審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2024-701153

静電チャック

審判番号
2024-701153
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-049634
登録番号
7494972
請求日
2024年11月28日
審決日
2025年03月31日
公報発行日
2025年05月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】TOTO株式会社
  • 【権利者代理人】鎌田 徹
  • 【権利者代理人】稲葉 良幸
  • 【権利者代理人】村井 賢郎
  • 【権利者代理人】津田 拓真
  • 【異議申立人】金 海松
審判長/審判官
  • 審判長 小宮 慎司
  • 審判官 緑川 隆
  • 審判官 棚田 一也
分類
P1651.121-Y (H01L) / P1651.537-Y (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7494972号発明「静電チャック」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7494972号の請求項1に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7494972号の請求項1に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和 5年 3月27日に出願され、令和 6年 5月27日にその特許権の設定登録がされ、同年 6月 4日に特許掲載公報が発行され、同年11月28日に特許異議申立人金 海松(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、 前記誘電体基板に内蔵された線状のヒーターと、 前記誘電体基板のうち前記載置面とは反対側の面に接合されたベースプレートと、を備え、 前記ベースプレートのうち前記誘電体基板側の面には開口が形成されており、 前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、 前記ヒーターのうち前記開口と重なっている部分では、 前記ヒーターの伸びている方向に沿った端部となる位置における前記ヒーターの線幅に比べて、同方向に沿った中央となる位置における前記ヒーターの線幅の方が大きく、 前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、 前記ヒーターのうち前記開口と重なっている部分では、 前記ヒーターの線幅が、前記ヒーターの伸びている方向に沿った中央となる位置において最も大きく、 前記ヒーターの線幅が、 前記ヒーターの伸びている方向に沿った中央となる位置に近づくに従って、段階的に大きくなっていることを特徴とする、静電チャック。」 第3 特許異議の申立ての理由について 申立人が主張する特許異議の申立ての理由は、以下の申立理由1及び申立理由2のとおりのものである。なお、申立人が提出した甲第1号証~甲第7号証を、以下、「甲1」~「甲7」という。 1 申立理由1(進歩性) 請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明と、甲2~6に記載された事項とに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 申立理由2(明確性要件) 請求項1に記載されている「段階的に」の意味が不明確であるため、請求項1に係る発明は明確でない。したがって、請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 <申立人が提出した甲号証> 甲1:特開2016-129183号公報 甲2:特開2016-208053号公報 甲3:特開2020-126770号公報 甲4:特許第6818886号公報 甲5:特開平9-7741号公報 甲6:特開2005-50626号公報 甲7:「weblio辞書」、[online]、Weblioウェブサイト、[令和6年11月18日検索]、インターネット<URL:https://www.weblio.jp/content/%E6%AE%B5%E9%9A%8E%E7%9A%84%E3%81%AB> 第4 当審の判断 1 申立理由1(進歩性)について (1)甲号証について ア 甲1(特開2016-129183号公報)の記載、甲1発明 (ア) 甲1には、以下の記載がある。(下線は当審が付与した。以下、同様である。) 「【0020】 図1は、本発明の第1実施形態の静電チャック装置を示す断面図であり、この形態の静電チャック装置1は、一主面(上面)側を載置面とした円板状の静電チャック部2と、この静電チャック部2の下方に設けられて静電チャック部2を所望の温度に調整する厚みのある円板状の温度調節用ベース部3と、静電チャック部2と温度調節用ベース部3の間に介挿されたヒータエレメント5を備えている。」 【0021】 また、静電チャック部2と温度調節用ベース部3とは、静電チャック部2と温度調節用ベース部3の間に設けられた接着剤層8を介して接着されている。 【0022】 静電チャック部2は、上面を半導体ウエハ等の板状試料Wを載置する載置面11aとした載置板11と、この載置板11と一体化され該載置板11の底部側を支持する支持板12と、これら載置板11と支持板12との間に設けられた静電吸着用電極(静電吸着用内部電極)13および静電吸着用電極13の周囲を絶縁する絶縁材層14と、を有している。 【0023】 載置板11および支持板12は、重ね合わせた面の形状を同じくする円板状のものであり、酸化アルミニウム-炭化ケイ素(Al2O3-SiC)複合焼結体、酸化アルミニウム(Al2O3)焼結体、窒化アルミニウム(AlN)焼結体、酸化イットリウム(Y2O3)焼結体等の機械的な強度を有し、かつ腐食性ガスおよびそのプラズマに対する耐久性を有する絶縁性のセラミックス焼結体からなる。 【0024】 載置板11の載置面11aには、直径が板状試料の厚みより小さい突起部11bが複数所定の間隔で形成され、これらの突起部11bが板状試料Wを支える。」 「【0027】 静電吸着用電極13は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料Wを固定するための静電チャック用電極として用いられるもので、その用途によって、その形状や、v大きさが適宜調整される。」 「【0041】 温度調節用ベース部3の上面側には、接着層6を介して絶縁板7が接着されている。接着層6はポリイミド樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性、および、絶縁性を有するシート状またはフィルム状の接着性樹脂からなる。接着層は例えば厚み5~100μm程度に形成される。絶縁板7はポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの耐熱性を有する樹脂の薄板、シートあるいはフィルムからなる。」 「【0043】 ヒータエレメント5は、図2に示すように、中心部の円環状の領域に配置された第1の主ヒータ5Aと、この第1の主ヒータ5Aを順次取り囲むように円環状の領域に配置された第2の主ヒータ5Bと、第3の主ヒータ5Cと、第4の主ヒータ5Dとからなる。図2に示すように第1~第4の主ヒータ5A~5Dが配置されている領域は、円板状の静電チャック部2と同程度の大きさであることが好ましい。図2に示す円環状の領域全体が、本発明の「円形領域」に該当する。 【0044】 なお、主ヒータ5A、5B、5C、5Dは、図2では平面視単純な円環状に描いたが、各主ヒータ5A、5B、5C、5Dは帯状のヒータを蛇行させて図2に示す円環状の領域を占めるように配置されている。このため、図1に示す断面構造では各主ヒータ5A、5B、5C、5Dを構成する帯状のヒータを個別に描いた。 【0045】 図3は、ヒータエレメント5を構成する主ヒータ5A、5B、5C、5Dについての説明図である。ここでは、主ヒータ5A、5B、5C、5Dについて代表する符号50を用い、「ヒータ50」として説明する。 【0046】 ヒータ50は、円形領域に配置される帯状の部材であり、円弧状を呈し平面視で円形領域の周方向(図中、符号Aで示す両矢印方向)に延在する複数の第1部材51と、円形領域の径方向(図中、符号Bで示す両矢印方向)に延在し2つの第1部材51を接続する第2部材52と、を有している。また、ヒータ50は、帯状形状の両末端に図1に示す給電用端子17が接続されている。複数の第1部材51は、円形領域において同心円状に複数列配列している。 【0047】 第2部材52は、円形領域の中心からの距離が異なる2つの第1部材51を接続する。例えば、第2部材52は、円形領域の半径の方向に延在し、2つの第1部材を接続している。なお、第2部材52が延在する「径方向」とは、円形領域の中心を通る直線の延在方向には限定されない。円形領域の中心からの距離が異なる2つの第1部材51を接続するならば、第2部材52の延在方向は、正確に円形領域の半径の方向と一致していなくてもよい。」 「【0057】 また、ヒータエレメント5(主ヒータ5A、5B、5C、5D)の下面側には温度センサー20が設けられている。図1の構造では温度調節用ベース部3と絶縁板7を厚さ方向に貫通するように設置孔21が形成され、これらの設置孔21の最上部に温度センサー20が設置されている。なお、温度センサー20はできるだけヒータエレメント5に近い位置に設置することが望ましいので、図1の構造から更に接着剤層8側に突き出るように設置孔21を延在して形成し、温度センサー20とヒータエレメント5とを近づけることとしてもよい。」 「【0071】 (設置孔21近傍) 図5は、設置孔(第1の貫通孔)21と平面的に重なるヒータの模式図である。図に示すように、設置孔21と重なるヒータ50Aは、一対の第1部材51Aと、一対の第1部材51Aを接続する第2部材52Aとを有している。第1部材51Aと第2部材52Aとは、多くの位置において同じ幅となるように形成されている。 【0072】 一対の第1部材51Aのうち一方の第1部材51A(図中、符号αで示す)と、一方の第1部材51Aから径方向(図中、符号Bで示す)に3番目(2n+1(n=1)番目)の列に配置された他方の第1部材51A(図中、符号βで示す)とは、互いに周方向(図中、符号Aで示す)の同じ側の端部において第2部材52Aで接続されている。なお、類似構成として、上述したnが1以上の整数であるものも採用可能である。 【0073】 また、第2部材52Aは、設置孔21と平面的に重なっており、第2部材52Aにおいて設置孔21と重なる部分は、第1部材51Aよりも広い幅の拡大部55が設けられている。 【0074】 設置孔21が設けられている部分では、温度調節用ベース部3の厚さ方向に熱が伝わりにくく、板状試料を冷却しにくい。そのため、従来の静電チャック装置においては、設置孔21と平面的に重なる位置において、板状試料は目標温度よりも高くなり易く、周囲と温度差を生じやすくなっていた。 【0075】 対して、本実施形態の静電チャック装置1では、設置孔21と平面的に重なる位置の第2部材52Aが周囲の第1部材51Aよりも幅広い拡大部55が形成されている。ヒータは、通電時の抵抗発熱を利用して加熱するものであるため、幅広く形成された拡大部55においては、周囲の第1部材51Aよりも発熱量が小さい。従って、設置孔21の存在により板状試料を冷却しにくくなっていても、設置孔21と重なる位置のヒータ50Aの発熱量を低減させることにより、過熱されにくく、周囲との温度差を低減することが可能となる。 【0076】 さらに、ヒータ50Aは、第1部材51Aと第2部材52Aとが接続する角部54の内側において、ヒータ(導電薄板)側に凹む凹部54aが形成されている。角部54の内側は、凹部54aが形成されることにより、凹部54aを設けない場合と比べて曲率半径が大きくなっている。また、角部54の外側は、ヒータ(導電薄板)の外側に張り出す凸部54bが形成されている。」 「 [図:0001422461000001.jpg] 」 (イ) 上記(ア)によれば、以下のことがいえる。 a 段落0043には、「ヒータエレメント5は」「中心部の円環状の領域に配置された第1の主ヒータ5Aと、この第1の主ヒータ5Aを順次取り囲むように円環状の領域に配置された第2の主ヒータ5Bと、第3の主ヒータ5Cと、第4の主ヒータ5Dとからなる。」及び「円環状の領域全体が、本発明の「円形領域」に該当する。」と記載されている。 よって、ヒータエレメント5は、中心部の円環状の領域である円形領域に配置された第1の主ヒータ5Aと、この第1の主ヒータ5Aを順次取り囲むように円形領域に配置された第2の主ヒータ5Bと、第3の主ヒータ5Cと、第4の主ヒータ5Dとからなる。 b 段落0045には、「主ヒータ5A、5B、5C、5Dについて代表する符号50を用い、「ヒータ50」として説明する。」と記載され、段落0046には、「ヒータ50は、円形領域に配置される帯状の部材であり」と記載されている。 よって、主ヒータ5A、5B、5C、5Dを代表してヒータ50といい、ヒータ50は、円形領域に配置される帯状の部材である。 c 段落0071には、「図5は、設置孔」「21と平面的に重なるヒータの模式図である。」及び「設置孔21と重なるヒータ50A」と記載されているから、上記bを踏まえると、ヒータ50Aは、ヒータ50のうち設置孔21と重なる部分であるといえる。 そして、図5から、設置孔21と第2部材52Aとが重なる方向から見た場合において、第2部材52Aのうち設置孔21と重なっている部分では、第2部材52Aの伸びている方向に沿った端部となる位置における第2部材52Aの線幅に比べて、同方向に沿った中央となる位置における第2部材52Aの線幅の方が大きく、 設置孔21と第2部材52Aとが重なる方向から見た場合において、第2部材52Aのうち設置孔21と重なっている部分では、第2部材52Aの線幅が、第2部材52Aの伸びている方向に沿った中央となる位置において最も大きく、第2部材52Aの伸びている方向に沿った中央となる位置に近づくに従って、大きくなっていることが、見て取れる。 d そうすると、上記(ア)並びに上記a~cによれば、甲1には「第1実施形態」として、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。(括弧内の段落番号等は、上記(ア)並びに上記a及びbにおける参照箇所を示す。) <甲1発明> 「静電チャック装置1であって、 静電チャック装置1は、上面側を載置面11aとした円板状の静電チャック部2と、この静電チャック部2の下方に設けられて静電チャック部2を所望の温度に調整する厚みのある円板状の温度調節用ベース部3と、静電チャック部2と温度調節用ベース部3の間に介挿されたヒータエレメント5を備え、(段落0020) 静電チャック部2と温度調節用ベース部3とは、静電チャック部2と温度調節用ベース部3の間に設けられた接着剤層8を介して接着され、(段落0021) 静電チャック部2は、上面を半導体ウエハ等の板状試料Wを載置する載置面11aとした載置板11と、この載置板11と一体化され該載置板11の底部側を支持する支持板12と、これら載置板11と支持板12との間に設けられた静電吸着用電極13および静電吸着用電極13の周囲を絶縁する絶縁材層14と、を有し、(段落0022) 載置板11および支持板12は、重ね合わせた面の形状を同じくする円板状のものであり、機械的な強度を有し、かつ腐食性ガスおよびそのプラズマに対する耐久性を有する絶縁性のセラミックス焼結体からなり、(段落0023) 載置板11の載置面11aには、直径が板状試料Wの厚みより小さい突起部11bが複数所定の間隔で形成され、これらの突起部11bが板状試料Wを支え、(段落0024) 静電吸着用電極13は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料Wを固定するための静電チャック用電極として用いられるものであり、(段落0027) 温度調節用ベース部3の上面側には、接着層6を介して絶縁板7が接着され、接着層6は耐熱性、および、絶縁性を有するシート状またはフィルム状の接着性樹脂からなり、(段落0041) ヒータエレメント5は、中心部の円環状の領域である円形領域に配置された第1の主ヒータ5Aと、この第1の主ヒータ5Aを順次取り囲むように円形領域に配置された第2の主ヒータ5Bと、第3の主ヒータ5Cと、第4の主ヒータ5Dとからなり、(上記a) 主ヒータ5A、5B、5C、5Dを代表してヒータ50といい、ヒータ50は、円形領域に配置される帯状の部材であり、(上記b) 温度調節用ベース部3と絶縁板7を厚さ方向に貫通するように設置孔21が形成され、これらの設置孔21の最上部に温度センサー20が設置され、(段落0057) ヒータ50のうち設置孔21と重なるヒータ50Aは、一対の第1部材51Aと、一対の第1部材51Aを接続する第2部材52Aとを有し、第1部材51Aと第2部材52Aとは、多くの位置において同じ幅となるように形成され、(段落0071、上記c) 一対の第1部材51Aのうち一方の第1部材51Aと、一方の第1部材51Aから径方向に3番目の列に配置された他方の第1部材51Aとは、互いに、周方向の同じ側の端部において第2部材52Aで接続されており、(段落0072) 第2部材52Aは、設置孔21と平面的に重なっており、第2部材52Aにおいて設置孔21と重なる部分は、第1部材51Aよりも広い幅の拡大部55が設けられ、(段落0073) 設置孔21と第2部材52Aとが重なる方向から見た場合において、第2部材52Aのうち設置孔21と重なっている部分では、第2部材52Aの伸びている方向に沿った端部となる位置における第2部材52Aの線幅に比べて、同方向に沿った中央となる位置における第2部材52Aの線幅の方が大きく、 設置孔21と第2部材52Aとが重なる方向から見た場合において、第2部材52Aのうち設置孔21と重なっている部分では、第2部材52Aの線幅が、第2部材52Aの伸びている方向に沿った中央となる位置において最も大きく、第2部材52Aの伸びている方向に沿った中央となる位置に近づくに従って、大きくなっている、(上記c) 静電チャック。」 イ 甲3(特許第6818886号公報)の記載、技術事項 (ア) 甲3には、以下の記載がある。 「【0018】 内周側及び外周側ヒータ電極26,28の詳細について、図5及び図6を用いて説明する。図5は内周側ヒータ電極26の部分平面図、図6は外周側ヒータ電極28の部分平面図である。内周側ヒータ電極26のうち内周側センサ穴36の直上部分26a(図5の濃い網掛部分及び薄い網掛部分)を含む所定領域26Aの発熱密度は、所定領域26A以外の部分の発熱密度よりも小さくなるように設計されている。具体的には、内周側ヒータ電極26は、厚みが一定で所定領域26Aの幅Mが所定領域26A以外の部分の幅mよりも広くなっている。本実施形態では、所定領域26A以外の部分は、所定領域26Aに隣接する部分とした。直上部分26aは、所定領域26Aの幅Mを所定領域26A以外の部分の幅mと同じにした場合でも、内周側センサ穴36の直上部分と重なっている(図5の濃い網掛部分)。幅Mは幅mの1.2~2.6倍とするのが好ましい。これにより、内周側ヒータ電極26の所定領域26Aの電極断面積は、所定領域26A以外の部分の電極断面積よりも大きくなっている。そのため、所定領域26Aの長手方向の両端間(長さL1)の電気抵抗は、所定領域26A以外の部分の同じ長さL1の電気抵抗よりも低い。長さL1は内周側センサ穴36の直径の1.5倍以下とするのが好ましい。 【0019】 外周側ヒータ電極28のうち外周側センサ穴38の直上部分28a(図6の濃い網掛部分及び薄い網掛部分)を含む所定領域28Aの発熱密度は、所定領域28A以外の部分の発熱密度よりも小さくなるように設計されている。具体的には、外周側ヒータ電極28は、厚みが一定で所定領域28Aの幅Nが所定領域28A以外の部分の幅nよりも広くなっている。本実施形態では、所定領域28A以外の部分は、所定領域28Aに隣接する部分とした。直上部分28aは、所定領域28Aの幅Nを所定領域28A以外の部分の幅nと同じにした場合でも、外周側センサ穴38の直上部分と重なっている(図6の濃い網掛部分)。幅Nは幅nの1.2~2.6倍とするのが好ましい。これにより、外周側ヒータ電極28の所定領域28Aの電極断面積は、所定領域28A以外の部分の電極断面積よりも大きくなっている。そのため、所定領域28Aの長手方向の両端間(長さL2)の電気抵抗は、所定領域28A以外の部分の同じ長さL2の電気抵抗よりも低い。長さL2は外周側センサ穴38の直径の1.5倍以下とするのが好ましい。」 「【図5】 [図:0001422461000002.jpg] 【図6】 [図:0001422461000003.jpg] 」 (イ)上記(ア)によれば、甲3には、以下の技術事項3が記載されている。 <技術事項3> 「ヒータ電極のうちセンサ穴の直上部分を含む所定領域の発熱密度を、所定領域以外の部分の発熱密度よりも小さくするために、ヒータ電極を、厚みが一定で所定領域の幅Mが一定で、所定領域以外の部分の幅mより広くなるように設計すること。」 (2)対比、判断 ア 本件発明と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「半導体ウエハ等の板状試料W」は、「電荷を発生させて静電吸着力で」固定されるものであるから、本件発明の「被吸着物」に相当する。 (イ)甲1発明の「静電チャック部2」は、「上面を半導体ウエハ等の板状試料Wを載置する載置面11aとした載置板11と」、「支持板12と」を有し、「載置板11および支持板12は」「絶縁性のセラミックス焼結体から」なるものであるから、上記(ア)を踏まえると、本件発明の「被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板」に相当する。 (ウ)甲1発明の「ヒータエレメント5」は、「第1の主ヒータ5Aと」、「第2の主ヒータ5Bと」、「第3の主ヒータ5Cと」、「第4の主ヒータ5Dとからなり」、「主ヒータ5A、5B、5C、5Dを代表してヒータ50といい、ヒータ50は、円形領域に配置される帯状の部材で」あるから、線状であるといえる点で、本件発明の「ヒーター」と共通する。 (エ)甲1発明の「円板状の温度調節用ベース部3」は、「上面側を載置面11aとした円板状の静電チャック部2」の下方に設けられ、「静電チャック部2」と「接着剤層8を介して接着され」るものであるから、本件発明の「前記誘電体基板のうち前記載置面とは反対側の面に接合されたベースプレート」に相当する。 (オ)甲1発明の「温度調節用ベース部3と絶縁板7を厚さ方向に貫通するように設置孔21が形成され」ることは、本件発明の「前記ベースプレートのうち前記誘電体基板側の面には開口が形成されて」いることに相当する。 (カ)甲1発明の「ヒータ50のうち、設置孔21と重なるヒータ50Aは」「第2部材52A」を有するから、「第2部材52A」は「ヒータ50」の一部である。そうすると、甲1発明の「設置孔21と第2部材52Aとが重なる方向から見た場合において、第2部材52Aのうち設置孔21と重なっている部分では、第2部材52Aの伸びている方向に沿った端部となる位置における第2部材52Aの線幅に比べて、同方向に沿った中央となる位置における第2部材52Aの線幅の方が大き」いことは、本件発明の「前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、前記ヒーターのうち前記開口と重なっている部分では、前記ヒーターの伸びている方向に沿った端部となる位置における前記ヒーターの線幅に比べて、同方向に沿った中央となる位置における前記ヒーターの線幅の方が大き」いことに相当する。 (キ)甲1発明の「設置孔21と第2部材52Aとが重なる方向から見た場合において、第2部材52Aのうち設置孔21と重なっている部分では、第2部材52Aの線幅が、第2部材52Aの伸びている方向に沿った中央となる位置において最も大き」いことは、本件発明の「前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、前記ヒーターのうち前記開口と重なっている部分では、前記ヒーターの線幅が、前記ヒーターの伸びている方向に沿った中央となる位置において最も大き」いことに相当する。 (ク)甲1発明の「第2部材52Aの伸びている方向に沿った中央となる位置に近づくに従って、大きくなっている」ことは、本件発明の「前記ヒーターの伸びている方向に沿った中央となる位置に近づくに従って」「大きくなっている」ことに相当する。 (ケ)上記(ア)~(ク)によれば、本件発明と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違する。 <一致点> 「被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、 線状のヒーターと、 前記誘電体基板のうち前記載置面とは反対側の面に接合されたベースプレートと、を備え、 前記ベースプレートのうち前記誘電体基板側の面には開口が形成されており、 前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、 前記ヒーターのうち前記開口と重なっている部分では、 前記ヒーターの伸びている方向に沿った端部となる位置における前記ヒーターの線幅に比べて、同方向に沿った中央となる位置における前記ヒーターの線幅の方が大きく、 前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、 前記ヒーターのうち前記開口と重なっている部分では、 前記ヒーターの線幅が、前記ヒーターの伸びている方向に沿った中央となる位置において最も大きく、 前記ヒーターの線幅が、 前記ヒーターの伸びている方向に沿った中央となる位置に近づくに従って、大きくなっていることを特徴とする、静電チャック。」 <相違点1> 本件発明は、「前記誘電体基板に内蔵された線状のヒーター」を備えるのに対し、甲1発明は、「ヒータ50」が、「帯状の部材」であるものの、「静電チャック部2」に内蔵されたものではない点。 <相違点2> 本件発明は、「前記ヒーターのうち前記開口と重なっている部分では」、「前記ヒーターの線幅が、前記ヒーターの伸びている方向に沿った中央となる位置に近づくに従って、段階的に大きくなっている」ものであるのに対し、甲1発明は、「第2部材52Aのうち設置孔21と重なっている部分では」、「第2部材52Aの線幅が」「第2部材52Aの伸びている方向に沿った中央となる位置に近づくに従って」「大きくなっている」ものの、段階的に大きくなっていない点。 イ 事案に鑑み、相違点2から検討する。 (ア)相違点2について 技術事項3において、「所定領域」は、「センサ穴の直上部分を含む」領域であるから、センサ穴の直上でヒータ電極の伸びている方向に沿った端部となる位置と中央となる位置とを含む領域であるといえる。そうすると、技術事項3において、「ヒータ電極」は、センサ穴の直上でヒータ電極の伸びている方向に沿った端部となる位置と中央となる位置とを含む所定領域における幅Mが一定であるから、甲1発明に技術事項3を適用しても、「第2部材52Aのうち設置孔21と重なっている部分」で、「第2部材52Aの伸びている方向に沿った端部となる位置」と「中央となる位置」と「における第2部材52Aの線幅」が一定のものとなり、相違点2に係る本件発明の構成とはならない。 また、甲2並びに甲4~甲6のいずれにも、相違点2に係る本件発明の構成は記載されていない。 したがって、引用発明に、甲2~甲6に記載された事項を適用しても、相違点2に係る本件発明の構成とすることはできない。 (イ)申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書の第30頁下から12行~末行において、材料の電気抵抗を利用して発熱する抵抗体において、抵抗体の線幅を「段階的に」変化させることで抵抗体の発熱量を制御し、温度を均一化する技術は、甲4~甲6に記載されているとおり周知技術であるから、甲1発明が備える、自身の線幅が自身の伸びている方向に沿った中央となる位置に近づくに従って大きくなっているヒータについて、甲3に記載されているように、センサ穴の位置に合わせてヒータ電極の幅を変化させる場合に、ヒータの線幅を「段階的に」変化させることは、当業者が容易に想刹できるものであり、相違点2に係る本件発明の構成は、当業者であれば、甲1発明と甲3~甲6に記載された事項とに基づいて、容易に想到できるものである旨、主張している。 しかし、上記(ア)において検討したとおり、甲1発明に技術事項3を適用した場合、「第2部材52Aのうち設置孔21と重なっている部分」で、「第2部材52Aの伸びている方向に沿った端部となる位置」と「中央となる位置」と「における第2部材52Aの線幅」が一定のものとなる。そうすると、甲4~甲6に、抵抗体の線幅を「段階的に」変化させることで抵抗体の発熱量を制御する技術が記載されているとしても、甲1発明に技術事項3を適用した上で、さらに、甲4~甲6に記載された技術を適用し、「第2部材52Aの線幅」の線幅を一定のものから段階的に変化するものに改変することは、当業者であっても、容易に想到し得たことではない。 よって、上記申立人の主張を採用することはできない。 (ウ)上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、当業者といえども、甲1発明と、甲3~甲6に記載された事項とに基づき、相違点2に係る本件発明の構成を容易に想到することはできない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明は、甲1発明と、甲2~6に記載された事項とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 よって、申立理由1は、理由がない。 2 申立理由2(明確性要件)について (1)請求項1の記載について ア 請求項1には、「前記ヒーターの線幅が、前記ヒーターの伸びている方向に沿った中央となる位置に近づくに従って、段階的に大きくなっている」と記載されている。 イ 「段階」は、「だんばしご。きざはし。階段。」(広辞苑第4版)を意味する用語であり、「的」は、「名詞に添えて、その性質を帯びる、その状態をなす意を表す」(広辞苑第4版)用語である。 ウ 上記アにおいて、「段階的に」は、「ヒーターの線幅が」「大きくなっている」状態を修飾するものであるから、上記イを踏まえると、きざはし又は階段状に大きさが変化することを意味する表現であると解される。 エ さらに、本願明細書の発明の詳細な説明の段落0053には、「ヒーター500の線幅が」「段階的に大きくなっている。尚、ヒーター500の段数は、この変形例では3段であるが、2段又は1段であってもよく、4段以上であってもよい。」と記載されており、「段階的に」は、きざはし又は階段状に、1段、2段、3段又は4段以上の段数を有するように大きさが変化することであるといえる。 オ 上記ウ及びエを踏まえると、上記アの「前記ヒーターの線幅が、前記ヒーターの伸びている方向に沿った中央となる位置に近づくに従って、段階的に大きくなっている」は、「ヒーターの線幅が」「ヒーターの伸びている方向に沿った中央となる位置に近づくに従って」、きざはし又は階段状に、1段、2段、3段又は4段以上の段数を有するように、「大きくなっている」ことを特定するものであり、明確である。 カ さらに、上記アの記載以外の、請求項1の記載について、不明確なところはない。 キ よって、請求項1に係る発明は、明確である。 (2)申立人の主張について ア 申立人は、特許異議申立書の第35頁第13行~第37頁下から7行において、請求項1に記載された「段階的に」は、甲7によれば、「徐々に程度・水準を上げていくこと。一足飛びにではなくだんだんと進めていくこと。」を意味すると解される一方、上記(1)エの本願明細書の発明の詳細な説明の段落0053の記載によれば、階段状になるように形成されていることを意味すると解され、本願発明1が備えるヒーターの形状が不明確である旨主張している。 イ 上記主張について検討する。上記(1)において検討したとおり、「段階的に」は、きざはし又は階段状に、1段、2段、3段又は4段以上の段数を有するように大きさが変化することを意味する表現であり、不明なところはない。 ウ また、本願明細書の発明の詳細な説明の段落0011には、「また、本発明に係る静電チャックでは」「ヒーターの線幅が」「次第に大きくなっていることも好ましい。」と記載され、段落0012には、「また、本発明に係る静電チャックでは」「ヒーターの線幅が」「段階的に大きくなっていることも好ましい。」と記載され、「ヒーターの線幅が」「次第に大きくなっている」形態とは別の形態として「ヒーターの線幅が」「段階的に大きくなっている」形態が記載されている。そうすると、「段階的に大きく」なることが、「次第に大きく」なること、すなわち、「徐々に程度・水準を上げていくこと。一足飛びにではなくだんだんと進めていくこと。」を意味する表現として用いられる用語ではないことは明らかである。 エ よって、請求項1に記載された「段階的に」の意味に不明確なところはなく、上記申立人の主張を採用することはできない。 (3)小括 上記(1)及び(2)によれば、本件発明は明確であるから、請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものである。 よって、申立理由2は、理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、請求項1に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由によっては取り消すことはできない。 また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-701153

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決108件(TOTO株式会社、金 海松)
  • 2026-700491異議申立 / 2026-07-31 / 維持静電チャック
    同じ当事者: TOTO株式会社、金 海松
  • 2025-701030異議申立 / 2026-06-17 / 訂正認容静電チャック
    同じ当事者: TOTO株式会社、金 海松
  • 2025-700944異議申立 / 2026-05-22 / 訂正認容静電チャック
    同じ当事者: TOTO株式会社、金 海松
  • 2025-700211異議申立 / 2026-03-18 / 訂正認容静電チャック
    同じ当事者: TOTO株式会社、金 海松
  • 2024-701154異議申立 / 2025-06-30 / 訂正認容静電チャック
    同じ当事者: TOTO株式会社、金 海松
同じ論点・分野の審決(審決分類)2,632件(121・H01L、537・H01L)
  • 2024-700860異議申立 / 2026-06-19 / 訂正認容発光装置
    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L
  • 2025-700045異議申立 / 2025-12-03 / 訂正認容ダイシングテープ及びダイシングダイボンドフィルム
    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L
  • 2025-700051異議申立 / 2025-11-10 / 訂正認容ウエハ載置台
    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L
  • 2025-700682異議申立 / 2025-10-22 / 維持複合導電性部材、試料保持具、静電チャック装置
    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L
  • 2025-700633異議申立 / 2025-09-24 / 維持保持装置および静電チャック
    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存