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特許異議申立

2024-701084

糖および甘味料の呈する味質が改善した果汁飲料

審判番号
2024-701084
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-560054
登録番号
7479295
請求日
2024年11月07日
審決日
2025年02月27日
公報発行日
2025年04月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】サントリーホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】小林 浩
  • 【権利者代理人】箱田 満
  • 【異議申立人】長谷川 愛理
審判長/審判官
  • 審判長 植前 充司
  • 審判官 柴田 昌弘
  • 審判官 宮久保 博幸
分類
P1651.113-Y (A23L) / P1651.121-Y (A23L) / P1651.536-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第4号、特許法第29条第1項第3号、特許法第2条第3項第1号、特許法第2条第3項第3号、特許法第2条第3項第2号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7479295号発明「糖および甘味料の呈する味質が改善した果汁飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7479295号の請求項1ないし24に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7479295号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし24に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)12月6日(優先権主張 平成30年12月7日)を国際出願日とする出願であって、令和6年4月25日にその特許権の設定登録(請求項の数24)がされ、同年5月8日に特許掲載公報が発行され、その後、当該特許に対し、同年11月7日に特許異議申立人 長谷川 愛理(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし24)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし24に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし24に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 (a)甘味強度X1相当の量の天然糖、 (b)甘味強度X2相当の量の高甘味度甘味料、および (c)10~70mg/100mlのナトリウム を含み、 前記高甘味度甘味料は、レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1を含み、 0.1<(X1+X2)≦20であり、 前記ナトリウムは、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つである、 果汁飲料。 【請求項2】 ナトリウムの含有量が10~60mg/100mlである、請求項1に記載の果汁飲料。 【請求項3】 エネルギーが50Kcal/100ml以下である、請求項1または2に記載の果汁飲料。 【請求項4】 X1が0.1~5.9である、請求項1~3のいずれか一項に記載の果汁飲料。 【請求項5】 前記果汁飲料の果汁率が1~100%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の果汁飲料。 【請求項6】 前記果汁飲料に含まれる果汁が、オレンジ、ミカン、レモン、グレープフルーツ、ライム、パイナップル、イチゴ、ブルーベリー、カシス、クランベリー、グァバ、バナナ、アセロラ、パパイヤ、パッションフルーツ、マンゴー、リンゴ、ブドウ、桃、梅、梨、アンズ、スモモ、メロン、キウイフルーツ、及び花梨から選ばれる1種以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の果汁飲料。 【請求項7】 前記天然糖は、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、オリゴ糖、異性化糖、乳糖、プシコース、アロース、タガトースおよびその組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1~6のいずれか一項に記載の果汁飲料。 【請求項8】 前記高甘味度甘味料b1は、レバウジオシドM、レバウジオシドDおよびその組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1~7のいずれか一項に記載の果汁飲料。 【請求項9】 前記ナトリウムは、グルコン酸ナトリウムである、請求項1~8のいずれか一項に記載の果汁飲料。 【請求項10】 10~60mg/100mlのナトリウムを含み、エネルギーが50Kcal/100ml以下、かつX1+X2が6以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の果汁飲料。 【請求項11】 前記(b)高甘味度甘味料に対する前記高甘味度甘味料b1の含有量が、50質量%以上である、請求項1~10のいずれか一項に記載の果汁飲料。 【請求項12】 容器詰めされている、請求項1~11のいずれか一項に記載の果汁飲料。 【請求項13】 原材料に対し (i)(a)甘味強度X1の量の天然糖および(b)甘味強度X2の量の高甘味度甘味料を添加する工程と、 (ii)(c)飲料中のナトリウム含有量が10~70mg/100mlとなるようにナトリウムを添加する工程と、 を含み、 前記高甘味度甘味料は、レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1を含み、 0.1<(X1+X2)≦20であり、 前記ナトリウムは、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つである、 果汁飲料 を製造する方法。 【請求項14】 前記果汁飲料においてナトリウムの含有量が10~60mg/100mlである、請求項13に記載の方法。 【請求項15】 前記果汁飲料のエネルギーが50Kcal/100ml以下である、請求項13または14に記載の方法。 【請求項16】 X1が0.1~5.9である、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。 【請求項17】 前記果汁飲料の果汁率が1~100%である、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。 【請求項18】 前記果汁飲料に含まれる果汁が、オレンジ、ミカン、レモン、グレープフルーツ、ライム、パイナップル、イチゴ、ブルーベリー、カシス、クランベリー、グァバ、バナナ、アセロラ、パパイヤ、パッションフルーツ、マンゴー、リンゴ、ブドウ、桃、梅、梨、アンズ、スモモ、メロン、キウイフルーツ、及び花梨から選ばれる1種以上である、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。 【請求項19】 前記天然糖は、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、オリゴ糖、異性化糖、乳糖、プシコース、アロース、タガトースおよびその組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。 【請求項20】 前記高甘味度甘味料b1は、レバウジオシドM、レバウジオシドDおよびその組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。 【請求項21】 前記ナトリウムはグルコン酸ナトリウムである、請求項13~20のいずれか一項に記載の方法。 【請求項22】 前記果汁飲料においてナトリウムの含有量が15~50mg/100ml、エネルギーが50Kcal/100ml以下、かつX1+X2が6以上である、請求項13~21のいずれか一項に記載の方法。 【請求項23】 (a)甘味強度X4相当の量の天然糖、 (b)甘味強度X5相当の量の高甘味度甘味料、および (c)100~700mg/100mlのナトリウム を含み、 (X4+X5)≦200である、請求項1に記載の果汁飲料を提供するための濃縮物。 【請求項24】 果汁飲料に (a)甘味強度X1相当の量の天然糖、 (b)甘味強度X2相当の量の高甘味度甘味料、および (c)10~70mg/100mlのナトリウム を含有させることを特徴とし、 前記高甘味度甘味料は、レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1を含み、 前記ナトリウムは、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つである、 果汁飲料の甘味増強方法。」 第3 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の概要 令和6年11月7日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由I(新規性及び進歩性) 本件特許発明1~24は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1又は9号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができず、又は甲第1~12号証に基づいて同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 本件特許は同法第113条第2号の規定により、取り消されるべきである。 具体的理由はおおむね次のとおりである。 (1)甲第1号証に基づく新規性及び進歩性 本件特許発明1~8、10、24は、甲第1号証に基づいて新規性及び進歩性を有しない。 また、本件特許発明9、11~23は、甲第1号証に基づいて進歩性を有しない。 (2)甲第5号証に基づく進歩性 本件特許発明1~24は、甲第5号証に基づいて進歩性を有しない。 (3)甲第9号証に基づく新規性及び進歩性 本件特許発明1は、甲第9号証に基づいて新規性及び進歩性を有しない。 また、本件特許発明2~24は、甲第9号証に基づいて進歩性を有しない。 2 申立理由II(サポート要件及び実施可能要件) 本件特許発明1~24は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、発明の詳細な説明の記載が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないため、特許法第36項第6項第1号、又は第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 本件特許は同法第113条第4号の規定により、取り消されるべきである。 具体的理由はおおむね次のとおりである。 (1)成分(a)「天然糖」 本件特許明細書の実施例では、成分(a)「天然糖」として「スクロースとグルコース」を用いた果汁飲料が、発明の課題を解決することが示されている。 しかし、本件特許発明1、13及び24の成分(a)「天然糖」には、いかなる天然糖も含まれている。これらの天然糖はそれぞれ甘味及び味質が異なるため、実施例で試験された「スクロースとグルコース」以外の天然糖のいかなるものでも、発明の課題が解決されるかは当業者には予測できるものではない。 従って、出願時の技術常識に照らしても、本件特許発明1、13及び24の全範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 以上の通り、本件特許発明1、13及び24並びにそれらに従属する本件特許発明(本件特許発明1~24)は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、発明の詳細な説明の記載が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないため、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。 (2)成分(b)「高甘味度甘味料」 本件特許明細書の実施例では、成分(b)「高甘味度甘味料b1」として「レバウジオシドM、レバウジオシドD」を用い、その他の高甘味度甘味料として「モグロシドV」を用いた果汁飲料が、発明の課題を解決することが示されている。 しかし、本件特許発明1、13及び24は、「前記高甘味度甘味料は、レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1を含み」を要件としている。 甲第8号証のp.D-1016~1017に記載されるように、「レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドE」は相互に味質、甘味倍率が大きく異なる。 したがって、実施例で「高甘味度甘味料b1」としての効果が実際に確かめられた「レバウジオシドM、レバウジオシドD」以外の「レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドE」でも、本件特許発明の解決課題が解決されるかは当業者には予測できるものではない。 出願時の技術常識に照らしても、本件特許発明1、13及び24の全範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 以上の通り、本件発明1、13及び24並びにそれらに従属する本件特許発明(本件特許発明1~24)は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、発明の詳細な説明の記載が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないため、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。 (3)成分(c)「ナトリウム」 本件特許明細書の実施例では、成分(c)「ナトリウム」として「グルコン酸ナトリウム」を用いた果汁飲料のみが、上記解決課題を解決することが示されている。 しかし、本件特許発明1、13及び24は、「前記ナトリウムは、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つである」を要件としている。 「グルコン酸ナトリウム」は、甲第5及び6号証に記載の通り、各種廿味料の苦みや甘味の質を和らげるとの極めて優れた効果を有する。それに対して、甲第5号証の表3(下記第4 2(1)ア参照)に記載の通り、グルコン酸ナトリウム以外のナトリウム塩は、閾値が低く、独自の苦味及び渋味を有している。 従って、実施例で、「ナトリウム」としての効果が実際に確かめられた「グルコン酸ナトリウム」以外の「塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム」でも、本件特許発明の解決課題が解決されるかは当業者には予測できるものではない。 出願時の技術常識に照らしても、本件特許発明1、13及び24の全範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 以上の通り、本件特許発明1、13及び24並びにそれらに従属する本件特許発明(本件特許発明1~24)は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、発明の詳細な説明の記載が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないため、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。 3 証拠方法 甲第1号証:FFI Journal, Vol.223, No. 1(2018), p. 78-83 甲第2号証:JAFAN,第29巻,第6号(2010), p.355-362 甲第3号証:J. Appl. Glycosci., Vol.57, (2010), p.199-209 甲第4号証:食品成分データベース(https://fooddb. rnext.go.jp/)を用いて「濃縮還元りんごジュース」を検索した結果 甲第5号証:ビバレッジ・ジャパン,No. 204(1998年12月号)表紙,p.55~57 甲第6号証:ビバレッジ・ジャパン,No. 215(1999年11月号)表紙,p.75~76 甲第7号証:最新・ソフトドリンクス,監修 社団法人全国清涼飲料工業会;財団法人日本炭酸飲料検査協会,株式会社光琳刊,p. 330-339 甲第8号証:第8版 食品添加物公定書解説書,谷村顕雄、棚元憲一監修,2007,廣川書店刊,表紙,p.D-1014-D-1022 甲第9号証:国際公開第2009/063921号 甲第10号証:食品成分データベース(https:/ /fooddb.mext.go.jp/)を用いて「レモン果汁」を検索した結果 甲第11号証:日本食品化工株式会社の製品(ゲントース#45)紹介ページ (https://www.nisshoku.co.jp/product/food/saccharify/gentose45.html) 甲第12号証:守田化学工業株式会社の製品(レバウディオJ-100)紹介ページ (https://www.morita-kagaku-kogyo.co.jp/product/rebaudio-j.html) 証拠の表記は特許異議申立書の記載におおむね従った。 以下、順に「甲1」等という。 第4 当審による判断 当審は以下に述べるように申立理由IないしIIの理由によっては本件特許を取り消すことはできないと判断する。 1 申立理由I(1)(甲第1号証に基づく新規性及び進歩性)について (1)甲1に記載された事項等 ア 甲1の記載事項 甲1には、「ラカンカ抽出物を使用した甘味料製剤 サンナチュレシリーズの飲料への応用」(登録商標マークは省略した。以下同様。)に関し、次の事項が記載されている。 「植物を由来原料とした高甘味度甘味料には、ステビア抽出物やカンゾウ抽出物、ソーマチン等が古くから知られています。しかし、これら植物由来の甘味料は、合成系の高甘味度甘味料と比較し、原料由来の苦味や渋味等の雑味を伴う場合があります。特に、飲料のように固形分が低く、甘味質が目立ち易い食品への砂糖代替では、その甘味質の改善方法について、これまでも度々課題として挙げられていました。」(p.78左欄第12行-右欄第2行) 「 [図:0001421389000001.jpg] 」(p.79 表1) 「サンナチュレ MS-Rは、ステビア抽出物とモグロシドV50%含有のラカンカ抽出物を混合した甘味料製剤です。ステビア抽出物はステビアの葉中の甘味成分を抽出精製したもので、苦味、渋み、及び甘味の後引きを伴うステビオサイド、苦味が少なく良質な味質を持つレバウディオサイドA、その他少量の甘味成分が含まれています。製剤中のステビア抽出物は甘味質に優れているレバウディオサイドA高含有品を使用しています。ラカンカ抽出物を組み合わせることにより、レバウディオサイドA高含有のステビア抽出物よりも甘味の発現が早く、苦みや渋み、後引きが少ない、良質な甘味を持つサンナチュレMS-Rを開発しました。砂糖に近いクリアな味質を持ち、砂糖の代替に適した甘味料製剤となっています。 サンナチュレMS-Fは、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物に加え、甘味の後引きや苦みを改善するため天然香料を配合した製剤です。サンナチュレMS-Rよりも甘味の後切れがよく、すっきりとしたクリアな甘味が要求される飲料用途にご活用頂けます。」(p.80左欄第5行-第23行) 「表7は糖類を一部代替した低カロリーの20%りんご果汁入り飲料の処方例です。(2)(3)は(1)と比較し、カロリー、糖質を約60%低減しています。サンナチュレMS-Fを使用した(2)にサンナチュレM50を少量添加することでコクを付与し、(1)に近い厚みを再現することができます。また、果汁感も増強され、風味高い飲料が得られます。」(p.81左欄第21行-右欄第5行、丸数字は(1)(2)等に置き換えた。以下同様。) 「 [図:0001421389000002.jpg] 」(p.82 表7) イ 甲1に記載された発明 上記アの記載、特に20%りんご果汁入り飲料(3)についての記載を整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1飲料発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1飲料発明> 「100L中に、果糖ぶどう糖液糖を2.5kg、砂糖を0.5kg、「サンナチュレMS-F」を0.024kg、「サンナチュレM50」を0.002kg、5倍濃縮りんご果汁を4.0kg、リンゴ酸を0.18kg、クエン酸を0.03kg、クエン酸三ナトリウムを0.06kg、アップルフレーバーを0.1kg含む20%りんご果汁入り飲料であって、 前記「サンナチュレMS-F」は、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物、香料製剤からなる、甘味倍率350倍の甘味料であり、 前記「サンナチュレM50」はラカンカ抽出物からなる、甘味倍率約300倍の甘味料製剤であり、 前記ステビア抽出物は甘味質に優れているレバウディオサイドA高含有品を使用するものである、 20%りんご果汁入り飲料。」 また、甲1には上記飲料の製造方法が記載されているから、甲1には次の発明(以下、「甲1製法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1製法発明> 「水に、果糖ぶどう糖液糖を2.5kg、砂糖を0.5kg、「サンナチュレMS-F」を0.024kg、「サンナチュレM50」を0.002kg、5倍濃縮りんご果汁を4.0kg、リンゴ酸を0.18kg、クエン酸を0.03kg、クエン酸三ナトリウムを0.06kg、アップルフレーバーを0.1kg加えて全量を100Lとする20%りんご果汁入り飲料の製造方法であって、 前記「サンナチュレMS-F」は、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物、香料製剤からなる、甘味倍率350倍の甘味料であり、 前記「サンナチュレM50」はラカンカ抽出物からなる、甘味倍率約300倍の甘味料製剤であり、 前記ステビア抽出物は甘味質に優れているレバウディオサイドA高含有品を使用するものである、 20%りんご果汁入り飲料の製造方法。」 さらに、甲1には飲料に各成分を含有させる方法が記載されているといえるから、甲1には次の発明(以下、「甲1方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1方法発明> 「20%りんご果汁入り飲料において、 100L中に、果糖ぶどう糖液糖を2.5kg、砂糖を0.5kg、「サンナチュレMS-F」を0.024kg、「サンナチュレM50」を0.002kg、5倍濃縮りんご果汁を4.0kg、リンゴ酸を0.18kg、クエン酸を0.03kg、クエン酸三ナトリウムを0.06kg、アップルフレーバーを0.1kg含有させる甘味質の改善方法であって、 前記「サンナチュレMS-F」は、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物、香料製剤からなる、甘味倍率350倍の甘味料であり、 前記「サンナチュレM50」はラカンカ抽出物からなる、甘味倍率約300倍の甘味料製剤であり、 前記ステビア抽出物は甘味質に優れているレバウディオサイドA高含有品を用いる、 甘味質の改善方法。」 (2)検討 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1飲料発明とを対比する。 甲1飲料発明の「20%りんご果汁入り飲料」は、本件特許発明1の「果汁飲料」に相当する。 甲1飲料発明のりんご果汁に含まれる糖分、「果糖ぶどう糖液糖」及び「砂糖」は、本件特許発明1の「天然糖」に相当する。 甲1飲料発明の「サンナチュレMS-F」及び「サンナチュレM50」は、本件特許発明1の「高甘味度甘味料」に相当する。 甲1飲料発明は、100L中にクエン酸三ナトリウムを0.06kg含むから、少なくともクエン酸三ナトリウムに由来するナトリウムを含んでいる。よって、甲1飲料発明は本件特許発明1の「ナトリウム」を含むとの特定事項を満たす。 以上の検討によれば、本件特許発明1と甲1飲料発明との一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「(a)天然糖、 (b)高甘味度甘味料、および (c)ナトリウム を含む、 果汁飲料。」 <相違点1-1> 本件特許発明1は、「前記高甘味度甘味料は、レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1を含み、」との構成を備えるのに対し、甲1飲料発明では、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物、香料製剤からなるサンナチュレMS-Fと、ラカンカ抽出物からなるサンナチュレM50を含み、前記ステビア抽出物として甘味質に優れているレバウディオサイドA高含有品を使用しているものの、それらの甘味料に「レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1」が含まれるか否か不明である点。 <相違点1-2> 本件特許発明1は、「(c)ナトリウム」について、「10~70mg/100ml」であり、「前記ナトリウムは、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つである、」との構成を備えるのに対し、甲1飲料発明の「ナトリウム」は、その含有量が不明であり、「塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つ」でもない点。 <相違点1-3> 本件特許発明1は、天然糖を「甘味強度X1相当の量」と高甘味度甘味料を「甘味強度X2相当の量」含むとともに、「0.1<(X1+X2)≦20である、」との関係式を満たす構成を備えるのに対し、甲1飲料発明にはそのような特定がない点。 相違点1-1について検討する。 甲1飲料発明では、ステビア抽出物を含むサンナチュレMS-Fを含み、当該ステビア抽出物としてレバウディオサイドA高含有品を使用している。 ここで、甲2のp.362の図8には、高レバウディオサイドA抽出物製品には、60%のレバウディオサイドA、10%のその他のステビオール配糖体が含まれることが記載されている。さらに、甲2のp.361左欄第2段落には、高レバウディオサイドA品種としては守田品種と、他にはDIC品種しか存在しないと考えていることが記載されている。 また、甲3の表4には、Stevia rebaudiana Moritaの抽出物の成分として、レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドO及びレバウジオシドEが含まれることが記載されている。 しかしながら、甲1飲料発明の「レバウディオサイドA高含有品」が、甲2に記載の「高レバウディオサイドA抽出物製品」と同一のものであるか否かは明らかでなく、さらに甲2に記載の「高レバウディオサイドA抽出物製品」と甲3に記載の抽出物の成分とが一致するものであるか否かも明らかでない。そうすると、甲2及び甲3の記載事項を考慮しても、甲1飲料発明の「レバウディオサイドA高含有品」が「レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1」を含むものであるか依然として不明であり、相違点1-1は実質的な相違点である。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1飲料発明ではない。 また、甲1は甘味料であるサンナチュレシリーズを紹介する文献であるから、甲1飲料発明において、サンナチュレM50又はサンナチュレMS-Fに代えて他の甘味料を使用しようとする動機付けも存在しない。そうすると、甲1飲料発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1飲料発明ではなく、甲1飲料発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 なお、この点について、特許異議申立人は特許異議申立書(第10頁)において、 「甲第1号証に記載されたサンナチュレ(登録商標)MS-Fには、レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEが含まれていると考えられる。」 と主張する。しかしながら、上記検討のとおり、甲1飲料発明で用いられているサンナチュレMS-Fに、甲3に示されるStevia rebaudiana Moritaの抽出物の成分が含まれるか否かは不明である。よって、特許異議申立人の主張は採用し得ない。 イ 本件特許発明2~12、23について 本件特許発明2~12、23は、請求項1を引用して特定するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。 ウ 本件特許発明13について 本件特許発明13と甲1製法発明とを対比する。 甲1製法発明の「20%りんご果汁入り飲料を製造する方法」は、本件特許発明13の「果汁飲料を製造する方法」に相当する。 甲1製法発明のりんご果汁に含まれる糖分、「果糖ぶどう糖液糖」及び「砂糖」は、本件特許発明13の「天然糖」に相当する。 甲1製法発明の「サンナチュレMS-F」及び「サンナチュレM50」は、本件特許発明13の「高甘味度甘味料」に相当する。 甲1製法発明は、クエン酸三ナトリウムを100L中に0.06kgとなるよう加えるところ、これは、クエン酸三ナトリウムに由来するナトリウムを添加するものといえるから、甲1製法発明において「クエン酸三ナトリウム」を加える工程は、本件特許発明13の「原材料に対し」「ナトリウムを添加する」工程に相当する。 以上の検討によれば、本件特許発明13と甲1製法発明との一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「原材料に対し (i)(a)天然糖および(b)高甘味度甘味料を添加する工程と、 (ii)(c)ナトリウムを添加する工程と、 を含む、 果汁飲料 を製造する方法。」 <相違点1-4> 「高甘味度甘味料」について、本件特許発明13は、「レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1を含み、」との構成を備えるのに対し、甲1製法発明では、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物、香料製剤からなるサンナチュレMS-Fと、ラカンカ抽出物からなるサンナチュレM50を用い、前記ステビア抽出物として甘味質に優れているレバウディオサイドA高含有品を使用しているものの、それらの甘味料に「レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1」が含まれるか否か不明である点。 <相違点1-5> 本件特許発明13は、「(c)ナトリウム」について、「飲料中のナトリウム含有量が10~70mg/100mlとなるように」添加するものであり、「前記ナトリウムは、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つである、」との構成を備えるのに対し、甲1製法発明で製造される飲料中の「ナトリウム」は、その含有量が不明であり、「塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つ」でもない点。 <相違点1-6> 本件特許発明13は、天然糖を「甘味強度X1の量」と高甘味度甘味料を「甘味強度X2の量」添加するとともに「0.1<(X1+X2)≦20である、」との関係式を満たす構成を備えるのに対し、甲1製法発明にはそのような特定がない点。 相違点1-4について検討する。 相違点1-4は、実質的に相違点1-1と同じ内容の相違点であるから、上記アと同様に判断される。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明13は甲1製法発明ではなく、甲1製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 エ 本件特許発明14~22について 本件特許発明14~22は、請求項13を引用して特定するものであって、本件特許発明13の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明13と同様に判断される。 オ 本件特許発明24について 本件特許発明24と甲1方法発明とを対比する。 甲1方法発明の「20%りんご果汁入り飲料」は、本件特許発明24の「果汁飲料」に相当する。 甲1方法発明の「甘味質の改善方法」は、本件特許発明24の「方法」に相当する。 甲1方法発明のりんご果汁に含まれる糖分、「果糖ぶどう糖液糖」及び「砂糖」は、本件特許発明24の「天然糖」に相当する。 甲1方法発明の「サンナチュレMS-F」及び「サンナチュレM50」は、本件特許発明24の「高甘味度甘味料」に相当する。 甲1方法発明は、100L中に「クエン酸三ナトリウムを0.06kg」含有させるところ、これは、クエン酸三ナトリウムに由来するナトリウムを含有させるものといえるから、甲1方法発明において「クエン酸三ナトリウム」を含有させる構成は、本件特許発明24の「(c)ナトリウム」を含有させる構成に相当する。 以上の検討によれば、本件特許発明24と甲1方法発明との一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「果汁飲料に (a)天然糖、 (b)高甘味度甘味料、および (c)ナトリウム を含有させる、 方法。」 <相違点1-7> 「高甘味度甘味料」について、本件特許発明24は、「レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1を含み、」との構成を備えるのに対し、甲1方法発明では、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物、香料製剤からなるサンナチュレMS-Fと、ラカンカ抽出物からなるサンナチュレM50を用い、前記ステビア抽出物として甘味質に優れているレバウディオサイドA高含有品を使用しているものの、それらの甘味料に「レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1」が含まれるか否か不明である点。 <相違点1-8> 本件特許発明24は、含有させる「(c)ナトリウム」が、「10~70mg/100ml」であり、「前記ナトリウムは、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つである、」との構成を備えるのに対し、甲1方法発明で飲料中に含有させる「ナトリウム」は、その量が不明であり、「塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つ」でもない点。 <相違点1-9> 本件特許発明24は、「甘味増強方法」であるのに対し、甲1方法発明では果汁飲料の甘味が増強されるか否か不明である点。 <相違点1-10> 本件特許発明24は、天然糖を「甘味強度X1相当の量」と高甘味度甘味料を「甘味強度X2相当の量」含有させるとの構成を備えるのに対し、甲1方法発明にはそのような特定がない点。 相違点1-7について検討する。 相違点1-7は、実質的に相違点1-1と同じ内容の相違点であるから、上記アと同様に判断される。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明24は甲1方法発明ではなく、甲1方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)申立理由I(1)についてのまとめ 上記のとおり、本件特許の請求項1ないし24に係る特許を、申立理由I(1)の理由によって取り消すことはできない。 2 申立理由I(2)(甲第5号証に基づく進歩性)について (1)甲5に記載された事項等 ア 甲5の記載事項 甲5は「グルコン酸ナトリウム・グルコン酸カリウムの飲料への利用」に関し、次の事項が記載されている。 「当社は本年10月1日,「ヘルシャスA」(グルコン酸ナトリウム)を新発売した。」(p.55左欄第12行-第14行) 「●ヘルシャスの主な働き ヘルシャスの機能と食品への応用例は,表2のとおりである。飲料での応用としてまず期待したいのは呈味改善効果である。ヘルシャスは表3に示したように,他の有機酸塩に比べ閾値が高く,高濃度で使用しても食品の味への影響が少ないという特長がある。 また,他の有機酸塩に比べ刺激性,苦味,渋味が弱い。他のカリウム塩は特に独特の苦味を呈するため,利用が伸びなかったが,味への影響が少ないヘルシャスはカリウム供給源としての利用が拡大するものと期待できる。さらに,各種甘味料の苦味や甘味の質を和らげる効果もある。」(p.56左欄第6行-中欄第8行) 「 [図:0001421389000003.jpg] 」(p.56 表2) 「 [図:0001421389000004.jpg] 」(p.56 表3) 「●高甘味度甘味料に対する矯味効果 消費者の健康志向の高まりのなかで,甘さ離れや低カロリー化が進んでおり,オリゴ糖類や糖アルコール等の機能性のある糖質の利用が拡大している。しかし,高甘味度甘味料は糖質の甘味料に比べて,甘味の質に独特の癖がある。この味を改善する方法として,糖質の甘味料を併用する方法があるが,いずれも使用量が比較的多く,高甘味度甘味料の特長の一つである低カロリーあるいはノンカロリーといった面からは好ましくはない。そこでヘルシャスAを併用し,少量の添加量で高甘味度甘味料の味を改善する方法を評価した。」(p.56中欄第18行-右欄第3行) 「味の改善を目的としてアスパルテームとヘルシャスAを併用した時の甘味の質について,砂糖を対照に官能検査により評価した。結果は図1に示すとおりヘルシャスAの添加によってアスパルテームの味が顕著に改善され,砂糖の味に近くなることが明らかとなった。」(p.56右欄第23行-第29行) 「 [図:0001421389000005.jpg] 」(p.56 図1) イ 甲5に記載された発明 上記アの記載、特に図1に示される官能検査が行われた溶液について整理すると、甲5には次の発明(以下、「甲5飲料発明」のようにいう。)が記載されていると認める。 <甲5飲料発明> 「アスパルテーム0.083%水溶液に、グルコン酸ナトリウムであるヘルシャスAを0.3%となるよう添加することにより、アスパルテームの味が顕著に改善され砂糖の味に近くなった、溶液。」 また、甲5には溶液の製造方法が記載されているから、甲5には次の発明(以下、「甲5製法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲5製法発明> 「アスパルテーム0.083%水溶液に、グルコン酸ナトリウムであるヘルシャスAを0.3%となるよう添加することにより、アスパルテームの味が顕著に改善され砂糖の味に近くなった溶液を製造する方法。」 さらに、甲5には溶液に各成分を含有させる方法が記載されているといえるから、甲5には次の発明(以下、「甲5方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲5方法発明> 「水溶液に、0.083%のアスパルテームと、0.3%のグルコン酸ナトリウムであるヘルシャスAを含有させる、 溶液のアスパルテームの味を顕著に改善し砂糖の味に近くする、方法。」 (2)検討 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲5飲料発明とを対比する。 甲5飲料発明の「溶液」は、飲料への利用を想定して調製されたものであるから、本件特許発明1の「飲料」に相当する。 甲5飲料発明の「アスパルテーム」は、本件特許発明1の「高甘味度甘味料」に相当する。 甲5飲料発明は、グルコン酸ナトリウムであるヘルシャスAを0.3%含んでおり、グルコン酸ナトリウムの分子量218.14とナトリウムの原子量22.99から、甲5飲料発明におけるナトリウムの含有量は約32mg/100mlと算出される。よって甲5飲料発明は、本件特許発明1の、「(c)10~70mg/100mlのナトリウム」を含み、「前記ナトリウムは、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つである、」との特定事項を満たす。 以上の検討によれば、本件特許発明1と甲5飲料発明との一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「(b)高甘味度甘味料、および (c)10~70mg/100mlのナトリウム を含み、 前記ナトリウムは、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つである、 飲料。」 <相違点5-1> 本件特許発明1は、「天然糖」を含むものであるのに対し、甲5飲料発明にはそのような特定がない点。 <相違点5-2> 本件特許発明1は、「高甘味度甘味料」について、「レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1を含み、」との構成を備えるのに対し、甲5飲料発明に含まれる高甘味度甘味料は「アスパルテーム」である点。 <相違点5-3> 本件特許発明1は、「果汁飲料」であるのに対し、甲5飲料発明は「飲料」であるものの、「果汁」を含むか不明である点。 <相違点5-4> 本件特許発明1は、天然糖を「甘味強度X1相当の量」と高甘味度甘味料を「甘味強度X2相当の量」含むとともに、「0.1<(X1+X2)≦20である、」との関係式を満たす構成を備えるのに対し、甲5飲料発明にはそのような特定がない点。 事案に鑑み、相違点5-2について検討する。 甲5飲料発明は、「高甘味度甘味料」として「アスパルテーム」を含むものであって、「レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1」を含んでおらず、相違点5-2は実質的な相違点である。 ここで、甲6には、「グルコン酸ナトリウム・グルコン酸カリウムの飲料への利用拡大」に関して、グルコン酸ナトリウムが「ヘルシャスA」の商品名で販売を開始しており、ヘルシャスは高甘味度甘味料の後味・異味感の改善に優れていて、ステビアの雑味を低減する効果が顕著であることが、記載されている(p.75左欄第1行-第7行,p.75右欄第13行-p.76左欄第1行)。 甲6の上記記載によれば、甲5飲料発明において用いられているものと同じ商品である「ヘルシャスA」を、「ステビア」の呈味改善に適用することが示唆されているといえる。しかしながら、他の全ての証拠の記載事項を考慮しても、甲6に記載された「ステビア」が具体的にどのような成分を含む甘味料であるのかは明らかでない。してみれば、甲6に記載された技術的事項に基づいて、甲5飲料発明において「高甘味度甘味料」に「レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1」を含むものとすることが動機付けられるとはいえない。また、他の何れの証拠にも、甲5飲料発明の高甘味度甘味料を「レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1」を含むものとすることを動機付ける記載はない。 そうすると、甲5飲料発明において、相違点5-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲5飲料発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 なお、この点について、特許異議申立人は特許異議申立書(第18頁)において、甲5に記載された発明を、 「(b)甘味強度X2相当の量の高甘味度甘味料(レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEを含むステビア抽出物)、および (c)グルコン酸ナトリウムを含む、果汁飲料。」 と認定し、本件特許発明1の進歩性欠如を主張する。しかしながら、上記検討したとおり、甲5に記載された発明の高甘味度甘味料は「レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシド0およびレバウジオシドEを含むステビア抽出物」とはいえない。よって、特許異議申立人の主張は採用し得ない。 イ 本件特許発明2~12、23について 本件特許発明2~12、23は、請求項1を引用して特定するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。 ウ 本件特許発明13について 本件特許発明13と甲5製法発明とを対比する。 甲5製法発明の「溶液」は、上記アのとおり飲料への利用を想定したものであるから、甲5製法発明の「溶液を製造する方法」は、本件特許発明13の「飲料を製造する方法」に相当する。 甲5製法発明の「アスパルテーム」は、本件特許発明13の「高甘味度甘味料」に相当する。 甲5製法発明は、グルコン酸ナトリウムであるヘルシャスAを0.3%添加しており、グルコン酸ナトリウムの分子量218.14とナトリウムの原子量22.99から、甲5製法発明におけるナトリウムの添加量は約32mg/100mlと算出される。よって甲5製法発明は、本件特許発明13の、「原材料に対し」「(c)飲料中のナトリウム含有量が10~70mg/100mlとなるようにナトリウムを添加する工程と、」を備え、「前記ナトリウムは、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つである、」との特定事項を満たす。 以上の検討によれば、本件特許発明13と甲5製法発明との一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「原材料に対し i)(b)高甘味度甘味料を添加する工程と、 (ii)(c)飲料中のナトリウム含有量が10~70mg/100mlとなるようにナトリウムを添加する工程と、 を含み、 前記ナトリウムは、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つである、 飲料を製造する方法。」 <相違点5-5> 本件特許発明13は、高甘味度甘味料を添加する工程においてさらに「天然糖」を添加するものであるのに対し、甲5製法発明にはそのような特定がない点。 <相違点5-6> 本件特許発明13は、「高甘味度甘味料」について、「レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1を含み、」との構成を備えるのに対し、甲5製法発明の高甘味度甘味料は「アスパルテーム」である点。 <相違点5-7> 本件特許発明13は、「果汁飲料」を製造する方法であるのに対し、甲5製法発明は「飲料」を製造する方法であるものの、「飲料」に「果汁」を含むか不明である点。 <相違点5-8> 本件特許発明13は、天然糖を「甘味強度X1の量」と高甘味度甘味料を「甘味強度X2の量」添加するとともに、「0.1<(X1+X2)≦20である、」との関係式を満たす構成を備えるのに対し、甲5製法発明にはそのような特定がない点。 事案に鑑み、相違点5-6について検討する。 相違点5-6は、実質的に相違点5-2と同じ内容の相違点であるから、上記アと同様に判断される。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明13は甲5製法発明ではなく、甲5製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 エ 本件特許発明14~22について 本件特許発明14~22は、請求項13を引用して特定するものであって、本件特許発明13の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明13と同様に判断される。 オ 本件特許発明24について 本件特許発明24と甲5方法発明とを対比する。 甲5方法発明の「溶液」は、上記アのとおり飲料への利用を想定したものであるから、甲5方法発明の「溶液のアスパルテームの味を顕著に改善し砂糖の味に近くする、方法」は、本件特許発明24の「飲料」に関する「方法」に相当する。 甲5方法発明の「アスパルテーム」は、本件特許発明24の「高甘味度甘味料」に相当する。 甲5方法発明は、飲料にグルコン酸ナトリウムであるヘルシャスAを0.3%含有させており、グルコン酸ナトリウムの分子量218.14とナトリウムの原子量22.99から、甲5方法発明においてナトリウムを含有させる量は約32mg/100mlと算出される。よって甲5方法発明は、本件特許発明24の「飲料に」「(c)10~70mg/100mlのナトリウム」を含有させ、「前記ナトリウムは、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つである、」との特定事項を満たす。 以上の検討によれば、本件特許発明24と甲5方法発明との一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「飲料に (b)高甘味度甘味料、および (c)10~70mg/100mlのナトリウム を含有させ、 前記ナトリウムは、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つである、 飲料の方法。」 <相違点5-9> 本件特許発明24は、飲料に「天然糖」を含有させるものであるのに対し、甲5方法発明にはそのような特定がない点。 <相違点5-10> 本件特許発明24は、「高甘味度甘味料」について、「レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1を含み、」との構成を備えるのに対し、甲5方法発明の高甘味度甘味料は「アスパルテーム」である点。 <相違点5-11> 本件特許発明24は、「果汁飲料」の「甘味増強方法」であるのに対し、甲5方法発明は対象の飲料が「果汁」を含むか不明であり、さらに、「甘味」を「増強」するものであるかも不明である点。 <相違点5-12> 本件特許発明24は、天然糖を「甘味強度X1相当の量」と高甘味度甘味料を「甘味強度X2相当の量」含有させるとの構成を備えるのに対し、甲5方法発明にはそのような特定がない点。 事案に鑑み、相違点5-10について検討する。 相違点5-10は、実質的に相違点5-2と同じ内容の相違点であるから、上記アと同様に判断される。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明24は甲5方法発明ではなく、甲5方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)申立理由I(2)についてのまとめ 上記のとおり、本件特許の請求項1ないし24に係る特許を、申立理由I(2)の理由によって取り消すことはできない。 3 申立理由I(3)(甲第9号証に基づく新規性及び進歩性)について (1)甲9に記載された事項等 ア 甲9の記載事項 甲9には「ステビア抽出物の甘味質改善」に関し、次の事項が記載されている。 「[0001] 本発明は、ステビア抽出物の甘味質改善技術に関する。 [0002] より詳細には、第1の本発明は、ステビア抽出物の甘味主成分であるレバウディオサイドAの甘味質改善技術(例えば、レバウディオサイドAを含有する甘味料および経口組成物、経口組成物の甘味付与方法など)に関する。」 「[0121] 本発明が対象とするステビア抽出物は、キク科の植物であるステビアレバウディアナ・ベルトニの葉部から水またはエタノールなどで抽出して得られるステビオール配糖体を主成分とするものである。市販品としては、レバウディオJ-100、レバウディオA9-90、およびステビロンTK(以上、守田化学工業(株)製)、クリサンタ99-P、およびクリサンタAX-P(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、ステビアフィンH、およびステビアフィンHN2(以上、日本製紙ケミカル(株)製)、ステビアST-AB、およびハイステビア500(以上、池田糖化工業(株)製)などが入手可能である。」 「[0143] なお、特に言及しない限り、下記の実施例で使用する「ステビア抽出物」は、レバウディオサイドAを95質量%含有するステビア抽出物(レバウディオJ-100、守田化学工業(株)製)を、また「羅漢果抽出物」は、モグロシドVを15質量%含有する羅漢果抽出物をそれぞれ意味する。」 「[0184] (II)ステビア抽出物の甘味質の改善 実施例9~13 ノーカロリー炭酸飲料 (1)炭酸飲料の調製 表18に示す処方に従って、レモン果汁、ステビア抽出物、クエン酸(無水)、クエン酸三ナトリウム、色素、およびレモンフレーバーに加えて、ゲンチオオリゴ糖、ナリンジン、高度分岐環状デキストリン、塩化マグネシウムおよび硫酸マグネシウムのいずれかを、水に加えて溶解させ、炭酸飲料用シロップを調製した。 [0185] 冷却後、得られたシロップ20mlに炭酸水を80ml加えて全量100mlに調整し、次いでこれを容器に充填し、70℃で20分間殺菌して炭酸飲料を調製した。」 [0186][表18] [図:0001421389000006.jpg] [0187] (2)評価結果 上記で調製した各炭酸飲料を10名のパネラーに試食させた際の評価を表19に示す。 [0188] [表19] [図:0001421389000007.jpg] [0189] 上記に示すように、ステビア抽出物を含有する炭酸飲料に、ゲンチオオリゴ糖、ナリンジン、高度分岐環状デキストリン、塩化マグネシウム又は硫酸マグネシウムの少なくとも1種を添加することにより、ステビア抽出物の甘味の後味残存が改善され、またコク味(ボディー感)や、果汁感、炭酸の刺激感などを付与することができた。」 イ 甲9に記載された発明 上記アの記載、特に実施例9として調製された炭酸飲料についての記載を整理すると、甲9には次の発明(以下、「甲9飲料発明」のようにいう。)が記載されていると認める。 <甲9飲料発明> 「20質量部中に、レモン果汁4.2質量部、ステビア抽出物0.033質量部、クエン酸0.2質量部、クエン酸三ナトリウム0.1質量部、ゲンチオオリゴ糖0.4質量部を含むシロップ20mlに、炭酸水を80ml加えて全量100mlに調整した、飲料。」 また、甲9には飲料の製造方法が記載されているから、甲9には次の発明(以下、「甲9製法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲9製法発明> 「20質量部中に、レモン果汁4.2質量部、ステビア抽出物0.033質量部、クエン酸0.2質量部、クエン酸三ナトリウム0.1質量部、ゲンチオオリゴ糖0.4質量部を含むシロップ20mlに、炭酸水を80ml加えて全量100mlに調整する、飲料の製造方法。」 さらに、甲9には飲料に各成分を含有させる方法が記載されているといえるから、甲9には次の発明(以下、「甲9方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲9方法発明> 「20質量部中に、レモン果汁4.2質量部、ステビア抽出物0.033質量部、クエン酸0.2質量部、クエン酸三ナトリウム0.1質量部、ゲンチオオリゴ糖0.4質量部を含むシロップ20mlに、炭酸水を80ml加えて全量100mlに調整する、飲料の甘味質を改善する方法。」 (2)検討 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲9飲料発明とを対比する。 甲9飲料発明の「飲料」は、「レモン果汁」を含むものであるから、本件特許発明1の「果汁飲料」に相当する。 甲9飲料発明の「ゲンチオオリゴ糖」及び「レモン果汁」に含まれる糖は、本件特許発明1の「天然糖」に相当する。 甲9飲料発明の「ステビア抽出物」は、本件特許発明1の「高甘味度甘味料」に相当する。 甲9飲料発明は、少なくともクエン酸三ナトリウムに由来するナトリウムを含んでいる。よって、甲9飲料発明は、本件特許発明1の「ナトリウム」を含むとの特定事項を満たす。 以上の検討によれば、本件特許発明1と甲9飲料発明との一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「(a)天然糖、 (b)高甘味度甘味料、および (c)ナトリウム を含む、 果汁飲料。」 <相違点9-1> 本件特許発明1は、「高甘味度甘味料」について、「レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1を含み、」との構成を備えるのに対し、甲9飲料発明に含まれる高甘味度甘味料は「ステビア抽出物」である点。 <相違点9-2> 本件特許発明1は、「(c)ナトリウム」について、「10~70mg/100ml」であり、「前記ナトリウムは、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つである、」との構成を備えるのに対し、甲9飲料発明にはそのような特定がない点。 <相違点9-3> 本件特許発明1は、天然糖を「甘味強度X1相当の量」と高甘味度甘味料を「甘味強度X2相当の量」含むとともに、「0.1<(X1+X2)≦20である、」との関係式を満たす構成を備えるのに対し、甲9飲料発明にはそのような特定がない点。 相違点9-1について検討する。 「ステビア抽出物」に関し、甲9の段落[0121]には、「本発明が対象とするステビア抽出物は、キク科の植物であるステビアレバウディアナ・ベルトニの葉部から水またはエタノールなどで抽出して得られるステビオール配糖体を主成分とするものである。」との記載がある。また、甲3の表4には、Stevia rebaudiana Bertoniの抽出物の成分として、レバウジオシドD及びレバウジオシドEが含まれることが記載されている。しかしながら、甲9の段落[0121]の記載は、ステビア抽出物の一般的な取得方法について説明したものであり、実施例では、段落[0143]に説明されるとおり「レバウディオサイドAを95質量%含有するステビア抽出物(レバウディオJ-100、守田化学工業(株)製)」が用いられているものと認められる。当該ステビア抽出物については、使用される品種や抽出・精製方法が不明であり、レバウディオサイドA以外にどのような成分を含むのか甲3及び他の全ての証拠の記載をみても明らかとはいえない。 そうすると、甲9飲料発明の「ステビア抽出物」が「レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1」を含むものであるか依然として不明であるから、相違点9-1は実質的な相違点である。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲9飲料発明ではない。 また、全ての証拠の記載をみても、甲9飲料発明において、「ステビア抽出物」に代えて他の甘味料を使用しようとする動機付けも存在しない。そうすると、甲9飲料発明において、相違点9-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲9飲料発明ではなく、甲9飲料発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 なお、この点について、特許異議申立人は特許異議申立書(第22頁)において、甲3記載事項を参照し、甲9に記載された発明がステビア抽出物としてレバウジオシドD及びレバウジオシドEを含む旨を主張する。しかしながら、上記検討したとおり、甲3及び甲2の記載事項を考慮しても、甲9飲料発明の「ステビア抽出物」が「レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1」を含むものであるか不明である。よって、特許異議申立人の主張は採用し得ない。 イ 本件特許発明2~12、23について 本件特許発明2~12、23は、請求項1を引用して特定するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。 ウ 本件特許発明13について 本件特許発明13と甲9製法発明とを対比する。 甲9製法発明の「飲料」は「レモン果汁」を含むものであるから、本件特許発明13の「果汁飲料」に相当する。してみると甲9製法発明の「飲料の製造方法」は、本件特許発明13の「果汁飲料を製造する方法」に相当する。 甲9製法発明の「ゲンチオオリゴ糖」及び「レモン果汁」に含まれる糖は、本件特許発明13の「天然糖」に相当する。 甲9製法発明の「ステビア抽出物」は、本件特許発明13の「高甘味度甘味料」に相当する。 甲9製法発明は、少なくともクエン酸三ナトリウムに由来するナトリウムを加えている。よって、甲9製法発明は、本件特許発明13の「ナトリウム」を添加するとの特定事項を満たす。 以上の検討によれば、本件特許発明13と甲9製法発明との一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「原材料に対し (i)(a)天然糖および(b)高甘味度甘味料を添加する工程と、 (ii)(c)ナトリウムを添加する工程と、 を含む、 果汁飲料を製造する方法。」 <相違点9-4> 本件特許発明13は、「高甘味度甘味料」について、「レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1を含み、」との構成を備えるのに対し、甲9製法発明の高甘味度甘味料は「ステビア抽出物」である点。 <相違点9-5> 「ナトリウム」について、本件特許発明13は、「飲料中のナトリウム含有量が10~70mg/100mlとなるように」添加するものであり、「塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つである、」との構成を備えるのに対し、甲9製法発明にはそのような特定がない点。 <相違点9-6> 本件特許発明13は、天然糖を「甘味強度X1の量」と高甘味度甘味料を「甘味強度X2の量」添加するとともに「0.1<(X1+X2)≦20である、」との関係式を満たす構成を備えるのに対し、甲9製法発明にはそのような特定がない点。 相違点9-4について検討する。 相違点9-4は、実質的に相違点9-1と同じ内容の相違点であるから、上記アと同様に判断される。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明13は甲9製法発明ではなく、甲9製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 エ 本件特許発明14~22について 本件特許発明14~22は、請求項13を引用して特定するものであって、本件特許発明13の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明13と同様に判断される。 オ 本件特許発明24について 本件特許発明24と甲9方法発明とを対比する。 甲9方法発明の「飲料」は、「レモン果汁」を含むものであるから、本件特許発明24の「果汁飲料」に相当する。してみると、甲9方法発明の「飲料の甘味質を改善する方法」は、本件特許発明24の「果汁飲料の甘味」に関する「方法」に相当する。 甲9方法発明の「ゲンチオオリゴ糖」及び「レモン果汁」に含まれる糖は、本件特許発明24の「天然糖」に相当する。 甲9方法発明の「ステビア抽出物」は、本件特許発明24の「高甘味度甘味料」に相当する。 甲9方法発明は、少なくともクエン酸三ナトリウムに由来するナトリウムを飲料に含有させている。よって、甲9方法発明は、本件特許発明24の「ナトリウム」を含有させるとの特定事項を満たす。 以上の検討によれば、本件特許発明24と甲9方法発明との一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「果汁飲料に (a)天然糖、 (b)高甘味度甘味料、および (c)ナトリウム を含有させる、 果汁飲料の甘味に関する方法。」 <相違点9-7> 本件特許発明24は、「高甘味度甘味料」について、「レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1を含み、」との構成を備えるのに対し、甲9方法発明の高甘味度甘味料は「ステビア抽出物」である点。 <相違点9-8> 「ナトリウム」について、本件特許発明24は、「10~70mg/100ml」含有させるものであり、「前記ナトリウムは、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つである、」との構成を備えるのに対し、甲9方法発明にはそのような特定がない点。 <相違点9-9> 本件特許発明24は、「甘味増強方法」であるのに対し、甲9方法発明は「甘味」を「増強」するものであるか不明である点。 <相違点9-10> 本件特許発明24は、天然糖を「甘味強度X1相当の量」と高甘味度甘味料を「甘味強度X2相当の量」含有させるとの構成を備えるのに対し、甲9方法発明にはそのような特定がない点。 相違点9-7について検討する。 相違点9-7は、実質的に相違点9-1と同じ内容の相違点であるから、上記アと同様に判断される。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明24は甲9方法発明ではなく、甲9方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)申立理由I(3)についてのまとめ 上記のとおり、本件特許の請求項1ないし24に係る特許を、申立理由I(3)の理由によって取り消すことはできない。 4 申立理由II(サポート要件及び実施可能要件)について (1)サポート要件について ア サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 イ サポート要件の判断 上記アの判断手法をふまえ、本件特許発明のサポート要件につき、検討する。 本件特許発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「適度な甘味強度を呈し、果汁飲料の天然糖使用量を低く抑えつつ糖および甘味料の呈する味質を良好に改善する」(【0008】)ことである。 そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明者らは天然糖だけではなく、特定の高甘味度甘味料を配合させ、さらに低濃度のナトリウムを添加させることにより天然糖と特定の高甘味度甘味料の併用に基づく甘味を増大させ、かつ、味質を改善させることに初めて成功した。」(【0009】)と記載され、さらに、以下の記載がある。 「つまり、本発明の果汁飲料において、甘味を呈する成分は、(a)特定の量の天然糖および(b)特定の量で所定の高甘味度甘味料である。本発明の果汁飲料が呈する甘味は、計算上は、成分(a)を果汁飲料に添加したときの甘味強度と、成分(b)を果汁飲料に添加したときの甘味強度の合計値となるはずである。しかしながら、低濃度ではあるが(c)ナトリウムが果汁飲料中に存在するために、(a)天然糖および(b)高甘味度甘味料が呈する甘味が増大され、本発明の果汁飲料は、単なる甘味強度の合計を超える甘みを奏する。」(【0014】) 「(天然糖) 本発明において「天然糖」とは、Cm(H2O)nの一般式(ここでmとnは独立の自然数を表す)で表され、ヒトが消化可能なD体の炭水化物を含み、その例としてはグルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、オリゴ糖(例えば、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等)、異性化糖、乳糖、プシコース、アロース、タガトースおよびその組み合わせが挙げられる。また、果汁由来の糖も、天然糖に含まれる。」(【0023】) 「(高甘味度甘味料) 本発明において「高甘味度甘味料」とは、ショ糖に比べて強い甘味を有する化合物を意味し、天然由来化合物、合成化合物または天然由来化合物および合成化合物の組み合わせであってもよい。高甘味度甘味料はショ糖と同量において、ショ糖より5倍以上、10倍以上、50倍以上、100倍以上、500倍以上、1000倍以上、5000倍以上、10000倍以上、50000倍以上、100000倍以上の甘味を呈する。高甘味度甘味料はこのように非常に強い甘味を呈するため、本発明の果汁飲料における天然糖と高甘味度甘味料の存在を重量比で表すと、「天然糖:高甘味度甘味料」は5:1~10:1、50:1~100:1、50:1~200:1、500:1~1000:1、5000:1~10000:1、50000:1~100000:1となる。」(【0028】) 「本発明では、高甘味度甘味料として、レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドO、レバウジオシドE、羅漢果抽出物、モグロシドVおよびソーマチンからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1を使用する。」(【0029】) 「(ナトリウム) 本発明は(c)70mg/100ml未満のナトリウムを含むが、これはナトリウム原子の含有量が70mg/100ml未満であることを意味する。」(【0051】) 「ナトリウムは摂取可能な状態で本発明の果汁飲料に含まれている限り特にその形態は限定されるものではないが、例えば、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、二硫化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギニン酸ナトリウム、グルコヘプタン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、カゼインナトリウム、アスコルビン酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つの形態にあってもよい。 また、果汁にナトリウムが含まれる場合、その果汁由来のナトリウムも、本発明の果汁飲料に含まれるナトリウムに包含される。 本発明の一態様において、保存料として用いるナトリウム成分(例えば、安息香酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム等)由来のナトリウムは成分(c)に実質的に含まない。」(段落【0054】) そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、実施例(【0126】-【0141】)として、スクロース、グルコース、レバウジオシドD、グルコン酸ナトリウム(サンプル中のナトリウム含有量10~40mg/100ml)を含むオレンジ果汁飲料(実施例1)、スクロース、グルコース、モグロシドV又はレバウジオシドM、グルコン酸ナトリウム(サンプル中のナトリウム含有量20mg/100ml)を含むオレンジ果汁飲料(実施例2)、スクロース、グルコース、レバウジオシドD、グルコン酸ナトリウム(サンプル中のナトリウム含有量20mg/100ml)を含むカシス果汁飲料(実施例3)をそれぞれ調製し、官能評価の結果、グルコン酸ナトリウムを含まないサンプルに比較して甘さの強さ、フレーバーの強さが向上したことが示され、さらに、スクロース、グルコース、レバウジオシドD、グルコン酸ナトリウム(サンプル中のナトリウム含有量20mg/100ml)を含むオレンジ果汁飲料(実施例4)について、グルコン酸ナトリウムを含まないサンプルに比較してガスクロマトグラフによる香気成分分析の結果、香気の向上効果が見られたことが示されている。 これらの記載に接した当業者であれば、果汁飲料に、甘味強度X1相当の量の天然糖と、甘味強度X2相当の量の高甘味度甘味料と、10~70mg/100mlのナトリウムを含有するものであって、高甘味度甘味料が、レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドN、レバウジオシドOおよびレバウジオシドEからなる群より選択される少なくとも1つの高甘味度甘味料b1を含み、ナトリウムとして、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つを用いるとの特定事項を満たすことにより、発明の課題を解決できると認識できる。そして、本件特許発明1ないし12及び23、本件特許発明13ないし22、本件特許発明24はいずれも上記の特定事項の全てを有するものであるから、当然発明の課題を解決できると認識できる。よって、本件特許発明1ないし24はいずれも、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の各主張について、以下検討する。 特許異議申立人は、特許異議申立書において、上記第3 2のとおり主張しており、その主張は、天然糖、高甘味度甘味料、ナトリウムに関し、実施例で用いられているもの以外のものまでサポートされているとはいえないというものである。 しかしながら、特許異議申立人の上記主張は、具体的に課題を解決し得ないことを示す証拠を提示するものでもないから、上記イの判断には影響しない。 よって、特許異議申立人の主張を採用することはできない。 エ サポート要件についてのまとめ 上記のとおり、本件特許の請求項1ないし24に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、特許法第113条第4号に該当しない。 (2)実施可能要件について ア 実施可能要件の判断手法 本件特許発明1ないし12及び23は、上記第2のとおり、「物」の発明であるところ、物の発明における実施とは、物の生産、使用等の行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、物の発明について、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、その物を生産し、かつ、その物を使用できる程度の記載があれば、実施可能要件を満たすということができる。 また、本件特許発明13ないし22は、上記第2のとおり、「物を生産する方法」の発明であるところ、物を生産する方法の発明における実施とは、そのものを生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第3号)、例えば、明細書等にその物を生産する方法を使用することができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産する方法を使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。 さらに、本件特許発明24は、上記第2のとおり、「方法」の発明であるところ、方法の発明における実施とは、その方法の使用をする行為をいうから(特許法第2条第3項第2号)、方法の発明について、例えば、明細書等に当業者がその方法を使用することができる程度の記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその方法を使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。 イ 実施可能要件の判断 上記アの判断手法をふまえ、本件特許発明の実施可能要件につき、検討する。 本件特許の明細書には、上記(1)イに記載した事項が記載されている。 当業者は、本件特許の明細書における各成分の例及び配合量についての記載、実施例における飲料の調製例の記載に基づいて、本件特許発明1で特定される条件を満たすように「天然糖」、「高甘味度甘味料」及び「ナトリウム」を含む飲料を製造することができると理解することができる。 そうすると、本件特許の明細書には本件特許発明1の発明特定事項に対応した説明の記載や実施例の記載があり、当業者が本件特許発明1の飲料を製造し、本件特許発明1の飲料を使用することができる程度に具体的な記載があるといえる。 同様に、当業者は本件特許の明細書の記載に基づいて、本件特許発明13の果汁飲料を製造する方法及び本件特許発明24の果汁飲料の甘味増強方法を使用することができると理解することができるから、本件特許の明細書には本件特許発明13及び24の発明特定事項に対応した説明の記載や実施例の記載があり、当業者が本件特許発明13及び24の方法を使用することができ、かつ、その方法により得られた物を使用することができる程度に具体的な記載があるといえる。 請求項1、13を直接又は間接的に引用して特定する本件特許発明2~12、14~23についても同様である。 よって本件特許発明1ないし24に関して、発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の各主張について、以下検討する。 特許異議申立人は、特許異議申立書において、上記第3 2のとおり主張しており、その主張は、天然糖、高甘味度甘味料、ナトリウムに関し、本件特許の発明の詳細な説明が、当業者が実施例で用いられているもの以外のものを用いて本件特許発明を実施することができる程度に記載されていないというものである。 しかしながら、特許異議申立人の上記主張は、具体的に当業者が本件特許発明を実施し得ないことを示す証拠を提示するものでもないから、上記イの判断には影響しない。 よって、特許異議申立人の主張を採用することはできない。 エ 実施可能要件についてのまとめ 上記のとおり、本件特許の請求項1ないし24に係る特許は、第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、特許法第113条第4号に該当しない。 (3)申立理由IIについてのまとめ 上記(1)(2)のとおりであるから、申立理由IIの理由では本件特許の請求項1ないし24に係る特許を取り消すことはできない。 第5 結語 以上のとおり、本件特許の請求項1ないし24に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし24に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-701084

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