特許異議申立
2024-701110
フライバッター用粉末油脂およびフライ食品
- 審判番号
- 2024-701110
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-176258
- 登録番号
- 7484117
- 請求日
- 2024年11月15日
- 審決日
- 2025年01月31日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日油株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
- 【異議申立人】長屋 雅人
- 審判長/審判官
- 審判長 植前 充司
- 審判官 宮久保 博幸
- 審判官 松本 陶子
- 分類
- P1652.113-Y (A23D) / P1652.121-Y (A23D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7484117号発明「フライバッター用粉末油脂およびフライ食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7484117号の請求項1、3、4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7484117号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、令和元年9月26日の出願であって、令和6年5月8日にその特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、同年同月16日に特許掲載公報が発行され、その後、当該特許に対し、同年11月15日に特許異議申立人 長屋 雅人(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1、3、4)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1、3、4に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、3、4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
プロピレングリコール脂肪酸エステル(A)を1~20質量%、有機酸モノグリセリド(B)を1~10質量%、食用油脂(C)を20~80質量%、麦芽糖、乳糖、デキストリン、シクロデキストリンから選ばれる少なくとも1種以上である粉末状の糖類(D)を10~70質量%、を含むフライバッター用粉末油脂。
【請求項3】
請求項1に記載のフライバッター用粉末油脂を含有するフライバッター液。
【請求項4】
請求項1に記載のフライバッター用粉末油脂を含むフライ食品。」
第3 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の概要
令和6年11月15日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。なお、判断の便宜上、当審において、主引用文献ごとに特許異議申立の理由を整理した。
1 申立理由
(1)申立理由1(甲第1号証に基づく新規性及び進歩性)
本件特許発明1、3、4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1、3、4は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1、3、4に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由2(甲第2号証に基づく進歩性)
本件特許発明1、3、4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1、3、4に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由3(甲第3号証に基づく進歩性)
本件特許発明1、3、4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1、3、4に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(4)申立理由4(甲第4号証に基づく進歩性)
本件特許発明1、3、4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1、3、4に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(5)申立理由5(甲第8号証に基づく進歩性)
本件特許発明1、3、4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第8号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1、3、4に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 証拠方法
甲第1号証:特開平5-292874号公報
甲第2号証:特開2017-205059号公報
甲第3号証:特開平6-153793号公報
甲第4号証:特開2018-153179号公報
甲第5号証:特開平4-325049号公報
甲第6号証:特開2006-42778号公報
甲第7号証:特開2011-142838号公報
甲第8号証:特開2014-93982号公報
甲第9号証:特開2002-291433号公報
甲第10号証:特開平10-225259号公報
甲第11号証:月刊フードケミカル,第25巻,第3号,食品化学新聞社,2009年3月,p.47-51
甲第12号証:特開2007-37449号公報
甲第13号証:特開2000-316504号公報
証拠の表記は特許異議申立書の記載におおむね従った。
以下、順に「甲1」等という。
第4 当審による判断
当審は以下に述べるように申立理由によっては本件特許を取り消すことはできないと判断する。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性及び進歩性)について
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1の記載事項
甲1には、「パン粉」に関し、次の事項が記載されている。
「【請求項1】 食用油脂、乳化剤及びカゼイン酸ナトリウムを含有するO/W乳化組成物もしくはそれを噴霧乾燥して得られる粉末油脂を、パン生地に添加して焼成した後、粉砕して得ることを特徴とするパン粉。
【請求項2】 無水物換算にて食用油脂30~90重量%、ジアセチル酒石酸モノグリセリド0.1~20重量%、脂肪酸モノグリセリド0.1~20重量%及びカゼイン酸ナトリウム2~30重量%を含有するO/W乳化組成物もしくはそれを噴霧乾燥して得られる粉末油脂を、パン生地の小麦粉100重量部に対して、無水物換算にて1~80重量部添加して焼成した後、粉砕して得ることを特徴とするパン粉。」
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はパン粉に関するものである。さらに詳しくは、コロッケ、エビフライ、トンカツ、カキフライ等のフライ食品に用いて、そのままあるいは冷凍又は冷蔵した後、フライしたものの食感が良好で、さらにフライ後冷えても、又その後電子レンジやオーブントースターを用いて再度加熱してもその食感の変化が少ない、パン粉に関する。」
「【0004】本発明は、上記の点に着目し行ったもので、コロッケ、エビフライ、トンカツ、カキフライ等のフライ食品に用いて、そのままあるいは冷凍又は冷蔵した後、フライしたものの食感が良好で、さらにフライ後、冷えても又その後再度加熱してもその食感の変化が少ない、パン粉を提供すことを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、O/W乳化組成物もしくは、それから得られる粉末油脂を、パン生地に配合し、焼成した後粉砕して得られるパン粉が、フライ食品に用いて、そのままあるいは冷凍又は冷蔵した後、フライしたものの食感が良好で、さらにフライ後、冷えても又その後再度加熱しても、その食感の変化を少なくすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】即ち、本発明の要旨の一つは、食用油脂、乳化剤及びカゼイン酸ナトリウムを含有するO/W乳化組成物もしくはそれを噴霧乾燥して得られる粉末油脂を、パン生地に添加して焼成した後、粉砕して得るパン粉であり、さらにいま一つの要旨は、無水物換算にて食用油脂30~90重量%、ジアセチル酒石酸モノグリセリド0.1~20重量%、脂肪酸モノグリセリド0.1~20重量%及びカゼイン酸ナトリウム2~30重量%を含有するO/W乳化組成物もしくはそれを噴霧乾燥して得られる粉末油脂を、パン生地に配合して焼成した後、粉砕して得るパン粉である。」
「【0014】本発明のパン粉はエビフライ、イカフライ、カキフライ等の魚貝類を具に用いたフライ食品、チキンカツ、トンカツ、ヒレカツ、くしカツ、メンチカツ等の肉類を具に用いたフライ食品、ポテトコロッケ等の野菜を具に用いたフライ食品、その他パン粉を用いた衣を使うフライ食品等に用いることができる。フライ食品は常法により製造することができる。例えば魚貝類、肉類、野菜類その他の具を成形し、小麦粉、溶き卵を付けてパン粉をまぶす方法、成形した具を小麦粉、卵、牛乳、バター等を混ぜ合わせたバッター液に浸したあとパン粉をまぶす方法、バッター液にパン粉を混ぜこれを衣にする方法等が挙げられる。この様にして得られるフライ食品はそのままフライするか、また冷凍又は冷蔵した後フライすることができ、フライしたものは良好な食感を有するばかりでなく、これが冷えた場合、さらに電子レンジやオーブントースター等を用いて再度加熱した場合にもその食感が変わらない。なお本発明のパン粉は、パン粉をフライするか又はパン粉に油脂をスプレーした後、これを衣に用いることにより、電子レンジやオーブントースター等を用いて加熱するだけでフライ様食品が得られるノンフライ食品に応用することもでき、上記フライ食品と同様な効果を発揮する。」
「【0016】
【実施例】
実施例1~9、比較例1~3
表1に示す配合により、所定量の水にカゼイン酸ナトリウム、pH調整剤、乳化剤を溶解して水溶液とし、次にこの水溶液に食用油脂を徐々に添加しながらホモジナイザーを用いて撹拌し、O/W乳化組成物(NO.1~9)を調製した。実施例1、5、6、8にはO/W乳化組成物をそのまま、それ以外の実施例にはO/W乳化組成物を常法に従って噴霧乾燥して得られた粉末油脂を、各々表1に示す重量%ずつ用いてパン生地を調整し、醗酵工程、分割工程、ホイロ工程等の工程を経た後、オーブン式焼成機を用いて200℃で40分間焼成し、焼成後フードカッターを用いて粉砕し、さらに5メッシュの篩を通してパン粉を得た(実施例1~9)。これとは別にO/W乳化組成物もしくは粉末油脂を用いないパン粉(比較例1)、市販ショートニングを用いたパン粉(比較例2)、市販マーガリンを用いたパン粉(比較例3)も同様に調製し、試験に供した。
【0017】ジャガイモを茹でて裏ごしし、塩、胡椒で味付けしたものを、50gずつ小判型に成形し、小麦粉と水を2:3に混ぜ合わせたバッター液に浸した後、上記で得たパン粉をまぶして衣を付けた。このように調製したポテトコロッケの素材をコーンサラダ油を用いて180℃で4~5分間フライし、フライしたての食感(食感A)、フライした後室温に5時間放置した後の食感(食感B)、放置した後電子レンジで加熱した時の食感(食感C)、及びフライしていないポテトコロッケの素材を-20℃に7日間冷凍した後、上記と同様にフライした時の食感(食感D)を測定した。各食感の測定結果をを表1に示す。」
「【0020】
【表1】
[図:0001420369000001.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
上記アの記載、特に実施例9についての記載を整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「パン生地に添加してパン粉を得るための粉末油脂であって、
無水物換算にて乳糖を20.0重量%、パーム油を53.0重量%、ジアセチル酒石酸モノグリセリドを5.0重量%、プロピレングリコール脂肪酸エステルを2.0重量%含む、粉末油脂。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「乳糖」「パーム油」「ジアセチル酒石酸モノグリセリド」「プロピレングリコール脂肪酸エステル」は、それぞれ本件特許発明1の「麦芽糖、乳糖、デキストリン、シクロデキストリンから選ばれる少なくとも1種以上である粉末状の糖類(D)」「食用油脂(C)」「有機酸モノグリセリド(B)」「プロピレングリコール脂肪酸エステル(A)」に相当する。また、甲1発明における各成分の含有量は、本件特許発明1で特定される範囲を満たしている。
以上の検討によれば、本件特許発明1と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「プロピレングリコール脂肪酸エステル(A)を1~20質量%、有機酸モノグリセリド(B)を1~10質量%、食用油脂(C)を20~80質量%、 麦芽糖、乳糖、デキストリン、シクロデキストリンから選ばれる少なくとも1種以上である粉末状の糖類(D)を10~70質量%、を含む粉末油脂。」
<相違点1-1>
「粉末油脂」について、本件特許発明1は「フライバッター用」であるのに対し、甲1発明の「粉末油脂」はパン生地に添加され「パン粉」を得るためのものである点。
上記相違点1-1について検討する。
甲1の段落【0014】には、パン粉の用途としてフライ食品に用いることが記載され、さらにフライ食品の製造方法として、「例えば魚貝類、肉類、野菜類その他の具を成形し、小麦粉、溶き卵を付けてパン粉をまぶす方法、成形した具を小麦粉、卵、牛乳、バター等を混ぜ合わせたバッター液に浸したあとパン粉をまぶす方法、バッター液にパン粉を混ぜこれを衣にする方法等が挙げられる。」との記載がある。
上記記載によれば、甲1発明のパン粉をバッター液に混ぜてフライ食品を製造することが示唆されているといえるが、このような方法によりフライ食品を製造した場合であっても、「パン粉」と「バッター液」とは別々の材料であり、「パン粉」を得るためにパン生地に添加される「粉末油脂」が「バッター用」であるということはできない。してみると、相違点1-1は実質的な相違点であり、本件特許発明1は甲1発明ではない。
また、甲1発明の「粉末油脂」は、専ら「パン粉」を製造するパン生地に添加することを目的としており、甲1及び他の証拠をみても当該粉末油脂をパン粉以外の用途に適用することを示唆する記載はなく、甲1発明をフライバッター用に適用する動機付けは存在しない。そうすると、甲1発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、本件特許発明1は甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
なお、この点について、特許異議申立人は特許異議申立書(第22~23頁)において、以下のように主張している。
「また、当該粉末油脂は、パン粉に配合されているが、パン粉をバッター液に混ぜこれを衣にする方法が記載されていることから、フライバッター用に相当するため、本件特許発明の発明特定事項Eを満たす。」(以下、主張点1-1という。)
「また、仮に、甲1発明が粉末油脂をパン粉に配合する点で相違するとしても、揚げ物製品の品質に対して粉末油脂がもたらす効果に関し、当該効果を得るために、粉末油脂を含有する材料であるパン粉およびフライバッター粉のどちらにも適用し得ることは、甲第12号証の段落【0015】~【0017】に開示される粉末油脂の用途、甲第13号証の段落【0025】~【0027】に開示される粉末油脂を含む改質剤の用途のように、当業者には広く一般的に認識されることであるから、甲第1号証に記載されている粉末油脂組成物についても、パン粉に替えて、もしくはパン粉に加えてさらにフライバッター粉に対して当該組成物を適用して、本願の請求項1に係る発明のようにすることに、特段の困難は認められない。」(以下、主張点1-2という。)
上記主張について検討する。
主張点1-1に関して検討すると、甲1発明において、パン粉をバッター液に混ぜてフライ食品を製造する調理方法を採用したとしても、「パン粉」と「バッター液」とは別々の材料であって「粉末油脂」は「バッター用」ではなく、甲1発明が本件特許発明1の構成要件E(「フライバッター用」であること。)を満たすということはできない。
主張点1-2に関して検討すると、甲1には粉末油脂をパン粉以外の用途に適用することを示唆する記載はない。また、甲1発明はフライ食品に用いるパン粉の食感を改善することを課題(段落【0003】-【0004】)としており、粉末油脂をパン生地に添加して「パン粉」とすることが甲1発明において必須の要件となっている。そうすると、甲1発明においてパン粉を得る以外の用途に粉末油脂を適用する動機付けがない。よって、仮に甲12、甲13に記載のようにパン粉及びバッター液のどちらにも適用し得る粉末油脂が周知であったとしても、甲1発明に当該周知技術を適用し、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることが、当業者にとって容易であるということはできない。
以上のとおり、特許異議申立人の主張は採用し得ない。
イ 本件特許発明3、4について
本件特許発明3、4は、請求項1を引用して特定するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。
(3)申立理由1についてのまとめ
上記のとおり、本件特許の請求項1、3、4に係る特許を、申立理由1の理由によって取り消すことはできない。
2 申立理由2(甲第2号証に基づく進歩性)について
(1)甲2に記載された事項等
ア 甲2の記載事項
甲2には、「起泡性食品用ミックス」に関し、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
粉末油脂を含有する起泡性食品用ミックスであって、
該粉末油脂が酢酸モノグリセリドを含有し、
前記粉末油脂を測定対象とした示差走査熱量計(DSC)による測定において、5℃/分の昇温速度で10℃から60℃まで昇温させて前記粉末油脂を融解させたときのDSC曲線が、以下の(a)~(c)の条件を満たす、ミックス。
(a)吸熱ピーク温度が28℃以上33℃以下である
(b)溶融開始温度が25℃以上である
(c)吸熱量が1.0J/g以上17J/g以下である」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、起泡性食品用ミックス及び起泡性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ホイップドクリーム等の起泡性食品においては、起泡性を増加させることで、食感を改善できることが知られている。このような起泡性食品は起泡性のみならず、起泡後において泡の形状を十分に保つための保形性が求められる。」
「【0006】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、起泡性食品に、起泡性及び保形性の全体において良好なバランスを付与できる起泡性食品用ミックス、並びに、起泡性及び保形性の全体のバランスが良好な起泡性食品を提供することを目的とする。」
「【0026】
本発明において、「起泡性食品用ミックス」とは、起泡性食品に起泡性を与えるために用いられる材料のことを意味する。また、本発明のミックスは、上記粉末油脂のみから構成してもよく、あるいは、粉末油脂を主材料として含み、粉末油脂以外の材料(例えば、多糖類、少糖類等)を含むものであってもよい。」
「【0038】
本発明の粉末油脂における油脂の含有量は、特に限定されず、例えば、粉末油脂全体の質量に対して10~80質量%の範囲内で目的等に応じて適宜設定することができるが、粉末油脂全体の質量に対して12質量%以上75質量%以下であることが好ましく、15質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、18質量%以上65質量%以下であることがさらに好ましい。」
「【0044】
粉末油脂における酢酸モノグリセリドの含有量は、特に限定されず、例えば、粉末油脂全体の質量に対して0.1~10質量%の量で配合することができるが、過小であると、起泡性食品の保形性、泡のキメ細かさが低下する恐れがある。そのため、起泡性食品の保形性、泡のキメ細かさを向上させる観点から、酢酸モノグリセリドの含有量は、粉末油脂全体の質量に対して0.6質量%以上であることが好ましく、0.8質量%以上であることがより好ましく、0.9質量%以上であることがさらに好ましい。他方、酢酸モノグリセリドの含有量が過大であると、口溶け、異味のなさが低下する恐れがある。そのため、起泡性食品の口溶け、異味のなさを向上させる観点から、酢酸モノグリセリドの含有量は、粉末油脂全体の質量に対して5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。」
「【0049】
[プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル]
本発明における粉末油脂は、さらに、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステルを含んでもよく、含まなくてもよいが、含むことで、起泡性食品の起泡性、泡のキメ細かさが向上する。このことから、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステルを含むことが好ましい。また、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステルの含有量は、1.0~20質量%であることが好ましく、4.0~15質量%であることが好ましく、8.0~12質量%であることがさらに好ましい。」
「【0054】
[粉末化基材]
本発明の粉末油脂における粉末化基材は、油脂の被覆材として機能する。粉末化基材としては、従来の公知の粉末油脂に用いられる粉末化基材であれば特に限定されないが、乳蛋白、大豆蛋白、小麦蛋白、全脂粉乳、脱脂粉乳、小麦粉、デンプン、ゼラチン、増粘多糖類、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖、ラクトース、スクロース、マルトース等の二糖類、オリゴ糖、トレハロース、デキストリン、プルラン等の糖類を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。」
「【0059】
粉末化基材の粉末油脂中全体の質量に対する含有量は、特に限定されないが、10~70質量%となるように配合することが好ましく、20~65質量%となるように配合することがより好ましく、25~60質量%となるように配合することがさらに好ましい。」
「【0070】
(用途)
本発明のミックスの用途は、起泡性食品用であれば特に限定されないが、例えば、起泡性調味料(起泡性の酢、起泡性のポン酢、起泡性の醤油、起泡性のドレッシング等)、起泡性のデザート(低油分ホイップドクリーム、ムース、ヨーグルト等)等の起泡性食品用の用途が挙げられる。これらのうち、本発明のミックスは、起泡性調味料、低油分ホイップドクリーム用の起泡性食品用ミックスとして用いることが好適である。なお、低油分ホイップドクリームとは、油分が20%以下のホイップドクリームのことを意味する。また、本発明の起泡性食品は、特に、電子レンジ等により加熱しないような、非加熱用の起泡性食品用ミックスとして用いることが好適である。」
「【0077】
<粉末油脂の製造>
後述する表1、2に記載の各油脂に、表1、2に記載の配合となるように各成分を添加し、70℃に調温し、これを油相とした。粉末化基材(カゼインNa、デキストリン、上白糖)を表1に記載の配合となるように60℃の温水に添加し、これを水相とした。次いで、それぞれの水相と油相とを混合し、ホモミキサーで撹拌した後、圧力式ホモジナイザーを用いて150kg/cm2の圧力で均質化し、水中油型の乳化液を得た。得られた乳化液を、ノズル式スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥することにより粉末化し、実施例1~14、比較例1~7に係る粉末油脂を製造した(噴霧乾燥条件:入口温度210℃)。」
「【0105】
<評価結果>
各成分の配合割合及び上記の評価1~4の評価結果を、下記の表1~5に示す。表1中の「油相」、「水相」の項目の各数値、表3~5中の各数値の単位は質量%である。表1中の「酢酸モノグリセリド/モノグリセリン不飽和脂肪酸エステル」は、粉末油脂中のモノグリセリン不飽和脂肪酸エステルの含有量に対する酢酸モノグリセリドの含有量の質量比を表す。
【0106】
【表1】
[図:0001420369000002.jpg]
」
イ 甲2に記載された発明
上記アの記載、特に実施例1についての記載を整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲2発明>
「起泡性食品用ミックスに用いる粉末油脂であって、
パーム油を43重量%、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステルを10.3重量%、酢酸モノグリセリドを2.3重量%、デキストリンを16.4重量%含む、
粉末油脂。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「パーム油」、「プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル」、「酢酸モノグリセリド」、「デキストリン」は、それぞれ本件特許発明1の「食用油脂(C)」、「プロピレングリコール脂肪酸エステル(A)」、「有機酸モノグリセリド(B)」「麦芽糖、乳糖、デキストリン、シクロデキストリンから選ばれる少なくとも1種以上である粉末状の糖類(D)」に相当する。また、甲2発明における各成分の含有量は、本件特許発明1で特定される範囲を満たしている。
以上の検討によれば、本件特許発明1と甲2発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「プロピレングリコール脂肪酸エステル(A)を1~20質量%、有機酸モノグリセリド(B)を1~10質量%、食用油脂(C)を20~80質量%、 麦芽糖、乳糖、デキストリン、シクロデキストリンから選ばれる少なくとも1種以上である粉末状の糖類(D)を10~70質量%、を含む粉末油脂。」
<相違点2-1>
「粉末油脂」について、本件特許発明1は「フライバッター用」であるのに対し、甲2発明は「起泡性食品用ミックス」に用いるものである点。
上記相違点2-1について検討する。甲2発明は、粉末油脂を「起泡性食品用ミックス」に用いるものであって、甲2(段落【0070】)には、甲2発明の用途となる気泡性食品の例として、酢、ポン酢等の起泡性調味料、低油分ホイップドクリーム、ムース、ヨーグルト等の起泡性のデザート等が記載され、「電子レンジ等により加熱しないような、非加熱用の起泡性食品用ミックスとして用いることが好適である。」と記載されている。甲2の上記記載によれば、甲2発明はホイップドクリーム等の非加熱の状態で食用に供される起泡性食品を対象としており、これらの起泡性食品と、油ちょう加熱を前提とする「フライバッター」とでは、その使用形態が大きく異なるものであり、本件特許発明1と甲2発明が共通する技術分野に属するものとはいえない。そして、甲2及び他の証拠の記載をみても、甲2発明を「フライバッター用」に適用する動機付けは存在しない。
よって、本件特許発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。また、甲2の他の実施例(実施例2~14)について検討しても、同様である。
なお、この点について、特許異議申立人は特許異議申立書(第26~30頁)において、以下のように主張している。
「甲2発明及び甲3発明に記載の粉末油脂を、起泡性が求められる食品として周知であるフライバッターに適用しようと試みることに格別の困難性は認められず、当該構成を採用することによる効果についても、甲3発明の課題と同じ食感改良であるならば、当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するとも認められない。」(以下、主張点2-1という。)
「本件特許発明1は、粉末油脂に係る末知の属性を発見したものでも、新たな用途への使用に適することを見いだしたものでもないため、用途発明に該当しないといえ、「フライバッター用」という用途限定について、物を特定するための意味を有しているとは認定できない。」(以下、主張点2-2という。)
「甲2発明ないし甲4発明の粉末油脂を、粉末油脂の用途としては周知であるフライバッターに適用しようと試みることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎず、当該相違点に係る構成を採用することは、当該技術分野において常識的に考慮されることにすぎず、当該構成を採用することで、当業者が予測しえない顕著な効果を奏するとも認められない。」(以下、主張点2-3という。)
上記主張について検討する。
主張点2-1について検討すると、特許異議申立人が指摘するとおり、フライバッターに起泡性が求められることは周知と認められる。しかしながら、甲2発明が対象とするホイップドクリーム等の非加熱の状態で食用に供される起泡性食品と、油ちょう加熱を前提とする「フライバッター」は、その使用形態が大きく異なる。また、甲2発明は、起泡性食品に起泡性と保形性をバランス良く付与することを目的(段落【0006】)としており、そのような性質はフライバッターには一般に求められないものである。そして、本件特許発明1の奏する「風味が良好で、フライ後に時間が経ってもサクサクとした軽い食感を維持することができ、フライ工程時のフライ時間を短縮することができる」(段落【0010】)という効果は、甲2発明並びに他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
主張点2-2について検討すると、主張点2-1について上記検討したように、本件特許発明1は、フライバッターに用いることにより「風味が良好で、フライ後に時間が経ってもサクサクとした軽い食感を維持することができ、フライ工程時のフライ時間を短縮することができる」という顕著な効果を奏するものであり、「フライバッター用」という用途限定が、物を特定するための意味を有していないということはできない。
主張点2-3について検討すると、特許異議申立人が指摘するとおり、フライバッターに粉末油脂を使用する手法は周知であると認められる。しかしながら、粉末油脂はその用途や目的に応じて求められる物性が大きく異なることが本件特許の出願時の技術常識であり、フライバッターに粉末油脂を使用することが周知であるとしても、起泡性食品に用いられる甲2発明の粉末油脂を、用途の大きく異なるフライバッターに適用する動機付けが存在するとはいえない。そして、本件特許発明1の奏する効果は、甲2発明並びに他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
以上のとおり、特許異議申立人の主張は採用し得ない。
イ 本件特許発明3、4について
本件特許発明3、4は、請求項1を引用して特定するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。
(3)申立理由2についてのまとめ
上記のとおり、本件特許の請求項1、3、4に係る特許を、申立理由2の理由によって取り消すことはできない。
3 申立理由3(甲第3号証に基づく進歩性)について
(1)甲3に記載された事項等
ア 甲3の記載事項
甲3には、「起泡性食用油脂組成物」に関し、次の事項が記載されている。
「【請求項1】食用油脂100重量部に対し、乳酸モノアシルグリセリン0.1乃至5重量部及びモノアシルプロピレングリコール0.1乃至5重量部を含み、且つ乳酸モノアシルグリセリンとモノアシルプロピレングリコールの比が1:4乃至4:1であることを特徴とする起泡性食用油脂組成物」
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、起泡性食用油脂組成物に関するものである。更に詳しくは、ケーキバタークリーム、ホイップクリーム、アイスクリームなどの気泡を含む食品を製造する際に添加し、優れた起泡性を与える食用油脂組成物に関する。」
「【0005】
・・・(中略)・・・
【実施例】
・・・(中略)・・・
実施例7~9
【表5】
[図:0001420369000003.jpg]
の配合で融点34℃のホイップクリーム用油脂に乳酸モノアシルグリセリンとモノアシルプロピレングリコールを加え、65℃て溶解させ、これを脱脂粉乳、デキストリンを溶解させた水溶液に加えて、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)製)にて12000rpmで5分乳化する。この乳化液を噴霧乾燥させ粉末油脂を得た。この粉末油脂66gに粉糖30g、粉末醗酵乳3g、カラギナン1gを粉末混合して粉末ホイップクリームを得た。次いで、この粉末をポリエチレン製袋に入れ、30℃に2ケ月保存後、
【表6】
[図:0001420369000004.jpg]
の配合でホイップクリームを作り評価した。
【表5】
【表6】
【表6】の結果から明らかな様に、本発明による実施例7~9の油脂組成物を用いて作った粉末油脂による粉末ホイップクリームは、30℃に2ケ月保存しても粉末の外観は良好であり、牛乳を加えてホイップすると、好ましいホイップクリームが得られた。しかし、比較例3の油脂組成物を用いて作った粉末油脂による粉末ホイップクリームは、30℃に2ケ月保存すると、やや固結が見られ、牛乳を加えてホイップしても、起泡性が劣り、保型性、食感も劣った。これは、保存中にモノステアリンの結晶転移が進み、起泡性が低下した為である。」
イ 甲3に記載された発明
上記アの記載、特に実施例7についての記載を整理すると、甲3には次の発明(以下、「甲3発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲3発明>
「ホイップクリーム用油脂91.5部と、乳酸モノパルミチン3部と、プロピレングリコールモノステアリン4.5部と、レシチン1部と、デキストリン30部と、脱脂粉乳20部と、水150部を含む乳化液を噴霧乾燥させて得た粉末油脂からなる、起泡性食用油脂組成物。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明は起泡性食用油脂として用いるために「粉末油脂」を得ており、「粉末油脂」に関するものであるという点で本件特許発明1と一致する。
甲3発明の「ホイップクリーム用油脂」、「乳酸モノパルミチン」、「プロピレングリコールモノステアリン」、「デキストリン」は、それぞれ本件特許発明1の「食用油脂(C)」、「有機酸モノグリセリド(B)」、「プロピレングリコール脂肪酸エステル(A)」「麦芽糖、乳糖、デキストリン、シクロデキストリンから選ばれる少なくとも1種以上である粉末状の糖類(D)」に相当する。また、甲3発明における各成分の含有量は、本件特許発明1で特定される範囲を満たしている。
以上の検討によれば、本件特許発明1と甲3発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「プロピレングリコール脂肪酸エステル(A)を1~20質量%、有機酸モノグリセリド(B)を1~10質量%、食用油脂(C)を20~80質量%、 麦芽糖、乳糖、デキストリン、シクロデキストリンから選ばれる少なくとも1種以上である粉末状の糖類(D)を10~70質量%、を含む粉末油脂。」
<相違点3-1>
「粉末油脂」について、本件特許発明1は「フライバッター用」であるのに対し、甲3発明は起泡性食用油脂として用いるものである点。
上記相違点3-1について検討する。
甲3の上記記載によれば、甲3発明はケーキバタークリーム、ホイップクリーム、アイスクリームなどの気泡を含む食品を対象としており、これらの起泡性食品は、油ちょう加熱を前提とする「フライバッター」とはその使用形態が大きく異なるものである。そして、甲3及び他の証拠の記載をみても、甲3発明を「フライバッター用」に適用する動機付けは存在しない。
よって、本件特許発明1は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。また、甲3の他の実施例(実施例8、9)について検討しても、同様である。
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書(第26~30頁)において、上記2(2)アと同様の主張をするが、甲3発明においても甲2発明の場合と同様に判断される。
よって、特許異議申立人の主張は採用し得ない。
イ 本件特許発明3、4について
本件特許発明3、4は、請求項1を引用して特定するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。
(3)申立理由3についてのまとめ
上記のとおり、本件特許の請求項1、3、4に係る特許を、申立理由3の理由によって取り消すことはできない。
4 申立理由4(甲第4号証に基づく進歩性)について
(1)甲4に記載された事項等
ア 甲4の記載事項
甲4には、「ゲル化食品用粉末油脂」に関し、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
油脂および乳蛋白質を含有する粉末油脂であって、乳蛋白質/油脂の質量比が0.031~0.280であるゲル化食品用粉末油脂。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル化食品用粉末油脂およびこれを含有するゲル化食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゼリー、プリンなどのゲル化食品は、その製造工程において、各種原料を混合、加熱してなる流動性をもったゾル状のゼリー液をカップなどの容器に流し込み、冷却、ゲル化させることにより製造されている。近年、これらのゲル化食品は、冷菓、料理としての利用以外に、高齢者をはじめとする咀嚼・嚥下困難者向けの栄養食品にも応用されている。このようなゲル化食品の喫食時には、カップやパウチなどの容器に入れたまま喫食するだけでなく、外観上の満足感を得るために、容器からゲル化食品を取り出して皿などの別の器に盛りつけた上で喫食することがある。そのため、ゲル化食品には、型から外した後も、型に対応する形状から崩れることなく、その形状を保持することができる性質、すなわち保形性を備えていることが求められる。」
「【0023】
本発明のゲル化食品用粉末油脂における油脂の含有量は、ゲル化食品用粉末油脂全体に対して好ましくは41.0~80.0質量%、より好ましくは56.0~77.0質量%、さらに好ましくは58.0~75.0質量%である。油脂の含有量が、ゲル化食品用粉末油脂全体に対して41.0質量%以上であると、ゼリーなどのゲル化食品のコク味を向上させることができる。また、得られるゲル化食品のカロリー量を向上させることができるため、咀嚼・嚥下困難者の栄養状態を改善させることができる。油脂の含有量が、ゲル化食品用粉末油脂全体の80.0質量%以下であると、乳化安定性が向上し、しかもゲル化食品の表面に分離した脂肪分が浮くオイルアップが起こりにくくなる。」
「【0028】
乳化剤は、食品用であれば特に限定されることなく、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウムなどを用いることができる。これらの中でも、風味や乳化安定性の面で、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましく考慮される。グリセリン脂肪酸エステルとしては、油脂から得られる脂肪酸とグリセリンを反応させて製造されるモノエステルやジエステルなどが挙げられる。これらの乳化剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、粉末油脂全量に対して0.1~25質量%が好ましく、0.5~22質量%がより好ましく、0.7~20質量%がさらに好ましい。」
「【0034】
賦形剤としては、例えば、上記した乳蛋白質以外に、大豆タンパク、小麦タンパク、コラーゲン、ゼラチンなどのタンパク、これらタンパクの分解物、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノースなどの単糖類、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロースなどの二糖類、オリゴ糖、デキストリン、デンプンなどの多糖類、増粘多糖類、糖アルコールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。」
「【0038】
賦形剤は、ゲル化食品用粉末油脂中の割合が、10.0~60.0質量%となるように配合することが好ましく、15.0~50.0質量%がより好ましく、20.0~40.0質量%がさらに好ましい。また、本発明のゲル化食品用粉末油脂に使用される油脂は、粉末油脂中の割合が、41.0~80.0質量%となるように配合することが好ましく、45.0~70.0質量%がより好ましく、50.0~65.0質量%がさらに好ましい。」
「【実施例】
【0055】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
(1)ゲル化食品用粉末油脂の作製
表1に記載の油脂を単独でまたは乳化剤を添加し70℃に加熱し撹拌後、油相とした。表1の合計質量と同量の温水(60℃)に比較例1以外は乳蛋白質、および糖質を添加し70℃に加熱し、水相とした。水相と油相をホモミキサーで攪拌混合し予備乳化した後、圧力式ホモジナイザーを用いて150kgf/cm2の圧力で均質化し、水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物を、ノズル式スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し、水分1.5質量%の粉末油脂を得た(噴霧乾燥条件:入口温度210℃)。
【0056】
(2)ゲル化食品用粉末油脂を用いたゼリーの評価
各実施例および比較例の粉末油脂を用いて、下記に示す配合で、混合し撹拌しながらIHヒーターで85℃に加熱して調製したゼリー液に、蒸発分の水(湯)を加えた後、70gずつゼリー型である樹脂製カップに分注した。粗熱を取った後、冷蔵庫(5℃)で一晩静置、保管することによりゼリーを得た。
水 240質量部
上白糖 33質量部
粉末油脂 24質量部
ゼラチン 3質量部
合計 300質量部」
「【0061】
(3)結果
実施例1~10および比較例1~3のゲル化食品用粉末油脂を用いたゼリーについて、以上の各評価の結果を表1に示した。
また、実施例1および比較例1のゲル化食品用粉末油脂を用いたゼリーの外観について、図1に示した。
【0062】
【表1】
[図:0001420369000005.jpg]
」
イ 甲4に記載された発明
上記アの記載、特に実施例3についての記載を整理すると、甲4には次の発明(以下、「甲4発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲4発明>
「パーム核極度硬化油を41重量%、プロピレングリコール脂肪酸エステルを10重量%、グリセリン有機酸脂肪酸エステルを3重量%、デキストリンを36.2重量%含む、ゲル化食品用粉末油脂。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「ゲル化食品用粉末油脂」は、本件特許発明1の「粉末油脂」に相当する。
甲4発明の「パーム核極度硬化油」、「プロピレングリコール脂肪酸エステル」、「グリセリン有機酸脂肪酸エステル」、「デキストリン」は、それぞれ本件特許発明1の「食用油脂(C)」、「プロピレングリコール脂肪酸エステル(A)」「有機酸モノグリセリド(B)」、「麦芽糖、乳糖、デキストリン、シクロデキストリンから選ばれる少なくとも1種以上である粉末状の糖類(D)」に相当する。また、甲4発明における各成分の含有量は、本件特許発明1で特定される範囲を満たしている。
以上の検討によれば、本件特許発明1と甲4発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「プロピレングリコール脂肪酸エステル(A)を1~20質量%、有機酸モノグリセリド(B)を1~10質量%、食用油脂(C)を20~80質量%、 麦芽糖、乳糖、デキストリン、シクロデキストリンから選ばれる少なくとも1種以上である粉末状の糖類(D)を10~70質量%、を含む粉末油脂。」
<相違点4-1>
「粉末油脂」について、本件特許発明1は「フライバッター用」であるのに対し、甲4発明は「ゲル化食品用」である点。
上記相違点4-1について検討する。
甲4の上記記載によれば、甲4発明は、「粉末油脂」をゼリー、プリンなどのゲル化食品に用いるものであり、これらのゲル化食品は、油ちょう加熱を前提とする「フライバッター」とはその使用形態が大きく異なるものである。そして、甲4及び他の証拠の記載をみても、甲4発明を「フライバッター用」に適用する動機付けは存在しない。
よって、本件特許発明1は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。また、甲4の他の実施例(実施例10)について検討しても、同様である。
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書(第26~30頁)において、上記2(2)アと同様の主張をするが、甲4発明においても甲2発明の場合と同様に判断される。
よって、特許異議申立人の主張は採用し得ない。
イ 本件特許発明3、4について
本件特許発明3、4は、請求項1を引用して特定するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。
(3)申立理由4についてのまとめ
上記のとおり、本件特許の請求項1、3、4に係る特許を、申立理由4の理由によって取り消すことはできない。
5 申立理由5(甲第8号証に基づく進歩性)について
(1)甲8に記載された事項等
ア 甲8記載事項
甲8には、「バッター用粉末油脂」に関し、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
食用油脂、粉末化基材、および乳化剤としてプロピレングリコール飽和脂肪酸エステルを含有し、実質的に親水性乳化剤を含有せず、分散液中の油滴のメディアン径が0.3~2μmの範囲内であるバッター用粉末油脂。」
「【0018】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、水への分散性が良く、これを配合したバッター液の経時的な粘度変化が小さく、バッター液の経時的な粘度変化や油ちょう食品製造後の時間経過によって油ちょう食品のサクさのある脆い食感が失われることを抑制できるバッター用粉末油脂とそれを用いたバッター液の製造方法、油ちょう加工用食品の製造方法および油ちょう食品の製造方法を提供することを課題としている。」
「【0029】
粉末化基材としては、特に限定されないが、例えば、単糖類、少糖類等の糖類、澱粉分解物、乳タンパク質などを用いることができる。具体的には、例えば、水飴(コーンシロップ)、デキストリンなどの賦形剤や、カゼインNa等の乳タンパク質、加工澱粉等の糖類などの乳化・賦形剤が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。」
「【0036】
本発明のバッター用粉末油脂は、乳化剤として、プロピレングリコール飽和脂肪酸エステルの他に、親油性乳化剤を添加することができる。親油性乳化剤としては、例えば、HLBが10以下のモノグリセライドや有機酸モノグリセライドなどのグリセリン脂肪酸エステル、HLBが11未満のショ糖脂肪酸エステル、HLBが8未満のソルビタン脂肪酸エステル、HLBが8未満のポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。」
「【0075】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、表1に示す配合量は質量%を示す。
【0076】
実施例1~11と比較例1では次の手順により粉末油脂を作製した。菜種油を70℃に調温後、乳化剤、酸化防止剤を添加し油相を調製した。水を60℃に調温後、カゼインナトリウム、コーンシロップを添加し、水相を調製した。
【0077】
水相を60℃に維持し、水相をホモミキサーで攪拌しながら油相の全量を添加し、O/W型に乳化させた。これにより、表1の全配合100質量部に対し、50質量部の水が入った乳化物を得た。
【0078】
その後、得られた乳化液を圧力式ホモジナイザーを用いて150kg/cm2の圧力で処理し、均質化した。
【0079】
この均質化した乳化液を、ノズル式スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥することにより粉末化して粉末油脂を得た(噴霧乾燥条件:入口温度210℃)。なお、表1はスプレードライ後の粉末油脂の配合組成を示している。これらの粉末油脂は、バッター液の原料に用いた。」
「【0090】
実施例1~11と比較例1~4の測定および評価の結果を配合と共に表1に示す。
【0091】
【表1】
[図:0001420369000006.jpg]
」
イ 甲8に記載された発明
上記アの記載、特に実施例1についての記載を整理すると、甲8には次の発明(以下、「甲8発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲8発明>
「菜種油を65重量%、プロピレングリコールモノベヘン酸エステルを5重量%、プロピレングリコールモノステアリン酸エステルを2重量%、コーンシロップを18.59重量%含む、バッター用粉末油脂。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲8発明とを対比する。
甲8発明の「バッター用粉末油脂」における「バッター」は、「フライバッター」を意味するから、甲8発明の「バッター用粉末油脂」は、本件特許発明1の「フライバッター用粉末油脂」に相当する。
甲8発明は「プロピレングリコールモノベヘン酸エステルを5重量%、プロピレングリコールモノステアリン酸エステルを2重量%」含むものであるから、本件特許発明1の「プロピレングリコール脂肪酸エステル(A)を1~20質量%」含むとの特定事項を満たす。
甲8発明は「菜種油を65重量%」含むものであるから、本件特許発明1の「食用油脂(C)を20~80質量%」含むとの特定事項を満たす。
甲8発明の「コーンシロップ」は糖類であるから、本件特許発明1の「糖類(D)」に相当する。そして、甲8発明は、「コーンシロップ」を18.59重量%含むものであるから、本件特許発明1の「糖類(D)を10~70質量%」含むとの特定事項を満たす。
以上の検討によれば、本件特許発明1と甲8発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「プロピレングリコール脂肪酸エステル(A)を1~20質量%、食用油脂(C)を20~80質量%、糖類(D)を10~70質量%、を含むフライバッター用粉末油脂。」
<相違点8-1>
本件特許発明1が「有機酸モノグリセリド(B)を1~10質量%、」含むことを特定するのに対し、甲8発明にはそのような特定がない点。
<相違点8-2>
「糖類(D)」について、本件特許発明1が「麦芽糖、乳糖、デキストリン、シクロデキストリンから選ばれる少なくとも1種以上である粉末状」のものを用いることを特定するのに対し、甲8発明は「コーンシロップ」を用いるものである点。
上記相違点について検討する。
<相違点8-1について>
甲8(段落【0036】)には、乳化剤として親油性乳化剤を添加することができることが記載され、当該親油性乳化剤として、HLBが10以下のモノグリセライドや有機酸モノグリセライドなどのグリセリン脂肪酸エステルが例示されている。甲8の上記記載は、甲8発明において有機酸モノグリセライドを含む親油性乳化剤を添加しうることを示唆するものであるといえる。
しかしながら、本件特許の審査において提出された意見書(令和6年2月7日提出)には、各種有機酸モノグリセリドを用いた実施例1、実施例12、参考試験3及び参考試験4において、冷水分散性、食感及びフライ時間の点で良好な結果が得られたのに対し、有機酸モノグリセリドに代えてモノグリセリン脂肪酸エステルを用いた参考比較例1ではそのような効果が得られなかったことが示されている。
甲8には、有機酸モノグリセライドを用いた場合に上記のような効果が得られることは記載されておらず、本件特許発明1の奏する効果は、甲8発明並びに他の全ての証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
<相違点8-2について>
甲8(段落【0029】)には、粉末化基材としてデキストリンなどの賦形剤を用いることができる旨が記載されている。甲8の上記記載は、甲8発明においてコーンシロップに代えてデキストリン等の粉末状の賦形剤を用いうることを示唆するものであるといえる。
しかしながら、本件特許の審査において令和6年2月7日に提出された意見書には、糖質(D)として液状の糖類であるコーンシロップ又は液糖を配合した参考試験1、2と比較して、粉末状の糖類を用いた実施例1、10では、粉末の冷水分散性や冷凍品フライ直後食感、フライ時間の短縮効果において、優れた効果が得られたことが示されている。
甲8には、粉末状の糖類を用いた場合に上記のような効果が得られることは記載されておらず、本件特許発明1の奏する効果は、甲8発明並びに他の全ての証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
以上のとおり、本件特許発明1は、相違点8-1及び8-2に係る発明特定事項を備えることにより、甲8発明並びに他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。よって本件特許発明1は、甲8発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、甲8の他の実施例(実施例2~11)について検討しても、同様である。
なお、この点について、特許異議申立人は特許異議申立書(第32~33頁)において、以下のように主張している。
「そうすると、段落【0091】の表1において、段落【0029】の粉末化基材としてコーンシロップに代えて粉末状の糖類(D)に相当する単糖類、少糖類等の糖類、澱粉分解物、デキストリン、加工澱粉等の糖類を使用し、また段落【0036】の親油性乳化剤としてステアリン酸モノグリセリドに代えて有機酸モノグリセライド(すなわち有機酸モノグリセリド(B))を使用することは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、粉末油脂の粉末化基材として粉末状の糖類を使用することは、甲第1号証の段落【0012】や実施例、甲第2号証の段落【0054】や実施例(上白糖)、甲第3号証の実施例、甲第4号証の段落【0034】~【0037】や実施例、甲第5号証の段落【0011】や実施例、甲第6号証の段落【0011】や実施例、甲第7号証の段落【0013】や実施例、甲第9号証の段落【0005】や実施例、甲第10号証の表2(残部デキストリン及びカゼインからなる粉末油脂)、甲第13号証の段落【0021】、【0022】や実施例にも記載されているように、極めて典型的かつ代表的なものである。選択の余地も限られ、粉末状の糖類を使用することは当業者であれば適宜試みようとする程度に過ぎず、本件特許発明の他の発明特定事項との相乗的な作用も認められない。したがって、単に粉末状の糖類に置き換えることは周知技術の適用に過ぎない。
また、乳化剤として有機酸モノグリセライドを使用することは、甲第1号証の段落【0006】や実施例、甲第2号証の請求項1や実施例、甲第3号証の請求項1や実施例、甲第4号証の段落【0028】や実施例、甲第6号証の段落【0001】や実施例、甲第7号証の段落【0023】、甲第13号証の段落【0014】や段落【0035】の実施例3にも記載されているように、典型的なことである。甲8発明のステアリン酸モノグリセリドを、既に粉末油脂等の分野において使用する乳化剤としてよく知られている有機酸モノグリセライドに置き換えてみようとすることに困難性はなく、有機酸モノグリセライドを用いたことによる効果は、本件特許の比較例における有機酸モノグリセライドを用いない例及び、プロビレングリコール脂肪酸エステル(A)をグリセリン脂肪酸エステル(A’)に置き換えた例のみからは、直ちに相乗的とまでは言えないものである。してみると、単に有機酸モノグリセライドに置き換えることは周知技術の適用に過ぎない。」
上記主張について検討する。
特許異議申立人が指摘するとおり、粉末油脂の粉末化基材として粉末状の糖類を用いること及び乳化剤として有機酸モノグリセライドを使用することは、公知の手法であるといえる。しかしながら、上記検討のとおり、本件特許発明1が相違点8-1及び8-2に係る発明特定事項を備えることにより、甲8発明と比較して顕著な効果を奏することは明らかである。そして、本件特許発明1の奏する効果は、甲8及び他の全ての証拠に記載された事項から当業者が予測し得る範囲の効果を超える顕著なものであり、相違点8-1及び8-2の構成を周知技術の適用に過ぎないということはできない。
以上のとおり、特許異議申立人の主張は採用し得ない。
イ 本件特許発明3、4について
本件特許発明3、4は、請求項1を引用して特定するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。
(3)申立理由5についてのまとめ
上記のとおり、本件特許の請求項1、3、4に係る特許を、申立理由5の理由によって取り消すことはできない。
第5 結語
以上のとおり、本件特許の請求項1、3、4に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、3、4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701110