特許異議申立
2024-701210
樹脂組成物
- 審判番号
- 2024-701210
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-164319
- 登録番号
- 7501583
- 請求日
- 2024年12月18日
- 審決日
- 2025年03月12日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】味の素株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 【異議申立人】平位 和也
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 浩子
- 審判官 松本 直子
- 審判官 岡谷 祐哉
- 分類
- P1651.121-Y (C08L) / P1651.163-Y (C08L) / P1651.536-Y (C08L) / P1651.537-Y (C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7501583号発明「樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7501583号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7501583号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成31年2月8日に出願した特願2019-22003号の一部を、令和4年10月12日に新たな出願(特願2022-164319号)としたものであって、令和6年6月10日にその特許権の設定登録(請求項の数15)がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和6年12月18日に、本件特許の請求項1~15に係る特許に対して、特許異議申立人 平位 和也(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~15に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明15」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定される次のとおりのものである。また、本件特許の願書に添付された明細書を「本件明細書」という。
「【請求項1】
(A)ビフェニル型構造を有するマレイミド化合物、
(B)液状又は半固形状の硬化剤、
(C)高分子量成分、及び
(H)重合開始剤を含む樹脂組成物であって、
(A)成分が、下記式(A-3)で表され、
(B)成分が、環状構造を有する(メタ)アクリル系非固形状硬化剤、下記式(B-1)で表されるベンゾオキサジン環を有するアリル系非固形状硬化剤、環状構造を有するカルボン酸誘導体を有するアリル系非固形状硬化剤、及び下記一般式(B-6)で表されるマレイミド系非固形状硬化剤から選ばれる少なくとも1種であり、
(C)成分が、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含む、樹脂組成物。
【化1】
[図:0001421400000001.jpg]
(式(A-3)中、R3及びR8はマレイミド基を表し、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、R9及びR10はそれぞれ独立に置換基を表す。a1及びb1はそれぞれ独立に0~4の整数を表し、m1及びm2はそれぞれ独立に1~10の整数を表し、nは1~100の整数を表す。)
【化2】
[図:0001421400000002.jpg]
(式(B-1)中、R20、及びR21はアリル基を表し、R22はq価の基を表す。qは1~4の整数を表し、p1は1~4の整数を表し、p2は0~2の整数を表す。)
【化3】
[図:0001421400000003.jpg]
(一般式(B-6)中、M4、M6及びM7はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表し、M5はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表し、R31及びR32はそれぞれ独立に炭素原子数が5以上のアルキル基を表す。t2は0~10の整数を表し、u1及びu2はそれぞれ独立に0~4の整数を表す。)
【請求項2】
(A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、10質量%以上40質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(B)成分が、前記(メタ)アクリル系非固形状硬化剤を含み、
(メタ)アクリル系非固形状硬化剤が有する環状構造が、脂環式構造を含む環状基であり、
脂環式構造を含む環状基における環の骨格を構成する原子が、ヘテロ原子を含む又は含まない、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(B)成分が、前記環状構造を有するカルボン酸誘導体を有するアリル系非固形状硬化剤を含み、
当該アリル系非固形状硬化剤が、環状構造を有するカルボン酸アリルであり、
環状構造を有するカルボン酸が、イソシアヌル酸、ジフェン酸、フタル酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(B)成分が、前記マレイミド系非固形状硬化剤を含み、
当該マレイミド系非固形状硬化剤が、下記式(3)で表される化合物を含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【化4】
[図:0001421400000004.jpg]
【請求項6】
(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1質量%以上15質量%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(C)成分が、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂及びフェノキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.5質量%以上10質量%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(D)無機充填材をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、50質量%以上である、請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
絶縁層形成用である、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
導体層を形成するための絶縁層形成用である、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
支持体と、該支持体上に設けられた、請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
【請求項15】
請求項14に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。」
(当審注:以下、式(A-3)等を記載する際に、構造式は省略する。)
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として甲第1~10号証(以下「甲第1号証」等を、「甲1」等という。)を提出し、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概略、以下の申立理由を主張する。
1 申立理由1(甲1に基づく拡大先願)
本件発明1~3、6~15は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲1の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲2を主引例とする進歩性)
本件発明1~15は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明及び甲3~10に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由3(明確性要件)
本件特許の請求項1~15に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由4(サポート要件)
本件特許の請求項1~15に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由5(実施可能要件)
本件特許の請求項1~15に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
6 申立書に添付して提出された証拠方法
甲1 :特願2018-105147号(特開2019-210319号公報)
甲2 :特開2018-053092号公報
甲3 :国際公開第2018/212116号
甲4 :特表2020-525575号公報
甲5 :国際公開第2017/170643号
甲6 :国際公開第2017/104295号
甲7 :特開2018-131513号公報
甲8 :国際公開第2018/016489号
甲9 :国際公開第2017/170844号
甲10:特表2017-511404号公報
第4 当審の判断
以下に述べるとおり、上記申立理由1~5は、いずれもその理由がない。
1 申立理由1(甲1に基づく拡大先願)について
本件特許の出願の時における出願人は、味の素株式会社であるところ、甲1の特許出願の出願人も、味の素株式会社であるから、両出願の出願人は同一である。
そして、特許法第29条の2のただし書によれば、本件特許の出願の時における出願人と、本件特許出願の日前の他の特許出願の出願人とが同一の者であるときは、特許法第29条の2の適用外であることが規定されている。
そうすると、本件発明と甲1に記載された発明との同一性について検討するまでもなく、申立理由1によっては本件発明1~15に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(甲2を主引例とする進歩性)について
(1)甲2~10に記載された事項(当審注:下線は当審において付した。)
ア 甲2に記載された事項及び発明
(ア)甲2には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
(A)分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂、
(B)芳香族構造を有するエポキシ樹脂、
(C)カルボジイミド化合物、
(D)ビフェニルアラルキル型樹脂(ただし、(B)成分に該当するものを除く)、及び
(E)無機充填剤、を含有する樹脂組成物。」
「【請求項11】
(D)成分が、分子内にマレイミド基を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
半導体チップパッケージの絶縁層用樹脂組成物である、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
支持体と、該支持体上に設けられた、請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、を有する樹脂シート。」
「【請求項16】
請求項15に記載の回路基板と、該回路基板上に搭載された半導体チップとを含む、半導体チップパッケージ。」
「【0018】
(A)成分は柔軟性を示すために高分子量であることが好ましく、数平均分子量(Mn)は、好ましくは1,000~1,000,000、より好ましくは5,000~9,00,000である。・・・」
「【0066】
(D)成分は、エポキシ基を有していないビフェニルアラルキル構造であれば特に限定されないが、下記式(2)で表される樹脂であることが好ましい。
【化2】
[図:0001421400000005.jpg]
(式中、R1は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又はフェニル基を表し、R2は、それぞれ独立にマレイミド基、シアネート基、又はアミノ基を表し、nは平均値であり1<n≦5を表し、mはそれぞれ独立に1~5の整数を表す。)」
「【0073】
式(2)で表される樹脂は、下記式(3)で表される樹脂であることが好ましい。
【化3】
[図:0001421400000006.jpg]
(式中、R1及びnは、式(2)中のものと同じでよい。)
【0074】
(D)成分は、市販品を使用してもよい。市販の(D)成分としては、例えば、日本化薬社製のMIR-3000、MIR-3000-70T等が挙げられる。」
「【0081】
<(F)硬化促進剤>
樹脂組成物は、(F)硬化促進剤を含み得る。硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられ、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。」
「【0089】
<(G)硬化剤>
樹脂組成物は(G)硬化剤を含み得る。硬化剤としては、(B)成分等の樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されず、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、及びシアネートエステル系硬化剤などが挙げられる。硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。(G)成分は、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤から選択される1種以上であることが好ましく、フェノール系硬化剤、及び活性エステル系硬化剤から選択される1種以上であることが好ましい。」
「【0094】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416-70BK」(DIC社製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱化学社製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱化学社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱化学社製)、「YLH1030」(三菱化学社製)、「YLH1048」(三菱化学社製)等が挙げられる。
【0095】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」が挙げられる。」
「【0219】
[実施例1]
液状エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ZX1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との1:1混合品(質量比)、エポキシ当量:169g/eq)10部、ナフタレン型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ESN475V」、エポキシ当量約330)20部、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱化学社製「630LSD」、エポキシ当量:90~105g/eq)10部、硬化促進剤(四国化成社製「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)1部、合成例1の(A)成分(固形分50%、数平均分子量:5500)300部、ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂(日本化薬製「MIR-3000-70MT」、マレイミド基当量:275g/eq、不揮発分70%のMEK/トルエン混合溶液)28.5部、カルボジイミド樹脂(日清紡ケミカル社製「V-03」、カルボジイミド当量216、不揮発成分50質量%のトルエン溶液)14部、SO-C4(アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製、平均粒径1μm))950部、およびメチルエチルケトン60部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。」
「【0229】
下記表中の主な略語等は以下のとおりである。
合成例1:合成例1の(A)成分
合成例2:合成例2の(A)成分
YX7400:ポリアルキレンオキシ構造含有樹脂、三菱化学社製
ZX1059:ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との1:1混合品(質量比)、エポキシ当量:169g/eq、新日鉄住金化学社製
630LSD:グリシジルアミン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:90~105g/eq、三菱化学社製
ESN475V:ナフトール型エポキシ樹脂、エポキシ当量約330、新日鉄住金化学社製
157S70:ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量210g/eq、三菱化学社製
HP-4710:ナフタレン型エポキシ樹脂、エポキシ当量160~180g/eq、DIC社製
V-03:カルボジイミド樹脂、カルボジイミド当量216、不揮発成分50質量%のトルエン溶液、日清紡ケミカル社製
MIR-3000-70MT:ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂、マレイミド基当量:275g/eq、不揮発分70%のMEK/トルエン混合溶液、日本化薬社製
SO-C4:アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製、平均粒径1μm)
SO-C2:アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製、平均粒径0.5μm)
1B2PZ:硬化促進剤、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、四国化成社製
HPC-8000-65T:活性エステル系硬化剤、活性基当量約225、不揮発成分65質量%のトルエン溶液、DIC社製
【0230】
【表1】
[図:0001421400000007.jpg]
」
(イ)甲2の請求項1及び11に記載の(A)~(E)成分を含有する樹脂組成物について、【0081】、【0089】及び実施例(表1)において、さらに(F)硬化促進剤及び(G)硬化剤を含有すること、(D)成分として、実施例で、日本化薬製「MIR-3000-70MT」のビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂を使用していることも考慮すると、甲2には、以下の発明が記載されているものと認める。
「(A)分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂、
(B)芳香族構造を有するエポキシ樹脂、
(C)カルボジイミド化合物、
(D)日本化薬製「MIR-3000-70MT」のビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂である、分子内にマレイミド基を有するビフェニルアラルキル型樹脂(ただし、(B)成分に該当するものを除く)、
(E)無機充填剤、
(F)硬化促進剤、
及び(G)硬化剤
を含有する樹脂組成物。」(以下「甲2発明」という。)
イ 甲5に記載された事項
「[請求項1] プリント配線基板における絶縁層を形成するために用いられる熱硬化性樹脂組成物であって、
下記一般式(B-1)または(B-2)で表されるベンゾオキサジン化合物と、
マレイミド化合物、エポキシ樹脂およびシアネート樹脂のうちの少なくとも一種を含有する熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、を含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
[化1]
[図:0001421400000008.jpg]
(上記一般式(B-1)中、aはそれぞれ独立に1以上3以下の整数を表し、pは1以上4以下の整数を表す。R1、R2はそれぞれ独立して、水素原子、低級アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、または1~4価の有機基を表すが、R1およびR2のうちの少なくとも一方が、炭素数3~14のアルケニル基を有する基である(ただし、pが2以上4以下の整数の場合には、R2が、同一または異なっていてもよい)。Zは、1~4価の有機基を表す。)
[化2]
[図:0001421400000009.jpg]
(上記一般式(B-2)中、bはそれぞれ独立に1以上4以下の整数を表し、qは1以上4以下の整数を表す。R3は、それぞれ独立して、水素原子、低級アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、または1~4価の有機基を表し、X1は、1~4価の有機基を表すが、R3およびX1のうちの少なくとも一方が、炭素数3~14のアルケニル基を有する基である。)」
「[0102](ベンゾオキサジン化合物)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、ベンゾオキサジン化合物を含む。
前述したように、本実施形態において、ベンゾオキサジン化合物は、不飽和二重結合を有する基を含有する。不飽和二重結合を有する基としては、炭素数3~14のアルケニル基が好ましく、アリル基がより好ましい。」
「[0106] [化22]
[図:0001421400000010.jpg]
(上記一般式(B-2)中、bはそれぞれ独立に1以上4以下の整数を表し、qは1以上4以下の整数を表す。R3は、それぞれ独立して、水素原子、低級アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、または1~4価の有機基を表し、X1は、1~4価の有機基を表すが、R3およびX1のうちの少なくとも一方が、炭素数3~14のアルケニル基である。)
また、上記一般式(B-2)中、qは2であってもよい。また、bは1であってもよい。
[0107] 本実施形態において、上記1~4価の有機基は、特に限定されないが、直接結合、アルキル基、アルキレン基、酸素原子、チオール、硫黄原子、スルホキシド、およびスルホンの他に、例えば、以下の化学式のいずれかを用いてもよい。なお、上記一般式(B-2)中における1~4価の有機基は、ビフェニル、ジフェニルメタン、ジフェニルイソプロパン、ジフェニルスルフィド、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、およびジフェニルケトンを用いてもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。」
「[0205] 実施例および比較例では、以下の原料を用いた。・・・
[0208](ベンゾオキサジン化合物)
ベンゾオキサジン化合物1・・・
[0209][化31]
[図:0001421400000011.jpg]
[0210]ベンゾオキサジン化合物2・・・
[0211][化32]
[図:0001421400000012.jpg]
[0212]ベンゾオキサジン化合物3・・・
[0213][化33]
[図:0001421400000013.jpg]
[0214] ベンゾオキサジン化合物4・・・
[0215][化34]
[図:0001421400000014.jpg]
」
ウ 甲6に記載された事項
「[請求項1] 一般式(1)の構造を有するオキサジン化合物であって、
前記一般式(1)が、一般式(4)または(5)で表される官能基R1を少なくとも2個以上有することを特徴とする、オキサジン化合物。
[化1]
[図:0001421400000015.jpg]
・・・(1)
(式(1)中、nは2~4の整数を表し、Yはそれぞれ独立して一般式(2)で表される構造であり、Xは一般式(3)のうちのいずれかで表される。
[化2]
[図:0001421400000016.jpg]
・・・(2)
(式(2)中、環Aは置換または無置換の芳香環を表し、a1は一般式(1)におけるXとの結合位置を表す)
[化3]
[図:0001421400000017.jpg]
・・・(3)
(式(3)中、Ar1~Ar6はそれぞれ独立して置換または無置換のアリール基を表し、
Ar7は置換または無置換のアリーレン基を表し、
n2は2から4の整数を表し、n3は1または2を表し、
Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立して単結合、窒素原子、酸素原子、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、エステル基、アミド基、イミノ基、アゾ基、スルフィド基、スルホン基及びこれらの基を組み合わせてなる基のいずれかであること表す。))
[化4]
[図:0001421400000018.jpg]
・・・(4)
(式(4)中、V1、V2、Q1はそれぞれ独立して単結合または2価の連結基を表し、
R2、R3及びR4は、水素原子、炭化水素基、又は、炭化水素基に含まれる1以上の水素原子が水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかで置換された炭化水素基を表し、
a2は、前記一般式(1)との結合点であることを表す。)
[化5]
[図:0001421400000019.jpg]
・・・(5)
(式(5)中、n4は2~6の整数を表し、V3及びV4はそれぞれ独立して単結合または2価の連結基を表し、
Q2はn4+1価の連結基を表し、
R5、R6及びR7は、水素原子、炭化水素基、又は炭化水素基に含まれる1以上の水素原子が水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかで置換された炭化水素基を表し、a3は、前記一般式(1)との結合点であることを表す。)」
「[請求項4]請求項1から3に記載のオキサジン化合物を含有することを特徴とする、組成物。
[請求項5]更に、反応性化合物を含有する、請求項4に記載の組成物。
[請求項6]前記反応性化合物がマレイミド基を有する化合物である、請求項5に記載の組成物。」
「[請求項15]請求項4~8のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする、半導体封止材。」
「[0038] <官能基R1>
本発明において、官能基R1は炭素-炭素間二重結合構造を有する基であり、具体的には前記式(4)または(5)で表される基である。本発明のオキサジン化合物は、オキサジン環の開環重合に由来する硬化反応と、炭素-炭素間二重結合の重合反応に由来する硬化反応の2つの硬化が進行するため、硬化した際に密な架橋構造を形成することから、耐熱性が大幅に向上する。特に、本発明のオキサジン化合物は、官能基R1を2つ以上有することを特徴としており、これは多官能化することで硬化物がより密な三次元架橋を形成し、より一層耐熱性が向上するためである。」
「[0163] 〔実施例1〕ベンゾオキサジン化合物(A-1)の合成・・・
[0164][化34]
[図:0001421400000020.jpg]
・・・(A-1)
[0165] 〔実施例2〕ベンゾオキサジン化合物(A-2)の合成・・・
[0166][化35]
[図:0001421400000021.jpg]
・・・(A-2)
[0167] 〔実施例3〕ベンゾオキサジン化合物(A-3)の合成・・・
[0168][化36]
[図:0001421400000022.jpg]
・・・(A-3)
[0169] 〔実施例4~6、及び比較例1~3〕組成物及び成形物の作成
実施例1~3で得られたベンゾオキサジン化合物(A-1、A-2、A-3)、比較用ジヒドロオキサジン化合物(四国化成製「P-d型ベンゾオキサジン」(4,4’-ジアミノジフェニルメタンとホルマリンとフェノールの反応生成物))、比較用ジアリル化合物(群栄化学工業製「ビスフェノールAジアリルエーテル」、ビスマレイミド化合物(大和化成工業株式会社製「BMI-1000」4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド)、ジクミルパーオキサイド(Aldrich社製)を表1に示す割合で配合し、組成物を調製した。官能基にアリル基を有する化合物については、官能基のmol比が「アリル基/マレイミド基=1/1」となるように調製した。
この組成物を以下の条件に付すことで硬化物を作製した。」
エ 甲3に記載された事項
「[請求項1] 下記式(0)の基:
[図:0001421400000023.jpg]
(式(0)中、Rは各々独立して、水素原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群より選ばれる)
を有する化合物を含有する、リソグラフィー用膜形成材料。
[請求項2] 前記式(0)の基を有する化合物が、ポリマレイミド化合物及びマレイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のリソグラフィー用膜形成材料。」
「[0053] また、本実施形態において、架橋性向上の観点から、少なくとも1つのアリル基を有する架橋剤を用いてもよい。少なくとも1つのアリル基を有する架橋剤の具体例としては、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン・・・等のアリルフェノール類、2,2-ビス(3-アリル-4-シアナトフェニル)プロパン・・・等のアリルシアネート類、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールアリルエーテル等が挙げられるが、これら例示されたものに限定されるものではない。これらは単独でも、2種類以上の混合物であってもよい。これらの中でも、ビスマレイミド化合物及び/又は付加重合型マレイミド樹脂との相溶性に優れるという観点から、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)エ-テル等のアリルフェノール類が好ましい。」
「[0146] <実施例33>
ビスマレイミド化合物として、下記式で表されるBMI-689(Designer Molecule社製)10質量部を単独で用いて、リソグラフィー用膜形成材料とした。
[化49]
[図:0001421400000024.jpg]
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEAへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は十分な溶解性を有するものと評価された。
前記リソグラフィー用膜形成材料10質量部に対し、溶媒としてPGMEAを90質量部加え、室温下、スターラーで少なくとも3時間以上攪拌させることにより、リソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。」
オ 甲4のファミリー文献である国際公開第2018/237377号に記載された事項
(当審注:原文は、英文であるから、日本語訳を示す。)
「1.式IA、IB、IC、及びIDのいずれかの構造を有する硬化可能なポリイミド:
[図:0001421400000025.jpg]
[図:0001421400000026.jpg]
・・・
式中、Rは、独立して、置換又は非置換の、脂肪族、脂環式、アルケニル、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、芳香族、ヘテロ芳香族、又はシロキサン部位であり、R’はアルコール官能化ジアミンであり;各Qは、独立して、置換又は非置換の、脂肪族、脂環式、アルケニル、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、芳香族、ヘテロ芳香族、又はシロキサン部位であり;各R’’はH又はメチルであり、zは独立して置換又は非置換の、脂肪族又は芳香族部位であり、n及びmは10から約100の値を有する整数であり、ただし硬化性ポリイミドの平均分子量は20,000ダルトンより大きい。」(請求項1)
「[0215] 他の実施形態では、硬化性官能化ポリイミドは、熱硬化性モノマー、反応性希釈剤、充填剤、難燃剤などの他のモノマーと組み合わせて、完全に配合された硬化性組成物を作製してもよい。
[0216] ポリイミド含有組成物での使用に適したコモノマーには、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、スチレン化合物、アリル官能化合物、エポキシ、エポキシ硬化剤、ベンゾオキサジン、シアン酸エステル、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、及びオレフィンが含まれるが、これらに限定されない。
[0217] 本発明の特定の実施形態では、ペンダント硬化性ポリイミドを有する組成物で使用されるコモノマーは、以下の一般的な例などの末端硬化性部位を含むポリイミドに基づいている。
[図:0001421400000027.jpg]
ここで、R及びQは、それぞれ独立して、置換又は非置換の脂肪族、アルケニル、芳香族又はシロキサンである;Xは硬化可能な部位である。
[0218]
上記の例の様々な分子量化合物は、カリフォルニア州サンディエゴのDesigner Molecules、Inc.から市販されている。化合物の例には、以下の商品名が含まれる:BMI-689;BCI-737;BCI-1500;BMI-1500;BMI-1550;BMI-1700;BCI-3000;BMI-3000;BMI-2500;BMI-4100;BMI-6000;BMI-6100及びILR-1363。」
「 ペンダント基を有するポリイミドの配合物
実施例15:熱硬化性配合物
[0312] 樹脂を、以下の表1に示す代表的な共反応物と2重量%のジクミルペルオキシドを加えて混合し、脱気し、175℃のオーブンで1時間硬化させた。上記の方法を使用して、硬化配合物のさまざまな特性を決定した。結果を表1にまとめる。
表1.
[図:0001421400000028.jpg]
」
「実施例17:UV硬化性配合物 1-C
[0316] 以下の成分を、混合しながら20gのアニソールに溶解した。
63wt% 樹脂1-C
20wt% BMI 2500
8wt% SR833S(トリシクロデカンジメタノール
ジアクリレート;
(Arkema Group)、エクストン、ペンシルバニア州)
3wt% トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート
2wt% 4META
2wt% Irgacure(登録商標)819
2wt% Irgacure(登録商標)784」
「[0343] 本明細書に記載の樹脂はすべて、薄膜に作製し、TGAを使用して分析した場合、350℃で1%未満の重量損失を有する。材料はUV硬化する必要があるため、適切にUV硬化するには、粘度が低く、重量損失がほとんどないかまったくない共反応物を追加する必要がある。好ましい共反応物には、トリ(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート;BMI-689(Designer Molecules、Inc.);1,10-デカンジオールジアクリレート;トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;及びトリメチロールプロパントリアクリレートが含まれるが、これに限定されない。共反応物は、典型的には、配合物に対して約5-20重量%で添加される。」
カ 甲7に記載された事項
「【請求項1】
下記式(1)で表されるマレイミド化合物(A)と、
シアン酸エステル化合物(B)と、
を含有する、樹脂組成物。
【化1】
[図:0001421400000029.jpg]
」
「【0051】(重合可能な不飽和基を有する化合物)
重合可能な不飽和基を有する化合物としては、一般に公知のものを使用でき、その種類は特に限定されない。その具体例としては、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等のビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1価又は多価アルコールの(メタ)アクリレート類;ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート類;アリルクロライド、酢酸アリル、アリルエーテル、プロピレン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等のアリル化合物、ベンゾシクロブテン樹脂が挙げられる。これらの重合可能な不飽和基を有する化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。」
「【0087】
(実施例1)
マレイミド化合物(A)として、下記式(1)で表される化合物(Designer Molecules Inc.製「BMI-689(R1155);Mw689、マレイミド当量344.5(g/eq.))57質量部、シアン酸エステル化合物(B)として、合成例1により得られたSNCN(シアネート当量:256g/eq.)43質量部、充填材(C)として、溶融シリカ((株)アドマテックス製、SC2050MB)100質量部、硬化促進剤として、トリフェニルイミダゾール(和光純薬工業(株)製)0.5質量部、及び、硬化促進剤として、オクチル酸亜鉛(日本化学産業(株)製)0.1質量部を混合してワニスを得た。なお、マレイミド化合物(A)のマレイミド基の基数(α)に対するシアン酸エステル化合物(B)のシアナト基(シアン酸エステル基)の基数(β)の比率(β/α)は、1.015であった。
【0088】
【化7】
[図:0001421400000030.jpg]
」
キ 甲8に記載された事項
「[請求項1] (A)飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有するマレイミド化合物と、熱可塑性樹脂と、を含有する樹脂組成物。」
「[請求項3] 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
[化1]
[図:0001421400000031.jpg]
[式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」
ク 甲9に記載された事項
「[請求項1]下記式(1)で表されるマレイミド基を有する化合物(A)と、アリル基またはメタリル基を有する化合物(B)を含有する熱硬化性樹脂組成物。
[図:0001421400000032.jpg]
(式(1)中、複数存在するR1はそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1~10のアルキル基もしくは芳香族基を表す。aは1~3を表す。nは整数でありその平均値は1<n≦5を表す。)」
「[0037] アリル基またはメタリル基を有する化合物(B)は、一般のクレゾールノボラック等の樹脂に比べ、難燃性に優れており、難燃剤としてハロゲンを添加させることなく難燃性を発現できうる組成物を製造でき、環境負荷に対して有用であり、かつ系の疎水性の高さから多少含まれる塩素等のイオン分の移動をとどめることができ、高い電気信頼性を有するだけでなく、低ハロゲンとこれらの構造の組み合わせは電気電子部品材料として重要である。」
ケ 甲10に記載された事項
「【請求項1】
(a)エチレン系ポリマーと、
(b)有機過酸化物と、
(c)式(I)または式(II)のいずれかの構造を有するジアリルイソシアヌレート架橋助剤と、を含み、
【化1】
[図:0001421400000033.jpg]
式中、Rは、14個以下の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基であり、
式中、Xは、二価脂肪族鎖または1つ以上の芳香族基を含有する二価ヒドロカルビル基である、架橋性ポリマー組成物。」
(2)本件発明1について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲2発明とを対比する。
本件明細書には、本件発明1の式(A-3)で表される(A)成分の市販品として、日本化薬社製「MIR-3000-70MT」(【0044】、【0293】、【0294】)が例示されているから、甲2発明の「(D)日本化薬製「MIR-3000-70MT」のビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂である、分子内にマレイミド基を有するビフェニルアラルキル型樹脂(ただし、(B)成分に該当するものを除く)」は、本件発明1の「(A)ビフェニル型構造を有するマレイミド化合物」であって、「(A)成分が、下記式(A-3)で表され」るものに相当する。
甲2発明の「(G)硬化剤」は、本件発明1の「(B)液状又は半固形状の硬化剤」であって「(B)成分が、環状構造を有する(メタ)アクリル系非固形状硬化剤、下記式(B-1)で表されるベンゾオキサジン環を有するアリル系非固形状硬化剤、環状構造を有するカルボン酸誘導体を有するアリル系非固形状硬化剤、及び下記一般式(B-6)で表されるマレイミド系非固形状硬化剤から選ばれる少なくとも1種」であるものと、「硬化剤」の限りにおいて一致する。
甲2発明の「(A)分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂」は、本件発明1の「(C)高分子量成分」であって「(C)成分が、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1つ」であるものと、「高分子量成分」の限りにおいて一致する。
甲2発明の「樹脂組成物」は、本件発明1の「樹脂組成物」に相当する。
(イ)そうすると、本件発明1と甲2発明とは、
「(A)ビフェニル型構造を有するマレイミド化合物、
(B’)硬化剤及び
(C’)高分子量成分を含む樹脂組成物であって、
(A)成分が、下記式(A-3)で表される、
樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
硬化剤が、本件発明1においては、「液状又は半固形状の硬化剤」であって「環状構造を有する(メタ)アクリル系非固形状硬化剤、下記式(B-1)で表されるベンゾオキサジン環を有するアリル系非固形状硬化剤、環状構造を有するカルボン酸誘導体を有するアリル系非固形状硬化剤、及び下記一般式(B-6)で表されるマレイミド系非固形状硬化剤から選ばれる少なくとも1種」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのような特定がない点
<相違点2>
高分子量成分が、本件発明1においては、「ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1つ」と特定されているのに対し、甲2発明においては、「分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂」である点
<相違点3>
本件発明1においては、「(H)重合開始剤」を含むのに対し、甲2発明においては、そのような特定がない点
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点1について判断する。
(ア)甲2には、「硬化剤としては、(B)成分等の樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されず、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、及びシアネートエステル系硬化剤などが挙げられる」(【0089】)と記載され、【0090】~【0096】には、種類の異なる多くの硬化剤が例示されている。その中の「ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例」である昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」(【0095】)は、いずれも、本件明細書の【0198】及び【0207】に示されるように、固体状の硬化剤であって、本件発明1の「下記式(B-1)で表されるベンゾオキサジン環を有するアリル系非固形状硬化剤」には該当せず、甲2には、本件発明1の「(B)液状又は半固形状の硬化剤」に相当する硬化剤は記載も示唆もされていない。また、甲2の実施例において用いられる硬化剤は、DIC社製の「HPC-8000-65T:活性エステル系硬化剤」であって、「ベンゾオキサジン系硬化剤」にも該当しない。
(イ)一方、甲5の請求項1、[0102]等には、一般式(B-1)または(B-2)で表されるベンゾオキサジン化合物を含む熱硬化性樹脂組成物が記載されており、このうち、「R3およびX1のうちの少なくとも一方が、炭素数3~14のアルケニル基」である「一般式(B-2)で表されるベンゾオキサジン化合物」は、本件発明1の「下記式(B-1)で表されるベンゾオキサジン環を有するアリル系非固形状硬化剤」を包含し得るものである。
また、甲6の請求項1には、一般式(1)の構造を有するオキサジン化合物が記載されており、当該オキサジン化合物は、「オキサジン環の開環重合に由来する硬化反応と、炭素-炭素間二重結合の重合反応に由来する硬化反応の2つの硬化」([0038])を進行させるために用いられるものであって、一般式(1)の構造を有するベンゾオキサジン化合物は、「一般式(4)または(5)で表される官能基R1」が「炭素-炭素間二重結合構造を有する基」であることから、本件発明1の「下記式(B-1)で表されるベンゾオキサジン環を有するアリル系非固形状硬化剤」を包含し得るものである。
しかし、甲2には、上記のとおり、硬化剤としては、樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されない、種類の異なる多くの硬化剤が例示されているに過ぎず、本件発明1の「下記式(B-1)で表されるベンゾオキサジン環を有するアリル系非固形状硬化剤」等の「(B)液状又は半固形状の硬化剤」については記載も示唆もされていないところ、甲2発明において、数多く存在する公知の硬化剤の中から、甲5及び甲6に記載のベンゾオキサジン化合物をあえて選択する動機を見いだせない。しかも、甲5及び甲6の各実施例には、本件発明1の「下記式(B-1)」に該当するベンゾオキサジン化合物が具体的に開示されているわけでもないから、甲2発明において、甲5及び甲6に記載のベンゾオキサジン化合物の中でも、本件発明1の「下記式(B-1)で表されるベンゾオキサジン環を有するアリル系非固形状硬化剤」を選択することが容易であるともいえない。
したがって、甲5及び甲6の記載を考慮したとしても、甲2発明において、本件発明1の「(B)液状又は半固形状の硬化剤」であって「環状構造を有する(メタ)アクリル系非固形状硬化剤、下記式(B-1)で表されるベンゾオキサジン環を有するアリル系非固形状硬化剤、環状構造を有するカルボン酸誘導体を有するアリル系非固形状硬化剤、及び下記一般式(B-6)で表されるマレイミド系非固形状硬化剤から選ばれる少なくとも1種」であるものを採用することは、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
(ウ)さらに、甲3には、リソグラフィー用膜形成材料における架橋剤として、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、トリアリルイソシアヌレート([0053])が、ビスマレイミド化合物としてBMI-689([0146])がそれぞれ記載されており、甲4には、硬化可能なポリイミドを配合する熱硬化性配合物において、共反応物として、BMI-689、SR-833S(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、トリアリルイソシアヌレート等(【0352】)が記載されており、甲7には、樹脂組成物において、式(1)で表されるマレイミド化合物(A)(BMI-689)を含有し(請求項1、【0087】、【0088】)、また、重合可能な不飽和基を有する化合物として、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等のアリル化合物を用いることができること(【0051】)も記載されており、甲10には、架橋性ポリマー組成物において、式(I)又は式(II)のいずれかの構造を有するジアリルイソシアヌレート架橋助剤を含むこと(請求項1)が記載されている。
ここで、甲3、4、7及び10に記載の上記化合物は、本件発明1の「(B)液状又は半固形状の硬化剤」に相当するものである。
また、甲8には、飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有するマレイミド化合物と、熱可塑性樹脂と、を含有する樹脂組成物(請求項1)について記載されており、甲9には、式(1)で表されるマレイミド基を有する化合物(A)と、難燃性を発現できるアリル基又はメタリル基を有する化合物(B)を含有する熱硬化性樹脂組成物(請求項1、[0037])について記載されているものの、本件発明1の「(B)液状又は半固形状の硬化剤」に相当する化合物については、記載も示唆もない。
そうすると、上記(イ)の甲5及び6に加え、甲3、4、7~10の記載、特に甲3、4、7及び10に、本件発明1の「(B)液状又は半固形状の硬化剤」に相当する化合物が記載されていることを考慮したとしても、甲2発明において、数多く存在する公知の硬化剤の中から、甲3~7及び10に記載の化合物をあえて選択する動機を見いだせない。
(エ)したがって、甲2発明において、硬化剤として、相違点1に係る「(B)液状又は半固形状の硬化剤」であって「環状構造を有する(メタ)アクリル系非固形状硬化剤、下記式(B-1)で表されるベンゾオキサジン環を有するアリル系非固形状硬化剤、環状構造を有するカルボン酸誘導体を有するアリル系非固形状硬化剤、及び下記一般式(B-6)で表されるマレイミド系非固形状硬化剤から選ばれる少なくとも1種」であるものを選択することは、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
ウ 本件発明1の効果について
本件明細書の記載(【0010】)によれば、本件発明1の効果は、「ラミネート性に優れ、誘電特性、密着性に優れる硬化物を得ることができる樹脂組成物」を提供できることと認められる。
そして、本件明細書の実施例5、6、9、15~23には、本件発明1の(A)成分~(C)成分及び(H)成分を含む樹脂組成物を支持体に塗布して作成した樹脂シートAを用いて、メッキ導体層のピール強度、銅箔引き剥がし強度及び誘電特性(誘電率、誘電正接)の測定、ラミネートの評価を行ったことが記載されており、これらの実施例においては、(B)成分を欠く比較例1、(C)成分を欠く比較例2、(A)成分に代えて、ポリフェニルメタンマレイミド(大和化成工社製「BMI2300」)を含有した比較例3に比べて、優れた結果が得られており、「ラミネート性に優れ、誘電特性及び密着性に優れる硬化物を得ることができる樹脂組成物」を提供できるという本件発明1の効果が確認されている。
本件発明1の(A)成分~(C)成分及び(H)成分を含む樹脂組成物を用いたことによる上記効果は、甲2~10の記載から、当業者が予測することができるものではない。
エ 小括
以上のとおり、相違点1については、当業者が容易に想到できたものであるとはいえないから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲3~甲10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2~15について
本件発明2~15は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであって、上記(2)アに挙げたものと同一の相違点を少なくとも有するから、上記(2)イにおいて説示したように、いずれも甲2に記載された発明及び甲3~甲10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)申立人の主張について
ア 申立人は、本件発明1と甲2発明との相違点の1つとして、下記「相違点1」を挙げ、当該相違点1について以下の点を主張する(申立書135頁下から9~6行、最終行~136頁4行)。
「<相違点1>
本件特許発明1では、ベンゾオキサジン環を有するアリル系非固形状硬化剤が使用されているのに対し、甲2発明では、ベンゾオキサジン系硬化剤が使用されている点。」
「上記の相違点1について検討するに、甲5の段落0102及び甲6の段落0169には、アリル基を有するベンゾオキサジン化合物が記載されている。これらのことから、甲2発明の「ベンゾオキサジン系硬化剤」として、「アリル基を有するベンゾオキサジン化合物」を採用することは当業者が容易に想到し得ることである。」
イ 上記主張については、上記(2)イ(イ)において説示したとおりである。
(5)申立理由2についてのまとめ
よって、本件発明1~15は、甲2に記載された発明及び甲3~甲10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、申立理由2によっては本件発明1~15に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由3(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、本件明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
ア 申立人の主張
申立人は、以下の点を主張する(申立書143頁12行~144頁12行)。
(ア)請求項1には、「(式(A-3)中、(中略)R9及びR10はそれぞれ独立に置換基を表す。(後略))」と記載されているが、「置換基」が具体的に何を示しているか不明である。
(イ)請求項1には、「(式(B-1)中、(中略)R22はq価の基を表す。qは1~4の整数を表し、(後略))」と記載されているが、「基」が具体的に何を示しているか不明である。
(ウ)請求項1には、「(一般式(B-6)中、M4、M6及びM7はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表し、M5はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表し、R31及びR32はそれぞれ独立に炭素原子数が5以上のアルキル基を表す。(後略))」と記載されているが、「置換基」(2箇所)が具体的に何を示しているか不明である。
また「炭素原子数が5以上のアルキレン基」及び「炭素原子数が5以上のアルキル基」の炭素原子数については、下限だけを示すような数値範囲限定がある結果、発明の範囲が不明確となっている。
(エ)請求項10には、「(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、50質量%以上である」と記載されているが、上記の記載については、下限だけを示すような数値範囲限定がある結果、発明の範囲が不明確となっている。
イ 検討
上記アの申立人の主張について検討する。
(ア)上記ア(ア)について
請求項1に記載された式(A-3)における「置換基」は、ベンゼン環に置換する水素以外の基であれば特に制限されないものであることは明確に理解でき、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(イ)上記ア(イ)について
請求項1に記載された式(B-1)のR22における「q価の基」は、ベンゾオキサジン環の窒素に結合する基であれば特に制限されないものであることは明確に理解でき、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(ウ)上記ア(ウ)について
請求項1に記載された式(B-6)における「置換基」は、炭素数5以上のアルキレン基又は芳香環を有する2価の基に置換する水素以外の基であれば特に制限されないものであることが明らかであり、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
また、「炭素原子数が5以上」という数値範囲については、アルキレン基又はアルキル基の「炭素原子数」が「5以上」であれば該当することは明確に理解でき、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(エ)上記ア(エ)について
請求項10に記載された「50質量%以上」という数値範囲については、「(D)成分の含有量」が、「樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、50質量%以上」であれば該当することは明確に理解でき、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
以上のことから、申立人の主張はいずれも採用できず、また、本件発明1~15には、その他の不明確な点は見いだせないから、本件発明1~15は明確である。
(3)申立理由3についてのまとめ
したがって、本件発明1~15は明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合するから、申立理由3によっては本件発明1~15に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由4(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
ア 本件発明が解決しようとする課題
本件明細書の【0007】によると、本件発明の解決しようとする課題(以下「本件発明の課題」という。)は「ラミネート性に優れ、誘電特性、密着性に優れる硬化物を得ることができる樹脂組成物;当該樹脂組成物を含む樹脂シート;当該樹脂組成物を用いて形成された絶縁層を備えるプリント配線板、及び半導体装置を提供すること」である。
イ 本件発明1について
本件明細書には、背景技術として、一般に、マレイミド化合物を樹脂組成物に含有させると、誘電特性に優れるようになるが、マレイミド化合物は通常軟化点が高いため、マレイミド化合物を樹脂組成物に含有させると樹脂組成物及びその硬化物は脆くなってしまったこと、また、マレイミド化合物を含有する樹脂組成物を含む樹脂シートを、凹凸がある基板上にラミネートして絶縁層を形成すると、絶縁層の基板とは反対側の表面が基板の凹凸に追従して絶縁層の平坦性が低下し、ラミネート性が劣ることがあったことが記載されている(【0006】)。
これに対し、本件発明1は、「所定のマレイミド化合物、液状又は半固形状の硬化剤及び高分子量成分を含有させることで、上記課題を解決し得ることを見出し」たものであり(【0008】)、「(A)~(C)成分を含有させることで、ラミネート性に優れ、誘電特性及び密着性に優れる硬化物を得ることができる」(【0013】)ことが示されている。
そして、本件明細書には、本件発明1の各成分について、樹脂組成物に、(A)成分として「(A)ビフェニル型構造を有するマレイミド化合物」を含有させることで、「誘電特性に優れる硬化物を得ることが可能となる」(【0015】)ことが記載され、好ましい構造として、式(A-3)により表される構造が示されており(【0026】)、また、(B)成分として「(B)液状又は半固形状の硬化剤」を含有させることにより、「ラミネート性を向上させることが可能となり、さらに密着性に優れる硬化物を得ることが可能となる」(【0046】)ことが記載され、好ましい硬化剤として、【0057】、【0070】~【0072】、【0099】、【0111】~【0112】に、本件発明1の(B)成分に該当するものが記載されており、さらに、(C)成分として「高分子量成分」を含有させることで、「樹脂組成物の応力が緩和され、その結果、誘電特性に優れる硬化物を得ることが可能となる」(【0131】)ことが記載され、【0133】に、本件発明1の(C)成分に該当する樹脂が記載されており、(A)~(C)成分が、それぞれ本件発明の課題の解決にどのように寄与するかも具体的に示されている。また、本件明細書の【0236】には、「樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(H)成分として重合開始剤を含んでいてよい」ことが記載されており、【0239】には、「(H)成分の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%・・・であり・・・」と記載されているから、(H)成分が、本件発明の課題の解決に寄与することも示されているといえる。
さらに、本件明細書の実施例(【0288】~【0346】)によれば、本件明細書の実施例5、6、9、15~23には、本件発明1の(A)~(C)成分及び(H)成分を含む樹脂組成物を支持体に塗布して作成した樹脂シートAを用いて、メッキ導体層のピール強度、銅箔引き剥がし強度及び誘電特性(誘電率、誘電正接)の測定、ラミネートの評価を行ったことが記載されており、(B)成分を欠く比較例1、(C)成分を欠く比較例2、(A)成分に代えて、ポリフェニルメタンマレイミド(大和化成工社製「BMI2300」)を含有した比較例3に比べて、優れた結果が得られており、本件発明1の(A)~(C)成分及び(H)成分を含む樹脂組成物が、「ラミネート性に優れ、誘電特性及び密着性に優れる硬化物を得ることができる樹脂組成物」を提供できるという本件発明の課題を解決できたことが確認されている。
そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明の記載から、本件発明1が、(A)~(C)成分及び(H)成分を含有することで本件発明の課題が解決できることを、当業者は認識できるといえる。
したがって、本件発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
ウ 本件発明2~15について
本件発明2~15は、本件発明1をさらに特定したものであるから、上記イに説示した本件発明1と同様に、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
(3)申立人の主張について
ア 申立人は、以下の点を主張する(申立書144頁13行~148頁9行)。
(ア)(A)成分について
本件発明1に記載の式(A-3)では、R4、R5、R6、R7、R9、R10、a1、b1、m1、m2及びnの各々の選択肢が多く、その組合せも多岐にわたるにもかかわらず、本件明細書に記載の実施例3~23では、「MIR-3000-70MT」のみが使用されているに過ぎないから、本件発明の範囲まで拡張、一般化もできず、当該発明の課題を解決できると認識できない。
(イ)(C)成分について
本件明細書に記載の実施例3~23では、本件発明1の(C)成分における12種類の樹脂のうち、ポリイミド樹脂(合成例のポリイミド樹脂)、ポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製「FPC2136」)、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」)、ポリアミドイミド樹脂(DIC社製「ユニディックV-8000」)、ポリスチレン樹脂(旭化成社製「H1043」、CRAY VALLEY社製「EF-40」)及びポリエステル樹脂の6種類の樹脂が使用されているに過ぎず、残りの6種類の樹脂、すなわち、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂及びポリエーテルエーテルケトン樹脂については実施例による効果の検証がされていないから、本件発明の範囲まで拡張、一般化もできず、当該発明の課題を解決できると認識できない。
(ウ)(H)成分について
本件発明1の「(H)重合開始剤」は、本件明細書の段落0236~0238を参酌すると、その具体例は多く、2種類以上の併用も想定されているため、その組合せも多岐にわたるにもかかわらず、本件明細書に記載の実施例3~23では、(H)成分として、日油社製の「パーブチルC」(t-ブチルクミルパーオキシド)のみが使用されているに過ぎないから、本件発明の範囲まで拡張、一般化もできず、当該発明の課題を解決できると認識できない。
(エ)(D)成分について
本件発明1には、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(H)成分が必須の成分として記載されている一方、本件明細書には、(D)成分(無機充填材)は、任意の成分として記載されている(段落0014及び0186参照)が、本件明細書の段落0190、0192、0197の記載によれば、本件発明の効果に影響を与える成分であるといえ、また、(D)成分を含まない実施例が存在しないので、必須の成分のみによって所望の効果が発揮されているとはいえないから、本件発明の範囲まで拡張、一般化もできず、当該発明の課題を解決できると認識できない。
(オ)(A)成分の含有量について
本件発明1では(A)成分の含有量が規定されておらず、一方、本件発明2では、「(A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、10質量%以上40質量%以下である」と規定されているが、(A)成分は、課題の解決に不可欠な成分でありながら、実際にその効果の検証がなされているのは、約27.3(実施例4)~28.0質量%(実施例5等)といった極めて狭い範囲に過ぎないから、本件発明の範囲まで拡張、一般化もできず、当該発明の課題を解決できると認識できない。
(カ)(B)成分の含有量について
本件発明1では、(B)成分の含有量が規定されておらず、一方、本件発明6では、「(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1質量%以上15質量%以下である」と規定されているが、(B)成分は、課題の解決に不可欠な成分でありながら、実際にその効果の検証がなされているのは、約1.1(実施例15)~4.4質量%(実施例3)といった極めて狭い範囲に過ぎないから、本件発明の範囲まで拡張、一般化もできず、当該発明の課題を解決できると認識できない。
(キ)(C)成分の含有量について
本件発明1では、(C)成分の含有量が規定されておらず、一方、本件発明8では、「(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.5質量%以上10質量%以下である」と規定されているが、(C)成分は、課題の解決に不可欠な成分でありながら、実際にその効果の検証がなされているのは、約2.2質量%といった一点のみのデータに過ぎないから、本件発明の範囲まで拡張、一般化もできず、当該発明の課題を解決できると認識できない。
(ク)(H)成分の含有量について
本件発明1では、(H)成分の含有量が規定されておらず、一方、本件明細書の段落0239には、(H)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.01質量%以上1質量%以下である旨が記載されているが、(H)成分は、課題の解決に不可欠な成分でありながら、実際にその効果の検証がなされているのは、約0.01質量%といった一点のみのデータに過ぎないから、本件発明の範囲まで拡張、一般化もできず、当該発明の課題を解決できると認識できない。
イ 検討
まず、上記(2)イにおいて説示したとおり、本件明細書の発明の詳細な説明の記載から、本件発明1が、(A)~(C)成分及び(H)成分を含有することで本件発明の課題が解決できることを、当業者は認識できるといえる。
(ア)上記ア(ア)について
式(A-3)で表される(A)成分は、本件明細書の【0006】及び【0016】に示されるように、誘電特性に優れるマレイミド基を分子中に含有する化合物であって、さらに誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、ビフェニル型構造を有するという点で共通するものであり、実施例において具体的に用いられている「MIR-3000-70MT」も当該共通構造を有するものである。
そして、申立人は、上記共通構造を有する式(A-3)において、R4、R5、R6、R7、R9、R10、a1、b1、m1、m2及びnの各々の選択肢を有することにより、上記課題が解決できないとする具体的な根拠を示していないことから、上記主張は上記(2)イの判断に影響しない。
(イ)上記ア(イ)について
本件明細書には、(C)成分として、12種類の樹脂から選択される「高分子量成分」を含有させることで、「樹脂組成物の応力が緩和され、その結果、誘電特性に優れる硬化物を得ることが可能となる」(【0131】)ことが記載されており、本件明細書の実施例において、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリエステル樹脂の6種類の樹脂を用いたことにより、樹脂の種類によらず、同様の作用効果を有することが確認されており、上記6種類以外の樹脂についても、同様に樹脂組成物の応力の緩和に寄与するために用い得ることが理解できる。
そして、申立人は、(C)成分について、上記6種類以外の樹脂を用いることにより、上記課題が解決できないとする具体的な根拠を示していないことから、上記主張は上記(2)イの判断に影響しない。
(ウ)上記ア(ウ)及び(ク)について
「(H)重合開始剤」は、本件明細書の【0236】において、含んでも良いとされる成分であって、重合開始剤として機能する成分や量を用いればよいことが理解でき、実施例1及び2においては、(H)成分を含有しなくても、実施例5等と同程度の効果を有することが示されていたことをみても、本件発明1において、(H)成分の種類及びその含有量を特定しなければ、本件発明の課題が解決できないとはいえない。
そして、申立人は、(H)成分について、日油社製の「パーブチルC」(t-ブチルクミルパーオキシド)以外のものを用いることにより、また、その含有量を特定しないことにより、上記課題が解決できないとする具体的な根拠を示していないことから、上記主張は上記(2)イの判断に影響しない。
(エ)上記ア(エ)について
上記のとおり、本件明細書の実施例においては、(A)~(C)成分のいずれかを欠く比較例1~3に比べて、本件発明1の実施例にあたる実施例5等において、優れた効果が得られることが示されており、一方、(D)成分は、全ての実施例だけでなく、比較例にも配合されている成分であるから、実施例における効果が、(A)~(C)成分の組合せによるものであることを当業者は認識できる。
そして、「(D)無機充填材」は、本件明細書の【0186】において、含有していてもよいとされる任意の成分であったことも示されているから、本件発明1において、(D)成分の含有を特定しなければ、本件発明の課題が解決できないとはいえない。
そして、申立人は、(D)成分について、上記課題が解決できないとする具体的な根拠を示していないことから、上記主張は上記(2)イの判断に影響しない。
(オ)上記ア(オ)~(キ)について
上記のとおり、本件明細書の実施例においては、(A)~(C)成分のいずれかを含有しない比較例1~3に比べて、本件発明1の実施例にあたる実施例5等において、優れた効果が得られることが示されており、(A)~(C)成分の含有量によって、効果の多少の差異があるとしても、実施例における効果が、(A)~(C)成分の組合せによるものであることを当業者は認識できる。
そして、申立人は、(A)~(C)成分の含有量によっては、上記課題が解決できないとする具体的な根拠を示していないことから、上記主張は上記(2)イの判断に影響しない。
以上のとおりであるから、上記アの主張はいずれも採用できない。
(4)申立理由4についてのまとめ
よって、本件発明1~15は、サポート要件を満たしており、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するから、申立理由4によっては本件発明1~15に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由5(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第2のとおり、本件発明1~15は物の発明であるところ、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、物の発明にあっては、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
本件明細書には、上記4(2)イにも示したように、本件発明1~8について、「(A)~(C)成分を含有させることで、ラミネート性に優れ、誘電特性及び密着性に優れる硬化物を得ることができる」(【0013】)ことや、(A)~(C)成分及び(H)成分の配合目的、具体的な構造の説明及び好ましい含有量について具体的に記載されており(【0015】~【0185】、【0236】~【0239】)、樹脂組成物の調製方法についても具体的に記載されている(【0241】)。
さらに、本件発明9及び10で特定される「(D)無機充填材」についても、任意の成分として含有していてもよく、含有する場合の無機充填材の材料の例や含有量を含めて具体的に記載されており(【0186】~【0197】)、本件発明11~15の樹脂組成物の物性、用途についても具体的に記載されている(【0242】~【0287】)。
そして、本件明細書の実施例(【0288】~【0346】)によれば、本件明細書の実施例5、6、9、15~23には、本件発明1の(A)成分~(C)成分及び(H)成分を含む樹脂組成物を支持体に塗布して作成した樹脂シートAを用いて、メッキ導体層のピール強度、銅箔引き剥がし強度及び誘電特性(誘電率、誘電正接)の測定、ラミネートの評価を行ったことが記載されており、これらによれば、「ラミネート性に優れ、誘電特性及び密着性に優れる硬化物を得ることができる樹脂組成物」並びにこれを用いた樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置を提供できるという本件発明1~15の効果が確認されている。
したがって、本件発明1~15について、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があるといえる。
(3)申立人の主張について
ア 申立人は、以下の点を主張する(申立書148頁10行~150頁下から4行)。
(ア)(A)成分について
上記4(3)ア(ア)でも述べたとおり、本件発明1に記載の式(A-3)が、「MIR-3000-70MT」以外の場合であっても、実施可能か否かが不明である。
(イ)(C)成分について
上記4(3)ア(イ)でも述べたとおり、本件発明1に記載のポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂及びポリエーテルエーテルケトン樹脂については、実施例による効果の検証がされていないから、実施可能か否かが不明である。
(ウ)(H)成分について
上記4(3)ア(ウ)でも述べたとおり、本件発明1の(H)重合開始剤については、「パーブチルC」(t-ブチルクミルパーオキシド)以外のものを使用した実施例による効果の検証がされていないから、実施可能か否かが不明である。
(エ)(D)成分について
上記4(3)ア(エ)でも述べたとおり、本件明細書には、必須の成分である(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(H)成分のみを使用した実施例が存在せず、任意の成分である(D)成分は、必須の成分よりも含有量が多いため、効果に対する影響も大きいものと考えられるところ、必須の成分のみによって効果の検証がなされていないので、実施可能か否かが不明である。
(オ)(A)成分の含有量について
上記4(3)ア(オ)でも述べたとおり、本件発明1及び2において、(A)成分の含有量が10~27.3質量%又は28.0~40質量%であっても、実施可能か否かが不明である。
(カ)(B)成分の含有量について
上記4(3)ア(カ)でも述べたとおり、本件発明1及び6において、(B)成分の含有量が0.1~1.1質量%又は4.4~15質量%であっても、実施可能か否かが不明である。
(キ)(C)成分の含有量について
上記4(3)ア(キ)でも述べたとおり、本件発明1及び8において、(C)成分の含有量が0.5~10質量%(ただし、2.2質量%を除く)であっても、実施可能か否かが不明。
(ク)(H)成分の含有量について
上記4(3)ア(ク)でも述べたとおり、本件発明1において、(H)成分の含有量が0.11質量%以外の場合であっても、実施可能か否かが不明である。
イ 検討
(ア)上記ア(ア)~(ウ)、(オ)~(ク)について
上記(2)において説示したとおり、本件明細書には、本件発明1~8の「(A)~(C)成分を含有させることで、ラミネート性に優れ、誘電特性及び密着性に優れる硬化物を得ることができる」(【0013】)ことや、(A)~(C)成分及び(H)成分の配合目的、具体的な構造の説明及び好ましい含有量について具体的に記載されており(【0015】~【0185】、【0236】~【0239】)、本件明細書の実施例5、6、9、15~23において、各成分を配合した樹脂組成物の評価についても具体的に示されているから、本件発明1~15について、特定された各成分を配合して、樹脂組成物を製造し、使用することは、当業者が過度の試行錯誤を要することなくなし得ることといえる。
そして、申立人は、(A)~(C)成分及び(H)成分並びにそれらの含有量について、実施例に記載のものや含有量以外では製造及び使用ができないとする具体的な根拠を示していないことから、上記主張は上記(2)の判断に影響しない。
(イ)上記ア(エ)の(D)成分について
本件明細書には、「(D)無機充填材」についても、任意の成分として含有していてもよく、含有する場合の無機充填材の材料の例や含有量を含めて具体的に記載されているから(【0186】~【0197】)、本件発明1~15について、(D)成分の配合の有無を含めて、特定された各成分の配合を本件明細書の記載に基づいて検討して、樹脂組成物を製造し、使用することは、当業者が過度の試行錯誤を要することなくなし得ることといえる。
そして、申立人は、(D)成分を含有することを特定しなければ、本件発明1~15についての製造及び使用ができないとする具体的な根拠を示していないことから、上記主張は上記(2)の判断に影響しない。
(4)申立理由5についてのまとめ
よって、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~15について実施可能要件を満たしており、特許法第36条第4項第1号に規定する要件に適合するから、申立理由5によっては本件発明1~15に係る特許を取り消すことはできない。
第5 まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701210