審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2024-700111

無線制御装置および無線制御システム

審判番号
2024-700111
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-546509
登録番号
7324291
請求日
2024年02月08日
審決日
2024年04月09日
公報発行日
2024年05月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社日立製作所
  • 【権利者代理人】弁理士法人第一国際特許事務所
  • 【異議申立人】弁理士法人 大手門国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 中木 努
  • 審判官 圓道 浩史
  • 審判官 廣川 浩
分類
P1651.113-Y (H04W) / P1651.121-Y (H04W) / P1651.537-Y (H04W) / P1651.536-Y (H04W)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法113条2号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第113条第2号、特許法第113条第4号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7324291号発明「無線制御装置および無線制御システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7324291号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7324291号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)6月19日(優先権主張 令和元年9月17日)を国際出願日とする出願であり、令和5年8月1日にその特許権の設定登録がされ、令和5年8月9日に特許掲載公報が発行された。 これに対し、令和6年2月8日に特許異議申立人 弁理士法人大手門国際特許事務所(以下、「申立人」という。)により、請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てがなされ、同年3月6日付けで手続補正指令書(方式)が通知され、同月22日に手続補正書(方式)が提出された。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下「本件特許発明1」ないし「本件特許発明6」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 列車側の車上装置が搭載し地上装置との無線通信を制御する無線制御装置または地上装置が備え列車側の車上装置との無線通信を制御する無線制御装置であって、 前記無線制御装置は、前記車上装置と前記地上装置との間で送受する伝送データを当該伝送データのデータ内容に応じて、専用無線を使用して通信する第1のデータと、汎用無線を使用して通信する第2のデータとに振り分ける制御を行い、 前記第1のデータは、列車制御情報、自動運転のための制御情報および保守情報に関する少なくともいずれかのデータであり、 前記第2のデータは、前記列車側に搭載する機器からのセンサデータ、自動運転のための映像データおよび旅客サービスデータの少なくともいずれかのデータである ことを特徴とする無線制御装置。 【請求項2】 請求項1に記載の無線制御装置であって、 前記専用無線は、列車保安系に使用する無線であり、 前記汎用無線は、高速大容量伝送が可能な移動通信システムを利用する無線である ことを特徴とする無線制御装置。 【請求項3】 請求項1または2に記載の無線制御装置であって、 前記汎用無線を、前記専用無線のバックアップ用にも使用する ことを特徴とする無線制御装置。 【請求項4】 請求項1から3のいずれか1項に記載の前記車上装置が搭載し前記地上装置との無線通信を制御する前記無線制御装置と、前記専用無線用の無線機と、前記汎用無線用の無線機とを搭載する鉄道車両。 【請求項5】 請求項1から3のいずれか1項に記載の前記地上装置が備え前記車上装置との無線通信を制御する前記無線制御装置と、前記専用無線用の無線機と、前記汎用無線用の無線機とを備える地上装置。 【請求項6】 請求項4に記載の、前記無線制御装置、前記専用無線用の無線機および前記汎用無線用の無線機と、 請求項5に記載の、前記無線制御装置、前記専用無線用の無線機および前記汎用無線用の無線機と から構成される無線制御システム。」 第3 異議申立理由の概要 申立理由1 申立人は、甲第1号証及び甲第7号証を提出し、請求項1ないし6に係る特許は、甲第1号証に記載された発明又は甲第7号証に記載された発明であって,特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号により取り消されるべきである旨主張している。 申立理由2 申立人は、主たる証拠として甲第1号証、並びに従たる証拠として甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証ないし甲第11号証を提出するとともに、主たる証拠として甲第7号証、及び従たる証拠として甲第1号証を提出し、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号により取り消されるべきである旨主張している。 申立理由3 申立人は、請求項1ないし6に係る特許は、その特許請求の範囲が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号により取り消されるべきである旨主張している。 申立理由4 申立人は、請求項1ないし6に係る特許は、その特許請求の範囲が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号により取り消されるべきである旨主張している。 申立理由5 申立人は、請求項1ないし6に係る特許は、その特許請求の範囲が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号により取り消されるべきである旨主張している。 <証拠方法> 甲第1号証:中村一城、川さき邦弘(当審注;「さき」の字は「山」と「立」と「可」とを組み合わせた字)、竹内恵一、流王知子、列車運行向け情報統合ネットワークの提案、鉄道総研報告、Vol.32、No.5、2018年5月、pp.41-46 甲第2号証:平成二四年七月二日国土交通省令第六九号で改正された平成十三年国土交通省令第百五十一号 鉄道に関する技術上の基準を定める省令、平成24年(2012年)7月2日、第七章 第一節 第五十四条、第五十八条 甲第3号証:鉄道に関する技術上の基準を定める省令の解釈基準、公知日は不明(「第4」の「4」の(1)を参照。)、VII-7 第六十条、国土交通省 甲第4号証:中村一城、川さき邦弘(当審注;「さき」の字は「山」と「立」と「可」とを組み合わせた字)、鉄道における通信システム、通信ソサイエティマガジン、No.17、[夏号]、2011年、pp.44-53 甲第5号証:川さき邦弘(当審注;「さき」の字は「山」と「立」と「可」とを組み合わせた字)、鉄道における情報ネットワークの活用に関する研究の動向、RRR、Vol.75、No.8、2018年8月、pp.4-7 甲第6号証:川さき邦弘(当審注;「さき」の字は「山」と「立」と「可」とを組み合わせた字)、中村一城、ミリ波技術の鉄道応用に関する動向、鉄道総研報告、Vol.30、No.1、2016年1月、pp.51-54 甲第7号証:川さき邦弘(当審注;「さき」の字は「山」と「立」と「可」とを組み合わせた字)、列車運行制御の自律化がもたらす安全性の向上、第31回 鉄道総研講演会、2018年11月、pp.13-18 甲第8号証:篠田憲幸、水間毅、ヨーロッパにおける鉄道の自動運転の現状、JREA、Vol.61、No.8、2018年、pp.39-42 甲第9号証:末田康一、片山武彦、ソフトバンクの5GとIoTにおける取組み、鉄道と電気技術、Vol.29、No.10、2018年10月、pp.3-13 甲第10号証:特開2002-240716号公報 甲第11号証:特開平11-59421号公報 第4 各甲号証に記載された事項 1 甲第1号証について (1)甲第1号証に記載された事項 甲第1号証(中村一城、川さき邦弘(当審注;「さき」の字は「山」と「立」と「可」とを組み合わせた字)、竹内恵一、流王知子、列車運行向け情報統合ネットワークの提案、鉄道総研報告、Vol.32、No.5、2018年5月、pp.41-46)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。 ア 「3.1 基本的な考え方と前提条件 新たに提案する統合情報ネットワークでは,アプリケーションシステムが,送受信間の伝送経路や伝送媒体を考慮することなく情報を伝送可能とすることを前提としている。その実現のため,ネットワークに以下の機能を持たせることとした。 丸1伝送フォーマット変換 (当審注;甲第1号証については○の中に数字の1を意味する。以下同様。) 丸2通番確認,送達確認 丸3伝送媒体の選択 丸4再送・伝送エラー処理 丸5情報の蓄積 丸6伝送媒体の状態把握 丸7経路テーブルの交換 ネットワークに上記の機能を持たせるため,アプリケーションシステムと統合情報ネットワークとの境界点に,情報の伝送を制御する上記の機能を実装したルータを設置することとした。 (略) そこで,提案する統合情報ネットワークもIPネットワークを利用することを前提とし, 後述するRITPのフレームフォーマットヘの変換機能をルータに持たせることで,既存のネットワークを統合情報ネットワークとすることが可能である。」(43ページ左欄下から19行ないし右欄13行) イ 「 前節で設定した前提条件に基づいて,アプリケーションとTCP/IP・UDP/IPとの間で情報伝送を制御するための機能とフレームフォーマットを検討し,鉄道向けの統合情報ネットワーク用プロトコルRITP(Railway lnformation Transfer Protocol)として定義した。本節では,各業務系統間で情報共有を行うためのフレームフォーマットとRITPの機能について述べる。 3.2.1 フレームフォーマット RITPにおけるフレームフォーマットの案を図4に示す。図4のフォーマットは,IPパケットのフレームフォーマットを基に,伝送する情報の種類を表すフィールドと,伝送に対する信頼性の要求を指定するフィールドを付加した構成となっている。信頼性の要求については,許容できるデータの損失率と遅延時間を,表4,5に示すようにそれぞれ5つのクラスに分けて定義し,情報の種類・用途に応じて損失率と遅延時間を個別に指定できるようにすることを想定している。」(43ページ右欄22行ないし下から1行) ウ 「 [図:0001410264000001.jpg] 」(43ページ) エ 「 [図:0001410264000002.jpg] 」(44ページ) オ 「3.2.2 統合プロトコルの機能 RITPでは,前節で述べたフレームフォーマットに,伝送制御のための情報と冗長化符号を添付し,要求された品質が確保できるよう,RITPルータ間の伝送経路を選択して情報を伝送する。 RITPルータは前述した丸1~丸7の機能を持っており,このうち,丸2,丸4,丸7の機能は一般的なルータと同様の機能であるが,丸1,丸3,丸5,丸6の機能は,一般的なQoS制御と呼ばれる技術を基に鉄道向けにカスタマイズしたものである。特に,丸6の機能によってRITPルータ間での伝送路の状態を各RITPルータが把握し,丸3の機能によって伝送媒体を選択する動作と,丸5の機能によって伝送する情報を一時的にRITPルータ内に蓄積し,端末からの要求に合致する情報を提供する動作,の2つの動作が可能となっている点が特徴である。」(44ページ左欄1行ないし15行) カ 「現在,丸6の伝送媒体の状態把握機能の実現に向けた検討を行っている。まず,RITPルータが定期的に伝送媒体ごとにコマンドを送信してRoundTrip Time (RTT)や無線部分のRSSIを計測し,その結果をRITPルータ内部に保持しているテーブルに記録していくことで,複数の伝送媒体の最新の状態を把握し,伝送情報の信頼性レベルに応じて伝送媒体を選択することができると考えている。」(44ページ左欄下から1行ないし右欄6行) キ 「3.3.1 シミュレーション条件 鉄道総研では,情報ネットワークを活用した新しい列車運行制御方式を検討しており,運行に係るあらゆる情報を地上の制御装置に集約するような情報ネットワークを想定している(図7)。想定している情報ネットワークの基本構成を基に,地上制御装置,車上制御装置から構成される制御用のネットワークと,センサーネットワークを組み合わせた小規模なシミュレーションモデルを作成した。図8はネットワークシミュレータのスクリーンショットを表しており,この画面上でシミュレーションのやりとりを確認することができる。このモデルは,2台の制御装置,センサー,状態監視装置の各ノードを所内試験線と試験車に配置し,RITPの機能の一部(情報の種類と伝送路の状態に応じて伝送経路を切り替える機能)を実装したルータを介して各ノードを接続するネットワークとなっている。RITPルータ同士は350MHz帯の低速・高信頼(9.6kbps,電文損失率10-3以下)の無線通信回線と,5GHz帯の高速・低信頼(lMbps,電文損失率10-1以下)の無線通信回線の2種類の伝送媒体によって接続されている。2台の制御装置間では0.5秒ごとに150バイトの情報を伝送し,センサーからは0.1秒ごとに50~800バイト(1回の伝送ごとにランダムに決定)のモニタリング情報を伝送することを想定した。また,制御情報の伝送に対しては,許容できる伝送遅延時間が1秒に設定されていることを想定した。」(44ページ右欄13行ないし45ページ左欄11行) ク 「 [図:0001410264000003.jpg] 」(45ページ) ケ 「3.3.2 シミュレーション結果 シミュレーションは,汎用のネットワークシミュレータであるOMNeSTを使用して実行した。シミュレーションシナリオとして,350MHz帯・5GHz帯とも正常に通信できる状態と,5GHz帯の無線通信回線が途絶した場合の2種類の状態を設定した。 シミュレーションの結果を図9に示す。図9(a)は両周波数帯とも正常な場合,(b)は5GHz帯の無線通信回線が途絶した場合の結果を示している。図9(a)では,制御情報・モニタリング情報とも伝送遅延が300ms以内となっているのに対し,図9(b)では伝送遅延が大きくなっているものの,制御情報は許容伝送遅延時間である1秒以内に収まっており,RITPの機能によって情報に要求される遅延時間のレベルに応じた伝送の制御が適切になされていることが確認できた。」(45ページ左欄下から5行ないし右欄10行) コ 「 [図:0001410264000004.jpg] 」(45ページ) (2)甲1発明 甲第1号証の上記記載、及び無線通信分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。 ア 上記「(1)」の「キ」には「新しい列車運行制御方式を検討しており,・・・情報ネットワークを想定している・・・。想定している情報ネットワークの基本構成を基に,地上制御装置,車上制御装置から構成される制御用のネットワークと,センサーネットワークを組み合わせた・・・シミュレーションモデルを作成した。」という記載があり、ここで、「制御用のネットワーク」は、「列車運行制御」用のネットワークであると解される。 そうすると、甲第1号証に記載されたシミュレーションモデルは、地上制御装置、車上制御装置から構成される列車運行制御用のネットワークと、センサーネットワークを組み合わせて構成されたシミュレーションモデルである、といえる。 さらに、上記「(1)」の「キ」には、「地上制御装置,車上制御装置から構成される制御用のネットワークと,センサーネットワークを組み合わせた・・・シミュレーションモデルを作成した。・・・このモデルは,2台の制御装置,センサー,状態監視装置の各ノードを所内試験線と試験車に配置し,RITPの機能の一部・・・を実装したルータを介して各ノードを接続するネットワークとなっている。」という記載がある。 ここで、「このモデル」とは「シミュレーションモデル」を意味し、また、「2台の制御装置」とは「地上制御装置」及び「車上制御装置」を意味することが明らかである。そして、「車上制御装置」は「試験車」に配置されており、また、「所内試験線」とは所内の地上に設けられた試験線であって「地上制御装置」は地上の「所内試験線」に配置されていると解される。 そうすると、甲第1号証に記載されたシミュレーションモデルは、車上制御装置を試験車に配置し、地上制御装置を地上の所内試験線に配置したものである、といえる。 その上、上記「(1)」の「キ」には、「シミュレーションモデルを作成した。図8はネットワークシミュレータのスクリーンショットを表しており」という記載があり、また、上記「ク」には「図8 ネットワークシミュレータOMNeST上に実装したモデル(OMNestのスクリーンショット)」という記載があり、ここで「モデル」とは「シミュレーションモデル」を意味することが明らかであるから、図8は、ネットワークシミュレータOMNeST上に実装したシミュレーションモデルを示す、といえる。 そして、上記「(1)」の「ク」の「図8」からは、上側に記載された「RITPルータ」(以下、別のRITPルータとの混同を避けるために「第1のRITPルータ」という。)が、「車上制御装置」の近傍に配置されていることが読み取れるから、「第1のRITPルータ」は「車上制御装置」と同様に試験車に配置されていると解される。そうすると、甲第1号証のシミュレーションモデルにおいて第1のRITPルータは試験車に配置されている、といえる。 加えて、上記「(1)」の「ク」の「図8」からは、下側に記載された「RITPルータ」(以下、「第2のRITPルータ」という。)が、「地上制御装置」の近傍に配置されていることが読み取れるから、「第2のRITPルータ」は「地上制御装置」と同様に地上の所内試験線に配置されていると解される。そうすると、甲第1号証のシミュレーションモデルにおいて第2のRITPルータは地上の所内試験線に配置されている、といえる。 そして、上記「(1)」の「ク」の「図8」において、「第1のRITPルータ」と「第2のRITPルータ」は、「RITPルータ」という共通の用語で表記されていることを考慮すると、試験車に配置された「第1のRITPルータ」と、地上の所内試験線に配置された「第2のRITPルータ」はRITPルータとして同じ機能を有すると解されるから、以下、「第1のRITPルータ」と「第2のRITPルータ」を総称して「RITPルータ」という。 そうすると、甲第1号証のシミュレーションモデルにおけるRITPルータは、試験車に配置された第1のRITPルータ、又は地上の所内試験線に配置された第2のRITPルータである、といえる。 したがって、以上を総合すると、甲第1号証には、地上制御装置、車上制御装置から構成される列車運行制御用のネットワークと、センサーネットワークを組み合わせて構成され、車上制御装置を試験車に配置し、地上制御装置を地上の所内試験線に配置したシミュレーションモデルにおいて、試験車に配置された第1のRITPルータ、又は地上の所内試験線に配置された第2のRITPルータである、RITPルータが記載されている、といえる。 イ 上記「(1)」の「イ」には、「RITPにおけるフレームフォーマットの案を図4に示す。図4のフォーマットは,・・・伝送する情報の種類を表すフィールドと,伝送に対する信頼性の要求を指定するフィールドを付加した構成となっている。信頼性の要求については,許容できるデータの損失率と遅延時間を,・・・それぞれ5つのクラスに分けて定義し,情報の種類・用途に応じて損失率と遅延時間を個別に指定できる」ことが記載されている。 また、上記「(1)」の「ウ」の「図4」からは、「フレームフォーマット」が、「情報の種類・用途」のフィールドと、「伝送の信頼性」のフィールドを含むことが読み取れ、これらのフィールドは、それぞれ上記「(1)」の「イ」の「伝送する情報の種類を表すフィールド」と、「伝送に対する信頼性の要求を指定するフィールド」に対応すると解される。 さらに、上記「(1)」の「オ」には、「RITPでは,前節で述べたフレームフォーマットに,伝送制御のための情報と冗長化符号を添付し,要求された品質が確保できるよう,RITPルータ間の伝送経路を選択して情報を伝送する。」と記載されており、ここで、「前節で述べたフレームフォーマット」とは、上記「(1)」の「イ」の「RITPにおけるフレームフォーマット」を意味し、また、「要求された品質」とは、上記「(1)」の「イ」の「信頼性の要求」における「許容できるデータの損失率と遅延時間」を意味すると解される。 そうすると、RITPでは、伝送する情報の種類・用途を表すフィールドと、伝送に対する信頼性の要求を指定するフィールドを含むフレームフォーマットに、伝送制御のための情報と冗長化符号を添付し、要求された品質が確保できるよう、RITPルータ間の伝送経路を選択して情報を伝送し、当該要求された品質については、許容できるデータの損失率と遅延時間を、それぞれ5つのクラスに分けて定義し、情報の種類・用途に応じて損失率と遅延時間を個別に指定できるものであることが記載されている、といえる。 その上、上記「(1)」の「ア」には、「ネットワークに以下の機能を持たせることとした。 丸1伝送フォーマット変換 ・・・ 丸3伝送媒体の選択 ・・・ ネットワークに上記の機能を持たせるため,・・・情報の伝送を制御する上記の機能を実装したルータを設置することとした。」という記載、及び「後述するRITPのフレームフォーマットヘの変換機能をルータに持たせることで,既存のネットワークを統合情報ネットワークとする」という記載があり、ここで、「後述するRITPのフレームフォーマット」とは、上記「(1)」の「ウ」の「図4」に記載された「フレームフォーマット」を意味することが明らかであり、また、上記「(1)」の「オ」には、「RITPルータは前述した丸1~丸7の機能を持っており」という記載があるから、RITPにおいて、伝送する情報の種類・用途を表すフィールドと、伝送に対する信頼性の要求を指定するフィールドを含むフレームフォーマットに、伝送制御のための情報と冗長化符号を添付し、要求された品質が確保できるよう、RITPルータ間の伝送経路を選択して情報を伝送することは、「RITPルータ」により実現されるといえる。 したがって、以上をまとめると、甲第1号証には、RITPルータは、伝送する情報の種類・用途を表すフィールドと、伝送に対する信頼性の要求を指定するフィールドを含むフレームフォーマットに、伝送制御のための情報と冗長化符号を添付し、要求された品質が確保できるよう、RITPルータ間の伝送経路を選択して情報を伝送し、当該要求された品質については、許容できるデータの損失率と遅延時間を、それぞれ5つのクラスに分けて定義し、情報の種類・用途に応じて損失率と遅延時間を個別に指定できるものであることが記載されている、といえる。 ウ 上記「(1)」の「ア」には「新たに提案する統合情報ネットワーク」という記載があり、また、「ネットワークに以下の機能を持たせることとした。 丸1伝送フォーマット変換 丸2通番確認,送達確認 丸3伝送媒体の選択 丸4再送・伝送エラー処理 丸5情報の蓄積 丸6伝送媒体の状態把握 丸7経路テーブルの交換 ネットワークに上記の機能を持たせるため,・・・情報の伝送を制御する上記の機能を実装したルータを設置することとした。」という記載がある。 また、上記「(1)」の「オ」には、「RITPルータは前述した丸1~丸7の機能を持っており」という記載があり、ここで「RITPルータ」は上記「(1)」の「ア」の「情報の伝送を制御する上記の機能を実装したルータ」に含まれることが明らかである。 さらに、上記「(1)」の「カ」には、「RITPルータが定期的に伝送媒体ごとに・・・無線部分のRSSIを計測し・・・ていくことで,複数の伝送媒体の最新の状態を把握し,伝送情報の信頼性レベルに応じて伝送媒体を選択する」という記載がある。 その上、上記「(1)」の「キ」には、「シミュレーションモデルを作成した。図8はネットワークシミュレータのスクリーンショットを表しており・・・このモデルは,・・・RITPの機能の一部(情報の種類と伝送路の状態に応じて伝送経路を切り替える機能)を実装したルータを介して各ノードを接続するネットワークとなっている。」という記載があり、ここで「RITPの機能の一部(情報の種類と伝送路の状態に応じて伝送経路を切り替える機能)を実装したルータ」とは、上記「(1)」の「ク」の「図8」に記載された「第1のRITPルータ」及び「第2のRITPルータ」を意味すると解される。 そうすると、上記「(1)」の「ア」の「情報の伝送を制御する上記の機能を実装したルータ」、上記「(1)」の「オ」の「RITPルータ」、上記「(1)」の「カ」の「RITPルータ」、及び上記「キ」の「RITPの機能の一部(情報の種類と伝送路の状態に応じて伝送経路を切り替える機能)を実装したルータ」は、「RITPルータ」と総称される「第1のRITPルータ」及び「第2のRITPルータ」についての記載である、といえる。 したがって、甲第1号証には、RITPルータは、情報の伝送を制御する機能の一部(情報の種類と伝送路の状態に応じて伝送経路を切り替える機能)を実装したルータであって、定期的に伝送媒体ごとに無線部分のRSSIを計測していくことで、複数の伝送媒体の最新の状態を把握し、伝送情報の信頼性レベルに応じて伝送媒体を選択することが記載されている、といえる。 エ 上記「(1)」の「キ」には、「RITPルータ同士は350MHz帯の低速・高信頼・・・の無線通信回線と,5GHz帯の高速・低信頼・・・の無線通信回線の2種類の伝送媒体によって接続されている。」という記載がある。 また、上記「(1)」の「ク」の「図8」からは、右側に記載された「車上無線機」(以下、別の車上無線機との混同を避けるために「第1の車上無線機」という。)が、「5GHzアクセスポイント」と接続されていることが読み取れ、ここで、「第1の車上無線機」と「5GHzアクセスポイント」の間は「5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線」により接続されていることが明らかである。 さらに、上記「(1)」の「ク」の「図8」からは、左側に記載された「車上無線機」(以下、「第2の車上無線機」という。)が、「350MHz基地局」と接続されていることが読み取れ、ここで、「第2の車上無線機」と「350MHz基地局」の間は「350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線」により接続されていることが明らかである。 その上、上記「(1)」の「ク」の「図8」からは、「第1のRITPルータ」が、「車上制御装置」、「第1の車上無線機」、「第2の車上無線機」、及び「車上センサ」と接続されていることが読み取れる。 加えて、上記「(1)」の「ク」の「図8」からは、「第2のRITPルータ」が、「地上ネットワーク」を介して、「地上制御装置」、「5GHzアクセスポイント」、「350MHz基地局」、及び「モニタ装置」と接続されていることが読み取れる。 したがって、甲第1号証には、 第1のRITPルータは、車上制御装置、第1の車上無線機、第2の車上無線機、及び車上センサと接続され、また、350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線と、5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線の2種類の伝送媒体によって第2のRITPルータと接続されており、すなわち、第1の車上無線機、5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線、5GHzアクセスポイント、及び地上ネットワークを介して第2のRITPルータと接続されるとともに、第2の車上無線機、350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線、350MHz基地局、及び地上ネットワークを介して第2のRITPルータと接続されていること、及び、 第2のRITPルータは、地上ネットワークを介して、地上制御装置、5GHzアクセスポイント、350MHz基地局、及びモニタ装置と接続され、また、350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線と、5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線の2種類の伝送媒体によって第1のRITPルータと接続されており、すなわち、地上ネットワーク、5GHzアクセスポイント、5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線、及び第1の車上無線機を介して第1のRITPルータと接続されるとともに、地上ネットワーク、350MHz基地局、350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線、及び第2の車上無線機を介して第1のRITPルータと接続されていること が記載されている、といえる。 オ 上記「(1)」の「キ」には、「2台の制御装置間では0.5秒ごとに150バイトの情報を伝送し,センサーからは0.1秒ごとに50~800バイト・・・のモニタリング情報を伝送することを想定した。また,制御情報の伝送に対しては,許容できる伝送遅延時間が1秒に設定されていることを想定した。」という記載があり、ここで「2台の制御装置」とは、「車上制御装置」及び「地上制御装置」を意味し、「センサー」とは上記「(1)」の「ク」の「図8」に記載された「車上センサ」を意味すると解される。 また、上記「(1)」の「ケ」には、「シミュレーションシナリオとして,350MHz帯・5GHz帯とも正常に通信できる状態と,5GHz帯の無線通信回線が途絶した場合の2種類の状態を設定した。・・・シミュレーションの結果を図9に示す。図9(a)は両周波数帯とも正常な場合,(b)は5GHz帯の無線通信回線が途絶した場合の結果を示している。図9(a)では,制御情報・モニタリング情報とも伝送遅延が300ms以内となっているのに対し,図9(b)では伝送遅延が大きくなっているものの,制御情報は許容伝送遅延時間である1秒以内に収まっており,RITPの機能によって情報に要求される遅延時間のレベルに応じた伝送の制御が・・・なされている」という記載がある。 さらに、上記「(1)」の「コ」の「図9(b)」からは、制御情報・モニタリング情報ともに、「図9(a)」に比べて伝送遅延が大きくなっているものの,制御情報・モニタリング情報ともに伝送されたことが読み取れる。 したがって、甲第1号証には、車上制御装置と地上制御装置の間では0.5秒ごとに150バイトの情報を伝送し、車上センサからは0.1秒ごとに50~800バイトのモニタリング情報を伝送することを想定してシミュレーションした結果、350MHz帯・5GHz帯とも正常に通信できる場合には、制御情報・モニタリング情報とも伝送遅延が300ms以内となり、5GHz帯の無線通信回線が途絶した場合には、伝送遅延が大きくなるものの、制御情報は許容伝送遅延時間である1秒以内に収まり、モニタリング情報も伝送されることが記載されている、といえる。 したがって、上記「ア」ないし「オ」を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「 地上制御装置、車上制御装置から構成される列車運行制御用のネットワークと、センサーネットワークを組み合わせて構成され、前記車上制御装置を試験車に配置し、前記地上制御装置を地上の所内試験線に配置したシミュレーションモデルにおいて、前記試験車に配置された第1のRITPルータ、又は地上の前記所内試験線に配置された第2のRITPルータである、RITPルータであって、 前記RITPルータは、伝送する情報の種類・用途を表すフィールドと、伝送に対する信頼性の要求を指定するフィールドを含むフレームフォーマットに、伝送制御のための情報と冗長化符号を添付し、要求された品質が確保できるよう、前記RITPルータ間の伝送経路を選択して情報を伝送し、当該要求された品質については、許容できるデータの損失率と遅延時間を、それぞれ5つのクラスに分けて定義し、前記情報の種類・用途に応じて前記損失率と前記遅延時間を個別に指定できるものであり、 前記RITPルータは、情報の伝送を制御する機能の一部(情報の種類と伝送路の状態に応じて伝送経路を切り替える機能)を実装したルータであって、定期的に伝送媒体ごとに無線部分のRSSIを計測していくことで、複数の前記伝送媒体の最新の状態を把握し、伝送情報の信頼性レベルに応じて前記伝送媒体を選択し、 前記第1のRITPルータは、前記車上制御装置、第1の車上無線機、第2の車上無線機、及び車上センサと接続され、また、350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線と、5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線の2種類の伝送媒体によって前記第2のRITPルータと接続されており、すなわち、前記第1の車上無線機、前記5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線、5GHzアクセスポイント、及び地上ネットワークを介して前記第2のRITPルータと接続されるとともに、前記第2の車上無線機、前記350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線、350MHz基地局、及び前記地上ネットワークを介して前記第2のRITPルータと接続されており、 前記第2のRITPルータは、前記地上ネットワークを介して、前記地上制御装置、前記5GHzアクセスポイント、前記350MHz基地局、及びモニタ装置と接続され、また、前記350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線と、前記5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線の前記2種類の伝送媒体によって前記第1のRITPルータと接続されており、すなわち、前記地上ネットワーク、前記5GHzアクセスポイント、前記5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線、及び前記第1の車上無線機を介して前記第1のRITPルータと接続されるとともに、前記地上ネットワーク、前記350MHz基地局、前記350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線、及び前記第2の車上無線機を介して前記第1のRITPルータと接続されており、 前記車上制御装置と前記地上制御装置の間では0.5秒ごとに150バイトの情報を伝送し、前記車上センサからは0.1秒ごとに50~800バイトのモニタリング情報を伝送することを想定してシミュレーションした結果、350MHz帯・5GHz帯とも正常に通信できる場合には、制御情報・モニタリング情報とも伝送遅延が300ms以内となり、前記5GHz帯の無線通信回線が途絶した場合には、伝送遅延が大きくなるものの、前記制御情報は許容伝送遅延時間である1秒以内に収まり、前記モニタリング情報も伝送される、 前記RITPルータ。」 2 甲第7号証について (1)甲第7号証に記載された事項 甲第7号証(川さき邦弘(当審注;「さき」の字は「山」と「立」と「可」とを組み合わせた字)、列車運行制御の自律化がもたらす安全性の向上、第31回 鉄道総研講演会、2018年11月、pp.13-18)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。) ア 「 [図:0001410264000005.jpg] 」(16ページ) イ 「(2)第5世代移動体通信システム(5G)の活用 前節で述べたRITPによる情報ネットワークを実際に稼働させるためには、実際に情報を伝送する通信システムが必要である。これまで鉄道事業者が構築してきた自営の通信網を活用するほか、近年信頼性と通信速度の向上が著しい汎用の移動体通信技術を活用することも検討している。 特に、2019年度から部分的なサービス開始が予定されている第5世代移動体通信(“5G” と呼ばれる)は、現在利用されているLTE携帯電話網の100倍以上となるlOGbpsの伝送容量が実現される見込みである。これにより、大量のデータを伝送するアプリケーションだけでなく、IoTのようにデータ量は少ないものの膨大な数のセンサーや端末を接続するようなアプリケーションにも対応可能となることが期待されている。鉄道においては、この5Gの特徴を利用することにより、大容量伝送を活かした地上~車上間の画像・データの伝送や、低遅延伝送を活かした制御情報の伝送、また多数の現場機器やセンサーを収容できるモニタリングシステムの実現などが期待できる(図7)。」(16ページ右欄下から2行ないし17ページ左欄18行) ウ 「 [図:0001410264000006.jpg] 」(17ページ) (2)甲7発明 甲第7号証の上記記載、及び無線通信分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。 ア 上記「(1)」の「ウ」の「図7」からは、「鉄道業務用各種システム」に接続された「RITPルータ」が読み取れるから、甲第7号証には、鉄道業務用各種システムに接続されたRITPルータが記載されている。 イ 上記「(1)」の「イ」には、「第5世代移動体通信(“5G” と呼ばれる)・・・鉄道においては、この5Gの特徴を利用することにより、大容量伝送を活かした地上~車上間の画像・データの伝送・・・が期待できる(図7)。」という記載がある。 また、上記「(1)」の「ウ」の「図7」からは、列車が「大容量伝送を活かしたデータの伝送」を行うことが読み取れ、ここで、「大容量伝送を活かしたデータの伝送」は、上記「(1)」の「イ」に記載された「大容量伝送を活かした地上~車上間の画像・データの伝送」を意味し、「車上」とは列車の「車上」を意味することが明らかである。 さらに、上記「(1)」の「ウ」の「図7」からは、「鉄道業務用各種システム」が「RITPルータ」及び「5Gネットワーク」を介して列車と接続されることが読み取れ、ここで、ルータの一種である「RITPルータ」及び「5Gネットワーク」が前記「画像・データ」の送信元や送信先でないことは技術常識であり、また、「鉄道業務用各種システム」は地上の「鉄道業務用各種システム」を含むことが明らかであるから、前記「地上~車上間の画像・データの伝送」における「地上」は、地上の「鉄道業務用各種システム」を含むといえる。 そうすると、地上の「鉄道業務用各種システム」と列車の「車上」間で「画像・データ」が伝送され、具体的には、「RITPルータ」が、地上の「鉄道業務用各種システム」と「5Gネットワーク」間で「画像・データ」を伝送し、さらに、当該「画像・データ」が「5Gネットワーク」を介して列車の「車上」との間で伝送されることにより、地上の「鉄道業務用各種システム」と列車の「車上」間で「画像・データ」が伝送されるといえる。 したがって、甲第7号証には、「RITPルータ」が、地上の「鉄道業務用各種システム」と列車の間で「5Gネットワーク」を介して「画像・データ」を伝送することにより、地上の「鉄道業務用各種システム」と列車の「車上」間で「画像・データ」が伝送されることが記載されているといえる。 ウ 上記「(1)」の「ア」には、「図6 鉄道運行向け統合情報ネットワークと専用プロトコルRITP」と記載されており、「図6」からは、「用途ごとに必要な品質で送れる伝送路を自動選択」する「RITPルータ」が「制御・管理システム」に接続されていることが読み取れる。 ここで当該「制御・管理システム」は、「鉄道運行向け統合情報ネットワーク」の一部であって、鉄道運行向けの制御・管理システムであると解されるから、上記「(1)」の「ウ」の「鉄道業務用各種システム」に含まれ、また、上記「(1)」の「ア」の「制御・管理システム」に接続された「RITPルータ」は上記「(1)」の「ウ」の「RITPルータ」に対応する、といえる。 そうすると、甲第7号証には、「鉄道業務用各種システム」に接続された「RITPルータ」は、「用途ごとに必要な品質で送れる伝送路を自動選択」するものであることが記載されている、といえる。 したがって、上記「ア」ないし「ウ」を総合すると、甲第7号証には、次の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されていると認められる。 「 地上の鉄道業務用各種システムに接続されたRITPルータであって、 前記RITPルータが、前記地上の鉄道業務用各種システムと列車の間で5Gネットワークを介して画像・データを伝送することにより、前記地上の鉄道業務用各種システムと前記列車の車上間で前記画像・データが伝送され、 前記RITPルータは、用途ごとに必要な品質で送れる伝送路を自動選択する、 前記RITPルータ。」 3 甲第2号証について 甲第2号証(平成二十四年七月二日国土交通省令第六十九号で改正された平成十三年国土交通省令第百五十一号 鉄道に関する技術上の基準を定める省令、平成24年(2012年)7月2日、第七章 第一節 第五十四条、第五十八条)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。) 「第七章 運転保安設備 第一節 信号保安設備 (閉そくを確保する装置等) 第五十四条 閉そくを確保する装置は、進路上の閉そく区間の条件に応じた信号を現示し、又は閉そくの保証を行うことができるものでなければならない。 2 列車間の間隔を確保する装置は、列車と進路上の他の列車等との間隔及び線路の条件に応じ、連続して制御を行うことにより、自動的に当該列車を減速させ、又は停止させることができるものでなければならない。 3 第一項又は第二項に掲げる装置を単線運転をする区間において使用する場合は、相対する列車が同時に当該区間に進入することができないものでなければならない。」 「(自動運転をするための装置) 第五十八条 動力車を操縦する係員が乗務しない鉄道に設ける自動運転をするための装置は、次の基準に適合するものでなければならない。 一 乗降する旅客の安全が確認された後でなければ列車を発車させることができないものであること。 二 列車間の間隔を確保する装置からの制御情報が指示する運転速度以下に目標速度を設定し、円滑に列車の速度を制御する等運転保安上必要な機能を有するものであること。 三 旅客の乗降に支障を及ぼさない位置に円滑に列車を停止させるものであること。」 「第二節 保安通信設備 (保安通信設備) 第六十条 停車場、変電所、運転指令所、電力指令所その他の保安上又は運転上必要な箇所の相互間には、迅速に連絡通報することができる保安通信設備を設けなければならない。」 したがって、甲第2号証には、「列車間の間隔を確保する装置は、列車と進路上の他の列車等との間隔及び線路の条件に応じ、連続して制御を行うことにより、自動的に当該列車を減速させ、又は停止させることができるものでなければならない」という技術的事項が記載されていると認められる。 4 甲第3号証について (1) 甲第3号証の公知日について ア 甲第3号証(鉄道に関する技術上の基準を定める省令の解釈基準、VII-7 第六十条、国土交通省)の例えば104ページ「第IX章」の2ないし3行には、「平成19年1月16日付け国鉄技第73号」という記載があるから、甲第3号証が、本件特許異議の申立時に提出された証拠説明書の「作成年月日」欄に記載された「平成14年3月8日」に作成されたものでないことは明らかである。 そこで、令和6年3月6日付けで当審は、当該証拠説明書を補正して、甲第3号証の内容が実際に公衆に知られる状態となった年月日を記載するとともに、その客観的根拠を明示するよう、手続補正指令書(方式)を申立人に通知した。 これに対し、申立人は、同月22日に手続補正書(方式)、補正された証拠説明書、及び「鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準の一部改正に関するパブリックコメントの募集について」(募集期限2009年4月24日)の写しを提出し、「遅くとも当該募集期限の当日には、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準」が公知であったことは明らかである。」(手続補正書(方式)の2ページ5及び6行)と主張した。 イ 申立人の主張について検討すると、提出された「鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準の一部改正に関するパブリックコメントの募集について」(募集期限2009年4月24日)の写しには、以下の記載がある(下線は当審で付した。)。 「意見募集対象 鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準の一部改正について[鉄道構造物等設計標準(鋼・合成構造物)の改正]」(1ページ12及び13行) ところで、甲第3号証の104ページ「第IX章」の2ないし3行には、 「構造物及び軌道の保全については、「鉄道構造物等維持管理標準の制定について」(平成19年1月16日付け国鉄技第73号)の通達によること。」 と記載されているから、上記「鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準の一部改正に関するパブリックコメントの募集について」(募集期限2009年4月24日)の写しにおける意見募集対象である[鉄道構造物等設計標(鋼・合成構造物)の改正]は、甲第3号証の104ページ「第IX章」の2ないし3行の内容を改正するものでないことが明らかである。 また、上記「鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準の一部改正に関するパブリックコメントの募集について」(募集期限2009年4月24日)の写しの全体をみても、「平成19年1月16日付け国鉄技第73号」という記載を含む甲第3号証の内容が、2009年4月24日の時点で、実際に公衆に知られる状態であったとは認められない。 そうすると、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準の一部改正に関するパブリックコメントの募集について」(募集期限2009年4月24日)の写しを根拠として、甲第3号証は2009年4月24日の時点で公知であったとする申立人の主張は、採用できない。 さらに、甲第3号証の内容が、2009年4月24日の時点で、実際に公衆に知られる状態であったと認めるに足りる証拠は見当たらない。 以上のとおりであるから、甲第3号証の内容が実際に公衆に知られる状態となった年月日は不明である。 ウ 上記「イ」で検討したとおり、甲第3号証については、その内容が実際に公衆に知られる状態となった年月日は不明であり、本件特許の国際出願日である2020年(令和2年)6月19日(優先権主張 令和元年9月17日)前に公知であったとはいえないから、甲第3号証を申立理由2(第29条第2項)の証拠として採用することはできない。 しかしながら、念のため、甲第3号証が本件特許の国際出願日前に公知であったと仮定して、以下検討を続ける。 (2) 甲第3号証に記載された事項 甲第3号証(鉄道に関する技術上の基準を定める省令の解釈基準、公知日は不明、VII-7 第六十条、国土交通省)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。) 「VII-7 第60条(保安通信設備)関係 1 電力指令所と運転指令所の間、電力指令所と変電所(被監視変電所を除く。)の間、運転指令所と主要な停車場の間及び閉そくの取扱い又は列車の運転の方向を打ち合わせる停車場相互間に設ける保安通信設備は、専用の回線を有すること。 2 新幹線の運転指令所と列車との間には、専用の保安通信設備を設けること。 3 主として地下式構造又は高架式構造の鉄道並びに懸垂式鉄道、跨座式鉄道、案内軌条こ式鉄道及び浮上式鉄道の本線にあっては、いずれの列車等からも変電所、電力指令所又は運転指令所に連絡通報することができる専用の保安通信設備を設けること。」 したがって、甲第3号証には、「新幹線の運転指令所と列車との間には、専用の保安通信設備を設ける」という技術的事項が記載されていると認められる。 5 甲第4号証について 甲第4号証(中村一城、川さき邦弘(当審注;「さき」の字は「山」と「立」と「可」とを組み合わせた字)、鉄道における通信システム、通信ソサイエティマガジン、No.17、[夏号]、2011年、pp. 44-53)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。) 「本解説では,鉄道における通信システムの概要と特徴について述べた後,現在使用されている主な業務用システムと,今後導入が期待されているシステムを紹介する.」(44ページ左欄8ないし10行) 「 鉄道の通信システムは,より安全・正確・快適な鉄道運行を実現するために,様々な情報を収集・伝達する重要な役割を果たしており,その使用目的により,列車の運行に欠かすことのできない情報を伝えるための通信システムと,お客さまサービス用の通信システムに大きく分けることができる.」(44ページ左欄下から7行ないし下から2行) 「 列車の運行に関わる情報については,「保安通信設備」と呼ばれる専用の通信システムによって伝送されている.」(44ページ右欄2及び3行) 「保安通信設備では,情報の不達や誤った情報の伝達があると,重大な事故に結びつく可能性があるため,通信システムには以下のような条件を満足することが求められる. 丸1 相手がどこにいても情報を伝えることができる(相手の位置を追跡して接続することができる).(当審注;甲第4号証については○の中に数字の1を意味する。以下同様。) 丸2 伝えたいときに確実に情報を伝えることができる(話中やふくそうによって通信が不可能になることがない.また接続時間,伝送遅延も少ない). 丸3 伝えたい情報を正確に伝えることができる(伝送品質が良い).」(44ページ右欄12ないし22行) 「 [図:0001410264000007.jpg] 」(45ページ) 「(1) 指令電話 指令電話は,指令と各駅や現場事務所,変電所等との間で直接通話するための設備である. ふくそうや話中の影響を避け,列車運行に関わる指示・情報を確実に伝える必要があるため,一般電話とは別に鉄道事業者の自営通信網で構築している.」(45ページ右欄15ないし20行) 「 固定無線通信システムは,固定間通信にSHF(Super High Frequency)の通信回線が導入されたのを始まりに,主に列車制御運行回線や連絡回線,営業管理システム用回線としで活用されてきた(表2). しかし,近年は,光ケーブルによる通倍網の普及に伴い,基幹回線網としての役割を終え,光回線網のバックアップ回線として一部で使用されている. 」(47ページ左欄下から11行ないし下から5行) 「 指令員と乗務員の間での連絡を行うための通倍システムが列車無線システムである.列車無線システムは,保安通信設備として列車の運行に欠かすことのできない設備であり, 2.でも述べたように,高い信頼性と伝送品質が求められている.」(47ページ右欄12ないし16行) 「 この周波数帯では,伝送に使用できる帯域を広く確保することができる一方で,降雨による減衰が大きいことなどから,現在,ワンマン運転時にホームにおける乗降客の様子などの監視画像を運転士へ伝送するシステムや車内広告情報を更新するためのシステムなど,近距離で大容量の情報をやり取りするシステムに利用されている.」(49ページ右欄下から13行ないし下から8行) 「 3.,4.では,主に列車の運行業務に関わる通信設備について述べた.ここでは,お客さまへ情報サービスを提供するための通信設備について述べる.お客さまヘサービスを提供するための通信設備としては,放送装置や運転情報提供など非常に多くの設備がある.これらは,様々な情報通信技術を活用したシステムとなっており,主に駅を中心に展開されている(図10). 近年は,駅構内のみならず,列車内でも様々な情報サービス,あるいは通信環境の提供サービスを行うための設備も導入されてきている.」(50ページ左欄下から14行ないし下から5行) 「 近年,汎用通信技術の進歩により,通信システムを手軽に,また安価に構築・利用できるようになりつつある.特に移動体通信技術について,より高速・大容量でなおかつ更なる高速移動に対応したシステムの研究開発が進められている.直接安全運行に寄与しない業務支援や,お客さま向けサービスのための情報伝送には,それらのシステムを応用することで,より高品質なサービスの提供が期待できる.一方,鉄道における業務上の情報,なかでも列車の運行に必要な情報は,安全に直結することから,できるだけ専用の通信システムを構築して常に安定した状態で確実に伝送することが望ましい.」(52ページ右欄下から2行ないし53ページ左欄9行) したがって、甲第4号証には、「列車の運行に関わる情報については,「保安通信設備」と呼ばれる専用の通信システムによって伝送されており、また、指令電話は、列車運行に関わる指示・情報を確実に伝える必要があるため、一般電話とは別に鉄道事業者の自営通信網で構築しており、さらに、固定無線通信システムは、近年は、基幹回線網としての役割を終え、光回線網のバックアップ回線として一部で使用されており、その上、移動体通信技術について、より高速・大容量でなおかつ更なる高速移動に対応したシステムの研究開発が進められており、直接安全運行に寄与しない業務支援や、お客さま向けサービスのための情報伝送には、それらのシステムを応用することで、より高品質なサービスの提供が期待できる一方、列車の運行に必要な情報は、できるだけ専用の通信システムを構築して常に安定した状態で確実に伝送することが望ましい」という技術的事項が記載されていると認められる。 6 甲第5号証について 甲第5号証(川さき邦弘(当審注;「さき」の字は「山」と「立」と「可」とを組み合わせた字)、鉄道における情報ネットワークの活用に関する研究の動向、RRR、Vol.75、No.8、2018年8月、pp.4-7)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。) 「列車を安全に走らせるためには,「列車を進めてもよいか」を判断するための情報を伝える必要があります。このため鉄道では,列車の安全・安定運行を支えるための情報通信網=情報ネットワークを独自につくり,運用してきました。・・・現在はネットワークが充実し,鉄道システム全体が情報ネットワークで結ばれつつあります(図1)。」(4ページ左欄5行ないし中欄5行) 「 [図:0001410264000008.jpg] 」(4ページ) 「無線式列車制御システムの導入のメリットは,地上設備の削減と,柔軟な列車間隔の設定などがあげられますが,予測制御や自動運転など,より高度な列車制御システムに発展させるためのベースとして活用できるというメリットもあります。」(5ページ中欄8ないし14行) 「 [図:0001410264000009.jpg] 」(5ページ) 「第5世代移動通信システム(5G) 現在使用されている携帯電話網であるLTEの後継として開発されている移動通信システム。第5世代の英語表記である「5th Generation」を略して「5G(ファイブジー)」とよばれます。高速・大容量化(LTEの約1000倍)だけでなく,膨大な数の端末の接続と低遅延も実現され,高信頼性を要求されるクリティカルな用途への適用も期待されています。」(5ページ右欄下の枠囲み) 「将来,ミリ波による列車無線が実用化されれば,これまで実現できなかった運転業務の効率化や旅客サービスの向上,あるいは新しい運転制御方式の導入が期待できます。さらに,間もなくサービス開始となる5Gなど,新しい公衆網や汎用の無線通信技術も,より安全で安定した列車の運行の実現するためのツール・手段として積極的に活用できるようになることが期待されます。ただし,列車の運行制御など高い信頼性・安全性が要求される情報を必要なときに確実に伝送するためには,耐妨害性や通信品質の安定性を確保しなければなりません。鉄道総研では,複数の無線通信媒体をシームレスにリンクすることにより,大容量・高信頼の鉄道用無線通信ネットワークを実現するための研究開発に取り組んでいます(図4)。」(6ページ右欄12行ないし7ページ左欄2行) 「 [図:0001410264000010.jpg] 」(7ページ) したがって、甲第5号証には、「鉄道では、列車の安全・安定運行を支えるための情報通信網=情報ネットワークを独自につくり、運用してきており、将来、ミリ波による列車無線が実用化されれば、これまで実現できなかった運転業務の効率化や旅客サービスの向上、あるいは新しい運転制御方式の導入が期待でき、さらに、5Gなど、新しい公衆網や汎用の無線通信技術も、より安全で安定した列車の運行の実現するためのツール・手段として積極的に活用できるようになることが期待されるが、列車の運行制御など高い信頼性・安全性が要求される情報を必要なときに確実に伝送するためには、耐妨害性や通信品質の安定性を確保しなければならない」という技術的事項が記載されていると認められる。 7 甲第6号証について 甲第6号証(川さき邦弘(当審注;「さき」の字は「山」と「立」と「可」とを組み合わせた字)、中村一城、ミリ波技術の鉄道応用に関する動向、鉄道総研報告、Vol.30、No.1、2016年1月、pp.51-54)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。) 「3.2 鉄道分野における利用状況 鉄道においても,一部でミリ波が利用されている。通信に関しては,ワンマン連転時にホームにおける乗降客の様子などの監視画像を運転士へ伝送するシステムや,車内広告情報を更新するためのシステム,あるいは車両基地構内における入換作業を支援するための無線システムなど,近距離で大容量の情報を伝送する必要のある用途に60GHz帯の簡易無線システム等が利用されている。」(53ページ左欄3ないし10行) 「将来,より安全で高度な列車制御,対列車乗務員向けなどの業務用通信,さらに乗客へのサービス提供などに無線を適用する箇所の拡大や,画像などの大容量データの通信に対する要求が高まることが想定される。この際に,高速通信と高信頼性の両立や新たな周波数資源の確保が課題となる。高速・大容量の無線通信を実現するためには,通信事業者が提供するサービスを利用する選択肢もある。しかし,幹線系や都市圏における列車制御や業務用通信に関しては,常時安定した通信性能を得られることが必須であり,鉄道事業者が専用で使用できる無線通信ネットワークが必要になると考えられる。」(53ページ左欄下から7行ないし右欄5行) 「さらに,運転保安用と旅客サービス用とで使用帯域を分離することが要求される可能性もある。」(53ページ右欄下から1行ないし54ページ左欄1行) したがって、甲第6号証には、「鉄道においても、ワンマン連転時にホームにおける乗降客の様子などの監視画像を運転士へ伝送するシステムや、車内広告情報を更新するためのシステム、あるいは車両基地構内における入換作業を支援するための無線システムなど、近距離で大容量の情報を伝送する必要のある用途に60GHz帯の簡易無線システム等が利用されている」という技術的事項が記載されていると認められる。 8 甲第8号証について 甲第8号証(篠田憲幸、水間毅、ヨーロッパにおける鉄道の自動運転の現状、JREA、Vol.61、No.8、2018年、pp.39-42)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。) 「5. 自動運転のシステム構成 自動運転のシステム構成は、ほぼ同じなので、ミラノの例を挙げて説明する4)。ミラノのメトロM5号線は、2013年に開業した12.9km、19駅の路線である。 地上側は、ホーム監視カメラ・インターホン・ホームドア制御装置・信号機・ATO駅地上装置等で構成され、車上側は、客室の監視カメラ・緊急ブレーキ・緊急インターホン・客室および床下の火災警報システム・ATPとATOからなるATC搭載コンピュータ・ドアの保護装置・戸ばさみ検出・各車軸の脱線検知装置等で構成されている。 また、駅構内と車両内で合わせて2,000台の監視カメラが設置され、非常時に対応している。このシステムは、制御および保守センターに設置された完全自動化コンピュータシステムによって制御される。 自動運転の制御・監視を行う中央指令所OCC(Operation Control Center)には、電車の状態情報などが伝送され、詳細な監視が行われている。」(41ページ右欄5ないし22行) したがって、甲第8号証には、「駅構内と車両内で合わせて2,000台の監視カメラが設置されている」という技術的事項が記載されていると認められる。 9 甲第9号証について 甲第9号証(末田康一、片山武彦、ソフトバンクの5GとIoTにおける取組み、鉄道と電気技術、Vol.29、No.10、2018年10月、pp.3-13)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。) 「 次世代の移動通信システムとして期待されているのが第5世代(5G)となる。4Gまでは携帯電話の最大スループット向上を目的とし、高速・大容量通信の提供を目指したシステムだが、5Gでは日常生活をより便利、かつ安全にするサービスや技術の変革が期待され、携帯電話のみではなくあらゆるモノがネットワークに繋がることで社会インフラを劇的に変化させる時代がくると言われている。」(4ページ右欄下から6行ないし5ページ左欄2行) 「 また、列車や鉄道沿線の各種機器にカメラやセンサーを設置することで、軌道や架線の状態を高画質映像による監視や、振動、電圧等のセンサーデータをリアルタイムで取得、集約することにより、機器の状態監視や故障予測など障害対応に活用できるなど運用、保守面で作業の効率化が図れる。」(12ページ右欄3ないし8行) したがって、甲第9号証には、「列車や鉄道沿線の各種機器にカメラやセンサーを設置する」という技術的事項が記載されていると認められる。 10 甲第10号証について 甲第10号証(特開2002-240716号公報)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。) 「【課題】 本発明は従前のシステムと同等以上の保安度を確保しつつ、段階的な導入を実現できる列車制御システムを提供することを目的とする。 【解決手段】 本発明に係る列車制御システムは、所定の無線ゾーンを有する無線基地局を駅に設置して構築する無線列車制御システムと、軌道に設けられた地上子と列車に設けられた車上子とを用いて構築する点制御ATSシステムとを有する。そして、無線機を有する車両が無線ゾーン内に位置し、無線基地局と車両との間に無線回線が設定しているときは、無線列車制御システムによる列車制御を行う。一方、車両が無線ゾーン外に位置し、無線基地局と車両との間に無線回線が設定できないときは、点制御ATSシステムによる列車制御を行う。よって、無線の信頼性が確立するまでは既存のシステムのバックアップを受け、信頼性が確立された後に無線を全面的に制御に用いるシステムへスムーズな移行することが可能となる。」(1ページ要約欄) したがって、甲第10号証には、「無線の信頼性が確立するまでは既存のシステムのバックアップを受ける」という技術的事項が記載されていると認められる。 11 甲第11号証について 甲第11号証(特開平11-59421号公報)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。) 「【解決手段】列車側で、地上側の異常の発生を検知すると、無線通信をバックアップ系の通信に切り替え、分岐がある所では、列車から分岐を制御する装置に対して直接進路を申告し、進路を確保する。」(1ページ要約欄) したがって、甲第11号証には、「列車側で、地上側の異常の発生を検知すると、無線通信をバックアップ系の通信に切り替える」という技術的事項が記載されていると認められる。 第5 申立理由についての当審の判断 1 申立理由1(第29条第1項第3号)について (1) 本件特許発明1と甲1発明の対比・判断 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 ア (ア) 甲1発明のシミュレーションモデルは、「地上制御装置、車上制御装置から構成される列車運行制御用のネットワーク・・・を組み合わせて構成され、前記車上制御装置を試験車に配置し・・・た」ものであって、甲1発明の列車運用制御用の「試験車」は列車であるから、本件特許発明1の「列車」に相当する、といえる。 また、甲1発明の「車上制御装置」及び「第1のRITPルータ」は「試験車に配置され」ており、さらに、「第1のRITPルータ」と接続された「第1の車上無線機」、「第2の車上無線機」、及び「車上センサ」も同様に、試験車に配置されていると解され、甲1発明において、試験車に配置された、「第1のRITPルータ」、「車上制御装置」、「第1の車上無線機」、「第2の車上無線機」、及び「車上センサ」はいずれも、列車側の装置であるから、本件特許発明1の「列車側の車上装置」に含まれる、といえる。 そして、本件特許発明1の「列車側の車上装置が搭載し地上装置との無線通信を制御する無線制御装置」と、甲1発明における列車側の装置である「第1のRITPルータ」は、「列車側の車上装置が搭載」する「装置」である点で共通する、といえる。 さらに、甲1発明の「地上制御装置」及び「第2のRITPルータ」は「地上の所内試験線に配置され」ており、また、「第2のRITPルータ」と「地上ネットワークを介して」接続された「5GHzアクセスポイント」、「350MHz基地局」、及び「モニタ装置」も同様に、地上の所内試験線に配置されていると解され、甲1発明において、地上の所内試験線に配置された、「第2のRITPルータ」、「地上制御装置」、「5GHzアクセスポイント」、「350MHz基地局」、及び「モニタ装置」はいずれも、地上側の装置であるから、本件特許発明1の「地上装置」に含まれる、といえる。 その上、「第1のRITPルータ」は、「情報の伝送を制御する機能の一部」を実装したルータであって、かつ、「350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線と,5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線の2種類の伝送媒体」によって第2のRITPルータと接続されており、「前記伝送媒体を選択」するもの、すなわち2種類の無線通信回線の伝送媒体を選択制御するものであるから、「350MHz基地局」又は「5GHzアクセスポイント」との無線通信に関連する制御を行うものであるといえる。 そうすると、本件特許発明1の「列車側の車上装置が搭載し地上装置との無線通信を制御する無線制御装置」と、甲1発明において「350MHz基地局」又は「5GHzアクセスポイント」との無線通信に関連する制御を行う「第1のRITPルータ」は、「列車側の車上装置が搭載し地上装置との無線通信」に関連する制御を行う「制御装置」である点で共通する、といえる。 したがって、以上をまとめると、本件特許発明1の「列車側の車上装置が搭載し地上装置との無線通信を制御する無線制御装置」と、甲1発明の「地上制御装置、車上制御装置から構成される列車運行制御用のネットワーク・・・を組み合わせて構成され、前記車上制御装置を試験車に配置し、前記地上制御装置を地上の所内試験線に配置したシミュレーションモデルにおいて、前記試験車に配置された第1のRITPルータ」であって、「前記RITPルータは、情報の伝送を制御する機能の一部・・・を実装したルータであって、・・・前記伝送媒体を選択し」、「前記第1のRITPルータは、・・・第1の車上無線機、第2の車上無線機、及び車上センサと接続され、また、350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線と、5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線の2種類の伝送媒体によって前記第2のRITPルータと接続されており」、「前記第2のRITPルータは、前記地上ネットワークを介して、・・・前記5GHzアクセスポイント、前記350MHz基地局、及びモニタ装置と接続され」、「地上の前記所内試験線に配置された第2のRITPルータである」、「第1のRITPルータ」は、「列車側の車上装置が搭載し地上装置との無線通信」に関連する制御を行う「制御装置」である点で共通する。 (イ) 上記「(ア)」で説示したとおり、甲1発明の「第2のRITPルータ」、「地上制御装置」、「5GHzアクセスポイント」、「350MHz基地局」、及び「モニタ装置」はいずれも、地上側の装置であるから、本件特許発明1の「地上装置」に含まれる、といえる。 そして、本件特許発明1の「地上装置が備え列車側の車上装置との無線通信を制御する無線制御装置」と、甲1発明における地上側の装置である「第2のRITPルータ」は、「地上装置が備え」る「装置」である点で共通する、といえる。 また、「第2のRITPルータ」は、「情報の伝送を制御する機能の一部」を実装したルータであって、かつ、「350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線と,5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線の2種類の伝送媒体」によって第1のRITPルータと接続されており、「伝送媒体を選択」するもの、すなわち2種類の無線通信回線の伝送媒体を選択制御するものであるから、「第2の車上無線機」又は「第1の車上無線機」との無線通信に関連する制御を行うものであるといえる。 そうすると、本件特許発明1の「地上装置が備え列車側の車上装置との無線通信を制御する無線制御装置」と、甲1発明において「第2の車上無線機」又は「第1の車上無線機」との無線通信に関連する制御を行う「第2のRITPルータ」は、「列車側の車上装置との無線通信」に関連する制御を行う「制御装置」である点で共通する、といえる。 したがって、以上をまとめると、本件特許発明1の「地上装置が備え列車側の車上装置との無線通信を制御する無線制御装置」と、甲1発明の「地上制御装置、車上制御装置から構成される列車運行制御用のネットワーク・・・を組み合わせて構成され、前記車上制御装置を試験車に配置し、前記地上制御装置を地上の所内試験線に配置したシミュレーションモデルにおいて、・・・地上の前記所内試験線に配置された第2のRITPルータ」であって、「前記RITPルータは、情報の伝送を制御する機能の一部・・・を実装したルータであって、・・・前記伝送媒体を選択し」、「前記第2のRITPルータは、前記地上ネットワークを介して、・・・前記5GHzアクセスポイント、前記350MHz基地局、及びモニタ装置と接続され、また、前記350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線と、前記5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線の前記2種類の伝送媒体によって前記第1のRITPルータと接続されており」、「前記第1のRITPルータは、・・・第1の車上無線機、第2の車上無線機、及び車上センサと接続され」、「前記試験車に配置された第1のRITPルータ」である、「第2のRITPルータ」は、「地上装置が備え列車側の車上装置との無線通信」に関連する制御を行う「制御装置」である点で共通する。 (ウ) 上記「(ア)」及び「(イ)」をまとめると、本件特許発明1の「列車側の車上装置が搭載し地上装置との無線通信を制御する無線制御装置または地上装置が備え列車側の車上装置との無線通信を制御する無線制御装置」と、甲1発明の「地上制御装置、車上制御装置から構成される列車運行制御用のネットワーク・・・を組み合わせて構成され、前記車上制御装置を試験車に配置し、前記地上制御装置を地上の所内試験線に配置したシミュレーションモデルにおいて、前記試験車に配置された第1のRITPルータ、又は地上の前記所内試験線に配置された第2のRITPルータである、RITPルータであって」、「前記RITPルータは、情報の伝送を制御する機能の一部・・・を実装したルータであって、・・・前記伝送媒体を選択し」、「前記第1のRITPルータは、・・・第1の車上無線機、第2の車上無線機、及び車上センサと接続され、また、350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線と、5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線の2種類の伝送媒体によって前記第2のRITPルータと接続されており」、「前記第2のRITPルータは、前記地上ネットワークを介して、・・・前記5GHzアクセスポイント、前記350MHz基地局、及びモニタ装置と接続され、また、前記350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線と、前記5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線の前記2種類の伝送媒体によって前記第1のRITPルータと接続されて」いる、「RITPルータ」は、「列車側の車上装置が搭載し地上装置との無線通信」に関連する制御を行う「制御装置または地上装置が備え列車側の車上装置との無線通信」に関連する制御を行う「制御装置」である点で共通する。 イ (ア) 甲1発明では、「前記車上制御装置と前記地上制御装置の間では0.5秒ごとに150バイトの情報を伝送し、前記車上センサからは0.1秒ごとに50~800バイトのモニタリング情報を伝送することを想定してシミュレーションした結果、350MHz帯・5GHz帯とも正常に通信できる場合には、制御情報・モニタリング情報とも伝送遅延が300ms以内となり」、ここで「350MHz帯・5GHz帯とも正常に通信できる場合には、制御情報・モニタリング情報とも伝送遅延が300ms以内とな」ったことは、「350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線」及び「5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線」がともに正常に通信できる場合には、「制御情報」及び「モニタリング情報」の双方が、「350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線」及び「5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線」のうち少なくとも一方を介して伝送されたことを意味する、といえる。 そうすると、甲1発明の「制御情報」及び「モニタリング情報」は、本件特許発明1の「伝送データ」に含まれる。 また、甲1発明において、「前記第1のRITPルータは、・・・前記第1の車上無線機、前記5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線、5GHzアクセスポイント、・・・を介して前記第2のRITPルータと接続されるとともに、前記第2の車上無線機、前記350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線、350MHz基地局、・・・を介して前記第2のRITPルータと接続されて」いる。 さらに、上記「ア」の「(ア)」で説示したとおり、甲1発明の「第1の車上無線機」及び「第2の車上無線機」はいずれも、本件特許発明1の「列車側の車上装置」に含まれ、また、甲1発明の「5GHzアクセスポイント」及び「350MHz基地局」はいずれも、本件特許発明1の「地上装置」に含まれる、といえる。 そうすると、甲1発明において、「350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線」及び「5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線」のうち少なくとも一方を介して伝送すなわち送受することは、本件特許発明1の「前記車上装置と前記地上装置との間で送受する」ことに含まれる。 したがって、以上をまとめると、甲1発明の「制御情報」及び「モニタリング情報」は、本件特許発明1の「前記車上装置と前記地上装置との間で送受する伝送データ」に含まれる、といえる。 (イ) 上記「(ア)」で説示したとおり、甲1発明は、「350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線」及び「5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線」がともに正常に通信できる場合には、「制御情報」及び「モニタリング情報」の双方が、「350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線」及び「5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線」のうち少なくとも一方を介して伝送されるものである。 また、甲1発明は、「前記5GHz帯の無線通信回線が途絶した場合には、伝送遅延が大きくなるものの、前記制御情報は許容伝送遅延時間である1秒以内に収まり、前記モニタリング情報も伝送される」ものであるから、「5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線」が途絶した場合には、「350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線」を介して、「制御情報」及び「モニタリング情報」の双方が伝送される、といえる。 さらに、甲1発明において、「前記RITPルータは、・・・要求された品質が確保できるよう、前記RITPルータ間の伝送経路を選択して情報を伝送し、当該要求された品質については、許容できるデータの損失率と遅延時間を、それぞれ5つのクラスに分けて定義し、前記情報の種類・用途に応じて前記損失率と前記遅延時間を個別に指定できるものであり」、その上、「前記RITPルータは、・・・複数の前記伝送媒体の最新の状態を把握し、伝送情報の信頼性レベルに応じて前記伝送媒体を選択」するものであるところ、ここで、「情報」及び「伝送情報」は「制御情報」及び「モニタリング情報」を含み、また、RITPルータが「伝送情報の信頼性レベルに応じて前記伝送媒体を選択」することは「要求された品質が確保できるよう、前記RITPルータ間の伝送経路を選択」することであり、さらに、「複数の前記伝送媒体」は「350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線と、5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線の2種類の伝送媒体」を含む、と解される。 そうすると、甲1発明において、「要求された品質が確保できるよう、前記RITPルータ間の伝送経路を選択して」「制御情報」及び「モニタリング情報」を伝送することは、「350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線と、5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線の2種類の伝送媒体」「の最新の状態を把握し」、「前記伝送媒体を選択」する「RITPルータ」によってなされる、といえる。 加えて、甲1発明の「RITPルータ」は、「情報の伝送を制御する機能の一部(情報の種類と伝送路の状態に応じて伝送経路を切り替える機能)を実装したルータ」であり、ここで、「情報の種類」は、前記「情報の種類・用途」といえ、また、「伝送路の状態」は、「5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線」が正常に通信できるか、又は途絶したかを含むと解される。 そうすると、甲1発明の「RITPルータ」は、「制御情報」及び「モニタリング情報」を、「情報の種類・用途」と、「5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線」が正常に通信できるか、又は途絶したかに応じて、「350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線」及び「5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線」のうち少なくとも一方、又は「350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線」に振り分ける制御を行うものといえる。 ここで、甲1発明が「制御情報」及び「モニタリング情報」を振り分ける際の「情報の種類・用途」は、「制御情報」及び「モニタリング情報」それぞれの「情報の種類・用途」を意味することが明らかであるから、本件特許発明1の「当該伝送データのデータ内容」と、甲1発明の「情報の種類・用途」は、「当該伝送データ」に関する情報である点で共通する。 したがって、上記「ア」の「(ウ)」のまとめを考慮すると、本件特許発明1の「前記無線制御装置は、前記車上装置と前記地上装置との間で送受する伝送データを当該伝送データのデータ内容に応じて、専用無線を使用して通信する第1のデータと、汎用無線を使用して通信する第2のデータとに振り分ける制御を行」うことと、甲1発明の「前記RITPルータは、・・・要求された品質が確保できるよう、前記RITPルータ間の伝送経路を選択して情報を伝送し、当該要求された品質については、許容できるデータの損失率と遅延時間を、それぞれ5つのクラスに分けて定義し、前記情報の種類・用途に応じて前記損失率と前記遅延時間を個別に指定できるものであり、・・・前記RITPルータは、情報の伝送を制御する機能の一部(情報の種類と伝送路の状態に応じて伝送経路を切り替える機能)を実装したルータであって、・・・複数の前記伝送媒体の最新の状態を把握し、伝送情報の信頼性レベルに応じて前記伝送媒体を選択し、・・・前記第1のRITPルータは、・・・第1の車上無線機、第2の車上無線機、・・・と接続され、また、・・・前記第1の車上無線機、前記5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線、5GHzアクセスポイント、・・・を介して前記第2のRITPルータと接続されるとともに、前記第2の車上無線機、前記350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線、350MHz基地局、・・・を介して前記第2のRITPルータと接続されており、・・・前記第2のRITPルータは、・・・前記5GHzアクセスポイント、前記350MHz基地局、・・・と接続され、・・・前記車上制御装置と前記地上制御装置の間では0.5秒ごとに150バイトの情報を伝送し、前記車上センサからは0.1秒ごとに50~800バイトのモニタリング情報を伝送することを想定してシミュレーションした結果、350MHz帯・5GHz帯とも正常に通信できる場合には、制御情報・モニタリング情報とも伝送遅延が300ms以内となり、前記5GHz帯の無線通信回線が途絶した場合には、伝送遅延が大きくなるものの、前記制御情報は許容伝送遅延時間である1秒以内に収まり、前記モニタリング情報も伝送される」ことは、前記「制御装置は、前記車上装置と前記地上装置との間で送受する伝送データを」少なくとも「当該伝送データ」に関する情報「に応じて、振り分ける制御を行」う点で共通する、といえる。 ウ したがって、上記「ア」及び「イ」を総合すれば、本件特許発明1と甲1発明は、以下の点で一致し、また相違する。 <一致点> 「列車側の車上装置が搭載し地上装置との無線通信に関連する制御を行う制御装置または地上装置が備え列車側の車上装置との無線通信に関連する制御を行う制御装置であって、 前記制御装置は、前記車上装置と前記地上装置との間で送受する伝送データを少なくとも当該伝送データに関する情報に応じて、振り分ける制御を行う、 制御装置。」 <相違点1> 「制御装置」について、本件特許発明1では、列車側の車上装置が搭載し地上装置との「無線通信を制御する無線制御装置」または地上装置が備え列車側の車上装置との「無線通信を制御する無線制御装置」であるとの発明特定事項を有するのに対して、甲1発明では、当該発明特定事項が特定されていない点。 <相違点2> 「当該伝送データを少なくとも当該伝送データに関する情報に応じて、振り分ける制御」について、本件特許発明1では、「伝送データを当該伝送データのデータ内容に応じて、専用無線を使用して通信する第1のデータと、汎用無線を使用して通信する第2のデータとに振り分ける制御を行い、前記第1のデータは、列車制御情報、自動運転のための制御情報および保守情報に関する少なくともいずれかのデータであり、前記第2のデータは、前記列車側に搭載する機器からのセンサデータ、自動運転のための映像データおよび旅客サービスデータの少なくともいずれかのデータである」のに対して、甲1発明では、「情報の種類と伝送路の状態に応じて伝送経路を切り替える機能」「を実装したルータであって」、「複数の前記伝送媒体の最新の状態を把握し、伝送情報の信頼性レベルに応じて前記伝送媒体を選択し」、「350MHz帯・5GHz帯とも正常に通信できる場合には、制御情報・モニタリング情報とも伝送遅延が300ms以内となり、前記5GHz帯の無線通信回線が途絶した場合には、伝送遅延が大きくなるものの、前記制御情報は許容伝送遅延時間である1秒以内に収まり、前記モニタリング情報も伝送される」もの、つまり、「350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線」及び「5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線」がともに正常に通信できる場合には、「制御情報」及び「モニタリング情報」の双方を、「350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線」及び「5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線」のうち少なくとも一方を介して伝送し、また、「前記5GHz帯の無線通信回線が途絶した場合には、「制御情報」及び「モニタリング情報」の双方を、「350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線」を介して伝送するものである点。 したがって、本件特許発明1は、甲1発明でない。 (2) 本件特許発明2及び3と甲1発明の対比・判断 本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものであって、少なくとも上記「(1)」の「ウ」で述べた<相違点1>及び<相違点2>において甲1発明と相違するから、本件特許発明2は、甲1発明でない。 また、本件特許発明3は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件特許発明2と同様に、甲1発明でない。 (3) 本件特許発明4ないし6と甲1発明の対比・判断 本件特許発明4は、本件特許発明1の「前記車上装置が搭載し前記地上装置との無線通信を制御する前記無線制御装置」を含む「鉄道車両」であって、少なくとも上記「(1)」の「ウ」で述べた<相違点1>及び<相違点2>において甲1発明と相違するから、本件特許発明4は、甲1発明でない。 また、本件特許発明5は、本件特許発明1の「前記地上装置が備え前記車上装置との無線通信を制御する前記無線制御装置」を含む「地上装置」であって、少なくとも上記「(1)」の「ウ」で述べた<相違点1>及び<相違点2>において甲1発明と相違するから、本件特許発明5は、甲1発明でない。 さらに、本件特許発明6は、本件特許発明4の「前記無線制御装置」、及び本件特許発明5の「前記無線制御装置」を含む「無線制御システム」であって、少なくとも上記「(1)」の「ウ」で述べた<相違点1>及び<相違点2>において甲1発明と相違するから、本件特許発明6は、甲1発明でない。 (4) 本件特許発明1と甲7発明の対比・判断 本件特許発明1と甲7発明を対比する。 ア 甲7発明の「RITPルータ」は、「地上の鉄道業務用各種システムに接続され」、「前記地上の鉄道業務用各種システムと列車の間で5Gネットワークを介して画像・データを伝送する」ものであって、「前記地上の鉄道業務用各種システム」と同様地上に設けられていると解されるから、甲7発明の「RITPルータ」及び「地上の鉄道業務用各種システム」はいずれも、本件特許発明1の「地上装置」に含まれる。 そして、本件特許発明1の「列車側の車上装置が搭載し地上装置との無線通信を制御する無線制御装置または地上装置が備え列車側の車上装置との無線通信を制御する無線制御装置」と、甲7発明の「地上の鉄道業務用各種システムに接続されたRITPルータであって、・・・前記地上の鉄道業務用各種システムと列車の間で5Gネットワークを介して画像・データを伝送する・・・前記RITPルータ」は、「地上装置が備え・・・る・・・装置」である点で共通する、といえる。 さらに、甲7発明では、「前記地上の鉄道業務用各種システムと前記列車の車上間で前記画像・データが伝送され」るから、「列車の車上」が当然備える伝送手段は、本件特許発明1の「列車側の車上装置」に含まれるといえる。 加えて、甲7発明の「RITPルータ」は、「前記地上の鉄道業務用各種システムと列車の間で5Gネットワークを介して画像・データを伝送」し、また、「用途ごとに必要な品質で送れる伝送路を自動選択する」ものであるから、「列車の車上」が当然備える伝送手段との通信を制御しているといえる。 そうすると、本件特許発明1の「列車側の車上装置との無線通信を制御する無線制御装置」と、甲7発明の「地上の鉄道業務用各種システムに接続されたRITPルータであって、・・・前記RITPルータが、前記地上の鉄道業務用各種システムと列車の間で5Gネットワークを介して画像・データを伝送することにより、前記地上の鉄道業務用各種システムと前記列車の車上間で前記画像・データが伝送され、・・・用途ごとに必要な品質で送れる伝送路を自動選択する、・・・前記RITPルータ」は、「列車側の車上装置との・・・通信を制御する・・・制御装置」である点で共通する、といえる。 以上をまとめると、本件特許発明1の「列車側の車上装置が搭載し地上装置との無線通信を制御する無線制御装置または地上装置が備え列車側の車上装置との無線通信を制御する無線制御装置」と、甲7発明の「地上の鉄道業務用各種システムに接続されたRITPルータであって、・・・前記RITPルータが、前記地上の鉄道業務用各種システムと列車の間で5Gネットワークを介して画像・データを伝送することにより、前記地上の鉄道業務用各種システムと前記列車の車上間で前記画像・データが伝送され、・・・用途ごとに必要な品質で送れる伝送路を自動選択する、・・・前記RITPルータ」は、「地上装置が備え列車側の車上装置との通信を制御する制御装置」である点で、共通する。 イ 甲7発明の「画像・データ」は、「前記地上の鉄道業務用各種システムと前記列車の車上間で」伝送されるから、本件特許発明1の「前記車上装置と前記地上装置との間で送受する伝送データ」に含まれる。 また、甲7発明の「RITPルータ」が、「用途ごとに必要な品質で送れる伝送路を自動選択する」ことは、「用途ごとに必要な品質で」「画像・データ」を「送れる伝送路を自動選択」すなわち制御することを意味するといえる。 そうすると、本件特許発明1の「前記無線制御装置は、前記車上装置と前記地上装置との間で送受する伝送データを当該伝送データのデータ内容に応じて、専用無線を使用して通信する第1のデータと、汎用無線を使用して通信する第2のデータとに振り分ける制御を行」うことと、甲7発明の「前記RITPルータが、前記地上の鉄道業務用各種システムと列車の間で5Gネットワークを介して画像・データを伝送することにより、前記地上の鉄道業務用各種システムと前記列車の車上間で前記画像・データが伝送され、・・・前記RITPルータは、用途ごとに必要な品質で送れる伝送路を自動選択する」ことは、「前記制御装置は、前記車上装置と前記地上装置との間で送受する伝送データを・・・制御」する点で、共通する。 ウ したがって、上記「ア」及び「イ」を総合すれば、本件特許発明1と甲7発明は、以下の点で一致し、また相違する。 <一致点> 「地上装置が備え列車側の車上装置との通信を制御する制御装置であって、 前記制御装置は、前記車上装置と前記地上装置との間で送受する伝送データを制御する、 制御装置。」 <相違点A> 「制御装置」について、本件特許発明1では、列車側の車上装置が搭載し地上装置との「無線通信を制御する無線制御装置」または地上装置が備え列車側の車上装置との「無線通信を制御する無線制御装置」であるとの発明特定事項を有するのに対して、甲7発明では、当該発明特定事項が特定されていない点。 <相違点B> 「伝送データを制御」することについて、本件特許発明1では、「当該伝送データのデータ内容に応じて、専用無線を使用して通信する第1のデータと、汎用無線を使用して通信する第2のデータとに振り分ける制御を行い、前記第1のデータは、列車制御情報、自動運転のための制御情報および保守情報に関する少なくともいずれかのデータであり、前記第2のデータは、前記列車側に搭載する機器からのセンサデータ、自動運転のための映像データおよび旅客サービスデータの少なくともいずれかのデータである」との発明特定事項を有するのに対して、甲7発明では、「用途ごとに必要な品質で送れる伝送路を自動選択する」ものであるが、当該発明特定事項が特定されていない点。 したがって、本件特許発明1は、甲7発明でない。 (5) 本件特許発明2及び3と甲7発明との対比・判断 本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものであって、少なくとも上記「(4)」の「ウ」で述べた<相違点A>及び<相違点B>において甲7発明と相違するから、本件特許発明2は、甲7発明ではない。 また、本件特許発明3は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件特許発明2と同様に、甲7発明でない。 (6) 本件特許発明4ないし6と甲7発明との対比・判断 本件特許発明4は、本件特許発明1の「前記車上装置が搭載し前記地上装置との無線通信を制御する前記無線制御装置」を含む「鉄道車両」であって、少なくとも上記「(4)」の「ウ」で述べた<相違点A>及び<相違点B>において甲7発明と相違するから、本件特許発明4は、甲7発明でない。 また、本件特許発明5は、本件特許発明1の「前記地上装置が備え前記車上装置との無線通信を制御する前記無線制御装置」を含む「地上装置」であって、少なくとも上記「(4)」の「ウ」で述べた<相違点A>及び<相違点B>において甲7発明と相違するから、本件特許発明5は、甲7発明でない。 さらに、本件特許発明6は、本件特許発明4の「前記無線制御装置」、及び本件特許発明5の「前記無線制御装置」を含む「無線制御システム」であって、少なくとも上記「(4)」の「ウ」で述べた<相違点A>及び<相違点B>において甲7発明と相違するから、本件特許発明6は、甲7発明でない。 (7) 申立理由1についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし6はいずれも甲1発明でなく、また、本件特許発明1ないし6はいずれも甲7発明でない。 したがって、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1ないし6は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。 2 申立理由2(第29条第2項)について (1)本件特許発明1について ア 本件特許発明1と甲1発明の相違点について (ア) 上記「1」の「(1)」の「ウ」で指摘したとおり、本件特許発明1と甲1発明は、以下の点で一致し、また相違する。 <一致点> 「列車側の車上装置が搭載し地上装置との無線通信に関連する制御を行う制御装置または地上装置が備え列車側の車上装置との無線通信に関連する制御を行う制御装置であって、 前記制御装置は、前記車上装置と前記地上装置との間で送受する伝送データを少なくとも当該伝送データに関する情報に応じて、振り分ける制御を行う、 制御装置。」 <相違点1> 「制御装置」について、本件特許発明1では、列車側の車上装置が搭載し地上装置との「無線通信を制御する無線制御装置」または地上装置が備え列車側の車上装置との「無線通信を制御する無線制御装置」であるとの発明特定事項を有するのに対して、甲1発明では、当該発明特定事項が特定されていない点。 <相違点2> 「当該伝送データを少なくとも当該伝送データに関する情報に応じて、振り分ける制御」について、本件特許発明1では、「伝送データを当該伝送データのデータ内容に応じて、専用無線を使用して通信する第1のデータと、汎用無線を使用して通信する第2のデータとに振り分ける制御を行い、前記第1のデータは、列車制御情報、自動運転のための制御情報および保守情報に関する少なくともいずれかのデータであり、前記第2のデータは、前記列車側に搭載する機器からのセンサデータ、自動運転のための映像データおよび旅客サービスデータの少なくともいずれかのデータである」のに対して、甲1発明では、「情報の種類と伝送路の状態に応じて伝送経路を切り替える機能」「を実装したルータであって」、「複数の伝送媒体の最新の状態を把握し、伝送情報の信頼性レベルに応じて伝送媒体を選択し」、「350MHz帯・5GHz帯とも正常に通信できる場合には、制御情報・モニタリング情報とも伝送遅延が300ms以内となり、5GHz帯の無線通信回線が途絶した場合には、伝送遅延が大きくなるものの、制御情報は許容伝送遅延時間である1秒以内に収まり、モニタリング情報も伝送される」もの、つまり、「350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線」及び「5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線」がともに正常に通信できる場合には、「制御情報」及び「モニタリング情報」の双方を、「350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線」及び「5GHz帯の高速・低信頼の無線通信回線」のうち少なくとも一方を介して伝送し、また、「前記5GHz帯の無線通信回線が途絶した場合には、「制御情報」及び「モニタリング情報」の双方を、「350MHz帯の低速・高信頼の無線通信回線」を介して伝送するものである点。 (イ) 当該相違点について検討するにあたり、事案に鑑みて、当該<相違点2>に係る発明特定事項のうち、伝送データを「当該伝送データのデータ内容に応じて」振り分ける点について、先に検討する。 甲1発明においては、「350MHz帯・5GHz帯とも正常に通信できる場合には、制御情報・モニタリング情報とも伝送遅延が300ms以内となり、前記5GHz帯の無線通信回線が途絶した場合には、伝送遅延が大きくなるものの、前記制御情報は許容伝送遅延時間である1秒以内に収まり、前記モニタリング情報も伝送される」から、「5GHz帯の無線通信回線」が正常に通信できる状態であるか、途絶した状態であるかの判断に応じて、制御情報・モニタリング情報の伝送経路を選択していることが明らかである。 そうすると、甲1発明の「情報の種類と伝送路の状態に応じて伝送経路を切り替える機能・・・を実装したルータであって、・・・複数の前記伝送媒体の最新の状態を把握し、伝送情報の信頼性レベルに応じて前記伝送媒体を選択」する「RITPルータ」においては、「伝送路の状態」にも応じて伝送経路を切り替えることが必要であって、甲1発明において、「RITPルータ」が、「制御情報・モニタリング情報」(本件特許発明1の「伝送データ」に含まれる。)を「当該伝送データのデータ内容に応じて」振り分けることとし、「伝送路の状態」を考慮しないようにする動機付けは見いだせない。 したがって、上記<相違点2>に係る他の発明特定事項、及び上記<相違点1>について論及するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ) 甲第2号証に記載された、「列車間の間隔を確保する装置は、列車と進路上の他の列車等との間隔及び線路の条件に応じ、連続して制御を行うことにより、自動的に当該列車を減速させ、又は停止させることができるものでなければならない」という技術的事項や、甲第3号証に記載された、「新幹線の運転指令所と列車との間には、専用の保安通信設備を設ける」という技術的事項を考慮しても、甲1発明の「RITPルータ」が「伝送路の状態」を考慮しないようにする動機付けは見いだせないから、甲1発明において、「RITPルータ」が、「制御情報・モニタリング情報」(本件特許発明1の「伝送データ」に含まれる。)を「当該伝送データのデータ内容に応じて」振り分けるようにすることが、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 したがって、上記<相違点2>に係る他の発明特定事項、及び上記<相違点1>について論及するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、甲第2号証に記載された技術的事項、及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (エ) 甲第4号証に記載された、「列車の運行に関わる情報については、「保安通信設備」と呼ばれる専用の通信システムによって伝送されており、また、指令電話は、列車運行に関わる指示・情報を確実に伝える必要があるため、一般電話とは別に鉄道事業者の自営通信網で構築して」いるという技術的事項や、甲第5号証に記載された、「鉄道では、列車の安全・安定運行を支えるための情報通信網=情報ネットワークを独自につくり、運用してき」たという技術的事項、及び甲第6号証に記載された、「鉄道においても、ワンマン連転時にホームにおける乗降客の様子などの監視画像を運転士へ伝送するシステムや、車内広告情報を更新するためのシステム、あるいは車両基地構内における入換作業を支援するための無線システムなど、近距離で大容量の情報を伝送する必要のある用途に60GHz帯の簡易無線システム等が利用されている」という技術的事項を考慮しても、甲1発明の「RITPルータ」が「伝送路の状態」を考慮しないようにする動機付けは見いだせないから、甲1発明において、「RITPルータ」が、「制御情報・モニタリング情報」(本件特許発明1の「伝送データ」に含まれる。)を「当該伝送データのデータ内容に応じて」振り分けるようにすることが、甲第4ないし6号証に記載された技術的事項の少なくとも1つに基いて、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 したがって、上記<相違点2>に係る他の発明特定事項、及び上記<相違点1>について論及するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、及び甲第2ないし4号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲1発明、並びに、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証記載された技術的事項、及び甲第6号証記載された技術的事項のうち少なくとも1つに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (オ) 甲第8号証の「駅構内と車両内で合わせて2,000台の監視カメラが設置されている」という技術的事項や、甲第9号証の「列車や鉄道沿線の各種機器にカメラやセンサーを設置する」という技術的事項によれば、列車や鉄道沿線にカメラを設置することは、本件特許の出願前に周知であったといえる。 しかしながら、当該周知技術を考慮しても、甲1発明の「RITPルータ」が「伝送路の状態」を考慮しないようにする動機付けは見いだせないから、甲1発明において、「RITPルータ」が、「制御情報・モニタリング情報」(本件特許発明1の「伝送データ」に含まれる。)を「当該伝送データのデータ内容に応じて」振り分けるようにすることが、当該周知技術に基いて、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 したがって、上記<相違点2>に係る他の発明特定事項、及び上記<相違点1>について論及するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、及び甲第8及び9号証に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲1発明、及び甲第8及び9号証に例示された周知技術、並びに、甲第2号証に記載された技術的事項及び甲第3号証に記載された技術的事項、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証記載された技術的事項、及び甲第6号証記載された技術的事項のうち少なくとも1つに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (カ) 甲第4号証に記載された「固定無線通信システムは、近年は、基幹回線網としての役割を終え,光回線網のバックアップ回線として一部で使用されて」いるという技術的事項、甲第10号証の「無線の信頼性が確立するまでは既存のシステムのバックアップを受け」るという技術的事項、及び甲第11号証の「無線通信をバックアップ系の通信に切り替える」という技術的事項によれば、バックアップ用の通信回線を設けることは、本件特許の出願前に周知であったといえる(以下、「周知技術2」という。)。 しかしながら、当該周知技術2を考慮しても、甲1発明の「RITPルータ」が「伝送路の状態」を考慮しないようにする動機付けは見いだせないから、甲1発明において、「RITPルータ」が、「制御情報・モニタリング情報」(本件特許発明1の「伝送データ」に含まれる。)を「当該伝送データのデータ内容に応じて」振り分けるようにすることが、当該周知技術2に基いて、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 したがって、上記<相違点2>に係る他の発明特定事項、及び上記<相違点1>について論及するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、及び甲第4、10、及び11号証に例示された周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明1と甲7発明の相違点について (ア) 上記「1」の「(4)」の「ウ」で指摘したとおり、本件特許発明1と甲7発明は、以下の点で一致し、また相違する。 <一致点> 「地上装置が備え列車側の車上装置との通信を制御する制御装置であって、 前記制御装置は、前記車上装置と前記地上装置との間で送受する伝送データを制御する、 制御装置。」 <相違点A> 「制御装置」について、本件特許発明1では、列車側の車上装置が搭載し地上装置との「無線通信を制御する無線制御装置」または地上装置が備え列車側の車上装置との「無線通信を制御する無線制御装置」であるとの発明特定事項を有するのに対して、甲7発明では、当該発明特定事項が特定されていない点。 <相違点B> 「伝送データを制御」することについて、本件特許発明1では、「当該伝送データのデータ内容に応じて、専用無線を使用して通信する第1のデータと、汎用無線を使用して通信する第2のデータとに振り分ける制御を行い、前記第1のデータは、列車制御情報、自動運転のための制御情報および保守情報に関する少なくともいずれかのデータであり、前記第2のデータは、前記列車側に搭載する機器からのセンサデータ、自動運転のための映像データおよび旅客サービスデータの少なくともいずれかのデータである」との発明特定事項を有するのに対して、甲7発明では、「用途ごとに必要な品質で送れる伝送路を自動選択する」ものであるが、当該発明特定事項が特定されていない点。 (イ) 当該相違点について検討するにあたり、事案に鑑みて、当該<相違点B>に係る発明特定事項のうち、伝送データを「当該伝送データのデータ内容に応じて」振り分ける点について、先に検討する。 甲7発明の「RITPルータ」は、「前記地上の鉄道業務用各種システムと列車の間で5Gネットワークを介して画像・データを伝送」し、また、「用途ごとに必要な品質で送れる伝送路を自動選択する」ものであるところ、5Gネットワークでは、伝送路ごとの回線品質が一定でないことは技術常識であるから、甲7発明の「RITPルータ」は、伝送路を自動選択する際に、伝送路ごとの回線品質を確認し考慮していることが明らかである。 そうすると、甲7発明では回線品質を確認し考慮するが必要であり、甲7発明において「RITPルータ」が、「画像・データ」(本件特許発明1の「前記車上装置と前記地上装置との間で送受する伝送データ」に含まれる。)を「当該伝送データのデータ内容に応じて」振り分けることとし、回線品質を確認し考慮することがないようにする動機付けが見いだせない。 そうすると、甲7発明において、「RITPルータ」が、「画像・データ」(本件特許発明1の「前記車上装置と前記地上装置との間で送受する伝送データ」に含まれる。)を「当該伝送データのデータ内容に応じて」振り分けるようにすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 したがって、上記<相違点B>に係る他の発明特定事項及び<相違点A>について論及するまでもなく、本件特許発明1は、甲7発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ) 上記「ア」の「(イ)」で説示したとおり、甲1発明の「情報の種類と伝送路の状態に応じて伝送経路を切り替える機能・・・を実装したルータであって、・・・複数の伝送媒体の最新の状態を把握し、伝送情報の信頼性レベルに応じて伝送媒体を選択」する「RITPルータ」において、「伝送路の状態」にも応じて伝送経路を切り替えることが必要であり、甲1発明を考慮しても、甲7発明において、回線品質を確認し考慮することがないようにする動機付けが見いだせないから、甲7発明において、「RITPルータ」が、「画像・データ」(本件特許発明1の「前記車上装置と前記地上装置との間で送受する伝送データ」に含まれる。)を「当該伝送データのデータ内容に応じて」振り分けるようにすることが、甲1発明に基いて、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 したがって、上記<相違点B>に係る他の発明特定事項及び<相違点A>について論及するまでもなく、本件特許発明1は、甲7発明、及び甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件特許発明1についてのまとめ 本件特許発明1は、当業者であっても、甲1発明、並びに甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものでなく、また、甲7発明、及び甲1発明に基いて、容易に発明をすることができたものでもない。 (2)本件特許発明2及び3について 本件特許発明2及び3は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記「(1)」で本件特許発明1について説示したのと同様、当業者であっても、甲1発明、並びに甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものでなく、また、甲7発明、及び甲1発明に基いて、容易に発明をすることができたものでもない。 (3)本件特許発明4ないし6について 本件特許発明4は、本件特許発明1の「前記車上装置が搭載し前記地上装置との無線通信を制御する前記無線制御装置」を含む「鉄道車両」であって、少なくとも上記「(1)」の「ア」の「(ア)」で述べた<相違点1>及び<相違点2>において甲1発明と相違し、また、少なくとも上記「(1)」の「イ」の「(ア)」で述べた<相違点A>及び<相違点B>において甲7発明と相違するから、上記「(1)」で本件特許発明1について説示したのと同様、当業者であっても、甲1発明、並びに甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものでなく、また、甲7発明、及び甲1発明に基いて、容易に発明をすることができたものでもない。 また、本件特許発明5は、本件特許発明1の「前記地上装置が備え前記車上装置との無線通信を制御する前記無線制御装置」を含む「地上装置」であって、少なくとも上記「(1)」の「ア」の「(ア)」で述べた<相違点1>及び<相違点2>において甲1発明と相違し、また、少なくとも上記「(1)」の「イ」の「(ア)」で述べた<相違点A>及び<相違点B>において甲7発明と相違するから、上記「(1)」で本件特許発明1について説示したのと同様、当業者であっても、甲1発明、並びに甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものでなく、また、甲7発明、及び甲1発明に基いて、容易に発明をすることができたものでもない。 さらに、本件特許発明6は、本件特許発明4の「前記無線制御装置」、及び本件特許発明5の「前記無線制御装置」を含む「無線制御システム」であって、少なくとも上記「(1)」の「ア」の「(ア)」で述べた<相違点1>及び<相違点2>において甲1発明と相違し、また、少なくとも上記「(1)」の「イ」の「(ア)」で述べた<相違点A>及び<相違点B>において甲7発明と相違するから、上記「(1)」で本件特許発明1について説示したのと同様、当業者であっても、甲1発明、並びに甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものでなく、また、甲7発明、及び甲1発明に基いて、容易に発明をすることができたものでもない。 (4)申立理由2についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし6は、当業者であっても、甲1発明、並びに甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものでなく、また、甲7発明、及び甲1発明に基いて、容易に発明をすることができたものでもない。 したがって、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1ないし6は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。 3 申立理由3(第36条第6項第2号)について (1) 列車側について 申立人は、特許異議申立書において、「(列車上の)「前記無線制御装置」は、「第1のデータ」と「第2のデータ」とに「振り分ける制御」を行うことになる。そして、当該第1のデータは、「列車制御情報、自動運転のための制御情報および保守情報に関する少なくともいずれかのデータ」であるから・・・、「列車制御情報」や「自動運転のための制御情報」も振り分けの対象となり得る。」(77ページ9行ないし14行。下線は申立人が付した。)とした上で、「本件特許発明1に係る無線制御装置が「列車側の車上装置が搭載し地上装置との無線通信を制御する無線制御装置」・・・である場合、列車の自動運転実現に必要な列車制御情報や列車の自動運転のための制御情報を、列車ではなく地上側の無線制御装置に送信する意義が不明確となる。」(77ページ下から8行ないし下から5行。下線は申立人が付した。)と主張している。 申立人の主張について検討すると、本件特許の請求項1の段落2には、「前記無線制御装置は、前記車上装置と前記地上装置との間で送受する伝送データを当該伝送データのデータ内容に応じて、専用無線を使用して通信する第1のデータと、汎用無線を使用して通信する第2のデータとに振り分ける制御を行い」(下線は当審が付した。)と記載されており、ここで、前記「前記車上装置と前記地上装置との間で送受する伝送データ」が、「前記車上装置」が送信する「伝送データ」と、「前記地上装置」が送信する「伝送データ」を含むことは自明である。 また、「伝送データを当該伝送データのデータ内容に応じて、専用無線を使用して通信する第1のデータと、汎用無線を使用して通信する第2のデータとに振り分ける制御」は、「伝送データ」を送信する側の「前記無線制御装置」により行われることも明らかである。 そうすると、「列車側の車上装置が搭載し地上装置との無線通信を制御する無線制御装置」は、「前記車上装置」が送信する「伝送データ」を「専用無線を使用して通信する第1のデータと、汎用無線を使用して通信する第2のデータとに振り分ける」一方、「前記地上装置」が送信する「伝送データ」を振り分けない、といえる。 さらに、請求項1の段落3に記載された「列車制御情報、自動運転のための制御情報および保守情報に関する少なくともいずれかのデータ」について、「前記車上装置」と「前記地上装置」のうちどちらが送信するのかは特定されていないから、「前記車上装置」と「前記地上装置」のうち少なくとも一方が送信する「伝送データ」であると解される。 そうすると、請求項1の段落2ないし4の関係は、「列車側の車上装置が搭載し地上装置との無線通信を制御する無線制御装置」が、「列車制御情報、自動運転のための制御情報および保守情報に関する少なくともいずれかのデータ」(段落3)、並びに「前記列車側に搭載する機器からのセンサデータ、自動運転のための映像データおよび旅客サービスデータの少なくともいずれかのデータ」(段落4)の全てを「当該伝送データのデータ内容に応じて、専用無線を使用して通信する第1のデータと、汎用無線を使用して通信する第2のデータとに振り分ける」と解するのではなく、「列車側の車上装置が搭載し地上装置との無線通信を制御する無線制御装置」が、「前記車上装置」が送信する「伝送データを当該伝送データのデータ内容に応じて、専用無線を使用して通信する第1のデータと、汎用無線を使用して通信する第2のデータとに振り分ける制御を行」った結果、「第1のデータ」に振り分けられた「伝送データ」は「列車制御情報、自動運転のための制御情報および保守情報に関する少なくともいずれかのデータであり」(段落3)、「第2のデータ」に振り分けられた「伝送データ」は「前記列車側に搭載する機器からのセンサデータ、自動運転のための映像データおよび旅客サービスデータの少なくともいずれかのデータである」(段落4)と解するのが相当である。 以上をまとめると、請求項1の記載から、「列車側の車上装置が搭載し地上装置との無線通信を制御する無線制御装置」は、「前記車上装置」が送信する「伝送データ」を「専用無線を使用して通信する第1のデータと、汎用無線を使用して通信する第2のデータとに振り分ける」制御を行い(段落2)、「第1のデータ」に振り分けられた「伝送データ」は「列車制御情報、自動運転のための制御情報および保守情報に関する少なくともいずれかのデータであり」(段落3)、「第2のデータ」に振り分けられた「伝送データ」は「前記列車側に搭載する機器からのセンサデータ、自動運転のための映像データおよび旅客サービスデータの少なくともいずれかのデータである」(段落4)と合理的に理解できる。 したがって、本件特許発明1は明確であり、また、請求項1を引用する本件特許発明2ないし6も同様に明確である。 (2) 地上側について 申立人は、特許異議申立書において、「無線制御装置が「地上装置が備え列車側の車上装置との無線通信を制御する無線制御装置」・・・である場合、地上装置にない「前記列車側に搭載する機器」からの「センサデータ」を如何にして専用無線と汎用無線とに振り分けて、車上の無線制御装置に送信するのか不明確である。」(78ページ16行ないし20行)と主張している。 申立人の主張について検討すると、上記「(1)」で説示した内容と同様、請求項1の記載から、「地上装置が備え列車側の車上装置との無線通信を制御する無線制御装置」は、「前記地上装置」が送信する「伝送データ」を「専用無線を使用して通信する第1のデータと、汎用無線を使用して通信する第2のデータとに振り分ける」制御を行い(段落2)、「第1のデータ」に振り分けられた「伝送データ」は「列車制御情報、自動運転のための制御情報および保守情報に関する少なくともいずれかのデータであり」(段落3)、「第2のデータ」に振り分けられた「伝送データ」は「前記列車側に搭載する機器からのセンサデータ、自動運転のための映像データおよび旅客サービスデータの少なくともいずれかのデータである」(段落4)と合理的に理解できる。 したがって、本件特許発明1は明確であり、また、請求項1を引用する本件特許発明2ないし6も同様に明確である。 (3) 申立理由3についてのまとめ 以上のとおり、本件特許発明1ないし6は明確であるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1ないし6は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消すことはできない。 4 申立理由4(第36条第6項第1号)について (1) 列車側について 申立人は、特許異議申立書において、「列車側の「無線制御装置」が、列車の自動運転実現に必要な列車制御情報や列車の自動運転のための制御情報を、地上側の無線制御装置に送信することについて、明細書の【発明を実施するための形態】に記載されていない。」(78ページ下から2行ないし79ページ2行。下線は申立人が付した。)と主張している。 申立人の主張について検討すると、まず、上記「3」の「(1)」で説示したとおり、請求項1の記載から、「列車側の車上装置が搭載し地上装置との無線通信を制御する無線制御装置」は、「前記車上装置」が送信する「伝送データ」を「専用無線を使用して通信する第1のデータと、汎用無線を使用して通信する第2のデータとに振り分ける」制御を行い(段落2)、「第1のデータ」に振り分けられた「伝送データ」は「列車制御情報、自動運転のための制御情報および保守情報に関する少なくともいずれかのデータであり」(段落3)、「第2のデータ」に振り分けられた「伝送データ」は「前記列車側に搭載する機器からのセンサデータ、自動運転のための映像データおよび旅客サービスデータの少なくともいずれかのデータである」(段落4)と合理的に理解できる。 そして、発明の詳細な説明の段落0037には、「自動運転に供する車載カメラで取得した映像データや、車載センサ/モニタからの大容量データなどは、高速大容量の汎用無線に振り分ける」という記載があり、当該振り分けは「車上側の統合無線コントローラ15」(段落0028)により実行されることが明らかであるから、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものであり、申立人の主張は認められない。 また、請求項1を引用する本件特許発明2ないし6も、同様に発明の詳細な説明に記載したものである。 (2) 地上側について 申立人は、特許異議申立書において、「地上にある当該無線制御装置が、地上にない「前記列車側に搭載する機器からのセンサデータ」を如何にして専用無線と汎用無線とに振り分けて送信するのか、明細書の【発明を実施するための形態】に記載されていない。」(79ページ10行ないし13行。下線は申立人が付した。)と主張している。 申立人の主張について検討すると、まず、上記「3」の「(2)」で説示したとおり、請求項1の記載から、「地上装置が備え列車側の車上装置との無線通信を制御する無線制御装置」は、「前記地上装置」が送信する「伝送データ」を「専用無線を使用して通信する第1のデータと、汎用無線を使用して通信する第2のデータとに振り分ける」制御を行い(段落2)、「第1のデータ」に振り分けられた「伝送データ」は「列車制御情報、自動運転のための制御情報および保守情報に関する少なくともいずれかのデータであり」(段落3)、「第2のデータ」に振り分けられた「伝送データ」は「前記列車側に搭載する機器からのセンサデータ、自動運転のための映像データおよび旅客サービスデータの少なくともいずれかのデータである」(段落4)と合理的に理解できる。 そして、発明の詳細な説明の段落0037には、「地上ATPおよび運行指令所等からの列車位置情報や列車制御情報に関するデータ、自動運転のための制御情報に関するデータおよび保守情報に関するデータなどは、保安系の専用無線に振り分ける」という記載があり、当該振り分けは「地上側の統合無線コントローラ15」(段落0031)により実行されることが明らかであるから、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものであり、申立人の主張は認められない。 また、請求項1を引用する本件特許発明2ないし6も、同様に発明の詳細な説明に記載したものである。 (3) 申立理由4についてのまとめ 以上のとおり、本件特許発明1ないし6は発明の詳細な説明に記載したものであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1ないし6は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消すことはできない。 5 異議申立理由5(第36条第4項第1号)について (1) 列車側について 申立人は、特許異議申立書において、「・・・列車側の「無線制御装置」が、列車の自動運転実現に必要な列車制御情報や列車の自動運転のための制御情報を、地上側の無線制御装置に送信することについて、明細書の【発明を実施するための形態】に記載されていない。 」(79ページ下から7行ないし下から4行。下線は申立人が付したものであり、以下同様。)と主張している。 また、申立人は、「・・・「振り分ける」ことについて、本件特許明細書の段落【0037】には、以下のように記載されている。 【0037】 「すなわち、次世代無線制御プラットフォームである無線制御システム22は、通信に必要なクオリティに応じた伝送路および通信品質(QOS(Quality of Service))を制御する。例えば、上記のように、車上ATPや車載センサ、地上ATPおよび運行指令所等からの列車位置情報や列車制御情報に関するデータ、自動運転のための制御情報に関するデータおよび保守情報に関するデータなどは、保安系の専用無線に振り分ける。他方、自動運転に供する車載カメラで取得した映像データや、車載センサ/モニタからの大容量データなどは、高速大容量の汎用無線に振り分ける。」」(80ページ下から9行ないし81ページ2行。)、 「 段落【0033】における「車上側および地上側のそれぞれの統合無線コントローラ15、車上無線機10および地上無線機12によって、無線制御システム22を構成する」との記載によれば、段落【0037】に記載の「振り分ける」主体は、「車上側および地上側のそれぞれの統合無線コントローラ15」と解される。」(81ページ下から12行ないし下から8行)、及び 「・・・車上にある「統合無線コントローラ15」が、どのようにして、地上装置としての「地上ATPおよび運行指令所等」からの「列車位置情報や列車制御情報に関するデータ」や、「自動運転のための制御情報に関するデータおよび保守情報に関するデータ」を振り分けることができるのか、所謂当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されていない。」(82ページ10ないし14行) とも主張している。 申立人の主張について検討すると、まず、上記「3」の「(1)」で説示したとおり、請求項1の記載から、「列車側の車上装置が搭載し地上装置との無線通信を制御する無線制御装置」は、「前記車上装置」が送信する「伝送データ」を「専用無線を使用して通信する第1のデータと、汎用無線を使用して通信する第2のデータとに振り分ける」制御を行い(段落2)、「第1のデータ」に振り分けられた「伝送データ」は「列車制御情報、自動運転のための制御情報および保守情報に関する少なくともいずれかのデータであり」(段落3)、「第2のデータ」に振り分けられた「伝送データ」は「前記列車側に搭載する機器からのセンサデータ、自動運転のための映像データおよび旅客サービスデータの少なくともいずれかのデータである」(段落4)と合理的に理解できる。 そして、発明の詳細な説明の段落0037には、「自動運転に供する車載カメラで取得した映像データや、車載センサ/モニタからの大容量データなどは、高速大容量の汎用無線に振り分ける」という記載があり、当該振り分けは「車上側の統合無線コントローラ15」(段落0028)により実行されることが明らかであるから、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許発明1について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、申立人の主張は認められない。 また、本件特許発明2ないし6についても同様である。 (2) 地上側について 申立人は、特許異議申立書において、「・・・地上にある当該無線制御装置が、地上にない「前記列車側に搭載する機器からのセンサデータ」を如何にして専用無線と汎用無線とに振り分けて送信するのか、明細書の【発明を実施するための形態】に記載されていない。」(80ページ6ないし9行。下線は申立人が付したものであり、以下同様。)と主張している。 また、申立人は、「・・・「振り分ける」ことについて、本件特許明細書の段落【0037】には、以下のように記載されている。 【0037】 「すなわち、次世代無線制御プラットフォームである無線制御システム22は、通信に必要なクオリティに応じた伝送路および通信品質(QOS(Quality of Service))を制御する。例えば、上記のように、車上ATPや車載センサ、地上ATPおよび運行指令所等からの列車位置情報や列車制御情報に関するデータ、自動運転のための制御情報に関するデータおよび保守情報に関するデータなどは、保安系の専用無線に振り分ける。他方、自動運転に供する車載カメラで取得した映像データや、車載センサ/モニタからの大容量データなどは、高速大容量の汎用無線に振り分ける。」」(80ページ下から9行ないし81ページ2行。)、 「 段落【0033】における「車上側および地上側のそれぞれの統合無線コントローラ15、車上無線機10および地上無線機12によって、無線制御システム22を構成する」との記載によれば、段落【0037】に記載の「振り分ける」主体は、「車上側および地上側のそれぞれの統合無線コントローラ15」と解される。」(81ページ下から12行ないし下から8行)、及び 「・・・地上装置にある「統合無線コントローラ15」が、どのようにして、地上装置ではなく車上に設けられている「車上ATPや車載センサ」からの「列車位置情報や列車制御情報に関するデータ」を保安系の専用無線に振り分けることができるのか、所謂当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されていない。 また、地上装置にある「統合無線コントローラ15」が、どのようにして、地上装置ではなく車上に設けられている「車載カメラで取得した映像データや、車載センサ/モニタからの大容量データ」を「高速大容量の汎用無線に」振り分けることができるのか、所謂当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されていない。」(82ページ下から1行ないし83ページ9行) とも主張している。 申立人の主張について検討すると、まず、上記「3」の「(2)」で説示したとおり、請求項1の記載から、「地上装置が備え列車側の車上装置との無線通信を制御する無線制御装置」は、「前記地上装置」が送信する「伝送データ」を「専用無線を使用して通信する第1のデータと、汎用無線を使用して通信する第2のデータとに振り分ける」制御を行い(段落2)、「第1のデータ」に振り分けられた「伝送データ」は「列車制御情報、自動運転のための制御情報および保守情報に関する少なくともいずれかのデータであり」(段落3)、「第2のデータ」に振り分けられた「伝送データ」は「前記列車側に搭載する機器からのセンサデータ、自動運転のための映像データおよび旅客サービスデータの少なくともいずれかのデータである」(段落4)と合理的に理解できる。 そして、発明の詳細な説明の段落0037には、「地上ATPおよび運行指令所等からの列車位置情報や列車制御情報に関するデータ、自動運転のための制御情報に関するデータおよび保守情報に関するデータなどは、保安系の専用無線に振り分ける」という記載があり、当該振り分けは「地上側の統合無線コントローラ15」(段落0031)により実行されることが明らかであるから、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許発明1について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、申立人の主張は認められない。 また、本件特許発明2ないし6についても同様である。 (5) 申立理由5についてのまとめ 以上のとおり、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許発明1ないし6について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 したがって、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1ないし6は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおり、本件特許発明1ないし6は、甲第1号証に記載された発明でなく、また、甲第7号証に記載された発明でもない。 さらに、本件特許発明1ないし6は、当業者であっても、甲第1号証に記載された発明、並びに甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものでなく、また、甲第7号証に記載された発明、及び甲第1号証に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものでもない。 その上、本件特許発明1ないし6は、明確であり、また、発明の詳細な説明に記載したものである。 加えて、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許発明1ないし6について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 したがって、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1ないし6は、特許法第113条第2号、又は第4号に該当せず、取り消すことはできない。 また、他に、本件特許発明1ないし6を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700111

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決98件(弁理士法人 大手門国際特許事務所、株式会社日立製作所)
  • 2025-900107異議申立 / 2026-02-04 / 維持ヒタチタイヨーノニワ、タイヨーノニワ
    同じ当事者: 株式会社日立製作所
  • 2025-700560異議申立 / 2026-01-23 / 訂正認容インバータ装置
    同じ当事者: 弁理士法人 大手門国際特許事務所
  • 2024-701096異議申立 / 2025-06-04 / 維持乗りかごおよびエレベーター
    同じ当事者: 株式会社日立製作所
  • 2024-701129異議申立 / 2025-01-23 / 維持汚泥処理管理装置および汚泥処理管理方法
    同じ当事者: 株式会社日立製作所
  • 2024-700170異議申立 / 2025-01-22 / 訂正認容予測装置および予測方法
    同じ当事者: 株式会社日立製作所
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,964件(113・H04W、121・H04W、536・H04W ほか)
  • 2025-012775拒絶査定不服審判 / 2026-06-23 / 原査定取消(特許/登録すべき)通信検知方法、装置及びネットワーク機器
    共通の審決分類: 113・H04W、121・H04W、536・H04W、537・H04W
  • 2023-020640拒絶査定不服審判 / 2025-02-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)IABノード、無線通信方法、基地局及びシステム
    共通の審決分類: 113・H04W、121・H04W、536・H04W、537・H04W
  • 2024-000028拒絶査定不服審判 / 2024-10-08 / 原査定取消(特許/登録すべき)情報伝送方法及び機器
    共通の審決分類: 113・H04W、121・H04W、536・H04W、537・H04W
  • 2022-020393拒絶査定不服審判 / 2023-12-21 / 原査定取消(特許/登録すべき)情報報告方法、端末及びネットワーク機器
    共通の審決分類: 113・H04W、121・H04W、536・H04W、537・H04W
  • 2022-018271拒絶査定不服審判 / 2023-11-28 / 原査定取消(特許/登録すべき)無線通信方法
    共通の審決分類: 113・H04W、121・H04W、536・H04W、537・H04W

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存