特許異議申立
2024-700932
魚介風味増強剤
- 審判番号
- 2024-700932
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-223154
- 登録番号
- 7459494
- 請求日
- 2024年09月26日
- 審決日
- 2025年07月30日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】味の素株式会社
- 【権利者代理人】高島 一
- 【権利者代理人】鎌田 光宜
- 【権利者代理人】土井 京子
- 【異議申立人】寺澤 佳奈美
- 審判長/審判官
- 審判長 柴田 昌弘
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 松本 陶子
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7459494号発明「魚介風味増強剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7459494号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2-3〕、4、〔5-6〕、7、〔8-9〕、10について訂正することを認める。
特許第7459494号の請求項2、3、5、6、8及び9に係る特許を維持する。
特許第7459494号の請求項1、4、7及び10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7459494号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、
令和1年12月10日(優先日:平成31年1月18日)の出願であって、
令和6年3月25日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、
令和6年4月2日に特許掲載公報が発行され、
その後、その特許に対し、
令和6年9月26日に特許異議申立人 寺澤 佳奈美(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:1~10)がされ、
令和6年10月25日に手続補正書(方式)が提出され、
令和7年1月30日付けで取消理由が通知され、
令和7年4月4日に特許権者 味の素株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、
令和7年5月21日付けで特許異議申立人に対し訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)が通知され、それに対し特許異議申立人からは何ら応答がなかったものである。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容について
令和7年4月4日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2を、独立形式に改めるとともに、
「S-アリルシステインスルフォキシドを含む、魚介風味増強剤であって、喫食時の魚介風味を有する飲食品に対して0.5~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加され、S-アリルシステインスルフォキシドの純度が20重量%以上であることを特徴とする、魚介風味増強剤。」に訂正する。併せて、請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項3を、請求項1又は2に従属するものから、請求項2に従属するものに訂正する。
(4)訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項4を引用する請求項5を、独立形式に改めるとともに、
「魚介風味を有する飲食品に、S-アリルシステインスルフォキシドを配合することを含む、飲食品の魚介風味を増強する方法であって、喫食時の魚介風味を有する飲食品に対して0.5~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加され、S-アリルシステインスルフォキシドの純度が20重量%以上であることを特徴とする、方法。」に訂正する。併せて、請求項5の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。
(6)訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項6を、請求項4又は5に従属するものから、請求項5に従属するものに訂正する。
(7)訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(8)訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項7を引用する請求項8を、独立形式に改めるとともに、
「魚介風味を有する飲食品に、S-アリルシステインスルフォキシドを配合することを含む、魚介風味が増強された飲食品の製造方法であって、喫食時の魚介風味を有する飲食品に対して0.5~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加され、S-アリルシステインスルフォキシドの純度が20重量%以上であることを特徴とする、製造方法。」に訂正する。併せて、請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。
(9)訂正事項9
訂正前の特許請求の範囲の請求項9を、請求項7又は8に従属するものから、請求項8に従属するものに訂正する。
(10)訂正事項10
訂正前の特許請求の範囲の請求項10を削除する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2による請求項2についての訂正は、訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載を請求項1を引用しない独立形式に書き下し、S-アリルシステインスルフォキシドの濃度の下限値を「0.1」から「0.5」に限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3による請求項3についての訂正は、引用請求項を削減するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3による請求項3についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4による請求項4についての訂正は、請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項4による請求項4についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5による請求項5についての訂正は、訂正前の請求項4の記載を引用する請求項5の記載を請求項4を引用しない独立形式に書き下し、S-アリルシステインスルフォキシドの濃度の下限値を「0.1」から「0.5」に限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項5による請求項5についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項6について
訂正事項6による請求項6についての訂正は、引用請求項を削減するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項6による請求項6についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項7について
訂正事項7による請求項7についての訂正は、請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項7による請求項7についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)訂正事項8について
訂正事項8による請求項8についての訂正は、訂正前の請求項7の記載を引用する請求項8の記載を請求項7を引用しない独立形式に書き下し、S-アリルシステインスルフォキシドの濃度の下限値を「0.1」から「0.5」に限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項8による請求項8についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(9)訂正事項9について
訂正事項9による請求項9についての訂正は、引用請求項を削減するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項9による請求項9についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(10)訂正事項10について
訂正事項10による請求項10についての訂正は、請求項10を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項10による請求項10についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1~10による請求項1~10についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1又は4号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1~10による請求項1~10についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1~3は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項1~3による請求項1~3についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
訂正前の請求項4~6は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項4~6による請求項4~6についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
訂正前の請求項7~9は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項7~9による請求項7~9についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1~10に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
さらに、訂正後の請求項2及び3、5及び6並びに8及び9については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがされている。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2-3〕、4、〔5-6〕、7、〔8-9〕及び10について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
S-アリルシステインスルフォキシドを含む、魚介風味増強剤であって、喫食時の魚介風味を有する飲食品に対して0.5~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加され、S-アリルシステインスルフォキシドの純度が20重量%以上であることを特徴とする、魚介風味増強剤。
【請求項3】
魚介が、貝類、甲殻類、頭足類、および魚類からなる群から選択される1以上である、請求項2記載の剤。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
魚介風味を有する飲食品に、S-アリルシステインスルフォキシドを配合することを含む、飲食品の魚介風味を増強する方法であって、喫食時の魚介風味を有する飲食品に対して0.5~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加され、S-アリルシステインスルフォキシドの純度が20重量%以上であることを特徴とする、方法。
【請求項6】
魚介が、貝類、甲殻類、頭足類、および魚類からなる群から選択される1以上である、請求項5記載の方法。
【請求項7】(削除)
【請求項8】
魚介風味を有する飲食品に、S-アリルシステインスルフォキシドを配合することを含む、魚介風味が増強された飲食品の製造方法であって、喫食時の魚介風味を有する飲食品に対して0.5~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加され、S-アリルシステインスルフォキシドの純度が20重量%以上であることを特徴とする、製造方法。
【請求項9】
魚介が、貝類、甲殻類、頭足類、および魚類からなる群から選択される1以上である、請求項8記載の方法。
【請求項10】(削除)」
第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要等
令和6年9月26日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。なお、判断の便宜上、新規性・進歩性に関する申立理由については、主引用文献となる証拠毎に申立理由を整理した。
1 申立理由1(サポート要件)
本件特許の請求項1~10に係る特許は、下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)飲食品中のアリインの濃度について
本件特許発明1~10では、S-アリルシステインスルフォキシド(以下、「アリイン」とも称する。)の濃度に関して、「喫食時の魚介風味を有する飲食品に対して0.1~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加される」こと、すなわち飲食品中のアリインの濃度が特定されるのみである。
本件明細書の発明の詳細な説明の記載から、本件発明の課題解決のためには、飲食品中の魚介成分とアリインの割合(比率)を特定の範囲内にすることが肝要であるとの技術的思想が読み取れ、飲食品中の魚介成分とアリインの割合はおろか、飲食品中の魚介成分の濃度すら特定されていない、あらゆる魚介風味を有する飲食品に対して、飲食品中のアリインの濃度が0.1~50ppmの濃度でありさえずれば、本件発明の課題を解決できるとはいえない。
実際、本件明細書の実施例において、課題を解決できないことが示されている例がある。例えば、本件明細書【0039】~【0041】の実施例4では、アリイン添加濃度0.1ppmの試験品では、魚介風味の強さが「-」(強くならない)であったことが記載されている(表7参照)。また、例えば、本件明細書【0042】~【0044】の実施例5では、アリイン添加濃度0.1ppm及び0.25ppmの試験品では、魚介風味の強さが「-」(強くならない)であったことが記載されている(表9参照)。
(2)有効成分であるアリインの純度について
本件発明1、3~4、6~7及び9~10は、アリインの純度を特定していない(ニンニクも含み得る)。本件発明2、5及び8は、アリインの純度を特定しているものの「20重量%以上」との特定に留まる。
本件明細書【0051】~【0052】の実施例9、及び【0053】~【0054】の実施例10から、純度>95%のアリインを使用した場合と、純度1%程度のアリインを使用した場合とで、飲食品中のアリイン濃度が同じであるにも関わらず、純度1%程度のアリインでは顕著に効果が劣ることが理解できる。そして、上記(1)で指摘したとおり、純度>95%のアリインですら、飲食品全体に占めるアリインの濃度が0.1~50ppmであっても課題解決できない場合があるのであるから、純度が低いアリインを使用した場合に課題解決できるとは理解できない。
2 申立理由2(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1~10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~10に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲第2号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1~10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~10に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由4(甲第5号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、3~4、6~7、9~10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第5号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3~4、6~7、9~10に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由5(甲第6号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第6号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項10に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
6 証拠方法
・甲第1号証:グルタチオンの風味特性に関する食品化学的研究、上田要一、東京大学学位論文 博士(農学)、1998年1月12日学位授与、学位記番号第13648号、pp.52-75
・甲第1号証の2:国立国会図書館ホームページ、<URL:https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000343775>
・甲第2号証:野菜の調味料としての利用、石田賢吾、JAS情報、2015年10月、50巻、10号、pp.1-6、<URL:http://www.jasnet.or.jp/4-shuppanbutu/pickup/15.10.pdf>
・甲第2号証の2:国立国会図書館ホームページ、<URL:https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I026807330>
・甲第3号証及び抄訳:INTERNATIONAL JOURNAL OF INNOVATIVE RESEARCH IN TECHNOLOGY、2016年、Volume2、Issue9、pp.77-81
・甲第4号証:日本食品工業学会誌、1973年9月、第20巻、第9号、pp.432-439
・甲第5号証:クックパッド株式会社ホームページ、2018年9月22日、<URL:https: //cookpad.com/jp/recipes/18915124-%E7%B0%A1%E5%8D%98%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%AO%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%A6%E3%83%80%E3%83%BC%E7%BC%B6%E3%82%92%E7%BE%8E%E5%91%B3%E3%81%97%E3%81%8F%E3%81%97%E3%82%88%E3%81%86>
・甲第6号証:みんなのきょうの料理ホームページ、2005年9月21日、<URL:https://www.kyounoryouri.jp/recipe/3118_%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%AO%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%A6%E3%83%80%E3%83%BC.html>
・甲第7号証:キャンベルジャパン株式会社ホームページ、<URL:https://www.campbellsoup.co.jp/product/clamchowder/>
・甲第8号証:DELISH KITCHENホームページ、<URL:https://delishkitchen.tv/articles/528>
・甲第9号証:ウルトラフリーダムホームページ、<URL:https://life-freedom888.com/ninniku-lcm-g/>
・甲第10号証:クックパッド株式会社ホームページ、<URL:https://cookpad.com/cooking_basics/9924>
・甲第11号証:味の素株式会社ホームページ、<URL:https://WWW.ajinomoto.co.jp/products/detail/?ProductName=consomme_4>
証拠の表記は特許異議申立書の記載におおむね従った。
以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由の概要
令和7年1月30日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。
1 取消理由1(サポート要件)
本件特許の請求項1~10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、当該取消理由1は申立理由1(1)とおおむね同旨である。
2 取消理由2(甲5を主たる証拠とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3~4、6~7、9~10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲5に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲5に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3~4、6~7、9~10に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
なお、当該取消理由2は申立理由4とおおむね同旨である。
3 取消理由3(甲6を主たる証拠とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲6に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲6に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項10に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
なお、当該取消理由3は申立理由5とおおむね同旨である。
第6 取消理由についての当審の判断
1 取消理由1(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
(3)サポート要件についての判断
本件特許発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「様々な種類の魚介の風味を効果的に増強し得る新規手段を提供することを目的とする」(発明の詳細な説明の【0006】)ものであり、また、同【0007】には「本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、ニンニクの香気成分の前駆体であるALCSOが幅広い魚介の風味を極めて効果的に増強することを見出し、かかる知見に基づいてさらに研究を進めることによって本発明を完成するに至った」ことが記載されている。
また、同【0010】及び【0011】には「魚介」、「魚介風味」、「魚介成分」についての説明が記載され、同【0012】~【0018】にはS-アリルシステインスルフォキシドを含む魚介風味増強剤について記載され、同【0013】にはS-アリルシステインスルフォキシドの純度は20重量%以上が好ましいことが記載され、同【0019】~【0022】には魚介風味増強方法が記載され、同【0023】~【0024】には魚介風味が増強された飲食品の製造方法が記載され、同【0025】~【0029】には魚介風味が増強された飲食品が記載されている。
また、同【0030】~【0063】には実施例が記載され、実施例1~5では、喫食時に魚介風味を有する種々の飲食品に対して0.5~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドを添加すると、S-アリルシステインスルフォキシドを添加していない対照飲食品と比較して、魚介風味が増強されることが確認されており、また、実施例9では、純度>95%のS-アリルシステインスルフォキシドを20ppm添加した飲食品と、S-アリルシステインスルフォキシド含有率1.09%の市販ニンニクを20ppmとなるように添加した飲食品とは、効果の程度に差はあるものの、共に対照飲食品と比較すると魚介風味が増強されることが確認されている。
そうすると、これらの記載に接した当業者であれば、「喫食時の魚介風味を有する飲食品に対して0.5~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加された、魚介風味増強剤」、「喫食時の魚介風味を有する飲食品に対して0.5~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加される、飲食品の魚介風味を増強する方法」、「喫食時の魚介風味を有する飲食品に対して0.5~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加される、魚介風味が増強された飲食品の製造方法」とすれば、本件発明の課題が解決できると認識できる。
そして、本件特許発明2及び3は、いずれも、上記の発明の課題を解決できると認識できる魚介風味増強剤であるか、それをさらに限定するものであり、本件特許発明5及び6は、いずれも、上記の発明の課題を解決できると認識できる飲食品の魚介風味を増強する方法であるか、それをさらに限定するものであり、本件特許発明8及び9は、いずれも、上記の発明の課題を解決できると認識できる魚介風味が増強された飲食品の製造方法であるか、それをさらに限定するものである。
したがって、本件特許発明2、3、5、6、8及び9は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、上記第4 1(1)のとおり主張していたものの、本件訂正によって、上記第3のとおり、発明の詳細な説明の【0039】~【0041】の実施例4及び同【0042】~【0044】の実施例5において、魚介風味が強くならないことが示されたアリイン添加濃度0.1ppm及び0.25ppmの試験品は本件特許発明に含まれないものとなったため、本件特許発明の数値範囲を満たす剤や方法、製造方法であれば、本件発明の課題を解決できると認識できるものであるといえる。また、上記主張は、飲食品中のS-アリルシステインスルフォキシドが0.5~50ppmの濃度であっても課題が解決できないことを示す具体的な証拠を伴うものでもないから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(5)取消理由1のまとめ
上記(3)及び(4)のとおりであるから、本件特許の請求項2、3、5、6、8及び9に係る特許は、いずれも特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取消理由1によっては取り消すことはできない。
2 取消理由2(甲5を主たる証拠とする新規性・進歩性)
(1)甲5に記載された事項等
ア 甲5に記載された事項
甲5には、「クラムチャウダー」について、おおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001429007000001.jpg]
」
イ 甲5に記載された発明
上記アに記載された内容を整理すると、甲5にはそれぞれ次の発明(以下、「甲5発明」、「甲5方法発明」、「甲5製法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲5発明>
「キャンベルクラムチャウダー1缶及び牛乳1.5缶に対して、にんにく(チューブ)5mmが含有されるように添加される、風味をアップするにんにく。」
<甲5方法発明>
「キャンベルクラムチャウダー1缶及び牛乳1.5缶に対して、にんにく(チューブ)5mmが添加される、風味をアップする方法。」
<甲5製法発明>
「キャンベルクラムチャウダー1缶及び牛乳1.5缶に対して、にんにく(チューブ)5mmが添加される、風味をアップさせたクラムチャウダーの製造方法。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件訂正により、請求項1は削除された。
イ 本件特許発明2について
(ア)本件特許発明2と甲5発明の対比・判断
本件特許発明2と甲5発明を対比する。
甲5発明の「キャンベルクラムチャウダー1缶」は、甲7にも記載されているとおり、原材料にクラムブロス、クラム、クラムエキス(カニを含む)を含み、牛乳を加えてクラムチャウダーを作るための濃縮缶であるため、甲5発明の「キャンベルクラムチャウダー1缶及び牛乳1.5缶」は本件特許発明2の「喫食時の魚介風味を有する飲食品」に相当する。
また、甲5発明の「にんにく(チューブ)」は、風味をアップするために添加するものであり、また、にんにくがS-アリルシステインスルフォキシドを含むことは明らかであるから、本件特許発明2の「S-アリルシステインスルフォキシドを含む、魚介風味増強剤」のうち、「魚介」を除いた範囲に相当する。
そうすると、両者の一致点は以下のとおりである。
<一致点>
「S-アリルシステインスルフォキシドを含む、風味増強剤であって、喫食時の魚介風味を有する飲食品に対してS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加されることを特徴とする、風味増強剤。」
また、両者の相違点及び一応の相違点は以下のとおりである。
<相違点1-5>
本件特許発明2では、「喫食時の魚介風味を有する飲食品に対して0.5~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加されること」が特定されているのに対して、甲5発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点2-5>
本件特許発明2では、「魚介風味増強剤」であることが特定されているのに対して、甲5発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点3-5>
本件特許発明2では、「S-アリルシステインスルフォキシドの純度が20重量%以上であること」が特定されているのに対して、甲5発明ではそのようには特定されていない点。
事案に鑑みて、相違点3-5について検討する。
甲5発明には、S-アリルシステインスルフォキシドの純度は記載されておらず、また、甲5発明におけるS-アリルシステインスルフォキシドは「にんにく(チューブ)」によるものであるが、通常の「にんにく(チューブ)」におけるS-アリルシステインスルフォキシドの純度が20重量%以上とはならないことは当業者に明らかである。そうすると、相違点3-5は実質的な相違点である。
また、甲5には、甲5発明においてS-アリルシステインスルフォキシドの純度を20重量%以上とする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
そして、本件特許発明2の奏する「魚介風味を有する飲食品の該風味を増強することができる。また、本発明の魚介風味の増強効果は、単一の魚介種のみに限定されるものではなく、広範な魚介種の風味を向上させることができる。」という効果(発明の詳細な説明【0009】)は、甲5発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項からみて、当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
(イ)本件特許発明2についてのまとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は甲5発明ではあるとはいえないし、また、甲5発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項2を引用して特定するものであって、本件特許発明2の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明2と同様に判断される。
よって、本件特許発明2は、甲5発明ではなく、また、甲5発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件特許発明4について
本件訂正により、請求項4は削除された。
オ 本件特許発明5について
本件特許発明5と甲5方法発明を対比すると、上記イと同様の相当関係がとれるものである。
してみると、本件特許発明5と甲5方法発明との間の一致点並びに相違点及び一応の相違点は次のとおりである。
<一致点>
「魚介風味を有する飲食品に、S-アリルシステインスルフォキシドを配合することを含む、飲食品の風味を増強する方法であって、喫食時の魚介風味を有する飲食品に対してS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加されることを特徴とする、方法。」
<相違点4-5>
本件特許発明5では、「喫食時の魚介風味を有する飲食品に対して0.5~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加されること」が特定されているのに対して、甲5方法発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点5-5>
本件特許発明5では、「魚介風味を増強する方法」であることが特定されているのに対して、甲5方法発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点6-5>
本件特許発明5では、「S-アリルシステインスルフォキシドの純度が20重量%以上であること」が特定されているのに対して、甲5方法発明ではそのようには特定されていない点。
事案に鑑みて、相違点6-5について検討する。
相違点6-5は、相違点3-5と同旨であるから、上記イと同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明5は甲5方法発明ではあるとはいえないし、また、甲5方法発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
カ 本件特許発明6について
本件特許発明6は、請求項5を引用して特定するものであって、本件特許発明5の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明5と同様に判断される。
よって、本件特許発明6は、甲5方法発明ではなく、また、甲5方法発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
キ 本件特許発明7について
本件訂正により、請求項7は削除された。
ク 本件特許発明8について
本件特許発明8と甲5製法発明を対比すると、上記イと同様の相当関係がとれるものである。
してみると、本件特許発明8と甲5製法発明との間の一致点並びに相違点及び一応の相違点は次のとおりである。
<一致点>
「魚介風味を有する飲食品に、S-アリルシステインスルフォキシドを配合することを含む、風味が増強された飲食品の製造方法であって、喫食時の魚介風味を有する飲食品に対してS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加されることを特徴とする、製造方法。」
<相違点7-5>
本件特許発明8では、「喫食時の魚介風味を有する飲食品に対して0.5~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加されること」が特定されているのに対して、甲5製法発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点8-5>
本件特許発明8では、「魚介風味が増強された飲食品の製造方法」であることが特定されているのに対して、甲5製法発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点9-5>
本件特許発明8では、「S-アリルシステインスルフォキシドの純度が20重量%以上であること」が特定されているのに対して、甲5製法発明ではそのようには特定されていない点。
事案に鑑みて、相違点9-5について検討する。
相違点9-5は、相違点3-5と同旨であるから、上記イと同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明8は甲5製法発明ではあるとはいえないし、また、甲5製法発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ケ 本件特許発明9について
本件特許発明9は、請求項8を引用して特定するものであって、本件特許発明8の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明8と同様に判断される。
よって、本件特許発明9は、甲5製法発明ではなく、また、甲5製法発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
コ 本件特許発明10について
本件訂正により、請求項10は削除された。
(3)取消理由2のまとめ
以上のことから、本件特許発明2、3、5、6、8及び9は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項2、3、5、6、8及び9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しないので、取消理由2によっては取り消すことはできない。
3 取消理由3(甲6を主たる証拠とする新規性・進歩性)
本件訂正により、請求項10は削除されたため、取消理由3の対象は存在しない。
第7 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由について
1 申立理由1(2)(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断手法、特許請求の範囲の記載及びサポート要件についての判断について
上記第6 1(1)~(3)のとおりである。
(2)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、上記第4 1(2)のとおり主張するものの、上記第6 1(3)でも示したとおり、実施例9(【0051】及び【0052】)等を参照すれば、S-アリルシステインスルフォキシドの純度によって効果の強弱はあるものの、低純度であっても対照飲食品と比較して魚介風味が増強されることが確認されている。また、上記主張は、低純度のS-アリルシステインスルフォキシドであると課題が解決できないことを示す具体的な証拠を伴うものでもないから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(3)申立理由1(2)のまとめ
上記(1)及び(2)のとおりであるから、本件特許の請求項2、3、5、6、8及び9に係る特許は、いずれも特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由1(2)によっては取り消すことはできない。
2 申立理由2(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「グルタチオンの風味特性に関する食品化学的研究」について、おおむね次の事項が記載されている。下線部は当審が付与したものと予め付されたものである。以下、同様である。
・「ニンニク抽出物のスープヘの添加効果
中華スープは市販中華スープの素(味の素社製)を用いて調製した。カレースープは料理書84)を参考に、通常の家庭での調理方法で調製した。材料としては豚肉、小麦粉、トマト、タマネギ、食塩、バター、カレー粉、コショーを用いた。
ニンニク抽出物を中華スープおよびカレースープにそれぞれ100および400mg/100ml濃度で添加して、無添加のスープとパネルにより比較評価した。パネルリストとして、研究所所員19名を用い、評価方法は第1章第2節の方法に準じた。GSHの場合と同様に、香りの強さ、基本味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)、 “こく味”(あつみ、ひろがり、持続性)の9項目で評価を行い、結果をt -検定で解析した。」(第53ページ 1~10行)
・「【結果および考察】
ニンニク熱水抽出物の脱臭品を中華スープとカレースープに添加したところ、Table 3-3に示すように本抽出物は両スープにおいて、香りや基本味の強さには影響しなかったが、“あつみ”、“ひろがり”、“持続性”を有意に強めた。この効果はGSHのそれとよく類似した。そこで先の効果をニンニクの“こく味”と定義し、有効成分の探索を試みた。」(第59ページ下から4行目~1行目及び第61ページ1行)
・「単離したalliinを用いて、うま味溶液中での閾値を測定したところ、閾値は5mg/100ml であった。次に、得られた各含硫化合物についてうま味溶液中での風味を比較評価したところ、alliinを始めとし、MeCSO、GAC、およびGACSOはいずれも“こく味”を呈した(Table 3-9)。特にalliinの呈する“こく味”の強さはGSH と同等と判定された。cycloalliinおよびGACSOの呈する“こく味”は他の成分に比べて弱かった。またalliinはカレーおよび中華スープにおいても同様に“こく味”を発現することを確認した。」(第71ページ 9~15行)
・「水溶液中、80および98℃、pH 3.0~7.0の条件下におけるalliinの加熱試験の結果をTable 3-11に示す。得られた速度定数をもとに98℃、pH 5.0で2時間という、調理としては過酷な条件下におけるalliin残存量を算出した場合でも78%となることから、ニンニクの使用量にもよるがalliinが加熱調理時における風味の発現に関与している可能性が示唆された。」(第74ページ 6~10行)
イ 甲1に記載された発明
上記アに記載された内容を整理すると、甲1にはそれぞれ次の発明(以下、「甲1発明」、「甲1方法発明」、「甲1製法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「市販中華スープの素(味の素社製)を用いて調製した中華スープ及び料理書を参考に通常の家庭での調理方法で調製し、材料としては豚肉、小麦粉、トマト、タマネギ、食塩、バター、カレー粉、コショーを用いたカレースープのこく味を有意に強める、ニンニク抽出物。」
<甲1方法発明>
「ニンニク抽出物を添加して、市販中華スープの素(味の素社製)を用いて調製した中華スープ及び料理書を参考に通常の家庭での調理方法で調製し、材料としては豚肉、小麦粉、トマト、タマネギ、食塩、バター、カレー粉、コショーを用いたカレースープのこく味を有意に強める、方法。」
<甲1製法発明>
「ニンニク抽出物を添加してこく味を有意に強めた、市販中華スープの素(味の素社製)を用いて調製した中華スープ及び料理書を参考に通常の家庭での調理方法で調製し、材料としては豚肉、小麦粉、トマト、タマネギ、食塩、バター、カレー粉、コショーを用いたカレースープの、製造方法。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件訂正により、請求項1は削除された。
イ 本件特許発明2について
(ア)本件特許発明2と甲1発明の対比・判断
本件特許発明2と甲1発明を対比する。
甲1発明の「中華スープ」及び「カレースープ」は、材料に魚介類を用いない飲食品であるから、本件特許発明2の「喫食時の魚介風味を有する飲食品」のうち、「喫食時の魚介風味を有する」を除いた範囲に相当する。
また、甲1発明の「ニンニク抽出物」は、こく味を有意に強めるために添加するものであり、また、甲1には、ニンニク抽出物のうち、alliin(=S-アリルシステインスルフォキシド)がこく味を増強すること、こく味とはあつみ、ひろがり、持続性であることが記載されているから、本件特許発明2の「S-アリルシステインスルフォキシドを含む、魚介風味増強剤」のうち、「魚介」を除いた範囲に相当する。
そうすると、両者の一致点は以下のとおりである。
<一致点>
「S-アリルシステインスルフォキシドを含む、風味増強剤であって、飲食品に対してS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加されることを特徴とする、風味増強剤。」
また、両者の相違点は以下のとおりである。
<相違点1-1>
本件特許発明2では、「喫食時の魚介風味を有する飲食品」が特定されているのに対して、甲1発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点2-1>
本件特許発明2では、「魚介風味増強剤」であることが特定されているのに対して、甲1発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点3-1>
本件特許発明2では、「0.5~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加され」ることが特定されているのに対して、甲1発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点4-1>
本件特許発明2では、「S-アリルシステインスルフォキシドの純度が20重量%以上であること」が特定されているのに対して、甲1発明ではそのようには特定されていない点。
相違点1-1について検討する。
甲1発明の「中華スープ」及び「カレースープ」は、材料として魚介類を用いるものではないし、魚介風味を有することは記載されていないから、相違点1-1は実質的な相違点である。
また、甲1には、甲1発明において「中華スープ」又は「カレースープ」について、喫食時に魚介風味を有するようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
そして、本件特許発明2の奏する「魚介風味を有する飲食品の該風味を増強することができる。また、本発明の魚介風味の増強効果は、単一の魚介種のみに限定されるものではなく、広範な魚介種の風味を向上させることができる。」という効果は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
(イ)本件特許発明2についてのまとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は甲1発明ではあるとはいえないし、また、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項2を引用して特定するものであって、本件特許発明2の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明2と同様に判断される。
よって、本件特許発明2は、甲1発明ではなく、また、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件特許発明4について
本件訂正により、請求項4は削除された。
オ 本件特許発明5について
本件特許発明5と甲1方法発明を対比すると、上記イと同様の相当関係がとれるものである。
してみると、本件特許発明5と甲1方法発明との間の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「飲食品に、S-アリルシステインスルフォキシドを配合することを含む、風味を増強する方法であって、飲食品に対してS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加される、方法。」
<相違点5-1>
本件特許発明5では、「魚介風味を有する飲食品」が特定されているのに対して、甲1方法発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点6-1>
本件特許発明5では、「飲食品の魚介風味を増強する方法」であることが特定されているのに対して、甲1方法発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点7-1>
本件特許発明5では、「喫食時の魚介風味を有する飲食品に対して0.5~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加」ることが特定されているのに対して、甲1方法発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点8-1>
本件特許発明5では、「S-アリルシステインスルフォキシドの純度が20重量%以上であること」が特定されているのに対して、甲1方法発明ではそのようには特定されていない点。
相違点5-1について検討する。
相違点5-1は、相違点1-1と同旨であるから、上記イと同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明5は甲1方法発明ではあるとはいえないし、また、甲1方法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
カ 本件特許発明6について
本件特許発明6は、請求項5を引用して特定するものであって、本件特許発明5の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明5と同様に判断される。
よって、本件特許発明6は、甲1方法発明ではなく、また、甲1方法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
キ 本件特許発明7について
本件訂正により、請求項7は削除された。
ク 本件特許発明8について
本件特許発明8と甲1製法発明を対比すると、上記イと同様の相当関係がとれるものである。
してみると、本件特許発明8と甲1製法発明との間の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「飲食品に、S-アリルシステインスルフォキシドを配合することを含む、風味が増強された飲食品の製造方法であって、飲食品に対してS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加されることを特徴とする、製造方法。」
<相違点9-1>
本件特許発明8では、「魚介風味を有する飲食品」が特定されているのに対して、甲1製法方法ではそのようには特定されていない点。
<相違点10-1>
本件特許発明8では、「魚介風味が増強された飲食品の製造方法」であることが特定されているのに対して、甲1製法発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点11-1>
本件特許発明8では、「喫食時の魚介風味を有する飲食品に対して0.5~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加され」ることが特定されているのに対して、甲1製法発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点12-1>
本件特許発明8では、「S-アリルシステインスルフォキシドの純度が20重量%以上であること」が特定されているのに対して、甲1製法発明ではそのようには特定されていない点。
相違点9-1について検討する。
相違点9-1は、相違点1-1と同旨であるから、上記イと同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明8は甲1製法発明ではあるとはいえないし、また、甲1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ケ 本件特許発明9について
本件特許発明9は、請求項8を引用して特定するものであって、本件特許発明8の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明8と同様に判断される。
よって、本件特許発明9は、甲1製法発明ではなく、また、甲1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
コ 本件特許発明10について
本件訂正により、請求項10は削除された。
(3)申立理由2のまとめ
以上のことから、本件特許発明2、3、5、6、8及び9は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項2、3、5、6、8及び9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しないので、申立理由2によっては取り消すことはできない。
3 申立理由3(甲2に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲2に記載された事項等
ア 甲2に記載された事項
甲2には、「野菜の調味料としての利用」について、おおむね次の事項が記載されている。
・「4.コク味で注目されるタマネギとニンニク
タマネギ、ニンニクなどのネギ属の野莱では、その組織をすり潰すと酵素アリイナーゼが作用してジアリルジスルヒド、ジプロビルジスルヒドなど各種の含硫化合物が生成する。これらの野菜を肉などと煮込むことによって、原料に含まれる含硫化合物やアミノ酸、糖類、油脂などの間でストレッカー分解、メイラード反応などの各種の反応が起こり独特の食欲をそそる風味とコクに富むソース、ブイヨン、ラーメンスープ、カレーなどが出来上がる。
・・・
ニンニクの水抽出物を凍結乾燥し、スープに添加すると、甘、塩、酸、苦、うま味の基本味に変化は言忍められないが、持続性、充実感、厚みなどのコク味が増強される。例えば、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウムなどのうま味物質は、単独ではうま味が中心で深みの弱い味であるが、これにニンニクの抽出物を添加することによってコク味が増強される。このコク味増強に関与するニンニクの成分についても表5のように明らかにされている13)。」(第4ページ左欄下から6行目~第5ページ左欄6行目)
・「
[図:0001429007000002.jpg]
」(第5ページ)
イ 甲2に記載された発明
上記アに記載された内容を整理すると、甲2にはそれぞれ次の発明(以下、「甲2発明」、「甲2方法発明」、「甲2製法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲2発明>
「スープに添加することによってコク味を増強する、ニンニク抽出物。」
<甲2方法発明>
「ニンニク抽出物を添加することによって、スープのコク味を増強する方法。」
<甲2製法発明>
「ニンニク抽出物を添加する、コク味が増強されたスープの製造方法。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件訂正により、請求項1は削除された。
イ 本件特許発明2について
(ア)本件特許発明2と甲2発明の対比・判断
本件特許発明2と甲2発明を対比する。
甲2発明の「スープ」は、本件特許発明2の「喫食時の魚介風味を有する飲食品」のうち、「喫食時の魚介風味を有する」を除いた範囲に相当する。
また、甲2発明の「ニンニク抽出物」は、コク味を増強するために添加するものであり、甲2には、コク味として持続性、充実感、厚みが増強されることが記載されており、また、にんにくがS-アリルシステインスルフォキシドを含むことは明らかであるから、本件特許発明2の「S-アリルシステインスルフォキシドを含む、魚介風味増強剤」のうち、「魚介」を除いた範囲に相当する。
そうすると、両者の一致点は以下のとおりである。
<一致点>
「S-アリルシステインスルフォキシドを含む、風味増強剤であって、飲食品に対してS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加されることを特徴とする、風味増強剤。」
また、両者の相違点は以下のとおりである。
<相違点1-2>
本件特許発明2では、「喫食時の魚介風味を有する飲食品」が特定されているのに対して、甲2発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点2-2>
本件特許発明2では、「魚介風味増強剤」であることが特定されているのに対して、甲2発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点3-2>
本件特許発明2では、「0.5~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加され」ることが特定されているのに対して、甲2発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点4-2>
本件特許発明2では、「S-アリルシステインスルフォキシドの純度が20重量%以上であること」が特定されているのに対して、甲2発明ではそのようには特定されていない点。
相違点1-2について検討する。
甲2発明の「スープ」は、材料として魚介類を用いることや、魚介風味を有することは記載されていないから、相違点1-2は実質的な相違点である。
また、甲2には、甲2発明において「スープ」が喫食時に魚介風味を有するようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
そして、本件特許発明2の奏する「魚介風味を有する飲食品の該風味を増強することができる。また、本発明の魚介風味の増強効果は、単一の魚介種のみに限定されるものではなく、広範な魚介種の風味を向上させることができる。」という効果は、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項からみて、当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
(イ)本件特許発明2についてのまとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は甲2発明ではあるとはいえないし、また、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項2を引用して特定するものであって、本件特許発明2の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明2と同様に判断される。
よって、本件特許発明2は、甲2発明ではなく、また、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件特許発明4について
本件訂正により、請求項4は削除された。
オ 本件特許発明5について
本件特許発明5と甲2方法発明を対比すると、上記イと同様の相当関係がとれるものである。
してみると、本件特許発明5と甲2方法発明との間の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「飲食品に、S-アリルシステインスルフォキシドを配合することを含む、風味を増強する方法であって、飲食品に対してS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加される、方法。」
<相違点5-2>
本件特許発明5では、「魚介風味を有する飲食品」が特定されているのに対して、甲2方法発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点6-2>
本件特許発明5では、「飲食品の魚介風味を増強する方法」であることが特定されているのに対して、甲2方法発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点7-2>
本件特許発明5では、「喫食時の魚介風味を有する飲食品に対して0.5~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加」ることが特定されているのに対して、甲2方法発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点8-2>
本件特許発明5では、「S-アリルシステインスルフォキシドの純度が20重量%以上であること」が特定されているのに対して、甲2方法発明ではそのようには特定されていない点。
相違点5-2について検討する。
相違点5-2は、相違点1-2と同旨であるから、上記イと同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明5は甲2方法発明ではあるとはいえないし、また、甲2方法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
カ 本件特許発明6について
本件特許発明6は、請求項5を引用して特定するものであって、本件特許発明5の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明5と同様に判断される。
よって、本件特許発明6は、甲2方法発明ではなく、また、甲2方法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
キ 本件特許発明7について
本件訂正により、請求項7は削除された。
ク 本件特許発明8について
本件特許発明8と甲2製法発明を対比すると、上記イと同様の相当関係がとれるものである。
してみると、本件特許発明8と甲2製法発明との間の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「飲食品に、S-アリルシステインスルフォキシドを配合することを含む、風味が増強された飲食品の製造方法であって、飲食品に対してS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加されることを特徴とする、製造方法。」
<相違点9-2>
本件特許発明8では、「魚介風味を有する飲食品」が特定されているのに対して、甲2製法方法ではそのようには特定されていない点。
<相違点10-2>
本件特許発明8では、「魚介風味が増強された飲食品の製造方法」であることが特定されているのに対して、甲2製法発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点11-2>
本件特許発明8では、「喫食時の魚介風味を有する飲食品に対して0.5~50ppmの濃度でS-アリルシステインスルフォキシドが含有されるように添加され」ることが特定されているのに対して、甲2製法発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点12-2>
本件特許発明8では、「S-アリルシステインスルフォキシドの純度が20重量%以上であること」が特定されているのに対して、甲2製法発明ではそのようには特定されていない点。
相違点9-2について検討する。
相違点9-2は、相違点1-2と同旨であるから、上記イと同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明8は甲2製法発明ではあるとはいえないし、また、甲2製法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ケ 本件特許発明9について
本件特許発明9は、請求項8を引用して特定するものであって、本件特許発明8の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明8と同様に判断される。
よって、本件特許発明9は、甲2製法発明ではなく、また、甲2製法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
コ 本件特許発明10について
本件訂正により、請求項10は削除された。
(3)申立理由3のまとめ
以上のことから、本件特許発明2、3、5、6、8及び9は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項2、3、5、6、8及び9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しないので、申立理由3によっては取り消すことはできない。
第8 むすび
上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項2、3、5、6、8及び9に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項2、3、5、6、8及び9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項1、4、7及び10に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項1、4、7及び10に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700932