特許異議申立
2024-700045
セラミックス銅回路基板およびその製造方法
- 審判番号
- 2024-700045
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-519890
- 登録番号
- 7332588
- 請求日
- 2024年01月22日
- 審決日
- 2024年11月22日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社東芝
- 【権利者代理人】弁理士法人iX
- 【権利者】東芝マテリアル株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人iX
- 【異議申立人】寺澤 佳奈美
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 衣鳩 文彦
- 審判官 寺谷 大亮
- 分類
- P1651.113-YAA(H05K) / P1651.121-YAA(H05K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7332588号発明「セラミックス銅回路基板およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7332588号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第7332588号の請求項1~6、8~15に係る特許を維持する。
特許第7332588号の請求項7についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7332588号(以下「本件特許」という。)の請求項1~15に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)5月15日(優先権主張平成30年5月16日、平成30年12月11日)を国際出願日とする出願であって、令和5年8月15日にその特許権の設定登録がされ、同年8月23日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~15に係る特許に対し、令和6年1月22日に特許異議申立人 寺澤 佳奈美(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の経緯は、次のとおりである。
令和6年 2月19日 :申立人による手続補正書(方式)の提出
5月 1日付け:取消理由通知書
7月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
7月18日付け:手続補正指令書(方式)
8月 5日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出
9月20日 :申立人による意見書の提出
以下、令和6年9月20に提出された申立人による意見書を、単に「意見書」という。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年8月5日に提出された手続補正書(方式)により補正された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求の趣旨は、特許第7332588号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める、というものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなる。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「セラミックス基板と、
前記セラミックス基板の第1面に、第1ろう材部を介して接合された第1銅部と、
を備え、
前記第1銅部の厚さは、0.6mm以上であり、
前記第1銅部の側面は、第1傾斜部を含み、
前記第1傾斜部の幅は、前記第1銅部の前記厚さの0.1倍以上0.5倍以下であり、
前記第1ろう材部は、前記第1傾斜部の端部からはみ出た第1はみ出し部を有し、
前記第1はみ出し部の長さは、0μmより大きく200μm以下であり、
前記第1はみ出し部と前記第1傾斜部との接触角度は、5°以上65°以下であるセラミックス銅回路基板。」
と記載されているのを、
「セラミックス基板と、
前記セラミックス基板の第1面に、第1ろう材部を介して接合された第1銅部と、
を備え、
前記第1銅部の厚さは、0.6mm以上であり、
前記第1銅部の側面は、第1傾斜部を含み、
前記第1傾斜部の幅は、前記第1銅部の前記厚さの0.1倍以上0.5倍以下であり、
前記第1ろう材部は、前記第1傾斜部の端部からはみ出た第1はみ出し部を有し、
前記第1はみ出し部の長さは、0μmより大きく200μm以下であり、
前記第1はみ出し部と前記第1傾斜部との接触角度は、5°以上65°以下であり、
前記第1傾斜部には、隣り合う凸部と凹部の高さの差が1μm以上20μm以下である凹凸形状が設けられているセラミックス銅回路基板。」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(3)一群の請求項
本件訂正前の請求項2~7は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係であるから、請求項1~7は、一群の請求項である。そして、本件訂正は、請求項1~7について訂正することを求めるものであるから、特許法第120条の5第4項で規定する一群の請求項ごとに訂正の請求をするものである。
2 訂正の適否の検討
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、請求項1に記載された「第1傾斜部」について、「前記第1傾斜部には、隣り合う凸部と凹部の高さの差が1μm以上20μm以下である凹凸形状が設けられている」ことをさらに特定するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、前記アのとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定を満たす。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項1について、「前記第1傾斜部には、隣り合う凸部と凹部の高さの差が1μm以上20μm以下である凹凸形状が設けられている」ことは、訂正前の特許請求の範囲の請求項7に記載されているから、新規事項を追加するものではない。
よって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定を満たす。
エ 独立特許要件
本件においては、訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の適用はない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、請求項7を削除するというものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、請求項7を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定を満たす。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項2は、請求項7を削除するというものであるから、新規事項を追加するものではない。
よって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定を満たす。
エ 独立特許要件
本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の適用はない。
3 まとめ
前記2のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~6、8~15に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、これらを総称して「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6、8~15に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
セラミックス基板と、
前記セラミックス基板の第1面に、第1ろう材部を介して接合された第1銅部と、
を備え、
前記第1銅部の厚さは、0.6mm以上であり、
前記第1銅部の側面は、第1傾斜部を含み、
前記第1傾斜部の幅は、前記第1銅部の前記厚さの0.1倍以上0.5倍以下であり、
前記第1ろう材部は、前記第1傾斜部の端部からはみ出た第1はみ出し部を有し、
前記第1はみ出し部の長さは、0μmより大きく200μm以下であり、
前記第1はみ出し部と前記第1傾斜部との接触角度は、5°以上65°以下であり、
前記1傾斜部には隣り合う凸部と凹部の高さの差が1μm以上20μm以下である凹凸形状が設けられているセラミックス銅回路基板。
【請求項2】
前記接触角度は、5°以上60°以下である請求項1記載のセラミックス銅回路基板。
【請求項3】
前記第1傾斜部の上端部の角度は、50°以上である請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板。
【請求項4】
前記第1ろう材部は、銀、銅および活性金属を含有する請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板。
【請求項5】
前記第1銅部の前記厚さは、0.8mm以上であり、
前記セラミックス基板は、窒化珪素基板であり、
前記セラミックス基板の厚さは、0.4mm以下である請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板。
【請求項6】
前記第1面に第2ろう材部を介して接合された第2銅部をさらに備え、
前記第2銅部は、前記第1面に沿う第1方向において前記第1銅部から離れ、
前記第1銅部の少なくとも一部と前記第2銅部の少なくとも一部との間の前記第1方向における距離は、2mm以下である請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板。
【請求項8】
第1面に第1ろう材層を介して第1銅部及び第2銅部が接合され、前記第1銅部と前記第2銅部は前記第1面に沿う第1方向において互いに離れ、前記第1銅部の厚さ及び前記第2銅部の厚さは0.6mm以上であるセラミックス基板を用意し、
前記セラミックス基板と前記第1銅部との間に位置する第1ろう材部及び前記セラミックス基板と前記第2銅部との間に位置する第2ろう材部が形成され、且つ前記第1ろう材部の端部と前記第1銅部の端部との間の距離が100μm以下となるように、前記第1銅部と前記第2銅部との間に位置する前記第1ろう材層の一部をエッチングし、
前記第1銅部の側面が第1傾斜部を含み、前記第1傾斜部の端部からはみ出た前記第1ろう材部の第1はみ出し部の長さが0μmより大きく200μm以下となり、前記第1傾斜部と前記第1はみ出し部との接触角度が5°以上65°以下となり、且つ前記第1傾斜部の幅が前記第1銅部の厚さの0.1倍以上0.5倍以上となるように、前記第1銅部をエッチングするセラミックス銅回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記第1銅部及び前記第2銅部は、前記セラミックス基板に前記第1ろう材層を介して接合された銅板をエッチングすることで形成される請求項8記載のセラミックス銅回路基板の製造方法。
【請求項10】
前記第1銅部のエッチングと同時に、前記第2銅部の側面が前記第1傾斜部と対向する第2傾斜部を含み、前記第2傾斜部の端部からはみ出た前記第2ろう材部の第2はみ出し部の長さが0μm以上200μm以下となり、前記第2傾斜部と前記第2はみ出し部との接触角度が65°以下となり、且つ前記第2傾斜部の幅が前記第2銅部の厚さの0.5倍以上となるように、前記第2銅部をエッチングする請求項8ないし請求項9のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板の製造方法。
【請求項11】
前記第1傾斜部と前記第1はみ出し部との前記接触角度が5°以上60°以下となるように前記第1銅部をエッチングする請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板の製造方法。
【請求項12】
前記第1傾斜部の上端部の角度が50°以上となるように前記第1銅部をエッチングする請求項8ないし請求項11のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板の製造方法。
【請求項13】
前記第1ろう材層は、銀、銅および活性金属を含有する請求項8ないし請求項12のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板の製造方法。
【請求項14】
前記第1銅部の厚さ及び前記第2銅部の厚さは、0.8mm以上であり、
前記セラミックス基板は、厚さ0.4mm以下の窒化珪素基板である請求項8ないし請求項13のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板の製造方法。
【請求項15】
前記第1傾斜部には、隣り合う凸部と凹部の高さの差が1μm以上20μm以下である凹凸形状が形成される、または、
前記第1傾斜部の前記幅の4分の1以下の幅の窪み形状が形成される、請求項8~14のいずれか1つに記載のセラミックス銅回路基板の製造方法。」
第4 異議申立の概要
申立人は、以下の証拠方法(甲第1号証~甲第4号証)を提出し、本件特許の請求項1~15に係る特許は、以下に示す理由により、取り消すべきものである旨主張する。
1 理由1(新規性)
本件特許の請求項1~2、4~6、8~9、11、13~14に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号)
2 理由2(進歩性)
本件特許の請求項1~15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証~甲第4号証の記載事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号)
3 証拠方法
甲第1号証 国際公開第2017/056360号
甲第2号証 特開2011-211217号公報
甲第3号証 特許第4168114号公報
甲第4号証 特許第6295382号公報
以下、「甲第1号証」~「甲第4号証」を、それぞれ「甲1」~「甲4」ということがある。
第5 取消理由通知に記載した取消理由の概要
訂正前の請求項1~7に係る特許に対して、当審において令和6年5月1日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1.(新規性)訂正前の請求項1~6に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2.(進歩性)訂正前の請求項7に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲1:国際公開第2017/056360号
第6 取消理由通知についての当審の判断
1 甲1の記載及び甲1発明
(1)甲1の記載
甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与したものである。
ア 「[請求項1] 第1の面と第2の面とを有するセラミックス基板と、
第1の接合層を介して前記第1の面に接合された第1の金属板と、
第2の接合層を介して前記第2の面に接合された第2の金属板と、を具備し、
前記第1の接合層は、前記第1の面と前記第1の金属板との間からはみ出すように前記第1の面上に延在する第1のはみ出し部を有し、
前記第2の接合層は、前記第2の面と前記第2の金属板との間からはみ出すように前記第2の面上に延在する第2のはみ出し部を有し、
前記セラミックス基板の3点曲げ強度は、500MPa以上であり、
前記第1のはみ出し部の厚さH1(μm)に対する前記第1のはみ出し部のはみ出し長さL1(μm)の比L1/H1、および前記第2のはみ出し部の厚さH2(μm)に対する前記第2のはみ出し部のはみ出し長さL2(μm)の比L2/H2の少なくとも一つは、0.5以上3.0以下であり、
前記第1のはみ出し部の10箇所の第1のビッカース硬度の平均値、および前記第2のはみ出し部の10箇所の第2のビッカース硬度の平均値の少なくとも一つは、250以下である、回路基板。」
イ 「[請求項8] 前記第1の金属板の厚さ方向を含む断面において、前記第1の金属板の側面は、前記第1の金属板の上面の外側に向かって傾斜しており、
前記第2の金属板の厚さ方向を含む断面において、前記第2の金属板の側面は、前記第2の金属板の上面の外側に向かって傾斜している、請求項1に記載の回路基板。」
ウ 「[0010] 図1は、回路基板の構造例を示す断面模式図である。図1に示す回路基板1は、セラミックス基板2と、金属板(表金属板)3と、金属板4(裏金属板)と、接合層5と、接合層7と、を具備する。接合層5は、はみ出し部6を有する。接合層7は、はみ出し部8を有する。」
エ 「[0014] 金属板3は、半導体素子を搭載するための金属回路板である。金属板3は、接合層5を介してセラミックス基板2の第1の面と接合されている。金属板4は、放熱板である。金属板4は、接合層7を介してセラミックス基板2の第2の面と接合されている。」
オ 「[0018] 接合層5、7は、セラミックス基板2上にろう材ペーストを塗布することにより形成される。このとき、金属板3、4が厚いと金属板3、4の重さでろう材ペーストが広がり過ぎてしまう。ろう材ペーストが広がりすぎると、接合後にエッチング処理などで除去するろう材量が増えコストアップの要因となる。そのため、金属板3、4の厚さは5mm以下、さらには3mm以下であることが好ましい。」
カ 「[0029] セラミックス基板2の少なくとも一方の面には複数の金属板が接合されていてもよい。図2は回路基板の他の構造例を示す断面模式図である。図2に示す回路基板1は、図1に示す回路基板と比較して、複数の金属板3として、金属板3aと、金属板3bと、を具備する構成が少なくとも異なる。なお、回路基板1は、複数の金属板3として3以上の金属板を具備してもよい。なお、図1に示す回路基板1と同じ構成の説明については図1に示す回路基板1の説明を適宜援用する。
[0030] 金属板3aは、接合層5aを介してセラミックス基板2の第1の面と接合されている。金属板3bは、接合層5bを介してセラミックス基板2の第1の面と接合されている。接合層5aおよび接合層5bの説明については、接合層5の説明を適宜援用する。[0031] 図3は、図2に示す回路基板1の一部を示す拡大図である。接合層5aは、セラミックス基板2の第1の面と金属板3aとの間からはみ出すように当該第1の面上に延在するはみ出し部6aを有する。接合層5bは、セラミックス基板2の第1の面と金属板3bとの間からはみ出すように当該第1の面上に延在するはみ出し部6bを有する。
[0032] 金属板3の厚さ方向を含む断面において、金属板3の側面31aは、金属板3の上面32aの外側に向かって傾斜している。金属板3の側面31bは、金属板3の上面32bの外側に向かって傾斜している。金属板3aの側面31aと下面33aとのなす角度θおよび金属板3bの側面31bと下面33bとのなす角度θは、40度以上84度以下であることが好ましい。側面31a、31bを傾斜させることにより、熱応力を緩和させることができる。金属板3aの側面31aと上面32aとのなす角度および金属板3bの側面31bと上面32bとのなす角度は、85度以上95度以下である(垂直または略垂直である)ことが好ましい。図3に示す構造は、金属板3a、3bの厚さが0.6mm以上、さらには0.8mm以上であるときに特に有効である。
[0033] 金属板3aの側面31aの角度θおよび金属板3bの側面31bの角度θを40度以上84度以下にしつつ、かつ金属板3aの側面と上面とのなす角度および金属板3bの側面と上面とのなす角度を85度以上95度以下にすることにより、応力を緩和させつつ、金属板3a、3bの平坦面の面積を増やすことができる。金属板3a、3bの平坦面の面積を増やすことにより、半導体素子の搭載可能面積を広くすることができる。半導体素子の搭載可能面積を広くできると回路設計の自由度を向上させることができる。
[0034] はみ出し部のはみ出し長さは、金属板の側面とはみ出し部の接触部を基準として求められる。はみ出し部の厚さは、はみ出し部の最も厚い部分の厚さである。例えば、側面31aとはみ出し部6aとの接触部におけるはみ出し部6aの厚さ、および側面31bとはみ出し部6bとの接触部におけるはみ出し部6bの厚さを一番厚くし、はみ出し部6aは、側面31aとはみ出し部6aとの接触部から端部に向かって徐々に薄くなる厚さ勾配を有し、はみ出し部6bは、側面31bとはみ出し部6bとの接触部から端部に向かって徐々に薄くなる厚さ勾配を有することが好ましい。厚さ勾配を有することにより、熱応力によるはみ出し部の変形を抑制することができる。
[0035] はみ出し部6a、6bのはみ出し長さL1は、40μm以下、さらには25μm以下であることが好ましい。はみ出し部6a、6bのL1/H1およびビッカース硬度HVを制御することにより、応力緩和効果を向上させることができる。すなわち、40μm以下の短いはみ出し長さを有するはみ出し部であっても、十分な応力緩和効果を得ることができる。
[0036] 側面31a、31bを傾斜させた場合、傾斜面の裾野の部分同士の最短距離P(側面31aとはみ出し部6aとの接触部から側面31bとはみ出し部6bとの接触部までの最短距離)を1.1mm以下、さらには1.0mm以下まで狭くすることにより、半導体素子の搭載可能面積を小さくさせずに回路基板を小さくすることができる。よって、図3に示す回路基板は、セラミックス基板2の第1の面に複数の金属板を接合する場合に有効である。最短距離Pの最小値は0.6mm以上であることが好ましい。厚さ0.6mm以上の金属板を具備するパワーモジュールの場合、定格電圧を考慮すると最短距離Pが0.6mm未満であると導通不良になるおそれがある。」
キ 「
[図:0001420311000001.jpg]
」
ク 「
[図:0001420311000002.jpg]
」
ケ 「
[図:0001420311000003.jpg]
」
コ 「[0041] 次に、回路基板の製造方法について説明する。実施形態に係る回路基板の製造方法は特に限定されないが、効率よく得るための方法として次の方法が挙げられる。
[0042] まず、セラミックス基板2を用意する。例えば、セラミックス基板2として窒化物珪素基板を用意する場合、ろう材としてTiを含有するろう材を用いることによりTiN相(窒化チタン相)を形成することができる。TiN相は接合強度の向上に寄与する。
[0043] また、金属板3、4を用意する。金属板3、4はベタ板を接合してエッチングによりパターン化してもよいし、予めパターン化された金属板を接合してもよい。
[0044] さらに、接合層5、7を形成するためにろう材を用意する。ろう材としては、接合層5、7に適用可能な元素を含むろう材を用いることができる。例えば、Ag、Cu、およびTiからなるろう材の場合、Agが40~80質量%、Cuが15~45質量%、Tiが1~12質量%、Ag+Cu+Ti=100質量%の範囲であることが好ましい。また、In、Snを添加する場合は、InおよびSnから選ばれる少なくとも一つの元素が5~20質量%の範囲であることが好ましい。Cを添加する場合は、0.1~2質量%の範囲であることが好ましい。」
サ 「[0054] 次に、上記ろう材の成分を均一混合したろう材ペーストを調製する。ろう材ペースト中の金属成分は60~95質量%以下とする。残り5~40質量%以下は樹脂バインダーや有機溶媒などとする。金属成分を90質量%以上とすることにより、塗布むらを小さくすることができる。
[0055] 次に、ろう材ペーストをセラミックス基板2の第1、2の面に塗布し、第1の面上のろう材ペースト層上に金属板3を配置し、第2の面上のろう材ペースト層上に金属板4を配置する。なお、金属板3、4上にろう材ペーストを塗布して、その上にセラミックス基板2を配置する方法であってもよい。はみ出し部6、8となる領域は、小さくてもよい。また、後述するようにエッチング工程により、はみ出し部6、8を形成してもよい。
[0056] 上記工程により、金属板3/ろう材ペースト層(接合層5)/セラミックス基板2/ろう材ペースト層(接合層7)/金属板4、の5層構造の回路基板が形成される。
[0057] 次に、加熱接合工程を行う。加熱温度は例えば700~900℃の範囲である。また、加熱接合後に冷却速度5℃/分以上で急冷することが好ましい。急冷工程は接合層5、7の凝固点温度以下の温度まで行うことが好ましい。急冷工程を行うと、接合層5、7を早期に固めることができる。加熱工程により溶けたろう材が早期に固まって接合層5、7となることにより、ビッカース硬度のバラツキを低減することができる。
[0058] 次に、必要に応じ、エッチング工程を行う。エッチング工程により金属板3、4のパターニングを行う。エッチング工程により金属板3、4の側面を傾斜させてもよい。さらに、エッチング工程によりはみ出し部6、8のはみ出し長さおよび厚さを調整してもよい。金属板3、4をエッチングする工程とはみ出し部6、8の形状を整えるエッチング工程は同じまたは別々の工程でもよい。
[0059] 上記製造工程であれば、回路基板を効率よく製造することができる。さらに、必要な数の半導体素子を回路基板に搭載して半導体装置を製造することができる。」
シ 「[0060](実施例1~13、比較例1~4)
セラミックス基板として表1に示す特性を有するセラミックス基板1~4を用意し、ろう材として表2に示すろう材を用意した。表1の材質とはセラミックス基板の主成分の材料である。例えば、「窒化珪素」は、窒化珪素を主成分とするセラミックス基板を示す。「アルミナジルコニア」は、ZrO2(酸化ジルコニウム)を含有する酸化アルミニウムを主成分とするセラミックス基板を示す。「アルミナ」は、酸化アルミニウムを主成分とするセラミックス基板を示す。
[図:0001420311000004.jpg]
[0063] セラミックス基板の第1の面上に、第1のろう材を介して表金属板を配置し、セラミックス基板の第2の面上に、第2のろう材を介して裏金属板を配置し、700~900℃にて加熱接合し、加熱接合後に5℃/分以上の冷却速度で冷却した。その後、エッチングしてはみ出し部のはみ出し長さL(μm)、厚さH(μm)、金属板間の最短距離Pを調整した。これにより、実施例1~13および比較例1~4の回路基板を作製した。実施例1~13の回路基板において使用された、セラミックス基板、第1のろう材、第2のろう材について表3に示す。実施例1~13および比較例1~4の回路基板のその他の特性について表3、4に示す。なお、実施例1~3、実施例5~13および比較例1~4の金属板として銅板を用いた。実施例4の金属板としてアルミニウム板を用いた。
[図:0001420311000005.jpg]
[0065] 得られた回路基板の任意のはみ出し部のビッカース硬度HVを測定した。ビッカース硬度の測定では、ナノインデンターとしてHysitron社製TI950トライボンデンターを用い、圧子としてバーコビッチ型ダイヤモンドの三角錐圧子を用いた。図4は、荷重条件を示す図である。図4では、横軸が時間(秒)、縦軸が荷重(μN)である。最大荷重は1500μNであり、50秒かけて徐々に荷重を増加させた。このときの押込み深さを測定してナノインデンテーション硬さHITを求めた。ナノインデンテーション硬さHITを次の変換式を用いて、ビッカース硬さHVに変換した。
ビッカース硬さHV(kgf/mm2)=76.23×ナノインデンテーション硬さHIT(GPa)+6.3
[0066] 任意の10箇所のビッカース硬度HVを算出してその平均値を求めた。また、10箇所のビッカース硬度HVの最大値と最小値との差(HVmax-HVmin)を求めた。結果を表4に示す。
[図:0001420311000006.jpg]
」
ス [0060]~[0067]の記載において、実施例7は、[表3]([0064])より、「セラミックス基板」として「セラミックス基板2」を用い、「第1、2のろう材」として「ろう材3」を用い、「金属板」の「表金属板」の数は3であり、その厚さは0.8mmであり、P(「傾斜面の裾野の部分同士の最短距離P」([0036]))は1.0mmである。また、実施例7は、金属板として銅板を用いている([0063])。
そして、「セラミックス基板2」は[表1]([0061])より、「材質」が窒化珪素で、その「厚さ」が0.25mmのセラミックス基板であり、「ろう材3」は[表2]([0062])より、「ろう材成分」がAg(50)、Cu(24)、Sn(12)、In(6)、Ti(7)、C(1)である。
さらに、実施例7は、[表4]([0067])より、「はみ出し長さ」は15μmであり、「金属板の側面と下面とのなす角度θ」は60度である。
(2)甲1発明
前記(1)より、甲1には、実施例7に関連して、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。(なお、符号「1A」等は分説するために当審にて付したものであり、以下、各構成を「構成1A」などのように参照する。)
「1A セラミックス基板2と、金属板(表金属板)3と、接合層5と、を具備し、接合層5は、はみ出し部6を有する回路基板1であって、([0010])
1B 接合層5は、セラミックス基板2上にろう材ペーストを塗布することにより形成され、([0018])
1C セラミックス基板2の一方の面には複数の金属板が接合されていてもよく、複数の金属板3として、金属板3aと、金属板3bと、を具備し、([0029])
1D 金属板3aは、接合層5aを介してセラミックス基板2の第1の面と接合され、金属板3bは、接合層5bを介してセラミックス基板2の第1の面と接合され、([0030])
1E 接合層5aは、セラミックス基板2の第1の面と金属板3aとの間からはみ出すように当該第1の面上に延在するはみ出し部6aを有し、接合層5bは、セラミックス基板2の第1の面と金属板3bとの間からはみ出すように当該第1の面上に延在するはみ出し部6bを有し、([0031])
1F 金属板3の厚さ方向を含む断面において、金属板3の側面31aは、金属板3の上面32aの外側に向かって傾斜し、金属板3の側面31bは、金属板3の上面32bの外側に向かって傾斜しており、([0032])
1G 金属板3aの側面31aの角度θおよび金属板3bの側面31bの角度θを40度以上84度以下にしつつ、かつ金属板3aの側面と上面とのなす角度および金属板3bの側面と上面とのなす角度を85度以上95度以下にすることにより、応力を緩和させつつ、半導体素子の搭載可能面積を広くすることができ、([0033])
1H ろう材ペーストは、ろう材の成分を均一混合したものであり、([0054])
1I 金属板として銅板を用い、金属板の表金属板の数は3であり、その厚さは0.8mmであり、傾斜面の裾野の部分同士の最短距離Pは1.0mmであり、セラミックス基板は材質が窒化珪素で、その厚さが0.25mmであり、ろう材成分がAg(50)、Cu(24)、Sn(12)、In(6)、Ti(7)、C(1)であり、はみ出し長さは15μmであり、金属板の側面と下面とのなす角度θは60度である、(前記(1)ス)
1J 回路基板」
2 本件発明1~6との対比・判断
(1)本件発明1
ア 本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)「セラミックス基板と、」について
甲1発明の「セラミックス基板2」(構成1A)は、本件発明1の「セラミックス基板」に相当する。
(イ)「前記セラミックス基板の第1面に、第1ろう材部を介して接合された第1銅部と、を備え、」について
甲1発明において、「接合層5aを介してセラミックス基板2の第1の面と接合され」(構成1D)る「金属板3a」(構成1C、1D)は、「複数の金属板3」(構成1C)のうちの一つであって「表金属板」(構成1I)である。そして、表金属板として「銅板」(構成1I)を用いているから、甲1発明の「金属板3a」は、本件発明1の「第1銅部」に相当する。
また、甲1発明の「接合層5a」(構成1D)は、「セラミックス基板2上にろう材ペーストを塗布することにより形成される接合層5」(構成1B)であり、「ろう材ペースト」は、「ろう材の成分を均一混合したもの」(構成1H)であるから、本件発明1の「第1ろう材部」に相当する。
よって、本件発明1と甲1発明とは、「前記セラミックス基板の第1面に、第1ろう材部を介して接合された第1銅部と」を備える点で一致する。
(ウ)「前記第1銅部の厚さは、0.6mm以上であり、」について
甲1発明において、表金属板の「厚さは0.8mm」(構成1I)であるから、0.6mm以上であり、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1銅部の厚さは、0.6mm以上であ」る点で一致する。
(エ)「前記第1銅部の側面は、第1傾斜部を含み、」について
甲1発明は、「金属板3の厚さ方向を含む断面において、金属板3の側面31aは、金属板3の上面32aの外側に向かって傾斜して」(構成1F)いるから、金属板3の側面は傾斜部を有するものである。
よって、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1銅部の側面は、第1傾斜部を含」む点で一致する。
(オ)「前記第1ろう材部は、前記第1傾斜部の端部からはみ出た第1はみ出し部を有し、」について
甲1発明の「接合層5aは、セラミックス基板2の第1の面と金属板3aとの間からはみ出すように当該第1の面上に延在するはみ出し部6aを有」(構成1E)することは、本件発明1の「前記第1ろう材部は、前記第1傾斜部の端部からはみ出た第1はみ出し部を有」することに相当する。
(カ)「前記第1はみ出し部の長さは、0μmより大きく200μm以下であり、」について
甲1発明は、「はみ出し長さは15μm」(構成1I)であるから、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1はみ出し部の長さは、0μmより大きく200μm以下であ」る点で一致する。
(キ)「前記第1はみ出し部と前記第1傾斜部との接触角度は、5°以上65°以下であり、」について
甲1発明は、「金属板の側面と下面とのなす角度θは60度である」(構成1I)から、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1はみ出し部と前記第1傾斜部との接触角度は、5°以上65°以下であ」る点で一致する。
(ク)「前記第1傾斜部の幅は、前記第1銅部の前記厚さの0.1倍以上0.5倍以下であり、」、及び「前記1傾斜部には隣り合う凸部と凹部の高さの差が1μm以上20μm以下である凹凸形状が設けられている」について
甲1発明は、当該事項を特定していない。
(ケ)「セラミックス銅回路基板」について
甲1発明は、表金属板として銅板を用いるものであるから、甲1発明の「回路基板」(構成1J)は、本件発明1の「セラミックス銅回路基板」に対応する。
(コ)一致点、相違点
前記(ア)~(ケ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「 セラミックス基板と、
前記セラミックス基板の第1面に、第1ろう材部を介して接合された第1銅部と、
を備え、
前記第1銅部の厚さは、0.6mm以上であり、
前記第1銅部の側面は、第1傾斜部を含み、
前記第1ろう材部は、前記第1傾斜部の端部からはみ出た第1はみ出し部を有し、
前記第1はみ出し部の長さは、0μmより大きく200μm以下であり、
前記第1はみ出し部と前記第1傾斜部との接触角度は、5°以上65°以下であるセラミックス銅回路基板」
<相違点>
相違点1:本件発明1は、「前記第1傾斜部の幅は、前記第1銅部の前記厚さの0.1倍以上0.5倍以下であ」ることを特定しているのに対して、甲1発明は、当該事項を特定していない点
相違点2:本件発明1は、「前記1傾斜部には隣り合う凸部と凹部の高さの差が1μm以上20μm以下である凹凸形状が設けられている」ことを特定しているのに対して、甲1発明は、当該事項を特定していない点
イ 相違点について
事案に鑑み、前記相違点2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
甲1には、「側面31aを傾斜させた場合」([0036])の「傾斜面」について、その傾斜面の形状についてなんら記載されるものでなく、また、甲1発明の「傾斜面」が、「隣り合う凸部と凹部の高さの差が1μm以上20μm以下である凹凸形状が設けられている」ことを示す証拠もない。
よって、前記相違点2は、実質的な相違点であり、本件発明1は甲1発明であるとはいえない。
(2)本件発明2~6
本件発明2~6は、本件発明1を直接又は間接的に引用する発明であるから、少なくとも、前記(1)ア(コ)の相違点2の点で甲1発明と相違する。
よって、本件発明2~6と甲1発明とは、実質的な相違点が存在するから、本件発明2~6は、甲1発明であるとはいえない。
(3)まとめ
本件訂正により、訂正前の請求項7は削除された。
そして、前記(1)、(2)のとおり、本件発明1~6は、甲1発明であるとはいえないから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
なお、申立人は意見書において、本件発明1について「甲1発明における表金属板(銅板)の側面の傾斜部に凹凸形状を設けることは当業者が容易に想到し得たことである。」と主張しているところ、当該主張については、次の第7において検討する。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由、及び当審の判断について
1 前記第4に記載した特許異議の申立ての理由のうち、取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由は次のとおりである。
(1)理由1(新規性)
本件特許の請求項8~9、11、13~14に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号)
(2)理由2(進歩性)
本件特許の請求項1~6、8~15に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2~甲4の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号)
2 甲号証について
(1)甲1
ア 甲1の記載事項は、前記第6、1(1)のとおりであり、甲1発明は、前記第6、1(2)のとおりである。
イ 甲1製造方法発明
前記第6、1(1)より、甲1には、実施例7及び製造方法に関連して、次の発明(以下「甲1製造方法発明」という。)が記載されていると認められる。(なお、符号「2A1」等は分説するために当審にて付したものであり、以下、各構成を「構成2A1」などのように参照する。)
「2A1 セラミックス基板2を用意し、([0042])
2A2 金属板3を用意し、([0043])
2A3 接合層5を形成するためにろう材を用意し、([0044])
2B ろう材の成分を均一混合したろう材ペーストを調製し、([0054])
2C 次に、ろう材ペーストをセラミックス基板2の第1の面に塗布し、第1の面上のろう材ペースト層上に金属板3を配置し、([0055])
2D 次に、加熱接合工程を行い、加熱接合後に急冷工程を行うと、加熱工程により溶けたろう材が早期に固まって接合層5となり、([0057])
2H 次に、エッチング工程を行い、エッチング工程により金属板3のパターニングを行い、エッチング工程により金属板3の側面を傾斜させ、さらに、エッチング工程によりはみ出し部6のはみ出し長さおよび厚さを調整し、金属板3をエッチングする工程とはみ出し部6の形状を整えるエッチング工程は別々の工程でもよい、([0058])
2I 回路基板を製造する方法([0059])であり、
2J 回路基板は、
2J1 セラミックス基板2の一方の面には複数の金属板が接合されていてもよく、複数の金属板3として、金属板3aと、金属板3bと、を具備するものであり、([0029])
2J2 金属板3aは、接合層5aを介してセラミックス基板2の第1の面と接合され、金属板3bは、接合層5bを介してセラミックス基板2の第1の面と接合され、([0030])
2J3 接合層5aは、セラミックス基板2の第1の面と金属板3aとの間からはみ出すように当該第1の面上に延在するはみ出し部6aを有し、接合層5bは、セラミックス基板2の第1の面と金属板3bとの間からはみ出すように当該第1の面上に延在するはみ出し部6bを有し、([0031])
2J4 金属板3の厚さ方向を含む断面において、金属板3の側面31aは、金属板3の上面32aの外側に向かって傾斜し、金属板3の側面31bは、金属板3の上面32bの外側に向かって傾斜しており、([0032])
2J5 金属板3aの側面31aの角度θおよび金属板3bの側面31bの角度θを40度以上84度以下にしつつ、かつ金属板3aの側面と上面とのなす角度および金属板3bの側面と上面とのなす角度を85度以上95度以下にすることにより、応力を緩和させつつ、半導体素子の搭載可能面積を広くすることができ、([0033])
2K 金属板として銅板を用い、金属板の表金属板の数は3であり、その厚さは0.8mmであり、傾斜面の裾野の部分同士の最短距離Pは1.0mmであり、セラミックス基板は材質が窒化珪素で、その厚さが0.25mmであり、ろう材成分がAg(50)、Cu(24)、Sn(12)、In(6)、Ti(7)、C(1)であり、はみ出し長さは15μmであり、金属板の側面と下面とのなす角度θは60度である、(前記第6、1(1)ス)
2L 回路基板を製造する方法」
(2)甲2の記載
甲2には、次の事項が記載されている。
「【実施例】
【0037】
以下、添付図面を参照して本発明による金属-セラミックス接合回路基板の製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0038】
[実施例1]
金属成分が91Ag-7Cu-1.5Ti-0.5TiO2(wt%)になるように金属粉を秤量し、この金属粉に約10%のアクリル系のビヒクルを加え、自動乳鉢や3本ロールミルなどにより通常の方法で混錬して、ペースト状のろう材を作製した。
【0039】
次に、図1に示すように、セラミックス基板10を用意し(図1(a))、スクリーン印刷によりセラミックス基板10の両面にろう材12を塗布し(図1(b))、その両側に0.3mmの厚さのCu板14を配置し(図1(c))、真空炉中において835℃でセラミックス基板10とCu板14を接合した。なお、接合後にサンプルを切断してろう材12の厚さを測定したところ、約20μmであった。また、セラミックス基板10として、ATG社製SグレードAlN基板を使用した。
【0040】
その後、サンプルを真空炉から取り出し、図2に示すように、接合したCu板14の両面に、所望の回路パターンのUV硬化アルカリ剥離型レジスト16(三井化学(株)製MT-UV-5203)を約10~15μmの厚さに塗布し(図2(a))、塩化銅と過酸化水素水と塩酸からなるエッチング液によりCu板14の不要部分を除去した(図2(b))。
【0041】
次に、この回路パターン間や基板の縁面の不要なろう材を除去するため、30%チオ硫酸ナトリウム水溶液に室温で2分間浸漬した後、830gの純粋に対して14gのEDTAおよび170mlの過酸化水素水(35w/w%)の割合で加えた溶液をpH調整剤(アンモニア水(28w/w%))によりpH5.6に調整した混合溶液(液温47℃)に150分間ディップして、ろう材12を除去した後(図3(a))、レジスト16を剥離し(図3(b))、Ni-P無電解メッキ18を施した(図3(c))。Ni-Pメッキ液としては、上村工業社製ニムデンSXを使用した。この時の(Cuの平均溶解速度/ろう材の平均溶解速度)の値は1.8であった。
【0042】
この実施例で得られた金属-セラミックス接合回路基板のろう材はみ出し量は50μmであり、ろう材除去性および回路パターン性は良好であった。また、得られた金属-セラミックス接合回路基板の断面写真を図4に示す。」
「図4
[図:0001420311000007.jpg]
」
(3)甲3の記載
甲3には、次の事項が記載されている。
「【0023】
【実施例】
以下、添付図面を参照して本発明による金属-セラミックス接合体の実施例について詳細に説明する。
【0024】
[実施例1]
金属成分が91Ag-7Cu-1.5Ti-0.5TiO2(wt%)になるように金属粉を秤量し、この金属粉に約10%のアクリル系のビヒクルを加え、自動乳鉢や3本ロールミルなどにより通常の方法で混錬して、ペースト状のろう材を作製した。
【0025】
次に、図1に示すように、セラミックス基板10を用意し(図1(a))、スクリーン印刷によりセラミックス基板10の両面にろう材12を塗布し(図1(b))、その両側に0.25mmの厚さのCu板14を配置し(図1(c))、真空炉中において835℃でセラミックス基板10とCu板14を接合した。なお、接合後にサンプルを切断してろう材12の厚さを測定したところ、約20μmであった。また、セラミックス基板10として、ATG社製SグレードAlN基板を使用した。
【0026】
その後、サンプルを真空炉から取り出し、図2に示すように、接合したCu板14の両面に、所望の回路パターンのUV硬化アルカリ剥離型レジスト16を約10~15μmの厚さに塗布し(図2(a))、塩化銅と過酸化水素水と塩酸からなるエッチング液によりCu板14の不要部分を除去した(図2(b))後、3.5%水酸化ナトリウム水溶液によりレジスト16を除去した(図2(c))。
【0027】
次に、この回路パターン間や基板の縁面の不要なろう材を除去するため、1.4%EDTA、6%過酸化水素、3%アンモニアの液組成からなる混合溶液にディップして、ろう材12を除去した(図3(a))。その後、再度Cu板14の両面に所望の回路パターンのUV硬化アルカリ剥離型レジスト18を塗布し(図3(b))、塩化銅と過酸化水素水と塩酸からなるエッチング液によりCu板14を15分間再度エッチングした(図3(c))。その後、3.5%水酸化ナトリウム水溶液によりレジスト18を除去し(図4(a))、Ni-P無電解メッキ20を施した(図4(b))。
【0028】
このようにして得られた金属-セラミックス接合体の断面の顕微鏡写真を図6に示す。この実施例で得られた金属-セラミックス接合体について、ろう材はみ出し量および金属回路部のスカート量を測定したところ、それぞれ102μmおよび<0μmであった。また、本実施例で得られた金属-セラミックス接合体について、通炉処理(還元雰囲気(窒素4+水素1)下において370℃で10分間加熱した後に冷却する処理)を行い、通炉耐量(通炉回数)により、信頼性を評価した。すなわち、通炉処理後にセラミックス部にクラックが発生するか否かを外観検査して、クラックが発生したときの通炉処理の回数の直前の通炉処理の回数を通炉耐量(通炉回数)とし、この通炉耐量によって、金属-セラミックス接合体の信頼性を評価した。その結果、この実施例において製造された金属-セラミックス接合体の通炉耐量(通炉回数)は58回であった。」
「図6
[図:0001420311000008.jpg]
」
(4)甲4の記載
甲4には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
セラミックス基板と、該セラミックス基板の少なくとも一方の主表面上に接合された導体層とを有する絶縁放熱基板であって、
前記導体層は上面と、前記セラミックス基板に接合する下面と、上面及び下面を連結する側面とを有し、
導体層とセラミックス基板を導体層の平面視輪郭の接線に対する法線方向及び厚み方向の両方に平行な断面で観察したとき、
前記上面の先端は前記下面の先端よりも導体層の前記法線方向に後退しており、
前記側面は前記上面の先端よりも導体層の前記法線方向に後退した箇所を有する内側に窪んだ湾曲線状の輪郭を有しており、
前記上面と前記側面の連結部は、前記上面の先端に内接し、且つ、前記上面及び前記側面の内側に形成することのできる円の最大半径Rが平均で0.1μm≦R≦5μmとなるような丸み形状を有する、
絶縁放熱基板。」
「【0021】
導体層104は、銅(Cu)、銅合金、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金などの金属で形成することができる。導体層104は、タングステン(W)やモリブデン(Mo)等の高融点金属または銀(Ag)からなるメタライズ層で形成することもできる。その他、ニッケル、鉄、チタン、モリブデンを使用することもできる。導体層104の平均厚みD(導体層104の上面104aと下面104bの高さの差の平均)については、パワー半導体モジュールの小型化を図るという観点からは、0.3mm~2.0mmであることが好ましく、0.5mm~1.5mmであることがより好ましい。」
「【0028】
図2は、本発明に係る絶縁放熱基板の一実施形態に係る導体層の連結部106の近傍を断面観察したときのSEM写真である。図2において、連結部106は最大半径Rが0.5μmの内接円を形成することのできる丸み形状を有する。また、導体層の上面が先端に向かって下方に傾斜した形状を有していることが確認できる。」
「図2
[図:0001420311000009.jpg]
」
(5)周知技術
ア 前記(2)において、「金属-セラミックス接合回路基板」(【0042】)の「金属」は、「不要部分を除去した」「Cu板」(【0040】)に対応するものであるから、「金属」は本件発明の「銅部」に相当する。
そして、「金属-セラミックス接合回路基板の断面写真」である図4より、銅部は傾斜部を有しており、傾斜部は窪み形状となっていることが見てとれる。
イ 前記(3)の「金属-セラミックス接合体」(【0028】)の「金属」は、「15分間再度エッチングした」「Cu板」(【0027】)に対応するものであるから、「金属」は本件発明の「銅部」に相当する。
そして、「金属-セラミックス接合体の断面の顕微鏡写真」である図6より、銅部は傾斜部を有しており、傾斜部は窪み形状となっていることが見てとれる。
ウ 前記(4)の「導体層」(【0028】)は、「銅(Cu)」で形成することができる(【0021】)ものであるから、本件発明の「銅部」に相当する。
そして、「導体層の連結部106の近傍を断面観察したときのSEM写真」である図2より、銅部は傾斜部を有しており、傾斜部は窪み形状となっていることが見てとれる。
エ 前記ア~ウより、「銅部は傾斜部を有しており、傾斜部は窪み形状である」ことは、本件特許の優先日当時に当業者に周知であったと認められる。
3 当審の判断
(1)本件発明1~6に対する理由2(進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比する。
本件発明1と甲1発明との対比は、前記第6、2(1)ア(ア)~(ケ)のとおりである。
そして、本件発明1と甲1発明とは、前記第6、2(1)ア(コ)で示す一致点及び相違点1、2があるといえる。
(イ)判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
相違点2に係る構成である「前記1傾斜部には隣り合う凸部と凹部の高さの差が1μm以上20μm以下である凹凸形状が設けられている」ことは、甲2~甲4に記載されておらず、本件特許の優先日当時に当業者に周知であったとはいえない。また、自明な事項であったともいえない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲2~甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)意見書の主張について
申立人は意見書において、甲2の図4、及び甲3の図6より、「銅部の側面の傾斜部に凹凸形状が設けられることは普通のこと」であり、「甲1発明における表金属板(銅板)の側面の傾斜部に凹凸形状を設けることは当業者が容易に想到し得たことである。」旨主張する(意見書1頁~3頁)。
しかしながら、相違点2に係る構成である「前記1傾斜部には隣り合う凸部と凹部の高さの差が1μm以上20μm以下である凹凸形状が設けられている」ことは、本件訂正前の請求項7で特定されていた事項であるにも関わらず、特許異議申立書においては、全く主張していなかったものである。
したがって、当該主張は、実質的に新たな理由を追加するものであり、訂正の請求の内容に付随して生じるものであるとも、適切な取消理由を構成することが一見して明らかであるともいえないから、採用しない。
イ 本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項を付加したものである。
そうすると、本件発明2~6と甲1発明とは、少なくとも、前記ア(ア)に示した相違点1、2において相違するものであり、相違点2は、前記ア(イ)のとおり、当業者が容易になし得たものではない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2~6は、甲1発明、甲2~甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ (1)のまとめ
前記ア、イのとおり、本件発明1~6は、甲1に記載された発明、及び甲2~甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明8~9、11、13~14に対する理由1(新規性)、及び本件発明8~15に対する理由2(進歩性)について
ア 本件発明8について
(ア)本件発明8と甲1製造方法発明とを対比する。
a 「第1面に第1ろう材層を介して第1銅部及び第2銅部が接合され、前記第1銅部と前記第2銅部は前記第1面に沿う第1方向において互いに離れ、前記第1銅部の厚さ及び前記第2銅部の厚さは0.6mm以上であるセラミックス基板を用意し、」について
(a)甲1製造方法発明の「セラミックス基板2」(構成2A1)は、本件発明8の「セラミックス基板」に相当する。
(b)甲1製造方法発明は、「セラミックス基板2」、「金属板3」、及び「ろう材」を用意し(構成2A1~2A3)、「ろう材ペーストをセラミックス基板2の第1の面に塗布し、第1の面上のろう材ペースト層上に金属板3を配置し」(構成2C)、「加熱接合工程を行」う(構成2D)。ここで、「加熱接合工程」により、セラミックス基板2は金属板3と接合される。
(c)甲1製造方法発明は、「加熱接合工程」の次に「エッチング工程により金属板3のパターニングを行い、エッチング工程により金属板3の側面を傾斜させ、さらに、エッチング工程によりはみ出し部6のはみ出し長さおよび厚さを調整」するものであり、「金属板3をエッチングする工程とはみ出し部6の形状を整えるエッチング工程」を「別々の工程」(構成2H)で行う。
金属板3をエッチングすることにより、金属板3のパターニングが行われ、金属板3の側面を傾斜させているといえるから、「金属板3をエッチングする工程」により、「金属板3のパターニング」及び「金属板3の側面を傾斜」させ、「はみ出し部6の形状を整えるエッチング工程」により、「はみ出し部6のはみ出し長さおよび厚さを調整」するものと認められる。
(d)甲1製造方法発明により製造された「回路基板」は、「セラミックス基板2の一方の面には複数の金属板が接合され」、「複数の金属板3として、金属板3aと、金属板3bと、を具備する」(構成2J1)回路基板である。
そして、複数の金属板は、金属板3のパターニングを行うことで形成されるから、複数の金属板である「金属板3a」と「金属板3b」は、「金属板3をエッチングする工程」により形成されると解される。
また、甲1製造方法発明により製造された「回路基板」は、「傾斜面の裾野の部分同士の最短距離P」が「1.0mm」(構成2K)であるから、「金属板3をエッチングする工程」でパターニングされることにより形成される「金属板3a」と「金属板3b」は、セラミックス基板2の第1の面に沿う第1方向において互いに離れているといえる。
さらに、前記(c)のとおり、「金属板3の側面の傾斜」は、「金属板3をエッチングする工程」により形成されるから、「金属板3をエッチングする工程」により形成される「金属板3a」と「金属板3b」は、側面が傾斜しているといえる。
(e)甲1製造方法発明は、「ろう材ペーストをセラミックス基板2の第1の面に塗布し、第1の面上のろう材ペースト層上に金属板3を配置し」(構成2C)、「加熱接合工程を行」う(構成2D)ところ、「ろう材」は加熱接合工程を行うことで「接合層5」(構成2D)となるから、加熱接合工程を行った「セラミックス基板2」は、第1の面に接合層5を介して金属板3が接合されたものとなる。
そして、「加熱接合工程」の次に「金属板3をエッチングする工程」を行うことから、「金属板3をエッチングする工程」を行った「セラミックス基板2」は、「金属板3a」と「金属板3b」が「接合層5」を介して接合されているといえる。
そして、「接合層5」は、加熱接合工程を行った「ろう材ペースト層」に対応するから、「ろう材層」ということができ、「第1ろう材層」と称することは任意である。
(f)甲1製造方法発明により製造された「回路基板」は、「金属板として銅板を用い」るものであり、「表金属板の数は3」であり、それぞれの「厚さは0.8mm」(構成2K)である。
そうすると、「金属板3a」、「金属板3b」は、いずれも「銅部」ということができ、それぞれ「第1銅部」、「第2銅部」と称することは任意である。
また、厚さ「0.8mm」は、厚さ「0.6mm以上」に含まれる。
(g)前記(a)~(f)より、甲1製造方法発明は、「第1面に第1ろう材層を介して第1銅部及び第2銅部が接合され、前記第1銅部と前記第2銅部は前記第1面に沿う第1方向において互いに離れ、前記第1銅部の厚さ及び前記第2銅部の厚さは0.6mm以上であるセラミックス基板」に対して「はみ出し部6の形状を整えるエッチング工程」の処理を行っているということができる。
よって、本件発明8と甲1製造方法発明とは、「第1面に第1ろう材層を介して第1銅部及び第2銅部が接合され、前記第1銅部と前記第2銅部は前記第1面に沿う第1方向において互いに離れ、前記第1銅部の厚さ及び前記第2銅部の厚さは0.6mm以上であるセラミックス基板」に対して処理する点で一致する。
そして、甲1製造方法発明においては、第1面に第1ろう材層を介して第1銅部及び第2銅部が接合され、前記第1銅部と前記第2銅部は前記第1面に沿う第1方向において互いに離れ、前記第1銅部の厚さ及び前記第2銅部の厚さは0.6mm以上であるセラミックス基板を「用意」することは、特定されていない。
b 「前記セラミックス基板と前記第1銅部との間に位置する第1ろう材部及び前記セラミックス基板と前記第2銅部との間に位置する第2ろう材部が形成され、且つ前記第1ろう材部の端部と前記第1銅部の端部との間の距離が100μm以下となるように、前記第1銅部と前記第2銅部との間に位置する前記第1ろう材層の一部をエッチングし、」について
甲1製造方法発明は、「第1面に第1ろう材層を介して第1銅部及び第2銅部が接合され、前記第1銅部と前記第2銅部は前記第1面に沿う第1方向において互いに離れ、前記第1銅部の厚さ及び前記第2銅部の厚さは0.6mm以上であるセラミックス基板」に対して、「はみ出し部6の形状を整えるエッチング工程」(前記a(g))を行うものであり、本件発明8の「前記セラミックス基板と前記第1銅部との間に位置する第1ろう材部及び前記セラミックス基板と前記第2銅部との間に位置する第2ろう材部が形成され、且つ前記第1ろう材部の端部と前記第1銅部の端部との間の距離が100μm以下となるように、前記第1銅部と前記第2銅部との間に位置する前記第1ろう材層の一部をエッチング」することについて、特定されていない。
c 「前記第1銅部の側面が第1傾斜部を含み、前記第1傾斜部の端部からはみ出た前記第1ろう材部の第1はみ出し部の長さが0μmより大きく200μm以下となり、前記第1傾斜部と前記第1はみ出し部との接触角度が5°以上65°以下となり、且つ前記第1傾斜部の幅が前記第1銅部の厚さの0.1倍以上0.5倍以上となるように、前記第1銅部をエッチングする」について
(a)甲1製造方法発明は、「はみ出し部6の形状を整えるエッチング工程」において「はみ出し部6のはみ出し長さおよび厚さを調整」(前記a(c))している。
(b)甲1製造方法発明で製造される「回路基板」は、「接合層5aは、セラミックス基板2の第1の面と金属板3aとの間からはみ出すように当該第1の面上に延在するはみ出し部6aを有」(構成2J3)するものであり、接合層5aを介して、金属板3aはセラミックス基板2の第1の面と接合されているから、「接合層5a」は、本件発明8の「ろう材部」に相当し、「第1ろう材部」と称することは任意である。
また、「金属板3a」の「側面の傾斜」(構成2J4)している部分を「第1傾斜部」と称することができる。
そして、「はみ出し部6a」は、「セラミックス基板2の第1の面と金属板3aとの間からはみ出すように当該第1の面上に延在する」から、第1傾斜部の端部からはみ出しているものであり、「第1はみ出し部」と称することは任意である。
(c)甲1製造方法発明で製造される「回路基板」は、「はみ出し長さは15μm」(構成2K)であり、「はみ出し部の長さが0μmより大きく200μm以下」に含まれる。
(d)前記(a)~(c)より、本件発明8と甲1製造方法発明の「はみ出し部6の形状を整えるエッチング工程」とは、「第1傾斜部の端部からはみ出た第1ろう材部の第1はみ出し部の長さが0μmより大きく200μm以下となるように、エッチングする」点で一致するといえる。
しかし、甲1製造方法発明は、当該「エッチング」が「第1銅部をエッチング」するものか否か不明であり、また、甲1製造方法発明の「はみ出し部6の形状を整えるエッチング工程」は、「はみ出し部6のはみ出し長さおよび厚さを調整」(前記a(c))するに止まり、「金属板3をエッチングする工程」で「金属板3a」と「金属板3b」の側面を傾斜させている(前記a(d))から、本件発明8の、「前記第1銅部の側面が第1傾斜部を含み、前記第1傾斜部の端部からはみ出た前記第1ろう材部の第1はみ出し部の長さが0μmより大きく200μm以下となり、前記第1傾斜部と前記第1はみ出し部との接触角度が5°以上65°以下となり、且つ前記第1傾斜部の幅が前記第1銅部の厚さの0.1倍以上0.5倍以上となるように、前記第1銅部をエッチング」するものではない。
d 「セラミックス銅回路基板の製造方法」について
甲1製造方法発明で製造される「回路基板」は、表金属板として銅板を用いる(構成2K)ものであるから、「セラミックス銅回路基板」であり、本件発明8と甲1製造方法発明とは、「セラミックス銅回路基板の製造方法」である点で一致する。
e 一致点、相違点
前記a~dによれば、本件発明8と甲1製造方法発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「第1面に第1ろう材層を介して第1銅部及び第2銅部が接合され、前記第1銅部と前記第2銅部は前記第1面に沿う第1方向において互いに離れ、前記第1銅部の厚さ及び前記第2銅部の厚さは0.6mm以上であるセラミックス基板に対して、
第1傾斜部の端部からはみ出た第1ろう材部の第1はみ出し部の長さが0μmより大きく200μm以下となるように、エッチングするセラミックス銅回路基板の製造方法」
<相違点>
相違点3:本件発明8は、「第1面に第1ろう材層を介して第1銅部及び第2銅部が接合され、前記第1銅部と前記第2銅部は前記第1面に沿う第1方向において互いに離れ、前記第1銅部の厚さ及び前記第2銅部の厚さは0.6mm以上であるセラミックス基板」を「用意」するのに対して、甲1製造方法発明では、セラミックス基板と金属板とろう材を用意するものであり、「第1面に第1ろう材層を介して第1銅部及び第2銅部が接合され、前記第1銅部と前記第2銅部は前記第1面に沿う第1方向において互いに離れ、前記第1銅部の厚さ及び前記第2銅部の厚さは0.6mm以上である接合されたセラミックス基板」を用意するものではない点
相違点4:本件発明8は、「前記セラミックス基板と前記第1銅部との間に位置する第1ろう材部及び前記セラミックス基板と前記第2銅部との間に位置する第2ろう材部が形成され、且つ前記第1ろう材部の端部と前記第1銅部の端部との間の距離が100μm以下となるように、前記第1銅部と前記第2銅部との間に位置する前記第1ろう材層の一部をエッチングし」ているのに対して、甲1製造方法発明は、当該エッチングについて特定されていない点
相違点5:本件発明8は、「前記第1銅部の側面が第1傾斜部を含み、前記第1傾斜部の端部からはみ出た前記第1ろう材部の第1はみ出し部の長さが0μmより大きく200μm以下となり、前記第1傾斜部と前記第1はみ出し部との接触角度が5°以上65°以下となり、且つ前記第1傾斜部の幅が前記第1銅部の厚さの0.1倍以上0.5倍以上となるように、前記第1銅部をエッチングする」することを特定しているのに対して、甲1製造方法発明は、「はみ出し部6の形状を整えるエッチング」である点
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点5について検討する。
a 相違点5に係る構成の誤記について
本件発明8は、「前記第1傾斜部の幅が前記第1銅部の厚さの0.1倍以上0.5倍以上」と特定されているところ、当該「0.1倍以上0.5倍以上」との数値範囲に誤記があることは明らかである。そして、上限及び下限を特定することにより数値範囲を特定することが技術常識であり、また、本件特許明細書においても、「このため、傾斜部の幅は、銅部の厚さの0.5倍以下であることが好ましい。より好ましくは、傾斜部の幅は、銅部の厚さの0.1倍以上0.5倍以下である。傾斜部の幅が銅部の厚さの0.1倍未満であると、傾斜部の幅が狭いため、応力緩和効果が不足する可能性がある。」(【0013】)と記載されている。
そうすると、本件発明8で特定される「0.1倍以上0.5倍以上」との事項は、「0.1倍以上0.5倍以下」の誤記であることが明らかである。
b 相違点5について
前記aのとおり、相違点5における「0.1倍以上0.5倍以上」は、「0.1倍以上0.5倍以下」の誤記であることが明らかであるから、当該誤記を踏まえて、以下判断する。
甲1製造方法発明は、「金属板3をエッチングする工程」で[金属板3の側面を傾斜させ」ているから、「加熱接合工程」を行い、「金属板3のパターニング」を行い、「金属板3a」及び「金属板3b」が接合されたセラミックス基板2について、金属板3aの側面には、傾斜が形成されているものであり、「はみ出し部6の形状を整えるエッチング」は、「はみ出し部6のはみ出し長さおよび厚さを調整」するものである。
そうすると、甲1製造方法発明の「はみ出し部6の形状を整えるエッチング」において、金属板3aの「第1傾斜部と前記第1はみ出し部との接触角度が5°以上65°以下となり」、「前記第1傾斜部の幅が前記第1銅部の厚さの0.1倍以上0.5倍以下となるように」、エッチングする必要はなく、「はみ出し部6の形状を整えるエッチング」において、「第1傾斜部と前記第1はみ出し部との接触角度が5°以上65°以下となり」、「前記第1傾斜部の幅が前記第1銅部の厚さの0.1倍以上0.5倍以下となるように」、エッチングする動機付けはない。
また、「前記第1銅部の側面が第1傾斜部を含み、前記第1傾斜部の端部からはみ出た前記第1ろう材部の第1はみ出し部の長さが0μmより大きく200μm以下となり、前記第1傾斜部と前記第1はみ出し部との接触角度が5°以上65°以下となり、且つ前記第1傾斜部の幅が前記第1銅部の厚さの0.1倍以上0.5倍以下となるように、前記第1銅部をエッチングする」ことは、提出された甲2~甲4に記載されるものではない。
よって、相違点5に係る構成は、甲1製造方法発明に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。
したがって、本件発明8と甲1製造方法発明とは、少なくとも相違点5の点で相違するものであり、当該相違点5は、甲1製造方法発明に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。
(ウ)意見書の主張について
a 申立人は意見書において、「甲1製法発明では、「ろう材ペーストをセラミックス基板2の第1、2の面に塗布し、第1の面上のろう材ペースト層上に金属板3を配置し、第2の面上のろう材ペースト層上に金属板4を配置し、金属板3/ろう材ペースト層(接合層5)/セラミックス基板2/ろう材ペースト層(接合層7)/金属板4、の5層構造の回路基板を形成し」、さらに、「金属板として銅板を用い、金属板の表金属板の数は3であり、その厚さは0.8mmであ」るから、本件発明8の「第1面に第1ろう材層を介して第1銅部及び第2銅部が接合され、前記第1銅部と前記第2銅部は前記第1面に沿う第1方向において互いに離れ、前記第1銅部の厚さ及び前記第2銅部の厚さは0.6mm以上であるセラミックス基板を用意し、」に相当する。」と主張する(意見書8頁)。
しかしながら、上記主張において、「形成」した「5層構造の回路基板」([0056])は、セラミックス基板2の「第1の面上のろう材ペースト層上に金属板3を配置し」たもの([0055])で、「次に、加熱接合工程を行う」([0057])ことから、セラミックス基板2に金属板3が接合されたものではないし、本件発明8の「第1面に」「第1銅部」及び「第2銅部」が接合されたものでもない。
また、当該「5層構造の回路基板」は、甲1の[0041]~[0059]に記載される製造方法において、「形成」([0056])されるものであるから、当該「5層構造の回路基板」は用意するものでなく、甲1において、当該「5層構造の回路基板」を用意することが、自明な事項であるとも認められない。
そうすると、「甲1製法発明」において「ろう材ペーストをセラミックス基板2の第1、2の面に塗布し、第1の面上のろう材ペースト層上に金属板3を配置し、第2の面上のろう材ペースト層上に金属板4を配置し、金属板3/ろう材ペースト層(接合層5)/セラミックス基板2/ろう材ペースト層(接合層7)/金属板4、の5層構造の回路基板を形成し」、さらに、「金属板として銅板を用い、金属板の表金属板の数は3であり、その厚さは0.8mmであ」ることが、本件発明8の「第1面に第1ろう材層を介して第1銅部及び第2銅部が接合され、前記第1銅部と前記第2銅部は前記第1面に沿う第1方向において互いに離れ、前記第1銅部の厚さ及び前記第2銅部の厚さは0.6mm以上であるセラミックス基板を用意」することに相当するとはいえない。
b 「甲1製法発明では、「金属板3、4をエッチングする工程とはみ出し部6、8の形状を整えるエッチング工程を別々の工程として行い、金属板3、4の側面を傾斜させ、はみ出し部6、8のはみ出し長さおよび厚さを調整し」、さらに、「はみ出し長さは15μmであり、金属板の側面と下面とのなす角度θは60度である」から、本件発明8の「前記セラミックス基板と前記第1銅部との間に位置する第1ろう材部及び前記セラミックス基板と前記第2銅部との間に位置する第2ろう材部が形成され、・・・るように、前記第1銅部と前記第2銅部との間に位置する前記第1ろう材層の一部をエッチングし、前記第1銅部の側面が第1傾斜部を含み、前記第1傾斜部の端部からはみ出た前記第1ろう材部の第1はみ出し部の長さが0μmより大きく200μm以下となり、前記第1傾斜部と前記第1はみ出し部との接触角度が5°以上65°以下とな・・・るように、前記第1銅部をエッチングする」に相当する。」旨主張する(意見書8頁~9頁)。
しかしながら、甲1の[0041]~[0059]に記載される製造方法において、別々の工程でもよい「金属板3、4をエッチングする工程」と「はみ出し部6、8の形状を整えるエッチング工程」([0058])のいずれにおいても、本件発明8の「前記第1銅部と前記第2銅部との間に位置する前記第1ろう材層の一部をエッチング」することは記載されておらず、自明な事項であるとも認められない。
また、「はみ出し部6、8の形状を整えるエッチング工程」は、「はみ出し部6、8のはみ出し長さおよび厚さを調整」するものであるから、「前記第1傾斜部と前記第1はみ出し部との接触角度が5°以上65°以下とな・・・るように」するエッチングでもない。
そうすると、「甲1製法発明」の「金属板3、4をエッチングする工程とはみ出し部6、8の形状を整えるエッチング工程を別々の工程として行い、金属板3、4の側面を傾斜させ、はみ出し部6、8のはみ出し長さおよび厚さを調整し」、さらに、「はみ出し長さは15μmであり、金属板の側面と下面とのなす角度θは60度である」ことが、本件発明8の「前記セラミックス基板と前記第1銅部との間に位置する第1ろう材部及び前記セラミックス基板と前記第2銅部との間に位置する第2ろう材部が形成され、・・・るように、前記第1銅部と前記第2銅部との間に位置する前記第1ろう材層の一部をエッチングし、前記第1銅部の側面が第1傾斜部を含み、前記第1傾斜部の端部からはみ出た前記第1ろう材部の第1はみ出し部の長さが0μmより大きく200μm以下となり、前記第1傾斜部と前記第1はみ出し部との接触角度が5°以上65°以下とな・・・るように、前記第1銅部をエッチングする」ことに相当するとはいえない。
c そして、意見書の「本件発明8は、甲1製法発明に対して進歩性を有さない。」との主張(意見書10頁)は、上記a及びbの主張を前提とするものであり、上記a及びbの主張が、技術常識から自明であるともいえないから、意見書の主張は採用できない。
(エ)特許異議申立書の主張について
a 申立人は特許異議申立書において、「甲1発明Bでは、「第1の面と第2の面とを有する窒化ケイ素基板(厚さ:0.25mm)に、第1のろう材を介して前記第1の面に3枚の第1の銅板(厚さ:0.8mm)を」「接合」しているから、本件発明8における「第1面に第1ろう材層を介して第1銅部及び第2銅部が接合され、前記第1銅部と前記第2銅部は前記第1面に沿う第1方向において互いに離れ、前記第1銅部の厚さ及び前記第2銅部の厚さは0.6mm以上であるセラミックス基板を用意し」に相当する。」旨主張する(特許異議申立書20頁)。
しかしながら、甲1に記載される製造方法([0041]~[0059])は、「セラミックス基板2を用意する」([0042])、「金属板3、4を用意する」([0043])、「ろう材を用意する」([0044])ものである。そして、実施例においても「セラミックス基板1~4を用意し、ろう材として表2に示すろう材を用意し」([0060])、「セラミックス基板の第1の面上に、第1のろう材を介して表金属板を配置し、・・・700~900℃にて加熱接合し、加熱接合後に5℃/分以上の冷却速度で冷却」([0063])するものであるから、「セラミックス基板の第1の面上に、第1のろう材を介して表金属板を」「接合」したものを用意しているとはいえない。
また、「セラミックス基板の第1の面上に、第1のろう材を介して表金属板を」「接合」したものを用意することが、自明な事項であるとも認められない。
そうすると、「甲1発明B」において「第1の面と第2の面とを有する窒化ケイ素基板(厚さ:0.25mm)に、第1のろう材を介して前記第1の面に3枚の第1の銅板(厚さ:0.8mm)を」「接合」していることは、本件発明8の「第1面に第1ろう材層を介して第1銅部及び第2銅部が接合され、前記第1銅部と前記第2銅部は前記第1面に沿う第1方向において互いに離れ、前記第1銅部の厚さ及び前記第2銅部の厚さは0.6mm以上であるセラミックス基板を用意」することに相当するとはいえない。
b また、「甲1発明Bでは、「エッチングして、前記第1の銅板が側面と下面とのなす角度θ:60度で傾斜し、前記第1のろう材が、前記第1の面と前記第1の銅板との間からはみ出すように前記第1の面上に延在する第1のはみ出し部を有し」、「前記第1のはみ出し部の長さは15μmであり」、「前記3枚の第1の銅板間の距離が1.0mmであるように調整」しているから、本件発明8における「前記セラミックス基板と前記第1銅部との間に位置する第1ろう材部及び前記セラミックス基板と前記第2銅部との間に位置する第2ろう材部が形成され、且つ前記第1ろう材部の端部と前記第1銅部の端部との間の距離が100μm以下となるように、前記第1銅部と前記第2銅部との間に位置する前記第1ろう材層の一部をエッチングし」、かつ「前記第1銅部の側面が第1傾斜部を含み、前記第1傾斜部の端部からはみ出た前記第1ろう材部の第1はみ出し部の長さが0μmより大きく200μm以下となり、前記第1傾斜部と前記第1はみ出し部との接触角度が5°以上65°以下」「となるように、前記第1銅部をエッチングする」に相当する。」旨主張する(特許異議申立書20頁)。
しかしながら、甲1には、「エッチングしてはみ出し部のはみ出し長さL(μm)、厚さH(μm)、金属板間の最短距離Pを調整した」([0063])と記載されるものであり、「前記セラミックス基板と前記第1銅部との間に位置する第1ろう材部及び前記セラミックス基板と前記第2銅部との間に位置する第2ろう材部が形成され、且つ前記第1ろう材部の端部と前記第1銅部の端部との間の距離が100μm以下となるように、前記第1銅部と前記第2銅部との間に位置する前記第1ろう材層の一部をエッチング」することについて記載はされておらず、自明な事項であるとも認められない。
また、甲1の[0041]~[0059]に記載される製造方法においても、「前記第1銅部と前記第2銅部との間に位置する前記第1ろう材層の一部をエッチング」について記載されておらず、自明な事項であるとも認められない。
そうすると、「甲1発明B」において「エッチングして、前記第1の銅板が側面と下面とのなす角度θ:60度で傾斜し、前記第1のろう材が、前記第1の面と前記第1の銅板との間からはみ出すように前記第1の面上に延在する第1のはみ出し部を有し」、「前記第1のはみ出し部の長さは15μmであり」、「前記3枚の第1の銅板間の距離が1.0mmであるように調整」することが、本件発明8における「前記セラミックス基板と前記第1銅部との間に位置する第1ろう材部及び前記セラミックス基板と前記第2銅部との間に位置する第2ろう材部が形成され、且つ前記第1ろう材部の端部と前記第1銅部の端部との間の距離が100μm以下となるように、前記第1銅部と前記第2銅部との間に位置する前記第1ろう材層の一部をエッチングし」、かつ「前記第1銅部の側面が第1傾斜部を含み、前記第1傾斜部の端部からはみ出た前記第1ろう材部の第1はみ出し部の長さが0μmより大きく200μm以下となり、前記第1傾斜部と前記第1はみ出し部との接触角度が5°以上65°以下」「となるように、前記第1銅部をエッチングする」に相当するとはいえない。
c そして、特許異議申立書の「本件発明8は甲1発明Bに対して新規性を有さない。」、「本件発明8は、甲1発明Bに対して進歩性を有さない。」との主張(特許異議申立書21頁)は、上記a及びbの主張を前提とするものであり、上記a及びbの主張が、技術常識から自明であるともいえないから、特許異議申立書の主張は採用できない。
イ 本件発明9~15について
本件発明9~15は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項を付加したものである。
そうすると、本件発明9~15と甲1製造方法発明とは、少なくとも、前記ア(ア)eに示した相違点5において相違するものである。
よって、本件発明9、11、13~14は、甲1製造方法発明であるとはいえない。
また、当該相違点5は、前記ア(イ)で述べたとおり、当業者が容易になし得たものではない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明9~15は、甲1製造方法発明、甲2~甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ (2)のまとめ
前記ア、イのとおり、本件発明8~15は、甲1に記載された発明でなく、また、甲1に記載された発明、及び甲2~甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
4 意見書における新たな主張について
申立人は、意見書において、本件発明8の「「0.1倍以上0.5倍以上」の意味が不明確である」旨主張する(意見書10頁)ので、当該主張について検討する。
当該主張は、実質的に新たな理由を提示するものである。そして、本件訂正に付随して生じたものではなく、適切な取消理由を構成することが一見して明らかであるともいえない(前記3(2)ア(イ)a)。
よって、申立人の当該主張は採用しない。
第8 まとめ
以上のとおり、取消理由通知で通知した取消理由及び特許異議申立書で申し立てられた特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~6、8~16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~6、8~16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件訂正により、請求項7に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700045