特許異議申立
2024-701096
乗りかごおよびエレベーター
- 審判番号
- 2024-701096
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-542117
- 登録番号
- 7531722
- 請求日
- 2024年11月12日
- 審決日
- 2025年06月04日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社日立製作所
- 【権利者代理人】弁理士法人信友国際特許事務所
- 【異議申立人】角田 朗
- 審判長/審判官
- 審判長 小川 恭司
- 審判官 石井 孝明
- 審判官 山田 由希子
- 分類
- P1651.113-Y (B66B) / P1651.121-Y (B66B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7531722号発明「乗りかごおよびエレベーター」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7531722号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7531722号の請求項1~9に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)8月19日を国際出願日とする出願であって、令和6年8月1日にその特許権の設定登録がされ、令和6年8月9日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和6年11月12日に特許異議申立人角田朗(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和7年2月6日に申立人によって特許異議申立書の手続補正書が提出された。以下、当該補正後の特許異議申立書を「申立書」という。
第2 本件発明
特許第7531722号の請求項1~9に係る特許に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明9」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
一対の縦枠および前記一対の縦枠の下端部を連結する下枠を有するかご枠と、
かご床を支持するとともに、前記下枠に支持された床支持梁と、
前記かご床の下方に配置されたかご下プーリと、
前記床支持梁に固定されるとともに、前記かご下プーリを支持するプーリ支持部材と、
前記縦枠と前記床支持梁とを連結する連結部材と、を備え、
前記かご下プーリに巻き掛けられる主ロープによって前記プーリ支持部材および前記床支持梁に加わる上向きの力を、前記連結部材および前記縦枠で受ける構造になっている
乗りかご。
【請求項2】
前記連結部材は、前記かご下プーリの直上に配置されている
請求項1に記載の乗りかご。
【請求項3】
前記連結部材に取り付けられた異物混入防止カバーを備える
請求項2に記載の乗りかご。
【請求項4】
前記床支持梁は、閉断面構造を有する
請求項1に記載の乗りかご。
【請求項5】
前記床支持梁の一側面から突出する状態で前記一側面に固定された中間部材を備え、
前記連結部材は、前記中間部材を介して前記床支持梁に固定されている
請求項1に記載の乗りかご。
【請求項6】
前記連結部材の一部は、前記プーリ支持部材に固定されている
請求項1に記載の乗りかご。
【請求項7】
前記床支持梁の長手方向で前記縦枠と前記連結部材とを挟み込む一対の振れ止め部を備える
請求項1に記載の乗りかご。
【請求項8】
前記かご下プーリは、前記縦枠よりも前側または後ろ側に配置されている
請求項1に記載の乗りかご。
【請求項9】
昇降路を昇降する乗りかごを備え、
前記乗りかごは、
一対の縦枠および前記一対の縦枠の下端部を連結する下枠を有するかご枠と、
かご床を支持するとともに、前記下枠に支持された床支持梁と、
前記かご床の下方に配置されたかご下プーリと、
前記床支持梁に固定されるとともに、前記かご下プーリを回転可能に支持するプーリ支持部材と、
前記縦枠と前記床支持梁とを連結する連結部材と、を備え、
前記かご下プーリに巻き掛けられる主ロープによって前記プーリ支持部材および前記床支持梁に加わる上向きの力を、前記連結部材および前記縦枠で受ける構造になっている
エレベーター。
第3 特許異議申立理由の概要
申立人が主張する特許異議の申立ての理由は、概略、以下のとおりである。
本件発明1~2、6、8~9は甲第1号証記載の発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件発明1~2、4、6、8~9は甲第7号証記載の発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件発明1~2、5~6、8~9は甲第1号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、本件発明1~2、5~6、8~9は甲第1号証~甲第3号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、本件発明3は甲第1号証記載の発明及び甲第4号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、本件発明4は甲第1号証記載の発明及び甲第5号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、本件発明7は甲第1号証記載の発明及び甲第6号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるため、本件特許の請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきでものある。
本件発明1~2、4~6、8~9は甲第7号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、本件発明3は甲第7号証記載の発明及び甲第4号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、本件発明7は甲第7号証記載の発明及び甲第6号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるため、本件特許の請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきでものある。
(証拠方法)
甲第1号証:特開2011-42422号公報
甲第2号証:特開2010-241563号公報
甲第3号証:「エレベータの安全・快適技術」(船井潔)、国際交通安全学会誌、平成14年10月、Vol.27、No.2、P.31-39
甲第4号証:特許第5289115号公報
甲第5号証:特開2011-152991号公報
甲第6号証:特開平9-110340号公報
甲第7号証:国際公開2015/015637号
(以下、甲第1号証~甲第7号証をそれぞれ「甲1」~「甲7」という。)
第4 甲1~甲7の記載
1 甲1
(1)甲1には、次の記載がある(下線は、当審合議体が付したもの。)。
「【技術分野】
【0001】
この発明は、かご床の下面に一対の吊り車が設けられ、せり上げ方式により昇降路内を昇降されるせり上げ式エレベータのかごに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1の図1に示すような従来のせり上げ式エレベータのかごでは、かご枠の下梁(下枠、非常止め取付梁)の下側に設けられた吊り車取付梁(案内シーブ用支持枠)を介して、一対の吊り車(案内シーブ)がかごの底部に取り付けられている。この吊り車取付梁は、かごの重心を通る垂線と交わるように、下梁に対して水平方向で斜めに交差するように配置されている。
【0003】
また、例えば、特許文献1の図3に示すような従来のせり上げ式エレベータのかごでは、かご枠の下梁に隣り合うように下梁に対して平行に配置された吊り車取付梁を介して、一対の吊り車がかごの底部に取り付けられている。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の図1,3に示すような従来のせり上げ式エレベータのかごでは、いずれのものでも、下梁とは別に吊り車取付梁が用いられているため、部材点数が増加しており、製造コストが上昇していた。これとともに、吊り車の取付構造が大型化していた。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、吊り車取付梁を省略することができ、製造コストを低減させることができるとともに、吊り車取付構造の小型化を図ることができるせり上げ式エレベータのかごを得ることを目的とする。」
「【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるせり上げ式エレベータのかごを示す平面図である。図2は、図1の下梁6と第1縦柱7との連結箇所を拡大して示す側面図である。図3は、図1の下梁6と第1縦柱7との連結箇所を拡大して示す斜視図である。なお、図3では、枠体21を省略して示す。
図1~図3において、建物の昇降路には、第1及び第2ガイドレール(一対のガイドレール)1A,1Bが鉛直方向に沿って立てて設けられている。また、昇降路における第1及び第2ガイドレール1A,1B間には、かご本体2が設けられている。
【0011】
かご本体2は、かご枠3と、かご床4と、乗客を収容するためのかご室5とを有している。かご室5の正面部には、かご出入口5aと、かご出入口を開閉するかごドア装置50が設けられている。かご枠3は、上梁(図示せず)と、下梁(非常止め取付梁)6と、第1及び第2縦柱7,8とを有している。
【0012】
上梁は、かご室5の天井部に、第1ガイドレール1Aと第2ガイドレール1Bとを結ぶ線αに沿って配置されている。上梁の一端部と第1縦柱7の上端部とは、互いに連結されている。上梁の他端部と第2縦柱8の上端部とは、互いに連結されている。下梁6は、第1下梁部材9及び第2下梁部材10(一対の下梁部材)と、第1連結具11及び第2連結具12とを含んでいる。
【0013】
第1及び第2縦柱7,8は、それぞれガイドレール1A,1Bに対して平行に配置されている。第1縦柱7は、断面コ字状の形鋼によって形成されている。また、第1縦柱7は、コ字第1側面部7a、コ字第2側面部7b及びコ字中間面部7cを有している。第2縦柱8も、第1縦柱7と同様に、断面コ字状の形鋼によって構成されており、コ字第1側面部、コ字第2側面部及びコ字中間面部を有している。
【0014】
第1下梁部材9及び第2下梁部材10は、例えば、リップ溝形鋼である。また、第1下梁部材9及び第2下梁部材10は、一対のガイドレール1A,1Bのそれぞれを挟むように互いに間隔をおいて平行に配置されている。さらに、第1下梁部材9及び第2下梁部材10は、それぞれ上側フランジ部(上面部)9a,10aと、下側フランジ部(下面部)9b,10bと、ウェブ部(側面部)9c,10cとを有している。
【0015】
第1連結具11は、水平面部11aと、第1下梁接続部11bと、第2下梁接続部11cと、第1縦柱接続部11dと、第2縦柱接続部11eとを有している。水平面部11aの下面は、第1下梁部材9及び第2下梁部材10の上側フランジ部9a,10aの上面に沿って設けられている。
【0016】
第1及び第2下梁接続部11b,11cは、水平面部11aの第1ガイドレール1A側の端面に対して直交するように、鉛直方向に沿って配置されている。即ち、第1及び第2下梁接続部11b,11cは、図2の水平面部11aの上下と第1縦柱7の左方又は右方とへ張り出すように配置されている。
【0017】
また、第1下梁接続部11bにおける第1縦柱7のコ字第1側面部7aからの水平方向の張り出し寸法は、第2下梁接続部11cにおける第1縦柱7のコ字第2側面部7bからの水平方向の張り出し寸法よりも大きな寸法に設定されている。さらに、第1及び第2下梁接続部11b,11cにおける水平面部11aの下側は、第1下梁部材9及び第2下梁部材10のそれぞれの一端面に固定(融着)されている。さらに、第1及び第2下梁接続部11b,11cは、それぞれボルトとナット(図示せず)とによって、かご床4の側端面に接続されている。
【0018】
第1及び第2縦柱接続部11d,11eは、それぞれ水平面部11aの上面から上方へ突出するように設けられている。また、第1及び第2縦柱接続部11d,11eは、鉛直方向に沿って配置され、かつ互いに間隔をおいて対向配置されている。さらに、第1及び第2縦柱接続部11d,11eは、それぞれ複数のボルトと複数のナットとによって、第1縦柱7の下端部におけるコ字第1側面部7a及びコ字第2側面部7bに接続されている。第2連結具12の構成も、第1連結具11の構成と同様である。
【0019】
従って、第1下梁部材9及び第2下梁部材10の一端部同士(下梁6の一端部)と、第1縦柱7の下端部とは、第1連結具11を介して、いずれも連結されている。また、第1下梁部材9及び第2下梁部材10の他端部同士(下梁6の他端部)と、第2縦柱8の下端部とは、第2連結具12を介して、いずれも連結されている。
【0020】
下梁6の一端部には、第1非常止め機構20及び第1吊り車30が取り付けられている。下梁6の他端部には、第2非常止め機構(図示せず)及び第2吊り車31が取り付けられている。第1吊り車30及び第2吊り車31の外周面には、主ロープ40が巻き掛けられている。」
「【0025】
次に、第1吊り車30の取付構造について具体的に説明する。第1下梁部材9の下側フランジ部9bにおける下面には、第1Uボルト33Aと複数のナット34とによって、取付軸32の一端部が取り付けられている。第2下梁部材10の下側フランジ部10bにおける下面には、第2Uボルト33Bと複数のナット34とによって、取付軸32の他端部が取り付けられている。
【0026】
取付軸32の両端部には、図4に示すように、それぞれ平坦面32a,32bが設けられている。平坦面32aは、第1下梁部材9の下側フランジ部9bにおける下面に接している。平坦面32bは、第2下梁部材10の下側フランジ部10bにおける下面に接している。第1Uボルト33A及び第2Uボルト33BのU字の中間部における内周面は、取付軸32の外周面に接している。ここで、第1下梁部材9の下側フランジ部9bと、第2下梁部材10の下側フランジ部10bとには、それぞれ一対の挿入孔(図示せず)が設けられている。
【0027】
第1Uボルト33Aの両端部は、第1下梁部材9の下側フランジ部9bの一対の挿入孔に挿入されている。第2Uボルト33Bの両端部は、第2下梁部材10の下側フランジ部10bの一対の挿入孔に挿入されている。即ち、第1Uボルト33Aの両端部は、第1下梁部材9の下側フランジ部9bを貫通するように設けられており、第2Uボルト33Bの両端部は、第1下梁部材9の下側フランジ部9bと第2下梁部材10の下側フランジ部10bとを貫通するように設けられている。また、第1Uボルト33A及び第2Uボルト33Bの両端部には、ねじ山が形成されており、ナット34が螺合されている。
【0028】
第1吊り車30は、取付軸32に回転自在に取り付けられている。つまり、第1吊り車30は、取付軸32、第1Uボルト33A及び第2Uボルト33Bを介して、下梁6の一端部における第1下梁部材9及び第2下梁部材10の下側フランジ部9b,10bのそれぞれの下面に取り付けられている。なお、第2吊り車31の取付構造も、第1吊り車30の取付構造と同様であり、第2吊り車31は、取付軸35、第3Uボルト33C及び第4Uボルト33Dを介して、下梁6の他端部における第1下梁部材9及び第2下梁部材10の下側フランジ部9b,10bのそれぞれの下面に取り付けられている。
【0029】
上記のような実施の形態1のせり上げ式エレベータのかごによれば、第1吊り車30及び第2吊り車31のそれぞれが、第1非常止め機構20及び第2非常止め機構のそれぞれに隣り合うように、第1下梁部材9と第2下梁部材10との間に取り付けられている。この構成により、吊り車取付梁を省略することができ、製造コストを低減させることができるとともに、第1吊り車30及び第2吊り車31の取付構造の小型化(コンパクト化)を図ることができる。これに加えて、吊り車取付梁が不要となることから、かご本体2の重量の軽量化を図ることができる。」
「【図1】
[図:0001424604000001.jpg]
【図2】
[図:0001424604000002.jpg]
【図3】
[図:0001424604000003.jpg]
【図4】
[図:0001424604000004.jpg]
」
(2)上記記載から、甲1には次の技術的事項が記載されていると認められる。
ア 甲1のせり上げ式エレベータのかごは、製造コストを低減させ小型化を図るために、下梁とは別に用いられていた吊り車取付梁を省略し、その結果、製造コストを低減させ小型化を図ることに加えて軽量化を図ることができたものである(【0005】~【0006】、【0029】)。
イ かご枠3は、上梁と、下梁6と、第1及び第2縦柱7、8とを有しており、下梁6は、第1下梁部材9及び第2下梁部材10と、第1連結具11及び第2連結具12とを含んでいる(【0011】~【0012】)。
ウ 第1下梁部材9及び第2下梁部材10の一端部同士と、第1縦柱7の下端部とは、第1連結具11を介して、いずれも連結されており、第1下梁部材9及び第2下梁部材10の他端部同士と、第2縦柱8の下端部とは、第2連結具12を介して、いずれも連結されている(【0019】)。
したがって、第1下梁部材9及び第2下梁部材10は、第1及び第2縦柱7、8の下端部を、第1連結具11及び第2連結具12を介して連結している。
エ かご床4の側端面は、第1連結具11に接続されている(【0015】、【0017】)。
オ 下梁6の一端部に第1吊り車30が取り付けられており、下梁6の他端部に第2吊り車31が取り付けられており(【0020】)、図1~図3より、第1吊り車30及び第2吊り車31はかご床4の下方に配置されていることが看取される。
カ 第1下梁部材9の下側フランジ部9bにおける下面には、第1Uボルト33Aと複数のナット34とによって、取付軸32の一端部が取り付けられており、第2下梁部材10の下側フランジ部10bにおける下面には、第2Uボルト33Bと複数のナット34とによって、取付軸32の他端部が取り付けられており、第1吊り車30は、取付軸32に回転自在に取り付けられている(【0025】、【0028】)。
キ 【0025】には、第2吊り車31の取付構造も、第1吊り車30の取付構造と同様である旨が記載されており、【0025】、【0028】、図1の記載より、第1下梁部材9の下側フランジ部9bにおける下面には、第3Uボルト33Cと複数のナットとによって、取付軸35の一端部が取り付けられており、第2下梁部材10の下側フランジ部10bにおける下面には、第4Uボルト33Dと複数のナットとによって、取付軸35の他端部が取り付けられており、第2吊り車31は、取付軸35に回転自在に取り付けられていることが理解できる。
ク 上記キ及びクより、第1Uボルト33A、第2Uボルト33B、複数のナット34、取付軸32、第3Uボルト33C、第4Uボルト33D、複数のナット、及び取付軸35は、第1下梁部材9及び第2下梁部材10に、第1吊り車30及び第2吊り車31を、回転自在に取り付けている。
ケ 第1吊り車30及び第2吊り車31の外周面には、主ロープ40が巻き掛けられており(【0020】)、図1~図3より、主ロープ40から第1吊り車30及び第2吊り車31に上向きの力が加えられることが理解できる。
コ 上記ウ、エ、カ、キ及びケ、並びに図3~図4より、第1吊り車30に加えられた上向きの力は、取付軸32を経由して第1下梁部材9及び第2下梁部材10に伝わり、第2吊り車31に加えられた上向きの力は、取付軸35を経由して第1下梁部材9及び第2下梁部材10に伝わり、第1下梁部材9及び第2下梁部材10から第1連結具11を介して第1縦柱7やかご床4に伝わり、第1下梁部材9及び第2下梁部材10から第2連結具12を介して第2縦柱8に伝わることが理解できる。
サ せり上げ式エレベータのかごは昇降路内を昇降する(【0001】)。
以上を総合すると、甲1には、次の2つの発明(以下、それぞれ、「甲1発明1」、「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明1]
第1及び第2縦柱7、8と、前記第1及び第2縦柱7、8の下端部を、第1連結具11及び第2連結具12を介して連結している第1下梁部材9及び第2下梁部材10を含むかご枠3と、
かご床4の下方に配置された第1吊り車30及び第2吊り車31と、
前記第1下梁部材9及び前記第2下梁部材10に、前記第1吊り車30及び前記第2吊り車31を取り付ける第1Uボルト33A、第2Uボルト33B、複数のナット34、取付軸32、第3Uボルト33C、第4Uボルト33D、複数のナット、及び取付軸35と、
前記第1及び第2縦柱7、8と前記第1下梁部材9及び前記第2下梁部材10並びに前記かご床4とを連結する前記第1連結具11及び前記第2連結具12と、を備え、
前記第1吊り車30及び前記第2吊り車31に巻き掛けられる主ロープ40によって前記第1Uボルト33A、前記第2Uボルト33B、前記複数のナット34、前記取付軸32、前記第3Uボルト33C、前記第4Uボルト33D、前記複数のナット、及び前記取付軸35に加わる上向きの力を、前記第1下梁部材9及び前記第2下梁部材10に伝え、前記第1下梁部材9及び前記第2下梁部材10から前記第1連結具11を介して前記第1縦柱7や前記かご床4に伝え、前記第1下梁部材9及び前記第2下梁部材10から前記第2連結具12を介して前記第2縦柱8に伝える
かご本体2。」
[甲1発明2]
昇降路を昇降するかご本体2を備え、
かご本体2は、
第1及び第2縦柱7、8と、前記第1及び第2縦柱7、8の下端部を、第1連結具11及び第2連結具12を介して連結している第1下梁部材9及び第2下梁部材10を含むかご枠3と、
かご床4の下方に配置された第1吊り車30及び第2吊り車31と、
前記第1下梁部材9及び前記第2下梁部材10に、前記第1吊り車30及び前記第2吊り車31を回転自在に取り付ける第1Uボルト33A、第2Uボルト33B、複数のナット34、取付軸32、第3Uボルト33C、第4Uボルト33D、複数のナット、及び取付軸35と、
前記第1及び第2縦柱7、8と前記第1下梁部材9及び前記第2下梁部材10並びに前記かご床4とを連結する前記第1連結具11及び前記第2連結具12と、を備え、
前記第1吊り車30及び前記第2吊り車31に巻き掛けられる主ロープ40によって前記第1Uボルト33A、前記第2Uボルト33B、前記複数のナット34、前記取付軸32、前記第3Uボルト33C、前記第4Uボルト33D、前記複数のナット、及び前記取付軸35に加わる上向きの力を、前記第1下梁部材9及び前記第2下梁部材10に伝え、前記第1下梁部材9及び前記第2下梁部材10から前記第1連結具11を介して前記第1縦柱7や前記かご床4に伝え、前記第1下梁部材9及び前記第2下梁部材10から前記第2連結具12を介して前記第2縦柱8に伝える
せり上げ式エレベータ。」
2 甲2
(1)甲2には、次の記載がある(下線は、当審合議体が付したもの。)。
「【0016】
図1において、主索1によってつり下げられたかご2は、主索1に連結されたかご枠3と、かご枠3によって支持されて扉4によって開閉される出入り口5を持つかご室6とを備えている。かご室6は、出入り口5が設けられた前壁7と、後壁8と、2枚の側壁9と、かご天井を構成する頂壁10と、かご床である底壁11とを備えており、出入り口5の敷居12の下方にはエプロン13が設けられている。
【0017】
かご枠3は、矩形の枠体に組み立てられた上枠14と、下枠15と、2本の平行な柱枠16と、下枠15によって支持されてかご室6の底壁11を支持するかご床支持枠17とを備えている。上枠14と、下枠15と、柱枠16とは、いずれも断面がU字型の溝型鋼で構成されていている。柱枠16の上下の端部にはガイドシュー18が設けられていて、かご枠3が図示してないガイドレールに沿って案内されながら昇降できるようにされている。柱枠16は、溝型鋼のウエブ部19が互いに対向して間にかご室6を収容する開口20を形成し、フランジ部21が他方の柱枠16から遠ざかる方向に延びた状態となるように配置されている。
【0018】
このようなエレベータにおいて、かご枠3のかご床支持枠17とかご室6の底壁11との間には下部防振装置23が設けられており、またかご枠3の柱枠16とかご室6の側壁9の頂部との間にはこの発明の上部防振装置であるエレベータ振れ止め装置24が設けられている。これらの下部防振装置23およびエレベータ振れ止め装置24は、エレベータのかご枠3とかご室6との間の相対的振動あるいは揺動を吸収あるいは減衰させるのものである。下部防振装置23は主として上下方向すなわちかご2の昇降方向の振動を吸収するものであり、上部防振装置であるエレベータ振れ止め装置24は主として水平方向すなわちかご2の出入り口5を手前として前後方向の振動と左右両側への横方向の振動とを吸収するものである。」
「【図1】
[図:0001424604000005.jpg]
」
(2)上記記載から、甲2には次の技術的事項が記載されていると認められる。
ア かご2は、かご枠3と、かご室6とを備えており、かご室6は、前壁7と、後壁7と、2枚の側壁9と、頂壁10と、かご床である底壁11とを備えている(【0016】)。
イ かご枠3は、矩形の枠体に組み立てられた上枠14と、下枠15と、2本の平行な柱枠16と、下枠15によって支持されてかご室6の底壁11を支持するかご床支持枠17とを備えている(【0017】)。
ウ かご枠3のかご床支持枠17とかご室6の底壁11との間には、主として上下方向の振動を吸収するための下部防振装置23が設けられている(【0018】)。
以上を総合すると、甲2には次の技術的事項が記載されていると認められる。
[甲2記載の技術的事項]
上枠14と、下枠15と、2本の平行な柱枠16を矩形の枠体に組み立てたかご枠3と、
かご床である底壁11を、下部防振装置23を介して支持するかご床支持枠17であって、下枠15によって支持されているかご床支持枠17と、を備える
かご2。
3 甲3
(1)甲3には、次の記載がある(下線は、当審合議体が付したもの。)。
「
[図:0001424604000006.jpg]
」
「
[図:0001424604000007.jpg]
」
(2)上記記載から、甲3には次の技術的事項が記載されていると認められる。
ア かご室とかご枠の間に、かご防振ゴムを設けている、かご構造(第36頁右欄第25行~第28行、図8)。
イ 図8より、かご枠は、一対の縦枠、および、一対の縦枠の下端部を連結するかご枠の下部分を有していることが看取される。
ウ 図8より、かご枠の下部分は、かご防振ゴムを介して、かごの底壁を支持していることが看取される。
以上を総合すると、甲3には次の技術的事項が記載されていると認められる。
[甲3記載の技術的事項]
一対の縦枠、および、一対の縦枠の下端部を連結するかご枠の下部分を有するかご枠を備えるかご構造であって、
かごの底壁を、かご防振ゴムを介して支持するかご枠の下部分を有する
かご構造。
4 甲4
甲4には、次の記載がある(下線は、当審合議体が付したもの。)。
「【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエレベータ装置を示す斜視図である。図において、昇降路1内には、一対のかごガイドレール2及び一対の釣合おもりガイドレール3が設置されている。各かごガイドレール2間にはかご(昇降体)4が配置され、各釣合おもりガイドレール3間には釣合おもり(昇降体)5が配置されている。」
「【0016】
かご4の下部には、かご吊り車10と懸架体6との間の隙間への異物の侵入を防止するカバー装置17が各かご吊り車10について個別に取り付けられている。各カバー装置17は、かご吊り車10の近傍に配置されている。」
5 甲5
甲5には、次の記載がある(下線は、当審合議体が付したもの。)。
「【0020】
エレベータのかご枠1-1は、図示しない昇降路内を昇降するものであり、一対の滑車13(13a,13b)を介してロープ30に支持されている。ロープ30は、かご枠1-1を鉛直方向に牽引するものであり、公知の巻揚げ機等とかご枠1-1とを接続している。巻揚げ機等が駆動されることで、ロープ30に支持されてかご枠1-1が鉛直方向に昇降する。以下の説明において、特に記載しない限り、上下方向とは鉛直方向の上下方向を示すものとする。かご枠1-1は、下部に支持部10を備える。支持部10は、かご枠1-1の内側に設けられる図示しないかご室の床を下方から支持するものである。支持部10は、鉛直方向と直交する第一方向に延在する第一方向部材11(11a,11b)と、鉛直方向および第一方向のそれぞれと直交する第二方向に延在する一対の第二方向部材12(12a,12b)とを有する。第一方向および第二方向は、例えば、かご枠1-1の幅方向と奥行方向とすることができる。第一方向部材11、第二方向部材12を含め、かご枠1-1を構成する部材としては、例えば、棒状やパイプ状の部材を用いることができる。また、部材同士の接続における接合方法は、例えば剛接合とすることができる。」
6 甲6
甲6には、次の記載がある(下線は、当審合議体が付したもの。)。
「【0016】一方、かご室6の上部とたて枠2との間に防振体15を挿入し、両者間の相対的な位置を規制し、下枠14上の防振体4と前記防振体15とによってたて枠2および下枠14(下はり3も含む)に対してかご床5とともにかご室6を支持している。したがって、この防振体15には、あらかじめ負荷が加わった状態になっている。また、上記のように防振体4上にかご床5を乗せただけでは、かご床5に対して水平方向の規制力が加わらないので、たて枠2とかご床5との間には、水平方向の位置を規制するための振れ止め16を設け、防振体14で垂直方向の荷重のみを受けることができるようにしてある。」
7 甲7
(1)甲7には、次の記載がある(下線は、当審合議体が付したもの。)。
「[0004] 従来のせり上げ式エレベータでは、防振部材は、吊り車組立体を防振しつつ高さを抑えるために、吊り車の上部からかご室の中心側に変位した位置に配置されていた。そこで、吊り荷重が吊り車の軸を介して吊り車梁に作用する位置と、吊り車梁をかご室の下面に支持する位置とが異なり、吊り車梁に曲げモーメントが発生する。このため、吊り車梁の板厚を厚くし、あるいは高さを高くして、吊り車梁の剛性を高める必要があり、吊り車組立体の高コスト化および重量化を招くという課題があった。
[0005] この発明は、上記課題を解決するためになされたもので、吊り車組立体のかご室の下面から突出高さを抑えつつ、吊り車梁に作用する曲げモーメントの発生を抑え、低コスト化および軽量化を図ることができるせり上げ式エレベータを得ることを目的とする。」
「[0011] 実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るせり上げ式エレベータにおけるかごの全体構成を説明する側面図、図2はこの発明の実施の形態1に係るせり上げ式エレベータにおけるかご室下部への吊り車組立体の取付構造を説明する側面図、図3はこの発明の実施の形態1に係るせり上げ式エレベータにおけるかご室下部への吊り車組立体の取付構造を説明する正面図、図4はこの発明の実施の形態1に係るせり上げ式エレベータにおけるかご室下部への吊り車組立体の取付構造を説明する要部断面図、図5はこの発明の実施の形態1に係るせり上げ式エレベータにおける工場出荷時の吊り車組立体を示す断面図、図6はこの発明の実施の形態1に係るせり上げ式エレベータにおけるかご内積載量が過負荷となった状態の吊り車組立体周りを示す要部断面図である。
[0012] 図1において、せり上げ式エレベータにおけるかご1は、かご室2と、かご室2を支持するかご枠4と、かご室2の下部に配設された吊り車組立体10と、を備えている。
[0013] かご床3は、積載荷重を載せる床板3aと、床板3aの下面に配設されて床板3aのたわみを補強する床梁3bと、床梁3bを挟んで床板3aと相対するように配設された下板3cと、を備えている。
[0014] かご枠4は、かご室2の真下に間口方向に延びて配設され、かご床3にかかる荷重を支持する下梁5と、下梁5の両端部に固定されてかご室2の両側に直立する一対の縦柱6と、一対の縦柱6の上端部間を連結する上梁7と、を備える。ここでは、下梁5は、コ字状の基部5aと、基部5aのコ字状の両開口端から両側に突出するフランジ部5bと、を備え、かご室2が、かご床3の下板3cを下梁5のフランジ部5bに直接ボルトなどにより固定されて、かご枠4に支持されている。
[0015] 吊り車組立体10は、下梁5のフランジ部5bの下面に防振ゴム14を介して、基部5aに近接して、かつ平行に配設されている。そして、ロープ9が、かご1の間口方向の一側からかご床3の下部を通り間口方向の他側に至るように一対の吊り車12に掛け渡されて、かご1を吊っている。
[0016] つぎに、吊り車組立体10の構成を図2から図6に基づいて具体的に説明する。
[0017] 吊り車組立体10は、それぞれ、鋼板を曲げ成形して基部11aとフランジ部11bからなるL字状に作製され、フランジ部11bを外側に向けて基部11aを対向させて配置される一対の吊り車梁11と、それぞれ、軸12aを一対の吊り車梁11の基部11aの長さ方向の両端部に回転可能に支持されて、長さ方向の外側、および上下方向に突出するように、一対の吊り車梁11間に配設される一対の吊り車12と、を備える。なお、吊り車12の軸12aは下梁5の長手方向に直交し、かつ水平となっている。
[0018] 一対の吊り車梁11は、フランジ部11bを外側に向けて基部11aを対向させて配置され、フランジ部11bの長さ方向の両端部の上面間のそれぞれに渡された連結板13をフランジ部11bに接合して、一体に構成されている。図2に示されるように、連結板13の長さ方向の中央部が開口しており、吊り車12の一部がその開口部13aを通って上方に突出している。防振ゴム14は、吊り車12の開口部13aからの突出部を挟んで連結板13上に配置される。そして、吊り車組立体10がかご床3の下板3cに固定された下梁5のフランジ部5bの下面に防振ゴム14を介して配設され、かご室2が吊り車組立体10に防振支持される。」
「[0040] 実施の形態2.
図7はこの発明の実施の形態2に係るせり上げ式エレベータにおける吊り車周りを示す要部側面図、図8はこの発明の実施の形態2に係るせり上げ式エレベータにおける吊り車周りを示す要部正面図である。なお、図8では、便宜上、吊り車を二点鎖線で示している。
[0041] 図7および図8において、かご床3Aは、積載荷重を載せる床板3aと、床板3aの下面に配設されて床板3aのたわみを補強する床梁3bと、床板3aの間口方向の両側部の下面に取り付けられた床枠側梁3dと、を備える。なお、床板3aの間口方向の側部とは、床板3aのかごガイドレール(図示せず)に面する側部である。
[0042] 床枠側梁3dは、コ字状の断面形状に作製され、コ字状の開口をかご室2の中心側に向けて床板3aの下面に取り付けられている。そして、吊り車収納部30が、床枠側梁3dのコ字状の反開口側に位置する主部の下部側および下側部の一部を切り欠いて形成されている。荷重支持部材32は、床枠側梁3dと同じコ字状の断面形状に作製され、切り欠き部33が、荷重支持部材32のコ字状の主部の下部側および下側部の一部を切り欠いて形成されている。荷重支持部材32は、床枠側梁3dに形成された切り欠き31に切り欠き33を合わせて、コ字状の主部をかご室2の中心側に向けて床枠側梁3dに嵌合される。床枠側梁3dおよび荷重支持部材32は、上側部同士および下側部同士がそれぞれ接した状態で、溶接などにより接合されている。さらに、コ字状の補強部材34が、コ字状の開口を下方に向けて切り欠き33から挿入され、床枠側梁3dおよび荷重支持部材32に溶接などにより接合されている。
[0043] これにより、吊り車収納部30の上部は、床枠側梁3d、荷重支持部材32および補強部材34により、断面が四角く閉じられた、いわゆる閉断面構造に構成されている。
[0044] かご室2は、かご床3Aの床枠側梁3dの下側部を下梁5のフランジ部5bに直接ボルトなどにより固定されて、かご枠4に支持されている。
防振ゴム14は、吊り車12の開口部13aからの突出部を挟んで連結板13上に配置される。そして、吊り車組立体10が、かご床3Aの床枠側梁3dに固定された下梁5のフランジ部5bの下面に防振ゴム14を介して配設され、かご室2が吊り車組立体10に防振支持される。
[0045] 吊り車組立体10は、下梁5のフランジ部5bの下面に防振ゴム14を介して、基部5aに近接して、かつ平行に配設されている。吊り車12の開口部13aからの突出部は、吊り車収納部30内に収納される。そして、ロープ9が、かご1の間口方向の一側からかご床3Aの下部を通り間口方向の他側に至るように一対の吊り車12に掛け渡されて、かご1を吊っている。
[0046] ボルト15は、図示していないが、フランジ部11bに形成された雌ねじ部に下方から螺着され、ロックナット16を下面側から締着して、フランジ部11bに固定されている。そして、ボルト15は、連結板13、下梁5のフランジ部5b、およびかご床3Aの床枠側梁3dの下側部を遊嵌状態に貫通して床枠側梁3d内に突出している。上ストッパ17がボルト15の床枠側梁3dの下側部の上部側に固定されている。下ストッパ18がボルト15のフランジ部5bの下部側に固定されている。
なお、他の構成は、上記実施の形態1と同様に構成されている。」
「[図1]
[図:0001424604000008.jpg]
[図2]
[図:0001424604000009.jpg]
[図3]
[図:0001424604000010.jpg]
」
「[図7]
[図:0001424604000011.jpg]
[図8]
[図:0001424604000012.jpg]
」
(2)甲7の[0040]~[0046]には実施の形態2が記載されており、[0046]には「なお、他の構成は、上記実施の形態1と同様に構成されている。」と記載されていることから、[0040]~[0046]に記載されていない構成については実施の形態1に関する記載を参酌すると、上記(1)の記載から、甲7には次の技術的事項が記載されていると認められる。
ア かご1は、かご室2と、かご室2を支持するかご枠4と、かご室2の下部に配設された吊り車組立体10と、を備えている([0012])。
イ かご枠4は、下梁5と、下梁5の両端部に固定されてかご室2の両側に直立する一対の縦柱6と、一対の縦柱6の上端部間を連結する上梁7とを備える([0014])。
ウ 図1~図2より、縦柱6の下方に下梁5が配置されることが看取されるから、上記イを参酌すると、下梁5は、一対の縦柱6の下端部間を連結していることは明らかである。
エ かご床3Aは、積載荷重を載せる床板3aと、床板3aの下面に配設されて床板3aのたわみを補強する床梁3bと、床板3aの間口方向の両側部の下面に取り付けられた床枠側梁3dと、を備え、かご室2は、かご床3Aの床枠側梁3dの下側部を下梁5のフランジ部5bに直接ボルトなどにより固定されて、かご枠4に支持されている([0041]、 [0044])。
してみると、下梁5が床枠側梁3dを支持し、床枠側梁3dが床板3aを支持することで、かご室2は、かご枠4に支持されていると理解できる。
オ 吊り車組立体10は、一対の吊り車梁11と、それぞれ、軸12aを一対の吊り車梁11の基部11aの長さ方向の両端部に回転可能に支持されて、一対の吊り車梁11間に配設される一対の吊り車12と、を備える([0017])。
カ 図3、図7~図8より、一対の吊り車12は、床板3aの下方に配置されることが看取される。
キ 吊り車組立体10が、かご床3Aの床枠側梁3dに固定された下梁5のフランジ部5bの下面に防振ゴム14を介して配設され、かご室2が吊り車組立体10に防振支持される。([0044])
ク 一対の吊り車梁11は、連結板13を接合することで、一体に構成されており、防振ゴム14は連結板13上に配置される([0017])。
ケ 上記エ~オ及びキ~クより、一対の吊り車12は一対の吊り車梁11に回転可能に支持され、一対の吊り車梁11は連結板13により一体に構成され、連結板13が防振ゴム14、下梁5、及び、床枠側梁3dを介して床板3aを支持することで、かご室2が吊り車組立体10に防振支持されると理解できる。
コ ロープ9が一対の吊り車12に掛け渡されて、かご1を吊っており([0045])、図1及び図7より、ロープ9から一対の吊り車12に上向きの力が加えられることが理解できる。
サ 上記エ、ケ及びコ、並びに、図1~図3及び図7~図8より、一対の吊り車12に加えられた上向きの力は、一対の吊り車梁11、連結板13及び防振ゴム14を経由して下梁5に伝わり、下梁5に加えられた上向きの力は、床枠側梁3dに伝わることが理解できる。
シ 甲7の実施の形態2は、せり上げ式エレベータに係るものであり([0045])、せり上げ式エレベータが備えるかご1が昇降路を昇降することは自明である。
以上を総合すると、甲7には、次の2つの発明(以下、それぞれ、「甲7発明1」、「甲7発明2」という。)が記載されていると認められる。
[甲7発明1]
一対の縦柱6と、前記一対の縦柱6の下端部間を連結している下梁5を備えるかご枠4と、
床板3aを支持するとともに、前記下梁5に支持された床枠側梁3dと、
前記床板3aの下方に配置された一対の吊り車12と、
前記床枠側梁3dに、前記下梁5及び防振ゴム14を介して固定されるとともに、前記一対の吊り車12を支持する一対の吊り車梁11及び連結板13と、を備え、
前記一対の縦柱6は、前記下梁5を介して前記床枠側梁3dと固定され、
前記一対の吊り車12に掛け渡されたロープ9から前記一対の吊り車12に上向きの力が加えられ、前記一対の吊り車12に加えられた上向きの力は、前記一対の吊り車梁11、前記連結板13及び前記防振ゴム14を経由して前記下梁5に伝わり、前記下梁5に加えられた上向きの力は、前記床枠側梁3dに伝わる
かご1。
[甲7発明2]
昇降路を昇降するかご1を備え、
前記かご1は、
一対の縦柱6と、前記一対の縦柱6の下端部間を連結している下梁5を備えるかご枠4と、
床板3aを支持するとともに、前記下梁5に支持された床枠側梁3dと、
前記床板3aの下方に配置された一対の吊り車12と、
前記床枠側梁3dに、前記下梁5及び防振ゴム14を介して固定されるとともに、前記一対の吊り車12を回転可能に支持する一対の吊り車梁11及び連結板13と、を備え、
前記一対の縦柱6は、前記下梁5を介して前記床枠側梁3dと固定され、
前記一対の吊り車12に掛け渡されたロープ9から前記一対の吊り車12に上向きの力が加えられ、前記一対の吊り車12に加えられた上向きの力は、前記一対の吊り車梁11、前記連結板13及び前記防振ゴム14を経由して前記下梁5に伝わり、前記下梁5に加えられた上向きの力は、前記床枠側梁3dに伝わる
せり上げ式エレベータ。
第5 判断
1 甲1を主にした場合の本件発明1について
(1)新規性について
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
ア 甲1発明1の「第1及び第2縦柱7、8」は本件発明1の「一対の縦枠」に相当し、同様に、「第1連結具11及び第2連結具12を介して連結している」との事項は「連結する」との事項に、「第1下梁部材9及び第2下梁部材10」は「下枠」に、「含む」との事項は「有する」との事項に、「かご枠3」は「かご枠」に、それぞれ相当する。
イ 甲1発明1の「かご床4」は本件発明1の「かご床」に相当し、同様に、「第1吊り車30及び第2吊り車31」は「かご下プーリ」に、「取り付ける」との事項は「支持する」との事項に、「第1Uボルト33A、第2Uボルト33B、複数のナット34、取付軸32、第3Uボルト33C、第24ボルト33D、複数のナット、及び取付軸35」は「プーリ支持部材」に、それぞれ相当する。
ウ 甲1発明1の「前記第1及び第2縦柱7、8と前記第1下梁部材9及び前記第2下梁部材10並びに前記かご床4とを連結する前記第1連結具11及び前記第2連結具12」は、本件発明1の「前記縦枠と前記床支持梁とを連結する連結部材」との対比において、「前記縦枠と所定の部材とを連結する連結部材」の限りにおいて一致する。
エ 甲1発明1の「主ロープ40」は本件発明1の「主ロープ」に相当する。
オ 甲1発明1の「前記第1下梁部材9及び前記第2下梁部材10に伝え、前記第1下梁部材9及び前記第2下梁部材10から前記第1連結具11を介して前記第1縦柱7や前記かご床4に伝え、前記第1下梁部材9及び前記第2下梁部材10から前記第2連結具12を介して前記第2縦柱8に伝える」との事項は、本件発明の「前記連結部材および前記縦枠で受ける構造になっている」との事項に相当する。
カ 甲1発明1の「かご本体」は本件発明1の「乗りかご」に相当する。
以上を総合すると、甲1発明1と本件発明1とは以下の一致点で一致し、また以下の相違点で相違する。
[一致点]
一対の縦枠および前記一対の縦枠の下端部を連結する下枠を有するかご枠と、
かご床の下方に配置されたかご下プーリと、
前記かご下プーリを支持するプーリ支持部材と、
前記縦枠と所定の部材とを連結する連結部材と、を備え、
前記かご下プーリに巻き掛けられる主ロープによって前記プーリ支持部材に加わる上向きの力を、前記連結部材および前記縦枠で受ける構造になっている
乗りかご。
[相違点1]
本件発明1では「かご床を支持するとともに、前記下枠に支持された床支持梁と」を備えており、プーリ支持部材は「前記床支持梁に固定されるとともに、」前記カゴ下プーリを支持しており、「所定部材」が「前記床支持梁」であり、主ロープによって上向きの力が加わる対象が「前記プーリ支持部材および前記床支持梁」であるのに対し、甲1発明1では、床支持梁のような構成を備えておらず、プーリ支持部材は「前記第1下梁部材9及び前記第2下梁部材10に」取り付けられており、「所定部材」が「前記第1下梁部材9及び前記第2下梁部材10並びに前記かご床4」であり、主ロープによって上向きの力が加わる対象が「前記前記第1Uボルト33A、前記第2Uボルト33B、前記複数のナット34、前記取付軸32、前記第3Uボルト33C、前記第4Uボルト33D、前記複数のナット、及び前記取付軸35」(本件発明1の前記プーリ支持部材のみ)である点。
したがって、本件発明1は、甲1発明1と相違点1において相違するから、本件発明1は甲1発明1ではない。
(2)新規性に関する申立人の主張について
ア 相違点1に関連し、申立人は、甲1の図2に追記した図面
『
[図:0001424604000013.jpg]
』を示し(申立書第15頁)、『0017欄の「第1及び第2下梁接続部11b,11cは、それぞれボルトとナット(図示せず)とによって、かご床4の側端面に接続されている。」、及び図2では、水平面部11aの上にかご床4が接触していることから、上記した図2で「ボルト」と追記した位置で、かご床4がボルトで第1及び第2下梁接続部11b,11cと接続され、水平面部11aの上に接触していることがわかる。また、図2では、4と付された下側の梁と認識できる部分の内側に、上側の部分と認識できる部分の下方の一部が入り込むように図示されている(上記した図2に追記)。すると、外側かつ下側に図示されている部分は下梁6の水平面部11a、第1及び第2下梁接続部11b,11cで支持される。そして、内側かつ上側に図示されている部分は外側かつ下側に図示されている部分に支持されると認識できる。』ので、『「かご床4の内側かつ上側に図示されている部分」は本件特許発明1の「かご床」に、「かご床4の外側かつ下側に図示されている部分」は本件特許発明1の「床支持梁」に相当する。』から、『甲1発明と本件特許発明1との間に、相違点はない。』旨、申立書において主張している(申立書第16頁第2行~第12行(図面を行数に含めない。)、申立書第32頁第6行~第8行、申立書第33頁第3行)。
イ 甲1の図2には、申立書で図2に追記されたとおり、「内側かつ上側に図示されている部分」と「外側かつ下側に図示されている部分」が記載されていることは認められるものの、図2以外に、「内側かつ上側に図示されている部分」と「外側かつ下側に図示されている部分」に関する記載は無く、「内側かつ上側に図示されている部分」がどのような構成で他の部材とどのような関係にあるものかを把握することができない。
してみると、内側かつ上側に図示されている部分は外側かつ下側に図示されている部分に支持されるとは認識できない。
ウ そして、甲1の図2で「外側かつ下側に図示されている部分」を指し示す符号は「4」であり、甲1において符号「4」は「かご床4」を示すものであるから、「外側かつ下側に図示されている部分」は「かご床4」であると理解できるところ、この理解は、【0017】をはじめとする甲1の記載と矛盾しない。
してみると、「外側かつ下側に図示されている部分」は「かご床4」であり、「床支持梁」ではない。
エ さらに、甲1には、かご床4の下側に床支持梁があることは、記載されていない。
オ 以上のとおり、上記相違点1は実質的な相違点であり、本件発明1は甲1に記載された発明とは認められないから、申立人の主張は採用できない。
(3)進歩性について
ア 上記第4 1(2)アの通り、甲1発明1は、製造コストを低減させ小型化を図るために、下梁とは別に用いられていた吊り車取付梁を省略し、その結果、製造コストを低減させ小型化を図ることに加えて軽量化を図ることができたものであるから、プーリ支持部材を固定するための「床支持梁」を追加することに阻害要因がある。
イ 甲3記載の技術的事項における「かご枠の下部分」は、一対の縦枠の下端部を連結するものであり、かご枠の一部分であるから、本件発明1の「下枠」に相当するものであり、「床支持梁」に相当するものではない。
さらに、甲3には、下枠に支持された床支持梁を有することは、記載されていない。
ウ よって、甲1発明1に基いて本件発明1の相違点1に係る構成に想到することは、当業者にとって容易であるとはいえず、甲1発明1、甲2記載の技術的事項、及び甲3記載の技術的事項から、本件発明1の相違点1に係る構成に想到することは、当業者にとって容易であるとはいえない。
(4)進歩性に関する申立人の主張について
ア 相違点1に関連し、申立人は、『また、甲1発明から当業者が容易に想到しえるものである。』と申立書において主張した上で、さらに、『なお、甲第1号証の記載のみでは、かご床4の内側かつ上側に図示されている部分が、かご床4の外側かつ下側に図示されている部分に支持されていることが明確ではないと仮定したとする。
甲第2号証には、かご室6のかご床である底壁11を、下部防振装置23をはさんで、2本の平行な柱枠16と、下枠15によって支持されているかご床支持枠17が支持していることが記載されており、かご床支持枠17は、本件特許発明1の「床支持梁」に相当する。
また、甲第3号証には、かご室の底壁を、防振ゴムをはさんでかご枠の下部分が支持していることが記載されており、かご枠の下部分は、本件特許発明1の「床支持梁」に相当する。
このように、かご床を二重構造で構成することは技術常識である。よって、甲1発明に甲第2号証、甲第3号証を適用し、甲1発明のかご床4の内側かつ上側に図示されている部分を、下部防振装置(甲第2号証記載)、或いは、かご防振ゴム(甲第3号証記載)をはさんで、かご床4の外側かつ下側に図示されている部分で支持することで、本件特許発明1にすることは当業者が容易に想到しえるものである。』と、申立書において主張している(申立書第33頁第4行~第21行)。
イ 申立人が主張するとおり、甲2記載の技術的事項における「かご床支持枠17」が本件発明1の「床支持梁」に相当するとしても、上記(3)アで説示したとおり、甲1発明1に「床支持梁」を追加することには阻害要因がある。
ウ 甲3記載の技術的事項における「かご枠の下部分」は、上記(3)ウで説示したとおり、本件発明1の「床支持梁」に相当するものではない。
さらに、甲3には、下枠に支持された床支持梁を有することは、記載されていない。
エ よって、申立人の主張は採用できない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明1ではなく、甲1発明1に基いて当業者が容易に発明することができたものではなく、甲1発明1、甲2記載の技術的事項、及び甲3記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
2 甲1を主にした場合の本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1にさらに限定を付加したものである。また、申立人が主張する甲4~6記載の技術的事項を勘案しても、本件発明1は、甲1発明に甲2~6記載の技術的事項を適用して当業者が容易に想到し得たものとはいえないため、本件発明2~8も、本件発明1と同様に当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、上記1から明らかなとおり、本件発明2、6、8は甲1発明1ではなく、本件発明2、5~6、8は甲1発明1に基いて当業者が容易に発明することができたものではなく、本件発明2、5~6、8は甲1発明1及び甲2~3記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではなく、本件発明3は甲1発明1及び甲4記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではなく、本件発明4は甲1発明1及び甲5記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではなく、本件発明7は甲1発明1及び甲6記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
3 甲1を主にした場合の本件発明9について
(1)対比
本件発明9と甲1発明2とを対比すると、上記1(1)の対比と同様の対比に加えて、甲1発明2の「回転自在に取り付ける」との事項は本件発明9の「回転可能に支持する」との事項に相当し、甲1発明2の「せり上げ式エレベータ」は本件発明9の「エレベーター」に相当する。
以上を総合すると、甲1発明2と本件発明9とは以下の一致点で一致し、また上記相違点1で相違する。
[一致点]
昇降路を昇降する乗りかごを備え、
前記乗りかごは、
一対の縦枠および前記一対の縦枠の下端部を連結する下枠を有するかご枠と、
前記かご床の下方に配置されたかご下プーリと、
前記かご下プーリを回転可能に支持するプーリ支持部材と、
前記縦枠と所定の部材とを連結する連結部材と、を備え、
前記かご下プーリに巻き掛けられる主ロープによって前記プーリ支持部材に加わる上向きの力を、前記連結部材および前記縦枠で受ける構造になっている
エレベーター。
(2)判断
上記1と同様の理由により、本件発明9は、甲1発明2ではなく、甲1発明2に基いて当業者が容易に発明することができたものではなく、甲1発明2、甲2記載の技術的事項、及び甲3記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
4 甲7を主にした場合の本件発明1について
(1)新規性について
本件発明1と甲7発明1とを対比する。
ア 甲7発明1の「一対の縦柱6」は本件発明1の「一対の縦枠」に相当し、同様に、「下端部間を連結している」との事項は「下端部を連結する」との事項に、「下梁5」は「下枠」に、「備える」との事項は「有する」との事項に、「かご枠4」は「かご枠」に、それぞれ相当する。
イ 甲7発明1の「床板3a」は本件発明1の「かご床」に相当し、同様に、「床枠側梁3d」は「床支持梁」に、「一対の吊り車12」は「かご下プーリ」に、「前記下梁5及び防振ゴム14を介して固定される」との事項は「固定される」との事項に、「一対の吊り車梁11及び連結板13」は「連結部材」に、それぞれ相当する。
ウ 甲7発明1の「掛け渡された」との事項は本件発明1の「巻き掛けられる」との事項に相当し、同様に、「ロープ9」は「主ロープ」に相当する。
エ 甲7発明1の「前記一対の吊り車12に掛け渡されたロープ9から前記一対の吊り車12に上向きの力が加えられ、前記一対の吊り車12に加えられた上向きの力は、前記一対の吊り車梁11、前記連結板13及び前記防振ゴム14を経由して前記下梁5に伝わり、前記下梁5に加えられた上向きの力は、前記床枠側梁3dに伝わる」との事項は、本件発明の「前記かご下プーリに巻き掛けられる主ロープによって前記プーリ支持部材および前記床支持梁に加わる上向きの力を、前記連結部材および前記縦枠で受ける構造になっている」との対比において、「前記かご下プーリに巻き掛けられる主ロープによって前記プーリ支持部材および前記床支持梁に」「上向きの力」が「加わる」「構造になっている」との事項の限りにおいて一致する。
オ 甲7発明1の「かご1」は本件発明1の「乗りかご」に相当する。
以上を総合すると、甲7発明1と本件発明1とは以下の一致点で一致し、また以下の相違点で相違する。
[一致点]
一対の縦枠および前記一対の縦枠の下端部を連結する下枠を有するかご枠と、
かご床を支持するとともに、前記下枠に支持された床支持梁と、
前記かご床の下方に配置されたかご下プーリと、
前記床支持梁に固定されるとともに、前記かご下プーリを支持するプーリ支持部材と、を備え、
前記かご下プーリに巻き掛けられる主ロープによって前記プーリ支持部材および前記床支持梁に上向きの力が加わる構造になっている
乗りかご。
[相違点2]
本件発明1では「前記縦枠と前記床支持梁とを連結する連結部材」を有し、プーリ支持部材および床支持梁に加わる上向きの力を、「前記連結部材および前記縦枠で受ける」構造になっているのに対し、甲7発明1では「前記縦枠と前記床支持梁とを連結する連結部材」を有しておらず、プーリ支持部材および床支持梁に加わる上向きの力を、「前記連結部材および前記縦枠で受ける」構造でない点。
したがって、本件発明1は、甲7発明1と相違点2において相違するから、本件発明1は甲7発明1ではない。
(2)新規性に関する申立人の主張について
ア 相違点2に関連し、申立人は、甲7の図2に追記した図面
『
[図:0001424604000014.jpg]
』を示し(申立書第26頁)、『図1及び図2には、縦枠6の右側、吊り車組立体10の上方、かつ、ロープ9の紙面奥側の位置に、台形状(あるいは五角形状)の部材(以下、便宜的に「台形状部材」という)が配設されている。この台形状部材は、空中に浮いていることはなく、どこかに固定されているはずである。図1、2において、台形状部材が、縦枠6との間に、細い線状部分のものが見えることから、台形状部材はL字状で、L字の曲がった細い線状に見える部分が縦枠6の図1,2から見た側面部分に固定されていると認識できる。また、台形状部材で、かご床3が隠れていることから、台形状部材は、図1、2で、かご床3の手前側にあることがわかる。また、台形状部材で、連結板13は実線でかかれていることから、台形状部材は、図1、2で、連結板13の後ろ側にあることがわかる。そして、図3を見るに、連結板13の後ろ側には何の部材もつながっていないことが明らかである。また、図3を見るに、防振ゴム14の上側(かご側)に薄いものが三層重なっており、一番上で上ストッパ17と接触する層の部材が、縦枠6と近い箇所で、上に向かって伸びる形状になっている。これは、下板3cである。そして、この伸びる形状部分に細い線状に見える部分が接触していることがわかる。よって、台形状部材は、かご床3、特には、下板3cに固定されていると認識できる。
すなわち、台形状部材は、縦枠6とかご床3(特には、実施の形態1では下板3c、実施の形態2でいえばかご床3Aの床枠側梁3d)とを連結している。上記(b)から、吊り車梁11は床枠3Aの床枠側梁3dに配設されているため、吊り車梁11は台形状部材にも固定されている。あるいは、台形状部材が縦枠6の右側かつかご床3Aの紙面手前側に配置されていることから、台形状部材は縦枠6とかご床3Aとを連結することが示唆される。』ので、『「台形状部材」は本件特許発明1の「連結部材」に相当する。』から、『甲7発明と本件特許発明1との間に、相違点はない。』旨、申立書において主張している(申立書第29頁第3行~第25行、申立書第37頁第9行、申立書第37頁第24行)。
イ 甲7の図1、2には、申立書において主張しているとおり、「台形状部材が、縦枠6との間に、細い線状部分のものが見える」ものの、図面以外に「細い線状に見える部分」に関する記載は無く、「細い線状に見える部分」がどのような構成で他の部材とどのような関係にあるものかを把握することができない。
してみると、「細い線状に見える部分」が、台形状部材の一部であるとは認識できず、縦枠6の図1,2から見た側面部分に固定されているとも認識できないので、台形状部材は、かご床3、特には、下板3cに固定されているとは認識できない。
よって、甲7に記載された「台形状部材」は本件特許発明1の「連結部材」に相当するとは認められない。
ウ 一方、甲7発明1では、一対の縦柱6は、下梁5を介して床枠側梁3dと固定されるものであるところ、甲7には、縦柱6と床枠側梁3dとを連結するための、下梁5以外の部材について、記載されていない。
エ 以上のとおり、上記相違点2は実質的な相違点であり、本件発明1は甲7に記載された発明とは認められないから、申立人の主張は採用できない。
(3)進歩性について
ア 甲7発明1では、一対の縦柱6は、下梁5を介して床枠側梁3dと固定されるものであり、甲7には、縦柱6と床枠側梁3dとを連結するために、下梁5以外の部材を設けることについては記載されていない。
イ そして、乗りかごにおいて、縦枠と床支持梁とを、下枠とは異なる部材で連結することが、当業者の技術常識であるとは認められない。
ウ さらに、甲7発明1に、縦枠と床支持梁とを連結する連結部材を付加することが容易であることの証拠は示されていない。
エ よって、甲7発明1に、縦枠と床支持梁とを連結するための連結部材を付加することは、当業者にとって容易であるとはいえないから、甲7発明1から本件発明1の相違点2に係る構成に想到することは、当業者にとって容易であるとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1は、甲7発明1ではなく、甲7発明1に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
5 甲7を主にした場合の本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1にさらに限定を付加したものである。また、申立人が主張する甲4、6記載の技術的事項を勘案しても、本件発明1は、甲7発明に甲4、6記載の技術的事項を適用して当業者が容易に想到し得たものとはいえないため、本件発明2~8も、本件発明1と同様に当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、上記4から明らかなとおり、本件発明2、4、6、8は甲7発明1ではなく、本件発明2、4~6、8は甲7発明1に基いて当業者が容易に発明することができたものではなく、本件発明3は甲7発明1及び甲4記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではなく、本件発明7は甲7発明1及び甲6記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
6 甲7を主にした場合の本件発明9について
(1)対比
本件発明9と甲7発明2とを対比すると、上記4(1)の対比と同様の対比に加えて、甲7発明2の「せり上げ式エレベータ」は本件発明9の「エレベーター」に相当する。
以上を総合すると、甲7発明2と本件発明9とは以下の一致点で一致し、また上記相違点2で相違する。
[一致点]
昇降路を昇降する乗りかごを備え、
前記乗りかごは、
一対の縦枠および前記一対の縦枠の下端部を連結する下枠を有するかご枠と、
かご床を支持するとともに、前記下枠に支持された床支持梁と、
前記かご床の下方に配置されたかご下プーリと、
前記床支持梁に固定されるとともに、前記かご下プーリを回転可能に支持するプーリ支持部材と、を備え、
前記かご下プーリに巻き掛けられる主ロープによって前記プーリ支持部材および前記床支持梁に上向きの力が加わる構造になっている
エレベーター。
(2)判断
上記4と同様の理由により、本件発明9は、甲7発明2ではなく、甲7発明2に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-701096