特許異議申立
2016-700997
光沢のよいチョコレート類並びにその製造法
- 審判番号
- 2016-700997
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2010-261947
- 登録番号
- 特許第5906565号(P5906565)
- 請求日
- 2016年10月19日
- 審決日
- 2017年03月23日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】不二製油株式会社
- 【異議申立人】中野 圭二
- 審判長/審判官
- 審判長 紀本 孝
- 審判官 佐々木 正章
- 審判官 大山 広人
- 分類
- P1651.121-Y (A23G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5906565号発明「光沢のよいチョコレート類並びにその製造法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5906565号の請求項1及び2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5906565号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成22年11月25日の出願であって、平成28年4月1日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人中野圭二により特許異議申立がなされ、当審において平成28年12月15日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年2月13日に意見書の提出がされたものである。
第2 本件発明
請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1及び2」、また、これらをあわせて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
油脂を25~45重量%及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを0.1重量%以上含有し、且つ45℃での降伏値が1Pa以下、45℃での見かけ粘度が6000cP以下であり、且つカカオ繊維質およびパルプ繊維質からなる群より選択される繊維質を一種以上含み、且つその総和が4重量%以上20重量%以下である、チョコレート類に含まれる油脂中のトランス酸含量が20重量%以下、チョコレート類の融点が25℃以上、水分量が3重量%以下及び20℃で固化した時の光沢度(入射角60度)が15以上であることを特徴とする被覆用チョコレート類(ただし、テンパー型チョコレート類を除く)。
【請求項2】
請求項1記載の繊維質がコンチング工程を経ることを特徴とする請求項1に記載の被覆用チョコレート類の製造法。
第3 取消理由について
1 取消理由の概要
当審において、請求項1及び2に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
甲第1号証:特開2008-113570号公報
甲第2号証:ポリグリセリンエステル、阪本薬品工業株式会社、1994年10月3日発行、p.57、150-155、195
甲第3号証:Ralph E.Timms、製菓用油脂ハンドブック、株式会社幸書房、2010年2月14日発行、p.287、291-293、300、308、370
甲第4号証:日高 徹、食品用乳化剤 第2版、株式会社幸書房、1991年3月1日発行、p.46、230-232
甲第5号証:Stephen T.Beckett、チョコレートの科学、株式会社光琳、平成19年6月30日発行、p.92
甲第6号証:特開2003-284497号公報
甲第7号証:特開2010-22310号公報
甲第8号証:特開昭60-241852
甲第9号証:特表2008-539702号公報
甲第10号証:特開2002-84974号公報
甲第11号証:竹林 やゑ子、洋菓子材料の調理科学、株式会社柴田書店、昭和58年10月10日発行、p.200-203、213-217、223-225
甲第12号証:特開2008-182961号公報
甲第13号証:特開2009-17821号公報
甲第14号証:特開平6-22694号公報
甲第15号証:特開2008-245577号公報
甲第16号証:特表2005-507028号公報
甲第17号証:国際公開第2009/057451号
甲第18号証:本件特許(特許第5906565号)に係る出願(特願2010-261947号)における平成27年10月16日付け手続補正書(方式)に添付された2015年10月8日付けの実験成績証明書
本件発明は、甲第1号証に記載の発明及び甲第2~10号証に示される技術事項、甲第11号証に記載の発明及び甲第2~10号証に示される技術事項、又は甲第15~17号証のいずれかに記載の発明及び甲第2~10号証に示される技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。
2 甲各号証に記載された発明
(1)甲第1号証に記載された発明
カカオマスのカカオ繊維質含有量を13.7重量%、ココア(ココア粉末)のカカオ繊維質含有量を27.1重量%(本件特許明細書【0028】)とすると、甲第1号証(実施例7、比較例3等)には以下の発明が記載されている。
「油脂を41.2又は44.7重量%含有し、且つカカオ繊維質を含み、且つその総和が5.7又は6.8重量%である、油脂組成物に含まれる油脂中のトランス酸含量が20重量%以下、油脂組成物の融点が28又は29℃、及び水分量が3重量%以下であり、艶が非常に良好である被覆用ノンテンパー型油脂組成物。」
(2)甲第11号証に記載された発明
カカオマスのカカオ繊維質含有量を13.7重量%、ココア(ココア粉末)のカカオ繊維質含有量を27.1重量%(本件特許明細書【0028】)とすると、甲第11号証(223頁表7-16「ココアタイプ」「スイートチョコレート1、2」)には以下の発明が記載されている。
「油脂を45重量%前後含有し、且つカカオ繊維質を含み、且つその総和が4.5重量%である、チョコレートに含まれる油脂中のトランス酸含量が20重量%以下、チョコレートの融点が29~41℃、水分量が3重量%以下である、光沢が強いテンパリング不必要である被覆用チョコレート。」
(3)甲第15号証に記載された発明
カカオマスの油脂含有量を55.0重量%(甲第3号証308頁表8.5)、カカオマスのカカオ繊維質含有量を13.7重量%(本件特許明細書【0028】)とすると、甲第15号証(実施例1~5)には以下の発明が記載されている。
「油脂を44.2~44.8重量%含有し、且つカカオ繊維質を含み、且つその総和が4.9~6.0重量%である、チョコレートに含まれる油脂中のトランス酸含量が20重量%以下、常温流通可能な、水分量が3重量%以下である、艶のあるノンテンパー型被覆用チョコレート。」
(4)甲第16号証に記載された発明
カカオ粉末のカカオ繊維質含有量を27.1重量%(本件特許明細書【0028】)とすると、甲第16号証(実施例4)には以下の発明が記載されている。
「油脂を31.7重量%含有し、且つカカオ繊維質を含み、且つその総和が4.1重量%である、チョコレートに含まれる油脂中のトランス酸含量が0.0~0.9重量%、チョコレートの融点が31.7~35.2℃、水分量が3重量%以下である、良好な光沢を有するノンテンパー型被覆用チョコレート。」
(5)甲第17号証に記載された発明
カカオマスのカカオ繊維質含有量を13.7重量%、ココアのカカオ繊維質含有量を27.1重量%(本件特許明細書【0028】)とすると甲第17号証(実施例1)には以下の発明が記載されている。
「油脂を45重量%含有し、且つカカオ繊維質を含み、且つその総和が6.1重量%である、チョコレートに含まれる油脂中のトランス酸含量が1重量%以下、チョコレートの融点が25℃以上、水分量が3重量%以下である、艶が非常に良好なノンテンパー型被覆用チョコレート。」
3 当審の判断
(1)甲第1号証に基づく取消理由
ア 本件発明1について
本件発明1と甲第1号証記載の発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点>
本件発明1は、「20℃で固化した時の光沢度(入射角60度)が15以上である」のに対して、甲第1号証記載の発明は、そのように特定されていない点。
そこで、上記相違点について検討するに、
被覆用チョコレート類において、20℃で固化した時の光沢度(入射角60度)が15以上であることは甲第2~10号証のいずれにも記載されていない。
そして、本件発明1は、20℃で固化した時の光沢度(入射角60度)が15以上であることで、光沢のきわめて良い被覆用チョコレート類を得るものである(【0008】)。
特許異議申立人は、20℃で固化した時の光沢度(入射角60度)が15以上であることは、本件発明の解決手段でなく、効果であり、又甲第1号証のチョコレートも艶が非常に良好であるから(【0041】、【0042】)、光沢度を15以上とすることは当業者が容易に想到し得ることである旨主張する。
しかし、光沢度を除く本件発明1の発明特定事項を満たす被覆用チョコレート類が、必ず光沢度15以上であるとする根拠はないから、20℃で固化した時の光沢度(入射角60度)が15以上であることも本件発明1の発明特定事項というべきである。そして、艶と光沢度の数値との関係を示す証拠もないから、甲第1号証のチョコレートの艶が非常に良好であっても、その光沢度は不明であり、むしろ、甲第18号証によれば、甲第1号証で艶が非常に良好とされる例でも、光沢度は7.0でしかないから、具体的に光沢度を15以上とすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証記載の発明及び甲第2~10号証に示される技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定されたものであるから、同様の理由により、甲第1号証記載の発明及び甲第2~10号証に示される技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)甲第11、15~17号証に基づく取消理由
本件発明1と甲11号証記載の発明、甲15~17号証のいずれかに記載の発明とを対比するに、本件発明1と甲11号証記載の発明、甲15~17号証のいずれかに記載の発明とは、少なくとも前記(1)に示した<相違点>で相違するところ、該相違点についての判断は、前記(1)に示したのと同様である。
よって、本件発明1、2は、甲第11号証記載の発明及び甲第2~10号証に示される技術事項、又は甲第15~17号証のいずれかに記載の発明及び甲第2~10号証に示される技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 まとめ
したがって、本件発明1及び2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、取り消されるべきものとはいえない。
第4 むすび
したがって、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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