特許異議申立
2024-700561
油脂組成物
- 審判番号
- 2024-700561
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-180498
- 登録番号
- 7397613
- 請求日
- 2024年06月12日
- 審決日
- 2024年12月26日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ミヨシ油脂株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人牛木国際特許事務所
- 【異議申立人】金山 愼一
- 審判長/審判官
- 審判長 植前 充司
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 柴田 昌弘
- 分類
- P1651.113-YAA(A23D) / P1651.121-YAA(A23D) / P1651.537-YAA(A23D) / P1651.536-YAA(A23D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法36条2号特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法113条2号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7397613号発明「油脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7397613号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし5〕について訂正することを認める。
特許第7397613号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7397613号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、令和1年9月30日を出願日とする出願であって、令和5年12月5日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月13日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和6年6月12日に特許異議申立人 金山 愼一(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし5)がされ、同年8月2日付けで取消理由が通知され、同年10月4日に特許権者 ミヨシ油脂株式会社から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年同月21日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、それに対して、特許異議申立人から応答がなかったものである。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和6年10月4日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「油脂、ストロベリーフラノンを含む油脂組成物であって、」と記載されているのを、「油脂、ストロベリーフラノンを含む油中水型の油脂組成物であって、」に訂正する。併せて請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2ないし5も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記エステル交換油脂の含有量は、前記油脂全体の質量に対して5~60質量%であり、」と記載されているのを、「前記エステル交換油脂の含有量は、前記油脂全体の質量に対して23.2~60質量%であり、」に訂正する。併せて請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2ないし5も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「前記油脂中の乳脂肪の含有量が85質量%以下である」と記載されているのを、「前記油脂中の乳脂肪の含有量が6~40質量%である」に訂正する。併せて請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2ないし5も同様に訂正する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「油中水型」、「水中油型」、「油中水中油型」及び「水中油中水型」のいずれか特定されていなかった「油脂組成物」を「油中水型」の「油脂組成物」に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2による請求項1についての訂正は、「エステル交換油脂の含有量」をより狭い範囲に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3による請求項1についての訂正は、「油脂中の乳脂肪の含有量」をより狭い範囲に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし3による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項2ないし5についての訂正について
訂正事項1ないし3による請求項2ないし5についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし3による請求項2ないし5についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし3による請求項1ないし5についての訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし3による請求項1ないし5についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし5は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項1ないし3による請求項1ないし5についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし5に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし5〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
油脂、ストロベリーフラノンを含む油中水型の油脂組成物であって、
前記油脂は、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を含み、
前記エステル交換油脂の含有量は、前記油脂全体の質量に対して23.2~60質量%であり、
前記ストロベリーフラノンの含有量が0.001ppm以上であり、かつ、前記油脂中の乳脂肪の含有量が6~40質量%であることを特徴とする油脂組成物。
【請求項2】
マルトールを1.0~17ppm含むことを特徴とする請求項1の油脂組成物。
【請求項3】
前記エステル交換油脂のヨウ素価が20~33であることを特徴とする請求項1の油脂組成物。
【請求項4】
糖と濃縮乳の加熱混合物を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかの油脂組成物。
【請求項5】
前記ストロベリーフラノンと前記マルトールの配合比(ストロベリーフラノン/マルトール)が、0.005~0.15であることを特徴とする請求項2から4のいずれかの油脂組成物。」
第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要等
令和6年6月12日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。
1 申立理由1-1(明確性要件、サポート要件及び実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1及び2号並びに同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許発明の「油脂組成物」は、食品用途に限定されてもおらず、如何なる油脂組成物まで含まれるかが明らかではないため、明確ではない。
「油脂組成物」は、本件特許明細書中に明確に定義されていない。
しかし、本件特許明細書中の記載、特に【0036】の記載を参酌すると、「油脂組成物」は、例えば「油相と水相を加熱下で混合し乳化して急冷捏和した油脂組成物」などを意味すると解され、当該油脂組成物を加工して利用される「食品」は含まれない。
【0036】の記載に基づけば、「油脂組成物」は、例えば、油相と水相を加熱下で混合し乳化して急冷捏和したものなどを意味すると解される。
それに対して、【0036】の記載中、「油脂組成物」を加工して利用されるマーガリン、バタークリーム、ショートニング、ホイップクリームなどは、「油脂組成物」と異なる加工品として記載されているため、「油脂組成物」ではないことを示唆しているように思われるが、【0048】、【0053】、【0054】、【0058】及び【0061】の記載によると、マーガリン、バタークリーム及びショートニングは、「油脂組成物」である。
以上の通り、本件特許発明の「油脂組成物」は明確ではないため、本件特許発明1ないし5は明確性要件に違反する。
(2)本件特許発明の課題は、「乳脂肪量を減らした場合であっても、良好な乳脂感、深いミルク風味および爽やかさを実現することができる油脂組成物を提供すること」(【0006】)である。
本件特許の請求項1の記載によれば、「油脂組成物」は、本件特許発明の構成要件を満足する限り、食品用途に限定されず、如何なる油脂組成物をも含むものである。
しかし、本件特許明細書には、上記の通り、例えば、乳化して急冷捏和した油脂組成物等しか記載されておらず、乳化して急冷捏和した油脂組成物等が本件特許発明の課題を解決することしか記載されていない。
従って、本件特許発明1ないし5は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、発明の詳細な説明の記載が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないため、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。
2 申立理由1-2(サポート要件及び実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)呈味素材A~E
本件特許明細書に記載された実施例の油脂組成物はすべて、表1に記載された牛乳の加工品である呈味素材A~E(微量のストロベリーフラノン及びマルトールを含む素材)を添加したもののみである。
本件特許明細書には、本件特許発明で必須要件となっている「ストロベリーフラノン」及び「マルトール」そのものを添加して、本件特許発明の課題を解決したことを明らかにする実施例は、全く存在しない。
呈味素材A~E等の牛乳の加工品には、微量のストロベリーフラノン及びマルトールよりも多量に含まれる極めて多数の揮発性フレーバー成分が含まれることが知られている(例えば、甲第6及び7号証)。
本件特許明細書の実施例で用いられた呈味素材A~Eには、微量のストロベリーフラノン及びマルトールだけではなく、より大量に含まれる極めて多数の芳香フレーバー化合物が含まれていることは当業者には明らかである。
本件特許明細書の実施例を見た当業者は、より大量に含まれる極めて多数の芳香フレーバー化合物が含まれているにも関わらず、微量のストロベリーフラノン及びマルトールによってのみ、本件特許発明の課題(良好な乳脂感、深いミルク風味および爽やかさの実現)が解決されるとは、決して考えることはない。
以上の通り、本件特許発明1ないし5は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、発明の詳細な説明の記載が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないため、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。
(2)油脂組成物中の油脂の含有量
本件特許の請求項1ないし5には、「油脂組成物」中に含まれる油脂の含有量は特定されていない。
本件特許明細書中の実施例には、「油分(組成物中)」が、例えば表2のマーガリンは、42~80%、表3のバタークリームは、60~80%、表5のホイップクリームは、29.12~33.61%含まれる油脂組成物しか記載されていない。
それに対して、本件特許発明の「油脂組成物」は、実施例に記載された油脂組成物と大きく異なって、例えば油脂組成物中に油脂を僅か0.001ppm未満しか含まない油脂組成物をも包含するものである。
従って、本件特許発明1ないし5は、僅かの油脂しか含まない油脂組成物をも含むため、発明の詳細な説明に記載したものではなく、発明の詳細な説明の記載が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないため、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。
(3)ラウリン系油脂とパーム系油脂の比率
本件特許の請求項1ないし5には、「ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂」における「ラウリン系油脂とパーム系油脂の比率」は特定されていない。
本件特許発明の「油脂組成物」には、「ラウリン系油脂とパーム系油脂の比率」が、油脂1と油脂2の比率と大きく相違する、例えば10:90、1:99、更には0.001:99.999である油脂組成物、及び90:10、99:1、更には99.999:0.001である油脂組成物等が含まれる。本件特許発明から除外された実施例20の油脂組成物に近い、これらの油脂組成物も、本件特許発明の課題を解決することができるかは、本件特許明細書からは明らかではない。
従って、本件特許発明1ないし5は、「ラウリン系油脂とパーム系油脂の比率」が実施例1~19と21から大きく異なる油脂組成物を含むため、発明の詳細な説明に記載したものではなく、発明の詳細な説明の記載が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないため、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。
(4)エステル交換油脂の含有量
本件特許の請求項1ないし5に、「前記エステル交換油脂の含有量は、前記油脂全体の量に対して5~60質量%であり」と規定されている。
表2~表5で評価された油脂組成物におけるエステル交換油脂の含有量は以下の通りである。
表2(クッキーの評価) :27~47.5質量%
表3(バタークリームの評価) :40質量%
表4(食パンの評価) :25~35質量%
表5(ホイップクリームの評価):8.6~31.5質量%
以上の通り、各食品ごとに、評価された含有量と相違する、5~60質量%の範囲内のエステル交換油脂の含有量でも、「良好な乳脂感、深いミルク風味および爽やかさの実現」の課題が解決されるかは、本件特許明細書から明らかではない。更に、表2~表5の食品以外の食品、例えばマドレーヌやケーキスポンジなどでも、5~60質量%の範囲内のエステル交換油脂の含有量で、「良好な乳脂感、深いミルク風味および爽やかさの実現」の課題が解決されるかは、本件特許明細書から明らかではない。
従って、本件特許発明1ないし5は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、発明の詳細な説明の記載が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないため、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。
(5)クッキー及び食パンの評価
本件特許明細書の実施例を見ると、本件特許発明の課題における「良好な乳脂感、深いミルク風味および爽やかさの実現」とは、本件特許発明の油脂組成物自体が奏する作用ではなく、本件特許発明の油脂組成物を加工して利用される食品が奏する作用である。
実施例又は比較例に記載された配合比ではなく、より多量の又はより少量の本件特許発明の油脂組成物を用いてクッキー及び食パンを調製した場合、「良好な乳脂感、深いミルク風味および爽やかさの実現」の課題を解決することができる又はできない可能性があると思われる。
表2の下段の「クッキー」の評価、及び表4の下段の「食パン」の評価に基づくだけでは、実施例又は比較例の油脂組成物が「良好な乳脂感、深いミルク風味および爽やかさの実現」の課題が解決される又はされないと判断することはできない。
従って、本件特許発明1ないし5は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、発明の詳細な説明の記載が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないため、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。
3 申立理由2-1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由2-2(甲第10号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、3及び5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第10号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし5は、甲第10号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由2-3(甲第12号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、2、4及び5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第12号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし5は、甲第12号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
6 証拠方法
甲第1号証:特開2018-68138号公報
甲第2号証:映像情報メディア学会誌、Vol.65、No.11、p.1575-1579(2011)
甲第3号証:特開2006-34102号公報
甲第4号証:国際公開第2016/203817号
甲第5号証:特開2017-125号公報
甲第6号証:J.Agric.Food Chem., 2002,Vol.50,p.305-312
甲第7号証:J.Agric.Food Chem., 2001,Vol.49,p.2948-2953
甲第8号証:日本調理科学会誌、Vol. 46、No. 4、p.308-311(2013)
甲第9号証:特表2010-532990号公報
甲第10号証:特開2015-156855号公報
甲第11号証:J.Dairy Sci.,Vol.87,p.4057-4063(2004)
甲第12号証:特開2010-22305号公報
甲第13号証:特開2016-202169号公報
甲第14号証:特開2015-142568号公報
甲第15号証:特開2015-142567号公報
甲第16号証:特開2015-142570号公報
甲第17号証:特開2015-142569号公報
甲第18号証:特開2019-85564号公報
甲第19号証:特開2017-79737号公報
甲第20号証:特開2018-68152号公報
甲第21号証:特開2017-221174号公報
甲第22号証:特開2016-208973号公報
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由の概要
令和6年8月2日付けで通知された取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。
1 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし3及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由1は申立理由2-1のうちの請求項1ないし3及び5に対する新規性並びに請求項1ないし5に対する進歩性とおおむね同旨である。
2 取消理由2(甲10に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし3及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲10に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲10に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由2は申立理由2-2を包含する。
3 取消理由3(甲12に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、2及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲12に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲12に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由3は申立理由2-3のうちの請求項1、2及び5に対する新規性並びに請求項1ないし5に対する進歩性とおおむね同旨である。
第6 取消理由についての当審の判断
1 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「可塑性油脂組成物とそれを用いたマーガリン、スプレッド、バタークリーム」に関しておおむね次の事項が記載されている。下線は当審で付したものと予め付されたものである。他の文献について同様。
・「【請求項1】
グリセリンを含有し、
トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の合計質量が、油脂の2位構成脂肪酸全体の質量に対して37~57質量%である可塑性油脂組成物。」
・「【請求項3】
前記油脂が、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を4~40質量%含有する請求項1または2に記載の可塑性油脂組成物。」
・「【0012】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、ケーキやパン等の製菓製パンの生地に練り込んで焼成した場合に、シトリを生地に付与することができ、さらに、バタークリームやスプレッドに用いた場合に、瑞々しく、しかもコク味が良好なものとすることができる可塑性油脂組成物とそれを用いた食品を提供することを課題としている。」
・「【0045】
本発明の可塑性油脂組成物の製造に用いられる油脂としては、特に限定されるものではないが、パーム油、パーム核油、ヤシ油、菜種油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、米油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、シア脂、サル脂、マンゴー油、イリッペ脂、カカオ脂、豚脂(ラード)、牛脂、乳脂、それらの分別油、加工油(硬化およびエステル交換反応のうち1つ以上の処理がなされたもの)等が挙げられる。飽和脂肪酸の含有量およびトリグリセリドの2位に結合されたラウリン酸やオレイン酸の含有量などを適宜調整するために、これらの油脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
また、本発明の可塑性油脂組成物およびこれを用いた食品に使用される油脂においては、ラウリン系油脂(a1)とパーム系油脂(a2)とのエステル交換油脂(a)を4~40質量%含有することが好ましく、5~30質量%であることが、より好ましく考慮される。」
・「【0047】
エステル交換油脂(a)の原料であるラウリン系油脂(a1)は、全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が30質量%以上の油脂であり、例えば、パーム核油、ヤシ油、これらの分別油、硬化油などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのラウリン系油脂(a1)のうち、ヤシ油に比べて融点が高く、高融点のエステル交換油脂(a)を容易に得ることができる点を考慮すると、パーム核油、その分別油や硬化油が好ましい。硬化油の場合、水素添加量によってトランス脂肪酸の含有量が増加する虞があるため、硬化油を用いる場合には微水素添加したものか、低温硬化したもの、または完全水素添加した極度硬化油が好ましく、特に極度硬化油が好ましい。
【0048】
ラウリン系油脂(a1)は、ヨウ素価が2以下の油脂を含有することが好ましい。ヨウ素価が2以下の油脂を用いると、トランス脂肪酸の生成の虞が少なく、エステル交換油脂(a)を他の油脂と混合する際に結晶核となり、固化し易くかつ口溶けの良い油脂組成物となる。ヨウ素価が2以下の油脂としては、極度硬化油が挙げられる。
【0049】
エステル交換油脂(a)の原料であるパーム系油脂(a2)は、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量が35質量%以上である。パーム系油脂(a2)としては、パーム油、パーム分別油やこれらの硬化油などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。パーム分別油としては、硬質部、軟質部、中融点部などを用いることができる。硬化油の場合、水素添加量によってトランス脂肪酸の含有量が増加する虞があるため、硬化油を用いる場合には微水素添加したものか、低温硬化したもの、または完全水素添加した極度硬化油が好ましく、特に極度硬化油が好ましい。
【0050】
パーム系油脂(a2)は、ヨウ素価が50~60の油脂を含有することが好ましい。ヨウ素価が50~60の油脂を用いることで、含有する飽和脂肪酸量から結晶性に優れ、また不飽和脂肪酸を含む点から可塑性に優れた油脂の作製が可能となる。またパーム系油脂(a2)は、極度硬化油を含有することが好ましい。パーム系油脂(a2)に極度硬化油が含有されていると、エステル交換油脂(a)の融点を高めることができ、結晶性が良好になる。
【0051】
エステル交換油脂(a)において、ラウリン系油脂(a1)と、パーム系油脂(a2)とのエステル交換反応には、エステル交換触媒として化学触媒や酵素触媒が用いられる。化学触媒としてはナトリウムメチラートや水酸化ナトリウム等が用いられ、酵素触媒としてはリパーゼ等が用いられる。リパーゼとしてはアスペルギルス属、アルカリゲネス属等のリパーゼが挙げられ、イオン交換樹脂、ケイ藻土、セラミック等の担体上に固定化したものを用いても、粉末の形態として用いても良い。また位置選択性のあるリパーゼ、位置選択性のないリパーゼのいずれも用いることができるが、位置選択性のないリパーゼを用いることが好ましい。エステル交換触媒として化学触媒や位置選択性のない酵素触媒を用いた場合、ラウリン系油脂(a1)とパーム系油脂(a2)とのエステル交換反応が完了すると、構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を2個、不飽和脂肪酸(U)を1個含む2飽和トリグリセリドのうち、対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)とのエステル交換油脂(a)中における質量比(SUS/SSU)が0.45~0.55の範囲内となる。
【0052】
エステル交換反応に化学触媒を用いる場合、触媒を油脂質量の0.05~0.15質量%添加し、減圧下で80~120℃に加熱し、0.5~1.0時間攪拌することでラウリン系油脂(a1)とパーム系油脂(a2)とのエステル交換反応が平衡状態となって完了し、エステル交換油脂(a)を得ることができる。また酵素触媒を用いる場合、リパーゼ等の酵素触媒を油脂質量の0.01~10質量%添加し、40~80℃でエステル交換反応を行うことによりエステル交換反応が平衡状態となって完了し、エステル交換油脂(a)を得ることができる。エステル交換反応はカラムによる連続反応、バッチ反応のいずれの方法で行うこともできる。エステル交換反応後、必要に応じて脱色、脱臭等の精製を行うことができる。」
・「【0066】
これらの食品は、水以外に、従来公知の各種成分を含んでもよい。公知の成分としては、特に限定されないが、例えば、乳、乳製品、蛋白質、呈味剤(乳製品の酵素処理物等)、アミノ酸、糖質、塩類、酸味料、pH調整剤、抗酸化剤、香辛料、増粘剤、着色成分、フレーバー、乳化剤、酒類等が挙げられる。乳としては、牛乳等が挙げられる。乳製品としては、脱脂乳、生クリーム、チーズ(ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等)、発酵乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白濃縮ホエイパウダー、ホエイチーズ(WC)、ホエイ蛋白コンセントレート(WPC)、ホエイ蛋白アイソレート(WPI)、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム等が挙げられる。蛋白質としては、大豆蛋白、エンドウ豆蛋白、小麦蛋白等の植物蛋白等が挙げられる。糖質としては、単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等)、二糖類(ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース等)、オリゴ糖、糖アルコール、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、デンプン、デンプン分解物、イヌリン(アガベイヌリン等)、多糖類等が挙げられる、抗酸化剤としては、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸誘導体、トコフェロール、トコトリエノール、リグナン、ユビキノン類、キサンチン類、オリザノール、植物ステロール、カテキン類、ポリフェノール類、茶抽出物等が挙げられる。香辛料としては、カプサイシン、アネトール、オイゲノール、シネオール、ジンゲロン等が挙げられる。増粘剤としては、カラギナン、キサンタンガム、アラビアガム、グァーガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、アルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。着色成分としては、カロテン、アナトー、アスタキサンチン等が挙げられる。フレーバーとしては、バターフレーバー、ミルクフレーバー等が挙げられる。乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。」
・「【0073】
バタークリームに配合する呈味成分としては、糖質、乳製品、呈味剤(乳製品の酵素処理物等)、卵類、果実、果汁、ジャム、カカオ及びカカオ製品、ナッツペースト、香辛料、コーヒーおよびコーヒー製品、酸味料、調味料、フレーバー、酒類等が挙げられる。糖質としては、液糖、粉糖、糖アルコール等であってよく、例えば、単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等)、二糖類(ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース等)、オリゴ糖、糖アルコール、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、デンプン、デンプン分解物、多糖類、水あめ、異性化液糖等が挙げられる。乳製品としては、脱脂乳、生クリーム、チーズ(ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等)、発酵乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白濃縮ホエイパウダー、ホエイ蛋白コンセントレート(WPC)、ホエイ蛋白アイソレート(WPI)、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム等が挙げられる。卵類としては、全卵、卵黄、卵白、加工卵等が挙げられる。」
・「【0082】
(2)油脂組成物の製造
<エステル交換油脂の製造>
[エステル交換油脂1]
パーム油70質量%、パーム核油15質量%、パーム極度硬化油7.5質量%、パーム核極度硬化油7.5質量%を混合し、110℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下、100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、更に脱臭を行ってエステル交換油脂1を得た。
【0083】
[エステル交換油脂2]
パーム油62.5質量%、パーム核油20質量%、パーム極度硬化油10質量%、パーム核極度硬化油7.5質量%を混合し、110℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下、100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、更に脱臭を行ってエステル交換油脂2を得た。
【0084】
[エステル交換油脂3]
パーム分別軟質油100質量%を110℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下、100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、更に脱臭を行ってエステル交換油脂3を得た。
【0085】
[エステル交換油脂4]
パーム油100質量%を110℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下、100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、更に脱臭を行ってエステル交換油脂4を得た。
【0086】
なお、エステル交換油脂1、2は、前述したエステル交換油脂(a)である。
【0087】
<マーガリンの製造>
後述する表1から表3に記載された各油脂を75℃で溶解し、混合して得られた油脂に対し、表に記載の各乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、レシチン)を添加して、75℃に調温して油相とした。一方、表に記載された水にグリセリン、脱脂粉乳を添加し、85℃で加熱殺菌して水相を得た。なお、実施例8、19は、水を添加せず、85℃で加熱殺菌した。実施例30は、グリセリンに脱脂粉乳を添加し、攪拌後、分散させ、85℃で加熱殺菌した。次に、該油相に該水相を添加し、プロペラ攪拌機で撹拌して、油中水型に乳化した後、ミルクフレーバーを添加し、攪拌後、パーフェクターによって急冷捏和して、表1から表3に記載された配合割合の練り込み用マーガリン・バタークリーム用マーガリン・スプレッドマーガリンを得た。得られたマーガリンは、5℃で保管した。
【0088】
なお、乳化剤としては、モノグリセリン脂肪酸エステル(商品名エマルジーMO、理研ビタミン(株)製または商品名エマルジーMS、理研ビタミン(株)製)を用いた。配合割合は、後述する表1から2に記載されたとおりである。
【0089】
また、グリセリンとしては、商品名「食品添加物グリセリン」(ミヨシ油脂(株)製)を用いた。」
・「【0112】
<スプレッドマーガリンの評価>
上記スプレッドマーガリンを20℃で2日間保存した後、このスプレッドマーガリンをパネル12名で喫食し、以下の基準で評価した。
【0113】
パネルは、五味(甘、酸、塩、苦、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準臭覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判定された20~40代の男性5名、女性7名を選抜した。
【0114】
[スプレッドマーガリンの瑞々しさ]
20℃で2日保存した後、パネルによりスプレッドマーガリンの瑞々しさの官能評価を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル12名中10名以上が、瑞々しさがあると評価した。
○:パネル12名中7~9名が、瑞々しさがあると評価した。
△:パネル12名中3~6名が、瑞々しさがあると評価した。
×:パネル12名中2名以下が、瑞々しさがあると評価した。
【0115】
[スプレッドマーガリンの後半のフレーバーリリース]
20℃で2日保存した後、パネルにより喫食し、口中で、スプレッドマーガリンがすべてなくなった後も、ミルクフレーバーが残存するように感じることができた場合を後半のフレーバーリリースが良好であるとして、官能評価を以下の基準で評価した。
◎:パネル12名中10名以上が良好であると評価した。
○:パネル12名中7~9名が良好であると評価した。
△:パネル12名中3~6名が良好であると評価した。
×:パネル12名中2名以下が良好であると評価した。
【0116】
[スプレッドマーガリンのコク味]
20℃で2日保存した後、パネルによりスプレッドマーガリンのコク味(甘味由来)の官能評価を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル12名中10名以上がコク味があると評価した。
○:パネル12名中7~9名がコク味があると評価した。
△:パネル12名中3~6名がコク味があると評価した。
×:パネル12名中、2名以下がコク味があると評価した。
【0117】
[スプレッドマーガリンの乾き]
スプレッドマーガリンをプラスチック容器に入れて、5℃で、30日間保管した後、プラスチック容器から取り出し、固化したスプレッドマーガリンの表面と、中央部でカットした際の中心部との色の差を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:表面と中心部との色の差がない。
○:表面の方が、中心部より若干濃くなっている。
△:表面の方が、中心部より濃くなっている。
×:表面の方が、中心部よりかなり濃くなっている。
【0118】
上記の評価結果を表3に示す。また、可塑性油脂組成物の油脂配合と油脂組成も併せてこの表に示した。
【0119】
【表3】
[図:0001422441000001.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に実施例23ないし27及び29ないし33に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、実施例23ないし26、29、30、32及び33から認定される発明を「甲1発明1」、実施27から認定される発明を「甲1発明2」、実施例31から認定される発明を「甲1発明3」といい、総称して「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明1>
「実施例23ないし26、29、30、32及び33いずれかのマーガリン。」(当審注:「実施例23ないし26、29、30、32及び33」については上記(1)参照。)
<甲1発明2>
「実施例27のマーガリン。」(当審注:「実施例27」については上記(1)参照。)
<甲1発明3>
「実施例31のマーガリン。」(当審注:「実施例31」については上記(1)参照。)
(2)本件特許発明1について
ア 甲1発明1との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明1を対比する。
甲1の【表3】によると、実施例23ないし25、29及び30のマーガリンは、「ラウリン系油脂(a1)とパーム系油脂(a2)とのエステル交換油脂(a)」である「エステル交換油脂2」を油脂全体の質量に対して10質量%含み、実施例26のマーガリンは「ラウリン系油脂(a1)とパーム系油脂(a2)とのエステル交換油脂(a)」である「エステル交換油脂1」を油脂全体の質量に対して15質量%含み、実施例32のマーガリンは「エステル交換油脂2」を油脂全体の質量に対して20質量%含み、実施例33のマーガリンは「エステル交換油脂2」を油脂全体の質量に対して5質量%含むこと及びマーガリンは「油中水型」の油脂組成物であることから、甲1発明1は、本件特許発明1における「油脂」「を含む油中水型の油脂組成物であって、前記油脂は、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を含み」という発明特定事項を有している。
甲1の【表3】によると、実施例23ないし26、29、30、32及び33のマーガリンは脱脂粉乳をマーガリン全体の質量に対して1質量%有しており、甲6の表5によると、脱脂粉乳には「ストロベリーフラノン」が0.1~10ppm含まれ、甲7の表4によると、脱脂粉乳には「ストロベリーフラノン」が2~4ppm含まれることから、実施例23ないし26、29ないし30、32及び33のマーガリンは「ストロベリーフラノン」を0.001~0.1ppm含むことになる(1%×(0.1~10ppm)=0.001~0.1ppm)。すなわち、甲1発明1は、本件特許発明1における「ストロベリーフラノンを含む油脂組成物であって、」「前記ストロベリーフラノンの含有量が0.001ppm以上であり」という発明特定事項を有している。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「油脂、ストロベリーフラノンを含む油中水型の油脂組成物であって、
前記油脂は、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を含み、
前記ストロベリーフラノンの含有量が0.001ppm以上である油脂組成物。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点1-1a>
本件特許発明1においては、「前記エステル交換油脂の含有量は、前記油脂全体の質量に対して23.2~60質量%であり」と特定されているのに対し、甲1発明1においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1-1b>
本件特許発明1においては、「前記油脂中の乳脂肪を含有量が6~40質量%である」と特定されているのに対し、甲1発明1においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
相違点1-1aについて検討する。
相違点1-1aが実質的な相違点であることは当業者に明らかである。
また、甲1発明1において、「ラウリン系油脂(a1)とパーム系油脂(a2)とのエステル交換油脂(a)」である「エステル交換油脂1」を油脂全体の質量に対して「23.2~60質量%」含有させる動機付けとなる記載は、甲1にはないし、他の証拠にもない。
したがって、甲1発明1において、相違点1-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「乳脂肪量を減らした場合であっても、良好な乳脂感、深いミルク風味および爽やかさを得ることができる。」(本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の【0008】)という、甲1発明1並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。
(ウ)まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明1であるとはいえないし、甲1発明1並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 甲1発明2との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明2を対比する。
甲1の【表3】によると、実施例27のマーガリンは「エステル交換油脂2」を油脂全体の質量に対して15質量%含むこと及びマーガリンは「油中水型」の油脂組成物であることから、甲1発明2は、本件特許発明1における「油脂」「を含む油中水型の油脂組成物であって、前記油脂は、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を含み」という発明特定事項を有している。
甲1の【表3】によると、実施例27のマーガリンは「乳脂」を油脂全体の質量に対して10質量%含むことから、甲1発明2は、本件特許発明1における「前記油脂中の乳脂肪を含有量が6~40質量%以下である」という発明特定事項を有している。
甲1の【表3】によると、実施例27のマーガリンは脱脂粉乳をマーガリン全体の質量に対して1質量%有しており、甲6の表5によると、脱脂粉乳には「ストロベリーフラノン」が0.1~10ppm含まれ、甲7の表4によると、脱脂粉乳には「ストロベリーフラノン」が2~4ppm含まれることから、実施例27のマーガリンは「ストロベリーフラノン」を0.001~0.1ppm含むことになる(1%×(0.1~10ppm)=0.001~0.1ppm)。すなわち、甲1発明2は、本件特許発明1における「ストロベリーフラノンを含む油脂組成物であって、」「前記ストロベリーフラノンの含有量が0.001ppm以上であり」という発明特定事項を有している。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「油脂、ストロベリーフラノンを含む油中水型の油脂組成物であって、
前記油脂は、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を含み、
前記ストロベリーフラノンの含有量が0.001ppm以上であり、かつ、前記油脂中の乳脂肪の含有量が6~40質量%である油脂組成物。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点1-2>
本件特許発明1においては、「前記エステル交換油脂の含有量は、前記油脂全体の質量に対して23.2~60質量%であり」と特定されているのに対し、甲1発明2においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
相違点1-2について検討する。
相違点1-2が実質的な相違点であることは当業者に明らかである。
また、甲1発明2において、「ラウリン系油脂(a1)とパーム系油脂(a2)とのエステル交換油脂(a)」である「エステル交換油脂1」を油脂全体の質量に対して「23.2~60質量%」含有させる動機付けとなる記載は、甲1にはないし、他の証拠にもない。
したがって、甲1発明2において、相違点1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「乳脂肪量を減らした場合であっても、良好な乳脂感、深いミルク風味および爽やかさを得ることができる。」という、甲1発明2並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。
(ウ)まとめ
したがって、本件特許発明1は甲1発明2であるとはいえないし、甲1発明2並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 甲1発明3との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明3を対比する。
甲1の【表3】によると、実施例31のマーガリンは「エステル交換油脂1」を油脂全体の質量に対して35質量%含むこと及びマーガリンは「油中水型」の油脂組成物であることから、甲1発明は、本件特許発明1における「油脂」「を含む油中水型の油脂組成物であって、」「前記油脂は、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を含み、前記エステル交換油脂の含有量は、前記油脂全体の質量に対して23.2~60質量%であり」という発明特定事項を有している。
甲1の【表3】によると、実施例31のマーガリンは脱脂粉乳をマーガリン全体の質量に対して1質量%有しており、甲6の表5によると、脱脂粉乳には「ストロベリーフラノン」が0.1~10ppm含まれ、甲7の表4によると、脱脂粉乳には「ストロベリーフラノン」が2~4ppm含まれることから、実施例31のマーガリンは「ストロベリーフラノン」を0.001~0.1ppm含むことになる(1%×(0.1~10ppm)=0.001~0.1ppm)。すなわち、甲1発明3は、本件特許発明1における「ストロベリーフラノンを含む油脂組成物であって、」「前記ストロベリーフラノンの含有量が0.001ppm以上であり」という発明特定事項を有している。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「油脂、ストロベリーフラノンを含む油中水型の油脂組成物であって、
前記油脂は、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を含み、
前記エステル交換油脂の含有量は、前記油脂全体の質量に対して23.2~60質量%であり、
前記ストロベリーフラノンの含有量が0.001ppm以上である油脂組成物。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点1-3>
本件特許発明1においては、「前記油脂中の乳脂肪を含有量が6~40質量%である」と特定されているのに対し、甲1発明3においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
相違点1-3について検討する。
相違点1-3が実質的な相違点であることは当業者に明らかである。
また、甲1発明3において、「乳脂」を「6~40質量%」含有させる動機付けとなる記載は、甲1にはないし、他の証拠にもない。
したがって、甲1発明3において、相違点1-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「乳脂肪量を減らした場合であっても、良好な乳脂感、深いミルク風味および爽やかさを得ることができる。」という、甲1発明3並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。
(ウ)まとめ
したがって、本件特許発明1は甲1発明3であるとはいえないし、甲1発明3並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5はいずれも請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1が甲1発明であるとはいえず、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件特許発明2、3及び5のいずれも甲1発明であるとはいえないし、本件特許発明2ないし5のいずれも甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)取消理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし3及び5は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし5は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当せず、取消理由1によっては取り消すことはできない。
2 取消理由2(甲10に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲10に記載された事項等
ア 甲10に記載された事項
甲10には、「油中水型乳化油脂組成物とそれを用いたマーガリン類及びベーカリー構造」に関しておおむね次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
タンパク質を25~30質量%、灰分を15~20質量%含有するタンパク質濃縮ホエイを水分に対して0.2~21質量%含有する油中水型乳化油脂組成物。」
・「【請求項5】
呈味油を含有する粉末素材を水相に含有する請求項1から4のいずれかに記載の油中水型乳化油脂組成物。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、コクのあるバター風味を有するマーガリン類が得られ、ベーカリー製品の焼き残りの風味も良好な油中水型乳化油脂組成物とそれを用いたマーガリン類及びベーカリー製品を提供することを課題としている。」
・「【実施例】
【0069】
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、表1~表3、表5及び表6に示す配合量は質量%、表4に示す配合量は質量部を示す。
【0070】
表1、表2、表5の実施例及び表3、表6の比較例において、タンパク質濃縮ホエイAは、タンパク質26質量%、灰分17質量%のタンパク質濃縮ホエイ、タンパク質濃縮ホエイBは、タンパク質81質量%、灰分3質量%のタンパク質濃縮ホエイを用いた。
【0071】
ヤシ油は、極度硬化油(ヨウ素価0.4)を用いた。
【0072】
乳脂分別軟質部は、融点が10℃、10℃での固体脂含量が0%のものを用いた。
【0073】
呈味素材Aは、バター酵素分解粉末を用いた。このバター酵素分解粉末は、呈味油としてバター酵素分解物を含有し、マルトデキストリンで被覆した粉末素材である。
【0074】
呈味素材Bは、高乳脂粉末油脂を用いた。この高乳脂粉末油脂は、呈味油として乳脂を多く含有し、カゼインナトリウムとデキストリンで被覆され、再溶解後のメディアン径が1μmの粉末素材である。
【0075】
呈味素材Cは、粉末油脂を用いた。この粉末油脂は、呈味油としてバターフレーバーを添加したパーム油を含有し、オクテニルコハク酸デンプンで被覆され、再溶解後のメディアン径が1μmの粉末素材である。
【0076】
呈味素材Dは粉末香料を用いた。この粉末香料は、呈味油としてバターフレーバーを含有し、デキストリンで被覆した粉末素材である。
【0077】
呈味素材Eは、高乳脂クリームチーズを用いた。この高乳脂クリームチーズは、呈味油として乳脂を多く含有する乳製品である。
【0078】
(エステル交換油の製造)
エステル交換油1
パーム核極度硬化油20質量%、パーム油55質量%、パーム油極度硬化油25質量%を混合し、触媒としてナトリウムメチラートを添加し、減圧下で、エステル交換した。エステル交換反応後、水洗、脱水、脱色しエステル交換油1を得た。エステル交換油1のヨウ素価は30であった。
【0079】
エステル交換油2
パームオレイン(ヨウ素価56)に触媒としてナトリウムメチラートを添加し、減圧下でエステル交換した。エステル交換反応後、水洗、脱水、脱色、脱臭しエステル交換油2を得た。
【0080】
(油中水型乳化油脂組成物の製造)
表1、表2の実施例及び表3の比較例の配合の油中水型乳化油脂組成物を次の手順に従って調製した。
1)水にタンパク質濃縮ホエイ、呈味素材、及び乳清ミネラルを適宜添加し、80℃まで加熱して溶解し水相を得た。
2)油脂を70℃まで加熱して溶解し、混合して油相を得た。
3)油相に水相をゆっくりと添加しながら乳化した後、油溶性フレーバーを添加した。
4)乳化物を急冷で練り合わせ、可塑性を有する油中水型乳化油脂組成物を得た。
5)得られた油中水型乳化油脂組成物は、5℃で保管した。
【0081】
(クッキーの製造)
薄力粉100質量部、上白糖40質量部、卵15質量部、実施例又は比較例で得られた油中水型乳化油脂組成物60質量部の生地配合にてミキシングして生地を作製し、棒状に成型後、冷蔵庫で一旦生地を休ませた。この生地を10mm厚に輪切りし、鉄板に並べて、170℃で15分間焼成し、クッキーを得た。得られたクッキーは、30分放置して粗熱を取った後、ポリ袋に入れて密封し、25℃にて1週間保存した後、下記の風味評価を行った。
・・・(略)・・・
【0090】
評価結果を表1~表3に示す。」
・「【0092】
【表2】
[図:0001422441000002.jpg]
」
イ 甲10に記載された発明
甲10に記載された事項を、特に実施例11又は16に関して整理すると、甲10には次の発明(以下、「甲10発明」という。)が記載されていると認める。
<甲10発明>
「実施例11又は16の油中水型乳化油脂組成物。」(当審注:「実施例11又は16」については上記(1)参照。)
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲10発明を対比する。
甲10の【表2】によると、実施例11又は16の油中水型乳化油脂組成物は、「ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂」である「エステル交換油脂1」を油脂全体の質量に対して21質量%(18/85×100=21質量%)含むことから、甲10発明は、本件特許発明1における「油脂」「を含む油中水型の油脂組成物であって、前記油脂は、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を含み」という発明特定事項を有している。
甲10の【表2】によると、実施例11又は16の油中水型乳化油脂組成物は、「乳脂」を油分全体の質量に対して26質量%(22/85×100=26質量%)含むことから、甲10発明は、本件特許発明1における「前記油脂中の乳脂肪を含有量が6~40質量%である」という発明特定事項を有している。
甲10の【表2】によると、実施例11又は16の油中水型乳化油脂組成物は、タンパク質濃縮ホエイA及び呈味素材A(バター酵素分解粉末)又は呈味素材E(高乳脂クリームチーズ)を含むものである。そして、甲11の表2によると、タンパク質濃縮ホエイAには、「ストロベリーフラノン」が含まれ、呈味素材A(バター酵素分解粉末)及び呈味素材E(高乳脂クリームチーズ)は、本件特許の発明の詳細な説明に記載された油脂組成物で使用されたものと近似しており、これらには、「ストロベリーフラノン」が含まれる。そうすると、実施例11又は16の油脂組成物は本件特許の発明の詳細な説明に記載された油脂組成物と同程度の「ストロベリーフラノン」を含んでいるといえる。すなわち、甲10発明は、本件特許発明1における「ストロベリーフラノンを含む油脂組成物であって、」「前記ストロベリーフラノンの含有量が0.001ppm以上であり」という発明特定事項を有している。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「油脂、ストロベリーフラノンを含む油中水型の油脂組成物であって、
前記油脂は、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を含み、
前記ストロベリーフラノンの含有量が0.001ppm以上であり、かつ、前記油脂中の乳脂肪の含有量が6~40質量%である油脂組成物。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点10>
本件特許発明1においては、「前記エステル交換油脂の含有量は、前記油脂全体の質量に対して23.2~60質量%であり、」と特定されているのに対し、甲10発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点10について検討する。
相違点10が実質的な相違点であることは当業者に明らかである。
また、甲10発明において、「ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂」である「エステル交換油脂1」を油脂全体の質量に対して「23.2~60質量%」含有させる動機付けとなる記載は、甲10にはないし、他の証拠にもない。
したがって、甲10発明において、相違点10に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「乳脂肪量を減らした場合であっても、良好な乳脂感、深いミルク風味および爽やかさを得ることができる。」という、甲10発明並びに甲10及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。
ウ まとめ
したがって、本件特許発明1は甲10発明であるとはいえないし、甲10発明並びに甲10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5はいずれも請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1が甲10発明であるとはいえず、甲10発明並びに甲10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件特許発明2、3及び5のいずれも甲10発明であるとはいえないし、本件特許発明2ないし5のいずれも甲10発明並びに甲10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)取消理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし3及び5は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし5は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当せず、取消理由2によっては取り消すことはできない。
3 取消理由3(甲12に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲12に記載された事項等
ア 甲12に記載された事項
甲12には、「起泡性水中油型乳化物」に関しておおむね次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
油脂、無脂乳固形分及び水を含む水中油型乳化物において、油脂分が25?50重量%であり、油脂が非乳脂又は非乳脂及び乳脂であって、非乳脂がパーム系油脂及びラウリン系油脂のエステル交換油を含み、且つ澱粉分解物及び/又は加工澱粉を含む起泡性水中油型乳化物。
【請求項2】
全油脂に対してパーム系油脂及びラウリン系油脂のエステル交換油が3~50重量%含む、請求項1記載の起泡性水中油型乳化物。
【請求項3】
全油脂に対して乳脂が90重量%以下である、請求項1記載の起泡性水中油型乳化物。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、起泡性水中油型乳化物として乳化安定性が良く、ホイップした際の作業性、起泡性、外観に優れ、保形性、耐離水性が良く、ホイップ状態もしくはケーキ等にデコレーションした状態で凍結解凍しても凍結前と同様の外観、風味、食感を有する、冷凍耐性を有する起泡性水中油型乳化物を提供する事にある。
更に当該乳化物の油脂中の構成脂肪酸にトランス型不飽和脂肪酸を出来る限り含まないものを提供する事にある。」
・「【0018】
本発明の起泡性水中油型乳化物においては無脂乳固形分を含むのが好ましい。
無脂乳固形分とは、牛乳の全固形分から乳脂肪分を差引いた成分をいい、牛乳、脱脂乳、加糖練乳、無糖練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、バターミルク、バターミルクパウダー、ホエー、ホエーパウダー、カゼイン、カゼインナトリウム、ラクトアルブミン、生クリーム等の乳由来の原料が例示でき、これらの単独または2種以上混合使用するのが好ましい。」
・「【0028】
実験例1(エステル交換油A-1の調製)
パーム油50部とパーム油を分別して得たパームステアリン10部とパーム核油を分別して得たパーム核オレイン40部を混合した油脂に金属触媒(ナトリウムメチラート)0.3部を加え、真空下80℃で60分ランダムエステル交換させた。得られた油脂を定法に従い精製を行いエステル交換油A-1とした。
【0029】
実験例2(エステル交換油A-2の調製)
パーム油30部とパーム油を分別して得たパームステアリン30部とパーム核油を分別して得たパーム核オレイン40部を混合した油脂に1,3位特異性リパーゼを使用する酵素エステル交換反応によりエステル交換油A-2を得た。」
・「【0032】
実施例3
(エステル交換油A-1)10部、硬化パーム核油(融点34℃)20部、パーム中融点部5部、レシチン0.25部を添加混合融解し油相とする。これとは別に水54.41部に脱脂粉乳5部、デキストリン(DE25)5部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB7)0.25部、重曹0.02部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.07部を溶解・分散して水相を調製する。上記油相と水相を70℃で30分ホモミキサーで攪拌予備乳化した後、超高温殺菌装置(岩井機械工業(株)製)によって144℃において4秒間の直接加熱方式による滅菌処理を行った後、30Kg/cm2の均質化圧力で均質化して、直ちに5℃に冷却した。冷却後24時間エージングして、起泡性水中油型乳化物を得た。この起泡性水中油型乳化物1Kgに80gのグラニュー糖を加えて上記ホイップ方法にてホイップし、上記方法に従いオーバーラン、保形性、離水の測定を行った。またこのホイップクリームをスポンジケーキにデコレーションし-25℃の冷凍庫で10日保存後、15℃の定温室で解凍し1日後上記の方法に従って外観の観察、保形性、組織の荒れ、ひび割れおよび風味を評価したところ、乳化安定性が良く、ホイップした際の作業性、起泡性に優れており、保形性、離水耐性は良好であった。冷凍解凍後のケーキは保形性、組織の荒れ、ひび割れは良好で食した際には良好な食感を有していたが乳味感はやや弱かった。配合と評価を表1、2に纏めた。
【0033】
実施例4
(エステル交換油A-1)7部、硬化パーム核油(融点34℃)10部、パーム中融点部11部、バターオイル7部、レシチン0.2部を添加混合融解し油相とする。これとは別に水54.46部に脱脂粉乳5部、デキストリン(DE25)5部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB7)0.25部、重曹0.02部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.07部を溶解・分散して水相を調製する。上記油相と水相を70℃で30分ホモミキサーで攪拌予備乳化した後、超高温殺菌装置(岩井機械工業(株)製)によって144℃において4秒間の直接加熱方式による滅菌処理を行った後、30Kg/cm2の均質化圧力で均質化して、直ちに5℃に冷却した。冷却後24時間エージングして、起泡性水中油型乳化物を得た。この起泡性水中油型乳化物1Kgに80gのグラニュー糖を加えて上記ホイップ方法にてホイップし、上記方法に従いオーバーラン、保形性、離水の測定を行った。またこのホイップクリームをスポンジケーキにデコレーションし-25℃の冷凍庫で10日保存後、15℃の定温室で解凍し1日後上記の方法に従って外観の観察、保形性、組織の荒れ、ひび割れおよび風味を評価したところ、乳化安定性が良くホイップした際の作業性、起泡性に優れており、保形性、離水耐性は良好であった。冷凍解凍後のケーキは保形性、組織の荒れは良好でだがひび割れはやや弱かった。食した際には良好な食感と乳風味を有していた。配合と評価を表1、2に纏めた。
【0034】
実施例1~実施例4の配合と一部評価を表1に纏めた。
【表1】
[図:0001422441000003.jpg]
」
・「【0036】
実施例5
(エステル交換油A-1)4部、パーム核油3部、硬化パーム核油(融点34℃)8部、パーム中融点部16部、バターオイル7部、レシチン0.2部を添加混合融解し油相とする。これとは別に水53.41部に脱脂粉乳5部、デキストリン(DE25)3部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB7)0.3部、重曹0.02部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.07部を溶解・分散して水相を調製する。上記油相と水相を70℃で30分ホモミキサーで攪拌予備乳化した後、超高温殺菌装置(岩井機械工業(株)製)によって144℃において4秒間の直接加熱方式による滅菌処理を行った後、30Kg/cm2の均質化圧力で均質化して、直ちに5℃に冷却した。冷却後24時間エージングして、起泡性水中油型乳化物を得た。この起泡性水中油型乳化物1Kgに80gのグラニュー糖を加えて上記ホイップ方法にてホイップし、上記方法に従いオーバーラン、保形性、離水の測定を行った。またこのホイップクリームをスポンジケーキにデコレーションし-25℃の冷凍庫で10日保存後、15℃の定温室で解凍し1日後上記の方法に従って外観の観察、保形性、組織の荒れ、ひび割れおよび風味を評価したところ、乳化安定性が良く、ホイップした際の作業性、起泡性に優れており、保形性、離水耐性は良好であった。冷凍解凍後のケーキは保形性、組織の荒れ、ひび割れは良好で食した際には良好な食感と乳風味を有していた。配合と評価を表3、4に纏めた。
【0037】
実施例6
エステル交換油A-1)2部、パーム核油10部、硬化パーム核油(融点34℃)10部、パーム中融点部18部、レシチン0.18部を添加混合融解し油相とする。これとは別に水46.43部に脱脂粉乳5部、デキストリン(DE25)8部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB7)0.3部、重曹0.02部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.07部を溶解・分散して水相を調製する。上記油相と水相を70℃で30分ホモミキサーで攪拌予備乳化した後、超高温殺菌装置(岩井機械工業(株)製)によって144℃において4秒間の直接加熱方式による滅菌処理を行った後、30Kg/cm2の均質化圧力で均質化して、直ちに5℃に冷却した。冷却後24時間エージングして、起泡性水中油型乳化物を得た。この起泡性水中油型乳化物1Kgに80gのグラニュー糖を加えて上記ホイップ方法にてホイップし、上記方法に従いオーバーラン、保形性、離水の測定を行った。またこのホイップクリームをスポンジケーキにデコレーションし-25℃の冷凍庫で10日保存後、15℃の定温室で解凍し1日後上記の方法に従って外観の観察、保形性、組織の荒れ、ひび割れおよび風味を評価したところ、乳化安定性が良く、ホイップした際の作業性、起泡性に優れており、保形性、離水耐性は良好であった。冷凍解凍後のケーキは保形性、組織の荒れ、ひび割れは良好で食した際には食感がやや硬いが良好な乳風味を有していた。配合と評価を表3、4に纏めた。
【0038】
実施例7
(エステル交換油A-1)10部、パーム核油10部、硬化パーム核油(融点34℃)10部、パーム中融点部10部、レシチン0.18部を添加混合融解し油相とする。これとは別に水46.43部に脱脂粉乳5部、デキストリン(DE25)8部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB7)0.3部、重曹0.02部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.07部を溶解・分散して水相を調製する。上記油相と水相を70℃で30分ホモミキサーで攪拌予備乳化した後、超高温殺菌装置(岩井機械工業(株)製)によって144℃において4秒間の直接加熱方式による滅菌処理を行った後、30Kg/cm2の均質化圧力で均質化して、直ちに5℃に冷却した。冷却後24時間エージングして、起泡性水中油型乳化物を得た。この起泡性水中油型乳化物1Kgに80gのグラニュー糖を加えて上記ホイップ方法にてホイップし、上記方法に従いオーバーラン、保形性、離水の測定を行った。またこのホイップクリームをスポンジケーキにデコレーションし-25℃の冷凍庫で10日保存後、15℃の定温室で解凍し1日後上記の方法に従って外観の観察、保形性、組織の荒れ、ひび割れおよび風味を評価したところ、乳化安定性が良く、ホイップした際の作業性、起泡性に優れており、保形性、離水耐性は良好であった。冷凍解凍後のケーキは保形性、組織の荒れ、ひび割れは良好で食した際には良好な食感と乳風味を有していた。配合と評価を表3、4に纏めた。
【0039】
実施例8
(エステル交換油A-1)15部、パーム核油10部、硬化パーム核油(融点34℃)5部、パーム中融点部10部、レシチン0.18部を添加混合融解し油相とする。これとは別に水46.43部に脱脂粉乳5部、デキストリン(DE25)8部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB7)0.3部、重曹0.02部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.07部を溶解・分散して水相を調製する。上記油相と水相を70℃で30分ホモミキサーで攪拌予備乳化した後、超高温殺菌装置(岩井機械工業(株)製)によって144℃において4秒間の直接加熱方式による滅菌処理を行った後、30Kg/cm2の均質化圧力で均質化して、直ちに5℃に冷却した。冷却後24時間エージングして、起泡性水中油型乳化物を得た。この起泡性水中油型乳化物1Kgに80gのグラニュー糖を加えて上記ホイップ方法にてホイップし、上記方法に従いオーバーラン、保形性、離水の測定を行った。またこのホイップクリームをスポンジケーキにデコレーションし-25℃の冷凍庫で10日保存後、15℃の定温室で解凍し1日後上記の方法に従って外観の観察、保形性、組織の荒れ、ひび割れおよび風味を評価したところ、乳化安定性が良く、ホイップした際の作業性、起泡性に優れており、保形性、離水耐性は良好であった。冷凍解凍後のケーキは保形性は良好であったが、組織は少し荒れが見られた。ひび割れは良好で食した際には食感が柔らかく滑らかで良好な乳風味を有していた。配合と評価を表3、4に纏めた。
【0040】
実施例5~実施例8の配合と一部評価を表3に纏めた。
【表3】
[図:0001422441000004.jpg]
」
・「【0042】
実施例9
(エステル交換油A-1)2部、パーム中融点部11部、バターオイル27部、レシチン0.14部を添加混合融解し油相とする。これとは別に水46.56部に脱脂粉乳5部、デキストリン(DE25)8部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB7)0.21部、重曹0.02部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.07部を溶解・分散して水相を調製する。上記油相と水相を70℃で30分ホモミキサーで攪拌予備乳化した後、超高温殺菌装置(岩井機械工業(株)製)によって144℃において4秒間の直接加熱方式による滅菌処理を行った後、30Kg/cm2の均質化圧力で均質化して、直ちに5℃に冷却した。冷却後24時間エージングして、起泡性水中油型乳化物を得た。この起泡性水中油型乳化物1Kgに80gのグラニュー糖を加えて上記ホイップ方法にてホイップし、上記方法に従いオーバーラン、保形性、離水の測定を行った。またこのホイップクリームをスポンジケーキにデコレーションし-25℃の冷凍庫で10日保存後、15℃の定温室で解凍し1日後上記の方法に従って外観の観察、保形性、組織の荒れ、ひび割れおよび風味を評価したところ、乳化安定性が良く、ホイップした際の作業性、起泡性に優れており、保形性、離水耐性は良好であった。冷凍解凍後のケーキは保形性、組織の荒れ、ひび割れは良好で食した際には食感が柔らかく滑らかで良好な乳風味を有していた。配合と評価を表5、6に纏めた。
【0043】
実施例10
(エステル交換油A-1)10部、パーム核油11部、硬化パーム核油(融点34℃)7部、バターオイル15部、レシチン0.15部を添加混合融解し油相とする。これとは別に水46.48部に脱脂粉乳5部、デキストリン(DE25)5部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB7)0.28部、重曹0.02部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.07部を溶解・分散して水相を調製する。上記油相と水相を70℃で30分ホモミキサーで攪拌予備乳化した後、超高温殺菌装置(岩井機械工業(株)製)によって144℃において4秒間の直接加熱方式による滅菌処理を行った後、30Kg/cm2の均質化圧力で均質化して、直ちに5℃に冷却した。冷却後24時間エージングして、起泡性水中油型乳化物を得た。この起泡性水中油型乳化物1Kgに80gのグラニュー糖を加えて上記ホイップ方法にてホイップし、上記方法に従いオーバーラン、保形性、離水の測定を行った。またこのホイップクリームをスポンジケーキにデコレーションし-25℃の冷凍庫で10日保存後、15℃の定温室で解凍し1日後上記の方法に従って外観の観察、保形性、組織の荒れ、ひび割れおよび風味を評価したところ、乳化安定性が良く、ホイップした際の作業性、起泡性に優れており、保形性、離水耐性は良好であった。冷凍解凍後のケーキは保形性、組織の荒れ、ひび割れは良好で食した際には食感が柔らかく滑らかで良好な乳風味を有していた。配合と評価を表5、6に纏めた。
【0044】
実施例11
(エステル交換油A-1)2.3部、パーム核油7.7部、硬化パーム核油(融点34℃)10部、パーム中融点部10部、バターオイル15部、レシチン0.18部を添加混合融解し油相とする。これとは別に水48.43部に脱脂粉乳5部、加工澱粉1部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB7)0.3部、重曹0.02部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.07部を溶解・分散して水相を調製する。上記油相と水相を70℃で30分ホモミキサーで攪拌予備乳化した後、超高温殺菌装置(岩井機械工業(株)製)によって144℃において4秒間の直接加熱方式による滅菌処理を行った後、30Kg/cm2の均質化圧力で均質化して、直ちに5℃に冷却した。冷却後24時間エージングして、起泡性水中油型乳化物を得た。この起泡性水中油型乳化物1Kgに80gのグラニュー糖を加えて上記ホイップ方法にてホイップし、上記方法に従いオーバーラン、保形性、離水の測定を行った。またこのホイップクリームをスポンジケーキにデコレーションし-25℃の冷凍庫で10日保存後、15℃の定温室で解凍し1日後上記の方法に従って外観の観察、保形性、組織の荒れ、ひび割れおよび風味を評価したところ、乳化安定性が良く、ホイップした際の作業性、起泡性に優れており、保形性、離水耐性は良好であった。冷凍解凍後のケーキは保形性、組織の荒れ、ひび割れは良好で食した際には食感がやや硬いが良好な乳風味を有していた。配合と評価を表5、6に纏めた。
【0045】
実施例9~実施例11の配合と一部評価を表5に纏めた。
【表5】
[図:0001422441000005.jpg]
」
・「【0047】
実施例12
(エステル交換油A-2)10部、硬化パーム核油(融点34℃)20部、パーム中融点部5部、レシチン0.25部を添加混合融解し油相とする。これとは別に水54.41部に脱脂粉乳5部、デキストリン(DE25)5部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB7)0.25部、重曹0.02部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.07部を溶解して水相を調整する。上記油相と水相を70℃で30分ホモミキサーで攪拌予備乳化した後、超高温殺菌装置(岩井機械工業(株)製)によって144℃において4秒間の直接加熱方式による滅菌処理を行った後、30Kg/cm2の均質化圧力で均質化して、直ちに5℃に冷却した。冷却後24時間エージングして、起泡性水中油型乳化物を得た。この起泡性水中油型乳化物1kgに80gのグラニュー糖を加えて上記ホイップ方法にてホイップし、上記方法に従いオーバーラン、保形性、離水の測定を行った。またこのホイップクリームをスポンジケーキにデコレーションし-25℃の冷凍庫で10日保存後、15℃の定温室で解凍し1日後上記の方法に従って外観の観察、保形性、組織の荒れ、ひび割れおよび風味を評価したところ、乳化安定性が良く、ホイップした際の作業性、起泡性に優れており、保形性、離水耐性は良好であった。冷凍解凍後のケーキは保形性、組織の荒れ、ひび割れは良好で食した際には良好な食感を有していたが乳味感はやや弱かった。配合と評価を表7、8 に纏めた。
【0048】
実施例13
(エステル交換油A-2)10部、パーム核油10部、硬化パーム核油(融点34℃)10部、パーム中融点部10部、レシチン0.18部を添加混合融解し油相とする。これとは別に水46.43部に脱脂粉乳5部、デキストリン(DE25)8部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB7)0.3部、重曹0.02部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.07部を溶解・分散して水相を調製する。上記油相と水相を70℃で30分ホモミキサーで攪拌予備乳化した後、超高温殺菌装置(岩井機械工業(株)製)によって144℃において4秒間の直接加熱方式による滅菌処理を行った後、30Kg/cm2の均質化圧力で均質化して、直ちに5℃に冷却した。冷却後24時間エージングして、起泡性水中油型乳化物を得た。この起泡性水中油型乳化物1Kgに80gのグラニュー糖を加えて上記ホイップ方法にてホイップし、上記方法に従いオーバーラン、保形性、離水の測定を行った。またこのホイップクリームをスポンジケーキにデコレーションし-25℃の冷凍庫で10日保存後、15℃の定温室で解凍し1日後上記の方法に従って外観の観察、保形性、組織の荒れ、ひび割れおよび風味を評価したところ、乳化安定性が良く、ホイップした際の作業性、起泡性に優れており、保形性、離水耐性は良好であった。冷凍解凍後のケーキは保形性、組織の荒れ、ひび割れは良好で食した際には良好な食感と乳風味を有していた。配合と評価を表7、8に纏めた。
【0049】
実施例12及び実施例13の配合と一部評価を表7に纏めた。
【表7】
[図:0001422441000006.jpg]
」
イ 甲12に記載された発明
甲12に記載された事項を、特に実施例3ないし13に関して整理すると、甲12には次の発明(以下、実施例10から認定される発明を「甲12発明1」、実施例3ないし9及び11ないし13から認定される発明を「甲12発明2」といい、総称して「甲12発明」という。)が記載されていると認める。
<甲12発明1>
「実施例10の起泡性水中油型乳化物。」(当審注:「実施例10」については上記(1)参照。)
<甲12発明2>
「実施例3ないし9及び11ないし13いずれかの起泡性水中油型乳化物。」(当審注:「実施例3ないし9及び11ないし13」については上記(1)参照。)
(2)本件特許発明1について
ア 甲12発明1との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲12発明1を対比する。
甲12の【表5】によると、実施例10の起泡性水中油型乳化物は、「パーム系油脂及びラウリン系油脂のエステル交換油」である「エステル交換油A-1」又は「エステル交換油A-2」を油脂全体の質量に対して23.3重量%含むことから、甲12発明1は、本件特許発明1における「油脂」「を含む油脂組成物であって、」「前記油脂は、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を含み、前記エステル交換油脂の含有量は、前記油脂全体の質量に対して23.2~60質量%であり」という発明特定事項を有している。
甲12の【表5】によると、実施例10の起泡性水中油型乳化物は、「乳脂」を油脂全体の質量に対して34.9重量%含むことから、甲12発明1は、本件特許発明1における「前記油脂中の乳脂肪を含有量が6~40質量%である」という発明特定事項を有している。
甲12の【表5】によると、実施例10の起泡性水中油型乳化物は脱脂粉乳を起泡性水中油型乳化物全体の質量に対して5重量%有しており、甲6の表5によると、脱脂粉乳には「ストロベリーフラノン」が0.1~10ppm含まれ、甲7の表4によると、脱脂粉乳には「ストロベリーフラノン」が2~4ppm含まれることから、実施例3ないし13の起泡性水中油型乳化物は「ストロベリーフラノン」を0.005~0.5ppm含むことになる(5%×(0.1~10ppm)=0.005~0.5ppm)。すなわち、甲12発明1は、本件特許発明1における「ストロベリーフラノンを含む油脂組成物であって、」「前記ストロベリーフラノンの含有量が0.001ppm以上であり」という発明特定事項を有している。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「油脂、ストロベリーフラノンを含む油脂組成物であって、
前記油脂は、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を含み、
前記エステル交換油脂の含有量は、前記油脂全体の質量に対して23.2~60質量%であり、
前記ストロベリーフラノンの含有量が0.001ppm以上であり、かつ、前記油脂中の乳脂肪の含有量が6~40質量%である油脂組成物。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点12>
本件特許発明1においては「油中水型の油脂組成物」と特定されているのに対し、甲12発明1においては「起泡性水中油型乳化物」と特定されている点。
(イ)判断
相違点12について検討する。
甲12発明1において、「起泡性水中油型乳化物」における「水中油型」は「油中水型」ではないから、相違点12は実質的な相違点である。
また、甲12には、甲12発明1において、「起泡性水中油型乳化物」における「水中油型」を「油中水型」に変更する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲12発明1において、相違点12に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「乳脂肪量を減らした場合であっても、良好な乳脂感、深いミルク風味および爽やかさを得ることができる。」という、甲12発明1並びに甲12及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。
(ウ)まとめ
したがって、本件特許発明1は甲12発明1であるとはいえないし、甲12発明1並びに甲12及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 甲12発明2との対比・判断
本件特許発明1と甲12発明2を対比する。
両者の間には、少なくとも相違点12と同じ相違点があり、その相違点についての判断も相違点12と同じである。
すなわち、本件特許発明1は甲12発明2であるとはいえないし、甲12発明2並びに甲12及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5はいずれも請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1が甲12発明であるとはいえず、甲12発明並びに甲12及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件特許発明2及び5のいずれも甲12発明であるとはいえないし、本件特許発明2ないし5のいずれも甲12発明並びに甲12及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)取消理由3についてのむすび
したがって、本件特許発明1、2及び5は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし5は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当せず、取消理由3によっては取り消すことはできない。
第7 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由について
取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由は次のとおりである。
・申立理由1-1(明確性要件、サポート要件及び実施可能要件)
・申立理由1-2(サポート要件及び実施可能要件)
・申立理由2-1(甲1に基づく新規性・進歩性)のうちの請求項4に対する新規性
・申立理由2-3(甲12に基づく新規性・進歩性)のうちの請求項4に対する新規性
以下、順に検討する。
1 申立理由1-1(明確性要件、サポート要件及び実施可能要件)及び申立理由1-2(サポート要件及び実施可能要件)について
(1)明確性要件について
ア 明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
イ 明確性要件の判断
本件特許の請求項1ないし5の記載は、それら自体に不明確な記載はなく、また、発明の詳細な説明の記載とも整合している。
したがって、本件特許発明1ないし5に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(2)サポート要件について
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
イ サポート要件の判断
(ア)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
(イ)判断
発明の詳細な説明の【0001】ないし【0006】によると、本件特許発明1ないし5の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は「乳脂肪量を減らした場合であっても、良好な乳脂感、深いミルク風味および爽やかさを実現することができる油脂組成物を提供すること」である。
発明の詳細な説明の【0007】には「上記の課題を解決するために、本発明の油脂組成物は、油脂、ストロベリーフラノンを含む油脂組成物であって、
前記ストロベリーフラノンの含有量が0.001ppm以上であり、かつ、前記油脂中の乳脂肪の含有量が85質量%以下であることを特徴としている。」と記載されている。
発明の詳細な説明の【0011】、【0013】、【0020】、【0021】、【0024】ないし【0028】及び【0037】には、本件特許発明1ないし5に対応する事項が記載されている。
発明の詳細な説明の【0039】ないし【0072】において、「油脂、ストロベリーフラノンを含む油脂組成物であって、前記ストロベリーフラノンの含有量が0.001ppm以上であり、かつ、前記油脂中の乳脂肪の含有量が85質量%以下である油脂組成物」という条件を満たす実施例が、上記条件を満たさない比較例よりも、「乳脂感」、「深いミルク風味」及び「爽やかさ」が良好であることを確認している。
そうすると、発明の詳細な説明の上記記載により当業者は「油脂、ストロベリーフラノンを含む油脂組成物であって、前記ストロベリーフラノンの含有量が0.001ppm以上であり、かつ、前記油脂中の乳脂肪の含有量が85質量%以下である油脂組成物」は発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1ないし5は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「油脂組成物」をさらに限定したものである。
したがって、本件特許発明1ないし5は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし5に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
(3)実施可能要件について
ア 実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件特許発明1ないし5は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用をすることができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
イ 実施可能要件の判断
発明の詳細な説明には、上記(2)イ(イ)で指摘した事項に加え、本件特許発明1ないし5における各発明特定事項及びその製造方法について具体的に記載されており、また、実施例についても具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし5を生産し、使用をすることができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1ないし5に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。
(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 1及び2における主張について検討するに、次のとおりいずれの主張も採用できない。
ア 上記第4 1(1)における主張について
本件特許発明1ないし5が食品用途に限定されていないとしても、それは、本件特許発明1ないし5は食品用途に限定されていないというだけであって、本件特許発明1ないし5が明確でないということにはならない。
そして、上記(1)イのとおり、本件特許の請求項1ないし5の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記第4 1(1)における主張は採用できない。
イ 上記第4 1(2)及び第4 2における主張について
特許異議申立人の上記第4 1(2)及び第4 2における主張は、いずれも、本件特許発明1ないし5で特定される発明特定事項を有していても発明の課題を解決できないこと及び本件特許発明1ないし5に含まれる発明が実施可能でないことについて、具体的な証拠を伴うものではない。
そして、上記(2)イ及び(3)イのとおり、本件特許発明1ないし5に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するし、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。
したがって、特許異議申立人の上記第4 1(2)及び第4 2における主張は採用できない。
(5)申立理由1-1及び1-2についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号、同条同項第2号及び同条第4項第1号に規定する要件のいずれかを満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由1-1及び1-2によっては取り消すことはできない。
2 申立理由2-1(甲1に基づく新規性・進歩性)のうちの請求項4に対する新規性について
本件特許発明4は請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記第6 1のとおり、本件特許発明1が甲1発明であるといえない以上、本件特許発明4も甲1発明であるとはいえない。
したがって、本件特許発明4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえない。
よって、本件特許の請求項4に係る特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由2-1のうちの請求項4に対する新規性によっては取り消すことはできない。
3 申立理由2-3(甲12に基づく新規性・進歩性)のうちの請求項4に対する新規性について
本件特許発明4は請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記第6 3のとおり、本件特許発明1が甲12発明であるといえない以上、本件特許発明4も甲12発明であるとはいえない。
したがって、本件特許発明4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえない。
よって、本件特許の請求項4に係る特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由2-3のうちの請求項4に対する新規性によっては取り消すことはできない。
第8 結語
上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700561