特許異議申立
2024-701129
汚泥処理管理装置および汚泥処理管理方法
- 審判番号
- 2024-701129
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-108448
- 登録番号
- 7502235
- 請求日
- 2024年11月20日
- 審決日
- 2025年01月23日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社日立製作所
- 【権利者代理人】藤央弁理士法人
- 【異議申立人】中村 篤司
- 審判長/審判官
- 審判長 原 賢一
- 審判官 金 公彦
- 審判官 田口 裕健
- 分類
- P1652.121-Y (C02F) / P1652.537-Y (C02F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7502235号発明「汚泥処理管理装置および汚泥処理管理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7502235号の請求項7~11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7502235号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、令和3年6月30日の出願であって、令和6年6月10日にその特許権の設定登録がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行され、その後、同年11月20日に、請求項7~11に係る特許について、特許異議申立人 中村 篤司(以下、「申立人」という。)により、甲第1~5号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされ、同年12月12日に、申立人により手続補正書(方式)が提出されたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~13に係る発明は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるものであるが、このうち、請求項7~11に係る発明は、以下のとおりのものである(請求項7~11に係る発明を、それぞれ「本件発明7」~「本件発明11」という。)。
「【請求項7】
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有し、汚泥を処理する汚泥処理システムにアクセス可能な汚泥処理管理装置であって、
前記プロセッサは、
前記汚泥処理システムを運転する複数の運転条件の各々について、前記運転条件に基づいて、前記汚泥処理システムで前記汚泥を脱水する脱水コストと、前記汚泥処理システムから脱水汚泥を搬出する搬出コストと、を算出し、前記搬出コストと前記脱水コストとを加算した総合コストを算出する算出処理と、
前記複数の運転条件の各々について、前記運転条件で前記汚泥処理システムを運転した場合に前記汚泥処理システムの運転に関する制約条件を遵守するか否かを判定する判定処理と、
前記制約条件を遵守した運転条件ごとの前記総合コストに基づいて、特定の運転条件を決定する決定処理と、
前記決定処理によって決定された特定の運転条件を出力する出力処理と、
を実行し、
前記制約条件を入力する画面が表示される、
ことを特徴とする汚泥処理管理装置。
【請求項8】
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有し、汚泥を処理する汚泥処理システムにアクセス可能な汚泥処理管理装置であって、
前記プロセッサは、
前記汚泥処理システムを運転する複数の運転条件の各々について、前記運転条件に基づいて、前記汚泥処理システムで前記汚泥を脱水する脱水コストと、前記汚泥処理システムから脱水汚泥を搬出する搬出コストと、を算出し、前記搬出コストと前記脱水コストとを加算した総合コストを算出する算出処理と、
前記複数の運転条件の各々について、前記運転条件で前記汚泥処理システムを運転した場合に前記汚泥処理システムの運転に関する制約条件を遵守するか否かを判定する判定処理と、
前記制約条件を遵守した運転条件ごとの前記総合コストに基づいて、特定の運転条件を決定する決定処理と、
前記決定処理によって決定された特定の運転条件の運転コストと任意の運転条件の運転コストとの比較結果と、を出力する出力処理と、
を実行することを特徴とする汚泥処理管理装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の汚泥処理管理装置であって、
前記判定処理では、前記プロセッサは、前記複数の運転条件のうち前記総合コストが最小の運転条件について、前記制約条件を遵守するか否かを判定し、
前記出力処理では、前記プロセッサは、前記制約条件を遵守する前記総合コストが最小の運転条件を出力する、
ことを特徴とする汚泥処理管理装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の汚泥処理管理装置であって、
前記汚泥処理システムを運転する複数の運転条件は、前記汚泥処理システム内のフロック形成槽でフロックを形成するための前記フロック形成槽における複数の運転条件である、
ことを特徴とする汚泥処理管理装置。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の汚泥処理管理装置であって、
前記汚泥処理システムを運転する複数の運転条件は、前記汚泥処理システム内のフロック形成槽で形成されたフロックを脱水する脱水機における複数の運転条件である、
ことを特徴とする汚泥処理管理装置。」
第3 特許異議申立理由の概要
1 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について
(1) 本件発明7は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 本件発明8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3) 本件発明9~11は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び本件特許の出願時における周知技術に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証に記載された事項及び本件特許の出願時における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 特許法第36条第6項第1号及び第2号所定の規定違反(サポート要件及び明確性要件違反)について
本件発明7の「前記制約条件を入力する画面が表示される」、との発明特定事項は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されていないから、本件発明7が発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえないので、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合しない。
また、同様の理由により、本件発明7の「前記制約条件を入力する画面が表示される」、との発明特定事項の意味が明らかでないから、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合しない。
3 証拠方法
甲第1号証:特開2015-71129号公報
甲第2号証:特開2004-171531号公報
甲第3号証:特開2006-260519号公報
甲第4号証:特開平11-10199号公報
甲第5号証:特開2020-146614号公報
第4 特許異議申立理由についての当審の判断
1 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について
(1) 甲各号証の記載事項等
ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
(ア) 甲第1号証には、以下のa~dの記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
a 「【特許請求の範囲】
・・・
【請求項2】
投入された有機性廃棄物を、燃焼用エネルギーを用いて燃焼させて減量化する燃焼手段と、前記燃焼手段の内部に、有機性廃棄物に内在する燃焼用エネルギー以外の燃焼用エネルギーを供給する燃焼用エネルギー供給手段と、燃焼用エネルギーの供給量が前記燃焼手段の内部を所定温度に維持する供給量となるように燃焼用エネルギー供給手段の動作を制御するエネルギー供給動作制御手段と、を備えた有機性廃棄物の熱操作処理装置における有機性廃棄物エネルギーの推定装置であって、
前記燃焼手段から排出される排ガス量を測定する手段、
排ガスの温度を測定する手段、
排ガス中の水分量に応じた排ガスの比熱を計算する手段、
前記燃焼手段から持ち出される焼却灰の量および温度を測定する手段、
前記燃焼手段から持ち出される焼却灰の量および温度の測定値および予め設定された焼却灰の比熱から、前記燃焼手段から持ち出される焼却灰の熱量を計算する手段、
前記燃焼手段で使用される燃料量を測定する手段、
燃焼用空気の温度及び流量を測定する手段、
前記燃焼用空気中の水分量に応じた燃焼用空気の比熱を計算する手段、
前記燃焼手段に導入される汚泥の量を測定する手段、
前記各測定値、計算値及び予め設定された燃焼装置の熱損失量に基づき、下記の式より有機性廃棄物エネルギーを計算する手段、
[(単位時間当たりの燃焼手段から排出される排ガス量×排ガスの比熱×排ガスの温度)+(単位時間当たりの燃焼手段における熱損失)+(単位時間当たりの焼却灰の持ち出し熱量)-(単位時間当たりの燃焼手段で使用される燃料の量×単位質量当たりの発熱量)-(単位時間当たりの燃焼用空気流量×空気比熱×空気温度)]/単位時間当たりの汚泥の処理量
を備えたことを特徴とする有機性廃棄物エネルギーの推定装置。」
b 「【0001】
本発明は、低含水化設備によって低含水化した有機性廃棄物を熱操作設備で熱操作処理するにあたり低含水化された有機性廃棄物の含有エネルギーを推定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場などから発生する汚泥などは、ベルトプレス型脱水機や遠心分離型脱水機などの汚泥脱水機によって脱水され、所定含水率の脱水汚泥に調整され、この調整された脱水汚泥は、焼却炉によって焼却処分される。この所定含水率は、熱操作設備のエネルギー効率上、焼却炉において補助燃料が使用されなくてもよい含水率となるのが好ましい。
【0003】
そこで、特許文献1では、脱水汚泥の有機物含有率が変動しても、補助燃料を用いずに脱水汚泥が自己熱燃焼(自燃)するように、汚泥脱水装置の出口で、脱水汚泥の含水率および有機物含有率を測定し、自燃条件を満たす燃焼曲線と測定された有機物含有率とに基づいて自燃条件を満たす含水率を算出し、これを測定された含水率と比較して最適な汚泥脱水装置の脱水率を設定するものが記載されている。
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載の技術では、脱水汚泥が焼却炉で自燃状態となるように脱水汚泥の含水率を調整している。ところが、脱水汚泥の含水率が自燃状態であっても、脱水機を含めた熱操作設備全体のエネルギー使用効率が最適であるとは限らない。
【0005】
また、特許文献1に記載の技術では、脱水汚泥の含水率や有機物含有率などといった、汚泥などの有機性廃棄物のエネルギー関連値を測定するための計測器が別途必要になる。そのため、含水率および有機物含有率などの有機性廃棄物のエネルギーの関連値を計測することなく、設備全体のエネルギー使用効率を最適化できる技術も求められていた。
【0006】
設備全体のエネルギー使用効率の最適化を図るためには、有機性廃棄物に内在する燃焼用エネルギー以外の燃焼用エネルギー、有機性廃棄物の処理装置における送風機や給水ポンプを駆動するための電力エネルギー、及び脱水機などを駆動する動力エネルギーの総和から、熱回収発電エネルギーを差し引いたエネルギー量が最小となるように制御することが必要である。
【0007】
ところで、上記した各エネルギー要素は、全て有機性廃棄物エネルギーに依存する。ここで、有機性廃棄物エネルギーとは、有機性廃棄物が有する使用可能なエネルギーのことで、固形分熱量-(汚泥水分の潜熱+汚泥可燃分生成水分の蒸発潜熱)で表される。
【0008】
しかし、有機性廃棄物は、その固形分の組成及び含水率は様々で、経時的に変化することもあり、有機性廃棄物エネルギーを簡単かつ正確に測定する方法は知られていなかった。
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、焼却される有機性廃棄物のエネルギー関連値を計測することなく、処理装置における低含水化・熱操作設備全体のエネルギー使用効率を最適化することができる有機性廃棄物の処理装置および処理方法並びに制御装置を提供することにある。」
c 「【0021】
まず、本発明の一実施形態による有機性廃棄物の処理装置である下水等の汚泥の処理装置について説明する。図1は、この一実施形態による汚泥の処理装置の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、最適運転制御システムを含む汚泥の処理装置1は、低含水化設備10および熱操作設備20と、制御装置としての最適運転制御装置30とを有する。
【0022】
低含水化設備10は、有機性廃棄物としての汚泥の含水率を増減可能に構成されている。低含水化設備10は、汚泥を脱水により低含水化する低含水化手段としての遠心分離型の脱水機11と、脱水・薬剤投入制御部14とを有する。なお、低含水化手段としては、汚泥を乾燥させて低含水化する乾燥機や、その他汚泥の低含水化が可能な種々の装置を用いることが可能である。・・・また、脱水機11は、使用エネルギー要素としての、モータなどの動力源12と、脱水助剤を投入する脱水助剤投入器13とを有する。
【0023】
低含水化設備10は、さらに使用エネルギー要素としての汚泥供給ポンプ15、ベルトコンベアなどの脱水汚泥搬送設備、及び脱水汚泥搬送設備で消費される電力を検出するする電力計Psを有する。・・・
【0024】
また、熱操作設備20は、汚泥に対して熱操作する熱操作設備である。この熱操作設備20は、燃焼手段としての流動焼却炉21と、汚泥に内在する燃焼用エネルギー以外の燃焼用エネルギーを流動焼却炉21に供給するための燃焼用エネルギー供給手段と、エネルギー供給動作制御手段としての焼却設備燃焼制御装置28とを備える。
【0025】
流動焼却炉21は、燃焼用エネルギーを用いて脱水機11により低含水化された汚泥を燃焼させて減量化する。
・・・
【0033】
最適運転制御装置30は、汚泥の低含水化・熱操作に関する汚泥エネルギーと複数要素ごとの複数の使用エネルギー要素の使用量、およびポリ鉄などの脱水助剤の投入量、苛性ソーダなどのアルカリ剤の投入量との関係、汚泥エネルギーと各使用エネルギー要素における使用量の合算値(全エネルギー使用量)、およびポリ鉄などの脱水助剤の投入量、苛性ソーダなどのアルカリ剤の投入量との相関関係を記録する関係記録手段としての関係記録部31を有する。
【0034】
また、最適運転制御装置30は、流動焼却炉21に供給される、汚泥に内在する燃焼用エネルギーの一部である汚泥エネルギーを推定する汚泥エネルギー推定手段としての汚泥エネルギー推定部32を有する。この汚泥エネルギー推定部32は、以下の流動焼却炉21におけるトータル熱量を示す(1)式と、燃焼用エネルギーのトータル熱量を示す(2)式とから、これらのトータル熱量が同一であるという原理に基づいて汚泥エネルギー値を算出する。この推定された汚泥エネルギー値を、その時点における汚泥エネルギー値Eesとして推定する。
【0035】
ここで、汚泥エネルギーとは、汚泥エネルギー=(固形分燃焼熱)-(汚泥中水分潜熱+汚泥可燃分生成水分潜熱)である。そして、全エネルギー使用量は、単位体積当たりの汚泥エネルギーに対して一意に決定される依存性を有するとともに、最小値を有する。一方、単位体積当たりの汚泥エネルギーは、汚泥の性状によって変化する上に、その汚泥エネルギー値を検出して制御することが困難である反面、汚泥の含水率の増加に対して単調減少関係を有する。そこで、汚泥の含水率を増加および減少させることによって、汚泥エネルギー値をそれぞれ減少および増加させることができる。この関係を利用して、汚泥の含水率を増減させることによって、汚泥の汚泥エネルギー値を全エネルギー使用量が最小値となるように制御できる。この場合、全エネルギー使用量が最小値となるように汚泥エネルギー値まで収束するように、汚泥の含水率を増減させる方向に低含水化設備10、特に脱水機11および脱水助剤投入器13を制御する。このとき汚泥の含水率は直接計測する必要がない。そのため、汚泥の含水率の検出系および制御系や汚泥エネルギー値の検出系および制御系などを設ける必要がなく、構成が簡略化できる。
【0036】
また、最適運転制御装置30は、汚泥の低含水化・熱操作処理に関する複数の使用エネルギー要素ごとの各エネルギー使用量、各薬剤投入量の測定を行うとともに、測定された各エネルギー使用量、各薬剤投入量のそれぞれをランニングコストに変換する重み係数を乗算し、各乗算したコストの合算を行って全ランニングコストを算出する全ランニングコスト算定手段としての全ランニングコスト算定部33を有する。
・・・
【0038】
また、最適運転制御装置30は、関係記録部31に記録された汚泥エネルギーと全ランニングコストとの基準関係と、汚泥エネルギー推定部32により推定された現時点における最新の推定値である汚泥エネルギー値Eesとに基づいて、全ランニングコストCを最小にする汚泥エネルギーの最適値Eminに対する汚泥エネルギー値Eesの大小関係を把握する大小関係把握部34を有する。
【0039】
さらに、最適運転制御装置30は、低含水化設備10における脱水機11を制御するための低含水化動作制御部35を有する。低含水化動作制御部35は、脱水薬剤投入制御部14に制御信号を供給することにより、脱水機11における動力源12の回転数の増減、すなわち遠心力の増減を制御するとともに、脱水助剤投入器13を制御して脱水処理される汚泥の含水率の増減を制御する。
【0040】
最適運転制御装置30は、上述した燃料使用量、電力使用量や各薬剤の投入量などの現在の複数の使用エネルギー要素の使用量及び各薬剤の消費量を取得し、関係記録部31に記録された基準関係と、汚泥エネルギー推定部32が推定した最新の推定値である汚泥エネルギー値Eesとに基づいて、全ランニングコスト算定部33が算定した全ランニングコストが最小となる汚泥エネルギーの最適値E1minに向かうように、すなわち、大小関係把握部34が把握した汚泥エネルギーの最適値E1minと汚泥エネルギー値Eesとの大小関係が解消する方向に向かうように、低含水化動作制御部35により脱水機11の使用電力量及び脱水助剤の投入量の増減を指示する。
・・・
【0047】
(最適運転制御処理方法)
次に、本発明の一実施形態による最適運転制御装置30による最適運転制御処理方法について説明する。図4は、この最適運転制御処理方法を示すフローチャートである。
・・・
【0058】
以上説明した本発明の一実施形態によれば、焼却される汚泥の含水率や可燃分などを計測することなく、汚泥の処理装置1全体の全ランニングコストCが最小値となる汚泥エネルギー値になるように低含水化設備10の運転制御を行っているので、汚泥の性状が変化して汚泥特性が変わった場合であっても、常に汚泥の処理装置1全体のランニングコストを最小にすることができる。」
d 「【図1】
[図:0001420371000001.jpg]
」
(イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第1号証には有機性廃棄物エネルギーの推定装置が記載されており、前記(ア)bの記載によれば、前記有機性廃棄物エネルギーの推定装置は、低含水化設備によって低含水化した有機性廃棄物を熱操作設備で熱操作処理するにあたり、低含水化された有機性廃棄物の含有エネルギーを推定する装置に関するものであって、下水処理場などから発生する汚泥などは、ベルトプレス型脱水機や遠心分離型脱水機などの汚泥脱水機によって脱水され、所定含水率の脱水汚泥に調整され、この調整された脱水汚泥は、焼却炉によって焼却処分されるのであるところ、従来、含水率および有機物含有率などの有機性廃棄物のエネルギーの関連値を計測することなく、設備全体のエネルギー使用効率を最適化できる技術が求められていた。
ところが、有機性廃棄物は、その固形分の組成及び含水率は様々で、経時的に変化することもあり、有機性廃棄物エネルギーを簡単かつ正確に測定する方法は知られていなかったことから、前記有機性廃棄物エネルギーの推定装置は、焼却される有機性廃棄物のエネルギー関連値を計測することなく、処理装置における低含水化・熱操作設備全体のエネルギー使用効率を最適化することができる有機性廃棄物の制御装置を提供することを目的とするものである。
そして、前記(ア)c及びdの記載によれば、そのような有機性廃棄物エネルギーの推定装置による最適運転制御システムを含む汚泥の処理装置1は、低含水化設備10及び熱操作設備20と、制御装置としての最適運転制御装置30とを有するものであって、低含水化設備10は、有機性廃棄物としての汚泥の含水率を増減可能に構成されており、汚泥を脱水により低含水化する低含水化手段としての遠心分離型の脱水機11と、脱水・薬剤投入制御部14とを有し、脱水機11は、使用エネルギー要素としての、モータなどの動力源12と、脱水助剤を投入する脱水助剤投入器13とを有し、更に、低含水化設備10は、使用エネルギー要素としての汚泥供給ポンプ15と、ベルトコンベアなどの脱水汚泥搬送設備、及び脱水汚泥搬送設備で消費される電力を検出する電力計Psとを有するものである。
また、熱操作設備20は、汚泥に対して熱操作する熱操作設備であり、燃焼手段としての流動焼却炉21と、汚泥に内在する燃焼用エネルギー以外の燃焼用エネルギーを流動焼却炉21に供給するための燃焼用エネルギー供給手段と、エネルギー供給動作制御手段としての焼却設備燃焼制御装置28とを備え、流動焼却炉21は、燃焼用エネルギーを用いて脱水機11により低含水化された汚泥を燃焼させて減量化するものである。
更に、最適運転制御装置30は、汚泥の低含水化・熱操作に関する汚泥エネルギーと複数要素ごとの複数の使用エネルギー要素の使用量、及びポリ鉄などの脱水助剤の投入量、苛性ソーダなどのアルカリ剤の投入量との関係、汚泥エネルギーと各使用エネルギー要素における使用量の合算値(全エネルギー使用量)、及びポリ鉄などの脱水助剤の投入量、苛性ソーダなどのアルカリ剤の投入量との相関関係を記録する関係記録手段としての関係記録部31と、流動焼却炉21に供給される、汚泥に内在する燃焼用エネルギーの一部である汚泥エネルギーを推定する汚泥エネルギー推定手段としての汚泥エネルギー推定部32とを有するものであり、ここで、汚泥エネルギーとは、汚泥エネルギー=(固形分燃焼熱)-(汚泥中水分潜熱+汚泥可燃分生成水分潜熱)であり、汚泥の含水率を増減させることによって、汚泥の汚泥エネルギー値を全エネルギー使用量が最小値となるように制御できるものであり、この場合、全エネルギー使用量が最小値となるように汚泥エネルギー値まで収束するように、汚泥の含水率を増減させる方向に低含水化設備10、特に脱水機11及び脱水助剤投入器13を制御するものである。
また、最適運転制御装置30は、汚泥の低含水化・熱操作処理に関する複数の使用エネルギー要素ごとの各エネルギー使用量、各薬剤投入量の測定を行うとともに、測定された各エネルギー使用量、各薬剤投入量のそれぞれをランニングコストに変換する重み係数を乗算し、各乗算したコストの合算を行って全ランニングコストを算出する全ランニングコスト算定手段としての全ランニングコスト算定部33と、関係記録部31に記録された汚泥エネルギーと全ランニングコストとの基準関係と、汚泥エネルギー推定部32により推定された現時点における最新の推定値である汚泥エネルギー値Eesとに基づいて、全ランニングコストCを最小にする汚泥エネルギーの最適値Eminに対する汚泥エネルギー値Eesの大小関係を把握する大小関係把握部34、及び、低含水化設備10における脱水機11を制御するための低含水化動作制御部35とを有するものである。
そして、最適運転制御装置30は、上述した燃料使用量、電力使用量や各薬剤の投入量などの現在の複数の使用エネルギー要素の使用量及び各薬剤の消費量を取得し、関係記録部31に記録された基準関係と、汚泥エネルギー推定部32が推定した最新の推定値である汚泥エネルギー値Eesとに基づいて、全ランニングコスト算定部33が算定した全ランニングコストが最小となる汚泥エネルギーの最適値E1minに向かうように、すなわち、大小関係把握部34が把握した汚泥エネルギーの最適値E1minと汚泥エネルギー値Eesとの大小関係が解消する方向に向かうように、低含水化動作制御部35により脱水機11の使用電力量及び脱水助剤の投入量の増減を指示するものであり、そのような最適運転制御装置30による最適運転制御処理方法によって、焼却される汚泥の含水率や可燃分などを計測することなく、汚泥の処理装置1全体の全ランニングコストCが最小値となる汚泥エネルギー値になるように低含水化設備10の運転制御を行えるので、汚泥の性状が変化して汚泥特性が変わった場合であっても、常に汚泥の処理装置1全体のランニングコストを最小にすることができるものである。
(ウ) 前記(イ)における最適運転制御システムを含む汚泥の処理装置に注目すると、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「有機性廃棄物エネルギーの推定装置による最適運転制御システムを含む汚泥の処理装置であって、
前記汚泥の処理装置は、低含水化設備及び熱操作設備と、制御装置としての最適運転制御装置とを有し、
低含水化設備は、有機性廃棄物としての汚泥の含水率を増減可能に構成されており、汚泥を脱水により低含水化する低含水化手段としての遠心分離型の脱水機と、脱水・薬剤投入制御部とを有し、脱水機は、使用エネルギー要素としての、モータなどの動力源と、脱水助剤を投入する脱水助剤投入器とを有し、更に、低含水化設備は、使用エネルギー要素としての汚泥供給ポンプと、ベルトコンベアなどの脱水汚泥搬送設備、及び脱水汚泥搬送設備で消費される電力を検出する電力計とを有するものであり、
熱操作設備は、汚泥に対して熱操作する熱操作設備であり、燃焼手段としての流動焼却炉と、汚泥に内在する燃焼用エネルギー以外の燃焼用エネルギーを流動焼却炉に供給するための燃焼用エネルギー供給手段と、エネルギー供給動作制御手段としての焼却設備燃焼制御装置とを備え、流動焼却炉は、燃焼用エネルギーを用いて脱水機により低含水化された汚泥を燃焼させて減量化するものであり、
最適運転制御装置は、汚泥の低含水化・熱操作に関する汚泥エネルギーと複数要素ごとの複数の使用エネルギー要素の使用量、及びポリ鉄などの脱水助剤の投入量、苛性ソーダなどのアルカリ剤の投入量との関係、汚泥エネルギーと各使用エネルギー要素における使用量の合算値(全エネルギー使用量)、及びポリ鉄などの脱水助剤の投入量、苛性ソーダなどのアルカリ剤の投入量との相関関係を記録する関係記録手段としての関係記録部と、流動焼却炉に供給される、汚泥に内在する燃焼用エネルギーの一部である汚泥エネルギーを推定する汚泥エネルギー推定手段としての汚泥エネルギー推定部を有し、ここで、汚泥エネルギーとは、汚泥エネルギー=(固形分燃焼熱)-(汚泥中水分潜熱+汚泥可燃分生成水分潜熱)であり、汚泥の含水率を増減させることによって、汚泥の汚泥エネルギー値を全エネルギー使用量が最小値となるように制御できるものであり、この場合、全エネルギー使用量が最小値となるように汚泥エネルギー値まで収束するように、汚泥の含水率を増減させる方向に低含水化設備、特に脱水機及び脱水助剤投入器を制御するものであり、
最適運転制御装置は、汚泥の低含水化・熱操作処理に関する複数の使用エネルギー要素ごとの各エネルギー使用量、各薬剤投入量の測定を行うとともに、測定された各エネルギー使用量、各薬剤投入量のそれぞれをランニングコストに変換する重み係数を乗算し、各乗算したコストの合算を行って全ランニングコストを算出する全ランニングコスト算定手段としての全ランニングコスト算定部と、関係記録部に記録された汚泥エネルギーと全ランニングコストとの基準関係と、汚泥エネルギー推定部により推定された現時点における最新の推定値である汚泥エネルギー値とに基づいて、全ランニングコストを最小にする汚泥エネルギーの最適値に対する汚泥エネルギー値の大小関係を把握する大小関係把握部、及び、低含水化設備における脱水機を制御するための低含水化動作制御部とを有するものであり、
最適運転制御装置は、上述した燃料使用量、電力使用量や各薬剤の投入量などの現在の複数の使用エネルギー要素の使用量及び各薬剤の消費量を取得し、関係記録部に記録された基準関係と、汚泥エネルギー推定部が推定した最新の推定値である汚泥エネルギー値とに基づいて、全ランニングコスト算定部が算定した全ランニングコストが最小となる汚泥エネルギーの最適値に向かうように、すなわち、大小関係把握部が把握した汚泥エネルギーの最適値と汚泥エネルギー値との大小関係が解消する方向に向かうように、低含水化動作制御部により脱水機の使用電力量及び脱水助剤の投入量の増減を指示するものであり、
そのような最適運転制御装置による最適運転制御処理方法によって、焼却される汚泥の含水率や可燃分などを計測することなく、汚泥の処理装置全体の全ランニングコストが最小値となる汚泥エネルギー値になるように低含水化設備の運転制御を行えるので、汚泥の性状が変化して汚泥特性が変わった場合であっても、常に汚泥の処理装置全体のランニングコストを最小にすることができる、汚泥の処理装置。」(以下、「甲1発明」という。)
イ 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、以下の(ア)~(オ)の記載がある。
(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象プロセスの状態を計測することのできる少なくとも一つのプロセスセンサと、対象プロセスの状態を変化させることができる少なくとも一つのアクチュエータと、対象プロセスヘの外部入力と、を有するプロセスを制御するプラントワイド最適プロセス制御装置において、
前記プロセスセンサによって得られるプロセス計測値に基づいて前記アクチュエータを動作させ、プロセスのダイナミックな変動を望ましい特性を持つように補償するローカル制御部と、少なくとも前記プロセスの外部入力の物質量やエネルギー量などの保存量の保存則に関する静的な制約条件を設定する制約条件設定部と、運転コストや複数の制御性能を評価する評価関数を設定する最適評価関数設定部と、前記制約条件設定部によって設定された制約条件を入力し、前記最適評価関数設定部で設定された評価関数に基づいて、前記ローカル制御部の最適な目標値を供給する最適目標値演算部と、を備えたことを特徴とするプラントワイド最適プロセス制御装置。」
(イ) 「【0001】
本発明は、下水処理プロセス、排水処理プロセス、浄水プロセス、化学プロセスなどのプロセス系のためのプラントワイド最適プロセス制御装置に関する。」
(ウ) 「【0085】
<実施の形態1>
(実施の形態1の構成)
図1は、本発明の実施形態の基本的な構成を、下水処理場の下水処理プロセス制御を行う場合について示したものである。ただし、ここで説明する実施の形態の適用対象は下水処理プロセスに限定されるものではないことに留意すべきである。
【0086】
図1に示す下水処理プロセスは2段循環式硝化脱窒プロセスとして構成された下水高度処理プロセス1であり、被処理水はまず最初沈澱池101に導入され、ここから順に、第1嫌気槽102、第1好気槽103、無酸素槽104、第2好気槽105、および最終沈澱池106を通って放水される。これらの槽101~106は被処理水を処理する反応槽である。
【0087】
この下水高度処理プロセス1は、アクチュエータとして、最初沈澱池101に最初沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ111を備え、同様に、第1嫌気槽102の出口と無酸素槽104との間にステップ流入ポンプ112、第1好気槽103に酸素を供給するブロワ113、第2好気槽105に酸素を供給するブロワ114、無酸素槽104に炭素源を供給する炭素源投入ポンプ115、第2好気槽105と無酸素槽104の間で非処理水を循環させる循環ポンプ116、最終沈澱池106の汚泥を最初沈澱池101に返送する返送汚泥ポンプ117、第2好気槽105に凝集剤を投入する凝集剤投入ポンプ118、および最終沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ119を備えている。各アクチュエータ111~119は、所定の動作周期で動作する。
【0088】
さらに、下水高度処理プロセス1は、計測制御ためのプロセスセンサとして、第1好気槽103のアンモニア濃度を計測するアンモニアセンサ121、無酸素槽104の硝酸濃度を計測する硝酸センサ122、槽102~105の少なくとも一つの槽(図示の例では無酸素槽104)で活性汚泥量を計測するMLSSセンサ123、第2好気槽105のアンモニア濃度を計測するアンモニアセンサ124、第2好気槽105のリン酸濃度を計測するリン酸センサ125、最終沈澱池106から引き抜かれる汚泥のSS濃度を計測するSSセンサ126、最終沈澱池106から引き抜かれる余剰汚泥量を計測する流量センサ127、および流入下水のCOD、TN、TPなどの複数の水質要素と水量を計測できる下水流入センサ128を備えている。各プロセスセンサ121~128は所定の計測周期で計測を行う。各プロセスセンサ121~128によって計測された計測値は、図2に示すプロセス計測データ収集部2によって収集され、保持される。
【0089】
プロセス計測データ収集部2は、第1~第7のデータ収集部21~27からなっている。・・・プロセス計測データ収集部2によって収集された計測データはローカル制御部3に送出される。
【0090】
ローカル制御部3は、プロセス計測データ収集部2のデータ収集部21~27に1対1で対応する第1~第7のローカル制御回路31~37からなっている。・・・ローカル制御回路31~37は、データ収集部21~27で収集されたプロセスデータと、最適目標値演算部6から供給される最適目標値とを入力とし、各アクチュエータ111~119の操作量を計算し決定するための制御ロジックからなっている。
【0091】
最適目標値演算部6は、最適評価関数設定部4からプロセスの最適性を定量的に定義し設定した最適評価関数を、また制約条件設定部5から各種の制約値を、第8のデータ収集部28から下水流入センサ128によって計測された下水流入の各種水質と水量のデータをそれぞれ入力し、ローカル制御部3に対しその最適目標値を計算し送出する。制約条件設定部5は、プロセスのマスバランスあるいはエネルギーバランス等の保存量に関する制約条件を設定する保存量制約設定部51、プロセスの出力である水質や水量の規制値などの制約条件を設定する出力制約設定部52、およびプロセスの入力である操作量のリミットや操作量変化率の制限値(Δリミット)などの制約条件を設定する操作量制約設定部53を備えている。なお、データ収集部28は、最適目標値演算部6の最適目標値を計算する際に保存量制約設定部51から供給される保存量の制約式の一部に代入するための流入下水データを収集するものである。
【0092】
(実施の形態1の作用)
図1および図2を参照して実施の形態1の作用を説明する。まず、硝酸センサ122で計測された無酸素槽104の硝酸データを所定の周期でデータ収集部21,23,24に格納する。同様に、アンモニアセンサ121,124で各々計測された第1および第2の好気層103,105のアンモニア濃度データを所定の周期でデータ収集部22に格納する。全く同様に、MLSSセンサ123で計測されたMLSSデータをデータ収集部25に、リン酸センサ125で計測されたリン酸データをデータ収集部26に格納し、データ収集部27にはMLSSセンサ123で計測された第2の好気層103のMLSSデータとSSセンサ126で計測された余剰汚泥のSSデータと、流量センサ127で計測された余剰汚泥の引き抜き流量データとを、それぞれ格納する。
【0093】
最適評価関数設定部4は、下水高度処理プロセス1の最適性を評価するための最適評価関数を設定するものである。下水高度処理プロセス1では、運転コストの削減と窒素やリンの除去効率の向上が求められているが、これらはトレードオフの関係にあるため、これらのトレードオフを考慮した最適評価関数を設定することが好ましい。例えば、放流水の窒素やリンの負荷量に応じて賦課金を課すという考え方に従って、放流水質の向上を金額換算して放流水質コストとし、これと運転コストを同時に評価し、例えば、次のような評価関数Jを設定する。
J=EC+OC (1)
ここで、ECは放流水質コストであり、OCは運転コストであって、例えば次式で定義する。
・・・
【0095】
次に、制約条件設定部5において、保存量制約設定部51、出力制約設定部52、および操作量制約設定部53の各々の制約条件を設定する。ここで、本発明の本質的な部分は、保存量制約設定部51を持っていることである。この保存量制約設定部51を持つことにより、以降で説明する最適目標値演算部6で演算した目標値を、原理的に必ず到達可能なものとすることができる。
【0096】
保存量制約設定部51では、下水高度処理プロセス1の処理におけるマスバランスを考慮した微分方程式から導出される代数方程式による記述を行う。
・・・
【0108】
次に出力制約設定部52について説明する。出力制約設定部52では、例えば、出力である水質の規制値を設定したり、水質濃度など、決して負にはならないように制約条件を設定することができる。例えば、(14)式に加えて、次式のような制約条件を設定する。
0≦x≦xmax (15)
ここで、xmaxは水質の規制値などに対応する水質の上限値である。
【0109】
次に操作量制約設定部53であるが、ここでは、プロセスのアクチュエータが取り得る範囲内のリミット値を設定することができる、例えば次式のような制約条件を設定する。
umin≦u≦umax (16)
ここで、uminおよびumaxは、操作量の上限値および下限値に対応する。
【0110】
以上の設定部51~53をまとめたものが制約条件設定部5である。
【0111】
次に、最適目標値演算部6について説明する。最適目標値演算部6は、最適評価関数設定部4で設定した最適評価関数と、制約条件設定部5で設定した各種制約条件とに基づいて、アクチュエータ(112~119)の操作量を求めるローカル制御回路31~37に対する最適な目標値を計算する。このためには、以下の最適化問題を解けば良い。
・・・
【0117】
次に、ローカル制御部3について説明する。ローカル制御部3は各種のアクチュエータの操作量を決定するものである。まず、ローカル制御回路31は、データ収集部21において収集され保持された硝酸データを取り込むと同時に、最適目標値演算部6において計算された最適な硝酸濃度の目標値を取り込む。そうすると、最適なステップ流入量は、例えば次式のPIDコントローラによって計算することができる。
・・・
【0150】
以上のような一連の動作に従って、プラントワイドな最適な下水処理プロセス制御を行うことができる。ただし、以上の一連の動作における最適目標値は、実際には、流入してくる流入下水の量や質によって、異なったものになるはずである。特に、雨天や晴天などの天候の違い、休日と平日の違い、夜間と昼間の違い、季節の違いによって、流入下水の量や質が変化する方が普通である。そこで、最適目標値演算は適切な周期で繰り返す方がより現実的であり、所定の一定周期で最適目標値演算を行うことができる。また、一定周期ではなく、上述の天候、曜日、時間帯、季節の違いが表れる場合に最適目標値演算の再計算を行うこともできる。このような最適目標値再計算によって、下水の流入負荷状況に応じて、下水高度処理プロセスをプラントワイドに最適制御することができる。
【0151】
(実施の形態1の効果)
以上の実施の形態では、従来のPID制御などのローカル制御部の上位系に、物質量保存制約条件を持つ最適目標値演算装置をスーパーバイザーとして設置することによって、以下のような効果を奏することができる。
【0152】
(1)放流水質コストと運転コストを最適化した最適下水処理制御装置を提供することができる。
(2)物質量保存制約条件があるために原理的に到達できないような目標値を与えてしまう危険を回避することができる。
(3)従来行われているローカル制御部の制御装置をそのまま利用して、シームレスにプラントワイドな下水処理プロセス制御装置を提供することができる。
(4)ローカル制御装置と最適目標値演算装置を独立に設定することができ、例えば、ローカル制御装置でプラントのロバスト性や安定性を考慮し、最適目標値演算装置でプラントのプラントワイドな最適化を図る、といった役割分担を明確化することができる。」
(エ) 「【図1】
[図:0001420371000002.jpg]
」
(オ) 「【図2】
[図:0001420371000003.jpg]
」
ウ 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、以下の(ア)~(キ)の記載がある。
(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理プラントの各プロセスに対応するプラントデータを収集するデータ収集手段と、
前記データ収集手段により収集された前記プラントデータ及び前記水処理プラントの運転に必要な各種データを蓄積するデータベース手段と、
前記データベース手段に蓄積されたデータを使用して前記各プロセスでの運転コストを算出し、当該各プロセスの演算結果に基づいて前記水処理プラント全体の運転コストを評価するためのシミュレーションを実行する運転コストシミュレータと
を具備したことを特徴とする運転評価システム。」
(イ) 「【0001】
本発明は、例えば上下水道プラントなどの水処理プラントの運転コストを評価する運転評価システムに関する。」
(ウ) 「【0009】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に関する上下水道プラント1の運転評価システムの構成を示すブロック図である。なお、本実施形態のプラント1は、広義の水処理プラントであり、後述する狭義の水処理プロセスを含むものである。
【0011】
本システムは、図1に示すように、プラント1から各種のプラントデータを収集するデータ収集装置2と、シミュレータ3と、データベース4と、入出力部5とを有する。
【0012】
データ収集装置2は、プラント1の各設備(プラント機器)に設置されているセンサーから、流量、水位、電力量、薬品投入量、汚泥量、水質等の計測信号(ディジタルデータ)を定期的に収集する。データ収集装置2は、プラント1の運転状況を監視する監視制御システム(図示せず)に組み込まれている構成でもよい。
【0013】
データベース4は、データ収集装置2から得られる各種のプラントデータを蓄積(記憶)する収集データベース(以下データベースをDBと表記する)43以外に、土木DB41、水質基準DB42、コストDB44、機器DB45、及びプロセスDB46を含む。
【0014】
データベース4には、具体的には、例えば図2から図7に示すような項目のデータが蓄積(記憶)される。即ち、土木DB41には、図2に示すように、設備の項目名及び各項目の仕様(容量など)が蓄積されている。水質基準DB42には、図3に示すように、PH(酸性又はアルカリ性を示す数値)、COD(化学的酸素要求量:chemical oxygen demand)、BOD(生物化学的酸素要求量:biochemical oxygen demand)、SS(懸濁浮遊物質)などの項目名及びそれらの基準値が蓄積されている。収集DB43には、図4に示すように、各種のプラントデータの項目名及びそれらの計測値が蓄積されている。
【0015】
コストDB44には、図5に示すように、電力や薬品費等の項目名及びそれらの単価が蓄積されている。機器DB45には、図6に示すように、機器の名称及びそれらの定格電力や効率などが蓄積されている。プロセスDB46には、図7に示すように、池や設備毎のテンプレート(オブジェクト指向プログラミングでのクラス)等が定義されている。
【0016】
入出力部5は、後述するシミュレータ3の操作、データの入力、及びシミュレーション結果の表示出力などを実行する。入出力部5は、シミュレータ3の演算処理を実行させるための演算命令を入力するための入力操作部や、当該演算結果はグラフ等の形式で表示する表示出力部を含む。入出力部5は、シミュレータ3のマスバランス演算部30の構築、データの変更、プロセスや機器及び土木構造に関する各種のシミュレーションを実行させる命令の入力などを実行する。
【0017】
(シミュレータの構成)
シミュレータ3は、システムのメイン要素であり、コンピュータのハードウェア及びソフトウェアにより構成されている。シミュレータ3は、後述するように、データベース4の各データに基づいてマスバランスの演算処理を実行するマスバランス演算部30を含み、プラント1の運転コストの評価に必要なシミュレーション(コスト演算)を実行する。
【0018】
シミュレータ3は、オブジェクト指向プログラミング技術を利用したソフトウェア構成である(例えば特開平10-235333号公報を参照)。具体的には、シミュレータ3は、オペレータによる入出力部5からの命令に従って、定義された多数のプロセスのクラスからオブジェクトを作成する。シミュレータ3は、ユーザーインターフェースを介してオブジェクトを結合してマスバランス演算部30を構築すると共に、結合したオブジェクトのグループをプロセスDB46に蓄積する。プロセスDB46からは、入出力部5からの命令により常に呼び出すことができる。
・・・
【0021】
(プラントの構成)
本実施形態のプラント1は、上下水道プラントを想定し、図1に示すように、水処理プロセスとして、沈砂池10と、汚水ポンプ11aと、最初沈殿池12、曝気槽13と、最終沈殿池15と、塩素混和池16とを有する。曝気槽13に酸素を送り込むための送風機14が設けられている。
【0022】
塩素混和池16には、ポンプ11bにより薬品として塩素17が注入される。プラント1は、これらの反応槽でBODやSSを除去し、最初沈殿池12からは生汚泥を引き抜き、最終沈殿池15からは余剰汚泥を引き抜く。最終沈殿池15からの余剰汚泥の一部は、ポンプ11cにより曝気槽13に返送される。
【0023】
さらに、プラント1は、汚泥濃縮槽18と、汚泥濃縮機19と、消化槽20と、汚泥洗浄槽21と、脱水設備(FP:フィルタプレス式脱水機)22と、脱水設備(BP:ベルトプレス式脱水機)23とを有する。汚泥濃縮槽18には、ポンプ11dにより最初沈殿池12から生汚泥が送られる。
【0024】
汚泥濃縮機19には、ポンプ11gにより最終沈殿池15からの余剰汚泥が供給される。この汚泥濃縮機19からの濃縮汚泥は、ポンプ11fにより消化槽20に送られる。また、消化槽20には、汚泥濃縮槽18からの濃縮汚泥がポンプ11eにより送られる。消化槽20は、余剰ガス(消化ガス)を放出する。
【0025】
汚泥洗浄槽21には、ポンプ11hにより消化槽20から消化された汚泥が送られる。また、汚泥洗浄槽21には、最終沈殿池15からの余剰汚泥が送られる。汚泥洗浄槽21により洗浄された汚泥は、ポンプiにより脱水設備(FP)22及び脱水設備(BP)23のそれぞれに送られる。脱水設備(FP)22は、ポンプ11jにより塩鉄、消石灰24が注入されて、脱水ケーキを放出する。脱水設備(BP)23は、ポンプ11kにより凝集剤25が注入されて、脱水ケーキを放出する。
【0026】
(シミュレータの動作)
以下図8から図10を参照して、本実施形態のシミュレータ3(マスバランス演算部30)の動作を説明する。
【0027】
まず、データ収集装置2は、図1に示すプラント1の各設備(プラント機器)に設置されているセンサー26a~26eから、水位、流量、薬品(塩素17など)投入量、汚泥量、脱水ケーキ量等の計測データを定期的に収集し、収集DB43に蓄積する。
【0028】
シミュレータ3は、図9に示すように、プラント1のプロセス毎のマスバランス及びコストに関する演算(シミュレーション)を実行する。即ち、シミュレータ3は、最初沈殿池12のプロセスでの演算(ステップS1)、汚水ポンプ11aのプロセスでの演算(ステップS2)、曝気槽13のプロセスでの演算(ステップS3)、最終沈殿池15のプロセスでの演算(ステップS4)、塩素混和池16のプロセスでの演算(ステップS5)、及び放流プロセスの演算(ステップS6)を順次実行する。
【0029】
また、シミュレータ3は、最初沈殿池12のプロセスに関連する汚泥濃縮槽(重力濃縮槽)18のプロセスの演算(ステップS7)、最終沈殿池15のプロセスに関連する汚泥濃縮機(遠心濃縮機)19のプロセスの演算(ステップS8)、消化槽20のプロセスでの演算(ステップS9)、及び脱水設備(脱水機)22,23のプロセスでの演算(ステップS10)を実行する。
【0030】
ここで、シミュレータ3は、相対的に前のプロセスでの演算結果を、次のプロセスでの演算の入力として流量、SS量、BOD量を与える。即ち、例えば、前のプロセスでの演算で算出された排出流量、排出SS量、排出BOD量は、次のプロセスでの演算入力である流入流量、流入SS量、流入BOD量として与えられる。
【0031】
図8は、各プロセスでの演算に必要な入力データ及び出力データの具体例を示す図である。なお、矢印は、各プロセスの演算における入出力関係を示す。即ち、同図(A)は、最初沈殿池12のプロセスでの演算に関する入出力データを示す。同図(B)は、汚水ポンプ11aのプロセスでの演算に関する入出力データを示す。同図(C)は、曝気槽13のプロセスでの演算に関する入出力データを示す。同図(D)は、最終沈殿池15のプロセスでの演算に関する入出力データを示す。同図(E)は、塩素混和池16のプロセスでの演算に関する入出力データを示す。
【0032】
図10は、各プロセスのそれぞれの演算手順を説明するためのフローチャートである。
【0033】
シミュレータ3は、各プロセス(例えば最初沈殿池12のプロセス)の演算処理では、前のプロセス、即ち収集DB43から流入水量、流入BOD量、及び流入SS量を入力する(ステップS21)。さらに、シミュレータ3は、プロセスDB46からSS除去率、BOD除去率、及び脱水率などを入力する(ステップS22)。SS除去率及びBOD除去率などは、例えば1ヶ月の流入BOD量、流入SS量、流出BOD量、流出SS量の履歴をプロセスDB46から取得して、それらの平均値を算出して演算に用いるものとする。
【0034】
シミュレータ3は、これらのデータからマスバランス演算部30での演算を実行し、排出流量「排出流量=流入流量-生汚泥量」、排出BOD量「排出BOD量=流入BOD量×(1-BOD除去率)」、及び排出SS量「排出SS量=流入BOD量×(1-SS除去率)」を計算する(ステップS23)。
【0035】
ここで、シミュレータ3は、薬品投入処理がないプロセスの場合には、土木DB41から池やタンクなどの定格容量(稼動池数、池の底面積等)を入力する(ステップS24のNo,S25)。これらのデータを使用して、シミュレータ3は、設備の使用台数や稼働率を算出する(ステップS26)。さらに、シミュレータ3は、機器DB45から定格電力量や力率を入力する(ステップS27)。
【0036】
シミュレータ3は、取得した定格電力量や力率を使用して、下記式(1)に示す計算式から使用電力量を算出する(ステップS28)。
【0037】
使用電力量=ΣT(ΣP(定格電力×効率))…(1)
但し、Tは稼動時間輪意味し、Pは例えば最初沈殿池12の設備を意味する。
【0038】
なお、シミュレータ3は、水面積負荷「水面積負荷=流入流量/稼動池数/池の底面積」も算出する。
【0039】
更に、シミュレータ3は、コストDB44から電力単価を入力し、この電力単価を使用して動力費(電力料金)を算出する(ステップS29,S30)。
【0040】
一方、シミュレータ3は、薬品投入処理を行うプロセスの場合には、コストDB44から薬品注入率を入力し、使用薬品量を算出する(ステップS24のYes,S33,S34)。さらに、シミュレータ3は、コストDB44から薬品単価を入力し、薬品費を算出する(ステップS35,S36)。
【0041】
また、シミュレータ3は、脱水設備(脱水機)22,23のプロセスで脱水ケーキが発生する場合には、コストDB44から汚泥処分単価を入力し、汚泥処分費を算出する(ステップS37のYes,S38,S39)。
【0042】
以上のようにして、シミュレータ3は、動力費(電力料金)、薬品費、汚泥処分費、排出流量、排出BOD量、排出SS量を算出する(ステップS31)。次に、シミュレータ3は、算出した排出流量、排出BOD量、排出SS量を、次のプロセスの演算入力として渡す処理を行う(ステップS32)。
・・・
【0045】
(運転コスト評価)
以上のように、シミュレータ3は、プラント1の各プロセスにおけるマスバランス演算に基づいて、下記式(4)~(6)により電力費(動力費)、薬品費、汚泥処分費を算出する。
【0046】
電力量=Σ(各プロセスの機器定格電力×力率)×(設備使用台数×稼働率)×電力単価…(4)
但し、設備使用台数×稼働率=流入流量/設備の定格容量
薬品費=流入流量×注入率×薬品単価…(5)
汚泥処分費=流入流量(1+薬品注入率)×脱水率×汚泥処分単価…(6)
そして、シミュレータ3は、最後に全プロセスの電力費、薬品費、汚泥処分費を合計して(但し、電力費には基本料金を加算)、プラント全体の電力費、薬品費、汚泥処分費を算出し、プラント1の運転コスト評価値として出力する。
【0047】
以上要するに本実施形態によれば、プラント1の各プロセスにおけるマスバランス演算に基づいて、各プロセスのコストを算出し、当該各プロセスのコストの合計をプラント1の運転コスト評価値として算出することができる。本実施形態では、シミュレータ3は、データベース4に蓄積されたプラントデータ(収集DBのデータ)及びそれ以外の各種データ(プラント機器や設備の仕様に関するデータなど)を使用してシミュレーション(マスバランス演算)を実行することにより、プラント1の運転コストを算出する。従って、実際のプラントだけでなく、例えばプラント機器や土木構造を任意に変更した場合でも、データベース4からその変更に対応するデータを選択することにより、変更仕様のプラントの運転コストを算出することができる。」
(エ) 「【図1】
[図:0001420371000004.jpg]
」
(オ) 「【図3】
[図:0001420371000005.jpg]
」
(カ) 「【図9】
[図:0001420371000006.jpg]
」
(キ) 「【図10】
[図:0001420371000007.jpg]
」
なお、甲第4~5号証の摘記は省略する。
(2) 本件発明7について
ア 対比
(ア) 本件発明7と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「最適運転制御装置」は、「燃料使用量、電力使用量や各薬剤の投入量などの現在の複数の使用エネルギー要素の使用量及び各薬剤の消費量を取得し、関係記録部に記録された基準関係と、汚泥エネルギー推定部が推定した最新の推定値である汚泥エネルギー値とに基づいて、全ランニングコスト算定部が算定した全ランニングコストが最小となる汚泥エネルギーの最適値に向かうように、すなわち、大小関係把握部が把握した汚泥エネルギーの最適値と汚泥エネルギー値との大小関係が解消する方向に向かうように、低含水化動作制御部により脱水機の使用電力量及び脱水助剤の投入量の増減を指示する」ものであり、そのような「最適運転制御装置」は、このような「プログラムを実行するプロセッサ」や「前記プログラムを記憶する記憶デバイス」を有するものといえるから、本件発明7における「プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有」する「汚泥処理管理装置」に相当する。
また、甲1発明における「汚泥の処理装置」は、その「低含水化設備」が「有機性廃棄物としての汚泥の含水率を増減可能に構成」されたものであり、「熱操作設備」が「汚泥に対して熱操作する」ものであるから、本件発明7における「汚泥を処理する汚泥処理システム」に相当する。
そして、甲1発明における「最適運転制御装置」は、「焼却される汚泥の含水率や可燃分などを計測することなく、汚泥の処理装置全体の全ランニングコストが最小値となる汚泥エネルギー値になるように低含水化設備の運転制御を行える」ものであるから、前記「汚泥の処理装置」に「アクセス可能」なものといえるので、本件発明7における「プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有し、汚泥を処理する汚泥処理システムにアクセス可能な汚泥処理管理装置」に相当する。
また、甲1発明の「汚泥の処理装置」の「低含水化設備」における「薬剤投入量」の「ランニングコスト」や、「使用エネルギー要素としての、モータなどの動力源と、脱水助剤を投入する脱水助剤投入器」の「エネルギー使用量」の「ランニングコスト」は、本件発明7における「前記汚泥処理システムで前記汚泥を脱水する脱水コスト」に相当し、「使用エネルギー要素としての」「ベルトコンベアなどの脱水汚泥搬送設備」の「エネルギー使用量」の「ランニングコスト」は、本件発明7における「前記汚泥処理システムから脱水汚泥を搬出する搬出コスト」に相当し、甲1発明において、「汚泥の低含水化・熱操作処理に関する複数の使用エネルギー要素ごとの各エネルギー使用量、各薬剤投入量の測定を行うとともに、測定された各エネルギー使用量、各薬剤投入量のそれぞれをランニングコストに変換する重み係数を乗算し、各乗算したコストの合算を行って全ランニングコストを算出する」ことは、本件発明7において、「プロセッサ」が「前記汚泥処理システムを運転する複数の運転条件の各々について、前記運転条件に基づいて、前記汚泥処理システムで前記汚泥を脱水する脱水コストと、前記汚泥処理システムから脱水汚泥を搬出する搬出コストと、を算出し、前記搬出コストと前記脱水コストとを加算した総合コストを算出する算出処理」「を実行」することに相当する。
(イ) 前記(ア)によれば、本件発明7と甲1発明とは、
「プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有し、汚泥を処理する汚泥処理システムにアクセス可能な汚泥処理管理装置であって、
前記プロセッサは、
前記汚泥処理システムを運転する複数の運転条件の各々について、前記運転条件に基づいて、前記汚泥処理システムで前記汚泥を脱水する脱水コストと、前記汚泥処理システムから脱水汚泥を搬出する搬出コストと、を算出し、前記搬出コストと前記脱水コストとを加算した総合コストを算出する算出処理を実行する汚泥処理管理装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1:「汚泥処理管理装置」が、本件発明7は、「前記複数の運転条件の各々について、前記運転条件で前記汚泥処理システムを運転した場合に前記汚泥処理システムの運転に関する制約条件を遵守するか否かを判定する判定処理と、前記制約条件を遵守した運転条件ごとの前記総合コストに基づいて、特定の運転条件を決定する決定処理と、前記決定処理によって決定された特定の運転条件を出力する出力処理と、を実行し、前記制約条件を入力する画面が表示される」、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は前記発明特定事項を有しない点。
なお、前記「判定処理」、「決定処理」、「出力処理」及び「制約条件を入力する画面」の「表示」は、いずれも、「制約条件」に起因した処理操作であるから、一体不可分のものといえるので、本件発明7と甲1発明の相違点は、前記相違点1のとおりに認定するのが妥当である。
イ 判断
(ア) 以下、前記(ア)イの相違点1の容易想到性について検討すると、前記のとおり、前記相違点1は、総じて「制約条件」に起因した相違点といえる。そこで、本件発明7における「制約条件」についてみると、本件特許明細書には、「制約条件」について下記2(1)イ、オの記載がある。
そして、前記記載からみれば、本件発明7の「制約条件」は、汚泥を脱水する汚泥処理システムの総合コストの算出に当たり遵守すべき条件であり、具体的な条件として、1人あたり最大労働時間、駆動機電流上限値、流入圧力上限値、流出圧力上限値、汚泥貯留槽容量、汚泥脱水ホッパー最大許容貯留重量、脱水汚泥の搬出予定時刻が挙げられるものである。
(イ) これに対して、前記(1)イ(ア)、(イ)の記載によれば、甲第2号証には、対象プロセスの状態を計測することのできる少なくとも一つのプロセスセンサと、対象プロセスの状態を変化させることができる少なくとも一つのアクチュエータと、対象プロセスヘの外部入力と、を有するプロセスを制御するプラントワイド最適プロセス制御装置において、前記プロセスセンサによって得られるプロセス計測値に基づいて前記アクチュエータを動作させ、プロセスのダイナミックな変動を望ましい特性を持つように補償するローカル制御部と、少なくとも前記プロセスの外部入力の物質量やエネルギー量などの保存量の保存則に関する静的な制約条件を設定する制約条件設定部と、運転コストや複数の制御性能を評価する評価関数を設定する最適評価関数設定部と、前記制約条件設定部によって設定された制約条件を入力し、前記最適評価関数設定部で設定された評価関数に基づいて、前記ローカル制御部の最適な目標値を供給する最適目標値演算部と、を備えたプラントワイド最適プロセス制御装置が記載されており、前記プラントワイド最適プロセス制御装置は、下水処理プロセス、排水処理プロセス、浄水プロセス、化学プロセスなどのプロセス系のためのプラントワイド最適プロセス制御装置に関するものである。
具体的には、同(ウ)~(オ)の記載によれば、前記プラントワイド最適プロセス制御装置は、2段循環式硝化脱窒プロセスとして構成された下水高度処理プロセス1に適用されるものであり、被処理水はまず最初沈澱池101に導入され、ここから順に、第1嫌気槽102、第1好気槽103、無酸素槽104、第2好気槽105、および最終沈澱池106を通って放水されるものである。
ここで、下水高度処理プロセス1は、アクチュエータとして、最初沈澱池101に最初沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ111を備え、同様に、第1嫌気槽102の出口と無酸素槽104との間にステップ流入ポンプ112、第1好気槽103に酸素を供給するブロワ113、第2好気槽105に酸素を供給するブロワ114、無酸素槽104に炭素源を供給する炭素源投入ポンプ115、第2好気槽105と無酸素槽104の間で非処理水を循環させる循環ポンプ116、最終沈澱池106の汚泥を最初沈澱池101に返送する返送汚泥ポンプ117、第2好気槽105に凝集剤を投入する凝集剤投入ポンプ118、および最終沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ119を備え、計測制御ためのプロセスセンサとして、第1好気槽103のアンモニア濃度を計測するアンモニアセンサ121、無酸素槽104の硝酸濃度を計測する硝酸センサ122、槽102~105の少なくとも一つの槽で活性汚泥量を計測するMLSSセンサ123、第2好気槽105のアンモニア濃度を計測するアンモニアセンサ124、第2好気槽105のリン酸濃度を計測するリン酸センサ125、最終沈澱池106から引き抜かれる汚泥のSS濃度を計測するSSセンサ126、最終沈澱池106から引き抜かれる余剰汚泥量を計測する流量センサ127、および流入下水のCOD、TN、TPなどの複数の水質要素と水量を計測できる下水流入センサ128を備え、各プロセスセンサ121~128によって計測された計測値は、プロセス計測データ収集部2によって収集され、保持されるものであり、プロセス計測データ収集部2は、第1~第7のデータ収集部21~27からなっており、プロセス計測データ収集部2によって収集された計測データはローカル制御部3に送出されるものである。
また、ローカル制御部3は、プロセス計測データ収集部2のデータ収集部21~27に1対1で対応する第1~第7のローカル制御回路31~37からなっており、ローカル制御回路31~37は、データ収集部21~27で収集されたプロセスデータと、最適目標値演算部6から供給される最適目標値とを入力とし、各アクチュエータ111~119の操作量を計算し決定するための制御ロジックからなっているものであり、最適目標値演算部6は、最適評価関数設定部4からプロセスの最適性を定量的に定義し設定した最適評価関数を、また制約条件設定部5から各種の制約値を、第8のデータ収集部28から下水流入センサ128によって計測された下水流入の各種水質と水量のデータをそれぞれ入力し、ローカル制御部3に対しその最適目標値を計算し送出するものであり、制約条件設定部5は、プロセスのマスバランスあるいはエネルギーバランス等の保存量に関する制約条件を設定する保存量制約設定部51、プロセスの出力である水質や水量の規制値などの制約条件を設定する出力制約設定部52、およびプロセスの入力である操作量のリミットや操作量変化率の制限値(Δリミット)などの制約条件を設定する操作量制約設定部53を備えているものである。
(ウ) そして、前記下水高度処理プロセス1は、まず、硝酸センサ122で計測された無酸素槽104の硝酸データを所定の周期でデータ収集部21,23,24に格納し、同様に、アンモニアセンサ121,124で各々計測された第1および第2の好気層103,105のアンモニア濃度データを所定の周期でデータ収集部22に格納し、MLSSセンサ123で計測されたMLSSデータをデータ収集部25に、リン酸センサ125で計測されたリン酸データをデータ収集部26に格納し、データ収集部27にはMLSSセンサ123で計測された第2の好気層103のMLSSデータとSSセンサ126で計測された余剰汚泥のSSデータと、流量センサ127で計測された余剰汚泥の引き抜き流量データとを、それぞれ格納するものであり、最適評価関数設定部4は、下水高度処理プロセス1の最適性を評価するための最適評価関数を設定するものであり、例えば、放流水の窒素やリンの負荷量に応じて賦課金を課すという考え方に従って、放流水質の向上を金額換算して放流水質コストとし、これと運転コストを同時に評価して評価関数Jを設定するものである。
次に、制約条件設定部5は、保存量制約設定部51、出力制約設定部52、および操作量制約設定部53の各々の制約条件を設定するものであり、保存量制約設定部51は、下水高度処理プロセス1の処理におけるマスバランスを考慮した微分方程式から導出される代数方程式による記述を行うものであり、出力制約設定部52は、例えば、出力である水質の規制値を設定したり、水質濃度など、決して負にはならないように制約条件を設定することができるものであり、操作量制約設定部53は、プロセスのアクチュエータが取り得る範囲内のリミット値を設定することができる制約条件を設定するものであり、最適目標値演算部6は、最適評価関数設定部4で設定した最適評価関数と、制約条件設定部5で設定した各種制約条件とに基づいて、アクチュエータ(112~119)の操作量を求めるローカル制御回路31~37に対する最適な目標値を計算するものであり、ローカル制御部3は、各種のアクチュエータの操作量を決定するものである。
そして、下水高度処理プロセス1は、そのようなプロセス制御を行うことで、放流水質コストと運転コストを最適化した最適下水処理制御装置を提供することができる、物質量保存制約条件があるために原理的に到達できないような目標値を与えてしまう危険を回避することができる、従来行われているローカル制御部の制御装置をそのまま利用して、シームレスにプラントワイドな下水処理プロセス制御装置を提供することができる、ローカル制御装置と最適目標値演算装置を独立に設定することができ、例えば、ローカル制御装置でプラントのロバスト性や安定性を考慮し、最適目標値演算装置でプラントのプラントワイドな最適化を図る、といった役割分担を明確化することができる、という効果を奏するものである。
(エ) 前記(イ)~(ウ)によれば、甲第2号証には、2段循環式硝化脱窒プロセスとして構成された下水高度処理プロセス1において、制約条件設定部5で設定した「制約条件」を遵守するように、各種のアクチュエータの操作量を決定して下水処理プロセス制御を行うことが記載されているといえるが、前記「制約条件」は、下水高度処理プロセスのマスバランスあるいはエネルギーバランス等の保存量に関する「制約条件」、プロセスの出力である水質や水量の規制値などの「制約条件」、及びプロセスの入力である操作量のリミットや操作量変化率の制限値(Δリミット)などの「制約条件」であって、これらは、いずれも、下水高度処理プロセスを実行する際に遵守すべき条件である。
ところが、甲1発明における「汚泥の処理装置」は、「焼却される汚泥の含水率や可燃分などを計測することなく、汚泥の処理装置全体の全ランニングコストが最小値となる汚泥エネルギー値になるように低含水化設備の運転制御を行」うものであって、前記「運転制御」の際に「制約条件」が必要となることは記載されていないし、下水高度処理プロセスを実行するものでもないから、甲1発明に、甲第2号証に記載された、下水高度処理プロセスを実行する際に遵守すべき「制約条件」を適用することはそもそも想定されないので、甲1発明に甲第2号証に記載された事項を組み合わせて適用する動機付けは存在しない。
また、甲第2号証に記載される前述の「制約条件」は、汚泥を脱水する汚泥処理システムの総合コストの算出に当たり遵守すべき条件である「制約条件」ではないから、仮に、甲1発明に甲第2号証に記載された事項を適用したとしても、甲1発明を、前記相違点1に係る本件発明7の発明特定事項を有するものとするには至らない。
なお、甲第2号証のプラントワイド最適プロセス制御装置は、下水高度処理プロセスのみならず、下水処理プロセス、排水処理プロセス、浄水プロセス、化学プロセスなどのプロセス系のためのものでもあるが、そうであるとしても、前記したのと同様の理由により、甲1発明に甲第2号証に記載された事項を適用する動機付けは存在しないこと、及び、甲1発明を、前記相違点1に係る本件発明7の発明特定事項を有するものとするには至らないことに変わりはない。
(オ) 前記(エ)によれば、摘記を省略した甲第4~5号証に記載された事項にかかわらず、本件発明7は、甲1発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3) 本件発明8について
ア 対比
前記(2)ア(ア)と同様にして本件発明8と甲1発明とを対比すると、本件発明8と甲1発明とは、
「プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有し、汚泥を処理する汚泥処理システムにアクセス可能な汚泥処理管理装置であって、
前記プロセッサは、
前記汚泥処理システムを運転する複数の運転条件の各々について、前記運転条件に基づいて、前記汚泥処理システムで前記汚泥を脱水する脱水コストと、前記汚泥処理システムから脱水汚泥を搬出する搬出コストと、を算出し、前記搬出コストと前記脱水コストとを加算した総合コストを算出する算出処理を実行する汚泥処理管理装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点2:「汚泥処理管理装置」が、本件発明8は、「前記複数の運転条件の各々について、前記運転条件で前記汚泥処理システムを運転した場合に前記汚泥処理システムの運転に関する制約条件を遵守するか否かを判定する判定処理と、前記制約条件を遵守した運転条件ごとの前記総合コストに基づいて、特定の運転条件を決定する決定処理と、前記決定処理によって決定された特定の運転条件の運転コストと任意の運転条件の運転コストとの比較結果と、を出力する出力処理と、を実行する」、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は前記発明特定事項を有しない点。
なお、前記(2)ア(イ)に記載したのと同様の理由により、本件発明8と甲1発明の相違点は前記相違点2のとおりに認定するのが妥当である。
イ 判断
(ア) 以下、前記アの相違点2の容易想到性について検討すると、前記相違点2は、総じて「制約条件」に起因した相違点といえる点で前記(2)ア(イ)の相違点1と共通するものであり、本件発明8における「制約条件」も、前記(2)イ(ア)に記載したとおりのものである。
(イ) これに対して、前記(1)ウ(ア)、(イ)の記載によれば、甲第3号証には、水処理プラントの各プロセスに対応するプラントデータを収集するデータ収集手段と、前記データ収集手段により収集された前記プラントデータ及び前記水処理プラントの運転に必要な各種データを蓄積するデータベース手段と、前記データベース手段に蓄積されたデータを使用して前記各プロセスでの運転コストを算出し、当該各プロセスの演算結果に基づいて前記水処理プラント全体の運転コストを評価するためのシミュレーションを実行する運転コストシミュレータとを具備した運転評価システムが記載されており、運転評価システムは、上下水道プラントなどの水処理プラントの運転コストを評価する運転評価システムに関するものである。
具体的には、同(ウ)~(キ)の記載によれば、前記運転評価システムは、上下水道プラント1から各種のプラントデータを収集するデータ収集装置2と、シミュレータ3と、データベース4と、入出力部5とを有するものであって、データ収集装置2は、プラント1の各設備(プラント機器)に設置されているセンサーから、流量、水位、電力量、薬品投入量、汚泥量、水質等の計測信号(ディジタルデータ)を定期的に収集するものであり、データベース4は、データ収集装置2から得られる各種のプラントデータを蓄積(記憶)する収集データベース(以下データベースをDBと表記する)43以外に、土木DB41、水質基準DB42、コストDB44、機器DB45、及びプロセスDB46を含み、土木DB41には、設備の項目名及び各項目の仕様(容量など)が蓄積され、水質基準DB42には、PH(酸性又はアルカリ性を示す数値)、COD(化学的酸素要求量:chemical oxygen demand)、BOD(生物化学的酸素要求量:biochemical oxygen demand)、SS(懸濁浮遊物質)などの項目名及びそれらの基準値が蓄積され、収集DB43には、各種のプラントデータの項目名及びそれらの計測値が蓄積され、コストDB44には、電力や薬品費等の項目名及びそれらの単価が蓄積され、機器DB45には、機器の名称及びそれらの定格電力や効率などが蓄積され、プロセスDB46では、池や設備毎のテンプレート(オブジェクト指向プログラミングでのクラス)等が定義され、入出力部5は、シミュレータ3の操作、データの入力、及びシミュレーション結果の表示出力などを実行するものである。
また、シミュレータ3は、システムのメイン要素であり、コンピュータのハードウェア及びソフトウェアにより構成されており、データベース4の各データに基づいてマスバランスの演算処理を実行するマスバランス演算部30を含み、プラント1の運転コストの評価に必要なシミュレーション(コスト演算)を実行するものであって、オペレータによる入出力部5からの命令にしたがって、定義された多数のプロセスのクラスからオブジェクトを作成するものであり、ユーザーインターフェースを介してオブジェクトを結合してマスバランス演算部30を構築すると共に、結合したオブジェクトのグループをプロセスDB46に蓄積するものであり、プロセスDB46からは、入出力部5からの命令により常に呼び出すことができるものである。
ここで、前記運転評価システムが適用されるプラント1は、上下水道プラントを想定して、水処理プロセスとして、沈砂池10と、汚水ポンプ11aと、最初沈殿池12と、曝気槽13と、最終沈殿池15と、塩素混和池16とを有し、曝気槽13に酸素を送り込むための送風機14が設けられ、塩素混和池16は、ポンプ11bにより薬品として塩素17が注入されるものであり、プラント1は、これらの反応槽でBODやSSを除去し、最初沈殿池12からは生汚泥を引き抜き、最終沈殿池15からは余剰汚泥を引き抜き、最終沈殿池15からの余剰汚泥の一部は、ポンプ11cにより曝気槽13に返送される。
更に、プラント1は、汚泥濃縮槽18と、汚泥濃縮機19と、消化槽20と、汚泥洗浄槽21と、脱水設備(FP:フィルタプレス式脱水機)22と、脱水設備(BP:ベルトプレス式脱水機)23とを有し、汚泥濃縮槽18には、ポンプ11dにより最初沈殿池12から生汚泥が送られ、汚泥濃縮機19には、ポンプ11gにより最終沈殿池15からの余剰汚泥が供給され、この汚泥濃縮機19からの濃縮汚泥は、ポンプ11fにより消化槽20に送られ、消化槽20には、汚泥濃縮槽18からの濃縮汚泥がポンプ11eにより送られ、消化槽20は、余剰ガス(消化ガス)を放出するものであり、汚泥洗浄槽21には、ポンプ11hにより消化槽20から消化された汚泥が送られ、また、汚泥洗浄槽21には、最終沈殿池15からの余剰汚泥が送られ、汚泥洗浄槽21により洗浄された汚泥は、ポンプiにより脱水設備(FP)22及び脱水設備(BP)23のそれぞれに送られ、脱水設備(FP)22は、ポンプ11jにより塩鉄、消石灰24が注入されて、脱水ケーキを放出するものであり、脱水設備(BP)23は、ポンプ11kにより凝集剤25が注入されて、脱水ケーキを放出するものである。
(ウ) そして、データ収集装置2がプラント1の各設備(プラント機器)に設置されているセンサー26a~26eから、水位、流量、薬品(塩素17など)投入量、汚泥量、脱水ケーキ量等の計測データを定期的に収集し、収集DB43に蓄積し、シミュレータ3(マスバランス演算部30)は、プラント1のプロセス毎のマスバランス及びコストに関する演算(シミュレーション)を実行するものである。
すなわち、シミュレータ3は、最初沈殿池12のプロセスでの演算(ステップS1)、汚水ポンプ11aのプロセスでの演算(ステップS2)、曝気槽13のプロセスでの演算(ステップS3)、最終沈殿池15のプロセスでの演算(ステップS4)、塩素混和池16のプロセスでの演算(ステップS5)、及び放流プロセスの演算(ステップS6)を順次実行するものであり、また、シミュレータ3は、最初沈殿池12のプロセスに関連する汚泥濃縮槽(重力濃縮槽)18のプロセスの演算(ステップS7)、最終沈殿池15のプロセスに関連する汚泥濃縮機(遠心濃縮機)19のプロセスの演算(ステップS8)、消化槽20のプロセスでの演算(ステップS9)、及び脱水設備(脱水機)22,23のプロセスでの演算(ステップS10)を実行するものである。
具体的には、シミュレータ3は、各プロセス(例えば最初沈殿池12のプロセス)の演算処理では、前のプロセス、即ち収集DB43から流入水量、流入BOD量、及び流入SS量を入力し(ステップS21)、プロセスDB46からSS除去率、BOD除去率、及び脱水率などを入力し(ステップS22)、これらのデータからマスバランス演算部30での演算を実行し、排出流量「排出流量=流入流量-生汚泥量」、排出BOD量「排出BOD量=流入BOD量×(1-BOD除去率)」、及び排出SS量「排出SS量=流入BOD量×(1-SS除去率)」を計算し(ステップS23)、薬品投入処理がないプロセスの場合には、土木DB41から池やタンクなどの定格容量(稼動池数、池の底面積等)を入力し(ステップS24のNo,S25)、これらのデータを使用して、設備の使用台数や稼働率を算出し(ステップS26)、機器DB45から定格電力量や力率を入力し(ステップS27)、取得した定格電力量や力率を使用して使用電力量を算出し(ステップS28)、コストDB44から電力単価を入力し、この電力単価を使用して動力費(電力料金)を算出する(ステップS29,S30)ものである。
一方、薬品投入処理を行うプロセスの場合には、シミュレータ3は、コストDB44から薬品注入率を入力し、使用薬品量を算出し(ステップS24のYes,S33,S34)、コストDB44から薬品単価を入力し、薬品費を算出し(ステップS35,S36)、脱水設備(脱水機)22,23のプロセスで脱水ケーキが発生する場合には、コストDB44から汚泥処分単価を入力し、汚泥処分費を算出して(ステップS37のYes,S38,S39)、動力費(電力料金)、薬品費、汚泥処分費、排出流量、排出BOD量、排出SS量を算出し(ステップS31)、算出した排出流量、排出BOD量、排出SS量を、次のプロセスの演算入力として渡す処理を行うものである(ステップS32)。
そして、シミュレータ3は、プラント1の各プロセスにおけるマスバランス演算に基づいて、電力費(動力費)、薬品費、汚泥処分費を算出し、最後に全プロセスの電力費、薬品費、汚泥処分費を合計して、プラント全体の電力費、薬品費、汚泥処分費を算出し、プラント1の運転コスト評価値として出力するものであり、そのような実施形態によれば、プラント1の各プロセスにおけるマスバランス演算に基づいて、各プロセスのコストを算出し、当該各プロセスのコストの合計をプラント1の運転コスト評価値として算出することができるものである。
(エ) 前記(イ)~(ウ)によれば、甲第3号証には、処理後の水を放流する上下水道プラントなどのプラント1を、水質基準DB42に蓄積されたPH(酸性又はアルカリ性を示す数値)、COD(化学的酸素要求量:chemical oxygen demand)、BOD(生物化学的酸素要求量:biochemical oxygen demand)、SS(懸濁浮遊物質)などの項目の基準値を遵守するように運転したとき、プラント1の各プロセスにおけるマスバランス演算に基づいて、各プロセスのコストを算出し、当該各プロセスのコストの合計をプラント1の運転コスト評価値として算出することが記載されているといえ、前記水質基準DB42に蓄積された基準値は、「制約条件」といえるのであるが、前記「制約条件」は、上下水道プラントなどの水処理プロセスにおいて遵守すべき「制約条件」である。
ところが、前記(2)イ(エ)に記載したのと同様の理由により、甲1発明に、甲第3号証に記載された、上下水道プラントなどの水処理プロセスを実行する際に遵守すべき「制約条件」を適用することはそもそも想定されないから、甲1発明に甲第3号証に記載された事項を組み合わせて適用する動機付けは存在しない。
また、甲第3号証に記載される前記「制約条件」は、汚泥を脱水する汚泥処理システムの総合コストの算出に当たり遵守すべき条件である「制約条件」ではないから、仮に、甲1発明に甲第3号証に記載された事項を適用したとしても、甲1発明を、前記相違点2に係る本件発明8の発明特定事項を有するものとするには至らない。
なお、甲第3号証の運転評価システムは、上下水道プラントのみならず、水処理プラントのためのものでもあるが、そうであるとしても、前記したのと同様の理由により、甲1発明に甲第3号証に記載された事項を適用する動機付けは存在しないこと、及び、甲1発明を、前記相違点2に係る本件発明8の発明特定事項を有するものとするには至らないことに変わりはない。
(オ) 前記(エ)によれば、摘記を省略した甲第4~5号証に記載された事項にかかわらず、本件発明8は、甲1発明及び甲第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4) 本件発明9~11について
本件発明9~11は、いずれも、本件発明7又は8の発明特定事項を有するものであるから、前記(2)イ(エ)、(3)イ(エ)に記載したのと同様の理由により、摘記を省略した甲第4~5号証に記載された事項にかかわらず、甲1発明、甲第2号証に記載された事項及び本件特許の出願時における周知技術に基づいて、又は、甲1発明、甲第3号証に記載された事項及び本件特許の出願時における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5) 小括
したがって、本件発明7~11は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び本件特許の出願時における周知技術に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証に記載された事項及び本件特許の出願時における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6) 申立人の主張について
ア 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)についての申立人の主張は、概略、以下のとおりである。
(ア) 甲第2号証の段落【0001】、【0086】、【0089】、【0090】、【0091】、【0093】、【0108】、【0109】、【0111】、【0174】、【図2】及び【図5】の記載からみれば、甲第2号証に記載された各水質センサの目標値は「制約条件」の1つであり、この目標値は、運転員が画面を用いて入力しているから、本件発明7の「制約条件」に関する発明特定事項が記載されている。
そして、甲第2号証に記載されたプロセスは汚泥の処理装置に用いられるものであるから、甲第1号証と技術分野を一にし、コストを算出して制御に用いるなどの点で両者の目的は同じであるので、甲第2号証に記載された事項を甲1発明に適用することは容易想到である。
したがって、本件発明7は甲1発明に甲第2号証に記載された事項を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ) 甲第3号証の段落【0001】、【0017】、【0027】、【0047】、【0048】、【0092】、【0095】、【0109】、【0111】、【0174】、【図3】、【図6】、【図22】及び【図25】の記載からみれば、甲第3号証には、水質基準DB42として、下水道法や県条例によって定められた水質の「制約条件」が記載されているから、本件発明8の「制約条件」に関する発明特定事項が記載されている。
そして、甲第3号証に記載されたプラントは汚泥(下水)の処理装置に用いられるものであるから、甲第1号証と技術分野を一にし、コストを算出して制御に用いるなどの点で両者の目的は同じであるので、甲第3号証に記載された事項を甲1発明に適用することは容易想到である。
したがって、本件発明8は甲1発明に甲第3号証に記載された事項を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 前記アの主張は、総じて、甲第2~3号証には、本件発明7及び8の「制約条件」に関する発明特定事項が記載されていることから、本件発明7及び8は、甲1発明及び甲第2~3号証から容易想到であることをいうものといえる。
ところが、甲第2~3号証に記載される「制約条件」は、汚泥を脱水する汚泥処理システムの総合コストの算出に当たり遵守すべき条件である「制約条件」ではないことは前記(2)イ(エ)及び(3)イ(エ)に記載したとおりであるから、甲第2~3号証に、本件発明7~8の「制約条件」に関する発明特定事項が記載されているとはいえないので、前記アの主張はいずれも採用できない。
(7) まとめ
よって、本件発明7~11に係る特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものとはいえないから、前記第3の1の特許異議の申立て理由はいずれも理由がない。
2 特許法第36条第6項第1号、第2号所定の規定違反(サポート要件違反、明確性要件違反)について
(1) 本件特許明細書の記載事項
本件特許明細書には、以下のア~オの記載がある。
ア 「【0011】
<システム構成例>
図1は、汚泥処理管理システムのシステム構成例を示す説明図である。汚泥処理管理システム100は、管理サーバ101と、汚泥処理システム102と、を有する。管理サーバ101および汚泥処理システム102は、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などのネットワーク103を介して通信可能に接続される。管理サーバ101は、汚泥処理システム102の系内を管理するコンピュータである。汚泥処理システム102は、水処理された汚泥120を処理するシステムである。
・・・
【0033】
<管理サーバ101のハードウェア構成例>
図2は、管理サーバ101のハードウェア構成例を示すブロック図である。管理サーバ101は、プロセッサ201と、記憶デバイス202と、入力デバイス203と、出力デバイス204と、通信インターフェース(通信IF)205と、を有する。プロセッサ201、記憶デバイス202、入力デバイス203、出力デバイス204、および通信IF205は、バス206により接続される。・・・入力デバイス203としては、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネル、テンキー、スキャナ、マイクがある。出力デバイス204は、データを出力する。出力デバイス204としては、たとえば、ディスプレイ、プリンタ、スピーカがある。通信IF205は、ネットワーク103と接続し、データを送受信する。
【0034】
<テーブルの構成例>
つぎに、図3~図17を用いて、管理サーバ101が読み書き可能なテーブル群の構成例について説明する。これらテーブル群は、たとえば、記憶デバイス202に記憶される。なお、以下のテーブル群におけるフィールドの各々について、その値が固定値、実測値、または、固定値および実測値のいずれか、が採用されるが、対象物によっては固定値(ただし、任意に設定変更可能)にしか設定できないフィールド(たとえば、フロック形成槽容量、電気代単価など)もあれば、経時的に変動する実測値しか設定できないフィールド(たとえば、水温、汚泥濃度など)もあれば、固定値および実測値のいずれでもよいフィールド(たとえば、凝集剤注入量や急速撹拌機回転数など)がある。」
イ 「【0041】
[制約条件テーブル]
図5は、制約条件テーブルの一例を示す説明図である。制約条件テーブル500は、制約条件を規定するテーブルである。制約条件は、汚泥処理システム102の総合コストの算出に当たり遵守すべき条件である。制約条件テーブル500は、フィールドとして、1人当たり最大労働時間501と、駆動機電流上限値502と、流入圧力上限値503と、流出圧力上限値504と、汚泥貯留槽容量505と、脱水汚泥ホッパー最大許容貯留重量506と、脱水汚泥の搬出予定時刻507と、を有する。」
ウ 「【図1】
[図:0001420371000008.jpg]
」
エ 「【図2】
[図:0001420371000009.jpg]
」
オ 「【図5】
[図:0001420371000010.jpg]
」
(2) サポート要件違反、明確性要件違反についての判断
ア 前記(1)ア、ウ、エの記載によれば、本件特許明細書には「汚泥処理管理システム」のシステム構成例が記載されており、前記「汚泥処理管理システム」は、管理サーバと汚泥処理システムを有するものであり、前記管理サーバは、記憶デバイスと入力デバイスを有するものであり、入力デバイスとして、タッチパネルが挙げられるものである。
そして、管理サーバが読み書き可能なテーブル群は、記憶デバイスに記憶されるものであり、前記テーブル群には、対象物によっては固定値(ただし、任意に設定変更可能)にしか設定できないフィールドがある。
また、前記(1)イ、オの記載によれば、汚泥管理システムは制約条件テーブルを有し、「制約条件」とは、汚泥を脱水する汚泥処理システムの総合コストの算出に当たり遵守すべき条件であり、具体的な条件として、1人あたり最大労働時間、駆動機電流上限値、流入圧力上限値、流出圧力上限値、汚泥貯留槽容量、汚泥脱水ホッパー最大許容貯留重量、脱水汚泥の搬出予定時刻が挙げられるものである。
そして、本件特許の出願日当時の技術常識からみて、これらの「制約条件」は、例えば固定値として、入力デバイスを介して前記管理サーバの記憶デバイスに記憶されて設定されるものといえるし、更に、本件特許明細書には、入力デバイスとしてタッチパネルが挙げられるものであり、タッチパネルは「画面が表示」される入力デバイスである。
イ そうすると、本件特許の出願日当時の技術常識を踏まえれば、本件特許明細書には、「汚泥処理管理システム」において、「制約条件」を入力する入力デバイスとして、タッチパネル、すなわち「画面が表示」される入力デバイスを使用することが記載されているといえるから、本件特許明細書には、「前記制約条件を入力する画面が表示される」ことが記載されているといえる。
ウ 前記イによれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、本件発明7における「前記制約条件を入力する画面が表示される」、との発明特定事項が明記されていないとしても、本件特許の出願日当時の技術常識を踏まえれば、前記発明特定事項が記載されているといえるので、本件発明7は前記発明の詳細な説明に記載された発明である。
エ また、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明7における「前記制約条件を入力する画面が表示される」、との発明特定事項が、1人あたり最大労働時間といった、前記汚泥処理システムの総合コストの算出に当たり遵守すべき条件である「制約条件」を、タッチパネル、すなわち「画面が表示」される入力デバイスに入力するものであることを理解できるから、本件発明7は明確である。
オ 前記ウ及びエによれば、本件発明7はサポート要件及び明確性要件に適合する。
(3) 小括
よって、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号所定の規定(サポート要件及び明確性要件)に適合するから、前記第3の2の特許異議の申立て理由は理由がない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、申立人の特許異議申立書に記載した特許異議の申立て理由によっては、本件発明7~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明7~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701129