的
訂正事項10は、訂正事項5に係る本件訂正後の請求項5の記載と明細書の記載の整合性を図るための訂正である。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項10は、前記(5)イで述べたのと同じ理由から、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項10は、明瞭でない記載を明確化するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
3 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は、それぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正前の請求項1~5に対応する本件訂正後の請求項1~5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、明細書の訂正に係る訂正事項6~10は、本件訂正前の請求項1~5に係る課題解決手段が記載された段落【0011】~【0015】を訂正するものであり、本件訂正前の請求項2~5は、それぞれ請求項1を引用するものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に規定する当該明細書の訂正に係る請求項1を含む一群の請求項の全てについて訂正するものである。
4 小括
以上のとおり、訂正事項1~10に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。さらに、訂正事項1に係る本件訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に適合し、訂正事項6~10に係る本件訂正は、同条第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の発明
前記「第2」で説示したように本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などという。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
互いに分離した座と背もたれ、及び、前記座よりも高い位置において前記背もたれが取り付く背もたれ支持フレームと、を有しており、前記背もたれ支持フレームは左右の支柱部で支持されている椅子であって、
前記背もたれは、左右方向に長い形態で平面視では後ろ向きに膨れた円弧状の形態を成していると共に、シェル部材とその前面に張られたクッション材とこれを覆う表皮材とを有して、前記表皮材は前記シェル部材の後面を覆うように後ろに巻き込まれている一方、
前記背もたれ支持フレームは、前記背もたれを後ろから囲いつつ左右両端は前記背もたれよりも手前に延びていて全体として水平姿勢であり、
前記表皮材のうち前記シェル部材を後ろから覆う後面部には、前記背もたれ支持フレームに対する前記背もたれの取り付け部のみを露出させるように開口しており、前記背もたれの背面は前記背もたれ支持フレームへの取り付け部を除いて前記表皮材で覆われていて、
前記背もたれは左右2個所において前記背もたれ支持フレームに連結されており、前記表皮材の後面部は左右2個所において開口している、
椅子。
【請求項2】
互いに分離した座と背もたれ、及び、前記座よりも高い位置において前記背もたれが取り付く背もたれ支持フレームと、を有しており、前記背もたれ支持フレームは左右の支柱部で支持されている椅子であって、
前記背もたれは、左右方向に長い形態で平面視では後ろ向きに膨れた円弧状の形態を成していると共に、シェル部材とその前面に張られたクッション材とこれを覆う表皮材とを有して、前記表皮材は前記シェル部材の後面を覆うように後ろに巻き込まれている一方、
前記背もたれ支持フレームは、前記背もたれを後ろから囲いつつ左右両端は前記背もたれよりも手前に延びていて全体として水平姿勢であり、
前記表皮材のうち前記シェル部材を後ろから覆う後面部には、前記背もたれ支持フレームに対する前記背もたれの取り付け部のみを露出させるように開口しており、前記背もたれの背面は前記背もたれ支持フレームへの取り付け部を除いて前記表皮材で覆われていて、
前記背もたれ支持フレームは着座者の肘関節と同じ程度の高さに配置されており、肘当ては備えていない、
椅子。
【請求項3】
前記背もたれは左右2個所において前記背もたれ支持フレームに連結されており、前記表皮材の後面部は左右2個所において開口している、
請求項2に記載した椅子。
【請求項4】
前記背もたれは、当該背もたれのうち上下中間高さ位置よりも低い下部において前記背もたれ支持フレームに連結されており、
前記シェル部材の背面にも前記クッション材が配置されている、
請求項1又は3に記載した椅子。
【請求項5】
前記表皮材は袋状に形成されており、前記シェル部材とクッション材とに被せられて張った状態に保持されている、
請求項1又は3に記載した椅子。」
第4 取消理由通知で通知した取消理由について
本件訂正前の本件特許に対して、当審において令和7年9月11日付けの取消理由通知で特許権者に通知した取消理由は、次のとおりである。
(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
<甲号証一覧>
甲第1号証:国際公開第2016/044957号
甲第3号証:特開2018-68784号公報
以下、申立人の提出した甲第○号証を甲○という。
<請求項及び引用文献の関係>
・請求項 1
引用文献 甲1、甲3
第5 当審の判断
1 甲号証について
(1)甲1
ア 認定事項
甲1の11ページ21行~12ページ4行(10ページ18行~30行)、12ページ12行~19行(11ページ7行~14行)、13ページ13行~28行(12ページ6行~17行)、17ページ17行~33行(15ページ22行~16ページ5行)、20ページ25行~21ページ2行(18ページ17行~30行)、26ページ1行~9行(22ページ28行~23ページ3行)、Fig.1B、1D、2A~4B、9A、9B、10G~10Jから、甲1には、以下の事項が示されていると認められる。なお、括弧内は、申立人が提出した翻訳文の参照箇所を示す。
(ア)Fig.1A及び2Aから、座25及び背もたれ部92は、互いに分離している。
(イ)12ページ12行~19行(11ページ7行~14行)、Fig.1B、及び2Aから、座25よりも高い位置で背もたれ部92が背もたれ支持部91に取り付けられている。
(ウ)12ページ12行~19行(11ページ7行~14行)、26ページ1行~9行(22ページ28行~23ページ3行)、Fig.1B及び2A~4B、並びに前記(ア)及び(イ)から、椅子は、互いに分離した座25及び背もたれ部92と、座25よりも高い位置で背もたれ部92が取り付けられる背もたれ支持部91と、座25を保持するベースプレート3を備える。
(エ)20ページ25行~21ページ2行(18ページ17行~30行)、並びにFig.1A及び10G~10Jから、背もたれ支持部91は、ベースプレート3に第3の回転軸D3上で接続される。
(オ)11ページ21行~12ページ4行(10ページ18行~30行)、13ページ13行~28行(12ページ6行~17行)、及びFig.1Aから、背もたれ支持部91は、複数回曲げられた左右対称形状のブラケットであって、一体型のプラスチック射出成形部品であり、第3の回転軸D3から上方に突出する支持領域と、背もたれ部92まで延びる基本的に水平な支持領域とを有し、2つの支持領域の間にはアーチ型の遷移部があり、左右それぞれにおける水平な支持領域が2つの肘掛け部を形成し、肘掛け部は背もたれ部92の後部を円弧状に囲む。
(カ)Fig.1B、1D、2A、及び9Aから、背もたれ部92は、左右方向に長い形態であって平面視で後ろ向きに膨れるように円弧状に湾曲している。
(キ)17ページ17行~33行(15ページ22行~16ページ5行)、並びにFig.9A及び9Bから、背もたれ部92は、背もたれプレート93と背もたれクッション99とから構成され、背もたれクッション99の背面に設けられた、背もたれプレート93と相補的な凹部993に背もたれプレート93が固定的に挿入され、背もたれプレート93の中央に設けられたカウンターピース94と背もたれ支持部91の接続部97が、高さ調整可能に接続される。
イ 甲1に記載された発明
前記アから、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(括弧内に、根拠箇所を示した。)。
「互いに分離した座25及び背もたれ部92と、前記座25よりも高い位置で前記背もたれ部92が取り付けられる背もたれ支持部91と、前記座25を保持するベースプレート3を備える椅子であって(前記ア(ウ))、
前記背もたれ支持部91は、前記ベースプレート3に第3の回転軸D3上で接続され(前記ア(エ))、
前記背もたれ支持部91は、複数回曲げられた左右対称形状のブラケットであって、一体型のプラスチック射出成形部品であり、前記第3の回転軸D3から上方に突出する支持領域と、前記背もたれ部92まで延びる基本的に水平な支持領域とを有し、2つの前記支持領域の間にはアーチ型の遷移部があり、左右それぞれにおける前記水平な支持領域が2つの肘掛け部を形成し、前記肘掛け部は背もたれ部92の後部を円弧状に囲み(前記ア(オ))、
前記背もたれ部92は、左右方向に長い形態であって平面視で後ろ向きに膨れるように円弧状に湾曲し(前記ア(カ))、
前記背もたれ部92は、背もたれプレート93と背もたれクッション99とから構成され、前記背もたれクッション99の背面には、前記背もたれプレート93と相補的な凹部993が設けられ、前記凹部993に前記背もたれプレート93が固定的に挿入され、前記背もたれプレート93の中央に設けられたカウンターピース94と前記背もたれ支持部91の接続部97が、高さ調整可能に接続される(前記ア(キ))、
椅子。」
(2)甲3
甲3には、以下の各事項が示されていると認められる。
ア 段落【0002】から、甲3には、次の周知技術が示されているといえる。
「椅子の背もたれにおいて、インナーシェルに対して総くるみ式背カバー張地を被せること。」
イ 段落【0026】、【0029】、【0030】、【0038】、【0046】、【0047】、及び図18から、甲3には、インナーシェルに対して総くるみ式背カバー張地を被せた椅子の背もたれに関して、次の事項(以下「甲3記載事項」という。)が示されているといえる。
「背インナーシェル58及び背インナーシェル58に被せられる袋状の張地である総くるみ59とで構成される背凭れ9において、総くるみ59は、背インナーシェル58の表側を覆い、裏面に緩衝用のウレタンクッションが縫い付けられた表側張地59aと、背インナーシェル58の裏側を覆う裏側張地59bとを背インナーシェル58と相似形状の袋状に縫製することで構成され、総くるみ59は、背インナーシェル58の取付部を裏側張地59bから露出させ、裏側張地59bを介在させて取付部と背フレーム57の被取付部とを連結するとともに、背フレーム57と連結するリンク部材62が連結する背インナーシェル58の軸受ブラケット部58eだけを外観に露出させること。」
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
ア 後者の「互いに分離した座25及び背もたれ部92」「を備え」ることは、前者の「互いに分離した座と背もたれ」「を有」することに相当する。
イ 後者の「前記座25よりも高い位置で前記背もたれ部92が取り付けられる背もたれ支持部91と、前記座25を保持するベースプレート3を備え」、「前記背もたれ支持部91は、前記ベースプレート3に第3の回転軸D3上で接続され、前記背もたれ支持部91は、複数回曲げられた左右対称形状のブラケットであって、一体型のプラスチック射出成形部品であり、前記第3の回転軸D3から上方に突出する支持領域と、前記背もたれ部92まで延びる基本的に水平な支持領域とを有し、2つの前記支持領域の間にはアーチ型の遷移部があり、左右それぞれにおける前記水平な支持領域が2つの前記肘掛け部を形成し、肘掛け部は背もたれ部92の後部を円弧状に囲」むことにおいて、Fig.1Aも踏まえると、「前記背もたれ支持部91」の「前記背もたれ部92まで延びる基本的に水平な支持領域」が「前記背もたれ部92」に取り付けられ、左右2つの「アーチ型の遷移部」及び「第3の回転軸D3から上方に突出する支持領域」が、それぞれ「前記背もたれ部92まで延びる基本的に水平な支持領域」を「ベースプレート3」に対して支持しているといえる。
そうすると、後者の「前記座25よりも高い位置で前記背もたれ部92が取り付けられる背もたれ支持部91」「を備え」、「前記背もたれ支持部91は、複数回曲げられた左右対称形状のブラケットであって、」「前記背もたれ部92まで延びる基本的に水平な支持領域」「を有し、」「左右それぞれにおける前記水平な支持領域が2つの肘掛け部を形成し、前記肘掛け部は前記背もたれ部92の後部を円弧状に囲」むことは、前者の「前記座よりも高い位置において前記背もたれが取り付く背もたれ支持フレーム」「を有」することに相当し、後者の「背もたれ支持部91」の「水平な支持領域」は、前者の「背もたれ支持フレーム」に相当する。
また、後者の「前記座25よりも高い位置で前記背もたれ部92が取り付けられる背もたれ支持部91と、前記座25を保持するベースプレート3を備え」、「前記背もたれ支持部91は、前記ベースプレート3に第3の回転軸D3上で接続され、」「前記背もたれ支持部91は、複数回曲げられた左右対称形状のブラケットであって、」「前記第3の回転軸D3から上方に突出する支持領域と、前記背もたれ部92まで延びる基本的に水平な支持領域とを有し、2つの前記支持領域の間にはアーチ型の遷移部があ」ることは、前者の「前記背もたれ支持フレームは左右の支柱部で支持されている」ことに相当し、後者の「背もたれ支持部91」の「上方に突出する支持領域」及び「アーチ型の遷移部」は前者の「支柱部」に相当する。
そうすると、後者の「互いに分離した座25及び背もたれ部92と、前記座25よりも高い位置で前記背もたれ部92が取り付けられる背もたれ支持部91と、前記座25を保持するベースプレート3を備える椅子であって、前記背もたれ支持部91は、前記ベースプレート3に第3の回転軸D3上で接続され、前記背もたれ支持部91は、複数回曲げられた左右対称形状のブラケットであって、一体型のプラスチック射出成形部品であり、前記第3の回転軸D3から上方に突出する支持領域と、前記背もたれ部92まで延びる基本的に水平な支持領域とを有し、2つの前記支持領域の間にはアーチ型の遷移部があり、左右それぞれにおける前記水平な支持領域が2つの前記肘掛け部を形成し、肘掛け部は背もたれ部92の後部を円弧状に囲」むことは、前者の「互いに分離した座と背もたれ、及び、前記座よりも高い位置において前記背もたれが取り付く背もたれ支持フレームと、を有しており、前記背もたれ支持フレームは左右の支柱部で支持されている椅子であ」ることに相当する。
ウ 後者の「前記背もたれ部92は、左右方向に長い形態であって平面視で後ろ向きに膨れるように円弧状に湾曲」することは、前者の「前記背もたれは、左右方向に長い形態で平面視では後ろ向きに膨れた円弧状の形態を成している」ことに相当する。
エ 後者の「背もたれプレート93」は、前者の「シェル部材」に相当する。
また、後者の「前記背もたれ部92は、背もたれプレート93と背もたれクッション99とから構成され、前記背もたれクッション99の背面には、前記背もたれプレート93と相補的な凹部993が設けられ、前記凹部993に前記背もたれプレート93が固定的に挿入され」ることは、「背もたれプレート93」の前面に、「前記背もたれプレート93」が「固定的に挿入され」る「前記背もたれプレート93と相補的な凹部993」が「設けられ」た「前記背もたれクッション99」が張られているといえるので、前者の「前記背もたれは、」「シェル部材とその前面に張られたクッション材と」「を有」することに相当する。
オ 前記イから、「前記背もたれ支持部91は、複数回曲げられた左右対称形状のブラケットであって、」「前記背もたれ部92まで延びる基本的に水平な支持領域」「を有し、」「左右それぞれにおける前記水平な支持領域が2つの前記肘掛け部を形成」することは、前者の「前記背もたれ支持フレームは、」「全体として水平姿勢であ」ることに相当する。
また、後者の「背もたれ部92の後部を円弧状に囲」むことは、前者の「前記背もたれを後ろから囲」うことに相当する。
そうすると、後者の「前記背もたれ支持部91は、複数回曲げられた左右対称形状のブラケットであって、一体型のプラスチック射出成形部品であり、」「前記背もたれ部92まで延びる基本的に水平な支持領域」「を有し、」「左右それぞれにおける前記水平な支持領域が2つの前記肘掛け部を形成し、肘掛け部は背もたれ部92の後部を円弧状に囲」むことは、「2つの前記肘掛け部を形成」する「左右それぞれにおける前記水平な支持領域」が「前記背もたれ部92」よりも手前に延びていることは明らかなので、前者の「前記背もたれ支持フレームは、前記背もたれを後ろから囲いつつ左右両端は前記背もたれよりも手前に延びていて全体として水平姿勢であ」ることに相当する。
カ 前記ア及びイから、後者の「前記背もたれ部92は、背もたれプレート93と背もたれクッション99とから構成され、前記背もたれクッション99の背面には、前記背もたれプレート93と相補的な凹部993が設けられ、前記凹部993に前記背もたれプレート93が固定的に挿入され、前記背もたれプレート93の中央に設けられたカウンターピース94と前記背もたれ支持部91の接続部97が、高さ調整可能に接続される」ことと、前者の「前記背もたれは左右2個所において前記背もたれ支持フレームに連結されて」いることは、「前記背もたれは、前記背もたれ支持フレームに連結されて」いることで共通する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「互いに分離した座と背もたれ、及び、前記座よりも高い位置において前記背もたれが取り付く背もたれ支持フレームと、を有しており、前記背もたれ支持フレームは左右の支柱部で支持されている椅子であって、
前記背もたれは、左右方向に長い形態で平面視では後ろ向きに膨れた円弧状の形態を成していると共に、シェル部材とその前面に張られたクッション材とを有し、
前記背もたれ支持フレームは、前記背もたれを後ろから囲いつつ左右両端は前記背もたれよりも手前に延びていて全体として水平姿勢であり、
前記背もたれは、前記背もたれ支持フレームに連結されている、
椅子。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
背もたれに関して、本件発明1は、背もたれは、シェル部材とその前面に張られたクッション材と「これを覆う表皮材と」を有して、「前記表皮材は前記シェル部材の後面を覆うように後ろに巻き込まれ」、「前記表皮材のうち前記シェル部材を後ろから覆う後面部には、前記背もたれ支持フレームに対する前記背もたれの取り付け部のみを露出させるように開口しており、前記背もたれの背面は前記背もたれ支持フレームへの取り付け部を除いて前記表皮材で覆われていて、」「前記表皮材の後面部は左右2個所において開口している」のに対して、甲1発明は、かかる「表皮材」について特定されていない点。
[相違点2]
背もたれと背もたれ支持フレームの連結に関して、本件発明1は、背もたれが「左右2個所において」背もたれ支持フレームに連結されているのに対して、甲1発明は、背もたれ部92の「背もたれプレート93」の「中央に設けられたカウンターピース94」と背もたれ支持部91の接続部97が「高さ調整可能に」接続される点。
(2)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点2について検討する。
甲3の段落【0028】、【0037】、【0047】、並びに図7及び13から、甲3には、背凭れ9を構成する背インナーシェル58と支持部材である背フレーム57を、背インナーシェル58の幅方向(左右方向)4箇所における背フレーム57の凹部57gと背インナーシェル58の凸部58gの連結により連結する連結構造が示されていると認められるところ、該幅方向(左右方向)4箇所での連結は、本件発明1における「左右2個所において」「連結されている」ことに含まれるものと認められる。
しかしながら、甲3で示された連結構造は、背凭れ9の高さ調整ができない連結構造であるので、甲1発明における高さ調整を前提とした背もたれ部92と背もたれ支持部91の接続構造に対して甲3で示された連結構造を適用することに動機は認められない。
また、申立人が提示した他の証拠(甲2及び4)においても、高さ調整が可能な背もたれと背もたれを支持するフレームの連結を背もたれの左右2カ所で行うことについての記載も示唆もない。
そして、甲1発明においては、背もたれ支持部91の接続部97を背もたれプレート93の中央と接続することによって、簡便な操作で背もたれ部92の高さ調整ができるものと認められるところ、背もたれプレート93の左右2カ所の連結部のそれぞれにおいて高さ調整を行うには、その操作が煩雑なものとなる、又は、簡便な操作のためにさらなる複雑な構造が必要となると認められるので、甲3に記載された左右4箇所での連結位置の適用には、阻害要因があるともいえる。
そうすると、甲1発明において、甲3に記載された事項を踏まえ、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないので、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
したがって、取消理由通知で通知した取消理由によって、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、令和7年6月10日提出の手続補正書による補正後の特許異議申立書(以下「異議申立書」という。)において、前記第4の甲号証一覧で示した証拠(甲1及び3)に加え、次の証拠を提出し、以下の特許異議申立理由(以下「申立理由」という。)を主張している。
<甲号証一覧>
甲2:to My Days...,DAYS OFFICE STYLE BOOK vol.2,日本,コクヨ株式会社,2017年7月,表紙,19~20ページ,奥付
甲4:KOKUYO office furniture’99 catalogue,日本,コクヨ株式会社,平成10年12月,表紙,660ページ,奥付
1 申立理由の概要
本件発明1、3、及び5は、甲1発明、甲2~4に記載された事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3、及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由の検討
(1)本件発明1について
前記第5の2(1)で示したように、本件発明1と甲1発明は、相違点1及び2で相違する。
そして、事案に鑑み、相違点2について検討するに、甲2には、椅子の背もたれの背面において、フレームが左右2カ所で固定されることは示唆されているといえるが、甲4には、椅子の背もたれの背面と背もたれを支持する部材がどのように連結されるかについては何も示されていない。
また、甲2及び4に示された椅子の背もたれは、いずれも高さ調整が可能なものであるとは認められない。
そうすると、甲1発明における高さ調整を前提とした背もたれ部92と背もたれ支持部91の接続構造に対して甲2で示される固定構造を適用することに動機は認められない。
そして、甲1発明においては、背もたれ支持部91の接続部97を背もたれプレート93の中央と接続することによって、簡便な操作で背もたれ部92の高さ調整ができるものと認められるところ、背もたれプレート93の左右2カ所の連結部のそれぞれにおいて高さ調整を行うには、その操作が煩雑なものとなる、又は、簡便な操作のためにさらなる複雑な構造が必要となると認められるので、甲2に記載された左右2箇所での連結の適用には、阻害要因があるともいえる。
また、甲3については、前記第5の2(2)で述べたとおりである。
更に、異議申立書において申立人が主張する周知技術は、表皮材の後面部分に、背もたれ支持フレームとの取り付け部分を露出させる開口を設けることに関するものであり(異議申立書14ページ23行~26行)、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項に関するものではない。
以上から、甲1発明において、甲2~4に記載された事項、及び周知技術を踏まえ、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲2~4に記載された事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明3について
本件訂正後の本件発明3は、特許異議の申立てがされていない本件発明2だけを引用するものとなった。
そして、本件発明3は、前記第5の2(1)で示した相違点2に係る本件発明1の発明特定事項と同じ発明特定事項を含むものであるので、本件発明3と甲1発明は、少なくとも相違点2で相違するところ、相違点2については、前記(1)で判断したとおりである。
したがって、本件発明3は、甲1発明、甲2~4に記載された事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1又は本件発明3の発明特定事項を全て含むものであるところ、何れの場合においても、両者は、前記第5の2(1)で示した相違点2に係る本件発明1の発明特定事項と同じ発明特定事項を有するものである。
そうすると、本件発明5と甲1発明は、少なくとも相違点2で相違するところ、相違点2については、前記(1)で判断したとおりである。
したがって、本件発明5は、甲1発明、甲2~4に記載された事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件発明1、3、及び5は、甲1発明、甲2~4に記載された事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、請求項1、3、及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないので、申立理由によって、取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1、3、5に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件特許の請求項1、3、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-700483