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特許異議申立

2024-700343

キャリア及び半導体装置の製造方法

審判番号
2024-700343
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-166391
登録番号
7362378
請求日
2024年04月15日
審決日
2024年07月31日
公報発行日
2024年08月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社東芝
  • 【権利者代理人】弁理士法人iX
  • 【権利者】キオクシア株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人iX
  • 【異議申立人】渡辺 陽子
審判長/審判官
  • 審判長 河本 充雄
  • 審判官 大橋 達也
  • 審判官 棚田 一也
分類
P1651.113-Y (H01L) / P1651.121-Y (H01L) / P1651.55 -Y (H01L) / P1651.536-Y (H01L) / P1651.537-Y (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7362378号発明「キャリア及び半導体装置の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7362378号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7362378号の請求項1~3に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和1年9月12日に出願され、令和5年10月6日にその特許権の設定登録がされ、令和5年10月17日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年4月15日に特許異議申立人 渡辺 陽子(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明3」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 支持基板と、前記支持基板の上に設けられた剥離層と、前記剥離層の上に設けられた保護層と、を有し、前記支持基板は、中心を含む中央部と、前記中央部を囲む外周部と、を有し、前記剥離層は、前記中央部の上に設けられ、前記保護層は、前記剥離層の上に設けられた第1部分と、前記外周部の上に設けられ前記剥離層の外周端部を覆う第2部分と、を有するキャリアを準備する工程と、 前記第1部分の上に、半導体素子と前記半導体素子を覆う樹脂材とを有する樹脂プレートを形成する工程と、 前記剥離層の一部であって、前記樹脂プレートの外側に破断部を形成する工程と、 前記破断部を起点にして、前記支持基板と前記樹脂プレートとを分離する工程と、 を備えた、半導体装置の製造方法。 【請求項2】 前記分離する工程の後に行われ、前記樹脂プレートを切断して個片化する工程をさらに備えた、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。 【請求項3】 前記破断部を形成する工程において、前記保護層から前記剥離層の途中まで延びる前記破断部を形成する、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠として甲第1号証~甲第8号証(以下、「甲1」~「甲8」という。)を提出し、以下の理由により、請求項1~3に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 (1)申立理由1(甲1を主引用例とした新規性・進歩性) 本件発明1は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである、又は、本件発明1~3は、甲1に記載された発明及び甲2、甲3、甲5及び甲8に記載された事項に基づいてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由2(甲4を主引用例とした新規性・進歩性) 本件発明1は、甲4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである、又は、本件発明1~3は、甲4に記載された発明及び甲2、甲3、甲5~甲8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)申立理由3(新規事項) 令和5年5月24日提出の手続補正書において、特許請求の範囲の請求項3を、「前記破断部を形成する工程において、前記保護層から前記剥離層の途中まで延びる前記破断部を形成する、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。」とする補正は、本件特許に係る願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反してされたものである。 (4)申立理由4(サポート要件) 本件発明1~3は、本件特許に係る願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明に記載されたものではないから、請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (5)申立理由5(明確性要件) 本件発明1~3は、明確でないから、請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (6)申立理由6(実施可能要件) 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明3について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないから、請求項3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 [証拠方法] 甲1:特開2017-208453号公報 甲2:特開2006-222164号公報 甲3:特開2015-56664号公報 甲4:特開2017-228765号公報 甲5:特開2019-149470号公報 甲6:特許第6447135号公報 甲7:特開平5-144974号公報 甲8:特開2009-302497号公報 第4 甲号証の記載、甲号証に記載された発明等 1 甲1(特開2017-208453号公報) (1)甲1の記載 甲1には以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。 「【0013】 〔実施形態1〕 図1は、本発明の一実施形態(実施形態1)に係る封止体の製造方法の各工程を説明する図である。実施形態1に係る封止体の製造方法は、分離層形成工程、分離層周縁部分除去工程、接着層形成工程、封止体形成工程、接着層除去工程、光照射工程、分離工程および除去工程をこの順に実施する。 【0014】 (分離層形成工程) 図1の(a)に示すように、分離層形成工程では、光を透過する支持体1の一方の平面部1aに、例えば、化学気相成長(CVD)法等により、光を照射することで変質する分離層2を形成する。なお、「一方の平面部」とは、支持体1が有する平面部のうちの一つを指す。また、「平面部」は、実質的に平面と見なせる程度の微細な凹凸を有していてもよい。支持体1および分離層2の詳細ならびに分離層2の形成手順の詳細については後述する。 【0015】 (分離層周縁部分除去工程) 図1の(b)に示すように、分離層周縁部分除去工程では、例えば、EBR(Edge Bead Removal)処理により、支持体1の周縁部分1b全周に形成された分離層2を除去する。周縁部分1bは、平面部1aの周縁部分である。これにより、図1の(b)に示すように、平面部1a上には、分離層2が除去された周縁部分1bに囲まれた部分に、分離層2が形成されている状態となる。EBR処理の詳細については後述する。 【0016】 (接着層形成工程) 図1の(c)に示すように、接着層形成工程では、支持体1における周縁部分1b全周の分離層2を除去した側の面に、接着層3を形成する。接着層3は、例えば、スピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、スリット塗布等の方法により接着剤を塗布することによって形成することができる。これにより、分離層2を囲む周縁部分1b、および、分離層2の上部に接着層3が形成されるため、分離層2が接着層3によって覆われている状態となる。これにより、分離層2を保護することができる。接着層3を形成するための接着剤の詳細については後述する。 【0017】 (封止体形成工程) 図1の(d)~(g)に示すように、封止体形成工程では、接着層3上に、封止体7を形成する。本実施形態では、封止体形成工程では、配線層形成工程、実装工程、封止工程および薄化工程をこの順に行う。 【0018】 図1の(d)に示すように、配線層形成工程では、接着層3上に配線層4を形成する。 【0019】 一実施形態において、配線層4の形成手順としては、まず、接着層3上に、酸化シリコン(SiOx)、感光性樹脂等の誘電体層を形成する。酸化シリコンからなる誘電体層は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法等により形成することができる。感光性樹脂からなる誘電体層は、例えば、スピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、スリット塗布等の方法により感光性樹脂を塗布することによって形成することができる。 【0020】 続いて、誘電体層に、金属等の導電体によって配線を形成する。配線の形成手法としては、例えば、フォトリソグラフィー(レジストリソグラフィー)等のリソグラフィー処理、エッチング処理等の公知の半導体プロセス手法を用いることができる。 【0021】 図1の(e)に示すように、実装工程では、配線層4上に素子5を実装する。配線層4上への素子5の実装は、例えば、チップマウンター等を用いて行うことができる。 【0022】 図1の(f)に示すように、封止工程では、素子5を封止材6によって封止する。封止材6は、例えば、成形型を用いて射出成形してもよいし、スピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、スリット塗布等の方法により塗布してもよい。 【0023】 図1の(g)に示すように、薄化工程では、封止材6を薄化する。封止材6は、例えば、素子5と同等の厚さまで薄化してもよい。 【0024】 以上により、支持体1上において、封止体7を首尾よく形成することができる。このとき、例えば、配線を形成するためのリソグラフィー処理、エッチング処理等において薬液が用いられ得る。分離層2には薬液耐性が不足していることが多いため、分離層2が薬液に触れると、分離層2が剥がれてしまうおそれがある。しかしながら、本実施形態によれば、分離層2が接着層3によって保護されているため、分離層2に薬液が接触することを避けることができる。また、接着層3によって分離層2を保護することにより、薬液以外からも分離層2を保護することができる。これにより、封止体形成工程中に、分離層2が剥がれることを防止することができる。さらに、接着層3によれば、例えば、配線層形成工程において、配線層4を構成するための酸化膜やメタル層等が、支持体1の端部付近に付着した場合であっても、接着層3を除去することで当該酸化膜やメタル層等を支持体1から容易に除去することが可能であり、特別な洗浄を必要とせず支持体1の再利用を可能とすることができる。 【0025】 また、以上の工程によって得られた図1の(g)に示す積層体8は、光を透過する支持体1と、光を照射することで変質する分離層2と、接着層3と、封止体7と、がこの順に積層されてなり、封止体7は、配線層4と、配線層4に実装された素子5と、素子5を封止する封止材6とを備えており、分離層2は、支持体1に接している部分以外が接着層3によって被覆されているものである。このような積層体8は、本発明に係る封止体の製造方法の過程においてのみ製造されるものであり、単離された封止体7を製造するために好適に利用することができる。 【0026】 (接着層除去工程) 図1の(h)に示すように、接着層除去工程では、例えば、EBR処理により、支持体1の周縁部分1b全周に形成された接着層3を除去する。EBR処理の詳細については後述する。接着層3のうち、支持体1の周縁部分1b全周に形成された部分は、分離層2を介さずに、支持体1と封止体7とを接着しているため、当該部分を除去しておくことにより、分離層2を変質させたときに、円滑に支持体1と封止体7とを分離することができる。 【0027】 特に、支持体1上に形成されている分離層2の外周端部2aよりも外側に形成された接着層3を除去しておくことにより、支持体1と封止体7とが、必ず分離層2を介して接着されている状態にすることができるため、分離層2を変質させたときに、より円滑に支持体1と封止体7とを分離することができる。 【0028】 (光照射工程) 図1の(i)に示すように、光照射工程では、支持体1を介して、分離層2に光Lを照射することで、分離層2を変質させる。照射する光Lの種類および波長は、支持体1の透過性および分離層2の材質に応じて適宜選択すればよく、例えば、YAGレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザ、YVO4レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He-Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、又は、非レーザ光を用いることができる。これにより、分離層2を変質させて、支持体1と封止体7とを容易に分離可能な状態とすることができる。 【0029】 また、レーザ光を照射する場合のレーザ光照射条件の一例としては、以下の条件を挙げることができるが、これに限定されない:レーザ光の平均出力値は、1.0W以上、5.0W以下であることが好ましく、3.0W以上、4.0W以下であることがより好ましい;レーザ光の繰り返し周波数は、20kHz以上、60kHz以下であることが好ましく、30kHz以上、50kHz以下であることがより好ましい;レーザ光の走査速度は、100mm/s以上、10000mm/s以下であることが好ましい。 【0030】 (分離工程) 図1の(j)に示すように、分離工程では、支持体1と封止体7とを分離する。例えば、支持体1と封止体7とが互いに離れる方向に力を加えることにより、支持体1と、封止体7とを分離する。例えば、支持体1および封止体7の一方をステージに固定した状態で、他方をベローズパッド等の吸着パッドを備えた分離プレートにより吸着保持しつつ持ち上げることにより、支持体1と封止体7とを分離することができる。 【0031】 (除去工程) 図1の(k)に示すように、除去工程では、支持体1が分離された封止体7に残留している接着層3と分離層2とを除去する。例えば、有機溶剤を含んでいる洗浄液等によって接着層3及び分離層2の残渣を除去する洗浄工程を行なう。洗浄液としては、例えば、後述する接着剤の希釈溶剤や、アルカリ性を示す溶剤(特に、アミン系化合物)等を用いることができるが、これに限定されない。 【0032】 以上により、単離された封止体7を得ることができる。」 「【0035】 〔EBR処理〕 一実施形態において、(A)分離層周縁部分除去工程において、支持体1の周縁部分1b全周に形成された分離層2を除去するためのEBR処理、および、(B)接着層除去工程において、支持体1の周縁部分1b全周に形成された接着層3を除去するためのEBR処理は、例えば、(i)溶剤によって溶解して除去する方法、(ii)カッター又はブレードなどを用いて物理的に切断して除去する方法、(iii)大気圧下でのアッシングにより除去する方法などが挙げられる。この中でも、強度及び実用性の観点から、溶剤によって除去する方法が好ましい。」 「【0043】 〔封止体7〕 上述したように、封止体7は、配線層4と、配線層4に実装されている素子5と、素子5を封止している封止材6とを備えている。一実施形態において、封止体7は複数の素子5を備えており、このような封止体7をダイシングすることにより、複数の電子部品を得ることができる。 【0044】 素子5は、半導体素子またはその他の素子であり、単層または複数層の構造を有し得る。なお、素子5が半導体素子である場合、封止体7をダイシングすることにより得られる電子部品は、半導体装置となる。 ・・・ 【0046】 封止材6としては、例えば、エポキシ系の樹脂、シリコン系の樹脂等を用いることができる。一実施形態において、封止材6は、素子5毎に設けられているものではなく、配線層4に実装された複数の素子5の全てを一体的に封止しているものである。 ・・・ 【0048】 支持体1の材料としては、例えば、ガラス、シリコン、アクリル系樹脂等を用いることができるが、これらに限定されない。支持体1の形状としては、例えば、円形の板状のものを用いることができるが、これに限定されない。」 「【図1】 [図:0001413371000001.jpg] 」 (2)甲1の上記図1(f)から、素子5及び封止材6は、分離層2及び接着層4の上に形成されることが見て取れる。 (3)甲1に記載された発明 上記(1)及び(2)から、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(当審注:括弧内は根拠となる甲1の段落番号である。)。 「分離層形成工程、分離層周縁部分除去工程、接着層形成工程、封止体形成工程、接着層除去工程、光照射工程、分離工程および除去工程をこの順に実施する封止体の製造方法であり、(【0013】) 分離層形成工程では、光を透過する支持体1の一方の平面部1aに、光を照射することで変質する分離層2を形成し、ここで、支持体1の形状としては、例えば、円形の板状のものを用いることができ、(【0014】、【0048】) 分離層周縁部分除去工程では、支持体1の周縁部分1b全周に形成された分離層2を除去し、ここで、周縁部分1bは、平面部1aの周縁部分であり、(【0015】) 接着層形成工程では、支持体1における周縁部分1b全周の分離層2を除去した側の面に、接着層3を形成して、分離層2を囲む周縁部分1b、および、分離層2の上部に接着層3を形成することで、分離層2が接着層3によって覆われている状態とし、これにより、分離層2を保護することができ、(【0016】) 封止体形成工程は、接着層3上に封止体7を形成するものであって、配線層形成工程、実装工程、封止工程および薄化工程をこの順に行うものであり、(【0017】) 配線層形成工程では、接着層3上に配線層4を形成し、(【0018】) 実装工程では、配線層4上に、半導体素子またはその他の素子である素子5を実装し、(【0021】、【0044】) 封止工程では、素子5を、例えば、エポキシ系の樹脂、シリコン系の樹脂等を用いることができる封止材6によって封止し、(【0022】、【0046】) 薄化工程では、封止材6を薄化し、(【0023】) 素子5及び封止材6は、分離層2及び接着層4の上に形成されており、(上記(2)) 封止体7は、配線層4と、配線層4に実装されている素子5と、素子5を封止している封止材6とを備えており、(【0043】) 接着層除去工程では、例えば、EBR処理により、支持体1の周縁部分1b全周に形成された接着層3を除去し、ここで、接着層除去工程におけるEBR処理は、例えば、(i)溶剤によって溶解して除去する方法、(ii)カッター又はブレードなどを用いて物理的に切断して除去する方法、(iii)大気圧下でのアッシングにより除去する方法などが挙げられるものであり、(【0026】、【0035】) 接着層除去工程において、接着層3のうち、支持体1の周縁部分1b全周に形成された部分は、分離層2を介さずに、支持体1と封止体7とを接着しているため、当該部分を除去しておくことにより、分離層2を変質させたときに、円滑に支持体1と封止体7とを分離することができ、特に、支持体1上に形成されている分離層2の外周端部2aよりも外側に形成された接着層3を除去しておくことにより、支持体1と封止体7とが、必ず分離層2を介して接着されている状態にすることができるため、分離層2を変質させたときに、より円滑に支持体1と封止体7とを分離することができ、(【0026】、【0027】) 光照射工程では、支持体1を介して、分離層2に光Lを照射することで、分離層2を変質させて、支持体1と封止体7とを容易に分離可能な状態にすることができ、(【0028】) 分離工程では、支持体1と封止体7とを分離し、(【0030】) 除去工程では、支持体1が分離された封止体7に残留している接着層3と分離層2とを除去し、(【0031】) 以上により、単離された封止体7を得る、(【0032】) 封止体の製造方法。」 2 甲2(特開2006-222164号公報) (1)甲2の記載 甲2には以下の記載がある。 「【0020】 絶縁層23は、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の電気的絶縁性を有する樹脂材からなり、厚さ40~100μmに形成される。一例として、厚さ80μmに形成する。 この絶縁層23は、半導体装置10の基材として機能し、また、半導体素子30を封止する封止層として機能する。絶縁層23は、配線24が形成される一方の面23aと、その反対面となる他方の面23bを有する。 半導体素子30は、電子回路や電極31が形成された能動面30aが絶縁層23の一方の面23a方向を向くよう、能働面30aと側面30cの全周囲が絶縁層23に被覆され、背面30bが絶縁層23の他方の面23b表面と略同一平面となるよう絶縁層23に埋め込まれている。」 「【0029】 この支持体40の一方の面40aに、分離層としての金属層21を形成する。 金属層21には、シリコンとの密着性の低いクロムや銅を用い、スパッタや蒸着により、300~5000Åの厚さに形成する。 一例として、スパッタにより500Åの厚さに形成する。 なお、金属層21の強度確保のため、スパッタによる膜を形成後、さらにクロムや銅のめっきを施し、金属層21の厚さを1~2μmとしても良い。めっきを施す場合、一例として金属層21全体の厚さを、 1μmとする。 【0030】 なお、支持体40としては、シリコン基板の替わりに、ガラス基板(ガラスウェハ)を使用しても良い。ガラス基板を使用する場合も、金属層21としては、シリコン基板の場合と同様に、クロムや銅を用いる。金属層21の形成方法もシリコン基板の場合と同様である。 次いで、図5(b)に示すように、金属層21上に接着剤22を層状に形成する。接着剤22としてはエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂を用い、これら樹脂を塗布したり、これら樹脂のフィルムを貼着して形成する。 ・・・ 【0032】 次いで、図5(c)に示すように、接着剤22上に半導体素子30を搭載し、加熱により接着剤22を硬化して固定する。この半導体素子30としては、図4に示した電極31を有する構造のものを用いる。 次いで、図5(d)に示すように、接着剤22上面及び半導体素子30を被覆するよう、絶縁層23を形成する。絶縁層23としては、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂を用い、これら樹脂を塗布したり、これら樹脂のフィルムを貼着して形成する。絶縁層23は、少なくとも半導体素子23の能働面30aが被覆される厚さに形成すれば良いが、好適には、電極31を含め、半導体素子30全体が絶縁層23内に埋設されるように形成する。 【0033】 この際、絶縁層23に、支持体40の側面40c、金属層21の側面(端面)21c、接着剤22の側面(端面)22cを被覆する被覆部23cを設けると好適である。元々、支持体40と金属層21には、相互の密着性が低いものを用いる。また、支持体40と金属層21との剥離は、相互の積層界面の周縁部分から発生する。 よって、製造工程中に何らかの外力が支持体40の側面40c等に加わると、意図せぬ時点で支持体40と金属層21との剥離が生じる場合がある。 この為、少なくとも支持体40の側面40cと金属層21の側面21cとを絶縁層23の被覆部23cで被覆・保護すると、不意の剥離を防止でき好適である。また、被覆部23cの存在による、支持体40と金属層21との密着性向上によっても不意の剥離を防止できる。 被覆部23cは、支持体40の側面40cに廻りこむよう樹脂を塗布または樹脂フィルムを貼着することにより、絶縁層23形成時に同時に形成できる。なお、被覆部23cの形成は必須ではない。被覆部23cを形成しなくとも、本実施形態の製造方法は実施可能である。 【0034】 次いで、図6(a)に示すように、絶縁層23の表面を研磨して、絶縁層23の一方の面23aの表面に、半導体素子30の電極31の端面31aを露出させる。具体的には、絶縁層23の一方の面23aと電極31の端面31aが略同一平面となるよう形成する。 一例として、研磨により、絶縁層23の厚さは、70μmとなる。このように、本実施形態では絶縁層23に研磨を施し、絶縁層23を薄型化するため、より半導体装置10の小型化を図れる。なお、研磨の際は、電極端子31の端面31aが絶縁層23と共に削られても良い。 【0035】 次いで、図6(b)に示すように、絶縁層23の一方の面23a表面に、半導体素子30の電極31の端面31aに接続するよう、配線24を形成する。 配線24は、銅からなり、アディティブ法やセミアディティブ法等、各種方法により、配線幅20~30μmに形成する。一例として、20μmに形成する。 なお、この配線24は、半導体素子30内蔵部周囲や直上の絶縁層23の一方の面23a上に、自由に引き回すことができる。 よって、任意の場所にパッド24aを位置させることができる。 これにより、例えば、パッド24aを格子状に設けることができ、外部接続端子としてのはんだバンプ26を高密度に多数設けることができる。よって、半導体装置10の多端子化と小型化及び外部接続端子位置の標準化に好適に対応できる。 【0036】 次いで、図6(c)に示すように、絶縁層23の一方の面23a上にソルダレジスト25を形成する。 ソルダレジスト25は、絶縁層23の一方の面23aと配線24を被覆するよう形成する。 ソルダレジスト25は、例えば、感光性のエポキシアクリル系の樹脂からなり、厚さ20~40μmに形成する。 一例として、厚さ30μmに形成する。 また、直径250μm程度の開口部25aを形成し配線24のパッド24aを露出する。 なお、開口部25a形成後、配線24のパッド24aに、はんだバンプ26との濡れ性向上のため、ニッケルめっきと金めっきをこの順に施し、ニッケル層と金層を形成する(図示せず)。これにより、半導体装置10の中間体11が得られる。 【0037】 次いで、図7(a)に示すように、絶縁層23の被覆部23cを除去する。 具体的には、破線で示す分離線C-Cで、中間体11の周縁部11a(支持体40、金属層21、接着剤22、絶縁層23、ソルダレジスト25の周縁部)を切断し、被覆部23cを除去する。 これにより、図7(b)に示すように、支持体40、金属層21、接着剤22、絶縁層23、ソルダレジスト25に、外部に露出する新たな側面40c´、21c´22c´、23c´、25c´が形成される。 ・・・ 【0039】 次いで、図7(c)に示すように、中間体11から支持体40を除去する。具体的には、図中矢印で示す方向に、支持体40の側面40c´に物理的な外力を加えることにより、分離層である金属層21と支持体40の界面から支持体40を剥離し、分離・除去する。 支持体40と金属層21の材料には密着性の低い組み合わせを用いるため、ごく小さな力により簡単に剥離が行える。この際、カッター等を金属層21と支持体40の界面に差し込むと、剥離のきっかけができ、より容易に剥離が行える。支持体40の除去を容易に行えることにより、本実施形態の半導体装置10は薄型化が可能となる。」 「【0063】 次いで、図23(c)に示すように、支持体40と接着剤22の接着部分である、支持体40と接着剤22の周縁部40d、22aを除去する。具体的には、破線で示す分離線C-Cで、中間体11の周縁部11a(支持体40、フィルム体111、接着剤22、絶縁層23、ソルダレジスト25の周縁部)を切断し除去する。これにより、支持体40と接着剤22の接着部分が除去される。 なお、切断は、少なくともフィルム体111、接着剤22、絶縁層23、ソルダレジスト25の周縁部に施せば良い。支持体40の切断は必須では無い。」 「【図7】 [図:0001413371000002.jpg] 」 「【図23】 [図:0001413371000003.jpg] 」 3 甲3(特開2015-56664号公報) (1)甲3の記載 甲3には以下の記載がある。 「【0037】 図2に示すように、本実施形態に係る表示パネルの製造方法では、まず、支持基板500を準備し、かかる支持基板500上に離型層10を形成する(S100)。 ・・・ 【0046】 次に、図3に示すように、離型層10の上に薄膜基板100を配設させる。 この際、薄膜基板100は、離型層10及び支持基板500と接触するように形成することが好ましい。このように、離型層10及び支持基板500と接触するように薄膜基板100を形成することで、支持基板500と薄膜基板100との接着力が、離型層10と薄膜基板100との接着力よりも強くなり、工程中に薄膜基板が分離しないようにすることができる。 ・・・ 【0054】 次の図4に示すように、薄膜基板100上に複数の画素120を形成する。 画素120は、図8のように薄膜基板100上に形成されており、行列をなしてアレイ(array)状に複数配置される。 ・・・ 【0057】 画素120は、第1信号線121及び第2信号線171から信号の伝達を受けて映像を表示するための薄膜トランジスタ及び有機発光素子を含む。」 「【0126】 再び、図1及び図4に示すように、画素上に封止部材130を形成する。図4では、説明の便宜上、画素120を含む有機発光表示パネルを一つの層に概略化して示した。 【0127】 封止部材130は、複数の層からなり、無機膜及び有機膜の少なくともいずれか一つを含んでもよく、交互に繰り返し積層されてもよい。無機膜は、アルミニウム酸化物又はシリコーン酸化物を含んでもよく、有機膜は、エポキシ系高分子、アクリレート系高分子、ウレタンアクリレート系高分子などを含んでもよい。 ・・・ 【0129】 封止部材130は、画素120を覆って有機発光素子が外部に露出しないようにする。 画素120を含む有機発光基板と薄膜基板100との間には、バリア膜(図示せず)が位置してもよい。バリア膜は、外部から水分や酸素のような不要な成分が画素120に流入することを遮断する。バリア膜は、有機膜及び無機膜の少なくともいずれか一つを含んでもよく、交互に繰り返し積層されたものであってもよい。 【0130】 以後、図5に示すように、レーザ又はホイールスクライビング(wheel scribing)工程を利用して、封止部材及び薄膜基板を切断した後、支持基板500から薄膜基板100を含む表示パネル300を分離する。一方、図8のように、薄膜基板上に複数の離型層を形成する場合、複数の表示パネルに分離される。」 「【図5】 [図:0001413371000004.jpg] 」 4 甲4(特開2017-228765号公報) (1)甲4の記載 甲4には以下の記載がある。 「【0027】 (配線基板形成用基板の構成) まず、図1により、本実施の形態による配線基板形成用基板の概略について説明する。 図1は、本実施の形態による配線基板形成用基板を示す断面図である。 【0028】 図1に示す配線基板形成用基板10は、後述する配線基板20(図2参照)を形成するためのものである。この配線基板形成用基板10は、支持基材11と、支持基材11上に積層された密着層12と、密着層12上に積層された遮蔽層(保護層)13とを備えている。 【0029】 このうち支持基材11は、配線基板形成用基板10の全体を支持するものであり、平坦な板状の部材からなる。支持基材11の材質は、密着層12をレーザー光によって構造改質する場合には、レーザー光が透過可能な材料を用い、例えば、石英ガラス、アルミノホウ珪酸系ガラス、ソーダ石灰ガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス等のガラス類の他、サファイアや窒化ガリウム、更にはポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル、ポリプロピレン等の樹脂、あるいは、これらの任意の積層材を用いることができる。支持基材11の厚みは、材質の強度、取り扱い適性等を考慮して設定することができ、例えば、200μm以上10mm以下程度の範囲で適宜設定することができる。 ・・・ 【0043】 本実施の形態において、図1に示すように、密着層12の周縁部12eは、支持基材11の周縁部11eよりも内側に引っ込んでいる。すなわち、密着層12の平面形状は、全周にわたって支持基材11の平面形状よりも小さくなっている。密着層12の周縁部12eが支持基材11の周縁部11eよりもオフセットしている距離dは、例えば10μm以上10mm以下としても良い。遮蔽層13は、密着層12の表面12aから、密着層12の側面12bを介して、密着層12に覆われていない支持基材11の表面11aまで、連続的に延びている。したがって、遮蔽層13は、密着層12の表面12aだけでなく密着層12の側面12bも覆っている。これにより、遮蔽層13上に再配線層30を形成する工程において、密着層12が、その側面12bから有機溶剤や酸性又はアルカリ性溶液などが浸入することによってダメージを受けるおそれがなく、密着層12が有機溶剤等の侵食によって剥がれる等の不具合を防止することができる。 【0044】 (配線基板の構成) 次に、図2により、本実施の形態による配線基板の概略について説明する。図2は、本実施の形態による配線基板を示す断面図である。 【0045】 図2に示す配線基板20は、上述した配線基板形成用基板10と、配線基板形成用基板10上に形成された再配線層30とを備えている。 【0046】 このうち配線基板形成用基板10は、図1に示す構成と略同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。 【0047】 再配線層30は、遮蔽層13上に形成されたパターン構造体31と、パターン構造体31に埋設された配線層32とを有している。また、パターン構造体31内であって、遮蔽層13上には接続導体層37が形成されている。この接続導体層37は、配線層32と同一材料から構成され、配線層32に接続されている。 【0048】 パターン構造体31は、ノボラック系エポキシフェノール系樹脂からなる硬化性樹脂を含み、この硬化性樹脂は、一般に主剤、構造中にアンチモンを含むような光酸発生剤またはフェノールやフェノール系エステル、シアネート系エステルの硬化剤、開始剤、架橋剤などにより構成される(具体的には、日本化薬株式会社製 SU-8シリーズなどが挙げられる)。また、硬化性樹脂には、必要に応じてレベリング剤や離型剤や密着剤が含有されていても良い。本実施の形態で使用する硬化性樹脂には特に制限はなく、公知の硬化性樹脂からパターン構造体31の用途、要求される特性、物性等に応じて適宜選択することができる。パターン構造体31の厚みは、例えば、3μm以上50μm以下程度が好ましい。図2において、パターン構造体31は、密着層12の側面12bには設けられていないが、これに限らず、パターン構造体31が密着層12の側面12bを覆っていても良い。」 「【0051】 (配線基板形成用基板の製造方法) 次に、図3(a)-(d)により、本実施の形態による配線基板形成用基板の製造方法について説明する。図3(a)-(d)は、本実施の形態による配線基板形成用基板の製造方法を示す断面図である。 【0052】 まず、図3(a)に示すように、平坦な板状の部材からなる支持基材11を準備する。この支持基材11としては、例えば、石英ガラス、アルミノホウ珪酸系ガラス、ソーダ石灰ガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス等のガラス類の他、サファイアや窒化ガリウム、更にはポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル、ポリプロピレン等の樹脂、あるいは、これらの任意の積層材を用いることができる。 【0053】 次に、図3(b)に示すように、支持基材11上に第1密着層12Aを直接積層して形成する。第1密着層12Aの材料としては、改質されることにより密着力が低下または消失するものが用いられる。例えば、第1密着層12Aの材料は、エキシマレーザーなどの特定波長(例えば波長308nm)を吸収するような特性を有するアモルファスシリコンや剥離材料などの材料を用いることができる。 【0054】 次に、図3(c)に示すように、第1密着層12A上に第2密着層12Bを直接積層して形成する。第2密着層12Bの材料としては、第1密着層12Aの改質後も密着力が保持するものが用いられる。例えば、第2密着層12Bの材料は、シリコーン系接着剤であっても良い。例えば、第2密着層12Bの材料は、アクリル系有機溶剤に溶解する接着剤であっても良く、専用の溶解除去液によって除去が可能なものなどが用いられる。 【0055】 このようにして、支持基材11上に、第1密着層12Aと第2密着層12Bとからなる密着層12が形成される。なお、第1密着層12A及び第2密着層12Bを形成する際、第1密着層12A及び第2密着層12Bは、その周縁部12eが支持基材11の周縁部11eよりも内側に引っ込むように形成されることが好ましい(図1参照)。 ・・・ 【0057】 続いて、図3(d)に示すように、第2密着層12B上に遮蔽層13を積層する。遮蔽層13は、後工程で配線基板形成用基板10上に形成される再配線層30を保護するためのものである。遮蔽層13の材料としては、レーザー光の反射性や密着層12側からのガスの遮蔽性が良好なものが用いられる。具体的には、遮蔽層13の材料は、例えばクロム、モリブデン、チタン、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、パラジウム、タングステン、ベリリウム、ロジウム、ルテニウムのいずれか又はこれらのうち少なくとも1つを含む合金等の金属材料であっても良い。遮蔽層13は、密着層12上にスパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法等の手法により形成される。このため、薄膜状の遮蔽層13を均一かつ平坦に形成することができる。なお、遮蔽層13を形成する際、遮蔽層13は、密着層12の表面12aに加えて、密着層12の側面12bも覆うように設けられることが好ましい(図1参照)。 【0058】 このようにして、図1に示す配線基板形成用基板10が得られる。 【0059】 (配線基板の製造方法) 次に、図4(a)-(b)により、本実施の形態による配線基板の製造方法について説明する。図4(a)-(b)は、本実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。 【0060】 まず、例えば図3(a)-(d)に示す方法により、配線基板形成用基板10を作製する(図4(a))。 【0061】 次に、配線基板形成用基板10上に再配線層30を形成する(図4(b))。再配線層30は、遮蔽層13上に形成されたパターン構造体31と、パターン構造体31に埋設された配線層32とを有している。この場合、再配線層30は、配線基板形成用基板10上に形成された2層構造からなる多層配線構造体36を含んでいる。再配線層30は、例えばインプリント法によって形成される。このようにして、配線基板形成用基板10と、配線基板形成用基板10上に形成された多層配線構造体36を含む再配線層30とを備えた配線基板20が得られる。」 「【0079】 (半導体装置の製造方法) 次に、図9(a)-(d)により、本実施の形態による半導体装置の製造方法について説明する。図9(a)-(d)は、本実施の形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。 【0080】 まず、例えば図3乃至図8に示す方法により、配線基板形成用基板10と、配線基板形成用基板10上に形成された再配線層30とを備えた配線基板20を作製する。 【0081】 次に、図9(a)に示すように、配線基板20の再配線層30上に半導体素子71を設け、その後、半導体素子71を封止樹脂72によって封止する。半導体素子71としては、従来一般に用いられている各種半導体素子を使用することが可能であり、特に限定されないが、例えば集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード等を用いることができる。半導体素子71は、1個に限らず、複数個設けても良い。また、封止樹脂72としては、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂等にフェノールなどの硬化剤を加えた熱硬化性樹脂、あるいはPPS樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。封止樹脂72の線膨張係数を半導体素子71に近付ける目的で粒子フィラー(SiO2等)等を添加しても良い。また、封止樹脂72の成型充填性を良化させる目的で小径フィラーの添加が適しており、平均粒子径がφ0.1μm~φ50μm好ましくはφ10μm以下のものを選択すると良い(具体的には、長瀬ケムテックス株式会社製 圧縮成型用液状材料 T693/R4000seriesなど)。 【0082】 続いて、図9(b)に示すように、支持基材11及び密着層12を再配線層30及び遮蔽層13から剥離する。このとき、支持基材11側からエキシマレーザー(波長248nmまたは308nm)やYAGレーザー等のレーザー光Lを照射することにより、レーザー光Lが透明な支持基材11を透過して密着層12に到達する。上述したように、密着層12のうち第1密着層12Aは、改質されることにより密着力が低下又は消失する。このため、レーザー光Lによって改質されることにより、第1密着層12Aの密着力が低下又は消失し、第1密着層12Aは、第2密着層12B、再配線層30及び遮蔽層13から剥離する。これに対して、第2密着層12Bは密着力を保持し、遮蔽層13を介して再配線層30に接着されている。なお、第1密着層12Aを改質するとは、レーザー光Lの照射や加熱等の外的エネルギーを付与することにより、第1密着層12Aが機械的に破壊される場合や、第1密着層12Aに分子構造の変化が生じる場合を含む。具体的には、第1密着層12Aが光や熱によって硬化して寸法が縮むことにより、第1密着層12Aの密着力が低下したり、あるいは第1密着層12Aの表面の官能基が破壊されることにより、第1密着層12Aの密着力が低下したりする場合を含む。 【0083】 一方、密着層12の面のうち支持基材11の反対側の面には、遮蔽層13が設けられている。このため、密着層12を透過したレーザー光Lは、遮蔽層13によって反射されて、支持基材11側に戻される。したがって、レーザー光Lが再配線層30まで達することがなく、密着層12を透過したレーザー光Lが再配線層30に悪影響を及ぼすことはない。なお、遮蔽層13は、再配線層30に密着した状態を維持する。 【0084】 なお、上記において、レーザー光Lによって密着層12を改質しているが、これに限られるものではない。例えば、ホットプレート又は焼成炉等の加熱装置を用いて密着層12を加熱することにより改質し、支持基材11及び密着層12を再配線層30及び遮蔽層13から剥離しても良い。この場合、遮蔽層13が、加熱時に密着層12側から生じたガスを遮蔽するので、再配線層30の配線層32等に成分溶出・熱拡散等の不具合が生じることが防止される。 【0085】 次いで、図9(c)に示すように、遮蔽層13上の密着層12Aの残渣及び12Bを溶解除去液によって除去し、その後例えばフラッシュエッチング等の選択エッチング法により、再配線層30から遮蔽層13を除去する。 【0086】 次に、図9(d)に示すように、再配線層30から露出する配線層32上にニッケル層73、金層74を順次設けるとともに、このニッケル層73、金層74を露出するようにソルダーレジスト75を配設する。その後、各金層74上にそれぞれはんだボール76を設けることにより、半導体装置70が得られる。 【0087】 以上説明したように、本実施の形態によれば、配線基板形成用基板10は、支持基材11と、支持基材11上に積層された密着層12と、密着層12上に積層された遮蔽層13を有している。これにより、半導体装置70の製造工程において、密着層12をレーザー光によって加熱する際、レーザー光から再配線層30を保護することができる。あるいは、半導体装置70の製造工程において、密着層12を加熱した際、密着層12側からのガスを遮蔽し、再配線層30を保護することができる。」 「【図2】 [図:0001413371000005.jpg] 」 (2)甲4の上記図2から、再配線層30は、遮蔽層13のうち、密着層12の表面12a上に形成された部分の上に形成されていることがみてとれる。 (3)甲4に記載された発明 上記(1)~(2)から、甲4には、以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる(当審注:括弧内は根拠となる甲4の段落番号である。)。 「支持基材11を準備し、ここで、支持基材11は、配線基板形成用基板10の全体を支持する平坦な板状の部材からなり、(【0029】、【0052】) 支持基材11上に第1密着層12Aを直接積層して形成し、第1密着層12A上に第2密着層12Bを直接積層して形成して、第1密着層12Aと第2密着層12Bとからなる密着層12を形成し、ここで、密着層12の周縁部12eは、支持基材11の周縁部11eよりも内側に引っ込んでいる、すなわち、密着層12の平面形状は、全周にわたって支持基材11の平面形状よりも小さくなっており、(【0043】、【0053】~【0055】) さらに、第2密着層12B上に遮蔽層13を積層し、ここで、遮蔽層13は、密着層12の表面12aから、密着層12の側面12bを介して、密着層12に覆われていない支持基材11の表面11aまで、連続的に延びており、(【0043】、【0057】) 支持基材11と、支持基材11上に積層された密着層12と、密着層12上に積層された遮蔽層(保護層)13とを備えた配線基板形成用基板10を得て、(【0028】、【0058】) 配線基板形成用基板10上に再配線層30を形成し、ここで、再配線層30は、遮蔽層13上に形成されたパターン構造体31と、パターン構造体31に埋設された配線層32とを有し、遮蔽層13のうち、密着層12の表面12a上に形成された部分の上に形成されており、(【0061】、上記(2)) 再配線層30上に半導体素子71を設け、その後、半導体素子71を封止樹脂72によって封止し、(【0081】) 支持基材11及び密着層12を再配線層30及び遮蔽層13から剥離し、このとき、支持基材11側からレーザー光Lを照射することにより、レーザー光Lが透明な支持基材11を透過して密着層12に到達させて、密着層12のうち第1密着層12Aは、改質されることにより密着力が低下又は消失し、第1密着層12Aは、第2密着層12B、再配線層30及び遮蔽層13から剥離し、ここで、第1密着層12Aを改質するとは、レーザー光Lの照射や加熱等の外的エネルギーを付与することにより、第1密着層12Aが機械的に破壊される場合や、第1密着層12Aに分子構造の変化が生じる場合を含み、具体的には、第1密着層12Aが光や熱によって硬化して寸法が縮むことにより、第1密着層12Aの密着力が低下したり、あるいは第1密着層12Aの表面の官能基が破壊されることにより、第1密着層12Aの密着力が低下したりする場合を含み、(【0082】) 遮蔽層13上の密着層12Aの残渣及び12Bを溶解除去液によって除去し、その後、再配線層30から遮蔽層13を除去し、(【0085】) 再配線層30から露出する配線層32上にニッケル層73、金層74を順次設けるとともに、このニッケル層73、金層74を露出するようにソルダーレジスト75を配設し、その後、各金層74上にそれぞれはんだボール76を設けることにより、半導体装置70を得る、(【0086】) 半導体装置の製造方法。」 5 甲5(特開2019-149470号公報) (1)甲5の記載 甲5には以下の記載がある。 「【0020】 支持板3の第1面3a側には、剥離層(仮接着層)5を介して基板(封止基板)7が設けられている。剥離層5は、例えば、金属膜や絶縁体膜等を重ねることによって第1面3aの概ね全体に設けられ、支持板3と基板7とを接着する機能を持つ。また、剥離層5は、接着剤として機能する樹脂膜等によって構成されることもある。」 「【0022】 基板7は、例えば、パッケージパネルやパッケージウェーハ等とも呼ばれ、剥離層5に接する配線層(RDL)(不図示)と、配線層に接合された複数のデバイスチップ9と、各デバイスチップを封止する封止材(モールド樹脂層)11とを含む。この基板7は、平面視で支持板3と概ね同じ大きさ、形状に構成される。基板7の厚みは、例えば、1.5mm以下、代表的には、0.6mmである。」 「【0029】 第1保持工程では、図1(B)に示すように、例えば、基板7の第1面7aをチャックテーブル4の保持面8aに接触させる。そして、バルブ10を開いて、吸引源12の負圧 を保持面8aに作用させる。これにより、複合基板1の基板7側がチャックテーブル4に吸引、保持される。すなわち、支持板3の第2面3b側は露出した状態となる。 【0030】 第1保持工程の後には、剥離層5の端部に流体を吹き付け、基板7を支持板3から剥離する際の起点(きっかけ)となる起点領域を形成する起点領域形成工程を行う。図2(A)は、起点領域形成工程について示す一部断面側面図である。なお、図2(A)でも、一部の構成要素を機能ブロックで示している。 【0031】 起点領域形成工程は、引き続き剥離装置2を用いて行われる。図2(A)に示すように、チャックテーブル4の上方には、流体を噴射するためのノズル14が配置されている。このノズル14は、例えば、移動機構(不図示)によって支持されており、保持面8aに対して概ね垂直な方向と、保持面8aに対して概ね平行な方向とに移動する。 【0032】 起点領域形成工程では、例えば、複合基板1を保持したチャックテーブル4を回転させて、ノズル14の噴射口を剥離層5の端部(すなわち、支持板3や基板7の端部)へと向ける。また、チャックテーブル4とノズル14とを相対的に移動させて、複合基板1とノズル14との距離を調整する。 【0033】 その後、ノズル14の噴射口から剥離層5の端部へと向けて流体を噴射しながら、このノズル14が剥離層5の端部に沿って移動するようにチャックテーブル4とノズル14とを相対的に移動させる。これにより、剥離の際の起点となる起点領域を剥離層5の端部に沿って形成できる。 【0034】 この起点領域は、複合基板1の全周(すなわち、剥離層5の端部の全体)に形成されることが望ましい。これにより、基板7を支持板3から適切に剥離できるようになる。ただし、基板7を支持板3から適切に剥離できる範囲内で、起点領域を剥離層5の端部の一部にのみ形成しても良い。 【0035】 ノズル14から噴射する流体としては、例えば、空気等の気体や、水等の液体、気体と液体とを混合した混合流体等が用いられる。特に、空気と水とを混合した二流体を流体として用いる場合には、適切な起点領域を形成し易くなる。チャックテーブル4とノズル14との距離は、剥離層5の材質、ノズル14から噴射する流体の種類、流体を噴射する圧力等の条件に応じて、起点領域を適切に形成できる範囲内で調整される。」 「【0041】 剥離工程では、図3に示すように、例えば、吸着パッド16が保持面8aに対して概ね垂直且つチャックテーブル4から離れる方向に移動するように、移動機構で吸着パッド16に力を加える。上述のように、チャックテーブル4には、複合基板1の基板7が吸引、保持されており、吸引パッド16には、複合基板1の支持板3が吸引、保持されている。また、剥離層5の端部には、剥離の際の起点となる起点領域が形成されている。 【0042】 そのため、保持面8aに概ね垂直且つチャックテーブル4から離れる方向の力を吸着パッド16に加えると、剥離層5は、上述した起点領域を起点として、支持板3側に密着した第1部分5aと、基板7側に密着した第2部分5bとに分離される。そして、吸着パッド16は、保持面8aに概ね垂直且つチャックテーブル4から離れる方向に移動し、基板7が支持板3から剥離される。 【0043】 以上のように、本実施形態に係る剥離方法では、剥離層5の端部に流体を吹き付け、基板(封止基板)7を支持板3から剥離する際の起点となる起点領域を形成するので、この起点領域を起点として、基板7を支持板3から容易に剥離できる。すなわち、この剥離の際に基板7や支持板3が損傷する可能性を低く抑えられる。」 「【0047】 また、例えば、上記実施形態で使用される支持板3の端部の第1面3a側には、剥離層5を構成する金属膜や樹脂膜の一部が被覆していることも考えられる。その場合には、剥離層5の端部に起点領域が形成され難く、基板7を支持板3から容易に剥離できない可能性が高くなる。 【0048】 そこで、このような場合には、起点領域形成工程の前に、支持板3の端部の第1面3a側を覆う金属膜や樹脂膜を除去する除去工程を行うと良い。図4(A)は、除去工程が行われる前の支持板の端部の様子を拡大して示す断面図であり、図4(B)は、除去工程について示す一部断面側面図である。 【0049】 図4(A)に示すように、変形例に係る剥離方法で使用される支持板3の端部の第1面3a側は、剥離層5を構成する金属膜又は樹脂膜の一部5aによって被覆されている。そこで、この変形例では、金属膜又は樹脂膜の一部5aを除去し、後の起点領域形成工程において、剥離層5の端部に起点領域を形成し易くする。 【0050】 具体的には、図4(B)に示すように、剥離装置2に設けられている切削ユニット18を用いて、この金属膜又は樹脂膜の一部5aを除去する。切削ユニット18は、例えば、チャックテーブル4の保持面8aに対して概ね平行な回転軸となるスピンドル20を備えている。スピンドル20の一端側には、結合材に砥粒が分散されてなる環状の切削ブレード22が装着されている。 【0051】 スピンドル20の他端側には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、スピンドル20の一端側に装着された切削ブレード22は、回転駆動源から伝わる力によって回転する。この切削ユニット18は、例えば、移動機構(不図示)によって支持されており、保持面8aに対して概ね垂直な方向と、保持面8aに対して概ね平行な方向とに移動する。 【0052】 除去工程では、まず、複合基板1を保持したチャックテーブル4を回転させて、支持板3の端部を含む外周縁を、切削ブレード22の回転軸(スピンドル20)に対して平面視で垂直にする。そして、チャックテーブル4と切削ユニット18とを相対的に移動させて、上述した支持板3の端部を含む外周縁の延長線上方に切削ブレード22を位置付ける。また、切削ブレード22の下端を、支持板3の第1面3aより低い位置に位置付ける。 【0053】 その後、切削ブレード22を回転させながら、支持板3の端部を含む外周縁と平行な方向にチャックテーブル4を移動させる。これにより、支持板3の端部の第1面3a側を被覆する金属膜又は樹脂膜の一部5aに切削ブレード22を切り込ませ、この金属膜又は樹脂膜の一部5aを除去できる。 【0054】 その結果、剥離層5の端部には、剥離層5の適切な積層構造等が露出して、後の起点領域形成工程において剥離層5の端部に起点領域を形成し易くなる。このような動作を繰り返し、支持板3の端部の第1面3a側を被覆する金属膜又は樹脂膜の一部5aが全て除去されると、除去工程は終了する。」 6 甲6(特許第6447135号公報) (1)甲6の記載 甲6には以下の記載がある。 「【0067】 本発明において、無機基板側、ないし、高分子フィルム側、さらには両方にパターン化処理が成された場合、パターン化処理により高分子フィルムと無機基板との接着力が低くなる領域(易剥離部と呼ぶ)に電子デバイスを形成し、次いで、その領域の外周部に切り込みを入れ、高分子フィルムの電子デバイスが形成されたエリアを無機基板から剥離する事によりフレキシブル電子デバイスを得ることが出来る。該方法により、高分子フィルムと無機基板の剥離がより容易になる。」 7 甲7(特開平5-144974号公報) (1)甲7の記載 甲7には以下の記載がある。 「【0028】次に図5に示すように、図1(a)~図2(g)の工程で形成したアルミニウム平板1上のポリイミド多層配線層の接続用金属バンプ11を有するポリイミド層と、図3(a)~図4(f)の工程で形成したセラミック基板13上の金属バンプ21を有するポリイミド多層配線層を位置合わせを行った後重ね合わせ、加圧およびポリイミド樹脂のガラス転移点を越える温度まで加熱を行い、互いのポリイミド膜を接着し固定する。この時、形成した金属バンプ11,21どうしで接合し、ふたつの積層構造体が電気的に接続する。加圧及び加熱方法は次の通りである。加圧・加熱はオートクレーブ型真空プレス装置を使用し、加圧気体は窒素ガスを使用し、加圧は基板温度250℃までは3kg/cm2、基板温度250℃から350℃までは14kg/cm2で行う。この時、基板はプラテン上に置かれポリイミドフィルムを用いて密封して、内部を真空状態にする。 【0029】次に図6および図7に示すように、上記接着済み基板をダイシングソー25を用いて、パターンエリアの広さにアルミの平板1をカットする。 【0030】次に図8に示すように、アルミの平板1上の低熱膨張率ポリイミド層2とその上のポリイミド層3の密着がないことを利用して、アルミの平板1を剥離する。」 8 甲8については、本件発明3の「前記剥離層の途中まで延びる前記破断部を形成する」ことが周知技術であることを立証するために提出された証拠であるから、摘記を省略する。 第5 申立理由1(甲1を主引用例とした新規性・進歩性)について 1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 ア 甲1発明の「支持体1」は、「例えば、円形の板状のもの」であって、基板であるといえるから、本件発明1の「支持基板」に相当する。 また、甲1発明の「支持体1」は、「平面部1a」を有し、「周縁部分1b」は、「平面部1aの周縁部分」であるから、平面部1aの周縁部分1bは、「支持体1」の外周部といえる。 そして、「支持体1」の「平面部1a」のうち、「周縁部分1b」の内側の部分は、中央部といえ、上記のとおり、「支持体1」は、「例えば、円形の板状のもの」であるから、中心を有し、上記中央部が当該中心を含むことは明らかである。 さらに、甲1発明において、「分離層周縁部分除去工程では、支持体1の周縁部分1b全周に形成された分離層2を除去し」ているから、周縁部分1bは、支持体1の平面部1aの全周に形成されるものであり、上記中央部を囲むものであるといえる。 そうすると、甲1発明の「支持体1」と、本件発明1の「支持基板」とは、「中心を含む中央部と、前記中央部を囲む外周部と」を有する点で共通する。 イ 甲1発明の「分離層2」は、「分離層2を変質させたときに、より円滑に支持体1と封止体7とを分離することができる」ものであり、ここで、分離することは剥離することといえるから、甲1発明の「分離層2」は、本件発明1の「剥離層」に相当する。 また、甲1発明の「分離層2」は、「支持体1の一方の平面部1aに」「形成」されるものであり、上記アの検討を参酌すると、支持体1の上に設けられ、かつ、支持体1の上記中央部の上に設けられているといえる。 そうすると、甲1発明の「分離層2」と本件発明1の「剥離層」とは、「前記支持基板の上に設けられ」、かつ、「前記中央部の上に設けられ」ている点で共通する。 ウ 甲1発明の「接着層3」は、「支持体1における周縁部分1b全周の分離層2を除去した側の面」であって、「分離層2を囲む周縁部分1b、および、分離層2の上部に」「形成」されるものであるから、分離層2の上に設けられた第1部分と、周縁部分1bの上に設けられ分離層2の外周端部を覆う第2部分と、を有しているといえる。 また、甲1発明の「接着層3」は、「分離層2を保護することができる」ものであるから保護層といえる。 そうすると、甲1発明の「接着層3」は、本件発明1の「前記剥離層の上に設けられ」、「前記剥離層の上に設けられた第1部分と、前記外周部の上に設けられ前記剥離層の外周端部を覆う第2部分と、を有する」「保護層」に相当する。 エ 甲1発明において、「分離層形成工程」、「分離層周縁部分除去工程」及び「接着層形成工程」によって得られた支持体1、分離層2及び接着層3の集合体は、上記ア~ウの検討を参酌すると、本件発明1の「キャリア」と同様の構成を有しているといえる。 そして、甲1発明において、「分離層形成工程」、「分離層周縁部分除去工程」、「接着層形成工程」によって、支持体1、分離層2及び接着層3の集合体を形成することは、当該集合体を準備することといえる。 そうすると、甲1発明において、「分離層形成工程」、「分離層周縁部分除去工程」及び「接着層形成工程」によって、支持体1、分離層2及び接着層3の集合体を形成することは、本件発明1の「キャリアを準備する工程」に相当する。 オ (ア)甲1発明では、「封止体形成工程」において、「配線層形成工程では、接着層3上に配線層4を形成し、実装工程では、配線層4上に、半導体素子またはその他の素子である素子5を実装し、封止工程では、素子5を、例えば、エポキシ系の樹脂、シリコン系の樹脂等を用いることができる封止材6によって封止し」ており、ここで、「封止材6によって封止」するとは、封止材6によって覆うことであるといえるから、甲1発明は、接着層3上に、半導体素子またはその他の素子である素子5と、素子5を覆う封止材6を形成する工程を備えているといえる。 (イ)甲1発明では、「素子5及び封止材6は、分離層2及び接着層4の上に形成されており」、また、上記イで検討したとおり、甲1発明の「分離層2」は、支持体1の上記中央部の上に設けられているから、甲1発明において、素子5と封止材6は、支持体1の上記中央部の上に形成されているといえる。 (ウ)上記(ア)及び(イ)の検討によれば、甲1発明は、支持体1の中央部の上に、半導体素子またはその他の素子である素子5と、素子5を覆う封止材6を形成する工程を備えているといえる。 そうすると、甲1発明の「半導体素子またはその他の素子である素子5」、「素子5」を「封止」する「例えば、エポキシ系の樹脂、シリコン系の樹脂等を用いることができる封止材6」は、本件発明1の「半導体素子」、「前記半導体素子を覆う樹脂材」にそれぞれ相当し、また、甲1発明の「素子5」と「封止材6」とを合わせたものは、本件発明1の「半導体素子と前記半導体素子を覆う樹脂材とを有する樹脂プレート」に相当する。 以上によれば、甲1発明と本件発明1とは、「前記第1部分の上に、半導体素子と前記半導体素子を覆う樹脂材とを有する樹脂プレートを形成する工程」を備えている点で共通する。 カ 甲1発明の「分離工程」において「支持体1」と「分離」される「封止体7」は、「配線層4と、配線層4に実装されている素子5と、素子5を封止している封止材6とを備えて」いるものであり、上記オで検討したとおり、素子5と封止材6とを合わせたものは、本件発明1の「樹脂プレート」に相当するから、甲1発明の「分離工程」と本件発明1の「分離する工程」とは、「前記支持基板と前記樹脂プレートとを分離する」点で共通する。 キ 甲1発明の「単離された封止体7」は、「配線層4と、配線層4に実装されている素子5と、素子5を封止している封止材6とを備えて」おり、ここで、素子5は、「半導体素子またはその他の素子」であるから、甲1発明の「単離された封止体7を得る、封止体の製造方法」は半導体装置の製造方法といえる。 したがって、甲1発明の「封止体の製造方法」は、本件発明1の「半導体装置の製造方法」に相当する。 ク 上記ア~キの検討によれば、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点1を有する。 [一致点] 「支持基板と、前記支持基板の上に設けられた剥離層と、前記剥離層の上に設けられた保護層と、を有し、前記支持基板は、中心を含む中央部と、前記中央部を囲む外周部と、を有し、前記剥離層は、前記中央部の上に設けられ、前記保護層は、前記剥離層の上に設けられた第1部分と、前記外周部の上に設けられ前記剥離層の外周端部を覆う第2部分と、を有するキャリアを準備する工程と、 前記第1部分の上に、半導体素子と前記半導体素子を覆う樹脂材とを有する樹脂プレートを形成する工程と、 前記支持基板と前記樹脂プレートとを分離する工程と、 を備えた、半導体装置の製造方法。」 [相違点1] 本件発明1は、「前記剥離層の一部であって、前記樹脂プレートの外側に破断部を形成する工程」を備え、「前記破断部を起点にして」分離する工程がなされるのに対し、甲1発明は、そのような構成を備えていない点。 (2)相違点1についての判断 ア 本件発明1における「前記樹脂プレートの外側」の解釈について (ア)本件特許明細書、本件特許に係る願書に添付した図面には以下の記載がある。 「【0010】 図1(a)及び図1(b)に表したように、実施形態に係るキャリア100は、支持基板10と、支持基板10の上に設けられた密着層20と、剥離層30と、中間層40と、保護層50と、を備えている。各層は、支持基板10側から密着層20、剥離層30、中間層40、保護層50、の順に積層されている。 【0011】 なお、本願明細書では、各層の積層方向をZ方向とする。Z方向は、上下方向である。また、Z方向と直交する方向をX方向、Z方向及びX方向と直交する方向をY方向とする。」 「【0059】 次に、図6(c)に表したように、剥離層30の一部であって、樹脂プレート160の外側に破断部35を形成する。樹脂プレート160の外側とは、Z方向において、樹脂プレート160と重ならない位置である。破断部35は、例えば、ナイフ等の治具Jを用いて、剥離層30のうち樹脂プレート160の外側に位置する部分を破断することで形成される。破断部35は、樹脂プレート160を囲むように一周に形成されてもよいし、樹脂プレート160の外側の1箇所または2箇所以上に形成されてもよい。」 「【図1】 [図:0001413371000006.jpg] 」 (イ)本件発明1の「前記剥離層の一部であって、前記樹脂プレートの外側に破断部を形成する工程」における「前記樹脂プレートの外側」とは、上記(ア)の【0059】によれば、「Z方向において、樹脂プレート160と重ならない位置」であり、当該記載における「Z方向」は、上記(ア)の【0010】、【0011】、【図1】によれば、「支持基板10側から密着層20、剥離層30、中間層40、保護層50、の順に積層され」た「各層」の積層方向であるから、本件発明1の「前記剥離層の一部であ」る「破断部」が形成される「前記樹脂プレートの外側」とは、支持基板10側から密着層20、剥離層30、中間層40、保護層50、の順に積層された各層の積層方向において樹脂プレート160と重ならない位置、すなわち、本件発明1において、支持基板側から剥離層、保護層の順に積層された各層の積層方向において樹脂プレートと重ならない位置、と解釈される。 イ 判断 (ア)甲1発明は、「接着層除去工程」において、「例えば、EBR処理により、支持体1の周縁部分1b全周に形成された接着層3を除去」することで、「支持体1と封止体7とが、必ず分離層2を介して接着されている状態にすることができるため、分離層2を変質させたときに、より円滑に支持体1と封止体7とを分離することができる」ものである。 ここで、甲1発明における「EBR処理」は、「例えば、(i)溶剤によって溶解して除去する方法、(ii)カッター又はブレードなどを用いて物理的に切断して除去する方法、(iii)大気圧下でのアッシングにより除去する方法などが挙げられるもの」であるところ、接着層除去工程に用いられるEBR処理として、前記(i)~(iii)いずれの方法が採用される場合であっても、除去されるのは接着層3であって、分離層2ではない。 そうすると、甲1発明は、相違点1に係る本件発明1の構成である「前記剥離層の一部であって、前記樹脂プレートの外側に破断部を形成する工程」及び「前記破断部を起点にして」分離する工程を備えていない。 したがって、相違点1は実質的な相違点である。 (イ)a 甲2(以下、括弧内は根拠となる甲2の段落番号である。)には、支持体40の一方の面40aに、金属層21、接着剤22、半導体素子30、半導体素子30を被覆する樹脂材からなる絶縁層23、ソルダレジスト25をそれぞれ形成して中間体11を得て(【0020】、【0029】~【0032】、【0036】)、分離線C-Cで、中間体11の周縁部11a(支持体40、金属層21、接着剤22、絶縁層23、ソルダレジスト25の周縁部)を切断し、支持体40、金属層21、接着剤22、絶縁層23、ソルダレジスト25に、外部に露出する新たな側面40c´、21c´22c´、23c´、25c´を形成し(【0037】)、支持体40の側面40c´に物理的な外力を加えることにより、分離層である金属層21と支持体40の界面から支持体40を剥離すること(【0039】)、が記載されているが、分離線C-Cでの切断により、半導体素子30を被覆する樹脂材からなる絶縁層23は切断されるから、上記アの「前記樹脂プレートの外側」の解釈に照らせば、相違点1に係る「前記剥離層の一部であって、前記樹脂プレートの外側に破断部を形成する工程」は甲2に記載されていないといえる。 b 甲3(以下、括弧内は根拠となる甲3の段落番号である。)には、支持基板500上に、離型層10、薄膜基板100、薄膜トランジスタを含む画素120、アルミニウム酸化物又はシリコーン酸化物を含んでもよい無機膜及びエポキシ系高分子、アクリレート系高分子、ウレタンアクリレート系高分子などを含んでもよい有機膜の少なくともいずれか一つを含んでもよく、画素120を覆って露出しないようにする封止部材130、をそれぞれ形成し(【0037】、【0046】、【0054】、【0057】、【0126】)、レーザ又はホイールスクライビング(wheel scribing)工程を利用して、封止部材130及び薄膜基板100を切断した後、支持基板500から薄膜基板100を含む表示パネル300を分離すること(【0130】)、が記載されているが、レーザ又はホイールスクライビング工程では、画素120を覆って露出しないようにする封止部材130が切断されるから、上記アの「前記樹脂プレートの外側」の解釈に照らせば、相違点1に係る「前記剥離層の一部であって、前記樹脂プレートの外側に破断部を形成する工程」は、甲3に記載されていないといえる。 c 上記a~bの検討によれば、甲2、甲3のいずれにも、相違点1に係る本件発明1の構成は記載されていない。 d そうすると、甲1発明に、甲2又は甲3に記載された事項を適用しても、相違点1に係る本件発明1の構成は得られない。 (3)申立人の主張について ア 申立人は、特許異議申立書(18頁13行~18頁22行)において、「イ.他方で、甲1には、接着層3の周縁部分1bを除去することで、分離層2の一部であって封止体7の外側に破断部を形成する工程、及び当該破断部を起点にして、支持体1と封止体7とを分離する工程が記載されている(段落26、30、図1(h)~(j))。上記の接着層3の除去工程では例えばカッター又はブレードが用られるが(段落35)、接着層3が残らないように除去される必要があるから、接着層3の除去時に分離層2の一部も除去され破断部が形成される。そして、当該破断部が分離の起点となる。よって、甲1における「接着層3を除去」(段落26)は、本件第1発明における「破断部を形成」を満たす。」と主張しているが、甲1の【0026】及び【0035】には、接着層除去工程において、接着層3を除去すること、そして、【0030】には、支持体1と封止体7とを分離すること、がそれぞれ記載されているが、分離層2の一部を除去することは記載されておらず、甲1の接着層除去工程は、分離の起点となる、分離層2に形成された破断部を形成するものとはいえないから、申立人の上記主張は採用することができない。 イ 申立人は、特許異議申立書(20頁1行~21頁12頁行)において、 「ア.甲3(特開2015-56664号公報)は、支持基板上に離型層、薄膜基板、画素及び封止部材をこの順に形成する表示パネルの製造方法に関する文献である。なお、画素は、半導体を含む(段落90)。当該文献には「図5に示すように、レーザ又はホイールスクライビング(wheel scribing)工程を利用して、封止部材及び薄膜基板を切断し」(段落130)と記載されている。つまり、本件の図6(c)と同様の「破断部を形成」することが開示されている。」、 「イ.また、甲2(特開2006-222164号公報)には、支持体40に分離層として載置されたフィルム体111を接着剤22で被覆して支持体40に接着し、「破線で示す分離線C-Cで、中間体11の周縁部11a(支持体40、フィルム体111、接着剤22、絶縁層23、ソルダレジスト25の周縁部)を切断し除去する」と記載されている(段落63、図23(c))。つまり、「接着剤22」の一部が切断除去されるとともに、分離層(フィルム体111)の端縁より内側に破断部が形成されている。」、 「ウ.なお、甲1には、「支持体1と封止体7」が「分離層2を介して接着されている状態にすること」で「より円滑に支持体1と封止体7とを分離することができる」と記載されている(段落27)。甲1において「分離層2」の一部まで除去すれば確実に「支持体1と封止体7」が「分離層2を介して接着されている状態にすること」ができるため、甲2の記載を組み合わせて「分離層2」の一部まで除去する動機付けがある。」、「以上より、甲1に甲2(及び甲3)を組み合わせることにより、当業者は本件第1発明に容易に想到することができる。」と主張しているが、上記(2)イ(イ)で検討したとおり、甲2、甲3のいずれにも、相違点1に係る本件発明1の構成は記載されておらず、甲1発明に、甲2又は甲3に記載された事項を適用しても、相違点1に係る本件発明1の構成は得られない。 したがって、申立人の上記主張は採用することができない。 (4)小括 以上から、本件発明1は、甲1発明ではない。 また、本件発明1は、甲1発明、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本件発明2~3について 本件発明2~3は、いずれも本件発明1の全ての構成を有するものであるから、甲5及び甲8の記載を参照しても上記1で検討したのと同様の理由により、本件発明2~3は、甲1発明、甲2、甲3、甲5及び甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではなく、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 したがって、申立理由1は理由がない。 第6 申立理由2(甲4を主引用例とした新規性・進歩性)について 1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲4発明とを対比する。 ア 甲4発明の「支持基材11」は、「配線基板形成用基板10の全体を支持する平坦な板状の部材からな」るものであって、基板であるといえるから、本件発明1の「支持基板」に相当する。 イ 甲4発明の「密着層12に覆われていない支持基材11の表面11a」は、「密着層12の周縁部12eは、支持基材11の周縁部11eよりも内側に引っ込んでいる」ことで形成されるものである。また、「密着層12の周縁部12eは、支持基材11の周縁部11eよりも内側に引っ込んでいる」ことで、「密着層12の平面形状は、全周にわたって支持基材11の平面形状よりも小さくなって」いることからすると、「密着層12に覆われていない支持基材11の表面11a」は、支持基材11の外周部といえる。 そして、「密着層12に覆われていない支持基材11の表面11a」が全周にわたって囲む、支持基材11の内側の部分は中央部といえる。ここで、「支持基材11」が中心を有し、中央部が当該中心を含むことは明らかである。 そうすると、甲4発明の「支持基材11」と本件発明1の「支持基板」とは「中心を含む中央部」、「前記中央部を囲む外周部」を有する点で共通する。 ウ 甲4発明では、「支持基材11及び密着層12を再配線層30及び遮蔽層13から剥離」するにあたって、「支持基材11側からレーザー光Lを照射することにより、レーザー光Lが透明な支持基材11を透過して密着層12に到達させて、密着層12のうち第1密着層12Aは、改質されることにより密着力が低下又は消失」することで、甲4発明の「第1密着層12A」は、「第2密着層12B、再配線層30及び遮蔽層13から剥離」されることとなるから、甲4発明の「第1密着層12A」は、改質されることにより密着力が低下又は消失して剥離層として機能するものといえる点で、本件発明1の「剥離層」に相当する。 また、甲4発明の「密着層12」は、「支持基材11上に積層され」るものであり、上記イの検討を参酌すると、支持基材11の上に設けられ、かつ、支持基材11の上記中央部の上に設けられたものといえる。さらに、甲4発明の密着層12は、「第1密着層12Aと第2密着層12Bとからな」るものであるから、甲4発明の密着層12を構成する「第1密着層12A」は、支持基材11の上に設けられ、かつ、支持基材11の中央部の上に設けられるものといえる。 そうすると、甲4発明の「第1密着層12A」と本件発明1の「剥離層」とは、「前記支持基板の上に設けられ」、かつ、「前記中央部の上に設けられ」ているという点で共通する。 エ 甲4発明の「遮蔽層13」は、「密着層12上に積層された遮蔽層(保護層)13」であり、また、「密着層12の表面12aから、密着層12の側面12bを介して、密着層12に覆われていない支持基材11の表面11aまで、連続的に延びて」いるものであるから、「遮蔽層13」は、「密着層12」の上に設けられた第1部分と、「支持基材11」の上記外周部の上に設けられ「密着層12」の外周端部を覆う第2部分と、を有しているといえる。 そして、上記ウで検討したとおり、甲4発明の「第1密着層12A」は、本件発明1の「剥離層」に相当する。 そうすると、甲4発明の「遮蔽層13」は、本件発明1の「保護層」に相当し、両者は、「前記剥離層の上に設けられた第1部分と、前記外周部の上に設けられ前記剥離層の外周端部を覆う第2部分」とを有する点で共通する。 オ 甲4発明の「支持基材11と、支持基材11上に積層された密着層12と、密着層12上に積層された遮蔽層(保護層)13とを備えた配線基板形成用基板10を得」て形成される支持基材11、密着層12及び遮蔽層13の集合体は、上記ア~エの検討を参酌すると、本件発明1の「キャリア」と同様の構成を有しているといえる。 そして、甲4発明において、「支持基材11と、支持基材11上に積層された密着層12と、密着層12上に積層された遮蔽層(保護層)13とを備えた配線基板形成用基板10を得」て、支持基材11、密着層12及び遮蔽層13の集合体を形成することは、当該集合体を準備することといえるから、甲4発明において、配線基板形成用基板10を得て、支持基材11、密着層12及び遮蔽層13の集合体を形成することは、本件発明1の「キャリアを準備する工程」に相当する。 カ 甲4発明では、「再配線層30は、遮蔽層13のうち、密着層12の表面12a上に形成された部分の上に形成されて」おり、「再配線層30上に半導体素子71を設け、その後、半導体素子71を封止樹脂72によって封止」しているから、半導体素子71及び封止樹脂72は、遮蔽層13のうち、密着層12の表面12a上に形成された部分の上に形成されるものといえる。 また、甲4発明において、「封止樹脂72によって封止」することは、封止樹脂72によって覆うことであるといえるから、甲4発明は、遮蔽層13のうち、密着層12の表面12a上に形成された部分の上に、半導体素子71と、半導体素子71を覆う封止樹脂72を形成する工程を備えているといえる。 そうすると、甲4発明の「半導体素子71」、「半導体素子71」を「封止」する「封止樹脂72」は、本件発明1の「半導体素子」、「前記半導体素子を覆う樹脂材」にそれぞれ相当し、また、甲4発明の「半導体素子71」と「封止樹脂72」とを合わせたものは、本件発明1の「半導体素子と前記半導体素子を覆う樹脂材とを有する樹脂プレート」に相当する。 以上によれば、甲4発明と本件発明1とは、「前記第1部分の上に、半導体素子と前記半導体素子を覆う樹脂材とを有する樹脂プレートを形成する工程」を備えている点で共通する。 キ 甲4発明では、「再配線層30上に半導体素子71を設け、その後、半導体素子71を封止樹脂72によって封止し、支持基材11及び密着層12を再配線層30及び遮蔽層13から剥離」しており、ここで、「剥離」することは、分離することであるといえるから、甲4発明は、「支持基材11」と、半導体素子71及び封止樹脂72とを分離する工程を備えているといえ、上記カで検討したとおり、半導体素子71と封止樹脂72とを合わせたものは、本件発明1の「樹脂プレート」に相当するから、甲4発明と本件発明1とは、「前記支持基板と前記樹脂プレートとを分離する工程」を備えている点で共通する。 ク 上記ア~キの検討によれば、本件発明1と甲4発明とは、以下の一致点及び相違点2を有する。 [一致点] 「支持基板と、前記支持基板の上に設けられた剥離層と、前記剥離層の上に設けられた保護層と、を有し、前記支持基板は、中心を含む中央部と、前記中央部を囲む外周部と、を有し、前記剥離層は、前記中央部の上に設けられ、前記保護層は、前記剥離層の上に設けられた第1部分と、前記外周部の上に設けられ前記剥離層の外周端部を覆う第2部分と、を有するキャリアを準備する工程と、 前記第1部分の上に、半導体素子と前記半導体素子を覆う樹脂材とを有する樹脂プレートを形成する工程と、 前記支持基板と前記樹脂プレートとを分離する工程と、 を備えた、半導体装置の製造方法。」 [相違点2] 本件発明1は、「前記剥離層の一部であって、前記樹脂プレートの外側に破断部を形成する工程」を備え、「前記破断部を起点にして」分離する工程がなされるのに対し、甲4発明は、そのような構成を備えていない点。 (2)相違点2についての判断 ア 本件発明1における「破断部」の解釈について (ア)本件特許明細書には以下の記載がある。 「【0020】 剥離層30は、半導体装置を製造する際の剥離工程において剥離する。剥離層30は、例えば、炭素を主成分とする。剥離層30は、例えば、80原子%以上の炭素原子を含む。剥離層30は、例えば、アモルファスカーボンからなる。剥離層30にこのような材料を用いることで、剥離層30にナイフ等で剥離のきっかけ(破断部)を形成して機械的に剥離する方法で剥離工程を行うことができる。機械的に剥離する方法であれば、高価なレーザ装置などを使用しないため、剥離層30にレーザ光を照射して材料改質して剥離する方法と比べて、安価に剥離工程を行うことができる。」 (イ)上記(ア)の【0020】によれば、本件発明1の「破断部」とは、剥離のきっかけであって、ナイフ等により形成されて機械的に剥離する方法で用いられるものであり、当該機械的に剥離する方法は、レーザ装置などを使用して、剥離層30にレーザ光を照射して材料改質して剥離する方法を含まないから、本件発明1の「破断部」は、レーザ光の照射により材料改質されて形成されるものを含まないと解釈される。 イ 本件発明1における「前記樹脂プレートの外側」の解釈について 本件発明1の「前記樹脂プレートの外側」は、上記第5の1(2)アで検討したとおり、支持基板側から剥離層、保護層の順に積層された各層の積層方向において樹脂プレートと重ならない位置、である。 ウ 判断 (ア)甲4発明は、「支持基材11側からレーザー光Lを照射することにより、レーザー光Lが透明な支持基材11を透過して密着層12に到達させて、密着層12のうち第1密着層12Aは、改質されることにより密着力が低下又は消失」して、「第1密着層12Aは、第2密着層12B、再配線層30及び遮蔽層13から剥離」がなされることとなるものであり、甲4発明において、レーザー光Lの照射により改質されて密着力が低下又は消失した第1密着層12Aは、レーザ光の照射により材料改質されて形成されるものといえるから、甲4発明におけるレーザー光Lの照射により改質されて密着力が低下又は消失した第1密着層12Aは、上記アの「破断部」の解釈に照らせば、本件発明1の「破断部」には相当しないものである。 したがって、相違点2は実質的な相違点である。 (イ)a 甲2(以下、括弧内は根拠となる甲2の段落番号である。)には、支持体40の一方の面40aに、金属層21、接着剤22、半導体素子30、半導体素子30を被覆する樹脂材からなる絶縁層23、ソルダレジスト25をそれぞれ形成して中間体11を得て(【0020】、【0029】~【0032】、【0036】)、分離線C-Cで、中間体11の周縁部11a(支持体40、金属層21、接着剤22、絶縁層23、ソルダレジスト25の周縁部)を切断し、支持体40、金属層21、接着剤22、絶縁層23、ソルダレジスト25に、外部に露出する新たな側面40c´、21c´22c´、23c´、25c´を形成し(【0037】)、支持体40の側面40c´に物理的な外力を加えることにより、分離層である金属層21と支持体40の界面から支持体40を剥離すること(【0039】)、が記載されているが、分離線C-Cでの切断により、半導体素子30を被覆する樹脂材からなる絶縁層23は切断されるから、上記イの「前記樹脂プレートの外側」の解釈に照らせば、相違点2に係る「前記剥離層の一部であって、前記樹脂プレートの外側に破断部を形成する工程」は甲2に記載されていないといえる。 b 甲3(以下、括弧内は根拠となる甲3の段落番号である。)には、支持基板500上に、離型層10、薄膜基板100、薄膜トランジスタを含む画素120、アルミニウム酸化物又はシリコーン酸化物を含んでもよい無機膜及びエポキシ系高分子、アクリレート系高分子、ウレタンアクリレート系高分子などを含んでもよい有機膜の少なくともいずれか一つを含んでもよく、画素120を覆って露出しないようにする封止部材130、をそれぞれ形成し(【0037】、【0046】、【0054】、【0057】、【0126】)、レーザ又はホイールスクライビング(wheel scribing)工程を利用して、封止部材130及び薄膜基板100を切断した後、支持基板500から薄膜基板100を含む表示パネル300を分離すること(【0130】)、が記載されているが、レーザ又はホイールスクライビング工程では、画素120を覆って露出しないようにする封止部材130が切断されるから、上記イの「前記樹脂プレートの外側」の解釈に照らせば、相違点2に係る「前記剥離層の一部であって、前記樹脂プレートの外側に破断部を形成する工程」は、甲3に記載されていないといえる。 c (a)甲5(以下、括弧内は根拠となる甲5の段落番号である。)には、支持板3の第1面3a側に剥離層5を介して基板7が設けられており(【0020】)、ここで、基板7は、剥離層5に接する配線層と、配線層に接合された複数のデバイスチップ9と、各デバイスチップを封止する封止材(モールド樹脂層)11とを含むものであり(【0022】)、支持板3の端部の第1面3a側に、剥離層5を構成する金属膜又は樹脂膜の一部5aが被覆している場合には(【0047】、【0049】)、切削ブレード22を切り込ませ、この金属膜又は樹脂膜の一部5aを除去して(【0053】)、剥離層5の端部に、剥離層5の適切な積層構造等を露出させ、後の起点領域形成工程において剥離層5の端部に起点領域を形成し易くし(【0054】)、剥離層5の端部に流体を吹き付け、基板7を支持板3から剥離する際の起点(きっかけ)となる起点領域を形成する起点領域形成工程として(【0030】)、ノズル14の噴射口から剥離層5の端部へと向けて流体を噴射しながら、このノズル14が剥離層5の端部に沿って移動するようにチャックテーブル4とノズル14とを相対的に移動させ、剥離の際の起点となる起点領域を剥離層5の端部に沿って形成し(【0033】)、当該起点領域を起点として、基板7を支持板3から剥離すること(【0043】)、が記載されている。 (b)上記(a)における甲5の記載について、支持板3の端部の第1面3a側に、剥離層5を構成する金属膜又は樹脂膜の一部5aが被覆している場合に、切削ブレード22を切り込ませ、この金属膜又は樹脂膜の一部5aを除去する工程は、後の起点領域形成工程において剥離層5の端部に起点領域を形成し易くするための工程であって、基板7を支持板3から剥離する際の起点(きっかけ)となる起点領域を形成する起点領域形成工程ではないから、除去される金属膜又は樹脂膜の一部5aは、剥離の起点としての破断部であるとはいえない。 (c)上記(a)における甲5の記載について、基板7を支持板3から剥離する際の起点(きっかけ)となる起点領域を形成する起点領域形成工程は、支持板3の端部の第1面3a側に、剥離層5を構成する金属膜又は樹脂膜の一部5aが被覆している場合に、切削ブレード22を切り込ませ、この金属膜又は樹脂膜の一部5aを除去する工程の後に行われるものであるから、起点領域形成工程が行われる時点では、金属膜又は樹脂膜の一部5aが除去されているため、剥離層5の端部に流体を吹き付けて形成される起点領域は、基板7上の剥離層5に設けられるといえる。また、支持板3の端部の第1面3a側に、剥離層5を構成する金属膜又は樹脂膜の一部5aが被覆しておらず、切削ブレード22を切り込ませない場合であっても同様に、剥離層5の端部に流体を吹き付けて形成される起点領域は、基板7上の剥離層5に設けられるといえる。 ここで、基板7は、上記(a)に記載されるとおり、配線層に接合された複数のデバイスチップ9と、各デバイスチップを封止する封止材(モールド樹脂層)11とを含むものであり、デバイスチップは半導体素子、各デバイスチップを封止する封止材(モールド樹脂層)11は半導体素子を覆う樹脂材といえる点で、相違点2に係る樹脂プレートに相当するといえる。 しかしながら、剥離層5の端部に流体を吹き付けて形成される起点領域は、相違点2に係る樹脂プレートに相当する基板7上の剥離層5に設けられるものであり、基板7の外側の剥離層5に設けられるものではないから、上記イの「前記樹脂プレートの外側」の解釈に照らせば、相違点2に係る「前記樹脂プレートの外側」の「破断部」であるとはいえない。 (d) 上記(a)~(c)の検討によれば、相違点2に係る本件発明1の構成は、甲5に記載されていないといえる。 d 甲6(以下、括弧内は根拠となる甲6の段落番号である。)には、パターン化処理により高分子フィルムと無機基板との接着力が低くなる領域に電子デバイスを形成し、その領域の外周部に切り込みを入れ、高分子フィルムの電子デバイスが形成されたエリアを無機基板から剥離する事によりフレキシブル電子デバイスを得ること(【0067】)、が記載されているが、電子デバイスを覆う樹脂材は記載されていないため、相違点2に係る樹脂プレート、すなわち、半導体素子と前記半導体素子を覆う樹脂材とを有する樹脂プレートは記載されていないから、相違点2に係る本件発明1の構成は、甲6には記載されていないといえる。 e 甲7(以下、括弧内は根拠となる甲7の段落番号である。)には、アルミニウム平板1上のポリイミド多層配線層の接続用金属バンプ11を有するポリイミド層と、セラミック基板13上の金属バンプ21を有するポリイミド多層配線層を位置合わせを行った後重ね合わせ、加圧およびポリイミド樹脂のガラス転移点を越える温度まで加熱を行い、互いのポリイミド膜を接着し固定し(【0028】)、上記接着済み基板をダイシングソー25を用いて、パターンエリアの広さにアルミの平板1をカットし(【0029】)、アルミの平板1を剥離すること(【0030】)、について記載されているが、相違点2に係る樹脂プレート、すなわち、半導体素子と前記半導体素子を覆う樹脂材とを有する樹脂プレートは記載されていないから、相違点2に係る本件発明1の構成は、甲7には記載されていないといえる。 f 甲8は、本件発明3の「前記剥離層の途中まで延びる前記破断部を形成する」ことが周知技術であることを立証するために提出された証拠であり、相違点2に係る本件発明1の構成は、甲8には記載されていない。 g 上記a~fの検討によれば、甲2、甲3、甲5~甲8のいずれにも、相違点2に係る本件発明1の構成は記載されてない。 h そうすると、甲4発明に、甲2、甲3、甲5~甲8に記載された事項を適用しても、相違点2に係る本件発明1の構成は得られない。 (3)申立人の主張について ア 申立人は、特許異議申立書(32頁12行~33頁2行)において、「他方で、甲4には、密着層12の一部である第1密着層12Aにレーザー光を照射したうえで機械的に破壊する工程、及び支持基材11と樹脂プレートを分離する工程が記載されている(請求項14、15、段落82、図9(b))。なお、図9では、上述の通り、遮蔽層3の外周部が省略されている。甲4の、特に変形例1(図10)では、第1密着層12Aが樹脂プレートより外側に広く形成されており、樹脂プレートの外側の第1密着層12Aに破壊部(破断部に相当)が形成され分離の起点となる。」、「よって、甲4には、構成要件C及びDが記載されている。」と主張しているが、上記(2)ウ(ア)で検討したとおり、甲4発明において、レーザー光の照射により改質されて密着力が低下又は消失した第1密着層12Aは、本件発明1の「破断部」には相当しないから、申立人の上記主張は採用することができない。 イ 申立人は、特許異議申立書(35頁8行~11行)において、「以上のように、仮に、構成要件Dにおける破断部を起点にして分離することが甲4に記載されていないと認定したとしても、当該構成は従来周知であり、本件第1発明は、甲4及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到しえた発明である。」と主張しているが、申立人の上記主張は、「破断部を起点にして分離すること」が本件発明1と甲4発明との相違点であることを前提とするものである。 しかし、本件発明1と甲4発明との相違点は、上記(1)クで示した相違点2のとおりであるから、申立人の上記主張は前提において誤っている。 そして、上記(2)ウで検討したとおり、本件発明1と甲4発明とは、実質的な相違点である相違点2を有しており、相違点2に係る本件発明1の構成は、甲2、甲3、甲5~甲8のいずれにも記載されておらず、甲4発明に、甲2、甲3、甲5~甲8に記載された事項を適用しても、相違点2に係る本件発明1の構成は得られない。 したがって、申立人の上記主張は採用することができない。 (4)小括 以上から、本件発明1は、甲4発明ではない。 また、本件発明1は、甲4発明及び甲2、甲3、甲5~甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本件発明2~3について 本件発明2~3は、いずれも本件発明1の全ての構成を有するものであるから、上記1で検討したのと同様の理由により、本件発明2~3は、甲4発明及び甲2、甲3、甲5~甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではなく、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 したがって、申立理由2は理由がない。 第7 申立理由3(新規事項)について 1 令和5年5月24日提出の手続補正書による補正は、特許請求の範囲の請求項3の記載を、「前記破断部を形成する工程において、前記保護層から前記剥離層の途中まで延びる前記破断部を形成する、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。」とする補正(以下、「本件補正」という。)を含むものである。 2 請求項3の「破断部」について、当初明細書等には以下の記載がある。 「【0026】 保護層50は、最上層に設けられる。保護層50は、少なくとも剥離層30の上に設けられる。この例では、保護層50は、中間層40の上に設けられている。保護層50は、中間層40の上面の全域及び支持基板10の外周部10bの上面の全域を覆っている。保護層50は、支持基板10の中央部10a及び外周部10bの上に設けられる。換言すれば、中央部10a及び外周部10bは、Z方向において保護層50と重なる。Z方向から見たときの保護層50の直径は、例えば、Z方向から見たときの支持基板10の直径と同じである。」 「【0059】 次に、図6(c)に表したように、剥離層30の一部であって、樹脂プレート160の外側に破断部35を形成する。樹脂プレート160の外側とは、Z方向において、樹脂プレート160と重ならない位置である。破断部35は、例えば、ナイフ等の治具Jを用いて、剥離層30のうち樹脂プレート160の外側に位置する部分を破断することで形成される。破断部35は、樹脂プレート160を囲むように一周に形成されてもよいし、樹脂プレート160の外側の1箇所または2箇所以上に形成されてもよい。 【0060】 次に、図6(d)に表したように、破断部35を起点にして、支持基板10と樹脂プレート160とを分離する。換言すれば、破断部35を起点にして、支持基板10を樹脂プレート160から剥離する。分離(剥離)の界面は、剥離層30と中間層40との間であってもよいし、剥離層30と密着層20との間であってもよいし、剥離層30の内部であってもよい。この例では、分離(剥離)の界面は、剥離層30の内部である。分離(剥離)は、例えば、樹脂プレート160を、ダイシングテープを介してステージ上に固定した状態で、剥離層30の破断部35に近い位置で支持基板10を真空吸着し、真空吸着する位置を徐々に破断部35から遠ざけることで行うことができる。」 「【図6】 [図:0001413371000007.jpg] 」 3(1)上記2の【0026】の記載によれば、保護層50は剥離層30の上に設けられるものである。 また、同【0059】の記載によれば、破断部35は、例えば、ナイフ等の治具Jを用いて、剥離層30のうち樹脂プレート160の外側に位置する部分を破断することで形成されるものであり、同【図6】(c)から、ナイフ等の治具Jは、保護層40を突き抜けていることが見て取れる。 そうすると、例えば、ナイフ等の治具Jを用いて、剥離層30のうち樹脂プレート160の外側に位置する部分を破断する工程においては、保護層50から剥離層30まで延びる破断部35が形成されるものと解される。 (2)上記2の【0060】の記載によれば、破断部35を起点にして、支持基板10と樹脂プレート160とを分離する際の、分離(剥離)の界面は、剥離層30と中間層40との間であってもよいし、剥離層30と密着層20との間であってもよいし、剥離層30の内部であってもよく、図6(d)から、分離(剥離)の界面は、剥離層30の内部であることが見て取れる。 (3)上記(1)及び(2)の検討によれば、破断部35を起点にして、支持基板10と樹脂プレート160とを分離する際の、分離(剥離)の界面が、剥離層30の内部となるためには、破断部35が、剥離層30の途中まで伸びていれば足りることは、当業者であれば認識し得るものである。 そうすると、破断部35を形成する工程において、保護層50から剥離層30の途中まで延びる破断部35を形成することは、当初明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 4 申立人は、特許異議申立書(37頁6行~14行)において、「イ.本件出願人は、令和5年5月24日付け意見書において、「この発明特定事項は、本件の図6(c)、図6(d)などに基づきます。図6(c)及び図6(d)には、保護層50から剥離層30の途中まで延びる破断部35を形成することが明示されています。」と述べているが、図6(c)、図6(d)には上記発明特定事項の記載はなく、また、これらの図は模式図にすぎず、これらの図から上記発明特定事項が明示されているとは到底考えられない。ウ.特に本件の図6(c)を参照するとナイフ等の治具Jは明らかに剥離層30、さらには密着層20を貫通して支持基板10まで到達している(図6(d)は剥離面が剥離層30内に形成されることを示すのみ)」と主張している。 確かに、図6(c)から、ナイフ等の治具Jは、剥離層30及び密着層20を貫通して支持基板20まで到達していることが見て取れる。 しかし、申立人も主張するとおり、図6(c)は、模式図にすぎないから、図6(c)のみの記載から、本件補正の適否を判断することは適切ではない。 そして、本件補正が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは、上記3(3)で検討したとおりである。 したがって、申立人の主張は、採用することができない。 5 以上のとおりであるから、令和5年5月24日提出の手続補正書による補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第17条の2第3項の規定に違反してされたものでない。 したがって、申立理由3は、理由がない。 第8 申立理由4(サポート要件)について 1 申立人は、特許異議申立書(38頁6行~9行)において、「本件第1発明は「剥離層の一部であって、樹脂プレートの外側に破断部を形成する工程」と特定しているが、剥離層の外周端部と樹脂プレートの外周端部との関係が特定されていないため、樹脂プレートの外周端部が剥離層の外周端部より外側にあって破断部を形成しえない態様を包含している」と主張している。 しかし、本件発明1の「前記樹脂プレートの外側」の解釈は、上記第5の1(2)アのとおり、支持基板側から剥離層、保護層の順に積層された各層の積層方向において樹脂プレートと重ならない位置であるから、本件発明1において、「剥離層の外周端部」は、「樹脂プレートの外周端部」よりも外側にあり、すなわち、「樹脂プレートの外周端部」は「剥離層の外周端部」より外側になく、申立人が主張する「樹脂プレートの外周端部が剥離層の外周端部より外側にあって破断部を形成しえない態様」は、本件発明1には包含されない。 したがって、申立人の上記主張は、採用することができない。 2(1)申立人は、特許異議申立書(38頁18行~27行)において、「発明の詳細な説明には、「キャリア」が「密着層」及び「中間層」を有しない実施形態が開示されていない。また、「密着層20は、例えば、支持基板10と剥離層30との間の密着性を向上させる。(段落16)」、「中間層40は、例えば、剥離層30と保護層50との間の密着性を向上させる。また、中間層40は、例えば、剥離層30の酸化や吸湿などの変質及び剥離層30の汚染を抑制する。(段落23)」と記載されているように、「密着層」及び「中間層」を有しない場合、キャリア全体の密着性や剥離層の状態に支障をきたすものと読み取れる。してみると、「密着層」及び「中間層」を有しない場合、「半導体装置の製造時の剥離工程の前には支持基板の剥離を抑制(段落5)」という本件の課題を解決できることを当業者が認識できる範囲を超えているといえる。」と主張している。 (2)一方、本件特許明細書の発明の詳細な説明には以下の記載がある。 「【0010】 図1(a)及び図1(b)に表したように、実施形態に係るキャリア100は、支持基板10と、支持基板10の上に設けられた密着層20と、剥離層30と、中間層40と、保護層50と、を備えている。各層は、支持基板10側から密着層20、剥離層30、中間層40、保護層50、の順に積層されている。」 「【0018】 密着層20の厚さは、1μm以下、好ましくは0.5μm以下であり、例えば0.3μmほどである。密着層20を2層以上形成する場合、各層の厚さが上記の厚さであることが好ましい。密着層20は、必要に応じて設けられ、省略可能である。」 「【0025】 中間層40の厚さは、1μm以下、より好ましくは0.5μm以下であり、例えば0.3μmほどである。中間層40を2層以上形成する場合、各層の厚さが上記の厚さであることが好ましい。中間層40は、必要に応じて設けられ、省略可能である。」 (3)上記(2)の【0010】、【0018】、【0025】の記載からすると、密着層20及び中間層40は、それぞれ必要に応じて設けられ、省略可能であって、本件発明の課題を解決するための手段であるとはいえない。 したがって、上記アの申立人の主張は、採用することができない。 3 申立人は、特許異議申立書(39頁5行)において、「本件第3発明は、発明の詳細な説明及び図面に記載されたものでない。」と主張している。 しかし、上記第7の3で検討したとおり、請求項3についての本件補正は、当初明細書等の【0026】、【0060】の記載から、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることからすると、請求項3の「前記破断部を形成する工程において、前記保護層から前記剥離層の途中まで延びる前記破断部を形成する」との構成は、当初明細書等に記載されているといえる。 そして、当初明細書等の【0026】、【0060】の記載と、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0026】、【0060】の記載は同一であるから、請求項3の「前記破断部を形成する工程において、前記保護層から前記剥離層の途中まで延びる前記破断部を形成する」との構成は、本件特許明細書の発明の詳細な説明にも記載されているといえる。 4 以上のとおりであるから、申立理由4は、理由がない。 第9 申立理由5(明確性要件)について 申立人は、特許異議申立書(39頁6行~10行)において、「本件第1発明は「剥離層の一部であって、樹脂プレートの外側に破断部を形成する工程」と特定しているが、「樹脂プレートの外側」と「剥離層の外周端部」との位置関係が不明確である。そのため、剥離層の外周端部より樹脂プレートの外周端部が外側にある場合、破断部をどのように形成するのか不明瞭である。」と主張している。 しかし、上記第8の1で検討したとおり、本件発明1において、「剥離層の外周端部」は、「樹脂プレートの外周端部」よりも外側にあり、すなわち、「樹脂プレートの外周端部」は「剥離層の外周端部」より外側にないから、両者の位置関係は明確である。 したがって、申立人の主張は、採用することができない。 よって、申立理由5は、理由がない。 第10 申立理由6(実施可能要件)について 1 申立人は、特許異議申立書(39頁13行~24行)において、「本件発明の詳細な説明は、本件第3発明で特定された「前記破断部を形成する工程において、前記保護層から前記剥離層の途中まで延びる前記破断部を形成する、」をいかなる手段で実施可能であるのか、当業者が技術常識を参酌しても理解できる程度に記載されていない。本件発明の詳細な説明には「剥離層30の厚さは、1000nm以下であり、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは10nm以下であり、例えば数nmである。(段落21)」、「破断部35は、例えば、ナイフ等の治具Jを用いて、剥離層30のうち樹脂プレート160の外側に位置する部分を破断することで形成される。(段落59)」と記載されている。しかし、ナイフ等の治具によって、厚さ1000nm以下の剥離層の途中まで破断部を形成することは至難の業である。よって、どのように実施すれば剥離層の途中まで延びる破断部を形成できるのか理解できない。」と主張している。 2 しかし、本件発明3では、剥離層の厚さは特定されておらず、その厚さは、剥離層の途中まで延びる破断部が形成される厚さであることは明らかであり、剥離層の厚さが1000nm以下であることを前提とする上記1の上記申立人の主張は、採用できない。 したがって、申立理由6は、理由がない。 第11 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700343

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