特許異議申立
2023-701018
電圧又は電流を補償する装置
- 審判番号
- 2023-701018
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-561606
- 登録番号
- 7252376
- 請求日
- 2023年09月25日
- 審決日
- 2024年07月09日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】イーエム コアーテック
- 【権利者代理人】TRY国際弁理士法人
- 【権利者】ユニスト(ウルサン ナショナル インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー)
- 【権利者代理人】TRY国際弁理士法人
- 【異議申立人】角田 朗
- 審判長/審判官
- 審判長 吉田 美彦
- 審判官 山崎 慎一
- 審判官 山澤 宏
- 分類
- P1652.121-YAA(H02M) / P1652.536-YAA(H02M) / P1652.537-YAA(H02M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第126条第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7252376号発明「電圧又は電流を補償する装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7252376号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7252376号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7252376号の請求項1~5に係る特許についての出願は、2020年4月17日(パリ条約による優先権主張 2019年4月17日、同年同月23日、ともに韓国)を国際出願日とする出願であって、令和5年3月27日にその特許権の設定登録がされ、同年4月4日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、同年9月25日に特許異議申立人角田朗(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年12月15日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和6年3月15日に意見書の提出及び訂正の請求を行ったところ、同年4月24日に訂正請求書についての手続補正書(方式)が提出され(以下、この手続補正書(方式)によって訂正された訂正の請求を、「本件訂正請求」といい、当該手続補正書(方式)によって訂正された訂正請求書を、「訂正請求書」という。)、本件訂正請求に対して、申立人は、同年6月18日に意見書(以下、「申立人意見書」という。)を提出した。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)~(4)のとおりである。(なお、下線は、訂正請求書において特許権者によって付加されたものである。)
(1)訂正事項1(請求項1に係る訂正)
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1に対し、次のア~エに示す訂正事項(以下、それぞれ、「訂正事項1-1」~「訂正事項1-4」という。)からなる。
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記大電流経路上に配置される1次側と、前記1次側を流れる前記第1の電流を感知して前記第1の電流に対応する出力信号を生成する2次側とを含む検出変圧器」
とあるのを、
「前記大電流経路上に配置される検出変圧器の1次側と、前記検出変圧器の1次側を流れる前記第1の電流を感知して前記第1の電流に対応する出力信号を生成する検出変圧器の2次側とを含む検出変圧器」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2-5も同様に訂正する。
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に
「前記増幅電流に基づいて補償電流を生成し、前記補償電流を前記少なくとも2つ以上の大電流経路のそれぞれに流す補償部」
とあるのを、
「補償変圧器の1次側と、前記補償変圧器の1次側と絶縁され前記大電流経路に接続される補償変圧器の2次側とを含む補償変圧器を備え、前記増幅部と接続され前記補償変圧器の1次側を流れる前記増幅電流に基づいて補償電流を前記補償変圧器の2次側に誘導し、前記補償電流を前記少なくとも2つ以上の大電流経路のそれぞれに流す補償部」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2-5も同様に訂正する。
ウ 訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項1に
「前記出力信号を生成する前記検出変圧器の出力端に並列に接続される第1の外乱保護部、及び前記補償部の入力端に並列に接続される第2の外乱保護部」
とあるのを、
「前記出力信号を生成する前記検出変圧器の前記2次側に並列に接続される第1の外乱保護部、及び前記補償変圧器の前記1次側に並列に接続される第2の外乱保護部」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2-5も同様に訂正する。
エ 訂正事項1-4
特許請求の範囲の請求項1に
「前記検出変圧器の前記1次側の電流経路及び前記2次側の電流経路のそれぞれ」
とあるのを、
「前記検出変圧器の前記1次側の電流経路及び前記検出変圧器の前記2次側の電流経路のそれぞれ」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2-5も同様に訂正する。
(2)訂正事項2(請求項2に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項2に
「前記第1の外乱保護部及び前記第2の外乱保護部は、前記検出変圧器の出力端及び前記補償部の入力端に、所定の臨界電圧未満の電圧が印加される場合、第1のインピーダンスを有し、前記検出変圧器の出力端及び前記補償部の入力端に、前記所定の臨界電圧以上の電圧が印加される場合、前記第1のインピーダンスよりも低い第2のインピーダンスを有する、請求項1に記載のアクティブ補償装置。」
とあるのを、
「前記第1の外乱保護部及び前記第2の外乱保護部は、前記検出変圧器の前記2次側及び前記補償変圧器の前記1次側に、所定の臨界電圧未満の電圧が印加される場合、
第1のインピーダンスを有し、前記検出変圧器の前記2次側及び前記補償変圧器の前記1次側に、前記所定の臨界電圧以上の電圧が印加される場合、前記第1のインピーダンスよりも低い第2のインピーダンスを有する、請求項1に記載のアクティブ補償装置。」に訂正する。
(3)訂正事項3(請求項4に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項4に
「前記第1の外乱保護部において、前記1次側は、前記少なくとも2つ以上の大電流経路に印加された電圧に基づいて、前記2次側に誘導した臨界電圧以上の電圧を前記臨界電圧以下の電圧に制限し、前記増幅部に送信する、請求項1に記載のアクティブ補償装置。」
とあるのを、
「前記第1の外乱保護部において、前記検出変圧器の前記1次側は、前記少なくとも2つ以上の大電流経路に印加された電圧に基づいて、前記検出変圧器の前記2次側に誘導した臨界電圧以上の電圧を前記臨界電圧以下の電圧に制限し、前記増幅部に送信する、請求項1に記載のアクティブ補償装置。」に訂正する。
(4)訂正事項4(請求項5に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項5に
「前記補償部は、前記増幅部の出力端と前記増幅部の基準電位とを接続する経路上に配置される1次側と、前記補償部に含まれ、かつ前記大電流経路に接続される補償コンデンサ部と前記アクティブ補償装置の基準電位とを接続する経路上に配置される2次側とを含み、前記第2の外乱保護部において、前記2次側は、前記少なくとも2つ以上の大電流経路に印加された電圧に基づいて、前記1次側に誘導した臨界電圧以上の電圧を前記臨界電圧以下の電圧に制限し、前記増幅部に送信する、請求項1に記載のアクティブ補償装置。」
とあるのを、
「前記補償変圧器の1次側は、前記増幅部の出力端と前記増幅部の基準電位とを接続する経路上に配置され、前記補償変圧器の2次側は、前記大電流経路に接続される補償コンデンサ部と前記アクティブ補償装置の基準電位とを接続する経路上に配置され、前記第2の外乱保護部において、前記補償変圧器の前記2次側は、前記少なくとも2つ以上の大電流経路に印加された電圧に基づいて、前記補償変圧器の前記1次側に誘導した臨界電圧以上の電圧を前記臨界電圧以下の電圧に制限し、前記増幅部に送信する、請求項1に記載のアクティブ補償装置。」に訂正する。
(5)一群の請求項について
訂正前の請求項1~5について、請求項2~5はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項と認める。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1(訂正事項1-1~1-4)
ア 訂正の目的について
訂正事項1-1は、訂正前の請求項1に記載される「1次側」及び「2次側」について、それぞれ、「検出変圧器の1次側」及び「検出変圧器の2次側」と具体的に限定するものである。
訂正事項1-2は、訂正前の請求項1に記載される「増幅電流」につき、「補償変圧器の1次側と、前記補償変圧器の1次側と絶縁され前記大電流経路に接続される補償変圧器の2次側とを含む補償変圧器を備え、前記増幅部と接続され前記補償変圧器の1次側を流れる」ものであることを具体的に限定するとともに、「補償部」における「補償電流」につき、「前記補償変圧器の2次側に誘導」することを具体的に限定するものである。
訂正事項1-3は、訂正前の請求項1に記載される、「第1の外乱保護部」が接続される箇所を「前記検出変圧器の前記2次側」に、「第2の外乱保護部」が接続される箇所を「前記補償変圧器の前記1次側」と具体的に限定するものである。
訂正事項1-4は、訂正前の請求項1に記載される「前記2次側」につき、「前記検出変圧器の」ものであることを具体的に限定するものである。
以上、訂正事項1-1~1-4は、いずれも訂正前の請求項1に記載される「補償部」につき、具体的に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに示したとおり、訂正事項1-1~1-4を含む訂正事項1は、「補償部」の構成について、具体的に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、願書に添付した明細書の記載に基づいて導き出される構成である。
すなわち、訂正事項1-1については、願書に添付した明細書図面の図18に記載されている。
訂正事項1-2及び1-4については、願書に添付した明細書段落【0058】~【0059】に記載されている。
訂正事項1-3については、願書に添付した明細書段落【0208】及び図面の図18に記載されている。
以上の記載から、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載される「前記第1の外乱保護部及び前記第2の外乱保護部」につき、「所定の臨界電圧未満の電圧」又は「前記所定の臨界電圧以上の電圧」が印加される箇所を具体的に限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アにおいて指摘したとおり、訂正事項2は、「前記第1の外乱保護部及び前記第2の外乱保護部」につき、「所定の臨界電圧未満の電圧」又は「前記所定の臨界電圧以上の電圧」が印加される箇所を具体的に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、願書に添付した明細書図面の図18の記載に基づいて導き出される構成であり、訂正事項2は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項4に記載される、「前記1次側」及び「前記2次側」につき、それぞれ、「前記検出変圧器の前記1次側」及び「前記検出変圧器の前記2次側」と具体的に限定するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アにおいて指摘したとおり、訂正事項3は、訂正前の請求項4に記載される、「前記1次側」及び「前記2次側」につき、それぞれ、「前記検出変圧器の前記1次側」及び「前記検出変圧器の前記2次側」と具体的に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
ウ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、願書に添付した明細書図面の図18の記載に基づいて導き出される構成であり、訂正事項3は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項5に記載される、「前記補償部」に含まれる「1次側」及び「2次側」につき、それぞれ、「補償変圧器の1次側」及び「補償変圧器の2次側」と具体的に限定するとともに、「第2の外乱保護部」における、「前記2次側」及び「前記1次側」につき、それぞれ、「前記補償変圧器の前記2次側」及び「前記補償変圧器の前記1次側」と具体的に限定するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アにおいて指摘したとおり、訂正事項4は、訂正前の請求項5に記載される、「前記補償部」に含まれる「1次側」及び「2次側」につき、それぞれ、「補償変圧器の1次側」及び「補償変圧器の2次側」と具体的に限定するとともに、「第2の外乱保護部」における、「前記2次側」及び「前記1次側」につき、それぞれ、「前記補償変圧器の前記2次側」及び「前記補償変圧器の前記1次側」と具体的に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、願書に添付した明細書図面の図18の記載に基づいて導き出される構成であり、訂正事項4は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
3 独立特許要件について
本件異議申立事件においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~5に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正事項1~4による訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるところ、訂正後の請求項1~5に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(「独立特許要件」)は課されない。
4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件訂正請求により訂正された請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、各構成要件の前に付した、「1A」等の記号は、説明のために当審で付加したものであり、それぞれ、「構成要件1A」などということがある。
1 本件特許発明1
1A 第1の装置に接続される少なくとも2つ以上の大電流経路のそれぞれに、共通モード(Common Mode)で入力される第1の電流を能動的に補償するアクティブ補償装置であって、
1B 第2の装置によって供給される第2の電流を前記第1の装置に送信する少なくとも2つ以上の大電流経路と、
1C 前記大電流経路上に配置される検出変圧器の1次側と、前記検出変圧器の1次側を流れる前記第1の電流を感知して前記第1の電流に対応する出力信号を生成する検出変圧器の2次側とを含む検出変圧器と、
1D 前記検出変圧器の出力信号を増幅し、増幅電流を生成する増幅部と、
1E 補償変圧器の1次側と、前記補償変圧器の1次側と絶縁され前記大電流経路に接続される補償変圧器の2次側とを含む補償変圧器を備え、前記増幅部と接続され前記補償変圧器の1次側を流れる前記増幅電流に基づいて補償電流を前記補償変圧器の2次側に誘導し、前記補償電流を前記少なくとも2つ以上の大電流経路のそれぞれに流す補償部と、
1F 前記出力信号を生成する前記検出変圧器の前記2次側に並列に接続される第1の外乱保護部、及び前記補償変圧器の前記1次側に並列に接続される第2の外乱保護部と、を備え、
1G 前記第1の外乱保護部及び前記第2の外乱保護部は、過渡電圧サプレッサ(TVS(Transient Voltage Suppression)ダイオード素子を含み、
1H 前記TVSダイオード素子の接合容量(junction capacitance)は、数百pF以下であり、
1I 前記検出変圧器の前記1次側の電流経路及び前記検出変圧器の前記2次側の電流経路のそれぞれは、コアの中央ホールを1回だけ通過し又は前記コアに1回だけ巻き取られるアクティブ補償装置。
2 本件特許発明2
2A 前記第1の外乱保護部及び前記第2の外乱保護部は、
2B 前記検出変圧器の前記2次側及び前記補償変圧器の前記1次側に、所定の臨界電圧未満の電圧が印加される場合、第1のインピーダンスを有し、
2C 前記検出変圧器の前記2次側及び前記補償変圧器の前記1次側に、前記所定の臨界電圧以上の電圧が印加される場合、前記第1のインピーダンスよりも低い第2のインピーダンスを有する、請求項1に記載のアクティブ補償装置。
3 本件特許発明3
3A 前記コアは開閉可能なクランプ構造である、請求項1に記載のアクティブ補償装置。
4 本件特許発明4
4A 前記第1の外乱保護部において、
4B 前記検出変圧器の前記1次側は、前記少なくとも2つ以上の大電流経路に印加された電圧に基づいて、前記検出変圧器の前記2次側に誘導した臨界電圧以上の電圧を前記臨界電圧以下の電圧に制限し、前記増幅部に送信する、請求項1に記載のアクティブ補償装置。
5 本件特許発明5
5A 前記補償変圧器の1次側は、前記増幅部の出力端と前記増幅部の基準電位とを接続する経路上に配置され、
5B 前記補償変圧器の2次側は、前記大電流経路に接続される補償コンデンサ部と前記アクティブ補償装置の基準電位とを接続する経路上に配置され、
5C 前記第2の外乱保護部において、
5D 前記補償変圧器の前記2次側は、前記少なくとも2つ以上の大電流経路に印加された電圧に基づいて、前記補償変圧器の前記1次側に誘導した臨界電圧以上の電圧を前記臨界電圧以下の電圧に制限し、前記増幅部に送信する、請求項1に記載のアクティブ補償装置。
第4 異議申立理由の概要
申立人は、以下の証拠(甲第1号証~甲第9号証)を提出し、本件特許の請求項1~4に係る発明は、以下の1に示す理由により、本件特許の請求項1~5に係る発明は、以下の2~4に示す理由により、取り消すべきものである旨主張する。
1 特許法第29条第2項(申立理由1)
(1)申立理由1-1
本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項、及び甲第3号証~甲第7号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「申立理由1-1」という。
(2)申立理由1-2
本件特許の請求項2及び4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項、及び甲第3号証~甲第8号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「申立理由1-2」という。
(3)申立理由1-3
本件特許の請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項、並びに甲第3号証~甲第7号証及び甲第9号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「申立理由1-3」という。
(証拠)
甲第1号証 : 特開2005-124339号公報
甲第2号証 : 特開2004-032885号公報
甲第3号証 : 特開2010-057268号公報
甲第4号証 : 米国特許出願公開第2016/0013638号明細書
甲第5号証 : 特開2006-006038号公報
甲第6号証 : 国際公開第2018/109801号
甲第7号証 : 国際公開第2018/236570号
甲第8号証 : 国際公開第2018/113346号
甲第9号証 : 特開2005-143216号公報
以降において、上記甲第1号証~甲第9号証の各々を、「甲1」~「甲9」という場合がある。
2 特許法第36条第4項第1号(申立理由2)
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件特許の請求項1~5に係る発明につき、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず、本件特許の請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「申立理由2」という。
3 特許法第36条第6項第2号(申立理由3)
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5の記載は明確でなく、本件特許の請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してなされたものであるので、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「申立理由3」という。
4 特許法第36条第6項第1号(申立理由4)
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5記載された事項は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、本件特許の請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものであるので、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「申立理由4」という。
第5 各証拠に記載された事項
1 甲第1号証
(1)甲1に記載された事項
甲1には、次のア~クに示す事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)
ア 「【0020】
(実施形態1)
実施形態1に係る電力変換装置の構成を図1に示す。
本実施形態1に係る電力変換装置は、ノイズフィルタ部1と、整流平滑回路部2と、電力変換回路部3と、ノイズ低減回路部4と、を備える。
【0021】
ノイズフィルタ部1は、コンデンサC1、C2、C3、C4と、チョークコイルL1と、を備えている。
コンデンサC1、C2は、ノーマルモードノイズを減衰させるアクロスザラインコンデンサであり、交流電源5の一対の電源線であるラインE1とE2との間に接続されている。
コンデンサC3、C4は、コモンモードノイズを低減させるためのコンデンサであり、ラインE2、E1と接地ラインとの間にそれぞれ接続されている。」
イ 「【0023】
整流平滑回路部2は、整流回路11と、コンデンサC5と、からなる。
整流回路11は、交流電源5から供給された交流電圧を整流するものであり、ラインE1とラインE2とに接続されている。この整流回路11は、例えば、4つのダイオードからなるブリッジ整流回路によって構成されている。
…中略…
【0025】
電力変換回路部3は、所定の直流電力を所定の電圧の直流電力に変換し、直流電圧を負荷R0に供給するものであり、トランスTと、スイッチング素子Q1と、ダイオードD1,D2と、チョークコイルL2と、コンデンサC6と、を備え、フォワードコンバータを構成している。」
ウ 「【0032】
ノイズ低減回路部4は、ノイズを低減するための回路部であり、零相変流器21と、増幅回路22と、を備える。
【0033】
零相変流器21は、ラインE1、E2間の電流の差を検出することにより、漏れ電流を検出するものである。
【0034】
漏れ電流によってラインE1、E2間で電流差が生ずる理由は、以下の通りである。もし、ノイズの発生がなく、浮遊容量も存在しなければ、ラインE1、ラインE2には、それぞれ、電流値が等しく向きが逆向きの電流が流れる。ノイズが発生すると、このノイズは、ノイズの発生源に接続されたラインに重畳し、各ラインに伝播する。また、浮遊容量があると、この浮遊容量も、位置によってばらつきがある。このノイズの伝播と浮遊容量のばらつきにより、各ライン間で電流の不平衡が生ずる。また、コンデンサC3、C4があると、コンデンサC3、C4を介して接地ラインに漏れ電流が流れ、各ライン間での電流の不平衡は、ラインE1、E2に流れる電流の差となって現れてくる。
【0035】
この電流の差を検出する零相変流器21の等価回路及び1、2次巻線の構成を図2(a)、(b)に示す。零相変流器21は、図2(b)に示すように、円筒形状を有する磁芯100aを備える。零相変流器21は、この磁芯100aの孔に、ラインE1、E2を、2次巻線n21とともに貫通させることによって構成される。従って、ラインE1、E2は、1次巻線n11に対応し、1次巻線n11、2次巻線n21は、ともに巻数1となり、1次巻線n11と2次巻線n21との巻数比は1になる。
【0036】
磁芯100aには、1次及び2次巻線n11、n21がともに巻数1であっても、ラインE1、E2の電流差によって飽和しない程度の透磁率、断面積のものが用いられる。このように零相変流器21が構成されることによって、大電力用の電力変換装置にも、この零相変流器21の使用が可能となる。
【0037】
零相変流器21の2次巻線の端子P3、P4は、それぞれ、トランジスタQ11、Q12のエミッタおよびベースに接続される。
【0038】
零相変流器21の1次巻線n11には、図2(a)に示すように、ラインE1とE2とに流れる電流の差として1次電流I1が流れ、2次巻線n21には、1次電流I1に基づいて電流I2が誘起される。図2(a)に示すように、2次巻線n21には、この誘起電流I2が接地ラインへと流れる。
【0039】
次に、この漏れ電流を相殺する原理を図3に基づいて説明する。
尚、この図3において、コンデンサC51、C52は、それぞれ、負荷R0の静電容量、コモンモードノイズ用のコンデンサC3に相当するものである。また、ダイオードD51、スイッチSWは、それぞれ、図1の整流回路11、スイッチング素子Q1に相当するものである。また、漏れ電流Is1、Is2は、それぞれ、スイッチSWのスイッチングにより交流電源5から流入する漏れ電流、電力変換装置内で伝播する漏れ電流を示す。
【0040】
本実施形態1に係る電力変換装置は、零相変流器21が検出した漏れ電流に対応する補償電流Irを、零相変流器21の検出点よりも交流電源5側の接地ラインに供給する。
【0041】
即ち、本実施形態1に係る電力変換装置は、零相変流器21の漏れ電流Is2の検出点をbとすると、その検出電流に基づいて供給する補償電流Irの注入点をaとする。
【0042】
このように構成された場合、次の関係式が成り立つようにする。
is1-A2×ir=0
但し、A2:増幅回路AMPの増幅率
従って、
ir=A2×is2
【0043】
この式が示すように、漏れ電流Is1を補償電流Irで相殺するためには、増幅回路AMPの増幅率A2を1にすればよく、増幅率A2は低くてもよく、増幅回路の発振といった不都合は生じない。
【0044】
但し、増幅率が正確に1になるように増幅回路22を構成する必要がある。
増幅率が正確に1になるように、増幅回路22をオペアンプ等を用いて構成すると、増幅回路22の構成が複雑になる。本実施形態1では、図1に示すように、簡易な構成で増幅率が1となるように増幅回路22が構成されている。
【0045】
増幅回路22は、零相変流器21の2次巻線n21で発生した誘起電流I2を増幅するものであり、トランジスタQ11、Q12と、コンデンサC8と、からなる。」
エ 「【0048】
コンデンサC8は、補償電流を接地ラインに供給するためのものであり、トランジスタQ11、Q12のベースと接地ラインとの間に接続されている。」
オ 「【0066】
また、零相変流器21が電力変換装置内で伝播する漏れ電流を検出し、補償電流Irを、零相変流器21の検出点よりも交流電源5側の接地ラインに、漏れ電流を相殺する方向に供給するようにした。」
カ 「図1
[図:0001415282000001.jpg]
」
キ 「図2
[図:0001415282000002.jpg]
」
ク 「図3
[図:0001415282000003.jpg]
」
(2)甲1発明
上記(1)の記載事項(下線部)から、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「ノイズフィルタ部1と、整流平滑回路部2と、電力変換回路部3と、ノイズ低減回路部4と、を備えた電力変換装置であって(【0020】、図1)、
ノイズフィルタ部1は、コンデンサC1、C2、C3、C4とを備え、コンデンサC1、C2は、ノーマルモードノイズを減衰させるアクロスザラインコンデンサであり、交流電源5の一対の電源線であるラインE1とE2との間に接続され、コンデンサC3、C4は、コモンモードノイズを低減させるためのコンデンサであり、ラインE2、E1と接地ラインとの間にそれぞれ接続され(【0021】)、
整流平滑回路部2は、整流回路11と、コンデンサC5と、からなり(【0023】)、
電力変換回路部3は、所定の直流電力を所定の電圧の直流電力に変換し、直流電圧を負荷R0に供給し(【0025】)、
ノイズ低減回路部4は、ノイズを低減するための回路部であり、零相変流器21と、増幅回路22と、を備え(【0032】)、
零相変流器21は、ラインE1、E2間の電流の差を検出することにより、漏れ電流を検出し(【0033】)、
ラインE1、E2間でノイズが発生すると、このノイズは、ノイズの発生源に接続されたラインに重畳し、各ラインに伝播し、また、浮遊容量があると、この浮遊容量も、位置によってばらつきがあり、このノイズの伝播と浮遊容量のばらつきにより、各ライン間で電流の不平衡が生じ、コンデンサC3、C4があると、コンデンサC3、C4を介して接地ラインに漏れ電流が流れ、各ライン間での電流の不平衡は、ラインE1、E2に流れる電流の差となって現れるため電流差が生じ(【0034】)、
零相変流器21は、円筒形状を有する磁芯100aを備え、この磁芯100aの孔に、ラインE1、E2を、2次巻線n21とともに貫通させることによって構成され、ラインE1、E2は、1次巻線n11に対応し、1次巻線n11、2次巻線n21は、ともに巻数1となり、1次巻線n11と2次巻線n21との巻数比は1になり(【0035】、図2)、磁芯100aには、1次及び2次巻線n11、n21がともに巻数1であっても、ラインE1、E2の電流差によって飽和しない程度の透磁率、断面積のものが用いられ(【0036】)、
零相変流器21の2次巻線の端子P3、P4は、それぞれ、トランジスタQ11、Q12のエミッタおよびベースに接続され(【0037】)、
零相変流器21の1次巻線n11には、ラインE1とE2とに流れる電流の差として1次電流I1が流れ、2次巻線n21には、1次電流I1に基づいて電流I2が誘起され、2次巻線n21には、この誘起電流I2が接地ラインへと流れ(【0038】、図2)、漏れ電流Is1、Is2は、それぞれ、スイッチSWのスイッチングにより交流電源5から流入する漏れ電流、電力変換装置内で伝播する漏れ電流を示し(【0039】、図3)、
電力変換装置は、零相変流器21が検出した漏れ電流に対応する補償電流Irを、零相変流器21の検出点よりも交流電源5側の接地ラインに供給し(【0040】)、
漏れ電流Is1を補償電流Irで相殺するために(【0043】)増幅率が1となるように増幅回路22が構成され(【0044】)、
増幅回路22は、零相変流器21の2次巻線n21で発生した誘起電流I2を増幅するものであり、トランジスタQ11、Q12と、コンデンサC8と、からなり(【0045】)、
コンデンサC8は、補償電流を接地ラインに供給するためのものであり、トランジスタQ11、Q12のベースと接地ラインとの間に接続され(【0048】)、
零相変流器21が電力変換装置内で伝播する漏れ電流を検出し、補償電流Irを、零相変流器21の検出点よりも交流電源5側の接地ラインに、漏れ電流を相殺する方向に供給するようにした(【0066】)
電力変換装置。」
2 甲第2号証
(1)甲2に記載された事項
甲2には次の事項が記載されている。
ア 「【0040】
零相変流器13は、磁芯13aと2次巻線n21とを備える図2(b)に示す貫通形変流器13bに、図2(c)に示すようにラインE1,E2を磁芯13aに巻き回して構成される。」
イ 「図2
[図:0001415282000004.jpg]
」
(2)甲2記載事項
上記(1)の記載から、甲2には次の事項(以下、「甲2記載事項」という。)が記載されているといえる。
「ラインE1、E2を零相変流器の磁芯に1回だけ巻き取ること。」
3 甲第3号証
(1)甲3に記載された事項
甲3には次の事項が記載されている。
ア 「【0018】
図1において、三相交流電源1の交流出力は、伝導性ノイズを測定するために設けられたLISN (line impedance stabilization network; 擬似電源回路網)2と、ケーブル3とを介して整流器4に入力され、この整流器4によって直流に変換される。そして、整流器4の直流出力は、平滑用コンデンサ5によって平滑された後、電圧形PWMインバータ6に入力され、このPWMインバータ6に設けられた電力用半導体素子のスイッチング動作によって三相の交流電圧に変換される。そして、このインバータ6の三相交流出力が誘導電動機7に供給される。なお、誘導電動機7のフレームは接地線を介して接地端子に接続されている。
【0019】
制御電圧源8は、コモンモードトランス9と、プッシュプル形のエミッタフォロワ回路10と、オペレーショナルアンプ11と、エミッタフォロワ回路10およびオペレーショナルアンプ11に電源を供給する正側電源12、負側電源13とを備えている。
コモンモードトランス9は、一次コイルが電源12、13の中性点とエミッタフォロワ回路10の出力との間に介装され、二次コイルがケーブル3の途中に介装されている。エミッタフォロワ回路10は、コンプリメンタリトランジスタTr1、Tr2によって構成され、その入力にオペレーショナルアンプ11の出力が接続されている。オペレーショナルアンプ11は、接地ラインが電源12、13の中性点と接続されている。
【0020】
次に、保護回路15について説明する。上記三相ケーブル3には、互いに等しい容量を有する3つの接地コンデンサ14の一端が接続されている。保護回路15は、上記各接地コンデンサ14の他端と接地点との間に介装された分圧用コンデンサ16と、この分圧用コンデンサ16に並列接続された分圧用コンデンサ17,18の直列回路と、分圧用コンデンサ17に並列接続されたツェナダイオード19,20の直列回路とを備えている。ツェナダイオード19,20は、互いの方向が逆となる形態で接続されているので、正負の過大電圧がオペレーショナルアンプ11の入力に加わるのを防止する。なお、接地コンデンサ14は、通常は設置点に直接接続されるが、本実施形態ではこの接地コンデンサ14をコモンモード電圧の検出手段として用いているので、上記するように、分圧用コンデンサ16~18を介して接地されている。
なお、この保護回路15は、接地コンデンサ14で検出されるコモンモード電圧によってオペレーショナルアンプ11、トランジスタTr1,Tr2などの能動素子が破壊されるのを防止するために設けられている。
…中略…
【0025】
上記PWMインバータ6の浮遊容量Cbは非常に小さいので、接地コンデンサ14と電動機の浮遊容量Cmは直列に繋がっていると見なすことができる。従って、接地コンデンサ14で検出されるコモンモード電圧をV1とすると、このコモンモード電圧V1は、PWMインバータ6から出力されるコモンモード電圧Vinvを接地コンデンサ14(Cy)と電動機の浮遊容量Cmとで分圧したものとなる。つまり、電圧V1とVinvにはV1<Vinvという関係が成立する。
コモンモードトランス9は、接地コンデンサ14で検出される電圧V1とは極性が逆で大きさが等しい電圧V2を二次巻線に誘起し、この電圧V2によって電圧V1を打ち消すので、電源1側への漏れ電流I1,I2およびI3(伝導性ノイズ)を低減もしくはなくすことができる。そして、図2の等価回路から明らかなように、電源1側での漏れ電流の低減は、結果的に電動機7の漏れ電流Imも低減することになる。」
イ 「図1
[図:0001415282000005.jpg]
」
(2)甲3記載事項
上記(1)の記載から、甲3には次の事項(以下、「甲3記載事項」という。)が記載されているといえる。
「互いの方向が逆となる形態で接続されているツェナダイオード19,20の直列回路によって、過大電圧がオペレーショナルアンプ11の入力に加わるのを防止し、
コモンモードトランス9は、接地コンデンサ14で検出される電圧V1とは極性が逆で大きさが等しい電圧V2を二次巻線に誘起し、この電圧V2によって電圧V1を打ち消すので、電源1側への漏れ電流I1,I2およびI3(伝導性ノイズ)を低減もしくはなくすことができること。」
4 甲第4号証
(1)甲4に記載された事項
甲4には次の事項が記載されている。
ア 「[0024]Description is made with respect to various embodiments in a specific context, namely integrated circuits (ICs), and more particularly, transient voltage, including electrostatic discharge (ESD) and surge event, protection devices and circuits. Some of the various embodiments described herein include ESD protection components, transient voltage suppression (TVS) diodes, and single stage ESD protection devices. In other embodiments, aspects may also be applied to other applications involving any type of ESD circuit according to any fashion as known in the art. Further, the terms transient voltage, ESD, and surge, are used repeatedly herein to describe generic voltage transients or specific known types of voltage transients. It should be understood that embodiment protection circuits described herein may be applied to protecting components or devices from any type of voltage transient including ESD events and surge events as defined in numerous standards and understood by those of skill in the art. Thus, description in reference to a specific voltage transient, such as an ESD event or a surge event, may also be applied to any other voltage transients.
[0025]According to various embodiments, a single stage ESD protection circuit is disclosed which maintains high performance and includes low parasitic capacitance and decreased area. In the semiconductor industry, the feature size or dimension is continually decreasing. As a result of the feature size shrinking with each new technology node, the ESD sensitivity of semiconductor circuits is simultaneously increasing. According to various embodiments, efficient ESD protection circuits are disclosed herein that address the increasing sensitivity of semiconductor circuits while reducing detrimental effects on signal integrity (SI). According to some examples, such single stage ESD protection circuits are especially useful for high-speed signal lines, audio output stages, low noise amplifiers, or other highly ESD sensitive signal lines, for example. According to various embodiments described herein in reference to the figures, numerous advantages will be apparent to one of skill in the art. The ESD protection circuits described herein may be applied to any type of voltage transient protection, such as surge event protection, for example.
[0026]FIG. 1a illustrates a system block diagram of an embodiment ESD protection system 100 including a single stage ESD protection circuit 102 and a device under protection (DUP) 104. According to various embodiments, each ESD stage provides a path to ground through a discharge or surge device. Thus, single stage ESD protection circuit 102 provides a single current path to ground through a single discharge or surge device, such as a transient voltage suppression (TVS) diode. In various embodiments, input signals intended for DUP 104 first pass through single stage ESD protection circuit 102. For this reason, during normal operation, it is advantageous that an ESD protection circuit introduces minimal impedance, including resistance and parasitic capacitance, compared to an ESD circuit having more than one stage. Thus, single stage ESD protection circuit 102 includes a minimal impedance. During a transient voltage event, such as an ESD or surge event, when an ESD or a surge current is received at an input node IN, single stage ESD protection circuit 102 clamps the voltage at output node OUT to a lower voltage by diverting a major portion IDIS of the ESD current to ground.
[0027]In various embodiments, DUP 104 may be any circuit being protected from ESD or surge events and may include some additional ESD protection. For example, DUP 104 includes an ESD circuit capable of protecting DUP 104 from small magnitude ESD events at node OUT (such as before single stage ESD protection circuit 102 is coupled to node OUT). Such smaller events may include human body model (HBM) level ESD events defined by the ANSI/ESDA/JEDEC JS-001 standard, for example. In comparison, single stage ESD protection circuit 102 may be capable of protecting DUP 104 from large magnitude ESD events, such as system level ESD events defined by, e.g., the IEC 61000-4-2 standard.
[0028]In some embodiments, the ESD protection circuit is also capable of protecting DUP 104 from larger surge events defined by the IEC61000-4-5 standard. As is described further herein below, ESD protection system 100 may include numerous components with numerous protected nodes and numerous ICs with numerous input or output pins.
[0029]FIG. 1b illustrates a schematic diagram of an embodiment ESD protection system 101 that is an implementation of ESD protection system 100 shown in FIG. 1a. According to various embodiments, ESD protection system 101 includes ESD diode 106, resistor 108, and DUP 104. In such embodiments, ESD protection circuit 102 as described in FIG. 1a is implemented as ESD diode 106 and resistor 108. During normal operation, input signals on input node IN pass through resistor 108 to DUP 104. During an ESD event, an ESD current IESD is injected into input node IN. A first current I1, which is the major portion of ESD current IESD, is conducted to ground through ESD diode 106. The remainder of ESD current IESD is conducted through resistor 108 to DUP 104 as a second current I2. The majority of the second current I2 is conducted to ground through second ESD diode 105 included in DUP 104.
[0030]In various embodiments, ESD diode 106 is any type of transient voltage suppression (TVS) diode. As discussed above, ESD diode 106 is capable of conducting a large system level ESD current to ground. For example, ESD diode 106 may be capable of discharging a 20 kV surge to ground. In other embodiments, ESD diode 106 is capable of discharging an 8 kV surge to ground. Further, the second ESD diode 105 is capable of conducting smaller HBM level ESD currents to ground. ESD diode 106 may be a discrete or external high level ESD protection component on a separate IC while ESD diode 105 is a semiconductor component integrated in DUP 104, which may be on a single IC. As a portion of DUP 104, ESD diode 105 may only be capable of protecting DUP 104 from HBM level ESD events. Thus, ESD diode 106 may be a stronger or more robust ESD component designed to withstand and dissipate transient voltages as high as 15 or 30 kV while ESD diode 105 may be a less robust ESD component designed as a portion of DUP 104 to withstand and dissipate HBM level transient voltages of about 2 kV. In some embodiments, ESD diode 105 may be able withstand transient voltages ranging from 2 kV up to 10 kV. In other embodiments, each ESD component may dissipate higher or lower transient voltages. In various embodiments, the dynamic on resistance Rdyn of ESD diode 105 is larger than the on resistance of ESD diode 106. In a specific embodiment, the dynamic on resistance Rdyn of ESD diode 106 is between 100 and 500 m while the dynamic on resistance Rdyn of ESD diode 105 is between 1 and 5. In another specific example, the dynamic on resistance Rdyn of ESD diode 106 may range as high as 1.5 while the dynamic on resistance Rdyn of ESD diode 105 is greater than 1.5 and less than 5. Alternatively, the dynamic on resistance Rdyn for ESD diodes 105 and 106 may be outside these ranges.」
(当審訳:
「[0024]特定の状況における様々な実施形態、すなわち集積回路(IC)、より具体的には、静電気放電(ESD)及びサージ事象を含む過渡電圧、保護デバイス及び回路に関して説明する。本明細書で説明されるさまざまな実施形態のいくつかには、ESD保護コンポーネント、過渡電圧抑制(TVS)ダイオード、及び単段ESD保護デバイスが含まれる。他の実施形態では、態様は、当技術分野で知られている任意の方式による任意のタイプのESD回路を伴う他の用途にも適用され得る。さらに、過渡電圧、ESD、及びサージという用語は、一般的な過渡電圧又は特定の既知のタイプの過渡電圧を説明するために、本明細書で繰り返し使用される。本明細書に記載される実施形態の保護回路は、多数の規格で定義され当業者によって理解されるように、ESD事象及びサージ事象を含む任意のタイプの電圧過渡現象からコンポーネントまたはデバイスを保護するために適用され得ることを理解されたい。したがって、ESD現象又はサージ現象などの特定の電圧過渡現象に関する説明は、他の電圧過渡現象にも適用できる。
[0025]様々な実施形態によれば、高性能を維持し及び低い寄生容量及び減少した面積を含む単段ESD保護回路が開示される。半導体業界では形状サイズ又は寸法が継続的に縮小している。新しい技術が登場するたびに形状サイズが縮小した結果、半導体回路のESD感度も同時に増加している。様々な実施形態によれば、シグナルインテグリティ(SI)に対する悪影響を低減しながら、半導体回路の感度の増大に対処する効率的なESD保護回路が本明細書に開示される。いくつかの例によれば、そのような単段ESD保護回路は、例えば高速信号線、オーディオ出力段、低雑音増幅器、又は他の非常にESDに敏感な信号線に有用である。図面を参照して本明細書に記載される様々な実施形態によれば、当業者には多くの利点が明らかとなるであろう。本明細書で説明するESD保護回路、例えばサージ事象保護など、あらゆる種類の電圧過渡保護に適用することができる。
[0026]図1aは、単段ESD保護回路102及び保護対象デバイス(DUP)104を含む一実施形態のESD保護システム100のシステムブロック図を示す。様々な実施形態によれば、各ESDステージは、放電又はサージ装置を介してアースヘの経路を提供する。したがって、単段ESD保護回路102は、過渡電圧抑制(TVS)ダイオードなどの単一の放電又はサージ装置を介してアースヘの単一の電流経路を提供する。様々な実施形態において、DUP104に向けられた入力信号は、まず単段ESD保護回路102を通過する。このため、通常動作中、ESD保護回路は、複数の段を有するESD回路と比較して、抵抗及び寄生容量を含む最小限のインピーダンスを導入することが有利である。したがって、単段ESD保護回路102は最小限のインピーダンスを含む。ESD又はサージ事象などの過渡電圧事象中に、ESD又はサージ電流が入カノードINで受け取られると、単段ESD保護回路102は、ESD電流の大部分IDISをグランドに流すことによって、出力ノードOUTの電圧をより低い電圧にクランプする。
[0027]様々な実施形態において、DUP104は、ESD又はサージ事象から保護される任意の回路であってもよく、何らかの追加のESD保護を含んでもよい。例えば、DUP104は、(単段ESD保護回路102がノードOUTに結合される前など)ノードOUTにおける小さな大きさのESD事象からDUP104を保護することができるESD回路を含む。このような小規模な事象には、例えば、ANSI/ESDA/JEDECJS-001規格によって定義された人体モデル(HBM)レベルのESD事象が含まれる場合がある。比較すると、単段ESD保護回路102は、例えばIEC61000-4-2規格によって定義されるシステムレベルのESD事象などの大きな規模のESD事象からDUP104を保護することができる。
[0028]いくつかの実施形態では、ESD保護回路は、IEC61000-4-5規格によって定義されるより大きなサージ事象からDUP104を保護することもできる。以下でさらに説明するように、ESD保護システム100は、多数の保護ノードを有する多数のコンポーネントと、多数の入力又は出カピンを有する多数のICとを含むことができる。
[0029]図1bは、図1aに示されるESD保護システム100の実施形態であるESD保護システム101の実施形態の概略図を示す。様々な実施形態によれば、ESD保護システム101は、ESDダイオード106、抵抗器108、及びDUP104を含む。このような実施形態では、図1aで説明したようなESD保護回路102がESDダイオード106及び抵抗器108として実装される。通常動作中、入カノードIN上の入力信号は抵抗器108を通ってDUP104に流れる。ESD事象中、ESD電流IESDが入力ノードINに注入される。ESD電流IESDの大部分である第1の電流I1は、ESDダイオード106を介してグランドに伝導される。ESD電流IESDの残りは、抵抗器108を介して第2の電流I2としてDUP104に流れる。第2の電流I2の大部分は、DUP104に含まれる第2のESDダイオード105を介してグランドに伝導される。
[0030]様々な実施形態において、ESDダイオード106は、任意のタイプの過渡電圧抑制(TVS)ダイオードである。上で論じたように、ESDダイオード106は、大きなシステムレベルのESD電流をグランドに流すことができる。例えば、ESDダイオード106は、20kVのサージをアースに放電することができる。他の実施形態では、ESDダイオード106は、8kVのサージをアースに放電することができる。さらに、第2のESDダイオード105は、より小さいHBMレベルのESD電流をグランドに流すことができる。ESDダイオード106は、別個のIC上のディスクリート又は外部高レベルESD保護コンポーネントであり得るが、ESDダイオード105は、単一のIC上にあり得るDUP104に統合された半導体コンポーネントであり得る。DUP104の一部として、ESDダイオード105は、HBMレベルのESD事象からDUP104を保護することしかできない場合がある。したがって、ESDダイオード106は、15kV又は30kVもの高さの過渡電圧に耐えて散逸するように設計された、より強力又はより堅牢なESDコンポーネントであり得る。一方、ESDダイオード105は、約2kVのHBMレベルの過渡電圧に耐えて放散するようにDUPl04の一部として設計された、それほど堅牢ではないESDコンポーネントであってもよい。いくつかの実施形態では、ESDダイオード105は、2kVからl0kVまでの範囲の過渡電圧に耐えることができる。他の実施形態では、各ESDコンポーネントは、より高い又はより低い過渡電圧を放散することができる。様々な実施形態において、ESDダイオード105の動的オン抵抗Rdynは、ESDダイオード106のオン抵抗よりも大きい。特定の実施形態では、ESDダイオード106の動的オン抵抗Rdynは100及び500mΩであり、ESDダイオード105の動的オン抵抗Rdynは1と5Ωの間である。別の特定の例では、ESDダイオード106の動的オン抵抗Rdynは1.5Ωまでの範囲であり得るが、ESDダイオード105の動的オン抵抗RdYnは1.5より大きく5Ωより小さい。あるいは、ESDダイオード105及び106の動的オン抵抗Rdynは、これらの範囲外であってもよい。」
イ 「[0041]FIGS. 4a, 4b, 4c, and 4d illustrate schematics of various embodiment ESD devices 110 as described in reference to FIG. 3. According to various embodiments, any of the ESD devices shown in FIG. 4a, 4b, 4c, or 4d may be included in ESD protection circuit 102. ESD device 110 may include a Zener diode, such as a TVS diode, as shown in FIG. 4a, ESD device 110 may include series connected opposing Zener diodes as shown in FIG. 4b, ESD device 110 may include a parallel diode structure as shown in FIG. 4c, or ESD device 110 may include a thyristor as shown in FIG. 4d. The parallel structure shown in FIG. 4c may include a first diode with a first orientation coupled in parallel with a second diode with a second orientation, opposite the first orientation. The second diode may also be coupled with a series connected opposing Zener diode. In various embodiments, the various ESD devices 110 may include bi-directional structures of two ESD devices each, with one ESD device coupled in each direction. In alternative embodiments, further combinations are also envisioned. The various blocking diodes may also be formed as 2 terminal or 3 terminal thyristors in various embodiments. In other embodiments, MOS transistors may be used as fast switching ESD devices in place of the blocking diodes described herein.」
(当審訳:
[0041]図4a、4b、4c、4dは、図3を参照して説明したさまざまな実施形態のESDデバイス110の概略図を示す。様々な実施形態によれば、図4a、4b、4c又は4dに示されるESDデバイスのいずれもESD保護回路102に含まれてもよい。ESD装置110は、図4aに示すように、TVSダイオードなどのツェナーダイオードを含むことができる。ESD装置110は、図4bに示すように、直列接続された対向するツェナーダイオードを含むことができる。ESDデバイス110は、図4cに示されるように並列ダイオード構造を含んでもよい。またはESDデバイス110は、図4dに示されるようにサイリスタを含んでもよい。図4cに示される並列構造は、第1の配向を有する第1のダイオードと、第1の配向とは反対の第2の配向を有する第2のダイオードとを並列に結合することができる。第2のダイオードは、直列接続された対向するツェナーダイオードと結合されてもよい。様々な実施形態において、様々なESD装置110は、各方向に1つのESD装置が結合された、それぞれ2つのESD装置の双方向構造を含み得る。代替実施形態では、さらなる組み合わせも想定される。さまざまなブロッキングダイオードは、さまざまな実施形態において、2端子又は3端子サイリスタとして形成されてもよい。他の実施形態では、本明細書で説明するブロッキングダイオードの代わりに、MOSトランジスタを高速スィッチングESDデバイスとして使用することができる。」
ウ 「図4
[図:0001415282000006.jpg]
」
5 甲第5号証
(1)甲5に記載された事項
甲5には次の事項が記載されている。
ア 「【0028】
インバータ1のU相とV相の出力点に分圧抵抗(R2)22,(R3)23を直列に接続して分圧するようにしてある。同接続点と抵抗(R3)23の他方とに並列に、RCフィルタを構成する抵抗(R1)24、コンデンサ(C1)25が接続されている。コンデンサ25の両端には、逆直列に接続した2つのツェナーダイオード(TD1)26,(TD2)27が接続されている。この2つのツェナーダイオード26,27の両端の電圧は、絶縁アンプ28の入力端に接続されている。絶縁アンプ28の出力は、AD変換器6-1の入力となるように接続されている。」
イ 「【0044】
本実施の形態はまた、電圧検出器4内に、抵抗(R1)24、コンデンサ(C1)25によるRCフィルタの出力電圧をリミットするツェナーダイオード26,27を備えている。RCフィルタのコンデンサ25の電圧がツェナーダイオードのクランプ電圧を超える場合、この電圧にリミットする。」
6 甲第6号証
(1)甲6に記載された事項
甲6には次の事項が記載されている。
ア 「[0042] 実施の形態3.
図12は、本発明の実施の形態3における増幅回路63を示す回路図である。本実施の形態3は、増幅回路63がアバランシェダイオード対636を有している点で、実施の形態1と相違する。本実施の形態3では、実施の形態1と同一の部分は同一の符号を付して説明を省略し、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
[0043] 本実施の形態3は、雷等のサージ電圧が印加された場合の対策が施された電力変換装置2について例示している。第1の交流電力の電線に雷等の大きなサージ電圧が重畳された場合、電流注入回路64が交流電力と絶縁されているものの、増幅回路63に大きな電圧が印加される。通例、サージ電圧対策として、大抵抗値を有する抵抗、大静電容量を有するコンデンサ、又はバリスタ等が使用される。しかし、増幅回路63は、高周波数成分を有するコモンモードノイズ電流を取り扱うため、大抵抗値を有する抵抗及び大静電容量を有するコンデンサを採用することは困難である。また、バリスタでは、効果が発揮されるまでに多大な時間を要する。
[0044] そこで、本実施の形態3では、図12に示すように、増幅回路63が、増幅回路63から出力される電流が流れる電線と共通電位514との間に設けられ、互いに逆方向に接続されたアバランシェダイオード対636を有している。ここで、アバランシェダイオード対636の数は、サージ電圧を共通電位514に回避させる電流量に基づいて決定される。
[0045] このように、本実施の形態3は、サージ電圧対策が施されているため、実施の形態1及び実施の形態2の効果に加えて、コモンモードノイズ電流対策とサージ電圧対策とを両立するという効果を得ることができる。なお、本実施の形態3は、アバランシェダイオード対536の代わりに、ツェナーダイオード対を用いても、同様の効果を奏する。」
イ 「図5
[図:0001415282000007.jpg]
」
ウ 「図12
[図:0001415282000008.jpg]
」
7 甲第7号証
(1)甲7に記載された事項
甲7には次の事項が記載されている。
ア 「[0035] FIG. 4 illustrates a transient signal protection configuration 400 that includes an active clamp circuit 414 for providing protection for an audio codec chip 410 that may include a pair of HPH PA channels, one for each channel in a stereo configuration. However, only one HPH PA, an HPH PA 412, is shown to avoid complicating the discussion. The HPH PA 412 is coupled to an audio codec chip output node 420 of the audio codec chip 410. Support circuitry outside of the audio codec chip 410 that is inline between an HPH port and the audio codec chip 410 includes a resistor 422 and a TVS diode 424.」
(当審訳:
[0035]図4は、ステレオ構成における各チャネルに1つずつ、一対のHPHPAチャネルを含み得るオーディオコーデックチップ410を保護するためのアクティブクランプ回路414を含む過渡信号保護構成400を示す。ただし、説明が複雑になるのを避けるために、HPHPA412という1つのHPHPAだけが示されている。HPHPA412は、オーディオコーデックチップ410のオーディオコーデックチップ出カノード420に結合される。HPHポートとオーディオコーデックチップ410との間にインラインであるオーディオコーデックチップ410の外部のサポート回路は、抵抗器422およびTVSダイオード424を含む。)
イ 「図4
[図:0001415282000009.jpg]
」
8 甲第8号証
(1)甲8に記載された事項
甲8には次の事項が記載されている。
ア 「
[図:0001415282000010.jpg]
」(4ページ3~6行)
(当審訳:
この用途では、TVSトランジスタ202のクランプ電圧は、接続ポートに伝送されるデータ信号の最大電圧よりも大きい。TVSトランジスタ202両端の電圧がクランプ電圧よりも大きいときは、TVSトランジスタ202のインピーダンスが瞬時に低くなり、その結果TVSトランジスタ202は導通状態になる。TVSトランジスタ202両端の電圧がクランプ電圧よりも小さいときは、TVSトランジスタ202のインピーダンスが瞬時に高くなり、その結果TVSトランジスタ202は非導通状態になる。)
イ 「
[図:0001415282000011.jpg]
」(4ページ8~17行)
(当審訳:
実際の適用工程では、複数のシナリオ、例えば、保護される装置が別の装置に接続されるシナリオ、または保護される回路と別の装置との間でデータ信号の伝送が開始されるシナリオでは、保護される装置内で比較的強いサージが生成される場合がある。保護される装置内で比較的強いサージが生成されると、サージはまずコンデンサ201を通過し、コンデンサ201は、サージのエネルギーを削減するために、サージの直流部をフィルタで除去することができる。コンデンサ201がサージの直流部をフィルタで除去した後も、サージはまだ比較的強いエネルギーを有する。結果として、TVSトランジスタ両端のサージが原因で生じた電圧は、TVSトランジスタ202のクランプ電圧よりも大きくなる。したがって、TVSトランジスタ202のインピーダンスが瞬時に極めて低くなり、その結果、TVSトランジスタ202は導通状態になる。TVSトランジスタ202は、インターフェースチップに並列に接続され、TVSトランジスタ202のインピーダンスは極めて低い。したがって、サージはインターフェースチップには流れずに、TVSトランジスタ202に流れる。サージがTVSトランジスタに流れると、サージはTVSトランジスタ202を通過した後に接地されるので、サージのエネルギーの大部分が接地される。この場合、TVSトランジスタ202は、TVSトランジスタ202両端の電圧を比較的低電圧に制限する。インターフェースチップは、TVSトランジスタ202に並列に接続される。したがって、インターフェースチップ両端の電圧は、TVSトランジスタ両端の電圧と等しい。)
ウ 「図1
[図:0001415282000012.jpg]
」
エ 「図2
[図:0001415282000013.jpg]
」
9 甲第9号証
(1)甲9に記載された事項
甲9には次の事項が記載されている。
ア 「【0003】
図5は一般的なインバータ制御装置の概略図を示しており、直流電源1はインバータ回路2へ直流電圧を供給し、トランジスタTr1~Tr6と逆並列接続されたダイオードd1~d6で構成されるインバータ回路2では、直流電圧をPWM制御によって交流に変換し、三相交流モータ3を運転する。インバータ回路2のトランジスタを駆動するPWM制御方式については、一般的なものであり、その説明および図5における駆動回路部分を省略する。
【0004】
直流を交流に変換する際のPWM出力電圧パルスにおける急峻な変化は、図5に示すモータケーブルの対地間浮遊容量C0やモータコイルの対フレーム間浮遊容量Cmを介して流れるコモンモード電流となり、モータに設置されたセンサ類の誤動作、インバータ制御装置自身の誤動作といった弊害を発生させている。このコモンモード電流は、インバータの出力側の電位が対地間で変動するコモンモード電圧によって発生する。」
イ 「【0011】
コモンモード電流を低減する手段として、各種フィルタが実用化されており、種類としてはLCRなどの受動素子を用いたパッシブ方式と半導体素子を用いたアクティブ方式がある。」
ウ 「【0014】
図9を用いて第二の従来例を説明する。図9は、電流形のアクティブ方式と呼ばれるものである。直流電源1のP側とN側ラインをクランプするように設置された電流センサ5は、P側電流とN側電流の不平衡電流、つまり、ケーブルやモータの浮遊容量を介して流れるコモンモード電流Ig1を検出する。直流ラインのP側とN側に接続されたプッシュプル型トランジスタ回路4は、コンデンサ6を介してモータフレームに接続される。なお、コンデンサ6は、直流成分をカットするために接続されている。電流センサ5で検出されたコモンモード電流は、トランジスタ回路4で増幅され、コンデンサを介して逆極性の電流Ig2をモータフレームに注入することで、Ig1+Ig2=0となりコモンモード電流をキャンセルしている。」
エ 「図5
[図:0001415282000014.jpg]
」
オ 「図9
[図:0001415282000015.jpg]
」
第6 取消理由通知の概要
訂正前特許請求の範囲の請求項1~5に対して、当審が通知した、令和5年12月15日付けの取消理由通知(以下、「取消理由通知」という。)の要旨は、次のとおりである。
1 本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が下記(1)~(3)の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号及び第6項第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(以下、「取消理由1」という。)
(1)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について(取消理由1-1)
請求項1には、「前記TVSダイオード素子の接合容量(junction capacitance)は、数百pF以下」(以下、「引用記載1」という。)と特定されているが、願書に添付した明細書及び図面には、引用記載1のうち、「TVSダイオード素子の接合容量」がどれくらいの範囲のものであれば、引用記載1に含まれるかについての記載が無く、引用記載1を含む本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明2~5を、当業者が容易にその実施をすることができる程度の記載が無い。
以下、この取消理由を「取消理由1-1」という。
(2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について(取消理由1-2)
請求項1には、上記引用記載1が特定されているところ、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、TVSダイオードの接合容量を数百pF以下どれほどの容量であれば、増幅部130Aの性能減少を最小限に抑えることができるのかについての記載は無く、したがって、本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明2~5は、願書に添付された明細書の発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。
以下、この取消理由を「取消理由1-2」という。
(3)特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について(取消理由1-3)
請求項1には、上記引用記載1が特定されているところ、TVSダイオードの接合容量が数百pF以下どの範囲(何pFまで)を意味するものか不明確であり、引用記載1を含む本件特許発明1、及び本件特許発明1を引用する本件特許発明2~5は、不明確である。
以下、この取消理由を「取消理由1-3」という。
2 本件特許発明1は、甲1に記載された発明及び甲3~甲7に記載された発明に基づいて、本件特許発明2及び4は、甲1に記載された発明及び甲3~甲8に記載された発明に基づいて、本件特許発明3は、甲1に記載された発明及び甲3~甲9に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により、取り消されるべきものである。(以下、「取消理由2」という。)
第7 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由1について
(1)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について(取消理由1-1)
特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明の記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなければならないことを規定するものであり、同号の要件を充足するためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があることを要する。
以下、この観点に立ち検討する。
ア 発明の詳細な説明の記載について
本件特許明細書等の発明の詳細な説明には、「前記TVSダイオード素子の接合容量(junction capacitance)」について、段落【0209】に、「第1及び第2の外乱保護素子11A及び12Aは、例えば、TVSダイオード素子を含んでもよい。このとき、TVSダイオード素子による増幅部130Aの性能減少を最小限に抑えるため、十分に低い(例えば、指定された値以下の)ダイオード接合容量(junction capacitance)を有するTVSダイオード素子が使用されてもよい。例えば、TVSダイオードの接合容量は、数百pF以下であってもよい。第1及び第2の外乱保護素子11A及び12AのTVSダイオードが低い接合容量を有しても、絶縁式構造により、その耐久性が確保され得る。」と記載されるとともに、同段落【0207】に、「例えば、雷サージなどの外部過電圧Sは、大電流経路111A及び112Aのうちの少なくとも1つに発生することがある。例えば、図18のように、第2の大電流経路112Aに外部過電圧Sが発生した場合、これは、第1の送信経路P1又は第2の送信経路P2を通して磁気エネルギーの形態で増幅部130Aに送信されてもよい。第1の送信経路P1は、検出変圧器120Aを通じた経路であり、第2の送信経路P2は、補償変圧器140Aを通じた経路を示す。増幅部130Aの能動素子は、外部の妨害を受けやすいため、保護装置が必要である。」と記載され、段落【0209】に記載された、「絶縁式構造」とは、この「検出変圧器120A」及び「補償変圧器140A」を介した構造を指すものと理解される。
イ 特許権者による意見書の釈明について
そして、特許権者は、訂正請求書と同時に提出した意見書において、訂正前の請求項1について訂正事項1による訂正を行ったことにより、「補償変圧器」が設けられることで、その絶縁構造及び磁気飽和現象により、非常に大きい外部過電圧が発生しても、増幅部側には限られたサイズのエネルギーしか送信されず、したがって、補償変圧器の1次側に並列に接続される第2の外乱保護部として用いられる、TVSダイオード素子は、十分に低い接合容量とすることが出来る旨、検出変圧器の2次側に並列に接続される第1の外乱保護部として用いられる、TVSダイオード素子も、十分に低い接合容量とすることが出来る旨の主張を行うと共に、「数百pF以下」との記載は、「数百pF以下であり0より大きい」ものを含むものであることを釈明した。
ウ むすび
上記本件特許明細書等の説明、及び、意見書における特許権者の釈明により、「接合容量(junction capacitance)」が「数百pF以下」であるとされる「TVSダイオード素子」を選択するにあたり、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要するほどに、発明の詳細な説明の記載の欠缺が認められるとまではいうことができない。
したがって、取消理由1-1に関する取消理由は解消した。
(2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について(取消理由1-2)
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立ち検討する。
ア 本件特許明細書等の記載について
本件特許明細書の段落【0026】、【0037】~【0038】及び【0203】~【0212】、並びに図1及び18には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0026】
図1は、本発明の一実施例に係るアクティブ補償装置100を含むシステムの構成を概略的に示す。アクティブ補償装置100は、第1の装置300から2つ以上の大電流経路111及び112を通して共通モード(CM(Common Mode))で入力される第1の電流I11及びI12(例えば、EMIノイズ電流)を能動的に補償してもよい。
…中略…
【0037】
補償部160は、増幅部130によって増幅された出力信号に基づいて補償電流を生成してもよい。補償部160の出力側は、大電流経路111及び112に補償電流IC1及びIC2を流すために大電流経路111及び112と接続されてもよいが、増幅部130とは絶縁され得る。例えば、補償部160は、上記の絶縁のために補償変圧器を含んでもよい。例えば、上記の補償変圧器の1次側には、増幅部130の出力信号が流れ、補償変圧器の2次側には、上記の出力信号に基づく補償電流が生成されてもよい。
【0038】
補償部160は、第1の電流I11及びI12を相殺させるために、2つ以上の大電流経路111及び112のそれぞれを通して補償電流IC1及びIC2を大電流経路111及び112に注入(inject)させたり、又は大電流経路111及び112から引き出したりしてもよい。一実施例によると、補償電流IC1及びIC2は、第1の電流I11及びI12と同じ大きさを有しかつ位相は反対であってもよい。ただし、これに限定されない。
…中略…
【0203】
図18は、本発明の一実施例に係る補償装置102Aを概略的に示す。電流補償装置102Aは、図2に示された補償装置100Aにおいて、外乱保護部13の例として、第1及び第2の外乱保護素子11A及び12Aのみを加えたものであってもよい。補償装置102Aは、上述した実施例に係る様々な補償装置又は増幅部の全てが適用され得る。第1及び第2の外乱保護素子11A及び12Aによる相異点を中心に説明する。
【0204】
図18を参照すると、補償装置102Aは、検出変圧器120A、増幅部130A、及び補償部160A(例えば、補償変圧器140A及び補償コンデンサ部150A)に加え、第1及び第2の外乱保護素子11A及び12Aを含んでもよい。
【0205】
第1の外乱保護素子11A及び第2の外乱保護素子12Aは、前述した第1の外乱保護部11及び第2の外乱保護部12の一例であってもよい。
【0206】
第1の外乱保護素子11A及び第2の外乱保護素子12Aは、TVS(Transient Voltage Suppression)ダイオード素子を含んでもよい。ただし、これに限定されない。
【0207】
例えば、雷サージなどの外部過電圧Sは、大電流経路111A及び112Aのうちの少なくとも1つに発生することがある。例えば、図18のように、第2の大電流経路112Aに外部過電圧Sが発生した場合、これは、第1の送信経路P1又は第2の送信経路P2を通して磁気エネルギーの形態で増幅部130Aに送信されてもよい。第1の送信経路P1は、検出変圧器120Aを通じた経路であり、第2の送信経路P2は、補償変圧器140Aを通じた経路を示す。増幅部130Aの能動素子は、外部の妨害を受けやすいため、保護装置が必要である。
【0208】
第1の外乱保護素子11Aは、第1の送信経路P1に送信される過電圧から増幅部130Aを保護するために、検出変圧器120Aの2次側122Aに並列に接続されてもよい。第2の外乱保護素子12Aは、第2の送信経路P2に送信される過電圧から増幅部130Aを保護するために、補償変圧器140Aの1次側141Aに並列に接続されてもよい。
【0209】
第1及び第2の外乱保護素子11A及び12Aは、例えば、TVSダイオード素子を含んでもよい。このとき、TVSダイオード素子による増幅部130Aの性能減少を最小限に抑えるため、十分に低い(例えば、指定された値以下の)ダイオード接合容量(junction capacitance)を有するTVSダイオード素子が使用されてもよい。例えば、TVSダイオードの接合容量は、数百pF以下であってもよい。第1及び第2の外乱保護素子11A及び12AのTVSダイオードが低い接合容量を有しても、絶縁式構造により、その耐久性が確保され得る。
【0210】
第1及び第2の外乱保護素子11A及び12A(例えば、TVSダイオード)は、降伏電圧(breakdown voltage)を有してもよい。例えば、第1の外乱保護素子11Aにかかる電圧が降伏電圧未満であるときに、第1の外乱保護素子11Aを通して電流が流れなくなってもよい。しかしながら、外部過電圧Sにより、第1の外乱保護素子11Aの両端に降伏電圧以上の電圧がかかると、第1の外乱保護素子11Aのインピーダンスが低くなり、第1の外乱保護素子11Aを通して電流が流れてもよい。第2の外乱保護素子12Aも、第1の外乱保護素子11Aと同様に動作してもよい。
【0211】
第1及び第2の外乱保護素子11A及び12Aは、増幅部130Aの入力端及び出力端のうちの少なくとも1つの所定の臨界電圧(例えば、降伏電圧)以上の電圧が印加される場合、上記の所定の臨界電圧以上の電圧による電力の少なくとも一部を消費してもよい。上記の所定の臨界電圧以上の電圧による電力の残りの少なくとも一部は、残りの素子(例えば、増幅部130Aに含まれる素子)によって消費されてもよい。
【0212】
一実施例によると、絶縁式構造、及び第1及び第2の外乱保護素子11A及び12Aの結合により、補償装置102Aは、任意のシステムにおいて、独立的なモジュールとして使用され得る。」
(イ)「図1
[図:0001415282000016.jpg]
」
(ウ)「図18
[図:0001415282000017.jpg]
」
上記(ア)~(ウ)の記載から、本件特許明細書等からは、次の事項を読み取ることができる。
「アクティブ補償装置は、第1の装置から2つ以上の大電流経路111及び112を通して共通モード(CM(Common Mode))で入力される第1の電流I11及びI12(例えば、EMIノイズ電流)を能動的に補償するものであって(【0026】、図1)、
補償部は、増幅部によって増幅された出力信号に基づいて補償電流を生成し、補償部の出力側は、大電流経路111及び112に補償電流IC1及びIC2を流すために大電流経路111及び112と接続され、増幅部とは絶縁され、補償部は、上記の絶縁のために補償変圧器を含み、補償変圧器の1次側には、増幅部の出力信号が流れ、補償変圧器の2次側には、上記の出力信号に基づく補償電流が生成され(【0037】)、
補償部は、第1の電流I11及びI12を相殺させるために、2つ以上の大電流経路111及び112のそれぞれを通して補償電流IC1及びIC2を大電流経路111及び112に注入(inject)させたり、又は大電流経路111及び112から引き出したりし(【0038】)、
補償装置102Aは、検出変圧器120A、増幅部130A、及び補償部160Aに加え、第1及び第2の外乱保護素子11A及び12Aを含み(【0203】~【0204】、図18)、
第1の外乱保護素子11A及び第2の外乱保護素子12Aは、TVS(Transient Voltage Suppression)ダイオード素子であって(【0206】)、
第1の外乱保護素子11Aは、第1の送信経路P1に送信される過電圧から増幅部130Aを保護するために、検出変圧器120Aの2次側122Aに並列に接続され、第2の外乱保護素子12Aは、第2の送信経路P2に送信される過電圧から増幅部130Aを保護するために、補償変圧器140Aの1次側141Aに並列に接続され(【0208】)、
TVSダイオード素子による増幅部130Aの性能減少を最小限に抑えるため、十分に低い(例えば、指定された値以下の)ダイオード接合容量(junction capacitance)を有するTVSダイオード素子が使用され、TVSダイオードの接合容量は、数百pF以下であり、第1及び第2の外乱保護素子11A及び12AのTVSダイオードが低い接合容量を有しても、絶縁式構造により、その耐久性が確保される(【0209】)こと。」
イ 特許請求の範囲の記載について
本件特許の特許請求の範囲には、上記第3の1~5に示した事項が記載されている。
ウ 本件特許発明1の課題について
本件特許明細書の段落【0001】~【0007】を参照すると、本件特許は、アクティブ電流(及び/又は電圧)補償装置に関するものであり、2つの装置を接続する2つ以上の大電流経路上に共通モードで入力される電流及び/又は電圧を能動的に補償するアクティブ補償装置に関するものであって(【0001】)、一般的に、家電用及び産業用の電気製品や電気自動車などの電気機器は、動作中にノイズを放射し、電子機器内における電力変換装置のスイッチング動作により、ノイズが電力線を通して放射され、これらのノイズを放置すると、人体に有害であることだけでなく、周辺の部品や他の電子機器に誤動作又は故障を引き起こし、電子機器が他の機器に与える電磁妨害を、EMI(Electromagnetic Interference)と呼び、その中でも、ワイヤ及び基板の配線を経由して送信されるノイズを伝導性放射(CE(Conducted Emission))ノイズといい(【0002】)、電子機器が周辺部品及び他の機器に故障を起こさずに動作するために、全ての電子製品では、EMIノイズの放射量を厳しく規制しているので、ほとんどの電子製品は、ノイズの放射量に対する規制を満たすために、EMIノイズ電流を低減させるノイズ低減装置(例えば、EMIフィルタ)を必ず含んでおり、エアコンなどの白物家電、電気自動車、航空宇宙、エネルギー貯蔵システム(ESS(Energy Storage System))などでは、EMIフィルタを必ず含み、従来のEMIフィルタは、伝導性放射(CE)ノイズの中での共通モード(CM(Common Mode))ノイズを低減させるために、受動フィルタである共通モードチョーク(CM choke)を使用する(【0003】)一方で、ハイパワー製品のリリースに伴い、高出力システム用の電流/電圧補償装置に関するニーズ(needs)が増加しているところ、高出力/高電流システムで共通モード(CM)チョークは、磁気飽和現象により、ノイズの低減性能が急激に落ちるため、高出力/高電流システムで磁気飽和を防止し、ノイズ低減性能を維持するよう、従来は共通モードチョークのサイズを大きくしたり、個数を増やしたりする必要があるが、そのため、ハイパワー製品用電流補償装置の大きさ及び価格が非常に増加してしまう問題が発生することを背景とし(【0004】)、上記のような問題を改善することを本件発明の課題とし、共通モード(CM)ノイズを低減させる補償装置を提供し(【0005】)、検出部の大きさを減らし、生産性が向上された補償装置を提供し(【0006】)、また、EMIノイズが放射される側の負荷の大きさに関わらず、EMIノイズが放射される側に補償電流を出力する補償装置を提供することを目的としたもの(【0007】)であることを読み取ることができる。
また、本件特許明細書の段落【0197】及び【0207】を参照すると、補償装置102に外部から、雷や雷サージ(lightning surge)などにより、数kVのパルス電圧が大電流経路111及び112のうちの少なくとも1つに発生し、このような過電圧/過電流は、検出部120又は補償部160を通して増幅部130に送信されるところ、増幅部130は、様々な種類の能動素子を含むため、外部妨害に脆弱であり、過電圧/過電流により誤動作又は故障が発生する場合があり(【0197】)、雷サージなどの外部過電圧Sは、図18のように、第2の大電流経路112Aに外部過電圧Sが発生した場合、これは、第1の送信経路P1又は第2の送信経路P2を通して磁気エネルギーの形態で増幅部130Aに送信され、第1の送信経路P1は、検出変圧器120Aを通じた経路であり、第2の送信経路P2は、補償変圧器140Aを通じた経路を示し、増幅部130Aの能動素子は、外部の妨害を受けやすいため、保護装置が必要である(【0207】)ことを読み取ることができる。
したがって、本件特許発明1の課題は、上記のような問題、すなわち、伝導性放射(CE)ノイズの中での共通モード(CM(Common Mode))ノイズを低減させるためEMIフィルタとして、受動フィルタである共通モードチョーク(CM choke)を使用する場合、高出力/高電流システムにおいて共通モード(CM)チョークは、磁気飽和現象により、ノイズの低減性能が急激に落ちてしまう。そのため、高出力/高電流システムで磁気飽和を防止し、ノイズ低減性能を維持するために、従来では共通モードチョークのサイズを大きくしたり、個数を増やしたりすることによって、ハイパワー製品用電流補償装置の大きさ及び価格が非常に増加してしまう問題を解決するとともに、雷や雷サージ(lightning surge)などの過電圧/過電流から、増幅部を保護する点にあるものと認められる。
エ 課題解決手段について
上記ウに示した課題に対し、上記アの記載を参照すると、本件特許発明1では、概ね、構成要件1Eに特定される補償部を設けるとともに、構成要件1Fに特定される第1外乱保護部及び第2外乱保護部を備え、当該第1外乱保護部及び第2外乱保護部は、構成要件1G及び1Hに特定されるような接合容量を有するTVSダイオードを用いたことによって当該課題を解決するものであることを理解することができる。
よって、本件特許発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
また、本件特許発明2~5は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであり、同様に、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
オ むすび
したがって、本件特許明細書等の特許請求の範囲に記載された発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、本件特許発明1~5は、特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえず、取消理由1-2に関する取消理由は解消した。
(3)特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について(取消理由1-3)
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきものである。
以下、この観点に立ち検討する。
ア 構成要件1Hについて
特許請求の範囲の請求項1に記載された、構成要件1Hは、構成要件1Fにおける「第1の外乱保護部」及び「第2の外乱保護部」が、構成要件1Gにおいて、「過渡電圧サプレッサ(TVS(Transient Voltage Suppression)ダイオード素子を含」むものであることが特定され、当該「過渡電圧サプレッサ(TVS(Transient Voltage Suppression)ダイオード素子」の「接合容量(junction capacitance)」が「数百pF以下であ」ることを特定するものであって、そのこと自体は、当該「接合容量」の上限を定めるものであるから、必ずしも不明確とはいえない。
しかしながら、当該「接合容量」が0より大きいものであることは、本件特許出願時の技術常識からして自明といえるものの、「数百pF」がどの程度の大きさをいうものかは、特許請求の範囲の請求項1の記載のみからは必ずしも明確とはいえない。
イ 本件特許明細書等の記載について
本件特許明細書の段落【0204】~【0209】には、
「【0204】
図18を参照すると、補償装置102Aは、検出変圧器120A、増幅部130A、及び補償部160A(例えば、補償変圧器140A及び補償コンデンサ部150A)に加え、第1及び第2の外乱保護素子11A及び12Aを含んでもよい。
【0205】
第1の外乱保護素子11A及び第2の外乱保護素子12Aは、前述した第1の外乱保護部11及び第2の外乱保護部12の一例であってもよい。
【0206】
第1の外乱保護素子11A及び第2の外乱保護素子12Aは、TVS(Transient Voltage Suppression)ダイオード素子を含んでもよい。ただし、これに限定されない。
【0207】
例えば、雷サージなどの外部過電圧Sは、大電流経路111A及び112Aのうちの少なくとも1つに発生することがある。例えば、図18のように、第2の大電流経路112Aに外部過電圧Sが発生した場合、これは、第1の送信経路P1又は第2の送信経路P2を通して磁気エネルギーの形態で増幅部130Aに送信されてもよい。第1の送信経路P1は、検出変圧器120Aを通じた経路であり、第2の送信経路P2は、補償変圧器140Aを通じた経路を示す。増幅部130Aの能動素子は、外部の妨害を受けやすいため、保護装置が必要である。
【0208】
第1の外乱保護素子11Aは、第1の送信経路P1に送信される過電圧から増幅部130Aを保護するために、検出変圧器120Aの2次側122Aに並列に接続されてもよい。第2の外乱保護素子12Aは、第2の送信経路P2に送信される過電圧から増幅部130Aを保護するために、補償変圧器140Aの1次側141Aに並列に接続されてもよい。
【0209】
第1及び第2の外乱保護素子11A及び12Aは、例えば、TVSダイオード素子を含んでもよい。このとき、TVSダイオード素子による増幅部130Aの性能減少を最小限に抑えるため、十分に低い(例えば、指定された値以下の)ダイオード接合容量(junction capacitance)を有するTVSダイオード素子が使用されてもよい。例えば、TVSダイオードの接合容量は、数百pF以下であってもよい。第1及び第2の外乱保護素子11A及び12AのTVSダイオードが低い接合容量を有しても、絶縁式構造により、その耐久性が確保され得る。」
と記載され、検出変圧器120Aの2次側122Aに第1の外乱保護素子11A、補償変圧器140Aの1次側141Aに第2の外乱素子12Aがそれぞれ設けられ、第1の外乱保護素子11A及び第2の外乱素子12Aは、例えば、数百pF以下の接合容量を有するTVSダイオード素子であることが記載されている。
ウ 特許権者による意見書の釈明について
その一方、特許権者は、構成要件1Hの定める、「前記TVSダイオード素子の接合容量(junction capacitance)」が「数百pF以下であ」る点につき、「通常に流通されるTVSダイオード素子であって、接合容量が数百pF以下であり0より大きいものであれば、適用することが出来」る旨を主張している。
また、「TVSダイオード素子の接合容量が数百pF以下であり0より大きい、十分に低い接合容量のものが適用可能な理由は、大電流経路(111、112)に接続された「補償変圧器(140)」によるもので」あり、「大電流経路に接続された2次側142と、2次側と「絶縁」された1次側141とを含む補償変圧器140が設けられることで、大電流経路111、112から流入するサージパルスは、補償変圧器140の絶縁により極めて一部の時間に応じたエネルギーのみが増幅部130側に伝達され、その伝達されたエネルギーは補償変圧器140の巻線比分だけ電圧降下が発生するため、その結果、非常に小さいサイズのエネルギーであり、また低い電圧のみが増幅部130側に伝達」され、「外乱保護部(過渡電圧サプレッサ)としてのTVSダイオード素子(12A)を補償変圧器の1次側に並列に接続することを考える場合、外乱保護部は、雷サージなどの外部過電圧が発生した際のためのものであり、通常時は通電させないものであ」るから、「当業者であれば、TVSダイオード素子の接合容量が「数百pF以下で0より大きい」十分に低いものを選択」することができる旨主張している。
エ むすび
以上、ア~ウの記載及び釈明によれば、「接合容量(junction capacitance)」が「数百pF以下であ」る「過渡電圧サプレッサ(TVS(Transient Voltage Suppression)ダイオード素子」とは、通常に流通されるものであって、検出変圧器及び補償変圧器の間に配置される増幅部を、大電流経路から流入するサージパルスから保護する程度の接合容量のものを用いることを把握することができるといえるから、本件特許明細書等の特許請求の範囲に記載された発明は、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、取消理由1-3に関する取消理由は解消した。
2 取消理由通知に記載した取消理由2について
(1)本件特許発明1について
本件訂正請求により訂正された本件特許発明1は、上記第3の1に示したとおりのものである。
ア 甲第1号証の記載事項及び甲1発明
取消理由通知において引用した甲1の記載事項及び甲1発明は、上記第5の1に示したとおりである。
イ 対比
本件特許発明1と甲1発明(第5の1(2)参照。)とを対比する。
(ア)構成要件1Aについて
甲1発明の「電力変換装置」は、「ノイズフィルタ部1と、整流平滑回路部2と、電力変換回路部3と、ノイズ低減回路部4と、を備え」るとともに、当該「電力変換回路部3」は、「所定の直流電力を所定の電圧の直流電力に変換し、直流電圧を負荷R0に供給」するものであるところ、「整流平滑回路部2」、「電力変換回路部3」及び「負荷R0」は、「交流電源5の一対の電源線であるラインE1とE2」に接続された装置といえるから、本件特許発明1の「第1の装置」に相当するものといえ、したがって甲1発明の「交流電源5の一対の電源線であるラインE1とE2」は、本件特許発明1の「第1の装置に接続される少なくとも2つ以上の大電流経路」に相当する。
甲1発明の「電力変換装置」は、「ノイズを低減するための回路部であ」る「ノイズ低減回路部4」を備え、「漏れ電流に対応する補償電流Ir」を、「接地ラインに供給」して、ノイズを低減するものであるとともに、「コモンモードノイズを低減させるためのコンデンサであ」る「コンデンサC3、C4」が「ラインE2、E1と接地ラインとの間にそれぞれ接続され」て、当該ノイズを低減するものである。
甲1発明において「コモンモードノイズを低減」することは、構成要件1Aの「共通モード(Common Mode)で入力される第1の電流を能動的に補償する」ことにほかならず、甲1発明の「電力変換装置」は、そのような補償を行う“アクティブ補償装置”であるともいえるから、甲1発明は、本件特許発明1の構成要件1Aの「第1の装置に接続される少なくとも2つ以上の大電流経路のそれぞれに、共通モード(Common Mode)で入力される第1の電流を能動的に補償するアクティブ補償装置」に相当する構成を有するものといえる。
(イ)構成要件1Bについて
甲1発明の「交流電源5」及び「交流電源5の一対の電源線であるラインE1とE2」は、それぞれ本件特許発明1の「第2の装置」及び「第2の装置によって供給される第2の電流を前記第1の装置に送信する少なくとも2つ以上の大電流経路」に相当するから、甲1発明は、上記(ア)の認定を踏まえれば、本件特許発明1の構成要件1Bの「第2の装置によって供給される第2の電流を前記第1の装置に送信する少なくとも2つ以上の大電流経路」に相当する構成を有するものといえる。
(ウ)構成要件1Cについて
甲1発明の「零相変流器21」は、構成要件1Cの「検出変圧器」に相当する。
甲1発明の「零相変流器21」の「円筒形状を有する磁芯100aを備え、この磁芯100aの孔に、ラインE1、E2を、2次巻線n21とともに貫通させることによって構成され、ラインE1、E2は、1次巻線n11に対応」するところ、当該「ラインE1、E2」に対応する「1次巻線n11」が接続される側は、構成要件1Cの「前記大電流経路上に配置される検出変圧器の1次側」に相当する。
また、甲1発明の「2次巻線n21」が接続される側は、上記認定を踏まえれば、「前記検出変圧器の1次側を流れる前記第1の電流を感知して前記第1の電流に対応する出力信号を生成する検出変圧器の2次側」に相当する。
したがって、甲1発明は、本件特許発明1の構成要件1Cの「前記大電流経路上に配置される検出変圧器の1次側と、前記検出変圧器の1次側を流れる前記第1の電流を感知して前記第1の電流に対応する出力信号を生成する検出変圧器の2次側とを含む検出変圧器」に相当する構成を有するものといえる。
(エ)構成要件1Dについて
甲1発明の「零相変流器21の2次巻線n21で発生した誘起電流I2」は、上記(ウ)の認定を踏まえると、構成要件1Dの「前記検出変圧器の出力信号」に相当する。
甲1発明の「増幅回路22」は、「零相変流器21の2次巻線n21で発生した誘起電流I2を増幅するものであ」ることから、構成要件1Dのうち、「前記検出変圧器の出力信号を増幅」するとの構成と一致する。
また、甲1発明の「増幅回路22」は、「漏れ電流Is1を補償電流Irで相殺するために増幅率が1となるように」構成されるところ、当該「補償電流Ir」は、構成要件1Dの「増幅電流」に相当するものといえ、したがって、甲1発明は、本件特許発明1の構成要件1Dの「前記検出変圧器の出力信号を増幅し、増幅電流を生成する増幅部」に相当する構成を有するものといえる。
(オ)構成要件1Eについて
甲1発明の「ノイズフィルタ部1」に備えられる、「コンデンサC3、C4」は、「コモンモードノイズを低減させるためのコンデンサであり、ラインE2、E1と接地ラインとの間にそれぞれ接続され」るところ、当該「コモンモードノイズ」とは、本件特許発明1の「補償電流を前記少なくとも2つ以上の大電流経路のそれぞれに流す補償部」によって、「共通モード(Common Mode)で入力される第1の電流を能動的に補償」されるノイズであるといえる。
甲1発明の「補償電流Ir」は、「漏れ電流Is1」を「相殺する」ものであるから、構成要件1Eの「補償電流」と同等のものといえ、上記(エ)の認定を踏まえると、増幅電流に基づいて補償電流が生成されているといえる。
そして、当該補償電流は、甲1発明においては、「接地ラインに、漏れ電流を相殺する方向に供給」されるところ、これは、「ラインE1、E2間でノイズが発生する」ことによって、「各ライン間で電流の不平衡が生じ」る結果、「接地ライン」に流れる「漏れ電流」を相殺するものであるところ、これは、「ラインE1、E2間でノイズが発生する」ことによって、「各ライン間で電流の不平衡が生じ」る結果、「接地ライン」に流れる「漏れ電流」を相殺するものであることから、上記(イ)の「ラインE1、E2」の認定も踏まえれば、構成要件1Eのうち、「前記補償電流を前記少なくとも2つ以上の大電流経路のそれぞれに流す」との構成を有しているといえる。
一方で、甲1発明の「零相変流器21と、増幅回路22と、を備え」る、「ノイズ低減回路部4」は、「ノイズを低減するための回路部」ではあるものの、構成要件1Eの、「補償変圧器の1次側と、前記補償変圧器の1次側と絶縁され前記大電流経路に接続される補償変圧器の2次側とを含む補償変圧器を備え」るものとはいえない。
してみれば、甲1発明は、本件特許発明1の構成要件1Eの「補償変圧器の1次側と、前記補償変圧器の1次側と絶縁され前記大電流経路に接続される補償変圧器の2次側とを含む補償変圧器を備え、前記増幅部と接続され前記補償変圧器の1次側を流れる前記増幅電流に基づいて補償電流を前記補償変圧器の2次側に誘導し、前記補償電流を前記少なくとも2つ以上の大電流経路のそれぞれに流す補償部」に対し、下記の点(相違点1)で相違するものの、“前記増幅電流に基づいて補償電流を生成し、前記補償電流を前記少なくとも2つ以上の大電流経路のそれぞれに流す補償部”点で一致するといえる。
(カ)構成要件1F~1Hについて
甲1発明は、構成要件1F~1Hに係る構成を有するものとはいえない。(相違点2)
(キ)構成要件1Iについて
甲1発明の「零相変流器21」は、「円筒形状を有する磁芯100aを備え、この磁芯100aの孔に、ラインE1、E2を、2次巻線n21とともに貫通させることによって構成され、ラインE1、E2は、1次巻線n11に対応し、1次巻線n11、2次巻線n21は、ともに巻数1」であり、当該「磁芯100aの孔」は、構成要件1Iの「コアの中央ホール」に相当し、「1次巻線n11に対応」する「ラインE1、E2」及び「2次巻線n21」はそれぞれ構成要件1Iの「前記検出変圧器の前記1次側の電流経路及び前記検出変圧器の2次側の電流経路」に相当するといえる。
そして、「円筒形状を有する磁芯100aを備え、この磁芯100aの孔に、ラインE1、E2を、2次巻線n21とともに貫通させる」こと、及び「1次巻線n11、2次巻線n21は、ともに巻数1」であることから、甲1発明は、構成要件1Iの「前記検出変圧器の前記1次側の電流経路及び前記検出変圧器の2次側の電流経路のそれぞれは、コアの中央ホールを1回だけ通過」するとの構成を有するといえ、したがって、上記(ア)の認定を踏まえると、甲1発明は、本件特許発明1の構成要件1Iの「前記検出変圧器の前記1次側の電流経路及び前記検出変圧器の前記2次側の電流経路のそれぞれは、コアの中央ホールを1回だけ通過し又は前記コアに1回だけ巻き取られるアクティブ補償装置」との構成を有するものといえる。
(ク)一致点及び相違点
以上、(ア)~(キ)の対比から、本件特許発明1と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
1A 第1の装置に接続される少なくとも2つ以上の大電流経路のそれぞれに、共通モード(Common Mode)で入力される第1の電流を能動的に補償するアクティブ補償装置であって、
1B 第2の装置によって供給される第2の電流を前記第1の装置に送信する少なくとも2つ以上の大電流経路と、
1C 前記大電流経路上に配置される検出変圧器の1次側と、前記検出変圧器の1次側を流れる前記第1の電流を感知して前記第1の電流に対応する出力信号を生成する検出変圧器の2次側とを含む検出変圧器と、
1D 前記検出変圧器の出力信号を増幅し、増幅電流を生成する増幅部と、を備え、
1E’前記増幅電流に基づいて補償電流を生成し、前記補償電流を前記少なくとも2つ以上の大電流経路のそれぞれに流す補償部と、
1I 前記検出変圧器の前記1次側の電流経路及び前記検出変圧器の前記2次側の電流経路のそれぞれは、コアの中央ホールを1回だけ通過し又は前記コアに1回だけ巻き取られるアクティブ補償装置。
〈相違点1〉
本件特許発明1が、「補償変圧器の1次側と、前記補償変圧器の1次側と絶縁され前記大電流経路に接続される補償変圧器の2次側とを含む補償変圧器を備え」るとともに、「補償電流」が、「前記増幅部と接続され前記補償変圧器の1次側を流れる前記増幅電流に基づ」くものであるのに対し、甲1発明は、「零相変流器21と、増幅回路22と、を備え」る「ノイズ低減回路部4」は、「ノイズを低減するための回路部」ではあるものの、「補償変圧器」を備える「補償部」を備えるものとはいえない点。
〈相違点2〉
本件特許発明1が、「前記出力信号を生成する前記検出変圧器の前記2次側に並列に接続される第1の外乱保護部、及び前記補償変圧器の前記1次側に並列に接続される第2の外乱保護部と、を備え」(構成要件1F)るとともに、「前記第1の外乱保護部及び前記第2の外乱保護部は、過渡電圧サプレッサ(TVS(Transient Voltage Suppression)ダイオード素子を含み、」(構成要件1G)「前記TVSダイオード素子の接合容量(junction capacitance)は、数百pF以下であ」(構成要件1H)るのに対し、甲1発明はそのような構成を備えるものではない点。
ウ 判断
事案に鑑み、先に相違点1につき検討する。
上記第5の3に示した甲3には、「コモンモードトランス9は、接地コンデンサ14で検出される電圧V1とは極性が逆で大きさが等しい電圧V2を二次巻線に誘起し、この電圧V2によって電圧V1を打ち消すので、電源1側への漏れ電流I1,I2およびI3(伝導性ノイズ)を低減もしくはなくすことができること」が記載されており、当該「コモンモードトランス9」は、相違点1に係る、「補償変圧器」に相当するものといえる。
しかしながら、甲1発明の「ノイズを低減するための回路部」である「ノイズ低減回路部4」は、「トランジスタQ11、Q12のベースと接地ラインとの間に接続され」る、「コンデンサC8」によって、「補償電流を接地ラインに供給する」ものであるところ、甲1発明の「ノイズ低減回路部4」において、甲3に記載されたコモンモードトランス9を設ける動機付けが無く、また本件特許出願時において、上記相違点1に係る構成が周知技術であったとする証拠もない。
また、取消理由通知において引用した甲4~7にも、上記相違点1に係る構成は開示されていない。
よって、本件特許発明1は、上記甲1発明及び甲3~甲7に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ むすび
したがって、本件特許発明1は、相違点2について判断するまでもなく、甲1及び甲3~甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、取消理由通知において示した取消理由1によって取り消すべきものとはいえない。
(2)本件特許発明2及び4について
上記訂正請求により訂正された本件特許発明2及び4は、上記第3の2及び4に示したとおりのものである。
ア 甲第1号証の記載事項及び甲1発明
取消理由通知において引用した引用例1(甲1)の記載事項及び甲1発明は、上記第5の1(1)及び(2)に示したとおりである。
イ 対比・判断
本件特許発明2及び4と甲1発明(第5の1(2)参照。)とを対比すると、本件特許発明2は、甲1発明に対して、少なくとも上記(1)イ(ク)に示した相違点1の点で相違し、当該事項は、本件特許出願時の周知技術ともいえない。
また、取消理由通知において引用した甲1及び甲3~甲8にも、相違点1に相当する構成は開示されていない。
よって、本件特許発明2及び4は、上記甲1発明及び甲3~甲8に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ むすび
したがって、本件特許発明2及び4は、相違点2について判断するまでもなく、甲1及び甲3~甲8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、取消理由通知において示した取消理由1によって取り消すべきものとはいえない。
(3)本件特許発明3について
上記訂正請求により訂正された本件特許発明3は、上記第3の3に示したとおりのものである。
ア 甲第1号証の記載事項及び甲1発明
取消理由通知において引用した引用例1(甲1)の記載事項及び甲1発明は、上記第5の1(1)及び(2)に示したとおりである。
イ 対比・判断
本件特許発明3は、本件特許発明1を引用するものであり、少なくとも上記(1)イ(ク)に示した相違点1の点で、甲1発明とは異なるものである。
そして、上記(1)ウ及び(2)イに示したとおり、相違点1に係る構成は、甲1及び甲3~甲8のいずれにも記載が無く、また甲9にも記載されておらず、本件特許出願時の周知技術ともいえない。
ウ むすび
したがって、本件特許発明3は、相違点2について判断するまでもなく、甲1及び甲3~甲9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、取消理由通知において示した取消理由1によって取り消すべきものとはいえない。
3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人が主張する、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断を以下に示す。
(1)申立理由1について
申立理由1は、甲1に記載された発明のほか、甲2に記載された発明、及び甲8及び9に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることを主張するものであるところ、上記2(1)~(3)に示したとおり、上記2(1)イ(ク)に示した相違点1について、甲2、8及び9のいずれにも記載されておらず、また、相違点1に係る構成が、出願時における周知技術であったことを示す証拠も無い。
したがって、申立人が主張する証拠及び理由によっては、本件特許発明1~4を取り消すことはできず、申立理由1については、理由が無い。
4 申立人意見書による主張について
(1)申立人の主張
申立人は、申立人意見書において、概ね次の主張を行っている。
ア 「数百pF以下」の記載不備(主張1)
対象特許の請求項1の「数百pF以下」の下限値は特定されるものの、依然として「数百pF」の具体的な数値は明確でない。
また、当該TVSダイオードの接合容量をなるべく小さくするということは、当業者には周知の事項であるところ、当該TVSダイオードの接合容量が大きいと、波形が鈍ってしまうため、応答特性が悪化するという課題があるため、当該TVSダイオードの接合容量をなるべく小さく、具体的には数百pF以下にするということ自体が技術常識である。
TVSダイオードの接合容量を数百pF以下の具体的に何pFにするのかは、TVSダイオードが接続される回路構成に基づいて当業者が適宜設計する事項である。
イ 巻き数比の記載不備(主張2)
訂正後の請求項1には「前記検出変圧器の前記1次側の電流経路及び前記検出変圧器の前記2次側の電流経路のそれぞれは、コアの中央ホールを1回だけ通過し又は前記コアに1回だけ巻き取られる」と記載されているところ、上記の巻数比として考えられる組み合わせは、一次側:二次側が1:1、1:2、2:1の3通りであるが、訂正後の請求項1には1:1の構成も含まれていて、補償変圧器の巻線比分だけ電圧降下が発生しないことから、「非常に小さい大きさのエネルギーのみが増幅部側に送信」されず、TVSダイオード素子は十分に低い接合容量とすることができない。
よって、本件の請求項1及びそれに従属する請求項2-5に係る特許発明は、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できない部分を含んでいるため、サポート違反である。
ウ 変圧器の絶縁構造の記載不備(主張3)
変圧器で絶縁されていたとしても大きな電圧によって変圧器の絶縁構造は絶縁破壊が引き起こされる可能性があり、絶縁破壊が起こると、1次側と2次側が電気的に短絡して接続されるところ、「限られたサイズのエネルギーしか送信」される効果は奏さず、大きいエネルギーが送信されてしまう。
よって、本件の請求項1及びそれに従属する請求項2-5に係る特許発明は、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できない部分を含んでいるため、サポート違反である。
また、明細書および訂正時意見書には変圧器の絶縁構造の具体的構成が開示されておらず、具体的にどの程度の絶縁構造にすればよいのか、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
(2)申立人主張についての当審の判断
主張1については、上記第7の1(3)で判断したとおり、「TVSダイオード素子の接合容量(junction capacitance)は、数百pF以下であ」る点に関し、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
また、申立人も主張するとおり、TVSダイオード素子の接合容量をなるべく小さくすることは周知であり、その接合容量を数百pF以下とすること自体が技術常識であって、TVSダイオードの接合容量は、当業者が適宜設計する事項であるから、主張1は採用の限りではない。
主張2及び3については、上記第7の1(2)において判断したとおり、本件特許明細書等の特許請求の範囲に記載された発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるものであるから、主張2及び3は採用の限りではない。
5 むすび
以上に示したとおり、本件請求項1~5に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
第8 むすび
以上のとおり、請求項1~5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては取り消すことはできない。
さらに、他に本件請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701018