意匠無効審判
2025-880005
カード収納ケース
- 審判番号
- 2025-880005
- 法域
- 意匠
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 意願2024-006081外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 1794420
- 請求日
- 2025年05月29日
- 審決日
- 2026年03月02日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- D1113.113-Y (F2-7)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 意匠法第3条第1項第3号、意匠法第52条、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の意匠登録第1794420号「カード収納ケース」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件意匠登録第1794420号の意匠(以下「本件登録意匠」という。別紙第1参照)は、令和6年(2024年)3月6日に意匠登録出願(意願2024-6081)されたものであって、令和7年2月7日付けで登録査定がなされ、同年3月18日に意匠権の設定の登録がされた後、同年の3月27日に意匠公報が発行され、その後、当審において、概要、以下の手続を経たものである。
令和7年 5月29日 審判請求書の提出
同年11月 6日付け 請求書副本の送達通知
令和8年 1月 9日付け 書面審理通知書
第2 請求の趣旨及び理由
請求人は、令和7年5月29日に審判請求書を提出し、請求の趣旨として、「意匠登録第1794420号の意匠登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」とし、その理由として、要旨以下のとおり主張し、その主張事実を立証するため、甲第1号証から甲第6号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)手続の経緯
出願 令和6年3月6日
登録 令和7年3月18日
(2)意匠登録無効の理由の要点
本件登録意匠(意匠登録第1794420号)は、甲第1号証に示す意匠と視覚的、構造的に著しく類似するものであるため、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とされるべきである。
甲第1号証の意匠に係る商品は、本件登録意匠の出願日である2024年3月6日よりも前の2024年1月13日より、Amazon.co.jpにて公然と販売されており、その販売実績はFBA納品記録および注文履歴(甲第2号証)により裏付けられる。
さらに、出願日前に当該製品を購入した消費者によるレビュー・コメント等も複数確認されており(甲第6号証)、当該意匠が社会一般に認知されていた事実も明らかである。
これらの事実に基づけば、本件登録意匠は出願前に公知となっていた意匠と同一または類似であり、新規性を欠如していることは明白である。
(3)本件意匠登録を無効とすべき理由
イ 本件登録意匠の説明(要旨等)
本件登録意匠(意匠登録第1794420号)は、「カード収納ケース」を意匠に係る物品とし、前後にU宇型の開口部を有する直方体型の構造を特徴とする。縫製ライン(ステッチ)を外周に配した。左側面には矩形の「開口窓付きポケット」が設けられており、上部にはフリップ式蓋構造があり、内部にカードを収納可能なポケット型構造となっている。
ロ 甲第1号証の意匠の説明(要旨等)
甲第1号証は、請求人が2024年1月13日よりAmazon.co.jpにて販売していたカード収納ケースであり、同様に前後面にU字型の開口を持ち、縫製ライン(ステッチ)を外周に配した、機能的かつ装飾的な外観を有する。材質はPU皮革を用い、左側面には矩形の「開口窓付きポケット」が設けられており、上部にはフリップ式蓋構造があり、内部にカードを収納可能なポケット型構造となっている。
ハ 本件登録意匠と甲第1号証の意匠との対比
(ア)意匠に係る物品の対比
両意匠ともに「カード収納ケース」であり、使用目的、機能、構造は完全に一致している。
(イ)形態の共通点および差異点の列挙
[共通点]
1.直方体型の基本構造
2.フリップ式上蓋構造を有し、マグネット式で開閉可能
3.前後面中央に明確なU字型の開口部があり、指でカードを取り出しやすい構造
4.左側面には矩形の「開口窓付きポケット」が設けられており
5.上面視において、内部構造として単一のカード等を収納可能な小型の仕切り層が明確に確認できる。
6.縫製ライン(ステッチ)を外周に配した、機能的かつ装飾的な外観を有する
7.主素材は合成皮革(PU)で構成され、表面は均一なテクスチャー処理
[差異点]
1.色調の違いはあるが、一般需要者に対する視覚印象に大きな影響を与えるものではない
(ウ)形態の共通点及び差異点の評価
本件登録意匠および甲第1号証に係る意匠は、いずれも直方体型のカード収納ケースであり、フリップ式のマグネット開閉構造、前後面中央のU字型開口部、および縫製ラインを外周に配した構造など、視覚的および機能的に重要な特徴が一致している。
また、左側面に設けられた開口窓付きのポケット構造、および上面視における小型の仕切り層の存在など、細部においても共通性が高い。
一方で、両意匠の間には色調の違いという点が見受けられるが、これは実施例における仕上げやカラーバリエーションに起因するものであり、全体の視覚的印象や形態的構造に与える影響は極めて限定的である。
以上のことから、両意匠は、構成要素の選択および配置において極めて類似しており、通常の観察者において類同の視覚的印象を与えるものと評価される。
(エ)意匠に係る物品及び形態の共通点及び差異点の評価に基づく類否の結論
両意匠は、カード収納ケースという同一の物品に係る意匠であり、その基本構造、開閉機構、視認性構造、素材、装飾性に至るまで、全体としての印象、使用目的および機能において著しく共通している。
差異点として確認された色調の違いは、市場における同一シリーズ製品間において一般的に許容される範囲のものであり、社会通念上、両意匠が別個独立の意匠であると認識されるとは考え難い。
したがって、本件登録意匠と甲第1号証の意匠は、社会通念上「類似する意匠」として判断されるべきものである。
(4)むすび
したがって、本件登録意匠は、出願日前である2024年1月13日より既にAmazon.co.jpにおいて公然と販売されていた甲第1号証の意匠と類似しており、当該販売はFBA納品記録および注文履歴等(甲第2号証)によって裏付けられるとともに、複数の消費者レビュー(甲第6号証)によって、社会一般にも認知されていたことが明らかである。
これらの事実に基づけば、本件登録意匠は出願時点において新規性を欠如していたことは明白であり、意匠法第3条第1項第3号に該当する。
よって、同法第48条第1項第1号に基づき、意匠登録第1794420号は無効とされるべきである。
3 証拠方法
(1)甲第1号証、甲第1号証の2:請求人の販売するカード収納ケースの公開情報
(2)甲第2号証、甲第2号証の2:FBA納品記録・出荷履歴
(3)甲第3号証:請求人製品の実物写真・構造説明図
(4)甲第4号証:意匠登録第1794420号に関するJ―PlatPat掲載の意匠公報
(5)甲第5号証、甲第5号証の2:他社における同種カードケース製品の商品ページまたはカタログ画像
(6)甲第6号証:意匠出願日前に投稿された消費者による商品レビュー、SNS上の紹介記事等
第3 答弁の趣旨及び理由
審判長は、被請求人に対し、審判請求書の副本を送達し、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、被請求人からの応答はなかった。
第4 書面審理及び審理終結
当審は、本件審判について、両当事者に対し、令和8年1月9日付けで書面審理に付する旨を通知し、令和8年2月12日付けで審理を終結する旨を通知した。
第5 当審の判断
1 本件登録意匠
本件登録意匠(意匠登録第1794420号、別紙第1参照)は、願書及び願書に添付された図面の記載によれば、意匠に係る物品を「カード収納ケース」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書及び願書に添付された図面に表されたとおりとしたものである。
(1)本件登録意匠の意匠に係る物品
本件登録意匠の意匠に係る物品は、複数のカードを内部に収納することができ、また、任意のカードを展示することが可能なカード展示窓を備えた「カード収納ケース」である。
(2)本件登録意匠の形状等
ア 基本的構成態様
全体は、略正方形板状の底板と略縦長長方形板状の4枚の側壁を相互に接合して、上面が開放された略縦長直方体の箱体を形成したものであって、内面全体には中暗色の色調を施し、外面全体には暗色の色調を施すとともに、縁部に沿って、明色のステッチ模様を施したものとしている。
前記4枚の側壁のそれぞれを、図面の向きに合わせて、正面壁、背面壁、右側面壁及び左側面壁とすると、各部の態様として、
イ 正面壁及び背面壁
正面壁及び背面壁の上端から中央寄りにかけて、略U字形の切り欠きが形成されている。
なお、正面図において、略U字形の切り欠きより奥側全体が灰色に表れているが、背面図や平面図にはそれに対応する形状等がないことに照らして、当該灰色の箇所は誤記と解する。
ウ 左側面壁
左側面の壁面中央に、壁面の約5割の大きさで略角丸長方形に穿孔したカード展示窓が形成されている。
エ 右側面壁及び底板
右側面壁及び底板は、全体が略矩形の板部材で形成されている。
オ 箱体内部
左側面壁のすぐ内側に、さらなる内壁が設けられ、左側面壁は、カードを差し込むことができる二重壁に形成されている。
なお、平面図を見る限りにおいて、右側面壁に二重壁が表れているが、左側面視において、二重壁の内壁とみられる板体が、カード展示窓越しの間近に表れることから、二重壁は右側面壁ではなく、左側面壁に形成されていると解するのが合理的であり、平面図はその向きについての誤記と認め、当審は前記のとおり認定する。
2 甲1号証の意匠
甲1号証の意匠(以下「甲1意匠」という。)は、請求人が、2024年1月13日より、Amazon.co.jpにて販売のため同サイトに掲載した、カード収納ケース(商品ページのURL:https://amzn.asia/d/9wr1rRE、ASIN番号:B0CR9V7ZBX)の意匠である。同サイトにおいて、2024年2月15日付けで、同カード収納ケースの購入者による商品写真付きのレビューが投稿されていることから(甲第6号証)、少なくとも同日において同サイトに甲1意匠が掲載されていたものと認められる。すなわち、甲1意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠であると認められる。
甲1意匠は、甲1号証、甲1号証写し及び甲1号証の2に記載された商品写真及び記事によって特定されるものである。(別紙第2参照)
(1)甲1意匠の意匠に係る物品
甲1意匠の意匠に係る物品は、複数のカードを内部に収納することができ、また、任意のカードを展示することが可能なカード展示窓を備えた「カード収納ケース」である。
(2)甲1意匠の形状等
甲1意匠を、本件登録意匠の図面の向きに合わせて、以下認定する。
ア 基本的構成態様
全体は、略正方形板状の底板と略縦長長方形板状の4枚の側壁を相互に接合して、上面が開口した略縦長直方体の箱体を形成し、上面開口部を覆う、フラップ型の蓋(以下「フラップ蓋」という。)を取り付けたものであって、内面全体にはオレンジ色の色彩を施し、外面全体には黒色の色彩を施すとともに、縁部に沿って、白色のステッチ模様を施したものとしている。
前記4枚の側壁のそれぞれを、図面の向きに合わせて、正面壁、背面壁、右側面壁及び左側面壁とすると、各部の態様として、
イ 正面壁及び背面壁
正面壁及び背面壁の上端から中央寄りにかけて、略U字形の切り欠きが形成されている。
ウ 左側面壁
左側面の壁面中央に、壁面の約5割の大きさで略角丸長方形に穿孔したカード展示窓が形成されている。
エ 右側面壁
右側面壁は、全体が略矩形の板部材で形成されている。
オ 箱体内部
左側面壁のすぐ内側に、さらなる内壁が設けられ、左側面壁は、カードを差し込むことができる二重壁に形成されている。
カ フラップ蓋
フラップ蓋は、箱体の横幅と同幅の略長方形板状であって、その基端部を正面壁の下端部に結合し、上方の角部で90度ずつ折れ曲がりながら、正面壁及び上面の全面と背面壁の上部約3分の2を覆うように開閉可能に設けられている。フラップ蓋の先端側は、両角部を円弧状に形成している。また、当該フラップ蓋を2か所で外向きに折り曲げると、箱体を斜め向きに載置するための脚部に変形する。
3 本件登録意匠と甲1意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本件登録意匠と甲1意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも、複数のカードを内部に収納することができ、また、任意のカードを展示することが可能なカード展示窓を備えた「カード収納ケース」であるから、その用途及び機能において一致する。
(2)形状等の対比
両意匠の形状等を対比すると、主として、以下の共通点及び相違点が認められる。
ア 形状等の共通点
(共通点あ)箱体の全体
略正方形板状の底板と略縦長長方形板状の4枚の側壁を相互に接合して、上面が開口した略縦長直方体の箱体を形成したものであって、内面全体には中暗色の色調を施し、外面全体には暗色の色調を施すとともに、縁部に沿って、明色のステッチ模様を施したものとしている点、
(共通点い)正面壁及び背面壁
正面壁及び背面壁の上端から中央寄りにかけて、略U字形の切り欠きが形成されている点、
(共通点う)左側面壁
左側面の壁面中央に、壁面の約5割の大きさで略角丸長方形に穿孔したカード展示窓が形成されている点、
(共通点え)右側面壁
右側面壁の全体が略矩形の板部材で形成されている点、
(共通点お)箱体内部
左側面壁のすぐ内側に、さらなる内壁が設けられ、左側面壁は、カードを差し込むことができる二重壁に形成されている点、
において共通する。
イ 形状等の相違点
(相違点あ)フラップ蓋の有無
本件登録意匠には蓋がなく上面が開放されているのに対し、甲1意匠は、上面開口部を覆うフラップ蓋を備えたものであって、フラップ蓋は、箱体の横幅と同幅の略長方形板状であって、その基端部を正面壁の下端部に結合し、上方の角部で90度ずつ折れ曲がりながら、正面壁及び上面の全面と背面壁の上部約3分の2を覆うように開閉可能に設けられている点、
(相違点い)底板
本件登録意匠の底板の外面全体は略正方形の板状に形成されているのに対し、甲1意匠は、甲1号証、甲1号証写し及び甲1号証の2に所載のいずれの図にも底板の外面が表れていないため、外面の形状等が不明である点、
(相違点う)色彩
色彩について、本件登録意匠は、内面全体には中暗色の色調を施し、外面全体には暗色の色調を施すとともに、縁部に沿って、明色のステッチ模様を施しているのに対し、甲1意匠は、内面全体にはオレンジ色の色彩を施し、外面全体には黒色の色彩を施すとともに、縁部に沿って、白色のステッチ模様を施している点、
において相違する。
4 類否判断
以上の、共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響を評価し、評価に基づいて、両意匠が類似するか否かを判断する。
(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が一致するから、同一である。
(2)両意匠の形状等について
ア 共通点の評価
(共通点あ)箱体の全体について
箱体の形状について、上面が開口した略縦長直方体に形成された点は、例を挙げるまでもなくありふれたものであるから、両意匠の特徴ということはできず、また、外面全体に暗色の色調とし、縁部に沿って、明色のステッチ模様を施した点は、この種の収納ケースの分野において、本件登録意匠の出願前より公然知られた態様であり(参考意匠1:特許庁が2011年2月25日受入のウェブサイトに掲載の「ファイルトレー」の意匠(別紙第3参照))、両意匠のみが有する特徴とはいえないものであるから、(共通点あ)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(共通点い)正面壁及び背面壁について
正面壁及び背面壁の上端から中央寄りにかけて、略U字形の切り欠きが形成されている点であるが、この種のカード収納ケースの物品分野において、カードに指を掛けて取り出しやすいように、このような切り欠きを形成したものは、この種の収納ケースの分野において、本件登録意匠の出願前より公然知られた態様であり(参考意匠2:国際事務局意匠公報「カード収納箱」の意匠(別紙第4参照))、両意匠のみが有する特徴とはいえないものであるから、(共通点い)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(共通点う)左側面壁について
左側面の壁面中央に、壁面の約5割の大きさで略角丸長方形に穿孔したカード展示窓が形成されている点であるが、この種のカード収納ケースの物品分野において、カードを展示することが可能なカード展示窓を設けたものは、本件登録意匠の出願前より見られる(参考意匠3:特許庁が1999年12月20日受入の内国カタログ「KOKUYO Office Supplies 2000 Catalog」第661頁所載の「写真ケース」の意匠(別紙第5参照))ものの、略角丸長方形の穿孔形状とその周縁部に施されたステッチ模様も含む細部の態様までもが公知のものとはいえないから、(共通点う)が両意匠の類否判断に与える影響は一定程度ある。
(共通点え)右側面壁について
全体が略矩形の板部材で形成されているに過ぎない点であるから、(共通点あ)の評価と同様、(共通点え)が両意匠の両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(共通点お)箱体内部について
平面視、左側面壁が二重壁に表れる点であるが、目立たない部位における局所的な微差といえるから、(共通点お)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
イ 相違点の評価
(相違点あ)フラップ蓋の有無について
本件登録意匠には蓋がなく上面が開放されているのに対し、甲1意匠は、上面開口部を覆うフラップ蓋を備えている点であるが、収納状態において、カードが直接見えるか、蓋に遮られて見えないかといった違いを伴い、一見して目立つ外観上の相違といえ、なおかつ、甲1意匠のフラップ蓋は変形して脚部を兼ねるものであることを考慮すると、需要者が注目する部分において大きな相違があるものといえるから、(相違点あ)が両意匠の類否判断に与える影響は非常に大きい。
(相違点い)底板について
底板について、本件登録意匠は外面が略正方形の板状であるのに対し、甲1意匠は外面の形状等が不明である点であるが、この種の収納ケースの通常の使用状態において、底板は、他の部位より注意を引きにくいものといえることに加え、本件登録意匠の底板の外面に格別の特徴が認められないこと、甲1意匠についても、複数ある写真の中、底板の外面を表したものは1つもないことから、格別の特徴となり得る形状等はないものと推認できるのであって、(相違点い)が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものといわざるを得ない。
(相違点う)色彩について
色彩について、両意匠は、全体の明暗の調子が共通する中で、アクセントカラーといえる一部の色彩が相違するに留まるものであって、需要者に対して、格別に異なる印象をもたらすものではないから、(相違点う)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
ウ 形状等の類否判断
両意匠の形状等の共通点及び相違点の評価を総合し、意匠全体として観察し判断すると、(共通点あ)~(共通点お)が両意匠の類否判断に与える影響は、いずれも小さいか一定程度に留まるものであって、それら共通点があいまって生ずる視覚的効果を考慮したとしても、両意匠の類否判断に与える影響は総じて小さいといえるのに対し、(相違点あ)は、両意匠について、需要者に異なる視覚的印象を強くもたらすものであり、両意匠の類否判断に非常に大きな影響を与え、共通点の影響を凌駕するものであるから、意匠全体として観察した場合において、両意匠の形状等は類似しない。
(3)両意匠の類否
そうすると、本件登録意匠と甲1意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、形状等においては類似しないから、本件登録意匠は甲1意匠に類似する、ということはできない。
(4)小括
以上のとおり、本件登録意匠は、甲1意匠と類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠には該当しない。
よって、請求人が主張する無効理由には、理由がない。
第6 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、両意匠の共通点の1つとして、「2.フリップ式上蓋構造を有し、マグネット式で開閉可能」を挙げ、両意匠は、「フリップ式のマグネット開閉構造」を含めて、視覚的及び機能的に重要な特徴が一致するとして、両意匠が類似する旨主張している。
しかしながら、上記第5 3(2)イ(相違点あ)のとおり、「フリップ式上蓋」(当審認定では「フラップ蓋」)を有するのは甲1意匠のみであって、本件登録意匠に蓋はないから、請求人が「フリップ式上蓋」を共通点として主張する点は、両意匠の形状に即したものではない。したがって、請求人のこの主張は、前提を欠くものであるから、採用することができない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由には理由がなく、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件登録意匠の登録は、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-880005