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特許異議申立

2024-700988

充電器

審判番号
2024-700988
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-028889
登録番号
7464925
請求日
2024年10月09日
審決日
2025年06月12日
公報発行日
2025年09月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】矢崎総業株式会社
  • 【権利者代理人】瀧野 文雄
  • 【権利者代理人】福田 康弘
  • 【権利者代理人】津田 俊明
  • 【権利者代理人】高木 亮
  • 【権利者】長岡パワーエレクトロニクス株式会社
  • 【権利者代理人】瀧野 文雄
  • 【権利者代理人】福田 康弘
  • 【権利者代理人】津田 俊明
  • 【権利者代理人】高木 亮
  • 【権利者】国立大学法人東京海洋大学
  • 【権利者代理人】瀧野 文雄
  • 【権利者代理人】福田 康弘
  • 【権利者代理人】津田 俊明
  • 【権利者代理人】高木 亮
  • 【異議申立人】宮崎 和幸
審判長/審判官
  • 審判長 吉田 美彦
  • 審判官 山崎 慎一
  • 審判官 脇岡 剛
分類
P1651.121-YAA(H02M) / P1651.537-YAA(H02M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

結論

結 論 特許第7464925号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。 特許第7464925号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 特許第7464925号の請求項9に係る特許についての特許異議申立てを却下する。

理由

理 由 第1.手続の経緯 特許第7464925号の請求項1ないし9に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和4年2月28日に出願されたものであって、その後の手続の概要は、次のとおりである。 令和6年 2月14日付け :特許査定 同年 4月 2日 :特許権の設定登録 同年 4月10日 :特許掲載公報の発行 同年10月 9日 :特許異議の申立て (特許異議申立人:宮崎 和幸) 同年12月24日付け :取消理由通知 令和7年 3月 3日 :訂正請求書、意見書の提出(特許権者) 同年 3月18日付け :訂正請求があった旨の通知 なお、令和7年3月18日付けの通知に対して、特許異議申立人からは、指定した期間内に何ら応答がなかった。 第2.訂正請求について 1.訂正の趣旨及び訂正の内容 令和7年3月3日提出の訂正請求書における訂正(以下、「本件訂正」という。)の趣旨は、「特許第7464925号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-9について訂正することを求める。」(訂正請求書第2頁)というものであって、その内容は次のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の「交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータと、第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチのスイッチングを制御する制御部と、を有し、前記第1のダイオードは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記電力脈動吸収回路のインダクタとの間に接続され、前記第2のスイッチは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、制御部は、交流電源から出力される電圧を昇圧する際に、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する、充電器。」との記載を、「交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータと、第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチのスイッチングを制御する制御部と、を有し、前記第1のダイオードは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記電力脈動吸収回路のインダクタとの間に接続され、前記第2のスイッチは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、前記DC/DCコンバータは、DAB(Dual Active Bridge)コンバータであり、制御部は、交流電源から出力される電圧を昇圧する際に、前記整流器の出力電圧がvrecであり、前記整流器から出力される電流がirecであり、前記充電器の出力電圧がVdcであり、前記コンデンサにかかる電圧がvCであり、前記コンデンサから出力される電流がiCであり、 【数1】 (vrec-Vdc)irec+(vC-Vdc)iC<0(1) および 【数2】 (vrec-Vdc)irec+(vC+Vdc)iC<0(2) のいずれもが成り立たないならば、第1の制御により、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記式(1)が成り立ち、前記式(2)が成り立たないならば、前記第1の制御とは異なる第2の制御により、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記式(1)および前記式(2)のいずれもが成り立つならば、前記第1の制御および前記第2の制御のいずれとも異なる第3の制御により、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する、充電器。」との記載に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2-8も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 2.一群の請求項について 本件訂正前の請求項1ないし9について、請求項2-8は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される。 したがって、訂正前の請求項1ないし9に対応する訂正後の請求項1ないし9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3.訂正の適否 (1)訂正事項1 ア.訂正の目的について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された「DC/DCコンバータ」を「DAB(Dual Active Bridge)コンバータ」と限定し、かつ、本件訂正前の請求項1に記載された「制御部は、交流電源から出力される電圧を昇圧する際に、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する」との記載において、当該「制御部」による「交流電源から出力される電圧を昇圧する際に、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように」するための制御として、「前記整流器の出力電圧がvrecであり、前記整流器から出力される電流がirecであり、前記充電器の出力電圧がVdcであり、前記コンデンサにかかる電圧がvCであり、前記コンデンサから出力される電流がiCであり、 【数1】 (vrec-Vdc)irec+(vC-Vdc)iC<0(1) および 【数2】 (vrec-Vdc)irec+(vC+Vdc)iC<0(2) のいずれもが成り立たないならば、第1の制御により、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記式(1)が成り立ち、前記式(2)が成り立たないならば、前記第1の制御とは異なる第2の制御により、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記式(1)および前記式(2)のいずれもが成り立つならば、前記第1の制御および前記第2の制御のいずれとも異なる第3の制御により」との事項を付加して限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の請求項9、段落0037ないし0044には、「DC/DCコンバータ」は、「DAB(Dual Active Bridge)コンバータ」であること、及び、「制御部」は、交流電源から出力される電圧を昇圧する際に、「前記整流器の出力電圧がvrecであり、前記整流器から出力される電流がirecであり、前記充電器の出力電圧がVdcであり、前記コンデンサにかかる電圧がvCであり、前記コンデンサから出力される電流がiCであり、 【数1】 (vrec-Vdc)irec+(vC-Vdc)iC<0(1) および 【数2】 (vrec-Vdc)irec+(vC+Vdc)iC<0(2) のいずれもが成り立たないならば、第1の制御により、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記式(1)が成り立ち、前記式(2)が成り立たないならば、前記第1の制御とは異なる第2の制御により、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記式(1)および前記式(2)のいずれもが成り立つならば、前記第1の制御および前記第2の制御のいずれとも異なる第3の制御により」、交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるようにすることが記載されていると認められる。 したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記ア及びイから明らかなように、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、請求項9を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そして、訂正事項2は、請求項9を削除するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項および第6項に適合するものである。 (3)独立特許要件について 本件特許異議申立事件においては、全請求項が特許異議の申立ての対象とされているので、訂正事項1、2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は適用されない。 4.小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項1ないし9について訂正することを認める。 第3.本件特許発明 本件訂正の請求が認められたことにより、本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明8」という。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、 前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、 前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータと、 第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、 前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチのスイッチングを制御する制御部と、を有し、 前記第1のダイオードは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、 前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、 前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記電力脈動吸収回路のインダクタとの間に接続され、 前記第2のスイッチは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、 前記DC/DCコンバータは、DAB(Dual Active Bridge)コンバータであり、 制御部は、 交流電源から出力される電圧を昇圧する際に、前記整流器の出力電圧がvrecであり、前記整流器から出力される電流がirecであり、前記充電器の出力電圧がVdcであり、前記コンデンサにかかる電圧がvCであり、前記コンデンサから出力される電流がiCであり、 【数1】 (vrec-Vdc)irec+(vC-Vdc)iC<0(1) および 【数2】 (vrec-Vdc)irec+(vC+Vdc)iC<0(2) のいずれもが成り立たないならば、第1の制御により、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記式(1)が成り立ち、前記式(2)が成り立たないならば、前記第1の制御とは異なる第2の制御により、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記式(1)および前記式(2)のいずれもが成り立つならば、前記第1の制御および前記第2の制御のいずれとも異なる第3の制御により、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する、充電器。 【請求項2】 前記制御部は、前記コンデンサにかかる電圧が前記整流器の出力電圧よりも大きくなるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する、請求項1に記載の充電器。 【請求項3】 前記制御部は、 前記交流電源から出力される瞬時電力が前記交流電源から出力される電力の平均電力よりも高い期間である充電期間において、前記交流電源から出力される電力の一部を前記コンデンサに充電するように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、 前記交流電源から出力される瞬時電力が前記交流電源から出力される電力の平均電力よりも低い期間である放電期間において、前記コンデンサに充電された電力を放電するように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する、請求項1または2に記載の充電器。 【請求項4】 前記制御部は、前記放電期間において、前記第2のスイッチをオフの状態に保つ、請求項3に記載の充電器。 【請求項5】 前記制御部は、前記DC/DCコンバータのインダクタの動作波形が方形波形により近似可能な動作波形になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチのスイッチングを制御する、請求項4に記載の充電器。 【請求項6】 制御部は、前記交流電源から入力される交流電圧の一周期の間に、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチのスイッチング周波数を変化させる、請求項5に記載の充電器。 【請求項7】 前記制御部は、前記DC/DCコンバータのスイッチおよび前記第1のスイッチのすべてがオフになる期間がゼロになるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチのスイッチング周波数の値を制御する、請求項6に記載の充電器。 【請求項8】 前記制御部は、前記スイッチング周波数の最小値が所定の値になるように、前記方形波形の波高値の指定値を制御する、請求項6または7に記載の充電器。」 第4.特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法について 1.特許異議申立ての理由の概要 特許異議申立人による特許異議申立ての理由の概要は以下のとおりと認められる。 (1)申立理由1 ・特許法第29条第2項(同法第113条第2号) 本件特許発明1ないし9は、甲第1号証ないし第6号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(特許異議申立書第64頁) (2)申立理由2 ・特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号) 「本件の発明の詳細な説明の【0005】には、「非特許文献に開示された制御は、降圧動作には適用できるが、昇圧動作には適用できないことがある」と記載され、【0006】には、「本発明は、電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供することを目的とする」と記載されている。【0006】に記載された「電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供する」という課題は、【0004】に挙げられた【非特許文献】である甲第1号証において昇圧に関係なく実現されている。したがって、【0005】に記載された「非特許文献に開示された制御は、降圧動作には適用できるが、昇圧動作には適用できない」という課題が、本件特許発明の真に解決しようとする課題であると理解できる。 そして、発明の詳細な説明には、その解決手段として、【0037】~【0043】に、昇圧動作時におけるスイッチング制御の方法が記載されている。他方、本件請求項1には、「交流電源から出力される電圧を昇圧する際に前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する」としか規定されていない。つまり、本件請求項1には、昇圧動作時におけるスイッチング制御の方法が反映されていない。 したがって、本件請求項1において、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになっている。 請求項1を引用する請求項2~9についても同様である。」(特許異議申立書第64頁) 2.証拠方法 (1)甲第1号証:米田昇平、大沼喜也、“アクティブバッファを有するDual Active Bridge AC-DCコンバータの検討”、電気学会研究会資料(半導体電力変換/モータドライブ合同研究会)、2021年1月18日、p.13-18 (2)甲第2号証:Shunsuke Takuma、 Keisuke Kusaka、 Jun-ichi Itoh、Yoshiya Ohnuma、 Satoshi Miyawaki、A Novel Current Ripple Cancellation PWM for Isolated Three-Phase Matrix DAB AC-DC Matrix Converter、21st European conference on Power Electronics and Applications (EPE19 ECCE Europe)、2019年9月3日、p.1-10 (3)甲第3号証:山下尚也、榊原憲一、「アクティブバッファ付き単相-三相電力変換器の電圧利用率を改善する電力制御法」電学論D、2017年2月1日、第137巻、第2号、p.ll2-118 (4)甲第4号証:米田昇平、宅間春介、大沼喜也、「アクティブバッファを有するDual-Active-BridgeAC-DCコンバータの可変周波数制御の検討」、2021年電気学会産業応用部門大会講演論文集、1-30、2021年8月18日、p.ll3-116 (5)甲第5号証:宅間春介、日下佳祐、伊東淳一、大沼喜也、宮脇慧、「絶縁型AC-DC マトリックスコンバータのリプルキャンセル変調適用時の電力誤差補償法」、2019年電気学会産業応用部門大会講演論文集、1-36、2019年8月20日、p.173-176 (6)甲第6号証:Yoshiya Ohnuma、 Jun-ichi Itoh、A Single-phase-to-three-phase Power Converter with an Active Buffer and a Charge circuit、IEEJJournal of Industry Applications、2012年7月1日、vo1.1、No.1、p.46-54 第5.令和6年12月24日付けの取消理由通知書で通知された取消理由の概要 令和6年12月24日付けの取消理由通知書で通知された取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。 1.取消理由1(サポート要件) (1)取消理由1-1(課題解決手段) 本件特許明細書に記載した発明が解決しようとする課題は、「非特許文献1には、Dual-Active-Bridge(DAB)コンバータに電力脈動吸収用のアクティブバッファを付加した充電回路とその制御が開示されている(段落0003)が、非特許文献1に開示された制御は、降圧動作には適用できるが、昇圧動作時には適用できないことがある(段落0005)ため、昇圧動作時にも電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供すること(段落0006)」である。 そして、充電器100を動作させるためには、式(1)のすべてのデューティー比が正である必要があるところ、降圧動作時(つまり、VS≧Vdcであるとき)、式(1)のすべてのデューティー比が正であるが、昇圧動作時(つまり、VS<Vdcであるとき)、電流バランス期間Tbのデューティー比Db、バッファコンデンサ放電電流期間T Cのデューティー比DCが負になることがあるため(段落0037)、本件特許発明は、「電流バランス期間Tbのデューティー比Dbが負になったときに(つまり、式(2)が成り立つようになったときに)、スイッチング制御を昇圧シーケンスIに変更し、バッファコンデンサ放電電流期間TCのデューティー比DCが負になったときに(つまり、式(3)が成り立つようになったときに)、さらに、スイッチング制御を昇圧シーケンスIIに変更し、降圧シーケンス、昇圧シーケンスI、昇圧シーケンスII、降圧シーケンス、昇圧シーケンスII、昇圧シーケンスIの順で、スイッチング制御を変更していく」(段落0038~0044)という課題解決手段により上記課題を解決したものと認められる。 しかしながら、本件特許発明1ないし9には、当該課題解決手段が反映されているとはいえず、当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (2)取消理由1-2(Dual-Active-Bridge(DAB)コンバータ) 本件特許明細書によれば、DABコンバータのスイッチと電力脈動吸収回路のスイッチの制御方法について具体的な説明がなされている。 しかしながら、本件特許発明1ないし8は、DABコンバータ以外の任意の方式のDC/DCコンバータを包含するものであって、DABコンバータ以外の任意の方式のDC/DCコンバータにおいて、どのように制御すれば「電力の脈動を吸収することが可能」であることは、本願特許明細書等には記載されておらず、また、当該事項は、本件特許の出願時の技術常識であったとも認められない。 したがって、本件特許発明1ないし8は、当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められないため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 2.取消理由2(進歩性) 本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、上記第4.2(1)の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第6.当審の判断 1.甲第1号証 (1)甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付与した。以下同様。) ア.「This paper proposes a new isolated single-phase ac-dc converter for battery chargers of electric vehicles. The proposed battery charger consists of a front-end diode-bridge rectifier and a dual-active-bridge dc-dc converter including an active energy buffer circuit.」(第13頁の要約の1行ないし3行) (当審訳:本論文では、電気自動車のバッテリ充電器用の新しい絶縁形単相AC-DC変換器を提案する。提案するバッテリ充電器は、フロントエンドのダイオード・ブリッジ整流器と、アクティブエネルギーバッファ回路を含むDual-Active-Bridge DC-DCコンバータから構成される。) イ.「 [図:0001426836000001.jpg] 」(第13頁左欄1行ないし9行) ウ.「 [図:0001426836000002.jpg] [図:0001426836000003.jpg] 」(第13頁右欄17行ないし第14頁左欄5行) エ.「 [図:0001426836000004.jpg] 」(第14頁左欄14行ないし28行) オ.「 [図:0001426836000005.jpg] [図:0001426836000006.jpg] 」(第14頁右欄11行ないし第15頁左欄5行) カ.「 [図:0001426836000007.jpg] 」(第15頁左欄下から5行ないし同欄下から3行) キ.「図1 [図:0001426836000008.jpg] 」(第14頁) ク.「図4 [図:0001426836000009.jpg] 」(第15頁) (2)甲1発明 上記(1)アないしクによると、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流回路と、 整流器のカソード端子に高電位側の接続線を介して接続する高電位側の入力端子と、前記整流器のアノード端子に低電位側の接続線を介して接続する低電位側の入力端子と、抵抗負荷に接続するための2つの出力端子と、を有するDAB DC-DCコンバータと、 4つのダイオードと、2つのインダクタと、小容量コンデンサCbufと、3つのスイッチと、を有するアクティブバッファと、 DAB DC-DCコンバータのスイッチとアクティブバッファのスイッチのスイッチングを制御する制御部と、を有し、 前記整流回路の2つの入力端子、前記DAB DC-DCコンバータの入力端子が接続される高電位側の接続線及び低電位側の接続線、並びに前記アクティブバッファを構成する4つのダイオード、2つのインダクタ、小容量コンデンサCbuf、及び3つのスイッチは、図1に示される接続構成となっており、 前記アクティブバッファは、小容量コンデンサCbufに接続される2つのダイオードと、当該2つのダイオードに接続される2つのインダクタ及び2つのスイッチから構成される昇圧チョッパを含むものであり、 前記制御部は、平均電力より瞬時電力が大きい際は、充電回路が動作して電力の余剰分を小容量コンデンサCbufに蓄え、瞬時電力が小さい際は、電力の不足分をCbufから放出することで、負荷電力は常に一定値となるように、前記DAB DC-DCコンバータのスイッチと前記アクティブバッファのスイッチのスイッチングを制御する バッテリ充電器。」 2.取消理由について (1)取消理由1(サポート要件) ア.取消理由1-1 本件訂正により、本件特許発明1の「「制御部」による「交流電源から出力される電圧を昇圧する際に、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように」するための制御として、「前記整流器の出力電圧がvrecであり、前記整流器から出力される電流がirecであり、前記充電器の出力電圧がVdcであり、前記コンデンサにかかる電圧がvCであり、前記コンデンサから出力される電流がiCであり、 【数1】 (vrec-Vdc)irec+(vC-Vdc)iC<0(1) および 【数2】 (vrec-Vdc)irec+(vC+Vdc)iC<0(2) のいずれもが成り立たないならば、第1の制御により、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記式(1)が成り立ち、前記式(2)が成り立たないならば、前記第1の制御とは異なる第2の制御により、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記式(1)および前記式(2)のいずれもが成り立つならば、前記第1の制御および前記第2の制御のいずれとも異なる第3の制御により」との事項が特定された。 そうすると、本件訂正後の本件特許発明1は、上記第5.1.(1)において説示した課題解決手段を反映したものであるといえる。 イ.取消理由1-2 本件訂正により、本件特許発明1の「DC/DCコンバータ」は、「DAB(Dual Active Bridge)コンバータ」であることが特定された。 そうすると、本件訂正後の本件特許発明1は、本件特許明細書等に記載されたものであるといえる。 ウ.小括 以上のとおり、本件特許発明1は、当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、発明の詳細な説明に記載したものである。 そして、同様の理由により、本件特許発明2ないし8は、発明の詳細な説明に記載したものである。 (2)取消理由2(進歩性) ア.本件特許発明1 (ア)本件特許発明1と甲1発明との対比 a.甲1発明の「交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流回路」は、本件特許発明1の「交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器」に相当する。 b.甲1発明の「整流器のカソード端子に高電位側の接続線を介して接続する高電位側の入力端子と、前記整流器のアノード端子に低電位側の接続線を介して接続する低電位側の入力端子と、抵抗負荷に接続するための2つの出力端子と、を有するDAB DC-DCコンバータ」と、本件特許発明1の「前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータ」とは、「前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、充電器の負荷に接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータ」である点で共通する。 c.甲1発明の「昇圧チョッパ」を構成する「小容量コンデンサCbufに接続される2つのダイオード」、「当該2つのダイオードに接続される2つのインダクタ」及び「2つのスイッチ」は、「電流容量を考慮して2並列とされている」ものであり、それぞれ、本件特許発明1の「第3のダイオード」、「インダクタ」及び「第2のスイッチ」に対応するものであるから、甲1発明の「4つのダイオードと、2つのインダクタと、小容量コンデンサCbufと、3つのスイッチと、を有するアクティブバッファ」は、実質的に、本件特許発明1の「第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路」に相当するといえる。 d.上記cの検討を踏まえると、甲1発明の「DAB DC-DCコンバータのスイッチとアクティブバッファのスイッチのスイッチングを制御する制御部」は、本件特許発明1の「前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチのスイッチングを制御する制御部」に相当する。 e.甲1発明の「前記2つの入力端子、前記高電位側の接続線、前記低電位側の接続線、前記4つのダイオード、前記2つのインダクタ、前記小容量コンデンサ、及び前記3つのスイッチ」は、甲第1号証の図1に示される接続構成となっているところ、当該図1に示される接続構成の回路と、本件特許明細書等の図1の回路とは、上記cで検討した昇圧チョッパを構成する「小容量コンデンサCbufに接続される2つのダイオード、当該2つのダイオードに接続される2つのインダクタ及び2つのスイッチ」がそれぞれ「電流容量を考慮して2並列とされている」点を除けば同じ回路構成であるから、甲1発明と本件特許発明1とは、「前記第1のダイオードは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記電力脈動吸収回路のインダクタとの間に接続され、前記第2のスイッチは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され」る点で共通する。 f.甲1発明の「DAB DC-DCコンバータ」は、「DAB(Dual Active Bridge)コンバータ」であるといえる。 g.甲1発明の「前記制御部は、平均電力より瞬時電力が大きい際は、充電回路が動作して電力の余剰分を小容量コンデンサCbufに蓄え、瞬時電力が小さい際は、電力の不足分をCbufから放出することで、負荷電力は常に一定値となるように、前記DAB DC-DCコンバータのスイッチと前記アクティブバッファのスイッチのスイッチングを制御する」ことは、本件特許発明1の「制御部」が、「前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する」ことに相当する。 h.甲1発明の「バッテリ充電器」は、本件特許発明1の「充電器」に相当する。 i.上記aないしhの検討から、本件特許発明1と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有するといえる。 【一致点】 「交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、 前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、充電器の負荷に接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータと、 第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、 前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチのスイッチングを制御する制御部と、を有し、 前記第1のダイオードは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、 前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、 前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記電力脈動吸収回路のインダクタとの間に接続され、 前記第2のスイッチは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、 前記DC/DCコンバータは、DAB(Dual Active Bridge)コンバータであり、 制御部は、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する、 充電器。」 【相違点】 ・相違点1 DC-DCコンバータの2つの出力端子に接続されるものが、本件特許発明1では「バッテリ」であるのに対して、甲1発明では「抵抗負荷」である点。 ・相違点2 一致点の「制御部は、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する」ことについて、本件特許発明1では、「交流電源から出力される電圧を昇圧する際に、前記整流器の出力電圧がvrecであり、前記整流器から出力される電流がirecであり、前記充電器の出力電圧がVdcであり、前記コンデンサにかかる電圧がvCであり、前記コンデンサから出力される電流がiCであり、 【数1】 (vrec-Vdc)irec+(vC-Vdc)iC<0(1) および 【数2】 (vrec-Vdc)irec+(vC+Vdc)iC<0(2) のいずれもが成り立たないならば、第1の制御により、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記式(1)が成り立ち、前記式(2)が成り立たないならば、前記第1の制御とは異なる第2の制御により、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記式(1)および前記式(2)のいずれもが成り立つならば、前記第1の制御および前記第2の制御のいずれとも異なる第3の制御により」行われるものであるのに対して、甲1発明では、そのような限定はなされていない点。 (イ)判断 事案に鑑みて、まず、相違点2について検討する。 DC-DCコンバータはそもそも直流電圧を昇圧したり降圧したりする回路であることからすれば、甲1発明の回路構成において、「交流電源から出力される電圧を昇圧する」ことは、当然想定されていることであるから、「交流電源から出力される電圧を昇圧する」際に、「前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する」ことは、当業者が容易に想到できたことであるといえる。 しかし、当該「交流電源から出力される電圧を昇圧する」際に、「前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する」ための具体的構成として、「前記整流器の出力電圧がvrecであり、前記整流器から出力される電流がirecであり、前記充電器の出力電圧がVdcであり、前記コンデンサにかかる電圧がvCであり、前記コンデンサから出力される電流がiCであり、 【数1】 (vrec-Vdc)irec+(vC-Vdc)iC<0(1) および 【数2】 (vrec-Vdc)irec+(vC+Vdc)iC<0(2) のいずれもが成り立たないならば、第1の制御により、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記式(1)が成り立ち、前記式(2)が成り立たないならば、前記第1の制御とは異なる第2の制御により、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記式(1)および前記式(2)のいずれもが成り立つならば、前記第1の制御および前記第2の制御のいずれとも異なる第3の制御により」行うとの事項は、甲第1号証において、記載あるいは示唆されておらず、本件特許出願時の技術常識であるともいえないことからすると、甲1発明において、上記事項を採用することは、当業者が容易に想到できたことであるとはいえない。 したがって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ.本件特許発明2ないし8 本件特許発明2ないし8は、本件特許発明1の構成を全て備えるものであるから、本件特許発明2ないし8は、上記ア(ア)で説示した相違点1、2に係る本件特許発明1の構成を備えている。 したがって、本件特許発明2ないし8は、上記ア(イ)での説示と同様であるから、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3.特許異議申立ての理由について (1)申立理由1 上記2.(2)で説示したとおり、本件特許発明1において、「制御部」が「交流電源から出力される電圧を昇圧する」際に、「前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する」ための具体的構成として、「前記整流器の出力電圧がvrecであり、前記整流器から出力される電流がirecであり、前記充電器の出力電圧がVdcであり、前記コンデンサにかかる電圧がvCであり、前記コンデンサから出力される電流がiCであり、 【数1】 (vrec-Vdc)irec+(vC-Vdc)iC<0(1) および 【数2】 (vrec-Vdc)irec+(vC+Vdc)iC<0(2) のいずれもが成り立たないならば、第1の制御により、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記式(1)が成り立ち、前記式(2)が成り立たないならば、前記第1の制御とは異なる第2の制御により、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記式(1)および前記式(2)のいずれもが成り立つならば、前記第1の制御および前記第2の制御のいずれとも異なる第3の制御により」行うとの事項は、甲第1号証において、記載あるいは示唆されておらず、本件特許出願時の技術常識であるともいえないことからすると、甲1発明において、上記事項を採用することは、当業者が容易に想到できたことであるとはいえない。 そして、上記事項は、甲第2号証ないし甲第6号証においても、記載あるいは示唆されているとはいえない。 したがって、本件特許発明1は、甲第1号証ないし甲第6号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)申立理由2 上記2.(1)で説示のとおり、本件特許発明1ないし8は、当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、発明の詳細な説明に記載したものである。 (3)小括 上記(1)、(2)のとおりであるから、特許異議申立ての理由は採用できない。 第7.むすび 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議の申立ての理由によっては、請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件訂正により請求項9は削除され、請求項9に係る特許異議の申立てについては対象となる請求項が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700988

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