意匠無効審判
2024-880008
ジャッキ
- 審判番号
- 2024-880008
- 法域
- 意匠
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 意願2023-015713
- 登録番号
- 1766139
- 請求日
- 2024年11月28日
- 審決日
- 2026年01月19日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 請求成立(無効)
- 当事者
- 【請求人】伊岳商事 株式会社
- 【請求人代理人】齋藤 晴男
- 【請求人代理人】齋藤 貴広
- 【被請求人】株式会社 石田製作所
- 【被請求人代理人】岡田 義敬
- 【被請求人代理人】岡田 敬
- 【被請求人代理人】下茂 力
- 審判長/審判官
- 審判長 前畑 さおり
- 審判官 綿貫 浩一
- 審判官 清野 貴雄
- 分類
- D1113.113-Z (G1-3)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 意匠法3条1項3号意匠法48条1項1号意匠法52条特許法169条2項民事訴訟法61条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 意匠法第3条第1項第2号、意匠法第3条第1項第3号、意匠法第3条第1項第1号、意匠法第3条第2項、意匠法第48条第1項第1号、意匠法第52条、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の意匠登録第1766139号「ジャッキ」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
意匠登録第1766139号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件意匠登録第1766139号の意匠(以下「本件登録意匠」という。別紙第1参照)は、令和5年(2023年)8月1日に意匠登録出願(意願2023-015713)されたものであって、令和6年(2024年)2月20日付けで登録査定がなされ、同年3月12日に意匠権の設定の登録がされた後、同年3月21日に意匠公報が発行され、その後、当審において、概要、以下の手続を経たものである。
令和6年(2024年)11月28日付け 審判請求書の提出
令和7年(2025年) 4月21日付け 手続補正書の提出
同年 5月 7日付け 審尋(1回目)の送付
同年 6月11日差出 審尋に対する回答書(1回目)の提出
同年 6月18日付け 審尋(2回目)の送付
同年 7月23日付け 審尋に対する回答書(2回目)の提出
同年 7月29日付け 請求書副本の送達通知の送付
同年 10月10日付け 書面審理通知書の送付
同年 11月 4日付け 無効理由通知書の送付
同年 同月 同日付け 職権審理結果通知書の送付
令和8年(2026年) 1月 6日 審理終結通知書の送付
第2 請求の趣旨及び理由
本件無効審判の請求の趣旨は、「登録第1766139号意匠の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」というものであり、その理由として、「本件登録意匠は、甲第3号証乃至甲第9号証に示されるように、その意匠登録出願前に日本国内において公然知られた意匠であるので、意匠法第3条第1項第1号の規定により、意匠登録を受けることができないもの」であり(無効理由1)、「本件登録意匠は、甲第3号証乃至甲第9号証に示されるように、その意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠であるので、意匠法第3条第1項第2号の規定により、意匠登録を受けることができない」ものであり(無効理由2)、「本件登録意匠は、」無効理由1又は無効理由2「に掲げる意匠に類似する意匠であるので、意匠法第3条第1項第3号の規定に該当し、意匠登録を受けることができない」ものであり(無効理由3)、「本件登録意匠は、その意匠登録出願前に」無効理由1又は無効理由2「に掲げる意匠に基づいて当業者が容易に創作し得たものであるので、意匠法第3条第2項の規定に該当し、意匠登録を受けることができない」ものである(無効理由4)から、「本件登録意匠は、意匠法第48条第1項第1号の規定により、無効とされるべきである。」と主張した。
第3 手続補正書の提出
請求人は、令和7年4月21日付けで、審判請求書の「7.証拠方法」の欄及び「8.添付書類の目録」の欄及び証拠説明書の「証拠の説明」の欄について、以下の補正を行った。
「補正の内容
1)「7.証拠方法」の欄の(1)甲第1号証、(2)甲第2号証及び(9)甲第9号証を次のように訂正し、(10)甲第9号証の2を追加する。
(1)甲第1号証 意匠登録第1766139号原簿写し
(2)甲第2号証 意匠登録第1766139号意匠公報写し
(9)甲第9号証の1 株式会社ニッチ作成の英文パンフレットの写し
(10)甲第9号証の2 甲第9号証の1の和訳文写し
2)「8.添付書類の目録」の欄(2)及び(3)を次のように訂正する。
(2)甲第1号証乃至甲第9号証の2正本 1通
(3)甲第1号証乃至甲第9号証の2副本 2通
3)証拠説明書の「証拠の説明」の欄の甲9を以下のとおり「甲9の1」とし、新たに「甲9の2」を付加する。」
第4 審尋及び回答書
審判長は、請求人に対し、2回の審尋を行い、回答書にて具体的な説明を求め、請求人はそれぞれ回答した。
(1)令和7年5月7日付け審尋(1回目)
「下記に記載の内容について、回答書にて具体的に説明してください。
以下の甲第3号証から甲第9号証について、輪郭や形状が不鮮明なものと刊行物(インターネット掲載も含む)掲載日が不明なものがあります。特に、刊行物掲載日は意匠法第3条第1項第2号の規定違反を主張するにあたり、必要事項となります。
1 甲第3号証について
甲第3号証(伊岳商事株式会社が顧客に頒布した平成元年2月発行の価格表抜粋写し)4ページのレールジャッキの画像が小さく、輪郭や形状が不鮮明ですので、当該レールジャッキの拡大及び鮮明な画像の提出をご検討ください。
2 甲第4号証について
甲第4号証(伊岳商事株式会社が顧客に頒布した平成2年1月発行の価格表抜粋写し)6ページのレールジャッキの画像が小さく、輪郭や形状が不鮮明ですので、当該レールジャッキの拡大及び鮮明な画像の提出をご検討ください。
3 甲第5号証について
甲第5号証(ネットショップ「ハヤブサリサイクル」の「ニッチレールジャッキNR-10形まとめて3個セット」の販売用Webページの写し)の刊行物掲載日が不明です。Wayback Machine等のウェブアーカイブを用いて当該Webページの公開日の特定をご検討ください。
4 甲第6号証について
甲第6号証(「FULL道具屋無限堂」の商品掲載Webページの写し)の1枚目にある「ニッチ トラックジャッキ ギアジャッキ 10t/8t NR-10」の各図が小さく、形状が不鮮明ですので、当該各図の拡大画像の提出をご検討ください。また、当該Webページの刊行物掲載日が不明ですので、Wayback Machine等のウェブアーカイブを用いて当該Webページの公開日の特定をご検討ください。
5 甲第7号証について
甲第7号証(「鉄道用販売カタログVol.1」の表紙、商品掲載ページ及び最終ページの写し)60ページのレールジャッキの画像が小さく、輪郭や形状が不鮮明ですので、当該レールジャッキの拡大及び鮮明な画像の提出をご検討ください。
6 甲第8号証について
甲第8号証(株式会社長野ホームサービスのYouTubeページの写し)2枚目のレール打上装置(豆ジャッキレールジャッキ)の画像が小さく、更に再生回数等の文字情報が不鮮明(審判請求書、11ページには1158回とありますがよく見えません)ですので、当該画像の拡大及び鮮明な文字情報の提出をご検討ください。なお、審判請求書の11ページに「なお、この動画は、その公開時の5年前の時点で1158回視聴されたとされている。」とありますが、公開時ではなく「公開後5年の時点で1158回視聴された」と当合議体は推認しています。この推認が是認できるか否か回答ください(そうであれば、当該部分の修正を検討ください)。
7 甲第9号証について
甲第9号証(株式会社ニッチ作成の英文パンフレットの写し)の刊行物掲載日が不明です。こちらの資料は審判請求書の別紙にて本願登録意匠との対比に使われていますが、請求人の本件登録意匠が意匠法第3条第1項第2号の規定により意匠登録を受けることができない(理由2)との主張は、引用意匠が本件登録意匠の出願前に刊行物に掲載されたものでなければ成り立たないため、補強証拠を提出する等して公知日(刊行物掲載日)を明らかにしてください。
また、型式の表記について、見出し及び1ページ目と2ページ目の本文中にある表内の記載は「NR1100」であるのに対して、1ページ目に表されたレールジャッキの図には「NR-10」と記載され、型式の表記が異なっています。「NR1100」が「NR-10」と同じものであることを説明ください。」
(2)審尋(1回目)に対する回答書(令和7年6月11日差出)
「令和7年5月7日付の審尋に対し、以下のとおり、釈明いたします。
(1)甲第3号証について
甲第3号証の第4ページのレールジャッキの画像に関しましては、拡大した当該レールジャッキの画像を提出します(甲第10号証)。
なお、不鮮明な場合、原本提示の準備はあります。
(2)甲第4号証について
甲第4号証の第6ページのレールジャッキの画像に関しましては、拡大した当該レールジャッキの画像を提出します(甲第11号証)。
なお、不鮮明な場合、原本提示の準備はあります。
(3)甲第5号証について
甲第5号証の掲載日につきましては、公開日を特定するため、Wayback Machineの写しを提出します(甲第12号証、甲第12号証の2)。
(4)甲第6号証について
甲第6号証の1枚目の「ニッチ トラックジャッキ ギアジャッキ 10t/8t NR-10」の各図につきましては、拡大した当該各図を提出します(甲第13号証)。
なお、甲第6号証に係るWEBページの公開日は、Wayback等で確認できませんでしたが、甲第6号証に係る「ニッチ トラックジャッキ ギアジャッキ 10t/8t NR-10」は、その付されているプレートから、昭和時代から公に流通していたことは明らかです。
(5)甲第7号証について
甲第7号証の第60ページのレールジャッキの画像に関しましては、拡大した当該レールジャッキの画像を提出します(甲第14号証)。
(6)甲第8号証について
甲第8号証の2枚目のレール打上装置(豆ジャッキレールジャッキ)の画像に関しましては、拡大した当該画像を提出します(甲第15号証)。
また、ご指摘の「5年前の時点」の点に関しましては、合議体における推認のとおり、「公開後5年の時点で1158回視聴された」が正ですので、修正します。
(7)甲第9号証について
甲第9号証の刊行物掲載日につきましては、甲第16号証乃至甲第20号証によって証明します。
先ず、甲第16号証は、甲第9号証に係る刊行物の発行者である株式会社ニッチによる同社の廃業情報(2023年6月30日に廃業)を示す書面です。そして、甲第16号証の2は、甲第16号証の株式会社ニッチが、甲第9号証に係る刊行物の発行社である株式会社ニッチであることを証する証拠です(甲第9号証に記載されている住所表示と、第16号証の2の「東大阪工場」に記載されている住所が一致していることから、第16号証の株式会社ニッチが、甲第9号証に係る刊行物の発行社である株式会社ニッチと同一であることに疑いの余地はありません。)。なお、甲第17号証は、株式会社ニッチが、2023年6月末日に廃業したことを示す客観的証拠で、甲第17号証の2は、甲第17号証における株式会社ニッチが、甲第9号証に係る刊行物の発行社である株式会社ニッチであることを証する証拠です(甲第17号証の2に記載されている住所が甲第16号証の2に記載されている株式会社ニッチの本社住所と一致していることから、甲第17号証の株式会社ニッチが甲第9号証に係る株式会社ニッチと同一であることに、疑いの余地はありません。)。
以上の甲第16号証、甲第16号証の2、甲第17号証及び甲第17号証の2から、甲第9号証に係る株式会社ニッチ(NITCHI CO.,LTD.)が、本件登録意匠の出願日前の2023年6月30日(末日)に廃業していることが分かります。
ここで、一般的見地から、会社の廃業後に当該会社の商品についての取扱説明書が発行されるということは考えにくく、そうすると、甲第9号証に係る取扱説明書は、少なくとも、本件登録意匠の出願日前である2023年6月末日の時点で、発行されていた公知の文献と考えるのが至当です。
よって、甲第9号証は、本件登録意匠の出願の時点において、公になっていたことは明らかです。
また、「NR-10」と「NR1100」が同一であるのかどうかという点ですが、「NR-10」と「NR1100」は同一の製品です。この点は、甲第18号証及び甲第19号証の株式会社ニッチ発行のレールジャッキの「プレート」に記されている品番等から明らかです。
また、既提出の証拠や甲第20号証及び甲第21号証からも、「NR-10」と「NR1100」の形状が同じであることを確認することができると考えます。
以上のとおりご回答申し上げますが、確認事項につき、回答できていない場合は、更に資料(証拠)を準備いたしますので、お知らせください。」
(3)令和7年6月18日付け審尋(2回目)
「令和7年6月11日に受け付けた回答書において、令和7年5月7日付の審尋に対して回答されましたが、甲第9号証の刊行物掲載日について証明された甲第16号証から甲第17号証の2について不明な点がありますので、再び回答書にて具体的に説明してください。
回答書の6.回答の内容(7)甲第9号証について の記載中、甲第16号証から甲第17号証の2が、株式会社ニッチに関する廃業情報である旨説明され、「ここで、一般的見地から、会社の廃業後に当該会社の商品についての取扱説明書が発行されるということは考えにくく、そうすると、甲第9号証に係る取扱説明書は、少なくとも、本件登録意匠の出願日前である2023年6月末日の時点で、発行されていた公知の文献と考えるのが至当です。」と述べられましたが、意匠登録無効の理由の要点のうち、意匠法第3条第1項第1号の規定違反(理由1:意匠登録出願前に日本国内において公然知られた意匠)としての根拠とはなりますが、具体的に公知になった事実が特定できないため、意匠法第3条第1項第2号の規定違反(理由2:意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠)の根拠にはなりません。
甲第9号証または甲第9号証の2の資料について、例えば、株式会社ニッチから取引先企業へ当該取扱説明書を納入した事実がわかるような資料(製品に添えて納入された事実がわかるような納入書や、納入に関するやりとりを行ったメール、当該取扱説明書の内容が掲載された業界紙や業界新聞等)の提出をご検討ください。
また、「甲第18号証及び甲第19号証の株式会社ニッチ発行のレールジャッキの「プレート」に記されている品番等から明らか」として、「NR-10」と「NR1100」は同一製品である旨説明されましたが、合議体では、甲第18号証及び甲第19号証から、「NR-10」は製品名、「NR1100」は品番を示すものと推認しています。」
(4)審尋(2回目)に対する回答書(令和7年7月23日付け)
「令和7年6月18日付の審尋に対し、以下のとおり、釈明いたします。
(1)甲第9号証(甲第16号証乃至甲第17号証の2)について
甲第9号証の資料が、株式会社ニッチから取引先企業へ納入されたことを証する資料として、甲第22号証乃至甲第25号証を提出します。
1)甲第22号証は、株式会社ニッチが発行した「業務連絡票」であり、その日付は20年(2020年)6月13日となっており、その内容は、「・・・英文取説を80部を1箱に1部入れて下さい。日本語取説は不要です。・・・」というものです。
2)甲第23号証は、2020年6月15日付、株式会社ニッチの担当者間の内部メールであり、甲第9号証に係る資料(取扱説明書)に、甲第24号証に係るパーツリストを挟み込むことの了承を求める内容となっています。そして、そのメール内容から、そこにおける対象製品が、本件審判請求人である伊岳(商事株式会社)へ納品される製品であることが分かります。
3)甲第25号証は、甲第22号証に係る「業務連絡票」に追記することで、当該業務連絡内容を補う書面であり、甲第23号証にある「甲第9号証に係る資料(取扱説明書)に、甲第24号証に係るパーツリストを挟み込んで同納」するよう指示する内容の書面となっています。そして、甲第25号証に係る書面から、本件業務連絡に係る製品が「NR1100」であることが分かります。
4)以上の事実をまとめますと、甲第9号証に係る取扱説明書は、甲第24号証に係るパーツリストと共に、NR1100の製品に同納されたものであることが分かります。
つまり、甲第9号証に係る取扱説明書は、株式会社ニッチから取引企業先(少なくとも本件審判請求人)へ納入されたことは明らかです。
(2)「NR-10」と「NR1100」について
ご推認のとおりです。
以上のとおりご回答申し上げますが、確認事項につき、回答できていない場合は、更に資料(証拠)を準備いたしますので、お知らせください。」
第5 被請求人の答弁
審判長は、被請求人に対し、審判請求書の副本及び2回の審尋に対する回答書の各副本を送達し、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、これに対し、被請求人は、答弁しなかった。
第6 書面審理
審判長は、本件審判について、両当事者に対し、令和7年10月10日付けで書面審理に付す旨を通知した。
第7 当審の無効理由通知
当審は、本件登録意匠の意匠登録に無効理由を発見したので、その無効理由を、被請求人に対して、令和7年11月4日付け無効理由通知書により通知し、期間を指定して意見書の提出を求めたが、被請求人からの応答はなかった。併せて、同無効理由を、請求人に対して、同日付け職権審理結果通知書により通知し、期間を指定して意見書の提出を求めたが、請求人からの応答はなかった。
この無効理由通知書及び職権審理結果通知書により通知した無効理由は、同内容であり、本件登録意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照)に類似するものと認められ、意匠法第3条第1項第3号に該当し、同法同条同項の規定に違反して意匠登録されたものであり、同法第48条第1項第1号に該当し、その意匠登録は無効とすべきものであるとの理由であり、具体的には以下のとおりである。
「引用意匠
以下のウェブサイトに掲載された「レールジャッキ」の意匠
表題 国鉄 アンティーク レール ジャッキ 約16キログラム 高さ約19センチ 長さ約35 幅約15(その他)|売買されたオークション情報、yahooの商品情報をアーカイブ公開-オークファン(aucfan.com)
媒体のタイプ [online]
公開年月日 2022年11月24日
検索日 2025年10月17日
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス https://aucview.aucfan.com/yahoo/p1072928437
なお、落札情報の「開始日時」に記載された年月日を公開年月日としています。
1 意匠に係る物品
本件登録意匠の意匠に係る物品は「ジャッキ」であり、引用意匠の意匠に係る物品は「レールジャッキ」であり、表記は異なるものの、いずれも鉄道保線作業に用いるジャッキであるため、本件登録意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致します。
2 両意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)
両意匠の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点があります。
なお、引用意匠の認定に際しては、本件登録意匠と同じ向きとして認定します。
(1)共通点
ア 全体の形状等について、両意匠は、レールを持ち上げるためのラックトウやヘッド、それを解除するペダルを組み込んだジャッキ機構部を左右のサイドプレートで挟み、上方に取っ手を付け、サイドプレートとベース板を左右のアングル材で固定し、左側サイドプレートにハンドルバー差し込み部を備えたラチェットボックスを設け、右側サイドプレートにギアケースを備えている点、
イ ラックトウについて、平面視略逆台形状であり、上面側に斜め格子状の溝が切られている点、
ウ ヘッドについて、平面視略矩形状であり、上面中央に直線状の1本の溝が切られている点、
エ ペダルについて、平面視略矩形状の板状体の下面に、側面視略平行四辺形状の板状体でジャッキ機構部と接続している点、
オ 左右のサイドプレートについて、側面視略変形五角形状であり、上方両端部でジャッキ機構部とボルト止めし、下方中央部でアングル材とボルト止めしている点、
カ 取っ手について、正面視略倒コ字状であり、左右サイドプレートの上方中央に可動状態で取り付けられている点、
キ ラチェットボックスについて、左側面視略倒トラック形状であり、上辺側に略円筒形状からなるハンドルバー差し込み部を備えている点、
ク ギアケースについて、右側面視略左傾トラック形状であり、右方と下方の2ヶ所でサイドプレートと固定している点、
ケ アングル材について、正面視略L字状の板状体であり、垂直面の正面側を約45度の傾斜角度でカットし、ベース板との固定用に水平面に3つのナットを等間隔に設けている点、
コ ベース板について、ラックトウ側の両端部を斜めにカットした、底面視略縦長六角形の板状体であり、左右両辺近傍にサイドプレートとの固定用に6つのマイナスボルトを等間隔に設けている点、
において共通します。
(2)相違点
ア 全体の形状等について、本件登録意匠は、線図のみで表されており、色彩及び模様はないのに対して、引用意匠は、全体が錆びている状態ですが、ジャッキ機構部、左右サイドプレート、ギアケース及びアングル材には残色の薄黄色や濃青色が施されおり、また、ラチェットボックスは濃黄色となっている点、
イ ベース板について、本件登録意匠は、側面視水平方向に平坦であるのに対して、引用意匠は、ラックトウ側端部が上方に反った状態である点、
ウ ハンドルバーについて、本件登録意匠は、略細長円柱状のハンドルバーが、ラチェットボックスのハンドルバー差し込み部に差し込まれているのに対して、引用意匠は、ハンドルバーがない点、
において相違します。
(3)両意匠の形状等の共通点及び相違点の評価
ア 共通点の評価
両意匠は、鉄道保線作業時にレール等を持ち上げる際、ラックトウをレールの下方に設置しやすいように、ベース板やアングル材を斜めにカットする等、作業効率を念頭においた全体形状となっており、共通点アは全体の骨格を形成し、視覚的なまとまりを与え、両意匠の類否判断に支配的影響を及ぼすものであり、また、共通点イから共通点コの各部の形状についても、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものです。
イ 相違点の評価
相違点アについて、両意匠は模様及び色彩の有無に関する違いはあるものの、その違いは類否判断に与える影響は小さいものです。相違点イについて、引用意匠のベース板の反り具合もわずかであり、類否判断に与える影響は小さいものです。相違点ウについて、引用意匠はハンドルバーがない状態のレールジャッキですが、ハンドルバーを嵌入するためのハンドルバー差し込み部を備えており、また、レールジャッキの運搬性を考慮してハンドルバーを取り外し可能とすることは、下記参考意匠のように、この分野においては本件登録意匠の出願前から普通に行われており、本件登録意匠のハンドルバー自体もありふれた略細長円柱状であることから、類否判断に与える影響は小さいものです。
参考意匠(別紙第3参照)
以下のウェブサイト(Youtube.com)に掲載された「レールジャッキ」の意匠
表題 レール扛上装置(豆ジャッキ レールジャッキ)
媒体のタイプ [online]
公開年月日 2019年2月16日
検索日 2025年10月22日
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス https://www.youtube.com/watch?v=3NV7xRgoZf4
3 両意匠の類否判断
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、形状等においても、共通点が両意匠の類否判断に与える影響は決定的に大きいものであるのに対して、相違点が両意匠の類否判断に与える影響は、共通点のそれを凌駕するほどではなく、意匠全体として見た場合、両意匠は、需要者に共通する美感を与えているため、本件登録意匠は引用意匠に類似します。」
第8 当審の判断
(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、前記第7 1のとおりである。
(2)両意匠の形状等
共通点、相違点及びその評価は、前記第7 2のとおりである。
(3)両意匠の類否判断
前記第7 3のとおりであって、本件登録意匠は引用意匠に類似する。
第9 むすび
以上のとおり、本件登録意匠は、引用意匠に類似するものと認められ、意匠法第3条第1項第3号に該当し、同法同条同項の規定に違反して意匠登録されたものであるから、本件の意匠登録は、同法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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