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意匠無効審判

2025-880001

一組の遊戯娯楽用品セット

審判番号
2025-880001
法域
意匠
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
意願2024-004513外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
1775876
請求日
2025年02月25日
審決日
2026年04月27日
公報発行日
2026年09月25日
結論
請求成立(無効)
当事者
審判長/審判官
分類
D1113.121-Z (E2-2)
条文(本文から自動抽出・参考)
意匠法第3条第2項、意匠法第3条第1項第3号、意匠法第3条、意匠法第48条、意匠法第48条第1項第1号、意匠法第8条、意匠法第52条、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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上記当事者間の意匠登録第1775876号「一組の遊戯娯楽用品セット」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 意匠登録第1775876号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件意匠登録第1775876号の意匠(以下「本件登録意匠」という。別紙第1参照)は、令和6年(2024年)3月5日に意匠登録出願(意願2024-004513)されたものであって、同年6月25日付けで登録査定がなされ、同年7月11日に意匠権の設定の登録がされた後、同年7月22日に意匠公報が発行され、その後、当審において、概要、以下の手続を経たものである。 令和7年(2025年) 2月25日付け (意匠登録無効)審判請求書の提出 同年 5月19日 審尋の送付 同年 6月17日 審尋に対する回答書の提出 同年 8月 6日付け 請求書副本の送達通知の送付 同年 8月23日差出 答弁書(1回目)の提出 同年 8月25日差出 答弁書(2回目)の提出 同年 9月 9日差出 審判事件答弁書(3回目)の提出 同年 9月26日付け 答弁書副本の送付通知 同年 10月26日付け 上申書(被請求人)の提出 同年 11月 6日付け 上申書(請求人)の提出 同年 11月12日 書面審理通知書の送付 令和8年(2026年) 1月22日付け 無効理由通知書の送付 同年 1月22日付け 職権審理結果通知書の送付 同年 2月18日 意見書の提出(被請求人) 同年 4月 2日 審理終結通知書 第2 請求の趣旨及び理由 請求人は、令和7年(2025年)2月25日付けで審判請求書を提出し、請求の趣旨として「意匠登録第1775876号の意匠登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」とし、その理由として、要旨以下のとおり主張し、その主張事実を立証するため、甲第1号証から甲第44号証を提出した。 無効理由は、「本件登録意匠と甲4意匠は、意匠に係る物品が同一であり、形態においても、その共通点の類否判断に及ぼす影響が相違点のそれを凌駕するものであり、需要者に共通の美感を起こさせるものであるから、類似するものと認められる。」ものであって、意匠法第3条第1項第3号(新規性の欠如)規定により意匠登録を受けることができないものであり、かつ、「本件登録意匠は、その出願前に公知となった以下の意匠(順に甲11意匠、甲43意匠、甲44意匠という。)の形状を組み合わせたものにすぎず、当業者であれば容易に創作することができたものであり」、意匠法3条2項(創作非容易性)の規定により意匠登録を受けることができないものであり、いずれも、意匠法48条1項1号により、本件登録意匠は無効とすべきである、と主張した。 第3 審尋 審判長は、請求人に対し、審尋を行い、回答書にて具体的な説明を求め、請求人は回答した。 1 審尋 「審判請求人は、令和7年2月25日提出の審判請求書及び証拠において挙げたインターネット掲載情報やカタログなどの刊行物(甲第3号証~甲第44号証(甲第6号証を除く))について、いつ公知になったのかについて明示及び立証していません。これらの証拠についてインターネット掲載日や刊行物掲載日又は配布日等が本件登録意匠の出願日前であることを具体的な年月日又は年月又は年をもって明確にしてください。特に、主な引用例として挙げている甲第4号証、甲第5号証、甲第11号証、甲第43号証及び甲第44号証については、本件登録意匠の出願日前に公知であったことを根拠をもって明確にする必要があります。 その際、インターネット情報については、甲号証で挙げているページのリンク元の一覧(日付入りのニュースリリース記事など)がある場合は、それを補強証拠として提出したり、甲号証で挙げているページのインターネットアーカイブ(ウェイバックマシン)等を補強証拠として提出するなどして公知になった年月日を明確にしてください。」 2 回答書(請求人) 請求人は、合議体からの審尋に対して回答書を提出するとともに、甲第3号証~甲第44号証(甲第6号証を除く)の公知日と、それらに対する説明及び証拠の内容を、追加の証拠の提出と証拠説明書(2)により提出した。 第4 被請求人の答弁書及び理由 1 答弁書(令和7年8月23日差出) 被請求人は、答弁書において要旨以下のとおり主張した。 請求人は、本件登録意匠(意匠登録第1775876号)が意匠法第3条第1項第3号(新規性の欠如)及び同法第48条第1項第1号により無効とすべきであると主張するが、以下に述べる理由により、請求人の主張は失当であり、本件審判請求は成り立たないと述べた。 本件登録意匠の特徴として、本件登録意匠は、「一組の遊戯娯楽用品セット」に係る意匠であり、全体構成、麻雀卓の特徴的形状、椅子の特徴、サイドテーブルの構成といった特徴的な構成を有していると述べた。 引用意匠との相違点として、甲第4意匠(2023年の麻雀店風景)との相違、その他の引用意匠との組み合わせについて述べた。 さらに、甲第4意匠の技術的不備の詳細分析として、画像解析技術による科学的検証、色彩・濃度解析による材質判別不可能性、三次元形状復元の技術的限界、デジタル画像の証拠能力に関する技術的考察、信号処理理論による情報量解析、意匠審査基準との適合性分析、統計的解析による証拠価値の定量評価、機械学習による自動判別実験、光学測定による物理的検証不可能性、技術的結論について述べ、本件登録意匠が「一組の遊戯娯楽用品セット」として統一的美感を創出していること及び風俗営業法上の規制との関係についても述べた。 具体的な構成態様における相違点の詳細については、麻雀卓の特徴、椅子の特徴、サイドテーブルの特徴を述べ、意匠の統一性と独創性について述べた。 そして、類似事案における審決傾向として、意匠無効審判における一般的傾向や本件との類似性について述べた。 また、請求人の適格性に関する疑義として、請求人組織の性格について、利益相反の可能性、請求の客観性に対する疑念について述べ、結論として、請求人が主張する意匠法第3条第1項第3号及び同法第48条第1項第1号による無効理由は、いずれも理由がなく、本件審判請求は棄却されるべきであるとした。 (2)答弁書(令和7年8月25日差出) 被請求人は、答弁書において要旨以下のとおり主張し、その主張を立証するため、乙第1号証から乙第3号証を提出した。 第1 請求人適格性に関する重大な疑義として、組織的意思決定の根本的瑕疵、構成員の適格性に関する致命的問題について述べた。 第2 新規性に関する請求人の自己矛盾として、請求人組織自身が本件登録意匠を「ごく一般的な様式」と認定している。これは新規性を否定する発言であり、請求人の主張と根本的に矛盾すると述べた。 第3 刹益相反による手続き公正性の重大な阻害として、経済的利益相反、組織的威信回復の動機、民法上の権利濫用該当性について述べた。 第4 証拠の信頼性に関する重大な問題として、デジクル証拠の欠陥、現在性の欠如について述べた。 第5 本件登録意匠の新規性・創作性として、特徴的構成、統一的美感について述べた。 第6 業界内混乱と社会的影響として、業界内信頼の失墜、制度悪用の社会的弊害について述べた。 第7 審理中止の必要性として、緊急性、公益上の考慮について述べた。 第8 結論として、本件審判請求は次の致命的欠陥を有する。 ・請求人適格性の欠如(代表者の「無責任」発言、自組織否定) ・構成員の違法性(風営法違反、無許可営業) ・新規性の自己否定(全雀連自身の「ごく一般的な様式」認定) ・利益相反による権利濫用 ・証拠の信頼性欠如(改ざん可能性、原本性欠如) ・業界内信頼の失墜 ・制度悪用の明確な意図 したがって、本件審判請求は棄却されるべきであり、適正な制度運用のため直ちに審理を中止する必要があると述べた。 (3)審判事件答弁書(令和7年9月9日差出) 被請求人は、審判事件答弁書において要旨以下のとおり主張し、その主張を立証するため、乙第5号証を提出した。 請求人主張に対する認否及び反駁の概要として、請求人は、本件登録意匠について意匠法第3条第1項第3号(新規性欠如)及び同法第3条第2項(創作非容易性欠如)を理由として無効審判を請求しているが、以下に詳述するとおり、請求人の主張は証拠の不備、立証の欠如、法的要件の誤解に基づくものであり、いずれも理由がないと主張した。 主要証拠である甲第4号証の致命的欠陥と証拠能力の完全欠如として、製造者公式回答による決定的事実の判明、甲第4号証の複合的証拠価値欠如、検証不能性による証拠価値の絶対的否定について述べた。 また、甲第5号証による補完の論理的・法的不可能性として、請求人は甲第4号証の欠陥を甲第5号証(REXX III仕様書)により補完しようと試みているが、完全に失当であると述べた。 さらに、証拠の地域的極端偏重による全国的公知性の致命的立証不足として、請求人の自己矛盾と立証責任の放棄、統計的・定量的観点からの立証の完全失敗、請求人の組織的能力と立証活動の重大な乖離について述べた。 そして、創作容易性主張の根本的誤謬と論理的破綻として、組み合わせの動機・必然性の完全欠如と阻害要因の存在と併せて、本件登録意匠の技術的課題解決と独創的効果について述べた。 そして、本件登録意匠の独自性と革新性として、構造的独創性と機能美の融合、市場における高い評価と独自性の証明を述べた。 最後に、請求人の手続的瑕疵と審判請求の不当性として、証拠収集・提出における重大な憬、立証計画の根本的不備があると述べ、結論として、以上詳述したとおり、請求人の主張は、 1.主要証拠である甲第4号証が特定不能かつ検証不能で証拠価値を完全に欠く 2.全国的公知性の立証が地域的偏重により致命的に不十分 3.創作容易性の主張が論理的根拠を欠き、技術的にも不合理 4.手続的にも重大な瑕疵が存在 という複合的かつ致命的な欠陥を有しており、本件登録意匠は意匠法第3条第1項第3号及び同条第2項の要件を完全に満たす適法な登録意匠であり、請求人の本件無効審判請求は直ちに棄却されるべきであると主張した。 第5 書面審理 被請求人は、令和7年10月26日付けで提出した上申書において、書面審理を希望する旨申し出、請求人は、同年11月6日付けで上申書を提出し、書面審理を希望する旨申し出た。 当審は、本件審判について、請求人及び被請求人の申出に応じて、同年10月10日付けで書面審理に付する旨の通知を両当事者に通知した。 第6 当審の無効理由 当審は、請求人及び被請求人の主張について審理し、更に請求人が申し立てない理由についても審理したところ、本件登録意匠の意匠登録に無効理由を発見したので、その無効理由を、被請求人に対して、令和8年1月22付け無効理由通知書により通知し、期間を指定して意見書の提出を求めたところ、被請求人から同年2月18日に意見書の提出があった。 併せて、同無効理由を、請求人に対して、同年1月22日付け職権審理結果通知書により通知し、期間を指定して意見書の提出を求めたが、請求人からの応答はなかった。 1 無効理由通知書及び職権審理結果通知書 無効理由通知書及び職権審理結果通知書により通知した無効理由は、同内容であり、本件登録意匠は、下記に示すように、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(当業者)が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等(形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合)に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するから、本件は、同条同項の規定に違反して意匠登録されたものである。したがって、本件登録意匠は、意匠法第48条第1項第1号に該当し無効とすべきものであるとの理由であり、具体的には以下のとおりである。 「1 本件登録意匠 本件登録意匠は、令和6年(2024年)3月5日に意匠登録出願され、具体的には以下のとおりです。 (1)意匠に係る物品 本件登録意匠は、意匠に係る物品(以下「本物品」という。)を「一組の遊戯娯楽用品セット」とし、意匠に係る物品の説明によれば「本物品は、1つの麻雀卓と、4つの椅子と、4つのサイドテーブルからなる一組の遊戯娯楽用品セットである。麻雀卓は、麻雀牌の積み上げを機械的に行う自動麻雀卓である。椅子は、昇降機能付きであり、肘掛けとキャスターを備えている。サイドテーブルは、灰皿を備えている。麻雀卓、椅子およびサイドテーブルは、何れも高さ1メートル未満である。」と記載されています。 (2)本件登録意匠の構成、配置及び形状等 本件登録意匠の構成、配置及び形状等については、以下のとおりです。 ア 組物の意匠全体 (ア)構成物品 本件登録意匠は、脚付きテーブル状の麻雀卓(以下、「麻雀卓」という。)と、肘乗せ付き椅子(以下、「椅子」という。)と、3段棚型サイドテーブル(以下、「サイドテーブル」という。)によって構成されています。 (イ)配置態様(レイアウト) 本件登録意匠の全体の配置態様は、麻雀卓は、平面視略中央に1台を配置し、椅子は、麻雀卓の四辺に対峙し4脚を配置し、サイドテーブルは、麻雀卓の四つ角に4台を配置してします。 イ 各構成物品の形状等 (ア)麻雀卓 麻雀卓本体の形状は、天面は、略正方形で、中央から縁部までの略全面を略平坦面とし、縁部は、その略平坦面よりも上方に僅かに突出した細幅帯状で平坦面の四方を囲っており、縁部上面には、各辺の右寄りに略長方形の窪み部を設けいています。側面は、上方から下方に向けて、まず、縦幅の狭い僅かに外側に張り出す面(以下「側面上部面」という。)を構成したあと、縦幅の広い暫時絞り込む面(以下「側面下部面」という。)を構成しており、各辺の側面上部面及び側面下部面、それぞれの略中央に、略矩形状の枠線が施されています。脚部は、本体底面中央から下部へ延び、設置面部(以下「ベース部」という。)を十字脚としていますが、本体底面中央からベース部に至る縦脚部の形状は、図面に表されていません。 大きさは、平面視、本体の一辺の長さと、脚部を含む天面までの高さが、約1:0.7であり、色彩は、施されていません。 (イ)椅子 椅子の形状は、座面及び背もたれ面は略矩形で、肘乗せ部は、椅子を側面から見たときに、略カタカナの「ア」の字状に形成し、背もたれ側部の中段から座面側部の中央に接続しています。脚部は、座面裏の略中央部から垂直に一脚が下方に延び、ベース部を5本足としています。 大きさは、略正方形の座面幅と、下端から背もたれ上端までの高さ及び下端から座面までの高さが、約1:2:0.9であり、色彩は施されていません。 (ウ)サイドテーブル サイドテーブルの形状は、平面視において天板は、約1/4円形で、天板と同型同大の板体を中段と下段に、三つ角近傍に配した略円柱形の柱を介して略等間隔に配し、天板の頂点寄りに平面視円形の灰皿を設けています。 大きさは、天板の直線辺の長さと、下端から天板までの高さが、約1:0.8であり、色彩は、施されていません。 2 引用意匠 (1)引用意匠1(別紙第2参照) 引用意匠1は、雀荘を紹介する記事が掲載されたWebページであり、雀荘の室内写真が公開されています。 本Webページでは、雀荘と言われる遊戯娯楽施設内の様子が複数表されており、いずれも、遊戯娯楽用品セットとして、麻雀卓を平面視略中央に1台を配置し、椅子を麻雀卓の四辺に対峙し4脚を配置し、サイドテーブルを麻雀卓の四つ角に4台を配置している様子が掲載されています。 (2)引用意匠2(別紙第3参照) ア 意匠に係る物品 引用意匠2の意匠に係る物品は、麻雀卓です。 イ 形状等 麻雀卓本体部の形状等は、天面は、略正方形で、中央から縁部までの略全面を略平坦面とし、縁部は、その略平坦面よりも上方に僅かに突出した細幅帯状で平坦面の四方を囲っており、縁部上面には、各辺の右寄りに略長方形の窪み部を設けいています。側面は、上方から下方に向けて、まず、僅かに外側に張り出す側面上部面を構成したあと、暫時絞り込む側面下部面を構成し、各辺の側面略中央に、略矩形状の枠線が施されています。脚部は、本体底面中央から略円柱形の一脚が下部へ延び、ベース部をキャスター付き十字脚としています。 大きさは、平面視、本体の一辺の長さと、脚部を含む天面までの高さが、約1:0.7であり、色彩は、天面が緑色で、側面は黒色で、脚部は銀色です。 (3)引用意匠3(別紙第4参照) ア 意匠に係る物品 引用意匠3の意匠に係る物品は、椅子です。 イ 形状等 椅子本体部の形状は、座面及び背もたれ面は略角丸矩形で、背もたれ表面に縦横2本ずつの筋模様が施されており、肘乗せ部は、椅子を側面から見たときに、略カタカナの「ア」の字状に形成し、背もたれ側部の中段から座面側部の中央に接続しています。脚部は、座面裏の略中央部から垂直に一脚が下方に延び、ベース部をキャスター付き5本足としています。 大きさは、略正方形の座面幅と、下端から背もたれ上端までの高さ及び下端から座面までの高さが、約1:1.5:0.9であり、色彩は座面及び背もたれの表面が灰色で、その他は黒色です。 (4)引用意匠4(別紙第5参照) ア 意匠に係る物品 引用意匠4の意匠に係る物品は、サイドテーブルです。 イ 形状等 サイドテーブルの形状は、平面視において天板は、約1/4円形で、天板と同型同大の板体を中段と下段に、三つ角近傍に配した略円柱形の柱を介して略等間隔に配し、天板の頂点寄りに平面視円形の灰皿を設けています。 大きさは、天板の直線辺の長さと、下端から天板までの高さが、約1:1.3であり、色彩は、各棚の天面は白色で、各棚の縁部及びキャスターは黒色で、灰皿と柱部は銀色です。 3 本件登録意匠の創作性について この種物品分野において、前記「1(2)ア」の構成物品及び配置態様とするものは、広く知られています(例えば引用意匠1参照)。 また、組物を構成する麻雀卓については、前記「1(2)イ(ア)」の形状等としたものは、引用意匠2のように公然知られており、椅子については、前記「1(2)イ(イ)」の形状等としたものは、引用意匠3のように公然知られており、サイドテーブルについても、前記「1(2)イ(ウ)」の形状等としたものは、引用意匠4のように公然知られています。 そうすると、本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前に広く知られた構成物品及び配置態様の遊戯娯楽用品セットとして、麻雀卓、椅子及びサイドテーブルで構成し、麻雀卓は、平面視略中央に1台を配置し、椅子は、麻雀卓の四辺に対峙し4脚を配置し、サイドテーブルは、麻雀卓の四つ角に4台を配置し、各構成物品として、引用意匠2に見られる麻雀卓をほとんどそのまま配し、引用意匠3に見られる椅子を略そのまま配し、引用意匠4に見られるサイドテーブルをほとんどそのまま配して構成したに過ぎないものですから、当業者にとって、容易に創作できたものといわざるを得ません。 したがって、本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前に公然知られたと認められる引用意匠2から引用意匠4の形状等に基づき、それらを広く知られた配置態様(例えば、引用意匠1)としたまでのものであって、その創作に着想の新しさないし独創性があるとはいえず、特筆すべき創意は認められないものですから、当業者であれば、容易に創作をすることができたものと認められます。 なお、各構成物品において、本件登録意匠と引用意匠の形状等は、完全に一致するものではありませんが、相違する点については、当業者であれば容易に創作をすることができる軽微な改変にすぎないものであるところ、この点についても創作性を認めることはできません。 【引用意匠1】 著者の氏名 麻雀用品レビューサイト 麻雀グッズ研究所 表題 【西麻布のRTD!】個室雀荘のおすすめまとめ!セレブ打ちの高級雀荘の値段や立地を紹介|麻雀グッズ研究所 掲載箇所 記事内に表される遊戯具セットの写真(遊戯具セットが表れる室内写真) 媒体のタイプ [online] 掲載年月日 2022年7月20日 情報の情報源 インターネット 情報のアドレス URL:https://mahjong-item.jp/post-921/ に掲載された遊戯具セットの意匠 【引用意匠2】 著者の氏名 インターネットアーカイブ(麻雀用具専門店) 表題 麻雀用具専門店 / 全自動麻雀卓「Newスパイダー#CZ」 掲載箇所 製品写真欄 媒体のタイプ [online] 掲載年月日 2022年7月4日 情報の情報源 インターネット 情報のアドレス URL: https://web.archive.org/web/20220704115102/http://www.e-mahjong.co.jp/eccube/html/products/detail/4 に掲載された麻雀卓の意匠 【引用意匠3】 著者の氏名 Youtube 表題 【いくつ知ってる?】業務用麻雀用椅子のおすすめと新作を全 部見せてもらってきた!(マツオカさん動画第3弾) - YouTube 掲載箇所 0:21及び2:14~3:16椅子:製品名「ミランダ」 5:15~7:35サイドテーブル 媒体のタイプ [online] 掲載年月日 2023年2月25日 情報の情報源 インターネット 情報のアドレス URL: https://www.youtube.com/watch?v=J5QnfhBd6fg&t=33s に掲載された椅子の意匠 【引用意匠4】 著者の氏名 インターネットアーカイブ(株式会社ささき商事) 表題 サイドテーブルTS3-240 灰皿付【送料無料】【4本組購入が更にお得】 / 全自動麻雀卓、手打ち麻雀卓の販売・修理専門店のささき 掲載箇所 製品写真が掲載されている写真欄 媒体のタイプ [online] 掲載年月日 2021年9月25日 情報の情報源 インターネット 情報のアドレス URL: https://web.archive.org/web/20210925142832/https://www.sasaki-mj.co.jp/products/detail/882 に掲載された灰皿付サイドテーブルの意匠」 2 意見書(被請求人) 被請求人は、無効理由通知書に対して意見書を提出し、要旨以下のとおり主張した。 「第1 意見の趣旨 本件登録意匠(意匠登録第1775876号)は、意匠法第3条第2項の規定に該当するものではなく、無効とすべきものではない。 第2 意見の理由 1.本件登録意匠について 本件登録意匠は、意匠に係る物品を「一組の遊戯娯楽用品セット」とし、1つの麻雀卓と、4つの椅子と、4つのサイドテーブルからなる組物の意匠である。本件登録意匠は、各構成物品の形状、模様、色彩及び配置態様において、組物全体として統一的な美感を形成しており、単なる既存物品の寄せ集めではない。 2.本件通知書の無効理由の要旨 本件通知書は、本件登録意匠が、引用意匠1ないし4に基づいて、当業者が容易に創作をすることができたものであるとして、意匠法第3条第2項の規定に該当すると認定している。具体的には、構成物品及び配置態様が引用意匠1により公然知られており、麻雀卓の形状は引用意匠2、椅子の形状は引用意匠3、サイドテーブルの形状は引用意匠4によりそれぞれ公然知られているとし、これらを組み合わせて本件登録意匠を容易に創作できたと結論付けている。 しかしながら、以下に述べるとおり、本件通知書の認定は誤りであり、本件登録意匠には創作非容易性が認められるべきである。 3.組物全体としての統一的美感について (1)組物の意匠における創作性の判断基準 意匠法第8条は、組物の意匠について、組物全体として統一があるときに一意匠として出願できる旨を規定している。組物の意匠の創作非容易性を判断するに際しては、個々の構成物品の形状のみならず、組物全体としての統一的な美感の有無及びその程度を十分に考慮すべきである。 すなわち、個々の構成物品が公知であったとしても、それらを特定の態様で組み合わせることによって生じる組物全体としての統一的な美感に創作性が認められる場合には、意匠法第3条第2項に該当しないと解すべきである。 (2)本件登録意匠の統一的美感 本件登録意匠は、以下の点において、組物全体として高度な統一的美感を実現している。 ア 形態的統一性 本件登録意匠においては、麻雀卓、椅子及びサイドテーブルのすべてが、高さ1メートル未満に統一されている。また、各構成物品は、いずれもキャスターを備えており、脚部の形態に統一感がある。さらに、色彩が施されていない(無彩色)点においても統一性が保たれている。 イ 配置態様の美的統一性 本件登録意匠の配置態様は、麻雀卓を中央に配置し、椅子を麻雀卓の四辺に対峙させて4脚配置し、サイドテーブルを麻雀卓の四つ角に4台配置するものである。この配置は、平面視において略正方形の麻雀卓を中心とした対称的かつ幾何学的な構成を形成しており、組物全体として整然とした美感を呈している。 ウ 各構成物品間のプロボーションの調和 本件登録意匠においては、麻雀卓の平面視の一辺の長さと天面までの高さの比、椅子の座面幅と背もたれ上端までの高さの比、サイドテーブルの天板の直線辺の長さと天板までの高さの比が、それぞれ適切に設定されており、組物全体として調和のとれたプロポーションを実現している。 (3)引用意匠1との相違 本件通知書は、引用意匠1(麻雀グッズ研究所のWebページ)により構成物品及び配置態様が公然知られていたとするが、引用意匠1に掲載されている各雀荘の室内写真は、単に雀荘の室内の様子を撮影したものにすぎず、麻雀卓、椅子及びサイドテーブルが統一的なデザインコンセプトの下に組み合わせられた「組物の意匠」として認識されるものではない。 引用意匠1の各写真においては、椅子やサイドテーブルの種類・形状・色彩がまちまちであり、本件登録意匠のような統一的な美感は認められない。したがって、引用意匠1をもって本件登録意匠の組物全体としての統一的美感が公知であったとすることは相当でない。 4.各構成物品の具体的な形状の相違について 本件通知書は、各構成物品の形状の相違について「当業者であれば容易に創作をすることができる軽微な改変にすぎない」と判断しているが、以下に述べるとおり、その相違は軽微なものとはいえない。 (1)麻雀卓について(本件登録意匠と引用意匠2との対比) 本件通知書は、引用意匠2として全自動麻雀卓「Newスパイダー#CZ」を引用している。しかしながら、本件登録意匠の麻雀卓と引用意匠2には、以下の具体的な相違がある。 ア 本件登録意匠の麻雀卓の脚部は、本体底面中央からベース部に至る縦脚部の形状が図面に表されているのに対し、引用意匠2は十字脚にキャスター付きの形態であり、脚部の構造及び視覚的印象が大きく異なる。 イ 本件登録意匠の麻雀卓は、側面において「側面上部面」と「側面下部面」の二段構成を有し、各辺の側面上部面及び側面下部面に略矩形状の枠線が施されているのに対し、引用意匠2にはこのような特徴的な側面の処理は見られない。 ウ 本件登録意匠の麻雀卓の天面は、中央から縁部までの略全面を略平坦面とし、縁部がその略平坦面よりも上方に僅かに突出した細幅帯状で平坦面の四方を囲っているのに対し、引用意匠2の天面の縁部の処理は異なる態様となっている。 エ 本件登録意匠の麻雀卓は色彩が施されていないのに対し、引用意匠2は天面が緑色、側面が黒色、脚部が銀色であり、色彩構成が全く異なる。 これらの相違は、看者に異なる美感を起こさせるものであり、単なる軽微な改変にととまるものではない。 (2)椅子について(本件登録意匠と引用意匠3との対比) 本件通知書は、引用意匠3としてYouTube動画に登場する椅子「ミランダ」を引用している。しかしながら、以下の相違がある。 ア 本件登録意匠の椅子は、座面及び背もたれ面が略矩形であるのに対し、引用意匠3の椅子の座面及び背もたれ面は略角丸矩形であり、全体の印象が異なる。 イ 引用意匠3の椅子は、背もたれ表面に縦横2本ずつの筋模様が施されているのに対し、本件登録意匠の椅子にはそのような模様は施されていない。 ウ 本件登録意匠の椅子の大きさの比率(座面幅:背もたれ上端までの高さ:座面までの高さ=約1: 2: 0.9) と、引用意匠3の椅子の比率(約1: 1.5: 0.9) は異なっており、看者に与えるプロポーションの印象が相違する。 エ 本件登録意匠の椅子は色彩が施されていないのに対し、引用意匠3の椅子は座面及び背もたれの表面が灰色で、その他は黒色であり、色彩構成が異なる。 (3)サイドテーブルについて(本件登録意匠と引用意匠4との対比) 本件通知書は、引用意匠4として「サイドテーブルTS3-240」を引用している。 しかしながら、以下の相違がある。 ア 本件登録意匠のサイドテーブルは、天板の直線辺の長さと下端から天板までの高さの比が約1: 0.8であるのに対し、引用意匠4は約1: 1.3であり、本件登録意匠の方がより横長で安定感のある印象を与える。 イ 本件登録意匠のサイドテーブルは色彩が施されていないのに対し、引用意匠4は天面が白色、縁部及びキャスターが黒色、灰皿及び柱部が銀色であり、色彩構成が異なる。 ウ 柱の配置、棚板の形状及び灰皿の位置等の具体的態様においても、両者には相違が認められる。 5.引用意匠の証拠としての適格性について (1)引用意匠1について 引用意匠1は、麻雀用品レビューサイト「麻雀グッズ研究所」に掲載された雀荘紹介記事であり、雀荘の室内写真が掲載されているものである。しかしながら、以下の点において、本件登録意匠の創作容易性を立証する証拠としては不十分である。 ア 引用意匠1の写真は、いずれも雀荘の室内全体を撮影したものであり、麻雀卓、椅子及びサイドテーブルの個々の形状を正確に把握することが困難である。特に、斜め方向からの撮影が多く、各構成物品の正面図、平面図、側面図等に相当する形状情報を読み取ることができない。 イ 引用意匠1の各写真に写っている麻雀卓、椅子及びサイドテーブルは、それぞれ異なる製品であり、統一的なデザインの下に組み合わされたセットとして認識されるものではない。すなわち、引用意匠1は、構成物品の配置態様を示す証拠とはなり得ても、特定の形状を有する構成物品による組物の意匠の公知性を示す証拠としては不十分である。 (2)引用意匠2について 引用意匠2は、Internet Archiveにアーカイブされた麻雀用具専門店のWebページである。Internet Archiveのアーカイブは、元のWebページの正確な複製である保証がなく、掲載年月日の認定にも慎重を要する。本件では、アーカイブ日が2022年7月4日とされているが、元のWebページの実際の公開日・掲載日を別途確認する必要がある。 また、引用意匠2に掲載されている麻雀卓「Newスパイダー#CZ」は、販売促進を目的とした商品写真であり、写真の撮影角度やライティングにより、実際の形状と異なる印象を与えている可能性がある。正確な形状の対比のためには、六面図等の正確な形状資料が必要であるが、引用意匠2にはそのような資料は含まれていない。 (3)引用意匠3について 引用意匠3は、YouTube動画の特定のタイムスタンプ(0:21及び2:14~3:16)における椅子の映像である。動画は静止画と異なり、視点が常に移動しており、特定の時点のフレームのみから椅子の正確な形状を把握することは困難である。特に、椅子の製品名を「ミランダ」と特定しているが、当該動画から「ミランダ」の正確な六面図相当の形状情報を得ることはできない。 さらに、動画は2023年2月25日掲載とされているが、本件登録意匠の出願日は令和6年(2024年)3月5日であり、時間的な先後関係は認められるものの、動画に映る椅子が実際にいつから公然知られていたかの立証としては、動画の掲載日のみでは不十分である可能性がある。 (4)引用意匠4について 引用意匠4も引用意匠2と同様にInternet Archiveのアーカイブであり、同様の信頼性の問題がある。加えて、アーカイブ日は2021年9月25日とされているが、元のWebページの掲載日及びその後の更新状況は不明であり、アーカイブ時点のWebページの内容が実際にアーカイブ日当日に公衆に利用可能であったかは別途検討を要する。 6.創作非容易性について 意匠法第3条第2項にいう「容易に意匠の創作をすることができた」とは、当業者が公知の形状等又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた場合をいうものである。しかし、その判断に際しては、引用意匠との相違点のみならず、組物の意匠においては組物全体としての統一的な美感の創出に向けた創作的工夫の有無を総合的に考慮すべきである。 本件登録意匠は、前述のとおり、以下の創作的工夫を有するものである。 第一に、麻雀卓、椅子及びサイドテーブルの各構成物品について、色彩を施さず、高さを1メートル未満に統一し、いずれもキャスターを備えるという形態的統一性を付与している。 第二に、麻雀卓を中央に、椅子を四辺に、サイドテーブルを四つ角に配置するという、幾何学的な対称性を有する配置態様を採用し、組物全体として整然とした美感を創出している。 第三に、各構成物品の具体的な形状について、引用意匠2ないし4とは異なる独自の形状を採用しており、その相違は当業者が容易に想到し得る軽微な改変にとどまるものではない。 これらの創作的工夫は、個々の構成物品を単に寄せ集めただけでは実現し得ないものであり、組物全体としてまとまりのある統一的な美感を創出するための、被請求人の独自の創作的着想に基づくものである。 したがって、本件登録意匠は、引用意匠1ないし4に基づいて当業者が容易に創作をすることができたものではなく、意匠法第3条第2項の規定に該当しない。 第3 結語 以上のとおり、本件登録意匠は、組物全体としての統一的美感において独自の創作性を有しており、各構成物品の形状においても引用意匠との間に看者に異なる美感を起こさせる具体的な相違が存在する。また、引用意匠の証拠としての適格性にも疑義がある。 よって、本件登録意匠は意匠法第3条第2項の規定に該当するものではなく、無効とすべきものではないから、本件通知書の無効理由は理由がないものと思料する。」 第7 当審の判断 当審の無効理由について検討し判断する。 1 本件登録意匠 前記第6 1「1 本件登録意匠」のとおりである。 2 引用意匠 前記第6 1「2 引用意匠」のとおりである。 3 本件登録意匠の創作性について 前記第6 1「3 本件登録意匠の創作性について」のとおりである。 4 被請求人の主張について 被請求人が意見書において主張する内容について、以下検討する。 (1) 被請求人は、「組物の意匠の創作非容易性を判断するに際しては、個々の構成物品の形状のみならず、組物全体としての統一的な美感の有無及びその程度を十分に考慮すべきである。 すなわち、個々の構成物品が公知であったとしても、それらを特定の態様で組み合わせることによって生じる組物全体としての統一的な美感に創作性が認められる場合には、意匠法第3条第2項に該当しないと解すべきである。」(前記第6 2「3.(1)組物の意匠における創作性の判断基準」)と主張する。 なるほど、公知の意匠の組み合わせ、配置によって、組物全体として統一的な美感が生じ得ることは、一般論として当審も否定しないが、本件登録意匠は、前記第6 1で示すように、単に公知意匠(引用意匠2から引用意匠4)を寄せ集め、既知の配置(引用意匠1)で並べたにすぎず、組物全体としての特筆すべき意匠的特徴もないから、当該公知意匠及び既知の配置を選択したこと自体に創作上の困難性は認められない。 したがって、本件登録意匠は、本願出願前に公知であった意匠を、寄せ集めて構成したに過ぎないものであり、たとえ組物の要件として、組物全体としての統一があると認められたとしても、登録の要件(意匠法第3条第2項)に照らした場合には、単に既知の意匠を、既知の配置に並べて、組物としたまでであって、組物全体として、何ら格別な創作は見いだせず、容易に創作できたものと言わざるを得ないから、当該主張は採用することができない。 (2)「本件登録意匠においては、麻雀卓、椅子及びサイドテーブルのすべてが、高さ1メートル未満に統一されている。また、各構成物品は、いずれもキャスターを備え ており、脚部の形態に統一感がある。さらに、色彩が施されていない(無彩色)点 においても統一性が保たれている。」(前記第6 2「3.(2)本件登録意匠の統一的美感 ア 形態的統一性」)と主張する。 しかしながら、麻雀店で使用する什器設備類については、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律2条4号」、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則7条(構造及び設備の技術上の基準) 8 構造及び設備の技術上の基準(1) 」及び「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準(警察庁生活安全局)」において、麻雀店では、客室の内部に見通しを妨げる設備(高さがおおむね1メートル以上のもの)を設けないことが規定されていることから、什器類の高さが1メートル未満で統一されることは、麻雀店においては当然満たされる統一基準であって、この点に意匠の統一性が表れているものとは認められず、創作性を見いだすことはできない。 また、キャスターを備えている点については、什器類にはキャスターを備えているものも、備えていないものも、例を挙げるまでもなく当然存在しており、全ての什器類にキャスターを備えていることで統一したとしても、そのことだけで統一的な美感を与えられているとはいえず、格別の創作があったとはいえない。なお、本件登録意匠の麻雀卓は、図面によるとキャスターを備えているとはいえない。 さらに、色彩が施されていない点についても、本件登録意匠は、意匠図面として、色彩を施さない線図での表現を選択したに過ぎず、また、当業者のみならず需要者ですら、本願意匠が実際に製品となる際には、これらに何らかの着色がされると着想するから、この点に創作性を見いだすことはできず、当該主張は採用することができない。 (3)「本件登録意匠の配置態様は、麻雀卓を中央に配置し、椅子を麻雀卓の四辺に対峙させて4脚配置し、サイドテーブルを麻雀卓の四つ角に4台配置するものである。この配置は、平面視において略正方形の麻雀卓を中心とした対称的かつ幾何学的な構成を形成しており、組物全体として整然とした美感を呈している。」(前記第6 2「3.(2)本件登録意匠の統一的美感 イ 配置態様の美的統一性)」)と主張する。 しかしながら、被請求人が主張する本件登録意匠の各構成物品の配置は、引用意匠1で示した遊戯具セットの意匠に見られるものと一致しており、同配置態様は、公然知られているのだから、本件登録意匠の配置態様に創作性を見いだすことはできないし、公然知られた配置態様に基づいて容易に創作できたと言わざるを得ず、当該主張は採用することができない。 さらにいえば、そもそも、麻雀は、「東(トン)(親役)・南(ナン)・西(シャー)・北(ペイ)の場に着いた四人に各13個の牌を配し、各自がルールに従って牌の組み合わせを作って上がりを競うもの。(出典:小学館編集デジタル大辞泉、「マージャン【麻雀】」の項目)」であって、このように4人打ち麻雀の遊戯形態に従えば、麻雀卓の四辺に対峙させて椅子を4脚配置することは当然の配置であり、これにサイドテーブルを置く場合は、麻雀卓の四つ角以外にその余地はないから、これらの点に何ら格別な創作は見いだせない。 なお、統一的な美感を認定し得る例としては、組物個々の構成物品に共通する形状等が施されていたり、組物個々の構成物品を組み合わせた結果、何らかの模様が形成されるなどが想定されるが、本件登録意匠は、個々の構成物品とその組合せ及び配置によって何らの模様も形成されず、この観点における統一的な美感を看取することはできない。 (4)「本件登録意匠においては、麻雀卓の平面視の一辺の長さと天面までの高さの比、椅子の座面幅と背もたれ上端までの高さの比、サイドテーブルの天板の直線辺の長さと天板までの高さの比が、それぞれ適切に設定されており、組物全体として調和のとれたプロポーションを実現している。」(前記第6 2「3.(2)ウ 各構成物品間のプロポーションの調和」)と主張する。 しかしながら、各構成物品の寸法比率は、 麻雀卓は、平面視の一辺の長さと天面までの高さの比が、本件登録意匠及び引用意匠2のいずれも約1:0.7であり、 椅子は、略正方形の座面幅と、下端から背もたれ上端までの高さ及び下端から座面までの高さが、本件登録意匠は約1:2:0.9で、引用意匠3は約1:1.5:0.9であり、 サイドテーブルは、天板の直線辺の長さと、下端から天板までの高さが、本件登録意匠は約1:0.8で、引用意匠4は約1:1.3であって、 各々、比率の違いがあったとしても、その差は僅かであって、当業者であれば容易に創作をすることができる軽微な改変の範囲内にすぎず、創作性は見いだせないから、当該主張は採用することができない。 (5)「引用意匠1の各写真においては、椅子やサイドテーブルの種類・形状・色彩がまちまちであり、本件登録意匠のような統一的な美感は認められない。したがって、引用意匠1をもって本件登録意匠の組物全体としての統一的美感が公知であったとすることは相当でない。」(前記第6 2「3.(3) 引用意匠1との相違」)と主張する。 しかしながら、そもそも、引用意匠1は、各構成物品の配置が出願前に公然知られていた例であって、種類・形状・色彩の統一的な美感が公知であったことを示す例では無いことから、当該主張は前提を欠くものであって、採用することができない。 (6)「本件通知書は、各構成物品の形状の相違について「当業者であれば容易に創作をすることができる軽微な改変にすぎない」と判断しているが、以下に述べるとおり、その相違は軽微なものとはいえない。」(前記第6 2「4.各構成物品の具体的な形状の相違について」)と主張しているところ、 被請求人が述べる各構成物品の具体的な相違点について、以下検討する。 ア 麻雀卓(本件登録意匠と引用意匠2との対比)の相違点 (ア)「本件登録意匠の麻雀卓の脚部は、本体底面中央からベース部に至る縦脚部の形状が図面に表されているのに対し、引用意匠2は十字脚にキャスター付きの形態であり、脚部の構造及び視覚的印象が大きく異なる。」と主張するが、本体底面中央から下部へ延び、ベース部を十字脚とした態様は、本件登録意匠と引用意匠2とで共通しているから、この点は相違には当たらない。また、キャスターの有無について相違するが、軽微な改変に過ぎない。 (イ)「本件登録意匠の麻雀卓は、側面において「側面上部面」と「側面下部面」の二段構成を有し、各辺の側面上部面及び側面下部面に略矩形状の枠線が施されているのに対し、引用意匠2にはこのような特徴的な側面の処理は見られない。」と主張するが、本件登録意匠及び引用意匠2は、いずれも、側面に、上方から下方に向けて外側に張り出す面として、「側面上部面」と、「側面下部面」を構成している点で共通しており、枠線のみが相違するが、軽微な改変に過ぎない。 (ウ)「本件登録意匠の麻雀卓の天面は、中央から縁部までの略全面を略平坦面とし、縁部がその略平坦面よりも上方に僅かに突出した細幅帯状で平坦面の四方を囲っているのに対し、引用意匠2の天面の縁部の処理は異なる態様となっている。」と主張するが、本件登録意匠及び引用意匠2は、いずれも、天面は、略正方形で、中央から縁部までの略全面を略平坦面とする点で共通しており、縁部についても、その略平坦面よりも上方に僅かに突出した細幅帯状で平坦面の四方を囲っており、縁部上面には、各辺の右寄りに略長方形の窪み部を設けている点で共通しているから、形状は一致しているのであって、相違点には当たらず、軽微な改変に過ぎない。 (エ)「本件登録意匠の麻雀卓は色彩が施されていないのに対し、引用意匠2は天面が緑色、側面が黒色、脚部が銀色であり、色彩構成が全く異なる。」と主張するが、実施品は無色とすることはできないのだから、本件登録意匠が無色であるという理由で、有色の意匠と相違するという主張は成り立たない。そして、本件登録意匠は、意匠登録出願の図面の記載方法として色彩の無い線図を選択したまでだから、この点にも創作性はない。さらにいえば、引用意匠2に施されている色彩は、各部位を単色で塗り分けた程度であることから、引用意匠2を基にして、色彩を除いた図を作成し、麻雀卓の意匠とすることは、軽微な改変に過ぎない。 イ 椅子(本件登録意匠と引用意匠3との対比)の相違点 (ア)「本件登録意匠の椅子は、座面及び背もたれ面が略矩形であるのに対し、引用意匠3の椅子の座面及び背もたれ面は略角丸矩形であり、全体の印象が異なる。」と主張するが、略矩形状である点で共通しており、角の形状については、この種物品では、例を挙げるまでもなく、角丸にしているものも、していないものも、極普通に見られるから、この点は軽微な改変に過ぎない。 (イ)「引用意匠3の椅子は、背もたれ表面に縦横2本ずつの筋模様が施されているのに対し、本件登録意匠の椅子にはそのような模様は施されていない。」と主張するが、椅子やソファーなどの座面や背もたれ表面に筋模様を施しているものも、いないものも極普通に見られるから、この点は軽微な改変に過ぎない。 (ウ)「本件登録意匠の椅子の大きさの比率(座面幅:背もたれ上端までの高さ:座面までの高さ=約1:2:0.9)と、引用意匠3の椅子の比率(約1:1.5:0.9) は異なっており、看者に与えるプロポーションの印象が相違する。」と主張するが、比率の違いがあったとしても、その差は僅かであって、軽微な改変の範囲内に過ぎない。 (エ)前記第7 4(6)ア(エ)と同様。 ウ サイドテーブル(本件登録意匠と引用意匠4との対比)の相違点 (ア)「本件登録意匠のサイドテーブルは、天板の直線辺の長さと下端から天板までの高さの比が約1:0.8であるのに対し、引用意匠4は約1:1.3であり、本件登録意匠の方がより横長で安定感のある印象を与える。」と主張するが、比率の違いがあったとしても、その差は僅かであって全体のプロポーションを変更するほどの差はなく、軽微な改変の範囲内に過ぎない。 (イ)前記第7 4(6)ア(エ)と同様。 (ウ)「柱の配置、棚板の形状及び灰皿の位置等の具体的態様においても、両者には相違が認められる。」と主張するが、いずれも、詳細に見れば初めて気がつくほどの僅かな相違であるから、軽微な改変の範囲内にすぎず、創作性は見いだせないから、当該主張は採用することができない。 (7)「引用意匠1の写真は、いずれも雀荘の室内全体を撮影したものであり、麻雀卓、椅子及びサイドテーブルの個々の形状を正確に把握することが困難である。特に、斜め方向からの撮影が多く、各構成物品の正面図、平面図、側面図等に相当する形状情報を読み取ることができない。」、「引用意匠1は、構成物品の配置態様を示す証拠とはなり得ても、特定の形状を有する構成物品による組物の意匠の公知性を示す証拠としては不十分である。」(前記第6 2「5.(1)引用意匠1について ア」)と主張する。 しかしながら、引用意匠1は、麻雀卓、椅子及びサイドテーブルの個々の形状を正確に把握して、本件登録意匠との形状等の同一性を検討するための引用ではなく、各構成物品の配置態様を示すことを目的とする例示であることから、当該主張は採用することができない。 さらにいえば、斜め方向から撮影した写真でも、十分に構成物品の内容とその配置を確認することは可能であり、当該引用意匠を例示する目的に照らせば、構成物品を6図面等によって、形状等を詳細に明らかにする必要は無く、構成物品名とその配置態様を確認できれば、当該公知例としては足りることから、「証拠として不十分である」との主張は当たらない。 (8)「Internet Archiveのアーカイブは、元のWebページの正確な複製である保証がなく、掲載年月日の認定にも慎重を要する。」、「販売促進を目的とした商品写真であり、写真の撮影角度やライティングにより、実際の形状と異なる印象を与えている可能性がある。正確な形状の対比のためには、六面図等の正確な形状資料が必要であるが、引用意匠2にはそのような資料は含まれていない。」(前記第6 2「5.(2)引用意匠2について」)と主張する。 しかしながら、インターネットアーカイブによって表されるウェブページの画像及び年月日の正確性を疑うような事実は見あたらず、被請求人も何ら証拠を示していないことから、引用例として当該アーカイブに疑義はない。 また、引用意匠の写真が、斜視であったり、陰影がついていたりしたとしても、そこに表されている形状から、当業者の知識に基づいて総合的に判断した場合に、全体の態様は合理的に善解し得るものであるから、意匠の認定は可能である。 なお、当該引用意匠は、実際の製品ではなく、インターネットで公開された写真に表されている意匠であるから、たとえ、写真が実製品を忠実に再現できず、実際の形状と異なる印象を与えるものであったとしても、何ら判断に影響は与えないし、6面図等(写真含む)がなく、写真上、意匠を視認できない部分があるとしても、そのことから直ちに意匠が特定できないわけではなく、視認できる部分の内容を総合的に勘案し、当業者の立場から合理的、客観的に判断し、視認できず不明な点が、意匠の形状等の都合や、写真撮影の都合から生じるものであることが理解され、具体的に構成された統一性ある意匠を想定しうる場合には、合理的に想定される意匠をもって意匠を特定することが相当である。 したがって、当該主張は採用することができない。 (9)「動画は静止画と異なり、視点が常に移動しており、特定の時点のフレームのみから椅子の正確な形状を把握することは困難である。特に、椅子の製品名を「ミランダ」と特定しているが、当該動画から「ミランダ」の正確な六面図相当の形状情報を得ることはできない。」、「動画に映る椅子が実際にいつから公然知られていたかの立証としては、動画の掲載日のみでは不十分である可能性がある。」(前記第6 2「5.(3)引用意匠3について」)と主張する。 しかしながら、動画の中には、実物の意匠のみならず、当該意匠の斜視写真が掲載されている紙面のカタログが、ほぼ静止して写っており、十分に意匠を把握することが可能である。 また、掲載日(公開日)の正確性を疑うような事実は見あたらず、被請求人も何ら証拠を示していないことから、引用例として当該動画に疑義はなく、当該主張は採用することができない。 なお、6面図等の点については、上記と同じ。 (10)「本件登録意匠は、前述のとおり、以下の創作的工夫を有するものである。」、「色彩を施さず、高さを1メートル未満に統一し、いずれもキャスターを備えるという形態的統一性を付与し」、「幾何学的な対称性を有する配置態様を採用し、組物全体として整然とした美感を創出し」、「個々の構成物品を単に寄せ集めただけでは実現し得ないものであり、組物全体としてまとまりのある統一的な美感を創出するための、被請求人の独自の創作的着想に基づくもの」(前記第6 2「6.創作非容易性について」)と主張する。 しかしながら、上記のとおりであって、被請求人の主張は採用することができない。 そうすると、本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前に公然知られたと認められる引用意匠2から引用意匠4の形状等に基づき、それらを広く知られた配置態様(例えば、引用意匠1)としたまでのものであって、その創作に着想の新しさないし独創性があるとはいえず、特筆すべき創意は認められないから、当業者であれば、容易に創作をすることができたものと言わざるを得ない。 5 無効理由について 被請求人の主張はいずれも採用できず、無効理由についての判断は前記1から3のとおり、本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前に公然知られたと認められる引用意匠2から引用意匠4の形状等に基づき、それらを広く知られた配置態様(例えば、引用意匠1)としたまでのものであって、その創作に着想の新しさないし独創性があるとはいえず、特筆すべき創意は認められないものであるから、当業者であれば、容易に創作をすることができたものと認められ、意匠法第3条第2項の規定に該当し、同項の規定により意匠登録を受けることができないものである。 第8 むすび 以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法第3条第2項に該当し、同法同条同項の規定に違反して意匠登録されたものであるから、本件の意匠登録は、同法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2025-880001

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    共通の条文: 意匠法3条2項、意匠法48条1項1号、意匠法52条、民事訴訟法61条 ほか1件
  • 2022-880011無効審判 / 2024-03-26 / 請求成立(無効)レギンス
    共通の条文: 意匠法3条2項、意匠法48条1項1号、意匠法52条、民事訴訟法61条 ほか1件
  • 2020-880002無効審判 / 2021-02-19 / 請求不成立螺子廻し具
    共通の条文: 意匠法3条2項、意匠法48条1項1号、意匠法52条、民事訴訟法61条 ほか1件
  • 2020-880003無効審判 / 2021-02-19 / 請求不成立螺子廻し具
    共通の条文: 意匠法3条2項、意匠法48条1項1号、意匠法52条、民事訴訟法61条 ほか1件
  • 2019-880005無効審判 / 2021-02-17 / 請求不成立エプロン
    共通の条文: 意匠法3条2項、意匠法48条1項1号、意匠法52条、民事訴訟法61条 ほか1件

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