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特許異議申立

2023-700763

充電器

審判番号
2023-700763
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-138698
登録番号
7212904
請求日
2023年07月24日
審決日
2024年01月30日
公報発行日
2024年05月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】矢崎総業株式会社
  • 【権利者代理人】瀧野 文雄
  • 【権利者代理人】福田 康弘
  • 【権利者代理人】津田 俊明
  • 【権利者代理人】高木 亮
  • 【権利者】長岡パワーエレクトロニクス株式会社
  • 【権利者代理人】瀧野 文雄
  • 【権利者代理人】福田 康弘
  • 【権利者代理人】津田 俊明
  • 【権利者代理人】高木 亮
  • 【権利者】国立大学法人東京海洋大学
  • 【権利者代理人】瀧野 文雄
  • 【権利者代理人】福田 康弘
  • 【権利者代理人】津田 俊明
  • 【権利者代理人】高木 亮
  • 【異議申立人】吉田 琢磨
審判長/審判官
  • 審判長 吉田 美彦
  • 審判官 須田 勝巳
  • 審判官 脇岡 剛
分類
P1651.121-YAA(H02M) / P1651.537-YAA(H02M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
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特許第7212904号発明「充電器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7212904号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第7212904号の請求項1-5に係る特許を維持する。 特許第7212904号の請求項6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 1 手続の経緯 特許第7212904号の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和2年8月19日に出願され、令和5年1月18日にその特許権の設定登録がされ、令和5年1月26日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和5年7月24日に特許異議申立人吉田 琢磨(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和5年9月20日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である令和5年11月20日に意見書を提出するとともに訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、令和5年12月28日に意見書を提出した。 2 訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 令和5年11月20日の訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の 「交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータと、第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチを制御する制御部と、を有し、前記第1のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記インダクタとの間に接続され、前記第2のスイッチは、前記インダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、前記制御部は、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する、充電器。」との記載を、 「交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータと、第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチを制御する制御部と、を有し、前記第1のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記インダクタとの間に接続され、前記第2のスイッチは、前記インダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、前記制御部は、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記DC/DCコンバータは、DAB(Dual Active Bridge)コンバータである、充電器。」との記載に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2-5も同様に訂正する)。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び一群の請求項について ア 訂正事項1について (ア)訂正事項1は、請求項1における訂正前の「DC/DCコンバータ」が「DAB(Dual Active Bridge)コンバータである」ことに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (イ)訂正事項1は、訂正前の「DC/DCコンバータ」が「DAB(Dual Active Bridge)コンバータである」ことに限定して、発明特定事項を上位概念から下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。 (ウ)本件特許明細書には、「DC/DCコンバータ120は、例えば、図1に示すように、DAB(Dual Active Bridge)コンバータ120である。」(段落0018)と記載され、また、図1には、DABコンバータの回路構成が記載されているから、「前記DC/DCコンバータは、DAB(Dual Active Bridge)コンバータである」と訂正することは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。 イ 訂正事項2について (ア)訂正事項2は、請求項6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (イ)訂正事項2は、請求項6を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。 (ウ)訂正事項2は、請求項6を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。 ウ 一群の請求項 訂正前の請求項2~6は、請求項1を直接または間接的に引用するものであり、訂正事項1及び訂正事項2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正後の請求項1~6は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項であり、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~6〕に対して請求されたものである。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 3 訂正後の本件特許発明 上記2で検討したとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~6に係る発明は、訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、各請求項に係る発明を、項番号に応じて「本件特許発明1」~「本件特許発明6」などといい、まとめて「本件特許発明」という。なお、下線は、訂正箇所について特許権者が付したものである。)。 「【請求項1】 交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、 前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータと、 第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、 前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチを制御する制御部と、を有し、 前記第1のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、 前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、 前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記インダクタとの間に接続され、 前記第2のスイッチは、前記インダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、 前記制御部は、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、 前記DC/DCコンバータは、DAB(Dual Active Bridge)コンバータである、充電器。 【請求項2】 前記制御部は、前記コンデンサにかかる電圧が前記整流器の出力電圧よりも大きくなるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する、請求項1に記載の充電器。 【請求項3】 前記制御部は、 前記交流電源から出力される瞬時電力が前記交流電源から出力される電力の平均電力よりも高い期間である充電期間において、前記交流電源から出力される電力の一部を前記コンデンサに充電するように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、 前記交流電源から出力される瞬時電力が前記交流電源から出力される電力の平均電力よりも低い期間である放電期間において、前記コンデンサに充電された電力を放電するように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する、請求項1または2に記載の充電器。 【請求項4】 前記制御部は、前記放電期間において、前記第2のスイッチをオフの状態に保つ、請求項3に記載の充電器。 【請求項5】 前記制御部は、前記DC/DCコンバータの変圧器の漏れインダクタの高周波電流の波形が正負で非対称になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチを制御する、請求項4に記載の充電器。 【請求項6】 (削除) 」 4 取消理由通知に記載した取消理由について (1)取消理由の概要 訂正前の請求項1~6に係る特許に対して、当審が令和5年9月20日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。(下線は、説明のために当審で付したものである。以下、同様。) ア 「1.(サポート要件)本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。」 イ 上記に関し、令和5年9月27日に、特許権者代理人の高木 亮氏より「令和5年9月20日付けの取消理由通知の理由欄の「請求項1ないし6に係る特許」は、「請求項1ないし5に係る特許」の誤記ではないか、との問い合わせがあり、当方より、当該箇所は、「請求項1ないし5に係る特許」の誤記である旨を回答した。そして、特許権者代理人は、令和5年9月20日付けの取消理由通知の理由欄の「請求項1ないし6に係る特許」は、「請求項1ないし5に係る特許」の誤記であるとして、今後の手続を進めることを了承した。 したがって、誤記を訂正した取消理由の概要は、次のとおりである。 ウ 「1.(サポート要件)本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。」 (2)取消理由の内容 当審が通知した取消理由の内容は、次のとおりである。 「第3 取消理由(サポート要件)について 1 本件特許発明1について 本件特許発明1には、DC/DCコンバータについて、「前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータ」と記載され(以下、これを「引用記載1」という。)、また、DC/DCコンバータの制御に関して、「前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチを制御する制御部」と記載され(以下、これを「引用記載2」という。)、また、「前記制御部は、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する」と記載されている。(以下、これを「引用記載3」という。) 上記引用記載1ないし3によれば、本件特許発明1のDC/DCコンバータは、スイッチを有するということのほかには、その方式等について特段の限定はなされていないから、本件特許発明1の「DC/DCコンバータ」は、任意の方式のDC/DCコンバータでよいものである。 一方、本件特許明細書の段落0010によれば、本件特許発明の課題は、「電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供する」ことであるところ、当該課題を解決するためのDC/DCコンバータとして、本件特許の図1には、DABコンバータ120が例示され、また、本件特許明細書の段落0039ないし0050及び図3ないし図10には、DABコンバータのスイッチと電力脈動吸収回路のスイッチの制御方法について具体的な説明がなされている。 しかしながら、本件特許明細書には、DABコンバータとは異なる方式のDC/DCコンバータを用いた場合にどのような制御を行うのかについては全く記載や説明がないから、本件特許明細書は、DABコンバータ以外の任意の方式のDC/DCコンバータを用いた場合には、どのような制御を行えば「電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供する」という課題を解決できるのかについては何も記載されていない。 また、DABコンバータ以外の任意の方式のDC/DCコンバータであっても、上記引用記載2及び引用記載3のように制御すれば「電力の脈動を吸収することが可能」であるということが、本件特許の出願時の技術常識であったとも認められない。 してみれば、本件特許発明1に関して、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないし、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。 2 本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5も、DC/DCコンバータの方式について特段の限定をするものではない。 したがって、本件特許発明1と同様に、本件特許発明2ないし5に関して、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないし、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。」 (3)当審の判断 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 上記観点に立って、本件特許発明1の記載がサポート要件に適合するか否かについて検討する。 本件特許発明1に記載された「充電器」の回路構成及び、当該「充電器」の「DC/DCコンバータ」が「DAB(Dual Active Bridge)コンバータである」ことは、本件特許の図1に記載されたものである。また、本件特許発明1に記載された「充電器」の「制御部」が「前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御」することは、本件特許明細書の段落0018~0049及び図1~10に記載された実施例に対応するものである。 したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。 また、本件特許明細書の段落0006~0010には、自動車に搭載する充電器には、小型化の要求が存在し、充電器を小型化するためには、コンデンサやインダクタ、変圧器などの受動素子を小型化する必要がある(段落0006)ところ、非特許文献1に開示された充電器は、交流電源による電力の脈動を吸収するために、大容量コンデンサ付きのPFCを有しており、PFCのインダクタや、DC/DCコンバータの変圧器は、高周波動作を行うことで、小型化することが可能であるが、PFCのコンデンサは、交流電源による電力の脈動を吸収するだけの容量が必要であり、小型化が困難であり(段落0007)、また、非特許文献2に開示された充電器では、DC/DCコンバータには、脈動を有した電力が入力されるため、DC/DCコンバータの変圧器は、この脈動も考慮する必要があり、小型化が困難であり(段落0008)、また、非特許文献3に開示された充電器では、AC/DCコンバータには、脈動を有した電力が入力されるため、AC/DCコンバータの変圧器は、この脈動も考慮する必要があり、小型化が困難である(段落0009)との課題認識のもと、本発明は、電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供することを目的とする(段落0010)ことが記載されている。 上記記載によれば、本件特許発明の課題は、「電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供する」ことであり、当該課題は、本件特許発明1に記載される回路構成の充電器において、制御部が、「前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御」することで電力の脈動が吸収され、その結果、電力の脈動を吸収するために従来必要であった大容量のコンデンサが不要となって、充電器を小型化することができるようになることを当業者は認識することができる。 以上のことから、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、また、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、本件特許発明1の記載はサポート要件に適合するものである。 (4)申立人の主張について 申立人は、令和5年12月28日の意見書において、本件特許明細書の段落0050の記載と甲第5号証の記載を引用し、「「電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供する」という課題を解決するためには、DC/DCコンバータの変圧器の漏れインダクタの高周波電流の波形を正負で非対称にするという手段が必要であると理解できる」ところ、請求項1~4では、DC/DCコンバータの変圧器の漏れインダクタの高周波電流の波形を正負で非対称にするか否かは規定されていないから、請求項1~4には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないと主張する。 しかしながら、本件特許明細書の段落0048~0050には、図10の動作波形を得るためのスイッチングの制御則は、バッファコンデンサCbufにかかる瞬時電圧vCが整流器110から出力される瞬時電圧vrecよりも常に大きくなり、交流電源200から出力される瞬時電力pSとバッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力pCとの和が一定になるように、各期間の電流式を連立して解くことにより得られるものである(段落0048)ところ、本実施形態では、バッファコンデンサCbufに係る電圧vCが整流器110の瞬時電圧vrecが異なる値を持つため、モード2とモード3での波形の傾きが異なり、同様に、モード6とモード7での波形の傾きが異なり、このため、図10に示したように、正での波形と負での波形がiL=0に対して非対称である動作波形を生成することが可能になり、動作波形を等価方形波形により近似する方法の着眼点を用いることが可能になり、スイッチングの制御則をより容易に得ることが可能になる(段落0050)と記載されている。 上記記載によれば、本件特許発明では、交流電源200から出力される瞬時電力pSとバッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力pCとの和が一定になるように制御する際に、vC>vrecとなるように制御されるため、結果として、図10に示されるように、正での波形と負での波形がiL=0に対して非対称である動作波形が生成されることとなり、この性質を利用すると、動作波形を等価方形波形により近似する方法の着眼点を用いることが可能になり、その結果、スイッチングの制御則を得るために従来必要であった、「交流電源200から出力される瞬時電力pSとバッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力pCとの和が一定になるように、各期間の電流式を連立して解く」ことに代えて、「動作波形を等価方形波形により近似する方法」によりスイッチングの制御則をより容易に得ることが可能になるものと認められる。 そうすると、上記(3)で検討したとおり、本件特許発明の「電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供する」という課題は、本件特許発明1の「前記制御部は、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する」という構成で解決されるものであり、そのように制御することに加えて、「動作波形を等価方形波形により近似する方法」を利用できるようにするために、本件特許発明5のように制御すること、すなわち、「前記制御部は、前記DC/DCコンバータの変圧器の漏れインダクタの高周波電流の波形が正負で非対称になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチを制御する」ことまでを、本件特許発明の「電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供する」という課題を解決するために必要な構成であるということはできない。 したがって、本件特許発明1が、本件特許発明5のように制御することを特定していないからといって、本件特許発明1が、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないとまではいえない。 したがって、申立人の意見は採用することができない。 5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)特許異議申立理由の概要 本件特許発明1~6は、甲第1号証~甲第6号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 <証拠等一覧> 甲第1号証:山下尚也 外1名、“アクティブバッファ付き単相-三相電力変換器の電圧利用率を改善する電力制御法”、電学論D、2017年2月1日、第137巻、第2号、p112-118 甲第2号証:Murat Yilmaz 外1名、"Review of Battery Charger Topologies, Charging Power Levels, and Infrastructure for Plug-In Electric and Hybrid Vehicles"、IEEE TRANSACTIONS ON POWER ELECTRONICS、2013年5月、Vol.28、No.5、p2151-2169 甲第3号証:大沼喜也 外1名、“充電回路を付加したアクティブバッファ付き単相-三相電力変換器の実機検証”、平成22年電気学会産業応用部門大会講演論文集、2010年8月23日、1-124、p587-590 甲第4号証:平地克也、“DC/DCコンバータの基礎から応用まで”、2018年1月20日、目次、p178-193 甲第5号証:大沼喜也 外1名、“マトリックスコンバータとPWM整流器で構成する高周波絶縁AC-DC変換器の制御法”、平成30年電気学会産業応用部門大会講演論文集、2018年8月28日、1-53、p197-200 甲第6号証:宅間春介 外4名、“絶縁型AC-DCマトリックスコンバータのリプルキャンセル変調適用時の電力誤差補償法”、2019年電気学会産業応用部門大会講演論文集、2019年8月20日、1-36、p173-176 (2)甲第1号証~甲第6号証の記載 ア 甲第1号証 (ア)甲第1号証に記載された事項 甲第1号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審で付したものである。以下、同様。) a 「1. まえがき 地球環境問題を背景とした、機器に対する省エネ規制の動きや、消費電力量低減へのユーザーニーズに対応して、インバータ機器の更なる高効率化が求められている。また、顕在化しつつある、インバータ化に伴う電源高調波やEMIを低減する電力変換回路が必要であり、高効率・低ノイズといった特徴を有する電力変換方式として、三相?三相変換を基本とするマトリックスコンバータが産業用インバータとして既に実用化されている。 同様に、家電・民生機器に適用される単相電源についても、直接形電力変換技術の応用が検討されているが、入力電力に脈動成分を含むことから、一定電力の三相負荷へ変換するためには、脈動電力の補償手段が必要となる。従来から提案される方式は、マトリックスコンバータの三相入力のうち二相から単相電源を供給するとともに、電源と残りの一相との間に、電力平滑コンデンサや交流リアクトルを接続し、脈動電力を補償するものである。しかし、マトリックスコンバータは、降圧形の変換器で構成されることから電圧利用率が低く、さらに、素子数が多いため回路規模が大きくなり、実用上の課題があった。 一方、ダイオード整流による単相-三相電力変換器を用いて、平滑コンデンサをアクティブバッファとして機能させ、主回路の簡素化を図る方式が提案されている。この方式の電圧利用率は従来相当の50%に留まるが、一般的な主回路にFRD 内蔵IGBT からなる電流可逆スイッチを1 素子のみ追加し、脈動電力の補償と直接形電力変換を可能とする。さらに、バッファに充電回路を付加した図1 の回路構成についても報告されており、電圧利用率は70%程度まで改善されるが、部分スイッチング方式に比べて約15%低く、パワーデバイスの電流容量を増加させる必要があった。 本論文では、充電回路を付加したバッファを有する単相-三相電力変換器において、充電回路が昇圧形で構成される特徴を生かし、原理的に80%?100%の電圧利用率を得る電力制御方式を提案するとともに、制御に適した電力収支が実現できるよう、同時に充放電可能なバッファ回路へ主回路構成を改良した結果について述べる。」(第112頁左欄1行~第2頁左欄4行) b 「〈2・1〉電力制御の基本原理 図2に単相-三相変換電力変換器に対する脈動電力の補償原理を示す。ここで、電源電圧、電源電流は正弦波であり入力力率を1とすると、入力電力pinは(1)式のように定常成分と電源周波数2倍の脈動成分の和で表せる。なお、Vmは電源電圧、Imは電源電流、各々の波高値である。 [図:0001410222000001.jpg] バッファを脈動成分と等しく(2)式の補償電力pbufを出力するように制御すると、 [図:0001410222000002.jpg] 出力電力poutは(3)式の定常成分のみとなる。 [図:0001410222000003.jpg] 」(第113頁左欄6~17行) c 「3. 主回路構成の検討 以上、述べた電力制御方式は、充放電動作を同時に行う必要があるため、図1に示した従来回路に適用することができない。これは、放電回路が導通状態の場合、整流器が遮断され、充電動作を成し得ないためである。 図5に本制御方式に適する、主回路構成について検討を行った結果を示す。図5(a)は充放電回路の間にダイオードDrecを設けることにより、整流器の逆バイアス電位を回避し、放電スイッチSCと充電スイッチSLが独立して動作できるよう、バッファ回路を変形したものである。 ここで、ダイオード Drecは整流器が担っていた、電源とバッファコンデンサとの短絡を回避する機能を併せ持つため、交流側の入力フィルタを直流側に移すことができる。フィルタに用いられる、フィルムコンデンサの直流耐圧は、発熱や放電の影響を受ける交流耐圧の2倍以上であるため、適用するコンデンサの定格を大きく低減できる。 図5(b)はより変換効率を改善するために、充電回路を変形したものであるが、整流器の短絡を回避する機能を維持した上で、付加整流回路により交流側に充電回路を配したものである。この場合、図5(a)のダイオード Drec で発生する定常オン損失を削減できる。 以降の実験システムでは、より実用面で優れる図5(a)の主回路構成にて評価を行うものとする。」(第114頁左欄16行~同頁右欄第14行) d 「5. 制御回路構成 〈5・1〉システム構成 図10に制御回路のブロック図を示す。電圧源である整流器電圧Vmとバッファ電圧Vcを検出し、電源位相θを用いて電流分配率 drec、dcを演算し、出力指令 Vu?、Vv?、Vw? と乗算される。次節に示す同期PWM 変調器では、電流分配率にて分割された三角波キャリアと電圧指令が比較され、各々の電圧源に対するゲート信号 Su、Sv、Sw を生成、放電回路のスイッチ信号 Sc を出力する。充電回路の電流指令 IL? はバッファ電圧制御系の偏差信号に基づき、充電テーブルから得られる基準信号の振幅を可変することにより制御され、電力の整合性が確保される。なお、今回の主回路構成では、充放電回路は独立して制御できるため、充電回路の制御に臨界モードで動作する PFC ICを用いている。 また、入力フィルタの共振によって発生する高調波電流を抑制するため、電流指令にリアクトル電圧の検出値 VLinを加算することによりダンピング効果を得ている。」(第116頁左欄10~26行) e 「図2 [図:0001410222000004.jpg] 」 f 「図4 [図:0001410222000005.jpg] 」 g 「図5 [図:0001410222000006.jpg] 」 h 「図10 [図:0001410222000007.jpg] 」 i 上記bの記載と、上記e、fの図2、図4の記載から、Input Power pinとBuffer Power pbufとを足し合わせると、Output Power poutは、定常成分(Vm*Im/2)となることが読み取れ、そのように動作するようにバッファの放電スイッチScと受電スイッチSLを制御することが読み取れる。 そうすると、甲第1号証には、“交流電源から出力される入力電力pinとコンデンサから出力される補償電力pbufとの和が一定になるように、放電スイッチScと受電スイッチSLを制御する制御部”が記載されていると認められる。 (イ)甲1発明 甲第1号証の上記記載から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲1発明> Input Filterを介してUtility(交流電源)に接続されたDiode Rectifierと、Chargerと、Active Bufferと、Inverterと制御部とを有する単相-三相電力変換器であって(上記a、図5(b))、 前記Diode Rectifierは、6個のダイオードDrp、Dsp、Drn、Dsn、Drl、Dslから構成され(図5(b))、 前記Chargerは、リアクトルLと受電スイッチSLとダイオードDから構成され(上記c、図5(b))、 前記Active Bufferは、放電スイッチScとコンデンサCから構成され(上記b、図5(b))、 前記Inverterは、6個のスイッチSup、Svp、Swp、Sun、Svn、Swnから構成され(図5(b))、 前記Diode Rectifierは、Input Filterの2つの出力点に接続される2つの入力端子を有し(図5(b))、 前記Inverterは、前記Diode Rectifierのカソード側が接続される線と前記Diode Rectifierのアノード側が接続される線との間に接続され(図5(b))、 前記Drlは、前記リアクトルLと前記Diode Rectifierの2つの入力端子の一方との間に接続され、前記Dslは、前記リアクトルLと前記Diode Rectifierの2つの入力端子の他方との間に接続され(図5(b))、 前記コンデンサCと前記放電スイッチScは、前記Diode Rectifierのカソード側が接続される線と前記Diode Rectifierのアノード側が接続される線の間に、直列に接続され、前記コンデンサCは前記アノード側が接続される線側に配置され(図5(b))、 前記ダイオードDは、前記コンデンサCと前記放電スイッチScを接続する線と前記リアクトルLとの間に接続され(図5(b))、 前記受電スイッチSLは、前記リアクトルLと前記ダイオードDを接続する線と前記Diode Rectifierのアノード側が接続される線との間に接続され(図5(b))、 前記制御部は、交流電源から出力される入力電力pinとコンデンサCから出力される補償電力pbufとの和が一定になるように、放電スイッチScと受電スイッチSLを制御する(上記i)、 単相-三相電力変換器。 イ 甲第2号証 甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「Fig.7 General unidirectional and bidirectional topology [図:0001410222000008.jpg] 」(第2155頁) (当審訳:図7 一般的な単方向及び双方向のトポロジー) (イ)「These chargers typically use a diode bridge in conjunction with a filter and dc?dc converters.」(第2155頁左欄51~53行) (当審訳:これらの充電器は通常、フィルタおよびDC-DCコンバータとともにダイオードブリッジを使用する。) (ウ)上記図7の記載から、「AC/DCコンバータに接続する2つの端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子とを有するDC/DCコンバータ」が開示されていると認められる。 ウ 甲第3号証 甲第3号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「図2 に提案回路の具体的な回路図を示す。整流部はダイオード整流器、放電回路は中間部に直列にコンデンサとスイッチを接続、充電回路は中間部からコンデンサに一般的な昇圧回路で構成する。本提案回路の特徴として、変換器内の電流の主経路にリアクトルやパワー素子が入らない。このため、導通損失を小さくできる。また、インバータがゼロ電圧を出力している期間、直流中間の電流はゼロであることに着目し、放電回路のスイッチ SCはインバータのゼロ電圧期間中にスイッチングする。この結果、SC にはスイッチング損失、ダイオード整流器の逆回復損失が発生しない。さらに、充電回路とバッファ回路は 1/4 周期ごと交互に動作するため、各補償回路の損失は半分となる。このことから、一般的な PFC 回路と比べ高効率化が期待できる。」(第I-587頁右欄下から2行~第I-588頁左欄11行) (イ)「3. 制御方法 〈3・1〉 電力脈動の補償原理 図3 に入力電圧と電流を正弦波とし、対称三相負荷に電力を供給したときの入力電力と出力電力、およびその差分電力(=バッファに出入りする電力)の関係図を示す。入力力率 1 の条件では、瞬時電力 pinは(1)式で表せる。 [図:0001410222000009.jpg] ただし、VINは入力電圧最大値、IINは入力電流最大値、ωは電源角周波数である。(1)式から明らかなように、入力電力は電源周波数の 2 倍で脈動する。一方、出力側は三相平衡負荷であれば、負荷電力が一定であり、入力電力の脈動を打ち消すためには、バッファ瞬時電力 pbuf を(2)式で制御すればよい。 [図:0001410222000010.jpg] (2)式より pbuf が正の期間(-π/2<2ωt<π/2)、放電回路より電力を放電し(放電期間)、負の期間(π/2<2ωt<3π/2)、充電回路で充電すれば(充電期間)、電力脈動を補償できる。」(第I-588頁左欄12~29行) (ウ)「図2 [図:0001410222000011.jpg] 」 (エ)「図3 電力脈動の補償原理 [図:0001410222000012.jpg] 」 (オ)「図5 制御ブロック図 [図:0001410222000013.jpg] 」 エ 甲第4号証 甲第4号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「上記の動作モードから、DAB方式ではQ1~Q8を適切に制御してE1とE2の極性を切り替え、その結果、リアクトルLに印加される電圧を調整してLの電流を制御していることがわかる。」(第181頁8~10行) (イ)「 [図:0001410222000014.jpg] [図:0001410222000015.jpg] [図:0001410222000016.jpg] 」 オ 甲第5号証 甲第5号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「トランスの漏れインダクタンスを積極的に利用して電力変換を行うこと」(I-198頁左欄23~32行) (イ)「マトリックスコンバータの出力電流波形(トランス一次側波形)が正負で非対称になること」(I-199頁左欄4~6行および図5) (ウ)「図3の回路構成は、Dual Active Bridge(DAB)コンバータの一次側をマトリックスコンバータに置き換えた回路とも表現できること」(I-198頁左欄23~32行) (エ)「TlからT2に移行する期間、及びT2からTlに移行する期間に、トランスの一次側の電圧を、正負で非対称に切り替えることにより、高周波部の出力電流の波形を正負で非対称にすること」(図3、図5) カ 甲第6号証 甲第6号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「マトリックスコンバータの高周波部の出力電流の波形が正負で非対称になること」(I-174頁左欄19~21行、図3(a)、図3(b)) (イ)「TlからT2に移行する期間、及びT2からT1に移行する期間に、トランスの一次側の電圧(Vpr) を、最大相電圧V1 と中間相電圧V2 とに正負で非対称に切り替えることにより、高周波部の出力電流の波形を正負で非対称にすること」(I-174頁左欄14~21行、図1、図2(b)、図3(a)、図3(b)) (3)対比 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 ア 甲1発明の「Utility(交流電源)」、「Diode Rectifier」、「Diode Rectifierのカソード側」、及び「Diode Rectifierのアノード側」は、それぞれ、本件特許発明1の「交流電源」、「整流器」、「カソード端子」、及び「アノード端子」に相当する。 甲1発明の「Diode Rectifier」は、Input Filterの2つの出力点に接続される「2つの入力端子」を有するところ、当該「2つの入力端子」は、Input Filterを介して“交流電源”に接続するための端子であるから、本件特許発明1の「交流電源に接続するための2つの入力端子」に相当する。 したがって、甲1発明の「Diode Rectifier」は、本件特許発明1の「交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器」に相当する。 イ 甲1発明の「ダイオードDrl」、「ダイオードDsl」、「ダイオードD」、「リアクトルL」、「コンデンサC」、「放電スイッチSc」、及び「受電スイッチSL」は、その接続構成からみて、それぞれ、本件特許発明1の「第1のダイオード」、「第2のダイオード」、「第3のダイオード」、「インダクタ」、「コンデンサ」、「第1のスイッチ」、及び「第2のスイッチ」に相当する。 そして、甲1発明の制御部は、交流電源から出力される入力電力pinとコンデンサから出力される補償電力pbufとの和が一定になるように、放電スイッチScと受電スイッチSLを制御することによって、電源の脈動を吸収するものであるから、放電スイッチScを含む「Active Buffer」と、受電スイッチSLを含む「Charger」と、「Charger」に電流を供給する「ダイオードDrl」及び「ダイオードDsl」を合わせた構成は、本件特許発明1の「第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路」に相当する。 ウ 甲1発明の「交流電源から出力される入力電力pinとコンデンサCから出力される補償電力pbufとの和が一定になるように、放電スイッチScと受電スイッチSLを制御する」「制御部」と本件特許発明1の「前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチを制御する制御部」とは、上記イの対比を踏まえると、“前記第1のスイッチと前記第2のスイッチを制御する”点で共通する。 エ 上記ア及びイの対比を踏まえると、甲1発明の「前記Drlは、前記リアクトルLと前記Diode Rectifierの2つの入力端子の一方との間に接続され、前記Dslは、前記リアクトルLと前記Diode Rectifierの2つの入力端子の他方との間に接続され」ることは、本件特許発明1の「前記第1のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され」ることに相当する。 オ 甲1発明の「Diode Rectifierのカソード側が接続される線」及び「Diode Rectifierのアノード側が接続される線」はそれぞれ、本件特許発明1の「第1のライン」及び「第2のライン」に相当する。 したがって、上記イの対比を踏まえると、甲1発明の「前記コンデンサCと前記放電スイッチScは、前記Diode Rectifierのカソード側が接続される線と前記Diode Rectifierのアノード側が接続される線の間に、直列に接続され、前記コンデンサCは前記アノード側が接続される線側に配置され」ることは、本件特許発明1の「前記コンデンサと前記第1のスイッチは、第1のラインと第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され」ることに相当する。 カ 上記イの対比を踏まえると、甲1発明の「前記ダイオードDは、前記コンデンサCと前記放電スイッチScを接続する線と前記リアクトルLとの間に接続され」ることは、本件特許発明1の「前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記インダクタとの間に接続され」ることに相当する。 キ 上記イの対比を踏まえると、甲1発明の「前記受電スイッチSLは、前記リアクトルLと前記ダイオードDを接続する線と前記Diode Rectifierのアノード側が接続される線との間に接続され」ることは、本件特許発明1の「前記第2のスイッチは、前記インダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され」ることに相当する。 ク 上記イの対比を踏まえると、甲1発明の「前記制御部は、交流電源から出力される入力電力pinとコンデンサCから出力される補償電力pbufとの和が一定になるように、放電スイッチScと受電スイッチSLを制御する」ことと、本件特許発明1の「前記制御部は、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御」することとは、“前記制御部は、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御”する点で共通する。 ケ 甲1発明の「単相-三相電力変換器」と本件特許発明の「充電器」とは、“機器”である点では共通する。 したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、次の一致及び相違点を有する。 <一致点> 交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、 第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、 前記第1のスイッチと前記第2のスイッチを制御する制御部と、を有し、 前記第1のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、 前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、 前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記インダクタとの間に接続され、 前記第2のスイッチは、前記インダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、 前記制御部は、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する、 機器。 <相違点1> 本件特許発明1は、「前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータ」を有しているのに対して、甲1発明は、そのような構成を有していない点。 <相違点2> 本件特許発明1は、「前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチを制御する制御部」を有するのに対して、甲1発明は、そのような制御部を備えていない点。 <相違点3> 本件特許発明1の制御部は、「前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御」するのに対して、甲1発明の制御部は、交流電源から出力される入力電力pinとコンデンサCから出力される補償電力pbufとの和が一定になるように、放電スイッチScと受電スイッチSLを制御するものの、「DC/DCコンバータ」と「第1のスイッチ」と「第2のスイッチ」とを制御するものではない点。 <相違点4> 本件特許発明1は、「前記DC/DCコンバータは、DAB(Dual Active Bridge)コンバータである」ことを特定するのに対して、甲1発明は、そもそもDC/DCコンバータを備えていない点。 <相違点5> 本件特許発明1は、整流器とDC/DCコンバータと電力脈動吸収回路と制御部とを有する「充電器」であるのに対して、甲1発明は、Diode Rectifierと、Chargerと、Active Bufferと、Inverterと制御部とを有する単相-三相電力変換器である点。 (4)判断 ア 事案に鑑み、相違点1~5についてまとめて検討する。 甲第1号証には、「本論文では、充電回路を付加したバッファを有する単相-三相電力変換器において、充電回路が昇圧形で構成される特徴を生かし、原理的に80%?100%の電圧利用率を得る電力制御方式を提案するとともに、制御に適した電力収支が実現できるよう、同時に充放電可能なバッファ回路へ主回路構成を改良した結果について述べる。」と記載されているように、甲第1号証は、単相-三相電力変換器に関するものであり、たとえ甲第2号証に、「AC/DCコンバータに接続する2つの端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子とを有するDC/DCコンバータ」の記載があり、また、「これらの充電器は通常、フィルタおよびDC-DCコンバータとともにダイオードブリッジを使用する」との記載があり、また、甲第4号証にDAB方式のDC/DCコンバータの制御内容の記載があるとしても、それだけで、甲1発明の単相-三相電力変換器のインバータをDC/DCコンバータに変更して充電器の構成に変更する動機付けがあるとはいえない。 加えて、本件特許発明1は、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるようにするために、第1のスイッチと第2のスイッチに加えてDC/DCコンバータも併せて制御しているところ、甲第1号証~甲第6号証のいずれにも、放電スイッチScと受電スイッチSLに加えてDC/DCコンバータも併せて制御して、交流電源から出力される電力とコンデンサから出力される電力との和が一定になるようにすることは記載されていないから、甲1発明に甲第2号証~甲第6号証の記載事項を組み合わせて、相違点1~5に係る構成を当業者が容易に想到し得たということはできない。 したがって、本件特許発明1は、甲1発明及び甲第2号証~甲第6号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2~5は、本件特許発明1を直接又は間接に引用し、さらに限定したものであるから、同様に、甲1発明及び甲第2号証~甲第6号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 6 むすび 以上のとおり、本件特許発明1~5に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び取消理由通知に記載した取消理由によって取り消すことはできない。 また、他に本件特許発明1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項6に係る特許は、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項6に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700763

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同じ当事者の審決232件(吉田 琢磨、国立大学法人東京海洋大学、矢崎総業株式会社 ほか)
  • 2024-700988異議申立 / 2025-06-12 / 訂正認容充電器
    同じ当事者: 国立大学法人東京海洋大学、矢崎総業株式会社、長岡パワーエレクトロニクス株式会社
  • 2025-700704異議申立 / 2026-06-17 / 請求成立(取消)車載器、解析装置、及び解析システム
    同じ当事者: 矢崎総業株式会社
  • 2024-700406異議申立 / 2025-03-13 / 請求成立(取消)転写フィルム及び防眩性成形体
    同じ当事者: 吉田 琢磨
  • 2024-700786異議申立 / 2024-10-11 / 維持電池パック、機器本体及び電気機器
    同じ当事者: 吉田 琢磨
  • 2022-701166異議申立 / 2024-01-17 / 請求成立(取消)変位計測方法および変位計測システム
    同じ当事者: 国立大学法人東京海洋大学
同じ論点・分野の審決(審決分類)311件(121・H02M、537・H02M)
  • 2025-700560異議申立 / 2026-01-23 / 訂正認容インバータ装置
    共通の審決分類: 121・H02M、537・H02M
  • 2024-700988異議申立 / 2025-06-12 / 訂正認容充電器
    共通の審決分類: 121・H02M、537・H02M
  • 2024-700550異議申立 / 2024-11-28 / 維持駆動装置、および、これを用いた電動パワーステアリング装置
    共通の審決分類: 121・H02M、537・H02M
  • 2023-701018異議申立 / 2024-07-09 / 訂正認容電圧又は電流を補償する装置
    共通の審決分類: 121・H02M、537・H02M
  • 2023-700778異議申立 / 2024-05-07 / 訂正認容制御装置、制御システム、制御方法、およびプログラム
    共通の審決分類: 121・H02M、537・H02M

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