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特許異議申立

2025-700682

複合導電性部材、試料保持具、静電チャック装置

審判番号
2025-700682
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-031789
登録番号
7608871
請求日
2025年07月03日
審決日
2025年10月22日
公報発行日
2025年12月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】住友大阪セメント株式会社
  • 【権利者代理人】西澤 和純
  • 【権利者代理人】佐藤 彰雄
  • 【権利者代理人】萩原 綾夏
  • 【異議申立人】河原田 隆
審判長/審判官
  • 審判長 小宮 慎司
  • 審判官 緑川 隆
  • 審判官 棚田 一也
分類
P1651.121-Y (H01L) / P1651.537-Y (H01L)
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特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7608871号発明「複合導電性部材、試料保持具、静電チャック装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7608871号の請求項1~7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7608871号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和3年3月1日に出願され、令和6年12月23日にその特許権の設定登録がされ、令和7年1月7日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年7月3日に特許異議申立人 河原田 隆(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明7」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 試料保持具の内部電極又は給電端子を構成する複合導電性部材であって、 前記複合導電性部材は、絶縁性材料と、導電性材料と、を含み、 前記複合導電性部材からなり、直径10mm以上の試験片の両端のインピーダンスを測定した場合、100kHzで測定されるインピーダンスが、100Hzで測定されるインピーダンスの0.2倍以上5倍以下である、複合導電性部材。 【請求項2】 前記試験片において、100kHzで測定されるインピーダンスが、100Hzで測定されるインピーダンスの1倍以上5倍以下である、請求項1に記載の複合導電性部材。 【請求項3】 前記導電性材料の粒径は20μm以下である、請求項1または2に記載の複合導電性部材。 【請求項4】 試料を載置する載置面を有するセラミックス部材と、前記セラミックス部材の内部に設けられた内部電極層と、前記内部電極層における前記載置面とは反対側の面に設けられた給電端子と、を備え、 前記内部電極層および前記給電端子の少なくとも一方が請求項1または2に記載の複合導電性部材から構成される、試料保持具。 【請求項5】 前記内部電極層の厚さは50μm以上である、請求項4に記載の試料保持具。 【請求項6】 前記内部電極層の厚さ方向の下面と前記セラミックス部材における前記載置面とは反対側の面との距離をd2、前記内部電極層の厚さ方向の下面と前記給電端子の厚さ方向の下面との距離をd3とした場合、1/2d2<d3≦d2を満たす、請求項4または5に記載の試料保持具。 【請求項7】 静電チャック部材と、温度調整用ベース部材とを、接着剤層を介して接合してなる静電チャック装置であって、 前記静電チャック部材は、請求項4~6のいずれか1項に記載の試料保持具からなる、静電チャック装置。」 第3 申立理由の概要 1 申立人の提出した証拠 申立人は、次の甲第1号証~甲第8号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲8」という。)を証拠として提出している。 甲第1号証(甲1):特開2008-47881号公報 甲第2号証(甲2):特開2003-212657号公報 甲第3号証(甲3):特開2004-31479号公報 甲第4号証(甲4):特開2020-191199公報 甲第5号証(甲5):特開2020-188043号公報 甲第6号証(甲6):特開2019-149458号公報 甲第7号証(甲7):国際公開第2019/088204号 甲第8号証(甲8):特開2004-31599号公報 2 特許異議の申立理由 申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 (1) 申立理由1(甲1を主たる証拠とし、甲2を従たる証拠とした場合の進歩性欠如) 本件特許発明1~7は、甲1に記載された発明、甲2~7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2) 申立理由2(甲1を主たる証拠とし、甲8を従たる証拠とした場合の進歩性欠如) 本件特許発明1~7は、甲1に記載された発明、甲3~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3) 申立理由3(サポート要件違反) 本件特許発明1~7は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第4 申立人の提出した証拠の記載 1 甲1の記載及び甲1発明 (1) 甲1の記載 甲1には、以下の記載がある(下線は当審において加筆した。以下同じ。)。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、クーロンタイプのヒータ付き静電チャックに関する。 ・・・ 【0014】 本発明の実施形態によるヒータ付き静電チャック1は、図1,2に示すように、アルミナを含む焼結体からなる基体3と、該基体3中の上部側に埋設された電極5と、基体3の下部側に埋設された抵抗発熱体7とを備えている。 【0015】 [基体] 前記基体3は、図1及び図2に示すように円盤状に形成されており、基体3の上面(表面)は、ウエハ等の基板が載置される基板載置面9に形成されている。また、基体3中の電極5から上側、即ち、電極5から基板載置面9までの部分は誘電体層11に形成されている。また、電極5から下側、即ち、電極5から基体3の下面(裏面)までの部分は支持部材13に形成されている。 ・・・ 【0017】 [電極] 図1,2に示すように、基体3の上部側には、基体3よりも径の小さい円板状の電極5が埋設されている。この電極5は、主成分がタングステンカーバイドであり、かつ、5vol%以上20vol%以下のアルミナを含んでいる。ここで、電極5中におけるタングステンカーバイドの含有量は、70vol%~95vol%が好ましい。 【0018】 また、図2に示すように、基体3の径方向中心部に、基体3の下面から上方に向けて延びる収容孔15が形成されており、該収容孔15内に電極用給電部材21が配設されている。この電極用給電部材21の上端は、接続部材19を介して電極5に接続されている。電極用給電部材21から接続部材19を介して電極5に電力が供給されると、基体3の誘電体層11に静電吸着力(クーロン力)が発生して基体3の基板載置面9に基板が吸着される。 ・・・ 【0060】 表3に示すように、本発明例5,6,7の方が比較例9,10よりも電極5の密着強度が高くなることが判明した。なお、アルミナの含有量が22vol%以上になると、ESC電極のインピーダンスが大きくなり、好ましくなかった。ESC電極には高周波電流を印加することがあるため、インピーダンスが低い方が好ましい。」 「【図1】 [図:0001430033000001.jpg] 【図2】 [図:0001430033000002.jpg] 」 (2) 甲1に記載された事項 ア 上記(1)の【0014】によれば、「ヒータ付き静電チャック1」は、「アルミナを含む焼結体からなる基体3と、該基体3中の上部側に埋設された電極5と、基体3の下部側に埋設された抵抗発熱体7」とを備えている。 イ 上記(1)の【0015】によれば、「前記基体3」は、「円盤状」に形成されており、「基体3の上面(表面)は、ウエハ等の基板が載置される基板載置面9」に形成されている。 ウ 上記(1)の【0017】、【0018】によれば、「基体3」の上部側には、「基体3よりも径の小さい円板状の電極5」が埋設されており、この電極5は、「主成分がタングステンカーバイドであり、かつ、5vol%以上20vol%以下のアルミナ」を含み、電力が供給されると、「基板載置面9」に基板が吸着される。 (3) 甲1発明 上記(2)によれば、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。(各構成末尾の(ア)~(ウ)は、上記(2)の引用元を示す。) 「アルミナを含む焼結体からなる基体3と、該基体3中の上部側に埋設された電極5と、基体3の下部側に埋設された抵抗発熱体7とを備える、ヒータ付き静電チャック1であって、(ア) 前記基体3は、円盤状に形成されており、基体3の上面(表面)は、ウエハ等の基板が載置される基板載置面9に形成されており、(イ) 基体3の上部側には、基体3よりも径の小さい円板状の電極5が埋設されており、この電極5は、主成分がタングステンカーバイドであり、かつ、5vol%以上20vol%以下のアルミナを含み、電力が供給されると、基板載置面9に基板が吸着される、(ウ) ヒータ付き静電チャック1。」 2 甲2の記載 甲2には、以下の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、接地抵抗器及びその製造方法に関し、特に、高速鉄道用車両の車体に発生するサージ電圧等の異常電圧を低減する際に用いて好適な接地抵抗器及びその製造方法に関するものである。 ・・・ 【0023】この抵抗体1は、0.04重量%以上、好ましくは0.04重量%~0.7重量%のアルミニウム(Al)が固溶した炭化珪素結晶粒子を10重量%以上、好ましくは15重量%以上含有する炭化珪素焼結体により構成されている。この炭化珪素焼結体は、4H型の結晶相を有する炭化珪素結晶粒子を10重量%以上、好ましくは15重量%以上含有している。そして、この炭化珪素焼結体は、周波数が10Hz~1MHzの周波数帯域におけるインピーダンスの変化率が50%以下となっている。 ・・・ 【0053】 【実施例】以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。 「実施例1」平均粒子径0.3μmのβ型炭化珪素粉末(イビデン(株)製)(以下、炭化珪素粉末Aと称する)と、モノシランとエチレンとを原料としてプラズマCVD法により気相合成した平均粒子径0.03μmのβ型炭化珪素微粉末(以下、炭化珪素粉末Bと称する)と、平均粒子径0.2μmの酸化アルミニウム粉末(大明化学(株)製)とを混合し、混合組成物を得た。 【0054】この混合組成物中における炭化珪素粉末Aと炭化珪素粉末Bとの配合比は、重量比で96:4であった。また、全炭化珪素粉末100重量部に対する、酸化アルミニウム粉末の配合量は、金属アルミニウム換算で0.53重量部であった。次いで、この混合組成物を、純水中にて分散せしめ、さらにボールミルで12時間混合し、その後、乾燥、造粒し、顆粒状の成型用粉体とした。次いで、この成型用粉体を金型を用いて円板形状に予備成形した後、ホットプレス(加圧力:35MPa)により,アルゴン雰囲気下、2000℃の温度にて1時間焼成し、炭化珪素焼結体を得た。 【0055】次いで、この焼結体の両面及び側面を研削し、長さ120mm、幅65mm、厚さ5mmの平板状に加工し、抵抗体1とした。その後、この抵抗体1の両端、上下面に、Ag-Cu-Ti系ペーストを用いて、スクリーン印刷法によりメタライズ層を形成し、1対のNiメッキした銅製の電極板2とNiメッキした銅製のリード線端子板3とを上記の抵抗体1の両端にボルト4及びナット5で締結し実施例1の接地抵抗器とした。 ・・・ 【0057】また、この焼結体の密度をアルキメデス法により測定したところ、3.05g/cm3であることが確認された。また、この焼結体から3×4×38mmの大きさの試験片を切り出して四点曲げ強度を測定したところ、450MPaであった。また、インピーダンスアナライザを用いて、この焼結体の10Hz~1MHzの周波数帯域におけるインピーダンスを測定したところ、この周波数帯域におけるインピーダンスの変化率は22.9%であり、各周波数におけるインピーダンス値は図3に示すとおりであった。図3では、本実施例の測定データをE1で示している。 ・・・ 【0062】また、この炭化珪素焼結体の比抵抗、熱伝導率、平均粒径を常法に従って測定したところ、比抵抗は室温(25℃)~250℃の温度範囲で0.32~0.21Ω・cm、熱伝導率は室温で60W/mK、平均粒径は2.3μmであった。」 「【図3】 [図:0001430033000003.jpg] 」 3 甲8の記載 甲8には、以下の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、液晶ガラス基板製造装置や、半導体製造装置等において、導体膜を備えたガラス基板やSOS(シリコンオンサファイア)、SOI(シリコンオンインシュレータ)等の絶縁性基板を静電気力で吸着し保持する静電チャックに関するものであって、特に、液晶注入、イオン注入、エッチング、CVD、スパッタ工程に使用される静電チャックに関するものである。 ・・・ 【0036】 平均粒径約1μmの純度99%の窒化アルミニウム原料粉末と有機バインダーと溶媒を加えて泥奬を作製し、ドクターブレード法により厚さ約0.5mmのグリーンシートを複数枚成形した。 【0037】 また、静電電極2用のペーストとして、純度99%以上、平均粒径約2.5μmのW、及びWCのそれぞれの原料粉末と上記のAlN原料粉末5重量%を有機バインダーとともに混練し作製した。また、静電電極2として、ペーストは、Tiを主成分としたものと、AlN原料粉末を添加していないペーストを準備した。このそれぞれのペーストをグリーンシート上にスクリーン印刷法にて四角形状の静電電極を印刷した。」 第5 当審の判断 1 申立理由1(甲1を主たる証拠とし、甲2を従たる証拠とした場合の進歩性欠如)について (1) 本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 (ア)「試料保持具の内部電極又は給電端子を構成する複合導電性部材」について 甲1発明の「基体3」は、「電極5」が上部側に埋設されており、上面は、ウエハ等の基板が載置される基板載置面9に形成されている。そして、「電極5」に電力が供給されると、基板載置面9に基板が吸着されるのであるから、「基体3」は「試料保持具」と、「電極5」はその「内部電極」といい得るものである。 また、「電極5」は、主成分がタングステンカーバイドであり、かつ、5vol%以上20vol%以下のアルミナを含むことから、「複合導電性部材」といい得るものである。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、「試料保持具の内部電極を構成する複合導電性部材」である点で共通する。 (イ)「前記複合導電性部材は、絶縁性材料と、導電性材料と、を含み」について 「電極5」は、主成分がタングステンカーバイドであり、かつ、5vol%以上20vol%以下のアルミナを含むものであり、「タングステンカーバイド」は「導電性材料」であり、「アルミナ」は「絶縁性材料」である。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、「前記複合導電性部材は、絶縁性材料と、導電性材料と、を含」む点で共通する。 (ウ)上記(ア)、(イ)より、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。 [一致点] 「試料保持具の内部電極又は給電端子を構成する複合導電性部材であって、 前記複合導電性部材は、絶縁性材料と、導電性材料と、を含む、 複合導電性部材。」 [相違点] 本件特許発明1の「複合導電性部材」は、「前記複合導電性部材からなり、直径10mm以上の試験片の両端のインピーダンスを測定した場合、100kHzで測定されるインピーダンスが、100Hzで測定されるインピーダンスの0.2倍以上5倍以下である」のに対し、甲1発明の「電極5」は、そのような特定がない点。 イ 判断 (ア)検討 甲1発明の「電極5」に関し、甲1には、ESC電極には高周波電流を印加することがあるため、インピーダンスが低い方が好ましいことが記載されている(【0060】)が、具体的にどの程度の周波数の高周波電流を印加するのかは記載されていないし、低周波電流を印加した場合のインピーダンスと高周波電流を印加した場合のインピーダンスの関係を特定することも記載されていない。 そうすると、甲1発明の「電極5」について、所定の高周波数におけるインピーダンスと所定の低周波数におけるインピーダンスの比を特定の範囲の値に定める動機付けは存在しない。 そして、甲2及び甲3~甲7の記載を見ても、「試料保持具」の「内部電極」を構成する部材として、「直径10mm以上の試験片の両端のインピーダンスを測定した場合、100kHzで測定されるインピーダンスが、100Hzで測定されるインピーダンスの0.2倍以上5倍以下」とすることは記載されておらず、技術常識であるともいえないから、上記ア(ウ)の相違点に係る構成は、当業者が容易になし得たものではない。 (イ)申立人の主張について 上記ア(ウ)の相違点に関して、申立人は、甲2には、10Hz~1MHzの周波数帯域におけるインピーダンスの変化率が22.9%である抵抗体が記載されていることを示したうえで、甲1の【0060】には、高周波電流の印加時において電極層のインピーダンスが大きくなってしまうという課題が記載されており、当該課題を解決するために、甲1に記載された静電チャックの電極5を構成する部材として、甲2に記載された抵抗体(複合導電性部材)を用い、相違点に係る構成とすることは、容易になし得たものである旨主張する。(異議申立書17頁下から6行~20頁最終行) しかしながら、甲1の【0060】には、ESC電極には、高周波電流を印加することがあるため、インピーダンスが低い方が好ましいことが記載されている程度であって、高周波電流を印加時にインピーダンスが大きくなってしまうという課題があることまでは記載されていない。 そうすると、甲2に記載された技術を、甲1に記載された静電チャックの発明に適用する動機付けが有るとはいえず、申立人の上記主張は採用できない。 (2)本件特許発明2~7について 本件特許発明2~7は、本件特許発明1を限定した発明であり、甲1発明と対比すると、少なくとも、上記(1)ア(ウ)の相違点を有するところ、本件特許発明1が上記(1)イ(ア)、上記(1)イ(イ)のとおり、甲1発明、甲2~甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件特許発明2~7も甲1発明、甲2~甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)小括 以上のとおり、本件特許発明1~7は、甲1発明、甲2~甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許発明1~7は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。 したがって、申立理由1には理由がない。 2 申立理由2(甲1を主たる証拠とし、甲8を従たる証拠とした場合の進歩性欠如)について (1) 本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明を対比すると、上記1(1)ア(ウ)で示した一致点、相違点を有する。 イ 判断 (ア)検討 上記1(1)イ(ア)で示したように、甲1発明の「電極5」を「直径10mm以上の試験片の両端のインピーダンスを測定した場合、100kHzで測定されるインピーダンスが、100Hzで測定されるインピーダンスの0.2倍以上5倍以下」とする動機付けは存在しない。 そして、甲8及び甲3~甲7の記載を見ても、「試料保持具」の「内部電極」を構成する部材として、「直径10mm以上の試験片の両端のインピーダンスを測定した場合、100kHzで測定されるインピーダンスが、100Hzで測定されるインピーダンスの0.2倍以上5倍以下」とすることは記載されておらず、技術常識であるともいえないから、上記1(1)ア(ウ)の相違点に係る構成は、当業者が容易になし得たものではない。 (イ)申立人の主張について 上記1(1)ア(ウ)の相違点に関して、甲8には、静電チャックの静電電極として用いられる複合導電性部材を製作するにあたり、原料粉末の平均粒径が約2.5μmであるW(つまり導電性材料)と、原料粉末の平均粒径が1μmであるAlN(つまり絶縁性材料)と、を用いることが記載されており、この複合導電性部材で構成される静電電極2のインピーダンスの周波数特性は、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0025】、【0029】、【0030】の記載によれば、相違点に係る構成を満たす程度に小さくなるはずであり、甲1の【0060】に記載された課題を解決するため、電極5を構成する部材として、同じ技術分野に属する甲8に記載された静電電極2の材料と同じ材料を用い、結果的に相違点に係る構成とすることは、容易になし得たことである旨主張する。(異議申立書28頁5行~30頁3行) しかしながら、本件明細書の【0023】に、「複合導電性部材において、全体の体積に占める導電性材料の配合量は体積比で、10%以上70%以下」とすることで、「インピーダンスの周波数による変化を小さくすることができる」ことが記載されているように、インピーダンスの周波数特性は複合導電性部材を構成する導電性材料や絶縁性材料の平均粒径だけで決まるものでないことは技術常識であり、甲8に記載された平均粒径の導電性材料と絶縁性材料で構成される静電電極2のインピーダンスの周波数特性が、相違点に係る構成を満たすとはいえない。 そうすると、甲1の電極5を構成する部材として、甲8の複合導電性部材を用いることができたとしても、相違点に係る構成を満たすとはいえず、申立人の上記主張を採用できない。 (2)本件特許発明2~7について 本件特許発明2~7は、本件特許発明1を限定した発明であり、甲1発明と対比すると、少なくとも、上記1(1)ア(ウ)の相違点を有するところ、本件特許発明1が上記(1)イ(ア)、上記(1)イ(イ)のとおり、甲1発明、甲3~甲8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件特許発明2~7も甲1発明、甲3~甲8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)小括 以上のとおり、本件特許発明1~7は、甲1発明、甲3~甲8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許発明1~7は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。 したがって、申立理由2には理由がない。 3 申立理由3(サポート要件違反)について (1)申立人の主張の概要 申立人は、異議申立書(35頁15行~36頁5行)において、本件特許明細書の【0005】等の記載によれば、本件特許発明1~7が解決しようとする課題は、「高周波でプラズマ電極となる電極層や、電極層に電圧を伝えるため給電端子等のインピーダンスが大きくなり、発熱が大きくなっていた」というものであり、「半導体製造装置等において、給電端子等のインピーダンスに起因した発熱を問題の無い程度に抑えるためには、各周波数におけるインピーダンスの絶対値そのものを小さく抑える必要がある」ところ、本件特許発明1~7は、「各周波数におけるインピーダンスの絶対値」については何ら特定するものではなく、上記課題を解決することのできない構成を含むものであるから、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものである旨主張している。 (2)当審の判断 本件特許発明1~7が解決しようとする課題は、本件特許明細書の【0006】、【0014】の記載からみて、「従来よりも高い周波数までインピーダンスの変化が少ない複合導電性部材、その複合導電性部材から構成される導電層等を備える試料保持具、その試料保持具からなる静電チャック部材を備える静電チャック装置を提供すること」にあるといえる。そして、本件特許発明1の「複合導電性部材」は、「直径10mm以上の試験片の両端のインピーダンスを測定した場合、100kHzで測定されるインピーダンスが、100Hzで測定されるインピーダンスの0.2倍以上5倍以下」であり、100kHzで測定されるインピーダンスが、100Hzで測定されるインピーダンスの0.2倍以上5倍以下と特定されていることから、当該課題を解決できるものと認められる。また、本件特許発明1を引用する本件特許発明2~7においても、同様に当該課題を解決できると認められる。 よって、申立人の主張に理由はなく採用できない。 (3)小括 以上のとおり、本件特許発明1~7は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。 したがって、申立理由3には理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び申立人の提出した証拠によっては、本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700682

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    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L
  • 2025-700045異議申立 / 2025-12-03 / 訂正認容ダイシングテープ及びダイシングダイボンドフィルム
    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L
  • 2025-700051異議申立 / 2025-11-10 / 訂正認容ウエハ載置台
    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L
  • 2025-700633異議申立 / 2025-09-24 / 維持保持装置および静電チャック
    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L
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    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L

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