特許異議申立
2023-701129
電気絶縁ケーブル
- 審判番号
- 2023-701129
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-540142
- 登録番号
- 7264170
- 請求日
- 2023年10月23日
- 審決日
- 2024年12月16日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友電気工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人深見特許事務所
- 【異議申立人】中野 圭二
- 審判長/審判官
- 審判長 恩田 春香
- 審判官 三浦 みちる
- 審判官 松永 稔
- 分類
- P1651.121-YAA(H01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7264170号発明「電気絶縁ケーブル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7264170号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第7264170号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7264170号の請求項1~7に係る特許についての出願は、2019年(令和1年)7月19日(優先権主張 平成30年8月27日)を国際出願日とする出願であって、令和5年4月17日にその特許権の設定登録がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年10月23日 :特許異議申立人 中野 圭二(以下、「申立人」という。)による請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て
令和5年12月27日付け:取消理由通知書
令和6年 2月19日 :特許権者との面接審理
令和6年 3月 1日 :特許権者による意見書の提出
令和6年 3月18日付け:審尋
令和6年 4月18日 :申立人による回答書の提出
令和6年 7月 1日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和6年 8月20日 :特許権者との面接審理
令和6年 8月29日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以下、この訂正請求書を「本件訂正請求書」、この訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)の提出
令和6年10月 8日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正の請求の趣旨は、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求めるものであり、その内容は、次のとおりである。(下線は訂正箇所を示すために当審で付した。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記被覆材と前記絶縁層との間の-30℃での動摩擦係数が、0.20以下であり、」
とあるのを、
「前記被覆材と前記絶縁層との間の-30℃での動摩擦係数が、0.19以下であり、」
に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~7も同様に訂正する。)
2 一群の請求項について
訂正前の請求項1~7について、請求項2~7は、いずれも請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1により訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項〔1~7〕は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、被覆材と絶縁層との間の-30℃での動摩擦係数が、0.19以下であることを限定又は特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。
イ 新規事項の有無
訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0054】の表1における、試料5の動摩擦係数(-30℃)が「0.19」である旨の記載に基づくものであって、新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アのとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
4 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項に規定する要件を満たしており、かつ、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明7」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
導体と前記導体を覆う絶縁層とを含む少なくとも1本の絶縁線よりなるコア電線と、
前記コア電線を覆う被覆層とを備える電気絶縁ケーブルであって、
前記コア電線と前記被覆層との間に、前記コア電線を覆うように配置された被覆材を備え、
前記被覆材と前記絶縁層との間の-30℃での動摩擦係数が、0.19以下であり、
前記被覆材が、テープ部材であり、
前記テープ部材が、ポリエステル製のペーパー又はポリエチレンテレフタラートフィルムであり、
前記絶縁層を形成する樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である電気絶縁ケーブル。
【請求項2】
前記被覆材の厚みが3μm以上200μm以下である、請求項1に記載の電気絶縁ケーブル。
【請求項3】
前記テープ部材が、前記被覆層を形成する材質の融点より高い融点を有する熱可塑性樹脂からなる請求項1又は請求項2に記載の電気絶縁ケーブル。
【請求項4】
前記被覆層が、前記被覆材を覆う第1の被覆層と、前記第1の被覆層を覆う第2の被覆層からなる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気絶縁ケーブル。
【請求項5】
前記コア電線が、互いに略同一の直径をそれぞれ有し、その断面積が1.5~3.0mm2である導体を含む絶縁線を2本以上含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気絶縁ケーブル。
【請求項6】
車載用の電気絶縁ケーブルである請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電気絶縁ケーブル。
【請求項7】
電動パーキングブレーキ用の電気絶縁ケーブルである請求項6に記載の電気絶縁ケーブル。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由(決定の予告)の概要
1 各甲号証の一覧
申立人が提出した証拠は、次のとおりである。
ア 主たる証拠
甲第1号証:特開2017-224434号公報
甲第2号証:特開2014-220043号公報
イ 従たる証拠
甲第3号証:特開2007-011019号公報
甲第4号証:特開2007-065595号公報
甲第5号証:特開2014-135153号公報
甲第6号証:特表2018-125311号公報
甲第7号証:特開2018-032515号公報
以下、上記「甲第1号証」~「甲第7号証」を、それぞれ「甲1」~「甲7」という。
2 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の概要
本件訂正前の請求項1~7に係る特許に対して、申立人が特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。なお、理由番号は当審で付した。
(1)申立理由1(甲1を主たる証拠とする進歩性)
請求項1~7に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2~甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(甲2を主たる証拠とする進歩性)
請求項1~7に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲3~甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~7に係る特許に対して、当審が令和6年7月1日付けで特許権者に通知した取消理由通知書(決定の予告)(以下、単に「取消理由通知書(決定の予告)」という。)に記載した取消理由の要旨は、次のとおりである。なお、理由番号は当審で付した。
(1)取消理由1(甲1を主たる証拠とする進歩性)
請求項1~3、6、7に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、請求項4~7に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第5 各甲号証の記載
1 甲1について
(1)甲1の記載
甲1には次の記載がある。(下線は当審で付した。以下同じ。)
「【0018】
図1に示すように、車両100には、電動式の制動装置として、電動パーキングブレーキ(以下、EPBという)101が備えられている。
【0019】
EPB101は、EPB用電気モータ101aと、EPB制御部101bと、を備えている。
【0020】
EPB用電気モータ101aは、車両100の車輪102に搭載されている車輪側装置である。EPB制御部101bは、車両100の車体側装置であるECU(電子制御ユニット)103に搭載されている。なお、EPB制御部101bは、ECU103以外のコントロールユニットに搭載されていてもよく、専用のハードウェアユニットに搭載されていてもよい。
【0021】
図示していないが、EPB用電気モータ101aには、ブレーキパッドが取り付けられたピストンが設けられており、当該ピストンをEPB用電気モータ101aの回転駆動により移動させることで、ブレーキパッドを車輪102の車輪のディスクロータに押し付け、制動力を発生させるように構成されている。EPB用電気モータ101aには、EPB用電気モータ101aに駆動電流を供給するための電源線として1対の第1電線2が接続されている。
・・・
【0025】
一対の第1電線2と対撚線4とを一括してシース7(図2参照)で被覆したものが、本実施の形態に係るケーブル1である。車輪102側から延出されたケーブル1は、車体105に設けられた中継ボックス106内にて電線群107に接続され、電線群107を介してECU103やバッテリ(不図示)に接続されている。
・・・
【0028】
図2(a),(b)に示すように、ケーブル1は、複数の電線2,3と、複数の電線2,3が撚り合わされてなる集合体5の周囲に螺旋状に巻き付けられているテープ部材6と、テープ部材6の外周に被覆されているシース7と、を備えている。
・・・
【0030】
第1電線2は、第1導体21と、第1導体21の外周に被覆されている第1絶縁体22と、を有している。第1導体21は、銅等の良導電性の素線を撚り合わせた撚線導体からなり、第1絶縁体22は、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる。第1導体21に用いる素線としては、直径0.05mm以上0.30mm以下のものを用いることができる。直径0.05mm未満の素線を用いた場合は十分な機械的強度が得られず耐屈曲性が低下するおそれがあり、直径0.30mmより大きい素線を用いた場合ケーブル1の可撓性が低下するおそれがある。
・・・
【0033】
第1電線2の第1導体21の断面積(導体断面積)、及び第1絶縁体22の厚さは、要求される駆動電流の大きさに応じて適宜設定すればよい。本実施の形態では、第1電線2が電源線として用いられ、第2電線3が信号線として用いられることから、第1導体21は、第2導体31よりも断面積(導体断面積)が大きく設定されている。本実施の形態では、第1電線2がEPB用電気モータ101aに駆動電流を供給するための電源線であることを考慮し、第1導体21の外径を1.5mm以上3.0mm以下に設定すると共に、第1電線2の外径を2.0mm以上4.0mm以下に設定した。
・・・
【0042】
集合体5の周囲には、テープ部材6が螺旋状に巻き付けられており、テープ部材6の外周に、シース7が被覆されている。シース7は、例えばウレタン樹脂からなる。ここでは、シース7として、厚さ0.8mmのウレタン樹脂を用いた。本実施の形態では、第1電線2がEPB用電気モータ101aに駆動電流を供給するものであり、第1電線2に駆動電流が流れる時間が比較的短いため、テープ部材6の周囲に設けられるシールド導体を省略しているが、第1電線2の用途等に応じて、テープ部材6とシース7の間、あるいはシース7の外周にシールド導体を設けてもよい。
【0043】
(テープ部材6の説明)
テープ部材6は、集合体5の周囲に螺旋状に巻き付けられており、テープ部材6が覆う全ての電線2,3に接触している。テープ部材6は、集合体5とシース7との間に介在し、屈曲時に集合体5(電線2,3)とシース7間の摩擦を低減する役割を果たす。すなわち、テープ部材6を設けることで、従来のようにタルク粉体等の潤滑剤を用いることなく、電線2,3とシース7間の摩擦を低減し、屈曲時に電線2,3にかかるストレスを低減して、耐屈曲性を向上させることが可能になる。
・・・
【0049】
また、テープ部材6の厚さは、0.028mm以上0.090mm以下であるとよい。テープ部材6の厚さが0.028mm以上であると、長手方向の引っ張り強さを確保できず巻き付け時に破断し易くなり、テープ部材6の厚さが0.090mmを超えると、テープ部材6が破れにくくなりストリップ作業が困難となるおそれがあるためである。
・・・
【0055】
また、テープ部材6としては、第1電線2の第1絶縁体22、及び第2電線3の第2絶縁体32に対して、屈曲時における電線2,3の不要なストレスを軽減できる程度に滑りやすいもの(摩擦係数が小さいもの)を用いることが望ましい。より具体的には、テープ部材6としては、テープ部材6と絶縁体22、32間の摩擦係数(静摩擦係数)が、テープ部材6を設けなかった際におけるシース7と絶縁体22,32間の摩擦係数(静摩擦係数)よりも小さい部材を用いるとよい。
・・・
【0059】
テープ部材6としては、例えば、不織布、和紙等の紙、あるいは樹脂(樹脂フィルム等)からなるものを用いることができる。
【0060】
テープ部材6として不織布を用いる場合、この不織布としては、ポリエステル、ポリプロピレン、アラミド繊維、ナイロン、アクリル繊維、またはガラス繊維からなるものを用いることが望ましい。これにより、テープ部材6が吸湿しにくくなり、シース7を被覆する際の熱によりテープ部材6から水分が蒸発しシース7が発泡してしまうことを抑制可能になる。また、テープ部材6として不織布を用いる場合、通気性が30cc/cm2/sec以上200cc/cm2/sec以下のものを用いることが望ましい。これは、通気性が30cc/cm2/sec未満と低いと、テープ部材6で覆われている空間内に水蒸気を含んだ空気が溜まりやすくなり、シース7を被覆する際の熱により溜まった空気が不織布の空隙やテープ部材6が重なり合っている部分から一気に排出され、シース7に発泡が生じるおそれがあるためである。また、通気性が200cc/cm2/secを超えて大きくなると、シース7を被覆する際にシース7の一部がテープ部材6を透過して電線2,3側に到達してしまい、電線2,3とシース7とが融着して端末処理時の作業性が低下するおそれがあるためである。
【0061】
また、テープ部材6としては、異なる材料を厚さ方向に2層以上積層して構成されたもの、すなわち2層以上の積層構造となっているものを用いることもできる。この場合、テープ部材6の集合体5と接触する面が、不織布、紙、樹脂層のいずれかからなるものを用いればよい。例えば、テープ部材6として、紙の一方の面にPET(ポリエチレンテレフタレート)等からなる樹脂層を形成したものを用い、より摩擦係数が小さい樹脂層を集合体5側として巻き付けるように構成することもできる。」
「【図1】
[図:0001422393000001.jpg]
【図2】
[図:0001422393000002.jpg]
」
(2)甲1に記載された事項
ア 上記(1)の【0018】~【0019】、【0021】によれば、車両100には、電動式の制動装置として、電動パーキングブレーキ(以下、EPBという)101が備えられ、EPB101は、EPB用電気モータ101aを備え、EPB用電気モータ101aに駆動電流を供給するための電源線として一対の第1電線2が接続されているから、一対の第1電線2は、車両100の電動パーキングブレーキ用である。
イ 上記(1)の【0025】によれば、ケーブル1は、一対の第1電線2を被覆したものであり、上記アより、一対の第1電線2は、車両100の電動パーキングブレーキ用であるから、一対の第1電線2が被覆されたケーブル1は、車両100の電動パーキングブレーキ用であるといえる。
ウ 上記(1)の【0028】によれば、ケーブル1は、複数の電線2、3と、複数の電線2、3が撚り合わされてなる集合体5の周囲に螺旋状に巻き付けられているテープ部材6と、テープ部材6の外周に被覆されているシース7と、を備えるものである。
エ 上記(1)の【0030】によれば、第1電線2は、第1導体21と、第1導体21の外周に被覆されている第1絶縁体22と、を有し、第1絶縁体22は、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなるものである。
オ 上記(1)の【0043】によれば、テープ部材6は、集合体5の周囲に螺旋状に巻き付けられており、テープ部材6が覆う全ての電線2、3に接触し、集合体5とシース7との間に介在し、屈曲時に集合体5(電線2、3)とシース7間の摩擦を低減する役割を果たすものであり、テープ部材6を設けることで、電線2、3とシース7間の摩擦を低減し、屈曲時に電線2、3にかかるストレスを低減して、耐屈曲性を向上させることが可能になるものである。
カ 上記(1)の【0049】によれば、テープ部材6の厚さは、0.028mm以上0.090mm以下である。
キ 上記(1)の【0055】によれば、テープ部材6として、第1電線2の第1絶縁体22に対して、屈曲時における電線2、3の不要なストレスを軽減できる程度に滑りやすいもの(摩擦係数が小さいもの)を用いることができ、同【0059】によれば、テープ部材6として、樹脂フィルムを用いることができ、同【0061】によれば、テープ部材6として、紙の一方の面にPET(ポリエチレンテレフタレート)等からなる樹脂層を形成したものを用い、より摩擦係数が小さい樹脂層を集合体5側として巻き付けるように構成することができるものである。また、同【0060】によれば、テープ部材6として、ポリエステルの不織布を用いることができるものである。
ク 上記オ~カによれば、テープ部材6は、集合体5とシース7との間に介在し、屈曲時に集合体5(電線2、3)とシース7間の摩擦を低減する役割を果たすものであり、テープ部材6の厚さは、0.028mm以上0.090mm以下である。
ケ 上記(1)の【0042】によれば、シース7は、ウレタン樹脂からなるものである。
(3)甲1に記載された発明
上記(2)の記載事項から、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「車両100の電動パーキングブレーキ用のケーブル1であって、(上記(2)のイ)
ケーブル1は、複数の電線2、3と、複数の電線2、3が撚り合わされてなる集合体5の周囲に螺旋状に巻き付けられているテープ部材6と、テープ部材6の外周に被覆されているシース7と、を備え、(上記(2)のウ)
第1電線2は、第1導体21と、第1導体21の外周に被覆されている第1絶縁体22と、を有し、第1絶縁体22は、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなり(上記(2)のエ)
テープ部材6は、集合体5とシース7との間に介在し、屈曲時に集合体5(電線2、3)とシース7間の摩擦を低減する役割を果たすものであり、
テープ部材6の厚さは、0.028mm以上0.090mm以下であり(上記(2)のク)、
シース7は、ウレタン樹脂からなる(上記(2)のケ)、
ケーブル1。」
2 甲2について
(1)甲2の記載
甲2には次の記載がある。
「【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電気絶縁ケーブル10の構成を示す断面図である。電気絶縁ケーブル10は、例えば、車両に搭載された電動パーキングブレーキ(Electro Mechanical Parking Brake:EPB)に用いられるものであり、ブレーキキャリパーを駆動するモータに電気信号を送信するためのケーブルとして用いることができる。
【0021】
図1に示すように、電気絶縁ケーブル10は、コア電線1と、コア電線1に巻き付けられた紙テープ2(テープ部材の一例)と、コア電線1に巻き付けられた紙テープ2の外周を覆うシース3とを有している。本例の電気絶縁ケーブル10の外径は、6~12mmの範囲、好ましくは、8.3~10.3mmの範囲に含まれるように設定される。
【0022】
コア電線1は、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第1のコア材4(コア材の一例)が互いに撚り合されて形成される。2本の第1のコア材4の各々は、導体5と導体5の外周を覆うように形成された絶縁層6とから構成されている。
【0023】
導体5は、例えば、銅合金からなる銅合金線であり、外径0.08mの素線を複数本撚り合されて形成された撚線である。導体5を構成する素線の本数としては、360~610本程度である。このように構成された導体5の断面積(複数本の素線の合計断面積)は、1.5~3.0mm2の範囲、好ましくは、1.8~2.5mm2の範囲に含まれるように設定される。また、導体5の外径は、1.5~3.0mmの範囲、好ましくは、2.0~2.6mmの範囲に含まれるように設定される。なお、導体5を構成する材料としては、銅合金線に限られず、錫めっき軟銅線や軟銅線等のような所定の導電性と柔軟性を有する材料であればよい。
・・・
【0026】
シース3は、内部シース7(第1の被覆層の一例)と、外部シース8(第2の被覆層の一例)とからなる二層構造を有しており、紙テープ2が巻き付けられた状態のコア電線1(以下、テープ付きコア電線100とも称する)を覆うように形成される。」
「【図1】
[図:0001422393000003.jpg]
」
(2)甲2に記載された発明
上記(1)から、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「車両に搭載された電動パーキングブレーキに用いられる電気絶縁ケーブル10において、(上記(1)の【0020】)
コア電線1と、コア電線1に巻き付けられた紙テープ2と、コア電線1に巻き付けられた紙テープ2の外周を覆うシース3とを有し(上記(1)の【0021】)、
コア電線1は、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第1のコア材4が互いに撚り合されて形成され、2本の第1のコア材4の各々は、導体5と導体5の外周を覆うように形成された絶縁層6とから構成され(上記(1)の【0022】)、
導体5の断面積は、1.5~3.0mm2の範囲に含まれるように設定され(上記(1)の【0023】)、
シース3は、内部シース7と、外部シース8とからなる二層構造を有しており、紙テープ2が巻き付けられた状態のコア電線1を覆うように形成される(上記(1)の【0026】)、
電気絶縁ケーブル10。」
3 甲3について
(1)甲3の記載
甲3には次の記載がある。
「【0010】
図1(A)に示す丸型の光ファイバケーブル1aは、外形が丸型でケーブルコア2の外周を内層シース3と外層シース4の2層のシースで被覆し、内層シース3と外層シース4との間に2枚以上の巻テープ5を配して構成される。ケーブルコア2は、例えば、複数本の光ファイバ心線或いは光ファイバテープ心線を、緩衝材と共に内層シース3で被覆する形態であってもよく、溝付きスペーサの溝内に光ファイバ心線或いは光ファイバテープ心線を収納した形態であってもよい。」
「【0018】
図1及び図2の構成において、巻テープ5には、プラスチック材料からなる不織布やフィルム等を用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(ナイロン)、ポリプロピレン(PP)などが使用できる。これらの材質を最上層の巻テープ5bと最下層の巻テープ5aで異ならせることにより、外層シース4と最上層の巻テープ5bとの摩擦係数が、内層シース3と最下層の巻テープ5a、並びに巻テープ5同士の摩擦係数より大きくすることができる。
【0019】
また、巻テープ5を、異なる材質のものを貼り合せて、巻テープ両面での表面状態を異ならせることにより、それぞれの摩擦係数の調整をしやすくすることができる。例えば、PETフィルムとPET繊維の不織布を貼り合わせると、両面での表面状態が異なり、摩擦係数を変えることができる。なお、最上層の巻テープ5bと外層シース4又は金属保護層8との摩擦係数が1.0以上であり、最下層の巻テープ5aと内層シース3との摩擦係数並びに巻テープ5同士の摩擦係数が0.05~0.30の範囲にあると好適である。なお、巻テープ5の厚さについては、特に制限はないが、ケーブルの細径化や経済性の観点から0.5mm以下(1枚当たり)とするのが好ましい。」
「【0026】
評価用の光ファイバケーブルの共通の構成は、以下の通りとした。
(1)内外層のシース材料:直鎖状低密度ポリエチレン
(2)外層シース14 :直径=15mm
(3)金属保護層18 :外径=11mm,ステンレステープ(両面に接着樹脂を塗布)をパイプ状に成型して蛇腹状に加工
(4)巻テープ15 :金属保護層との間に1~3枚を巻回
(5)内層シース13 :外径=9mm 内径=5mm
(6)抗張力体19 :内層シース内の対向位置に1mmφの鋼線を埋設
(7)支持線部16 :1.4mmφの鋼線7本を撚って埋設
(8)ケーブルコア12 :SMの光ファイバ心線24心を緩衝材と共に実装」
「【0028】
図6(B)は、図6(A)の条件1~条件6で巻テープ15を組合せたときの摩擦係数を測定した結果である。内層シース13と接する1枚目の巻テープが、PET(条件1,2)又はPET+不織布(条件4,5,6)である場合は、内層シース13とPETとが接することとなり、その接触面おける摩擦係数が0.2であり、不織布(条件3)である場合は、摩擦係数が0.28であった。1枚目の巻テープと2枚目の巻テープの異なる組合せで、巻テープ間での摩擦係数は、PET同士(条件2)では0.15であり、不織布とPP(条件3)では0.07であり、不織布同士(条件4,5,6)では0.13であった。また、2枚目の巻テープと3枚目の巻テープの組合せにおける巻テープ間の摩擦係数は、不織布同士(条件5,6)で、前記の不織布同士の場合と同様に0.13であった。」
(2)甲3に記載された事項
上記(1)より、甲3には、直鎖状低密度ポリエチレンからなる内層シートと、PET(ポリエチレンテレフタレート)又はPET+不織布からなる巻テープとの接触面における摩擦係数が0.2である、光ファイバケーブルが記載されているといえる。
4 甲4について
(1)甲4の記載
甲4には次の記載がある。
「【請求項1】
支持線にシースを施して支持線部を形成し、光ファイバ心線を複数本並列に連結してなる光ファイバテープ心線に、各光ファイバ心線が上下に並ぶようにしてシースを施してケーブル部を形成し、上記支持線部と上記ケーブル部とを首部で連結し、かつ上記ケーブル部の両側面にシースを破断して光ファイバテープ心線を露出させるためのノッチを形成した光ファイバケーブルにおいて、
上記光ファイバテープ心線に、離形用シートを縦添えしたことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
上記ケーブル部のシースが低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン或いは酢酸ビニルコポリマーのいずれかを材料として形成され、上記離形用シートは、上記シースとの摩擦係数が0.3以下となるように形成される請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
上記離形用シートは、テープ型介在のシースの接触する面に離形材をコーティングして形成される請求項1または2記載の光ファイバケーブル。」
「【0059】
離形用シートは、テープ介在物としてポリエチレンテレフタレートテープ(PETテープ)を用い、そのPETテープの表面にシリコーン系樹脂をコーティングして形成し、幅2.4mm、厚さ0.025mmである。」
「【0064】
【表1】
[図:0001422393000004.jpg]
【0065】
表1に示すように、ケーブルシースとの摩擦係数を0.3以下とする離形用シートを光ファイバテープ心線に添えた実施例2~実施例4の光ファイバケーブルは、合格率が100%と、光ファイバテープ心線の取り出し性に大変優れるものもある。また、ケーブルシースとの摩擦係数は0.3を超えるが、離形用シートを光ファイバテープ心線に添えた実施例1の光ファイバケーブルは、合格率98%と、光ファイバテープ心線の取り出し性に優れるものである。」
(2)甲4に記載された事項
上記(1)より、甲4には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン或いは酢酸ビニルコポリマーのいずれかを材料として形成されるシースと、PETテープの表面にシリコーン系樹脂をコーティングして形成される離形用シートとの摩擦係数が0.3以下となるように形成される、光ファイバケーブルが記載されているといえる。
5 甲5~甲7について
甲5~甲7の摘記は省略する。
第6 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由1について
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「第1導体21」は、本件発明1の「導体」に相当する。また、甲1発明の「第1導体21の外周に被覆されている第1絶縁体22」は、「第1導体21」を覆う絶縁層であるといえるから、本件発明1の「前記導体を覆う絶縁層」に相当する。
また、甲1発明の「第1電線2」は、「第1導体21」と「第1導体21の外周に被覆されている第1絶縁体22」とを有するから、本件発明1の「導体と前記導体を覆う絶縁層とを含む少なくとも1本の絶縁線」に相当する。
イ 甲1発明の「一対の第1電線2」は、2つの「第1電線2」により構成される電線であるから、本件発明1の「導体と前記導体を覆う絶縁層とを含む少なくとも1本の絶縁線よりなるコア電線」に相当する。
ウ 甲1発明の「シース7」は、複数の電線2、3が撚り合わされてなる集合体5の周囲に螺旋状に巻き付けられているテープ部材6の外周に被覆されており、「集合体5」の「複数の電線2」からなる「一対の第1電線2」を覆っているといえるから、本件発明1の「前記コア電線を覆う被覆層」といえる。
エ 甲1発明の「テープ部材6」は、「集合体5」と「シース7」との間に介在し、「集合体5」の「複数の電線2」からなる「一対の第1電線2」と「シース7」との間に、「一対の第1電線2」を覆うように配置されているといえるから、本件発明1の「前記コア電線と前記被覆層との間に、前記コア電線を覆うように配置された被覆材」に相当する。
また、甲1発明の「テープ部材6」は、テープ部材であるといえるから、本件発明1の「前記被覆材が、テープ部材であ」ることと共通する。
オ 甲1発明の「第1絶縁体22は、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からな」ることは、ポリエチレンがポリオレフィン系樹脂の一種であるから、本件発明1の「前記絶縁層を形成する樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である」ことに相当する。
カ 甲1発明の「ケーブル1」は、複数の電線2、3が撚り合わされてなる集合体5の周囲に螺旋状に巻き付けられているテープ部材6と、テープ部材6の外周に被覆されているシース7と、を備えるものであり、電線が絶縁されているケーブルであるといえるから、本件発明1の「電気絶縁ケーブル」に相当する。
キ 以上によれば、本件発明1と甲1発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「導体と前記導体を覆う絶縁層とを含む少なくとも1本の絶縁線よりなるコア電線と、
前記コア電線を覆う被覆層とを備える電気絶縁ケーブルであって、
前記コア電線と前記被覆層との間に、前記コア電線を覆うように配置された被覆材を備え、
前記被覆材が、テープ部材であり、
前記絶縁層を形成する樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である電気絶縁ケーブル。」
<相違点>
(相違点1)本件発明1は、「テープ部材が、ポリエステル製のペーパー又はポリエチレンテレフタラートフィルムであ」るのに対し、甲1発明は、テープ部材6の材質を特定していない点。
(相違点2)本件発明1は、「前記被覆材と前記絶縁層との間の-30℃での動摩擦係数が、0.19以下であ」るのに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているのかどうか不明な点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点2から検討する。
甲1発明は、上記第5の1(1)の【0043】によれば、テープ部材6を設けることで、電線2、3とシース7間の摩擦を低減し、屈曲時に電線2、3にかかるストレスを低減して、耐屈曲性を向上させるもの、すなわち、耐屈曲性を向上させるために、テープ部材6と、第1導体21の外周に被覆されている第1絶縁体22との間の摩擦係数を小さくするものであるといえ、さらに、同【0055】には、テープ部材6を、屈曲時における電線2、3の不要なストレスを軽減できる程度に滑りやすいもの(摩擦係数が小さいもの)とすることが記載されている。
しかしながら、甲1発明の「テープ部材6」と「第1導体21の外周に被覆されている第1絶縁体22」との間の摩擦係数について、相違点2に係る本件発明1の構成、すなわち、「前記被覆材と前記絶縁層との間の-30℃での動摩擦係数」を「0.19以下」とすること、特に、摩擦係数として動摩擦係数を用いることは、申立人が提出した甲1~甲7に記載も示唆もないから、当業者であっても容易に想到し得たことではない。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1を減縮した発明であり、いずれも上記相違点2に係る本件発明1の構成を有しているから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~7は、甲1発明及び甲2~甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 申立人の主張について
申立人が令和6年10月8日提出の意見書(以下、単に「意見書」という。)に記載した主張を検討する。
(1)屈曲回数の誤差範囲、及び動摩擦係数の臨界的意義について
ア 申立人は、意見書の(3)(i)において、次の旨を主張する。
(ア)「例えば、表1における動摩擦係数が0.19の試料5(厚さ33μmのポリエステルペーパー)の屈曲回数は20000回とされていますが、実際には15000回程度かもしれず、動摩擦係数が0.15の試料4(厚さ62μmのアルミ箔PET複合ケーブル)の屈曲回数は25000回とされていますが、実際には20000回程度かもしれません。つまり、表1には、屈曲回数の誤差範囲(500回又は5000回)の上限の値が示されているものと考えられます。」(6頁11行~17行)
(イ)「このことを考慮して、表1の動摩擦係数と屈曲回数のグラフを書き直すと、次の図1のようになります。」(6頁18行~19行)
(ウ)
「
[図:0001422393000005.jpg]
」(7頁)
(エ)「このグラフが示すように、動摩擦係数が0.19以下か0.19以上かで臨界的な意義があるといえるほどの屈曲回数の顕著な差は生じておらず、特許権者の「審判官殿の「ご指摘B」及び「ご指摘C」は適切ではない」という主張には理由がないものと思慮します。」(7頁1行~4行)
イ しかしながら、申立人が図1(上記ア(ウ))に示した、屈曲回数の誤差範囲(500回又は5000回)を考慮して書き直されたグラフにおいて、動摩擦係数が0.19以下の試料1~5は、0.21以上の試料6~8と比較して大きな屈曲回数を示すことが見て取れるから、屈曲回数の顕著な差があるといえる。
(2)測定ばらつきについて
ア 申立人は、意見書の(3)(ii)において、次の旨を主張する。
「一方、本件特許公報の表1では、1~8の試料について、それぞれ1回しか屈曲試験が実施されておりません。」(9頁11行~12行)
イ しかしながら、本件明細書には、屈曲試験を1回実施するとは記載されていないから、申立人の主張は根拠がない。
(3)動摩擦係数について
ア 申立人は、意見書の(4)において、次の旨を主張する。
「甲1発明において摩擦係数として動摩擦係数を選択することに困難性は認められません。」(11頁9行~10行)
イ しかしながら、上記第6の1(2)で検討したとおり、「前記被覆材と前記絶縁層との間の-30℃での動摩擦係数」を「0.19以下」とすること、特に、摩擦係数として動摩擦係数を用いることは、申立人が提出した甲1~甲7に記載も示唆もないから、当業者であっても容易に想到し得たことではない。
(4)テープ部材の形成材料について
ア 申立人は、意見書の(5)において、次の旨を主張する。
「被覆材と絶縁層との間の-30℃での動摩擦係数を0.19以下とすることは設計的事項であると共に、当該動摩擦係数は、市販のPETフィルムを用いて実現可能なものであって、当該摩擦係数とすることに格別の技術的困難性も認められません。」(12頁2行~5行)
イ しかしながら、本件発明1は、動摩擦係数を用いる点で、甲1発明とはその前提が異なるから、申立人の主張は採用できない。
したがって、申立人の上記主張はいずれも採用できない。
第7 取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった申立理由2について
上記第6の1(2)で検討したとおり、相違点2に係る本件発明1の構成は、申立人が提出した甲1~甲7に記載も示唆もないから、当業者であっても容易に想到し得たことではない。
したがって、本件発明1~7は、甲2に記載された発明及び甲3~甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、本件の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
そして、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件の請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-701129