特許異議申立
2024-701128
ワイヤボンディング装置及びワイヤボンディング方法
- 審判番号
- 2024-701128
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-007451
- 登録番号
- 7488656
- 請求日
- 2024年11月20日
- 審決日
- 2025年01月29日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社東芝
- 【権利者代理人】弁理士法人iX
- 【権利者】キオクシア株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人iX
- 【異議申立人】黒崎 惇子
- 審判長/審判官
- 審判長 河本 充雄
- 審判官 三浦 みちる
- 審判官 綿引 隆
- 分類
- P1651.121-Y (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7488656号発明「ワイヤボンディング装置及びワイヤボンディング方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7488656号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7488656号の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和2年1月21日(優先権主張 令和1年9月19日)に出願され、令和6年5月14日にその特許権の設定登録がされ、同年同月22日に特許掲載公報が発行され、その後、同年11月20日に、請求項1~8に係る特許に対し、特許異議申立人 黒崎 惇子(以下、「申立人」という。)により、甲第1~4号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件発明
特許第7488656号の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等といい、それらをまとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
被接合部にワイヤを押し当てた状態で超音波振動を発生させることで、前記被接合部に前記ワイヤを接合させるワイヤボンディング装置であって、
被接合部にワイヤを接触させて荷重をかけるボンディングツールと、
超音波振動を発生させる超音波ホーンと、
前記ボンディングツールから前記被接合部にかかる荷重を連続的に検出する荷重センサと、
前記ボンディングツール及び前記超音波ホーンの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記ワイヤが前記被接合部に接触してから前記超音波振動を発生させるまでの間に前記荷重センサから出力された前記荷重のデータに基づいて、前記ワイヤと前記被接合部との間の接合状態の良否を判断し、前記接合状態が不良な場合、接合状態が良好な場合と同一の条件で接合した後に停止するか、または前記超音波振動の出力または接合時間を変化させて接合するように制御する、ワイヤボンディング装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記荷重から判定値を算出し、
前記判定値が予め設定された基準範囲内の場合には、前記ボンディングツールから前記被接合部に荷重をかけた状態で、前記超音波ホーンから前記超音波振動を発生させることで前記被接合部に前記ワイヤを接合させる接合動作を行い、
前記判定値が前記基準範囲外の場合には、前記接合動作を行った後に、前記ボンディングツール及び前記超音波ホーンの動作を停止させる、請求項1に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記荷重から判定値を算出し、
前記判定値が予め設定された基準範囲内の場合には、前記ボンディングツールから前記被接合部に荷重をかけた状態で、前記超音波ホーンから前記超音波振動を発生させることで前記被接合部に前記ワイヤを接合させる接合動作を第1条件で行い、
前記判定値が前記基準範囲外の場合には、前記接合動作を前記第1条件と異なる第2条件で行い、
前記第1条件と前記第2条件とは、前記超音波ホーンから発生させる前記超音波振動の出力、及び前記接合動作を行う時間の少なくともいずれかにおいて異なる、請求項1に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項4】
前記判定値は、前記ワイヤが前記被接合部に接触してから前記超音波振動を発生させるまでの間に前記荷重センサによって検出される荷重信号波形の任意の時間区間における荷重の時間積分値である、請求項2または3に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項5】
被接合部にワイヤを接触させて荷重をかけながら、前記被接合部にかかる荷重を荷重センサにより連続的に検出するサーチ工程と、
前記サーチ工程において検出された前記荷重から判定値を算出する解析工程と、
前記解析工程において算出された前記判定値が予め設定された基準範囲内の場合には、前記被接合部に荷重をかけた状態で、超音波ホーンから超音波振動を発生させて前記被接合部に前記ワイヤを接合させる接合動作を行い、前記判定値が前記基準範囲外の場合には、前記判定値が前記基準範囲内の場合と同一の条件で接合した後に停止するか、または前記超音波振動の出力または接合時間を変化させて接合させる動作を行う動作工程と、
を備えた、ワイヤボンディング方法。
【請求項6】
前記サーチ工程と、前記解析工程と、前記動作工程と、を繰り返し行い、
前記判定値が前記基準範囲外の場合には、前記動作工程において、前記接合動作を行った後に、次回の前記サーチ工程を禁止する、請求項5に記載のワイヤボンディング方法。
【請求項7】
前記判定値が前記基準範囲内の場合には、前記動作工程において、前記接合動作を第1条件で行い、
前記判定値が前記基準範囲外の場合には、前記動作工程において、前記接合動作を前記第1条件と異なる第2条件で行い、
前記第1条件と前記第2条件とは、前記超音波ホーンから発生させる前記超音波振動の出力、及び前記接合動作を行う時間の少なくともいずれかにおいて異なる、請求項5に記載のワイヤボンディング方法。
【請求項8】
前記判定値は、前記ワイヤが前記被接合部に接触してから前記超音波振動を発生させるまでの間に前記荷重センサによって検出される荷重信号波形の任意の時間区間における荷重の時間積分値である、請求項5~7のいずれか1つに記載のワイヤボンディング方法。」
第3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として次の甲第1号証、従たる証拠として次の甲第2号証~甲第4号証を提出し、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~8に係る特許を取り消すべきものである旨を主張する。
<証拠一覧>
1 主たる証拠
甲第1号証:特開2010-27699号公報
2 従たる証拠
甲第2号証:特開2018-49910号公報
甲第3号証:特開平8-111445号公報
甲第4号証:特開平5-74876号公報
以下、上記「甲第1号証」~「甲第4号証」を、それぞれ「甲1」~「甲4」という。
第4 甲号証の記載、甲号証に記載された発明
1 甲1(特開2010-27699号公報)
(1)甲1の記載
甲1には、次の記載がある。(下線は当審で付した。以下同じ。)
「【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、半導体チップの電極であるパッドとリードフレームの電極であるリードとの間を金属細線であるワイヤで接続するワイヤボンディング装置が多く用いられている。ワイヤボンディング装置は、駆動モータにより回転駆動されるボンディングアームと、ボンディングアームに取り付けられた超音波ホーンと、超音波ホーンの先端に取り付けられたキャピラリと、超音波ホーンに取り付けられた超音波振動子とを備え、ボンディングアームを回転駆動してキャピラリをパッドまたはリードに対して接離方向に移動させ、キャピラリ先端に形成されたイニシャルボールをパッドに、ワイヤをリードに押しつけて圧着すると共に、超音波振動子によって超音波ホーンを共振させ、キャピラリ先端に超音波振動を付与してボンディングを行うことが多い。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、半導体チップと基板とのボンディングは、複数の半導体チップのパッドと基板のリードとを順次接続して行っていく。この際、ボンディングアームおよびキャピラリの緩みや摩耗がなく、キャピラリがパッドを押し付ける押圧荷重が所定の値に制御されていてもボールの異常潰れやチップ破壊などのボンディング不良が発生する場合がある。しかし、特許文献1または特許文献2に記載された従来技術ではボンディングの途中でボンディング不良を検出することができないため、半導体チップの複数のパッドと基板の複数のリードとを全てボンディングした後に行われるボンディング部の目視検査工程までボンディング不良を発見することができない。このため、製品の修正のために多くの時間がかかってしまうという問題があった。また、製造の途中の工程でボンディング部の目視検査工程を行わない場合には、最終検査工程まで不良品の発見ができず、製品の歩留まりが悪化してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、ボンディングの途中でボンディングの良否を判定することを目的とする。」
「【課題を解決するための手段】
・・・
【0013】
本発明のボンディング装置は、基体部と、超音波振動子の振動と共振して長手方向に縦振動する超音波ホーンと、超音波ホーンの振動の腹に取り付けられるボンディングツールと、超音波ホーンの振動の節に設けられるフランジと、超音波ホーンのフランジが固定されるフランジ取り付け面を含み、ボンディングツール先端をボンディング対象に対して接離方向に動作させるように基体部に回転自在に取り付けられたボンディングアームと、超音波ホーンの長手方向の中心軸からボンディング対象に対して接離方向にオフセットしてボンディングアームの回転中心とフランジ取り付け面との間に取り付けられる荷重センサと、ボンディングの良否判定を行う制御部と、を備えるボンディング装置であって、制御部は、超音波ホーン固有の共振周波数の周波数帯にある信号を遮断すると共に超音波振動子の共振周波数よりも低い周波数帯の信号を通過させるフィルタ手段と、ボンディングの際に荷重センサによってボンディングツールに加わるボンディング対象に接離方向の荷重信号を連続的に検出し、フィルタ手段によって荷重信号から超音波ホーン固有の共振周波数の周波数帯にある信号を含まない超音波振動子の共振周波数よりも低い周波数帯の信号を抽出する信号抽出手段と、信号抽出手段によって抽出した信号の最大値を衝撃荷重とし、衝撃荷重の大小によってボンディング良否の判定を行う判定手段と、を有することを特徴とする。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態のボンディング良否判定装置50が取り付けられているワイヤボンディング装置10は、基体部であるボンディングヘッド11と、超音波振動子13と、超音波ホーン12と、ボンディングツールであるキャピラリ17と、超音波ホーン12に設けられたフランジ14と、ボンディングアーム21と、荷重センサ31と、駆動モータ45と、制御部60と、ボンディング対象である半導体チップ34や基板35を吸着固定するボンディングステージ33と、を備えている。
・・・
【0023】
以上のように構成されたボンディング良否判定装置50によってワイヤボンディング装置10によるボンディング動作中におけるキャピラリ17の先端17aに加わる衝撃荷重の検出動作について説明する。
【0024】
図1に示す制御部60は、キャピラリ17の先端17aから伸出したワイヤの先端を図示しない放電トーチ等によって球状のイニシャルボール18に形成する。そして、制御部60は、駆動モータ45を駆動する指令を出力する。この指令によって駆動モータ45は回転を開始し、キャピラリ17を半導体チップ34の上に向かって降下させ始める。又、制御部60は、超音波振動子13の振動を開始する指令を出力する。この指令によって超音波振動子13にはボンディングの条件に対応して予め設定された振動出力を出力することのできる電圧が印加される。ボンディング良否判定装置50は荷重センサ31からの荷重信号のメモリへの蓄積を開始する。
【0025】
キャピラリ17の先端に形成されたイニシャルボール18が半導体チップ34の表面に接する前は、図3に示すように超音波ホーン12は超音波振動子13の振動と共振して、キャピラリ17の取りつけられた先端と超音波振動子13の取り付けられた後端とを振動の腹とする縦振動をしている。フランジ14は振動の節に配置されているので超音波ホーン12の共振では振動せず、荷重センサ31も荷重を検出していない。ただし、超音波ホーン12はボンディングの際のパッドへの衝突によってZ方向に固有の共振周波数f1で微小な振動をしている。このため、図4(a)に示すように荷重センサ31には超音波ホーン12の振動による微小な周期変動荷重が検出されている。
【0026】
ボンディングアーム21は駆動モータ45によって加速され、所定の下降速度を持って図4(a)の時間t1に半導体チップ34のパッドに衝突する。すると、荷重センサ31の検出する押圧荷重は急速に上昇する。そして、図4(a)に示す時間t2において最大値F0となる。その後、制御部60は荷重センサ31によって検出される押圧荷重が予め決められた押圧荷重P0となるように駆動モータ45を制御する。そして、所定の押圧時間が終了したら制御部60は、駆動モータ45を最初と反対方向に駆動してキャピラリ17を上昇させる。キャピラリ17が上昇すると、荷重センサ31の検出する押圧荷重は次第に低下してゼロになり、その後、荷重センサ31は超音波ホーン12のZ方向の固有振動による微小な周期変動を検出する。この間、ボンディング良否判定装置50は荷重センサ31からの荷重信号をメモリに蓄積し、その間の最大値F0を衝撃荷重として別のメモリに格納する。
・・・
【0029】
ボンディング良否判定装置50は別のメモリに格納した衝撃荷重を、他のメモリに格納されている所定の閾値と比較し、別のメモリに格納した衝撃荷重が所定の閾値よりも大きい場合には、ボールの異常つぶれ或いはチップ破壊などのボンディング不良が発生していると判定し、例えば、ボンディング不良発生を示すランプを点灯させる。また、ボンディング良否判定装置50はボンディング不良発生信号を制御部60に出力し、ワイヤボンディング装置10を停止させ、異常発生ランプを点灯させるようにしてもよい。
・・・
【0032】
以上説明したように、本実施形態のボンディング良否判定装置50は、ボンディングの途中でボンディング不良を判定、検出することができるという効果を奏する。また、ボンディングの途中でボンディング不良を判定、検出することができるので、ボンディング不良の発生した直後にワイヤボンディング装置10を停止させることができ、ボンディング不良の発生した製品の修理を容易に行うことができるという効果を奏する。更に、ボンディングの途中でボンディング不良の発生した製品の製造を停止することができるので、製品の歩留まりを向上させることができるという効果を奏する。」
「【図1】
[図:0001420370000001.jpg]
」
「【図4】
[図:0001420370000002.jpg]
」
(2)甲1に記載された発明
ア 上記(1)によれば、甲1には、物の発明として、次の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。(当審注:括弧内の段落番号は、根拠となる甲1の記載箇所である。)
「ボンディング良否判定装置50が取り付けられ、超音波振動子13と、超音波ホーン12と、ボンディングツールであるキャピラリ17と、ボンディングアーム21と、荷重センサ31と、駆動モータ45と、制御部60と、ボンディング対象である半導体チップ34を吸着固定するボンディングステージ33と、を備えているワイヤボンディング装置10であって、(段落0015)
キャピラリ先端に形成されたイニシャルボールを半導体チップのパッドに押しつけて圧着すると共に、キャピラリ先端に超音波振動を付与してボンディングを行い、(段落0002)
制御部60は、キャピラリ17の先端17aから伸出したワイヤの先端を球状のイニシャルボール18に形成し、(段落0024)
制御部60は、駆動モータ45を駆動する指令を出力し、この指令によって駆動モータ45は回転を開始し、キャピラリ17を半導体チップ34の上に向かって降下させ始め、(段落0024)
制御部60は、超音波振動子13の振動を開始する指令を出力し、この指令によって超音波振動子13には予め設定された振動出力を出力することのできる電圧が印加され、(段落0024)
キャピラリ17の先端に形成されたイニシャルボール18が半導体チップ34の表面に接する前は、超音波ホーン12は超音波振動子13の振動と共振して縦振動をしており、(段落0025)
荷重センサ31は、キャピラリが半導体チップのパッドを押し付ける押圧荷重を連続的に検出し、(段落0008、0013、0026)
ボンディングアーム21が時間t1に半導体チップ34のパッドに衝突すると、荷重センサ31の検出する押圧荷重は急速に上昇し、時間t2において最大値F0となり、(段落0026)
ボンディング良否判定装置50は、荷重センサ31からの荷重信号をメモリに蓄積し、最大値F0を衝撃荷重として別のメモリに格納し、(段落0026)
ボンディング良否判定装置50は、別のメモリに格納した衝撃荷重が所定の閾値よりも大きい場合には、ボンディング不良が発生していると判定し、ボンディング不良発生信号を制御部60に出力し、ボンディング不良の発生した直後にワイヤボンディング装置10を停止させる、(段落0029、0032)
ワイヤボンディング装置10。」
イ また、甲1には、方法の発明として、次の発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。(当審注:括弧内の段落番号は、根拠となる甲1の記載箇所である。)
「ボンディング良否判定装置50が取り付けられ、超音波振動子13と、超音波ホーン12と、ボンディングツールであるキャピラリ17と、ボンディングアーム21と、荷重センサ31と、駆動モータ45と、制御部60と、ボンディング対象である半導体チップ34を吸着固定するボンディングステージ33と、を備えているワイヤボンディング装置10(段落0015)のワイヤボンディング方法であって、
キャピラリ先端に形成されたイニシャルボールを半導体チップのパッドに押しつけて圧着すると共に、キャピラリ先端に超音波振動を付与してボンディングを行い、(段落0002)
制御部60は、キャピラリ17の先端17aから伸出したワイヤの先端を球状のイニシャルボール18に形成し、(段落0024)
制御部60は、駆動モータ45を駆動する指令を出力し、この指令によって駆動モータ45は回転を開始し、キャピラリ17を半導体チップ34の上に向かって降下させ始め、(段落0024)
制御部60は、超音波振動子13の振動を開始する指令を出力し、この指令によって超音波振動子13には予め設定された振動出力を出力することのできる電圧が印加され、(段落0024)
キャピラリ17の先端に形成されたイニシャルボール18が半導体チップ34の表面に接する前は、超音波ホーン12は超音波振動子13の振動と共振して縦振動をしており、(段落0025)
荷重センサ31は、キャピラリが半導体チップのパッドを押し付ける押圧荷重を連続的に検出し、(段落0008、0013、0026)
ボンディングアーム21が時間t1に半導体チップ34のパッドに衝突すると、荷重センサ31の検出する押圧荷重は急速に上昇し、時間t2において最大値F0となり、(段落0026)
ボンディング良否判定装置50は、荷重センサ31からの荷重信号をメモリに蓄積し、最大値F0を衝撃荷重として別のメモリに格納し、(段落0026)
ボンディング良否判定装置50は、別のメモリに格納した衝撃荷重が所定の閾値よりも大きい場合には、ボンディング不良が発生していると判定し、ボンディング不良発生信号を制御部60に出力し、ボンディング不良の発生した直後にワイヤボンディング装置10を停止させる、(段落0029、0032)
ワイヤボンディング方法。」
2 甲2(特開2018-49910号公報)
(1)甲2の記載
甲2には、次の記載がある。
「【0016】
実施の形態1.
・・・
【0017】
図1において、ワイヤボンディング装置101は、振動子1およびボンディングツール2(以下、ツール2と略す)を備える。ワイヤボンディング装置101は、ワイヤボンディング良否判定装置102によって接合品質の良否が判定される対象である。ワイヤボンディング装置101は、例えば、半導体装置等の組立工程で用いられる。
・・・
【0021】
3軸力検出素子6は、ワイヤボンディングがツール2によって行われるときに、ツール2からワーク3に加わる3軸方向の荷重を検出し、その検出結果を制御装置103に出力する。
【0022】
ここで、3軸方向は、ワーク3の面と平行であり、ツール2から伝達される超音波の超音波振動方向と直交する方向(以下では、X軸方向と呼ぶ)と、超音波振動方向(以下では、Y軸方向と呼ぶ)と、X軸方向およびY軸方向と直交し、ボンディングが行われるときにツール2がワイヤ5をワーク3に押し付ける方向(以下、Z軸方向と呼ぶ)とからなる。図3において、このような3軸方向として、X軸方向15、Y軸方向16およびZ軸方向17が図示されている。
【0023】
したがって、3軸力検出素子6によって検出される3軸方向の荷重は、X軸方向の荷重(以下、X方向荷重と呼ぶ)と、Y軸方向の荷重(以下、Y方向荷重と呼ぶ)と、Z軸方向の荷重(以下、Z方向荷重と呼ぶ)とからなる。
・・・
【0034】
図4は、図1の電圧検出部8から出力される電圧の時間推移を示す図である。なお、電圧検出部8は、3軸力検出素子6によって検出される3軸方向の荷重、すなわち、X方向荷重、Y方向荷重およびZ方向荷重のそれぞれを、電圧の形式で出力する。
【0035】
図4から分かるように、ワイヤ5を介してワーク3にZ方向荷重18が印加された後、Y軸方向にワイヤ5を介してワーク3に伝達される超音波振動に起因したY方向荷重19の印加が開始される。一方、X方向荷重20は、ワーク3に印加されない。」
「【0090】
実施の形態5.
本発明の実施の形態5では、3軸力検出素子6によって検出されたZ方向荷重を用いて、接合品質の良否判定を行うように構成する場合について説明する。なお、本実施の形態5では、先の実施の形態1と同様である点の説明を省略し、先の実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
・・・
【0092】
図16に示すように、チップ割れ等のワーク3の破損が生じた場合、Z方向荷重の時間軸波形において、ワーク3が破壊されることに起因するピーク36が見られる。なお、図16では、ピーク36が1個しか発生していないが、このピーク36は複数個発生する場合がある。一方、図15に示すように、ワーク3の破損が生じていない場合、ピーク36が見られない。
【0093】
そこで、判定部10は、ワーク3が破壊されることに起因するピーク36を、Z方向荷重の時間軸波形において、検出したか否かによって、接合品質の良否を判定するように構成されている。」
「【図1】
[図:0001420370000003.jpg]
」
「【図3】
[図:0001420370000004.jpg]
【図4】
[図:0001420370000005.jpg]
」
「【図16】
[図:0001420370000006.jpg]
」
(2)甲2に記載された事項
上記(1)によれば、甲2には、ツール2からワーク3に加わる3軸方向の荷重を検出する3軸力検出素子6を備えたワイヤボンディング装置101において、超音波振動の開始後に(段落0035、0092、図4、図16を参照)、Z方向荷重の時間軸波形において、ワーク3が破壊されることに起因するピーク36を検出したか否かによって、接合品質の良否を判定することが記載されている。
3 甲3(特開平8-111445号公報)
(1)甲3の記載
甲3には、次の記載がある。
「【0018】
【実施例】図1(a)に本発明のワイヤボンディング装置Aの概略構成図を、図1(b)にワイヤボンド及びその検査の工程を示す。ワイヤボンディング装置Aは、ワイヤボンド機構部1と、ボンディング条件調整部2と、ワイヤボンディング検査システムBとから構成されている。ワイヤボンド機構部1は、AlやAu、Ni等のワイヤ13をウエッジ21により加圧しながら超音波を負荷することにより半導体チップ等の電子部品11や回路基板12等の被加工物のパターン部分にボンディングする装置であって、加圧力、超音波パワーもしくは超音波の負荷時間等のボンディング条件を調整可能となっている。ボンディング条件調整部2は、ワイヤボンディング検査システムBからのフィードバック信号(判定情報)に基づいてワイヤボンド機構部1のボンディング条件を自動調整する。また、ワイヤボンディング検査システムBは、CCDカメラ等の撮影装置3と、撮影装置3で撮影した画像に基づいて接合部14のつぶれ幅Wや形状等の画像処理データを求める画像処理用コンピュータ4と、基準データを記憶している第1の記憶装置6と、つぶれ幅W及び形状の画像処理データを学習記憶する第2の記憶装置7と、接合部14の良不良を判定する比較判定部5と、不良品にマーキングするマーキング装置8と、不良品を排出する選別装置9と、警報装置10とから構成されている。
・・・
【0023】ワイヤボンディング検査システムBの撮影装置3は、ワイヤボンド機構部1の前方に配置されており、電子部品11や回路基板12等にボンディングされたワイヤ13の接合部14を撮影する。画像処理用コンピュータ4は、撮影装置3により撮影された接合部14の画像に画像処理を施し、接合部14のつぶれ幅Wを求め画像処置データとして比較判定部5へ出力する。記憶装置6は、接合部14のつぶれ幅Wの許容範囲、好適な接合状態にある接合部14の形状パターン16、許容可能なバラツキの大きさ等を基準データとして予め記憶している。比較判定部5は、計測された接合部14のつぶれ幅Wの画像処理データが画像処理コンピュータ4から入力されると、記憶装置6に登録されているつぶれ幅Wの基準データと比較し、つぶれ幅Wの値が基準データの許容範囲内にある場合には、接合状態が良好(又は可)であると判定し、そうでなければ不良であると判定し、マーキング装置8(及び選別装置9)へ判定結果を出力する。
・・・
【0026】ボンディング条件調整部2は、ワイヤボンディング検査システムBからの判定情報に基づいてワイヤボンド機構部1のボンディング条件を調整し、ワイヤボンド機構部1が最適な条件でワイヤボンディングを行なうように調節している。この判定情報として例えばつぶれ幅Wを用い、つぶれ幅Wが大き過ぎる場合にはつぶれ幅Wが小さくなるようにボンディング条件を調節し、つぶれ幅Wが小さ過ぎる場合にはつぶれ幅Wが大きくなるようにボンディング条件を調節することができる。」
「【図1】
[図:0001420370000007.jpg]
」
(2)甲3に記載された事項
上記(1)によれば、甲3には、ワイヤボンディング装置Aにおいて、撮影装置3により撮影された接合部14の画像から求まるつぶれ幅Wの値が基準データの許容範囲内になく、接合状態が不良であると判定される場合に、ワイヤボンド機構部1の超音波パワーもしくは超音波の負荷時間等のボンディング条件を調整することが記載されている。
4 甲4(特開平5-74876号公報)
(1)甲4の記載
甲4には、次の記載がある。
「【0009】
【作用】この発明の構成において、検出手段によってボンディングツールを駆動する振動子の振動波形を検出し、この検出した振動波形を、推論手段で正常ボンディング時の振動波形から求めた基準振動波形と比較してボンディング状態の良否をファジィ推論により推論する。ボンディング状態の良否を推論は、例えば、ボンディング開始から所定時間経過後における振動波形の電圧と同時刻の基準振動波形の電圧との差、およびこの時刻までの振動波形の減衰率をファジィ入力とし、予め定めたファジィルールに基づいてファジィ推論する。この推論結果からボンディングを停止したり、ボンディング条件、例えば、超音波印加時間、超音波出力または荷重などの設定値を変更したりしてボンディング状態が正常な状態になるようにボンディング制御手段によって制御する。
【0010】
【実施例】図1は、この発明によるワイヤボンディング装置の一実施例を示す構成図である。同図において、発振器1はその出力で振動子2を振動させ、超音波ホーン3で振動を増幅してボンディングツール4に伝える。その結果、アルミニウム製のワイヤ5とアルミニウム電極6との接合面の摩擦の変化から接合負荷が変化して機械インピーダンスが変化する。それを捉えるために発振器1の振動波形を検出し、フィルタ7で波形整形してA/D変換器8でディジタル信号に変換し、CPU9に取り込む。
【0011】CPU9はROM10に記憶されているファジィルールおよびメンバーシップ関数を用いてファジイ推論し、その推論結果およびその操作量に基くボンディング条件の制御量をRAM11に記憶する。同時にこの制御量をD/A変換器12でアナログ信号に変換し、ワイヤボンディングコントローラ13に供給する。コントローラ13では、入力されたボンディング条件の制御量に基づいて発振器1の超音波出力、超音波印加時間(ボンディング時間)または加圧装置14の荷重を制御する。
【0012】図2に、ボンディング時に発振器1から出力される振動波形を示す。図(a)に実線で示す波形Aは正常時の波形であり、鎖線で示す波形Bは原因は明確でないがボンディングされていない場合の波形である。また、図(b)に示す波形Cはボンディングパットにボンディングツールが届かず空気中で振動している場合の波形であり、図(c)に示す波形Dはボンディングツールが空打ちしている場合の波形である。
【0013】さらに、ロットの違いや表面の汚れ等によって接合強度が十分でない場合は、接合負荷変化の進行が変わるために、振動波形は、図(d)に示す波形Eのように伸張したり、逆に早く減衰したり、電圧が高くなるなどの変化をする。いずれにせよ波形Eは正常ボンディング時の波形Aと同形状の減衰波形であり、時間または電圧のみが異なる波形となる。正常ボンディング時の振動波形Aから基準振動波形を求め、所定時間経過後に基準振動波形と比較してボンディングの良否を判断する。・・・
・・・
【0019】こうしてロットの違いや表面の汚れなどによるボンディング不良が検知でき、装置を停止させることなく各ボンディング状態に応じてボンディング条件を制御することにで正常なボンディング作業を効率よく行うことができる。」
「【図1】
[図:0001420370000008.jpg]
【図2】
[図:0001420370000009.jpg]
」
(2)甲4に記載された事項
上記(1)によれば、甲4には、ワイヤボンディング装置において、発振器1の振動波形を検出し、正常ボンディング時の振動波形Aから求めた基準振動波形と比較してボンディングの良否を判断し、ロットの違いや表面の汚れなどによるボンディング不良が検知された場合に、超音波印加時間、超音波出力などのボンディング条件を制御することが記載されている。
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
ア 甲1発明1は、「ワイヤの先端を球状のイニシャルボール18に形成し」、「キャピラリ先端に形成されたイニシャルボールを半導体チップのパッドに押しつけて圧着すると共に、キャピラリ先端に超音波振動を付与してボンディングを行」う「ワイヤボンディング装置」であり、ここで、「押しつけ」るとは押し当てること、「超音波振動を付与して」とは超音波振動を発生させること、「ボンディングを行」うとは接合させることといえる。
そうすると、甲1発明1において、「半導体チップのパッド」は、「ワイヤの先端」に形成された「球状のイニシャルボール18」が接合される部分、すなわち、被接合部であるといえ、甲1発明1は、被接合部である「半導体チップのパッド」に、「先端」に「球状のイニシャルボール18」が形成された「ワイヤ」を押し当てた状態で「超音波振動」を発生させることで、被接合部である「半導体チップのパッド」に、「ワイヤ」を接合させる「ワイヤボンディング装置18」であるといえる。
したがって、甲1発明1の「半導体チップのパッド」、「先端」に「球状のイニシャルボール18」が形成された「ワイヤ」は、それぞれ、本件発明1の「被接合部」、「ワイヤ」に相当し、本件発明1と甲1発明1とは、「被接合部にワイヤを押し当てた状態で超音波振動を発生させることで、前記被接合部に前記ワイヤを接合させるワイヤボンディング装置」である点で共通する。
イ 甲1発明1の「キャピラリ17」は、「ボンディングツールであ」る。
また、甲1発明1の「キャピラリ17」は、「キャピラリ先端に形成されたイニシャルボールを半導体チップのパッドに押しつけて圧着する」ものであり、ここで、「押しつけて圧着する」とは接触させて荷重をかけることといえる。
そうすると、甲1発明1の「キャピラリ17」は、「半導体チップのパッド」に「イニシャルボール18」を接触させて荷重をかけるボンディングツールであるといえる。
また、上記アの検討のとおり、甲1発明1の「半導体チップのパッド」、「先端」に「球状のイニシャルボール18」が形成された「ワイヤ」は、それぞれ、本件発明1の「被接合部」、「ワイヤ」に相当する。
したがって、甲1発明1の「キャピラリ17」は、本件発明1の「被接合部にワイヤを接触させて荷重をかけるボンディングツール」に相当する。
ウ 甲1発明1の「超音波ホーン12」は、「超音波振動子13の振動と共振して縦振動」をするものであり、ここで、「超音波振動子13の振動」により超音波振動が発生しているといえるから、本件発明1の「超音波振動を発生させる超音波ホーン」に相当する。
エ 甲1発明1の「荷重センサ31」は、「キャピラリが半導体チップのパッドを押し付ける押圧荷重を連続的に検出」するものであるから、「キャピラリ17」から「半導体チップのパッド」にかかる「荷重を連続的に検出」するものであるといえる。
また、上記ア、イの検討のとおり、甲1発明1の「半導体チップのパッド」、「キャピラリ17」は、それぞれ、本件発明1の「被接合部」、「ボンディングツール」に相当する。
したがって、甲1発明1の「荷重センサ31」は、本件発明1の「前記ボンディングツールから前記被接合部にかかる荷重を連続的に検出する荷重センサ」に相当する。
オ 甲1発明1の「制御部60」は、「駆動モータ45を駆動する指令を出力」するものであり、「この指令によって駆動モータ45は回転を開始し、キャピラリ17を半導体チップ34の上に向かって降下させ始め」ることから、「キャピラリ17」の動作を制御しているといえる。
また、甲1発明1の「制御部60」は、「超音波振動子13の振動を開始する指令を出力」するものであり、「この指令によって超音波振動子13には予め設定された振動出力を出力することのできる電圧が印加され」、そして、「超音波ホーン12は超音波振動子13の振動と共振して縦振動」をすることから、超音波振動子13を介して「超音波ホーン12」の動作を制御しているといえる。
したがって、本件発明1と甲1発明1とは、「前記ボンディングツール及び前記超音波ホーンの動作を制御する制御部」を備えている点で共通する。
カ 上記ア~オの検討を参酌すると、本件発明1と甲1発明1とは、「被接合部にワイヤを押し当てた状態で超音波振動を発生させることで、前記被接合部に前記ワイヤを接合させるワイヤボンディング装置」であって、「ボンディングツール」と、「超音波ホーン」と、「荷重センサ」と、「制御部」と、を備える「ワイヤボンディング装置」である点で共通する。
キ 以上によれば、本件発明1と甲1発明1とは、次の点で一致し、相違する。
<一致点>
「被接合部にワイヤを押し当てた状態で超音波振動を発生させることで、前記被接合部に前記ワイヤを接合させるワイヤボンディング装置であって、
被接合部にワイヤを接触させて荷重をかけるボンディングツールと、
超音波振動を発生させる超音波ホーンと、
前記ボンディングツールから前記被接合部にかかる荷重を連続的に検出する荷重センサと、
前記ボンディングツール及び前記超音波ホーンの動作を制御する制御部と、
を備えるワイヤボンディング装置。」
<相違点1>
本件発明1は、「前記ワイヤが前記被接合部に接触してから前記超音波振動を発生させるまでの間に前記荷重センサから出力された前記荷重のデータに基づいて、前記ワイヤと前記被接合部との間の接合状態の良否を判断し、前記接合状態が不良な場合、接合状態が良好な場合と同一の条件で接合した後に停止するか、または前記超音波振動の出力または接合時間を変化させて接合するように制御する」のに対し、甲1発明1は、そのような構成を備えていない点。
(2)相違点1についての判断
ア 本件明細書の段落0027には、「実施形態において、制御部50は、ワイヤ3が被接合部2に接触してから超音波振動を発生させるまでの間(時点t1から時点t2までの間)に荷重センサ40によって検出された荷重から判定値を算出し、判定値に基づいて、ボンディングツール11及び超音波ホーン12の動作を制御する。」、同段落0070には、「しかし、これらの従来の接合不良の検知方法では、被接合部にワイヤを接合させる接合動作の途中、または、接合動作の完了後に接合不良の発生を検知するため、接合後に接合不良が発生した製品を見つけることはできるものの、接合不良の発生自体を抑制することができない。」、同段落0071には、「そこで、実施形態においては、ボンディングツール11から被接合部2にかかる荷重を連続的に検出する荷重センサ40を設け、制御部により、ワイヤ3が被接合部2に接触してから超音波振動を発生させるまでの間に荷重センサ40によって検出された荷重から判定値を算出し、判定値に基づいて、ボンディングツール11及び超音波ホーン12の動作を制御する。」、同段落0072には、「これにより、例えば、接合動作を行う前に、ワイヤ3の被接合部2への接合状態の良否を推定することができる。つまり、実際に接合動作を行う前に、接合動作を行った場合に接合不良が生じるか否かを推定することができる。」との記載がある。
これらの記載から、相違点1に係る本件発明1の構成は、ワイヤ3が被接合部2に接触してから超音波振動を発生させるまでの間(時点t1から時点t2までの間)に荷重センサ40によって検出された荷重から判定値を算出することによって、実際に接合動作を行う前に、接合不良が生じるか否かを推定することを考慮して、特定されているものである。
イ 一方、甲2~甲4には、以下のとおり、相違点1に係る本件発明1の構成は、記載も示唆もされていない。
(ア)甲2には、上記第4の2(2)のとおり、「ツール2からワーク3に加わる3軸方向の荷重を検出する3軸力検出素子6を備えたワイヤボンディング装置101において、超音波振動の開始後に、Z方向荷重の時間軸波形において、ワーク3が破壊されることに起因するピーク36を検出したか否かによって、接合品質の良否を判定すること」が記載されているものの、相違点1に係る本件発明1の構成、特に、「前記ワイヤが前記被接合部に接触してから前記超音波振動を発生させるまでの間に前記荷重センサから出力された前記荷重のデータに基づいて、前記ワイヤと前記被接合部との間の接合状態の良否を判断」する構成は、記載も示唆もされていない。
(イ)甲3には、上記第4の3(2)のとおり、「ワイヤボンディング装置Aにおいて、撮影装置3により撮影された接合部14の画像から求まるつぶれ幅Wの値が基準データの許容範囲内になく、接合状態が不良であると判定される場合に、ワイヤボンド機構部1の超音波パワーもしくは超音波の負荷時間等のボンディング条件を調整すること」が記載されているものの、相違点1に係る本件発明1の構成、特に、「前記ワイヤが前記被接合部に接触してから前記超音波振動を発生させるまでの間に前記荷重センサから出力された前記荷重のデータに基づいて、前記ワイヤと前記被接合部との間の接合状態の良否を判断」する構成は、記載も示唆もされていない。
(ウ)甲4には、上記第4の4(2)のとおり、「ワイヤボンディング装置において、発振器1の振動波形を検出し、正常ボンディング時の振動波形Aから求めた基準振動波形と比較してボンディングの良否を判断し、ロットの違いや表面の汚れなどによるボンディング不良が検知された場合に、超音波印加時間、超音波出力などのボンディング条件を制御すること」が記載されているものの、相違点1に係る本件発明1の構成、特に、「前記ワイヤが前記被接合部に接触してから前記超音波振動を発生させるまでの間に前記荷重センサから出力された前記荷重のデータに基づいて、前記ワイヤと前記被接合部との間の接合状態の良否を判断」する構成は、記載も示唆もされていない。
ウ したがって、甲1発明1において、相違点1に係る本件発明1の構成とすること、すなわち、「前記ワイヤが前記被接合部に接触してから前記超音波振動を発生させるまでの間に前記荷重センサから出力された前記荷重のデータに基づいて、前記ワイヤと前記被接合部との間の接合状態の良否を判断し、前記接合状態が不良な場合、接合状態が良好な場合と同一の条件で接合した後に停止するか、または前記超音波振動の出力または接合時間を変化させて接合するように制御する」ようにすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(3)申立人の主張について
ア 本件発明1と甲1との対比について
(ア)申立人は、特許異議申立書の22頁20行~24行において、次の主張をしている。
「ここで、甲1における、「衝撃荷重」は、イニシャルボール18が半導体チップ34に接触した際の荷重である。すなわち、甲1における「衝撃荷重」は、「前記ワイヤが前記被接合部に接触してから前記超音波振動を発生させるまでの間に前記荷重センサから出力された前記荷重のデータ」(構成F)と実質的に同一である。」
(イ)しかしながら、上記第4の1(2)のとおり、甲1における「衝撃荷重」は、「ボンディングアーム21が時間t1に半導体チップ34のパッドに衝突」した後の、「時間t2」における「最大値F0」であり、「イニシャルボール18が半導体チップ34の表面に接する前は、超音波ホーン12は超音波振動子13の振動と共振して縦振動をして」いるから、「時間t2」では、既に超音波振動が開始されている。したがって、甲1には構成Fが開示されているとはいえない。
イ 本件発明1と甲2との対比について
(ア)申立人は、特許異議申立書の23頁下から1行~24頁7行において、次の主張をしている。
「しかし、甲2の図15、図16において、Z方向(高さ方向)の荷重を荷重の立ち上がり(ボンディングツールと被接合部とが接触する時点)から、荷重が下がる(ボンディングツールと被接合部とが隔離する時点)まで監視している。そのため、実質的に、甲2は、前記ワイヤが前記被接合部に接触してから前記超音波振動を発生させるまでの間に前記荷重センサから出力された前記荷重」を監視し、接合状態を判断している形態を開示している。以上のことから、甲2には、構成Fが開示されている。」
(イ)しかしながら、上記第4の2(2)のとおり、甲2は、超音波振動の開始後に、Z方向荷重の時間軸波形においてピーク36を検出した否かによって、接合品質の良否を判定するものであるから、甲2には構成Fが開示されているとはいえない。
ウ したがって、申立人の上記主張はいずれも採用できない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明1及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1の全ての構成を有するものであり、いずれも上記相違点1に係る本件発明1の構成を有しているから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4は、甲1発明1及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明5について
(1)対比
本件発明5と甲1発明2とを対比する。
ア 甲1発明2において、「制御部60は、キャピラリ17の先端17aから伸出したワイヤの先端を球状のイニシャルボール18に形成し」、「キャピラリ先端に形成されたイニシャルボールを半導体チップのパッドに押しつけて圧着すると共に、キャピラリ先端に超音波振動を付与してボンディングを行」うとともに、「荷重センサ31は、キャピラリが半導体チップのパッドを押し付ける押圧荷重を連続的に検出」するものであり、ここで、「押しつけて圧着する」とは接触させて荷重をかけること、「ボンディングを行」うとは接合させることといえる。
そうすると、甲1発明2において、「半導体チップのパッド」は「ワイヤの先端」に形成された「球状のイニシャルボール18」が接合される部分、すなわち、被接合部であるといえ、被接合部である「半導体チップのパッド」に、「先端」に「球状のイニシャルボール18」が形成された「ワイヤ」を接触させて荷重をかけながら、被接合部である「半導体チップのパッド」にかかる「押圧荷重」を「荷重センサ31」により「連続的に検出」する工程を備えているといえる。
したがって、甲1発明2の「半導体チップのパッド」、「先端」に「球状のイニシャルボール18」が形成された「ワイヤ」、「押圧荷重」、「荷重センサ31」は、それぞれ、本件発明5の「被接合部」、「ワイヤ」、「荷重」、「荷重センサ」に相当し、本件発明5と甲1発明2とは、「被接合部にワイヤを接触させて荷重をかけながら、前記被接合部にかかる荷重を荷重センサにより連続的に検出するサーチ工程」を備える点で共通する。
イ 上記アの検討を参酌すると、甲1発明2の「荷重センサ31の検出する押圧荷重」は、本件発明5の「前記サーチ工程において検出された前記荷重」に相当する。
また、甲1発明2において、「キャピラリが半導体チップのパッドを押し付ける押圧荷重を連続的に検出し」た「荷重センサ31からの荷重信号」の「最大値F0」である「衝撃荷重」は、「所定の閾値よりも大きい場合には、ボンディング不良が発生していると判定」されるものであるから、本件発明5の「判定値」に相当する。
したがって、甲1発明2の「ボンディング良否判定装置50」が、「キャピラリが半導体チップのパッドを押し付ける押圧荷重を連続的に検出し」た「荷重センサ31からの荷重信号」の「最大値F0を衝撃荷重」とすることは、本件発明5の「前記サーチ工程において検出された前記荷重から判定値を算出する解析工程」に相当する。
ウ 上記ア、イの検討を参酌すると、本件発明5と甲1発明2とは、「サーチ工程」と、「解析工程」と、を備える「ワイヤボンディング方法」である点で共通する。
エ 以上によれば、本件発明5と甲1発明2とは、次の点で一致し、相違する。
<一致点>
「被接合部にワイヤを接触させて荷重をかけながら、前記被接合部にかかる荷重を荷重センサにより連続的に検出するサーチ工程と、
前記サーチ工程において検出された前記荷重から判定値を算出する解析工程と、
を備えた、ワイヤボンディング方法。」
<相違点2>
本件発明5は、「前記解析工程において算出された前記判定値が予め設定された基準範囲内の場合には、前記被接合部に荷重をかけた状態で、超音波ホーンから超音波振動を発生させて前記被接合部に前記ワイヤを接合させる接合動作を行い、前記判定値が前記基準範囲外の場合には、前記判定値が前記基準範囲内の場合と同一の条件で接合した後に停止するか、または前記超音波振動の出力または接合時間を変化させて接合させる動作を行う動作工程」を備えるのに対し、甲1発明2は、そのような構成を備えていない点。
(2)相違点2についての判断
甲2~甲4には、上記第4の2(2)、3(2)、4(2)に示した事項が記載されているものの、相違点2に係る本件発明5の構成、特に、「前記解析工程において算出された前記判定値が予め設定された基準範囲内の場合には、前記被接合部に荷重をかけた状態で、超音波ホーンから超音波振動を発生させて前記被接合部に前記ワイヤを接合させる接合動作を行」う構成は、記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明2において、相違点2に係る本件発明5の構成とすること、すなわち、「前記解析工程において算出された前記判定値が予め設定された基準範囲内の場合には、前記被接合部に荷重をかけた状態で、超音波ホーンから超音波振動を発生させて前記被接合部に前記ワイヤを接合させる接合動作を行い、前記判定値が前記基準範囲外の場合には、前記判定値が前記基準範囲内の場合と同一の条件で接合した後に停止するか、または前記超音波振動の出力または接合時間を変化させて接合させる動作を行う動作工程」を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明5は、甲1発明2及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本件発明6~8について
本件発明6~8は、本件発明5の全ての構成を有するものであり、いずれも上記相違点2に係る本件発明5の構成を有しているから、本件発明5と同様の理由により、本件発明6~8は、甲1発明2及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 まとめ
以上のとおり、本件発明1~4は、甲1発明1及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて、本件発明5~8は、甲1発明2及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
したがって、特許異議申立理由には理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-701128