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特許異議申立

2025-700476

椅子

審判番号
2025-700476
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-220554
登録番号
7589326
請求日
2025年04月25日
審決日
2026年04月16日
公報発行日
2026年07月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社イトーキ
  • 【権利者代理人】西 博幸
  • 【権利者代理人】渡辺 隆一
  • 【異議申立人】佐野 裕之
審判長/審判官
  • 審判長 倉橋 紀夫
  • 審判官 高橋 学
  • 審判官 草野 顕子
分類
P1651.113-YAA(A47C) / P1651.121-YAA(A47C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第5項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7589326号発明「椅子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7589326号の明細書、及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 特許第7589326号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7589326号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和元年8月30日に出願した特願2019-158698号の一部を令和5年6月22日に新たな特許出願(特願2023-102429号)とし、その一部を同年12月27日に新たな特許出願としたものであって、令和6年11月15日にその特許権の設定登録がされ、同年11月25日に特許掲載公報が発行されたものである。 本件特許異議の申立ての経緯は、概略、次のとおりである。 令和7年 4月25日 :特許異議申立人 佐野裕之(以下「申立人」という。)による請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立て 同年 7月 7日付け:取消理由通知書 同年 9月 8日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年11月26日 :訂正請求書に対する手続補正書(方式)の提出 同年12月 4日付け:訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項) なお、当審において、申立人に対して上記訂正請求があった旨の通知を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、当該期間内に申立人から意見書の提出はなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和7年11月26日提出の訂正請求項に対する手続補正書(方式)により補正された同年9月8日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」といい、本件訂正の請求を「本件訂正請求」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「互いに分離した座と背もたれ、及び、前記座よりも高い位置において前記背もたれが取り付く背もたれ支持フレームとを有しており、 前記背もたれ支持フレームは左右の支柱部で支持されている椅子であって、 前記背もたれは、左右方向に長い形態であって平面視で後ろ向きに膨れるように円弧状に湾曲している一方、 前記背もたれ支持フレームは、断面円形で前記背もたれを後ろから囲うように平面視で湾曲した形態に形成されていて全長に亙って同じ高さの水平姿勢に配置されており、 前記支柱部は、着座者の側を向いた広幅面と着座者と反対側を向いた広幅面とを有する板状の形態であって厚さは前記背もたれ支持フレームの外径よりも小さい寸法である」 とあるのを、 「ベース及びその上に配置された座受け部材を介して脚装置で支持された座と、 前記座と互いに分離した背もたれと、 前記座よりも高い位置において前記背もたれが取り付く1本の背もたれ支持フレームと、 前記脚装置とは別部材であって上下方向の鉛直姿勢に配置されて前記背もたれ支持フレームを支持する左右の支柱部、及び、前記左右の支柱部と一体に連続して前記座の下に回り込んだ基部、を有するサイド支持体と、 を有する椅子であって、 前記背もたれは、左右方向に長い形態であって平面視で後ろ向きに膨れるように円弧状に湾曲している一方、 前記背もたれ支持フレームは、断面円形で前記背もたれを後ろから囲うように平面視で湾曲した形態に形成されていて全長に亙って同じ高さの水平姿勢であって前記背もたれの端と下端の間の高さ位置に配置されていると共に、左右両側の部位は前記背もたれよりも手前に延びており、 前記支柱部は、着座者の側を向いた広幅面と着座者と反対側を向いた広幅面とを有する板状の形態であって厚さは前記背もたれ支持フレームの外径よりも小さい寸法であり、 前記サイド支持体の基部は前記座から離反した状態で前記ベースに取り付いている」 と訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~4についても同様に訂正する。) (2)訂正事項2 明細書の【0011】に、 「互いに分離した座と背もたれ、及び、前記座よりも高い位置において前記背もたれが取り付く背もたれ支持フレームとを有しており、 前記背もたれ支持フレームは左右の支柱部で支持されている椅子であって、 前記背もたれは、左右方向に長い形態であって平面視で後ろ向きに膨れるように円弧状に湾曲している一方、 前記背もたれ支持フレームは、断面円形で前記背もたれを後ろから囲うように平面視で湾曲した形態に形成されていて全長に亙って同じ高さの水平姿勢に配置されており、 前記支柱部は、着座者の側を向いた広幅面と着座者と反対側を向いた広幅面とを有する板板状の形態であって厚さは前記背もたれ支持フレームの外径よりも小さい寸法である」 とあるのを、 「ベース及びその上に配置された座受け部材を介して脚装置で支持された座と、 前記座と互いに分離した背もたれと、 前記座よりも高い位置において前記背もたれが取り付く1本の背もたれ支持フレームと、 前記脚装置とは別部材であって上下方向の鉛直姿勢に配置されて前記背もたれ支持フレームを支持する左右の支柱部、及び、前記左右の支柱部と一体に連続して前記座の下に回り込んだ基部、を有するサイド支持体と、 を有する椅子であって、 前記背もたれは、左右方向に長い形態であって平面視で後ろ向きに膨れるように円弧状に湾曲している一方、 前記背もたれ支持フレームは、断面円形で前記背もたれを後ろから囲うように平面視で湾曲した形態に形成されていて全長に亙って同じ高さの水平姿勢であって前記背もたれの端と下端の間の高さ位置に配置されていると共に、左右両側の部位は前記背もたれよりも手前に延びており、 前記支柱部は、着座者の側を向いた広幅面と着座者と反対側を向いた広幅面とを有する板状の形態であって厚さは前記背もたれ支持フレームの外径よりも小さい寸法であり、 前記サイド支持体の基部は前記座から離反した状態で前記ベースに取り付いている」 と訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1のうち、本件訂正前の請求項1の「互いに分離した座と背もたれ」との記載を、「ベース及びその上に配置された座受け部材を介して脚装置で支持された座と、前記座と互いに分離した背もたれと、」とする訂正(以下「訂正事項1-1」という。)は、「背もたれ」と「互いに分離した」「座」が、「ベース及びその上に配置された座受け部材を介して脚装置で支持された」ものであることを更に特定するものである。 また、訂正事項1のうち、本件訂正前の請求項1の「背もたれ支持フレームと」との記載を、「1本の背もたれ支持フレームと」とする訂正(以下「訂正事項1-2」という。)は、「背もたれ支持フレーム」が「1本」であることを更に特定するものである。 また、訂正事項1のうち、本件訂正前の請求項1の「前記背もたれ支持フレームは左右の支柱部で支持されている椅子」との記載を、「前記脚装置とは別部材であって上下方向の鉛直姿勢に配置されて前記背もたれ支持フレームを支持する左右の支柱部、及び、前記左右の支柱部と一体に連続して前記座の下に回り込んだ基部、を有するサイド支持体と、を有する椅子」とする訂正(以下「訂正事項1-3」という。)は、「背もたれ支持フレーム」を「支持」する「左右の支柱部」が「前記脚装置とは別部材であって上下方向の鉛直姿勢に配置されて前記背もたれ支持フレームを支持する」ものであり、「サイド支持体」の一部であること、当該サイド支持体が当該左右の支柱部のほか「前記左右の支柱部と一体に連続して前記座の下に回り込んだ基部、を有する」ことをさらに特定するものである。 また、訂正事項1のうち、本件訂正前の請求項1の「前記背もたれ支持フレームは、断面円形で前記背もたれを後ろから囲うように平面視で湾曲した形態に形成されていて全長に亙って同じ高さの水平姿勢に配置されており、」との記載を、「前記背もたれ支持フレームは、断面円形で前記背もたれを後ろから囲うように平面視で湾曲した形態に形成されていて全長に亙って同じ高さの水平姿勢であって前記背もたれの端と下端の間の高さ位置に配置されていると共に、左右両側の部位は前記背もたれよりも手前に延びており、」とする訂正(以下「訂正事項1-4」という。)は、「背もたれ支持フレーム」が「背もたれの端と下端の間の高さ位置に配置されていると共に、左右両側の部位は前記背もたれよりも手前に延びて」いることをさらに特定するものである。 また、訂正事項1のうち、本件訂正前の請求項1の「前記支柱部は、着座者の側を向いた広幅面と着座者と反対側を向いた広幅面とを有する板状の形態であって厚さは前記背もたれ支持フレームの外径よりも小さい寸法である」との記載を、「前記支柱部は、着座者の側を向いた広幅面と着座者と反対側を向いた広幅面とを有する板状の形態であって厚さは前記背もたれ支持フレームの外径よりも小さい寸法であり、前記サイド支持体の基部は前記座から離反した状態で前記ベースに取り付いている」とする訂正(以下「訂正事項1-5」という。)は、「サイド支持体」について、その「基部」が「座から離反した状態で前記ベースに取り付いている」ことをさらに特定するものである。 そうすると、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 (ア)訂正事項1-1について 本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)には、以下の記載がある(下線は当審において付した。以下同様。)。 a 「脚装置1は、複数本(5本)の枝アームを有する接地体4の中央部にガスシリンダより成る脚柱5を立設した構造であり、各アームの先端にはキャスタを設けている。従って、本実施形態は回転椅子に適用している。」(【0038】) b 「脚柱5の上端に、底面視(及び平面視)で略四角形のベース6が固定されている。ベース6には座受け部材7が前後スライド自在に装着されており、座受け部材7の上面に座2が取り付けられている。」(【0039】) c 図1から、座2と背もたれ3が互いに分離している点、ベース6の上に座受け部材7が配置されている点が看取できる。 d 前記a~cを踏まえると、訂正事項1-1は、【0038】、【0039】、図1の記載に基づくものであり、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 (イ)訂正事項1-2について 本件明細書等の図1から、背もたれ支持フレーム8が一本である点が看取できるから、訂正事項1-2は、図1の記載に基づくものであり、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 (ウ)訂正事項1-3について 本件明細書等には、以下の記載がある。 a 「椅子は、座2よりも高い位置において着座者を後ろから囲うように配置された背もたれ支持フレーム(以下、「上部支持フレーム」)8を備えている。」(【0041】) b 「上部支持フレーム8の左右サイド部9は、座2の左右側方に配置されたサイド支持体13に後傾動可能に連結されている。サイド支持体13は、例えばアルミダイキャスト品であり、上下長手で板状の支柱部14と、その上端に一体に形成された前後長手で略円形の上水平状部15とを有している。」(【0045】) c 「サイド支持体13における支柱部14の下端には、座2の下方に回り込んだ基部17が一体に形成されており、基部17の先端部が、ベース6に形成された係合穴18(図1(D)や図2(B)参照)に嵌め込まれており、先端部がボルトでベース6に固定されている。」(【0046】) d 前記a~cを踏まえ、さらに図1を参酌すると、訂正事項1-3は、【0045】、【0046】、図1の記載に基づくものであり、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 (エ)訂正事項1-4について 本件明細書等には、以下の記載がある。 a 「本願発明では、背もたれ支持フレームは、背もたれの手前に延びる左右サイド部と背もたれの後ろに位置したリア部とが一体に繋がった形態になっているため、全体として高い剛性を有している。」(【0019】) b 「上部支持フレーム8に対する背もたれ3の取り付け位置は、背もたれ3の上下中間高さ位置よりも下方に位置している。」(【0054】) c 前記a、bを踏まえると、訂正事項1-4は、【0019】、【0054】の記載に基づくものであり、本件特許の明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 (オ)訂正事項1-5について 本件明細書等には、以下の記載がある。 a 前記(ア)b、(ウ)cを踏まえると、訂正事項1-5は、【0039】、【0046】の記載に基づくものであり、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 以上から、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではい。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2は、訂正事項1による特許請求の範囲の請求項1の訂正に伴い、特許請求の範囲と整合させるために行う明細書の訂正であり、特許法特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 前記(1)イと同様に、訂正事項2は、本件明細書等の記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載された事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項の規定に適合する。 3 一群の請求項 本件訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は、それぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、本件訂正前の請求項1~4に対応する本件訂正後の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 また、明細書の訂正に係る訂正事項2は、本件訂正前の請求項1に係る課題解決手段が記載された段落【0011】を訂正するものであり、本件訂正前の請求項2~4は、請求項1を引用するものであるから、当該明細書の訂正に係る請求項1を含む一群の請求項の全てについて訂正するものである。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正事項1、2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 また、訂正事項1に係る本件訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に適合し、また、訂正事項2に係る本件訂正は、同条第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。 したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 第3 本件訂正後の本件発明 前記「第2」で説示したように本件訂正は認められるから、本件訂正請求により訂正された請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ベース及びその上に配置された座受け部材を介して脚装置で支持された座と、 前記座と互いに分離した背もたれと、 前記座よりも高い位置において前記背もたれが取り付く1本の背もたれ支持フレームと、 前記脚装置とは別部材であって上下方向の鉛直姿勢に配置されて前記背もたれ支持フレームを支持する左右の支柱部、及び、前記左右の支柱部と一体に連続して前記座の下に回り込んだ基部、を有するサイド支持体と、 を有する椅子であって、 前記背もたれは、左右方向に長い形態であって平面視で後ろ向きに膨れるように円弧状に湾曲している一方、 前記背もたれ支持フレームは、断面円形で前記背もたれを後ろから囲うように平面視で湾曲した形態に形成されていて全長に亙って同じ高さの水平姿勢であって前記背もたれの端と下端の間の高さ位置に配置されていると共に、左右両側の部位は前記背もたれよりも手前に延びており、 前記支柱部は、着座者の側を向いた広幅面と着座者と反対側を向いた広幅面とを有する板状の形態であって厚さは前記背もたれ支持フレームの外径よりも小さい寸法であり、 前記サイド支持体の基部は前記座から離反した状態で前記ベースに取り付いている、椅子。 【請求項2】 前記背もたれ支持フレームは、着座者の肘関節と同じ程度の高さに配置されていて左右両側の部位は背もたれよりも手前に延びている、 請求項1に記載した椅子。 【請求項3】 前記背もたれは、その背面部が前記左右の支柱部の間に位置した左右2個所の部位において前記背もたれ支持フレームに連結されている、 請求項1又は2に記載した椅子。 【請求項4】 前記支柱部は、ばね手段に抗して後傾するように座受け部材に取り付けられている、 請求項3に記載した椅子。」 第4 取消理由通知で通知した取消理由について 1 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~4に係る特許に対して、当審において令和7年7月7日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 取消理由(特許法第29条第2項) 以下の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の甲号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、以下の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ・請求項1~3 甲第1号証及び周知技術1(甲第2、3号証) ・請求項4 甲第1号証及び周知技術1、2(甲第2号証) 2 甲号証一覧(以下甲第1号証~甲第3号証を、それぞれ「甲1」~「甲3」という。) 甲1:特開2013-183847号公報 甲2:国際公開第2016/044957号 甲3:KOKUYO office furniture ‘99 catalogue、コクヨ株式会社、平成10年12月、660頁 第5 当審の判断 1 理由(進歩性)について (1) 甲1について 甲1の請求項1や段落【0015】~【0028】、【0033】、【0036】、【0043】~【0047】、【0051】、図6、10~16の記載からみて、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(括弧内に、根拠箇所を示した。以下同様。)。 [甲1発明] 「脚構造体3が備える連結部33上に載置して固定される座1と、 座1と互いに分離した背板29と、 座1から上方に離間して背板29が取り付けられる背凭れフレーム22と(【0015】、【0022】、【0026】、【0033】、【0043】~【0046】、【0051】、図10~14)、 脚構造体3に備えられた後脚31と一体となって連続しており、背凭れフレーム22を支持し、左右に離間して一対存在する背支桿21、及び、後脚31に溶接され、座1を下方から支持する連結部33と(【0017】、【0018】、【0026】、【0027】、【0031】~【0033】)、 を有する椅子であって、 背板29は、左右方向に長い形態であって、背凭れフレーム22の上フレーム部23や下フレーム部24と同程度の曲率で湾曲している一方、(【0045】、図10、11) 背凭れフレーム22は、左右に伸長しつつ中間部231が後方に膨出するように湾曲した上フレーム部23と、上フレーム部23よりも下方にあって左右に伸長しつつ中間部241が後方に膨出するように湾曲した下フレーム部24と、上フレーム部23の左端部232と下フレーム部24の左端部242とを連結する左側フレーム部25と、上フレーム部23の右端部232と下フレーム部24の右端部242とを連結する右側フレーム部26とを有し、上フレーム部23及び下フレーム部24はともに、正面視左右方向に沿って略水平に延伸していると共に、左側フレーム部25及び右側フレーム部26と背板29との間に空隙20が介在しており、(【0019】、【0022】、【0047】) 背凭れフレーム22は、断面形状が円筒状で(【0024】)、背板29を背凭れフレーム22の内周に着座者の身体に接触し得るよう取り付け(【0043】)られ、 背支桿21の断面形状は、着座者の側を向いた幅方向の面と着座者と反対側を向いた幅方向の面とを有す略楕円筒状をなす、(【0025】、【0028】、図6) 椅子。」 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)後者の「脚構造体3」及び「座1」は、前者の「脚装置」及び「座」にそれぞれ相当する。 そうすると、後者の「脚構造体3が備える連結部33上に載置して固定される座1」と前者の「ベース及びその上に配置された座受け部材を介して脚装置で支持された座」とは、「脚装置で支持された座」である点で共通している。 (イ) 後者の「背板29」は、前者の「背もたれ」に相当する。 そうすると、前記(ア)も踏まえれば、後者の「座1と互いに分離した背板29」は、前者の「前記座と互いに分離した背もたれ」に相当する。 (ウ)後者の「背凭れフレーム22」は、前者の「背もたれ支持フレーム」に相当する。また、後者の背凭れフレーム22は、「上フレーム部23」、「下フレーム部24」、「左側フレーム部25」、「右側フレーム部26」の複数のフレーム部を有するものである。 そうすると、後者の「座1から上方に離間して背板29が取り付けられる背凭れフレーム22」と前者の「前記座よりも高い位置において前記背もたれが取り付く1本の背もたれ支持フレーム」とは「前記座よりも高い位置において前記背もたれが取り付く背もたれ支持フレーム」である点で共通している。 (エ)後者の「背支桿21」は、前者の「支柱部」に相当する。 また、後者の背支桿21は「脚構造体3に備えられた後脚31と一体となって連続しており、背凭れフレーム22を支持し、左右に離間して一対存在する」ものであり、上下方向に鉛直姿勢に配置され、かつ左右で背凭れフレーム22を支持している態様であると解される。そうすると、後者の「脚構造体3に備えられた後脚31と一体となって連続しており、背凭れフレーム22を支持し、左右に離間して一対存在する背支桿21」と前者の「前記脚装置とは別部材であって上下方向の鉛直姿勢に配置されて前記背もたれ支持フレームを支持する左右の支柱部」とは、「上下方向の鉛直姿勢に配置されて前記背もたれ支持フレームを支持する左右の支柱部」である点で共通している。 (オ)後者の「連結部33」は「後脚31に溶接され」ているから、連結部33は後脚31を介して背支桿21と一体であるといえる。また、「座1を下方から支持する」態様であるから、座1の下に回り込んでいるといえる。 そうすると、後者の「後脚31に溶接され、座1を下方から支持する連結部33」は、前者の「前記左右の支柱部と一体に連続して前記座の下に回り込んだ基部」に相当する。 (カ)前記(エ)、(オ)を踏まえると、後者の「左右に離間して一対存在する背支桿21」と「連結部33」を合わせたものは、前者の「サイド支持体」に相当するから、後者の「脚構造体3に備えられた後脚31と一体となって連続しており、背凭れフレーム22を支持し、左右に離間して一対存在する背支桿21、及び、後脚31に溶接され、座1を下方から支持する連結部33」と、前者の「前記脚装置とは別部材であって上下方向の鉛直姿勢に配置されて前記背もたれ支持フレームを支持する左右の支柱部、及び、前記左右の支柱部と一体に連続して前記座の下に回り込んだ基部、を有するサイド支持体」とは、「上下方向の鉛直姿勢に配置されて前記背もたれ支持フレームを支持する左右の支柱部、及び、前記左右の支柱部と一体に連続して前記座の下に回り込んだ基部、を有するサイド支持体」である点で共通している。 (キ)後者の「背板29は、左右方向に長い形態であって、背凭れフレーム22の上フレーム部23や下フレーム部24と同程度の曲率で湾曲している」態様は、上フレーム部23や下フレーム部24の中間部が後方に膨出するように湾曲していることから、前者の「前記背もたれは、左右方向に長い形態であって平面視で後ろ向きに膨れるように円弧状に湾曲している」態様に相当する。 (ク)後者の背凭れフレーム22は「断面形状が円筒状」であり、「上フレーム部23及び下フレーム部24はともに、正面視左右方向に沿って略水平に延伸していると共に、左側フレーム部25及び右側フレーム部26と背板29との間に空隙20が介在しており、」「背板29を背凭れフレーム22の内周に着座者の身体に接触しうるよう取り付け」ていることから、前記(エ)も踏まえると、後者の「背凭れフレーム22は、左右に伸長しつつ中間部231が後方に膨出するように湾曲した上フレーム部23と、上フレーム部23よりも下方にあって左右に伸長しつつ中間部241が後方に膨出するように湾曲した下フレーム部24と、上フレーム部23の左端部232と下フレーム部24の左端部242とを連結する左側フレーム部25と、上フレーム部23の右端部232と下フレーム部24の右端部242とを連結する右側フレーム部26とを有し、上フレーム部23及び下フレーム部24はともに、正面視左右方向に沿って略水平に延伸していると共に、左側フレーム部25及び右側フレーム部26と背板29との間に空隙20が介在しており、背凭れフレーム22は、断面形状が円筒状で、背板29を背凭れフレーム22の内周に着座者の身体に接触し得るよう取り付けられ」ている態様と、前者の「前記背もたれ支持フレームは、断面円形で前記背もたれを後ろから囲うように平面視で湾曲した形態に形成されていて全長に亙って同じ高さの水平姿勢であって前記背もたれの端と下端の間の高さ位置に配置されていると共に、左右両側の部位は前記背もたれよりも手前に延びて」いる態様とは、「前記背もたれ支持フレームは、断面円形で平面視で湾曲した形態に形成されていて全長に亙って略同じ高さの略水平姿勢に配置されていると共に、左右両側の部位は前記背もたれよりも手前に延びて」いる態様において共通する。 (ケ)後者の背支桿21の断面形状は略楕円筒状であり、偏平状の形態であるといえるから、後者の「背支桿21の断面形状は、着座者の側を向いた幅方向の面と着座者と反対側を向いた幅方向の面とを有す略楕円筒状をなす」態様と、前者の「前記支柱部は、着座者の側を向いた広幅面と着座者と反対側を向いた広幅面とを有する板状の形態であ」る態様とは、「前記支柱部は、着座者の側を向いた広幅面と着座者と反対側を向いた広幅面とを有する偏平状の形態である」態様で共通する。 (コ)以上の限りにおいて、後者の「椅子」は、前者の「椅子」に相当する。 (サ)そうすると、両者は、 「脚装置で支持された座と、 前記座と互いに分離した背もたれと、 前記座よりも高い位置において前記背もたれが取り付く背もたれ支持フレームと、 上下方向の鉛直姿勢に配置されて前記背もたれ支持フレームを支持する左右の支柱部、及び、前記左右の支柱部と一体に連続して前記座の下に回り込んだ基部、を有するサイド支持体と、 を有する椅子であって、 前記背もたれは、左右方向に長い形態であって平面視で後ろ向きに膨れるように円弧状に湾曲している一方、 前記背もたれ支持フレームは、断面円形で平面視で湾曲した形態に形成されていて全長に亙って略同じ高さの略水平姿勢に配置されていると共に、左右両側の部位は前記背もたれよりも手前に延びており、 前記支柱部は、着座者の側を向いた広幅面と着座者と反対側を向いた広幅面とを有する偏平状の形態である、 椅子。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 脚装置で支持された座に関し、本件発明1は、ベース及びその上に配置された座受け部材を介しているのに対し、甲1発明は、脚構造体3が備える連結部33上に載置して固定されている点。 [相違点2] 背もたれ支持フレームに関し、本件発明1は、一本であるのに対し、甲1発明は、上フレーム部23、下フレーム部24、左側フレーム部25、右側フレーム部26の複数である点。 [相違点3] 支柱部に関し、本件発明1は、脚装置と別部材であるのに対し、甲1発明は、脚構造体3に備えられた後脚31と一体である点。 [相違点4] 背もたれ支持フレームの背もたれに対する配置に関し、本件発明1は、背もたれを後ろから囲うように形成されていて、全長に亙って同じ高さの水平姿勢であって背もたれの端と下端の間の高さ位置に配置されるのに対し、甲1発明は、背板29を背凭れフレーム22の内周に着座者の身体に接触し得るよう取り付けられ、背凭れフレーム22が正面視左右方向に沿って略水平に延伸しており、背もたれの端と下端の間の高さ位置に配置されていない点。 [相違点5] 偏平状の支柱部について、本件発明1は、板状の形態であって厚さは背凭れ支持フレームの外径よりも小さい寸法であるのに対し、甲1発明は、断面形状が略楕円筒状をなすものであり、背凭れ支持フレーム22の外径との関係が明らかでない点。 イ 判断 事案に鑑み、まずは相違点2について検討する。 甲1発明は、「手で掴むのに適した持ち手となる部位が広範囲に亘っている椅子を実現しようとするもの」であることを課題(【0005】)として、本件発明1の背もたれ支持フレームに相当する背凭れフレーム22が、上フレーム部23、下フレーム部24、左側フレーム部25、右側フレーム部26の複数からなる構造とすることにより、「上フレーム部、下フレーム部(背支桿よりも外側方にある部位や、対をなす背支桿の間にある部位を含む)、左側フレーム部及び右側フレーム部、並びに背支桿の何れかを持ち手とし、その持ち手を掴んで椅子を移動させたり椅子の向きを変えたりすることが容易になる」(【0007】)ことから、「手で掴むのに適した持ち手となる部位が広範囲に亘っている椅子を実現」(【0013】)したものである。 一方、背もたれ支持フレームが一本である点は、甲2(Fig.1A-1C参照。)、甲3(<カンチレバー脚タイプ>の写真、<4本脚タイプ>の写真参照。)に記載されているが、上記のような課題を有する甲1発明において、複数のフレーム部を有する背凭れフレーム22の代わりに、甲2、甲3で開示された一本の背もたれ支持フレームとすることに動機付けは存在せず、むしろ阻害要因があるといえる。 以上のとおりであるから、甲1発明において、甲2、甲3に記載された事項を踏まえ、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2、甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を付加したものであるから、前記(2)と同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)小括 本件発明1~4は、甲1発明及び甲2、甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本件特許の請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 申立人は、特許異議申立書において、取消理由通知において採用しなかった以下の特許異議申立理由を主張している。 1 申立理由 (1)本件発明1~3は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)本件特許発明1~4は、甲2に記載された発明と、甲1に記載された事項、又は、周知技術(甲3に記載された事項)のいずれかとに基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由についての検討 (1)申立理由(1)について 前記第5(2)アで述べたように、本件発明1と甲1発明は、相違点1~5で相違するところ、これらの相違点は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明ではない。 また、本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を付加したものであるから、本件発明2、3と甲1発明は、少なくとも相違点1~5で相違し、本件発明2、3は甲1発明ではない。 したがって、本件発明1~3は、甲1発明ではないので、特許法第29条第1項第3号に該当せず、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。 (2)申立理由(2)について ア 甲2について 甲2(特に、10頁15行~13頁28行、16頁1~14行、図1A~4B参照)には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。なお、括弧内に主な参照箇所を示した。 「支持ユニット5及びその上に配置されたベースプレート3を介してベースフレーム1で支持された、座25と、 座25と互いに分離した背もたれ部92と、 ベースフレーム1とは別部材の、複数回曲げられた対称形状のブラケットである1本の背もたれ支持部91であって、座25よりも高い位置において背もたれ部92の後部を円弧状に囲む肘掛け部と、肘掛け部から下側に延びて下端の部分まで移行する部分と、座25の下側に延びている下端の部分と、を有している背もたれ支持部91と、 を有する椅子であって、(11頁21行~13頁28行、図2A~4B) 背もたれ部92は、左右方向に長い形態であって平面視で後ろ向きに膨れるように円弧状に湾曲している一方、(図3A) 背もたれ支持部91は、背もたれ部92の後部を円弧状に囲むように平面視で湾曲した形態に形成されていて背もたれ部92の端と下端の間の高さ位置に配置されていると共に、左右両側の部位は肘掛け部として背もたれ部92よりも手前に延びており、(11頁21行~13頁28行、図2A~4B) 背もたれ支持部91の下端は座25から離反した状態で支持ユニット5のベースサポート50にヒンジで固定されている、椅子。」 イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲2発明を対比する。 a 後者の「支持ユニット5」、「ベースプレート3」、「ベースフレーム1」、「座25」は、前者の「ベース」、「座受け部材」、「脚装置」、「座」にそれぞれ相当する。これを踏まえると、後者の「支持ユニット5及びその上に配置されたベースプレート3を介してベースフレーム1で支持された、座25」は、前者の「ベース及びその上に配置された座受け部材を介して脚装置で支持された座」に相当する。 b 後者の「背もたれ部92」は、前者の「背もたれ」に相当するから、後者の「座25と互いに分離した背もたれ部92」は、前者の「前記座と互いに分離した背もたれ」に相当する。 c 後者の「背もたれ支持部91」の「座25よりも高い位置において背もたれ部92の後部を円弧状に囲む肘掛け部」は、「1本の背もたれ支持部91」の一部であるから、前者の「背もたれ支持フレーム」に相当する。これを踏まえると、後者の「座25よりも高い位置において背もたれ部92の後部を円弧状に囲む肘掛け部」は、前者の「前記座よりも高い位置において前記背もたれが取り付く1本の背もたれ支持フレーム」に相当する。 d 後者の「背もたれ支持部91」の「肘掛け部から下側に延びて下端まで移行する部分」は肘掛け部を支持しているといえるから、後者の「ベースフレーム1とは別部材の、複数回曲げられた対称形状のブラケットである1本の背もたれ支持部91」の「肘掛け部から下側に延びて下端まで移行する部分」は、前者の「前記脚装置とは別部材であって上下方向の鉛直姿勢に配置されて前記背もたれ支持フレームを支持する左右の支柱部」に相当し、後者の「座25の下側に延びている下端の部分」は、「肘掛け部から下側に延びて下端の部分まで移行する部分」と一体的に連続していることが明らかであるから、前者の「前記左右の支柱部と一体に連続して前記座の下に回り込んだ基部」に相当する。以上より、「ベースフレーム1とは別部材の、複数回曲げられた対称形状のブラケットである1本の背もたれ支持部91」の「肘掛け部から下側に延びて下端まで移行する部分と、座25の下側に延びている下端の部分」は、前者の「前記脚装置とは別部材であって上下方向の鉛直姿勢に配置されて前記背もたれ支持フレームを支持する左右の支柱部、及び、前記左右の支柱部と一体に連続して前記座の下に回り込んだ基部、を有するサイド支持体」に相当する。 e 前記bを踏まえると、後者の「背もたれ部92は、左右方向に長い形態であって平面視で後ろ向きに膨れるように円弧状に湾曲している」態様は、前者の「前記背もたれは、左右方向に長い形態であって平面視で後ろ向きに膨れるように円弧状に湾曲している」態様に相当する。 f 後者の「背もたれ支持部91は、背もたれ部92の後部を円弧状に囲むように平面視で湾曲した形態に形成されていて背もたれ部92の端と下端の間の高さ位置に配置されていると共に、左右両側の部位は肘掛け部として背もたれ部92よりも手前に延びて」いる態様は、「座25よりも高い位置において背もたれ部92の後部を円弧状に囲む肘掛け部」を特定している態様であることが明らかであるから、前者の「前記背もたれ支持フレームは、断面円形で前記背もたれを後ろから囲うように平面視で湾曲した形態に形成されていて全長に亙って同じ高さの水平姿勢であって前記背もたれの端と下端の間の高さ位置に配置されていると共に、左右両側の部位は前記背もたれよりも手前に延びて」いる態様と、「前記背もたれ支持フレームは、前記背もたれを後ろから囲うように平面視で湾曲した形態に形成されていて前記背もたれの端と下端の間の高さ位置に配置されていると共に、左右両側の部位は前記背もたれよりも手前に延びて」いる態様において共通している。 g 後者の「背もたれ支持部91の下端は座25から離反した状態で支持ユニット5のベースサポート50にヒンジで固定されている」態様は、前者の「前記サイド支持体の基部は前記座から離反した状態で前記ベースに取り付いている」態様に相当する。 h 以上の限りにおいて、後者の「椅子」は、前者の「椅子」に相当する。 i そうすると、両者は、 「ベース及びその上に配置された座受け部材を介して脚装置で支持された座と、 前記座と互いに分離した背もたれと、 前記座よりも高い位置において前記背もたれが取り付く1本の背もたれ支持フレームと、 前記脚装置とは別部材であって上下方向の鉛直姿勢に配置されて前記背もたれ支持フレームを支持する左右の支柱部、及び、前記左右の支柱部と一体に連続して前記座の下に回り込んだ基部、を有するサイド支持体と、 を有する椅子であって、 前記背もたれは、左右方向に長い形態であって平面視で後ろ向きに膨れるように円弧状に湾曲している一方、 前記背もたれ支持フレームは、前記背もたれを後ろから囲うように平面視で湾曲した形態に形成されていて前記背もたれの端と下端の間の高さ位置に配置されていると共に、左右両側の部位は前記背もたれよりも手前に延びており、 前記サイド支持体の基部は前記座から離反した状態で前記ベースに取り付いている、 椅子。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 背もたれ支持フレームに関し、本件発明1は、断面円形で、全長に亙って同じ高さの水平姿勢に配置されているのに対し、甲2発明は、断面形状は特定されておらず、また、全長に亙って同じ高さの水平姿勢となっていない点。 [相違点2] 支柱部に関し、本件発明1は、着座者の側を向いた広幅面と着座者と反対側を向いた広幅面とを有する板状の形態であって厚さは背もたれ支持フレームの外径よりも小さい寸法であるのに対し、甲2発明は、これらの点が特定されていない点。 (イ)判断 事案に鑑み、相違点2について検討する。 甲2発明の「座25よりも高い位置において背もたれ部92の後部を円弧状に囲む肘掛け部」も、「肘掛け部から下側に延びて下端の部分まで移行する部分」も、共に、「複数回曲げられた対称形状のブラケットである1本の背もたれ支持部91」の一部であり、さらに、甲2の13頁16~18行には「背もたれ91は、複数回曲げられた対称形状のブラケットであり、一体型のプラスチック射出成形部品として設計されることが好ましい。」ことが記載されていることから、甲2発明の背もたれ91の肘掛け部と、肘掛け部から下側に延びて下端の部分まで移行する部分とは一体に形成されるものといえる。 一方、背もたれを支持するフレームを支持する左右の支柱部を着座者の側を向いた広幅面と着座者と反対側を向いた広幅面とを有する略楕円筒状や板状の形態とする点は、甲1、甲3(<カンチレバー脚タイプ>の写真、<4本脚タイプ>の写真参照。)に記載されているが、当該甲1、甲3の記載事項を、一体型のプラスチック射出成形部品として設計されることが期待される甲2発明の背もたれ支持部91の一部である「肘掛け部から下側に延びて下端の部分まで移行する部分」だけに適用して、当該移行する部分を板状の形態とすると共に、その厚さを肘掛け部の外径よりも小さい寸法とすることに動機付けは存在せず、むしろ阻害要因があるといえる。 以上のとおりであるから、甲2発明において、甲1、甲3に記載された事項を踏まえ、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲1、甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を付加したものであるから、前記イ(イ)と同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 小括 本件発明1~4は、甲2発明及び甲1、甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。 したがって、本件特許の請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700476

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